(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-21
(45)【発行日】2022-06-29
(54)【発明の名称】冷風扇
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0007 20190101AFI20220622BHJP
【FI】
F24F1/0007 331
(21)【出願番号】P 2021195641
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2021-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500032637
【氏名又は名称】株式会社オークローンマーケティング
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】石川 友義
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-042935(JP,A)
【文献】特開2008-116203(JP,A)
【文献】実開昭63-134326(JP,U)
【文献】特開2016-075243(JP,A)
【文献】特開平05-180197(JP,A)
【文献】米国特許第05578113(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に収容される水受け皿、シロッコファン、該シロッコファンの筐体、気化フィルタ及び該気化フィルタのケースとを備え、前記水受け皿の水に前記気化フィルタの下端が浸漬され、前記シロッコファンによる空気流が前記気化フィルタを通過する冷風扇であって、
前記気化フィルタは前記ケースに保持されて前記シロッコファンとは別部材としてのアッセンブリを構成し、
前記アッセンブリが前記シロッコファンの筐体に対して着脱自在に組付けられ、
前記シロッコファンの筐体と前記気化フィルタのケースとが同一の仮想水平面を含んで配置
され、
前記シロッコファンの筐体の空気入口側に前記気化フィルタのケースが配置される冷風扇であって、
前記シロッコファンの筐体には前記空気入口を囲む縦方向のリブと横方向のリブからなるリブが形成され、前記気化フィルタのケースの当接縁は前記リブに重なるように配置され、
前記縦方向のリブは前記横方向のリブより突出長さが大きい、冷風扇。
【請求項2】
前記シロッコファンの筐体の空気入口周囲へ前記気化フィルタのケースを当接させる、請求項1に記載の冷風扇。
【請求項3】
冷風扇のケーシングが前記気化フィルタのケースの挿入口を備え、
前記挿入口の周縁から前記縦方向のリブの外側縁まで延伸されるガイド壁を備える、
請求項1又は2に記載の冷風扇。
【請求項4】
前記シロッコファンのケーシングに水抜き穴を備える、
請求項1~請求項3のいずれかに記載の冷風扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷風扇、特に水の気化熱を利用して冷風を生成する冷風扇に関する。
【背景技術】
【0002】
冷風扇は空気流を形成するファンと空気流により水の気化熱を利用する冷却部とを備える。
冷却部には、水を含浸させた不織布等からなる気化フィルタが用いられる。気化フィルタに空気流が接触することで気化フィルタの水が蒸発し、気化フィルタから気化熱が奪われてその温度が低下する。その結果、かかる気化フィルタを通過する空気流が冷却される。
ファンには一般的に軸流ファンが用いられる。軸流ファンは構造が簡易なため、製造コストを抑制できことが採用の一因である。また軸流ファンによればその筐体の軸方向に空気流が形成されるので、軸流ファンと気化フィルタとを直列配置させられ、もって、冷風扇自体を小型化しやすい。この場合、冷却された空気をより効率よく放出させるため、軸流ファンの下流側に気化フィルタを配置して、気化フィルタを通過して冷却された空気をそのまま外部へ放出する構造が採用される(
図1A参照)。
【0003】
本発明に関連する技術を開示する先行技術文献として特許文献1を参照されたい。
特許文献1には調湿装置が開示されている。この調湿装置はシロッコファンとその空気流上流側の気化フィルタを備えている。冷風の生成を目的としていないので、気化フィルタとシロッコファンとの間の空気流路に距離がある。換言すれば、仮に気化フィルタの気化熱により空気流が冷却されても、シロッコファンに到達するまで外気温の影響を受け、シロッコファンから放出される空気流はかならずしも冷却状態でなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
卓上用の冷風扇には、その小型化の要請から、専ら軸流ファンを備えたものが使われて生きた。
かかる冷風扇においても、冷却機能の向上に加えより高い静粛性が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、軸流ファンに代えてシロッコファンの利用を検討し、この発明に想到した。同じ筐体に収まる大きさの軸流ファンとシロッコファンとを比較したとき、後者は前者に比べて空気流量が大きい。その結果、気化フィルタでの気化熱による空気冷却性能が向上する。また、シロッコファンはその構造上、軸流ファンに比べて静粛性が高い。
【0007】
即ち、この発明の第1局面は次のように規定される。
ケーシングと、該ケーシング内に収容される水受け皿、シロッコファン及び気化フィルタとを備え、前記水受け皿の水に前記気化フィルタの下端が浸漬され、前記シロッコファンによる空気流が前記気化フィルタを通過する冷風扇であって、
前記シロッコファンの筐体と前記気化フィルタのケースとが同一の仮想水平面を含んで配置される、冷風扇。
【0008】
このように規定される第1の局面の冷風扇によれば、シロッコファンの筐体と気化フィルタのケースとが、同一の仮想水平面を含んで配置される。換言すれば、冷風扇の基台(例えば机)の平面に対して水平に両者が配置される。その結果、両者を可及的に近接して配置することができる。これにより、シロッコファンの筐体と気化フィルタのケースを囲繞する冷風扇自体の筐体を小型化できる。
更には、シロッコファンの空気入口側に気化フィルタを配置する場合、気化フィルタとシロッコファンとの距離を可及的に短縮できるので、気化フィルタで冷却された空気に対する外乱(外部からの熱)の影響を抑制できる。
他方、シロッコファンの空気出口側に気化フィルタを配置する場合においても、両者の距離が近くなるので、送風抵抗を可及的に抑制でき、もって、気化フィルタにおける気化熱の吸収効率を向上させられる。
【0009】
この発明の第2の局面の冷風扇は次のように規定される。
第1の局面に規定の冷風扇であって、シロッコファンの筐体の空気入口周囲へ前記気化フィルタのケースを当接させる。
シロッコファンでは、空気流がその筐体内で直交し、円盤ないし矩形盤の筐体の側面から空気が放出される。従って、シロッコファンの空気流下流側に気化フィルタ配置すると、シロッコファンと気化フィルタを収容するケースの大型化を免れない(
図1B参照)。
そこで、冷風扇自体を小型化する見地から、
図1Cに示すように、シロッコファンの空気入口側に気化フィルタのケースを配置することが好ましい。更には、第2の局面で規定するように、シロッコファンの筐体の空気入口周囲へ気化フィルタのケースを当接させることにより、気化フィルタで冷却された空気に対する外乱の影響防止をより確実にする。
【0010】
この発明の第3の局面の冷風扇は次のように規定される。即ち、第2の局面に規定の冷風扇において、前記シロッコファンの筐体には前記空気入口を囲むリブが形成され、前記気化フィルタのケースの当接縁は前記リブに重なるように配置される。
このように規定される第3の局面の冷風扇によれば、シロッコファンの筐体の空気入口を囲むリブと気化フィルタのケースとが重なりあうので、気化フィルタで冷却された空気流へ外気が進入することを確実に防止できる。もって、気化フィルタで冷却された空気流に対する外乱の影響を効率的の排除できる。
【0011】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、第3の局面に規定の冷風扇において、前記リブは縦方向のリブと横方向のリブからなり、前記縦方向のリブは前記横方向のリブより突出長さが大きい。
気化フィルタのケースを冷風扇に着脱する際には、気化フィルタのケースを上方向に持ち上げる必要がある。この際、横方向のリブの突出量が多いとこれが気化フィルタのケースと干渉し、組み付けが難しくなる。一方、気化フィルタのケースを組み付けるときに何ら干渉しない縦方向のリブの突出量を大きくすることで、外気の流入をより確実に防止する。
【0012】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、第4の局面に規定の冷風扇において、冷風扇の基体が前記気化フィルタのケースの挿入口を備え、前記挿入口の周縁から前記縦方向のリブの外側縁まで延伸されるガイド壁を備える。
このように規定される第5の局面の冷風扇によれば、気化フィルタのケースを冷風扇へ組み付ける際、ガイドに沿わせることにより、気化フィルタのケースの当接縁が縦方向のリブまで案内される。これにより、気化フィルタのケースの当接縁は当該リブへ自動的に重なり、もって、シロッコファンの空気入口の周囲へ位置精度よく当接する。
【0013】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面に規定の冷風扇において、前記シロッコファンの筐体の空気入口周囲と、前記気化フィルタのケースとの間にダクトが介在される。
このように規定される第6の局面の冷風扇によれば、ダクトにより、シロッコファンの筐体と気化フィルタのケースとの間に隙間ができることを防止できる。
【0014】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面から第6の局面のいずれか1局面に規定の冷風扇において、前記シロッコファンのケーシングに水抜き穴を備える。
このように規定される第7の局面の冷風扇によれば、シロッコファンのケーシング(回転翼格納部)内に水滴等の水分が混入しても、水抜き穴からケーシング外に自動的に排水され、漏電や錆等の事故や劣化の発生を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1はファンの型と気化フィルタの配置態様を示す上から見た模式図である。
【
図2】
図2はこの発明の実施形態の冷風扇の外観を示す写真である。
【
図4】
図4は気化フィルタのケースを組付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は気化フィルタとシロッコファンの位置関係を示す斜視図である。
【
図6】
図6はフィルタ受け部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図2~6を参照しながら、実施形態の冷風扇1について更に詳細に説明をする。
この冷風扇1は、ケーシング10、シロッコファン21、気化フィルタのケース41及びフィルタ受け部61を備えている。
図2に示すように、ケーシング10は立方体形状であり、吸気口11、排気口13が隣合う立側面に形成されている。
吸気口11を備える立側面12は着脱可能であり、これを取り外した状態で気化フィルタのケース41を装着可能とする。排気口13を備える立側面14にはルーバー15が取り付けられている。
ケーシング10の上面には、制御スイッチ、インジケータ及び取手が備えられる。
【0017】
シロッコファン21はファン本体22とこれを囲繞する筐体30とを備え、
図3に示すように、全体が厚手の盤状である。
筐体30の一面に円形の空気入口31が設けられ、側面に空気出口33が設けられる。空気出口33はケーシング10の排気口13へ対向する。
筐体30の下面には水抜き穴35が開口し、筐体30内に水が滞留しないようにしている。
【0018】
空気入口31の周縁には縦方向のリブ36、36と横方向のリブ37、37が形成されている。これらのリブ36、36、37、37は筐体の一面から垂直に立ち上がり、相互に隙間なく連続している。
横方向のリブ37、37に比べて縦方向のリブ36、36の突出量が大きい。横方向のリブ37、37の突出量は、気化フィルタのケース41を組み付けるときの干渉とならないように任意に設計できるものであるが、例えば1~10mmとすることができる。
【0019】
縦方向のリブ36、36の突出量は、横方向のリブの2~10倍として、気化フィルタ―のケース41に対する重なり量を充分に確保し、空気流への外気の浸入を防ぐ。
この例では、縦方向のリブ36、36は、縦方向の約半分の位置でその突出量が小さくされている。これは、フィルタ受け部61のガイド壁63が存在することによる(
図4、6参照)。このガイド壁63は縦方向のリブ36、36において突出量が小さくなった部分へ外側から重なり、外気の進入を防ぐ。
【0020】
フィルタケース41は、
図4に示すように、コ字状の基体部43に気化フィルタ71のリテーナ45が架設されている。基体部43の一縁がシロッコファン21の筐体30の空気入口31の周囲のリブ36、36、37、37と重なりつつ、当該周囲へ当接する。
フィルタケース41には複数の気化フィルタ71が保持されている。気化フィルタ71は、
図4に示すように、空気流れ方向に沿って、小さな隙間1~5mmを開けて、配列されている。気化フィルタは紙、不織布、スポンジ等の吸水性のキャリアで形成することができる。
なお、シロッコファン21によれば、上記の隙間を小さくしても十分な速度の空気流を得られるので、気化フィルタ71の充填量を多くすることが可能となり、もって、気化熱による冷却能力が大きくなる。
【0021】
図5に示すように、気化フィルタ71の下縁には2つの足73、74があり、この足73、74がフィルタ受け部61の水槽65の水に浸漬される(
図6参照)。
フィルタ71の下縁75は、フィルタケース41の基体部43の下縁と同じ高さであり、フィルタ受け部61のリテーナ部67へ載置される。
気化フィルタ71を保持したケース41の高さは、基体部43の下縁の位置とリテーナ部67の高さとの関係で規定される。
この実施形態では、気化フィルタ71の本体部分(足73、74以外の平面状部分)の高さをシロッコファン21の空気入口22の径とほぼ同じとし、空気流方向からみたとき、後者の前面を前者で覆っている。
シロッコファン21はファン本体22とその筐体30のアッセンブリとして一般的に入手され、気化フィルタ71はケース41とのアッセンブリとして、シロッコファン21とは別部材である。ここにおいて、シロッコファン21と空気入口へ気化フィルタ71を近接させるには、シロッコファン21の筐体30と気化フィルタ71のケース41とを同じ高さとすることが好ましい。換言すれば、両者は同一の仮想平面を含んでいることとなる。
【0022】
このように構成される冷風扇1によれば、シロッコファン21の動作に伴い空気流が発生する。空気流はケーシング10に設けられた吸気口11→気化フィルタ71→シロッコファンの筐体30の空気入口31→ファン本体22→空気出口33→排気口13と流れる。
気化フィルタ71は水を含んでいるので、ここを空気流が通過するときその水を蒸発させる。この水の蒸発により気化フィルタ71から気化熱が奪われるので、気化フィルタ71自体の温度が下がる。このように低温化した気化フィルタ71が冷却部となって、空気流を冷却する。
【0023】
この例では、シロッコファンの筐体30の空気入口31に対向する気化フィルタのケース41の縁が、当該空気入口31の周縁に当接している。これにより、気化フィルタ71で冷却された空気流に外気が混入しなくなる。更には、空気入口31の周囲に立設されたリブ36、36、37、37とケース41が重なるので、この点においても空気流へ外気の混入を確実に防止できる。
これらリブ36、36、37、37をダクトとみることができる。
このようにダクト、即ちリブが存在することにより、ケース41と空気入口31の周縁との間に隙間が出来ても外乱の影響を防止できる。このことはまた、ケース41とシロッコファン21の筐体31との組み付け精度に余裕があることを意味し、もって製造コストの削減や耐久性向上に寄与できる。
【0024】
例えば
図4、5からわかるように、気化フィルタ71を備えたケース41を着脱する際に、気化フィルタ71の足73、74の高さだけ、ケース41の一旦上方へ持ち上げる必要がある。この持ち上げ作業に干渉しないように、シロッコファンの筐体30の横方向リブ37、37は、その突出量を制限している。
【0025】
以上、本開示の実施形態及び実施例について説明してきたが、本発明は上記開示の各局面や実施形態(実施例)やその変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 冷風扇
10 ケーシング
21 シロッコファン
22 空気入口
30 筐体
31 空気入口
36 縦方向のリブ
37 横方向のリブ
41 気化フィルタのケース
63 ガイド壁
71 気化フィルタ
【要約】
【課題】気化熱を利用した冷風扇の冷却機能の向上と高い静粛性を図る。
【解決手段】 ケーシングと、該ケーシング内に収容される水受け皿、シロッコファン及び気化フィルタとを備え、水受け皿の水に気化フィルタの下端が浸漬され、シロッコファンによる空気流が気化フィルタを通過する冷風扇であって、シロッコファンの筐体と気化フィルタのケースとが仮想同一水平面上に配置される、冷風扇を提供する。
【選択図】
図4