(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】卵管診断のためのシステム、方法、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20220622BHJP
A61B 10/04 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
A61B10/02 140
A61B10/02 150
A61B10/04
(21)【出願番号】P 2020507992
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2018000229
(87)【国際公開番号】W WO2019040094
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-12
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515209482
【氏名又は名称】エヌビジョン メディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】マガナ ジーザス
(72)【発明者】
【氏名】スノー ディヴィッド ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アラン エル
(72)【発明者】
【氏名】クリストマン-スキーラー クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】サーナ サービー
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0278747(US,A1)
【文献】特開昭55-032576(JP,A)
【文献】特表2013-517907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02
A61B 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵管診断のためのデバイスであって、
遠位端部を有するチューブと、
前記チューブの遠位端部に結合された第1の端部を有するバルーンと、を有し、前記バルーンは、反転した第1の位置では、前記チューブ内に配置され、裏返した第2の位置まで移動可能であり、前記第2の位置は、前記バルーンの表面が卵管の内面と接触可能であるように、前記チューブの遠位端部よりも遠位側の一定の距離だけ延長可能であり、
更に、前記バルーンの第2の端部に結合された遠位端部を有するプッシュワイヤを有し、前記バルーンは、前記プッシュワイヤの作動によって、反転した前記第1の位置から裏返した前記第2の位置まで移動可能であり、
前記バルーンの表面は、卵管の内面の組織サンプルの収集、保持、又はその両方のための複数の表面特徴部を含み、
前記バルーンは、前記複数の表面特徴部を構成するようにエッチングされ又はエンボス加工され、又は、前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンである微小
線状突起を含み、又は、前記複数の表面特徴部は、前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含み、又は、前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンであり且つ前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含む、デバイス。
【請求項2】
前記表面特徴部は、前記バルーンの表面に形成された複数の皺を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記バルーンの表面の複数の皺が、前記バルーンの表面に形成され、且つ、卵管の内面に接触した後に組織サンプルの少なくとも一部分を保持するように構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数の表面特徴部は、前記バルーンの表面にエッチングされる、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記バルーンの表面の一部分が、複数の山と谷を形成するようにエンボス加工される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数の表面特徴部は、前記バルーンの表面への組織サンプルの接着を、前記表面特徴部を有しない前記バルーンの表面よりも向上させる、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記バルーンは、前記バルーンを反転した前記第1の位置から裏返した前記第2の位置まで移動させるために膨らまし可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
更に、前記プッシュワイヤの遠位端部に取付けられたフィラメントを有し、前記フィラメントは、反転した前記第1の位置の前記バルーン内に配置され、裏返した前記第2の位置の前記バルーンから延長可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
身体管腔内の組織サンプルを収集するためのシステムであって、
遠位端部を有するチューブと、
バルーンと、を有し、前記バルーンは、前記チューブの遠位端部に結合された第1の端部と、プッシュワイヤの遠位端部に結合された第2の端部を有し、反転した第1の状態に位置決め可能であり、
前記プッシュワイヤは、前記バルーンを裏返した第2の状態まで裏返して前記バルーンが前記チューブの遠位端部の外に延びるように前進するように構成され、
身体管腔の内面に接触する前記バルーンの表面が、前記バルーンの表面への組織サンプルの転移のために、前記裏返した第2の状態において構成され、
前記バルーンの表面は、組織サンプルの収集、保持、又はその両方のための複数の表面特徴部を含み、
前記バルーンは、前記複数の表面特徴部を構成するようにエッチングされ又はエンボス加工され、又は、前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンである微小
線状突起を含み、又は、前記複数の表面特徴部は、前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含み、又は、前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンであり且つ前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含む、システム。
【請求項10】
前記表面特徴部は、前記バルーンの表面に形成された複数の皺を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記バルーンの表面の複数の皺が、身体管腔の内面に接触した後に組織サンプルの少なくとも一部分を保持するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記表面特徴部は、前記バルーンの表面にエッチングされる、請求項9~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の表面特徴部は、前記バルーンの表面への組織サンプルの接着を、前記表面特徴部を有しない前記バルーンの表面よりも向上させる、請求項9~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンであり且つ前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の表面特徴部は、山から谷までの高さが0.1~500ミクロンであり且つ前記バルーンの軸に対して直角である微小
線状突起を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2013年9月4日出願の「卵管診断のための裏返し式カテーテル」という名称の米国仮特許出願第61/873,753号及び2013年2月1日出願の「卵管診断のための方法及びデバイス」という名称の米国仮特許出願第61/759,783号の優先権を主張する2014年2月3日出願の「卵管診断のための方法及びデバイス」という名称の国際特許出願番号PCT/US2014/014472の国内移行出願である2015年7月30日出願の「卵管診断のための方法及びデバイス」という名称の米国特許出願第14/764,710号の一部継続出願である2016年2月25日出願の「卵管診断のための方法及びデバイス」という名称の米国特許出願第15/053,568号の一部継続出願であり、かつその優先権の利益を主張し、これらの出願の開示全体を本明細書に援用する。
【0002】
この出願は、2017年8月17日出願の「卵管診断のためのデバイス」という名称の米国仮特許出願第62/546,791号及び2018年4月20日出願の「卵管診断のための方法及びデバイス」という名称の米国仮特許出願第62/660,512号の非仮特許出願であり、かつその優先権の利益を主張し、これらの出願の開示全体を本明細書に援用する。
【0003】
本開示は、一般的に卵管診断に関し、特に、組織サンプル収集のための体内管腔(卵管を含む)のナビゲーションに関連した解剖学的困難に順応するシステム、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
卵巣癌は、女性の重大な疾患であり、米国では72人に1人の女性が生涯の間にこの病気を有すると診断される場合がある。2012年には22,000人を超える米国の女性が卵巣癌を有すると診断されている。卵巣癌の早期検出は、有効なスクリーニング検査の欠如に起因して困難である場合があり、そのために卵巣癌は、この疾患が進行期に達するまで診断されない場合があり、治療オプションを制限する。
【0005】
卵巣癌のためのスクリーニングは、典型的には、診断のための細胞サンプルを取得するための手術手順を含む場合がある。例えば、卵巣は腹腔内のものであるので、卵巣にアクセスするために腹腔鏡検査又は観血手術(開腹術)が実施される場合がある。いずれの手術手順も、限定するわけではないが、副作用を体験すること及び/又はかなりの回復時間を必要とすることを含む患者に対するリスクを高める。加えて、卵巣生検は、疾患(例えば、癌性)細胞を潜在的に拡散させる追加のリスクに患者を露出すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、卵巣癌の評価のために低侵襲性でありかつ制御された仕方で、特に皮膚切開を必要とせずに、卵管からサンプルを取得することを可能にするデバイス及び処理に対する必要性が存在する。早期癌をスクリーニングするためにカテーテルを用いて卵管から代表的細胞のサンプルを確保する必要性が更に存在する。
【0007】
これらの及びその他の考慮に関して、本発明の改善が有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
「発明の概要」は、下記の「発明を実施するための形態」で更に詳しく説明する概念の抜粋を簡単な形式で紹介するために提供するものである。この「発明の概要」は、主張する主題の重要な特徴又は不可欠な特徴を必ずしも識別するように意図しておらず、主張する主題の範囲を決定する際の支援としても意図していない。
【0009】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイスは、遠位端部を有するチューブと、チューブの遠位端部に結合された第1の端部を有するバルーンとを含む。バルーンは、反転した第1の位置でチューブ内に配置され、裏返した第2の位置まで移動可能であり、かつ、バルーンの表面が卵管の内面と接触可能であるような距離だけチューブの遠位端部から遠位側に延長可能である。プッシュワイヤが、バルーンの第2の端部に結合された遠位端部を有する。バルーンは、反転した第1の位置から裏返した第2の位置までプッシュワイヤの作動によって移動可能である。バルーンの表面は、卵管の内面の組織サンプルの収集、保持、又はその両方のための複数の表面特徴部を含む。
【0010】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、表面特徴部は、バルーンの表面に形成された複数の皺を含み、かつ複数の縁部、微小突起、又は重ね合わせ材料、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを有する。複数の皺は、バルーンの表面に形成可能である。バルーンの表面の複数の皺は、バルーンの表面に形成され、かつ卵管の内面と接触した後に組織サンプルの少なくとも一部分を保持するように構成される。表面特徴部は、バルーンの表面にエッチングされる。バルーンの表面の一部分は、複数の山及び谷を形成するようにエンボス加工されてもよい。複数の表面特徴部は、バルーンの表面への組織サンプルの接着を表面特徴部のないバルーンの表面と比較して向上させる。バルーンは、反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで移動するために膨らまし可能である。フィラメントがプッシュワイヤに取付けられ、反転した第1の位置でバルーン内に配置され、裏返した第2の位置でバルーンから延長可能である。
【0011】
本開示の例示の実施形態により、身体管腔内の組織サンプルを収集するためのシステムは、遠位端部を有するチューブと、チューブの遠位端部に結合された第1の端部及びプッシュワイヤの遠位端部に結合された第2の端部を有するバルーンとを含む。バルーンは、反転した第1の状態に位置決め可能である。プッシュワイヤを前進させることにより、バルーンを裏返した第2の状態に裏返すと、バルーンがチューブの遠位端部の外に延びる。バルーンの表面は、バルーンの表面への組織サンプルの転移のために、裏返した第2の状態では、身体管腔の内面に接触するように構成される。バルーンの表面は、組織サンプルの収集、保持、又はその両方のための複数の表面特徴部を含む。
【0012】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、表面特徴部は、バルーンの表面に形成された複数の縁部、微小突起、又は重ね合わせ材料、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを有する複数の皺を含む。複数の皺は、バルーンの表面に形成可能である。バルーンの表面の複数の皺は、身体管腔の内面に接触した後に組織サンプルの少なくとも一部分を保持するように構成される。表面特徴部は、バルーンの表面にエッチングされる。複数の表面特徴部は、バルーンの表面への組織サンプルの接着を、表面特徴部のないバルーンの表面よりも向上させる。
【0013】
本開示の例示の実施形態により、身体管腔内の組織サンプルを収集する方法は、遠位端部を有するチューブと、チューブの遠位端部に結合された第1の端部及びプッシュワイヤの遠位端部に結合された第2の端部を有するバルーンとを準備する段階を含む。バルーンは、反転した第1の状態に位置決めする。プッシュワイヤを前進させることにより、バルーンを裏返した第2の状態に裏返すと、バルーンがチューブの遠位端部の外に延びる。バルーンの表面は、裏返した第2の状態で、身体管腔の内面に接触する。バルーンの表面は、組織サンプルの収集、保持、又はその両方のための複数の表面特徴部を含む。
【0014】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、表面特徴部は、バルーンの表面に形成された複数の皺を含み、かつ複数の縁部、微小突起、又は重ね合わせ材料、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを有する。複数の皺は、バルーンの表面に形成可能である。バルーンの表面の複数の皺は、身体管腔の内面に接触した後に組織サンプルの少なくとも一部分を保持するように構成される。複数の表面特徴部は、バルーンの表面への組織サンプルの接着を、表面特徴部のないバルーンの表面よりも向上させる。
【0015】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイスは、遠位端部を有するチューブと、チューブの遠位端部に結合された第1の端部を有するバルーンとを含む。バルーンは、反転した第1の位置でチューブ内に配置され、裏返した第2の位置まで移動可能であり、かつある距離だけチューブの遠位側に延長可能である。延長部分が、バルーンの第2の端部に結合された近位端部を有する。延長部分は、反転した第1の位置で、バルーン内に配置され、裏返した第2の位置で、バルーンの第2の端部から延長可能である。
【0016】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、延長部分は、フィラメント、縫合糸、又はストリング、又はそれらの組合せのいずれかである。フィラメント、縫合糸、又はストリング、又はそれらの組合せの少なくとも一部分は、編まれる。延長部分は、色を有する1又は2以上のフィラメントで形成されてもよい。延長部分の1又は2以上のフィラメントの色は、対比する視覚化を提供する。延長部分は、視覚フィードバック及び触覚フィードバックのうちの一方又は両方のための1又は2以上のノット又はしるしを含む。延長部分は、裏返した第2の位置のバルーンからの延長に応答して、組織サンプルを収集して保持するように構成された編組フィラメントである。プッシュワイヤは、バルーンの第2の端部と延長部分の近位端部とに結合された遠位端部を有する。バルーン及び延長部分は、プッシュワイヤの作動によって、反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで移動可能である。
【0017】
本開示の例示の実施形態により、身体管腔内の組織サンプルを収集するためのシステムは、遠位端部を有するチューブを含み、バルーンは、チューブの遠位端部に結合された第1の端部と、第2の端部とを有する。延長部分は、バルーンの第2の端部に取付けられる。バルーン及び延長部分は、反転した第1の状態に位置決め可能である。バルーン及び延長部分は、バルーン及び延長部分がチューブの遠位端部から延びるように、裏返した第2の状態まで前進するように構成される。延長部分は、反転した第1の位置で、バルーン内に配置され、かつ裏返した第2の位置で、バルーンから身体管腔の中に延長可能である。
【0018】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、延長部分は、フィラメント、縫合糸、又はストリング、又はそれらの組合せのうちのいずれかである。フィラメント、縫合糸、又はストリング、又はそれらの組合せの少なくとも一部分は、編まれる。延長部分は、色を有する1又は2以上のフィラメントで形成される。延長部分の1又は2以上のフィラメントの色は、対比する視覚化を提供する。延長部分は、視覚フィードバック及び触覚フィードバックのうちの一方又は両方のための1又は2以上のノット又はしるしを含む。延長部分は、裏返した第2の位置のバルーンから身体管腔の中への延長に応答して、組織サンプルを収集して保持するように構成された編組フィラメントである。プッシュワイヤは、バルーンの第2の端部と延長部分の近位端部とに結合された遠位端部を有する。バルーン及び延長部分は、プッシュワイヤの作動によって、反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで移動可能である。
【0019】
本開示の例示の実施形態により、身体管腔内の組織サンプルを収集する方法は、遠位端部を有するチューブと、チューブの遠位端部に結合された第1の端部及び第2の端部を有するバルーンとを準備する段階を含む。延長部分は、バルーンの第2の端部に取付けられる。バルーン及び延長部分は、反転した第1の状態に位置決めする。バルーンを、裏返した第2の状態まで前進させ、バルーン及び延長部分を、チューブの遠位端部から延ばす。延長部分は、反転した第1の位置でバルーン内に配置され、裏返した第2の位置でバルーンから身体管腔の中に延長可能である。
【0020】
本開示の上述した及びその他の実施形態の様々なものでは、組織サンプルを、裏返した第2の位置のバルーンから身体管腔の中に延長可能な延長部分によって収集する。延長部分は、編組フィラメント、編組縫合糸、又は編組ストリング、又はそれらの組合せのうちのいずれかである。延長部分は、色を有する1又は2以上のフィラメントで形成される。延長部分の1又は2以上のフィラメントの色は、対比する視覚化を提供する。延長部分は、編組フィラメントであり、かつ裏返した第2の位置のバルーンから身体管腔の中への延長に応答して組織サンプルを収集して保持するように構成される。プッシュワイヤは、バルーンの第2の端部と延長部分の近位端部とに結合された遠位端部を有し、かつバルーン及び延長部分を、反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで移動させるように作動される。
【0021】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイス、システム、及び方法は、遠位端部及び近位端部を有するチューブと、チューブに対して同軸に配置されたシースとを含む。バルーンは、チューブの遠位端部に結合された第1の端部と、第2の端部とを有し、シースは、バルーンにわたって延びる。シースは、バルーンが反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで卵管の中に移動させるとき、バルーンにコラム強さを与える。シースは、バルーンが卵管の中に裏返されるとき、バルーン圧壊を最小にする。シースは、細胞収集の後の患者からの取出し中、裏返し式バルーン、延長部分、又はその両方を保護する。シースノブは、シースをチューブに取付ける。シースノブは、相対移動を最小にするために、シースをロックするように構成される。シースノブは、シースをバルーン及びチューブに対して調節するために、シースをチューブからアンロックするように構成される。
【0022】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイス、システム、方法は、視覚化のための1又は2以上のマーカを含む。第1のマーカは、チューブ上に配置され、かつシース又はシースノブに対するチューブの位置を示す。第1のマーカは、裏返した第2の位置でバルーンの少なくとも一部分を覆うための準備段階としてチューブに対するシースの位置決めを示す。第1のマーカは、卵管の中へのバルーンの初期前進のためのチューブに対するシースの位置決めを示す。バルーンの少なくとも一部分が裏返した第2の位置にあることに応答して、シースを、バルーンの少なくとも一部分を露出させるために近位方向に移動させる。第2のマーカは、チューブ上に配置され、かつシース又はシースノブに対するチューブの位置を示す。第2のマーカは、収集された細胞を保護するために、細胞収集の後にシースが裏返し式バルーン及び/又は延長部分を覆うことの視覚化のための後退マーカとして、チューブに対するシースの位置決めを示す。第2のマーカは、チューブの近位部分に配置する。第3のマーカは、チューブ上に配置され、かつバルーン及びチューブの接続点に対してチューブの遠位端部にある。第3のマーカは、卵管内のバルーン及び/又は延長部分の延長又は位置決めを確認するために、チューブの端部を視覚的に示す。1又は2以上のマーカは、切り込み線、コーティング物質、又は材料のバンド、又はそれらの組合せとして形成される。1又は2以上のマーカは、卵管の中へのバルーン位置決め及び延長を向上させ又は標準化する。シールが、プッシュワイヤの周りに配置され、かつ加圧チャンバ116に対して位置決めされる。プッシュワイヤは、チューブの中を前進して、バルーンは、反転した第1の位置と裏返した第2の位置の間で作動させるために、シールに対して移動可能である。プッシュワイヤと円錐シールの間の漏出形成に応答して、シールは、反転した第1の位置と裏返した第2の位置の間でバルーンを移動するための圧力を維持するように調節可能である。
【0023】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイス、システム、及び方法は、シースの少なくとも一部分が半透明、透明、又はその他にシースルーであることを含む。チューブの少なくとも一部分は、半透明、透明、又は他にシースルーである。バルーンの少なくとも一部分は、半透明、透明、又は他にシースルーである。チューブは、透明部分と不透明部分を含む。不透明部分は、チューブの近位端部に配置される。チューブの透明部分は、チューブの不透明部分よりも可撓性である。チューブの透明部分は、チューブの不透明部分の長さに沿ってかつその内径に沿って延びる。延長部分は、バルーンに取付けられ、反転した第1の位置でバルーン内に配置され、裏返した第2の位置でバルーンから延びる。延長部分は、反転した第1の位置にあるとき、バルーン、チューブ、及びシースを通して可視である。バルーンは、反転した第1の位置から裏返した第2の位置まで移動するための可視性に関して、不透明又はその他の可視又は検出可能な流体によって膨らまし可能である。
【0024】
本開示の例示の実施形態により、卵管診断のためのデバイス、システム、及び方法は、プッシュワイヤの作動のためのギヤ機構を含むハンドルを含む。ギヤ機構は、複数のギヤを含み、かつ駆動ホイールによって作動可能である。ギヤ機構は、バルーン移動の追加の制御のためのステップダウン比を含む。駆動ホイール及びギヤ機構は、反転した第1の位置と裏返した第2の位置の間の移動中、バルーンの均一移動を提供する。プッシュワイヤをその近位端部まで延長させるのに応答して、ハンドルは、ユーザに可聴フィードバック又は触覚フィードバックを提供するための制限機構を含む。ラチェットは、ギヤの回転を停止するために1又は2以上のギヤに係合可能である。ラチェットは、バネによってギヤラックに向けて付勢する。ラチェットは、ユーザに可聴フィードバック又は触覚フィードバックを提供するためにギヤラックの歯に係合してその上を摺動する。歯は、第1の側に急勾配を有し、第2の側により穏やかな勾配を有する。
【0025】
本開示の非限定的な実施形態を、概略的であって正確な縮尺であることを意図しない添付図面を参照して、一例として説明する。これらの図では、図示する同一又はほぼ同一の各構成要素は、典型的に単一数字で表される。明瞭化の目的で、当業者が本開示を理解することを可能にするのに図示が必要ではない場合は、全ての構成要素が全ての図において符号付けされるとは限らず、各実施形態の全ての構成要素が示されるとも限らない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】子宮を卵巣に接続する子宮卵管接合部(UTJ)を有する卵管の断面図である。
【
図2A】本開示による卵管内への挿入カテーテルの挿入の例示の実施形態を示す。
【
図2B】本開示による卵管内への挿入カテーテルの挿入の例示の実施形態を示す。
【
図2C】本開示による卵管内への挿入カテーテルの挿入の例示の実施形態を示す。
【
図2D】本開示による卵管内への挿入カテーテルの挿入の例示の実施形態を示す。
【
図3】本開示による例示の実施形態のカテーテルを展開するための子宮鏡の概略図である。
【
図4】本開示による近位導入器カテーテルの例示の実施形態を示す。
【
図5A】本開示によるすぼませ状態の遠位弾性バルーン先端部を有する裏返し式スリーブの例示の実施形態の断面図である。
【
図5B】本開示による膨らまし状態の
図5Aの遠位弾性バルーン先端部を有する裏返し式スリーブの断面図である。
【
図6A】本開示によるすぼませ状態の外側構成スリーブを有する裏返し式バルーンの例示の実施形態の断面図である。
【
図6B】本開示による膨らまし状態の
図6Aの外側構成スリーブを有する裏返し式バルーンの断面図である。
【
図6C】
図6A及び
図6Bの外側構成スリーブを有する裏返し式バルーンの膨らましの例示の実施形態を示す。
【
図7A】本開示によるすぼませ状態の非弾性送出バルーンを有する裏返し式スリーブ及び弾性バルーンの例示の実施形態の断面図である。
【
図7B】本開示による膨らまし状態の
図7Aの非弾性送出バルーンを有する裏返し式スリーブ及び弾性バルーンの断面図である。
【
図7C】
図7A及び
図7Bの非弾性送出バルーンを有する裏返し式スリーブ及び弾性バルーンの膨らましの例示の実施形態を示す。
【
図8A】本開示によるすぼませ状態の潅注管腔を有する裏返し式スリーブ及び弾性バルーンの例示の実施形態の断面図である。
【
図8B】本開示による膨らまし状態の
図8Aの潅注管腔を有する裏返したスリーブ及び弾性バルーンの断面図である。
【
図9A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図9B】本開示による膨らまし状態の
図9Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図9C】本開示による螺旋フィラメントの例示の実施形態である。
【
図10A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図10B】本開示による膨らまし状態の
図10Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図11A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図11B】本開示による膨らまし状態の
図11Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図11C】本開示による裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図11D】本開示による裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図11E】本開示による裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図11F】本開示による裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の断面図である。
【
図12A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの別の例示の実施形態の断面図である。
【
図12B】本開示による膨らまし状態の
図12Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図13A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの別の例示の実施形態の断面図である。
【
図13B】本開示による膨らまし状態の
図13Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図14A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの別の例示の実施形態の断面図である。
【
図14B】本開示による膨らまし状態の
図14Aの裏返し式バルーンカテーテルの断面図である。
【
図15A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーン螺旋カニューレの例示の実施形態の断面図である。
【
図15B】本開示による膨らまし状態の
図15Aの裏返し式バルーン螺旋カニューレを示す。
【
図16A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式遠位円弧バルーンカニューレの例示の実施形態の断面図である。
【
図16B】本開示による膨らまし状態の
図16Aの裏返し式遠位円弧バルーンカニューレを示す。
【
図17A】本開示によるすぼませ状態の裏返し式バルーンカテーテルの別の例示の実施形態の断面図である。
【
図17B】本開示による膨らまし状態の
図17Aの裏返し式バルーンカテーテルを示す。
【
図18】本開示による延長要素の例示の実施形態を示す。
【
図19】本開示による細胞収集後における後退状態の延長部分の例示の実施形態を示す。
【
図20】本開示による展開状態の
図19の別々の延長部分を示す。
【
図21A】本開示によるバルーンの展開前におけるボール先端部裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図21B】本開示による展開状態の
図21Aのボール先端部裏返し式バルーンカテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図22A】本開示によるカテーテルから出る裏返し式バルーンの例示の実施形態を示す。
【
図22B】本開示によるカテーテルから出る裏返し式バルーンの例示の実施形態を示す。
【
図22C】本開示によるカテーテルから出る裏返し式バルーンの例示の実施形態を示す。
【
図23A】本開示によるバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図24】本開示によるバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図25】本開示によるバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面図である。
【
図26A】本開示による
図25のカテーテルのハンドルの例示の実施形態の断面図である。
【
図26B】本開示による
図26Aのカテーテルのハンドル部分内のギヤシステムの例示の実施形態を示す詳細図である。
【
図26C】本開示による直線ラックラチェット組立体の例示の実施形態の斜視図である。
【
図26D】本開示による
図26Cの直線ラックラチェット組立体のドロップキークリックの例示の実施形態の側面図である。
【
図26E】本開示によるギヤジャムの例示の実施形態の側面図である。
【
図27】本開示によるバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図28】本開示によるバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図29A】本開示によるガイドワイヤを用いる操縦可能なバルーン先端部の例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図29B】本開示によるガイドワイヤを用いる操縦可能なバルーン先端部の例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図29C】本開示によるガイドワイヤを用いる操縦可能なバルーン先端部の例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図30】本開示によるバルーンカテーテル及びリードバルーン先端部の例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図31】本開示による可撓性ガイドワイヤを有するバルーンカテーテルの例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図32】本開示によるカテーテル内へのバルーンの反転前におけるバルーンの例示の実施形態を示す。
【
図33】本開示によるシース及び反転した
図32のバルーンを有するバルーン先端部カテーテルの例示の実施形態の側面断面図である。
【
図34A】本開示による一連の印刷されたしるしを有するストリングフィラメントの例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図34B】本開示による一連のノットをしるしとして有するストリングフィラメントの例示の実施形態の側面斜視図である。
【
図35】本開示によるバルーンの例示の実施形態の裏返しを示す。
【
図36A】本開示によるバルーンの例示の実施形態の断面図である。
【
図36B】本開示によるバルーンの例示の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、本明細書に説明する特定の実施形態に限定されない。本明細書に使用する用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためのものに過ぎず、特許請求の範囲を超えて限定的であるように意図していない。別途定めない限り、本明細書に使用する全ての技術用語は、本開示が属する当業技術の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0028】
値範囲を提供する場合に、状況が別途明確に指定しない限り、当該範囲の上限値と下限値の間で下限値の単位の10分の1までの各介在値も特定的に開示することを理解すべきである。言及範囲にあるいずれかの言及値又は介在値と当該言及範囲にあるいずれかの他の言及値又は介在値の間にある各小範囲は、本開示の範囲に含まれる。これらの小範囲の上限値及び下限値は、当該範囲に独立に含まれる又は除外し、これらの小範囲にこれらの限界のいずれかが含まれる、いずれも含まれない、又は両方が包まれる各範囲も、言及範囲にあるいずれかの特定的に除外される限界値によって本開示の範囲に含まれる。言及範囲がこれらの限界値のうちの一方又は両方を含む場合に、含まれるこれらの限界値のうちのいずれか又は両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0029】
本明細書に使用する場合に、状況が明らかに別途示さない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を包含するように意図している。本明細書に使用する場合に、用語「comprises」及び/又は「comprising」又は「includes」及び/又は「including」は、言及する特徴、領域、段階、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1又は2以上の他の特徴、領域、整数、段階、作動、要素、構成要素、及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外しないことは更に理解されるであろう。
【0030】
上述したように、女性における早期癌(例えば、卵巣癌)を効果的に検査することへの課題は、手術手順を行うことなく生検サンプルを取得することを含む。解剖学的に、卵巣は、卵管の遠位開口(os)の領域の卵管采の直近にある。卵巣によって放出された卵子は、卵管采によって集められて卵管を通して子宮に運ばれる。卵巣癌の場合、細胞が卵管内に沈着する場合があり、これらの細胞は最終的に子宮内に移動する場合がある。子宮から取得された細胞サンプルは、卵巣悪性腫瘍を検出するが、子宮内への卵巣癌細胞の移動の発生率は、子宮サンプリングを卵巣悪性腫瘍のための確実な診断検査にするには低くすぎる。
【0031】
比較的多数の癌細胞は、卵管に移動し又は卵管内で発生し、卵管の遠位部分に且つ遠位開口(os)の近くに集中する場合がある。悪性腫瘍を探して卵管内の細胞を検査する機能は、そのような癌の早期の検出及び治療に対して臨床的価値の高いものである。移動する癌細胞を検出する早期検出スクリーニングを実施する場合があることを理解すべきである。
【0032】
卵管は非常に脆弱であり、医療手順において穿孔を受けやすい。この場合、既知のデバイスを用いた卵管内への診断デバイスの安全な導入が困難である場合がある。ここで
図1を参照すると、患者の卵管1は、子宮卵管接合部(UTJ)2のところで接続された子宮への近位開口(os)3から、遠位開口(os)5に延び、、更に卵巣6に接続されている。穿孔は、卵管の近位開口(os)3(例えば、開口部)よりも遠位側に生じる狭窄部である子宮卵管接合部(UTJ)2で発生する場合がある。例えば、何人かの患者では、子宮卵管接合部(UTJ)2は、近位開口(os)3から約1cm遠位にある。何人かの患者では、この狭窄部での身体管腔サイズは、約0.3mm又は0.5mm程度の小さいものであるのに対して、子宮卵管接合部(UTJ)に近い卵管の身体管腔サイズは、約1mmである。
【0033】
例示の実施形態よれば、本開示のシステム及び方法は、卵管の内壁に係わり、診断目的のために細胞を卵管の内壁から取出す。かかる細胞を低侵襲手順で収集するデバイス及び処理が提供され、幾つかの実施形態では、低侵襲手順は、皮膚切開なしに行われる。本明細書は、卵管のサンプル収集及び診断に言及するが、本開示によれば、サンプル収集及び診断のシステム及び方法は、任意その他の身体管腔、管、及び導管に適用可能であることを理解すべきであり、かかる身体管腔、管、及び導管は、限定するわけではないが、胆管、肝管、胆嚢管、膵管、リンパ管、及び循環血管を含む。
【0034】
卵管診断のための例示のカテーテルの実施形態は、低侵襲手順の性能が設けられ、かかる性能は、(1)子宮内アプローチによる卵管の近位開口(os)へのアクセス、(2)カニューレを近位開口(os)に挿入して近位開口(os)との流体密シールを形成するための導入器カテーテルの前進、(3)卵管から出て腹腔内に入る長さを辿るための導入器カテーテルの内側における第2のカテーテルの使用、(4)第2のカテーテルの端部におけるバルーンの膨らましと、バルーンが卵管の遠位開口(os)をシールするまでの第2のカテーテルの後退(改善されたサンプリングのために、第2のカテーテルの後退により、卵管の管腔内面との接触を生じさせて細胞を分離させてもよい)、及び/又は(5)卵管の潅注と、細胞診又は細胞分析のための潅注流体の回収、のうちの任意のものを含む。
【0035】
最小侵襲性手順のための卵管診断用カテーテルの例示の実施形態は、(1)子宮内アプローチによる卵管の近位開口(os)へのアクセス、(2)カニューレを近位開口(os)に挿入するための導入器カテーテルの前進、(3)卵管の内側を辿るための導入器カテーテルの内側における第2のカテーテルの使用(第2のカテーテルの端部のところで膨らませたバルーンを卵管の近位部分を縦断するように前進させ、更に裏返して卵管内に入る)、(4)バルーンが卵管の管腔内面に接触して、細胞をサンプリングのために分離させること、及び/又は(5)細胞の収集及びそれに続く処理のために、バルーンを取出して、バイアル内に挿入すること、のうちの任意のものを含む。
【0036】
例示のカテーテルの実施形態は、卵管内に挿入可能に構成される(
図1参照)。卵管は、湾曲部を有し(例えば、蛇行した経路を有する)、卵管の軟組織は折畳み可能であり、それにより、通過を試みるときに多数の狭窄部を生じさせることがある。上述したように、このことは、子宮卵管接合部(UTJ)において特に当てはまり、従って、医療器具の挿入によって穿孔される傾向が高い。何人かの患者では、子宮卵管接合部(UTJ)はまた下方に曲がり、狭窄部における管腔サイズは約0.3mm又は0.5mm程度に小さく、子宮卵管接合部(UTJ)に隣接した卵管の身体管腔サイズは約1mmである。
【0037】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、最初にカテーテル内に反転して入れられた細長いバルーンが展開可能である。バルーンは、卵管、例えば、子宮卵管接合部(UTJ)の近位端部に入り、それによって近位開口(os)にカニューレを挿入するように部分的に裏返される。バルーンは、カテーテルの内側からのバルーンの加圧ときに裏返され、それによって裏返しの展開機構が、卵管内の蛇行性又は狭窄部に関わらず卵管を通る経路を生成する。幾つかの実施形態では、バルーンは、加圧と協働させるプッシュワイヤの前進によって裏返される。バルーンの長さの大半を実質的に非弾性であり、それによってバルーンは、裏返されるときに卵管を実質的に拡大及び拡張させない。バルーンの拡大は、卵管を破裂させる又は他に損壊又は損傷する場合がある。しかし、例示の実施形態は、遠位バルーンの後退ときに遠位開口(os)をシールするために拡大可能な弾性遠位バルーン端部を組込む。実施形態では、デバイスは、卵管にカニューレを挿入するのに十分な剛性と、潜在的な損壊又は損傷を最小にするために卵管の蛇行通路を通るナビゲーションに十分な可撓性とを有するバルーンを有する。幾つかの実施形態では、デバイスは、バルーンが近位開口(os)において収縮することができないように卵管にカニューレを挿入するための支持要素を含む。
【0038】
本開示のシステム及び方法の例示の実施形態は、カテーテルの遠位端部の位置決め段階及び展開を含む。幾つかの実施形態では、カテーテル遠位端部は、子宮鏡によって卵管の近位端部に送出可能である。幾つかの実施形態では、子宮鏡は、例示の子宮鏡(例えば、
図3)である。展開モードに関係なく、カテーテルの後退部分は、卵管の内壁に接触するように延長可能である。意外なことに、カテーテルの一部分を延ばす行為は、組織学的及び/又は細胞学的な評価を実施するのに十分な細胞及び/又は組織のサンプルを卵管壁から取出すことが見出されている。例えば、バルーンの長さの少なくとも一部分は、サンプル収集のために卵管に接触する。幾つかの実施形態では、バルーンが裏返すときに身体管腔(例えば、卵管)を実質的に拡大及び拡張させないように、バルーンの長さの大部分は、実質的に非弾性である。幾つかの実施形態では、バルーンは、裏返されるときに身体管腔が拡大及び拡張しないようにサイズ決定される。上述したように、バルーンの拡大は、被験者の身体管腔を破裂させるか又は損傷する場合がある。幾つかの実施形態により、例示のバルーンカテーテルに関して上述したように、バルーンは、裏返されて身体管腔(例えば、卵管)内に入るか又は延長されるときに管腔を実質的に拡大及び拡張させないように、カテーテルからの裏返しによって身体管腔内に長手方向にのみ延長可能である。幾つかの実施形態では、バルーンは、身体管腔内に長手方向に延長可能であり、膨らませたバルーンの直径は、卵管の直径よりも約10~15%まで大きい。バルーンの長さの大部分が実質的に非弾性のものであることによって、バルーンの半径方向の拡大を制限又は制御する。管腔構造の中に挿入することが意図されないバルーンの部分は弾性であり、従って、直径が拡大可能であり、実質的に非弾性のものではなく柔軟性を有することは認められる。そのような混成バルーンは、子宮卵管接合部(UTJ)とのシールが望ましい場合の実施形態では、非常に適切なものである。シールが望ましい状況の例は、管腔の潅注、管腔に造影剤を充満する状況、閉塞を診断する状況、及び/又は化学治療薬又は抗生物質のような治療薬との局所接触を含む。
【0039】
同じく意外なことに、バルーンの延長部分の引き抜きが一層多くの細胞を取出すことも見出されている。幾つかの実施形態では、延長部分は、分離した卵管細胞の周囲組織への分散を排除するためにカテーテルの取出しの前に後退させる。幾つかの実施形態では、収集されたサンプルを保護するために摺動可能なシースを展開可能である。カテーテルの取出しの後に、延長部分は、異常細胞(例えば、癌性細胞)を検査するために、収集されたサンプル(例えば、管腔細胞)の少なくとも一部分を顕微鏡スライド又は他の診断基板との接触を通じて沈着させる。幾つかの実施形態では、異常細胞及び潜在的に癌性の細胞を識別するために卵管内に染料を放出可能である。
【0040】
ここで
図2A~
図2Dを参照すると、反転式非弾性スリーブ12及び取付けられた遠位弾性バルーン14は、導入器カテーテル10の中に挿入可能であり、導入器カテーテル10は、手術子宮鏡20(
図3)の作業チャネル22内に存在し、
図2Aに示すように卵管1の近位開口(os)にカニューレを挿入するのに使用される。
図2Bでは、バルーンを膨らませることにより、スリーブ12を卵管1の長さにわたって裏返し、遠位弾性バルーン14を膨らませる。
図2Cでは、反転させた非弾性スリーブ12を完全に前進させて、弾性バルーン14を膨らませた後、バルーンを近位側に少なくとも部分的に後退させ、卵管1の遠位開口(os)18をシールする。
図2Dは、導入器カテーテル10と裏返したスリーブ12の間の卵管1の長さに沿った潅注のための生理食塩水の導入を示す。膨らませた弾性バルーン14の後退により、遠位開口(os)の開口部をシールする。引き続いて、潅注流体の回収により、卵巣癌又は他の病状の検出の細胞分析のために、細胞サンプルを卵管1の実質的に全長から取得する。ある実施形態では、異常細胞及び潜在的な癌性細胞を識別及び/又は区別するための染料が、卵管内に導入される潅注流体中に存在する。染料の概略的な例は、改質タイプの葉酸に取付けられた蛍光造影剤を含み、蛍光造影剤は、それ自体に付着した卵巣癌細胞を探すホーミングデバイスとして作用する。幾つかの実施形態では、マルチスペクトル蛍光カメラが、検出された細胞を照明し、細胞の場所を、例えばモニタによって、視覚的に特定する。卵巣癌細胞は、それが成長して分裂するために、大量のビタミン(葉酸)を必要とする。癌細胞の面上の特別な受容体は、ビタミンを捕捉し、ビタミンに何が付着していても、ビタミンを内側に引き込む。
【0041】
上述し且つ後でより詳細に説明するカテーテル10は、手術子宮鏡20を用いて患者の子宮内に導入され、かかる手術子宮鏡20の例を
図3に示す。手術子宮鏡20は、1又は2以上の作業チャネルを含む。1つのチャネルは、子宮を膨張させる潅注流体を供給して、内視鏡視覚化を提供し、1又は2以上の追加の作業チャネル22は、器具及び/又はカテーテルを子宮鏡の遠位側に前進させることを可能にする。近位導入器カテーテル10(例えば、
図2A及び
図4参照)は、手術子宮鏡20の作業チャネルの中を前進可能であり、卵管の近位開口(os)にカニューレを挿入するのに使用される。近位導入器カテーテル10上のバルーン24は、近位開口(os)を塞ぐために膨らまされ(例えば、
図4参照)、裏返し式スリーブカテーテルは、近位導入器カテーテル10の中から卵管の近位部分に前進可能である。スリーブ/バルーン要素14は、完全に裏返され、膨張させたバルーンの先端部は、遠位開口(os)をシールするために引き戻される。潅注流体は、ポート11から導入され、サンプルを収集するために近位導入器カテーテル10の潅注ポート11から吸引される。潅注流体は、裏返し式スリーブカテーテルと近位導入器カテーテルの両方から導入され、近位導入器カテーテルの一方又は両方のポート(11、13)から吸引される。
【0042】
カテーテル10の実施形態では、裏返し式スリーブカテーテルのスリーブ12は、可撓性の細長い実質的に非弾性のチューブであるのがよく、弾性バルーン先端部14が、かかるチューブの遠位端部に取付けられる(
図5A及び
図5B参照)。非弾性のチューブ12は、多数の突起15を有し、突起15は、
図5Bに示すように、チューブ12を裏返し、すなわち、延長させ/展開させたとき、非弾性チューブ12の長さに沿って配置され且つチューブの外側に延びる。展開の前、チューブが反転されているので、突起は、
図5Aに示すように内向きに延びる。スリーブが完全に裏返されたとき、
図5Bに示すように、突起が外側に延び、突起は卵管の管腔面に露出される。突起は、例えば、追加の表面積及び/又は摩擦接触によって、バルーンの後退ときに細胞を収集するスリーブの能力を増大させる。幾つかの実施形態では、裏返された非弾性バルーンの外面は、後で説明するように、織物で覆われてもよいし、その他のテクスチャであってもよく、それにより、バルーンの後退中の細胞の分離を増加させ、細胞収集を向上させる。
【0043】
図6A~
図6Cは、裏返し式スリーブカテーテル10Aの例示の実施形態を示し、展開中、裏返し式スリーブカテーテル10Aのバルーン14Aとスリーブ17の間の結合の保護が提供される。
図6A~
図6Cの裏返し式スリーブカテーテル10Aは、その遠位先端部に取付け可能な細長い弾性バルーンを含む。実質的に非弾性のスリーブ17は、弾性バルーン14よりもわずかに短い長さを有し、カテーテルの遠位先端部のところで弾性バルーン14に取付けられ、非展開状態の非弾性スリーブ17が弾性バルーン14の内側に配置されるように反転可能である。バルーン/スリーブ組合せ14A、17の裏返しに応答して、裏返したスリーブを卵管の中で前進させる間に弾性バルーン14が卵管を拡大させて潜在的に破裂させることを防止するために、延長位置にある弾性バルーン14Aの一部分が非弾性スリーブ17内にあり、例えば、非弾性スリーブ17が弾性バルーン14Aの外側に配置されて弾性バルーン14Aをその長さに沿って、例えば、その長さの大部分に沿って狭窄するように、非弾性スリーブ17がカテーテル10Aの二重壁19から現れる。完全なバルーン/スリーブの裏返しのとき、膨らませたバルーンを関連の引き戻しによるカテーテルの後退ときの遠位開口(os)の閉塞のために、遠位弾性バルーンをスリーブの直径の約3倍~5倍まで膨らませる。幾つかの実施形態では、カテーテルは、バルーンと非弾性スリーブ17の間で潅注を行うことを可能にするためのポート11を含む。
【0044】
図7A~
図7Cは、裏返し式スリーブカテーテル10bの例示の実施形態を示し、裏返し式スリーブカテーテル10bは、同心二重壁カテーテルを含み、裏返された3つの層のが遠位カテーテル先端部に取付けられる。細長い非弾性バルーン21が、内側カテーテル23の遠位先端部に取付けられ、バルーン21は、内側カテーテル管腔25内に延びる。幾つかの実施形態では、非弾性バルーン21と長さが等しい細長い弾性バルーン14Bがカテーテル10bの外壁27の遠位先端部に取付けられる。バルーン14Bは、非弾性バルーン21の内側に配置される。幾つかの実施形態では、弾性バルーン14Bよりも長さが短い非弾性スリーブ29が、カテーテル外壁27の遠位先端部に取付けられる。スリーブ29は、非展開状態で弾性バルーン14Bの内側に配置される。内側カテーテル23の加圧により、非弾性バルーン21を裏返し、それによって弾性バルーン14B及び外側非弾性スリーブ29を送出させる。3つ全ての層の完全な裏返しに続いて、内側カテーテルの壁と外側カテーテルの壁の間の加圧により、弾性バルーン14Bを膨らませる。非弾性スリーブ29は、弾性バルーン14Bをその長さの大部分に沿って狭窄する。バルーンの遠位非狭窄先端部14Tは、拡大して閉塞要素を形成する。上述したことは、裏返し処理中、システム内の摩擦を低減するのに有利である。例えば、非弾性バルーン21は、弾性バルーン14B及び非弾性スリーブ29を送出する。弾性バルーン14Bは、完全に裏返されるまで拡大を受けないと考えられる。このようにして、弾性バルーン14Bは、裏返し中、非弾性スリーブ29の壁との摩擦接触を回避し、これは、例えば、卵管を縦断するために小さい直径のカテーテルを用いて作業する場合に展開を容易にする点で有利である。
【0045】
図8A~
図8Bは、裏返し式スリーブカテーテル10Cの例示の実施形態を示し、裏返し式スリーブカテーテル10Cは、潅注のための小管腔31を有する非弾性シース29Aを含み、シース29Aは、細胞診サンプルを取得するための流体の潅注及び吸引に使用される第3のポート11Aに取付け可能である。上述したように、幾つかの実施形態では、潅注流体は、異常細胞及び潜在的に癌性の細胞の識別のための染料を含む。
【0046】
本開示による別の例示の実施形態を
図9A~
図9C及び
図10A~
図10Bに示す。細長いバルーン32の遠位端部に取付け可能な延長部分34、例えば、拡大可能部材を含む細長いバルーン32は、カテーテル30の管腔36の中に反転されて入る。反転状態、例えば、非展開状態では、延長部分34は、細長いバルーン32の内側に位置する。幾つかの実施形態では、延長部分34は、フィラメント38の1又は2以上のループから構成される螺旋である。延長部分34を形成するフィラメントは、様々な材料から形成され、かかる材料は、ナイロン又はポリプロピレン、フルオロポリマー、又はポリ乳酸のようなモノフィラメントポリマー材料、ステンレス鋼チタン又はプラチナのような金属、ニチノールのような超弾性金属、又はそれらの組合せを例示として含む。幾つかの実施形態では、細胞サンプリング位置へのその後の復帰を容易にするために、基準マーカがフィラメント及び/又はバルーン上に含まれ、卵管(図示せず)に送出可能である。延長部分は、拡大可能部材のような代替構成を有することは認められるであろう。延長部分34、例えば、拡大可能部材は、ポリマー又は金属で形成された複数の外向きの剛毛40を含む(
図18を参照)。幾つかの実施形態では、延長部分34は、カテーテルの内側に拘束された状態から解除されたときに丸まる、広がる、又は扇形になる42、球になる44(
図11A~
図11F又は
図14A~
図14B)、又はこれらを組合せた材料の細長い撚り糸38として含まれる。幾つかの実施形態では、延長部分34、例えば、拡大可能部材は、湿潤環境内への放出ときに自己拡大する圧縮ポリマー発泡体で形成される(
図12A~
図12B)。近位開口(os)に近いカテーテルを加圧すると、バルーン32は、反転部分を外向きに延長位置に、更に卵管の内壁細胞との接触状態に付勢するように裏返される。幾つかの実施形態では、完全なバルーンの裏返しのとき、延長部分34は、卵管の遠位開口(os)から及び腹腔の中に延びる。幾つかの実施形態では、延長部分34は、約5~15mmの拡大時外径を有する。
【0047】
複数の剛毛を有する延長部分34の利点は、デバイスがカテーテル内に後退したときに剪断力に露出される可能性が低い区域を含むサンプル(例えば、細胞及び/又は組織)を収集可能な面積を追加する点である。従って、
図18~
図20に見ることができるように、細胞収集を最大に増大させ、更に、デバイスが卵管の中で引かれる又はシースの中に引かれるときに拭い取られる細胞の量を最小にする。延長部分が大きい面積を有する実施形態では、輪郭のない延長部分よりも、類似の加圧条件下で上述したように係合した卵管の直線ユニット毎に細胞収集を増加させる。
【0048】
本開示によるカテーテルの更に他の実施形態では、延長部分、例えば、拡大可能部材は、任意の個数の形状及び輪郭を形成する。例えば、バルーン32の裏返しのときに広がってブラシ42を形成する複数のフィラメント42が、バルーンの遠位端部に取付けられる(
図11A~
図11B)。幾つかの実施形態では、裏返しのときに編組ストリング又は編組縫合糸43は、バルーン32の遠位に延長可能であり(
図11C~
図11Dを参照)、他の実施形態では、編組縫合糸は、様々な材料で形成され、及び/又は縫合糸43の延長の目視確認のための1又は2以上の色を有する(
図11E~
図11Fを参照)。バルーン32の内にポリマー発泡構造体46を押し込むと、ポリマー発泡構造体46は、バルーン32の裏返しに応答して、自己拡大して流体環境に露出される(
図12A~
図12B)。弾性又は非弾性のバルーン48は、非弾性スリーブバルーン32の遠位端部上に配置される(
図13A~
図13B)。これに代えて又はこれに加えて、幾つかの実施形態は、超弾性ワイヤコイルを有する裏返し式バルーン(
図14A~
図14B)、螺旋形裏返し式バルーン50(
図15A~
図15B)、裏返し式遠位円弧バルーン52(
図16A~
図16B)、又はバルーンの裏返しのときに内腔54のような3次元構造体にまとまるポリマー又は金属の長い弾性フィラメント(
図17A~
図17B)、及び複数の外向き剛毛40を有する拡大可能部材34(
図18)、又はそれらの組合せを含む。拡大可能部材としての又はそれ以外のカテーテル延長部分のこれらの実施形態はいずれも、それらを医療従事者が卵管内の望ましい位置にナビゲーションして戻すためのナビゲーション補助具として、基準マーカを含むことは認められるであろう。例えば、マーカは、卵管内の望ましい場所に例えば内腔54を通して又はバルーン32によって送出可能である。そのようなマーカは当該技術で既知であり、放射線不透性マーカ、同位体マーカ、及び高周波マーカを例示として含む。更に他の実施形態では、生体分解性延長部分又は非一時的延長部分をカテーテルから分離可能である。更に他の実施形態では、延長部分は、化学治療薬、抗生物質、抗炎症薬、又はそれらの組合せのような卵管組織の治療薬を送出する。
【0049】
カテーテルが後退して子宮鏡の作業チャネル内に戻るとき、卵管の内面の全長の少なくとも一部分から細胞を分離させる。幾つかの実施形態では、カテーテル先端部領域内部ボアによって収集された細胞を保護するために、バルーン内のガス圧を低減して、カテーテル先端部領域内でバルーンを再度反転させることによって、延長部分をバルーン内に反転させて入れ戻す。他の実施形態では、延長部分及びバルーンは、すぼませ状態又は膨らませたままにした状態のいずれにおいても、バルーンを再度反転させることなしにシース内に後退させて戻すように後退可能である。例えば、
図19に示すように、延長部分34、例えば、複数の剛毛40を含む拡大可能フィラメント38は、患者からの取出し中、シース162(
図23Aを参照)によって保護される。
【0050】
図18~
図20に示す延長部分34、例えば、拡大可能フィラメント38は、裏返し式バルーンの端部に取付けられる。幾つかの実施形態では、延長部分34、例えば、拡大可能コイルは、プッシュワイヤ(
図23Aを参照)に取付けられる。幾つかの実施形態では、延長部分は、プッシュワイヤ134の遠位端部に取付けられる。幾つかの実施形態では、延長部分34(例えば、螺旋)は、内腔の中に通され、遠位端部が卵管内に到達したときに拡大する収集デバイスである。細胞を卵管の特定の部分、例えば、卵管采から収集可能にし、次いで、デバイスを取出すとき、遠位細胞が近位卵管の内面によって拭い取られる可能性を最小にするように、これらの細胞をシース162によって保護することは認められるであろう。
【0051】
幾つかの実施形態では、延長部分34、例えば、拡大可能フィラメント38の外面と卵管の内壁との間の摩擦は、輪郭なしの延長部分を有する実施形態の場合であっても、細胞を分離させ、そのような細胞を拡大可能部材に接着させるのに十分である。例えば、バルーンの遠位端部で拡大した螺旋は、細胞サンプルを収集するために、卵管の遠位端部で卵管采と接触する。卵管は、近位端部から遠位端部に推移するときに内径が拡大するので、延長部分34の拡大(例えば、拡大可能フィラメント38による)は、卵管の遠位端部(例えば、卵管の卵管采部分)において取得細胞サンプルを最大に増大させる。
【0052】
細長いバルーン及び延長部分は、幾つかの実施形態では、子宮鏡を患者から取出すときに細胞サンプルの損失を回避するために、子宮鏡の作業チャネル内に後退可能である。子宮鏡の作業チャネルの近位端部にあるエラストマーシールは、カテーテルの外面に接してシールする。このシールは、カテーテルが子宮鏡の作業チャネル内の望ましい位置から摺動する又は作業チャネルから完全に滑り出ることを防止するように作用する。カテーテル本体上のマークは、細長いバルーン及び遠位螺旋が完全に子宮鏡作業チャネル内であることを保証するのに必要な後退長さを示す。患者からの子宮鏡の取出しとき、幾つかの実施形態では、生理食塩水溶液を含有するシリンジを作業チャネルの近位端部にあるルアー継手に取付ける。生理食塩水が、細長いバルーン及び拡大螺旋によって収集された細胞を試験管の中に洗い流し入れるのに使用される。拡大可能部材によって収集される細胞は、従来技術によって検査するために収集され、細胞学的検査、分子検査、又は遺伝子検査のための調製されることは認められるであろう。
【0053】
幾つかの実施形態では、内腔54は、内腔の開口部を維持するのに十分な剛性を有する材料で形成される。例えば、内腔54は、バルーンを膨らまして裏返すときにバルーンの圧力に耐えるのに十分な剛性を有する。実施形態では、内腔54は、金属、複合材、ポリエチレンテレフタレート(PET)材料を含むポリマー、又はそれらの組合せで形成され、
図17A~
図17Bに示すように、カテーテルに取付けられる。裏返し処理は、管腔を含まないプッシュワイヤを有する上述した実施形態の処理に続いて行われる。この実施形態はまた、膨らまし側面ポートと、近位シール33を含み、それにより、内腔54を貫通するオリフィスが子宮鏡と患者の身体組織の間の流体連通を維持しながら、バルーン32を裏返すことを可能にする。いったん裏返したら、内腔54は、通路を構成し、別個の延長部分が通路を通ってもよいし、手術器具パッケージ又は視覚化デバイスが通路を通ってもよい。幾つかの実施形態では、様々な薬剤が、通路を介して管腔と接触するようになる。従って、これらの薬剤及び原理は、音響造影剤として作用する微小気泡、様々な形態の分光撮像のための造影染料、細胞を処置し又は癌性細胞を死滅させるための治療、又はそれらの組合せを含む。治療は、概略的には、癌性細胞に独特の抗体を含み、抗体は、化学治療的な又は放射性の同位体、化学治療薬、放射性同位体種、抗生物質、抗真菌薬、又はそれらの組合せを保持する。
【0054】
図21A~
図21Bは、本開示によるボール先端部付き裏返し式バルーンカテーテル120の例示の実施形態の断面図である。球形のボール122が、チューブ又はカテーテル126に固定されたバネ先端部124の遠位端部に取付けられる。「チューブ」と「カテーテル」126が交換可能に使用されてもよいことを理解すべきである。球形のボール122は、子宮卵管接合部(UTJ)の側壁の不用意な穿孔を最小にし及び/又は回避するために、患者の子宮卵管接合部(UTJ)をうまく通り抜けるように設けられる。バネ先端部124により、ボール122を有する遠位端部がコーナの周りを曲がり、子宮卵管接合部(UTJ)中を進行することを可能にする。バネ先端部124及び球形のボール122は、バネ先端部124及び球形のボール122を貫通し且つ開口した管腔128を有するのがよい。バネ先端部124に設けられた球形のボール122の直径は、約0.8~1.0mmであり、中空のバネ先端部124の長さ及び外径はそれぞれ、約1.5cm及び約0.6mmである。中空のバネ先端部124は、金属(ステンレス鋼、又は、ニチノール等の超弾性金属)のコイルバネで形成され、かかる金属の外側は、薄肉ポリマーの熱収縮チューブのシースよって覆われ、薄肉ポリマーは、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はそれらと類似の材料で作られる。幾つかの実施形態では、バネ先端部124は、管状ポリマー本体の中に共押出しされた金属コイルバネであってもよい。中空のバネ先端部124は、可撓性のポリマーチューブであってもよく、幾つかの実施形態では、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルブロックアミド、又はそれらと類似する材料で作られる。裏返し式バルーン130は、中空のバネ先端部124の内側を延びるのがよい。裏返し式バルーン130は、導入器カテーテル126の主管腔132(例えば、一般的に可撓性の管状構造)又はカニューレ(例えば、一般的に剛性の管状構造)の内側を近位側に延びるのがよい。
【0055】
裏返し式バルーン130の近位端部は、カテーテル126又はカニューレの近位端部のシール135を貫通可能なプッシュロッド134に取付けられる。患者に手術で使用するとき、可撓性のボール先端部122を子宮卵管接合部(UTJ)の中に手動で前進させる。子宮卵管接合部(UTJ)の中を通る可撓性のボール先端部122及びバネ先端部124の通行を生じさせたら、プッシュロッド134を、予め加圧した導入器カテーテル126又はカニューレのシール135を貫くように前進させる。プッシュロッド134の前進により、中空のバネ先端部124から出て卵管の長さを全体にわたって、バルーン130の制御された裏返しを生じさせる。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、シール137がチューブ/カテーテルシャフト126内に配置され、プッシュワイヤ134がバルーンを作動させるとき、プッシュワイヤ134がチューブ/カテーテルシャフト126の中を通る(
図21B、
図23Aを参照)。幾つかの実施形態では、シール137は、加圧チャンバ116とプッシュワイヤ134の間に配置された円錐シールである。本明細書では、「プッシュワイヤ」という用語と「プッシュロッド」という用語とを同義に使用することに注意すべきである。円錐シール137は、カテーテル126内の圧力を維持しながらバルーン130を反転位置と裏返し位置の間で作動させるように、プッシュワイヤ134がカテーテル126の中を通って前進することを可能にする。本開示の様々な実施形態は、円錐シール137の近くに配置された調節可能シール135を提供する。プッシュワイヤ134と円錐シール137の間に生じる漏出に応答して、バルーンを反転した第1の位置と裏返した第2の位置の間で移動させるのに必要とされる圧力を維持するように、調節可能シール135を調節する。調節可能シール135は、回転止血弁、例えば、同軸デバイスの間のシールを維持するためのデバイスであり、ノブ133によって調節可能である。幾つかの実施形態では、止血弁をシール135として使用する。止血弁は、望ましい程度のシールを設けるための圧縮性ガスケットを含んでもよい。
【0057】
ノブ133は、シール135を調節するように回転可能に調節可能である。使用の際、ユーザがノブ133を締め付ける又は緩めることによって、ノブ133を調節することが可能である。ノブ133を締め付けることにより、シール135を圧縮し、それによってシール135をプッシュワイヤ134の周りで潰す。回転可能ノブ133は、シールに対する改善された制御及び円錐シール137から任意の漏出があった場合に反応する機能をユーザに与える。
【0058】
幾つかの実施形態では、細長いバルーンを、組立中に最初にカテーテル管腔の中に反転させて入れ、例えば、バルーンを、組立中にひっくり返す。バルーンを、卵管内で裏返して「展開」するように加圧して、展開する。裏返しの展開機構は、卵管内の蛇行性又は狭窄部に関わらず、卵管を辿る。例えば、バルーンは、それを裏返すときに実質的に拡大及び拡張することができないように、バルーンの長さの大部分、例えば、バルーンの長さの100%までを実質的に非弾性であり、従って、バルーンを裏返すときに卵管は拡大又は拡張することができない。他の実施形態では、バルーンの遠位端部の一部分は、卵管の采状端部の中に入り込むように拡大可能である(例えば、
図5~
図8参照)。バルーンの過剰拡大は、卵管を破裂させる又は損傷する場合がある。
【0059】
デバイスの様々な実施形態に共通の例示の処理は、カテーテルの遠位端部の展開を含む。幾つかの実施形態では、カテーテル遠位端部は、従来の子宮鏡によって卵管の近位端部に送出させる。展開モードに関わらず、カテーテルシャフト126の内側にあるバルーンの後退部分は、カテーテルシャフト126の内部から卵管の内壁との接触状態になるように延長可能である。意外なことに、この部分を延長させる行為は、組織学的評価を実施するのに十分な量の細胞及び/又は組織を卵管壁から削り取ることが見出されている。これは、見かけ上は研削性の特徴を持たないバルーンの平坦な面に関して認識される。幾つかの実施形態では、卵管壁と接触するために粗面化された面テクスチャがバルーン上に含まれるが、統計的に有意な組織学的評価のための十分な量の細胞及び/又は組織を分離させるのにバルーンが完全膨らまし状態又は部分的に収縮して縮れた状態のいずれにあるかに関わらず、非弾性バルーン部分の面で十分である。更に、意外なことに、延長部分の引き抜きは一層多くの細胞を取出すことが見出されている。他の実施形態では、周囲組織への分離卵管細胞の分散を不可能にするために、延長部分をカテーテル取出しの前に後退させる。異常細胞、特に癌性細胞を探して検査するのに、カテーテル取出しときのこの段階で細胞で覆われた延長部分の露出部分を顕微鏡スライド又は他の診断基板に接触させるだけで十分である。
【0060】
上述し且つ後でより詳細に説明するカテーテル126は、手術子宮鏡20を用いて患者の子宮内に導入され、かかる手術子宮鏡20の例を
図3に示す。手術子宮鏡20は、1又は2以上の作業チャネルを含む。1つの作業チャネルは、子宮を膨らませる潅注を施して内視鏡視覚化を提供し、1又は2以上の追加の作業チャネルは、器具及び/又はカテーテルを子宮鏡の遠位側に前進させることを可能にする。カテーテル126(例えば、
図21A及び
図21B参照)は、手術子宮鏡の作業チャネルの中を前進可能であり、卵管の近位開口(os)にカニューレを挿入するのに使用される。裏返し式バルーン130を、近位カテーテル126の中から前進させて卵管の近位部分の中に入れる。
【0061】
図22A~
図22Cは、裏返し式バルーン130の例示の実施形態を示し、本開示の実施形態による球形のボール122が可撓性先端部152から出る。ナイロンの可撓性先端部152及び球形のボール122は、卵管の中への裏返し式バルーン130の展開のために、患者の子宮卵管接合部(UTJ)を通過するように構成される。幾つかの実施形態では、ボール先端部裏返し式バルーンカテーテル150は、約0.66mmの径と18mmの長さの先端部の上に約0.9mmのボール先端部を有するように構成される。幾つかの実施形態では、先端部はナイロンで形成される。幾つかの実施形態では、4Fr(外径1.3mm)のカテーテルは、先端部の中を通り、それを越えて裏返される0.64mmの径のバルーンを有する。
【0062】
図23A~
図23Bは、本開示によるバルーン先端部カテーテル又はデバイス160の側面断面図である。幾つかの実施形態では、バルーン130は、約0.8~1.0mmの外径を有し、カテーテル126又はカニューレの遠位端部から延びる約1~3cm、例えば、約1.2~1.5cmの初期裏返し長さを有する。バルーン130は、卵管の中に入り込むように完全に裏返し可能であり、例えば、約7~12cmだけ延びる。バルーン130は、参照番号117の場所に示すカテーテルシャフト又はチューブ126の遠位端部に、更に参照番号118の場所に示すプッシュワイヤ134の遠位端部に固定可能である。例えば、プッシュワイヤ134の遠位端部118は、バルーン130の端部を形成する。実施形態では、バルーン130は、プッシュワイヤ134の遠位端部118に結合される。プッシュロッド又はプッシュワイヤ134は、バルーンの内部が加圧されたときに参照番号119に示すカテーテル126とバルーン130の間でバルーン130をカテーテル126内の反転位置から裏返し位置まで作動させる。幾つかの実施形態では、裏返し位置は、チューブ126の遠位端部を越えて延びるバルーン130の少なくとも一部分を含む。幾つかの実施形態では、バルーン130は、最初に部分的に裏返されてカテーテル126に固定された状態にあり、丸い端部130aが形成される。幾つかの実施形態では、バルーン130は、約14~24atm(206~353psi、1.4~2.4Pa)の圧力まで流体で膨らまし可能である。
【0063】
幾つかの実施形態では、上述したように、デバイス160は、シース162を含む。シース162は、カテーテル126と同軸である。シース162は、裏返し位置でチューブ126の遠位端部から外向きに延びるバルーン130の少なくとも第1の長さの上において、カテーテル126に対して摺動可能に調節可能である。シース162は、バルーン130と内視鏡内の間にバルーンを保護するための物理的障壁を形成する。例えば、内視鏡を通じた挿入中にカテーテル126から初期長さ、例えば、約1.5cmのバルーン130を延ばす。バルーンを作動させると(例えば、プッシュワイヤ134及び/又はバルーン加圧を通じて)、シース162は、反転位置、部分裏返し位置、又は完全裏返し位置、又はそれらの組合せのうちの1つにおいてバルーンを保護する。
【0064】
シースは、バルーンが裏返されるときにバルーンにコラム強さを与えるように作用する。幾つかの実施形態では、参照番号162aの場所に示すシース162の一部分は、少なくとも部分的に半透明、光学的に透明、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態では、シース162の透明部分162aは、カテーテル126の透明部分167と少なくとも部分的に重なる。例えば、医療従事者が子宮鏡20を用いてシース162及び/又はカテーテル126の少なくとも一部分を介してバルーン130を視覚化する(例えば、位置決め及び/又は完全なバルーン延長を確認するために)。幾つかの実施形態では、カテーテルは、シース162をチューブ126に取付けるためにシース162の近位端部に設けられたシースノブ164を含む。
【0065】
加圧されたバルーン130は、近位開口(os)の無傷性カニューレ挿入及び卵管内の前進のための丸い端部130aと、バルーン130の長さに沿ったある程度の可撓性とを有する。バルーン130は、それを例えばプッシュワイヤ134を用いて少なくとも部分圧力下又は無圧力下で子宮卵管接合部(UTJ)の中を手動で前進させることを可能にするのに十分なコラム強さを有する。幾つかの実施形態では、バルーン130は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ナイロン、ポリマー、又は類似の材料のような薄肉ポリマー材料で構成される。バルーン130は、約0.0001インチから0.001インチまで(0.00254mmから0.0254mmまで)、幾つかの実施形態では約0.00019インチと0.00031インチの間(0.004826mmと0.007874mmの間)の肉厚を有する。幾つかの実施形態では、バルーン130は、0.005インチ(0.127mm)よりも小さい厚みを有する。バルーンの材料及び/又は厚みは、バルーンが展開されたときに細胞収集に関してどのように作用するかに影響を及ぼすバルーンの重要な特性である。例えば、過度に薄いバルーン壁は、十分なコラム強さを欠くバルーン(望ましいときに柔軟に又は弾力的に作用する)をもたらす場合があり、又は過度に厚いバルーン壁は、裏返しに抵抗する又は非一貫的に裏返すバルーンをもたらす場合がある。材料厚さは、カテーテル内にバルーンを装填するときに反転作用によって表面特徴部が提供される又は増強されるという点でバルーンの表面の輪郭形成、皺寄りに影響を及ぼす場合があり、これは、更に細胞を収集して保持する機能に影響を及ぼす場合がある。バルーン材料は、裏返し中又は収縮してカテーテルと共に引き抜かれた後、バルーンがそれ自体に接着する又は付着する傾向を有する可能性があるか否かに影響を及ぼす可能性もある。
【0066】
幾つかの実施形態では、カテーテル126の少なくとも一部分の上に第1のマーカ171を配置する。第1のマーカ171は、シースノブ164の望ましい位置を示す準備マーカである。シースノブが第1のマーカ171に位置合わせされるとき、シース162の近位端部は、準備中及び卵管の中へのバルーン130の初期カニューレ挿入中のバルーンの延長のための医療従事者に対する基準点である。幾つかの実施形態では、カテーテル126の少なくとも一部分、例えば、透明部分167に接続された近位部分は、ステンレス鋼のような金属、又は複合材又はポリマーのような他の材料、又はそれらの組合せで形成される。第1のマーカ171は、例えば、バルーンが完全に裏返される前に近位開口(os)にアクセスするのに使用される裏返し式バルーン130の約10mmから20mmの長さを覆うために、準備段階としてシース162を遠位に初期長さだけ延ばすようなシース162内のバルーン130に対する雄ルアーロック継手又はシースノブ164の適切な場所をユーザに示す。
【0067】
近位開口(os)の位置にあるとき、シースは、第1のマーカ171から元の位置に引き戻し、卵管へのアクセス及びその中への配置のために部分的に裏返されたバルーン先端部が露出される。幾つかの実施形態では、シース162は、長手軸に沿ってカテーテル126の遠位端部を越える点まで延長可能である。シース162がカテーテル126の遠位側に延ばされるとき、シース162の遠位先端部は、バルーンの前進のためのインジケータである。第1のマーカ171は、切り込み線、コーティング物質、又は選択的酸化領域を含む。幾つかの実施形態では、第1のマーカ171は、カテーテル126の少なくとも一部分(例えば、金属部分又はハイポチューブ138)に例えば接着処理、結合処理、又は溶接処理を用いて取付け可能な材料の不透明バンド(例えば、ポリマー、金属、又はそれらの組合せを含むがこれらに限定されない)である。そのような準備マーカは、初期準備段階で医療従事者がどれ程深くバルーン130を展開するかを知ることを可能であり、それによって外部測定ツールに対する必要性が排除されることでデバイスの使い勝手が改善され、更にユーザ側でのいずれの推量又は凝視も排除されることによって手順の安全性が改善される。
【0068】
幾つかの実施形態では、複数のマーカを既知の予め決められた距離で互いに区分的に離間させ、それによってこれらのマーカを視覚的計数器又は測定デバイスとして用いて、医療従事者が裏返されたバルーンの大体の長さを検証することを可能にする。本明細書に説明する任意の内側カニューレ又はカテーテルが患者の解剖学的構造をナビゲートするための補助として説明するしるしを含むことを理解すべきである。
【0069】
幾つかの実施形態では、子宮鏡20内へのデバイス取出し中にシース162が展開された裏返し部分(バルーン、縫合糸のような)を覆うことを確認するために、シースノブ164の望ましい場所を示すための第2のマーカ173をカテーテル126、例えば、金属部分138の上に配置する。例えば、第2のマーカ173は後退マーカである。これは、バルーン及び/又は延長部分の上に収集された細胞の損失を回避するために、取出し処理中にバルーン130がシース162によって完全に保護されていることをユーザが視覚化して確認することを可能にする。例えば、膨満流体中の血液又は組織によって子宮鏡視野が不明瞭なったとき、第2のマーカ173による追加のユーザ視覚化を有利である。第2のマーカ173は、第1のマーカ171を形成するのに使用されるものと同じ技術によって形成される。第2のマーカ173は、本明細書に説明する任意の内側カニューレ又はカテーテルの上に含まれてもよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、カテーテル126の一部分167及び/又はシース162の遠位部分は、その長さに沿って透明セクションを有するか又は使用条件下で半透明、光学的に透明、又はそれらの組合せのものである部分を有する。本開示の実施形態により、チューブ又はカテーテル126は、少なくとも1つの視覚マーカを含む。他の実施形態では、カテーテル126上の視覚マーカは、カテーテル126上に配置された第3のマーカ179を含む。第3のマーカ179は、バルーン130がカテーテル126に接続されたカテーテル126の遠位端部の近く又はこの端部に設置される。幾つかの実施形態では、第3のマーカ179は、放射線不透過性である。第3のマーカ179は、カテーテル126のシャフトの端部をユーザに視覚的に示し、それにより、カテーテル126の制御が改善される。カテーテル126の端部を視覚化する機能は、カニューレ挿入中にシース162を越えてバルーン130を前進させて卵管内に入れるときに望ましい。第3のマーカ179は、カニューレ挿入段階が進行するときにユーザがカテーテル126の遠位端部を視覚化することを可能にする。ユーザは、カニューレ挿入段階が完了するとき、例えば、開口(os)において第3のマーカ179がシース162の端部に位置合わせする時を確認し、それにより、使い勝手が改善される。第3のマーカ179は、第1のマーカ171及び/又は第2のマーカ173を形成するのに使用されるものと同じ技術によって形成される。第3のマーカ179には、見やすい色、例えば、黒色又は青色が与えられる。
【0071】
幾つかの実施形態では、ストリング、編組、及び/又は縫合糸121が、バルーン130がバルーン130の延長可能部分の形態で裏返すときにバルーン130の遠位側に延長可能である。幾つかの実施形態では、ストリング又は縫合糸は、プッシュロッドの遠位端部又はバルーン先端部に、例えば、参照番号118の場所に、結合又は接着によって取付けられる。バルーン130の反転位置では、ストリング、編組、及び/又は縫合糸121は、バルーン130の内部、例えば、
図23Aに示すカテーテル126のチューブ内に位置決めされる。例えば、プッシュロッドの作動によるバルーン130の裏返しのとき、ストリング、編組、及び/又は縫合糸は、バルーン130の遠位先端部から遠位側に延びるか、又はバルーン先端部からバルーンの外面に並んで近位側に延びるかのいずれかでバルーンの外部になる位置まで延びる。
【0072】
幾つかの実施形態では、例えば、
図11C~
図11Dに参照番号43に示すストリング、編組、及び/又は縫合糸121の少なくとも一部分は編まれる。編組ストリング又は編組縫合糸43、121は、1又は2以上のフィラメントを含む。ストリング又は縫合糸43、121は、バルーン32、130が裏返されるときに延長可能である。幾つかの実施形態では、ストリング又は縫合糸43、121は、複数の編組である。幾つかの実施形態では、ストリング又は縫合糸43、121は、例えば、バルーンが適正に裏返されることを医療従事者が確認するための視覚化を向上させるために、1又は2以上の色で形成される(
図11E~
図11Eを参照)。例えば、これらの色は、バルーンが裏返され、ストリング又は縫合糸43、121がバルーンと共に押し出されるときに内視鏡を通して視覚化される。バルーン32、130が裏返されるので、その中にあるストリング又は縫合糸43、121は、バルーンが裏返されるときの距離の約2倍だけ前進してバルーンから出る(例えば、バルーンが1mm裏返されるとき、ストリング又は縫合糸のうちの約2mmが内側カニューレ/チューブの遠位端部を越えて露出される)。色は、サンプル収集のための卵管内の縫合糸又はストリング43、121の位置決めを決定する。幾つかの実施形態では、ストリング又は縫合糸43、121は、その長さに沿って印刷しるし又は色変動又はそれらの組合せを含む。幾つかの実施形態では、ストリング又は縫合糸43、121は、その長さに沿って予め決められた間隔の既知の区分で医療従事者に更に別の視覚フィードバック又は触覚フィードバックを提供するための1又は2以上のノットを含む(
図34A~
図34Bを参照)。色及び/又はノットは、これらの計数値を縫合糸又はストリング43、121が裏返された距離/長さ(及びある程度までのバルーン130の長さ)の大体の量に変換するように、互いからの区分距離に配置される。
【0073】
幾つかの実施形態では、バルーン材料は、バルーン130の外面の面特性を変化させるように処理される。プラズマ処理又はコロナ処理のような処理は、対象細胞、インク、コーティング、接着剤、積層体、及び塗料、又はそれらの組合せを例示として含む様々な物質に対する面受容度を高める。面処理は、濡れ性を促進して親水性を有する面を生成するか、又は湿潤を抑制して疎水性を有する面を生成する。面処理は、バルーンの表面の接着性を改善し、未処理面と比較して細胞が接着する可能性がより高い面を生成するのに使用される。
【0074】
面処理は、面上に例えばパッド印刷物を含むしるしを印刷するためにバルーンの表面を前処理するのに使用される。パッド印刷物(タンポグラフィとも呼ぶ)は、2次元画像を3次元物体上に転写する印刷処理である。バルーンの表面上に印刷されたしるしは、ユーザに対する準備マーカとして作用する。これらの準備マーカは、ユーザがバルーン130の展開の前にバルーン130の長さを知ることを可能であり、それによって外部測定ツールに対する必要性を排除することでデバイスの使い勝手が改善され、更にユーザ側でのいずれの推量又は凝視も排除されることによって手順の安全性が改善される。
【0075】
視覚化目的でマーク付けするのに加えて、バルーン130は、ナノ繊維面又はマイクロピラー面(例えば、Corning製のULTRA-WEB(登録商標)を含むがこれに限定されない)の付加のような面積を増大させる処理を用いて処理し、それによって殆ど又は全く面処理を用いないバルーンよりも細胞収集の収量及び/又は保持を向上させる。縫合糸又はストリング121は、細胞を収集して保持を増強する手法として類似の面処理特徴部を含んでもよい。
【0076】
様々な実施形態では、バルーン130は、バルーン130が反転位置と裏返し位置の間で過度の展開圧を用いずに移動するような材料であるがバルーンが裏返し中に半径方向に過度に拡大しないような十分に剛性の材料で形成される。この材料は、製造及び/又は組立中にバルーンの表面上に皺、重ね合わせ材料、又は微小線状突起(micro ridges)、又はそれらの組合せを例えばポリマー変形によって形成することを可能にする。そのような皺、重ね合わせ材料、又は微小線状突起は、通常は平滑な(輪郭のない)バルーンの表面上に生成され、又は既に1又は2以上の表面特徴部を含むバルーンの表面材料を増強する。バルーン材料内に形成された皺、重ね合わせ材料、又は微小線状突起は、バルーンの裏返し及び/又は反転中に留まり、例えば、バルーンの表面を可塑的に変形させる。皺、重ね合わせ材料、及び/又は微小線状突起は、バルーン130の細胞収集を向上させる。例えば、バルーン130がシース162の中に後退し、カテーテル126が内視鏡と共に取出されるとき、細胞をバルーン130の皺内に保持するように、バルーンの裏返し中に細胞を卵管から取出し、及び/又はバルーン130の皺内に捕捉する。バルーンを収縮させるか又は部分的に収縮させるためにバルーン内の圧力を緩和することは、バルーンの表面上の皺を増大させるか又は再形成するように機能し、細胞収集及び/又は保持を更に向上させる。幾つかの実施形態では、面積を増大させるためにバルーン130の面を粗面化するか又は他に調節される。様々な実施形態により、バルーンは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ナイロン、フルオロポリマー、又はペルフルオロポリマー、又は他の類似の適切な材料で製造される。
【0077】
幾つかの実施形態では、バルーン130の面、例えば、身体管腔(卵管)の内面に接触するための面は、追加の表面特徴部を含む。幾つかの実施形態では、例えば、デバイスの使用中に保持される表面特徴部をバルーンの表面に追加する処理を製造又はパッケージ化中に使用することにより、材料特性に起因して比較的平滑なバルーンの表面を皺及び追加の面積を含むように修飾される。他の実施形態では、いずれの輪郭も比較的不在の状態に維持されたバルーン材料面が、上述したようにバルーンを裏返し、組織管腔とバルーンを係合させ、次いで、(任意的に収縮させて)バルーンを組織壁に沿って後退させる機構だけによって依然として細胞を収集して保持する。幾つかの実施形態では、約0.1ミクロンから500ミクロンまでの山から谷の高さを有する微小線状突起を追加するために、バルーン130の面は、板から板、ロールから板、及びロールからロールを例示として含む様々な従来技術を用いてエンボス加工する。幾つかの実施形態では、山及び谷は、追加の面積を与えるのに十分に大きいが、山と谷が互いにロックする可能性を最小にするほど十分に小さいように構成される。例えば、バルーンの表面区域内の山及び谷は、反転/裏返し中にインターロックする場合があり、それによってバルーンの移動が妨害される場合がある。従って、潜在的なインターロックを最小にするプロファイルを有するように山及び谷を構成することを有利である。
【0078】
幾つかの実施形態では、バルーン130のポリマー面は、エッチングされる。エッチングは、溶剤、化学物質、レーザ、又はプラズマへの露出を含むがこれらに限定されない様々な従来技術によって達成される。エッチングは、エンボス加工ツールの接触を受けるバルーンに対する応力印加を招くことなく面積を増大させるのに有利である。この特徴は、面積を増大させることにより、かつバルーンが取出されるときにバルーンの軸に対して直角な微小縁部を生成することによってバルーンの細胞収集を向上させる。幾つかの実施形態では、上述したように、両接触面が、バルーンが円滑に裏返すことを可能にするのに十分な滑走性を有し、同時に細胞を分離させて保持するのに十分な面積を有するので、エンボス加工時及び/又はエッチング時に任意のバルーン厚さにおいて低い面エネルギのみを有する及び/又は縮れさせる/皺を寄らせるための限られた機能のみを有するポリマーは、細胞生検にここで依然として作用可能である。エンボス加工又はエッチングされた形態にある低面エネルギポリマーは、フルオロポリマー、ペルフルオロポリマー、ポリアルキレン、ポリピロメリトイミド(Kapton H)、又はポリスチレン、又はそれらの組合せを含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、エッチング又はエンボスは、バルーンの表面上でバルーンの集中部分に例えばしるしとして形成される。例えば、バルーンマークは、医療従事者が卵管の中へのバルーンの延びを決定するための視覚表示を与える。集中エッチング及び/又は集中エンボスは、医療従事者によって可視であり、例えば、別個に接続されたマーカ又は他のしるしに対する必要性が潜在的に排除される。バルーンの一部分として形成されたマーカは、潜在的な切離しを最小にする及び/又は回避するのに有利である。
【0080】
バルーン130は、半透明、光学的に透明、又はそれらの組合せである。幾つかの実施形態では、バルーン130は、使用中の可視性を高めるために、少なくとも部分的に不透明である。幾つかの実施形態では、バルーンの色を制御し、バルーンの可視性を更に高めるために膨らまし流体の中に不透明流体を混合する。膨らまし流体に添加される不透明流体の量は、バルーンの半透明性又は不透明性のレベルを制御する。幾つかの実施形態では、流体は、流体の中に放出されるコロイド微粒子又は懸濁微粒子又は微小気泡の含有によって不透明又はその他に検出可能である。本明細書において有効なコロイド微粒子又は懸濁微粒子は、ポリメチルメタクリレート、マイカ、硫酸バリウム、スターチ、及びこれらの組合せを制限なく含む。
【0081】
子宮卵管接合部(UTJ)を通る裏返し式バルーンの長さの少なくとも一部分の継続的な前進に続いて、完全に裏返されたときにバルーン130が患者の卵管内を延びるように、完全に裏返されたバルーン130の長さは、管腔(例えば、卵管)内で約7~12cmまで延びる。バルーン130の裏返しは、例えば、カテーテル126の近位端部にある流体シールシール135を貫通するようにプッシュロッド134を前進させることによって、制御された方式を用いて実施される。上述したように、カテーテル126が、それに挿入される子宮鏡によってバルーン130の移動を観察可能であり、それによってユーザに対して挿入手順の直接観察が可能になるように、カテーテル126の少なくとも一部分167は、透明又は半透明である。カテーテル126は、ポリマー、金属コイル、又は編組による補強が施された又は施されていないナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、又はポリビニルクロリド(PVC)、又はそれらの組合せのようなポリマーで構成される。
【0082】
幾つかの実施形態では、カテーテル126の透明部分又は半透明部分167では、子宮鏡視野によるバルーン展開の視覚化のための長さは、少なくとも近似的に1cmである。十分な長さの透明部分又は半透明部分167を設けることにより、卵管カニューレ挿入のための十分なカテーテルコラム強さを与え、同時にバルーン展開の視覚化を保証する。幾つかの実施形態では、カテーテル126の透明部分167は、望ましいコラム強さと遠位端部での視覚化によるカテーテル126への補助との均衡を調整するような不透明部分、例えば、金属ハイポチューブ部分138に対する長さを有する。幾つかの実施形態では、透明部分167は、金属部分138内でデバイスの近位端部まで延びる。カテーテル126の透明部分167を形成するのに使用される材料は、金属ハイポチューブ部分138よりも低いコラム強さを有することを理解すべきである。この均衡は、使い勝手を改善し(例えば、遠位端部の視覚化により)、更にデバイスの制御を向上させる(例えば、卵管口へのデバイスの配置を可能にし、手順の間ずっと位置を維持するのに十分な剛性を有することにより)。
【0083】
幾つかの実施形態では、バルーン130は、それを裏返してカテーテル126又はカニューレから少なくとも部分的に出るときに直線に留まらない場合がある。代わりに、バルーン130は、卵管の近位開口(os)にカニューレを挿入し、子宮卵管接合部(UTJ)からバルーンを前進させるのに使用するのが困難な可能性がある単一「C字」曲線又は「S字」曲線のいずれかである望ましくない湾曲構成を取る場合がある。裏返し式バルーン130の延長した長さは、カテーテル126又はカニューレの外面の周りに同軸状に延び、かつコラム強さと部分的に裏返されたバルーン先端部のカバーとを与えることを支援する外側シース162の使用によって真直ぐにされるか又は直線に維持される。カテーテルが、それに挿入される子宮鏡によってバルーン130の移動を観察可能であり、それによってユーザに対して挿入処理の直接観察が可能になるように、シース162及び/又はカテーテル126の少なくとも一部分は、透明であり、例えば、
図23Aの167である。カテーテル126と同様に、シース162も、ポリマー、金属コイル、又は編組による補強が施された又は施されていないナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、又はポリビニルクロリド(PVC)、又はそれらの組合せのようなポリマーで構成される。シースは、カテーテル及び/又はバルーンに対して位置合わせ可能であり、それによってバルーンにコラム強さが与えられる。子宮卵管接合部(UTJ)から卵管の中へのバルーンのカニューレ挿入に応答して、シースは、子宮卵管接合部(UTJ)をナビゲートした後にバルーンが更に裏返されるときの収縮を最小にする及び/又は防止するために、バルーンを近位側の外部から支持する。シース162は、バルーン及び/又は延長部分の上に収集されたサンプル(例えば、細胞)を保護する。例えば、シース162は、卵管の内面に接触した後に裏返し位置にあるバルーンを保護する。幾つかの実施形態では、細胞収集に続いて、裏返し式バルーンの上に、更に含まれる場合は延長部分の上にシースを延ばすために、シース162と延長部分を有するか又は持たないバルーンとをシースの内腔と同軸に後退させる。幾つかの実施形態では、細胞収集に続いてバルーン130がシース162内に受入れられるように、シース162は、バルーン130及び/又はカテーテル126に対して静止した状態に留まる。バルーン130がシース内に引かれて患者から取出されるとき、シースは、子宮内の拡張流体又は卵管又は子宮内の潅注流体からの障壁を設けることによって、サンプル集合の損失を最小にする及び/又は防止するように細胞を保護する。この保護がなければ、例えば、バルーンは、細胞収集に続いてサンプル集合を使用不能にし、及び/又はバルーン及び延長部分から細胞を洗い落とす可能性がある環境条件に露出される場合がある。
【0084】
図35は、本開示によるバルーン130の直線的裏返しの例示の実施形態を示している。実施形態では、バルーンの一端を点X(例えば、
図23Aに示す参照番号117)で固定し、バルーンの他端を点Y(例えば、
図23Aに示す参照番号118)で移動可能である。バルーン130を、段階1に示す位置から段階2に示す位置へ、更に段階3に示す位置に裏返す。この裏返し処理において、点A、B、及びCが図の左側に向けて移動し、デバイス160の遠位端部の遠位側に延びる。バルーン130を図の左側で/それに向けて展開する/裏返すとき、点Aは、バルーンの内面から外面に移動する。実際に、準備段階中に部分的に又は初期状態で裏返されたバルーン130を、更に前進させて卵管の近位端部の中に入れる。バルーンの更なる裏返し(延長)(全体で卵管の全長、約7~12cmまでの)を、駆動ホイール(
図25を参照)の更なる回転によって達成する。次いで、膨らましデバイス内の圧力を緩和することによってバルーン130を収縮させる。次いで、バルーン130を卵管から後退させる。卵管は潜在空隙であるので、卵管組織は、バルーンの周りで圧壊する傾向を有する場合がある。バルーンは卵管を占有するので、バルーンの表面積は、卵管の内面積に実質的に等しい。この面積は、卵管の内側からの組織収集を最適化する。バルーンの収縮は、後退の前が望ましいが、幾つかの実施形態では最初にバルーンを収縮させることなしに、収集された細胞をその上に依然として保持したまま卵管からバルーン/延長部分を後退させることが可能である。例えば、検査のための十分な量の細胞をバルーン130の面上に保持しながら、膨らまし状態及び/又はすぼませ状態にあるバルーン130をシース162内に後退させる。これに代えて、より多くの細胞をバルーンによって収集及び/又は保持するように、バルーンが卵管壁に接触する度に卵管内で延長状態にある間にバルーンを繰り返し膨らまし及び収縮させてもよい。
【0085】
上述したように、組織収集を更に支援するために、バルーンの表面に皺又は他の表面特徴部を追加してもよい。皺は、バルーンが収縮して複数の縁部及び/又は重ね合わせ材料を生成するときにもたらされて細胞収集を支援する。縁部は、キュレットの刃先又は生検鉗子のジョーの刃先と類似の方式で作用する。他の収集デバイス上のこれらの特徴部と同様に、皺が寄ったバルーンによって形成された縁部は、細胞を収集するために解剖学的な壁の上に接触力を集中させる。
【0086】
次いで、本開示によるバルーン展開デバイスを、子宮鏡の作業チャネルから、更に患者から取出す。デバイスを患者から取出した状態で、バルーン及び/又は延長部分(使用される場合)を細胞保存液中に浸漬し、細胞を撹拌するために掻き混ぜることによって、細胞をバルーンから取出す。これに代えて、バルーン、延長部分、及び/又はシースを切り、距離を置いて細胞保存液の中に入れてもよい。幾つかの実施形態では、シースは、バルーンをが収縮させて取出すときにバルーンの表面上に収集された組織サンプルを保護するために、バルーンの上に延長可能及び展開可能である。
【0087】
図24は、バルーン先端部カテーテル160’の側面断面図であり、バルーン先端部カテーテル160’は、超弾性プッシュロッド175と、螺旋キャリア176を含む。螺旋キャリア176は、本開示の実施形態によるプッシュロッドの全長にわたって、プッシュロッドを後方に延びる、例えばハンドルの外側に延びる必要を最小にし、及び/又は、なくす。プッシュロッド175は、ニチノール(ニッケル-チタン化合物)ワイヤ等の超弾性材料で構成されるのがよい。プッシュロッド175の長さの少なくとも一部分は、螺旋管状キャリア176内にコイル巻きされ、螺旋管状キャリア176は、ポリエチレン又はポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))で製造されるのがよい。螺旋キャリアの螺旋外径は、約8cmであり、カテーテルハンドルの近位側の作動長さをいっそうコンパクトにする。螺旋キャリア176は、カテーテルの近位シール135に可撓性ストラップ177によって取付けられるのがよい。幾つかの実施形態では、可撓性ストラップ177は、ポリマー又はシリコーンゴム材料で構成される。幾つかの実施形態では、プッシュロッド175は、約0.025’’(0.635mm)、又は、幾つかのその他の小さい直径を有し、このことは、ワイヤを把持し且つそれを前方に押してシール135を貫通させる目的には不利であるかもしれない。可撓性グリップ178は、プッシュロッド175上を自由に摺動するが、親指と人差し指の間で圧縮されると、プッシュロッド175の前進のためのグリップ部を構成する。可撓性グリップ178は、楕円形断面フレームを有し、このフレームは、ポリビニルクロリド、シリコーンゴム、それらの組合せ、又はそれと類似する可撓性化合物で製造される。幾つかの実施形態では、可撓性グリップは、長さ約2cm、幅約1cm、高さ約3mmの内側寸法を有し、約2mmの肉厚を有する。グリップの近位面及び遠位面の孔は、プッシュロッド175と滑り嵌めにされる。
【0088】
図25は、バルーン先端部カテーテル200の例示の実施形態を示し、バルーン先端部カテーテル200は、ハンドル202を有するように構成される。幾つかの実施形態では、ハンドル202は、
図23Aに示すデバイス160内に含まれる。ハンドル202は、本明細書ではアクチュエータとも呼ばれるギヤ機構220(
図26A~
図26Bを参照)を含む。ハンドル202は、プッシュワイヤ134、206と機械的に結合され、プッシュワイヤ134、206の作動を制御し、それにより、プッシュワイヤ134、206は、反転位置と裏返し位置との間のバルーン130の作動を制御する。ハンドル202は、プッシュワイヤ134、206の前進及び後退のための駆動ホイール204を含み、バルーン130は、直線的に裏返しになる(例えば、内側を外側にすることにより徐々に展開され又は巻きほどける)。駆動ホイール204は、ポリマー材料で形成され、ポリマー材料は、ABSを含むが、これに限定されない。駆動ホイール204の外縁部は、カテーテル200の操作中の駆動ホイールの把持を容易にするノッチ又はギザギザパターンを含む。駆動ホイール204の外縁部は、矢尻状に成形された多数の特徴部を含み、かかる特徴部は、把持を容易にし、及び/又は、駆動ホイールの正しい移動方向を示す。駆動ホイール204の上面は、それに成形された矢印を有し、バルーンを裏返すために回転させるべき正しい方向を指示する。駆動ホイール204の反対の面は、駆動ギヤ224の中に挿入可能な正方形のボス222を含む。幾つかの実施形態では、ギヤ機構220は、駆動ホイール204によって移動した所定の回転距離に対して短いプッシュワイヤ134、206の延長量を与えるステップダウンギヤ装置を含む(すなわち、裏返されるバルーンの同じ延長長さを達成するために、駆動ホイール204を、ステップダウンギヤ装置が含まれない又は異なるステップダウン比が含まれる場合よりも長い距離だけ回転させなければならない)。得られる効果は、駆動ホイール204を回転させたとき、バルーン130の裏返しの間の制御を細かくすることである。
【0089】
カテーテル200は、バルーン130をシャフト210(少なくとも部分的にステンレス鋼チューブ及び/又はナイロンチューブで形成される)、シース212、及び/又はシースノブ214内に保持する。バルーンの前進のために、バルーン130及びシャフト210を、膨らましデバイス(例えば、
図23Cの膨らましデバイス172)で加圧し、膨らましデバイスは、ハンドル202の延長チューブ168、216又はルアー218に取付け可能である(
図26A~
図26B参照)。カテーテルデバイス200を加圧したら、ユーザは、駆動ホイール204を回転させて、プッシュワイヤ134、206を前進させる。幾つかの実施形態では、バルーン130は、プッシュワイヤ134、206の駆動ホイールによる前進なしに、加圧下で裏返されるけれども、駆動ホイールにより、バルーンの滑らか且つ低速の制御された前進を可能にし、それにより、卵管の潜在的な穿孔を最小にし又は回避することを理解すべきである。シース162、212がカテーテル126、210の本体上でロックされるとき、シースノブ214は、シース162、212が導入器として使用されることを可能にする。シースノブ214は、ユーザがシース162、212を例えばバルーンの事前延長部分まで必要に応じて移動させること、及びバルーンの事前延長部分を卵管の中に移動させることを可能にするのに十分に柔軟である。幾つかの実施形態では、シースノブ214は、バルーン又はカテーテルの意図しない移動を最小にし及び/又は防止するのに十分に緊密である。
【0090】
図26Aは、
図25のハンドル部分の断面図であり、
図26Bは、本開示による内部ハンドルギヤ機構220の例示の実施形態の詳細図である。ハンドル202はまた、延長チューブ168、216を有し、延長チューブ168、216は、例えば、膨らましデバイス172(
図23Cも参照)等の1又は2以上の追加のツール又はデバイスを取付けるために、ハンドル本体のルアー218に取付けられる。ギヤ機構又はアクチュエータ220は、プッシュワイヤ134、206と機械的に結合され、プッシュワイヤ134、206の作動を制御し、プッシュワイヤ134、206は、反転位置と裏返し位置の間のバルーン130の作動を制御する。幾つかの実施形態では、ギヤ機構又はアクチュエータ220は、あるステップダウン比を有するように噛合い作動する複数のギヤを含む。様々な実施形態によれば、ハンドルギヤ機構220は、駆動ホイール204を含み、駆動ホイール204は、ハンドルギヤ機構220の制御された作動と、単一ユーザによる操作を可能にする。
図26Aに示すループ「A」は、ハンドル202に含まれ、指を位置決めする特徴部Bにより、ユーザがハンドル202を1よりも多い位置で保持することを可能にし、ユーザの手のサイズに関わらず、デバイスの快適な使用を可能にする。例えば、ユーザの手のひらがハンドルの頂部「C」にあるとき、手の指は、小さい手であればループ「D」の内側に巻付き、大きい手であればループ「E」の外側に巻付く。
【0091】
幾つかの実施形態では、駆動ホイール204は、駆動ギヤ224内の正方形の孔の中に挿入可能な正方形のボス222を有する。医療従事者によって作動可能な駆動ホイール204は、正方形ボスが駆動ギヤ224を回転させるように回転可能である。幾つかの実施形態では、駆動ギヤ224は、駆動ホイール204によって矢印224Aに示す方向に回転可能である(
図26Bを参照)。駆動ギヤ224は、遊びギヤ226と第1のギヤ228に係合して、これらのギヤを回転させる。例えば、第1のギヤ228は、矢印224Aと反対の方向である矢印228Aに示す方向に回転する。同様に、遊びギヤ226は、第2のギヤ230を矢印230Aに示す方向に回転し、第2のギヤ230の回転に応答して第3のギヤ232を矢印232Aに示す方向に回転させる。プッシュワイヤ206は、4つのギヤ(224、228、230、232)上の面の間及びこれらのギヤの各々の間を延び、これらのギヤの各々は、プッシュワイヤ206によるバルーン130の前進(例えば、遠位方向)中に
図26Bに矢印224A、228A、230A、232Aに示すように回転する。幾つかの実施形態では、ギヤ面は、天然又はシリコーンゴム、又はポリウレタンのような高い摩擦係数を有する材料で形成する。
【0092】
バルーン130は、プッシュワイヤ134、206の近位端部が駆動ギヤ224と第1のギヤ228との間を通り、第1のギヤ228との機械連通状態に入るまで前進可能である。プッシュワイヤ134、206がギヤ機構220を通り過ぎた状態で、駆動ホイール204の更なる回転は、バルーン130を更に前進させない。ギヤ224、228、230、232内のプッシュワイヤ134、206の不在は、バルーン130が完全に裏返されたという触覚インジケータとしてユーザが感じる。ギヤ機構220は、プッシュワイヤ206と機械結合していることにより、裏返し及び反転それぞれによるバルーン130の展開及び/又は後退のための緻密で正確な制御可能な移動を可能にする。上述したように、駆動ホイールは、卵管を穿孔する可能性又は卵管をナビゲートする機能の欠如を最小にするための低速で均一な移動を可能にする。ギヤ機構220は、4対1のギヤ比又は2対1のギヤ比であり、バルーンの前進制御を提供するのに任意その他のギヤ比を使用してもよいことを理解すべきである。ギヤ比は、低速ギヤ回転を与えるように構成される。これは、複数のユーザの間でバルーンの展開速度が制御される(例えば、低速で均一に)ことを保証し、従って、穿孔のような有害事象のリスクを低減することで安全性を高める。
【0093】
幾つかの実施形態では、医師にバルーン展開の終了に関するフィードバックを提供するために、内部ハンドルギヤ機構220又はアクチュエータは、プッシュワイヤの前進及び/又は一方向バルーン移動を制限するためのギヤに対する制限機構を含む。幾つかの実施形態では、制限機構は、ハードストップ機構、ギヤジャム機構、ラック及びラチェットギヤ機構、直線ギヤ機構、又はドロップキークリックイン機構のうちの少なくとも1つを含む。定められた最大延長のとき、ラチェット242は、
図26Eに示すように1又は2以上のギヤ(例えば、ギヤ224、228、230、232)に係合して、ギヤジャム(ギヤロック)を形成する。ラチェット242は、バルーン130の更なる前進を停止するように起動される。実施形態では、ラチェット242は、1又は2以上のギヤに係合するように構成された任意の機構である。例えば、定められたプッシュワイヤの延長時、ラチェット242は、ピボット点の周りに回転して1又は2以上のギヤに係合し、ジャムを引き起こして更なる回転を防止する。これに代えて、バルーンの前進を停止するためにラック及びラチェットギヤ機構、直線ギヤ機構、又はドロップキークリックイン機構(
図26D)が使用されてもよく、幾つかの実施形態ではハンドルに配置される(
図26Aの詳細図「F」を参照)。
図26Cを参照すると、直線運動のための例示のラチェット機構が示されている。ラチェットは、運動を1つの方向だけに制限するように作用する機構である。ラチェットは、直線ギヤラック233、ラチェット235(例えば、「爪」)、及び台座又はマウント237という3つの主要部分を有する。線形ラック上の歯239、239’の一方の側の縁部は急勾配の斜面を有し、それに対してラックの歯の他方の縁部は穏やかな又は緩やかな斜面を有する。例えば、歯239、239’の一方の側の縁部は、歯239、239’の他方の側の縁部よりも急な勾配を有する。幾つかの実施形態では、急勾配の斜面は、例えば、239a、239a’の場所に示すように約60°~90°の角度を有し、それよりも穏やかな斜面は、例えば、239b、239b’の場所に示すように約10°~50°の角度を有する。ラチェット235は、直線ギヤラック233に接触する。直線ラックが第1の方向に直線的に移動されるとき、ラチェット235は、デバイスの自然な運動を制限することなしに、歯239を超えて摺動する。運動方向が第2の方向に逆転されると、ラチェット235は、ギヤ歯239上の急勾配の斜面に接触して運動を阻止する。ラチェット235は、バネによって直線ギヤラック233内に下方に付勢される。幾つかの実施形態では、ラチェット235の第2の端部のピボット可能回転のためのピボット点236、例えば、ラチェット235の第1の端部にバネ、例えばねじりバネが配置される。幾つかの実施形態では、ラチェット235をギヤ歯239に向けて付勢するために参照番号223に示すラチェット235の第2の端部にバネ、例えば、直線バネが配置される。直線ギヤラック233及びラチェット235は、一般的に、互いに対して固定された関係でマウント237上に装着され、ラックは、マウントに対して、更にマウントへのピボット接続を有するラチェット235に対して摺動する。幾つかの実施形態では、デバイスは、直線ギヤ上の歯のセットからのラチェット235の持上げを可能にするためにラチェット235に対するバネ付勢に打ち勝つための手動ノブ又はプッシュボタンを含む。
【0094】
例えば、「F」の場所に示すように、プッシュワイヤ206の前進に対する制限を設定するために、
図26A~
図26Bのギヤ機構220内の直線ギヤラック233のラチェットアクションに対して制限を設定する。プッシュワイヤ206の前進中、
図26Aの詳細図「F」に示すように、ラチェット238は、直線ギヤラック233に向けて付勢される。幾つかの実施形態では、ラチェット238は、参照番号221に示す点の周りにピボット可能である。直線ギヤラック233は、ハンドル202内でバルーン130から遠いプッシュワイヤ206の端部に直接に取付けられる。プッシュワイヤ206の前進は、ラチェット238を、それが歯239’よりも高さが高い止め具243に遭遇したときに自動的に停止させる。ラチェット238に対するバネ付勢に打ち勝って直線ギヤラック233からのラチェット238の持上げを可能にし、更にプッシュワイヤ206及びそれに接続されたバルーン130の後退を可能にするために、
図25に示す手動ノブ又はプッシュボタンスイッチ205は、ユーザによって作動可能である。
図26Dでは、直線ギヤラック233のラチェットアクションとは異なる別の実施形態において、ラチェット235が戻り止め247に到達してそれに係合し、バルーン130の更なる前進を停止させるまで、プッシュワイヤ206を連続的かつ円滑に前進させて展開輪245の周りに巻き付ける。
図26Eでは、ラチェット235は、バルーン130の延長制限に達したときにギヤジャムとして作用する。
【0095】
卵管に入り、そこを辿るのに使用される段階の順序を、
図23Aの実施形態を用いて説明する。ある長さ(例えば、約15mm)の裏返し式バルーン130を用いて子宮卵管接合部(UTJ)を通過することが望ましいとき、外側シース162を近位開口(os)に進入しないように卵管の近位開口(os)と並置する。外側シース162は、裏返し式バルーン130が近位開口(os)に進入するまでバルーン130の初期長さを支持する。支持的外側シース162を抜け出たバルーンの部分、例えば、加圧された裏返し式バルーン130の短い長さは、子宮卵管接合部(UTJ)の中を手動で前進可能であるほど十分なコラム強さを有し、それに対して裏返し式バルーン130の支持を受けない長さ(例えば、シースのない)は、それ自体では十分な剛性を有しない。従って、裏返された/裏返されているバルーン130は、近位開口(os)及び子宮卵管接合部(UTJ)の中の前進を試みるとき、シースなしでは座屈する場合がある。幾つかの実施形態では、裏返し式バルーンのある長さ(例えば、15mm)の子宮卵管接合部(UTJ)通過が発生する場合がある。この初期カニューレ挿入長さは、卵管のこの部位で発生する可能性がある痙攣が発生した場合であっても卵管を開いた状態に保つのに役立つ。同様に、開いた卵管を維持するのに他のカニューレ挿入長さを利用してもよいことを理解すべきである。
【0096】
幾つかの実施形態では、シース162は、作業チャネル、例えば、5Fを有する標準の子宮鏡と同等である。シース162は、それ自体に十分なコラム強さを付与するほど十分に厚く、かつバルーン130を含むほど十分に大きいシース内径を維持するほど十分に薄い肉厚を与える均衡として例示のシステムに対して使用される。この均衡は、例えば、バルーンの表面から細胞を不用意に除去する(擦り落とす)ことなしにバルーン130を保持するのに十分な内径を有することによって細胞収集効率を向上させる。バルーン130は、シース162内に膨らまし状態及び/又はすぼませ状態で保持されることを理解すべきである。
【0097】
上述したように、シース162の近位端部には、Tuohy-Borstシール136のコネクタを有する雄ルアーロック継手又はシースノブ164が含まれる。シール136を含むTuohy-Borstアダプタは、デバイスと他のデバイスへの接続カテーテルとの間にシールを生成するのに使用される医療デバイスである。Tuohy-Borstシール136は、シース162を予め決められた位置に保持するカテーテル又はカニューレとの滑り装着を有するように締め付けられる。シースノブ164は、子宮鏡20の作業チャネル上の器具接続ポートにおいて雌ルアーロック継手(存在する場合)に係合する。再び
図3を参照すると、雄ルアーロック又はシースノブ164は、カテーテル126及び/又はシース162が子宮鏡20と共に移動するように器具接続ポート23に取付け可能である。幾つかの実施形態では、器具接続ポート23は、カテーテル126が貫通して延びるためのシールを更に含む。これらのそれぞれのルアー継手が接続されると、シース162の先端部は、子宮鏡の遠位端部から約2~3cm突出する。シース162は、カテーテル126を子宮鏡の作業チャネルの中を前進させるとき、デバイス準備中に裏返されたバルーン130の部分(例えば、約1.5cmの長さ)を損傷から保護する。子宮鏡作業チャネルの近位端部から突出する部分の捩れを最小にする又は防止するのに十分な剛性及び/又はコラム強さを与えるために、ステンレス鋼チューブ、例えば、ハイポチューブ138は、内側カニューレ126の少なくとも一部分である。幾つかの実施形態では、ハイポチューブ138は、十分な剛性のための約0.050’’(1.27mm)の外径と、0.004’’(0.1016mm)の肉厚を有するようにサイズ決定される。
【0098】
幾つかの実施形態では、ハイポチューブ138は、ハンドル202が妨害を受けないこと又は医療従事者が手順中にデバイスを放したときに子宮鏡20の作業チャネルから落下しないことを保証する。シース162は、チューブ又はカテーテル126と同軸であり、裏返し位置で遠位端部から外向きに延びるバルーンの少なくとも第1の長さの上に摺動可能に調節可能である。シース162は、物理的障壁を形成し、反転位置、部分裏返し位置、及び/又は完全裏返し位置のうちの少なくとも1つにおいてバルーンを保護し、患者の身体からの抜き出し中に収集された細胞の分離を防止するように作用する。
【0099】
上述したように、シース162、チューブ又はカテーテル126の一部分、及び/又はバルーン130の各々の少なくとも一部分は、展開中及び後退中の上述のデバイス構成要素の相対位置の視覚フィードバックを容易にするために半透明、光学的に透明、又はそれらの組合せである。子宮鏡20は、このデバイスを用いた細胞収集の視覚観察に非常に適する場合があることを理解すべきである。デバイス構成要素の半透明性及び/又は透明性は、観察波長に基づく場合がある。一例として、熱可塑性材料は可視光の下で透けて見えるが、電磁スペクトルの他の部分に対しては不透明である。
【0100】
図23Cは、
図23Aのバルーン先端部カテーテル160を本開示の例示の実施形態によるチューブリザーバ又は延長チューブ168及び膨らましデバイス172と共に例示している。幾つかの実施形態では、延長チューブ168は、
図26Aに示す延長チューブ216と類似することを理解すべきである。延長チューブ168、216は、加圧に耐えるように構成される。流体注入によるバルーン130の加圧は、例示の膨らましデバイス172のようなシリンジデバイスを用いて実施される。解除可能ロックによるネジ付きプランジャシャフトの回転により、膨らましデバイス172内の圧力を増大させて維持し、一方、膨らましデバイス172が設けられた圧力ゲージ174は、入力圧力の制御を可能である。幾つかの実施形態では、バルーン先端部カテーテル160は、デバイスの一人操作が可能である。ある長さの圧力チューブ又は延長チューブ168、216が、膨らましデバイス172とデバイス上の膨らましポート166の間に追加される。延長チューブ168、216は、ポリマー、金属コイル、又は編組による補強が施された又は施されていないポリウレタン又はポリビニルクロリド(PVC)のようなポリマーで構成される。延長チューブ168、216は、ある程度の内因性の弾性を含み、それに対して裏返し式バルーンはほぼ非弾性である。バルーン130の最大加圧のとき、延長チューブ168、216は、システムに流体キャパシタンスを付与する。裏返し式バルーン内には小さい体積の流体を収容可能であり、この体積は、プッシュロッド134(バルーン130が裏返されるときにバルーン130の中に移動する)によって占有される体積を更に低減させる。得られる裏返し式バルーンの体積は、圧力チューブ168内の大きい体積と比較して小さく、これは、バルーン先端部カテーテル160が加圧された状態で、有意な圧力低下を有することなくバルーン130が最大長さまで裏返すことを可能にする。
【0101】
ストップコック弁170をデバイス及び子宮鏡20の近く又はこれらから離れた場所に位置決めするのに適応した長さの延長チューブ168、216が、膨らましデバイス172とデバイス上の膨らましポート166の間に追加される。例えば、
図25に示すように、ルアー218は、ストップコック弁170との接続のための圧力チューブ168、216に接続される。幾つかの実施形態では、ストップコック弁170は、ルアー219と膨らましデバイス172との接続のための延長チューブ168、216の端部に配置される。幾つかの実施形態では、ストップコック弁170は、ルアー218に接続される。ストップコック弁170は、加圧に続いて閉鎖され、バルーン130の挿入及び裏返しの前に膨らましデバイス172を検査サイトから撤去する。この一人オペレータ手順は、医療手順中にそれ程取り扱いが困難ではなく、より効率的なものである。同様に、幾つかの実施形態では、ストップコック弁170を用いずにルアー219を膨らましデバイス172に取付け可能である。
【0102】
図23A~
図23Cに関して上述したように、裏返し式バルーン130は、卵管の全長を通過するためにカテーテルの先端部よりも遠位側に約7cmの全距離だけ延長可能である。裏返し式バルーン130は、カテーテル先端部を出るときに端部130aにおいてトロイド形状を形成し、裏返し部分は、二重壁構成を含む。トロイド形状は、卵管の中への延長中に損傷を最小にする又は回避するための無傷性形状である。従って、例えば、プッシュロッド134は、7cmの裏返し式バルーンの長さをもたらすために、約14cmの距離だけ前進する。この長さのプッシュロッドは、最初にカテーテル126の近位端部から後方にオペレータの顔の真正面に延び、プッシュロッドの使用を困難にする場合がある。無菌デバイスのプッシュロッドは、その長さに起因して手順中に医師の作業空間内に延びる可能性があるので、汚染を受けやすい可能性もある。例えば、長いプッシュロッド134の近位端部は、使用中に医師の顔又は手術マスクに接触する場合がある。従って、プッシュロッド134の全長にわたって後方に延びる必要はないプッシュロッドシステムを設けることが望ましい。超弾性プッシュロッド175、
図24のキャリア設計、及び
図25のハンドル202を有するように構成されたバルーン先端部カテーテル200は、プッシュロッドを閉じ込めてそれをユーザに向けて延ばして戻す必要性を最小にする及び/又は回避する。
【0103】
図27は、チューブ182を含む例示の裏返し式バルーン先端部カテーテル180の側面断面図であり、チューブ182の直径は、本開示による患者の子宮卵管接合部(UTJ)への挿入のための裏返し式バルーン130の膨らまし直径よりも小さい。チューブ182は、バルーン先端部163の一部分を真直ぐにするのがよい。幾つかの実施形態では、チューブ182は、カニューレの先端部よりも遠位側に延びる。幾つかの実施形態では、チューブ182は、約0.0005’’~0.001’’(0.0127~0.0254mm)の肉厚を有し(例えば、「薄肉」チューブであり)、カニューレの先端部から約1.5cm遠位側に延びる。チューブ182は、バルーン先端部163の位置を維持する(例えば、真直ぐな位置を維持する)ために、バルーン130を支持するのに十分な厚さ及び弾性を有する。幾つかの実施形態では、チューブ182の直径は、バルーン130が可撓性及び圧縮性を保持するように、バルーン130の直径よりも小さい。この可撓性は、バルーン130を子宮卵管接合部(UTJ)の中で前進させるのに有利である。幾つかの実施形態では、バルーン130は、バルーン130を支持し及び/又は真直ぐにするチューブ182を含む。幾つかの実施形態では、チューブ182は、0.033’’(0.838mm)の外径と、0.001’’(0.0254mm)の肉厚と、1.5cmの長さを有する。
【0104】
図28は、裏返し式バルーン先端部カテーテル190の側面断面図であり、裏返し式バルーン先端部カテーテル190は、1又は2以上の可撓性ポリマーモノフィラメントのストリング及び/又は縫合糸192を、カニューレ又はカテーテル126の遠位端部に取付けられた延長部分として含む。撚り糸192は、裏返し式バルーン先端部163の中に延び、それにより、本開示の実施形態による患者の子宮卵管接合部(UTJ)への挿入のために、先端部を支持して真直ぐに保つ。幾つかの実施形態では、1又は2以上の可撓性ポリマーモノフィラメントのストリング及び/又は縫合糸192は、バルーン先端部163の中に延びる(例えば、約1.5cm)。モノフィラメント192は、ナイロン、ポリプロピレン、その他の可撓性ポリマー材料、又は、これらの組合せで形成されるのがよい。モノフィラメント撚り糸は、約0.006’’~0.012’’(0.1524~0.3048mm)の直径を有するのがよい。幾つかの実施形態では、バルーン130は、約0.033’’(0.838mm)の外径を有し、モノフィラメント192は、約1.5cmの長さの裏返し式バルーン先端部の内側で、0.008’’(0.2032mm)の直径を有する。
【0105】
図29A~
図29Cは、裏返し式バルーンカテーテル250のための操縦可能なバルーン先端部252を示し、本開示の例示の実施形態によれば、ガイドワイヤを使用する。
図29Aに示すように、操縦可能なバルーン先端部252は、右方向ガイドワイヤ254と左方向ガイドワイヤ256とによって制御可能である。
図29Bでは、右方向ガイドワイヤ254を操作して(例えば、矢印255に示すように引いて)バルーン先端部252を右方向に操縦する。それとは逆に、
図29Cでは、左方向ガイドワイヤ256を操作して(例えば、矢印257に示すように引いて)、バルーン先端部252を左方向に操縦する。図示のガイドワイヤ対を用いて達成されるX-Y平面内の移動に加えて、Z平面内の移動を提供する追加のガイドワイヤが含まれてもよいことに注意すべきである。
【0106】
図30は、バルーンカテーテル260の側面斜視図であり、バルーンカテーテル260は、本開示の例示の実施形態による裏返し式バルーン130の遠位端部のところに、小径リードバルーン先端部262を有する。小径リードバルーン先端部262は、子宮卵管接合部(UTJ)の狭窄部の開口部を徐々に拡大するように寸法決めされると共に、可撓性であり、子宮卵管接合部(UTJ)の壁を穿孔しないように鈍角の縁部を有する。
【0107】
図31は、バルーンカテーテル270の側面斜視図であり、バルーンカテーテル270は、可撓性ガイドワイヤ272を本開示の例示の実施形態によるバルーン30の先端部に有する。可撓性ガイドワイヤは、バルーンカテーテル220を子宮卵管接合部(UTJ)から卵管内に案内する。
【0108】
幾つかの実施形態では、裏返し式バルーンの一部分は、バルーンカテーテルのリード部分のところの表面を潤滑させるフルオロポリマー、シリコーン、及びそれらと類似する材料のコーティング、又はそれらの組合せを用いて処理され、卵管の狭窄部分(例えば、子宮卵管接合部(UTJ))に進入するのがよい。
【0109】
図32は、ストリップ付きバルーン130Sの部分側面斜視図であり、ストリップ付きバルーン130Sは、本開示の実施形態による
図32のカテーテル又はカニューレ内へ反転させる前の状態である。バルーン上のしるし131は、バルーンの裏返しの進行の視覚フィードバックインジケータを構成する。特定の実施形態では、しるし131は、約1mmの幅を有し、バルーン130Sの全長に沿って約1cmの間隔をあける。バルーン上のストリップ又はその他の視覚マーカの変形例の間隔は、より細かい位置フィードバックのためにより小さい間隔であってもよいし、粗いフィードバックのためにより大きい間隔であってもよい。裏返し長さの他の視覚マーカは、既知の周期長さを有する正弦波形のしるしを含む。長さのしるしが、既知の長さの異なる色のセグメントを含んでいてもよいことを認識すべきである。
【0110】
図33は、バルーン先端部カテーテル280の側面断面図であり、バルーン先端部カテーテル280は、本開示の例示の実施形態によるストリップ付きバルーン130Sを有するように構成される。
図33に示すように、ストリップ付き裏返し式バルーン130Sのしるし131は、バルーンの裏返しの視覚フィードバックを提供するために、カニューレ又はカテーテル126の透明な遠位部分167と結合される。幾つかの実施形態では、しるしは、非常に見やすい色の消えないマーカをパッド印刷するか又は罫書きされる。幾つかの実施形態では、しるし131は、バルーンの全長に沿って約0.5cmの区分で離間され、約1mmの幅を有する。パッド印刷(タンポグラフィとも呼ぶ)は、2次元画像を3次元物体上に転写する印刷処理である。他のパターンを、しるし131の代わりに又はそれに加えて、バルーン130Sの表面上に使用してもよい。例えば、バルーン130S上のしるし131の間隔をあけてもよいし(例えば、約0.5cm)、ドットをしるし131の間の残りの間部分に追加してもよい。透明な遠位部分167内に見えるようにする各しるし131は、バルーン130Sの長さ(例えば、0.25cmであり、プッシュロッドを、バルーンの裏返しに相当する大体の長さに対して約2倍の長さ(例えば、0.5cm)前進する)の継続的な裏返しを示してもよい。様々な太さのしるし131、様々な色のしるし、異なる個数のしるし、又はそれらの組合せを、ストリップとドットの組合せに関して説明した仕方と同じ仕方で使用してもよい。幾つかの実施形態では、バルーンの裏返しの程度を示すカラーコード部分をバルーン130Sに追加してもよい。
【0111】
患者の身体の外側にいる医師が外部から見ることができるフィードバックマーカの追加の実施形態は、積極的なバルーンの裏返しの程度のためのものである。幾つかの実施形態では、バルーンの裏返しの進行に関する触覚フィードバックを提供する延長部分としてのノット付きストリング又は編組縫合糸が、プッシュロッドの遠位端部又はバルーンの先端部に接着されてもよいし、既知の増分で間隔をあけてもよい。ノット付きストリング又は編組縫合糸は、バルーンが裏返されたとき、バルーンの前方移動の視覚化を提供する。ノット付きストリング又は縫合糸は、放射線不透性を有する。ストリングは、オペレータに視覚フィードバックを提供するために色分けゾーンを有する。ノット付きストリング又は編組縫合糸の視覚化を増強するために縫合糸、しるし、又は色分けゾーンにカテーテル及び解剖学的構造とは非常に対照的な色を与える。幾つかの実施形態では、縫合糸の編組面は、編組のテクスチャ及び折り畳みに起因して細胞の収集及び/又は保持に役立つ。例えば、組織及び/又は細胞は、編組構造のテクスチャ及び/又は折り畳みの中に埋め込まれた状態になる。
図34Aに示す幾つかの実施形態では、
図32及び
図33において上述したバルーンに対するものと類似の方式で、しるし131をストリング140にパッド印刷する。
図34Bは、一連のノット又は縫合糸142を有するストリング140’を示している。ストリング、しるし、ノット、又は縫合糸の可視性を高めるために、バルーン130は少なくとも部分的に透明である。
【0112】
幾つかの実施形態では、ストリングは、延長部分として
図11C及び
図11Dに示すように編まれる。編組ストリング、ノット、又は縫合糸は、追加の細胞収集面を与える。幾つかの実施形態では、細胞は、縫合糸43の編組構造内に収集されて保持され、これは、細胞が縫合糸面上にのみ収集される場合よりも有利である。縫合糸43の編組構造内に収集された細胞は、細胞を編組構造の間に収集することによって収集された細胞の保護を追加するので、縫合糸43及び/又はバルーン32の後退中に不用意に除去される又は拭い去られる可能性が低い。
【0113】
幾つかの実施形態では、
図11E及び
図11Fに示すように、ストリング又は縫合糸の様々な撚り糸を他の撚り糸と比較して異なる色、陰影、又は太さで形成する。例えば、
図11Eの3撚り糸式縫合糸に示すように、縫合糸46の撚り糸47及び49は、撚り糸51と比較して異なる色又は暗めの陰影である。これに代えて、
図11Fに示すように、縫合糸46’の撚り糸47’及び51’は、撚り糸49’と比較して異なる色又は明るめの陰影である。撚り糸47、47’、49、49’、51、51’は、編組構造パターンにおいて医療従事者が編組の長さに沿って予め決められたセグメント長さで色対比又は相違点を視覚化するように、選択された色で全長に沿って形成される。例えば、第1の撚り糸47、47’は、縫合糸46、46’(例えば、編組)の外側部分で3つの部分毎に長さL1、L1’にわたって延び、第2の撚り糸49、49’は、縫合糸46、46’の外側部分で3つの部分毎に長さL2、L2’にわたって延び、第3の撚り糸51、51’は、縫合糸46、46’の外側部分で3つの部分毎に長さL3、L3’にわたって延びる。見た目の明瞭性のために、撚り糸を類似の太さで示すが、ストリング、ノット、縫合糸は任意の太さであり、等しい太さであってもよいし又は異なる太さであってもよいことを理解すべきである。他の実施形態では、所与の撚り糸内の繊維は、撚り糸の残余と比較して異なる色を有する。
【0114】
縫合糸46、46’の長さに沿って撚り糸の外観を変化させる利点は、ストリング又は縫合糸の外観を長さに沿って変化させて、それぞれのストリング又は縫合糸が移動しており、オペレータにバルーンが裏返されているというフィードバックを提供する点である。例えば、医療従事者が縫合糸46、46’の色対比によって縫合糸の移動を視覚化することが可能である。ストリング又は縫合糸は、その面特性を修飾するためにプラズマ面印加、コロナ面印加、又はナノ繊維面付加のような面変調によって処理される。更に、編組ストリング、ノット付きストリング、又は縫合糸は、バルーンに対して作用する力を吸収して散逸させるように機能し、それによってバルーンの離脱のリスクを低減する点でバルーンに対して追加の引張強度を与える。
【0115】
追加のフィードバック機構は、バルーン130に撹拌生理食塩水を充填すること、及び超音波と、正弦波の極大値の間の距離がバルーンの裏返しの区分的距離を定めるバルーンに対する正弦波パターンとを用いて気泡を視覚化することを含む。
【0116】
バルーンの先端部から又はバルーンが裏返されて出るチューブの遠位端部からの微小気泡の放出によって卵管内でのナビゲーション及び開通経路又は障害物の表示を与える。開通経路が存在する場所を確認するために、微小気泡の移動は、超音波のような撮像を用いて追跡可能である。障害物251、例えば、閉塞部又は狭窄部の事例では、微小気泡は、阻害された時点で集中又は群集する場合がある。微小気泡の群形成を検出するのに応答して、医療従事者が障害物を確認することが可能である。
図36Aは、バルーン130の先端部から卵管1内への微小気泡249の流れの放出を示しており、この場合、微小気泡249の安定した連続線から明らかなように、この卵管1には狭窄部又は障害物が存在しない。幾つかの実施形態では、微小気泡は、
図17A~
図17Bに示すバルーンの内腔54から送出される。オン又はオフに変調されてバルーン130内に注入された流体に空気を導入する空気供給源の場合よりも緻密な測定のために、微小気泡249の頻度又は間隔は制御可能である。
図36Bは、管状狭窄部又は障害物251を有する卵管1を示しており、この場合、管状狭窄部又は障害物251は、微小気泡249の流れを阻害する場合があり、微小気泡249は、管状狭窄部又は障害物251の点に群集又は集中し始める。微小気泡249の集中は、卵管1内で狭窄部又は障害物251が何処にあるかの視覚表示をユーザに提供する。障害物251の検出に応答して、医療従事者は、バルーンが何処で停止したかを決定するために、超音波のような追加の撮像を実施する。
【0117】
本開示は、上述したカテーテルの実施形態を用いて被験者の管腔から細胞を収集するための様々な方法を更に提供する。本方法は、少なくともチューブと、チューブの遠位端部に固定されたバルーン(延長部分を有するか又は持たない)と、このバルーンをチューブ内の反転位置と遠位端部を超えて延びる裏返し位置との間で作動させるプッシュワイヤと、チューブと同軸の摺動可能シースとを含むカテーテルを使用する段階、バルーンの第1の部分(幾つかの実施形態によると約1cmから2cm)をチューブの遠位端部を越えて遠位側に事前選択距離まで裏返す段階、シース及びバルーンの裏返された第1の部分を被験者の管腔の近くに位置決めする段階、又はそれらの組合せを含む。
【0118】
バルーンを、その初期裏返しを起こすために膨らませる又は他に加圧する。例えば、バルーンを加圧することによってバルーンにコラム強さを与え、プッシュワイヤを前進させたときにバルーンを裏返すことを可能にする。ハイポチューブ及び/又はカテーテル上の第1のマーカまでシースノブを前進させる。バルーンを、シースの遠位先端部での点まで裏返す。シースの遠位先端部及び事前延長されたバルーンを、卵管口の近くに置く。シースを、シースノブを選択位置に維持することによって予め決められた位置に固定し、裏返し式バルーンの初期部分が近位開口(os)内に挿入されるようにバルーン及びカテーテルを更に前進させる。
【0119】
医療従事者は、バルーン及び/又は延長部分としての縫合糸の更なる裏返しのために駆動ホイールを回転させる。駆動ホイールを、バルーン及び/又は縫合糸が部分的又は完全に裏返されるまで回転させる。幾つかの実施形態では、最終裏返し長さ(例えば、約7~12cm)は、プッシュワイヤ移動の半分にほぼ等しい。バルーン及び/又は縫合糸が完全に裏返されると、プッシュワイヤの遠位端部は、カテーテル内に留まり、卵管と接触しない。
【0120】
卵管内で完全に裏返されて膨らませたバルーンは、卵管の潜在空隙を占有して卵管の内面に接触する。面積接触は、細胞をバルーンの表面上に転移させる。バルーンの表面内の皺がバルーンの表面上に収集された細胞を捕捉するように、バルーンを、卵管内で裏返している間に収縮させる。幾つかの実施形態では、バルーンの表面上及び表面特徴部内への細胞収集を潜在的に増強するために、バルーンを裏返している間に膨らまし状態とすぼませ状態の間を行き来させる。幾つかの実施形態では、縫合糸は、完全に裏返されたバルーンから延びて細胞を縫合糸上に更に収集するのがよい。
【0121】
バルーンの表面及び/又は縫合糸上への細胞収集が完了すると、医療従事者は、裏返し式バルーン及び/又は縫合糸をシース内に後退させるように、シースを予め決められた位置に固定しながらデバイスのハンドルを後退させる。カテーテルのチューブの上のマーカがシースノブに位置合わせされたとき、バルーン/延長部分の全長がシースと共に後退し終わったという表示を提供する。シースは、子宮鏡の作業チャネルからデバイスを除去する間にバルーンの表面及び/又は縫合糸上の収集された細胞を保護する。
【0122】
バルーンの裏返された第1の部分を管腔内に挿入し、プッシュワイヤを用いてバルーンを更に裏返して管腔内に入れることにより、細胞をバルーン上に収集する。本方法の幾つかの実施形態は、バルーンの裏返された第1の部分を管腔内に挿入する段階に対して更なる裏返し段階の速度を調節する段階を更に含む。カテーテルのチューブの上のマーカがシースノブに位置合わせされたとき、バルーン/延長部分の全長がシースと共に後退し終わったという表示を提供する。
【0123】
本明細書で言及したあらゆる特許又は文献は、各個々の文献が引用によって組込まれていることを特定的かつ個々に示す場合と同等に引用によって本明細書に組込まれている。以上の説明は、本開示の特定の実施形態を示したものであるが、これらの実施形態の実施に対する制限であるように意図したものではない。
【0124】
本明細書では、これらの実施形態の完全な理解を提供するために多くの具体的な詳細を示している。しかし、これらの実施形態をこれらの特定の詳細を用いずに実施することを当業者は理解すべきである。この他の点として、これらの実施形態を不明瞭にしないために、既知の作動、構成要素、及び回路に対しては詳細に説明しなかった。本明細書に開示した特定の構造的及び機能的な詳細は代表的なものであり、必ずしもこれらの実施形態の範囲を限定するわけではないことは認める。
【0125】
幾つかの実施形態は、「結合された」及び「接続された」という表現及びこれらの派生表現を用いて説明する。これらの用語は、互いに対する同義語であるように意図したものではない。例えば、幾つかの実施形態は、2又は3以上の要素が互いに直接的な物理的接触状態又は電気的接触状態であることを示すために「接続された」及び/又は「結合された」という用語を用いて説明する。しかし、「結合された」という用語は、2又は3以上の要素が互いに直接接触状態にはないが、依然として互いに協働又は相互作用することを意味する。
【0126】
本明細書に説明した方法は、説明した順序又はいずれかの特定の順序で実行しなくてもよいことに注意すべきである。更に、本明細書で識別した方法に関して説明した様々な活動は、直列又は並列仕方で実行する。