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特許7093480火炎噴射式スパークプラグ、ならびにその内燃機関および自動車
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】火炎噴射式スパークプラグ、ならびにその内燃機関および自動車
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20220623BHJP
   H01T 13/54 20060101ALI20220623BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20220623BHJP
   F02B 19/16 20060101ALI20220623BHJP
   F02B 23/08 20060101ALI20220623BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20220623BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20220623BHJP
   F02C 7/264 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
F02B19/12 B
H01T13/54
H01T13/20 B
F02B19/16 B
F02B23/08 M
F02B37/00 302G
F02P13/00 301J
F02P13/00 302A
F02C7/264
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019559040
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2017092852
(87)【国際公開番号】W WO2018196175
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】201710281440.2
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522089734
【氏名又は名称】周氏(北京)汽車技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】周向▲進▼
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0211217(US,A1)
【文献】特開2007-172958(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105119144(CN,A)
【文献】特開2004-074396(JP,A)
【文献】実開昭52-057106(JP,U)
【文献】特表2016-512587(JP,A)
【文献】特表2008-504649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/00,23/00,37/00
H01T 13/00
F02P 13/00
F02C 7/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従来のスパークプラグを基に、電極付近の空間を閉じて空洞を形成し、空洞の端面に1つまたは複数の第1孔を設け、空洞の側面に1つまたは複数の第2孔を設け、空気および燃料ガスが前記第1孔および前記第2孔を介して空洞に進入し、電極間で放電して火花が発生し、空洞内の可燃ガスを点火し、空洞内の火炎が延伸し、さらに温度および圧力が上昇するのに伴い、火炎は前記第1孔および第2孔から噴射されて柱状火炎が形成され、火炎は燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスに進入し、可燃ガスに対する立体点火および高エネルギー点火を実現し、
電極の陰極および陽極の間の中間位置から、最も近い前記第1孔の縁部までの距離の数は、空洞容積の数値の0.1~0.9%、さらに、電極の陰極および陽極の間の中間位置が、スパークプラグの中心軸の断面に沿って、スパークプラグの内部空洞の容積を2つの部分に分割することを満たし、このうち前記第1孔に近い側の容積は総容積の5分の1から2分の1までの間の位置を占め、
スパークプラグ空洞内の燃焼圧力により、前記柱状火炎が前記第1孔から噴射される速度は150メートル/秒以上に達し、好ましい速度は225メートル/秒~375メートル/秒であり、前記第1孔から噴射される前記柱状火炎の噴射距離は、燃焼室の最上部からピストンが下死点および上死点の中間位置にあるときのピストン最上部までの距離を超えることができることを特徴とする、火炎噴射式スパークプラグ。
【請求項2】
空洞における端面の前記第1孔および側面の前記第2孔は、前記空洞の径方向に噴射角を有するか、または前記噴射角を有すると同時に、円周方向に傾斜角を有し、
噴射孔の形状は円形、円環状、葉形、半円環状、長方形、三角形、三葉形中のうちの1つ、またはこれらのいくつかの形状の組合せであり、
中心電極の位置は内蔵式構造、または半露出式構造、または露出式構造であり、
電極の陰極および陽極の間の中間位置から、最も近い前記第1孔の縁部までの距離は、空洞容積の数値の0.2~0.5%、代表的な数値は0.3%であり、前記第1孔に近い側の容積は総容積の4分の1から3分の1までの間の位置を占め、これにより前記第1孔の前記柱状火炎の噴射速度は速く、同時に噴射距離は遠いことを特徴とする、請求項1に記載の火炎噴射式スパークプラグ。
【請求項3】
前記スパークプラグは前記第1孔のみを有し、前記第2孔を有さないものに代替されることを特徴とする、請求項1に記載の火炎噴射式スパークプラグ。
【請求項4】
前記電極の陰極および陽極が、前記スパークプラグの中心軸に垂直な方向に沿って配置され、すなわち前記電極の陰極は前記陽極の両側または四方に分布することを特徴とする、請求項2に記載の火炎噴射式スパークプラグ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを用いた内燃機関であって、内燃機関の燃料および空気を点火の主要エネルギーとして利用することを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを2つまたは2つ以上同時に採用して点火装置とする、または、請求項1または2に記載の火炎噴射式スパークプラグを1つ、および従来式スパークプラグを1つの組合せを採用して点火装置とすることを特徴とする、内燃機関。
【請求項7】
層状燃焼の技術および制御案を採用する、または、希薄燃焼の技術および制御案を採用する、または、層状燃焼および希薄燃焼の技術および制御案を同時に採用することを特徴とする、請求項5または6に記載の内燃機関。
【請求項8】
シリンダの圧縮比が10:1から21:1である、または、ターボ過給装置を同時に有
する、または、ターボ過給装置および機械式過給装置を同時に有することを特徴とする、請求項5、6または7に記載の内燃機関。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用することを特徴とする、タービンエンジンまたはガスタービン。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用する、または、請求項5~8のいずれか1項に記載の内燃機関を動力装置として採用することを特徴とする、内燃機関自動車またはハイブリッド車。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用する、または、請求項5~8のいずれか1項に記載の内燃機関を動力装置として採用する、または、請求項9に記載のタービンエンジンを動力装置として採用することを特徴とする、飛翔体。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用する、または、請求項5~8のいずれか1項に記載の内燃機関を動力装置として採用する、または、請求項9に記載のガスタービンを動力装置として採用することを特徴とする、船舶または潜水機。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用することを特徴とする、工業炉または窯の点火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月26日に出願された中国特許出願第201710281440.2号明細書「火炎噴射式スパークプラグ、ならびにその内燃機関および自動車」の優先権を主張し、該出願の開示全体は引用により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、機械電子工業の自動車および内燃機関の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、一般的にシリンダ、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト、バルブ、油圧ポンプ、ノズルなどの主要部品、およびその他の付属部品からなる。いくつかの内燃機関はバルブを省くことができ、ピストンを利用してシリンダ内の異なる位置で、吸気通路および排気通路を開閉する。
【0004】
既存の内燃機関の点火装置は主にスパークプラグであり、電気火花により混合気を点火し、点火源は点状である。点火強度の大きさは、可燃ガスの燃焼速度に影響を及ぼす。
【0005】
プラズマ点火装置のスパークプラグ構造は、中心は1つの電極で、中心電極を取り囲んで4つの電極を有する。この点火装置のスパークプラグが形成する火炎核エネルギーは、普通のスパークプラグの100倍に達するという。
【0006】
航空ピストンエンジンは、点火の信頼性を高めるため、一般的に各シリンダに2つのスパークプラグを設置し、2つの電源供給回路からそれぞれ電源供給され、それぞれ制御される。
【0007】
スパークプラグによる点火を採用した内燃機関はガソリンエンジンに制限されず、天然ガスおよび液化石油ガスを燃料とした内燃機関もある。
【0008】
火花点火式内燃機関は、圧縮着火式内燃機関と比較して、燃焼室内の可燃ガスの燃焼速度が比較的遅いが、これは点火の点火源が点状の点火源であるためである。圧縮着火式内燃機関は多点点火であり、可燃ガスの内部は高温高圧条件下で、多くの部分で自然着火が発生し、同じ時間に点火する点火源の数量は多い。したがって、圧縮着火式内燃機関は、比較的高い圧縮比および比較的高い空燃比を選択することができ、熱仕事変換効率は一般的に火花点火式内燃機関より30%前後高い。
【0009】
効率を高めるため、いくつかのガソリンエンジンまたは天然ガス燃料エンジンは、圧縮点火の方法を採用し、ディーゼル燃料を第2燃料として、圧縮過程で燃焼室およびシリンダに少量のディーゼル燃料を噴射する。ディーゼル燃料の自然着火点が比較的低い特徴を利用して、燃焼室内に噴射、進入するディーゼル燃料を霧化および自然着火させ、多点点火源を形成する。燃焼室およびシリンダ中のガソリンまたは天然ガスおよび空気を混合して形成される可燃ガスを点火し、これによりガソリンまたは天然ガスエンジンの多点点火を実現し、燃焼速度を高め、シリンダの圧縮比を高め、エンジンの熱仕事変換効率を高める。関連する特許出願は、「ディーゼル燃料を圧縮点火するガソリンエンジン」(中国実用新案第2365405号明細書、公開日2000年2月23日)を参照のこと。この種のエンジンの欠点は、燃料供給システムが複雑で、コストが増加することである。
【0010】
発明の内容
1)多点点火の方法について、火炎を噴射することができるスパークプラグを採用し、内燃機関の燃料を主な点火エネルギー源として利用し、電気火花を初期点火源として利用する。内燃機関の燃焼室およびシリンダ中の可燃ガス(混合気領域)に、1本または数本の火炎を噴射することにより、火炎が混合気領域を貫通する。その点火範囲、点火面積、点火強度はいずれも従来のスパークプラグが達成することができる点火効果よりはるかに高く、拡散圧縮着火内燃機関の多点点火の効果を達成することに相当する。混合気の燃焼時間を短くし、内燃機関の効率はこれにより高くなり、さらに爆燃が発生する可能性を防止および減少させた。
【0011】
2)この種のスパークプラグは火炎噴射プラグと言うことができ、適した内燃機関は、ガソリンを燃料としたガソリンエンジン、天然ガスまたは液化石油ガスを燃料としたエンジン、さらにスパークプラグを点火装置として採用したその他のエンジンを含む。ガソリンの等級(オクタン価、リサーチ法)は、89以下まで低下させることができる。燃料は石油、天然ガス、シェールガス、メタンガス、石炭およびバイオマスに由来するものを含むがこれに限定されない。
【0012】
3)火炎噴射式スパークプラグについて、従来のスパークプラグを基に、電極付近の空間を閉じて1つの空洞を形成し、空洞の端面に1つまたは複数の第1孔を設け、側面に1つまたは複数の第2孔を設け、空気および燃料ガスは第1孔および第2孔を介して空洞に進入する。電極間で放電して電気火花が発生し、空洞内の可燃ガスを点火する。空洞内の火炎が延伸し、さらに温度および圧力が上昇するのに伴い、火炎は小さい孔から噴射されて柱状火炎が形成される。火炎は燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスに進入し、可燃ガスに対する立体点火、大面積の点火および高エネルギー点火を実現する。このうち、柱状火炎が可燃ガスを通り抜ける点火効果が好ましい。
【0013】
一般的に、ガソリンエンジンの燃料空気混合比が14.7:1であるとき、燃焼室中の混合気が点火された後、火炎が拡散する速度は約75メートル/秒である。火炎噴射式スパークプラグが予期した技術的効果に達する場合、噴射される火炎の速度は75メートル/秒よりはるかに高く、早めに燃焼室の底部に達し、そこの混合気を点火しなければならず、燃焼室内部のスパークプラグに近い混合気に着火してから、火炎が拡散し、燃焼室底部まで延伸するのではない。スパークプラグから噴射される火炎の速度は速いほどよく、噴射の距離は遠いほどよく、スパークプラグから噴射される火炎の本数は多いほどよく、各火炎柱の分散は均等であるほどよい。スパークプラグの空洞内の燃焼圧力が十分に高いとき、火炎が第1孔および第2孔から噴射される速度は150メートル/秒以上に達することができる。好ましい速度は225メートル/秒~375メートル/秒である。火炎の噴射距離は、燃焼室の最上部からピストンが下死点および上死点の中間位置にあるときのピストンの最上部までの距離を超えることが要求される。スパークプラグの空洞内部の燃焼圧力および火炎噴射速度に影響を及ぼし、さらに火炎噴射距離の要素は、主に空洞の容積、噴射孔の総面積、空洞内部の点火位置および燃料、空気の濃度を含む。
【0014】
火炎噴射式スパークプラグが高い噴射速度および遠い噴射距離を有することができることを保証するため、スパークプラグ内部で電気火花が発生する位置の選択は非常に重要である。電極の陰極および陽極の間の中間位置(発生した電気火花の線分の中間位置)から、最も近い噴射口の縁部までの距離は、空洞容積の数値の0.1~0.9%、好ましい数値は0.2~0.5%、代表的な数値は0.3%で、単位はミリメートルである。例えば、空洞の容積が1000立方ミリメートルであると、電極の陰極および陽極の間の中間位置から、最も近い噴射口の縁部までの距離の代表的な数値は1000×0.3%=3(ミリメートル)である。さらに、電極の陰極および陽極の間の中間位置(発生した電気火花の線分の中間位置)は、スパークプラグの中心軸の断面に沿って、スパークプラグ内部の空洞容積を2つの部分に分割することを満たす。このうち前記第1孔に近い側の容積は総容積の5分の1から2分の1の間の位置を占め、4分の1から3分の1までの間の位置が良好である。
【0015】
電極の陰極および陽極の間の中間位置からスパークプラグの前記第1孔までの距離が近い場合、スパークプラグ内部の燃焼が不十分であり、まだ高圧を形成することができないとき、火炎がスパークプラグの空洞から噴出し、燃焼室中の可燃混合気に対する点火が過度に早い。電極の陰極および陽極の間の中間位置から前記孔までが遠い場合、アークがスパークプラグ内部の混合気を点火した後、圧力の上昇に伴い、一部の燃焼していない燃料、空気は噴射孔に押し出され、点火エネルギーが減少する。火炎が噴射し始めるとき、スパークプラグ内部の燃料はすでに完全に燃焼しており、噴射された火炎の最後の力が不足し、噴射速度は十分に速くすることができるが、噴射距離は遠くない。理想的な技術案は、前記第1孔の前記柱状火炎の噴射速度が速く、同時に噴射距離が遠いことが要求される。
【0016】
火炎噴射式スパークプラグが十分に高い噴射圧力を有し、同時に、噴射された火炎が十分な噴射速度および距離を有することを保証するため、噴射孔の面積の総和を確定することを前提に、単一の噴射孔の孔径を優先的に保証し、その後可能な限り多くの噴射孔の数量を検討する。
【0017】
前記電極の陰極および陽極の間の中間位置から、最も近い前記スパークプラグの前記第1孔の縁部までの距離を長くする方法は、1)図1中の14陰極電極の高さを増やし、12中心電極(陽極)の長さを短くすること、2)図2Bまたは図2Cにおける前記スパークプラグの中心軸付近に近い前記第1孔の相互間の距離を長くすることを含む。
【0018】
臨時の技術的措置として、本出願は既存の半開放型スパークプラグ(図7に示す)を基に、正極電極およびその絶縁体付近の空間を覆う面積を増加して、端面噴射孔および側面噴射孔が異形形状である火炎噴射式スパークプラグを得ることができる。
【0019】
4)火炎噴射式スパークプラグにおいて、空洞の端面の第1孔および側面の第2孔は噴射角を有するか、または噴射角を有すると同時に、円周方向に傾斜角を有する。
【0020】
5)火炎噴射式スパークプラグにおいて、中心電極の位置は内蔵式構造、または半露出式構造、または露出式構造である。
噴射孔の形状は円形、円環状、葉形、半円環状、長方形、三角形、3つの長方形が連なった三葉形のうちの1つであるか、または以上のいくつかの形状の組合せである。
【0021】
6)火炎噴射式スパークプラグを使用した内燃機関は、内燃機関の燃料および空気を点火の主要エネルギー源として利用する。内燃機関の燃焼速度は従来の内燃機関より速いため、スパークプラグの火炎噴射の時間をピストンが上死点の位置に近づくまで遅らせる必要があり、アーク点火の時間は正負電極の中間位置から、最も近い第1孔の縁部までの距離に基づいて確定する必要がある。したがって、圧縮工程で燃焼のために行う負の仕事が比較的小さく、エンジンの熱仕事変換効率は比較的高い。
【0022】
7)内燃機関は以下の技術的特徴を有する。2つまたは2つ以上の火炎噴射式スパークプラグを点火装置として同時に採用するか、あるいは1つの火炎噴射式スパークプラグおよび1つの従来式スパークプラグの組合せを点火装置として採用する。
【0023】
8)内燃機関は以下の技術的特徴を有する。層状燃焼の技術および制御案を採用するか;または希薄燃焼の技術および制御案を採用するか;または層状燃焼および希薄燃焼の技術および制御案を同時に採用する。
【0024】
9)内燃機関は以下の技術的特徴を有する。シリンダの圧縮比が10:1から21:1であるか;またはターボ過給装置を同時に有するか;またはターボ過給装置および機械式過給装置を同時に有する。
【0025】
10)タービンエンジン(ターボシャフトエンジン、ターボファンエンジン、ガスタービンを含むがこれに限定されない)は、火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用する。
【0026】
11)内燃機関自動車またはハイブリッド車(オートバイ、建設機械、農業用機械などを含むがこれに限定されない)は、上記火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用するか、または上記内燃機関を動力装置として採用する。
【0027】
12)飛翔体(飛行機、ヘリコプター、飛行船、パラモータ、動力付きパラフォイルを含むがこれに限定されない)は、火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用するか;または上記内燃機関を動力装置として採用するか;または上記タービンエンジンを動力装置として採用する。
【0028】
13)船舶または潜水機(潜水艦を含むがこれに限定されない)は、上記火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用するか;または上記内燃機関を動力装置として採用するか;または上記ガスタービンもしくはタービンエンジンを動力装置として採用する。
【0029】
14)工業炉または窯の点火方法は、上記火炎噴射式スパークプラグを点火装置として採用する。この火炎噴射プラグは点火棒とも言い、一般的に内燃機関のスパークプラグよりかなり長い。
【0030】
15)上記内燃機関は一部の排気ガスを再利用する技術を採用し、排気ガス中の窒素酸化物の排出含量を効果的に低下させることができる。
【0031】
16)上記火炎噴射式スパークプラグは、予混合圧縮着火エンジンの強制点火装置である。火炎噴射プラグの柱状火炎が提供するエネルギーを利用して、予混合圧縮着火を引き起こしており、燃料および高温空気(再利用の排気ガスを含む)が化学反応することによる発熱(予燃という人もいる)のみを、直接圧縮着火の昇温エネルギー源とするわけではない。
【0032】
既存技術の不足
1)ガソリンエンジンのスパークプラグの点火源は点状であり、点火面積が小さい。
【0033】
2)プラズマスパークプラグで点火した火炎核は、アーク放電スパークプラグの火炎核より大きいが、点火エネルギーは十分に作用を果たすことができず、点火効率は低い。
【0034】
3)既存のガソリンエンジンにおける燃焼室内の火炎の燃焼速度は比較的遅く、燃料空気混合領域の燃焼はスパークプラグから開始し、火炎核周辺に生じる火炎面の延伸および拡散により実現する。燃焼速度が遅いだけでなく、爆燃が容易に発生する。
【0035】
4)スパークプラグにより点火するガソリンエンジンの熱仕事変換効率は比較的低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【文献】中国実用新案第2365405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
1)火花点火式内燃機関の点火源の数量を増やして、多点点火を実現する。
【0038】
2)点火面積を増やし、点火強度を高めて、点火効率を上昇させる。
【0039】
3)燃焼室の混合気の燃焼速度を上昇させる。
【0040】
4)内燃機関の熱効率を上昇させる。
【0041】
5)爆燃を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0042】
1)火炎噴射式スパークプラグは、図1に示す通りである。従来のスパークプラグを基に、電極付近の空間を閉じて1つの空洞を形成し、空洞の端面に1つまたは複数の第1孔を設け、側面に1つまたは複数の第2孔を設け、空気および燃料ガスは第1孔および第2孔を介して空洞に進入する。電極間で放電して電気火花が発生し、空洞内の可燃ガスを点火する。空洞内の火炎が延伸し、さらに温度および圧力が上昇するのに伴い、火炎は第1孔および第2孔から噴射されて柱状火炎が形成される。燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスに進入し、可燃ガスに対する多点点火および高エネルギー点火を実現する。
【0043】
2)火炎噴射式スパークプラグを選択した内燃機関は、図8に示す通りである。火炎噴射プラグは孔径の大小、多少、位置の配置などに基づいて、数種の型に設計される。火炎噴射プラグの噴射孔の直径が大きいほど、噴射圧力が高く、噴射距離は遠い。したがって、同じ火炎噴射プラグ上面の異なる位置における噴射孔の直径は異なっていてよい。内燃機関のシリンダ径、排出量、燃焼室の形状などに基づいて、様々な型の火炎噴射プラグを選択し、これにより火炎噴射プラグの柱状火炎は燃焼室およびシリンダ中の可燃ガス中に比較的良好に分散する。
【発明の効果】
【0044】
1)火炎噴射プラグの電極から火花が発生して、半閉鎖空洞内の可燃ガスを点火し、空洞内部の可燃ガスの燃焼後に放出された熱量を点火源として利用し、スパークプラグ外側の燃焼室およびシリンダ内の可燃ガスを点火する。
【0045】
2)スパークプラグは1本または数本の柱状火炎を噴射し、燃焼室内の可燃ガスに進入し、可燃ガスを点火する。この「進入」は「貫通する」効果を良好にし、つまりスパークプラグから噴射される火炎がピストン最上端の端面に達することができる効果を良好にする。各柱状火炎が形成するトンネルは、一定の分散性により、各トンネルの周囲の可燃ガスを同時に完全に燃焼させる。
【0046】
3)火炎噴射プラグから噴射される火炎が火炎噴射プラグ外側の可燃ガスを揺れ動かすことにより、燃焼は一定の時間を必要とし、瞬間的に爆燃するのではない。シリンダ内部の圧力上昇率は比較的低く、ディーゼル燃料の圧縮着火の燃焼速度よりやや低いのが最も好ましい。
【0047】
4)シリンダの圧縮比を上昇させることができ、10:1から21:1が適した圧縮比の範囲である。
【0048】
5)点火強度を上昇させることにより、空燃比を上昇させることができ、希薄燃焼を実現する。
【0049】
6)層状燃焼を実現することができる。
【0050】
7)エンジンの熱仕事変換効率が10~30%上昇する。
【0051】
技術原理の分析
1)火炎噴射プラグは1本の柱状火炎がシリンダの中心軸に沿って、燃焼室およびシリンダ中の混合気を通り抜けるとき、火炎のトンネルおよび可燃ガスが接触する界面が大きく、限りない数の点状点火源を有し、同時に点火することに相当する。従来のスパークプラグの点火と比較すると、可燃ガスの燃焼速度は約4倍速い。3本以上の柱状火炎が燃焼室およびシリンダ中の混合気を通り抜けるとき、従来のスパークプラグの点火と比較して、燃焼速度は約10倍速い。
【0052】
2)火炎噴射プラグから噴出される柱状火炎は、実際には放射状を呈する。数本の柱状火炎が点火する状況で、ピストン最上端の位置に近い可燃ガスは大きい面積の火炎で点火され(柱状火炎がピストン最上端に投射する投影面積が大きい)、火炎が伝搬する前縁面は急速にピストン最上端から離れる。これにより爆燃が発生する確率を低くし、さらにたとえ爆燃が発生しても、爆燃の領域もピストンから離れている。ピストンのコネクティングロッド機構に対する爆燃の衝撃は大幅に低下し、騒音および振動が小さくなる。
【0053】
3)層状燃焼および希薄燃焼の技術案を採用したガソリンエンジンは、圧縮比を適切に上昇させることができるが、爆燃が発生することはない。エンジンの燃焼および膨張過程における空気壁の熱損失が低下し、エンジンの熱効率が上昇する。
【0054】
4)燃焼速度が速いため、従来のガソリンエンジンと比較して、火炎噴射プラグが通電点火を開始する時間を遅らせなければならない。圧縮工程の燃焼時間は短くなり、圧縮工程の負の仕事が減少する。燃焼の発熱中心が上死点に近いだけでなく、燃焼が完了する時間も上死点に近く、エンジンの熱効率が上昇する。
【0055】
本出願の技術的進歩および意義
1)業界内の技術的偏見を克服した。従来のスパークプラグおよびその点火技術は確立した技術である。数年来、業界内の常識は、スパークプラグの電極付近の空域を開放する(図6に示す)か、または大部分を開放する(図7に示す)状態を維持しなければならず、これにより燃焼室内の混合気またはその他の可燃ガスが均等に、および十分に電極の周囲に拡散することができることを保証し、電極に発生する火花で点火するのに都合がよいと考えてきた。本出願は、このような技術的偏見を打破し、当業者が想像できない技術的効果を得、突出した実質的特徴および顕著な進歩を有する。
【0056】
2)多点点火を実現することにより、内燃機関の燃焼速度を加速させると、爆燃が発生する可能性は低下する。本出願の内燃機関に適用されるガソリンの等級(オクタン価指標)は適切に低下させることができ、例えばオクタン価が89#以下のガソリンを使用すると、燃料コストは低下する。例えば、圧縮比が10:1の自動車エンジンは、70#ガソリン(オクタン価は70)を使用するか、65#ガソリン(オクタン価は65)を使用することができ、後者はナフサのオクタン価範囲に近い。あるいはナフサをガソリン燃料として直接使用すると、燃料コストは極めて低い。
【0057】
圧縮比が15:1まで増加すると、オクタン価が89(リサーチ法、RON)以下のガソリン、例えば88#を使用しても、爆燃が発生することはない。アトキンソンサイクルエンジンについて、仮想圧縮比は簡単に18:1に、実圧縮比は12:1~15:1に達することができ、70#ガソリンを使用して爆燃が発生することはない。
【0058】
当然、オクタン価が89#より高いガソリンを使用すると、内燃機関に爆燃が発生する確率はより低く、さらにガソリンのオクタン価が高いほど、エンジンの性能はより良好である。しかし、ガソリンのオクタン価が高いほど、コストが高いという欠点がある。
【0059】
火炎噴射プラグは均質混合気の点火;部分予混合拡散混合気の点火;拡散混合気の点火(層状燃焼)に適用される。
【0060】
火炎噴射プラグはHCCIの点火時間を制御する装置として適用される。
【0061】
火炎噴射プラグは高圧縮比、ガソリン直噴エンジンの点火装置として適用される。
【0062】
いくつかの説明
火炎噴射プラグの端面:火炎噴射プラグは燃焼室の一端の最上端端面に進入する。
【0063】
空燃比当量係数λは、業界内の常識である。
【0064】
本出願に適応する燃料は、ガソリン、石油、天然ガス(メタンガス)、液化石油ガス、その他のガス状炭化水素、およびその他のバイオマス燃料を含むが、これらに限定されない。
【0065】
電極間の火花発生に対する電極材料および形状の効果、ならびに電極の寿命は大きな影響を及ぼす。電極の加工方法ならびに電極の形状、構造および材料の選択方法は、既存技術である。
【0066】
電極間のパルス放電により火花を形成して混合気を点火する。このパルス放電は電離、プラズマ、レーザ点火などの技術を含むがこれに限定されず、これらの技術は既存技術である。高圧アークまたはプラズマスパークの発生に必要な高圧電源、ならびにそのスイッチ回路および制御システム、さらに火炎噴射スパークプラグの絶縁材料、ハウジング材料、その他の導電材料の選択およびその加工方法は、既存技術である。
【0067】
層状燃焼および希薄燃焼の技術および制御方法は、既存技術である。
【0068】
内燃機関の排気ガス再利用技術は、既存技術である。
【0069】
以下、実施例に基づき、図を参考にして、本発明についてより詳細に記載する。
【0070】
図中、同じ部品は同じ記号を使用する。図は実際の比率ではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、火炎噴射式スパークプラグの構造概要図である。燃焼室内部の可燃ガスは、端面噴射孔11および側面噴射孔13を介して半閉鎖空洞10に進入する。中心電極12および陰極電極14の間のギャップは高電圧の作用下で電離放電するか、または副高周波高電圧作用下でプラズマ放電し、電気火花が発生して半閉鎖空洞10内の可燃ガスを点火する。可燃ガスは半閉鎖空洞10内で高温高圧の火炎を形成し、端面噴射孔11から噴射されて柱状火炎が形成される。柱状火炎は燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスを通り抜けてピストン最上端の端面に到達し、可燃ガスを多点点火する。側面噴射孔13は同様に柱状火炎を噴射して、燃焼室内の可燃ガスを点火する。
図2A図2Aは、火炎噴射式スパークプラグの部分構造概要図である。
図2B図2Bは、図2Aの端面概要図である。
図2C図2Cは、図2Aの端面噴射孔のもう1つの配置案に対応する端面概要図である。
図3A図3Aは、火炎噴射式スパークプラグの部分構造概要図である。
図3B図3Bは、図3Aの端面概要図である。
図3C図3Cは、図3Aの端面噴射孔のもう1つの配置案に対応する端面概要図である。
図4A図4Aは、火炎噴射式スパークプラグの部分構造概要図である。
図4B図4Bは、図4Aの端面概要図である。
図5A図5Aは、火炎噴射式スパークプラグの噴射孔形状の概要図であり、葉形である。
図5B図5Bは、火炎噴射式スパークプラグの噴射孔形状の概要図であり、半円環状である。
図5C図5Cは、火炎噴射式スパークプラグの噴射孔形状の概要図であり、長方形である。
図6図6は、既存技術の従来式スパークプラグの部分図であり、電極が開放状態にあることを示す。
図7図7は、既存技術の従来式スパークプラグの部分図であり、電極が半開放状態にあることを示す。この種の構造のスパークプラグは、電極放電で火花が発生して燃焼室内の可燃ガスを点火すると、火炎が電極に沿って周囲に広がる。図6と比較して、陰極(負極)電極内側の可燃ガスの燃焼は、外側より大きい圧力を形成するため、火炎面の拡大を推進するのに有利である。図4図7と異なり、被覆面積が増加し、被覆面積の量的変化が存在するだけでなく、技術的発想、技術的措置および技術的効果の面で質的変化が存在し、量的変化から質的変化への転換である。したがって、図4の技術案は進歩性を有する。
図8図8は、本出願の内燃機関および火炎噴射プラグの概要図である。
図9図9は、火炎噴射式スパークプラグの構造概要図である。このうち28は上記第1孔を代替したスリットであり、4本のスリットはスパークプラグの端面で接続していない。空洞内部の火炎は4本のスリットを介して噴射され、燃焼室およびシリンダに進入し、シリンダ内の可燃ガスを分割および点火する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、火炎噴射式スパークプラグの構造例であり、このうち1接続ナット、2絶縁体、3金属ロッド、4インナーガスケット、5ハウジング、6導体ガラス、7ガスケット、8インナーガスケット、9絶縁体スカート部、10半閉鎖空洞、11端面噴射孔、12中心電極、13側面噴射孔、14陰極電極である。燃焼室内部の可燃ガスは、端面噴射孔11および側面噴射孔13を介して半閉鎖空洞10に進入する。中心電極12および陰極電極14の間のギャップは、高電圧作用下で電離放電するか、または副高周波高電圧作用下でプラズマ放電し、火花が発生して半閉鎖空洞内の可燃ガスを点火する。可燃ガスは半閉鎖空洞内で高温高圧の火炎を形成し、端面噴射孔から噴射されて柱状火炎が形成される。柱状火炎は燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスを通り抜けてピストン最上端の端面に到達し、可燃ガスを多点点火する。側面噴射孔13から同様に柱状火炎が噴射されて、燃焼室内の可燃ガスを点火する。
【0073】
比較的良好な技術的効果は、空洞内の燃料が燃焼した後、火炎が端面の小さな孔から噴射され、燃焼室およびシリンダ内の混合気を通り抜けてピストンの最上部に到達することができることである。さらに可燃ガス中の火炎柱の分散性が高いほど点火効果は良好であり、火炎柱の比表面積が大きいほど点火効果は良好である。各柱状火炎ビームは一定角度で分散し、これにより火炎ビームの末端周囲における混合気(可燃ガス)の体積はおおよそ同じであるが、この目的は各火炎ビーム周囲の可燃ガスの燃焼終了時間をおよそ同じにすることである。端面噴射孔および側面噴射孔は径方向に一定の噴射角を有し、これらの噴射孔が同時に円周方向に一定の斜角を有するのが比較的良好な設計であり、これにより火炎ビームが通過する可燃ガスの経路はより長くなる。さらに可燃ガスをかき混ぜることにより、回転気流を形成する。
【0074】
図8は、本出願の内燃機関および火炎噴射プラグの概要図である。このうち火炎噴射プラグ22から噴射される柱状火炎24は、分散して燃焼室16およびシリンダ15中の可燃ガスに進入し、さらに可燃ガスを通り抜けてピストン14最上端の端面に到達する。
【0075】
好ましい技術案は以下を含む。
1)側面噴射孔を空洞の端面に近い位置に配置する。側面噴射孔の位置が半閉鎖空洞の根本に近い(端面に対して比較的遠い位置)と、可燃ガスが空洞に進入するのに有利であり、火炎噴射圧力を高めるのに不利である。
【0076】
2)噴射角は数種の選択を有し、傾斜角は数種の選択を有し、噴射孔の数量および形状、端面噴射孔の面積の総和が空洞の端面面積に占める比率、端面噴射孔の面積の総和および空洞の有効容積の比率は数種の選択を有する。これらのパラメータは、空洞内部の可燃ガスの燃焼速度、温度および圧力に影響を及ぼし、火炎が噴射孔から噴射された後の噴射距離、ならびに可燃ガス中に分散する状態に影響を及ぼす。比較的良好な効果は、柱状火炎が可燃ガスを通り抜けることができるが、シリンダおよびピストンに衝撃を与えることはなく、大きな振動が生じることはないことである。以上の効果および目的に基づき、火炎噴射式スパークプラグの上記パラメータを選択することは、当業者の常識である。
【0077】
3)燃焼速度が高くなり、燃焼温度が高くなる傾向から考えて、空燃比を高めて希薄燃焼を実現する。
【0078】
4)さらに、混合気中の過度に多い酸素含量を減少させるため、一部の排気ガスを再利用することも、最適化した技術案である。
【0079】
内燃機関の構造および性能に対する要求に基づいて、火炎噴射式スパークプラグの型式およびパラメータを選択する。この種の選択方法は業界内の常識である。
【0080】
噴射圧力を高め、火炎噴射プラグの半閉鎖空洞内部における空燃比当量係数λが1付近であることを保証するため、火炎噴射プラグに単独で燃料を供給する技術案を採用することができる。あるいは、内燃機関の燃焼室に1つの空洞を設置し、単独でこの空洞に燃料噴射システムを配置し、その後従来式スパークプラグを空洞内部に取り付けることも1つの選択である。以上の2つの技術案の欠点は、構造が複雑でコストが増加することである。好ましい代替案は、内燃機関の噴射ノズルの噴射方向および火炎噴射プラグの端面の位置を相対して近くに設計することである。燃料を複数回噴射する内燃機関は、燃料を拡散して空洞に進入させるのに有利である。
【0081】
側面の小さな孔を設置しなくてよく、これにより噴射圧力および距離を高める。欠点は、燃料が燃焼室から拡散して半閉鎖空洞に進入するのに不利なことである。
【0082】
圧縮工程でピストンが上死点に近づくのに伴い、燃焼室内の可燃ガスの密度が高まり、火炎噴射プラグの空洞内部の可燃ガスが蓄積したエネルギーも次第に高まり、点火発生時の火炎噴射の強度(エネルギー)が高くなる。火炎噴射プラグから噴射される火炎ビームが通り抜ける必要がある可燃ガスの距離は短くなり、通り抜けるのに有利である。そのため、点火開始の時間が上死点に近いとき、点火効果はより良好である。
【0083】
円形以外の異形噴射孔を選択すると、図5に示すように、柱状火炎の比表面を増やし、点火効率を高めるのに有利である。
【実施例1】
【0084】
代表的な火炎噴射式スパークプラグのパラメータは、図3を例とする。図AおよびBに示す半閉鎖空洞21内の有効容積は0.6立方ミリメートルである。端面噴射孔の数量は7(1つの中心噴射孔24を含む)であり、孔形は円形である。中心噴射孔24の噴射角は0である。その他の6つの端面噴射孔18の径方向の噴射角は30度であり、円周方向の斜角は20度である。端面噴射孔18(中心噴射孔24を含む)の総面積は空洞内容積(端面に対応する)の円形断面面積の25%である。側面噴射孔17の数量は2であり、対称に分布し、孔形は円形である。側面噴射孔の孔径は端面噴射孔の2/3であり、側面噴射孔17の径方向の噴射角は45度であり、円周方向の斜角は15度である。
【0085】
図Bを代替する図Cを使用して端面噴射孔を配置するとき、端面噴射孔18(中心噴射孔24を含む)の数量は4であり、端面噴射孔18(中心噴射孔24を含む)の総面積は空洞内容積の円形断面面積の20%である。図Cの技術案は図Bと比較して、端面噴射孔18(中心噴射孔24を含む)の総面積および空洞内容積(端面に対応する)の円形断面面積の比率は低下し、噴射圧力は高くなる。同時に、端面噴射孔の数量は減少し、単一の噴射孔の面積は増加するため、噴射距離は増加する。
【実施例2】
【0086】
図2の中心電極23は半閉鎖空洞21のハウジング22内部に隠れ、図3の中心電極23の半露出および図4の中心電極23の露出と比較して、電極の火花が燃焼室の可燃ガスを直接点火するのを防止している。点火動作は2つの部分に分けられ、1つは電極の火花が半閉鎖空洞21内の可燃ガスを点火し、2つ目は半閉鎖空洞21内の可燃ガスの燃焼後に半閉鎖空洞21から噴射され、燃焼室およびシリンダ中の可燃ガスを点火する。このように、燃焼室の最上部および底部、さらにはシリンダ深部の可燃ガスが点火される時間間隔が短くなる。欠点は、電極付近の可燃ガスの濃度が、燃料が燃焼室で拡散する時間の影響を比較的大きく受けることである。この種の火炎噴射スパークプラグは燃料を充分に予混合した内燃機関の点火装置として、または燃料を複数回噴射してシリンダに進入させ、さらに燃焼室中のスパークプラグ端面の位置の燃料濃度が相対して比較的高い内燃機関の点火装置としてより適している。
【実施例3】
【0087】
図4に示す火炎噴射式スパークプラグについて、正負電極(23および22)の位置は、半閉鎖空洞21および燃焼室の境界の縁部(この縁部はちょうど正負電極間のギャップの位置であり、環状噴射孔26の位置でもある)にあり、半閉鎖空洞21の外に露出し、電極周囲の可燃ガスの濃度および空燃比率は燃焼室の大部分の領域と同じであり、電極による点火の信頼性はほとんど可燃ガスが半閉鎖空洞21内に拡散する効果の影響を受けない。この火炎噴射プラグは一般的な内燃機関の点火要求に適用される以外に、希薄燃焼エンジンの点火装置としてより適しており、例えば予混合圧縮着火ガソリンエンジン(HCCI)の点火装置とする。
【0088】
予混合圧縮着火ガソリンエンジンが始動段階で火花点火装置を用いて点火するとき、空燃比当量係数λが1より大きい状況で、直接点火することができる。
【実施例4】
【0089】
本出願の火炎噴射式スパークプラグの点火強度は高く、エネルギーは大きく、多点点火に属するため、本出願のスパークプラグは予混合圧縮着火ガソリンエンジンの強制点火装置とすることができる。既存の予混合圧縮着火ガソリンエンジンの各種技術的措置および技術案を基に、予噴射燃料、ならびに高温排気ガスおよび空気の混合気の化学反応による発熱当量を低下させ、圧縮着火の実現に必要なエネルギーまで安全な距離を保持し、混合気に過早着火および爆燃の現象が発生することはないことを確実に保証する。その後圧縮過程でピストンが上死点位置付近に到達するとき、本出願の火炎噴射式スパークプラグで点火し、予混合圧縮着火のトリガーとし、強制点火を実現する。すなわち火炎噴射式スパークプラグで強制点火するエネルギーが、予混合圧縮着火を起動する。これにより、予混合圧縮着火ガソリンエンジンは、回転速度および負荷を大幅に変換する動作環境で動作することができ、自在な制御は簡便で、失火する、または過早着火により爆燃が発生することはなく、自動車の単一の動力装置としての装備条件を備えている。
【実施例5】
【0090】
図5に示すのは数種の異形噴射孔の断面であり、このうち図Aは葉形、図Bは半円形、図Cは長方形である。図5に示す異形噴射孔の断面以外に、その他の異形噴射孔の断面として円環状、三角形、3本の辺が内に凹んだ三角形、3つの長方形がつながった三葉形、および上記形状の組合せを含むが、これに限定されない。
【実施例6】
【0091】
火炎噴射式スパークプラグの点火エネルギーを高めるため、半閉鎖空洞の有効容積を増加する。図1のガスケット7左側のハウジング肩部の寸法を拡大すると同時に、肩部右側のハウジングおよびガスケット7の寸法を拡大する。必要がある場合、ガスケット7およびその左側の肩部は、スパークプラグのうち直径が最大の部位になることができる。例えば、図2図3図4中のネジ山15部位の直径を20ミリメートルまで増加する。あるいは、火炎噴射プラグの軸方向における半閉鎖空洞の長さを延ばす。
【実施例7】
【0092】
火炎噴射式スパークプラグはターボエンジンに点火装置として応用される。半閉鎖空洞内の気流に対して、外側の燃焼室の高速気流が揺れ動かす影響は比較的小さく、点火が安定し、信頼性が高い。
【実施例8】
【0093】
火炎噴射式スパークプラグは工業炉、かまどなどの装置に点火棒として応用される。
【0094】
火炎噴射式スパークプラグの応用範囲は、上記実施例を含むがこれらに限定されない。火炎噴射式スパークプラグの構造および外観、外形は、図1図2図3図4図5に示すものを含むがこれらに限定されない。
【実施例9】
【0095】
図9に示す火炎噴射式スパークプラグについて、28は上記第1孔を代替するスリットであり、4本のスリットはスパークプラグの端面を均等に分割し、さらにスパークプラグの端面は接続していない。空洞内部の火炎は4本のスリットを介して噴射され、燃焼室およびシリンダに進入し、シリンダ内の可燃ガスを分割および点火する。4本のスリットは、均等に分けた3本のスリットまたは5本以上のスリットで代替することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 接続ナット
2 絶縁体
3 金属ロッド
4 インナーガスケット
5 ハウジング
6 導体ガラス
7 ガスケット
8 インナーガスケット
9 絶縁体スカート部
10 半閉鎖空洞
11 端面噴射孔
12 中心電極
13 側面噴射孔
14 陰極電極
15 ネジ山
16 導電棒
17 側面噴射孔
18 端面噴射孔
19 噴射角
20 絶縁体
21 半閉鎖空洞
22 ハウジング、電極(陰極)
23 中心電極
24 中心噴射孔
25 導電ガラス
26 環状噴射孔
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9