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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】防弾堤及び防弾堤構造体
(51)【国際特許分類】
   F41J 13/02 20090101AFI20220623BHJP
【FI】
F41J13/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017226730
(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2019095151
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】西本 安志
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-139300(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0050906(KR,A)
【文献】特開平8-136194(JP,A)
【文献】特開2005-265283(JP,A)
【文献】特開2000-154998(JP,A)
【文献】特開2016-211755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射撃訓練用の標的に備えられる標的下部装置を保護するための防弾提構造体であって、
少なくとも一部が飛翔する弾丸を弾き返さずに貫通可能な弾性材料よりなる囲いと、前記囲いに囲まれた空間内に充填された弾丸捕捉材とを備えた防弾堤を複数個連設してなる、防弾堤構造体
【請求項2】
前記囲いは平面視正方形である、請求項1記載の防弾堤構造体
【請求項3】
前記囲いに、手を掛けるための凹部又は孔を設けている、請求項1又は請求項2記載の防弾堤構造体
【請求項4】
前記囲いは容易に切断可能である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の防弾堤構造体
【請求項5】
前記囲いは前記弾性材料よりなる複数の板状部材を組み合わせてなる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の防弾堤構造体
【請求項6】
各前記板状部材には凹凸が形成されており、隣接し合う前記板状部材同士の凹凸を噛み合わせ可能である、請求項5記載の防弾堤構造体
【請求項7】
隣接し合う前記板状部材が互いに当接した状態で、前記空間内に配置された支持部材に固定される、請求項5記載の防弾堤構造体
【請求項8】
前記囲いの底端開口を覆う底板を設けた、請求項1から請求項7のいずれかに記載の防弾堤構造体
【請求項9】
前記囲いの外面の一部を覆うように弾丸を弾き返すための剛性板を付設した、請求項1から請求項8のいずれかに記載の防弾堤構造体
【請求項10】
前記囲いの一部は、弾丸を弾き返すための剛性材料よりなる、請求項1から請求項8のいずれかに記載の防弾堤構造体
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の防弾堤構造体を構成するための防弾提。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防弾堤及び防弾堤構造体に関し、特に射撃訓練用に設置される標的の隠顕駆動装置等の標的下部装置を保護するための防弾堤及び防弾堤構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、主に室内に設置されるように構成された射撃訓練装置として、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3の如きものが公知となっている。これらの射撃訓練装置に用いられる標的は、その下部に、隠顕駆動装置や、スクリーンに標的を映写するための映写装置等の下部装置を備えており、このような標的の下部装置に弾丸が直接当たって装置が破損するのを防ぐため、防弾堤が設置される。
【0003】
室内に設置されるような構造の射撃訓練装置では、射手の位置が固定されている上に、不測の方向の跳弾を生じるような障害物もない。従って、防弾堤は、特許文献2及び特許文献3に示すように、射手の位置に対して正面向きで、弾丸の飛翔方向に対し直交する方向を長手方向として横長状に延設される幅厚の立塀状のものとなっている。
【0004】
一方、野外の任意位置に射撃訓練用の標的を設置する場合には、地面を掘って標的の下部を地中に埋設するか、無石土を封入した土嚢を積み重ねて標的の下部の周囲に配置するといった方法で、標的の下部を保護するものとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-27698号公報
【文献】特開平11-108597号公報
【文献】特開2002-318097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地面を掘って標的の下部を埋設する作業にしても、無石土を封入した土嚢を積載配置する作業にしても、多大な労力と時間を要し、又、演習後には、同じだけの時間と労力を要する撤去作業が求められる。更に、仮に設置した土嚢をそのまま残しておくとしても、土嚢は耐久性が乏しいため、その補修作業を強いられることとなる。
【0007】
野外での射撃訓練場の設営については、防弾堤の設置に伴う上記のような労力や作業時間の軽減が求められる。そこで、特許文献2や特許文献3に示すような、予め防弾堤として完成されたものを現場に搬送し、これを設置することが考えられる。
【0008】
しかし、野外では、射手の位置が固定されていないことや、跳弾が懸念されるような障害物が存在することで、一つの標的の下部装置を多方面にわたって防弾する必要がある場合や、設置場所に凹凸や傾斜がある場合等、防弾堤を設置する上で様々な困難な状況がある。特許文献2及び特許文献3に示す防弾堤は、一定の方面向きに構成された単純な形状や固定された大きさのものであり、設置を必要とする全ての領域をカバーできず十分な防弾効果が得られない虞がある。更に、凹凸状の土地や傾斜地では安定した状態に設置するのが困難である。又、上記のような野外のどのような状況にも対応すべくそれぞれの状況に適した構造の防弾堤を多種類用意しておくのはコストがかかる。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、搬送、設置、撤収の作業を簡単且つ短時間で行うことができる低コストの構造のものであり、野外等での様々な設置場所の状況に対応して、安定した状態で設置可能で、十分な防弾効果を発揮し、更に、耐久性の高い構造の防弾堤及び防弾堤構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を解決するために、請求項1記載の発明は、射撃訓練用の標的に備えられる標的下部装置を保護するための防弾提構造体であって、少なくとも一部が飛翔する弾丸を弾き返さずに貫通可能な弾性材料よりなる囲いと、囲いに囲まれた空間内に充填された弾丸捕捉材とを備えた防弾堤を複数個連設してなる、防弾堤構造体である。
【0011】
このように構成すると、複数の防弾堤の様々なレイアウトにより様々な形状や大きさの防弾堤構造体が構成される。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、囲いは平面視正方形である。
【0013】
このように構成すると、個々の囲いについて規格を統一し、複数個の囲いを並べたり積み上げたりしやすいものとなる。又、複数の防弾堤を配置する場合に、個々の防弾堤の形状によるレイアウトの制限が少なくなる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、囲いに、手を掛けるための凹部又は孔を設けている。
【0015】
このように構成すると、囲いを搬送するときに凹部又は孔が手掛かりになる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、囲いは容易に切断可能である。
【0017】
このように構成すると、囲いを切断して所望の形状のものに変更できる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、囲いは弾性材料よりなる複数の板状部材を組み合わせてなる。
【0019】
このように構成すると、囲いを構成するまで個々の板状部材に分解した状態にすることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、各板状部材には凹凸が形成されており、隣接し合う板状部材同士の凹凸を噛み合わせ可能である。
【0021】
このように構成すると、ボルト等の締結部材が不要となる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明において、隣接し合う板状部材が互いに当接した状態で、空間内に配置された支持部材に固定される。
【0023】
このように構成すると、隣接し合う板状部材同士が、当接した状態で、支持部材を介して一体化される。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の構成において、囲いの底端開口を覆う底板を設けたものである。
【0025】
このように構成することで、囲いに囲まれた空間に充填した弾丸捕捉材の、囲いの底端開口からの漏出が防止される。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発明の構成において、囲いの外面の一部を覆うように弾丸を弾き返すための剛性板を付設したものである。
【0027】
このように構成すると、弾丸が囲い及び囲いの中の弾丸捕捉材を通過しても、剛性板に弾き返される。又、剛性板は囲いとは別であり、その配置について自在性を有する。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発明の構成において、囲いの一部は、弾丸を弾き返すための剛性材料よりなるものとした。
【0029】
このように構成すると、弾丸が囲いの中の弾丸捕捉材を通過しても、囲いの、剛性材料よりなる部分に弾き返されて、保護対象に弾丸が届くことはない。別途に剛性部材を設置することなく、囲いを設置すれば、剛性材料よりなる部分による保護がなされる状態となる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の防弾堤構造体を構成するための防弾堤である。
【0031】
このように構成すると、設置するまで囲いと弾丸捕捉材とに分離しておくことが可能である。又、所望の場所に防弾堤を設置可能であり、設置した場所にて、防弾堤構造体として防弾機能を発揮する。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、複数の防弾堤の様々なレイアウトにより様々な形状や大きさの防弾堤構造体が構成されるので、保護対象が、野外等での任意の場所でどのような状況で設置されていても、それに見合う良好な形状及び大きさの防弾堤構造体を設置して、確実な防弾効果を得られるものとすることができる。
【0033】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、個々の囲いについて規格を統一し、複数個の囲いを並べたり積み上げたりしやすいものとなるので、設置するまでの搬送が容易なものとなる。又、規格化により個々の囲いを低コストで構成できる。更に、複数の防弾堤を配置する場合に、個々の防弾堤の形状によるレイアウトの制限が少なくなるので、複数の防弾堤を様々な個数やレイアウトで配置して、個々の保護対象について十分な防弾効果を得られる防弾堤構造体を簡単に設置でき、又、撤収できる。
【0034】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、囲いを搬送するときに凹部又は孔が手掛かりになるので、囲いの搬送にかかる労力を軽減する。
【0035】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、囲いを切断して所望の形状のものに変更でき、防弾堤の設置場所が傾斜していたり地表の凹凸が多いものであっても、そのような設置場所の状況に応じた形状の防弾堤を安定した状態で設置できる。
【0036】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、囲いを構成するまで個々の板状部材に分解した状態にすることができ、搬送にかかる労力をより一層軽減できる。
【0037】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、ボルト等の締結部材を用いずに囲いを構成することができるので、設置及び撤収が容易な防弾堤を構成できる。
【0038】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、隣接し合う板状部材同士が、当接した状態で、支持部材を介して一体化されるので、板状部材自体は嵌合に必要な凹部や凸部等を有しない単純な形状に構成できて製造容易で低コストのものとすることができる。又、隣接し合う板状部材の当接面間に隙間があっても、支持部材でその隙間を埋めることができ、防弾堤としての機能を確保できる。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、囲いに囲まれた空間に充填した弾丸捕捉材の、囲いの底端開口からの漏出が防止されるので、このような弾丸捕捉材の漏出の心配なく、防弾堤の搬送が可能であり、又、設置した防弾堤の良好な状態を保持することができ、撤収時にも、弾丸捕捉材を回収する作業をするまでは囲いの中にとどめておくことができ、搬送、設置、撤収が容易で、良好な防弾効果の得られる状態が長く保持される耐久性の高い防弾堤を構成することができる。
【0040】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発明の効果に加えて、弾丸が囲い及び囲いの中の弾丸捕捉材を通過しても、剛性板に弾き返されて、保護対象に弾丸が届くことはないので、確実な防弾効果を得ることができる。又、剛性板は囲いとは別であり、その配置について自在性を有するので、保護対象に合わせて剛性板の位置を工夫し様々な状態の保護対象を確実に保護できる防弾堤を構成できる。
【0041】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発明の効果に加え、弾丸が囲いの中の弾丸捕捉材を通過しても、囲いの、剛性材料よりなる部分に弾き返されて、保護対象に弾丸が届くことはないので、確実な防弾効果を得ることができる。又、別途に剛性部材を設置することなく、囲いを設置すれば、剛性材料よりなる部分による保護がなされる状態となるので、設置及び撤収の容易な防弾堤を構成できる。
【0042】
請求項11記載の発明は、設置場所まで囲いと弾丸捕捉材とに分離しておくことが可能なので、現地で囲いを設置してから弾丸捕捉材を充填するということが可能であり、囲いそのものについては設置するまで軽便な状態にしておくことができ、設置場所までの搬送に係る労力を軽減する。又、所望の場所に防弾堤を設置可能であり、設置した場所にて、防弾堤構造体として防弾機能を発揮するので、野外か室内かを問わず任意の場所に設置される標的下部装置について十分な保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第一の実施の形態による防弾堤を複数個連設して構成された防弾堤構造体の斜視図である。
図2】同じ防弾堤構造体の平面図である。
図3】同じ防弾堤構造体の正面図である。
図4】同じ防弾堤構造体の側面図である。
図5】同じ防弾堤構造体の、図3におけるV-V線矢視断面図である。
図6】組立中における第一の実施の形態による防弾堤の分解斜視図である。
図7図6の防弾堤に用いられる囲いの斜視図である。
図8】第一の実施の形態による防弾堤における底板及び天板用の基本板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその側端部を主面に沿う方向の視線で見た図である。
図9】第一の実施の形態による防弾堤における囲い構成用の第一嵌合板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその凹凸状側部を主面に沿う方向の視線で見た図である。
図10】第一の実施の形態による囲い構成用の第二嵌合板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその凹凸状側部を主面に沿う方向の視線で見た図である。
図11】剛性板を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその側部を主面に沿う方向の視線で見た図である。
図12】剛性板の連結用のアングル部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図13】傾斜地に設置された防弾堤構造体の正面図である。
図14】第二の実施の形態による防弾堤の囲いの分解斜視図である。
図15】第三の実施の形態による防弾堤の囲いの斜視図であって、(a)は全板状部材及び全支柱材の組立を完成した状態の図、(b)は全板状部材及び全支柱材のうちの一部の組立を終えた状態の図である。
図16】第四の実施の形態による防弾堤の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、第一の実施の形態による防弾堤を複数個連設して構成された防弾堤構造体の斜視図であり、図2は、同じ防弾堤構造体の平面図であり、図3は、同じ防弾堤構造体の正面図であり、図4は、同じ防弾堤構造体の側面図であり、図5は、同じ防弾堤構造体の、図3におけるV-V線矢視断面図であり、図6は、組立中における第一の実施の形態による防弾堤の分解斜視図であり、図7は、図6の防弾堤に用いられる囲いの斜視図である。
【0045】
以下、図1から図7を参照して防弾堤構造体1の構成を説明する上で、図1に示すように射手から見て立状にセットされた標的9に正対する向きをこの実施の形態における前方Fとする。
【0046】
上下に開口する立方形状に構成される囲い2と、囲い2で囲まれる空間Sに充填される弾丸捕捉材3と、囲い2の底端開口を覆うように囲い2に取り付けられた底板4と、囲い2の上端開口を覆うように囲い2に取り付けられた天板5とを備えた防弾堤が構成され、このような防弾堤を複数個(図示の実施の形態では五個)連設して防弾堤構造体1が構成される。更に防弾堤構造体1を構成する複数の防弾堤のうちいくつかについては、その囲い2に剛性板6が沿設されている。
【0047】
各囲い2は、弾性材料よりなる四つの板状部材を平面視で「ロ」の字となるように組み合わせて構成される。この構成については後に詳述する。
【0048】
弾丸捕捉材3は、囲い2で囲まれる空間Sに進入した弾丸が跳ねたり更に突き進んだりすることのないように捕捉できるものであり、且つ、使用後には、例えば篩にかけるという簡単な方法で、容易に弾丸と弾丸捕捉材3とを分別できるものである。
【0049】
弾丸捕捉材3として好適なものの典型例としては、ゴムチップや無石土がある。ゴムチップについては、例えば直径約3mmの粒状とすることで、弾丸を捕捉する機能は確保しつつも、弾丸がゴムチップの粒にめり込むという事態を生ずることは少なくなり、使用後に篩をかけての弾丸との分別作業が楽になる。無石土は、予め篩で跳弾を引き起こすような石を取り除いて残った細粒状の土よりなり、良好な弾丸捕捉材3としての機能を有する。
【0050】
このような粒状のゴムチップや無石土を、直接、各囲い2で囲まれる空間Sに充填してもよく、或いは、ゴムチップや無石土を一定量ずつ土嚢袋に詰めて土嚢を構成し、こうしてできた土嚢を空間S内に充填するものとしてもよい。
【0051】
囲い2の数やレイアウトについては、標的下部装置9aにとって良好な防弾効果を得るのに好適なものが選択され、この囲い2の数及びレイアウトを様々なものとすることで、様々な大きさや形状の防弾堤構造体1を構成できる。
【0052】
図1から図5は、防弾堤構造体1の一つの構成例を示すものである。ここで図示される防弾堤構造体1は、五つの防弾堤を備えている。各防弾堤の囲い2は、囲い2で囲まれる空間Sが上下向きに開口する状態にて、その構成部材である前述の四つの板状部材がそれぞれ前後左右の側壁をなすように配置される。
【0053】
標的下部装置9aの後方にて、三つの防弾堤が左右方向の一列状に連設されている。この一列のうちで、左端に配置される防弾堤の囲い2(囲い2Aとする)は標的下部装置9aの左後方に、右端に配置される防弾堤の囲い2(囲い2Cとする)は標的下部装置9aの右後方に、真中に配置される防弾堤の囲い2(囲い2Bとする)は標的下部装置9aの直後に、それぞれ配置される。
【0054】
残りの二つの囲い2は標的下部装置9aの左右両側に振り分けて配置されている。標的下部装置9aの左側の防弾堤の囲い2(囲い2Dとする)と標的下部装置9aの左後方の防弾堤の囲い2Aとが前後方向の一列状に連設されており、標的下部装置9aの右側の防弾堤の囲い2(囲い2Eとする)と標的下部装置9aの右後方の防弾堤の囲い2Cとが前後方向の一列状に連設されている。
【0055】
このように連設された五つの囲い2のうち、後側三つの囲い2の中で真中の囲い2Bと、前側の左右二つの囲い2C・2Dとで囲まれる空間が確保され、この空間に標的下部装置9aが配置されることとなる。
【0056】
隣り合う囲い2と囲い2とは、ビス等の締結具を用いて締結され、これにより複数の防弾堤同士が固定されて、一つの防弾堤構造体1を構成している。
【0057】
標的下部装置9aの直後の防弾堤の囲い2Bの前端面、標的下部装置9aの左側の防弾堤の囲い2Dの右端面、標的下部装置9aの右側の防弾堤の囲い2Eの左端面のそれぞれに沿って、鋼材等よりなる剛性板6が配設されている。
【0058】
万一、弾丸が、囲い2も囲い2の中の弾丸捕捉材3も全て貫通して、標的下部装置9aに届きそうになっても、この剛性板6にて遮蔽して、弾丸を標的下部装置9aまでには届かせないようにしている。剛性板6の囲い2への取り付け構造等については、後に詳述する。
【0059】
更に、図示される防弾堤構造体1における各防弾堤は、地面や床面等に敷設される底板4を備えている。即ち、防弾堤構造体1全体では、囲い2と同数の底板4が備えられている。各底板4に各囲い2の底端を設置することで、囲い2で囲まれる空間Sの下端開口を塞ぎ、空間S内に充填される弾丸捕捉材3の漏れを防いでいる。
【0060】
底板4は囲い2にビス等の締結具を用いて締結される。こうして構成される囲い2及び底板4よりなる容器状のユニットを、防弾堤構造体1の設置行程において、所望の位置に配置し、このユニットにおける囲い2で囲まれた空間Sに弾丸捕捉材3を充填する。
【0061】
その後、弾丸捕捉材3が風や跳弾等で囲み2の外側に飛散するのを防ぐため、ビス等の締結具を介して、天板5を囲い2の上端に取り付け、囲い2の上端開口を塞ぐ。こうして、囲い2、弾丸捕捉材3、底板4、天板5よりなる一つの防弾堤が完成する。
【0062】
図8は、第一の実施の形態による防弾堤における底板及び天板用の基本板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその側端部を主面に沿う方向の視線で見た図であり、図9は、第一の実施の形態による防弾堤における囲い構成用の第一嵌合板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその凹凸状側部を主面に沿う方向の視線で見た図であり、図10は、第一の実施の形態による囲い構成用の第二嵌合板状部材を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその凹凸状側部を主面に沿う方向の視線で見た図である。
【0063】
図1から図7に加えて、図8を参照して、各底板4及び各天板5として、図8に示す一つの基本板状部材10がそのまま用いられる。一方、図9及び図10を参照して、囲い2は、一対の図9に示す第一嵌合板状部材20と、一対の図10に示す第二嵌合板状部材30とを組み合わせて構成される。これら基本板状部材10、第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30は、同じ弾性材料を、それぞれの形に成形して構成される。
【0064】
第一板状部材20及び第二板状部材30は、防弾堤の囲み2として設置され、弾丸が貫通した後に、弾丸貫通痕としての孔の口径が縮まること、最も望ましくは縮まって塞がってしまうことが求められる。底板4及び天板5として用いられる基本板状部材10にも同様の機能が求められる。これらの板状部材10・20・30の弾性材料は、このような機能を発揮するような弾性を有することを要する。
【0065】
この弾性材料として好適なものの典型例は、ゴムである。ここで、弾丸捕捉材3として用いられるゴムチップと同じゴム材料を固化し成形して、板状部材10・20・30を構成することも考えられる。この方法で板状部材10・20・30を構成することで、弾丸捕捉材3と全く同じ材料よりなる囲い2、底板4、及び天板5を構成でき、弾丸が防弾堤構造体1に撃ち込まれる過程で弾道が変化しにくく、不測の跳弾を生じにくい防弾堤構造体1を構成できる。
【0066】
基本板状部材10は、互いに対向する一対の正方形状の主面11と、両主面11・11間に介設される四つの側面12とを有する六面体となっている。正方形状の主面11の一辺の長さをL、両主面11・11間の四側面12の幅、即ち、基本板状部材10の厚みをW1としている。
【0067】
基本板状部材10における主面11の、一辺長をLとする正方形状は、第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30を成形する上での基準となる。即ち、基本板状部材10の主面11は、囲い2の下端面と当接する底板4の上面になり、又、囲い2の上端面と当接する天板5の下面になる。各囲い2を図1に示すように配置するものとし、底板4及び天板5の前後左右の端面が、囲い2の前後左右の端面と面一に配されるものとすれば、基本板状部材10の主面11の一辺長Lが、囲い2の前後左右の外端面の水平方向の長さを画することとなる。
【0068】
そこで、防弾堤構造体1の囲い2として立状に配された状態と想定して、第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30は、それぞれの水平方向の最大長さを、基本板状部材10の主面11の正方形状の一辺長と同じく、Lとしている。
【0069】
以後の第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30の説明は、同様に、防弾堤の囲い2として立状に配された状態と想定してのものとする。
【0070】
第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30の上下方向の長さ(高さ)をTとしている。この高さTはそのまま囲い2の高さとなるものであり、囲い2の高さをどのように設定するかによってきまる寸法である。この高さTを、第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30の水平方向の最大長さLと同一にする必要はないが、板状部材10・20・30の規格化を図るという点で、同一にする(T=L)ことが好ましい。
【0071】
又、第一嵌合板状部材20及び第二嵌合板状部材30の厚みをWとしている。この厚みWはそのまま囲い2の厚みとなるものであり、囲い2の厚みをどのように設定するかによってきまる寸法である。この厚みWを、底板4及び天板5としての基本板状部材10の厚みW1と同一にする必要はないが、板状部材10・20・30の規格化を図るという点で、同一にする(W=W1)ことが好ましい。
【0072】
第一嵌合板状部材20は対向状の一対の主面21を有し、第二嵌合板状部材30は対向状の一対の主面31を有する。主面21・31は、空間Sに対峙する囲い2の内周面、及び、これに対向する囲い2の外周面として配置されることとなる。各第一嵌合板状部材20の両主面21・21間、及び、各第二嵌合板状部材30の両主面31・31間の、水平方向(主面21・31に対し直角の方向。以後、この方向を「厚み方向」とする)の距離が、前述の厚みWとなっている。
【0073】
第一嵌合板状部材20の両側端部はそれぞれ、上下二段の切欠23を有する凹凸状となっており、第二嵌合板状部材30の両側端部はそれぞれ、上中下三段の切欠33を有する凹凸状となっている。第一嵌合板状部材20と第二嵌合板状部材30とを、両者の上端及び下端の高さを揃えて並べると、第一嵌合板状部材20の切欠23と、第二嵌合板状部材30の切欠33とは、上下に互い違いに並ぶ状態となる。
【0074】
これらの切欠23・33がなければ、各主面21・31は、上辺及び下辺の長さをLとし、上下方向の両辺の長さをTとする直角四辺形である。更に、T=Lである場合は、一辺長がLの正方形である。
【0075】
別の言い方をすれば、第一嵌合板状部材20の両側端部はそれぞれ、上中下三段の凸部24を有し、上段の凸部24と中段の凸部24との間が上段の切欠23となっており、中段の凸部24と下段の凸部24との間が下段の切欠23となっている。又、第二嵌合板状部材30の両側端部はそれぞれ、上下二段の凸部34を有し、上段の凸部34の上側が上段の切欠33となっており、上段の凸部34と下段の凸部34との間が中段の切欠33となっており、下段の凸部34の下側が下段の切欠33となっている。
【0076】
各切欠23・33の厚み方向の幅はWである一方、主面21・31沿いの方向における切欠23・33の水平方向の深さも、同じくWとしている。従って、全ての切欠23・33の形状は、一辺長をWとする正方形状の水平方向の断面を有し、上下方向の長さをT/5(Tの五等分)とする、四角柱状となっている。即ち、各主面21・31に沿って見ても、各主面21・31に対し直角方向に見ても、水平方向の辺長をW、上下方向の辺長をT/5(T=Lの場合、L/5)とする長方形となっている。そして、各凸部24・34の形状も、これら各切欠23・33の形状と合致する。
【0077】
第一嵌合板状部材20の両側に対向状に形成される両凸部24・24の先端同士の間の水平方向の距離、及び、第二嵌合板状部材30の両側に対向状に形成される両凸部34・34の先端同士の間の水平方向の距離が、各第一嵌合板状部材20及び各第二嵌合板状部材30の水平方向の最大長さLとなる。
【0078】
第一嵌合板状部材20は、主面21の上端にて上段の凸部24を両側に形成し、主面21の下端にて下段の凸部24を両側に形成しているので、囲い2の上端面及び下端面となる第一嵌合板状部材20の上端面22及び下端面22は、厚み方向の辺長をW、主面21沿いの方向の辺長をLとする四角形に形成されている。
【0079】
一方、第一嵌合板状部材20の両側に対向状に形成される両切欠23・23の奥端同士の間の水平方向の距離、及び、第二嵌合板状部材30の両側に対向状に形成される両切欠33・33の奥端同士の間の水平方向の距離は、各第一嵌合板状部材20及び各第二嵌合板状部材30の水平方向の最大長さLから、厚みWの二倍分を減じた長さ(L-2W)となる。
【0080】
第二嵌合板状部材30は、主面31の上端にて上段の切欠33を両側に形成し、主面31の下端にて下段の切欠33を両側に形成しているので、囲い2の上端面及び下端面となる第二嵌合板状部材30の上端面32及び下端面32は、厚み方向の辺長をW、主面31沿いの方向の辺長を(L-2W)とする四角形に形成されている。
【0081】
囲い2を構成するに当たっては、一対の第一嵌合板状部材20を互いに対向状に配置するとともに、両第一嵌合板状部材20・20間にて、一対の第二嵌合板材30・30を、互いに対向状に、且つ、第一嵌合板状部材20・20に対し直角方向に配置する。各第一嵌合板状部材20の各切欠23に各第二嵌合板状部材30の各凸部34を嵌入し、各第二嵌合板材30の各切欠33に各第一嵌合板状部材20の各凸部24を嵌入することで、一対の第一嵌合板材20と一対の第二嵌合板材30とを組み合わせ、この組み合わせたものを囲い2とする。
【0082】
ここで、前述の寸法設定により、第二嵌合板状部材30の各凹部34に嵌入した第一嵌合板状部材20の各凸部24の先端は第二嵌合板状部材30の外側の主面31と面一となり、第一嵌合板状部材20の各凹部24に嵌入した第二嵌合板状部材30の各凸部34の先端は第一嵌合板状部材20の外側の主面21と面一となる。従って、囲い2の前後左右の外側端面は、全て、凹凸のない平坦な鉛直の面となり、又、水平方向の辺長をL、鉛直方向の辺長をTとする直角形の面となる。更に、T=Lと設定している場合には、一辺の長さをLとする正方形の面となる。即ち、底板4又は天板5として用いられる基本板状部材10の主面11と同じ形状の面となる。
【0083】
更に、各第二嵌合板状部材30には、対向状の両端面32・32のうち、上端面とされる方の端面32寄りの位置で、主面31にて開口する横長スリット状の開口部35が形成されている。開口部35は、搬送時に手を掛けられるものであればよく、両主面31・31間の厚み方向に貫通する孔であっても、一方の主面31のみにて開口する窪み(凹部)であってもよい。各囲い2においては対向する一対の第二嵌合板状部材30に開口部35が設けられている状態となり、これら一対の開口部35に両手をかけた状態で囲い2を搬送することができる。
【0084】
図11は、剛性板を示す図であって、(a)はその主面を主面に対し直角方向の視線で見た図、(b)はその側部を主面に沿う方向の視線で見た図であり、図12は、剛性板の連結用のアングル部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【0085】
図1から図6に加えて、図11及び図12を参照して、図示される防弾堤構造体1は、三つの剛性板6を備えており、それぞれ、前述の如く、標的9の直後の防弾堤における囲い2の前端側面、標的9の左側の防弾堤における囲い2の右端側面、標的9の右側の防弾堤における囲い2の左端側面に沿って配設され、剛性板6の四隅に設けたボルト孔6aを介してビス等の締結具にてこれらの各囲い2に締止される。
【0086】
各剛性板6は、薄板状であり、囲い2の側面に対峙させる四角形状の面を有する。この四角形状の面の寸法は、囲い2の側面を略全部覆うことが望ましい一方で、上記三つの囲い2に囲まれる空間の中で、三つの剛性板6を「コ」の字に配置する必要があるので、剛性板6自体の厚みも考慮して、水平方向の辺長を、囲い2の各側面の水平方向の長さLよりも少し小さなL1とし、上下方向の辺長を、囲い2の高さTよりも少し小さなT1としたものとなっている。囲い2の側面が正方形(即ちL=T)であれば、一辺長をL1とする正方形であることが望ましい。
【0087】
標的9の左側の囲い2の右端面に沿って配置される剛性板6、及び、標的9の右側の囲い2の左端面に沿って配置される剛性板6は、標的9の直前の囲い2の後端面に沿って配置される剛性板6に対し、直角の方向に配置される。
【0088】
そこで、標的9の左側の剛性板6の前端部と標的9の直前の剛性板6の左端部とを、鋼材等よりなるアングル部材7を介して連結し、標的9の右側の剛性板6の前端部と標的9の直前の剛性板6の右端部とを、他のアングル部材7を介して連結する。これにより、三つの剛性板6が「コ」の字に連結され、隣接し合う剛性板6間の隙間がアングル部材7で埋められ、当該隙間を介して弾丸が標的下部装置9aに届くことがないようにするとともに、これら剛性板6の剛性を増すものとしている。
【0089】
アングル部材7として、平面視でL字に曲折された板材が用いられる。即ち、アングル板材は、互いに直角の方向に配される板状部7a及び板状部7bを有している。両板状部7a・7bは、鉛直方向に延伸するように配される。板状部材7bにはボルト孔7cが設けられている。これらのうち、板状部7aが標的9の左側又は右側の防弾堤の囲い2に沿設した剛性板6に当接され、板状部7bが標的9の直後の防弾堤の囲い2に沿設した剛性板6に当接され、ボルト8等の締結具で各剛性板6に締結される。
【0090】
図13は、傾斜地に設置された防弾堤構造体の正面図である。
【0091】
図を参照して、前述の如くゴム等の弾性材料を成形してなる板状部材10・20・30は、カッター等の道具で簡単に切断できる部材である。そこで、防弾堤構造体1の設置場所が傾斜地である場合に、図示の如く、現地において、その傾斜に合わせてカッター等で囲い2として組み合わされている板状部材20・30の下部を切除し、こうして切除加工された状態の囲い2を当該傾斜地に設置するものする。
【0092】
これによって、囲い2の四つの板状部材20・30の主面21・31を全て鉛直向きに配した状態を確保することができ、即ち、防弾堤構造体1を構成する防弾堤における囲い2に求められる安定した姿勢を保持することができ、囲い2が斜めになって別の囲い2との間に隙間が空いたり、姿勢不安定のために囲い2が倒壊したりするような虞のない安定した防弾堤構造体1を構成できる。
【0093】
ここで、切除後の囲い2の下端形状を完全に地表の形状に合わせることは難しく、地表から浮いてしまう個所が発生することも考えられる。この点については、基本板状部材10を底板4として、切除加工後の、例えば斜め状になった囲い2の下端に隙間なく当接させ、囲い2に固定することで、囲い2で囲まれた空間Sからの弾丸捕捉材3の漏れを防ぐことができる。
【0094】
ここで、底板4として用いられる基本板状部材10が弾性材料よりなるフレキシブルなものなので、切除加工後の囲い2の下端面が多少凸凹であっても、その凸凹に合うように底板4を曲折して、隙間なく当接させることができる。更に、場合によっては、囲い2の下端の形状に合うように、底板4としての基本板状部材10を現地で切断加工することも考えられる。
【0095】
図14は、第二の実施の形態による防弾堤の囲いの分解斜視図である。
【0096】
図を参照して、この実施の形態による防弾堤を構成する囲い2Xは、第一の実施の形態による防弾堤の囲い2と同様に、隣接し合う板状部材同士の凹凸を噛み合わせて嵌合することにより、四つの板状部材を組み合わせて構成される。
【0097】
即ち、囲い2Xを構成する部材は、互いに対向状に配置される一対の第一嵌合板状部材40と、両第一嵌合板状部材40・40間にて、互いに対向状に、且つ、第一嵌合板状部材40・40に対し直角方向に配置される、一対の第二嵌合板状部材50・50である。
【0098】
ここで、第一嵌合板状部材40・40を前後に配し、第二嵌合板状部材50・50を左右に配するものとする。
【0099】
各第一嵌合板状部材40は、互いに対向状の、囲い2Xの内側鉛直面(即ち、前側端面及び後側端面のうちの一方)となる内側主面41a及び囲い2Xの外側鉛直面(即ち、前側端面及び後側端面のうちの他方)となる外側主面41bを有している。第一嵌合板状部材40の左右一側端面42の近傍にて、鉛直状に延設された突起43が内側主面41aより内側主面41aに対し直角の方向に突出している。一方、第一嵌合板状部材40の左右他側端面44の近傍にて、内側主面41aにて開口する溝45が鉛直状に延設されている。
【0100】
各第二嵌合板状部材50は、互いに対向状の、囲い2Xの内側鉛直面(即ち、左側端面及び右側端面のうちの一方)となる内側主面51a及び囲い2Xの外側鉛直面(即ち、左側端面及び右側端面のうちの他方)となる外側主面51bを有している。両主面51a・51bの前側端の鉛直端面及び後側端の鉛直端面のうち、一方の端面52には、両主面51a・51b沿いの方向に突出する突起53が鉛直状に延設されており、他方の端面54には、鉛直状に延設される溝55が開口している。
【0101】
両第二嵌合板状部材50・50は、相互に前後反転された状態に配置される。即ち、各第一嵌合板状部材40の内側主面41aに、左右一方の第二嵌合板状部材50の突起53が向き、且つ、左右他方の第二嵌合板状部材50の溝55が向く。各第一嵌合板状部材40の溝45に一方の第二嵌合板状部材50の突起53を嵌入し、各第一嵌合板状部材40の突起43を他方の第二嵌合板状部材50の溝55に嵌入することで、各第二嵌合板状部材50の外側主面51bと、その前後一側の第一嵌合板状部材40の端面42及びその前後他側の第一嵌合板状部材40の端面44とが面一となる。
【0102】
こうして、四つの板状部材40・50を組み合わせて構成した囲い2Xの底端に、その底端開口を覆うように、底板4と同様の底板(図示せず)を取り付け、囲い2Xにて囲まれる空間に弾丸捕捉材3と同様の弾丸捕捉材(図示せず)を充填し、更に、囲い2Xの上端に、その上端開口を覆うように、天板5と同様の天板(図示せず)を取り付けて、一つの防弾堤を構成する。このような防弾堤を複数個連設して、例えば防弾堤構造体1に示すような状態の防弾堤構造体を構成できる。
【0103】
図15は、第三の実施の形態による囲いの斜視図であって、(a)は全板状部材及び全支柱材の組立を完成した状態の図、(b)は全板状部材及び全支柱材のうちの一部の組立を終えた状態の図である。
【0104】
図を参照して、この実施の形態による囲い2Yは、四つの同じ板状部材60と四つの同じ支持柱材70を組み合わせてなる。各板状部材60は、囲い2Yの内外鉛直面となる対向状の一対の主面61、囲い2Yの上下水平面となる対向状の一対の端面62、主面61の一側における鉛直面63、及び、主面61の他側における鉛直面64を有する六面体であり、これら六面のそれぞれの形状を直角四辺形としている。
【0105】
板状部材60は板状部材20・30のような嵌合用の凹凸(切欠23・33及び凸部24・34)がなく、鉛直面63・64は平坦面となっている。即ち、板状部材60同士を、凹凸の噛み合わせではなく、単なる突き合わせで連接するものとしている。
【0106】
ここで、囲い2Yが囲い2と同じサイズのもの、即ち、四方にめぐらす各壁の水平方向の長さをL、厚みをW、高さをT(T=Lでもよい)としたものであるとする。水平方向の長さを(L-W)、厚みをW、高さをT(T=Lでもよい)とする六面体である。
【0107】
即ち、各板状部材60の鉛直面63を、隣接する他の板状部材60の内側の主面61に当接する。この主面61において、鉛直面64から幅Wの四角形の領域61aが設定されており、この主面61上の領域61aに他の板状部材60の鉛直面63が当接される。従って、一つの板状部材60の外側の主面61と、その板状部材60の鉛直面63を当接した他の板状部材60の鉛直面64とが面一となって、囲い2Yにおける、水平方向の長さをLとする一外側面となる。
【0108】
当接した板状部材60・60同士を固定し、且つ、囲い2Yを安定した状態のものとするため、隣接する板状部材60・60の内側の主面61・61のなす平面視直角の夾角部に支持柱材70を沿設している。
【0109】
各支持柱材70は一辺Rの正方形状の断面を有し、鉛直に延設される(高さTの)角材であり、その一鉛直面が一つの板状部材60の鉛直面63と一繋がりになる。一方、各板状部材60の内側の主面61において、前述の鉛直面64から幅Wの四角形の領域61aに隣接して、その鉛直面63側に、幅Rの四角形の領域61bが設定されている。一つの板状部材60の鉛直面63を他の板状部材60の内側主面61上の領域61aに当接する際に、当該一つの板状部材61の鉛直面63と一繋がり状に取り付けられた支持柱材70の鉛直面が当該他の板状部材60の内側主面61上の領域61bに当接する。
【0110】
こうして、各支持柱材70は、隣接する二つの板状部材60の内側主面61に当接する状態となり、更に各支持柱材70をボルト等でこれら両板状部材60に締止することで、支持柱材70を介して隣り合う板状部材60同士を締結し、この作業を四つの支持柱材70について行って、囲い2Yを完成させるものである。
【0111】
こうして完成した囲い2Yにて防弾堤を構成するに当たって、各囲み2Yにて囲まれる空間に弾丸捕捉材3が充填され、適宜、底板4や天板5と同様の底板及び天板が各囲い2Yの底端又は上端に取り付けられる。更に、こうして構成された防弾堤を所望の個数用意し、これらを所望のレイアウトで配置し、連設して、所望の大きさや形状の防弾堤構造体を構成するものである。
【0112】
図16は、第四の実施の形態による防弾堤の斜視図である。
【0113】
図を参照して、この実施の形態では、図1図2等に示す防弾堤構造体に匹敵する形状及び大きさのものとして、板状部材の組み合わせで構成した一つの囲い2Zよりなる一つの防弾堤を構成するものである。
【0114】
即ち、この実施の形態では、図1の防弾堤構造体1における標的下部装置9aの後側に左右列状に配される三つの囲い2A・2B・2Cの後端に配置される三つの第一嵌合板状部材20に該当するものとして、一つの板状部材80を使用している。又、図1の防弾堤構造体1における標的下部装置9aの左側の前後列状の二つの囲い2A・2Dの左端に配置される二つの第二嵌合板状部材30、及び、防弾堤構造体1における標的下部装置9aの右側の前後列状の二つの囲い2C・2Eの右端に配置される二つの第二嵌合板状部材30のそれぞれに該当するものとして、一つの板状部材90を使用している。
【0115】
尚、防弾堤構造体1の囲い2B・2D・2Eの前端に該当する部分については、左右方向の長さが変わらないため、囲い2を構成するのに用いられる第一嵌合板状部材20をそのまま適用している。一方、防弾堤構造体1の囲い2Dの右端及び囲い2Eの左端については、前後方向の長さが変わらないため、囲い2を構成するのに用いられる第二嵌合板状部材30をそのまま適用している。
【0116】
板状部材80の左右端部には、第一嵌合板状部材20の両側部に形成された切欠23及び凸部24よりなる凹凸と同様の形状の凹凸部が形成されている。一方、板状部材90の前後端部には、第二嵌合板状部材30の両側部に形成された切欠33及び凸部34よりなる凹凸と同様の形状の凹凸部が形成されている。
【0117】
囲い2を構成するに当たっての板状部材20・30の嵌合と同様に、板状部材80の左右各側部の凹凸部と各板状部材90の後端部の凹凸部とを噛み合わせ、更に、各板状部材90の前端部の凹凸部と、標的下部装置9aの左右各側の板状部材20の一側部の凹凸部、標的下部装置9aの直後の第一嵌合板状部材20の両側部の凹凸部と標的下部装置9aの左右各側の第二嵌合板状部材30の後端の凹凸部とを噛み合わせて、一つの囲い2Zを構成する。
【0118】
こうして完成した囲い2Zで囲まれた一つの大きな空間に弾丸捕捉材3を充填し、又、適宜、囲い2Zの底端開口を覆うように底板を取り付け、又、囲い2Zの上端開口を覆うように天板を取り付けて、防弾堤を構成するものである。
【0119】
尚、上記各実施の形態では、防弾堤は、最小限、少なくとも一部が飛翔する弾丸を弾き返さずに貫通可能な弾性材料よりなる囲いと、囲いに囲まれた空間内に充填された弾丸捕捉材とを備えたものであればよいのであって、底板なしで囲いの下端を地面や床面に直接当接するものとしてもよく、又、天板を設けずに囲いの上端を開口したままにしてもよい。
【0120】
又、底板や天板を備える場合、必ずしもこれらを囲いに固定しなくてもよく、単に当接した状態のままでもよい。
【0121】
更に、防弾堤に剛性板を備える場合にも、必ずしも囲いに固定せずに、囲いに沿わせるものとするだけでもよい。
【0122】
更に、複数の防弾堤よりなる防弾堤構造体を構成するにあたって、隣り合う防弾堤の囲い同士を必ずしもビス等で固定しなくてもよく、当接しただけにしておいてもよい。
【0123】
更に、剛性板を囲いに付設する代わりに、囲いの一部を、弾丸を弾き返す剛性材料でなるものとしてもよい。
【0124】
更に、囲いの形状は好ましくは平面視で正方形であるが、必ずしもそのような形状でなくてもよく、直方形、平方四辺形、台形等の四角形、或いは三角形や六角形等の他の多角形、更には円形や楕円形等、様々の形状のものが考えられる。
【0125】
更に、防弾堤構造体を構成するにあたって、図1等に示す個数やレイアウトに限らず、様々な個数やレイアウトで防弾堤を連設すればよく、場合によっては、防弾堤を上下に重ねてもよい。又、上下に複数の囲いを重ねてなる防弾堤を構成してもよい。
【0126】
更に、複数の板状部材を組み合わせて囲いを構成するにあたって、様々な組み合わせのものが考えられ、ボルト等の締結部材を不要とする板状部材同士の嵌合方法にしても、上記のような凹凸の噛み合わせによるもの以外にも様々なものが考えられる。
【0127】
更に、持ち手用の開口部は、上記の如く、孔でも凹部でもよく、又、囲いの適宜位置に設けられていればいいのであって、形状、向き、位置について限定されるものではない。
【0128】
更に、囲いは、上記の如く板状部材等の複数の部材を組み合わせて構成されるものでなくてもよく、単一の部材を囲いとして用いるものとしてもよい。更に、例えば囲いを構成する四つの板状部材のうちの二つ又は三つに該当する部分を、一つの板状部材を曲折して構成するものとしてもよい。
【0129】
更に、弾丸捕捉材については、囲いに囲まれる空間に充填されるものと記述したが、この「充填」については、囲いの上端まで詰められた満杯の状態のみならず、当該空間の全域のうちの一部の領域を占める状態をも含む概念とする。
【符号の説明】
【0130】
S……(囲いに囲まれる)空間
1………防弾堤構造体
2,2X,2Y,2Z………囲い
3………弾丸捕捉材
4………底板
5………天板
10……基本板状部材
20……第一嵌合板状部材
21……主面(側面)
22……端面(上端面・下端面)
23……切欠
24……凸部
30……第二嵌合板状部材
31……主面(側面)
32……端面(上端面・下端面)
33……切欠
34……凸部
35……(持ち手用)開口部
40……第一嵌合板状部材
43……突起(凸部)
45……溝(凹部)
50……第二嵌合板状部材
53……突起(凸部)
60……板状部材
70……支持柱材
80……板状部材
90……板状部材
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16