(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】眼精疲労回復装置、立体視画像生成方法、立体視画像生成プログラム及び立体視画像の生成装置
(51)【国際特許分類】
A61H 5/00 20060101AFI20220623BHJP
H04N 13/339 20180101ALI20220623BHJP
A61B 3/08 20060101ALI20220623BHJP
A61B 3/09 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61H5/00 E
H04N13/339
A61B3/08
A61B3/09
(21)【出願番号】P 2020099731
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2020-08-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591107230
【氏名又は名称】株式会社デンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】小野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林田 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】江島 義道
(72)【発明者】
【氏名】呉 景龍
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智
(72)【発明者】
【氏名】山村 悦晃
(72)【発明者】
【氏名】高山 淑江
(72)【発明者】
【氏名】服巻 健博
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-334221(JP,A)
【文献】特開2004-236241(JP,A)
【文献】特開2007-260372(JP,A)
【文献】特開2003-180769(JP,A)
【文献】特開平08-257077(JP,A)
【文献】特開平08-257080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 5/00
H04N 13/339
A61B 3/08
A61B 3/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが覗く接眼レンズと、前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する
1つの表示面を有する表示器と、前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備えた眼精疲労回復装置であって、
前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、
前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、
前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する眼精疲労回復装置。
【請求項2】
請求項1記載の眼精疲労回復装置において、
前記距離DL及び前記距離DRのうちいずれか一方の大きさが0である眼精疲労回復装置。
【請求項3】
ユーザが覗く接眼レンズと、前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する
1つの表示面を有する表示器と、前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備えた眼精疲労回復装置の立体視画像生成方法であって、
前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、
前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、
前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する眼精疲労回復装置の立体視画像生成方法。
【請求項4】
表示器が有する
1つの表示面に表示され、接眼レンズを介して視認することでユーザに遠近感を知覚させる立体視画像生成プログラムであって、
コンピュータを、
前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求める手段、
前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示する手段、
前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求める手段、
前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求める手段、
前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するため
の左視標画像及び右
視標画
像を表示する手段、として機能させるための眼精疲労回復装置用の立体視画像生成プログラム。
【請求項5】
ユーザが覗く接眼レンズと、
前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する
1つの表示面を有する表示器と、
前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備え、
前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、
前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、
前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、
前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する立体視画像の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼精疲労回復装置、立体視画像生成方法、立体視画像生成プログラム及び立体視画像の生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、深視力の回復促進と視力検査とを実行することが可能な眼精疲労回復促進装置が記載されている。この眼精疲労回復促進装置は、ユーザの右眼と左眼とに対応して互いに並行する光学系を有し、当該ユーザの眼精疲労の回復促進を図る装置であって、両眼視差を利用してユーザに対しその深視力の回復訓練を促進する深視力訓練手段と、ユーザに対し視力検査視標を観察させ、当該ユーザの静止視力の検査に供される視力検査手段と、ユーザからの入力指示に基づいて、深視力訓練手段および視力検査手段を切替駆動する駆動制御部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、作業者が近くのディスプレイや物体ばかりを長時間見続けると、水晶体が大きく膨らんで緊張し、徐々に眼精疲労が蓄積されていく。
本発明は、ユーザが、遠近感を知覚させる画像を視ることで眼精疲労の回復を促す眼精疲労回復装置、立体視画像生成方法及び立体視画像生成プログラムを提供することを目的とする。
また、本発明は、ユーザに対し遠近感を知覚させる画像を生成できる立体視画像の生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ユーザが覗く接眼レンズと、前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する1つの表示面を有する表示器と、前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備えた眼精疲労回復装置であって、前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する眼精疲労回復装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の眼精疲労回復装置において、前記距離DL及び前記距離DRのうちいずれか一方の大きさが0である。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
請求項3に記載の発明は、ユーザが覗く接眼レンズと、前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する1つの表示面を有する表示器と、前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備えた眼精疲労回復装置の立体視画像生成方法であって、前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する眼精疲労回復装置の立体視画像生成方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、表示器が有する1つの表示面に表示され、接眼レンズを介して視認することでユーザに遠近感を知覚させる立体視画像生成プログラムであって、コンピュータを、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求める手段、前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示する手段、前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求める手段、前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求める手段、前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を表示する手段、として機能させるための眼精疲労回復装置用の立体視画像生成プログラムである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、ユーザが覗く接眼レンズと、前記接眼レンズを介して視認され前記ユーザに遠近感を知覚させる視標を表示する1つの表示面を有する表示器と、前記ユーザの両眼にそれぞれ対応し前記視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を生成する画像生成部と、を備え、前記画像生成部が、前記接眼レンズの中心位置に対応する前記表示面上の位置をそれぞれ左基準位置及び右基準位置として求めるステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置をそれぞれ実質的な中心とする左背景画像及び右背景画像を表示し、該左背景画像及び該右背景画像以外の領域を予め設定された色にて塗りつぶして表示するステップと、前記左基準位置及び前記右基準位置を基準としてそれぞれ同じ位置にある位置PosL及び位置PosRを求めるステップと、前記位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと前記位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、該左表示位置及び該右表示位置を求めるステップと、前記左表示位置及び前記右表示位置に、それぞれ、前記視標を形成するための前記左視標画像及び前記右視標画像を表示するステップと、を実行する立体視画像の生成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザが、遠近感を知覚させる画像を視ることで眼精疲労の回復を促す眼精疲労回復装置、立体視画像生成方法及び立体視画像生成プログラムを提供できる。
また、本発明によれば、ユーザに対し遠近感を知覚させる画像を生成できる立体視画像の生成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る眼精疲労回復装置の外観図である。
【
図2】同眼精疲労回復装置が備える光学系収納部の内部構造を示す斜視図である。
【
図3】同眼精疲労回復装置が有する制御器のブロック図である。
【
図4】同眼精疲労回復装置に係る立体視画像の生成方法を示すフロー図である。
【
図5】同眼精疲労回復装置に係る立体視画像の生成方法のステップS1の説明図である。
【
図6】同眼精疲労回復装置に係る立体視画像の生成方法のステップS2の説明図である。
【
図7】同眼精疲労回復装置に係る立体視画像の生成方法のステップS3にて表示面に表示された左背景画像及び右背景画像である。
【
図8A】同眼精疲労回復装置が備える液晶表示器の表示面に表示された画像である。
【
図8B】同眼精疲労回復装置が備える接眼レンズを覗いたユーザが視認する立体視画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る眼精疲労回復装置10は、
図1に示すように、ベース部12、支持部14及び光学系収納部16を備え、ユーザが接眼レンズ162L、162Rを覗き、遠近感を知覚させる立体視画像を視認することで、眼精疲労を回復させることができる。
【0017】
ベース部12は、テーブル等の設置面に載る板状の部材である。ベース部12の上面には、前後左右に動く操作レバー122や押ボタン124が設けられ、ユーザからの操作用の信号が入力される。
【0018】
支持部14は、間隔を空けてベース部12から上方へ延びる一組の支柱である。支持部14は、接眼レンズ162L、162Rを覗いて眼精疲労を回復する治療の間に、ユーザが両手でそれぞれ把持する握りとして機能する。
【0019】
光学系収納部16は、支持部14によって支持され、内部に外部から遮光された空間が形成されている。光学系収納部16は、この空間に、接眼レンズ162L、162R、液晶表示器164、遮蔽板166(
図2参照)及び制御器168(
図3参照)を有している。
なお、接眼レンズ162L、162R、液晶表示器164、遮蔽板166及び制御器により、立体視画像を生成する立体視画像の生成装置が構成される。
【0020】
接眼レンズ162L、162R(
図2参照)は、それぞれ凸レンズであり、右眼用及び左眼用に対応する。各接眼レンズ162L、162Rはレンズホルダ170を介して前面カバー103(
図1参照)に固定される。詳細には、レンズホルダ170は、間隔を空けて配置された円環状の左保持部170L及び右保持部170Rと、右保持部170R及び左保持部170Lを互いに連結する棒状の接続部材170Cと、を有し、左保持部170L及び右保持部170Rが、それぞれ接眼レンズ162L、162Rの外周縁を保持している。
【0021】
液晶表示器(表示器の一例)164は、フレーム(不図示)に固定されている。液晶表示器164は、ユーザが視認する視標となる立体視画像を表示する表示面165を有している。この表示面165に表示される立体視画像は、例えば動物、フルーツ、数字及び図形である。
【0022】
ただし、この立体視画像は、液晶表示器164の表示面165の左側と右側にそれぞれ視標となる立体視画像を形成するための左視標画像及び右視標画像として表示され、接眼レンズ162L、162Rを介して左眼及び右眼でそれぞれ視認されることでユーザに遠近感(奥行き感)を知覚させる画像である。立体視画像は、凸レンズである接眼レンズ162L、162Rの作用により、ユーザから見て無限遠にあるように設定されるので、ユーザは、その画像を遠方の離れた位置にある立体画像と認識する。
左視標画像及び右視標画像は、予め決められたサイズの同一の画像である。
立体視画像には、静止画のみならず、立体的に認識される動画も含まれる。
【0023】
表示面165の法線方向は斜め上方を向いている。詳細には、表示面165の法線方向が、表示面165からユーザの両眼へとそれぞれ向かう光軸AXL、AXRが延びる方向となっている。
表示面165の中心位置(後述する
図5に示す中心位置CC)は、光軸AXL及び光軸AXRが表示面165とそれぞれ交差する位置(後述する
図6に示す位置RL及び位置RR)を結ぶ線分の中心と一致するように配置されている。
なお、液晶表示器164は液晶ディスプレイに限定されるものではなく、要求される仕様に応じた任意のサイズや種類の表示器であればよい。
【0024】
遮蔽板166は、
図2に示すように、液晶表示器164の表示面165を正面視して、表示面165を左側の左表示領域と右側の右表示領域とに分割するように表示面165の中央部に設けられ、左視標画像が右眼にて、左視標画像が左眼にて視認されてしまうことを抑制するための遮蔽部材である。
遮蔽板166の正面側(ユーザ側)の端部には、切り欠き166aが形成され、この切り欠き166aの部分をレンズホルダ170の接続部材170Cが通っている。
【0025】
制御器168(
図3参照)は、眼精疲労回復装置10を制御できる。制御器168は背面カバーの内側に配置されている。
また、制御器168は、画像生成部169を有している。この画像生成部169は、ユーザが視認する視標となりユーザに遠近感を知覚させる前述の立体視画像を生成できる。
なお、画像生成部169は、CPUにて実行されるコンピュータプログラムにより実現される。
【0026】
なお、
図1に示すように、眼精疲労回復装置10の額が当たる接触面102の近傍には、紙製のディスポーザブルの額当て(不図示)を引っ掛ける突起PL、PRが形成されている。
【0027】
次に、眼精疲労回復装置10に係る立体視画像の生成方法について説明する。
立体画像は、
図4に示すように、以下のステップS1~S6に従って生成される。ただし、可能な場合には、各ステップS1~S6は順番を入れ替えて実施されてもよいし、並行して実施されてもよい。
なお、液晶表示器164の表示面165の幅方向の画素数及び高さ方向の画素数は、それぞれX(px)及びY(px)であり、接眼レンズ162L、162Rの間の距離(光軸AXLと光軸AXRとの間の距離)はPD(px)である。
【0028】
(ステップS1)
画像生成部169が、液晶表示器164の表示面165の中心位置CC(
図5参照)を特定する。
画面左下を原点Oとすると、中心位置CC(黒四角)の座標は、(X/2,Y/2)となる。
なお、
図5において、括弧内の数値は、表示面165の幅方向の画素数及び高さ方向の画素数が、それぞれ1920(px)及び1080(px)である場合の具体的な数値例を示している。
図6についても同一の具体的な数値例を示している。
【0029】
次に、画像生成部169が、表示面165を左右に分割して左表示領域及び右表示領域とし、左表示領域の中心位置CL及び右表示領域の中心位置CRをそれぞれ求める。
中心位置CL(黒三角)の座標は、(X/4,Y/2)として求められる。
中心位置CR(黒三角)の座標は、(3X/4,Y/2)として求められる。
【0030】
なお、画像生成部169は、表示面165の全面を分割して左表示領域及び右表示領域とすることに限定されるものではない。画像生成部169は、表示面165の一部の領域を分割して左表示領域及び右表示領域としてもよい。具体例を挙げると、画像生成部169は、表示面165の全表示領域のうち下側10%の範囲の表示領域を除いた上側の表示領域を分割して、左表示領域及び右表示領域としてもよい。
【0031】
(ステップS2)
画像生成部169が、光軸AXL、AXRと表示面165とが交差する位置、すなわち、光軸AXL、AXRが延びる方向から見た場合の一方の側の接眼レンズ162Lの中心位置に対応する位置RL(左基準位置の一例)及び他方の側の接眼レンズ162Rの中心位置に対応する位置RR(右基準位置の一例)をそれぞれ求める(
図6参照)。
位置RL(黒丸)の座標は、(X/2 - PD/2,Y/2)として求められる。
位置RR(黒丸)の座標は、(X/2 + PD/2,Y/2)として求められる。
【0032】
(ステップS3)
画像生成部169が、
図6の破線にて示す位置に、位置RL(黒丸)及び位置RR(黒丸)を中心とする矩形状の左背景画像及び右背景画像をそれぞれ表示する。ただし、ここに言う中心とは、厳密な意味での中心ではなく、「実質的な中心」という意味である。
左背景画像及び右背景画像は、それぞれ左表示領域及び右表示領域の範囲を超えないサイズに設定される。
図6の具体的な数値例に対応した左背景画像及び右背景画像のサイズを例示すると、幅方向の画素数及び高さ方向の画素数は、それぞれ600(px)及び500(px)である。
【0033】
左背景画像及び右背景画像は、
図7に示すように、それぞれスノーノイズ状(砂嵐状)の画像とすることができる。なお、同
図7において、位置RL、RRを表す黒丸は理解を助けるために表示したものであり、実際には表示されない。
また、左背景画像及び右背景画像以外の領域は、予め設定された色にて塗りつぶされて表示される。この予め設定された色は、例えば黒色である。
【0034】
(ステップS4)
画像生成部169が、
図6に示すように、位置RL及び位置RRから見て(位置RL及び位置RRを基準として)それぞれ同じ位置にある位置PosL(白四角)及び位置PosR(白四角)を求める。
【0035】
(ステップS5)
本ステップは、画像生成部169が、左表示位置及び右表示位置を求めるステップである。この左表示位置は、予め決められたサイズの左視標画像を左背景画像の範囲内に表示するための基準となる位置であり、右表示位置は、予め決められたサイズの右視標画像を右背景画像の範囲内に表示するための基準となる位置である。
詳細には、画像生成部169が、位置PosLから右方向に予め決められた距離DLだけずらした位置(
図6に示した位置PosLから右方向に延びる矢印参照)を左表示位置として求めるとともに、位置PosRから左方向に予め決められた距離DRだけずらした位置(
図6に示した位置PosRから左方向に延びる矢印参照)を右表示位置として求める。なお、距離DL及び距離DRのうちいずれか一方は、大きさが0であってもよい。すなわち、距離DLずらすことなく位置PosLをそのまま左表示位置とし、位置PosRから左方向にある右表示位置を求めてもよいし、距離DRずらすことなく位置PosRを右表示位置とし、位置PosLから右方向にある左表示位置を求めてもよい。
【0036】
換言すると、画像生成部169が、位置PosLから右方向にある左表示位置までの距離DLと位置PosRから左方向にある右表示位置までの距離DRとの合計値が予め決められた大きさとなるように、左表示位置及び右表示位置を求める。この予め決められた大きさは、少なくとも0を超える値である。
距離DLと距離DRとの合計値が大きければ大きいほど両眼視差が大きくなり、よりユーザの手前側にある立体視画像として視認される。距離DL及び距離DRの大きさは、例えば数ピクセル~数十ピクセルである。
【0037】
すなわち、左表示位置と右表示位置との左右方向の間の最小の距離が、予め設定された両眼視差が生じる距離であり、最大の距離が、位置RLと位置RRとの間の距離よりも短い距離であればよい。加えて、左表示位置が、左視標画像を左背景画像からはみ出さずに表示するための基準位置になり、右表示位置が、右視標画像を右背景画像からはみ出さずに表示するための基準位置になっているのであれば、左表示位置及び右表示位置の求め方は、本ステップにて説明した方法に限定されるものではない。
また、左表示位置及び右表示位置の多少の高さ方向のずれは許容され、少なくとも左右方向に離れていればよい。
【0038】
(ステップS6)
画像生成部169が、前ステップにて求められた左表示位置及び右表示位置に、それぞれ、視標を形成するための左視標画像及び右視標画像を表示する。
その結果、左視標画像及び右視標画像が、それぞれ、左背景画像及び右背景画像の前面側かつその範囲内に表示される。
左視標画像及び右視標画像によって形成される視標は、前述の通り、距離DLと距離DRとの合計値の大きさに応じた遠近感(奥行き感)を有する立体視画像として視認される。
【0039】
更に、画像生成部169は、予め決められた周期で背景を含む全ての画像の表示と非表示とを繰り返す。
その結果、ユーザの水晶体の厚さを調節する毛様体が伸縮運動し、目のピント調節機能がリフレッシュされ、眼精疲労の回復が促される。
【0040】
視標は、複数表示することも可能である。複数の視標を表示する場合は、例えば
図8Aに示すように、蝶、犬及び魚について、それぞれ、前述のステップS4に従って位置PosL及び位置PosRを求め、ステップS5に従って左表示位置及び右表示位置を求め、ステップS6に従って求めた左表示位置及び右表示位置に、対応する左視標画像及び右視標画像を表示する。
同
図8Aにおいては、犬についての距離DL及び距離DRがそれぞれ20pxであり、蝶についての距離DL及び距離DRがそれぞれ10pxであり、魚についての距離DL及び距離DRがそれぞれ5pxとなるように設定され、
図8Bにおいて、手前から遠方に向かって順に犬、蝶及び魚が位置するように遠近感(奥行き感)をもって視認される。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
眼精疲労回復装置10が備える液晶表示器164及び制御器は、ユーザが所有するモバイルデバイスにより実現されてもよい。このモバイルデバイスは、光学系収納部16の内部に着脱が容易となるように設けられ、画像生成部169を実現するために立体視画像生成プログラムとして機能するアプリ(アプリケーションソフトウェア)がインストールされて使用される。
【0042】
また、立体視画像の生成方法及び生成プログラムは、眼精疲労回復装置に適用されることに限定されるものではない。立体視画像の生成方法及び立体視画像生成プログラムは、例えば、アミューズメント機器や家庭用ゲーム機に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 眼精疲労回復装置
12 ベース部
14 支持部
16 光学系収納部
102 接触面
103 前面カバー
104 背面カバー
122 操作レバー
124 押ボタン
162L、162R 接眼レンズ
164 液晶表示器
165 表示面
166 遮蔽板
166a 切り欠き
168 制御器
169 画像生成部
170 レンズホルダ
170C 接続部材
170L 左保持部
170R 右保持部
AXL、AXR 光軸
PL、PR 突起