(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】ビス(ヒドロキシメチル)ピロロフタラジン混成物、調製方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20220622BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220622BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220622BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220622BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220622BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K31/5377
A61K31/5025
(21)【出願番号】P 2020526538
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 US2018061400
(87)【国際公開番号】W WO2019099755
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】リー, トゥー・チャン
(72)【発明者】
【氏名】スー, ツァン・ロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, タイ・リン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-501801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0117125(US,A1)
【文献】特表2006-504624(JP,A)
【文献】国際公開第2016/144847(WO,A1)
【文献】特表2011-515401(JP,A)
【文献】国際公開第2012/065139(WO,A2)
【文献】特開平01-186888(JP,A)
【文献】国際公開第2007/069671(WO,A1)
【文献】特表2006-515597(JP,A)
【文献】Lee, Pei-Chih; Kakadiya, Rajesh; Su, Tsann-Long; Lee, Te-Chang,"Combination of bifunctional alkylating agent and arsenic trioxide synergistically suppresses the growth of drug-resistant tumor cells",Neoplasia (Ann Arbor, MI, United States),2010年,Vol.12(5),p.376-387
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 45/00
A61K 31/5377
A61K 31/5025
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、その薬学的に許容可能な溶媒和物又は立体異性体の化合物であって、
【化1】
前記式(I)の
は、
又は
であり
、OH、O(アルキル)、及び、-O(CH
2)
xN(R
b)
2からなる群から独立して選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換されてもよく、
R
1はハロ、-OR、-O(CO)CH
3、-OSO
2R、及び、-OCONHRからなる群から独立して選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、O(アルキル)、ハロ、シアノ、ニトロ、-N(R
c)
2、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、及び、4-(ピペリド)ピペリジニル基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、1-置換ピペラジニル、1,4´-ビピペリジニル、4´-置換4,4´-ビピペリジニルを形成し、R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、O(アルキル)、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、前記アルキルは、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、C(O)H、OC(O)アルキル、O(アリール)、及び、アリールからなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換されてもよく、前記アリールは、ハロ、CN、C
1-6アルキル、N(R
c)
2、NO
2、O(アルキル)、-OCH
2O-、-O(CH
2)
2O-、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ、及び、4-(ピペリド)ピペリジニル基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
bは、C
1-10アルキル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、
又は、モルホリニ
ルであり、
R
cは、水素又はC
1-10アルキルであり、
xは、1から5の間の整数である、化合物。
【請求項2】
R
3は、-NH
2、-NHCH
3、又は、-N(CH
3)
2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R
3は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル及び4-ピペリドピペリジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、式(I-A)の構造を有し、
【化2】
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、O(アルキル)又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はエチルであり、R
3はモルホリニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3は1,4´-ビピペリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、式(I-B)の構造を有し、
【化3】
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、O(アルキル)又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3はジメチルアミンであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はジメチルアミンであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
癌を治療するための医薬品の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記化合物が、式(I-A)の構造を有し、
【化4】
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、O(アルキル)又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はエチルであり、R
3はモルホリニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3は1,4´-ビピペリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
前記化合物が、式(I-B)の構造を有し、
【化5】
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、O(アルキル)又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2である、請求項13に記載の使用。
【請求項20】
R
1は-CH
2OHであり、R
2はメチルであり、R
3はジメチルアミンであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はジメチルアミンであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
R
1は-CH
2OCONH(C
2H
5)であり、R
2はメチルであり、R
3はピロリジニルであり、R
4及びR
5は独立して水素である、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の前記投与の前、前記投与とともに、又は前記投与の後に化学療法剤を前記被検体に投与するステップをさらに具備する請求項13に記載の使用。
【請求項24】
前記化学療法剤は、ベムラフェニブ(PLX4032)、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、オキサリプラチン、ベツリン酸、4-S-システアミニルカテコール、4-S-システアミニルフェノール、エベロリムス、ボルテゾミブ、カルボプラチン、ダカルバジン、セレコキシブ、テモゾロミド、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドマイド、バルプロ酸、ビンブラスチン、メシル酸イマチニブ、ボセンタン、アポミン、三酸化ヒ素、カルムスチン、ラムブロリズマ、抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)剤、抗プログラム細胞死受容体-1(PD-1)剤、イピリムマブ、トレメリムマブ、ドキソルビシン、MEK阻害剤、カペシタビン、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤及びタモキシフェンからなる群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記癌は、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、精巣癌、甲状腺癌、前立腺癌、咽頭癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、頭頸部癌、食道癌、直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、脳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌及びCNS新生物からなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年11月17日出願の米国仮特許出願第62/587484号に対して米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張し、それはその全体においてここに参照によって取り込まれる。
【0002】
本開示は、概略として癌の治療の分野に関し、より具体的には、抗血管新生及びDNA架橋活性の双方を示す新規な二官能性化合物並びに癌の治療及び/又は予防におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、世界中で最も多い死因となっている。癌の治療は、一般に、外科切除及び/又は化学療法剤の投与若しくは放射線療法を伴う。多数の化合物が抗癌剤として開発されており、ほとんどの薬剤開発者は、制御不能な細胞増殖をもたらす1つの特定の細胞メカニズムを標的化することによって抗癌剤を開発する。本開示の発明者らは、1つの特定の代謝経路において酵素を抑制又は阻害することに着目するのではなく、2つの活性部分を1つの分子に結合することによってデュアルモードの活動を有する化合物を創出し、具体的には、一方の部分が抗血管新生活性を担い、他方の部分がDNA架橋活性を担う。このように、混成分子は、2つの別個の経路から癌細胞を攻撃する2つの官能基を有するので、非常に効力のある抗癌剤となることが期待される。
【発明の概要】
【0004】
本開示の発明者らは、VEGF及びオーロラキナーゼ阻害部分とDNA架橋部分とを結合することによって形成される新たな分類の化合物を設計及び合成した。新たに生成された混成化合物は、種々のヒト癌細胞において大きな抗増殖活性を示すので、癌の治療及び/又は予防に適した医薬品の開発の有望な候補となる。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、式(I)の構造、その薬学的に許容可能な溶媒和物又は立体異性体を有する新規な化合物を提供することであり、
【化1】
Aは、選択的に置換される6~10員環の不飽和炭素環であり、
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0006】
本開示のある実施形態によると、式(I)において、R3は、1H-ピラゾール-3-アミノ、1H-イミダゾール-2-アミノ又はピリミジン-アミノである。
【0007】
本開示のある実施形態によると、式(I)において、前記シクロアルキルアミノ基は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル及び4-ピペリドピペリジニルからなる群から選択される。
【0008】
本開示のある実施形態によると、特定の化合物は式(I-A)のものであり、
【化2】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0009】
好適な一実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はエチルであり、R3はモルホリンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0010】
好適な一実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0011】
他の好適な実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3は1,4´-ビピペリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0012】
更なる実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0013】
本開示のある実施形態によると、特定の化合物は式(I-B)のものであり、
【化3】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0014】
好適な一実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はジメチルアミンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0015】
他の実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はジメチルアミンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0016】
更なる実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0017】
本開示の第2の態様は、癌を有し又は有していると疑われる被検体の治療又は予防のための薬学的組成物を提供するものである。薬学的組成物は、治療上又は予防上の有効量の式(I)の化合物、及び薬学的に許容可能な担体を具備する。
【0018】
式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として約0.1重量%~99重量%のレベルで存在する。ある実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として少なくとも1重量%のレベルで存在する。ある実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として少なくとも5重量%のレベルで存在する。さらに他の実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%のレベルで存在する。さらに他の実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として少なくとも25重量%のレベルで存在する。
【0019】
好ましくは、前記化合物は式(I-A)の構造を有し、
【化4】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0020】
選択的に又は追加的に、式(I-A)の前記化合物は、リポソームに調合される。
【0021】
好適な一実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はエチルであり、R3はモルホリンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0022】
他の好適な実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0023】
更なる実施形態によると、式(I-A)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3は1,4´-ビピペリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0024】
更なる実施形態によると、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0025】
本開示の他の好適な実施形態によると、前記化合物は式(I-B)の構造を有し、
【化5】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0026】
好適な一実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OHで置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はジメチルアミンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0027】
他の好適な実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はジメチルアミンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0028】
更なる好適な実施形態によると、式(I-B)において、R1は-OCONH(C2H5)で置換されたメチルであり、R2はメチルであり、R3はピロリジンであり、R4及びR5は独立して水素である。
【0029】
本開示はまた、癌を有し又は有するものと疑われる被検体の治療又は予防のための方法を包含する。方法は、本薬学的組成物を前記被検体に投与するステップを具備する。
【0030】
選択的に又は追加的に、方法は、本薬学的組成物の前記投与の前、前記投与とともに、又は前記投与の後に化学療法剤を前記被検体に投与するステップをさらに具備する。
【0031】
本方法において使用され得る例示の化学療法剤は、これに限定されないが、DET、PLX4032、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、オキサリプラチン、ベツリン酸、4-S-システアミニルカテコール、4-S-システアミニルフェノール、エベロリムス、ボルテゾミブ、カルボプラチン、ダカルバジン、セレコキシブ、テモゾロミド、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドマイド、バルプロ酸、ビンブラスチン、メシル酸イマチニブ、ボセンタン、アポミン、三酸化ヒ素、カルムスチン、ラムブロリズマ、抗CTLA-4剤、抗プログラム細胞死受容体-1(PD-1)剤、イピリムマブ、トレメリムマブ、ドキソルビシン、MEK阻害剤、カペシタビン、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤及びタモキシフェンを含む。
【0032】
本方法によって治療され得る例示の癌は、これに限定されないが、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、精巣癌、甲状腺癌、前立腺癌、咽頭癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、頭頸部癌、食道癌、直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、脳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌及びCNS新生物を含む。
【0033】
本開示はまた、癌を有する被検体の治療又は予防に有用なキットを包含する。キットは、少なくとも、式(I)の化合物を含有する第1の容器及び化学療法剤を含有する第2の容器を含む。
【0034】
本開示の1以上の実施形態の詳細を、以下の付随する説明において説明する。発明の他の特徴及び効果が、詳細な説明から、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0035】
以上の概略説明及び以下の詳細な説明の双方は例示としてのものであり、特許請求される発明の更なる説明を与えることが意図されていることが理解されるべきである。
【0036】
明細書に含まれてその一部を構成する添付図面は、種々の例示のシステム、方法及び発明の種々の態様の他の例示的実施形態を示す。本説明は、添付図面を考慮して読まれる以下の詳細な説明からより深く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態によるDNA鎖間架橋の形成に対する式(I)の化合物の効果を示す写真である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態によるH526細胞におけるDNA鎖間架橋に対するBO-2768又はシスプラチンの効果を示し、(A)は変形コメットアッセイによるコメットテールを示す個々の細胞の代表的な画像であり、(B)はシスプラチン又はBO-2768処置細胞においてテールモーメントを表す棒グラフである。テールモーメントが短いほど、DNA鎖間架橋が強いことを示す。データは、独立した3回の実験の平均値である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態によるVEGFR-2活性に対する(A)BO-2590、(B)BO-2577又は(C)バタラニブの阻害効果を示す写真である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による内皮細胞に対するBO-2590、BO-2698及びBO-2768の抗血管新生効果を示し、(A)はトランスウェルによって測定された内皮細胞転移の阻害であり、(B)及び(C)は管形成によって特定された阻害を表す写真であり、(D)はパネル(A)及び(B)の定量化された結果を表す折れ線グラフである。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態によるH460ヒト肺癌細胞におけるBO-2590による細胞周期の干渉を示す。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態による(A)24時間、(B)48時間又は(C)72時間でのH460ヒト肺癌細胞におけるBO-2590によるアポトーシスsub-G1細胞誘導を示す。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態によるBO-2590又はシスプラチンによるアネキシンV+アポトーシス死誘導を示す。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態によるBO-2768によるH526細胞におけるアポトーシス誘導を示す。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態によるH211細胞の増殖抑制に対するBO-2768とシスプラチンの(A)1:2、(B)1:4、(C)1:8の比率における相乗効果をそれぞれ表す折れ線グラフであり、異なる併用投与間の相乗作用又は拮抗作用は、併用係数(CI)を用いて計算され、ここで、CI=1は二つの薬物が相加効果を有することを示し、CI<1は相加効果よりも優れること(「相乗作用」)を示し、CI>1は相加効果よりも劣ること(拮抗作用)を示す。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態によるH526異種移植ヌードマウスにおける(A)腫瘍サイズ及び(B)体重変化に対するリポソームBO-2590Lの効果を示す。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態によるH526異種移植ヌードマウスにおける(A)腫瘍サイズ及び(B)体重変化に対するリポソームBO-2590L、バタラニブ及びシスプラチンのそれぞれの効果を示す。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態によるH526異種移植ヌードマウスにおける(A)腫瘍サイズ及び(B)体重変化に対するミセルBO-2590、BO-2768、BO-2792、イリノテカン及びシスプラチンのそれぞれの効果を示す。
【
図13】
図13は、本開示の一実施形態によるH526SCLC異種移植ヌードマウスにおける(A)腫瘍サイズ及び(B)体重変化に対するBO-2768の投与量依存性阻害効果を表す折れ線グラフである。
【
図14】
図14は、本開示の一実施形態によるH211SCLC異種移植ヌードマウスにおける(A)腫瘍サイズ及び(B)体重変化に対するBO-2768及びシスプラチンの併用使用の効果を示す。20mg/kgのBO-2768を投与量で100μlで連続5日間投与し、2サイクルに1日休薬した。シスプラチンを4日おきに2又は4mg/kgの投与量で3回投与した。体重変化を薬物処置後に観察した。
【
図15】
図15は、本開示の一実施形態による腫瘍中のCD31マーカーのレベルに対するBO-2590L、シスプラチン又はバタラニブの効果を示し、(A)は処置後6日目でのCD31に対する抗体を使用した代表的なIHC染色であり、(B)は腫瘍におけるCD31の定量的シグナルである。データは、グループあたり15フィールドの平均値±SDとして表される。
【
図16】
図16は、本開示の一実施形態による腫瘍におけるγ-H2AXに対するBO-2590L、シスプラチン又はバタラニブの効果を示し、(A)は処置後6日目でのγ-H2AXに対する抗体を使用した代表的なIHC染色であり、(B)は腫瘍におけるγ-H2AXの定量的シグナルである。データは、グループあたり3匹のマウスの平均値±SDとして表される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。
【0039】
1.定義
値の範囲が列挙される場合、その範囲内には各値及び部分的範囲を包含することが意図される。例えば、「C1-10」はC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C1-10、C1-9、C1-8、C1-7、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-10、C2-9、C2-8、C2-7、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-10、C3-9、C3-8、C3-7、C3-6、C3-5、C3-4、C4-10、C4-9、C4-8、C4-7、C4-6、C4-5、C5-10、C5-9、C5-8、C5-7、C5-6、C6-10、C6-9、C6-8、C6-7、C7-10、C7-9、C7-8、C8-10、C8-9及びC9-10を包含することが意図される。
【0040】
特に断りがない限り、用語「アルキル」は、1~20個(例えば、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個又は1個)の炭素原子を有する直鎖、分岐及び/又は環状(「シクロアルキル」)炭化水素を意味する。1~4個の炭素を有するアルキル部分(C1-4アルキル)を「低級アルキル」という。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、2-イソプロピル-3-メチルブチル、ペンチル、ペンタン-2-イル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、ヘプタン-2-イル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルを含む。シクロアルキル部分は単環式又は多環式であってもよく、例としてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。特に断りがない限り、アルキル基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換アルキル」)又は置換(「置換アルキル」)される。ある実施形態では、アルキル基は、置換C2-10アルキルである。ある実施形態では、シクロアルキルは、3~6個の炭素原子の環を有する単環式飽和カルボキシクリル基(「C3-6シクロアルキル」)である。ある実施形態では、シクロアルキル基は、5~6個の炭素原子の環を有する(「C5-6シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例は、シクロペンチル(C5)及びシクロヘキシル(C6)を含む。特に断りがない限り、シクロアルキル基の各例は、1以上の置換基で独立して非置換(「非置換シクロアルキル」)又は置換(「置換シクロアルキル」)される。ある実施形態では、シクロアルキル基は、非置換C3-10シクロアルキルである。ある実施形態では、シクロアルキル基は、置換C3-10シクロアルキルである。
【0041】
「ヘテロシクロアルキル」は、炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する3-~10-員環の非芳香族環系のラジカルのことをいい、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リン及びケイ素から独立して選択される(「3~10員環ヘテロシクロアルキル」)。1以上の窒素原子を含むヘテロシクリル基においては、付着点は、原子価が許す限り、炭素又は窒素原子であり得る。特に断りがない限り、ヘテロシクロアルキルの各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換ヘテロシクロアルキル」)又は置換(「置換ヘテロシクロアルキル」)される。ある実施形態では、ヘテロシクリル基は、炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~8員環の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される。ある実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~6員環の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される。ある実施形態では、5~6員環のヘテロシクリルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子の環を有する。ある実施形態では、5~6員環のヘテロシクリルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子の環を有する。ある実施形態では、5~6員環のヘテロシクロアルキルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個のヘテロ原子の環を有する。1個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル及びピロリル-2,5-ジオンを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル及びオキサゾリジン-2-オンを含む。3個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、トリアゾリニル、オキサジアゾリニル及びチアジアゾリニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル及びチアニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル及びジオキサニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、トリアジナニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の7員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、アゼパニル、オキセパニル及びチエパニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の8員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、アゾカニル、オキセカニル及びチオカニルを含む。
【0042】
特に断りがない限り、用語「アリール」は、炭素及び水素原子から構成される芳香族環又は部分的芳香族環系を意味する。アリール部分は、ともに結合又は融合した複数の環を具備し得る。アリール部分の例は、フェニル、ナフチル、ピレニル、アントリル及びフェナントリルを含む。特に断りがない限り、アリール基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換アリール」)又は置換(「置換アリール」)される。ある実施形態では、アリール基は、置換フェニル(例えばベンジル)である。
【0043】
特に断りがない限り、用語「ヘテロアリール」はアリール部分を意味し、その炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(例えば、N、O又はS)で置換されている。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に供給された炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~10員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~10員環ヘテロアリール」)。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に供給された炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~8員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~8員環ヘテロアリール」)。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に供給された炭素原子環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~6員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~6員環ヘテロアリール」)。ある実施形態では、5~6員環のヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子の環を有する。ある実施形態では、5~6員環のヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子の環を有する。ある実施形態では、5~6員環ヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個のヘテロ原子の環を有する。特に断りがない限り、ヘテロアリール基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換ヘテロアリール」)又は置換(「置換ヘテロアリール」)される。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、非置換5~14員環ヘテロアリールである。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、置換5~14員環ヘテロアリールである。1個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピロリル、フラニル及びチオフェニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル及びイソチアゾリルを含む。3個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、トリアゾリル、オキサジアゾリル及びチアジアゾリルを含む。4個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、テトラゾリルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピリジニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニルを含む。3個又は4個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、それぞれトリアジニル及びテトラジニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の7員環ヘテロアリール基は、限定することなく、アゼピニル、オキセピニル及びチエピニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の10員環ヘテロアリール基は、限定することなく、キナゾリニルを含む。
【0044】
特に断りがない限り、用語「アルキルアリール」又は「アルキル-アリール」は、アリール部分に結合したアルキル部分を意味する。
【0045】
特に断りがない限り、用語「ハロゲン」及び「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを包含する。
【0046】
用語「アミノ」は、式:-N(Rc)2の部分のことをいい、ここでRcの各例は独立してここに記載された置換基であり、又はRcの2つの例が接続され、置換若しくは非置換ヘテロシクリルを形成する。ある実施形態では、アミノは、非置換アミノ(すなわち、-NH2)である。ある実施形態では、アミノは置換アミノ基であり、Rcの少なくとも一例は水素ではない。
【0047】
用語「サッカライド基」は、糖部分の任意の原子を介して、例えばアグリコン炭素原子を介して、別の化合物又は原子に共有的に付着した糖類モノラジカルのことをいう。代表的な糖類は、例示として、D-グルコース、D-マンノース、D-キシロース、D-ガラクトース、バンコサミン、3-デスメチル-バンコサミン、3-エピ-バンコサミン、4-エピ-バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン、ダウノサミン、3-エピ-ダウノサミン、リストサミン、D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミン、D-グルクロン酸、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、シアル酸、イズロン酸及びL-フコースなどのヘキソース、D-リボース又はD-アラビノースなどのペントース、D-リブロース又はD-フルクトースなどのケトース、スクロース、ラクトース、マルトース、2-O-(α-L-バンコサミニル)-β-D-グルコピラノース又は2-O-(3-デスメチル-α-L-バンコサミニル)-β-D-グルコピラノースなどのビスサッカライド、アセタール、アミン、アシル化、硫酸化及びリン酸化糖などの誘導体を含む。この定義を目的として、これらの糖類は従来の三文字命名法を用いて参照され、糖類はそれらの開環した形態又は好ましくはそれらのピラノース形態のいずれかであり得る。
【0048】
用語「アミノ酸基」は、アミノ酸部分の任意の原子を介して、例えばアミノ若しくはカルボキシル官能基又はリジンの側鎖アミノ基などの側鎖上の任意の官能基を介して、別の化合物又は原子に付着したアミノ酸モノラジカルのことをいう。
【0049】
特に断りがない限り、化学構造又は部分を説明するように使用される場合、用語「置換された」はその構造又は部分の誘導体のことをいい、その水素原子の1以上が、原子、化学部分又は、これに限定されないが、-OH、-CHO、アルコキシ、アルカノイルオキシ(例えば-OAc)、アルケニル、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、t-ブチル)、アリール、アリールオキシ、ハロ、若しくはハロアルキル(例えば-CCl3、-CF3、-C(CF3)3)などの官能基で置換されている。特に断りがない限り、用語「アルコキシ」は-O-アルキル基を意味する。アルコキシ基の例は、これに限定されないが、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3及び-O(CH2)5CH3を含む。用語「低級アルコキシ」は、-OCH3及び-OCH2CH3などの-O-(低級アルキル)のことをいう。
【0050】
特に断りがない限り、一連の名詞の直前にある1以上の形容詞は、名詞の各々に当てはまると解釈されるべきである。例えば、「選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール」という文言は、「選択的に置換されたアルキル、選択的に置換されたシクロアルキル、選択的に置換されたヘテロシクロアルキル、選択的に置換されたアリール又は選択的に置換されたヘテロアリール」と同じ意味を有する。
【0051】
本開示は、置換基の上記の例示的な列挙によって限定されることをいかなる態様においても意図しない。
【0052】
用語「溶媒和物」は、通常は加溶媒分解反応によって溶媒を伴う化合物の形態をいう。この物理的会合は、水素結合を含み得る。従来の溶媒は、水、メタノール、エタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)及びジエチルエーテルなどを含む。ここに記載される化合物は、例えば、結晶形態で調製されてもよく、溶媒和されてもよい。適切な溶媒和物は、薬学的に許容可能な溶媒和物を含み、さらに化学量論的溶媒和物及び非化学量論的溶媒和物の両方を含む。ある例では、例えば1以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、溶媒和物は単離が可能となる。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。
【0053】
同じ分子式を有するがそれらの原子の結合の性質若しくは順序又はそれらの原子の空間配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれることも理解されるべきである。それらの原子の空間配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。
【0054】
互いに鏡像ではない「立体異性体」は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせのできない鏡像であるものは「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、4つの異なる基に結合する場合、1対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けられることができ、カーン及びプレログのR-及びS-順位則によって又は分子が偏光面を回転する態様によって記述され、又は右旋性若しくは左旋性として(すなわち、それぞれ(+)若しくは(-)-異性体として)指定される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーのどちらかとして、又はそれらの混合物として存在し得る。等割合のエナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0055】
構造又は構造の一部の立体化学が例えば太線又は破線で示されない場合は、構造又は構造の一部はその全ての立体異性体を包含すると解釈されるべきであることにも留意されたい。同様に、それらの中心の立体化学を特定しない1以上のキラル中心を有する化合物の名称は、純粋な立体異性体及びそれらの混合物を含有する。さらに、未充足な原子価で図面に示されるいずれの原子も、原子価を満たすのに充分な水素原子に付着されているとされる。
【0056】
本発明の目的のため、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たして安定部分の形成をもたらすここに記載の水素置換基及び/又は任意の適切な置換基を有し得る。
【0057】
特に断りがない限り、化合物の「治療上有効量」は、疾患若しくは状態の治療若しくは管理において治療効果を提供し、又は疾患若しくは状態に関連する1以上の症状を遅延若しくは最小化するのに充分な量である。化合物の治療上有効量は、単独又は他の療法との併用で、疾患又は状態の治療又は管理において治療効果を提供する治療剤の量である。用語「治療上有効量」は、療法全体を改善し、疾患若しくは状態の症状若しくは原因を低減若しくは回避し、又は他の治療剤の治療有効性を増強する量を包含し得る。
【0058】
特に断りがない限り、化合物の「予防上の有効量」は、疾患若しくは状態、又は疾患若しくは状態に関連する1以上の症状を防止し、又はその再発を防止するのに充分な量である。化合物の予防上の有効量は、単独又は他剤との併用で、疾患の予防において予防効果を提供する治療剤の量であることを意味する。用語「予防上の有効量」は、全体的な予防を改善し、又は他の予防剤の予防有効性を増強する量を包含し得る。
【0059】
特に断りがない限り、用語「治療する/処置する/処理する(treat)」、「治療している/処置している/処理している(treating)」及び「治療/処置/処理(treament)」は、患者が特定の疾患又は障害を患う間に生じる作用であって、疾患若しくは障害の重症度又はその症状の1以上を軽減し、又は疾患若しくは障害の進行を阻止又は減速する作用を考慮する。
【0060】
構造又は構造の一部の立体化学が例えば太線又は破線で示されない場合は、構造又は構造の一部はその全ての立体異性体を包含すると解釈されるべきであることにも留意されたい。同様に、それらの中心の立体化学を特定しない1以上のキラル中心を有する化合物の名称は、純粋な立体異性体及びそれらの混合物を含有する。さらに、未充足の原子価で図面に示されるいずれの原子も、原子価を満たすのに充分な水素原子に付着しているとされる。
【0061】
発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるものの、特定の実施例で説明される数値は可能な限り厳密に報告される。ただし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的にもたらされる所定の誤差を本質的に含む。また、ここで使用されるように、用語「約」は、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%内を一般に意味する。あるいは、用語「約」は、当業者によって検討される場合の平均の許容標準誤差内を意味する。有効な/効果的な実施例以外においても、明示の断りがない限り、ここに開示されるその材料の量、継続時間、温度、動作条件、量の比率などに対するものなどの数値範囲、量、値及び割合の全ては、いずれの場合においても用語「約」によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、所望のように変化し得る近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を考慮してかつ通常の四捨五入手段を適用して少なくとも解釈されるべきである。
【0062】
単数形「a」、「and」及び「the」は、そうでないことを文脈が明示しない限り、複数の参照を含むものとしてここに使用される。
【0063】
2.式(I)の新規な化合物
本発明は、式(I)の化合物、その薬学的に許容可能な溶媒和物又は立体異性体を包含する。
【化6】
Aは、選択的に置換される6~10員環の不飽和炭素環であり、
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0064】
本開示のある実施形態によると、式(I)において、R3は、1H-ピラゾール-3-アミノ、1H-イミダゾール-2-アミノ又はピリミジン-アミノである。
【0065】
本開示の更なる実施形態によると、式(I)において、シクロアルキルアミノ基は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル及び4-ピペリドピペリジニルからなる群から選択される。
【0066】
本開示のある実施形態によると、特定の化合物は式(I-A)のものであり、
【化7】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0067】
式(I-A)の例示の化合物は、これに限定されないが、以下を含む。
【化8】
【表1】
【0068】
本開示のある実施形態によると、特定の化合物は、式(I-B)のものである。
【化9】
R
1は、ハロ、-OR、-OAc、-OSO
2R又は-OCONHRで選択的に置換されたアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールであり、
R
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
R
3は、-NR
AR
B、-NHPhR
C、モノ-若しくはビス-サッカライド基又はアミノ酸基であり、又は-NR
AR
Bが統合されて、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、1-置換ピペラジン、1,4´-ビピペリジン、4´-置換4,4´-ビピペリジンからなる群から選択された選択的に置換されるアニリン又はシクロアルキルアミンを形成し、ピペラジン及び4,4´-ビピペリジンにおける置換基がアルキル、-(CH
2)
nCONH(CH
2)
mNR
AR
Bであり、
n及びmは独立して1から5の間の整数であり、
R
A及びR
Bは独立してH又はC
1~C
6アルキルであり、
R
Cは水素、ハロ、アルコキシ、-CH
2OH、-NHCOR
a、-NHC(O)OR
a、又は選択的に置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル若しくはアリールであり、R
aはC
1-6アルキル又はアリールであり、
R
4及びR
5は、独立して水素、-OH、アルコキシ又は-O(CH
2)
xN(R
b)
2であり、
xは1から5の間の整数であり、
R
bはC
1-10アルキル又はシクロアルキルアミノ基であり、
前記アリール又はヘテロアリールは、C
1-6アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、-NH
2、-NHR
c、-N(R
c)
2、シクロアルキルアミノ、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で選択的に置換され、R
cは独立して水素又はC
1-10アルキルである。
【0069】
式(I-B)の例示の化合物は、これに限定されないが、以下を含む。
【化10】
【表2】
【0070】
発明の化合物は、1以上の立体中心を含有するので、エナンチオマーのラセミ混合物又はジアステレオマーの混合物として存在し得る。したがって、本発明は、そのような化合物の立体的に純粋な形態、その他これらの形態の混合物を包含する。立体異性体は、結晶化、クロマトグラフィー、及び分割剤の使用など、標準的な技術を用いて非対称に合成又は分解され得る。ラセミ混合物からエナンチオマーを分離する1つの好適な方法は、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の使用によるものである。あるいは、ラセミのものは、溶媒の存在下で光学的に活性な形態の分割剤と反応することによってそのエナンチオマーに分離され得る。分割剤の光学形態に応じて、2つのエナンチオマーのうちの1つが、高い収率でかつ高い光学的純度で不溶性塩として分離され、他方のエナンチオマーが溶液に残る。
【0071】
したがって、本発明は、ここに開示される化合物の立体異性体混合物をさらに包含する。それは、ここに開示される化合物の立体配置異性体(例えば、二重結合を伴うか否かにかかわらず、シス異性体及びトランス異性体)も、混合形態又は純粋若しくは実質的に純粋な形態のいずれかにおいて、包含する。
【0072】
3.使用方法
本発明は、癌を有する被検体の治療又は予防のための方法を包含する。方法は、癌の増殖を抑制するように、治療上又は予防上の有効量の本開示の式(I)の化合物を被検体に投与するステップを具備する。
【0073】
ある実施形態では、方法は、被検体に式(I)の化合物の投与前、投与時又は投与後に化学療法剤を投与するステップをさらに含む。化学療法剤は、DET、PLX4032、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、オキサリプラチン、ベツリン酸、4-S-システアミニルカテコール、4-S-システアミニルフェノール、エベロリムス、ボルテゾミブ、カルボプラチン、ダカルバジン、セレコキシブ、テモゾロミド、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドマイド、バルプロ酸、ビンブラスチン、メシル酸イマチニブ、ボセンタン、アポミン、三酸化ヒ素、カルムスチン、ラムブロリズマ、抗CTLA-4剤、抗プログラム細胞死受容体-1(PD-1)剤、イピリムマブ、トレメリムマブ、ドキソルビシン、MEK阻害剤、カペシタビン、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤及びタモキシフェンからなる群から選択され得る。
【0074】
本開示では、癌は、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、精巣癌、甲状腺癌、前立腺癌、咽頭癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、頭頸部癌、食道癌、直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、脳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌又はCNS新生物のいずれかであり得る。好ましい一実施形態によれば、式(I)の本化合物によって治療可能な癌は、小細胞肺癌である。他の好ましい実施形態によれば、式(I)の本化合物によって治療可能な癌は、急性リンパ芽球性白血病である。
【0075】
式(I)の化合物の量、投与経路及び投薬スケジュールは、治療、予防又は管理される具体的な適応症並びに患者の年齢、性別及び状態などの要因に依存することになる。そのような要因が担う役割は、当技術分野において周知であり、日常的な実験によって対応され得る。
【0076】
4.薬学的製剤
本発明は、癌の治療又は予防のための薬学的組成物を包含する。薬学的組成物は、本発明の式(I)の化合物の治療上又は予防上の有効量を具備する。
【0077】
式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として、およそ0.1重量%から99重量%のレベルで存在する。ある実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として、少なくとも1重量%のレベルで存在する。ある実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として、少なくとも5重量%のレベルで存在する。さらに他の実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として、少なくとも10重量%のレベルで存在する。さらに他の実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的組成物の総重量を基準として、少なくとも25重量%のレベルで存在する。
【0078】
ある好ましい実施形態では、薬学的組成物は、化学療法剤をさらに具備する。化学療法剤は、DET、PLX4032、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、オキサリプラチン、ベツリン酸、4-S-システアミニルカテコール、4-S-システアミニルフェノール、エベロリムス、ボルテゾミブ、カルボプラチン、ダカルバジン、セレコキシブ、テモゾロミド、ソラフェニブ、サリドマイド、レナリドマイド、バルプロ酸、ビンブラスチン、メシル酸イマチニブ、ボセンタン、アポミン、三酸化ヒ素、カルムスチン、ラムブロリズマ、抗CTLA-4剤、抗プログラム細胞死受容体-1(PD-1)剤、イピリムマブ、トレメリムマブ、ドキソルビシン、MEK阻害剤、カペシタビン、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤及びタモキシフェンからなる群から選択され得る。
【0079】
ある薬学的組成物は、患者への、経口、粘膜(例えば、経鼻、舌下、経膣、口腔又は直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内又は動脈内)又は経皮投与に適した1回分の単位投与形態である。投与形態の例は、これに限定されないが、錠剤、カプレット、軟質ゼラチンカプセルなどのカプセル、サシェ、トローチ、甘味入りの錠剤、ディスパージョン、座剤、軟膏、パップ剤(湿布)、ペースト、粉末、包帯、クリーム、石膏、溶液、パッチ、エアロゾル(例えば、点鼻薬又は吸入器)、ゲル、患者への経口又は粘膜投与に適した懸濁液(例えば、水性若しくは非水性液体懸濁液、水中油型乳濁液又は油中水型乳濁液)、溶液及びエリキシル剤を含む液体投与形態、患者への非経口投与に適した液体投与形態並びに患者への非経口投与に適した液体投与形態を提供するように再構成することができる滅菌固体(例えば、結晶性又はアモルファス固体)を含む。
【0080】
製剤は、投与の様式に適合するべきである。例えば、経口投与は、本発明の化合物を胃腸管内での分解から保護するために腸溶コーティングを必要とする。同様に、製剤は、作用部位への活性成分の送達を容易にする成分を含み得る。例えば、化合物は、分解酵素から保護し、循環系における輸送を促進し、細胞膜を介した細胞内部位への送達を果たすために、リポソーム製剤で投与され得る。
【0081】
同様に、難溶性化合物は、これに限定されないが、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン)並びに、これに限定されないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、生体適合性油(例えば、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステルなどの非水性溶媒及びそれらの混合物(例えば、DMSO:コーン油)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール(CHO)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及びPEG-2000などの脂質などの可溶化剤、乳化剤及び界面活性剤の助力を得て、液体投与形態(及び再構成に適した投与形態)に組み込まれ得る。好ましい一実施形態によれば、式(I)の化合物(すなわち、BO-2590)は、脂質に組み込まれて経口又は非経口投与に適したリポソームを形成する。
【0082】
投与形態の組成、形状及びタイプは、その用途に応じて変化する。例えば、疾患の急性治療に用いられる投与形態は、それが具備する活性成分の1以上を、同じ疾患の慢性治療に用いられる投与形態よりも大量に含み得る。同様に、非経口投与形態は、それが具備する活性成分の1以上を、同じ疾患を治療するのに用いられる経口投与形態よりも少量に含み得る。本発明に包含される具体的な投与形態が互いに異なるこれら及び他の方法は、当業者には容易に明らかとなる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照。
【0083】
4.1 経口投与形態
経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、これに限定されないが、錠剤(例えば、チュアブルタブレット)、カプレット、カプセル及び液体(例えば、フレーバードシロップ)などの個別投与形態として提示することができる。そのような投与形態は、所定量の活性成分を含み、当業者に周知の調剤方法により調製され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照。
【0084】
標準的な経口投与形態は、従来の薬学的配合技術に従って、活性成分を少なくとも1つの賦形剤との密な混合物で混合することにより調製される。賦形剤は、投与に望ましい調製の形態に応じて、様々な形態をとることができる。
【0085】
それらの投与の容易さのため、錠剤及びカプセルは、最も有利な経口投与単位形態を代表する。所望であれば、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術によってコーティングすることができる。そのような投与形態は、従来の調剤方法によって調製することができる。一般に、薬学的組成物及び投与形態は、活性成分を液体担体、微粉固体担体又はその両方と均一かつ密接に混合し、その後必要に応じて製品を所望の形態に成形することによって調製される。崩壊剤は、迅速な溶解を容易にするように固体投与形態に組み込まれ得る。潤滑剤も、投与形態(例えば、錠剤)の製造を容易にするように組み込まれ得る。
【0086】
4.2 非経口投与形態
非経口投与形態は、これに限定されないが、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内及び動脈内を含む様々な経路によって患者に投与され得る。それらの投与は通常、汚染物質に対する患者の自然防御を迂回するため、非経口投与形態は、明確に無菌であり、又は患者への投与前に滅菌することが可能である。非経口投与形態の例は、これに限定されないが、注入ために準備された溶液、薬学的に許容可能な注入用ビヒクルに溶解又は懸濁されるように準備された乾燥製品、注入のため準備された懸濁液及び乳濁液を含む。
【0087】
本発明の非経口投与形態を提供するのに使用され得る適切なビヒクルは、当業者に周知である。例は、これに限定されないが、水、これに限定されないが、塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液及びデキストロースなどの水性ビヒクル、これに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル並びに、これに限定されないが、脂質、コーン油、綿実油、落花生油、ごま油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルを含む。
【0088】
4.3 経皮、局所及び粘膜投与形態
経皮、局所及び粘膜投与形態は、これに限定されないが、点眼液、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、乳濁液、懸濁液又は当業者に公知の他の形態を含む。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990)参照。経皮投与形態は、所望量の活性成分の浸透を可能にするように皮膚に貼附して具体的な期間着用することができる「リザーバ型」又は「マトリックス型」パッチを含む。
【0089】
経皮、局所及び粘膜投与形態を提供するために使用できる適切な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及び他の材料は、製薬業界の当業者に周知であり、所与の薬学的組成物又は投与形態が適用される特有の組織に依存する。
【0090】
治療される具体的な組織に応じて、本発明の活性成分での治療に先行して、それと併せて、又はその後に続けて、追加の成分を使用し得る。例えば、活性成分を組織に送達するのを介助するように浸透促進剤を使用し得る。
【0091】
薬学的組成物若しくは投与形態のpH又は薬学的組成物若しくは投与形態が適用される組織のpHもまた、1以上の活性成分の送達を改善するように調整され得る。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は張性は、送達を改善するように調整され得る。ステアリン酸塩などの化合物もまた、1以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変更して送達を改善するように薬学的組成物又は投与形態に添加され得る。これに関して、ステアリン酸塩は、製剤の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として及び送達増強又は浸透増強剤として役立ち得る。活性成分の異なる塩、水和物又は溶媒和物は、結果として生じる組成物の特性をさらに調整するのに使用され得る。
【0092】
5. キット
被検体における癌の治療又は予防に有用なキットもまた、本開示に包含される。
【0093】
本開示によるキットは、式(I)の本化合物を格納する第1の容器、上記の化学療法剤を格納する第2の容器及びキットの使用方法をユーザに説明するキットに関連する説明文を少なくとも含む。説明文は、パンフレット、テープ、CD、VCD又はDVDの形態であり得る。容器の例は、これに限定されないが、バイアル及びチューブなどを含む。
【0094】
ここで、限定ではなく例証を目的として提供される以下の実施形態を参照して、本発明をより具体的に説明する。それらは標準的に使用され得るものであるが、当業者に公知の他の手順、方法論又は技術が代替的に使用されてもよい。
【実施例】
【0095】
材料及び方法
細胞培養
本検討において使用される各種の細胞を、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、100単位/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンが補充された製造者推奨培地において、加湿5%CO2インキュベーターにおいて37℃で成長させた。
【0096】
動物
動物実験が、Academia Sinica Institutional Animal and Utilization Committeeのガイドラインに従って許可され、取り扱われた。
【0097】
nu/nu遺伝子を保持する無胸腺ヌードマウスを国家実験動物センター(台湾、台北)から取得した。雄のヌードマウス(6週齢以上で体重20~24g以上)を全てのヒト腫瘍異種移植に使用した。試験化合物を、尾静脈を介して静脈内投与した。腫瘍体積をキャリパーで長さ×幅×高さ(又は幅)を計測することによって測定した。試験化合物に使用されたビヒクルは、通常の生理食塩水(0.9%NaCl等張液)であった。実験の過程における腫瘍付与ヌードマウスについて、%体重変化とは、(読取り日における総体重/処置開始日における総体重)×100をいう。
【実施例1】
【0098】
実施例1 1,2-ビス(ヒドロキシメチル)ピロロ[2,1-a]-フタラジン-フタラジン誘導体(式(I-A))の化学合成(手法1)
式(I-A)の化合物を手法1に記載される手順によって合成した。商業的に入手可能な1-フタラジノン19をオキシ塩化リンで処理して化合物20を与え、それをさらにエタノールにおいて各種ω-N,N-ジアルキルアルキルアミン、環状アミン、アニリン、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-メチル-4,4´-ビピペリジン、又は1-エチル-4,4´-ビピペリジンで処理して化合物21を得た。そして、化合物21をジクロロメタンにおいてトリメチル-シリルシアニド(TMSCN)及びアルキル又はアリールクロライドと反応させて化合物22を得て、それをエーテル中でテトラフルオロホウ酸(HBF4)と、その後にアセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)によって処理してヒドロフルオロホウ酸塩に変換し、ジエステル誘導体23を与えた。23のジエステル官能基を、氷槽内でエーテル/CH2Cl2の混合物においてLiAlH4と反応させることによって対応のビス(ヒドロキシメチル)誘導体24に還元した。同様に、ビス(ヒドロキシメチル)誘導体24を、各種イソシアネートと反応させて化合物25(R1は-CH2OCONHRであり、Rはアルキル又はアリールである)を与え、若しくはピリジンにおいて酸無水物で処理して化合物25(R1は-CH2OCORである)を与えることによって、又はトルエン若しくはメタンスルホニルクロライド/Et3Nと反応させて化合物25(R1は-CH2OSO2Rであり、RはMe又は4-MePhである)を与えることによって、それらの対応のビス(アルキルカルバメート)同族体及び他の良好な脱離基に変換した。
【0099】
【0100】
それにより得られた式(I-A)の例示の化合物は、以下を含む。
【化12】
【表3】
【0101】
1.1 (3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)-ジメタノール(BO-2571)及び(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2573)
(1)1-クロロフタラジン
商業的に入手可能なフタラジン-1(2H)-オン(5.0g、34.0mmol)及びオキシ塩化リン(POCl3)(25mL)の混合物を100℃で2時間撹拌しながら加熱した。室温に冷却した後、過剰なPOCl3を減圧下で完全に蒸留除去した。残留物をトルエン(2×25mL)及びその後にTHF(100mL)で練和し、固体生成物を濾過によって収集してTHFで洗浄した。そして、生成物をDCMに溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを介して乾燥し、減圧下で蒸発させて1-クロロフタラジンを与えた。収量4.6g(82%)、融点119~121℃(lit.33融点132~134℃)。
【0102】
1H NMR (DMSO-d6) δ 8.20 (2H, t, J = 7.2 Hz, ArH), 8.33 (2H, t, J = 7.6 Hz, ArH), 9.73 (1H, s, ArH).
【0103】
13C NMR (DMSO-d6) δ 126.1, 128.4, 128.7, 155.3. HRMS [ESI+]: calculated for C8H5ClN2, 165.0220 [M+H]+, found 165.0212.
【0104】
(2)4-(フタラジン-1-イル)モルホリン
トリエチルアミン(6.96mL、50.0mmol)を含有するエタノール(120mL)における1-クロロフタラジン(3.64g、20.0mmol)の溶液に、モルホリン(1.89mL、22.0mmol)を滴下して添加した。反応混合物を18時間還流で加熱し、溶媒を減圧下で乾燥するまで除去した。反応物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物を水で希釈して、DCMで2回抽出した。分離された有機層を硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、真空下で蒸発させて4-(フタラジン-1-イル)モルホリンを与えた。褐色の固体、収量3.8g(80%)、融点125~127℃(lit.43融点82℃)。
【0105】
1H NMR (DMSO-d6) δ 3.40 (4H, t, J = 4.8 Hz, 2 × CH2), 3.88 (4H, t, J = 4.4 Hz, 2 × CH2), 7.94-7.97 (2H, m, ArH), 8.09-8.14 (2H, m, ArH), 9.31 (1H, s, ArH).
【0106】
13C NMR (DMSO-d6) δ 51.4, 51.7, 66.5, 120.7, 124.4, 124.5, 127.5, 128.5, 132.4, 132.5, 148.4, 159.7. HRMS [ESI+]: calculated for C12H13N3O, 216.1137 [M+H]+, found 216.1094.
【0107】
(3)2-アセチル-4-モルホリノ-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(30mL)における4-(フタラジン-1-イル)モルホリン(2.0g、9.3mmol)の溶液に、Me3SiCN(2.32mL、18.6mmol)を滴下して添加した。そして、アセチルクロライド(1.0mL、14.0mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して2-アセチル-4-モルホリノ-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリルを与えた。収量2.36g(89%)、融点140~142℃。
【0108】
1H NMR (CDCl3) δ 2.32 (3H, s, CH3), 3.13-3.18 (2H, m, CH2), 3.44-3.49 (2H, m, CH2), 3.81-3.86 (2H, m, CH2), 3.94-3.99 (2H, m, CH2), 6.70 (1H, s, CH), 7.43 (1H, d, J = 7.6 Hz, ArH), 7.51-7.59 (3H, m, ArH).
【0109】
13C NMR (CDCl3) δ 16.9, 49.8, 55.8, 66.7, 116.4, 121.5, 124.0, 123.7, 129.2, 130.3, 132.8,155.5, 169.6. HRMS [ESI+]: calculated for C15H16N4O2, 285.1352 [M+H]+, found 285.1341.
【0110】
(4)ジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(50mL)における2-アセチル-4-モルホリノ-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル(2.0g、7.0mmol)の溶液に、HBF4(1.55mL)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(1.6mL、13mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量1.5g(56%)、融点182~183℃。
【0111】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.64 (3H, s, CH3), 3.30-3.31 (4H, m, 2 × CH2), 3.80 (3H, s, COOCH3), 3.87 (3H, s, COOCH3), 3.87-3.88 (4H, m, 2 × CH2), 7.64 (1H, t, J = 8.0 Hz, ArH), 7.81 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 8.06 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH), 8.25 (1H, d, J = 8.5 Hz, ArH).
【0112】
13C NMR (DMSO-d6) δ 13.9, 52.4, 52.7, 55.6, 66.2, 106.7, 115.8, 117.7, 121.0, 124.6, 126.7, 128.9, 130.3, 133.0, 156.2, 159.7, 165.6, 165.9; HRMS [ESI+]: calculated for C20H21N3O5, 406.1379 [M+Na]+, found 406.1385.
【0113】
(5)ジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(50mL)におけるジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(2.0g、7.0mmol)の溶液に、HBF4(1.55mL)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(1.6mL、13mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量1.5g(56%)、融点182~183℃。
【0114】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.64 (3H, s, CH3), 3.30-3.31 (4H, m, 2 × CH2), 3.80 (3H, s, COOCH3), 3.87 (3H, s, COOCH3), 3.87-3.88 (4H, m, 2 × CH2), 7.64 (1H, t, J = 8.0 Hz, ArH), 7.81 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 8.06 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH), 8.25 (1H, d, J = 8.5 Hz, ArH).
【0115】
13C NMR (DMSO-d6) δ 13.9, 52.4, 52.7, 55.6, 66.2, 106.7, 115.8, 117.7, 121.0, 124.6, 126.7, 128.9, 130.3, 133.0, 156.2, 159.7, 165.6, 165.9; HRMS [ESI+]: calculated for C20H21N3O5, 406.1379 [M+Na]+, found 406.1385.
【0116】
(6)(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2571)
DCM(50mL)におけるジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(1.5g、3.9mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(20mL)におけるLAH(0.37g、9.7mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2571)を与えた。収量1.0g(80%)、融点184~186℃。
【0117】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.46 (3H, s, CH3), 3.23 (4H, s, 2 × CH2), 3.87 (4H, s, 2 × CH2), 4.58 (3H, s, 1 × OCH2 and 1 × OH), 4.78-4.83 (3H, m, 1 × OCH2 and 1 × OH), 7.45 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 7.73 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 7.97 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH), 8.29 (1H, d, J = 7.5 Hz, ArH).
【0118】
13C NMR (DMSO-d6) δ 9.3, 51.9, 53.8, 54.4, 66.5, 114.4, 115.7, 118.3, 121.6, 123.2, 123.6, 125.3, 126.0, 130.2, 132.3, 154.1. HRMS [ESI+]: calculated for C18H21N3O3, 310.1556 [M+H-H2O]+, found 310.1569.
【0119】
(7)(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2573)
乾燥DMFにおける(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(0.15g、0.5mmol)、TEA(0.25mL、2.0mmol)及びエチルイソシアネート(0.15mL、2.0mmol)の混合物をアルゴン下の室温で24~48時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を真空中で乾燥するまで蒸発させた。残留物をエーテルで練和し、所望の生成物を濾過によって収集して(3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2573)を与えた。収量0.16g(75%)、融点171~173℃。
【0120】
1H NMR (DMSO-d6) δ 0.97 (6H, t, J = 6.5 Hz, 2 × CH3), 2.46 (3H, s, CH3), 2.97-2.98 (4H, m, 2 × CH2), 3.22 (4H, s, 2 × CH2), 3.85 (4H, s, 2 × CH2), 5.17 (2H, s, OCH2), 5.38 (2H, s, OCH2), 7.01 (2H, brs, 2 × NH), 7.49 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 7.76 (1H, t, J = 7.0 Hz, ArH), 7.99 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH), 8.10 (1H, d, J = 7.0 Hz, ArH).
【0121】
13C NMR (DMSO-d6) δ 9.35, 15.5, 35.4, 51.9, 56.5, 57.3, 66.4, 109.5, 116.1, 117.6, 119.2, 122.9, 125.2, 126.2, 129.6, 132.7, 154.6, 156.5, 156.6. HRMS [ESI+]: calculated for C24H31N5O5, 294.1606 [M+H-2(OCONHC2H5)]+, found 294.1602.
【0122】
1.2 (3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2686)及び(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2716)
(1)1-(ピロリジン-1-イル)フタラジン
ピロリジン(20.0mL、240.0mmol)を、TEA(30.0mL、200.0mmol)を含有するエタノール(200mL)において1-クロロフタラジン(10.0g、60.0mmol)の溶液に徐々に添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応の完了後、溶媒を蒸発させ、残留物を水で希釈してからDCM(2×200mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で蒸発させて所望の生成物1-(ピロリジン-1-イル)フタラジンを与えた。収量10.0g(83%)、融点90~91℃。
【0123】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1H NMR (DMSO-d6) δ 1.95-1.98 (4H, m, 2 × CH2), 3.82 (4H, t, J = 6.5 Hz, 2 × CH2), 7.80-7.88 (2H, m, ArH), 7.94-7.95 (1H, m, ArH), 8.28 (1H, d, J = 8.5 Hz, ArH), 8.97 (1H, s, ArH).
【0124】
13C NMR (DMSO-d6) δ 25.8, 51.1, 119.2, 125.2, 126.5, 128.7, 130.9, 131.6, 144.1, 155.7. HRMS [ESI+]: calculated for C12H13N3, 200.1188 [M+H]+, found 200.1209.
【0125】
(2)2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(30mL)における1-(ピロリジン-1-イル)フタラジン(5.0g、25.0mmol)の溶液に、Me3SiCN(6.3mL、50.0mmol)を滴下して添加した。そして、アセチルクロライド(2.7mL、37.5mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリルを与えた。収量5.7g(85%)、融点123~125℃。
【0126】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.83 (2H, t, J = 6.8 Hz, CH2) 2.00 (2H, s, CH2), 2.21 (3H, s, CH3), 3.28-3.34 (2H, m, CH2), 3.70-3.75 (2H, m, CH2), 7.06 (1H, s, CH), 7.59-7.66 ( 2H, m, ArH), 7.81 (2H, d, J = 7.4 Hz, ArH).
【0127】
13C NMR (DMSO-d6) δ 20.8, 25.3,49.8, 116.9, 122.7, 126.7, 127.3, 129.7, 130.4, 132.3, 153.5, 170.8. HRMS [ESI+]: calculated for C15H16N4O, 269.1402 [M+H]+, found 269.1416.
【0128】
(3)ジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(50mL)における2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル(5.0g、18.6mmol)の溶液に、HBF4(3.6mL)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(4.5mL、37.0mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量2.5g(48%)、融点176~178℃。
【0129】
1H NMR (DMSO-d6) 1.92 (4H, s, 2 × CH2), 2.57 (3H, s, CH3), 3.65 (4H, s, 2 × CH2), 3.78 (3H, s, COOCH3), 3.86 (3H, s, COOCH3), 7.55 (1H, t, J = 7.7 Hz, ArH), 7.73 (1H, t, J = 7.7 Hz, ArH), 8.14 (1H, d, J = 8.2 Hz, ArH), 8.20 (1H d, J = 8.1 Hz, ArH).
【0130】
13C NMR (DMSO-d6) δ 10.5, 25.7, 51.3, 51.9, 52.7, 106.7, 111.7, 117.8, 120.1, 123.0, 127.4, 127.7, 128.1, 129.4, 132.4, 153.7, 165.0, 167.3. HRMS [ESI+]: calculated for C20H21N3O4, 368.1610 [M+H]+, found 368.1581.
【0131】
(4)(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2686)
DCM(50mL)におけるジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(2.2g、6.23mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(50mL)におけるLAH(0.6g、15.5mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2686)を与えた。収量1.6g(83%)、融点160~162℃。
【0132】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.94 (4H t, J = 6.5 Hz, 2 × CH2), 2.42 (3H, s, CH3), 3.58 (4H , t, J = 6.4 Hz, 2 × CH2), 4.51-4.56 (3H, m, 1 × OH and 1 × OCH2), 4.72 (1H, t, J = 5.2 Hz, OH), 4.80 (2H, d, J = 5.1 Hz, OCH2), 7.38-7.41 (1H, m, ArH), 7.68-7.71 (1H, m, ArH), 8.05 (1H, d, J = 8.1 Hz, ArH), 8.26 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH).
【0133】
13C NMR (DMSO-d6) δ 9.3, 25.3, 51.3, 53.8, 54.5, 113.8, 116.6, 117.9, 120.8, 122.4, 123.3, 124.7, 126.7, 130.3, 131.8, 152.5. HRMS [ESI+]: calculated for C18H21N3O2 294.1606 [M+H-H2O]+, found 294.1627.
【0134】
(5)(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2716)
乾燥DMFにおける(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(0.15g、0.5mmol)、(0.16g、0.5mmol)、エチルイソシアネート(0.2mL、2.0mmol)及びTEA(3.0mL、2.0mmol)の混合物をアルゴン下の室温で24~48時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を真空中で乾燥するまで蒸発させた。残留物をエーテルで練和し、所望の生成物を濾過によって収集して(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2716)を与えた。収量0.13g(70%)、融点140~142℃。
【0135】
1H NMR (DMSO-d6) δ 0.96-0.99 (6H, m, 2 × CH3), 1.93 (4H, t, J = 6.5 Hz, 2 × CH2), 2.43 (3H, s, CH3), 2.96-3.00 (4H, m, 2 × CH2), 3.60 (4H, s, 2 × CH2), 5.15 (2H, s, OCH2), 5.36 (2H, s, OCH2), 6.98-7.03 (2H, m, 2 × NH), 7.46 (1H, t, J = 7.3 Hz, ArH), 7.72 (1H, t, J = 7.3 Hz, ArH), 8.06 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH), 8.10 (1H, d, J = 8.2 Hz, ArH).
【0136】
13C NMR (DMSO-d6) δ 9.3, 15.5, 25.4, 35.5, 51.3, 56.6, 57.5, 108.8, 116.8, 117.0, 118.8, 122.6, 125.6, 127.1, 129.7, 132.2, 152.9, 156.6, 156.7. HRMS [ESI+]: calculated for C24H31N5O4, 278.1657 [M+H-2(OCONHC2H5)]+, found 278.1660.
【0137】
1.3 (6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2590)
(1)1-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)フタラジン
1,4´-ビピペリジン(20.0g、120.0mmol)を、TEA(34mL、240.0mmol)を含有するエタノール(200mL)において1-クロロフタラジン(10.0g、60.0mmol)の溶液に徐々に添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応の完了後、溶媒を蒸発させ、残留物を水で希釈してからDCM(2×200mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で蒸発させて所望の生成物1-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)フタラジンを与えた。収量10.2g(57%)、融点140~142℃。
【0138】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.37-1.42 (2H, m, CH2), 1.48-1.53 (4H, m, CH2), 1.75-1.81 (2H, m, CH2), 1.88-1.91 (2H, m, CH2), 2.43 (1H, s, CH), 2.57 (4H, s, 2 × CH2), 2.94-3.00 (2H, m, CH2), 3.87-3.90 (2H, m, CH2), 7.92-7.94 (2H, m, ArH), 8.04-8.06 (2H, m, ArH), 9.25 (1H, s, ArH). HRMS [ESI+]: calculated for C18H24N4,297.2079 [M+H]+, found 297.2092.
【0139】
(2)4-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-2-アセチル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(30mL)における1-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)フタラジン(2.0g、6.7mmol)の溶液に、Me3SiCN(1.69mL、13.5mmol)を滴下して添加した。そして、アセチルクロライド(0.88mL、10.0mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して4-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-2-アセチル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリルを与えた。収量1.45g(60%)、融点160~162℃。
【0140】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.42-1.45 (1H, m, CH2), 1.70-1.82 (6H, m, 3 × CH2), 2.10-2.26 (6H, m, 3 × CH2), 2.65 (3H, s, CH3), 2.66-2.73 (1H, m, CH), 2.95-3.00 (3H, m, CH2), 3.76 (1H, d, J = 7.0 Hz, CH2), 3.88 (1H, d, J = 4.5 Hz, CH2), 7.00 (1H, s, CH), 7.61-7.69 (3H, m, ArH ), 7.82 (1H, d, J = 7.2 Hz, ArH). HRMS [ESI+]: calculated for C21H27N5O, 366.2294 [M+H]+, found 366.2308.
【0141】
(3)ジメチル-6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(50mL)における4-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-2-アセチル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル(1.3g、3.5mmol)の溶液に、HBF4(0.7mL)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(0.8mL、6.5mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量1.0g(70%)、融点189~191℃。
【0142】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.43-1.46 (3H, m, CH2), 1.68-1.72 (2H, m, CH2), 1.88 (2H, s, CH2), 2.02-2.04 (2H, m, CH2), 2.14-2.16 (2H, m, CH2), 2.65 (3H, s, CH3), 3.01 (4H, m, 2 × CH2), 3.17 (1H, s, CH), 3. 49-3.51 (3H, m, CH2), 3.81 (3H, s, COOCH3), 3.86-3.88 (2H, m, CH2), 3.89 (3H, s, COOCH3), 7.66 (1H, t, J = 8.0 Hz, ArH), 7.83 (1H, t, J = 7.2 Hz, ArH ), 8.00 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH), 8.27 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH).
【0143】
13C NMR (DMSO-d6) δ 12.6, 24.5, 26.2, 28.1, 50.4, 51.5, 58.2, 58.9, 67.5, 70.4, 111.6, 118.1, 123.4, 127.6, 128.5, 129.8, 132.8, 133.5, 147.4, 165.9, 175.7. HRMS [ESI+]: calculated for C26H32N4O4, 465.2502 [M+H]+, found 465.2501.
【0144】
(4)(6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2590)
DCM(50mL)におけるジメチル-6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(0.65g、1.31mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(50mL)におけるLAH(0.10g、4.5mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(6-([1,4´-ビピペリジン]-1´-イル)-3-メチルピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノールを与えた。収量0.42g(78%)、融点183~185℃。
【0145】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.41 (2H, s, CH2), 1.52 (4H, s, 2 × CH2), 1.76-1.88 (4H, m, 2 × CH2), 2.43 (3H, s, CH3), 2.50-2.53 (4H, m, 2 × CH2), 2.83 (2H, t, J = 12.0 Hz, CH2), 3.33 (1H, m, CH), 3.63 (2H, d, J = 15.0 Hz, CH2), 4.55 (3H, s, 1 × OH and 1 × OCH2), 4.74 (1H, s, OH), 4.80 (2H, s, OCH2), 7.43 (1H, t, J = 7.2 Hz, ArH), 7.71 (1H, t, J = 7.2 Hz, ArH ), 7.89 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH), 8.26 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH).
【0146】
13C NMR (DMSO-d6) δ 13.5, 16.5, 24.4, 25.9, 27.2, 49.6, 50.8, 53.0, 53.8, 61.7, 66.8, 113.6, 115.6, 117.5, 120.2, 123.0, 124.7, 125.4, 128.1, 129.6, 131.5, 153.8. HRMS [ESI+]: calculated for C24H32N4O2, 409.2604 [M+H]+, found 409.2638.
【0147】
1.4 (3-エチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)-ジメタノール(BO-2577)
(1)4-(フタラジン-1-イル)モルホリン
トリエチルアミン(6.96mL、50.0mmol)を含有するエタノール(120mL)における溶液11(3.64g、20.0mmol)に、モルホリン(1.89mL、22.0mmol)を滴下して添加した。反応混合物を18時間還流で加熱し、溶媒を減圧下で乾燥するまで除去した。反応物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物を水で希釈して、DCMで2回抽出した。分離された有機層を硫酸ナトリウムを介して乾燥させ、真空下で蒸発させて4-(フタラジン-1-イル)モルホリンを与えた。褐色の固体、収量3.8g(80%)、融点125~127℃(lit.43融点82℃)。
【0148】
1H NMR (DMSO-d6) δ 3.40 (4H, t, J = 4.8 Hz, 2 × CH2), 3.88 (4H, t, J = 4.4 Hz, 2 × CH2), 7.94-7.97 (2H, m, ArH), 8.09-8.14 (2H, m, ArH), 9.31 (1H, s, ArH).
【0149】
13C NMR (DMSO-d6) δ 51.4, 51.7, 66.5, 120.7, 124.4, 124.5, 127.5, 128.5, 132.4, 132.5, 148.4, 159.7. HRMS [ESI+]: calculated for C12H13N3O, 216.1137 [M+H]+, found 216.1094.
【0150】
(2)4-モルホリノ-2-プロピオニル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(30mL)における4-(フタラジン-1-イル)モルホリン(2.0g、9.3mmol)の溶液に、Me3SiCN(2.32mL、18.6mmol)を滴下して添加した。そして、プロピオニルクロライド(1.2mL、14.0mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して4-モルホリノ-2-プロピオニル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリルを与えた。収量2.46g(89%)、融点146~148℃。
【0151】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.05 (3H, t, J = 5.6 Hz, CH3), 2.53-2.58 (1H, m, CH2), 2.71-2.75 (1H, m, CH2), 3.03 (2H, s, CH2), 3.35 (2H, s, CH2), 3.70 (2H, s, CH2), 3.87 (2H, s, CH2), 7.04 (1H, s, CH), 7.64 (3H, s, CH), 7.80 (1H, s, ArH).
【0152】
13C NMR (DMSO-d6) δ 49.8, 51.8, 65.7, 116.4, 121.5, 124.0, 123.7, 129.2, 130.3, 132.8,155.5, 169.6. HRMS [ESI+]: calculated for C16H18N4O2, 299.1508 [M+H]+, found 299.1519.
【0153】
(3)ジメチル-3-エチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(50mL)における4-モルホリノ-2-プロピオニル-1,2-ジヒドロフタラジン-1-カルボニトリル(2.0g、7.0mmol)の溶液に、HBF4(1.30mL)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(1.5mL、12.0mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-3-メチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量1.6g(60%)、融点182~183℃。
【0154】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.21 (3H, s, CH3), 3.15 (2H, d, J = 6.0 Hz, CH2), 3.30 (4H, s, 2 × CH2), 3.80 (3H, s, COOCH3), 3.89 (7H, s, 2 × CH2 and 1 × COOCH3), 7.63 (1H, s, ArH), 7.80 (1H, s, ArH), 8.06 (1H, d, J = 7.0 Hz, ArH), 8.26 (1H, d, J = 7.0 Hz, ArH ).
【0155】
13C NMR (DMSO-d6) δ 13.9, 23.0, 52.4, 52.7, 55.6, 66.2, 106.7, 115.8, 117.7, 121.0, 124.6, 126.7, 128.9, 130.3, 133.0, 156.2, 159.7, 165.6, 165.9. HRMS [ESI+]: calculated for C21H23N3O5, 420.1535 [M+Na]+, found 420.1552.
【0156】
(4)(3-エチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2577)
DCM(50mL)におけるジメチル-3-エチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(1.4g、3.5mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(20mL)におけるLAH(0.43g、10.5mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(3-エチル-6-モルホリノピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2577)を与えた。収量1.2g(90%)、融点180~182℃。
【0157】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.21 (3H, t, J = 7.5 Hz, CH3), 2.93-2.98 (2H, m, CH2), 3.21 (4H, t, J = 4.5 Hz, 2 × CH2), 3.86 (4H, t, J = 4.5 Hz, 2 × CH2), 4.57 (3H, s, 1 × OCH2 and 1 × OH), 4.76 (1H, t, J = 5.5 Hz, OH), 4.82 (2H, d, J = 5.0 Hz, OCH2), 7.43 (1H, t, J = 8.5 Hz, ArH), 7.72 (1H, t, J = 8.0 Hz, ArH), 7.95 (1H, d, J = 7.5 Hz, ArH), 8.29 (1H, d, J = 8.0 Hz, ArH).
【0158】
13C NMR (DMSO-d6) δ 13.5, 16.5, 51.3, 53.1, 53.8, 65.8, 113.7, 115.2, 117.5, 120.4, 123.0, 124.7, 125.4, 128.3, 129.7, 131.7, 153.4. HRMS [ESI+]: calculated for C19H23N3O3, 364.1637 [M+Na]+, found 364.1638.
【実施例2】
【0159】
実施例2 ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン誘導体(式(I-B))の化学合成(手法2)
式(I-B)の化合物を、手法2に示すように合成した。商業的に入手可能な2,3-ナフタレン-ジカルボン酸無水物26を酢酸においてヒドラジン水和物で処理して化合物27を得て、それをオキシ塩化リンと反応させて化合物28を得た。アセトニトリルにおける各種ω-N,N-ジアルキルアルキルアミン、環状アミン、アニリン、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-メチル-4,4´-ビピペリジン、又は1-エチル-4,4´-ビピペリジン及び炭酸カリウムとの28の処理によって化合物29を得て、それをH2雰囲気下でメタノールにおいて10%Pd/Cと反応させて30を与えた。化合物30を、さらにジクロロメタンにおいてトリメチル-シリルシアニド及びアルキル又はアリールクロライドと反応させて化合物31を得た。同様に、化合物31を、前述したように、テトラフルオロホウ酸/アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)によって処理することによってジエステル誘導体32に変換した。32のジエステルを、氷槽内でエーテル/CH2Cl2の混合物においてLiAlH4と反応させることによって対応のビス(ヒドロキシメチル)誘導体33(式(I-B))に還元した。そして、ビス(ヒドロキシメチル)誘導体33を各種イソシアネートによって処理して化合物34(R1は-CH2OCONHRであり、Rはアルキル又はアリールである)を与え、若しくはピリジンにおいて酸無水物で処理して化合物34(R1は-CH2OCORである)を与え、又はトルエン若しくはメタンスルホニルクロライド/Et3Nと反応させて化合物34(R1は-CH2OSO2Rであり、RはMe又は4-MePhである)を与えることによって、それらの対応のビス(アルキルカルバメート)同族体及び他の良好な脱離基に変換した。
【0160】
【0161】
これにより得られる式(I-B)の例示の化合物は、以下を含んでいた。
【化14】
【表4】
【0162】
2.1 (6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2768)及び(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)-ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2772)
(1)2,3-ジヒドロベンゾ[g]フタラジノン-1,4-ジオン
ヒドラジン水和物(80%溶液、63mL)を、氷酢酸(600mL)におけるナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物(39.7g、200.0mmol)の撹拌した懸濁液に添加した。混合物を、撹拌しつつ6時間還流で加熱した。冷却後、固体生成物を濾過によって収集し、水で洗浄し、乾燥して2,3-ジヒドロベンゾ[g]フタラジノン-1,4-ジオンを与えた。収量40.2g(94%)、融点344~346(lit.40融点344℃)。
【0163】
1H NMR (DMSO-d6): δ 7.75-7.78 (2H, m, ArH), 8.29-8.31 (2H, m, ArH), 8.76 (2H, s, ArH), 11.52 (2H, s, 2 × NH).
【0164】
13C NMR (DMSO-d6): δ 123.8, 126.2, 128.5, 129.1, 134.1. HRMS [ESI+]: calcd for C12H8N2O2, 213.0664 [M+H]+, found 213.0681.
【0165】
(2)1,4-ジクロロベンゾ[g]フタラジン
ピリジン(24.0mL)を含有するオキシ塩化リン(400mL)における2,3-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1,4-ジオン(40.0g、188.0mmol)の懸濁液を100℃で5時間加熱した。反応混合物を40℃まで冷却させてから、減圧下で乾燥するまで濃縮した。固体残留物をエーテルで練和し、濾過し、エーテルで洗浄した。固体生成物を練和して氷水とともに30分間撹拌し、固体生成物を濾過によって収集し、水で洗浄し、乾燥して1,4-ジクロロベンゾ[g]フタラジンを与えた。収量40.8g(85%)、融点217~219℃(lit.40融点217~220℃)。
【0166】
1H NMR (DMSO-d6): δ 7.91-7.93 (2H, m, ArH), 8.50-8.52 (2H, m, ArH), 9.09 (2H, s, ArH).
【0167】
13C NMR (DMSO-d6) δ 124.3, 124.6, 126.2, 126.9, 128.0, 130.1, 137.4, 155.5. HRMS [ESI+]: calcd for C12H6Cl2N2, 248.9986 [M+H]+, found 249.0000.
【0168】
(3)4-クロロ-N,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミン
ジメチルアミン(30mL、60.0mmol)を、室温で無水アセトニトリル(400mL)において1,4-ジクロロベンゾ[g]フタラジン(10g、40.0mmol)及び無水炭酸カリウム(55g、400.0mmol)の撹拌した懸濁液に徐々に加えた。反応混合物を室温で72時間撹拌させてから濾過して炭酸カリウムを除去した。濾液を減圧下で蒸発させ、固体残留物をエーテルから再結晶化して4-クロロ-N,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミンを与えた。収量9.3g(90%)、融点90~92℃。
【0169】
1H NMR (DMSO-d6) δ 3.25 (6H, s, 2 × NCH3), 7.79-7.83 (2H, m, ArH), 8.37-8.40 (2H, m, ArH), 8.84 (1H, s, ArH), 8.93 (1H, s, ArH).
【0170】
13C NMR (DMSO-d6) δ 42.5, 118.9, 123.2, 125.0, 126.6, 128.6, 128.9, 129.0, 129.3, 133.9, 134.0, 147.8, 159.8. HRMS [ESI+]: calcd for C14H12ClN3, 258.0798 [M+H]+, found 258.0791.
【0171】
(4)N,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミン
MeOH(200mL)における4-クロロ-N,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミン(5.15g、20.0mmol)の溶液に10%Pd/C(1.03g)を添加した。反応混合物を室温で4時間にわたって35psiで水素化してから、セライトのパッドを介して濾過した。濾過ケークをMeOHで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を減圧下で濃縮し、残留物をDCM(200mL)に溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで真空で蒸発させた。生成物を、クロマトグラフィー(SiO2、ヘキサンにおける勾配溶出0~40%の酢酸エチル)によって精製してN,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミンを与えた。収量2.8g(64%)、融点115~117℃。
【0172】
1H NMR (DMSO-d6) δ 3.23 (6H, s, 2 × NCH3), 7.72-7.76 (2H, m, ArH), 8.24 (1H, dd, J = 6.8 and 2.2 Hz, ArH), 8.35 (1H, dd, J = 6.8 and 2.2 Hz, ArH), 8.69 (1H, s, ArH), 8.85 (1H, s, ArH), 9.26 (1H, s, ArH).
【0173】
13C NMR (DMSO-d6) δ 42.4, 117.4, 125.1, 125.2, 126.3, 127.7, 128.2, 128.4, 129.4, 133.7, 133.8, 146.8, 159.0. HRMS [ESI+]: calcd for C14H13N3, 224.1188 [M+H]+, found 224.1198.
【0174】
(5)2-アセチル-4-(ジメチルアミノ)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(30mL)におけるN,N-ジメチルベンゾ[g]フタラジン-1-アミン(2.22g、10.0mmol)の溶液に、Me3SiCN(2.5mL、20.0mmol)を滴下して添加した。そして、アセチルクロライド(1.1mL、15.0mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して2-アセチル-4-(ジメチルアミノ)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリルを与えた。収量2.7g(92%)、融点125~127℃。
【0175】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.29 (3H, s, COCH3), 2.99 (6H, s, 2 × NCH3), 7.23 (1H, s, CH), 7.67-7.73 (2H, m, ArH), 8.01 (1H, d, J = 7.7 Hz, ArH), 8.20 (1H, d, J = 7.6 Hz, ArH), 8.34 (1H, s, ArH), 8.35 (1H, s, ArH).
【0176】
13C NMR (DMSO-d6) δ 20.6, 40.9, 116.4, 118.2, 125.8, 126.3, 127.3, 127.7, 127.8, 128.8, 129.4, 132.8, 133.7, 155.7, 170.9. HRMS [ESI+]: calcd for C17H16N4O, 293.1402 [M+H]+, found 293.1407.
【0177】
(6)ジメチル-6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(80mL)における2-アセチル-4-(ジメチルアミノ)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリル(2.95g、10.0mmol)の溶液に、HBF4(2.2mL、12.0mmol)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(3.1mL、25.0mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量1.7g(43%)、融点180~182℃。
【0178】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.66 (3H, s, CH3), 3.08 (6H, s, 2 × NCH3), 3.81 (3H, s, COOCH3), 3.97 (3H, s, COOCH3), 7.64 (1H, t, J = 7.8 Hz, ArH), 7.71 (1H, t, J = 7.2 Hz, ArH), 8.06 (1H, d, J = 8.2 Hz, ArH), 8.24 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.65 (1H, s, ArH), 8.73 (1H, s, ArH).
【0179】
13C NMR (DMSO-d6) δ 10.2, 42.6, 51.6, 52.5, 107.9, 111.2, 115.6, 119.9, 121.0, 123.9, 127.0, 127.9, 128.0, 129.0, 129.4, 130.9, 131.3, 134.0, 156.8, 164.4, 166.9. HRMS [ESI+]: calcd for C22H21N3O4, 392.1610 [M+H]+, found 392.1590.
【0180】
(8)(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2768)
DCM(50mL)におけるジメチル-6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(1.6g、4.0mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(100mL)におけるLAH(0.39g、10.0mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2768)を与えた。収量1.1g(80%)、融点156~158℃。
【0181】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.46 (3H, s, CH3), 2.99 (6H, s, 2 × NCH3), 4.56 (2H, d, J = 5.1 Hz, OCH2), 4.62 (1H, t, J = 5.4 Hz, OH), 4.90-4.91 (3H, m, OCH2 and OH), 7.52 (1H, t, J = 7.5 Hz, ArH), 7.63 (1H, t, J = 7.3 Hz, ArH), 8.00 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.14 (1H, d, J = 8.2 Hz, ArH), 8.58 (1H, s, ArH), 8.66 (1H, s, ArH).
【0182】
13C NMR (DMSO-d6) δ 8.9, 42.8, 53.4, 54.2, 115.6, 115.7, 117.5, 120.4, 120.4, 123.6, 125.5, 126.3, 126.6, 127.5, 128.1, 129.3, 130.1, 134.6, 154.7. HRMS [ESI+]: calcd for C20H21N3O2,318.1606 [M+H-H2O]+, found 318.1620.
【0183】
(8)(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)-ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2772)
乾燥DMFにおける(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(0.2g、0.6mmol)、(0.16g、0.5mmol)、エチルイソシアネート(0.2mL、2.4mmol)及びTEA(0.55mL、4.0mmol)の混合物をアルゴン下の室温で24~48時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を真空中で乾燥するまで蒸発させた。残留物をエーテルで練和し、所望の生成物を濾過によって収集して(6-(ジメチルアミノ)-3-メチルベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)-ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2772)を与えた。収量0.15g(53%)、融点132~134℃。
【0184】
1H NMR (DMSO-d6) δ 0.98-1.01 (6H, m, 2 × CH3), 2.48 (3H, s, CH3), 2.98-3.04 (10H, m, 2 × CH2 and 2 × NCH3), 5.18 (2H, s, OCH2), 5.49 (2H, s, OCH2), 7.06 (1H, t, J = 5.2 Hz, NH), 7.10 (1H, t, J = 5.5 Hz, NH), 7.56 (1H, t, J = 7.9 Hz, ArH), 7.66 (1H, t, J = 7.4 Hz, ArH), 7.97 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.17 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.51 (1H, s, ArH), 8.64 (1H, s, ArH).
【0185】
13C NMR (DMSO-d6). δ 8.9, 15.1, 15.2, 35.0, 35.1, 42.8, 56.2, 57.0, 110.6, 115.5, 116.2, 118.5, 120.3, 125.5, 125.6, 126.0, 127.0, 127.6, 128.4, 129.3, 130.3, 134.5, 155.3, 156.1, 156.3. HRMS [ESI+]: calcd for C26H31N5O4, 302.1657 [M+H-2(OCONHC2H5)]+, found 302.1667.
【0186】
2.2 (3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2762)及び(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2763)
(1)1-クロロ-4-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジン
ピロリジン(3.5mL、42.0mmol)を、無水アセトニトリル(400mL)において1,4-ジクロロベンゾ[g]フタラジン(7.0g、28.0mmol)及び無水炭酸カリウム(55g、400.0mmol)の撹拌した懸濁液に徐々に加えた。反応混合物を室温で72時間撹拌させてから濾過して炭酸カリウムを除去した。濾液を減圧下で蒸発させ、固体残留物をエーテルから再結晶化して1-クロロ-4-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジンを与えた。収量6.8g(85%)、融点112~114℃。
【0187】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.02 (4H, brs, 2 × CH2), 3.96 (4H, brs, 2 × CH2), 7.76-7.79 (2H, m, ArH), 8.33-8.38 (2H, m, ArH), 8.75 (1H, s, ArH), 9.06 (1H, s, ArH).
【0188】
13C NMR (DMSO-d6) δ 25.4, 51.1, 118.7, 123.1, 124.0, 126.8, 128.1, 128.6, 128.9, 129.5, 133.7, 144.6, 155.5. HRMS [ESI+]: calcd for C16H14ClN3, 284.0955 [M+H]+, found 284.0948.
【0189】
(2)1-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジン
MeOH(200mL)における1-クロロ-4-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジン(5.1g、18.0mmol)の溶液に10%Pd/C(1.03g)を添加した。反応混合物を室温で4時間にわたって35psiで水素化してから、セライトのパッドを介して濾過した。濾過ケークをMeOHで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を減圧下で濃縮し、残留物をDCM(200mL)で溶解し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで真空で蒸発させた。生成物を、クロマトグラフィー(SiO2、ヘキサンにおける勾配溶出0~40%の酢酸エチル)によって精製して1-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジンを与えた。収量3.3g(73%)、融点150~152℃。
【0190】
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.00-2.03 (4H, m, 2 × CH2), 3.94-3.97 (4H, m, 2 × CH2), 7.66-7.73 (2H, m, ArH), 8.18 (1H, d, J = 8.2 Hz, ArH), 8.31 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.55 (1H, s, ArH), 8.97 (1H, s, ArH), 9.04 (1H, s, ArH).
【0191】
13C NMR (DMSO-d6) δ 25.5, 50.8, 117.2, 125.3, 125.4, 127.2, 128.0, 128.1, 129.6, 133.5, 144.1, 154.8. HRMS [ESI+]: calcd for C16H15N3, 250.1344 [M+H]+, found 250.1362.
【0192】
(3)2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリル
触媒量のAlCl3を含有するDCM(50mL)における1-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]フタラジン(3.25g、13.0mmol)の溶液に、Me3SiCN(3.26mL、26.0mmol)を滴下して添加した。そして、アセチルクロライド(1.4mL、19.6mmol)を上記混合物に滴下して添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、有機層を水、5%NaOH溶液、そして水で上手く洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムを介して乾燥し、真空中で濃縮して2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリル(33b)(BO-2760)を与えた。収量3.2g(77%)、融点162~164℃。
【0193】
1H NMR (CDCl3) δ 1.92-2.00 (2H, m, CH2), 2.08-2.10 (2H, m, CH2), 2.31 (3H, s, COCH3), 3.44-3.47 (2H, m, CH2), 3.83-3.89 (2H, m, CH2), 6.90 (1H, s, CH), 7.58-7.64 (2H, m, ArH), 7.85 (1H, s, ArH), 7.90 (1H, d, J = 7.9 Hz, ArH), 7.93 (1H, d, J = 7.9 Hz, ArH), 8.17 (1H, s, ArH).
【0194】
13C NMR (CDCl3) δ 20.7, 15.4, 41.5, 50.1, 115.8, 120.1, 125.7, 126.3, 127.0, 127.7, 127.9, 128.5, 129.0, 133.1, 133.8, 154.1. 171.1. HRMS [ESI+]: calcd for C19H18N4O, 319.1559 [M+H]+, found 319.1557.
【0195】
(4)ジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート
温酢酸(90mL)における2-アセチル-4-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロベンゾ[g]フタラジン-1-カルボニトリル(3.2g、10.0mmol)の溶液に、HBF4(2.2mL、12.0mmol)を滴下して添加した。混合物を50~60℃で30分間撹拌させた。室温に冷却後、濾過によって黄色固体の塩を収集し、濾過ケークを乾燥エーテルで洗浄した。固体塩をDMF(20mL)に溶解し、DMAD(3.1mL、25.0mmol)をこの溶液に徐々に添加した。反応混合物を90~100℃で16時間加熱した。溶媒を真空中で蒸発によって除去した。残留物をMeOHから結晶化してジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレートを与えた。収量2.0g(48%)、融点190~192℃。
【0196】
1H NMR (CDCl3) δ 2.02-2.05 (4H, m, 2 × CH2), 2.68 (3H, s, CH3), 3.76-3.78 (4H, m, 2 × CH2), 3.89 (3H, s, COOCH3), 4.04 (3H, s, COOCH3), 7.49 (1H, t, J = 7.1 Hz, ArH), 7.57 (1H, t, J = 6.9 Hz, ArH), 7.90 (1H, d, J = 8.5 Hz, ArH), 7.92 (1H, d, J = 8.4 Hz, ArH), 8.52 (1H, s, ArH), 8.77 (1H, s, ArH).
【0197】
13C NMR (CDCl3) δ 10.4, 25.6, 51.4, 51.5, 52.4, 107.6, 111.2, 117.1, 120.7, 121.9, 124.8, 126.3, 127.1, 128.1, 128.1, 128.8, 131.2, 131.4, 134.3, 153.8, 165.6, 168.1. HRMS [ESI+]: calcd for C24H23N3O4, 440.1586 [M+Na]+, found 440.1569.
【0198】
(5)(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2762)
DCM(50mL)におけるジメチル-3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジカルボキシレート(1.7g、4.0mmol)の溶液を、0~5℃のジエチルエーテル(100mL)におけるLAH(0.39g、10.0mmol)の撹拌された懸濁液に滴下して添加した。2時間後の反応の完了後に、過剰なLAHを水(2mL)及びNH4OH(2mL)の添加によって分解した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、DCMで充分に洗浄した。混合された濾液及び洗浄物を乾燥するまで真空中で蒸発させた。残留物をエタノールから再結晶化して(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(BO-2762)を与えた。収量1.1g(82%)、融点160~162℃。
【0199】
1H NMR (DMSO-d6) δ 1.98-1.99 (4H, m, 2 × CH2), 2.43 (3H, s, CH3), 3.68-3.70 (4H, m, 2 × CH2), 4.52-4.55 (3H, m, OCH2 and OH), 4.82 (1H, t, J = 5.0 Hz, OH), 4.90 (2H, d, J = 5.1 Hz, OCH2), 7.50 (1H, t, J = 7.4 Hz, ArH), 7.61 (1H, t, J = 7.3 Hz, ArH), 7.98 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.14 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.64 (1H, s, ArH), 8.67 (1H, s, ArH).
【0200】
13C NMR (DMSO-d6) δ 8.9, 25.0, 50.9, 53.4, 54.2, 115.2, 116.4, 117.2, 119.9, 120.0, 123.0, 125.3, 126.4, 126.7, 127.3, 128.1, 129.3, 129.9, 134.3, 152.2. HRMS [ESI+]: calcd for C22H23N3O2, 344.1763 [M+H-H2O]+, found 344.1754.
【0201】
(6)(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2763)
乾燥DMFにおける(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ジメタノール(0.36g、1.0mmol)、エチルイソシアネート(0.32mL、4.0mmol)及びTEA(0.55mL、4.0mmol)の混合物をアルゴン下の室温で24~48時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を真空中で乾燥するまで蒸発させた。残留物をエーテルで練和し、所望の生成物を濾過によって収集して(3-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン-1,2-ジイル)ビス(メチレン)ビス(エチルカルバメート)(BO-2763)を与えた。収量0.28g(56%)、融点142~144℃。
【0202】
1H NMR (DMSO-d6) δ 0.95-1.02 (6H, m, 2 × CH3), 1.98 (4H, brs, 2 × CH2), 2.45 (3H, s, CH3), 2.97-3.05 (4H, m, 2 × CH2), 3.72 (4H, brs, 2 × CH2), 5.16 (2H, s, OCH2), 5.48 (2H, s, OCH2), 7.02 (1H, t, J = 5.7 Hz, NH), 7.07 (1H, t, J = 5.2 Hz, NH), 7.54 (1H, t, J = 7.7 Hz, ArH), 7.65 (1H, t, J = 7.4 Hz, ArH), 7.94 (1H, d, J = 8.1 Hz, ArH), 8.17 (1H, d, J = 8.3 Hz, ArH), 8.47 (1H, s, ArH), 8.72 (1H, s, ArH).
【0203】
13C NMR (DMSO-d6) δ 8.9, 15.1, 15.2, 25.1, 35.0, 35.1, 51.0, 56.2, 57.1, 110.0, 115.7, 116.3, 118.2, 119.8, 124.8, 125.7, 127.1, 127.3, 128.3, 129.3, 130.1, 134.2, 152.6, 156.1, 156.3. HRMS [ESI+]: calcd for C28H33N5O4, 328.1814 [M+H-2(OCONHC2H5)]+, found 328.1816.
【実施例3】
【0204】
実施例3 式(I)の化合物のリポソームカプセル化の調製
式(I)の化合物は、一般に疎水性である。高い薬剤濃度で特異的な腫瘍細胞又は臓器の標的に活性化合物を送達するために、式(I)の化合物、特に、BO-2590を変性脱水-再水和法及び下記の手順による繰返しの押出し形成よってリポソームにカプセル化してリポソーム薬剤を生成した。
【0205】
(1)リポソームカプセル化
BO-2590のリポソームカプセル化を、CHCl3において大豆ホスファチジルコリン(SPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール(CHO)及びPEG-2000(モル比50:45:4:1)を混合することによって調製した。混合物を丸底フラスコに入れてから、BO-2590を反応混合物(4mg/mL)に添加した。有機溶媒を、減圧下で回転蒸発によって除去した。結果として得られる乾燥脂質膜をリン酸緩衝生理食塩水(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4及び1.8mMのKH2PO4)において脱水し、ハンドシェーキングすることによって拡散させた。懸濁液を複数回凍結及び解凍させ、その後に60℃で高圧押出し器(Lipex Biomembranes、バンクーバー、カナダ)を用いて0.8、0.6、0.4、0.2μm孔径のポリカーボネートメンブレンフィルター(Costar、Cambridge、MA)を介して繰返し押出し形成を行った。生成物溶液を4℃で保存した。
【0206】
(2)HPLC分析
リポソームBO-2590(BO-2590L)を、移動相条件下[アセトニトリル/MeOH/H2O(0.5%TFA)(45/50/5)、(保持時間4.6分、流速0.5mL/分)]でRP-18カラムを用いて高圧液体クロマトグラフィー(Agilent Technologies)によって定量化した。リポソームBO-2590(100μl)を移動相(100μl)に添加し、ボルテックスで完全に混合し、10分間インキュベートした。結果として得られる乳状サンプルを遠心分離し、透明な上清をHPLC定量分析に取り入れた。我々の調製(n>5)では、BO-2590リポソームは、3.12~2.94mg/mLを含有していた(4mg/mLの濃度における開始材料でカプセル化76~70%)。
【0207】
(3)安定性分析
リポソームカプセル化BO-2590Lを4℃で3週間保存した。それは、HPLC分析によってカプセル化76%~66.3%から約10%の崩壊を示した。
【実施例4】
【0208】
実施例4 式(I)の化合物のインビトロ特性化
4.1 式(I)の化合物は癌細胞に対する細胞毒性を有した
式(I-A)及び(I-B)の全ての代表的化合物を、まず、ヒトリンパ性白血病細胞株(CCRF-CEM)及びそのビンブラスチン耐性細胞サブライン(CCRF-CEM/VBL)に対するそれらのインビトロ細胞毒性について評価した(表1参照)。高い細胞毒性を有する選択化合物を、固形腫瘍細胞株のパネル、すなわち、結腸癌HCT-116、非小細胞肺癌H460、小細胞肺癌H526及び膵臓癌PacaS1に対してさらに評価した(表2)。
【0209】
簡単に説明すると、試験細胞を、ペニシリン(100単位/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL、GIBCO/BRL)及び5%の加熱不活性化FBSを含有するRPMI培地1640(GIBCO/BRL)、において、37℃で5%のCO2加湿雰囲気において3×103個/ミリリットルの初期細胞密度で培養した。新たに合成された化合物の種々の濃度における72時間のインキュベーションの後に、全ての細胞株に対するそれらの細胞毒性効果を、マイクロプレート分光光度計を用いてPrestoBlue(登録商標)(Invitrogen)アッセイによって測定した。簡単に説明すると、処置の終了時にPrestoBlue(登録商標)溶液のアリコートを添加した後に、細胞を37℃で1~2時間インキュベートした。570nm及び600nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで計測した。各化合物の6又は7種数の濃度における用量-効果の関係を、Chou及びMartin(Pharmacol Rev2006、58:621-681)によって開発された半数影響原理(CompuSynソフトウェア、バージョン1.0.1、CompuSyn、Inc.,Paramus、NJ)の補助によってIC50値を計算するのに用いた。IC50は、腫瘍細胞の成長を50%阻害するのに必要な濃度で定義される。データは、各化合物について3~6回の独立した実験の平均±標準偏差(STDEV)を表す。
【0210】
表1は、ヒトリンパ性白血病CCRF-CEM及びそのビンブラスチン耐性細胞サブライン(CCRF-CEM/VBL)に対する1,2-ビス(ヒドロキシメチル)ピロロ[2,1-a]フタラジン誘導体(式I-A)及びベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン誘導体(式I-B)のインビトロ細胞毒性をまとめた。データは、これらの化合物はCCRF-CEMに対して大きな細胞毒性を示し、ビンブラスチンに対して交差耐性を示さなかったことを明らかにした。選択化合物を、各種固形腫瘍(すなわち、結腸癌HCT-116、非小細胞肺癌H460、小細胞肺癌H526、膵臓癌PacaS1)に対するそれらの細胞毒性について評価した。注目すべきことに、試験化合物は、全ての固形腫瘍細胞株の細胞成長を概ね活性的に阻害した(表2)。これらの中で、小細胞肺癌H526細胞は、試験化合物に対して最も影響されやすかった。
【0211】
また、ヒト小細胞肺癌細胞(SCLC)における式(I-B)の化合物の細胞毒性と既知の抗増殖剤のもの(例えば、イリノテカン、エトポシド、シスプラチン及びカルボプラチン)とを比較し、結果を表3にまとめた。表3のデータが示すように、本開示の式(I-B)の化合物は、一般に、イリノテカン、エトポシド、シスプラチン及びカルボプラチンのものよりも効力があった。
【0212】
表1.ヒトリンパ性白血病(CCRF)及びそのビンブラスチン耐性細胞サブラインCCRF-CEM/VBLに対する式(I-A)及び(I-B)の化合物の細胞毒性
【化15】
【表5】
aデータは、各化合物についての3~6回の独立した実験の平均±標準偏差(STDEV)を表す。
bCCRF-CEM/VBLは、CCRF-CEMの細胞サブラインである。括弧内の
c番号は、親細胞株の対応のIC
50との比較によって測定される耐性係数である。
dIC50値の単位はnMである。
【0213】
表2.ヒト固形腫瘍細胞株に対する1,2-ビス(ヒドロキシメチル)ピロロ[2,1-a]フタラジン誘導体(式(I-A))及びベンゾ[g]ピロロ[2,1-a]フタラジン誘導体(式(I-B))のインビトロ細胞毒性
【表6】
【0214】
表3.ヒト小細胞肺癌(SCLC)細胞のバッチに対する式I-Bの化合物と治療剤の細胞毒性の比較
【表7】
【0215】
4.2 式(I)の化合物がDNA鎖間架橋を誘発した
本実施例では、BO-2590、BO-2577(式I-A)並びにBO-2698、BO-2755、BO-2762及びBO-2768(式I-B)をそれらのDNA架橋活性について試験し、それにおいてアルカリアガロースゲル電気泳動によって架橋を分析した。簡単に説明すると、精製されたpEGFP-N1プラスミドDNA(1500ng)を、40μLの結合緩衝液(3mMの塩化ナトリウム/1mMのリン酸ナトリウム、pH7.4、及び1mMのEDTA)において種々の濃度(1~20μM)の試験化合物に混合した。反応混合物を37℃で2時間インキュベートした。反応の終了時に、プラスミドDNAを、BamHIによる消化によって、及びその後に続くエタノール沈殿によって線状化した。DNAペレットをアルカリ緩衝液(0.5NのNaOH-10mMのEDTA)において溶解及び変性した。20μLのDNA溶液(1000ng)のアリコートを、4μLの6×アルカリローディングダイと混合してから、NaOH-EDTA緩衝液とともに0.8%アルカリアガロースゲルにおいて4℃で電気泳動で分解した。電気泳動を18Vで22時間実行した。臭化エチジウム溶液でゲルを染色した後、DNAをUV光下で可視化した。結果を
図1に示す。
【0216】
図1における写真に示すように、BO-2590、BO-2577、BO-2698、BO-2755、BO-2762及びBO-2768はそれぞれDNA鎖間架橋を誘発し、効果は用量に依存して現れた。また、試験された化合物間で、BO-2590は、メルファランのものよりも比較的強い架橋剤であることが分かった。
【0217】
また、細胞におけるDNA鎖切断を計測するための簡単な方法である単細胞電気泳動アッセイ(SCGE、「コメットアッセイ」としても知られる)を、BO-2768によって誘発されるDNA損傷を評価するために実行した。この目的のため、細胞を、顕微鏡スライド上で低融点アガロース懸濁液においてカプセル化してから、中性又はアルカリ性(pH>13)条件で、懸濁溶解細胞の電気泳動において溶解した。用語「コメット」とは、電気泳動ゲルを介したDNAマイグレーションのパターンをいい、それは流星に似ていることが多く、流星の先端に対する尾の強度がDNA切断数を反映する。結果を
図2に示し、それは、BO-2768はシスプラチンとして用量に依存してDNA切断を誘発する能力があることを確証している。
【0218】
4.3 BO-2590及びBO-2577は血管新生を阻害した
本実施例では、BO-2590及びBO-2577は、ウェスタンブロット解析によってVEGFR-2を抑制する際のそれらの活性の試験を受けた。簡単に説明すると、内皮性EA.hy926細胞を、種々の濃度で12時間BO-2590又はBO-2577とともにインキュベートした。一次抗体、抗VEGFR-2及び抗p-VEGFR-2を用いて、それぞれ合計VEGFR-2及びp-VEGFR-2のタンパク質をブロットした。結果を
図3に示す。
【0219】
図3に示すように、BO-2590及びBO-2577での処理は、p-VEGFR-2タンパク質レベルでの著しい抑制となり、p-VEGFR-2の減少においてはBO-2590がBO-2577よりも強力であった。また、BO-2590又はBO-2577はVEGFR-2の総タンパク質レベルを大きくは変化させないので、我々はBO-2590又はBO-2577がVEGFRの活性化の阻害剤として機能し得るものと推定した。したがって、バタラニブ(Valatanib)が、対照物として含まれた。驚くことに、p-VEGFR-2の抑制に有効なBO-2590の用量は、バタラニブのものよりも約10倍低かった。これにより、BO-2590がVEGFR-2の強力な阻害剤であることが明らかとなった。
【0220】
4.4 BO-2590は内皮細胞のマイグレーションを減少させた
本実施例では、我々は、トランスウェルマイグレーションアッセイを用いて化合物BO-2590が細胞マイグレーションを抑制することができるかを調査した。
【0221】
簡単に説明すると、内皮細胞を細胞透過膜の上層に入れ、BO-2590を含有する溶液を細胞透過膜の下層に入れた。インキュベーション期間(8時間)に続いて、膜を介して泳動した細胞を染色し、蛍光顕微鏡下で計数した。明らかに、化合物BO-2590によるVEGFR経路の阻害が、細胞マイグレーションにおける障害をもたらした(
図4、パネルA)。
【0222】
4.5 BO-2590は血管新生を中断させた
血管新生は、既存の脈管構造からの伸張として派生した新たな結果を生成する過程である。血管挙動の実行又は管形成を監視することによって、化合物が血管新生を中断させることができるかを判定することができる。この実施例では、式(I)の化合物が血管新生を中断したかを、管形成アッセイを用いて調査した。
【0223】
簡単に説明すると、EA.hy926細胞を、種々の濃度のBO-2590で24時間処理した。その後、細胞(5×105個の細胞/ウェル)を1%FCSを含有する100μlの培地において懸濁し、続いてマトリゲルで37℃で1時間プレコーティングした96ウェルのプレート上に播種した。48時間のインキュベーションの後、管形成能力を位相差顕微鏡下で検査した。
【0224】
図4(パネルB)における写真が示すように、BO-2590の不在時にロバストな管構造が形成されたが、nM範囲のBO-2590でのプレインキュベーションは管構造の管形成を著しくかつ用量依存的に消滅させた。バタラニブも、管形成を抑制したが、大幅に高い濃度であった。結果は、BO-2590による管形成の阻害はBO-2590誘発のVEGFR-2阻害に密接に相関することを示した。したがって、BO-2590がp-VEGFR-2の発現の阻害を介して抗血管新生活性をトリガしたと結論付けるのが合理的である。BO-2768及びBO-2698も、用量に依存して管形成に対する同様の阻害効果を示した(
図4、パネルC及びD)。
【0225】
4.6 BO-2590は細胞周期を干渉した
我々は、H460肺癌細胞における細胞周期進行に対するBO-2590の効果を濃度0、0.125、0.25、0.5、1及び2μMにおいて24、48及び72時間さらに調査した。細胞周期分布をフローサイトメトリーによって分析した。
図5に示すように、BO-2590は、細胞周期進行と用量依存的に干渉した。BO-2590の濃度を増加させることによって、G2期における著しい抑止が最初に観察され、S期の進行の抑止が続き、最後にG1の抑止が24時間で現れた。ただし、48又は72時間のインキュベーションに続き、細胞周期は徐々に進み、大量のsub-G1細胞が現れ始めた(
図6)。sub-G1細胞も、アポトーシス細胞であった。したがって、BO-2590が用量依存的にsub-G1細胞を誘発したという所見は、BO-2590がDNA損傷を介したアポトーシス細胞死をトリガし得ることを示す。
【0226】
4.7 BO-2590はアポトーシス細胞死を誘発した
この実施例では、アネキシンV染色アッセイを用いて、H460細胞株におけるBO-2590によって誘発されるアポトーシス細胞死を評価した。簡単に説明すると、H460細胞を、BO-2590で濃度0.5、1及び2μMで48時間処理してから、アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウムで染色した。染色した細胞を、フローサイトメトリーによって分析した。48時間の処理後、BO-2590は用量に依存してアネキシンV
+細胞の比率を大幅に増加させたことが分かった(
図7)。
【0227】
4.8 BO-2768はアポトーシス細胞死を誘発した
この実施例では、BO-2768の効果を、アポトーシス細胞死がH526細胞株において測定されたことを除いて、実施例4.7の手順に従って評価した。簡単に説明すると、H526細胞を濃度0.01、0.02、0.04及び0.08μMのBO-2768又は濃度2、4、8及び16μMのシスプラチンで24、48又は72時間処理してから、アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウムで染色した。染色した細胞をフローサイトメトリーによって分析した。72時間の処理後、BO-2768は用量に依存してアネキシンV
+細胞の比率を大幅に増加させたことが分かった(
図8)。
【0228】
4.9 BO-2768及びシスプラチンは細胞増殖を相乗的に抑制した
この実施例では、細胞増殖の抑制に対する相乗効果がBO-2768とシスプラチンの間に存在するかを調査した。この目的のため、H211細胞をBO-2768又はシスプラチンで単独で又は組合せて処理し、H211細胞の増殖率をPrestoBlueアッセイによって分析した。結果を
図9に示す。
【0229】
図9におけるデータが示すように、1:2、1:4及び1:8の比におけるBO-2768及びシスプラチンの共投与は、それぞれ、増殖H211細胞数の相乗的な低減をもたらした。
【実施例5】
【0230】
実施例5 式(I)の化合物のインビトロ特性化
実施例4において前述したように、式(I)の化合物は、一般的に、試験される腫瘍細胞株に対して細胞毒性を有した。本実施例では、ヒトSCLCを保持するヌードマウスにおける式(I)の選択された化合物の治療有効性を調査した。
【0231】
5.1 実施例3のリポソームBO-2590(BO-2590L)はSCLC H526異種移植片を効果的に抑制した
BO-2590は溶解性に乏しいので、本実施例では実施例3のリポソームBO-2590(BO-2590L)を用いて、ヒトSCLC H526異種移植片を保持するヌードマウスに対するその治療有効性を調査した。
【0232】
全ての実験において、腫瘍細胞をヌードマウスに皮下移植し、腫瘍サイズが約100mm
3に達するとBO-2590Lを尾静脈を介して投与した。H526異種移植片保持ヌードマウスを、まずBO-2590Lで1日おきに6回(Q2D×6)にわたって2.5、5及び10mg/kgの用量で処置した。
図10(パネルA)に示すように、10mg/kgでのBO-2590Lは、30日目(D30)にH526腫瘍体積を55%抑制した。試験された全用量において、BO-2590Lは体重の減量をもたらすことはなく、これはBO-2590Lの低い毒性を示している(
図10、パネルB)。
【0233】
BO-2590Lの治療活性を確認するために、バタラニブ及びシスプラチンのような既知の化学療法剤によって実行される比較実験も行った。簡単に説明すると、H526異種移植片保持マウスを、ビヒクル、BO-2590L(10mg/kg、QD×9)、バタラニブ(100mg/kg、QD×9)及びシスプラチン(4mg/kg、Q2D×3)でそれぞれ処置される4つの群に分けた。結果を
図11に示す。
【0234】
BO-2590Lはバタラニブよりもはるかに強力であり、H526異種移植片の成長を抑制する際に33日目(D33)においてシスプラチンとほぼ同程度に有効であることが分かり、約60%の腫瘍抑制がBO-2590Lによって観察された(
図11、パネルA)。注目すべきこととして、9日連続で10mg/kgで与えられたBO-2590Lは体重の減量をもたらさず(
図11、パネルB)、BO-2590Lは低い毒性を有したという前述の所見を支持している。これに対して、4mg/Kgの用量で使用されたシスプラチンは、試験動物における深刻な体重の減量をもたらした。
【0235】
5.2 ミセルBO-2590、BO-2768、BO-2792はSCLC H526異種移植片を効果的に抑制した
ヒトSCLC H526異種移植片を保持するヌードマウスに対するBO-2590、BO-2768、BO-2792、イリノテカン及びシスプラチンの治療有効性を、実施例5.1と同様の手順に従って調査した。BO-2590、BO-2768、BO-2792、イリノテカン及びシスプラチンを、20%のKolliphor15(登録商標)、10%のTWEEN(登録商標)80、10%のPEG400、30%のエタノール及び40%のD5Wの溶液においてそれぞれ調合した。結果を
図12及び13に示す。
【0236】
BO-2590及びBO-2792は腫瘍サイズを減少させる際にイリノテカン及びシスプラチンと同程度に有効であることが分かった(
図12、パネルA)。一方、20mg/kg(毎日2回)の用量でのBO-2768は、BO-2590、BO-2792、イリノテカン及びシスプラチンのいずれよりも驚くほどに強力であり、この検討の時間全体を通じて腫瘍の成長は完全に抑制された(すなわち、成長がなかった)が、他の群(すなわち、BO-2590、BO-2792、イリノテカン又はシスプラチンで試験された群)の腫瘍は時間の増加とともにサイズが徐々に増加した。また、試験化合物(すなわち、BO-2590、BO-2768、BO-2792、イリノテカン及びシスプラチン)のいずれも、試験動物の体重に対して有害な効果を示さなかった(
図12、パネルB)。
【0237】
5.3 BO-2768は用量に依存してSCLC H526異種移植片を抑制した
実施例5.2における所見の観点から、BO-2768の抗腫瘍有効性をさらに詳細に調査したところ、予想通り、BO-2768は用量に依存して腫瘍の成長を抑制し、20mg/kgの用量(1日あたり2回)は、試験動物の体重におけるいずれの有害な効果もなく(
図13、パネルB)、検討の時間全体を通じて腫瘍の成長を完全に抑制し得る(
図13、パネルA)。
【0238】
5.4 BO-2768及びシスプラチンは、試験被検体の体重に悪影響を及ぼすことなくSCLC H211異種移植片のサイズを相乗的に減少させた
この実施例では、腫瘍サイズの抑制及び試験被検体の体重変化に対するBO-2768及びシスプラチンの相乗効果を調査した。この目的のため、H211細胞のアリコート(5×10
6、50μl)をヌードマウスに皮下移植した。そして、試験動物をBO-2768又はシスプラチンで、単独で又は組合せて処置した。(20%のKolliphor(登録商標)HS15、10%のTween(登録商標)80、10%のPEG400、30%のエタノール及び40%の蒸留水に溶解された)BI-2768を、100μlにおける20mg/kgの用量で5連続日にわたって投与してから、1日休止し、このサイクルを1回反復した(すなわち、合計で2サイクル)。シスプラチンを2又は4mg/kgの用量で4日毎に1回、これを3回にわたって与えた。結果を
図14に示す。
【0239】
図14におけるデータが示すように、BO-2768及びシスプラチンの共投与は、試験動物の体重に悪影響を与えることなく(
図14、パネルB)、腫瘍サイズにおける相乗効果をもたらした(
図14、パネルA)。
【0240】
5.5 免疫組織化学染色によって実証されたSCLC H526の組織部位におけるBO-2590L(式IA)抗血管新生及びDNA損傷活性
スライド上の腫瘍異種移植組織部位をキシレンに毎回7分間にわたって2回脱パラフィン処理した。そして、スライドを、100%~70%の順に段階的エタノールにおいて再水和し、その後に続いてdH2Oにおいて洗い流した。抗原賦活化を、クッカーにおける50分間インキュベーション、その後に続く30分間の大気温冷却とともにクエン酸緩衝液(0.01M、pH6.0)を用いて行ってから、dH2Oで洗い流した。後のスライドに、製造者の指示(Novolinkポリマー検出システム、Leica Biosystems、ヴェッツラー、ドイツ)11に従ってAbcam(登録商標)から得られた一次抗体(抗ウサギCD31抗体及び抗マウスγ-H2AX抗体)で免疫組織化学(IHC)染色を行った。IHC処理の後、Panoramic250FlashIIホールスライドスキャナーを用いてスライドをデジタル的にスキャンし、3DHISTECH Panoramicビューワソフトウェア(3DHISTECH Ltd.,ブタペスト、ハンガリー)によって分析した。
【0241】
腫瘍内の血管の密度を、抗CD31(内皮細胞のマーカー)を用いて免疫蛍光染色によって評価した(
図15、パネルA)。ビヒクル対照物と比較して、全体として、大幅に減少した血管が、BO-2590L、バタラニブ又はシスプラチンで処置された腫瘍において観察された(
図9、パネルA)。IHCの後に、スライドをPanoramic250FlashIIホールスライドスキャナーによってスキャンした。組織部位におけるCD31の発現を、3個の腫瘍部位のうちの15個の異なる領域から測定し、計数値を3DHISTECH Panoramicビューワソフトウェア(3DHISTECH Ltd.,ブタペスト、ハンガリー)を用いて平均化した。
図15(B)に示すように、CD31マーカーは、処置なしの腫瘍においては時間に依存して増加した。一方、9日目に、CD31マーカーの強度は、対照物と比較して、BO-2590L又はバタラニブで処置した腫瘍において4%まで減少した(
図15、パネルB)。使用された用量でのシスプラチンは腫瘍成長を大幅に抑制したので、シスプラチン処置による腫瘍における減少したCD31マーカーも観察された。9日目に、シスプラチン処置による腫瘍におけるCD31マーカーの強度は対照物の19%であり、それはBO-2590L又はバタラニブよりも少ない程度であった。これらの結果は、BO-2590Lはインビボシステムにおいて血管新生の阻害についてバタラニブとほぼ同等に効力があることを示した。
【0242】
BO-2590LはDNA損傷剤であるので、我々は、免疫組織化学染色の使用を介してDNA損傷マーカーγ-H2AXのレベルにおけるBO-2590Lの効果を調査した。
【0243】
予想通り、シスプラチン又はBO-2590Lで処置された腫瘍では著しく増加したγ-H
2AXが観察されたが、バタラニブで処置された腫瘍ではより少ないレベルしか観察されなかった(
図16、パネルA)。定量分析によって、γ-H
2AXシグナルは対照物の腫瘍ではほとんど見られないことが明らかとなった。一方、シスプラチン又はBO-2590で処置された腫瘍では、γ-H
2AXシグナルにおける時間依存での増加が見られた。バタラニブで処置された腫瘍では、適度なレベルのγ-H
2AXが観察された(
図16、パネルB)。
【0244】
まとめると、BO-2590Lは、DNA損傷及び血管の抑制を介して癌細胞を死滅させることができる。
【0245】
実施形態の上記説明は例示のみのために与えられること及び種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。