IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シアトル チルドレンズ ホスピタル, ディービーエー シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュートの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】薬物制御による導入遺伝子の発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220622BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220622BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220622BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220622BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220622BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220622BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220622BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/86 Z
A61K35/17 Z
A61K38/17
A61P37/02
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020155809
(22)【出願日】2020-09-16
(62)【分割の表示】P 2016561659の分割
【原出願日】2015-04-08
(65)【公開番号】P2021019589
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】62/089,730
(32)【優先日】2014-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/088,363
(32)【優先日】2014-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/090,845
(32)【優先日】2014-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/986,479
(32)【優先日】2014-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/977,751
(32)【優先日】2014-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/058,973
(32)【優先日】2014-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル (ディービーエイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート)
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,マイケル,シー.
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-500884(JP,A)
【文献】特表2007-535906(JP,A)
【文献】国際公開第2014/031687(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/126733(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/154760(WO,A1)
【文献】Immunol. Rev.,2014年01月,vol.257, no.1,p.127-144
【文献】Mol. Ther.,2002年,vol.6, no.5,p.653-663
【文献】Chemisry & Biology,2005年,vol.12,p.883-893
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸および第2の核酸を含む単離された細胞であって、
前記第1の核酸が、配列番号41のヌクレオチド配列を含む第1のプロモーターを含み、かつポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、
前記第2の核酸が、HEA3ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする細胞。
【請求項2】
前記HEA3ポリペプチドが配列番号40の配列と少なくとも95%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項3】
前記HEA3ポリペプチドが配列番号40のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離された細胞。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドがキメラ抗原受容体をコードする、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された細胞。
【請求項5】
前記キメラ抗原受容体が、HER2またはCD19と特異的に結合するリガンド結合ドメインを含む、請求項に記載の単離された細胞。
【請求項6】
前記キメラ抗原受容体が、IgG4ヒンジ領域を含むスペーサー;CD28膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン;および/または4-1BBのシグナル伝達ドメインとCD3ζのシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項またはに記載の単離された細胞。
【請求項7】
前記リガンド結合ドメインが、配列番号3もしくは配列番号81と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってコードされ;前記スペーサーが配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号5と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってコードされ;または、前記細胞内シグナル伝達ドメインが配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸および配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸を含むポリヌクレオチドによってコードされるドメインを含む、請求項に記載の単離された細胞。
【請求項8】
前記細胞が、T細胞、T細胞前駆細胞および造血幹細胞からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された細胞。
【請求項9】
前記細胞が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞からなる群から選択される、請求項に記載の単離された細胞
【請求項10】
前記CD8+細胞が、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される、請求項に記載の単離された細胞。
【請求項11】
前記CD4+細胞が、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択される、請求項に記載の単離された細胞。
【請求項12】
細胞がエクスビボ細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された細胞。
【請求項13】
がんまたはウイルス感染症の治療用である、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された細胞。
【請求項14】
前記がんが血液悪性腫瘍または固形腫瘍であり、前記固形腫瘍が、乳がん、脳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される、請求項13に記載の単離された細胞。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された細胞および薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離された細胞と、抗CD3および抗CD28からなる群から選択される活性化刺激因子とを含む組成物であり、前記活性化刺激因子が前記細胞と接触している組成物。
【請求項17】
さらに、HEA3ポリペプチドの存在下で第1のプロモーターを誘導可能な薬剤を含み、前記薬剤がタモキシフェン、タモキシフェンの代謝産物およびタモキシフェンの類似体からなる群から選択され、前記薬剤が前記細胞と接触している、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年10月2日に出願された米国仮特許出願62/058,973号、2014年4月10日に出願された米国仮特許出願61/977,751号、2014年4月30日に出願された米国仮特許出願61/986,479号、2014年12月9日に出願された米国仮特許出願62/089,730号、2014年12月11日に出願された米国仮特許出願62/090845号、および2014年12月5日に出願された米国仮特許出願62/088,363号に係る優先権を主張するものである。前記出願の開示は、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列、配列表またはコンピュータープログラムにより作成した配列に関する情報
本願は電子形式の配列表とともに出願されたものである。この配列表は、SCRI-53WO_SEQUENCE_LISTING.TXTのファイル名で2015年4月7日に作成された65kbのファイルとして提供されたものである。この電子形式の配列表に記載された情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
腫瘍細胞上に発現した表面分子に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子移入により改変されたヒトTリンパ球を養子移入することによって、効果的にがんを治療できる可能性がある。キメラ受容体は、細胞外リガンド結合ドメインを含む合成受容体であり、該細胞外リガンド結合ドメインは、最も一般的には、細胞内シグナル伝達成分に連結されたモノクローナル抗体一本鎖可変フラグメント(scFv)であり、該細胞内シグナル伝達成分は、最も一般的には、CD3ζ単独、または1つ以上の共刺激ドメインと組み合わせられたCD3ζである。キメラ受容体の設計に関する研究の多くは、生体にとって不可欠な正常組織に対して重大な毒性を引き起こすことなく、悪性細胞を標的とすることが可能なscFvおよびその他のリガンド結合因子を見出すこと、およびT細胞のエフェクター機能を活性化することが可能な、細胞内シグナル伝達モジュールの最適な構成を見出すことに焦点を当てている。
【0004】
T細胞(CAR-T)養子療法(キメラ抗原受容体を発現するT細胞)の臨床試験において強力な抗腫瘍活性を示されているものの、顕著な毒性も認められている。たとえば、移植細胞により誘導されたサイトカインストーム、腫瘍崩壊症候群、および慢性的なB細胞の減少が起こることがあり、これらはいずれも構成的に発現されたCARが非制御下にその機能を発揮していることに起因する。そのような毒性によって、CAR-T細胞を用いた養子療法の適用範囲が制限されることがある。導入遺伝子により改変した養子T細胞免疫療法を用いた臨床試験では、導入遺伝子を構成的に発現させたT細胞のみしか検討されておらず、このような導入遺伝子は常に「オン」状態であり、導入遺伝子に関連する副作用の大部分に寄与している。自殺遺伝子を使用してCAR-T細胞を排除することによって、そのような毒性を低減することができるが、このアプローチは、抗腫瘍活性が十分に発揮される前にこれを低減させてしまう恐れがあり、治療有効性にもかなりの影響を与えてしまう。
【0005】
現在使用されている、小分子により導入遺伝子の発現を制御する技術は、マクロライド系抗生物質、エクジソン、ラパマイシン類似体などの種々の薬物による効果に依存するものである。このようなシステムは限定的にしか臨床適用できず、その理由として、毒性のオフターゲット効果、望ましくない生体内分布および薬物動態プロファイル、狭い作動域、ならびに/またはFDA認可の市販医薬品であることによる入手制限が挙げられる。さらに、このようなシステムの多くは、異種生物由来の成分から構築されたキメラ転写制御因子使用するため、このシステムをヒトの治療に使用すると、免疫性の合併症が引き起こされる。
【0006】
インビボにおける生存および有効性を向上させるとともに、有害な副作用を最小限に抑えることの可能な遺伝的改変および養子移入を実施することを目的として、治療活性および細胞集団において重要な役割を果たす成分を特定してキメラ受容体を設計する方法が必要とされている。さらに、治療活性の向上、インビボでの生存および/もしくは有効性の向上、ならびに/または有害な副作用の最小化を目的として、細胞療法において使用する細胞を調節するための発現システムおよび方法も必要とされており、この発現システムおよび方法は、たとえば、前記細胞において発現されるCARなどの組換え抗原受容体および/またはその他の分子の発現を調節するための発現システムおよび方法であってもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の開示の一態様は、細胞において薬物により制御発現される導入遺伝子を送達するための遺伝子システムを包含する。一実施形態においては、制御された導入遺伝子の発現は細胞を標的とし、たとえば、養子免疫療法における使用を目的として設計されたリンパ球を標的とする。このシステムは、キメラ抗原受容体(CAR)をリダイレクトした養子療法を使用するため、安全性が厳密に保たれており、さらに、臨床医がインビボでのCARの発現をリアルタイムで制御することを可能にするという治療目的を損なうことがない。薬物応答性に基づいてCARの発現の転写制御が可能となるようにベクターを遺伝子改変し、臨床医により処方された薬物で刺激することによって、インビボでCARの活性およびその他の細胞メディエーターの活性を「オン」または「オフ」に切り替えることができ、その結果、臨床的に許容可能な薬物動態、組織分布、および細胞外間隙とリンパ球の細胞質との間の分配を達成することができる。本発明の遺伝子システムは薬物で制御される導入遺伝子の発現を提供し、薬物の非存在下で導入遺伝子を機能的に「オフ」の状態とし、かつ薬物の存在下で導入遺伝子を機能的に「オン」の状態とすることができる。
【0008】
前述の薬物の一例として、タモキシフェンが挙げられる。タモキシフェンは、エストロゲンのアンタゴニスト/部分アゴニストであり、FDA認可薬物として市販されている。タモキシフェンは経口投与され、長期間にわたって連日投与することができる。タモキシフェンは、安全性が証明されており、薬物動態プロファイルが好適であり、組織分布が良好であり、細胞外間隙と細胞質との間の分配係数が低い。また、安全性が証明されていること、薬物動態プロファイルが好適であること、組織分布が良好であること、細胞外間隙と細胞質との間の分配係数が低いこと、および/または毒性が低いことを目安に他の薬物を選択することもできる。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記システムは、タモキシフェンの存在下で導入遺伝子の上流の合成プロモーターに結合する合成転写制御因子を使用して発現を誘導する。タモキシフェンで制御されるこの転写因子(「TamR-tf」あるいは「HEA3」とも称される)は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメインが、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインにインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κBのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。典型的なアミノ酸配列は表10に記載されており、配列番号40で示されている。エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)の前記タモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインは、TamR-tfの282~595番目のアミノ酸からなる配列であり、521番目のアミノ酸に変異を有する。NF-κBのp65活性化ドメイン(p65)は、配列番号40の596~862番目のアミノ酸からなる配列である。転写因子の特性を向上させるために、前記転写活性化因子にさらに変更を加えてもよく、たとえば、前記エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えることによって、前記転写因子のエストロゲン類似体に対する親和性を増加させてもよく、かつ前記p65転写活性化ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよいが、前記転写活性化因子への変更はこれらに限定されない。
【0010】
タモキシフェンの非存在下では、細胞質内の熱ショックタンパク質90(HSP90)がタモキシフェン結合活性部位に結合することによって、TamR-tfが核内から排除されるため、導入遺伝子の発現は「オフ」の状態となる。細胞質内にナノモル濃度のタモキシフェンが存在すると、ER-LBDへの結合に対してHSP90と活発に競合することによってこれを阻害し、TamR-tfの核内への転座が生じる。核内への転座が起こると、TamR-tfは、自体の特異的結合部位である合成プロモーター(たとえば7xHBD/EF1αp)と結合することが容易となる。タモキシフェンの存在下では、TamR-tfが7xHBD/EF1αpプロモーターに結合することによって導入遺伝子の発現が「オン」の状態へと誘導される。いくつかの実施形態においては、この転写制御因子は、導入遺伝子の発現の制御を様々なレベルで行えるように改変されていてもよい。TamR-tfのリガンド結合ドメイン内のアミノ酸を置換することによって、タモキシフェンおよびその代謝産物に対する選択的応答が可能となる。4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)は、TamR-tf活性に関して薬理学的活性が最も高い代謝物であり、内在性エストロゲンと相互作用を起こさない。
【0011】
一態様において、本発明の開示は、腫瘍に特異的な遺伝子改変CD8+T細胞サブセットまたはCD4+T細胞サブセットを単独または組み合わせて使用した養子移入などによる細胞免疫療法によって媒介される免疫応答を付与かつ/または増強する方法および組成物に関する。また、本発明の開示は、キメラ受容体の核酸配列、ならびに該核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。前記キメラ受容体をコードする前記核酸配列は、様々なモジュール部分と連結されており、該モジュール部分を切断して他のモジュール部分と置換することによって前記キメラ受容体のカスタマイズを行うことができ、それによって、効率的なT細胞の活性化および特異的な標的分子もしくは該分子上のエピトープの認識のためのキメラ受容体を得ることができ、ひいては本明細書に記載の制御された転写を達成することができる。
【0012】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムは、第1の核酸および第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。
【0013】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムは、第1の核酸および第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン、アポトーシスを制御するポリペプチドおよび/またはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。典型的な一実施形態において、前記第2の核酸は、構成的プロモーターの制御下でキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。
【0014】
別の態様では、本発明の開示は、腫瘍特異的かつサブセット特異的な遺伝子改変CD4+T細胞の養子移入などによる細胞免疫療法によって媒介される免疫応答を付与かつ/または増強する組成物であって、前記CD4+T細胞が、CD8+T細胞に能力を付与し、かつ/またはCD8+T細胞の能力を増強することによって、抗腫瘍反応を維持し、腫瘍特異的な増殖を増加させかつ/または最大限にすることを特徴とする組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されているように、前記CD4+T細胞は、制御されたプロモーターの制御下でキメラ受容体の核酸配列および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている。
【0015】
別の一態様では、本発明の開示は、腫瘍特異的かつサブセット特異的な遺伝子改変T細胞の養子移入などによる細胞免疫療法によって媒介される免疫応答を付与かつ/または増強する組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、前記細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記細胞はCD8+T細胞である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されているように、前記CD8+T細胞は、制御されたプロモーターの制御下でキメラ受容体の核酸配列および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現する。
【0016】
いくつかの実施形態は、疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行う方法あって、細胞性免疫応答を提供する遺伝子改変Tリンパ球製剤を該対象に投与すること、および該遺伝子改変Tリンパ球内の導入遺伝子を誘導する薬物を投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態においては、前記遺伝子改変Tリンパ球製剤はT細胞前駆細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記遺伝子改変Tリンパ球製剤は造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記遺伝子改変CD8+細胞集団および前記遺伝子改変CD4+細胞集団を共投与する。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞は自己由来T細胞または同種異系T細胞である。上記の方法の様々な変法も可能である。たとえば、前記CD4+T細胞および前記CD8+T細胞によって発現されるキメラ受容体は、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、第1の核酸および第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0018】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターである。
【0019】
いくつかの実施形態においては、システムによってコードされるキメラ受容体ポリペプチドが提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0020】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合ドメインである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記システムは、第1の核酸および第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0021】
いくつかの実施形態においては、システムを含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0022】
いくつかの実施形態においては、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、該システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞は、T細胞前駆細胞または造血幹細胞である。
【0023】
いくつかの実施形態においては、インビトロにおいて宿主細胞を製造する方法であって、
a)システムを提供すること、
b)単離された個別のTリンパ球集団に前記システムを導入し、各Tリンパ球集団をインビトロで増殖させることを含む方法が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、該システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記Tリンパ球が増殖しており、前記方法は、抗CD3および/または抗CD28と少なくとも1つの恒常性サイトカインとの存在下において、前記Tリンパ球を、細胞移入における使用に十分な数に達するまで培養することをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記リンパ球はCD8+またはCD4+である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症の治療のための、宿主細胞または組成物と該宿主細胞中または該組成物中の導入遺伝子の発現を誘導する薬物との組み合わせの使用が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、該システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、脳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞は、T細胞前駆細胞または造血幹細胞である。
【0025】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、組成物または宿主細胞を前記対象に投与すること、および該組成物中または該宿主細胞中の導入遺伝子の発現を誘導する薬物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、該システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、該システムは、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8+Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリーCD8+T細胞、エフェクターメモリーCD8+T細胞およびバルクCD8+T細胞からなる群から選択されるCD8+T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞およびバルクCD4+T細胞からなる群から選択されるCD4+Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞は、T細胞前駆細胞または造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍および血液悪性腫瘍から選択される。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、脳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記単離されたTリンパ球集団はT細胞前駆細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記薬物の投与は、前記組成物または前記宿主細胞の投与後に行い、前記組成物または前記宿主細胞の投与から1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、4週間もしくは2ヶ月が経過した後、またはこれらの時間点のいずれか2つの間にある任意の時間が経過した後に前記薬物の投与を行う。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aは、構築物Aおよび構築物Bを含むデュアルプラスミドレンチウイルス構築物で形質導入したJurkat細胞におけるZsGreenおよびEGFRtの発現量を、4-ヒドロキシタモキシフェン(4OHT)の存在下または非存在下においてフローサイトメトリーで測定した結果を示す。この結果から、4-OHTの存在下または非存在下でEGFRtが発現されることが示され、これによって前記細胞が構築物Aを有することが示された。前記結果から、さらに、4-OHTの存在下でZsGreenの発現が誘導されたことが示され、これによって前記細胞が構築物Bを有することが示された。図1Bは、EGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)に連結された構成的プロモーターEF1αpを含む構築物A、およびZsGreenをコードするポリヌクレオチドに連結された合成プロモーター7xHBD/mE1bを含む構築物Bを示す。
【0027】
図2図2は、50~1000nMの様々な用量の4-OHTと接触させた形質導入Jurkat細胞におけるZsGreenの発現を示す。
【0028】
図3図3は、4-OHTで48時間の単回処理を実施した後に洗浄した形質導入Jurkat細胞(○)、および4-OHTで24時間処理した後に洗浄し、その後15日目に4-OHTで再刺激した形質導入されたJurkat細胞(■)におけるZsGreenの発現のオン/オフ率の動態を示す。
【0029】
図4図4A図4Dは、デュアルパッケージレンチウイルス構築物AおよびBで形質導入したCD4セントラルメモリー細胞におけるZsGreenの発現を示す。細胞を3つの処理群、すなわち、4OHT単独処理群(図4A)、4OHTとCD3/CD28ビーズとを組み合わせた共処理群(図4B)、または4OHT単独で48時間処理した後にCD3/CD28ビーズを添加することによって処理した群(図4C)に分けた。ZsGreenの発現は、96時間にわたって監視した。図4Dは、EGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)に連結された構成的プロモーターEF1αpを含む構築物A、およびZsGreenをコードするポリヌクレオチドに連結された合成プロモーター7xHBD/mE1bを含む構築物Bを示す。
【0030】
図5図5A図5Cは、図4に示したデュアルパッケージレンチウイルス構築物AおよびBで形質導入したCD8セントラルメモリー細胞におけるZsGreenの発現を示す。細胞を3つの処理群、すなわち、4OHT単独処理群(図5A)、4OHTとCD3/CD28ビーズとを組み合わせた共処理群(図5B)、または4OHT単独で48時間処理した後にCD3/CD28ビーズを添加することによって処理した群(図5C)に分けた。ZsGreenの発現は、72時間にわたって監視した。
【0031】
図6図6Aは、図6Cに示した構築物Aおよび構築物Bで形質導入したヒトJurkat T細胞におけるEGFRtおよびHer2tの発現を示す。EGFRtおよびHer2tの発現は、4OHTの存在下または非存在下で監視した。サンプルを、EGFRt-APC抗体およびハーセプチン-ビオチンで染色し、続いてSA-PEで染色した。図6Bは、CD19 CAR上の細胞内CD3ζ鎖(約48kDa)を認識するマウス抗CD247で染色したJurkat親細胞および形質導入CD19 CAR細胞のウエスタンブロットを示す。内在性CD3ζ鎖は23kDaの位置に認められる。内在性CD3ζ鎖はすべての細胞において検出された。CD19 CAR CD3ζ鎖は、4-OHTに暴露させた形質導入Jurkat細胞においてのみ検出された。図6Cは、EGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)に連結された構成的プロモーターEF1αpを含む構築物A、およびHer2tをコードするポリヌクレオチドに連結されたCD19CARをコードするポリヌクレオチドに連結された合成プロモーター7xHBD/mE1bを含む構築物Bを示す。
【0032】
図7図7Aは、4OHTの存在下または非存在下において、さらなる選択マーカーであるDHFRdmを含むTamR CD19CAR LVで形質導入したヒトJurkat T細胞におけるEGFRtおよびHer2tの発現を示す。EGFRtおよびHer2tの発現は、4OHTの存在下または非存在下で監視した。サンプルを、EGFRt-APC抗体およびハーセプチン-ビオチンで染色し、続いてSA-PEで染色した。図7Bは、CD19 CAR上の細胞内CD3ζ鎖(約48kDa)を認識するマウス抗CD247で染色したJurkat親細胞および形質導入CD19 CAR細胞のウエスタンブロットを示す。内在性CD3ζ鎖は23kDaの位置に認められる。内在性CD3ζ鎖はすべての細胞において検出された。CD19 CAR CD3ζ鎖は、4-OHTに暴露させた形質導入Jurkat細胞においてのみ検出された。図7Cは、EGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)に連結された構成的プロモーターEF1αpを含む構築物A、およびDHFRdmをコードするポリヌクレオチドに連結されたHer2tをコードするポリヌクレオチドに連結されたCD19CARをコードするポリヌクレオチドに連結された合成プロモーター7xHBD/mE1bを含む構築物Bを示す図である。
【0033】
図8図8Aは、4OHTおよび抗CD3/CD28ビーズの存在下または非存在下において、さらなる選択マーカーであるDHFRdmを含むTamR CD19CAR LVで形質導入したヒトCD4セントラルメモリーT細胞におけるEGFRtおよびHer2tの発現を示す。EGFRtおよびHer2tの発現は、4OHTの存在下または非存在下および抗CD3/CD28ビーズの存在下または非存在下で監視した。サンプルを、EGFRt-APC抗体およびハーセプチン-ビオチンで染色し、続いてSA-PEで染色した。図8Bは、EGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)に連結された構成的プロモーターEF1αpを含む構築物A、およびDHFRdmをコードするポリヌクレオチドに連結されたHer2tをコードするポリヌクレオチドに連結されたCD19CARをコードするポリヌクレオチドに連結された合成プロモーター7xHBD/mE1bを含む構築物Bを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語の定義
特に記載がない限り、本明細書で使用されている技術用語および科学用語はいずれも、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有すると見なされる。
【0035】
本明細書において「約」は、測定値について述べる場合、所定値から±20%または±10%の変動を意味し、より好ましくは±5%の変動、さらにより好ましくは±1%の変動、さらにより好ましくは±0.1%の変動を意味する。
【0036】
本明細書に記載の「抗原」または「Ag」は、免疫応答を引き起こす分子を指す。この免疫応答は、抗体産生もしくは特異的な免疫担当細胞の活性化、またはこれらの両方を包含することができる。抗原が組換え技術により作製、合成および産生可能であること、または生体サンプルから得ることができることは容易に理解される。そのような生体サンプルとしては、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞または体液(たとえば血液、血漿または腹水)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に記載の「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移巣の減少、余命の延長、またはがん症状と関連した種々の生理学的症候の減少によって示される生物学的効果を指す。また、「抗腫瘍効果」は再発の減少または再発までの時間の延長によって示すことができる。
【0038】
本明細書に記載の「キメラ受容体」は、抗体配列または他のタンパク質配列に由来するリガンド結合ドメインを含む合成設計された受容体を指し、該リガンド結合ドメインは、上記疾患または障害に関連する分子と結合し、T細胞受容体またはその他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン(たとえば共刺激ドメイン)の1つ以上とスペーサードメインを介して連結されている。キメラ受容体は、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体、およびキメラ抗原受容体(CAR)とも呼ぶことができる。CARは、任意の特異性を免疫受容体細胞に付与することが可能な遺伝子改変受容体である。研究者によっては、キメラ抗原受容体(CAR)は、抗体または抗体フラグメント、スペーサー、シグナル伝達ドメインおよび膜貫通領域を含むものであるとも考えられている。しかしながら、本明細書によれば、CARの様々な構成成分すなわちドメイン(たとえばエピトープ結合領域(たとえば、抗体フラグメント、scFvまたはそれらの一部)、スペーサー、膜貫通ドメインおよび/またはシグナル伝達ドメインなど)は改変されており、この改変によって驚くべき効果が得られたことから、それぞれ独立した特徴に注目すると、本明細書全体ではCARの成分は様々に異なっていることが多い。CARが様々な特徴を有することから、たとえば、特定のエピトープや抗原に対しての結合親和性がさらに強くなることがある。本明細書に記載の「共刺激ドメイン」は、たとえばTCR/CD3複合体のCD3ζ鎖によって提供される一次シグナルに加えて、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌などの(ただしこれらに限定されない)T細胞応答を媒介するシグナルをT細胞に提供するシグナル伝達部分を指す。共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3などの分子全体、またはCD83と特異的に結合するリガンド全体、またはこれらの分子やリガンドの一部を含んでいてもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、共刺激ドメインは、他の細胞内メディエーターと相互作用することによって、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌などの細胞応答を媒介する細胞内シグナル伝達ドメインである。本明細書において「コードする」は、遺伝子、cDNA、mRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列が、特定のアミノ酸配列などの別の巨大分子を合成する際にテンプレートとして機能する特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳がなされた結果、細胞または他の生物系においてタンパク質が産生された場合、その遺伝子はタンパク質をコードすると言える。「ポリペプチドをコードする核酸配列」は、同じアミノ酸配列をコードするあらゆる縮重ヌクレオチド配列を包含する。
【0039】
本明細書に記載の「条件的」または「誘導可能な」は、誘導因子の存在下で遺伝子を発現させるが、誘導因子の非存在下では実質的に遺伝子を発現させないプロモーターを含む核酸構築物を指す。
【0040】
本明細書に記載の「構成的」は、継続的に産生されるポリペプチドを構成的に発現させるプロモーターを含む核酸構築物を指す。
【0041】
「特異的」または「特異性」は、結合パートナーに対するリガンドの特性、あるいはリガンドに対する結合パートナーの特性を指すことができ、結合に特異的な相補的形状、電荷性および疎水性が挙げられる。結合に関与する特異性としては、立体特異性、領域選択性、および化学選択性が挙げられる。いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体をコードする核酸を得ることが可能な、キメラ抗原受容体をコードする核酸の製造方法が提供される。
【0042】
本明細書に記載の「制御」または「調節」は、生物学的プロセスを制御すること、または生物学的プロセス、生物学的経路、細胞プロセスもしくは細胞経路を改変もしくは制御することを指す。
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、「調節」は、細胞の分化およびアポトーシスを調節することを含む。いくつかの実施形態においては、「調節」は、タンパク質の活性の制御によって細胞の増殖を調節することを含む。いくつかの実施形態においては、前記タンパク質は細胞周期調節因子および転写因子である。いくつかの実施形態においては、前記細胞周期制御因子は、サイクリンD1、p21、p27および/またはcdc25Aである。
いくつかの実施形態においては、前記転写因子はc-Mycである。
【0043】
本明細書に記載の「細胞傷害性Tリンパ球」(CTL)は、表面上にCD8を発現するTリンパ球(たとえば、CD8+T細胞)を指す。いくつかの実施形態において、そのような細胞は、抗原を経験したことのある「メモリー」T細胞(TM細胞)であることが好ましい。本明細書に記載の「セントラルメモリー」T細胞(または「TCM」)は、抗原を経験したCTLであり、ナイーブ細胞と比較して、その表面上にCD62L、CCR-7、および/またはCD45ROを発現するが、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているCTLを指す。いくつかの実施形態において、セントラルメモリー細胞は、ナイーブ細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、および/またはCD95の発現が陽性であるが、CD54RAの発現が低下していることがある。本明細書に記載の「エフェクターメモリー」T細胞(または「TEM」)は、抗原を経験したT細胞であり、セントラルメモリー細胞と比較して、その表面上にCD62Lを発現していないか、CD62Lの発現が低下しており、ナイーブ細胞と比較して、CD45RAを発現していないか、CD45RAの発現が低下しているT細胞を指す。いくつかの実施形態において、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞またはセントラルメモリー細胞と比較して、CD62Lおよび/またはCCR7の発現が陰性であり、CD28および/またはCD45RAの発現が陽性あるいは陰性である。
【0044】
本明細書に記載の「ナイーブ」T細胞は、抗原を経験していないTリンパ球であり、セントラルメモリー細胞またはエフェクターメモリー細胞と比較して、CD62Lおよび/またはCD45RAを発現しており、CD45ROを発現していないTリンパ球を指す。いくつかの実施形態において、ナイーブCD8+Tリンパ球は、ナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられ、ナイーブT細胞の表現型マーカーとしては、CD62L、CCR7、CD28、CD127、および/またはCD45RAが挙げられる。
【0045】
本明細書に記載の「エフェクター」T細胞または「TE」T細胞は、抗原を経験した細胞傷害性Tリンパ球であり、セントラルメモリー細胞またはナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、および/もしくはCD28を発現していないか、またはCD62L、CCR7、および/もしくはCD28の発現が低下しており、かつグランザイムB陽性および/またはパーフォリンに陽性であるTリンパ球を指す。本明細書において、混合物中の特定の細胞種の量について述べる際に使用される「濃縮された」および「除去された」という用語は、細胞の混合物中において「濃縮された」細胞種の数を増加させる方法もしくは工程で細胞混合物を処理すること、または細胞の混合物中の「除去された」細胞の数を低減させる方法もしくは工程で細胞混合物を処理することを指す。したがって、濃縮工程に付された細胞の由来に応じて、混合物または組成物において、「濃縮された」細胞は(細胞数で)全体の60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%以上を占めていてもよく、かつ/または「除去された」細胞は(細胞数で)全体の40%、30%、20%、10%、5%もしくは1%以下を占めていてもよい。
【0046】
本明細書に記載の「エピトープ」は、抗体、T細胞および/またはB細胞を含む免疫系によって認識される抗原または分子の一部を指す。エピトープは、通常、少なくとも7つのアミノ酸を有し、線状であっても高次構造を有していてもよい。本明細書において開示される種々のポリペプチドについて述べる際に使用される「単離された」という用語は、ポリペプチドまたは核酸が本来存在する環境にある他の成分から同定、分離かつ/または回収されたポリペプチドまたは核酸を意味する。単離されたポリペプチドまたは核酸は、これらが本来関連する他の成分を全く含まないことが好ましい。単離されたポリペプチドまたは核酸が本来存在する環境にある不純物としては、典型的には、該ポリペプチドまたは核酸の診断用途または治療用途を妨害するような物質であり、たとえば、酵素、ホルモンおよび他のタンパク性の溶質または非タンパク性の溶質が挙げられる。
【0047】
本明細書に記載の「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、リンパ球を活性化する分子(ここでは、キメラ受容体分子)の1つ以上のドメイン全体またはその一部を指す。そのような分子の細胞内ドメインは、細胞メディエーターと相互作用することによってシグナルを媒介し、増殖、分化、活性化、およびその他のエフェクター機能をもたらす。いくつかの実施形態において、そのような分子として、CD28、CD3、もしくは4-1BBの全体もしくはその一部、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本明細書に記載の「リガンド」は、別の物質と特異的に結合して複合体を形成する物質を指す。リガンドとしては、抗原上のエピトープ、受容体に結合する分子、基質、阻害物質、ホルモン、および/または活性化物質が挙げられる。本明細書に記載の「リガンド結合ドメイン」は、リガンドに結合する物質またはその一部を指す。リガンド結合ドメインとしては、抗体の抗原結合部分、受容体の細胞外ドメイン、および/または酵素の活性部位が挙げられる。本明細書に記載の「作動可能に連結される」は、制御配列と異種核酸配列との間の機能的な連結を指し、これは該異種核酸配列の発現をもたらす。たとえば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関係して配置されている場合、該第1の核酸配列は該第2の核酸配列と作動可能に連結されていると言える。たとえば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、該プロモーターは該コード配列に作動可能に連結されていると言える。通常、作動可能に連結されるDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域の連結が必要とされる場合、これらは同じリーディングフレーム内に存在する。
【0049】
本明細書に記載のキメラ受容体ポリペプチド配列における「アミノ酸配列同一性(%)」は、リガンド結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および/またはリンパ球活性化ドメインそれぞれの参照配列中のアミノ酸残基と一致している候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。このアミノ酸配列同一性は、配列同一性(%)の最大値を算出するため、必要に応じて配列をアラインしてギャップを挿入した後に算出され、保存的置換を配列同一性としては考慮しない。アミノ酸配列同一性(%)を決定するためのアラインメントは、当技術分野の範囲にある種々の方法で行うことができ、たとえば、一般公開されているコンピュータソフトウェア、たとえばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて実施することができる。当業者であれば、アラインメントを測定するのに適切なパラメータを決定することができ、このようなパラメータとしては、比較される複数の配列の全長にわたってアラインメントを最大とするのに必要な任意のアルゴリズムが挙げられる。たとえば、WU-BLAST-2コンピュータープログラム[Altschul et al., Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996)]を用いてアミノ酸配列同一性(%)を算出するには、いくつかの検索パラメータを用いるが、それらのほとんどはデフォルト値に設定されている。デフォルト値に設定されないパラメータ(すなわち調整可能なパラメータ)は、overlap span=1, overlap fraction=0.125, word threshold (T) =11およびscoring matrix=BLOSUM62と設定される。アミノ酸配列同一性(%)は、(a)WU-BLAST-2によって決定された、表2に示した参照キメラ受容体配列のポリペプチドアミノ酸配列すべてまたは各配列と、目的の比較アミノ酸配列との間で一致したアミノ酸残基の数を、(b)目的のポリペプチドのアミノ酸残基の総数で割ることによって決定される。いくつかの実施形態において、アミノ酸の配列同一性(%)または核酸の配列同一性(%)は、コンピュータソフトウェアによって決定される。
【0050】
本明細書に記載の「キメラ受容体のバリアントのポリヌクレオチド」または「キメラ受容体のバリアントの核酸配列」は、以下に定義されるように、表1に示したポリヌクレオチド酸配列またはそれに由来する特定のフラグメントと少なくとも80%、85%、90%、または95%の核酸配列同一性(またはこれらのパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲にある核酸配列同一性(%))を有する、ポリペプチドをコードする核酸分子を指す。表1に示したポリヌクレオチド配列またはその特定のフラグメントとしては、たとえば、抗原結合ドメインをコードするポリヌクレオチド、スペーサードメインをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、および/またはリンパ球刺激ドメインをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
通常、ポリヌクレオチドのキメラ受容体バリアントまたはそのフラグメントは、表に示した核酸配列またはそれに由来するフラグメントと少なくとも80%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも81%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも82%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも83%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも84%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも86%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも87%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも88%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも89%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも91%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも92%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも93%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも94%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも96%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも97%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも98%の核酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも99%の核酸配列同一性を有する。バリアントは、自体が由来するヌクレオチド配列を包含しない。これは、遺伝コードの縮重によるものであり、当業者であれば、表1のヌクレオチド配列と少なくとも80%の核酸配列同一性を有する様々なキメラ受容体バリアントのポリヌクレオチドによって、表2のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドがコードされることを容易に認識するであろう。
【0051】
「実質的に精製された」は、目的の分子以外の他の分子や他の細胞が全体の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以下しか占めていないことを指す。また、「実質的に精製された細胞」は、天然の状態において通常関連する他の細胞種から分離された細胞を指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団は、均質な細胞集団を指すこともある。
【0052】
正常細胞上の腫瘍抗原または他の分子の存在に関して述べる際に使用される「実質的に存在しない」という用語は、腫瘍抗原または他の分子を有する正常細胞のパーセンテージおよび/または正常細胞上の腫瘍抗原の密度を指す。いくつかの実施形態において、「実質的に存在しない」は、腫瘍細胞または他の疾患細胞に存在する細胞の数または抗原の量と比較して、腫瘍抗原または他の分子が正常細胞の50%未満に存在し、かつ/または正常細胞上の腫瘍抗原の密度が50%未満であることを意味する。
【0053】
本明細書に記載の「T細胞」または「Tリンパ球」は、どのような哺乳動物から得られたものであってもよく、霊長類から得られたものであることが好ましく、該哺乳動物としては、サル、イヌおよびヒトが挙げられる。いくつかの実施形態において、T細胞はレシピエント対象と同種異系(同種であるが異なるドナーに由来するもの)である。いくつかの実施形態においては、T細胞は自己由来である(ドナーとレシピエントは同じである)。いくつかの実施形態において、T細胞は同質遺伝子型である(ドナーとレシピエントは異なるが、一卵性双生児である)。
【0054】
「ベクター」または「構築物」は、様々な制御要素を有する細胞中に異種核酸を導入するために使用される核酸であり、この導入によって該異種核酸が発現される。ベクターとしては、プラスミド、ミニサークル(minicircle)、酵母、およびウイルスゲノムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、ベクターは、プラスミド、ミニサークル、酵母、またはウイルスゲノムである。
【0055】
本明細書に記載の「アポトーシス」は、多細胞生物において起こりうるプログラム細胞死(PCD)のプロセスを指す。生化学的事象によって、特徴的な細胞変化(形態変化)および特徴的な細胞死が引き起こされる。このような変化としては、ブレブ形成、細胞収縮、核断片化、クロマチン凝集、および染色体のDNA断片化が挙げられる。アポトーシスにおいては、細胞はストレスに反応して細胞内アポトーシスシグナル伝達を開始し、これによって細胞の自殺が引き起こされる。グルココルチコイドの核受容体への結合、熱、放射線、栄養不足、ウイルス感染、低酸素状態、および、たとえば細胞膜の損傷などによる細胞内カルシウム濃度の増加はいずれも細胞に損傷を与え、細胞内アポトーシスシグナルの放出を誘起しうる。ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼなどの細胞内成分のいくつかもアポトーシスの制御を補助しうる。
【0056】
酵素によって細胞死が実際に起こるには、アポトーシスシグナルの誘導によって制御タンパク質がアポトーシス経路を開始する必要がある。アポトーシスシグナルは、このようなプロセスにより細胞死を引き起こすが、細胞死が必要でなくなった場合は、このプロセスは停止する。アポトーシスにはいくつかのタンパク質が関与しているが、主に2種の制御方法が同定されており、ミトコンドリアの機能を標的とする方法、またはアダプタータンパク質を介してアポトーシス機構にアポトーシスシグナルを直接的に伝達する方法によってアポトーシスを制御することができる。いくつかの毒素研究において、アポトーシスを開始させるための別の外因性経路が同定されており、薬物の活性により細胞内カルシウム濃度を増大させることによって、カルシウム結合プロテアーゼであるカルパインを介してアポトーシスが起こる。
【0057】
アポトーシスは、多くの因子によって制御されうる。これらの因子として、IL-2を発現可能な遺伝子、IL-15を発現可能な遺伝子、ケモカイン受容体を発現可能な遺伝子、Bcl2を発現可能な遺伝子、CA-Aktを発現可能な遺伝子、dn-TGFβRIIIを発現可能な遺伝子、dn-SHP1/2を発現可能な遺伝子、および/またはPD-1 CD28キメラを発現可能な遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。IL-15は、T細胞およびナチュラルキラー細胞の活性化および増殖を制御する。齧歯類のリンパ球においては、IL-15は、アポトーシスの阻害因子であるBCL2L1/BCL-X(L)を誘導することによって、アポトーシスを抑制することが示された。同様に、セリアック病患者において、IL-15はBcl-2および/またはBCL-xLを誘導することによって、Tリンパ球のアポトーシスを抑制する。ヒトBCL2遺伝子によってコードされるBcl-2(B細胞リンパ腫2)は、制御タンパク質であるBcl-2ファミリーのメンバーとして最初に見出されたタンパク質であり、Bcl-2ファミリーは、細胞死(アポトーシス)の誘導(プロアポトーシス)または抑制(抗アポトーシス)によって、細胞死(アポトーシス)を制御する。特に、Bcl-2は重要な抗アポトーシスタンパク質として考えられており、がん遺伝子として分類されている。Aktとしても知られているプロテインキナーゼB(PKB)は、グルコース代謝、アポトーシス、細胞増殖、転写、細胞遊走などの様々な細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしているセリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼである。
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。いくつかの実施形態においては、アポトーシスの制御またはチェックポイントシグナル伝達の調節を担う前記ポリペプチドは、IL-2、IL-15、ケモカイン受容体、Bcl2、CA-Akt、dn-TGFβ RIII、dn-SHP1/2またはPD-1-CD28キメラを含む。
【0058】
本明細書に記載の「チェックポイントシグナル伝達」は、特定の移行点で細胞周期を遮断して、細胞周期イベントが正確な順序で起こることを各周期で監視している。チェックポイントシグナル伝達は、活性化することもできる。たとえば、チェックポイントシグナル伝達はDNAの損傷によって誘導され、その損傷が修復されるまで細胞周期は進行しない(ただし、チェックポイントシグナル伝達の機能はこれに限定されない)。「細胞周期チェックポイント」は、真核細胞において細胞を適切に分裂させる制御機構である。それぞれの細胞周期では細胞の状態が評価され、各チェックポイントにおいて細胞周期は停止されうるが、細胞の状態が良好である場合は細胞周期が次々に進行する。現在、3つのチェックポイントが知られており、制限チェックポイントまたは開始チェックポイントとしても知られているG1チェックポイント;G2/Mチェックポイント;およびスピンドルチェックポイントとしても知られている中期チェックポイントがある。ストレスを受けた後に細胞周期の移行を制限し、かつ/または細胞死を誘導する生化学的経路は、細胞周期チェックポイントとして知られている。これらのチェックポイントは、DNAの複製、修復、および分裂が正確性を維持する。チェックポイントシグナル伝達を制御することができるポリペプチドとしては、p53、p107、p130、および転写抑制因子Rbが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書に記載の「負のチェックポイント制御因子」は、T細胞応答が効果的に腫瘍を攻撃する能力を制限することができる因子を指し、「負のチェックポイントシグナル伝達」とも呼ばれる。いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、a)第1の核酸およびb)第2の核酸を含み、前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを抑制または制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0060】
別の例においては、シグナル伝達経路の上流において増殖抑制刺激を媒介する細胞周期阻害因子であるCip/Kipファミリーに属するサイクリン-CDK阻害因子p21Cip1、p27Kip1およびp57Kip2が、細胞周期の制御以外の機能も備えた多機能タンパク質として見出された。Cip/Kipタンパク質は、細胞周期の制御に加えて、アポトーシス、転写調節、細胞の運命決定、細胞遊走、および細胞骨格動態において重要な役割を果たすことができる。複雑なリン酸化ネットワークがCip/Kipタンパク質の細胞内局在、タンパク質-タンパク相互作用および安定性を様々に変化させることによって、Cip/Kipタンパク質の機能が調節されている。このような機能は、胚発生から腫瘍抑制にまで及ぶプロセスにおいて、正常細胞の維持および組織のホメオスタシスの維持に不可欠である。
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むこと
を特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドはチェックポイントシグナル伝達を調節する。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0061】
本明細書に記載の「T細胞前駆細胞」は、胸腺へと遊走して、T細胞前駆細胞となり得るリンパ球前駆細胞を指し、T細胞前駆細胞はT細胞受容体を発現しない。すべてのT細胞は、骨髄中の造血幹細胞に由来する。造血幹細胞由来の造血前駆細胞(リンパ球系前駆細胞)は胸腺に移行し、細胞分裂により増殖し、未熟な胸腺細胞の大集団を作り出す。最も初期の胸腺細胞はCD4もCD8も発現せず、したがって、ダブルネガティブ(CD4-CD8-)細胞に分類される。これらは成長により発達し、ダブルポジティブ胸腺細胞(CD4+CD8+)となり、最終的にシングルポジティブ(CD4+CD8-またはCD4-CD8+)胸腺細胞に成熟して、その後、胸腺から末梢組織に放出される。
【0062】
胸腺細胞の約98%は、胸腺での発達過程においてポジティブ選択およびネガティブ選択により選抜されずに死滅し、残りの2%が生存して胸腺を去り、成熟した免疫担当T細胞になる。
【0063】
T細胞前駆細胞は、ダブルネガティブ(DN)段階においては主に機能的β鎖を産生し、ダブルポジティブ(DP)段階では主に機能的α鎖を産生し、その結果、最終的に機能性αβ T細胞受容体を産生する。4つのDN段階(DN1、DN2、DN3およびDN4)を経て胸腺細胞が発達するに従って、T細胞はインバリアントα鎖を発現するが、β鎖の遺伝子は再編成される。再編成されたβ鎖がインバリアントα鎖と対を為すことに成功した場合、β鎖の再編成を止めるシグナルが産生され(さらに、もう一方のアレルが抑制され)、細胞の増殖が起こる。これらのシグナルが産生されるには、この前駆TCRが細胞表面上に発現されていなければならないが、これらのシグナル自体は前駆TCRに結合するリガンドに依存する。このように発達した胸腺細胞はその後、CD4およびCD8の両方を発現し、α鎖が選択されるダブルポジティブ(DP)段階を経る。再編成β鎖がシグナル伝達を全くもたらさない場合(たとえば、インバリアントα鎖との対合ができなかった結果)、この細胞は無視され(シグナル伝達を受けることなく)、死滅すると考えられている。
【0064】
本明細書に記載の「造血幹細胞」または「HSC」は、骨髄系細胞に分化しうる前駆細胞であり、該骨髄系細胞としては、たとえば、マクロファージ、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞およびリンパ系細胞(たとえば、T細胞、B細胞、NK細胞など)が挙げられる。HSCは3種の幹細胞が存在する異種細胞集団であり、これらの幹細胞は血液中のリンパ系子孫細胞と骨髄系子孫細胞との比(L/M)により識別される。
【0065】
本開示は、導入遺伝子の発現のための誘導可能な因子、および導入遺伝子の発現のための構成的因子を有するシステムを提供する。このシステムは、形質導入された細胞に機能的特性を付与するための1つ以上の導入遺伝子の発現が制御されるように調整することができる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、誘導可能なプロモーターの制御下の導入遺伝子は、キメラ抗原受容体(CAR)である。前記誘導可能なプロモーターは、細胞においてCARの発現を停止させること、および時間が経過してから(たとえば再発した場合などに)該細胞を再活性化することを可能とする能力を提供する。また、CAR T細胞において発現のオンとオフとを周期的に切り替えることによって、T細胞受容体の持続的な刺激による疲弊および/またはアナジーを最小限に抑えることができる。
【0067】
さらに、ベクターを設計することによって、形質導入細胞の1以上の機能持性を増強することができるさらなる導入遺伝子を導入することができ、これによって、形質導入細胞の抗腫瘍作用、生存および増殖などを増強することができる。いくつかの実施形態においては、この導入遺伝子は誘導可能なプロモーターによって制御される。このような導入遺伝子としては、生存および増殖を促進する遺伝子、アポトーシスを阻害する遺伝子、ならびにチェックポイントシグナル伝達を制御する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。このような遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子、IL-15をコードする遺伝子、ケモカイン受容体をコードする遺伝子、Bcl2をコードする遺伝子、CA-Aktをコードする遺伝子、dn-TGFβ RIIIをコードする遺伝子、dn-SHP1/2をコードする遺伝子、および/またはPD-1-CD28キメラをコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態においては、前記導入遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子、IL-15をコードする遺伝子、ケモカイン受容体をコードする遺伝子、Bcl2をコードする遺伝子、CA-Aktをコードする遺伝子、dn-TGFβ RIIIをコードする遺伝子、dn-SHP1/2をコードする遺伝子、および/またはPD-1-CD28キメラをコードする遺伝子である。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記遺伝子は、負のチェックポイント制御因子を抑制するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0068】
本開示は、第1の核酸および第2の核酸を含むシステム、ならびにこれらの核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。第1の核酸および第2の核酸はそれぞれいくつかのモジュール部分を含み、これらのモジュール部分は切断して別のモジュール部分と置換することができ、このようにして特定の標的細胞に対して前記システムをカスタマイズすることができる。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、必要に応じて遺伝子(たとえばキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド)の発現のオンとオフとを切り替えることによって制御するための誘導可能なプロモーターを含む。別の実施形態において、前記第2の核酸は、転写活性化因子を発現する構成的プロモーターを含む。いくつかの実施形態においては、前記遺伝子はキメラ抗原受容体をコードする。
【0069】
誘導システム
本発明の開示は、細胞における導入遺伝子の発現制御に有用なシステムを提供する。このような導入遺伝子としては、T細胞受容体、親和性成熟を経たT細胞受容体、キメラ抗原受容体、ケモカイン受容体、サイトカイン、アポトーシスを抑制する遺伝子、および/またはチェックポイントシグナル伝達を調節する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態において、前記システムは、前記核酸の構成要素を容易に置換できる様々なモジュール部分を含む。前記システムの実施形態のいくつかにおいて、前記システムは、細胞における導入遺伝子の制御発現を提供する。いくつかの実施形態において、前記導入遺伝子は、T細胞受容体、親和性成熟を経たT細胞受容体、キメラ抗原受容体、ケモカイン受容体、サイトカイン、アポトーシスを制御する遺伝子、および/またはチェックポイントシグナル伝達を調節する遺伝子をコードする。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記遺伝子は、負のチェックポイント制御因子を抑制するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0070】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムは、第1の核酸および第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写調節因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。
【0071】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、腫瘍持異抗原を標的分子とするリガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、および細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されているように、発現ベクターは第1の核酸および/または第2の核酸を含む。前記キメラ受容体のこれらの核酸全体によってコードされるポリペプチド、およびこれらの核酸の一部によってコードされるポリペプチドも本発明に包含される。
【0072】
別の実施形態においては、第1の核酸は薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、該第1核酸は、細胞の生存および増殖を促進する遺伝子、アポトーシスを制御する遺伝子、ならびに/またはチェックポイントシグナル伝達を調節する遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。このような遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子、IL-15をコードする遺伝子、ケモカイン受容体をコードする遺伝子、Bcl2をコードする遺伝子、CA-Aktをコードする遺伝子、dn-TGFβ RIIIをコードする遺伝子、dn-SHP1/2をコードする遺伝子、および/またはPD-1-CD28キメラをコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記遺伝子は、負のチェックポイント制御因子を抑制するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0073】
誘導可能なプロモーター
本発明のシステムは、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含む第1の核酸を含む。誘導可能なプロモーターを利用することによって、導入遺伝子の発現のオンとオフとを切り替えることができ、その結果、毒性による副作用を回避することができ、かつ/または寛解期には細胞を休止させることができる。誘導可能なプロモーターシステムはいくつか知られているが、このようなシステムは限定的にしか臨床適用できず、その理由として、毒性のオフターゲット効果、望ましくない生体内分布および薬物動態プロファイル、狭い作動域、ならびに/またはFDA認可の市販医薬品であることによる入手制限が挙げられる。さらに、このようなシステムの多くは、異種生物由来の成分から構築されたキメラ転写制御因子使用するため、このシステムをヒトの治療に使用すると、免疫性の合併症が引き起こされる。
【0074】
いくつかの実施形態においては、第1のプロモーターを薬物によって誘導することができる。この薬物は、安全性が証明されていること、薬物動態プロファイルが好適であること、組織分布が良好であること、細胞外間隙と細胞質との間の分配係数が低いこと、免疫原性が低いこと、毒性が低いこと、および/またはリンパ球における発現性が高いことを目安に選択される。特定の一実施形態においては、FDAに認可されており、リンパ球において導入遺伝子を発現することができ、望ましくない他の遺伝子の発現を活性化させず、かつ、異種成分を含有しないプロモーターを誘導することができる薬物が選択される。いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターは、薬物と相互作用する転写活性化因子によって活性化される。薬物の存在下において、転写活性化因子が活性化されるか、あるいは転写活性化因子が誘導可能なプロモーターに結合しこれを活性化することができる。
【0075】
別の特定の薬物としては、転写活性化因子である、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメインに結合する薬物が挙げられる。いくつかの実施形態においては、前記薬物としては、タモキシフェン、ならびにその代謝産物、類似体、および薬学的に許容される塩および/または水和物または溶媒和物が挙げられる。
【0076】
タモキシフェン(CAS RN:10540-29-1)は、2-(4-((1Z)-1,2-ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシ)-N,N-ジメチル-エタンアミン、または(Z)-2-(パラ-(1,2-ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシ)-N,N-ジメチルアミン(IUPAC)としても知られており、分子式はC2629NOで示され、分子量(M.W.)は371.52である。タモキシフェンは、組織特異的活性を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーターである。タモキシフェンは、乳房組織において抗エストロゲン剤(阻害剤)として作用するが、子宮内膜においては、コレステロールの代謝、骨密度、および細胞増殖をうながすエストロゲン(刺激剤)として作用する。タモキシフェンは、薬学的に許容される塩として経口投与されることが多い。たとえば、タモキシフェンクエン酸塩(RN 54965-24-1, M.W.563.643)は、転移性乳がんの治療への適応が記載されており、乳房切除、腋窩切除および乳房への放射線照射を行った女性乳がんの治療においてアジュバントとして使用される。また、タモキシフェンクエン酸塩は、乳がんを発症する危険性の高い女性における乳がん罹患率の低減への適応も記載されている。
【0077】
ラット、マウス、およびヒトの乳がん患者におけるタモキシフェンの代謝産物は、Robinson et al., Metabolites, pharmacodynamics, and pharmacokinetics of tamoxifen in rats and mice compared to the breast cancer patient. Drug Metab Dispos January 1991 19:36-43(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されており、主なものとして、N-デスメチルタモキシフェン(RN 31750-48-8, M.W.357.494)および4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)(RN 68392-35-8, M.W.387.52、アフィモキシフェン)が挙げられる。チトクロムP-450による別の代謝産物は、Crewe et al., 2002に開示されており、シス-4-ヒドロキシタモキシフェン(RN 174592, M.W.387.52;アフィモキシフェン、E異性体)、および4’-ヒドロキシタモキシフェン((Z)-4-(1-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-1-フェニルブタ-1-エン-2-イル)フェノール)が挙げられる。Crewe et al., 2002, Metabolism of Tamoxifen by recombinant human cytochrome P-450 enzymes: Formation of the 4-hydroxy, 4’-hydroxy and N-desmethyl metabolites and isomerization of trans-4-hydroxytamoxifen, Drug Metab Dispos, 30(8): 869-874のFIG. 1(参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0078】
タモキシフェンとの類似の構造を有する化合物としては、シス-タモキシフェン(RN 13002-65-8, M.W. 371.521)、4-メチルタモキシフェン(RN 73717-95-5, M.W. 385.548)、N-デスメチルタモキシフェン(RN 31750-48-8, M.W. 357.494)、(Z)-デスエチルメチルタモキシフェン(RN 15917-50-7, M.W. 357.494)、(E)-デスエチルメチルタモキシフェン(RN 31750-45-5, M.W. 357.494)、トランス-4-ヒドロキシタモキシフェン(RN 68047-06-3, M.W. 387.52)、アフィモキシフェン(RN 68392-35-8, M.W. 387.52、4-ヒドロキシタモキシフェン)、アフィモキシフェン、E異性体(RN 174592-47-3, M.W. 387.52)、4-クロロタモキシフェン(RN 77588-46-6, M.W. 405.966)、4-フルオロタモキシフェン(RN 73617-96-6, M.W. 389.511)、トレミフェン(RN 89778-26-7, M.W. 405.966)、デスエチルタモキシフェン(RN 19957-51-8, M.W. 343.47)、(E)-デスエチルタモキシフェン(RN 97151-10-5, M.W. 343.47)、(Z)-デスエチルタモキシフェン(RN 97151-11-6, M.W. 343.47)、ミプロキシフェン(RN 129612-87-9, M.W. 429.6)、2-(p-(β-エチル-α-フェニルスチリル)フェノキシ)トリエチルアミン(RN 749-86-0, M.W. 399.575)、ドロロキシフェン(RN 82413-20-5, M.W. 387.52)、4-ヨード-タモキシフェン(RN 116057-68-2, M.W. 497.413)、ジヒドロタモキシフェン(RN 109640-20-2, M.W. 373.537)、(E)-N,N-ジメチル-2-(4-(1-(2-メチルフェニル)-2-フェニル-1-ブテニル)フェノキシ)エタンアミン(RN 97150-96-4, M.W. 385.548)、および4-ヒドロキシトレミフェン(RN 110503-62-3, M.W. 421.965);ならびに/またはそれらの薬学的に許容される塩および/もしくは水和物もしくは溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
たとえば、タモキシフェンのクエン酸塩、またはタモキシフェンと類似の構造を有する化合物のクエン酸塩としては、タモキシフェンクエン酸塩(RN 54965-24-1, M.W. 563.64)、2-(p-(1,2-ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシ)-N,N-ジメチルエチルアミンクエン酸塩(RN 7244-97-5, 563.64)、(E)-タモキシフェンクエン酸塩(RN 76487-65-5, M.W. 563.64)、トレミフェンクエン酸塩(RN 89778-27-8, M.W. 598.088)、ドロロキシフェンクエン酸塩(RN 97752-20-0, M.W. 579.64)、2-(p-(1,2-ビス(p-メトキシフェニル)-1-ブテニル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸塩(RN 42920-39-8, M.W. 651.748)、2-(4-(1,2-ジフェニルエテニル)フェノキシ)-N,N-ジエチル-エタンアミン2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸塩(RN 40297-42-5, M.W. 563.643)、2-(p-(α-フェニルスチリル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸塩(RN 102433-95-4, M.W. 563.64)、2-(p-(2-(p-メトキシフェニル)-1-フェニル-1-ブテニル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸塩(1:1)(RN 42824-34-0, M.W. 637.72)、2-(p-(1-(p-メトキシフェニル)-2-フェニルプロペニル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸塩(RN 13554-24-0, M.W. 607.696)、2-(p-(α-(p-メトキシフェニル)スチリル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸一水和物(RN 13542-71-7, M.W. 593.669)、2-(p-(p-メトキシ-α-フェニルフェネチル)フェノキシ)トリエチルアミンクエン酸塩(RN 16421-72-0, M.W. 595.685)、α-(p-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-β-エチル-p-メトキシ-α-フェニルフェネチルアルコールクエン酸塩(1:1)(RN 35263-93-5, M.W. 639.737)、1-(p-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(p-メトキシフェニル)-1-フェニルエタノールクエン酸塩(M.W. 611.68)、α-p-(2-(ジエチルアミノ)エトキシ)フェニル)-β-エチル-α-(p-ヒドロキシフェニル)-p-メトキシフェネチルアルコールクエン酸塩(RN 35263-96-8, M.W. 655.737)、および/または2-(p-(p-メトキシ-α-メチルフェネチル)フェノキシ)-トリエチルアミンクエン酸塩(RN 15624-34-7, M.W. 533.614)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態において、発現を誘導するのに有効な前記薬物の量は、発現が誘導されていない導入遺伝子の発現量および/または基底レベルの導入遺伝子の発現量を上回る量の導入遺伝子の発現を達成可能な量である。いくつかの実施形態において、発現を誘導するのに有効な薬物の量は、前記薬物の公知の投与量および薬物動態プロファイルを用いることによって容易に決定することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記誘導可能なプロモーターは、基底レベルでの活性が低い。レンチウイルスベクターを用いる場合、非誘導細胞における基底レベルでの活性は、細胞において前記遺伝子の発現が誘導された場合の活性レベルの20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%またはこれ以下である。基底レベルでの活性は、フローサイトメトリーを用いて、誘導因子(たとえば薬物)の非存在下において前記導入遺伝子(たとえばマーカー遺伝子)の発現量を測定することによって決定することができる。
【0082】
いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターは、発現が誘導されていない場合の活性または基底レベルでの活性よりも高レベルの誘導活性を達成することができる。いくつかの実施形態においては、発現が誘導された場合の活性レベルは、発現が誘導されていない場合の活性レベルの2倍、4倍、6倍、8倍、10倍またはそれ以上である。いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターの制御下で発現された導入遺伝子は、転写活性化因子の非存在下において、10日未満、8日未満、6日未満、4日未満、2日未満または1日未満にオフの状態となるが、0日未満ではオフの状態とはならない。
【0083】
いくつかの実施形態においては、基底レベルでの活性が低くなり、高レベルの発現が誘導でき、かつ/または短期間でオンとオフとを切り替えることができるように、誘導可能なプロモーターを設計かつ/または改変してもよい。いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターは、7xHBD/mE1bプロモーターである。典型的なプロモーターの配列を表12(配列番号41)に示す。たとえば、7xHBD/mE1bプロモーターにおいて、転写活性化因子の結合を増強する変異を作製してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態においては、前記システムは合成転写活性化因子を使用し、該合成転写活性化因子は、前記薬物(たとえばタモキシフェン)の存在下において、導入遺伝子の上流の合成プロモーターに結合し、発現を誘導する。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子はTamR-tf(HEA3)である。タモキシフェンで制御されるこの転写因子(「TamR-tf」あるいは「HEA3」とも称される)は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメイン(たとえば配列番号40の1~281番目のアミノ酸)が、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインにインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κBのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。典型的なアミノ酸配列は表10に記載されており、配列番号40で示されている。エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)の前記タモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインは、TamR-tfの282~595番目のアミノ酸配列であり、521番目のアミノ酸に変異を有する。NF-κBのp65活性化ドメイン(p65またはTAD)は、596~862番目のアミノ酸からなる配列である。
【0085】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、サイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントであり、好ましくはその結合フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記システムは合成転写活性化因子を使用し、該合成転写活性化因子は、薬物の存在下において、導入遺伝子の上流の合成プロモーターに結合し、発現を誘導する。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子はTamR-tf(HEA3)である。いくつかの実施形態においては、前記薬物はタモキシフェンである。
【0086】
転写因子の特性を向上させるために、前記転写活性化因子にさらに変更を加えてもよく、たとえば、前記エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよく、かつ/または前記p65転写活性化ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよいが、前記転写活性化因子への変更はこれらに限定されない。前記エストロゲン受容体の結合ドメインのアミノ酸に変更を加えることによって、前記薬物の転写活性化因子への結合の特異性をさらに高めることができる。前記エストロゲン受容体の結合ドメイン(ER-LBD)のアミノ酸配列に変更を加えた転写活性化因子の一例を表11に示す(配列番号43)。変異は、配列番号40の400番目のアミノ酸、543番目のアミノ酸および544番目のアミノ酸に導入される。前記配列に変更を加えた転写活性化因子は、タモキシフェンまたは4-OHTに対する親和性が増大している。前記p65転写活性化ドメイン内のアミノ酸に変更を加えると、形質導入された細胞の活性化の非存在下において、導入遺伝子の発現を増大させることができる。
【0087】
タモキシフェンの非存在下では、細胞質内の熱ショックタンパク質90(HSP90)がタモキシフェン結合活性部位に結合することによって、TamR-tfが核内から排除されるため、導入遺伝子の発現は「オフ」の状態となる。細胞質内にナノモル濃度のタモキシフェンが存在すると、ER-LBDへの結合に対してHSP90と活発に競合することによってこれを阻害し、TamR-tfの核内への転座が生じる。核内への転座が起こると、TamR-tfは、自体の特異的結合部位である合成プロモーターと結合することが容易となる。タモキシフェンの存在下では、TamR-tfが7xHBD/EF1αpプロモーターに結合することによって導入遺伝子の発現が「オン」の状態へと誘導される。いくつかの実施形態においては、この転写制御因子は、導入遺伝子の発現の制御を様々なレベルで行えるように改変されていてもよい。TamR-tf(HEA-3)のリガンド結合ドメイン内のアミノ酸を置換することによって、タモキシフェンおよびその代謝産物に対する選択的応答が可能となる。4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)は、TamR-tf(HEA-3)活性に関して薬理学的活性が最も高い代謝物であり、内在性エストロゲンと相互作用を起こさない。
【0088】
いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターは、レンチウイルス構築物および/またはリンパ球において機能する。
【0089】
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体の発現誘導システムは、第1の核酸を含み、前記第1の核酸は、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸は、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。別の実施形態においては、キメラ抗原受容体をコードする別のポリヌクレオチドは、構成的プロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態においては、前記薬物はタモキシフェンである。
【0090】
リガンド結合ドメイン
いくつかの実施形態において、前記キメラ受容体の核酸配列は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、前記リガンド結合ドメインは、腫瘍抗原または特定のウイルス抗原に特異的に結合し、前記リガンド結合ドメインはヒト化されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記リガンド結合ドメインとしては、受容体またはその一部、小さいペプチド、ペプチドミメティック、基質、およびサイトカイン等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記リガンド結合ドメインは、抗体またはそのフラグメントであり、その結合フラグメントであることが好ましく、これらはいずれもヒト化されていてもよい。抗体または抗体フラグメントをコードする核酸配列は容易に決定することができる。特定の実施形態においては、前記ポリヌクレオチドは、CD19と特異的に結合する一本鎖Fvをコードする。別の特定の実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、HER2、CE7、hB7H3、またはEGFRと特異的に結合する一本鎖Fvをコードし、前記ポリヌクレオチドはそのヒト化された該一本鎖Fvをコードしてもよい。これらの抗体およびその結合ドメインの配列は、当業者に知られており、当業者によって容易に決定される。
【0091】
腫瘍抗原は、免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明のリガンド結合ドメインは、治療されるがんの種類に応じて選択され、腫瘍抗原またはその他の腫瘍細胞表面分子を標的とすることができる。対象由来の腫瘍サンプルは、特定のバイオマーカーまたは細胞表面マーカーの存在について特性を評価することができる。たとえば、対象由来の乳がん細胞は、Her2Neu、エストロゲン受容体、および/またはプロゲステロン受容体のそれぞれについて陽性であっても陰性であってもよい。個々の対象の腫瘍細胞上に存在する腫瘍抗原または細胞表面分子が選択される。腫瘍抗原および細胞表面分子は、当技術分野において周知であり、たとえば、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、CE7、hB7H3、ROR1、メソテリン、c-Met、GD-2、および/またはMAGE A3 TCRが挙げられる。いくつかの実施形態において、標的分子は、腫瘍細胞上に存在する細胞表面分子であり、正常組織上に実質的に存在しないか、またはその発現が重要視されない正常組織に制限されている。
【0092】
一実施形態において、腫瘍上の標的分子は、悪性腫瘍と関連する1つ以上のエピトープを含む。悪性腫瘍は、T細胞受容体またはキメラ受容体により媒介される認識のための標的抗原として機能しうるタンパク質を多数発現している。その他の標的分子としては、細胞の形質転換に関連する分子の一群に属するものが挙げられ、たとえばがん遺伝子HER-2/Neu/ErbB2が挙げられる。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原は、同じ組織型の対照細胞と比較して、腫瘍細胞上に選択的に発現されるか、あるいは過剰発現される。別の実施形態において、腫瘍抗原は細胞表面ポリペプチドである。
【0093】
キメラ受容体の標的となりうる腫瘍細胞表面分子を同定した後、この標的分子のエピトープを選択し、その特性を評価する。腫瘍細胞表面分子と特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体を得る方法、ファージディスプレイ法、ヒト抗体もしくはヒト化抗体を製造する方法、またはヒト抗体を得るために遺伝子改変されたトランスジェニック動物もしくはトランスジェニック植物を用いる方法を用いて製造することができる。部分的に合成した抗体または全合成抗体のファージディスプレイライブラリが入手可能であり、このライブラリから、標的分子に結合することができる抗体またはそのフラグメントをスクリーニングすることができる。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリも入手可能である。いくつかの実施形態において、抗体は、腫瘍細胞表面分子に特異的に結合し、ウシ血清アルブミンやその他の無関係な抗原などの非特異的成分とは交差反応しない。前記抗体をコードするアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を同定した後、これらの配列を単離し、かつ/または配列決定することができる。
【0094】
抗体または抗原結合フラグメントとしては抗体の全体またはその一部が挙げられ、該抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、および線状抗体が挙げられる。「抗体フラグメント」は、完全な抗体の一部を含み、好ましくは完全な抗体の抗原結合領域または可変領域であり、これらは容易に調製することができる。抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;二機能性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくはFvフラグメント;二機能性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子;または抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体である。これらの抗体または抗体フラグメントはいずれもヒト化することができ、本明細書に記載の組成物および方法とともに用いることができる。
【0095】
いくつかの実施形態においては、特定の単一の腫瘍細胞表面分子に結合する様々な抗体を多数単離されることがあり、これらの特性を評価することができる。いくつかの実施形態においては、前記抗体は、標的分子のエピトープに対する特異性に基づいて特徴が表される。また、場合によっては、エピトープに対する抗体の親和性に基づいて、同じエピトープに結合する抗体が選択されうる。いくつかの実施形態において、前記抗体は少なくとも1mMの親和性を有し、50nM未満の親和性を有することが好ましい。いくつかの実施形態において、前記抗体が有する親和性は、50nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、1μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、もしくは1mMであるか、またはこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲にある親和性を有する。いくつかの実施形態においては、別の抗体よりもエピトープに対する親和性が高い抗体が選択される。たとえば、同じエピトープに結合する対照の抗体と比較して、親和性が少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、もしくは少なくとも50倍である抗体、または対照の抗体と比較して、親和性がこれらの値のいずれか2つによって定義される範囲にある抗体が選択される。
【0096】
いくつかの実施形態においては、標的分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CE7、hB7H3、EGFR、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン(mesothelin)、Her2、c-Met、PSMA、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、これらの標的分子に特異的な前記抗体またはその結合フラグメントは、ヒト化されている。
【0097】
特定の実施形態において、前記標的抗原はCD19である。CD19に特異的な抗体は当業者に多数知られており、その配列、エピトープに対する結合性および親和性について容易に特性を評価することができる。特定の一実施形態において、前記キメラ受容体構築物は、FMC63抗体由来のscFV配列を含む。別の実施形態において、前記scFVはヒトscFvまたはヒト化scFvであり、これらのscFvは、RASQDISKYLNで表されるCDRL1配列(配列番号88)、SRLHSGVで表されるCDRL2配列(配列番号89)、およびGNTLPYTFGで表されるCDRL3配列(配列番号90)を含む軽鎖可変領域を含む。別の実施形態において、前記scFVはヒトscFvまたはヒト化scFvであり、これらのscFvは、DYGVSで表されるCDRH1配列(配列番号91)、VIWGSETTYYNSALKSで表されるCDRH2配列(配列番号92)、およびYAMDYWGで表されるCDRH3配列(配列番号93)を含む重鎖可変領域を含む。本開示はまた、FMC63由来のscFvの可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつCD19に対する親和性がFMC63由来のscFvの可変領域と少なくとも同等である可変領域も包含する。
【0098】
いくつかの実施形態において、CDR領域は、Kabatのナンバリングに基づいて抗体領域内に見出され、軽鎖は、24~34番目のアミノ酸からなるCDRL1;50~56番目のアミノ酸からなるCDRL2;および89~97番目のアミノ酸からなるCDRL3を含み、重鎖は、31~35番目のアミノ酸からなるCDRH1;50~65番目のアミノ酸からなるCDRH2;95~102番目のアミノ酸からなるCDRH3を含む。抗体中のCDR領域は容易に決定することができる。
【0099】
特定の実施形態において、前記標的抗原はHer2である。Her2に特異的な抗体は当業者に多数知られており、その配列、エピトープに対する結合性および親和性について容易に特性を評価することができる。特定の一実施形態において、前記キメラ受容体構築物は、抗体であるハーセプチン由来のscFV配列を含む。別の実施形態において、前記scFVは、抗体であるハーセプチンのCDRL1配列、CDRL2配列、およびCDRL3配列を含む軽鎖可変領域を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。別の実施形態において、前記scFVは、ハーセプチンのCDRH1配列、CDRH2配列、およびCDRH3配列を含む重鎖可変領域を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。これらのCDR配列は、ハーセプチンのアミノ酸配列から容易に決定することができる。本開示はまた、ハーセプチン由来のscFvの可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつHer2に対する親和性がハーセプチン由来のscFvの可変領域と少なくとも同等である可変領域も包含する。
【0100】
本明細書に記載の「ヒト化抗体」は、非ヒト種由来の抗体であって、ヒトにおいて天然に産生されるその抗体のバリアントとの類似性が高まるようにタンパク質配列が改変された抗体を指す。ヒトに投与する目的で開発されたモノクローナル抗体(たとえば、抗がん薬として開発された抗体)を「ヒト化」してもよい。非ヒト免疫系(たとえばマウスの免疫系)を利用して特定の抗体を開発する方法では、抗体のヒト化を行うことが望ましい場合がある。このような方法で製造された抗体のタンパク質配列は、ヒトにおいて天然に産生される同種抗体のタンパク質配列とは部分的に異なるため、ヒト患者に投与した場合に免疫原性を発揮しうる。ヒト化抗体は、ヒト抗体に対するタンパク質配列の類似性がキメラ抗体よりも高められており、かつキメラ抗体が含むことのできる非ヒトタンパク質よりも長い非ヒトタンパク質を含むことができるという点でキメラ抗体とは異なる。ヒト化抗体の誘導体は、ヒト化抗体に由来する抗体または配列のセグメントであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは、ヒト化抗体またはその一部を含む。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの実施形態においては、前記scFvは、ヒト化scFvである。
【0101】
いくつかの実施形態において、異種生物由来のモノクローナル抗体、たとえば齧歯類に由来するモノクローナル抗体の免疫原性を低減するために、抗体をヒト化することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態においては、抗体またはそのフラグメントとヒト免疫系との相互作用を増強するために、抗体をヒト化することが望ましい場合がある。ハイブリドーマ技術の発達に伴って開発された異種抗体の多くはヒトに対して免疫原性が高いため、臨床適用が制限される場合があり、これは特に、繰り返し投与を行う必要がある場合に顕著である。さらに、このような異種抗体は体内循環から速やかに排除される可能性があり、全身性の炎症作用を引き起こす恐れもある。したがって、いくつかの実施形態においては、これらの状況を回避するためにヒト化を行うことが望ましい。抗体をヒト化する技術は当業者に知られている。
【0102】
いくつかの実施形態においては、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドは、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、リガンド結合ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、該コード配列の5’末端および/または3’末端に1つ以上の制限酵素部位をさらに有していてもよく、これによって、リガンド結合ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドを切断することが容易となり、該ポリヌクレオチドとは別の抗原をコードするか、あるいは別の結合特性を有するリガンド結合ドメインをコードする別のポリヌクレオチドと置換することが容易となる。たとえば、制限部位NheIを前記リーダー配列の上流にコードし、かつヒンジ領域内の3’末端にRsrIIを配置することよって、キメラ受容体ベクターに所望のscFvをサブクローニングすることが可能となる。いくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞における発現を目的としてコドン最適化されている。
【0103】
いくつかの実施形態において、リガンド結合ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、該シグナルペプチドは、顆粒球コロニー刺激因子のシグナルペプチドである。CD8αなどの他のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用することもできる。いくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドはCD8αをコードする。
【0104】
いくつかの実施形態において、リガンド結合ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。哺乳類細胞において前記キメラ抗原受容体の発現を可能とするプロモーターが選択される。特定の一実施形態においては、前記プロモーターは、誘導可能なプロモーターである。
【0105】
リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドの特定の態様を表1に示すが、これは、CD19(たとえばFMC63)に特異的に結合する抗体由来のscFvである。アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号94)を含むフレキシブルリンカーをコードするポリヌクレオチドを介して、scFv中のVH鎖とVL鎖とが隔てられている。前記リンカーを含む前記scFvのアミノ酸配列を表2(配列番号11)に示す。SJ25C1およびHD37などの他のCD19標的抗体も知られている(SJ25C1: Bejcek et al. Cancer Res 2005, PMID 7538901; HD37: Pezutto et al. JI 1987, PMID 2437199)。
【0106】
スペーサー
いくつかの実施形態において、前記キメラ受容体の核酸配列は、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドを含む。スペーサー領域は、典型的には、キメラ受容体のリガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、前記リガンド結合ドメインに柔軟性を持たせ、かつリンパ球において高レベル発現を可能とする。229アミノ酸長のスペーサードメインを有するCD19特異的キメラ受容体の抗腫瘍活性は、改変IgG4ヒンジのみからなる短いスペーサー領域を有するCD19特異的キメラ受容体の抗腫瘍活性よりも低かった。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0107】
いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、少なくとも10~229アミノ酸長、10~200アミノ酸長、10~175アミノ酸長、10~150アミノ酸長、10~125アミノ酸長、10~100アミノ酸長、10~75アミノ酸長、10~50アミノ酸長、10~40アミノ酸長、10~30アミノ酸長、10~20アミノ酸長、もしくは10~15アミノ酸長であるか、またはこれらの長さのいずれか2つによって定義される範囲にある長さを有する。いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、12アミノ酸長以下、119アミノ酸長以下、または229アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長または2アミノ酸長よりも長い。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記スペーサー領域は、免疫グロブリン様分子のヒンジ領域に由来する。いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4に由来するヒンジ領域の全体またはその一部を含み、1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。前記ヒンジ領域の典型的な配列を表8に示す。いくつかの実施形態においては、前記ヒンジ領域の一部は、重鎖可変領域とコアとの間に存在するアッパーヒンジ領域のアミノ酸配列、およびポリプロリン領域を含むコアヒンジ領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0109】
いくつかの実施形態において、二量体化などの望ましくない構造間の相互作用を回避するため、ヒンジ領域の配列は1つ以上のアミノ酸が改変されていてもよい。特定の一実施形態において、前記スペーサー領域は、表2または表8(配列番号21)に示すような、IgG4に由来する改変されたヒトヒンジ領域の一部を含む。改変されたIgG4ヒンジ領域の一部をコードするポリヌクレオチドの典型的な配列を表1に示す(配列番号4)。いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、表2または表8に示すヒンジ領域のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性、またはこれらの配列同一性(%)のいずれか2つの間にある任意の配列同一性(%)を有していてもよい。特定の一実施形態において、IgG4に由来するヒトヒンジ領域の一部は、コアヒンジ領域のアミノ酸配列においてCPSPがCPPCに置換されている。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記ヒンジ領域の全体またはその一部は、免疫グロブリンの定常領域の1つ以上と組み合わされる。たとえば、ヒンジ領域の一部は、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらバリアントの全体またはその一部と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態において、前記スペーサー領域は、CD8αに由来する47~48アミノ酸長のヒンジ領域配列およびCD28分子の細胞外部分からなるスペーサー領域を含んでいない。
【0111】
いくつかの実施形態において、短いスペーサー領域は、12個以下のアミノ酸を有し、かつIgG4のヒンジ領域配列またはそのバリアントの全体もしくはその一部を含む。中程度の長さのスペーサー領域は、119個以下のアミノ酸を有し、かつIgG4のヒンジ領域配列またはそのバリアントの全体またはその一部と、CH3領域またはそのバリアントの全体またはその一部とを含む。長いスペーサーは、229個以下のアミノ酸を有し、かつIgG4のヒンジ領域配列またはそのバリアントの全体またはその一部と、CH2領域またはそのバリアントの全体またはその一部と、CH3領域またはそのバリアントの全体またはその一部とを含む。いくつかの実施形態において、短いスペーサー領域は、1アミノ酸長、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、もしくは12アミノ酸長、またはこれらのアミノ酸長のいずれか2つによって定義される範囲にあるサイズを有する。いくつかの実施形態において、中程度の長さのスペーサー領域は、13アミノ酸長、20アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、60アミノ酸長、70アミノ酸長、80アミノ酸長、90アミノ酸長、100アミノ酸長、110アミノ酸長、もしくは119アミノ酸長、またはこれらのアミノ酸長のいずれか2つによって定義される範囲にあるサイズを有する。いくつかの実施形態において、スペーサー領域は、120アミノ酸長、130アミノ酸長、140アミノ酸長、150アミノ酸長、160アミノ酸長、170アミノ酸長、180アミノ酸長、190アミノ酸長、200アミノ酸長、210アミノ酸長、もしくは219アミノ酸長、またはこれらのアミノ酸長のいずれか2つによって定義される範囲にあるサイズを有する。
【0112】
スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドは、アミノ酸配列に基づいて合成法または組換え法により容易に作製することができる。いくつかの実施形態においては、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドは、膜貫通領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、スペーサー領域をコードする前記ポリヌクレオチドは、該コード配列の5’末端および/または3’末端に1つ以上の制限酵素部位をさらに有していてもよく、これによって、該ポリヌクレオチドを切断して、別のスペーサー領域をコードする別のポリヌクレオチドと置換することが容易となる。いくつかの実施形態において、前記スペーサー領域をコードする前記ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞における発現を目的としてコドン最適化されている。
【0113】
一実施形態において、前記スペーサー領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来するヒンジ領域配列またはその一部、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来するヒンジ領域配列とCH2領域またはそのバリアントの全体またはその一部との組み合わせ、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来するヒンジ領域配列とCH3領域またはそのバリアントの全体またはその一部との組み合わせ、ならびにIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来するヒンジ領域配列とCH2領域もしくはそのバリアントおよび/またはCH3領域もしくはそのバリアントの全体またはその一部との組み合わせである。いくつかの実施形態において、短いスペーサー領域は、12アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長もしくは2アミノ酸長を超える長さを有する改変IgG4ヒンジ配列(配列番号4)であり、中程度の長さの配列は、119アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長もしくは2アミノ酸長を超える長さを有する、CH3配列を備えたIgG4ヒンジ配列(配列番号62)であるか、または229アミノ酸長以下であり、かつ1アミノ酸長もしくは2アミノ酸長を超える長さを有する、CH2領域およびCH3領域を備えたIgG4ヒンジ配列(配列番号50)である。
【0114】
膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態において、前記キメラ受容体の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。該膜貫通ドメインは、前記キメラ受容体を膜につなぎ止める役割を果たす。
【0115】
一実施形態において、他からの作用を必要とせずに、前記キメラ受容体中のドメインのうちの1つと関連し合う膜貫通ドメインが用いられる。場合によっては、前記キメラ受容体中のこのようなドメインが、同じまたは異なる表面膜タンパク質に由来する様々な膜貫通ドメインに結合することを回避できるようなアミノ酸置換に基づいて前記膜貫通ドメインを選択してもよく、あるいはこのようなアミノ酸置換によって前記膜貫通ドメインを改変してもよく、これによって、前記受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
【0116】
該膜貫通ドメインは、天然由来であってもよく、合成由来であってもよい。天然由来である場合、前記膜貫通ドメインは、膜結合型タンパク質であっても膜貫通型タンパク質であってもよく、これらのタンパク質はどのようなものであってもよい。
【0117】
膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖もしくはζ鎖、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137および/またはCD154の膜貫通領域を少なくとも含む。特定の一実施形態において、前記膜貫通ドメインは、表2に示すCD28膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。CD28膜貫通ドメインをコードする典型的なポリヌクレオチド配列を表1(配列番号5)に示す。
【0118】
膜貫通ドメインは、合成されたものであってもよく、天然の膜貫通ドメインのバリアントであってもよい。いくつかの実施形態において、合成膜貫通ドメインまたは膜貫通ドメインのバリアントは、主に疎水性残基、たとえば、ロイシンおよびバリンを含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、表2または表6に示す膜貫通ドメインと、少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性、またはこれらの値のいずれか2つにより定義される範囲にあるアミノ酸配列同一性を有してもいてもよい。膜貫通ドメインのバリアントは、Kyte Doolittle法により算出された疎水性スコアが少なくとも50であることが好ましい。
【0119】
膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、合成法または組換え法により容易に作製することができる。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、細胞内シグナル伝達領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、該コード配列の5’末端および/または3’末端に1つ以上の制限酵素部位をさらに有していてもよく、これによって、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを切断して、別の膜貫通ドメインをコードする別のポリヌクレオチドと置換することが容易となる。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞における発現を目的としてコドン最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。
【0120】
細胞内シグナル伝達ドメイン
いくつかの実施形態において、前記キメラ受容体の核酸配列は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。該細胞内シグナル伝達ドメインが存在することによって、前記キメラ受容体を発現する形質導入細胞が腫瘍細胞上に発現されたリガンドに結合すると、該形質導入細胞の1つの機能が活性化される。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、前記形質導入細胞の少なくとも1つの機能を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインの一部および/またはそのバリアントである。
【0121】
本開示のキメラ受容体に用いられる細胞内シグナル伝達ドメインとしては、CD3ζ鎖の細胞内配列、および/またはキメラ受容体が結合するとこれと協同してシグナル伝達を開始する補助受容体の細胞内配列、これらの配列の任意の誘導体またはバリアント、ならびに同じ機能を有する任意の合成配列が挙げられる。T細胞の活性化は、2種類の細胞内シグナル伝達配列によって媒介されると考えられており、これらの2種類の細胞内シグナル伝達配列は、抗原依存性一次活性化を開始し、かつT細胞受容体様シグナルを提供する細胞内シグナル伝達配列(一次細胞内シグナル伝達配列)と、抗原非依存性に、二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供する細胞内シグナル伝達配列(二次細胞内シグナル伝達配列)とである。刺激性に作用する一次細胞内シグナル伝達配列は、受容体チロシン活性化モチーフすなわちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでいてもよい。一次細胞内シグナル伝達配列を含有するITAMとしては、CD3ζ、FcRγ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、および/またはCD66dに由来するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記一次シグナル伝達細胞内ドメインは、表2に示す配列を有するCD3ζと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性、またはこれらの配列同一性(%)のいずれか2つによって定義される範囲にある配列同一性(%)を少なくとも有していてもよい。いくつかの実施形態において、CD3ζのバリアントは、表7に示すITAM領域を少なくとも1つ、2つもしくは3つ、またはこれらのITAM領域をすべて有する。
【0122】
好ましい実施形態において、前記キメラ受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを単独で、あるいは他の任意の所望される単一または複数の細胞内ドメインと組み合わせて含むように設計することができる。たとえば、前記キメラ受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖および共刺激シグナル伝達領域を含んでいてもよい。
【0123】
前記共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の前記細胞内ドメインを含む、キメラ受容体の一部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の応答に必要とされる抗原受容体やそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子としては、CD27、CD28、4-1BB(CD 137)、OX40、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびζ鎖関連プロテインキナーゼ(ZAP70)、ならびに/またはCD83と特異的に結合するリガンドが挙げられる。いくつかの実施形態においては、前記共刺激シグナル伝達ドメインは、表5に示すCD28の細胞内ドメインまたは表2に示す配列を有する4-1BBと少なくとも80%、85%、90%もしくは95%のアミノ酸配列同一性、またはこれらの配列同一性(%)のいずれか2つによって定義される範囲にある配列同一性(%)を少なくとも有していてもよい。一実施形態においては、前記CD28細胞内ドメインのバリアントは、186~187番目のアミノ酸がLLからGGに置換されている。
【0124】
キメラ受容体に複数存在する細胞内シグナル伝達配列は、ランダムな順序または指定された順序で互いに連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、これらの細胞内シグナル伝達配列は、短いオリゴペプチドリンカーまたは短いポリペプチドリンカーによって連結されていてもよく、これらのリンカーは2~10アミノ酸長であることが好ましい。一実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζのシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体または一部と、CD28のシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体またはその一部とを含む。別の実施形態においては、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζのシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体またはその一部と、4-1BBのシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体またはその一部とを含む。さらに別の実施形態においては、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζのシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体またはその一部と、CD28のシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体または一部と、4-1BBのシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントの全体またはその一部とを含む。特定の一実施形態における、CD3ζのバリアントと4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインの一部とを含む前記細胞内シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を表2に示す。典型的な核酸配列を表1に示す(配列番号6;配列番号7)。いくつかの実施形態においては、前記核酸配列は、配列番号6で示される配列を含む。いくつかの実施形態において、前記核酸配列は、配列番号7で示される配列を含む。
【0125】
一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、CD3ζドメインの一部に連結された4-1BBの細胞内ドメインを含む。別の実施形態においては、4-1BB細胞内ドメインおよびCD28細胞内ドメインは、CD3ζドメインの一部に連結されている。
【0126】
細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、アミノ酸配列に基づいて合成法または組換え法により容易に作製することができる。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、該コード配列の5’末端および/または3’末端に1つ以上の制限酵素部位をさらに有していてもよく、これによって、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを切断して、別の細胞内シグナル伝達ドメインをコードする別のポリヌクレオチドと置換することが容易となる。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする前記ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞における発現を目的としてコドン最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記哺乳類細胞はヒト細胞である。
【0127】
マーカー配列
いくつかの実施形態においては、前記システムは、誘導可能なプロモーターの制御下において1つ以上のマーカー配列をさらに含む。マーカー配列によって、形質導入細胞の選択および/または形質導入細胞の同定が可能となる。いくつかの実施形態においては、前記マーカー配列を使用して、形質導入細胞の選択および/または形質導入細胞の同定を行う。いくつかの実施形態においては、前記マーカー配列は、リンカー配列をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記リンカー配列は切断可能なリンカー配列である。いくつかの実施形態において、前記リンカーは切断可能なT2Aリンカーである。
【0128】
様々なマーカー配列を使用することができる。通常、マーカー配列は、形質導入細胞の選択および/または検出を可能にする機能特性を有する。いくつかの実施形態において、前記マーカー配列は、ヒトリンパ球の形質導入に適合している。いくつかの実施形態において、前記マーカー配列は、形質導入細胞の選択および/または検出を可能にする。
【0129】
このポジティブ選択可能なマーカーは、導入された宿主細胞において、該遺伝子を持つ細胞のポジティブ選択を可能にする表現型を優位に発現する遺伝子であってもよい。このような遺伝子は当技術分野で知られており、たとえば、ハイグロマイシンBに対する耐性を与えるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質であるG418に対する耐性をコードするTn5由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、メトトレキサートに対する耐性を与えるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、DHFR dm(典型的なポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、表14の配列番号46および配列番号47に示す)、ピューロマイシンに対する耐性を与えるpac遺伝子、ゼオシンを不活化するSh ble遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および/または多剤耐性(MDR)遺伝子などが挙げられる。これらの薬剤の存在下で培養されて生き残った形質導入細胞が選択されることになる。
【0130】
一実施形態において、第1の核酸は、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。一実施形態において、前記マーカー配列は、表2に示す末端切断型上皮成長因子受容体である。末端切断型上皮成長因子受容体の典型的なポリヌクレオチド配列を表1に示す(配列番号9)。いくつかの実施形態においては、前記マーカー配列は末端切断型のHer2配列である。末端切断型Her2の典型的なポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表13に示し、これらはそれぞれ配列番号44および配列番号45で示される。
【0131】
いくつかの実施形態においては、前記マーカー配列をコードする前記ポリヌクレオチドは、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。特定の一実施形態において、表2に示すように、前記リンカー配列は、切断可能なリンカー配列であるT2Aである。T2Aリンカーをコードする典型的なポリヌクレオチド配列を表1に示す(配列番号8)。
【0132】
マーカー配列をコードするポリヌクレオチドは、アミノ酸配列に基づいて合成法または組換え法により容易に作製することができる。いくつかの実施形態において、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドは、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、マーカー配列をコードする前記ポリヌクレオチドは、該コード配列の5’末端および/または3’末端に1つ以上の制限酵素部位をさらに有していてもよく、これによって、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドを切断して、別のマーカー配列をコードする別のポリヌクレオチドと置換することが容易となる。いくつかの実施形態において、マーカー配列をコードする前記ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞における発現、好ましくはヒト細胞における発現を目的としてコドン最適化されている。
【0133】
いくつかの実施形態において、2つ以上のマーカー配列を用いることができる。いくつかの実施形態においては、第1のマーカー配列は、構成的プロモーターの制御下にあり、形質導入された細胞が導入遺伝子を発現していることの指標となる。別の実施形態においては、第2のマーカー配列は、誘導可能なプロモーターの制御下にあり、導入遺伝子の発現が誘導されたことの指標となる。いくつかの実施形態においては、誘導可能なプロモーターの制御下にある前記マーカーを使用して、誘導可能なプロモーターの制御下におけるマーカー配列の発現が他の細胞よりも低い細胞を選択することによって、誘導されていない状態での発現量または基底レベルでの発現量が他の細胞よりも大幅に低い細胞の選択を行い、選択した細胞を増殖させて、さらなる用途に使用することができる。
【0134】
誘導可能なプロモーターの制御下にあるその他の遺伝子成分
前記システムの実施形態のいくつかにおいて、第1核酸は、生存および増殖を促進する遺伝子、アポトーシスを阻害する遺伝子、および/または誘導可能なプロモーターの制御下で負のチェックポイントシグナル伝達を抑制する遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列を含む。このような遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子、IL-15をコードする遺伝子、ケモカイン受容体をコードする遺伝子、Bcl2をコードする遺伝子、CA-Aktをコードする遺伝子、dn-TGFβ RIIIをコードする遺伝子、dn-SHP1/2をコードする遺伝子、および/またはPD-1-CD28キメラをコードする遺伝子を含む。これらの遺伝子も、本明細書に記載の誘導可能なプロモーターの制御下に置かれる。いくつかの実施形態において、前記遺伝子は、IL-2、IL-15、ケモカイン受容体、Bcl2、CA-Akt、dn-TGFβ RIII、dn-SHP1/2および/またはPD-1-CD28キメラをコードする。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記遺伝子は、負のチェックポイント制御因子を抑制するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、第1の核酸は、サイトカインまたはケモカイン受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された第1の誘導可能なプロモーターを含む。走化性サイトカインとも呼ばれるケモカインは、リンパ球の交通を制御する構造的に関連したタンパク質の一群である。いくつかの実施形態では、前記ケモカインは恒常性ケモカインまたは炎症性ケモカインである。ケモカイン受容体としては、CCR2、CCR7またはCCR15が挙げられる。サイトカインとしては、IL-2、IL-12、IL-7および/またはIL-15などのインターロイキン、インターフェロン-δなどのインターフェロン、腫瘍壊死因子、およびTLR4アゴニストが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記ケモカイン受容体は、CCR2、CCR7、および/またはCCR15を含む。いくつかの実施形態では、ケモカイン受容体は、CCR2、CCR7またはCCR15を含む。いくつかの実施形態では、前記サイトカインはインターロイキンを含み、該インターロイキンは、IL-2、IL-12およびIL-7および/もしくはIL-15、またはインターフェロンであり、該インターフェロンは、インターフェロン-δ、腫瘍壊死因子またはTLR4アゴニストを含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、第1の核酸は、アポトーシスを制御するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結された第1の誘導可能なプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシスを抑制する遺伝子として、たとえば、Bcl2および/またはCA-Aktが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドはBcl2またはCA-Aktである。
【0137】
いくつかの実施形態において、第1の核酸は、チェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結された第1の誘導可能なプロモーターを含む。このような遺伝子としては、dn-TGFβ RIII、dn-SHP1/2および/またはPD-1-CD28キメラが挙げられる。いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドは、dn-TGFβ RIII、dn-SHP1/2および/またはPD-1-CD28キメラである。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0138】
これらの遺伝子をコードする典型的なポリヌクレオチド配列を以下に示す。
【表1】
【0139】
誘導可能なプロモーターの制御下に置かれる核酸の種類は特に限定されず、このような核酸として、キメラ抗原受容体をコードする核酸、マーカー配列をコードする核酸、サイトカインをコードする核酸、ケモカインをコードする核酸、アポトーシスの阻害因子をコードする核酸、および/または負のチェックポイントシグナル伝達の阻害因子をコードする核酸が挙げられる。いくつかの実施形態においては、十分な発現量で各核酸を発現させるために、1つ以上の誘導可能なプロモーターを使用することができる。いくつかの実施形態においては、誘導可能なプロモーターの制御下にある遺伝子(たとえばサイトカイン)と、構成的プロモーターの制御下にあるキメラ抗原受容体を含む構築物とを使用して別の構築物を作製してもよい。このようにして作製された構築物は、たとえばキメラ抗原受容体を発現するリンパ球などの形質導入された細胞の生存と増殖の向上に有用である。
【0140】
構成的プロモーターシステム
別の実施形態においては、本発明のシステムは、転写活性化因子に連結された構成的プロモーターすなわち第2の誘導可能なプロモーターを含む第2の核酸を含む。別の実施形態においては、本発明のシステムは、転写活性化因子に連結されたプロモーターを含む第2の核酸を含む。いくつかの実施形態においては、前記プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態において、構成的プロモーターとしては、EF1αプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態においては、CMVプロモーターなどのウイルスプロモーターは使用されない。いくつかの実施形態においては、前記構成的プロモーターは、マーカーまたは本明細書に記載のキメラ抗原受容体をコードする1つ以上ポリヌクレオチドに連結されていてもよい。
【0141】
構成的プロモーター
構成的プロモーターは、自体の制御下で遺伝子の連続的な遺伝子発現を可能とする。いくつかの実施形態において、構成的プロモーターは、レンチウイルス構築物および/またはリンパ球において遺伝子の発現を可能とするプロモーターである。いくつかの実施形態においては、構成的プロモーターは、異種生物には由来せず、たとえば、植物やウイルスに由来するものではない。
【0142】
特定の一実施形態において、構成的プロモーターとしては、EF1αプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、および/またはクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態においては、CMVプロモーターなどのウイルスプロモーターは使用しない。
【0143】
転写活性化因子
いくつかの実施形態において、前記構成的プロモーターは、転写活性化因子に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、誘導因子(たとえば薬物)の存在下で、誘導可能なプロモーターを活性化する。
【0144】
いくつかの実施形態において、誘導可能なプロモーターは、転写活性化因子の存在下で誘導される。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は薬物の存在下で誘導可能なプロモーターに選択的に結合する。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、TamR-tf(HEA3)である。転写活性化因子の改変は、該転写活性化因子のアミノ酸配列のうち、薬物、プロモーター、またはこれらの両方に対する転写活性化因子の結合能力に影響を与えうるアミノ酸配列において行ってもよい。たとえば、ERリガンド結合ドメインにおける結合性は、薬物の転写活性化因子への結合に影響を及ぼすと考えられる。
【0145】
いくつかの実施形態においては、前記システムは合成転写活性化因子を使用し、該合成転写活性化因子は、前記薬物(たとえばタモキシフェン)の存在下において、導入遺伝子の上流の合成プロモーターに結合し、発現を誘導する。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子はTamR-tf(HEA3)である。タモキシフェンで制御されるこの転写因子(「TamR-tf」あるいは「HEA3」とも称される)は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメイン(たとえば配列番号40の1~281番目のアミノ酸)が、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインにインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κBのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。典型的なアミノ酸配列は表10に記載されており、配列番号40で示されている。エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)の前記タモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインは、TamR-tfの282~595番目のアミノ酸からなる配列であり、521番目のアミノ酸に変異を有する。NF-κBのp65活性化ドメイン(p65またはTAD)は、596~862番目のアミノ酸からなる配列である。
【0146】
転写因子の特性を向上させるために、前記転写活性化因子にさらに変更を加えてもよく、たとえば、前記エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよく、かつ/または前記p65転写活性化ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよいが、前記転写活性化因子への変更はこれらに限定されない。前記エストロゲン受容体の結合ドメインのアミノ酸に変更を加えることによって、前記薬物の転写活性化因子への結合の特異性をさらに高めることができる。前記エストロゲン受容体の結合ドメイン(ER-LBD)の配列に変更を加えた転写活性化因子の一例を表11に示す(配列番号43)。変異は、配列番号40の400番目のアミノ酸、543番目のアミノ酸および544番目のアミノ酸に導入される。前記配列に変更を加えた転写活性化因子は、タモキシフェンまたは4-OHTに対する親和性が増大している。前記p65転写活性化ドメイン内のアミノ酸に変更を加えると、形質導入された細胞の活性化の非存在下において、導入遺伝子の発現を増大させることができる。
【0147】
マーカー
いくつかの実施形態においては、前記構成的プロモーターは、マーカーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。このようなマーカーポリペプチドは本明細書に記載されており、EGFRt、Her2tおよび/またはDHFRdmが挙げられる。
【0148】
キメラ抗原受容体
いくつかの実施形態においては、前記構成的プロモーターは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、リガンド結合ドメイン、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。キメラ抗原受容体の具体例は本明細書に記載されている。
【0149】
ベクター
形質導入および導入遺伝子の発現を効率的に実施することが可能な様々なベクターの組み合わせを構築することができる。いくつかの実施形態において、前記ベクターはデュアルパッケージウイルスベクターまたは単一の(オールインワン)ウイルスベクターである。別の実施形態においては、前記ベクターとして、ウイルスベクターとプラスミドベクターの組み合わせが挙げられる。別のウイルスベクターとしては、フォーミーウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、フォーミーウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。
【0150】
いくつかの実施形態においては、プラスミドベクターまたはウイルスベクターは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含む第1の核酸を含む。いくつかの実施形態においては、プラスミドベクターまたはウイルスベクターは、細胞の生存または増殖を増強する遺伝子、アポトーシスを制御する遺伝子、および/またはチェックポイントシグナル伝達を調節する遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む第1の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節することによって、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。このようなポリヌクレオチドは、サイトカインまたはケモカイン受容体をコードする。いくつかの実施形態においては、プラスミドベクターまたはウイルスベクターは、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含む第1の核酸を含む。マーカー配列は本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、前記マーカー配列は、ヒトリンパ球の形質導入に適合している。いくつかの実施形態においては、前記マーカー配列は、形質導入細胞の選択および/または検出を可能にする。いくつかの実施形態においては、前記マーカーは遺伝子であり、該遺伝子としては、具体的には、ハイグロマイシンBに対する耐性を与えるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質であるG418に対する耐性をコードするTn5由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、メトトレキサートに対する耐性を与えるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、DHFR dm(典型的なポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、表14の配列番号46および配列番号47に示す)、ピューロマイシンに対する耐性を与えるpac遺伝子、ゼオシンを不活化するSh ble遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および/または多剤耐性(MDR)遺伝子などが挙げられる。
第1の核酸は、誘導可能なプロモーターの制御下において、様々なポリヌクレオチド配列を多数含むことができる。たとえば、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドは、マーカーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび/またはサイトカインもしくはケモカイン受容体をコードするポリヌクレオチドに連結することができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、薬物に結合して誘導可能なプロモーターの発現を活性化する転写活性化因子をコードする核酸配列に連結された構成的プロモーターを含む第2の核酸を含む。いくつかの実施形態においては、構成的プロモーターを有するレンチウイルスベクターは、マーカー遺伝子、PiggyBacトランスポゼース、および/またはキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含む核酸配列をさらに含んでいてもよい。この核酸の各構成要素は、T2A自己切断配列などの配列を介して互いに隔てられていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記核酸の各構成要素は、自己切断配列を介して互いに隔てられている。いくつかの実施形態においては、前記自己切断配列はT2Aである。
【0152】
別の実施形態において、外来性(前記ベクター、たとえばレンチウイルスベクターにとって外来性)の核酸配列は、ベクター中にパッケージされうる他の遺伝子成分の量によって制限される。いくつかの実施形態においては、構築物は、前記ウイルスベクターにとって外来性の遺伝子を少なくとも2つ含有する。いくつかの実施形態においては、前記構築物に含まれる、前記ウイルスベクターにとって外来性の遺伝子は4つ以下である。前記ウイルスベクター中にパッケージすることが可能な、該ベクターにとって外来性の遺伝子の数は、1つ以上の導入遺伝子の発現を検出すること、および細胞の少なくとも10%に形質導入することが可能であり、かつ/または細胞の少なくとも10%において該導入遺伝子の発現が検出可能なベクター構築物を選択することによって決定することができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、レンチウイルスはデュアルパッケージされたウイルスである。デュアルパッケージされたウイルスは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導可能なプロモーターを含む少なくとも1つの条件的構築物を含む。前記条件的構築物は、マーカー遺伝子、サイトカインをコードする核酸、ケモカイン受容体をコードする核酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、デュアルパッケージされたレンチウイルスは、構成的プロモーターを含む構成的構築物を含む。一実施形態においては、前記構成的構築物は、誘導可能なプロモーターの転写活性化因子に連結された構成的プロモーターを含む。いくつかの実施形態においては、前記構成的構築物は、マーカー遺伝子、および/またはサイトカインもしくはケモカインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。2つの構築物を含むシステムのいくつかの実施形態においては、それぞれの構築物は、別々のウイルスベクターにパッケージされおり、該ウイルスベクターを混合して使用することによって細胞集団に形質導入することができる。
【0154】
構成的構築物および条件的構築物がいずれもマーカー遺伝子を含んでいる場合、各構築物中のマーカー遺伝子は同じものであるか、または互いに異なるものである。いくつかの実施形態においては、構成的構築物および条件的構築物がいずれもキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含んでいる場合、該キメラ抗原受容体は、同じ抗原を標的とするが異なるリガンド結合ドメインを含んでいてもよく、同じ抗原を標的とするがエピトープは異なっていてもよく、あるいは異なる抗原を標的としてもよい。
【0155】
いくつかの実施形態において、前記ベクターはミニサークル(minicircle)である。ミニサークルは、細菌プラスミドのDNA骨格を含んでいない環状の発現カセットとして作製されたエピソーマルDNAベクターである。ミニサークルの分子サイズは小さいためより効率的な形質移入が可能になり、また、数日間しか機能しない標準的なプラスミドベクターに比べて、数週間にわたる持続発現が可能となる。いくつかの実施形態において、ミニサークルは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された、薬物による誘導の可能なプロモーターを含んでいる。いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターはケモカイン受容体、マーカー遺伝子および/またはサイトカインに連結することができる。1つ以上のミニサークルを使用することができる。いくつかの実施形態においては、ミニサークルは第1のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含み、別のミニサークルは、第1のキメラ抗原受容体とは異なる第2のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含み、かつ/または、さらに別のミニサークルは、ケモカイン受容体、キメラ抗原受容体およびマーカー遺伝子をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含む。前記構築物それぞれの各構成要素は、自己切断T2A配列をコードする核酸などの核酸を介して隔てられている。いくつかの実施形態において、前記構築物それぞれの各構成要素は、自己切断T2A配列をコードする核酸などの核酸を介して隔てられている。いくつかの実施形態においては、それぞれのミニサークルに含まれるキメラ抗原受容体が互いに異なっており、たとえば、スペーサーの長さおよびスペーサーの配列、細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに/またはマーカー配列が異なっている(ただし、これらに限定されない)。前記ミニサークルベクターは、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする構成的レンチウイルスベクターとともに使用することができる。いくつかの実施形態においては、前記ミニサークルベクターは、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする構成的レンチウイルスベクターとともに使用する。
【0156】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、PiggyBacトランスポゾンである。PiggyBac(PB)トランスポゾンは、「カット&ペースト」機構を介してベクターと染色体との間を効率的に移動する転移性遺伝因子である。転移に際して、PBトランスポゼースは、トランスポゾンベクターの両末端に存在するトランスポゾン特異性逆方向末端反復配列(ITR)を認識し、ITRに挟まれた配列を元の部位から効率的に移動させて、これをTTAA染色体部位に効率的に組み込む。PiggyBacトランスポゾンシステムの強力な活性によって、PBベクターの2つのITRに挟まれた目的の遺伝子を標的ゲノムへと容易に移動することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、PBは、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された、薬物による誘導の可能なプロモーターを含んでいる。いくつかの実施形態においては、前記誘導可能なプロモーターはケモカイン受容体、マーカー遺伝子および/またはサイトカインに連結することができる。1つ以上のPBトランスポゾンを使用することができる。いくつかの実施形態においては、PBは第1のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含み、別のPBは、第1のキメラ抗原受容体とは異なる第2のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含み、かつ/または、さらに別のPBは、ケモカイン受容体、キメラ抗原受容体およびマーカー遺伝子をコードするポリヌクレオチドに連結された誘導可能なプロモーターを含む。前記構築物それぞれの各構成要素は、自己切断T2A配列をコードする核酸などの核酸を介して隔てられている。いくつかの実施形態においては、それぞれのPBに含まれるキメラ抗原受容体が互いに異なっており、たとえば、スペーサーの長さおよびスペーサーの配列、細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに/またはマーカー配列が異なっている(ただし、これらに限定されない)。前記PBは、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする構成的レンチウイルスベクターおよび構成的プロモーターに連結されたPiggyBacトランスポゼースを含む構成的ベクターとともに使用することができる。
【0158】
いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸は、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み;ならびに前記第2の核酸は、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸と前記第2の核酸は、単一のレンチウイルスベクターに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0159】
いくつかの実施形態では、前記第1の核酸はマーカー遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記第2の核酸は、第1のキメラ抗原受容体とは異なる第2のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。第1のキメラ抗原受容体と第2のキメラ抗原受容体は互いに異なっていてもよく、その差異は、リガンド結合ドメイン、標的抗原、標的抗原のエピトープ、スペーサードメインの長さおよびスペーサードメインの配列(短い配列、中程度の配列または長い配列)、ならびに細胞内シグナル伝達ドメインにあってもよい。
【0160】
いくつかの実施形態において、単一のレンチウイルス構築物では、第1の核酸と第2の核酸は、ゲノムのインスレーターの核酸配列を介して隔てられていてもよく、該インスレーターは、たとえば、ウニのインスレーターのクロマチンドメインであってもよい。別の実施形態においては、前記第1核酸の前記誘導可能なプロモーターは、前記第2の核酸の前記構成的プロモーターとは逆向きである。
【0161】
これらのベクターのうち1つ以上を組み合わせて使用することによって、標的細胞に形質導入し、キメラ抗原受容体の発現を誘導することができる。
【0162】
宿主細胞および組成物:Tリンパ球集団
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のベクターおよび/または構築物を含む遺伝子改変宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞はCD4Tリンパ球および/またはCD8Tリンパ球である。
【0163】
Tリンパ球は、公知の技術によって回収することができ、フローサイトメトリーおよび/または免疫磁気選択のような、抗体との親和性結合などの公知の技術によって濃縮または除去することができる。濃縮工程および/または除去工程を行った後、当業者であれば容易に理解できる公知の技術またはその変法によって所望のTリンパ球をインビトロで増殖させることができる。いくつかの実施形態では、前記T細胞は患者から得られた自己由来T細胞である。
【0164】
たとえば、所望のT細胞集団またはT細胞亜集団の増殖は、増殖前のTリンパ球集団をインビトロにおいて培地に添加すること、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダー細胞を該培地に添加すること(たとえば、添加後の細胞集団が、増殖培養される最初の集団中の各Tリンパ球1個あたり、少なくとも5個、10個、20個、または40個またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含むような比率で加える)、および該培地を(たとえばT細胞数の増加に十分な時間にわたって)インキュベートすることによって行うことができる。前記非分裂フィーダー細胞は、γ線が照射されたPBMCフィーダー細胞を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、細胞分裂を防ぐため、3000~3600radのγ線を前記PBMCに照射する。いくつかの実施形態においては、前記PBMCの細胞分裂を防ぐため、3000rad、3100rad、3200rad、3300rad、3400rad、3500rad、もしくは3600radのγ線、またはこれらの値のいずれか2つで示されるエンドポイントの間にある任意の放射線値のγ線を前記PBMCに照射する。培地にT細胞またはフィーダー細胞を添加する順序は必要に応じて入れ替えてもよい。典型的には、Tリンパ球の増殖に適した温度などの条件下で培養物をインキュベートすることができる。ヒトTリンパ球を増殖させるための温度としては、たとえば、通常、少なくとも25℃、好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは37℃である。いくつかの実施形態において、ヒトTリンパ球を増殖させるための温度は、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、もしくは37℃、またはこれらの値のいずれか2つで示されるエンドポイントの間にある他の任意の温度である。
【0165】
増殖させたTリンパ球としては、ヒト腫瘍または病原体上に存在する抗原に特異的であってもよいCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびCD4ヘルパーTリンパ球が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記細胞としてはT細胞前駆細胞が挙げられる。いくつかの実施形態においては、前記細胞は造血幹細胞である。
【0166】
いくつかの実施形態において、前記増殖方法は、EBVで形質転換された非分裂リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として加えることをさらに含んでもよい。6000~10,000radのγ線をLCLに照射してもよい。いくつかの実施形態においては、6000rad、6500rad、7000rad、7500rad、8000rad、8500rad、9000rad、9500rad、もしくは10,000radのγ線、またはこれらの値のいずれか2つで示されるエンドポイントの間にある任意の放射線量のγ線を前記LCLに照射する。前記LCLフィーダー細胞は任意の適切な量で提供することができ、たとえば、LCLフィーダー細胞と増殖開始時のTリンパ球との比は少なくとも10:1であってもよい。
【0167】
いくつかの実施形態において、前記増殖方法は、(たとえば、少なくとも0.5ng/mlの濃度で)抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培地に加えることをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態においては、前記増殖方法は、IL-2および/またはIL-15を培地に加えることをさらに含んでもよい(IL-2の濃度は、たとえば、少なくとも10ユニット/mlである)。
【0168】
Tリンパ球を単離し、増殖を行う前または増殖を行った後に、細胞傷害性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球をそれぞれ、ナイーブT細胞亜集団、メモリーT細胞亜集団、およびエフェクターT細胞亜集団にソートすることができる。
【0169】
CD8細胞は、標準的な方法を用いることによって得ることができる。いくつかの実施形態において、CD8細胞は、ナイーブCD8細胞、セントラルメモリーCD8細胞、およびエフェクターメモリーCD8細胞それぞれと関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクターメモリー細胞にさらにソートされる。いくつかの実施形態において、メモリーT細胞は、CD8末梢血リンパ球由来のCD62LサブセットおよびCD62Lサブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体で染色した後に、CD62LCD8画分およびCD62LCD8画分にソートされる。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーTCMの表現型マーカーの発現は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127を含み、グランザイムBは陰性であるか、低発現を示す。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO、CD62L、および/またはCD8のT細胞である。いくつかの実施形態において、エフェクターTは、CD62L、CCR7、CD28、および/またはCD127が陰性であり、グランザイムBおよび/またはパーフォリンは陽性である。いくつかの実施形態において、ナイーブCD8Tリンパ球は、ナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられ、ナイーブT細胞の表現型マーカーとしては、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、および/またはCD45RAが挙げられる。
【0170】
CD4ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞にソートされる。CD4リンパ球は、標準的な方法によって得ることができる。いくつかの実施形態において、ナイーブCD4Tリンパ球は、CD45RO、CD45RA、CD62L、および/またはCD4のT細胞である。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーCD4細胞は、CD62Lおよび/またはCD45ROである。いくつかの実施形態において、エフェクターCD4細胞は、CD62Lおよび/またはCD45ROである。
【0171】
細胞または細胞集団が特定の細胞表面マーカーについて陽性であるかどうかは、該表面マーカーに特異的な抗体およびアイソタイプを一致させたコントロール抗体による染色を使用したフローサイトメトリーによって判定することができる。細胞集団において特定のマーカーが陰性であることは、アイソタイプコントロールと比べて特異的抗体で強く染まる細胞集団が見られないことを指し、陽性は、アイソタイプコントロールと比べて特異的抗体で均一染まる細胞集団が見られることを指す。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーの発現の減少は、対照の細胞集団と比較して、平均蛍光強度の低下が1 log10であること、および/またはマーカーを発現する細胞のパーセンテージが細胞全体の少なくとも20%に低下すること、細胞全体の少なくとも25%に低下すること、細胞全体の少なくとも30%に低下すること、細胞全体の少なくとも35%に低下すること、細胞全体の少なくとも40%に低下すること、細胞全体の少なくとも45%に低下すること、細胞全体の少なくとも50%に低下すること、細胞全体の少なくとも55%に低下すること、細胞全体の少なくとも60%に低下すること、細胞全体の少なくとも65%に低下すること、細胞全体の少なくとも70%に低下すること、細胞全体の少なくとも75%に低下すること、細胞全体の少なくとも80%に低下すること、細胞全体の少なくとも85%に低下すること、細胞全体の少なくとも90%に低下すること、細胞全体の少なくとも95%に低下すること、もしくは細胞全体の少なくとも100%に低下すること、もしくは20~100%の範囲の任意のパーセンテージに低下することを指す。いくつかの実施形態において、細胞集団が1つ以上のマーカーについて陽性であることは、対照の細胞集団と比較して、マーカーを発現する細胞のパーセンテージが細胞全体の少なくとも50%であること、細胞全体の少なくとも55%であること、細胞全体の少なくとも60%であること、細胞全体の少なくとも65%であること、細胞全体の少なくとも70%であること、細胞全体の少なくとも75%であること、細胞全体の少なくとも80%であること、細胞全体の少なくとも85%であること、細胞全体の少なくとも90%であること、細胞全体の少なくとも95%であること、もしくは細胞全体の少なくとも100%であること、または50~100%の範囲の任意のパーセンテージであることを指す。
【0172】
細胞または細胞集団が特定の細胞表面マーカーについて陽性であるかどうかは、該表面マーカーに特異的な抗体およびアイソタイプを一致させたコントロール抗体による染色を使用したフローサイトメトリーによって判定することができる。細胞集団において特定のマーカーが陰性であることは、アイソタイプコントロールと比べて特異的抗体で強く染まる細胞集団が見られないことを指し、陽性は、アイソタイプコントロールと比べて特異的抗体で均一染まる細胞集団が見られることを指す。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーの発現の減少は、対照の細胞集団と比較して、平均蛍光強度の低下が1 log10であること、および/またはマーカーを発現する細胞のパーセンテージが細胞全体の少なくとも20%に低下すること、細胞全体の少なくとも25%に低下すること、細胞全体の少なくとも30%に低下すること、細胞全体の少なくとも35%に低下すること、細胞全体の少なくとも40%に低下すること、細胞全体の少なくとも45%に低下すること、細胞全体の少なくとも50%に低下すること、細胞全体の少なくとも55%に低下すること、細胞全体の少なくとも60%に低下すること、細胞全体の少なくとも65%に低下すること、細胞全体の少なくとも70%に低下すること、細胞全体の少なくとも75%に低下すること、細胞全体の少なくとも80%に低下すること、細胞全体の少なくとも85%に低下すること、細胞全体の少なくとも90%に低下すること、細胞全体の少なくとも95%に低下すること、もしくは細胞全体の少なくとも100%に低下すること、もしくは20~100%の範囲の任意のパーセンテージに低下することを指す。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーの発現の増加は、平均蛍光強度が増加すること、および/または細胞集団において1つのマーカーまたは任意のマーカーが陽性である細胞の数が増加することを指し、たとえば、対照の細胞集団などと比較して、特定の細胞集団におけるマーカーを発現する細胞のパーセンテージが細胞全体の少なくとも50%であること、細胞全体の少なくとも55%であること、細胞全体の少なくとも60%であること、細胞全体の少なくとも65%であること、細胞全体の少なくとも70%であること、細胞全体の少なくとも75%であること、細胞全体の少なくとも80%であること、細胞全体の少なくとも85%であること、細胞全体の少なくとも90%であること、細胞全体の少なくとも95%であること、もしくは細胞全体の少なくとも100%であること、または50~100%の範囲の任意のパーセンテージであることを指す。
【0173】
いくつかの実施形態において、抗原特異的なCD4集団およびCD8集団は、ナイーブTリンパ球または抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得ることができる。たとえば、サイトメガロウイルス抗原に対して特異的なT細胞株またはT細胞クローンは、サイトメガロウイルス抗原に感染した対象からT細胞を単離し、インビトロにおいてサイトメガロウイルス抗原で該細胞を刺激することによって作製することができる。ナイーブT細胞を使用することもできる。T細胞応答を誘導するための標的として使用する、腫瘍細胞に由来する抗原の数は特に限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の養子細胞免疫療法組成物は、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、乳がん、または黒色腫を含む疾患または障害の治療に有用である。
【0174】
Tリンパ球集団の改変
いくつかの実施形態においては、本発明の開示による免疫療法に使用する前記T細胞に機能性遺伝子を導入することが望ましい場合がある。たとえば、単一の遺伝子または複数の遺伝子をT細胞に導入することによって、体内に移入された該T細胞の生存能および/または機能を向上することができ、それによって治療法の有効性を改善することができる。あるいは、上記単一または複数の遺伝子を導入することによって、遺伝子マーカーを提供することができ、この遺伝子マーカーを利用することによって、インビボにおける生存T細胞および/または移行T細胞の選択および/または評価が可能となる。あるいは、上記単一または複数の遺伝子をT細胞に導入することによって、たとえば、該導入遺伝子の発現制御により該T細胞を調節することができ、それによって免疫療法の安全性を改善することができる。これらは、本発明の開示を踏まえ、当業者であれば容易に理解できる公知の技術に従って行うことができる。
【0175】
いくつかの実施形態においては、T細胞は、本明細書に記載の、薬物による誘導の可能なキメラ受容体をコードするベクターで改変される。いくつかの実施形態においては、細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下でキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで改変される。別の実施形態においては、細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下で、サイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御する遺伝子、またはチェックポイントシグナル伝達を調節する遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで改変される。いくつかの実施形態において、前記T細胞は、処置を受ける対象から得られ、別の実施形態においては、前記リンパ球は同種異系のヒトドナー、好ましくは健常ヒトドナーから得られる。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節することによって、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0176】
キメラ受容体は、たとえば抗体分子などに由来する抗原結合フラグメントまたは抗体可変ドメインを利用することによって、任意の細胞表面マーカーに対する特異性を備えるように構築することができる。前記抗原結合分子は、1つ以上の細胞シグナル伝達モジュールに連結することができる。いくつかの実施形態において、前記細胞シグナル伝達モジュールとしては、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/またはCD28膜貫通ドメインが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、キメラ受容体は、tEGFRなどの形質導入マーカーをさらに含んでいてもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、CD4Tリンパ球集団および/またはCD8Tリンパ球集団のそれぞれに導入されるキメラ受容体は同じでも異なっていてもよい。いくつかの実施形態においては、これらの細胞集団のそれぞれに導入されるキメラ受容体のリガンド結合ドメインは、腫瘍細胞上または感染細胞上の同じリガンドに特異的に結合するか、または異なる抗原もしくは異なるエピトープに特異的に結合する。前記細胞シグナル伝達モジュールもそれぞれ異なっていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記CD8細胞傷害性T細胞の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、前記CD4ヘルパーT細胞の前記細胞内シグナル伝達ドメインと同一のものである。別の実施形態では、前記CD8細胞傷害性T細胞の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、前記CD4ヘルパーT細胞の前記細胞内シグナル伝達ドメインと異なるものである。
【0178】
いくつかの実施形態において、CD4Tリンパ球またはCD8Tリンパ球はそれぞれ、本明細書に記載されるように、形質導入前に、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞、またはエフェクター細胞にソートすることができる。いくつかの実施形態において、CD4Tリンパ球またはCD8Tリンパ球はそれぞれ、形質導入後に、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞、またはエフェクター細胞にソートすることができる。
【0179】
本明細書に記載のように、いくつかの実施形態において、ナイーブCD4細胞は、CD45RO、CD45RA、CD62L、および/またはCD4T細胞である。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーCD4細胞は、CD62Lおよび/またはCD45ROである。いくつかの実施形態において、エフェクターCD4細胞は、CD62Lおよび/またはCD45ROである。これらの集団はそれぞれ別個にキメラ受容体で改変することができる。
【0180】
本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態において、メモリーT細胞は、CD8末梢血リンパ球由来のCD62LサブセットおよびCD62Lサブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体で染色した後に、CD62LCD8画分およびCD62LCD8画分にソートされる。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT細胞(TCM)の表現型マーカーの発現は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127を含み、グランザイムBは陰性であるか、低発現を示す。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO、CD62L、および/またはCD8のT細胞である。いくつかの実施形態において、エフェクターT細胞(T)は、CD62L、CCR7、CD28、および/またはCD127が陰性であり、グランザイムBおよび/またはパーフォリンは陽性である。いくつかの実施形態において、ナイーブCD8Tリンパ球は、CD8、CD62L、CD45RO、CCR7、CD28、CD127、および/またはCD45ROによって特徴付けられる。これらの集団はそれぞれ別個にキメラ受容体で改変することができる。
【0181】
遺伝子送達のための組換え感染性ウイルス粒子を利用した様々な形質導入技術が開発されてきた。このような形質導入技術は、本発明のTリンパ球を形質導入するためのアプローチとして現時点では好ましい。この形質導入技術に通常使用されるウイルスベクターとしては、シミアンウイルス40、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルスベクター、および/またはレトロウイルスに由来するウイルスベクターが挙げられる。このように、遺伝子導入方法および発現方法としては様々なものが存在するが、このような方法は、哺乳類細胞に遺伝物質を導入して発現させることを本質的な機能とする。前記形質導入技術のいくつかは、造血細胞またはリンパ球に形質導入することを目的として使用され、このような形質導入技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、組換えアデノウイルスによる感染、アデノ随伴ウイルスによる感染、およびレトロウイルスベクターによる感染が挙げられる。初代Tリンパ球の形質導入は、エレクトロポレーションおよびレトロウイルスまたはレンチウイルスの感染によって成功を収めている。
【0182】
レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを使用することによって、真核細胞への遺伝子導入を非常に効率的に行うことができる。さらに、レトロウイルスまたはレンチウイルスの組み込みは制御下で行うことができ、細胞1個あたり1コピーまたは数コピーの新しい遺伝情報を安定して組み込むことができる。
【0183】
刺激因子(たとえばリンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現は、治療を受ける個体に対して毒性がある場合がある。したがって、本発明は、インビボにおけるネガティブ選択に対する感受性を本発明のT細胞に付与する遺伝子セグメントをさらに包含する。「ネガティブ選択」は、個体のインビボ状態を変化させることによって該個体に注入した細胞を排除できることを意味する。ネガティブ選択が可能な表現型は、投与される薬剤(たとえば化合物)に対する感受性を付与する遺伝子を挿入することによって発現される。ネガティブ選択可能な遺伝子は当技術分野において知られており、たとえば、ガンシクロビルに対する感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子、細胞由来ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞由来アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、および細菌シトシンデアミナーゼなどが挙げられる。
【0184】
いくつかの実施形態においては、ネガティブ選択可能な表現型を有する細胞のインビトロでの選択を可能にするポジティブマーカーをT細胞に導入すると有用である場合がある。このポジティブ選択可能なマーカーは、導入された宿主細胞において、該遺伝子を持つ細胞のポジティブ選択を可能にする表現型を優位に発現する遺伝子であってもよい。このような遺伝子は当技術分野において公知であり、具体的には、ハイグロマイシンBに対する耐性を与えるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質であるG418に対する耐性をコードするTn5由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および/または多剤耐性(MDR)遺伝子などが挙げられる。
【0185】
Tリンパ球に形質を導入するため、当技術分野において公知の様々な方法を使用することができる。いくつかの実施形態においては、レンチウイルスベクターを用いて形質導入を行う。
【0186】
いくつかの実施形態においては、キメラ受容体をコードする発現ベクターを使用して、CD4細胞およびCD8細胞をそれぞれ別々に改変し、所定の集団を形成することができる。いくつかの実施形態においては、これらの細胞は、構成的プロモーターの制御下でポリヌクレオチドを含むベクター、および誘導可能なプロモーターの制御下でサイトカインまたはケモカイン受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを使用して別々に改変することができる。
【0187】
いくつかの実施形態においては、これらの細胞は、次いで、前述したナイーブ細胞の亜集団、セントラルメモリー細胞の亜集団、およびエフェクター細胞の亜集団のそれぞれに固有の細胞表面抗原でソートすることによって、これらの亜集団にソートされる。また、CD4細胞集団およびCD8細胞集団は、それらのサイトカインプロファイルまたは増殖活動によって選択することができる。たとえば、抗原で刺激した後の、IL-2、IL-4、IL-10、TNFα、および/またはIFNγなどのサイトカインの産生が、偽形質導入細胞や形質導入CD8細胞よりも増強されたCD4Tリンパ球を選択することができる。別の実施形態において、IL-2および/またはTNFαの産生が増強されたナイーブCD4T細胞またはセントラルメモリーCD4T細胞が選択される。同様に、偽形質導入CD8細胞よりもIFNγの産生が増強されたCD8細胞が選択される。
【0188】
いくつかの実施形態においては、抗原を有する細胞に対して細胞傷害性を示すCD4細胞およびCD8細胞が選択される。いくつかの実施形態においては、CD4細胞は、CD8細胞よりも低い細胞傷害性を示すと予想される。好ましい一実施形態においては、特定の種類のがんについて確立されたインビボ動物モデルにおいて、このがんの腫瘍細胞を殺傷する能力を発揮する形質導入リンパ球(たとえばCD8セントラルメモリー細胞)が選択される。
【0189】
さらに別の実施形態においては、特定の種類のがんについて確立されたインビボ動物モデルにおいて持続可能な、形質導入キメラ受容体発現T細胞が選択される。いくつかの実施形態においては、短いスペーサー領域を備えた形質導入キメラ受容体CD8セントラルメモリー細胞は、インビボ動物モデルに導入後、3日間以上、10日間以上、20日間以上、30日間以上、40日間以上、または50日間以上にわたってインビボで持続可能であったことが示された。
【0190】
本開示は、本発明の組成物においてCD4T細胞とCD8T細胞の組み合わせを使用することを包含する。一実施形態において、キメラ受容体により形質導入されたCD4細胞の組み合わせは、同じリガンドに特異的である形質導入キメラ受容体発現CD8細胞と組み合わせてもよく、あるいは異なる腫瘍リガンドに特異的であるCD8T細胞と組み合わせてもよい。別の実施形態においては、形質導入キメラ受容体発現CD8細胞は、腫瘍上に発現された別のリガンドに特異的な形質導入キメラ受容体発現CD4細胞と組み合わせる。さらに別の実施形態においては、キメラ受容体で改変されたCD4細胞とCD8細胞とを組み合わせる。いくつかの実施形態においては、CD8細胞とCD4細胞は、様々な比率で組み合わせることができ、たとえば、CD8とCD4とを1:1の比率で組み合わせることができ、CD8とCD4とを10:1の比率で組み合わせることができ、CD8とCD4とを100:1の比率で組み合わせることができ、またはこれらの比率のいずれかの間にある任意の他の比率でCD8とCD4とを組み合わせることができる。いくつかの実施形態においては、組み合わされた細胞集団は、インビトロおよび/またはインビボにおいて細胞増殖を試験し、細胞の増殖が見られる細胞比率を選択する。
【0191】
形質導入を行った後および/またはキメラ受容体を有する細胞を選択した後、得られた各細胞集団は、ヒト対象中への少なくとも1回の注入に十分な数に達するまでインビトロにおいて増殖させることが好ましく、少なくとも1回の注入に十分な細胞数としては、典型的には、約10細胞/kg~10細胞/kgが挙げられる。いくつかの実施形態においては、前記形質導入細胞は、抗原を有する細胞、抗CD3、抗CD28、およびIL-2、IL-7、IL-15、もしくはIL-21、またはそれらの組み合わせの存在下で培養される。
【0192】
いくつかの実施形態においては、インビトロまたはインビボにおいてサイトカイン刺激、抗原または腫瘍標的に応答して増殖するCD4細胞およびCD8細胞が選択される。たとえば、抗CD3および/または抗CD28で刺激した際に、活発に増殖する形質導入CD4細胞または形質導入CD8細胞が選択される。いくつかの実施形態においては、誘導可能なプロモーターの制御下および導入遺伝子の誘導因子(たとえば薬物)の存在下において形質導入細胞を刺激すると、導入遺伝子の発現が増強される。
【0193】
CD4細胞の亜集団とCD8細胞の亜集団とを組み合わせてもよい。特定の一実施形態においては、改変されたナイーブCD4細胞またはセントラルメモリーCD4細胞と、改変されたセントラルメモリーCD8T細胞とを組み合わせることによって、抗原を有する細胞(たとえば腫瘍細胞)に対して相乗的な細胞傷害性効果を提供する。
【0194】
組成物
本発明の開示は、本明細書に記載の遺伝子改変Tリンパ球製剤を含む養子細胞免疫療法組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、前記Tリンパ球製剤は、キメラ受容体を有するCD4T細胞を含み、該キメラ受容体は、本明細書に記載されているように、薬物による誘導の可能なプロモーターの制御下において前記疾患または障害に関連するリガンドに特異的な細胞外抗体可変ドメイン、スペーサー領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞受容体またはその他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。別の実施形態においては、養子細胞免疫療法組成物は、キメラ受容体により改変された腫瘍特異的CD8細胞傷害性Tリンパ球製剤をさらに含み、該細胞傷害性Tリンパ球製剤が、細胞性免疫応答を提供し、キメラ受容体を有するCD8T細胞を含み、該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、薬物による誘導の可能なプロモーターの制御下において、前記疾患または障害に関連するリガンドに特異的な細胞外一本鎖抗体、スペーサー領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、本発明において開示された、前記キメラ受容体により改変されたT細胞集団は、インビボにおいて少なくとも3日またはそれ以上にわたって持続することができる。別の一実施形態においては、前記の各細胞集団は互いに組み合わせることも、別の細胞種と組み合わせることもでき、これによって組成物が提供される。
【0195】
いくつかの実施形態においては、前記CD4Tヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞またはバルクCD4T細胞である。いくつかの実施形態においては、前記CD4ヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4T細胞であり、該ナイーブCD4T細胞は、CD45ROT細胞、CD45RAT細胞、および/またはCD62LCD4T細胞を含む。
【0196】
いくつかの実施形態においては、前記CD8T細胞傷害性リンパ球は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞および/またはバルクCD8T細胞である。いくつかの実施形態においては、前記CD8細胞傷害性Tリンパ球は、セントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞は、CD45ROT細胞、CD62LT細胞および/またはCD8T細胞を含む。さらに別の実施形態では、前記CD8細胞傷害性Tリンパ球はセントラルメモリーT細胞であり、前記CD4ヘルパーTリンパ球はナイーブCD4T細胞またはセントラルメモリーCD4T細胞である。
【0197】
いくつかの実施形態においては、前記組成物はT細胞前駆細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記組成物は造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態においては、組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択されるCD8T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0198】
方法
本発明の開示は、養子免疫療法組成物の製造方法、および、疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行うための、該組成物の使用、または疾患または障害を有する対象において組成物を使用して細胞免疫療法を行う方法を提供する。
いくつかの実施形態においては、前記組成物の製造方法は、改変されたナイーブCD4Tヘルパー細胞またはセントラルメモリーCD4Tヘルパー細胞を得ることを含み、前記改変されたヘルパーTリンパ球製剤が、キメラ受容体を有するCD4T細胞を含み、該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、誘導可能なプロモーターの制御下で、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする。別の実施形態では、CD4細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下にあるサイトカイン受容体またはケモカイン受容体を有する。
【0199】
別の一実施形態では、前記方法は、改変されたCD8セントラルメモリーT細胞を得ることをさらに含み、該改変されたセントラルメモリーCD8 Tリンパ球製剤は、キメラ受容体を有するCD8細胞を含み、該キメラ受容体は、本明細書に記載されているように、誘導可能なプロモーターの制御下で、リガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であること、前記リガンドが、腫瘍に特異的な、分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であること、ならびに前記リガンドが、リンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することができることを特徴とする。別の実施形態では、CD4細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下にあるサイトカイン受容体またはケモカイン受容体を有する。
【0200】
前記改変されたCD4T細胞および前記改変されたCD8細胞傷害性T細胞における薬物による誘導の可能なプロモーターは、同じものであっても異なるものであってもよい。いくつかの実施形態においては、一細胞集団において、キメラ抗原受容体に連結されたプロモーターは構成的プロモーターであり、別の集団において、キメラ抗原受容体に連結されたプロモーターは誘導可能なプロモーターである。たとえば、キメラ受容体を有する改変されたCD4T細胞は、構成的プロモーターの制御下において、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、これに対して、CD8細胞傷害性T細胞集団中に含まれる、キメラ受容体を有するCD8細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下において、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、CD4細胞集団およびCD8細胞集団において前記ポリヌクレオチドによってコードされるキメラ抗原受容体は、異なるものであってもよい。これらの2種の構築物の差異としては、抗原またはエピトープに対するリガンド結合ドメインの特異性または親和性、スペーサー領域の長さおよび配列、ならびに細胞内シグナル伝達成分が挙げられる。
【0202】
キメラ受容体で改変されたCD4細胞およびCD8細胞の調製は、本明細書を通して説明されている。抗原特異的Tリンパ球は、疾患または障害を有する患者から得ることができ、また、抗原の存在下、インビトロにおいてTリンパ球を刺激することによっても調製することができる。抗原特異性によって選択されなかったCD4Tリンパ球亜集団および/またはCD8Tリンパ球亜集団も本明細書に記載の方法で単離することができ、前記製造方法に組み込むことができる。
【0203】
いくつかの実施形態においては、このような細胞集団の組み合わせは、細胞表面マーカーの均一性、すなわち少なくとも2世代にわたり増殖する能力を評価して、均一な細胞分化状態を有するかどうかを確認することができる。品質管理は、前記標的リガンドを発現する細胞株を、キメラ受容体により改変されたT細胞およびキメラ抗原受容体の発現を誘導する薬物とともに共培養し、該誘導因子の存在下において、当技術分野で公知の細胞傷害アッセイ、増殖アッセイ、またはサイトカイン産生アッセイを使用して、該キメラ受容体により改変されたT細胞が該細胞株を認識するかどうかを確認することによって実施することができる。前記キメラ受容体により改変されたT細胞の細胞分化状態および細胞表面マーカーは、フローサイトメトリーによって測定することができる。いくつかの実施形態において、前記CD8細胞の前記マーカーおよび細胞分化状態は、CD3、CD8、CD62L、CD28、CD27、CD69、CD25、PD-1、CTLA-4、CD45ROおよび/またはCD45RAを含む。いくつかの実施形態において、前記CD4細胞の前記マーカーおよび細胞分化状態は、CD3、CD4、CD62L、CD28、CD27、CD69、CD25、PD-1およびCTLA-4 CD45ROおよび/またはCD45RAを含む。
【0204】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のキメラ受容体により改変された前記T細胞は、インビボにおいて少なくとも3日間または少なくとも10日間にわたって持続することができる。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のキメラ受容体により改変された前記T細胞は、CFSE色素希釈による測定によれば、インビボにおいて少なくとも2世代または少なくとも3世代にわたって増殖することができる。前記キメラ受容体により改変されたT細胞の増殖および持続性は、前記疾患または障害の動物モデルを使用し、前記細胞を投与し、移入された細胞の持続能力および/または増殖能力を算出することによって、測定することができる。別の実施形態において、増殖および活性化は、抗原を有する細胞を使用して複数回にわたって活性化することによって、インビトロで試験することができる。
【0205】
また、本発明の開示は、疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、薬物による誘導の可能なプロモーターの制御下において本明細書に記載のキメラ受容体を発現するリンパ球を含む組成物を投与すること、および前記薬物を投与することを含む方法を提供する。
【0206】
いくつかの実施形態において、前記薬物は、本明細書に記載されているように、タモキシフェン、ならびにそのバリアント、誘導体、薬学的に許容される塩、溶媒和物、および水和物である。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、前記組成物の投与前、前記組成物の投与と同時、または前記組成物が投与された後の任意の時間点において送達される。
【0207】
いくつかの実施形態において、前記薬物は前記組成物とともに投与され、前記組成物による毒性作用が見られた場合、前記薬物の投与は毒性作用が低減するまで中止される。毒性による症状が低減した後、前記薬物の投与を再開する。いくつかの実施形態においては、毒性による症状が低減した後に前記薬物の投与を再開してもよい。
【0208】
いくつかの実施形態においては、前記薬物は前記組成物とともに投与されるが、対象において腫瘍体積の減少またはがん細胞数の減少が見られた場合は、前記改変細胞を休ませるのに適切な期間にわたって前記薬物の投与を中止し、前記改変細胞の活性が見られない場合は、がんは寛解しており、改変細胞は必要とされない。
【0209】
別の実施形態においては、本発明の方法は、
遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球製剤および/または遺伝子改変ヘルパーTリンパ球製剤を対象に投与すること、ならびに
誘導可能なプロモーターを誘導する薬物を投与することを含み、
該細胞傷害性Tリンパ球製剤が、細胞性免疫応答を提供し、かつキメラ受容体を有するCD8細胞を含み、
該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、薬物による誘導の可能なプロモーター制御の下において、リガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、
前記リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、
前記リガンドが、腫瘍に特異的な、分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されている別の分子であり、かつリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導可能であること、ならびに
前記ヘルパーTリンパ球製剤が、腫瘍の直接認識を誘導するとともに、前記遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球製剤が細胞性免疫応答を媒介する能力を増強し、かつキメラ受容体を有するCD4 T細胞を含み、
該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、構成的プロモーターまたは薬物による誘導の可能なプロモーターの制御下において、リガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、
該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、
前記リガンドが、腫瘍に特異的な、分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、かつリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導可能であることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物の投与は、前記組成物または前記宿主細胞の投与後に行い、前記組成物または前記宿主細胞の投与から1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、4週間もしくは2ヶ月が経過した後、またはこれらの時間点のいずれか2つの間にある任意の時間が経過した後に前記薬物の投与を行う。
【0210】
別の実施形態では、前記方法は、
遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球製剤および/または遺伝子改変ヘルパーTリンパ球製剤を前記対象に投与すること、ならびに
誘導可能なプロモーターを誘導する薬物を投与することを含み、
前記細胞傷害性Tリンパ球製剤が、細胞性免疫応答を提供し、かつキメラ受容体を有するCD8T細胞を含み、該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、構成的プロモーターの制御下において、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むこと、ならびに
前記ヘルパーTリンパ球製剤が、直接的な腫瘍認識を誘導するとともに、前記細胞傷害性Tリンパ球の細胞性免疫応答を媒介する能力を増強し、かつキメラ受容体を有するCD4T細胞を含み、該キメラ受容体が、本明細書に記載されているように、構成的プロモーターまたは前記薬物による誘導の可能なプロモーターの制御下において、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、腫瘍に特異的な前記分子は腫瘍の表面分子である。
【0211】
別の実施形態においては、本発明の方法は、
遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球製剤および/または遺伝子改変ヘルパーTリンパ球製剤を対象に投与すること、ならびに
誘導可能なプロモーターを誘導する薬物を投与することを含み、
前記細胞傷害性Tリンパ球製剤が、細胞性免疫応答を提供し、かつCD8T細胞を含み、該CD8T細胞が、本明細書に記載されているように、誘導可能なプロモーターの制御下において、サイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチド、および/またはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドを発現すること、ならびに
前記ヘルパーTリンパ球製剤が、腫瘍の直接認識を誘導するとともに、前記遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球製剤が細胞性免疫応答を媒介する能力を増強し、かつCD4T細胞を含み、該CD4T細胞が、本明細書に記載されているように、構成的プロモーターまたは薬物による誘導の可能なプロモーター制御下において、サイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチド、および/またはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドを発現することを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、1つ以上の前記細胞集団は、構成的プロモーターの制御下でキメラ抗原受容体を発現する。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節することによって、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。
【0212】
発現の誘導に有効な薬物の量は、形質導入細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%においてキメラ抗原受容体を誘導することができる薬物量、またはこれらのパーセント値のいずれかの間にある任意の数値の形質導入細胞においてキメラ抗原受容体を誘導することができる薬物量である。
【0213】
別の一実施形態は、疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、
前記対象の生体試料を分析して、前記疾患または障害に関連する標的分子の存在を検出すること、
本明細書に記載の養子免疫療法組成物を投与すること、および
前記誘導可能なプロモーターを誘導する薬物を投与することを含み、
前記キメラ受容体が、前記標的分子に特異的に結合することを特徴とする方法に関する。
【0214】
本発明によって治療することができる対象は、通常、ヒトまたは他の霊長類の対象であり、たとえば、獣医学の対象となるサルおよび類人猿である。対象は雄性でも雌性でもよく、任意の適切な年齢であってもよく、たとえば、幼児、幼年者、若年者、成人、および高齢者の対象が挙げられる。
【0215】
本発明の方法は、たとえば、血液悪性腫瘍、黒色腫、乳がん、脳がん、その他の上皮悪性腫瘍または固形腫瘍の治療または抑制に有用である。いくつかの実施形態において、これらの疾患または障害と関連する分子は、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、Her2、EGFR、CE7、hB7H3、CD19、CD20、CD22、メソテリン(mesothelin)、CEA、またはB型肝炎表面抗原である。
【0216】
本明細書に記載の方法を用いて処置することができる対象としては、がんを有すると同定または選択された対象が挙げられ、該がんとしては、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚がん(黒色腫を含む)、骨がん、および脳がんなどが挙げられるが、これらに限定されない。がん患者の同定および/または選択は、臨床的評価または診断的評価によって行うことができる。いくつかの実施形態においては、腫瘍関連抗原または腫瘍関連分子が知られており、該腫瘍としては、黒色腫、乳がん、脳がん、扁平上皮腫、大腸がん、白血病、骨髄腫、および/または前立腺がんなどが挙げられる。別の実施形態においては、前記腫瘍関連分子は、遺伝子改変キメラ受容体を発現する遺伝子改変T細胞で標的化することができる。前記がんとしては、B細胞リンパ腫、乳がん、脳がん、前立腺がん、および/または白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0217】
前述のように製造された細胞は、本発明の開示を踏まえ、当業者であれば容易に理解できる公知の技術またはその変法に従って、養子免疫療法のための方法および組成物において使用することができる。
【0218】
いくつかの実施形態において、前記細胞の製剤化は、まず該細胞を培地から回収し、次いで該細胞を洗浄し、投与に適した培地および容器システム(「薬学的に許容され得る」担体)中において該細胞を治療有効量まで濃縮することによって行われる。適切な注入用培地は、任意の等張性培地製剤であってもよく、典型的には、生理食塩水、Normosol R(アボット)もしくはPlasma-Lyte A(バクスター)、5%デキストロース水溶液、または乳酸リンゲル液を使用することができる。前記注入用培地には、ヒト血清アルブミン、ウシ胎児血清、またはその他のヒト血清成分を添加してもよい。
【0219】
いくつかの実施形態においては、組成物中の細胞の治療有効量または抑制有効量は、形質導入されたCD4細胞もしくはCD8細胞の量、または少なくとも2つの細胞サブセット(たとえば、CD8セントラルメモリーT細胞の1つのサブセットとCD4ヘルパーT細胞の1つのサブセット)の量を指す。より典型的には、10個を超えかつ10個以下の細胞であり、または10個以下または10個以下の細胞であり、たとえば10個または10個であってもよく、1010個を超える数の細胞であってもよい。細胞の数は、前記組成物の最終的な用途や、該組成物に含まれる細胞種などによって決定される。たとえば、特定の抗原に特異的な細胞が所望される場合、前記集団を占める該細胞の割合は70%を超え、一般的には、80%を超え、85%を超え、あるいは前記集団全体の90~95%を占める。本明細書に記載の用途において、前記細胞の量は通常1L以下であり、500ml以下であってもよく、さらには250ml以下もしくは100ml以下であってもよく、これらの量のいずれか2つの間にある量であってもよい。したがって、前記所望の細胞の密度は、典型的には、10細胞/mlよりも大きく、通常10細胞/mlよりも大きく、通常10細胞/ml以上である。臨床用途に適したこのような数の免疫細胞は、複数の注入に分割して投与してもよく、その累積投与量は10個、10個、10個、10個、10個、1010個、もしくは1011個の細胞、もしくはこれらの細胞数以上の細胞、またはこれらの値のいずれか2つで示されるエンドポイントで定義される任意の細胞数に相当する。
【0220】
いくつかの実施形態において、本発明のリンパ球は、個体に免疫を付与するために使用することができる。「免疫」は、病原体の感染に対する応答またはリンパ球反応の標的となる腫瘍に対する応答に伴う1つ以上の身体症状を軽減することを意味する。前記細胞の投与量は、通常、病原体に対する免疫を備える正常個体の体内に存在する量の範囲内である。したがって、細胞は、通常、注入によって投与され、1回の注入あたり2個以上から少なくとも10個~3×1010個までの範囲の数の細胞が投与され、少なくとも10個~10個の細胞を注入することが好ましい。前記T細胞は、単回の注入によって、または特定の期間における複数回の注入によって投与することができる。しかしながら、個体によって反応性が異なると考えられるため、注入する細胞の種類および細胞の量、ならびに注入の回数および複数回の注入を実施する期間は主治医によって決定され、日常的な検査によっても決定することができる。十分な量のTリンパ球(細胞傷害性Tリンパ球および/またはヘルパーTリンパ球を含む)の作製は、本明細書に例示したような、本発明による迅速な増殖方法を用いて容易に行うことができる。
【0221】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、同定または選択された対象(たとえば、黒色腫、乳がん、脳がん、扁平上皮腫、大腸がん、白血病、骨髄腫、および/もしくは前立腺がんを有することが同定または選択された対象)に静脈内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、骨髄内投与、リンパ節内投与、かつ/または脳脊髄液内投与される。いくつかの実施形態において、キメラ受容体により遺伝子改変された前記組成物は、腫瘍部位に送達される。あるいは、本明細書に記載の組成物は、本発明の細胞を腫瘍または免疫コンパートメントに標的化させるとともに、肺などの部位を避けることが可能な化合物と組み合わせることができる。
【0222】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、化学療法剤および/または免疫抑制剤とともに投与される。別の一実施形態においては、まず、本発明の免疫細胞以外の免疫細胞を抑制または殺傷する化学療法剤を患者に投与してから、本明細書に記載の組成物を投与する。場合によっては、化学療法を完全に省いてもよい。
【0223】
いくつかの実施形態においては、本発明の方法は、全身腫瘍組織量が減少するまで、本明細書に記載の改変T細胞と前記誘導因子(たとえば誘導を行うことの可能な薬物)とを組み合わせて投与することを含む。全身腫瘍組織量が減少すれば、誘導薬物の投与を中止して、キメラ抗原受容体の発現をオフに切り換え、キメラ抗原受容体を発現するT細胞の数を減少させてもよい。別の実施形態においては、腫瘍増殖の再発または増強が生じた場合に、別の時間点において前記誘導薬物を投与して、キメラ抗原受容体の発現をオンに切り換えてもよい。
【0224】
別の実施形態においては、前記細胞の持続的な刺激によるアナジーまたは応答不能状態を回避するため、前記誘導薬物を数日間、数週間または数ケ月間にわたって投与してから、数日間、数週間、または数ケ月間にわたって投与を中止し、その後、数日間、数週間、または数ケ月間にわたって再投与することによって、前記キメラ抗原受容体の発現を周期的に切り替えてもよい。
【0225】
デュアルパッケージされたレンチウイルスベクター構築および調製
7xHBD/mE1b-CD19t-her2t-T2A-epHIV7をコードする誘導可能なレンチウイルスベクターを構築した。CD19tに特異的なキメラ受容体は以下のもの用いて構築した。
(1)(G4S)3リンカー(配列番号12)ペプチドを介して連結された、CD19特異的mAb FMC63(配列番号3)のVL鎖セグメントおよびVH鎖セグメント(VL-リンカー-VH)。
(2)IgG4-Fcヒンジのみに由来するスペーサードメイン((配列番号4)によってコードされる12個のアミノ酸からなる配列)。スペーサーはヒンジドメイン内にS→P置換を有し、この置換位置は天然型IgG4-Fcタンパク質の108番目のアミノ酸に相当する。
ヒトCD28の膜貫通ドメイン(27アミノ酸長)(Uniprot Database: P10747(配列番号14))。
(4)(i)天然型のCD28タンパク質の186~187番目にLL→GG置換を有する、ヒトCD28の細胞内ドメイン(41アミノ酸長)(配列番号14);および/または
(ii)ヒト4-1BBの細胞内ドメイン(42アミノ酸長)(Uniprot Database: Q07011(配列番号15))のいずれかを含み;
(iii)ヒトCD3ζのアイソフォーム3の細胞内ドメイン(112アミノ酸長)(Uniprot Database: P20963(配列番号16))に連結されている、シグナル伝達モジュール。
【0226】
CD19tをコードする核酸配列は、Her2tをコードする配列(配列番号44)および自己切断T2A配列(配列番号8)をコードする配列と連結させた。
【0227】
7xHBD/mEF1ap-ZsGreen-epHIV7をコードする条件的レンチウイルスベクターを構築した。合成プロモーター7xHBD/mEF1apは、ヒトアルブミンプロモーターからクローニングした肝細胞核ファミリー-1(HNF-1)の7つの最小結合部位と、huEF1αプロモーターのTATAボックスとを組み合わせることによって構築した。7xHBD/mEF1apの配列を配列番号41に示す。このようなベクターを使用することによって、タモキシフェンの存在下においてのみ、HEA-3が7xHBD/EF1mpプロモーターに結合することによって、導入遺伝子の発現の「オン」の状態が誘導される。
【0228】
7xHBD/mEF1ap-CD19t-T2A-DHFRdm_epHIV7をコードする条件的レンチウイルスベクターを構築した。CD19tに特異的なキメラ受容体は以下のもの用いて構築した。
(1)(G4S)3リンカー(配列番号12)ペプチドを介して連結された、CD19特異的mAb FMC63(配列番号3)のVL鎖セグメントおよびVH鎖セグメント(VL-リンカー-VH)。
(2)IgG4-Fcヒンジのみに由来するスペーサードメイン((配列番号4)によってコードされる12個のアミノ酸からなる配列)。スペーサーはヒンジドメイン内にS→P置換を有し、この置換位置は天然型IgG4-Fcタンパク質の108番目のアミノ酸に相当する。
ヒトCD28の膜貫通ドメイン(27アミノ酸長)(Uniprot Database: P10747(配列番号14))。
(4)(i)天然型のCD28タンパク質の186~187番目にLL→GG置換を有する、ヒトCD28の細胞内ドメイン(41アミノ酸長)(配列番号14);および/または
(ii)ヒト4-1BBの細胞内ドメイン(42アミノ酸長)(Uniprot Database: Q07011(配列番号15))のいずれかを含み;
(iii)ヒトCD3ζのアイソフォーム3の細胞内ドメイン(112アミノ酸長)(Uniprot Database: P20963(配列番号16))に連結されている、シグナル伝達モジュール。
【0229】
CD19tをコードする核酸配列は、自己切断T2A配列をコードする配列(配列番号8)およびDHFRdmをコードする配列(配列番号46)と連結させた。
【0230】
転写制御因子HEA-3は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメインが、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインにインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κβのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。タモキシフェンの非存在下では、細胞質内の熱ショックタンパク質90(HSP90)がタモキシフェン結合活性部位に結合することによって、HEA-3が核内から排除されるため、導入遺伝子の発現は「オフ」の状態となる。細胞質内にナノモル濃度のタモキシフェンが存在すると、ER-LBDへの結合に対してHSP90と活発に競合することによってこれを阻害し、HEA-3の核内への転座が生じる。核内への転座が起こると、HEA-3は、自体の特異的結合部位である合成プロモーターと結合することが容易となる。導入遺伝子をHEA-3応答性合成プロモーター(7xHBD/EF1mp)の下流に配置した場合に、タモキシフェンの存在下においてHEA-3に応答した転写反応が起こる。
【0231】
転写活性化因子HEA3コードするポリヌクレオチド(配列番号39)およびマーカー配列EGFRtコードするポリヌクレオチド(配列番号9)に構成的プロモーターEF-1αを連結させることによって、構成的構築物を構築した。
【0232】
各導入遺伝子をコードするヒトコドン最適化ヌクレオチド配列を合成し(LifeTechnologies、カールズバッド、CA)、NheIおよびNot1制限部位を用いて、epHIV7レンチウイルスベクターにクローニングした。このepHIV7レンチウイルスベクターは、pHIV7のサイトメガロウイルスプロモーターをEF-1プロモーターと置き換えることによってpHIV7ベクターから作製した。
【0233】
誘導可能なCD19キメラ受容体をコードする構成的レンチウイルスは、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech)を用いて、レンチウイルスベクターならびにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2、およびpCMV-Gを共トランスフェクションした293T細胞において産生させた。トランスフェクションの16時間後に培地を交換し、トランスフェクションの24時間後、48時間後および72時間後にレンチウイルスを回収した。
【0234】
タモキシフェンによる誘導によってCD19キメラ受容体およびZsGreenを発現するJurkat T細胞株の作製
Jurkat細胞を32℃、2,100rpmで45分間遠心分離して活性化してから3日目に、1μg/mLポリブレン(Millipore)を添加したレンチウイルスの培養上清(MOI=3)を用いて形質導入した。10%ヒト血清、2mM L-グルタミン、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI(CTL培地)中で前記T細胞を増殖させ、最終濃度が50U/mLとなるように組換えヒト(rh)IL-2を48時間毎に添加した。
【0235】
さらなる実施形態
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
【0236】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムは、第1の核酸および第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン、アポトーシスを制御するポリペプチドおよび/またはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。典型的な一実施形態において、前記第2の核酸は、構成的プロモーターの制御下でキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0237】
別の態様では、本発明の開示は、腫瘍特異的かつサブセット特異的な遺伝子改変CD4T細胞の養子移入などによる細胞免疫療法によって媒介される免疫応答を付与かつ/または増強する組成物であって、前記CD4T細胞が、CD8T細胞に能力を付与し、かつ/またはCD8T細胞の能力を増強することによって、抗腫瘍反応を維持し、腫瘍特異的な増殖を増加させかつ/または最大限にすることを特徴とする組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されているように、前記CD4T細胞は、制御されたプロモーターの制御下でキメラ受容体の核酸配列および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている。
【0238】
別の一態様では、本発明の開示は、腫瘍特異的かつサブセット特異的な遺伝子改変CD8T細胞の養子移入などによる細胞免疫療法によって媒介される免疫応答を付与かつ/または増強する組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されているように、前記CD8T細胞は、制御されたプロモーターの制御下でキメラ受容体の核酸配列および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現する。
【0239】
別の一実施形態では、本発明は、疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行う方法あって、細胞性免疫応答を提供する遺伝子改変Tリンパ球製剤を該対象に投与すること、および該遺伝子改変Tリンパ球内の導入遺伝子を誘導する薬物を投与することを含む方法を提供する。
【0240】
いくつかの実施形態においては、前記遺伝子改変CD8細胞集団および前記遺伝子改変CD4細胞集団を共投与する。いくつかの実施形態においては、前記T細胞は自己由来T細胞または同種異系T細胞である。上記の方法の様々な変法も可能である。たとえば、前記CD4T細胞および前記CD8T細胞によって発現されるキメラ受容体は、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0241】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。
【0242】
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターまたは構成的プロモーターである。
【0243】
いくつかの実施形態においては、システムによってコードされるキメラ受容体ポリペプチドが提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。
【0244】
いくつかの実施形態においては、システムを含む宿主細胞が提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0245】
いくつかの実施形態においては、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択されるCD8T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0246】
いくつかの実施形態においては、インビトロにおいて宿主細胞を製造する方法であって、
a)システムを提供すること、
b)単離された個別のTリンパ球集団に前記システムを導入し、各Tリンパ球集団をインビトロで増殖させることを含む方法が提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記Tリンパ球が増殖しており、前記方法は、抗CD3および/または抗CD28と少なくとも1つの恒常性サイトカインとの存在下において、前記Tリンパ球を、細胞移入における使用に十分な数に達するまで培養することをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記リンパ球はCD8またはCD4である。いくつかの実施形態においては、前記細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択されるCD8T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0247】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症の治療のための、宿主細胞または組成物と該宿主細胞中または該組成物中の導入遺伝子の発現を誘導する薬物との組み合わせの使用が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記単離されたTリンパ球集団はT細胞前駆細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、脳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択されるCD8T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0248】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、組成物または宿主細胞を前記対象に投与すること、および該組成物中または該宿主細胞中の導入遺伝子の発現を誘導する薬物を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された構成的または誘導可能な第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されており、前記第2の核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記スペーサーは、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されるように最適化されている。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はシステムを含む。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつリガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該リガンド結合ドメインがリガンドに特異的であり、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能であり、前記第1の核酸が、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含むこと;ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記薬物は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、前記EF1αpである。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は第1のベクターをさらに含み、前記第2の核酸は第2のベクターをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第1のベクターおよび第2のベクターは、単一のウイルスベクターにパッケージされている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および第2の核酸はベクターを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンド結合ドメインはリガンドに特異的であり、該リガンドは腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを制御するポリペプチドまたはチェックポイントシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、ならびに
前記第2の核酸が、前記誘導可能なプロモーターの転写活性化因子をコードする核酸に作動可能に連結された第2のプロモーターを含むことを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターである。いくつかの実施形態においては、チェックポイントシグナル伝達を調節する前記ポリペプチドは、負のチェックポイント制御因子を抑制する。いくつかの実施形態においては、前記負のチェックポイント制御因子は、VISTA、LAG-3および/またはTIM3を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、リガンド結合ドメインを含むキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、最適化されたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、およびd)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記リガンドは、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子または標的細胞集団に発現されているその他の分子であり、該リガンドによってリンパ球による認識、調節、抑制および/または排除を誘導することが可能である。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である宿主細胞を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である別の宿主細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍および血液悪性腫瘍から選択される。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、脳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、前記単離されたTリンパ球集団はT細胞前駆細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。いくつかの実施形態においては、組成物は、第1の宿主細胞と第2の宿主細胞とを含み、該第1の宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択されるCD8T細胞傷害性リンパ球、またはナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球であり、前記第2の宿主細胞はT細胞前駆細胞である。いくつかの実施形態においては、前記T細胞前駆細胞は造血幹細胞である。
【0249】
さらなる実施形態
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導可能なプロモーターであること、ならびに
前記第2の核酸が、転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、発現誘導システムであって、
a)誘導可能なプロモーター、
b)キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、および
c)転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドを含み、
該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記誘導可能なプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。
いくつかの実施形態においては、前記薬物またはその代謝産物は、
(i)ヒト対象に毎日または毎週投与した場合に忍容される薬物もしくはその代謝産物;
(ii)ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する分子もしくはその代謝産物;ならびに/または
(iii)タモキシフェンおよび/もしくはタモキシフェンの代謝産物もしくはタモキシフェンの類似体を含む。
いくつかの実施形態において、前記転写活性化因子は、
(a)DNA結合ドメイン、
(b)前記薬物またはその代謝産物に特異的に結合するリガンド結合ドメイン、および
(c)トランス活性化ドメインを含み、
これらはこの順序で連結および/または融合されていてもよい。
前記システムの実施形態のいくつかにおいて、
(a)前記DNA結合ドメインは、天然のリンパ球または天然のT細胞において発現されるタンパク質には存在しないDNA結合部位を含み;かつ/または
(b)前記薬物またはその代謝産物は、前記ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する前記分子またはその代謝産物であり、前記薬物またはその代謝産物と前記リガンド結合ドメインとの結合が、前記ヒト受容体よりも前記リガンド結合領域に選択的であることから、前記リガンド結合ドメインと前記薬物またはその代謝産物との結合は、前記ヒト受容体との結合よりも強く、たとえば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍または4倍強力であってもよく;かつ/または
(c)前記トランス活性化ドメインは、p65トランス活性化ドメインまたはその機能性バリアントを含み;かつ/または
(d)前記第1のプロモーターは、前記DNA結合ドメインに対する結合部位を1つ以上含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記転写活性化因子に存在する単一または複数のDNA結合ドメイン以外のヒトDNA結合ドメインに結合する結合部位を含んでおらず;かつ/または前記第1のプロモーターは合成キメラプロモーターであり、かつ/または前記転写活性化因子は合成キメラ転写活性化因子であり;かつ/または前記DNA結合ドメインは肝細胞核因子に存在するDNA結合ドメインを含み、この肝細胞核因子はHNF-1αまたはHNF-1βであってもよい。前記システムの実施形態のいくつかにおいては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、EF1αプロモーターまたはその機能性部分であるか、これらのいずれかを含む。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1核酸は第1のベクターに含まれており、さらに該第1のベクターは前記システムに含まれており、かつ前記第2核酸は第2のベクターに含まれおり、さらに該第2のベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および前記第2の核酸、すなわち、前記第1のプロモーター、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記第2のプロモーターおよび前記トランス活性化因子をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに含まれており、さらに該ベクターは前記システムに含まれている。前記システムの実施形態のいくつかにおいては、該システムは単一のウイルスパッケージングベクターに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第1のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第2のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。
【0250】
いくつかの実施形態においては、発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、誘導可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを抑制するポリペプチドまたは負のチェックポイントシグナル伝達を抑制するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、および
前記第2の核酸が第2のプロモーターを含み、該第2のプロモーターが、薬物またはその代謝産物もしくは類似体の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができる転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターであることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該組換え抗原受容体はキメラ抗原受容体であってもよい。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ抗原受容体は、
a)リンパ球による認識および排除を媒介するのに適切な標的細胞集団に発現されている腫瘍特異的な分子、ウイルス分子またはその他の分子であってもよいリガンドに結合するリガンド結合ドメイン、
b)前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されうるポリペプチドスペーサー、
c)膜貫通ドメインおよび
d)細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0251】
いくつかの実施形態においては、システムによってコードされたキメラ受容体ポリペプチドが提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導可能なプロモーターであること、ならびに
前記第2の核酸が、転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、発現誘導システムであって、
a)誘導可能なプロモーター、
b)キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、および
c)転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドを含み、
該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記誘導可能なプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。
いくつかの実施形態においては、前記薬物またはその代謝産物は、
(i)ヒト対象に毎日または毎週投与した場合に忍容される薬物もしくはその代謝産物;
(ii)ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する分子もしくはその代謝産物;ならびに/または
(iii)タモキシフェンおよび/もしくはタモキシフェンの代謝産物もしくはタモキシフェンの類似体を含む。
いくつかの実施形態において、前記転写活性化因子は、
(a)DNA結合ドメイン、
(b)前記薬物またはその代謝産物に特異的に結合するリガンド結合ドメイン、および
(c)トランス活性化ドメインを含み、これらはこの順序で連結および/または融合されていてもよい。
前記システムの実施形態のいくつかにおいて、
(a)前記DNA結合ドメインは、天然のリンパ球または天然のT細胞において発現されるタンパク質には存在しないDNA結合部位を含み;かつ/または
(b)前記薬物またはその代謝産物は、前記ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する前記分子またはその代謝産物であり、前記薬物またはその代謝産物と前記リガンド結合ドメインとの結合が、前記ヒト受容体よりも前記リガンド結合領域に選択的であることから、前記リガンド結合ドメインと前記薬物またはその代謝産物との結合は、前記ヒト受容体との結合よりも強く、たとえば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍または4倍強力であってもよく;かつ/または
(c)前記トランス活性化ドメインは、p65トランス活性化ドメインまたはその機能性バリアントを含み;かつ/または
(d)前記第1のプロモーターは、前記DNA結合ドメインに対する結合部位を1つ以上含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記転写活性化因子に存在する単一または複数のDNA結合ドメイン以外のヒトDNA結合ドメインに結合する結合部位を含んでおらず;かつ/または前記第1のプロモーターは合成キメラプロモーターであり、かつ/または前記転写活性化因子は合成キメラ転写活性化因子であり;かつ/または前記DNA結合ドメインは肝細胞核因子に存在するDNA結合ドメインを含み、この肝細胞核因子はHNF-1αまたはHNF-1βであってもよい。請求項1~8のいずれか一項に記載されているように、前記第1のプロモーターは、配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、EF1αプロモーターまたはその機能性部分であるか、これらのいずれかを含む。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1核酸は第1のベクターに含まれており、さらに該第1のベクターは前記システムに含まれており、かつ前記第2核酸は第2のベクターに含まれおり、さらに該第2のベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および前記第2の核酸、すなわち、前記第1のプロモーター、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記第2のプロモーターおよび前記トランス活性化因子をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに含まれており、さらに該ベクターは前記システムに含まれている。前記システムの実施形態のいくつかにおいては、該システムは単一のウイルスパッケージングベクターに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第1のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第2のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。
いくつかの実施形態においては、前記発現誘導システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、誘導可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを抑制するポリペプチドまたは負のチェックポイントシグナル伝達を抑制するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、および
前記第2の核酸が第2のプロモーターを含み、該第2のプロモーターが、薬物またはその代謝産物もしくは類似体の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができる転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターであることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該組換え抗原受容体はキメラ抗原受容体であってもよい。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ抗原受容体は、
a)リンパ球による認識および排除を媒介するのに適切な標的細胞集団に発現されている腫瘍特異的な分子、ウイルス分子またはその他の分子であってもよいリガンドに結合するリガンド結合ドメイン、
b)前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されうるポリペプチドスペーサー、
c)膜貫通ドメインおよび
d)細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0252】
いくつかの実施形態においては、システムまたはウイルスパッケージングベクターを含む宿主細胞が提供される。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導可能なプロモーターであること、ならびに
前記第2の核酸が、転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、発現誘導システムであって、
a)誘導可能なプロモーター、
b)キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、および
c)転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドを含み、
該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記誘導可能なプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。
いくつかの実施形態においては、前記薬物またはその代謝産物は、
(i)ヒト対象に毎日または毎週投与した場合に忍容される薬物もしくはその代謝産物;
(ii)ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する分子もしくはその代謝産物;ならびに/または
(iii)タモキシフェンおよび/もしくはタモキシフェンの代謝産物もしくはタモキシフェンの類似体を含む。
いくつかの実施形態において、前記転写活性化因子は、
(a)DNA結合ドメイン、
(b)前記薬物またはその代謝産物に特異的に結合するリガンド結合ドメイン、および
(c)トランス活性化ドメインを含み、これらはこの順序で連結および/または融合されていてもよい。
前記システムの実施形態のいくつかにおいて、
(a)前記DNA結合ドメインは、天然のリンパ球または天然のT細胞において発現されるタンパク質には存在しないDNA結合部位を含み;かつ/または
(b)前記薬物またはその代謝産物は、前記ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する前記分子またはその代謝産物であり、前記薬物またはその代謝産物と前記リガンド結合ドメインとの結合が、前記ヒト受容体よりも前記リガンド結合領域に選択的であることから、前記リガンド結合ドメインと前記薬物またはその代謝産物との結合は、前記ヒト受容体との結合よりも強く、たとえば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍または4倍強力であってもよく;かつ/または
(c)前記トランス活性化ドメインは、p65トランス活性化ドメインまたはその機能性バリアントを含み;かつ/または
(d)前記第1のプロモーターは、前記DNA結合ドメインに対する結合部位を1つ以上含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記転写活性化因子に存在する単一または複数のDNA結合ドメイン以外のヒトDNA結合ドメインに結合する結合部位を含んでおらず;かつ/または前記第1のプロモーターは合成キメラプロモーターであり、かつ/または前記転写活性化因子は合成キメラ転写活性化因子であり;かつ/または前記DNA結合ドメインは肝細胞核因子に存在するDNA結合ドメインを含み、この肝細胞核因子はHNF-1αまたはHNF-1βであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、EF1αプロモーターまたはその機能性部分であるか、これらのいずれかを含む。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1核酸は第1のベクターに含まれており、さらに該第1のベクターは前記システムに含まれており、かつ前記第2核酸は第2のベクターに含まれおり、さらに該第2のベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および前記第2の核酸、すなわち、前記第1のプロモーター、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記第2のプロモーターおよび前記トランス活性化因子をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに含まれており、さらに該ベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、単一のウイルスパッケージングベクターに含まれている。このような実施形態いくつかにおいては、前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第1のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第2のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。
いくつかの実施形態においては、前記発現誘導システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、誘導可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを抑制するポリペプチドまたは負のチェックポイントシグナル伝達を抑制するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、および
前記第2の核酸が第2のプロモーターを含み、該第2のプロモーターが、薬物またはその代謝産物もしくは類似体の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができる転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターであることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該組換え抗原受容体はキメラ抗原受容体であってもよい。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ抗原受容体は、
a)リンパ球による認識および排除を媒介するのに適切な標的細胞集団に発現されている腫瘍特異的な分子、ウイルス分子またはその他の分子であってもよいリガンドに結合するリガンド結合ドメイン、
b)前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されうるポリペプチドスペーサー、
c)膜貫通ドメインおよび
d)細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0253】
いくつかの実施形態においては、宿主細胞であって、初代ヒトリンパ球であり、かつ核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする宿主細胞が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。
【0254】
いくつかの実施形態においては、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む組成物が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球を含む。
【0255】
いくつかの実施形態においては、インビトロにおいて宿主細胞を製造する方法であって、単離された個別のTリンパ球集団にシステムを導入すること、および各Tリンパ球集団をインビトロで増殖させることを含む方法が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。
いくつかの実施形態においては、該システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導可能なプロモーターであること、ならびに
前記第2の核酸が、転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された第2のプロモーターを含み、該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、発現誘導システムであって、
a)誘導可能なプロモーター、
b)キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、および
c)転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドを含み、該転写活性化因子が、薬物またはその代謝産物の存在下で前記誘導可能なプロモーターからの転写を活性化することができることを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記誘導可能なプロモーターに作動可能に連結されている。
いくつかの実施形態においては、前記薬物またはその代謝産物は、
(i)ヒト対象に毎日または毎週投与した場合に忍容される薬物もしくはその代謝産物;
(ii)ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する分子もしくはその代謝産物;ならびに/または
(iii)タモキシフェンおよび/もしくはタモキシフェンの代謝産物もしくはタモキシフェンの類似体を含む。
いくつかの実施形態において、前記転写活性化因子は、
(a)DNA結合ドメイン、
(b)前記薬物またはその代謝産物に特異的に結合するリガンド結合ドメイン、および
(c)トランス活性化ドメインを含み、これらはこの順序で連結および/または融合されていてもよい。
前記システムの実施形態のいくつかにおいて、
(a)前記DNA結合ドメインは、天然のリンパ球または天然のT細胞において発現されるタンパク質には存在しないDNA結合部位を含み;かつ/または
(b)前記薬物またはその代謝産物は、前記ヒト受容体(エストロゲン受容体であってもよい)と特異的に結合する前記分子またはその代謝産物であり、前記薬物またはその代謝産物と前記リガンド結合ドメインとの結合が、前記ヒト受容体よりも前記リガンド結合領域に選択的であることから、前記リガンド結合ドメインと前記薬物またはその代謝産物との結合は、前記ヒト受容体との結合よりも強く、たとえば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍または4倍強力であってもよく;かつ/または
(c)前記トランス活性化ドメインは、p65トランス活性化ドメインまたはその機能性バリアントを含み;かつ/または
(d)前記第1のプロモーターは、前記DNA結合ドメインに対する結合部位を1つ以上含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記転写活性化因子に存在する単一または複数のDNA結合ドメイン以外のヒトDNA結合ドメインに結合する結合部位を含んでおらず;かつ/または前記第1のプロモーターは合成キメラプロモーターであり、かつ/または前記転写活性化因子は合成キメラ転写活性化因子であり;かつ/または前記DNA結合ドメインは肝細胞核因子に存在するDNA結合ドメインを含み、この肝細胞核因子はHNF-1αまたはHNF-1βであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは配列番号41の核酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは構成的プロモーターである。いくつかの実施形態においては、前記第2のプロモーターは、EF1αプロモーターまたはその機能性部分であるか、これらのいずれかを含む。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子は、配列番号40の配列を有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態においては、前記第1核酸は第1のベクターに含まれており、さらに該第1のベクターは前記システムに含まれており、かつ前記第2核酸は第2のベクターに含まれおり、さらに該第2のベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸および前記第2の核酸、すなわち、前記第1のプロモーター、前記キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、前記第2のプロモーターおよび前記トランス活性化因子をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに含まれており、さらに該ベクターは前記システムに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記システムは、単一のウイルスパッケージングベクターに含まれている。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態においては、前記第1の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第1のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、選択マーカーをコードする核酸配列をさらに含むか、あるいは前記システムは、前記第2のプロモーターに作動可能に連結された選択マーカーをさらに含む。
いくつかの実施形態においては、前記発現誘導システムは、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
前記第1の核酸が、誘導可能な第1のプロモーターを含み、かつサイトカイン、ケモカイン受容体、アポトーシスを抑制するポリペプチドまたは負のチェックポイントシグナル伝達を抑制するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されていること、および
前記第2の核酸が第2のプロモーターを含み、該第2のプロモーターが、薬物またはその代謝産物もしくは類似体の存在下で前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができる転写活性化因子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターであることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記第2の核酸は、組換え抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該組換え抗原受容体はキメラ抗原受容体であってもよい。
いくつかの実施形態においては、前記キメラ抗原受容体は、
a)リンパ球による認識および排除を媒介するのに適切な標的細胞集団に発現されている腫瘍特異的な分子、ウイルス分子またはその他の分子であってもよいリガンドに結合するリガンド結合ドメイン、
b)前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されうるポリペプチドスペーサー、
c)膜貫通ドメインおよび
d)細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
いくつかの実施形態においては、前記第1のプロモーターは、前記第2のプロモーターとは逆向きである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは抗体フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記リガンド結合ドメインは一本鎖可変フラグメントである。いくつかの実施形態においては、前記腫瘍に特異的な分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、CE7、EGFR、hB7H3、メソテリン(mesothelin)、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、前記集団の前記Tリンパ球が増殖しており、前記方法は、抗CD3および/または抗CD28と少なくとも1つの恒常性サイトカインとの存在下において、前記Tリンパ球を、細胞移入における使用に十分な数に達するまで培養することをさらに含む。いくつかの実施形態においては、抗CD3および/または抗CD28と少なくとも1つの恒常性サイトカインとの存在下での培養は、前記システムを導入する前またはその後に行うことができる。
【0256】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症の治療のための、前記宿主細胞または組成物と薬物またはその代謝産物との組み合わせの使用が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球を含む。
【0257】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症の治療または抑制における使用のための細胞および薬物であって、該細胞が、
(a)前記がんまたはウイルス感染症と関連する抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、
(b)誘導可能な合成プロモーター、および
(c)前記合成プロモーターに特異的に結合するDNA結合ドメインと薬物またはその代謝産物に特異的に結合するドメインとを含み、
該薬物またはその代謝産物の存在下において前記合成プロモーターからの転写を誘導することができる転写活性化因子を含む細胞および薬物が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。
【0258】
いくつかの実施形態においては、がんまたはウイルス感染症を有する対象において細胞免疫療法を行う方法であって、組成物または宿主細胞を前記対象に投与し、薬物またはその代謝産物を投与することによって、前記プロモーターからの発現を誘導することを含む方法が提供される。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、薬学的に許容される添加剤中に宿主細胞を含む。
いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は初代ヒトリンパ球であり、核酸とポリヌクレオチドとを含み、
a)前記核酸が第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、天然の初代ヒトリンパ球には存在しないDNA結合ドメインに対する結合部位を含む誘導可能な合成プロモーターであること、ならびに
b)前記ポリヌクレオチドが、転写活性化因子をコードし、該転写活性化因子が、
i)天然の初代ヒトリンパ球に存在するDNA配列には特異的に結合しないDNA結合ドメイン;
ii)薬物またはその代謝産物に特異的に結合するが、天然の初代ヒトリンパ球に存在する分子とは結合しないか、該分子に対する親和性が低いドメイン;および
iii)トランス活性化ドメインを含み、前記転写活性化因子が、薬物もしくはその代謝産物の存在下または前記(ii)に記載のドメインに薬物またはその代謝産物が結合した後に、前記第1のプロモーターからの転写を誘導することができることを特徴とする。
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、該ポリヌクレオチドは前記第1のプロモーターに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態においては、前記細胞は第2のプロモーターをさらに含み、該第2のプロモーターは、前記転写活性化因子をコードする前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該第2のプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球である。いくつかの実施形態においては、前記組成物は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞およびバルクCD8T細胞からなる群から選択される細胞傷害性CD8Tリンパ球を含み、該組成物は、さらに、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞およびバルクCD4T細胞からなる群から選択されるCD4Tヘルパーリンパ球を含む。いくつかの実施形態においては、前記がんは、固形腫瘍および血液悪性腫瘍から選択される。いくつかの実施形態においては、前記固形腫瘍は、乳がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。
【0259】
本発明の開示の別の態様は、細胞において薬物により制御発現される導入遺伝子を送達するための遺伝子システムを包含し、この発現は、たとえば、薬物による組換えタンパク質の制御発現であり、該組換えタンパク質は、たとえば、組換え抗原受容体および/または組換え抗原受容体を発現する細胞によって発現される分子である。一実施形態においては、制御発現される導入遺伝子は、たとえば養子細胞療法(たとえば養子免疫療法)などにおいて使用するため、細胞(たとえばリンパ球)に形質導入され、かつ/または細胞内に含まれている。このようなシステムは、概して治療目的を損なうことなく、細胞療法(たとえばキメラ抗原受容体(CAR)を使用した養子療法)に厳格な安全性を付与するものである。このような特徴を有することから、いくつかの態様においては、インビボでの組換えタンパク質の発現(たとえばCARの発現)を臨床医によってリアルタイムで制御することが可能となる。薬物応答性に基づいて組換え遺伝子(たとえばCAR)の発現の転写制御が可能となるようにベクターを遺伝子改変し、たとえば臨床医により処方された薬物で刺激することなどによって、インビボで該組換え遺伝子(たとえばCAR)の活性および/またはその他の細胞メディエーターの活性を「オン」または「オフ」に切り替えることができ、その結果、臨床的に許容可能な薬物動態、組織分布、および細胞外間隙とリンパ球の細胞質との間の分配を達成することができる。本発明の遺伝子システムは薬物で制御される導入遺伝子の発現を提供し、薬物の非存在下で導入遺伝子を機能的に「オフ」の状態とし、かつ薬物の存在下で導入遺伝子を機能的に「オン」の状態とすることができる。
【0260】
前述の薬物の一例として、タモキシフェンが挙げられる。タモキシフェンは、エストロゲンのアンタゴニスト/部分アゴニストであり、FDA認可薬物として市販されている。タモキシフェンは経口投与され、長期間にわたって連日投与することができる。タモキシフェンは、安全性が証明されており、薬物動態プロファイルが好適であり、組織分布が良好であり、細胞外間隙と細胞質との間の分配係数が低い。タモキシフェンの機能的類似体を使用してもよい。また、たとえば、安全性が証明されていること、薬物動態プロファイルが好適であること、組織分布が良好であること、細胞外間隙と細胞質との間の分配係数が低いこと、および/または毒性が低いことを目安に他の薬物を選択することもできる。
【0261】
いくつかの実施形態においては、前記システムは、合成転写制御因子(たとえば合成転写活性化因子)を使用し、タモキシフェンの存在下でこの合成転写制御因子を誘導することによって、導入遺伝子の(たとえば上流に)作動可能に連結された合成プロモーターに結合し、(たとえば該導入遺伝子の)前記プロモーターからの発現を誘導することができる。本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいて、前記転写活性化因子は薬物またはその代謝産物によって制御され、たとえば、タモキシフェンにより制御される転写活性化因子または転写因子であり、これは、タモキシフェンまたはその類似体もしくは代謝産物によって制御されてもよく、たとえば誘導されてもよい。典型的なタモキシフェン制御性転写因子は、キメラ転写因子であり、たとえば、前記システムの合成プロモーターに特異的なDNA結合ドメイン、(たとえばエストロゲンなどの天然分子に存在するドメインが有する親和性よりも強い親和性で)タモキシフェンおよび/またはその単一もしくは複数の代謝産物と特異的に結合するドメイン、および転写活性化ドメイン(たとえば強力な転写活性化ドメイン)を含むキメラ転写因子である。タモキシフェンで制御される転写因子(「TamR-tf」あるいは「HEA3」とも称される)の一例は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメインが、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異体(G521R)(エストロゲンよりも高い親和性でタモキシフェン代謝産物に結合する)にインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κBのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。TamR-tfの典型的なアミノ酸配列は表10に記載されており、配列番号40で示されている。この配列において、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)の前記タモキシフェン特異的変異体は、TamR-tfの282~595番目のアミノ酸からなる配列であり、野生型のエストロゲン受容体のリガンド結合ドメインと比較すると521番目のアミノ酸に変異を有する。NF-κBのp65活性化ドメイン(p65)は、配列番号40の596~862番目のアミノ酸からなる配列である。たとえば転写因子の特性を向上させるために、前記転写活性化因子に変更を加えてもよく、たとえば、前記エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えることによって、前記転写因子のエストロゲン類似体に対する親和性を増加させてもよく、かつ前記p65転写活性化ドメイン内の1つ以上のアミノ酸に変更を加えてもよいが、前記転写活性化因子への変更はこれらに限定されない。いくつかの実施形態においては、転写活性化因子に変更を加えることによって、tamR-tfの1つ以上の機能を保持または実質的に保持された改変転写因子が得られ、tamR-tfの1つ以上の機能としては、たとえば、タモキシフェンに特異的な結合性;任意の天然分子と同等、実質的に同等もしくは少なくとも同等の、タモキシフェンもしくはその代謝産物に対する特異性;任意の天然分子と少なくとも同等もしくはほぼ同等の、特異的なDNA結合機能;および/または同等もしくは少なくとも同等の転写活性化活性が挙げられる。
【0262】
タモキシフェンの非存在下では、通常、細胞質内の熱ショックタンパク質90(HSP90)がタモキシフェン結合活性部位に結合することによって、前記転写活性化因子(たとえばTamR-tf)が核内から排除されるため、tamR-tfにより誘導可能なプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の発現は「オフ」の状態となる。細胞質内にナノモル濃度のタモキシフェンが存在すると、ER-LBDへの結合に対してHSP90と活発に競合することによってこれを阻害し、TamR-tfの核内への転座が生じる。核内への転座が起こると、TamR-tfは、特異的結合部位である合成プロモーター(たとえば7xHBD/EF1αp)と結合することが容易となる。タモキシフェンの存在下では、TamR-tfが前記合成プロモーター(たとえば7xHBD/EF1αpプロモーター)に結合することによって、該合成プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の発現が「オン」の状態へと誘導される。いくつかの実施形態においては、この転写制御因子は、導入遺伝子の発現の制御を様々なレベルで行えるように改変されていてもよい。TamR-tfのリガンド結合ドメイン内のアミノ酸を置換することによって、タモキシフェンおよびその代謝産物に対する選択的応答が可能となる。4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)は、TamR-tf活性に関して薬理学的活性が最も高い代謝物であり、内在性エストロゲンと相互作用を起こさない。
いくつかの実施形態においては、キメラ抗原受容体の発現誘導システムであって、
a)第1の核酸および
b)第2の核酸を含み、
第1の核酸が、薬物による誘導の可能な第1のプロモーターを含み、該第1のプロモーターが、たとえばキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、該キメラ抗原受容体がリガンド結合ドメインを含んでいてもよく、該リガンド結合ドメインがリガンドに結合し、該リガンドが、腫瘍に特異的な分子、ウイルス分子、またはリンパ球による認識および排除の媒介に適切な標的細胞集団上に発現されるその他の分子であり、第1の核酸が、前記リガンドに応答したT細胞の増殖および/またはサイトカインの産生が対照のキメラ受容体よりも増強されうるポリペプチドスペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含むことを特徴とするシステムが提供される。
いくつかの実施形態においては、前記システムは、前記誘導可能なプロモーターの転写調節物質をコードする第2の核酸をさらに含み、該転写調節物質は、たとえば薬物またはその代謝産物の存在下などにおいて、前記第1のプロモーターからの転写を調節する(たとえば活性化させる)ことができ、典型的には、前記システムは、前記転写調節物質をコードする核酸に作動可能に連結された第2の構成的プロモーターまたは誘導可能なプロモーターを含む。
【0263】
前記誘導システムの実施形態のいくつかにおいて、前記第1のプロモーターは、細胞の生存および増殖を促進する遺伝子、アポトーシスを阻害する遺伝子および/または負のチェックポイントシグナル伝達を抑制する遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。このような遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子、IL-15をコードする遺伝子、ケモカイン受容体をコードする遺伝子、Bcl2をコードする遺伝子、CA-Aktをコードする遺伝子、dn-TGFβ RIIIをコードする遺伝子、dn-SHP1/2をコードする遺伝子、および/またはPD-1-CD28キメラをコードする遺伝子を含む。
【0264】
いくつかの実施形態においては、前記システムは合成転写活性化因子を使用し、該合成転写活性化因子は、前記薬物(たとえばタモキシフェン)またはその代謝産物の存在下(たとえば該薬物の投与後)において、導入遺伝子の上流の合成プロモーターへの結合が誘導され、発現を誘導する。いくつかの実施形態においては、前記転写活性化因子はTamR-tf(HEA3)、または類似したドメインを有する、タモキシフェンによる誘導の可能なその他の転写活性化因子である。タモキシフェンで制御されるこの転写因子(「TamR-tf」あるいは「HEA3」とも称される)は、ヒト由来サブユニットを含むキメラ転写因子であり、肝細胞核因子1-α(HNF-1α)のN末端に存在するDNA結合ドメイン(たとえば配列番号40の1~281番目のアミノ酸)が、エストロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(ER-LBD)のタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインにインフレームで融合されており、このタモキシフェン特異的変異リガンド結合ドメインがさらにNF-κBのp65活性化ドメイン(p65)に融合されている。
【0265】
本明細書に記載の組成物の実施形態のいくつかにおいて、前記CD4Tヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞またはバルクCD4T細胞である。いくつかの実施形態においては、前記CD4ヘルパーリンパ球は、ナイーブCD4T細胞であり、該ナイーブCD4T細胞は、CD45RO-T細胞、CD45RAT細胞、および/またはCD62LCD4T細胞を含む。いくつかの実施形態においては、前記組成物中の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%はCD4であり;いくつかの実施形態においては、組成物中の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%または前記組成物中のCD4細胞は、ナイーブCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞またはバルクCD4T細胞である。
【0266】
本明細書に記載の組成物の実施形態のいくつかにおいては、前記CD8T細胞傷害性リンパ球は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞および/またはバルクCD8T細胞である。いくつかの実施形態においては、前記CD8細胞傷害性Tリンパ球は、セントラルメモリーT細胞であり、該セントラルメモリーT細胞は、CD45ROT細胞、CD62LT細胞および/またはCD8T細胞を含む。さらに別の実施形態では、前記CD8細胞傷害性Tリンパ球はセントラルメモリーT細胞であり、前記CD4ヘルパーTリンパ球はナイーブCD4T細胞またはセントラルメモリーCD4T細胞である。いくつかの実施形態においては、前記組成物中の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%はCD8であり;いくつかの実施形態においては、組成物中の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%または前記組成物中のCD8細胞は、ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞またはバルクCD8T細胞である。実施形態のいくつかにおいては、前記組成物中の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%または前記組成物中のCD4および/もしくはCD8細胞は、前記導入遺伝子または組換え分子(CARなど)を発現し、かつ/または前記発現システムを含んでいる。
【0267】
さらに、本発明のシステムを含む養子免疫療法組成物などの養子免疫療法組成物を包含する組成物の製造方法、および、たとえば疾患または障害を有する対象において細胞免疫療法を行うための、前記組成物の使用または使用方法を提供する。
【0268】
いくつかの実施形態においては、前記組成物の製造方法は、改変されたナイーブCD4Tヘルパー細胞、改変されたナイーブ由来CD4Tヘルパー細胞、改変されたセントラルメモリーCD4Tヘルパー細胞、もしくは改変されたセントラルメモリー由来CD4Tヘルパー細胞、またはこれらのいずれかを含む集団 を作製することを含み、前記改変されたヘルパーTリンパ球製剤が、キメラ受容体を有するCD4T細胞を含み、該キメラ受容体が、たとえば、本明細書に記載されているように、誘導可能なプロモーターの制御下で、腫瘍細胞の表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体であることを特徴とする。別の実施形態のいくつかでは、CD4細胞は、誘導可能なプロモーターの制御下にあるサイトカイン受容体またはケモカイン受容体を有する。
【0269】
本明細書に記載の方法の実施形態のいくつかにおいては、CARを発現せず、かつ/またはTamによる誘導の可能なタンパク質を産生する別のT細胞とともに、本発明のT細胞を投与する。いくつかの実施形態においては、CARの転写活性化因子は、DNA結合ドメイン、タモキシフェン/その代謝産物に結合するドメイン、または転写活性化ドメインを含む。いくつかの実施形態においては、前記合成転写活性化因子のドメインの1つ以上、通常そのドメインすべてが、ヒトタンパク質、たとえばヒト由来ドメインまたは実質的にヒトに由来するドメインに由来する。このような特徴から、たとえば細胞治療法などにおいて、ヒト対象に投与された際の本発明の構築物の免疫原性は低減することができる。
【実施例
【0270】
Jurkat細胞における発現
TamR ZsGreenを発現するJurkat T細胞の「オン」および「オフ」の状態を研究した。
【0271】
構築物
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、
1)T2Aスキップリンカードメインを介して、単一または複数の導入遺伝子に連結されたHEA-3の構成的発現、および
2)タモキシフェンに応答して導入遺伝子の誘導が起こる、HEA-3特異的合成プロモーター7xHBD/mEF1apの制御下での導入遺伝子の条件的発現
からなる2つの要素を含む。
TamR LVによる遺伝子制御の所望の用途に応じて、送達系とベクター組成物との組み合わせを用いることができる。構築物の作製は上述されている。
【0272】
別のTamR-LVシステムを構築することによって、ZsGreenまたはキメラ抗原受容体の構成的HEA3発現および誘導発現が可能となり、タモキシフェンの存在または非存在において発現の「オン」と「オフ」を制御された場合の動態分析および生物学的効果を評価することが可能となる。この目的のため、以下の2つの構築物を用いた。
1)HEA-3はヒトEF1aプロモーターによって作動する。構築された末端切断型EGFR(EGFRt)膜貫通マーカータンパク質にT2Aスキップリンカー配列を介してHEA-3を連結し、第三世代のepHIV7自己不活化レンチウイルスパッケージングプラスミドにクローニングした(構築物A)。(表10の配列番号39および表1の配列番号8および配列番号9を参照されたい。)
2)商業的に利用されるCMVプロモーターを欠失するように遺伝子改変されたpcDNA3.1(-)にクローニングしたZsGreenのタモキシフェン依存的発現は、7xHBD/mEF1apによって制御される(構築物B)(表12の配列番号41参照)。ZsGreen1は、市販品のうち最も明るい緑色蛍光タンパク質をコードするヒトコドン最適化ZsGreenバリアントである(Clontechから入手可能)。
【0273】
方法
前記で作製したレンチウイルスパッケージング構築物をMOI=5で使用することによって、Jurkat細胞に形質導入した。このレンチウイルスパッケージング構築物は、レンチウイルスを産生している293T細胞に各プラスミドを共トランスフェクションするデュアルパッケージングアプローチにより作製したものである。この構築物は、構築物Aと構築物Bとを1:2のモル比で含んでいた。構築物Aは、リボソーム切断配列T2Aを介して追跡選択マーカーEGFRtに連結されたキメラ転写因子HEA3をコードする。構築物Bは、導入遺伝子ZsGreen-DR1の発現を制御する合成HEA3応答性プロモーター7xHBD/mE1bをコードし、ZsGreen-DR1は、半減期の短い緑色蛍光リポーター遺伝子である。
【0274】
形質導入後、細胞を培養して増殖させ、Miltenyi磁気ビーズ選択を利用して、EGFRtを発現している細胞を濃縮して純度>99%とした。さらに培養して増殖させた後、細胞を回収し、500nM 4-ヒドロキシタモキシフェン(4OHT)またはネガティブコントロールとしてのエタノール(ビヒクル)で24時間処理した。細胞を回収し、アービタックス-ビオチンで染色し、続いてSA-APCで染色して、フローサイトメトリーを用いてAPCの発現およびZsGreenの発現を分析した。結果を図1に示す。
【0275】
用量反応性
細胞を回収し、0nM~1000nMの所定濃度の4OHTで処理した。サンプルを回収し、洗浄し、EGFRt-ビオチンで染色し、続いてストレプトアビジン-APCで染色し、ZsGreenの発現をフローサイトメトリーで分析した。結果を図2に示す。
【0276】
オン/オフ率の動態
細胞集団を500nM 4OHTによる刺激に48時間暴露させ、FACSを利用してZsGreen細胞をソートし、ソーティング直後の分析でZsGreen細胞が集団全体の>99%を占めることを確認した。その後、細胞を培養して3週間増殖させてから、動態評価用に調製した。細胞は3つの処理群、すなわち、(1)4OHT非添加群、(2)200nM 4OHT添加群(48時間毎に添加)、(3)200nM 4OHTで24時間処理して1×PBSで洗浄し、4OHT非含有培地で14日間培養し、200nM 4OHTで24時間再刺激して1×PBSで洗浄した群に分けた。各時点にてサンプルを回収し、フローサイトメトリーを用いてZsGreenの発現を分析した。結果を図3に示し、図中、%ZsGreenで示す。
【0277】
結果
図1中の結果は、4-ヒドロキシタモキシフェン(4OHT)の存在下で、約50%の細胞がZsGreenを発現することを示しており、これらの細胞は構築物Aおよび構築物Bの両方を有すること、および4-OHTが構築物Bの発現を誘導したことが示された。用量反応曲線の結果からは、200nM以上の濃度の4-OHTによって、形質導入細胞の導入遺伝子の発現が効果的に誘導されたことが示された(図2)。図3の結果からは、細胞を洗浄して培養物から4-OHTを除去すると、ZsGreenの発現が、5日以内に最大活性の10%未満にまで低下することが示された。4-OHTを再び添加すると、ZsGreen活性は2日以内に約100%の最大活性に戻る。
【0278】
考察
これらの実験から、構成的成分および誘導可能な成分を有するデュアルパッケージレンチウイルスを使用してヒトT Jurkat細胞に形質導入することが可能であることが示された。ZsGreen遺伝子の発現は、4-OHTの存在下で用量依存的に誘導される。また、細胞を洗浄して培養物から4-OHTを除去すると、ZsGreenの発現量が低下し、該細胞に4-OHTを再び添加すると、ZsGreenの発現を再刺激することができた。
【0279】
初代CD4セントラルメモリー細胞および初代CD8セントラルメモリー細胞における発現
TamR ZsGreenを発現するCD4セントラルメモリーT細胞およびCD8セントラルメモリーT細胞の「オン」および「オフ」の状態を研究した。
【0280】
構築物
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、
1)T2Aスキップリンカードメインを介して、単一または複数の導入遺伝子に連結されたHEA-3の構成的発現(構築物A)(表10の配列番号39ならびに表1の配列番号8および配列番号9を参照されたい)、および
2)タモキシフェンに応答して導入遺伝子の誘導が起こる、HEA-3特異的合成プロモーター7xHBD/mEF1apの制御下での導入遺伝子の条件的発現(構築物B)(表12の配列番号41を参照されたい)
からなる2つの要素を含む。
TamR LVによる遺伝子制御の所望の用途に応じて、送達系とベクター組成物との組み合わせを用いることができる。これらの構築物は前記と同様にして調製した。
【0281】
方法
CD4およびCD62Lをマーカーとして、かつCD45ROを陰性マーカーとしてフローサイトメトリーにて細胞を選択することによって、CD4セントラルメモリー細胞を末梢血から得た。この細胞を、抗CD3/抗CD28ビーズとともに3日間培養した。
【0282】
CD8およびCD62Lをマーカーとして、かつCD45ROを陰性マーカーとしてフローサイトメトリーにて細胞を選択することによって、CD8セントラルメモリー細胞を末梢血から得た。この細胞を、抗CD3/抗CD28ビーズとともに3日間培養した。
【0283】
3日後、前記で作製したレンチウイルスパッケージング構築物をMOI=5で使用することによって、CD4セントラルメモリー細胞またはCD8セントラルメモリー細胞に形質導入した。このレンチウイルスパッケージング構築物は、レンチウイルスを産生している293T細胞に各プラスミドを共トランスフェクションするデュアルパッケージングアプローチにより作製したものである。この構築物は、構築物Aと構築物Bとを1:2のモル比で含んでいた。構築物Aは、リボソーム切断配列T2Aを介して追跡選択マーカーEGFRtに連結されたキメラ転写因子HEA3をコードする。構築物Bは、導入遺伝子ZsGreen-DR1の発現を制御する合成HEA3応答性プロモーター7xHBD/mE1bをコードし、ZsGreen-DR1は、半減期の短い緑色蛍光リポーター遺伝子である。
【0284】
形質導入後21日目に、EGFRtを発現している細胞を濃縮し、フィーダー細胞、IL-2、およびIL-15ともに増殖させた。増殖後、細胞を3つの処理群、すなわち、(A)4OHT単独処理群、(B)4OHTとCD3/CD28ビーズとを組み合わせた共処理群、または(C)4OHT単独で48時間処理した後にCD3/CD28ビーズを添加することによって処理した群に分けた。それぞれの群に対応する4OHT非添加サンプルも比較のために調製した。サンプルはいずれも4OHTによる処理を行った後、所定の時点にて回収し、EGFRt-ビオチン抗体で染色し、続いてSA-APCで染色して、フローサイトメトリーで分析した。結果を、図4(CD4セントラルメモリー)および図5(CD8セントラルメモリー)に示す。
【0285】
結果
分析結果から、デュアルプラスミドベクターで形質導入したCD4細胞は、タモキシフェンの存在下であっても、ZsGreenを発現するために活性刺激の存在を必要としたことが示された。図4Bを参照されたい。初代形質導入CD4細胞の約70%は、タモキシフェンおよび抗CD3/抗CD28ビーズの存在下でZsGreenを発現した。タモキシフェンで48時間にわたって処理を行うことによって活性化させた場合に、遺伝子発現が見られた。図4Cを参照されたい。
【0286】
また、分析結果から、デュアルプラスミドベクターで形質導入したCD8細胞も、タモキシフェンの存在下であっても、ZsGreenを発現するために活性刺激の存在を必要としたことを示された。図5Bを参照されたい。初代形質導入CD8細胞の約37%は、タモキシフェンおよび抗CD3/抗CD28ビーズの存在下でZsGreenを発現した。タモキシフェンで48時間にわたって処理を行うことによって活性化させた場合に、遺伝子発現が見られた。図5Cを参照されたい。
【0287】
これらの結果から、誘導可能な構築物で形質導入した初代セントラルメモリーT細胞は、抗CD3細胞/抗CD28細胞による活性化を行った後に誘導因子の存在下で導入遺伝子を発現できることが示された。また、導入遺伝子を発現するが、活性化されなかった細胞は、免疫磁気選択またはフローサイトメトリーソーティングを用いて容易に単離することができる。
【0288】
TamR-CD19CAR-LVの構築
このベクターの構築は、プラスミド構築物Aとプラスミド構築物Bのモル比を1:1として、それぞれの構築物を含む移入プラスミドを前記と同様にデュアルパッケージングすることによって行った(図6Cおよび図7Cを参照されたい)。構成的EF-1αプロモーターの制御下の構築物Aは、リボソーム切断配列T2Aを介して追跡選択マーカーEGFRtに連結されたTamR-tf(HEA3)をコードする(表10の配列番号39ならびに表1の配列番号8および配列番号9を参照されたい)。構築物Bは、7xHBD/mE1bプロモーターを含有し、その下流に導入遺伝子cDNAを有しており、該導入遺伝子cDNAは、2a切断配列を介して追跡選択マーカーHer2tに連結されたCD19 CARを含む(表12の配列番号41、表2の配列番号10、表13の配列番号44を参照されたい参照)。これらとは別に、さらなる選択マーカーDHFRdmを付加した構築物を調製した(表14の配列番号46を参照されたい)。
【0289】
MOI=2でヒトJurkat細胞に形質導入し、培養することにより増殖させ、磁気ビーズによる選択によりEGFRt+細胞を選択した。さらに増殖させた後、細胞をビヒクルのみ(EtOH)または500nM 4OHTのいずれかで処理して、フローサイトメトリー分析用に回収した。サンプルを、EGFRt-APC抗体およびハーセプチン-ビオチンで染色し、続いてSA PEで染色した。これとは別に、サンプルをウエスタンブロット分析用に調製した。ウエスタンブロット分析の一次抗体として、CD19CAR上の細胞内CD3ζ鎖(約48kDa)を認識する抗CD247マウスmAbを使用した。内在性CD3ζは約23kDaの位置に認められる。結果を図6に示す。
【0290】
選択マーカーを含有するTamR CD19CAR LVで形質導入したJurkat T細胞
TamR CD19CAR LVの構築は、構築物Aおよび構築物Bをデュアルパッケージングすることによって行なった。構築物Aは、リボソーム切断配列T2Aを介して追跡選択マーカーEGFRtに連結されたHEA3を含有する。構築物Bは、7xHBD/mE1bプロモーターを含有し、その下流に導入遺伝子を有しており、該導入遺伝子は、2a切断配列を介して追跡選択マーカーHer2tに連結されたCD19CARを含み、この追跡選択マーカーHer2tは別の2a切断配列(P2A)を介してメトトレキサート選択遺伝子DHFRdmに連結されている。
【0291】
MOI=1においてTamR CD19CAR LVで細胞に形質導入し、培養することにより増殖させ、磁気ビーズによる選択によりEGFRt+細胞を選択した。さらに増殖させた後、細胞をビヒクルのみ(EtOH)または500nM 4OHTで処理して、フローサイトメトリー用に回収した(上段のパネル)(図7)。サンプルを、EGFRt-APC抗体およびハーセプチン-ビオチンで染色し、続いてSA-PEで染色した。比較のために親細胞(形質導入していないJurkat細胞)を示す。これとは別に、サンプルをウエスタンブロット分析用に調製した。ウエスタンブロット分析の一次抗体として、CD19CAR上の細胞内CD3ζ鎖(約48kDa)を認識する抗CD247マウスmAbを使用した。内在性CD3ζは約23kDaの位置に認められる。
【0292】
結果
分析結果から、さらなる選択マーカーであるDHFRdmを含まない構築物で形質導入した細胞の94.6%においてEGFRtが検出されたことが示された。図6Bを参照されたい。図6Cは、DHFRdmを含まない構築物で形質導入した細胞の約42.6%が、タモキシフェンの存在下で、EGFRtおよびHer2tの両方を発現したことを示す。ウエスタンブロットで検出されたように、両方のマーカーを発現する細胞は、CAR構築物の一部としてCD3ζ鎖(48kDa)を発現した。図6Bを参照されたい。
【0293】
図7は、DHFRdmが別の2a切断配列(P2A)を介して連結された構築物で形質導入したJurkat細胞の85.9%は、タモキシフェンの非存在下でEGFRtを発現することを示す。タモキシフェンの存在下では、約7.5%の細胞がEGFRtおよびHer2tの両方を発現した。ウエスタンブロットで検出されたように、両方のマーカーを発現する細胞は、CAR構築物の一部としてCD3ζ鎖(48kDa)を発現した。図7Bを参照されたい。
【0294】
形質導入したJurkat細胞においてはCD19 CARの誘導可能な発現が見られる。誘導の測定は、ウエスタンブロットを用いて、マーカーであるHer2tの発現およびCD19CARの発現を検出することによって行うことができる。誘導可能な構築物にさらなる選択可能マーカーとしてDHFRdmを付加しても、誘導可能な遺伝子の発現は向上しなかった。
【0295】
TamR CD19CAR LVにより形質導入されたヒトCD4 T CM T細胞
CD4およびCD62Lをマーカーとして、かつCD45ROを陰性マーカーとしてフローサイトメトリーにて細胞を選択することによって、CD4セントラルメモリー細胞を末梢血から得た。この細胞を、抗CD3/抗CD28ビーズとともに3日間培養した。3日後、構築物Aおよび構築物BをパッケージしたレンチウイルスをMOI=5で使用して、CD4セントラルメモリー細胞に形質導入した(図8B)。構築物Aは、リボソーム切断配列T2Aを介して追跡選択マーカーEGFRtに連結されたキメラ転写因子HEA3をコードする。(表10の配列番号39および表1の配列番号8および配列番号9を参照されたい。)構築物Bは、導入遺伝子CD19CARの発現を制御する合成HEA3反応プロモーター7xHBD/mE1bをコードし、この導入遺伝子は、T2Aを介して追跡選択マーカーであるHer2tに連結されており、Her2tは第2の2a配列(P2A)を介してメトトレキサート選択遺伝子DHFRdmに連結されている。(表12の配列番号41、表2の配列番号10、表13の配列番号44および表14の配列番号46を参照されたい)。
【0296】
形質導入後21日目に、磁気ビーズ選択を使用して、EGFRtを発現している細胞を濃縮した後、放射線照射フィーダー細胞、IL-2、およびIL-15とともに増殖させた。増殖の2週後、細胞を凍結保存した。前述した実験において、Mock形質導入したCD4+CEM細胞、またはCD4+TamR CD19CAR LVを解凍し、CD3/CD28ビーズ、IL-2、IL-15とともに培養した。CD4+TamRCD19CAR LVを500nM 4OHTで24時間処理した群と、4OHTで処理しなかった群とを作製した。全サンプルを回収して洗浄し、EGFRt-APC抗体およびHer2t-ビオチンで染色し、続いてSA-PEで染色して、フローサイトメトリーで分析した。結果を図8に示す。
【0297】
結果
図8の結果から、形質導入した初代CD4セントラルメモリー細胞の75.6%は、タモキシフェンの非存在下でEGFRtを発現することが示され、このことから構築物Aの構成的発現が示された。タモキシフェンおよび活性刺激(たとえば抗CD3/抗CD28ビーズ)の存在下では、初代細胞の約14.7%がEGFRtおよびHer2tの両方を発現する。
【0298】
マーカー遺伝子であるHer2tの発現が検出されたことから、誘導可能なベクターで形質導入した初代CD4細胞は、誘導因子および活性刺激の存在下で、誘導可能なプロモーターの制御下で導入遺伝子を発現することが示された。
また、導入遺伝子を発現するが、活性化されなかった細胞は、免疫磁気選択またはフローサイトメトリーソーティングを用いて容易に単離することができる。
これらの細胞は、CD19CARの発現を検出することによって、さらに特性を評価することができる。
【0299】
前述の実施例は本発明を例示するものであり、本発明をなんら限定するものではない。本発明は、以下の請求項によって定義され、請求項の等価物も本発明に含まれる。本明細書において引用した参考文献および論文はいずれも参照により本明細書に組み込まれる。


表 1
【数1-1】
【数1-2】
表 2
【数2-1】
【数2-2】
【数2-3】

表 3
ZXR-014ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(各セクションのマップ)
【数3】
表 4 Uniprot P0861 IgG4-Fc(配列番号13)
【数4】

表 5 Uniprot P10747 CD28(配列番号14)
【数5】

表 6 Uniprot Q07011 4-1BB(配列番号15)
【数6】

表 7 Uniprot P20963 ヒト CD3ζ アイソフォーム 3 (配列番号16)
【数7】
表 8 典型的なヒンジ領域配列

【数8】
表 9 Her 2 構築物-短いスペーサー (配列番号1 )
【数9-1】
【数9-2】
表 10 TamR-tf (HEA3) 核酸 (配列番号 39)

【数10-1】
【数10-2】

表 11 TamR-tf (HEA4) 核酸配列 (配列番号 42) アミノ酸配列 (配列番号 43)
【数11-1】
【数11-2】

【数11-3】
表 12 7xHBD/mEF1α 核酸配列 (配列番号 41)

【数12】

表 13 Her2t 核酸配列 (配列番号 44) およびアミノ酸配列 (配列番号 45)

【数13】
表 14 DHFRdm 核酸配列 (配列番号 46) およびアミノ酸配列 (配列番号 47)
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
【配列表】
0007093385000001.app