(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/537 20060101AFI20220622BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20220622BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20220622BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61F13/537 330
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/536 100
A61F13/535 100
(21)【出願番号】P 2020202196
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 淳生
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118053(JP,A)
【文献】特開2016-064000(JP,A)
【文献】特開2019-042399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/537
A61F 13/534
A61F 13/535
A61F 13/536
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された第1吸収性コアと
第2吸収性コアとを有する吸収性物品であって、
前記第1吸収性コアは開口部を有し、
前記第2吸収性コアは、前記第1吸収性コアの外面側に、前記開口部の全部と重なるように配され、
前記第1吸収性コアと前記
第2吸収性コアの間に親水性不織布が配され、
前記親水性不織布には、前後方向に延びる線状のパターンでエンボスされた、または面状にエンボスされた特定領域が形成され、
前記特定領域は、
前記開口部と重なる位置から前記開口部の前側端
よりも前方および/または後側端
よりも後方に延びるように設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記親水性不織布は、全体が前記第1吸収性コアの外面側かつ前記第2吸収性コアの肌面側に位置する請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記親水性不織布は、幅方向の両端部が前記第2吸収性コアの幅方向の両側縁に沿って肌面側に折り返され、幅方向の両端部が前記第1吸収性コアと前記第2吸収性コアの間に位置する請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開口部は、前記第1吸収性コアの幅方向の中央部に形成されている請求項1~
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記特定領域は、前側端および/または後側端が複数に分岐している請求項1~
4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記特定領域は、前記開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように、幅方向に並んで複数設けられている請求項1~
5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記親水性不織布は、短繊維不織布である請求項1~
6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記親水性不織布は、前記特定領域において、前後方向に対して0°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部から構成されたストライプ状のパターンでエンボスされている請求項1~
7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記親水性不織布は、前記特定領域において、前後方向に対して時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部と前後方向に対して反時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部とから構成された格子状のパターンでエンボスされている請求項1~
7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記親水性不織布は、前記特定領域において、前後方向に延びる蛇行線状のパターンでエンボスされている請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿パッド(軽失禁パッドを含む)、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有する吸収性物品であって、尿等の拡散性や吸液性を高めるために、吸収性コアとバックシートの間に拡散シートや拡散層が設けられた吸収性物品が知られている。例えば特許文献1には、貫通する孔部が形成された吸収性コアの裏面に、当該孔部を覆うように液透過性の高い拡散シートが配された吸収性物品が開示され、特許文献2には、開口を有する吸収性コアとバックシートの間に、当該開口と重なって不織布製の拡散層が設けられた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-284190号公報
【文献】特開2012-040260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品では、吸収性コアが本来有する吸収能ができるだけ有効に活用されることが望ましく、これによってより多量の尿等を吸収することが可能となる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸収性コアの吸収能を有効に活用することができ、尿等の吸収性に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の吸収性物品とは、前後方向と幅方向を有し、トップシートとバックシートとこれらの間に配された第1吸収性コアとを有する吸収性物品であって、第1吸収性コアは開口部を有し、第1吸収性コアとバックシートの間に親水性不織布が配され、親水性不織布には、前後方向に延びる線状のパターンでエンボスされた、または面状にエンボスされた特定領域が形成され、特定領域が、開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように設けられているところに特徴を有する。
【0006】
本発明の吸収性物品は、上記のように特定領域が形成された親水性不織布が第1吸収性コアの外面側に配されているため、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等が、親水性不織布の特定領域に沿って開口部よりも前方および/または後方に拡散しやすくなる。そのため、第1吸収性コアが前後方向の広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなる。また、特定領域の配置や形状を適宜設定することにより、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等の平面方向への拡散の程度を任意に調整することができる。そのため、第1吸収性コアの吸収能を有効に活用するように形成することができ、尿等の吸収性に優れるものとなる。
【0007】
本発明の吸収性物品は、第1吸収性コアの外面側に開口部と重なって第2吸収性コアがさらに配され、親水性不織布が第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に配されているものであってもよい。この場合は、第1吸収性コアに加えて第2吸収性コアも前後方向の広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなり、その結果、第1吸収性コアと第2吸収性コアの吸収能が有効に活用され、尿等の吸収性に優れるものとなる。
【0008】
吸収性物品が第1吸収性コアと第2吸収性コアを有する場合、親水性不織布は、例えば、全体が第1吸収性コアの外面側かつ第2吸収性コアの肌面側に位置するように設けることができる。この場合、親水性不織布は、第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に配される中間の拡散シートとして設けることができる。親水性不織布は、幅方向の両端部が第2吸収性コアの幅方向の両側縁に沿って肌面側に折り返され、幅方向の両端部が第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に位置するように設けられてもよい。この場合は、親水性不織布は、第2吸収性コアを包む被覆シートとして設けることができる。
【0009】
特定領域は、開口部と重なる位置から開口部の前側端よりも前方および/または後側端よりも後方に延びていることが好ましい。このように特定領域が設けられていれば、開口部に流入した尿等が特定領域を通って吸収性コアの前方側および/または後方側により移行しやすくなる。
【0010】
開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部に形成されていることが好ましい。これにより、着用者から排泄された尿等が開口部に流入しやすくなり、尿等が開口部において拡散しやすくなる。また、開口部や特定領域が着用者の座骨によって圧迫されにくくなり、尿等が開口部や特定領域で前後方向に拡散しやすくなる。
【0011】
特定領域は、前側端および/または後側端が複数に分岐していてもよい。このように特定領域が形成されていれば、尿等が特定領域を通って吸収性コアの前方側および/または後方側のより広い範囲に拡散されやすくなる。同様の観点から、特定領域は、開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように、幅方向に並んで複数設けられていてもよい。
【0012】
親水性不織布は、短繊維不織布であることが好ましい。親水性不織布を短繊維不織布から構成することにより、親水性不織布を嵩高に形成しやすくなり、開口部に流入した尿等を親水性不織布の内部に速やかに引き込むことができる。
【0013】
親水性不織布は、特定領域において、前後方向に対して0°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部から構成されたストライプ状のパターンでエンボスされていることが好ましい。このように特定領域が形成されていれば、特定領域において尿等の前後方向への拡散性が高まる。
【0014】
親水性不織布は、特定領域において、前後方向に対して時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部と前後方向に対して反時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部とから構成された格子状のパターンでエンボスされていることも好ましい。このように特定領域が形成されていても、特定領域において尿等の前後方向への拡散性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸収性物品は、特定領域が形成された親水性不織布が設けられることにより、尿等の平面方向への拡散性を高めることができる。そのため、吸収性コアの吸収能が有効に活用され、尿等の吸収性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の吸収性物品の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
【
図2】
図1に示した吸収性物品のII-II断面図を表す。
【
図3】
図1に示した吸収性物品に備えられた親水性不織布の変形例を表し、親水性不織布の平面図を表す。
【
図4】本発明の吸収性物品の他の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
【
図5】
図4に示した吸収性物品のV-V断面図を表す。
【
図6】本発明の吸収性物品のさらに他の一例を表し、吸収性物品を肌面側から見た平面図を表す。
【
図7】
図6に示した吸収性物品のVII-VII断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の吸収性物品は、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収性コアとを有するものである。本発明の吸収性物品は、例えば、使い捨ておむつ、尿パッド(失禁パッドを含む)、生理用ナプキン等に適用できる。
【0018】
吸収性物品は、前後方向と幅方向とを有する。前後方向とは、吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。幅方向とは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向と直交する方向を意味し、吸収性物品を着用した際の着用者の左右方向に相当する。また、前後方向と幅方向から形成される面に対して平行な方向を平面方向とし、垂直方向を厚み方向とする。吸収性物品は厚み方向に対して肌面側と外面側を有する。肌面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者の肌に向く側を意味し、外面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側に向く側を意味する。
【0019】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が尿パッドや生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、長円形、略長方形、砂時計形、羽子板形等が示される。
【0020】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、前側部と後側部とこれらの間に位置し吸収性コアが備えられた股部とから構成される。使い捨ておむつは、例えば、前側部と後側部とこれらの間に位置する股部とを有するパンツ部材の股部に、トップシートとバックシートの間に吸収性コアが配された積層体が備えられて構成される。使い捨ておむつはまた、トップシートとバックシートの間に吸収性コアが配された積層体が、前側部と後側部とこれらの間に位置する股部とを有するパンツ形状に形成されていてもよい。なお、前側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の腹側に当てる部分に相当し、後側部は、使い捨ておむつを着用の際に着用者の背側に当てる部分に相当する。股部は、前側部と後側部との間に位置し、着用者の股間に当てる部分に相当する。
【0021】
使い捨ておむつは、後側部の左右両側に止着テープが設けられ、当該止着テープにより着用時にパンツ形状に形成するテープタイプの使い捨ておむつであってもよく、前側部と後側部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツタイプの使い捨ておむつであってもよい。
【0022】
トップシートは、吸収性コアの肌面側に設けられ、液透過性であることが好ましい。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、孔が形成されたプラスチックフィルムを用いてもよい。
【0023】
バックシートは、吸収性コアの外面側に設けられ、液不透過性であることが好ましい。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。
【0024】
吸収性物品は、肌面側の幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向の両側に、前後方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向の内方部分(立ち上がりフラップが立ち上がったときの上端近傍)に弾性部材を設けることにより形成することができる。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向の内方部分が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
【0025】
トップシートやバックシートやサイドシートが不織布から構成される場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。各シートの単位面積あたりの質量は、例えば、10g/m2以上が好ましく、12g/m2以上がより好ましく、また40g/m2以下が好ましく、30g/m2以下がより好ましい。
【0026】
吸収性コアは、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収性コアとしては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いることができる。吸収性コアは、紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や親水性不織布等の被覆シートで覆われていてもよい。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱融着性繊維が含まれてもよい。これらの熱融着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0027】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収性コアは親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0028】
吸収性コアは、吸収性材料として吸水性繊維を用いたものであってもよい。吸水性繊維としては、プロトン化または塩形成したカルボキシル基を含有する繊維が挙げられる。例えば、アクリル繊維を加水分解して、アクリル繊維に含まれるニトリル基をカルボキシル基に変換することにより、吸水性繊維を得ることができる。このとき、吸水性繊維に含まれるカルボキシル基は、アルカリ金属塩またはアンモニア塩を形成していることが好ましい。また吸水性繊維は、親水性繊維をアクリル酸に浸漬し、繊維表面でアクリル酸を析出させることにより製造することができる。
【0029】
吸収性コアの形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性コアの形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、羽子板形、長円形等が挙げられる。
【0030】
本発明の吸収性物品は、吸収性コアとして、開口部を有する第1吸収性コアを少なくとも有する。本発明の吸収性物品はまた、第1吸収性コアの外面側に、第1吸収性コアの開口部と重なって第2吸収性コアがさらに設けられていてもよい。第2吸収性コアは、第1吸収性コアの開口部の全部と重なって配されることが好ましい。開口部は、第1吸収性コアを厚み方向に貫通して設けられる。第1吸収性コアに開口部が設けられることにより、着用者から排泄された尿等が開口部で前後方向に拡散しやすくなる。なお、本明細書において「吸収性コア」とは、吸収性コアが第1吸収性コアと第2吸収性コアを含む場合は、第1吸収性コアと第2吸収性コアの両方ないし第1吸収性コアと第2吸収性コアの積層体を意味し、吸収性コアが第1吸収性コアを含み第2吸収性コアを含まない場合は、第1吸収性コアを意味する。
【0031】
第1吸収性コアには、開口部が1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよいが、第1吸収性コアに設けられる開口部の数は、3つ以下が好ましく、2つ以下がより好ましく、1つのみがさらに好ましい。第1吸収性コアに開口部が1つのみ設けられる場合は、開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部に、前後方向に延びるように設けられることが好ましい。第1吸収性コアに開口部が2つ設けられる場合は、開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部には設けられず、第1吸収性コアの幅方向の中央部を挟んだ一方側と他方側に、それぞれ前後方向に延びるように設けられることが好ましい。第1吸収性コアに開口部が3つ設けられる場合は、開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部とその両側に、それぞれ前後方向に延びるように設けられることが好ましい。なお、第1吸収性コアの幅方向の中央部とは、第1吸収性コアの幅方向の中心線を含み、当該中心線に沿って前後方向に延びる部分を意味する。
【0032】
開口部は、幅方向の長さが、吸収性コアの最も幅狭な部分の幅方向の長さの10%以上となることが好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、また50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましい。開口部が2つ以上設けられる場合は、吸収性コアの最も幅狭な部分における開口部の合計の幅方向の長さがこのような割合にあることが好ましい。なお、吸収性コアの最も幅狭な部分とは、吸収性コアの前後方向の両端部を除いて最も幅狭となる部分を意味し、例えば、吸収性コアを前後方向に5等分したときに、前後方向の一方側の1/5と他方側の1/5の部分を除いて、幅方向に最も狭く形成された部分を意味する。開口部の幅はまた、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、また50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましい。開口部が2つ以上設けられる場合は、各開口部の幅がこのような範囲にあることが好ましい。
【0033】
開口部は、吸収性コアの前後方向の中央1/3の領域の少なくとも一部と重なって形成されることが好ましい。このように開口部が形成されることにより、開口部が着用者の排尿部付近に位置し、着用者から排泄された尿等のより多くが開口部に流入しやすくなる。開口部は、吸収性コアの前後方向の中心と重なって形成されることがより好ましい。開口部は、吸収性コアの前後方向の前側に偏って形成されていてもよく、これにより着用者から排泄された尿等が開口部に流入しやすくなる。
【0034】
開口部は、前後方向の長さが、吸収性コアの前後方向の長さの25%以上となることが好ましく、30%以上がより好ましく、また70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。なお、開口部は、第1吸収性コアの外縁に接しないように設けられることが好ましく、これにより吸収性コアの保形性が高められる。
【0035】
吸収性コアが砂時計形に形成される場合は、開口部は、少なくとも砂時計形状のくびれ部に設けられることが好ましい。すなわち、吸収性コアは前側部と後側部が中間部よりも幅広に形成され、開口部が少なくとも中間部に設けられることが好ましい。開口部は、さらに前側部および/または後側部に延在していてもよい。
【0036】
第1吸収性コアとバックシートの間には親水性不織布が配されており、親水性不織布には、前後方向に延びる線状のパターンでエンボスされた、または面状にエンボスされた特定領域が形成されている。吸収性物品が第1吸収性コアと第2吸収性コアを有するものである場合は、親水性不織布は第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に配される。特定領域は、第1吸収性コアの開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように設けられている。このように特定領域が形成された親水性不織布が第1吸収性コアの外面側に配されていれば、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等が、親水性不織布の特定領域に沿って開口部よりも前方および/または後方に拡散しやすくなり、第1吸収性コアが前後方向の広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなる。第1吸収性コアの外面側に第2吸収性コアが配される場合は、第2吸収性コアも前後方向の広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなる。例えば、着用者が仰向けで寝たり着座している状態では、吸収性物品は体圧がかかっている箇所で尿等の拡散性が低下しやすくなり、特に前後方向への拡散性が低下しやすくなる。そのため、そのような状態で着用者から尿等が排泄されると、尿等が吸収性コアの広い範囲に行きわたらず、吸収性コアによって十分に吸収されず、横漏れが起こりやすくなる。しかし、第1吸収性コアの外面側に上記のように特定領域が形成された親水性不織布が配されることにより、開口部に流入した尿等が特定領域に沿って開口部よりも前方および/または後方に拡散しやすくなる。その結果、吸収性コアの前後方向の広い範囲に尿等が分散され、吸収性コアの吸収能を高めることができる。その結果、吸収性コアの吸収能が有効に活用され、尿等の吸収性に優れるものとなる。なお親水性不織布は、特定領域以外の部分では、尿等の平面方向への拡散を緩めることができる。そのため、特定領域の配置や形状を適宜設定することにより、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等の平面方向への拡散の程度を調整することができる。これにより、吸収性コアの吸収能がより効果的に発揮されるように形成することができる。
【0037】
特定領域は、親水性不織布をエンボスすることにより形成することができる。特定領域は、親水性不織布を非加熱状態でエンボスすることによって形成されてもよく、加熱状態でエンボスすることによって形成されてもよい。後者の場合、特定領域は、親水性不織布を熱エンボスすることにより形成されるものとなる。この場合、親水性不織布を発熱体と接触させて親水性不織布の一部を溶融させたり(いわゆるヒートシール)、親水性不織布を超音波振動子と接触させて親水性不織布の一部を溶融する(いわゆる超音波溶着)ことにより、熱エンボスすることができる。なお、特定領域で親水性不織布が圧密された状態で安定して保持され、特定領域での尿等の平面方向への拡散性を高める観点から、特定領域は親水性不織布を熱エンボスすることにより形成されることが好ましい。
【0038】
特定領域は、親水性不織布を単独でエンボスすることにより形成されることが好ましく、例えばバックシートとともにエンボスされたり、吸収性コアとともにエンボスされないことが好ましい。特定領域が親水性不織布を熱エンボスすることにより形成される場合は、親水性不織布は、特定領域において、バックシートや吸収性コアなどの他の部材と溶着していないことが好ましい。
【0039】
親水性不織布は、特定領域において、前後方向に延びる線状のパターンでエンボスされるか、面状にエンボスされる。前者の場合、線状のエンボスパターンは、全体として前後方向に延びる線状のパターンで形成されればよく、直線状であってもよく、曲線状であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。前後方向に延びる直線状のエンボスパターンは、前後方向に対して0°以上45°未満の角度で延びる直線状、すなわち前後方向に対して平行または0°超45°未満の角度で傾斜して延びる直線状に形成されればよい。線状のエンボスパターンは、前後方向に延びる蛇行線状に形成されてもよい。線状のエンボスパターンは、前後方向に延びる線状のエンボス部が幅方向に複数並んで構成されることが好ましい。親水性不織布が特定領域において面状にエンボスされる場合は、親水性不織布は特定領域の全体が連続的にエンボスされることが好ましい。
【0040】
親水性不織布は、特定領域において、例えばストライプ状のパターンでエンボスされていることが好ましい。具体的には、親水性不織布は、特定領域において、前後方向に対して0°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部から構成されたストライプ状のパターンでエンボスされていることが好ましい。このように特定領域が形成されていれば、特定領域において尿等の前後方向への拡散性が高まる。ストライプ状のパターンの直線部は、前後方向に対して30°以下の角度で延びていることが好ましく、15°以下の角度で延びていることがより好ましく、5°以下の角度で延びていることがさらに好ましい。
【0041】
親水性不織布は、特定領域において、格子状のパターンでエンボスされていることも好ましい。具体的には、親水性不織布は、特定領域において、前後方向に対して時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部と前後方向に対して反時計回りに5°以上45°未満の角度で延びる複数の直線部とから構成された格子状のパターンでエンボスされていることが好ましい。このように特定領域が形成されていても、特定領域において尿等の前後方向への拡散性を高めることができる。格子状のパターンの直線部は、前後方向に対して時計回りまたは反時計回りに15°以上の角度で延びていることが好ましく、20°以上がより好ましく、また40°以下が好ましく、35°以下がより好ましい。
【0042】
親水性不織布は、特定領域以外では、エンボスされていないか、エンボスされる場合は、線状または面状以外のパターンでエンボスされる。例えば、親水性不織布は、特定領域以外で、点状(散点状)のパターンでエンボスされていてもよい。
【0043】
親水性不織布は、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維であって、当該繊維の表面が界面活性剤により親水化された繊維から形成することができる。なお、親水性不織布は、構成繊維として熱融着性繊維を含むことが好ましく、これにより、親水性不織布を熱エンボスすることにより特定領域を形成することができる。従って、親水性不織布は、熱融着性繊維から構成され、当該繊維の表面が界面活性剤により親水化されたものを用いることが好ましい。熱融着性繊維は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等から構成することができる。
【0044】
親水性不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等が好ましく挙げられる。このような不織布を用いれば、親水性不織布を比較的嵩高に形成することができ、開口部に流入した尿等を親水性不織布の内部に速やかに引き込むことができる。また、親水性不織布をエンボスして特定領域を形成した際、特定領域で親水性不織布の表面を比較的深く窪ませて形成することができ、特定領域において尿等が広く拡散しやすくなる。親水性不織布としてはSMS不織布を用いてもよく、この場合は、親水性不織布を薄く形成することが容易になるとともに、親水性不織布の表面において、特定領域以外でも尿等の拡散性を確保しやすくなる。
【0045】
親水性不織布は、構成繊維が前後方向に配向していることが好ましい。これにより、尿等が親水性不織布を前後方向に拡散しやすくなる。不織布の構成繊維の配向方向は、不織布の表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えば、エアスルー不織布やポイントボンド不織布では、不織布を製造するに当たり、繊維塊形成の際の原料短繊維の集積方法やウェブ形成の際の開繊方法を適宜設定することにより、構成繊維の配向方向を揃えることができる。スパンレース不織布では、不織布を形成する際に、短繊維が分散した水流の流れを制御して繊維を堆積させることで、構成繊維の配向方向を揃えることができる。スパンボンド不織布は、ポリマー原料を溶融し、紡糸口金から押し出して延伸し、これをコンベアベルト等の上に集積して、ウェブ状に形成することにより得られるが、この際、コンベアベルト上に集積されたウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向に沿って配列されることとなる。従って、この場合、ウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向(MD方向)に沿って配向することとなる。
【0046】
親水性不織布は、短繊維不織布から構成されることが好ましい。親水性不織布を短繊維不織布から構成することにより、親水性不織布を嵩高に形成しやすくなり、開口部に流入した尿等を親水性不織布の内部に速やかに引き込むことができる。短繊維不織布としては、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。
【0047】
親水性不織布の単位面積あたりの質量は、例えば、3g/m2以上が好ましく、4g/m2以上がより好ましく、5g/m2以上がさらに好ましく、また80g/m2以下が好ましく、60g/m2以下がより好ましく、40g/m2以下がさらに好ましい。
【0048】
開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部に形成されていることが好ましい。これにより、着用者から排泄された尿等が開口部に流入しやすくなり、尿等が開口部において拡散しやすくなる。また、開口部や特定領域が着用者の座骨によって圧迫されにくくなり、尿等が開口部や特定領域で前後方向に拡散しやすくなる。開口部は、第1吸収性コアの幅方向の中央部に1つのみ設けられることがより好ましい。
【0049】
特定領域は、少なくとも第1吸収性コアの開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように設けられていればよく、第1吸収性コアの開口部と重なる位置から開口部の前側端よりも前方および/または後側端よりも後方に延びるように設けられていることが好ましい。このように特定領域が設けられていれば、開口部に流入した尿等が特定領域を通って吸収性コアの前方側および/または後方側により移行しやすくなる。
【0050】
特定領域は、第1吸収性コアの開口部の前後方向の10%以上の領域と重なるように設けられることが好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。このように特定領域が設けられれば、開口部に流入した尿等が特定領域上を通って開口部より前方および/または後方に拡散しやすくなる。特定領域が第1吸収性コアの開口部と前後方向に対して重なる割合の上限は特に限定されず、特定領域は前後方向に対して第1吸収性コアの開口部の全体と重なるように設けられていてもよい。例えば、特定領域は、第1吸収性コアの開口部と重なる位置から開口部の前側端よりも前方および後側端よりも後方に延びるように設けられてもよく、この場合、特定領域は第1吸収性コアを前後方向に縦断するように設けられることとなる。
【0051】
特定領域は、親水性不織布に1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。後者の場合、特定領域は幅方向に並んで配置されてもよく、前後方向に並んで配置されてもよく、幅方向と前後方向に並んで配置されてもよい。例えば、複数の特定領域を、1つの開口部の前側端から前方または後側端から後方に延びるように、幅方向に並んで配置したり、1つの開口部の前側端から前方に延びる特定領域と後側端から後方に延びる特定領域を、前後方向に並んで配置することができる。第1吸収性コアに開口部が複数設けられる場合は、複数の開口部のうちの少なくとも1つの開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように設けられればよく、複数設けられた各開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように設けられてもよい。
【0052】
特定領域は、親水性不織布の一部のみに設けられることが好ましく、開口部の前側端および/または後側端から連続的にのみ設けられることが好ましい。特定領域は、例えば、親水性不織布の3%以上の面積で設けられることが好ましく、5%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましく、また50%以下の面積で設けられることが好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
【0053】
特定領域は、前後方向に延びるように設けられることが好ましい。特定領域は、前後方向に直線状に延びていてもよく、ジクザグ状や曲線状や蛇行状に延びていてもよい。特定領域は、全体として前後方向に延びていればよく、例えば前後方向に対して斜め方向に延びていてもよい。特定領域は、分岐部を有していてもよい。なお、特定領域における尿等の拡散性を高める観点から、特定領域は直線状に延びるように設けられることが好ましい。特定領域は、前後方向に少なくとも30mm以上の長さで設けられることが好ましく、50mm以上がより好ましく、80mm以上がさらに好ましい。
【0054】
特定領域は、帯状に前後方向に延びるように設けられることが好ましい。帯状の特定領域の幅、すなわち帯状の特定領域の延在方向に対する垂直方向の長さは、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。帯状の特定領域の幅の上限は特に限定されず、60mm以下、40mm以下、30mm以下、または20mm以下であってもよい。
【0055】
特定領域の幅は、開口部の幅よりも狭く形成されていてもよく、同幅に形成されていてもよく、広く形成されていてもよい。例えば特定領域の幅が開口部の幅よりも狭く形成されていれば、開口部に流入した尿等が親水性不織布に引き込まれる分と特定領域を前後方向に拡散する分のバランスを取ることが容易になる。第1吸収性コアの外面側に第2吸収性コアが配されるような場合は、特定領域の幅が開口部の幅よりも狭く形成されていれば、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等の一部が親水性不織布を透過して第2吸収性コアに移行しやすくなり、尿等が吸収性コアによって速やかに吸収されやすくなる。一方、特定領域の幅が開口部の幅と同幅かそれよりも広く形成されていれば、尿等が親水性不織布において前後方向とともに幅方向にも拡散しやすくなる。
【0056】
特定領域は、前側端および/または後側端が複数に分岐していてもよい。このように特定領域が形成されていれば、尿等が特定領域を通って吸収性コアの前方側および/または後方側のより広い範囲に拡散されやすくなる。そのため、吸収性コアの前方側および/または後方側の吸収能がより有効に活用されやすくなる。
【0057】
尿等の拡散性を高める観点から、特定領域は、開口部の前側端から前方および/または後側端から後方に延びるように、幅方向に並んで複数設けられることも好ましい。すなわち、1つの開口部の前側端から複数の特定領域が前方に延びるように設けられたり、1つの開口部の後側端から複数の特定領域が後方に延びるように設けられることが好ましい。この場合、幅方向に並んで設けられた複数の特定領域のうちの少なくとも1つは、開口部の前側端から前方かつ幅方向の外方に延びるように設けられてもよく、開口部の後側端から後方かつ幅方向の外方に延びるように設けられてもよい。このように特定領域が設けられることにより、尿等が特定領域に沿って前後方向と幅方向の両方に拡散しやすくなる。
【0058】
開口部の前側端から3つ以上の特定領域が前方に延びるように設けられる場合は、幅方向の外方側にある特定領域の前側端が、幅方向の内方側にある特定領域の前側端よりも、後方に位置することが好ましい。このように特定領域が設けられていれば、幅方向の内方側の特定領域を通って前方に移行した尿等は、吸収性コアのより前方側で尿等が拡散しやすくなり、一方、幅方向の外方側の特定領域を通って前方に移行した尿等は、それよりも後方側で尿等が吸収性コアで拡散しやすくなる。同様に、開口部の後側端から3つ以上の特定領域が後方に延びるように設けられる場合は、幅方向の外方側にある特定領域の後側端が、幅方向の内方側にある特定領域の後側端よりも、前方に位置することが好ましい。このように特定領域が設けられていれば、幅方向の内方側の特定領域を通って後方に移行した尿等は、吸収性コアのより後方側で尿等が拡散しやすくなり、一方、幅方向の外方側の特定領域を通って後方に移行した尿等は、それよりも前方側で尿等が吸収性コアで拡散しやすくなる。
【0059】
特定領域は、親水性不織布の前側縁および後側縁まで延在しないように設けられていることが好ましい。すなわち、特定領域は、前側端が親水性不織布の前側縁よりも後方に位置し、後側端が親水性不織布の後側縁よりも前方に位置することが好ましい。このように特定領域が設けられることにより、尿等が親水性不織布の前側縁よりも前方および後側縁よりも後方に拡散しにくくなり、親水性不織布において前後方向に適度に拡散されるようになる。そのため、その後親水性不織布を透過した尿等が吸収性コアで好適に吸収されやすくなる。同様の観点から、特定領域は、吸収性コアの前側縁および後側縁まで延在しないように設けられることが好ましい。
【0060】
特定領域は、少なくとも第1吸収性コアの開口部の後側端から後方に延びるように設けられることが好ましく、開口部と重なる位置から開口部の後側端よりも後方に延びるように設けられることがより好ましい。このように特定領域が設けられれば、尿等が吸収性コアの後方側に移行しやすくなり、吸収性コアの後方側の吸収能が有効に活用されやすくなる。吸収性コアの後方側は、着用者が仰向けで寝たり着座している状態で、着用者からの体圧を受け、尿等が流れにくくなるところ、このように特定領域が設けられることにより、尿等の吸収性コアの後方側への拡散性が高まる。より多くの尿等を吸収性コアの後方側に移行させる観点からは、特定領域は、第1吸収性コアの前側端より前方に設けられないことも好ましい。
【0061】
特定領域を有する親水性不織布は、例えば拡散シートとして、第1吸収性コアとバックシートの間または第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に設けることができる。この場合、親水性不織布は、全体が第1吸収性コアの外面側、すなわち第1吸収性コアとバックシートの間または第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に位置することが好ましい。拡散シートとして設けられる親水性不織布は、比較的嵩高に形成されることが好ましく、例えばエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布またはスパンレース不織布から構成されることが好ましい。このときの親水性不織布の単位面積当たりの質量は、20g/m2以上が好ましく、22g/m2以上がより好ましく、24g/m2以上がさらに好ましく、また80g/m2以下が好ましく、60g/m2以下がより好ましく、40g/m2以下がさらに好ましい。
【0062】
親水性不織布は、第1吸収性コアまたは第2吸収性コアの被覆シートとして設けることもできる。この場合、親水性不織布は、幅方向の両端部を第1吸収性コアまたは第2吸収性コアの幅方向の両側縁に沿って外面側に折り返し、幅方向の両端部が第1吸収性コアまたは第2吸収性コアの外面側に位置するように設けたり、幅方向の両端部を第1吸収性コアまたは第2吸収性コアの幅方向の両側縁に沿って肌面側に折り返し、幅方向の両端部が第1吸収性コアまたは第2吸収性コアの肌面側に位置するように設けることができる。このように親水性不織布が設けられる場合、特定領域は、親水性不織布において、第1吸収性コアとバックシートの間または第1吸収性コアと第2吸収性コアの間に位置する部分に形成される。被覆シートとして設けられる親水性不織布はまた、全体が第1吸収性コアの外面側、すなわち第1吸収性コアとバックシートの間または第1吸収性コアの外面側かつ第2吸収性コアの肌面側に位置するように設けてもよい。
【0063】
被覆シートとして設けられる親水性不織布は、比較的薄手で液透過性が高く形成されることが好ましく,例えばエアスルー不織布、ポイントボンド不織布またはスパンレース不織布から構成されることが好ましい。このときの親水性不織布の単位面積当たりの質量は、14g/m2以上が好ましく、17g/m2以上がより好ましく、また30g/m2以下が好ましく、25g/m2以下がより好ましい。
【0064】
親水性不織布は、全体が第1吸収性コアの外面側に位置するように設けられるか、第2吸収性コアを包む被覆シートとして設けられることが好ましい。このように親水性不織布が設けられれば、親水性不織布が第1吸収性コアの被覆シートとして設けられる場合と比べて、第1吸収性コアと親水性不織布の間が密着せずに隙間が形成されやすくなる。そのため、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等が、速やかに親水性不織布を前後方向に拡散しやすくなる。親水性不織布が第2吸収性コアの被覆シートとして設けられる場合は、親水性不織布は、幅方向の両端部が第2吸収性コアの幅方向の両側縁に沿って肌面側に折り返され、幅方向の両端部が第2吸収性コアの肌面側に位置するように設けられることが好ましい。また被覆シートは、第2吸収性コアの肌面側で、親水性不織布の幅方向の一方端部と他方端部が互いに重ねられて重ね合わせ部が形成され、この重ね合わせ部に特定領域が形成されることが好ましい。これにより、第1吸収性コアの開口部に流入した尿等が、第2吸収性コアの肌面側で親水性不織布の幅方向の一方端部と他方端部が互いに重ねられた重ね合わせ部で、前後方向のより広範囲に拡散しやすくなる。
【0065】
次に、本発明の吸収性物品の構成例について、図面を参照して説明する。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0066】
図1および
図2には、本発明の吸収性物品の第1構成例を示した。
図1および
図2には、吸収性物品として尿パッドの構成例が示されており、
図1は、尿パッドを肌面側から見た平面図を表し、
図2は、
図1に示した尿パッドのII-II断面図を表す。本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。
図1では、図面の上側が吸収性物品の前側に相当し、図面の下側が吸収性物品の後側に相当する。後述する
図3、
図4および
図6も同様である。
【0067】
吸収性物品1(1A)は、トップシート2とバックシート3とこれらの間に設けられた第1吸収性コア4と第2吸収性コア6とを有する。トップシート2は第1吸収性コア4の肌面側に配され、バックシート3は第2吸収性コア6の外面側に配されている。トップシート2を透過した排泄物は、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6により収容される。バックシート3は排泄物が外へ漏れるのを防いでいる。
【0068】
第1吸収性コア4は開口部5を有し、第2吸収性コア6は、開口部5と重なって第1吸収性コア4の外面側に配されている。吸収性物品1Aでは、第1吸収性コア4が砂時計形の形状に形成され、第2吸収性コア6が略長方形状に形成されている。
【0069】
トップシート2の幅方向xの両側には、前後方向yに延在する液不透過性のサイドシート9が接合されている。サイドシート9は、トップシート2と接合部9Aで接合され、接合部9Aよりも幅方向xの内方部分がトップシート2から起立可能に形成され、接合部9Aよりも幅方向xの外方部分がバックシート3に積層されている(
図2を参照)。サイドシート9の幅方向xの内方部分が起立することにより立ち上がりフラップ10が形成され、これにより尿等の幅方向xの横漏れを防止することができる。なお、サイドシート9の幅方向xの内方部分がトップシート2から起立可能に形成されるために、サイドシート9には、接合部9Aよりも幅方向xの内方部分に前後方向yに延びる起立用弾性部材11が設けられることが好ましい。
【0070】
第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の間には親水性不織布7が配されている。吸収性物品1Aでは、親水性不織布7は、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の間に配される拡散シートとして設けられており、親水性不織布7の全体が第1吸収性コア4の外面側かつ第2吸収性コア6の肌面側に位置するように設けられている。
【0071】
親水性不織布7は特定領域8を有する。親水性不織布7は、特定領域8において、前後方向yに延びる線状のパターンでエンボスされているか、面状にエンボスされている。
図1では、特定領域8が形成された領域がクロスハッチングで示されている。吸収性物品1Aでは、特定領域8は、開口部5と重なる位置から開口部5の後側端より後方に延びるように設けられている。これにより、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも後方に移動しやすくなる。そのため、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6が前後方向yの広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなり、尿等の吸収性に優れるものとなる。
【0072】
吸収性物品1Aでは、開口部5は第1吸収性コア4の幅方向xの中央部に形成されている。このように開口部5が形成されていれば、着用者から排泄された尿等が開口部5に流入しやすくなるとともに、開口部5や特定領域8が着用者の座骨によって圧迫されにくくなるため、尿等が開口部5や特定領域8で前後方向yに拡散しやすくなる。吸収性物品1Aではまた、特定領域8は開口部5よりも幅方向xの長さが狭く形成されている。これにより、開口部5に流入した尿等の一部が親水性不織布7を透過して第2吸収性コア6に移行しやすくなり、尿等が第1吸収性コア4と第2吸収性コア6によって速やかに吸収されやすくなる。なお、図面には示されていないが、吸収性物品1Aでは、第2吸収性コア6を設けないことも可能であり、この場合、親水性不織布7の特定領域8に沿って開口部5よりも後方に拡散した尿等は、第1吸収性コア4によって吸収されることとなる。
【0073】
図3には、親水性不織布7の特定領域8の様々な形成例を示した。
図3では、第1吸収性コア4の開口部5が重なる位置が一点鎖線で示されている。
図3(a)では、特定領域8が、開口部5と重なる位置から開口部5の前側端より前方に延びるように設けられている。このように特定領域8が設けられていれば、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも前方に拡散しやすくなる。
図3(b)では、特定領域8が、開口部5と重なる位置から開口部5の前側端より前方に延びるように設けられているとともに開口部5の後側端より後方に延びるように設けられている。このように特定領域8が設けられていれば、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも前方および後方に拡散しやすくなる。
図3(c)では、特定領域8が、開口部5の後側端から後方に延びるように設けられているが、開口部5とは重ならないように設けられている。このように特定領域8が設けられていても、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも後方に拡散しやすくなる。
図3(d)では、特定領域8は後側端が複数に分岐して形成されている。このように特定領域8が設けられていれば、尿等が特定領域8の後側端で幅方向xに拡散し、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の後方側の部分の吸収能がより有効に活用されやすくなる。
図3(e)および
図3(f)では、特定領域8は、開口部5の後側端から後方に延びるように、幅方向xに複数(図では3つ)並んで設けられている。このように特定領域8が設けられていれば、尿等が特定領域8を通って第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の後方側のより広い範囲に拡散されやすくなる。そのため、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の吸収能がより広い範囲にわたって有効に活用されやすくなる。このように吸収性物品1は、特定領域8の配置や形状を適宜設定することにより、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等の平面方向への拡散の程度を任意に調整することできる。これにより、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の吸収能がより効果的に発揮されるように形成することができる。
【0074】
図4および
図5には、本発明の吸収性物品の第2構成例を示した。
図4および
図5には、吸収性物品として尿パッドの構成例が示されており、
図4は、尿パッドを肌面側から見た平面図を表し、
図5は、
図4に示した尿パッドのV-V断面図を表す。なお、下記において、上記の第1構成例に係る説明と重複する部分の説明は省略する。
【0075】
図4および
図5に示した吸収性物品1(1B)では、
図1および
図2に示した吸収性物品1Aとは、親水性不織布7の設置態様が異なる。吸収性物品1Bでは、親水性不織布7は第2吸収性コア6を包む被覆シートとして設けられている。具体的には、
図5に示すように、親水性不織布7は、幅方向xの両端部が第2吸収性コア6の幅方向xの両側縁に沿って肌面側に折り返され、幅方向xの両端部が第1吸収性コア4と第2吸収性コア6の間に位置するように設けられている。親水性不織布7の幅方向xの両端部は第2吸収性コア6の肌面側で互いに重ねられて重ね合わせ部が形成され、親水性不織布7の両端部の重ね合わせ部に特定領域8が形成されている。そしてこのように形成された特定領域8が、開口部5と重なる位置から開口部5の後側端より後方に延びるように形成されている。
【0076】
吸収性物品1Bにおいても、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも後方に拡散しやすくなる。そのため、第1吸収性コア4と第2吸収性コア6が前後方向yの広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなり、尿等の吸収性に優れるものとなる。吸収性物品1Bでは特に、親水性不織布7の幅方向xの両端部の重ね合わせ部に特定領域8が形成されているため、特定領域8において尿等が親水性不織布7を透過しにくくなり、前後方向yへの拡散性に優れるものとなる。
【0077】
なお図面には示されていないが、親水性不織布7は、幅方向xの両端部が第2吸収性コア6の幅方向xの両側縁に沿って外面側に折り返され、幅方向xの両端部が第2吸収性コア6の外面側に位置するように設けられてもよい。この場合、親水性不織布7には、第2吸収性コア6の肌面側に位置する部分に特定領域8が形成されることとなる。また、特定領域8は、
図3(a)~
図3(f)に示したような様々な配置や形状とすることができ、またそれ以外の配置や形状とすることもできる。
【0078】
図6および
図7には、本発明の吸収性物品の第3構成例を示した。
図6および
図7には、吸収性物品としてテープタイプの使い捨ておむつの構成例が示されており、
図6は、テープタイプの使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表し、
図7は、
図6に示した使い捨ておむつのVII-VII断面図を表す。なお、下記において、上記の第1および第2構成例に係る説明と重複する部分の説明は省略する。
【0079】
図6および
図7に示した吸収性物品1(1C)では、前後方向yの後側部の幅方向xの両側にファスニングテープ14が設けられ、前後方向yの前側部のバックシート3の外面側にターゲットテープ17が設けられている。ファスニングテープ14はテープ基材16に面ファスナーのフック部材15が設けられて構成されている。吸収性物品1Cは、着用者の股間に当てて、ファスニングテープ14のフック部材15を吸収性物品1Cの前側部のターゲットテープ17に止着することで、装着することができる。
【0080】
ファスニングテープ14において、フック部材15はテープ基材16の肌面側に設けられている。テープ基材16は、幅方向xの内方部がサイドシート9および/またはバックシート3に固定され、幅方向xの外方部にフック部材15が取り付けられる。フック部材15は、基盤から係合素子が多数突出して形成される。係合素子の形状は特に限定されず、鉤形、錨形、きのこ形、柱形等が挙げられる。テープ基材16としては、不織布、織布、編布、樹脂フィルム、あるいはこれらの積層体等を用いることができる。
【0081】
ターゲットテープ17は面ファスナーのループ部材から構成されることが好ましい。面ファスナーのループ部材は、基盤上に、フック部材15の係合素子と係合可能なループ部が設けられて構成される。ループ部は一部が基盤に固定され他部が基盤と非固定とされ、これによりフック部材15の係合素子がループ部の基盤との非固定部分に係合することができる。
【0082】
吸収性物品1Cの幅方向xの両側には、前後方向yに延びる脚用弾性部材12が設けられることが好ましい。脚用弾性部材12により、着用者の脚周りにギャザーを形成して脚周りのフィット性を高めたり、横漏れを防止することができる。
【0083】
吸収性物品1Cの前後方向yの端部には、幅方向xに延びるウェスト弾性部材13が設けられることが好ましい。ウェスト弾性部材13により着用者の腰周りに沿ったウェストギャザーが形成され、腹部や背部からの尿等の漏れが防止される。
【0084】
吸収性物品1Cでは、トップシート2とバックシート3の間に第1吸収性コア4が配され、第1吸収性コア4の外面側に第2吸収性コアは配されていない。そして、第1吸収性コア4とバックシート3の間に、特定領域8が形成された親水性不織布7が配されている。特定領域8は、開口部5と重なる位置から開口部5の前側端よりも前方および後側端よりも後方に延びるように設けられている。吸収性物品1Cでは、第1吸収性コア4の開口部5に流入した尿等が、親水性不織布7の特定領域8を通って開口部5よりも前方および後方に拡散しやすくなり、第1吸収性コア4が前後方向yの広い範囲にわたって尿等の吸収に寄与しやすくなる。そのため、第1吸収性コア4の吸収能が有効に活用され、尿等の吸収性に優れるものとなる。
【0085】
吸収性物品1Cでは、特定領域8は、開口部5よりも幅方向xの長さが広く形成されている。これにより、開口部5において親水性不織布7を透過しにくくなり、尿等のバックシート3側からの漏れを抑えることができる。また、開口部5に流入した尿等が幅方向xと前後方向yに広く拡散しやすくなり、第1吸収性コア4によって尿等が効果的に吸収されやすくなる。
【0086】
なお、図面には示されていないが、吸収性物品1Cにおいても、第1吸収性コア4の外面側に第2吸収性コアを設けることができる。また、特定領域8についても、
図3(a)~
図3(f)に示したような様々な配置や形状とすることができ、またそれ以外の配置や形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B,1C:吸収性物品
2:トップシート
3:バックシート
4:第1吸収性コア
5:開口部
6:第2吸収性コア
7:親水性不織布
8:特定領域
9:サイドシート
10:立ち上がりフラップ
11:起立用弾性部材
12:脚用弾性部材
13:ウェスト弾性部材
14:ファスニングテープ
15:フック部材
16:テープ基材
17:ターゲットテープ