(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ガスケットの固定構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20220622BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16J15/10 D
F16L23/02 D
(21)【出願番号】P 2020185195
(22)【出願日】2020-11-05
(62)【分割の表示】P 2017020206の分割
【原出願日】2017-02-07
【審査請求日】2020-11-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 僚佑
(72)【発明者】
【氏名】千野 一広
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01541690(GB,A)
【文献】特開2004-343943(JP,A)
【文献】実開平02-098180(JP,U)
【文献】特開平03-267107(JP,A)
【文献】米国特許第05524907(US,A)
【文献】特開2002-031241(JP,A)
【文献】実開昭60-031562(JP,U)
【文献】実開昭57-172988(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管機材の継手部に対向するフランジ面に装着される
略環状のガスケット本体であり、
前記ガスケット本体は、ゴム製の弾性材料からなる被覆部で芯金を被覆した状態で環状シール面を形成し、前記環状シール面の外周側に延伸取付部を形成し、この延伸取付部には前記フランジ面に対応する複数のボルト穴を配設し、前記ボルト穴を前記ガスケット本体
の前記被覆部と一体に薄膜状でゴム製の遮蔽部で被覆し、この遮蔽部にボルト挿通用の切り込み部を設
け、前記遮蔽部は、前記ボルトの挿入状態を保持する機能を有する厚みに形成され、前記遮蔽部で挿入状態の前記ボルトを保持可能に設け、前記ガスケット本体の前記ボルト穴を前記フランジ面のボルト穴と一致させた状態で、前記フランジ面同士の前記ボルト穴と前記ガスケット本体の前記ボルト穴に、前記切り込み部により調芯状態でボルトを挿通する際に、垂直配管のフランジ面間に挿入する場合は、前記切り込み部で前記ボルトを挟み込み保持し、水平配管のフランジ面間に挿入する場合は、前記切り込み部で前記ボルトを挟み込んで
前記フランジ面のボルト穴の中心にガイドされながら前記ガスケット本体を
RFフランジ面やFFフランジ面の何れかの前記フランジ面に対して
もセンタリングするようにしたことを特徴とするガスケットの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブや直管、異形管、或は水栓等の配管機材の接合に用いられるガスケットの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブや水栓等の配管機材をフランジ継手で接合する場合、フランジの接合面同士の間には、一般に、所定圧力の流体を封止するためのシール用ガスケットが装着され、このガスケットは、通常、ボルトナットを介してフランジ間に挟着されることが多い。
この種のガスケットとして、例えば、特許文献1のパッキンが開示されている。このパッキンは、2つの管継手のフランジ間の内周側(内径側)に介装され、その外周側であるフランジ同士がボルトナットにより締結されることで、ボルトナットよりも内側に位置決めされた状態でシール面が密着される。この種のボルトの内側に取り付けられて位置決めされるガスケットは、リングガスケットと呼ばれ、その内部を通る流体の漏れが防がれるようになっている。
【0003】
一方、特許文献2においては、受圧面の幅が管継手のフランジ面の外径付近まで外周方向に広げられ、この受圧面にボルト穴が空けられている。このようなガスケットは、全面形ガスケットと呼ばれ、フランジ面間の略全面に配置された状態で、ボルト穴を介してボルトナットにより位置決めされた状態で締結されて、シール性が発揮されるようになっている。
【0004】
これらの各形状のガスケットは、一般には、そのシール面がフラット面状に設けられ、例えば、シール面が段付きで平面のフランジ(RF(Raised Face)フランジ:平面座形)、或は、シール面が全平面であるフランジ(FF(Flat Face)フランジ:全面座形)用のガスケットとして、各フランジに面接触した状態で挟まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭63-62693号公報
【文献】実開昭58-79167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したRFフランジやFFフランジを有する配管が水平方向に配置されている場合、これらフランジ同士の間にガスケットを立てた状態で装着することになるため、ガスケットとフランジとの位置決めが難しくなり、ガスケットを芯出ししながら装着することが困難になる。
【0007】
前者の特許文献1のようなリングガスケットを用いたときには、ボルトナットの内側にガスケットがフランジ同士の挟着により配置されるため、フランジとガスケットとの中心が一致していない状態で締結されることがある。この場合、ガスケットを均一に固定することが難しくなり、フランジから漏水するおそれがある。
【0008】
後者の特許文献2のような全面形ガスケットを使用すると、ボルト穴によってフランジとの中心を一致させることは可能になる。しかし、この場合、使用圧力によってボルトナット数やボルト穴径、並びにそのピッチサークルが異なるため、そのガスケットをそれぞれ予め準備する必要がある。
これに対して、例えば、呼び径150や呼び径200等の異なる呼び径の配管に対して、各種の圧力フランジに対応するボルト穴をガスケットに設けようとすると、ボルト穴の数が増えることで穴の配置が複雑になり、作業者が作業するときに本来使用すべきボルト穴とは異なるボルト穴に間違ってボルトナットを締付ける可能性がある。この場合、シール性が十分では無くなって漏れの発生につながる。
【0009】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、垂直方向の配管に加えて、水平方向に配置されている配管のフランジ同士にも芯出ししながら装着でき、締付け位置を誤ることを防ぐことができるガスケットの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、配管機材の継手部に対向するフランジ面に装着される略環状のガスケット本体であり、ガスケット本体は、ゴム製の弾性材料からなる被覆部で芯金を被覆した状態で環状シール面を形成し、環状シール面の外周側に延伸取付部を形成し、この延伸取付部にはフランジ面に対応する複数のボルト穴を配設し、ボルト穴をガスケット本体の被覆部と一体に薄膜状でゴム製の遮蔽部で被覆し、この遮蔽部にボルト挿通用の切り込み部を設け、遮蔽部は、ボルトの挿入状態を保持する機能を有する厚みに形成され、遮蔽部で挿入状態のボルトを保持可能に設け、ガスケット本体のボルト穴をフランジ面のボルト穴と一致させた状態で、フランジ面同士のボルト穴とガスケット本体のボルト穴に、切り込み部により調芯状態でボルトを挿通する際に、垂直配管のフランジ面間に挿入する場合は、切り込み部でボルトを挟み込み保持し、水平配管のフランジ面間に挿入する場合は、切り込み部でボルトを挟み込んでフランジ面のボルト穴の中心にガイドされながらガスケット本体をRFフランジ面やFFフランジ面の何れかのフランジ面に対してもセンタリングするようにしたガスケットの固定構造である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、フランジのボルト穴とガスケット本体のボルト穴とを合わせた後に薄膜部にボルトを挿通できるため、ボルト穴の位置合わせが容易になると共に、ボルトが切り込み部の間に挟み込まれ、その位置が保持されることによってボルトの落下防止機能を発揮でき、特に、垂直配管時に落下しやすいボルトの脱落を確実に防止できると共に、水平配管時の場合も、ガスケットが下方にズレることがない。
すなわち、ガスケット本体は、ゴム製の弾性材料からなる被覆部で芯金を被覆した状態で遮蔽部を設けているから、遮蔽部のゴム材が不安定な状態で逃げる事態を防ぐので、環状シール面のシール面圧が上がるばかりか、切り込み部にボルトを挿通する際に、ガスケット本体の遮蔽部がみだりに変形することがないので、ボルトが切り込み部の遮蔽部で挟み込んだ状態を維持しながらボルト穴の中心にガイドされ、センタリング機能が有効に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】補修弁をフランジ接合した状態を示す外観図である。
【
図2】
図1のフランジ接合前の状態を示す外観図である。
【
図3】本発明のガスケットの第1実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図3のガスケットにボルトを挿入した状態を示す平面図である。
【
図5】
図4のガスケットを吊り下げた状態を示す模式図である。
【
図6】本発明のガスケットの第2実施形態を示す平面図である。
【
図7】
図6のガスケットにボルトを挿入した状態を示す平面図である。
【
図8】
図7のガスケットを吊り下げた状態を示す模式図である。
【
図9】本発明のガスケットの第3実施形態を示す外観図である。(a)はガスケットの平面図である。(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図10】本発明のガスケットの第4実施形態を示す平面図である。
【
図11】本発明のガスケットの第5実施形態を示す平面図である。
【
図12】本発明のガスケットの第6実施形態を示す平面図である。
【
図13】本発明のガスケットの第7実施形態を示す平面図である。
【
図14】本発明のガスケットの第8実施形態を示す平面図である。
【
図15】本発明のガスケットの第9実施形態を示す外観図である。(a)はガスケットの平面図である。(b)は(a)のB-B断面図である。
【
図16】本発明のガスケットの第10実施形態を示す平面図である。(a)はガスケットの平面図である。(b)は(a)のC-C断面図である。
【
図17】本発明のガスケットの第11実施形態を示す平面図である。
【
図18】本発明のガスケットの第12実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明におけるガスケットとこれを用いた配管機材のフランジ接合構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、
図2においては、本発明のガスケットを介して補修弁をフランジ接合する状態、
図3においては、本発明のガスケットの第1実施形態を示している。なお、本例は、配管の呼び径150の場合を示している。また、本例は、日本水道教会 JWWA G 114:2015 水道用ダクタイル鋳鉄異形管 表A.23、表A.24、表A.25に対応したフランジの寸法に設定している。
【0014】
図1に示した補修弁(以下、補修弁本体1という)は、配管機材の一種であり、本発明のガスケット(以下、ガスケット本体10という)は、この補修弁本体1の一次側を立ち上がり管2に接合し、補修弁本体1の二次側を空気弁(又は図示しない消火栓、短管)3に接合する際に設けられる。補修弁本体1の一、二次側にはそれぞれ継手部5が設けられ、この継手部5は、環状のフランジ部よりなり、この継手部5の接続面側には、後述するガスケット本体10締付用のフランジ面20が設けられている。一方、立ち上がり管2の二次側、空気弁3の一次側にもそれぞれ継手部5が設けられ、この継手部5にも同様にフランジ面20が設けられる。本実施形態におけるフランジ面20とは、ガスケット本体10が当接シールする面をいう。
【0015】
図2に示すように、ガスケット本体10は、補修弁本体1の一次側継手部5と立ち上がり管2の二次側継手部5との間、補修弁本体1の二次側継手部5と空気弁3の一次側継手部5との間にそれぞれ装着される。その際、ガスケット本体10は、配管機材1の継手部5の対向するフランジ面20、20の間に装着され、この状態でボルトナット(ボルト)6によりフランジ接合される。配管機材1は、フランジ継手を有するバルブ、直管、異形管よりなっている。
【0016】
図3のガスケット本体10は、
図9、図15、図16に示すように芯金
21aの上からゴム等の弾性材料からなる被覆部21が被覆されて略環状に形成されている。
【0017】
ガスケット本体10の両面は対称形状に設けられ、被覆部21の両面にはフランジ面20に接する面となる環状シール面22が設けられる。環状シール面22は、RFフランジ面、FFフランジ面などの異なる態様のフランジ面20に当接シール可能な形状に設けられ、この環状シール面22がシールした状態でガスケット本体10が取付けられる。
【0018】
環状シール面22の外周側には、フランジ面20への取付け用の延伸取付部23が一体に設けられる。延伸取付部23は、複数の使用圧力のフランジ面20に合わせた複数の異なる直径で構成され、本実施形態では、RF形或はFF形のフランジ部5の全面の外径に合わせて延伸して形成される。延伸取付部23は、少なくとも後述のボルト穴30~32のピッチ円よりも大径に設けられ、この延伸取付部23を介してガスケット本体10がボルトナット6でフランジ面20の間に取付けられ、全面形ガスケットとして異なる態様のフランジ面に兼用可能に設けられる。
【0019】
延伸取付部23には、フランジ面20への取付け用のボルト穴30、31、32が複数箇所に設けられる。ボルト穴30~32は、一つのガスケット本体10が、複数の使用圧力のフランジ面20に対応可能になるように、同一中心線上で異なる複数のピッチ円DP1、DP2、DP3により、それぞれ複数位置に配設される。
【0020】
具体的には、
図3、
図4において、ボルト穴30は、使用圧力0.75MPa(7.5K)用であり、ボルトナット6用のピッチDP1円上の6ヶ所に設けられる。ボルト穴31は、使用圧力1.0MPa(10K)用であり、ボルトナット6用のピッチ円DP2上の8ヶ所に設けられる。ボルト穴32は、使用圧力1.6MPa(16K)のボルトナット6用であり、ピッチ円DP3上の12ヶ所に設けられる。これにより、それぞれ、6組、8組、12組のボルトナット6で締付け固定可能に設けられる。
図4(a)は、6ヶ所のボルト穴30のそれぞれにボルトナット6が挿入された状態、
図4(b)は、8ヶ所のボルト穴31のそれぞれにボルトナット6が挿入された状態、
図4(c)は、12ヶ所のボルト穴32のそれぞれにボルトナット6が挿入された状態を示している。
【0021】
各ピッチ円上のボルト穴30、31、32において、それぞれの少なくとも2ヶ所のボルト穴30、31、32は、ガスケット本体10の基準となる位置として共通化されてボルト穴35として設けられ、これらの2つのボルト穴35を基準として、複数の使用圧力のフランジ面20に対応する位置にその他のボルト穴30~32がそれぞれ配設される。本例では、
図3の状態において、ガスケット本体10にハッチングで示した位置に2ヶ所のボルト穴35が設けられ、この2ヶ所のボルト穴35の位置が、ボルト穴30、31、32に共通して重なる位置となる。
【0022】
延伸取付部23の外周方向には、円弧状の耳部40が延伸して形成され、この耳部40は、複数の使用圧力の違いに応じて段部状に設けられ、各耳部40の外縁が異なるフランジ外径と一致するようになっている。耳部40を含む延伸取付部23の表面には、フランジ外径表示部41、42、43が設けられ、これらフランジ外径表示部41~43は、複数の使用圧力のフランジ面20の使用圧力に応じて外径の位置を示す位置に設けられる。
【0023】
本実施形態では、延伸取付部23の外周縁が、使用圧力1.0MPaのフランジ外径表示部41として設けられ、このフランジ外径表示部41が使用圧力1.0MPaのフランジ面に一致する。耳部40における延伸取付部23よりも一段拡径した部分には、使用圧力0.75MPaのフランジ径のフランジ外径表示部42が設けられ、このフランジ外径表示部42が使用圧力0.75MPaのフランジ面に一致する。フランジ外径表示部42よりも拡径側の耳部40の外周縁には、使用圧力1.6MPaのフランジ径のフランジ外径表示部43が設けられ、このフランジ外径表示部43が使用圧力1.6MPaのフランジ面に一致する。
【0024】
耳部40は、ガスケット本体10の四箇所に形成され、この耳部40と、耳部40に挟まれた部分により、使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaの各フランジ外径表示部41~43がそれぞれ円周方向に設けられる。
【0025】
図3のガスケット本体10の上部付近には、耳部40から延長されるように吊り下げ用の3つの取手50、51、52が設けられ、各取手50~52をつまんで吊り下げながらガスケット本体10をフランジ面20に位置合わせすることが可能になっている。取手50~51は、ガスケット本体10の各中心線Lの延長線上であり、異なる使用圧力のフランジ面20に対応して各ボルト穴35及び各ボルト穴30~32が割り振られる位置に設けられる。すなわち、水平配管されたフランジ面20に取手50~52をつまんでガスケット本体10を垂下させたときに、各取手50~52に応じたボルト穴30~32がフランジ面20に形成されたボルト穴26の位置に合うようになっている。
【0026】
なお、この実施形態では、ガスケット本体10が使用圧力0.75MPa、1.0MPa、1.6MPaのフランジ面20に対応する場合を説明したが、これ以外の圧力や、JIS、JWWA等の規格以外の海外規格の場合にも、前記の場合と同様にしてガスケット本体10を設けることができる。
また、配管機材として補修弁本体1を用いた例を説明したが、補修弁本体1以外の様々な図示しないバルブや水栓等の配管機材のフランジ接合にも利用できる。
【0027】
続いて、上記のガスケット本体を用いた配管機材のフランジ接合構造と作用を説明する。
図1、
図2に示した配管機材である補修弁本体1を、フランジ面20を介して立ち上がり管2と空気弁3との間に接合する場合には、この配管機材1の対向する継手部5のフランジ面20の間に、前述したガスケット本体10を装着しながら接合する。
【0028】
図5においては、水平配管した呼び径150のRF型フランジのフランジ面20のボルト穴26に対応するボルト穴35、30、31、32の配置を示したものである。
図5(a)は、使用圧力0.75MPaのフランジ面20に対してガスケット本体10を装着するときの状態を示している。この場合、取手50をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力0.75MPa用のボルト穴のうち、基準となる位置の2ヶ所のボルト穴35がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴35を基準としたピッチ円DP1上の合計6ヶ所のボルト穴30をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体10を所定位置に装着し、2つのフランジ面20同士をシール状態で接続できる。
【0029】
図5(b)は、使用圧力1.0MPaのフランジ面20に対してガスケット本体10を装着するときの状態を示している。この場合、取手51をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力1.0MPa用のボルト穴のうち、基準となる位置の2ヶ所のボルト穴35がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴35を基準としたピッチ円DP2上の合計8ヶ所のボルト穴31をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体10を所定位置に装着し、2つのフランジ面20同士をシール状態で接続できる。
【0030】
図5(c)は、使用圧力1.6MPaのフランジ面20に対してガスケット本体10を装着するときの状態を示している。この場合、取手52をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力1.6MPa用のボルト穴のうち、基準となる位置の2ヶ所のボルト穴35がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴35を基準としたピッチ円DP3上の合計12ヶ所のボルト穴32をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体10を所定位置に装着し、2つのフランジ面20同士をシール状態で接続できる。
【0031】
これらのように、予め基準として定めたガスケット本体10の2ヶ所のボルト穴35を各使用圧力のフランジ面20のボルト穴26と合わせることで、締付けに必要な残りの全てのボルト穴を、フランジ面20のボルト穴26に容易に合わせることができる。
【0032】
図6においては、本発明のガスケットの第2実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前述の実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態のガスケット本体60は、呼び径200の配管のフランジ接続用として使用されるものであり、このガスケット本体60に設けられたボルト穴30~32のうち、クロスハッチングで示した4ヶ所のボルト穴61がガスケット本体60の基準となる位置に設けられ、これらのボルト穴61を基準として、複数の使用圧力のフランジ面20に対応する位置にボルト穴30~32が配設されている。また、ガスケット本体60には、吊り下げ用の2つの取手62、63が設けられる。
【0033】
図7(a)の使用圧力0.75MPa用のボルト穴30は、ボルトナット6用のピッチ円DP1上の8ヶ所に設けられる。
図7(b)の使用圧力1.0MPa用ボルト穴31は、ボルトナット6用のピッチDP2円上の12ヶ所に設けられる。
図7(c)の使用圧力1.6MPaのボルトナット用のボルト穴32は、ピッチ円DP3上の12ヶ所に設けられる。このようにして、それぞれ、8組、12組、12組のボルトナット6で締付け固定される。
【0034】
図8においては、水平配管した呼び径200のRF型フランジのフランジ面20に、ボルト6を挿入した状態を示したものである。
図8(a)は、使用圧力0.75MPaのフランジ面20に対してガスケット本体60を装着する状態を示している。この場合、取手62をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力0.75MPa用のボルト穴30のうち、基準となる位置の4ヶ所のボルト穴61がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴61を基準とした同じピッチ円DP1上の合計8ヶ所のボルト穴30をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体60を所定位置に装着した状態で2つのフランジ面20同士を接続できる。
【0035】
図8(b)は、使用圧力1.0MPaのフランジ面20に対してガスケット本体60を装着する状態を示している。この場合、取手63をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力1.0MPa用のボルト穴31のうち、基準となる位置の4ヶ所のボルト穴61がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴61を基準とした同じピッチ円DP2上の合計12ヶ所のボルト穴31をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体60を所定位置に装着した状態で2つのフランジ面20同士を接続できる。
【0036】
図8(c)は、使用圧力1.6MPaのフランジ面20に対してガスケット本体60を装着する状態を示している。この場合、使用圧力1.0MPaの場合と同様に、取手63をつまんで吊り下げるようにすれば、使用圧力1.6MPa用のボルト穴32のうち、基準となる位置の4ヶ所のボルト穴61がフランジ面20のボルト穴26に重なり、ボルト穴61を基準とした同じピッチ円DP3上の合計12ヶ所のボルト穴32をボルトナット6で締付け固定することにより、ガスケット本体60を所定位置に装着した状態で2つのフランジ面20同士を接続できる。
【0037】
図9は、本発明のガスケットの第3実施形態を示している。
この実施形態のガスケット本体70は、
図3のガスケット本体10と同様に、2ヶ所に基準位置となるボルト穴35が設けられ、このボルト穴35以外のボルト穴30~32が被覆部21と一体のゴム製で薄膜状の遮蔽部71で遮蔽され、この遮蔽部71にボルト挿通用の切り込み部72が形成されている。これにより、遮蔽部71に、ガスケット本体70の設置後にボルト6の挿通が可能になっている。遮蔽部71は、被覆部21の形成と同時に設けることができる。
【0038】
切り込み部72は、使用圧力に応じて所定のボルト穴に配置されるボルトナット6を、各ボルト穴に対して芯出し状態で挿入できるような切り込み数や切り込み位置などにより形成される。すなわち、複数の使用圧力のボルト穴が一つに重なっている場合、それぞれの使用圧力で締付け位置の異なるボルトナット6に対しても、各ボルトナット6を芯出ししながら所定の締付け位置に案内可能な切り込み部72が一つのボルト穴に形成されている。
【0039】
一方、基準のボルト穴35は、遮蔽部71が設けられていないことから、遮蔽部を設けた場合のボルト穴30~32と容易に区別できる。
これらのことから、ガスケット本体70をフランジ面20に合わせるときに、呼び圧力の違いを意識することなく、基準位置のボルト穴35を簡単に視認しながらフランジ面20のボルト穴26に合わせた状態で、これらフランジ面20の間に正確にガスケット本体70をボルトナット6で固定できる。
【0040】
遮蔽部71に厚みを持たせて強度を上げたり、切り込み部72の形状を調整したりしてもよく、切り込み部72を設けた場合、特に、ボルト6が落下しやすくなる垂直配管時などに、この切り込み部72によりフランジ面20の下方よりボルト穴に挿入されたボルト6が挟み込まれてその位置が保持されることにより、ボルト6の落下防止機能を発揮する。
【0041】
この場合、ボルト6が、切り込み部72を介して複数の使用圧力に応じたボルト穴の中心に導かれながら、フランジ面20のボルト穴26に挿入される。このようにして、複数本のボルト6が、フランジ面20の中心に対して同心円上に配置された状態で、各ボルト穴26に挿入される。これにより、ガスケット本体70は、各ボルト6の中心に各ボルト穴の中心が倣うようにして、フランジ面20に位置合わせされる。
その結果、フランジ面20の中心と同心円上に配列されたボルト6で、各ボルト穴を介してガスケット本体70を調心し、フランジ面20の中心にセンタリングした状態で取付けできる。このようなセンタリング機能は、汎用的なRFフランジ面、FFフランジ面の何れに対しても発揮させることができる。
【0042】
さらに、水平配管時においても、上記の機能によりガスケット本体をセンタリングした状態で装着でき、この場合には、重力によりガスケット本体が下方向に位置ずれすることを防ぐことができる。
【0043】
遮蔽部71に切り込み部72を設ける場合には、使用圧力の違いにより単独で使用されたり兼用されるボルト穴の形状に応じて、切り込み部72の数を増やしたり、切り込み部72を形成する位置を変えるようにするとよい。この場合、ボルト6を挿通するときの抵抗を弱くすることで、ボルト6の挿通を阻害するおそれがなくなる。一方、切り込み部72の数を減らすことにより、ボルト6挿入時の抵抗を強くすることもでき、これによりボルト6を保持して落下防止機能を高めることもできる。何れの場合にも、遮蔽部71を設けていないボルト穴35との違いを明確にし、視認性を高めるようにするとよい。
【0044】
図9(b)では、遮蔽部71がボルト穴30~32の挿入側(図の上部側)に設けられているが、この遮蔽部71をボルト穴30~32の中央に寄せて成形するようにしてもよい(図示せず)。この場合、遮蔽部71が、ガスケット本体70の表裏面に対して対称位置になり、作業者がガスケット本体70の装着方向を確認しながらフランジ面20に装着する必要がなくなる。
【0045】
図10においては、本発明のガスケットの第4実施形態を示している。
この実施形態のガスケット本体80においては、基準となるボルト穴35が2ヶ所に設けられ、これらのボルト穴35の外周側の使用圧力1.6MPa(16K)の外径に合わせた位置に、耳部の機能を兼ねた取手81が設けられる。垂直配管への使用時には、この取手81を持って位置合わせをおこなうことにより、基準のボルト穴35の位置を誤ることを確実に防止できる。
さらに、図の最下部の位置には、使用圧力16Kの外径と略同じ円弧状外周縁を有する耳部82が突出して形成されている。ガスケット本体80の装着時には、上記の2つの取手81、81に加えてこの耳部82を16Kの外径に位置合わせすれば、これら円周上の3ヶ所の位置合わせにより、正確に芯出ししながらガスケット本体80を装着できる。
【0046】
ガスケット本体80の最外周側には、使用圧力0.75MPa(7.5K)用の耳部40が広い範囲に渡って形成される。このように、最も頻繁に利用される7.5Kの外径部分の範囲の耳部40を大きくすることにより、使用圧力7.5Kの場合のガスケット本体80の位置合わせを容易におこなうことができる。
【0047】
図11においては、本発明のガスケットの第5実施形態を示す平面図である。
この実施形態のガスケット本体90は、基準位置となるボルト穴35以外のボルト穴30~32を塞ぐ閉塞用シール部材91が貼り付け可能に設けられ、このシール部材91には、ボルト挿通用の切り込み部92が形成されたものである。
図11(a)はシール部材91、
図11(b)はシール部材91を貼り付けたガスケット本体90を示す。
【0048】
シール部材91は、基準位置のボルト穴35以外のボルト穴30~32の位置に遮蔽部93が設けられ、この遮蔽部93には、
図9のガスケット本体70と同様の形状の切り込み部92が設けられる。これにより、シール部材91をガスケット本体90に所定の向きで貼り付けた後に、切り込み部92を介して遮蔽部93からボルト6を挿通可能となる。
【0049】
さらに、
図12に示した本発明のガスケットの第6実施形態に示すように、ガスケット本体100に貼り付け可能なシール部材101が、基準のボルト穴35の位置で2分割されていてもよい。この場合、分割したシール部材101への印刷時の配置を整えやすくなり、環状のシール部材を設ける場合に比較して内周側の無駄なくり抜き部分を省略できる。このため、材料となるシール材の破棄分を減らして歩留りを向上しながら、一定のシール材からのシール部材101の取り数を増やすことができる。ガスケット本体100への貼り付けもしやすくなり、しわもより難くなる。
【0050】
上記のシール部材91、101を使用する場合、その貼り付け力を高めるために各ガスケット本体90、100の表面をクリア樹脂などでコーティングすることが望ましい。また、シール部材91、101の貼り付け後や長期保管時の粘着性を維持するようにし、粘着性の低下により剥がれ落ちたり、経年劣化による粘着性の低下を防止できる粘着力にする必要がある。
【0051】
図13においては、本発明のガスケットの第7実施形態を示している。
この実施形態のガスケット本体110は、
図13(a)に示すシール部材が貼り付け可能に設けられる。シール部材111は、基準位置のボルト穴35の位置に切欠き部112が設けられ、ボルト穴35以外のボルト穴30~32が位置する部分が遮蔽された状態で、ガスケット本体110から剥離可能に設けられる。これにより、シール部材111の貼り付け後において、ガスケット本体110の使用時には、切欠き部112を基準位置のボルト穴35に合わせながら、フランジ面20に正確に合わせてボルト6を挿通できる。その後、シール部材111を剥離すれば、基準位置のボルト穴35以外のボルト穴30~32にもボルト6を挿通可能となる。切欠き部112の形状は、前述の場合と同様に基準位置のボルト穴35が開口する形状とすればよい。
【0052】
さらに、
図14(a)、
図14(b)の本発明のガスケットの第8実施形態を示すように、ガスケット本体110への貼り付け用として、
図13のシール部材111を、基準位置のボルト穴35の位置で2分割した構成のシール部材121としてもよい。この場合、
図12のシール部材100と同様の機能を発揮できる。シール部材121を使用する場合、前記の場合と同様にガスケット本体110をコーティングし、シール部材121の粘着性も高く設定するとよい。
【0053】
図15においては、本発明のガスケットの第9実施形態を示している。
この実施形態では、
図3のガスケット本体10に対して、基準位置となるボルト穴35の周縁に、目印となる環状凸部130が設けられたものである。
一方、
図16においては、本発明のガスケットの第10実施形態を示しており、この場合には、基準位置となるボルト穴35の周縁に目印となる環状凹部131が設けられている。
これらのように、基準となるボルト穴35の周縁に環状凸部130、或は環状凹部131が設けられている場合、これらを目視や手で触れたときの感触により、作業者がボルト穴35を容易に認識することができる。これら環状凸部130、環状凹部131以外にも、例えば、図示しないインク等でボルト穴35の周縁にカラーを施すようにしてもよい。
【0054】
図17においては、本発明のガスケットの第11実施形態を示している。
この実施形態のガスケット本体140では、基準位置となる2ヶ所のボルト穴35に、ガスケット本体140とは別部材であり、外部から視認可能な目印となるタグ141が取り外し可能に取付けられている。このように基準のボルト穴35にタグ141を設けた場合、作業者が基準となるボルト穴35を容易に認識できる。タグ141は、容易に取り外し可能な紙などの材料により形成され、さらに、タグ141の根元付近に図示しない切り込みを設けるようにするとよい。タグ141を設ける場合には、このタグ141用の設置スペースを予め考慮し、輸送時にはタグ141が外れることを防止し、ボルト6の挿通を阻害することを防ぐようにする必要もある。タグ141は、ガスケット本体140の成形後に、後付けにより容易に取付けできる。
【0055】
図18においては、本発明のガスケットの第12実施形態を示している。
この実施形態のガスケット本体150では、基準位置となる2ヶ所のボルト穴35付近に、ガスケット本体150と一体に目印となるタグ151が取り外し可能に一体成形されている。この場合にも、
図17のガスケット本体140と同様に、タグ151を介して基準のボルト穴31を容易に認識可能になり、しかも、タグ151をガスケット本体150に一体成形していることで、部品点数の増加を防止し、ガスケット本体150への取付け作業をおこなう必要もない。
【0056】
なお、上記各実施形態においては、基準位置となるボルト穴が2ヶ所のガスケットについて説明したが、基準位置のボルト穴が4ヶ所のガスケットについても同様に各種の変更が可能である。
【0057】
また、基準位置のボルト穴は、上記以外の認識手段により認識することも可能であり、ボルト穴の認識手段は問わない。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 補修弁本体(配管機材)
2 立ち上がり管
3 空気弁(消火栓、短管)
5 継手部
10 ガスケット本体
20 フランジ面
22 環状シール面
30、31、32 ボルト穴
35 基準位置のボルト穴
50、51、52 取手
71 遮蔽部
72 切り込み部
91 シール部材
92 切り込み部
130 環状凸部
131 環状凹部
141、142 タグ
L 中心線