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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】浴室洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033129
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019146746
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特許第6111619(JP,B2)
【文献】特開2003-061850(JP,A)
【文献】特開2017-131407(JP,A)
【文献】特許第6205705(JP,B2)
【文献】特開2015-020008(JP,A)
【文献】特開2015-039605(JP,A)
【文献】実開平04-077868(JP,U)
【文献】特開2010-264288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
B08B 3/00-3/14
A47L 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルに繋がった湯水流路に設けられ、かつ前記洗浄ノズルへの湯水の供給のオン・オフを切り替え可能な注湯バルブと、
前記湯水流路のうち、前記洗浄ノズルと前記注湯バルブとの相互間の途中位置に設けられたベンチュリ部と、
このベンチュリ部を洗剤タンクに接続する洗剤供給路と、
この洗剤供給路の途中に設けられ、かつ前記洗剤タンクから前記ベンチュリ部への洗剤の流通の可能状態・不可能状態を切替え可能な洗剤バルブと、
を備えており、
前記洗浄ノズルから剤液が洗浄対象に散布される複数回の洗剤液散布動作が間欠的に実行可能であり、かつこれら複数回の洗剤液散布動作のそれぞれにおいては、前記注湯バルブおよび前記洗剤バルブがともに開状態に設定されることにより、前記ベンチュリ部には前記湯水の流通に基づく負圧が発生して、この負圧により前記洗剤供給路から前記ベンチュリ部に前記洗剤が流入し、前記洗剤液が生成されるように構成されている、浴室洗浄装置であって、
前記複数回の洗剤液散布動作のうち、少なくとも1回の洗剤液散布動作の開始時においては、前記注湯バルブが開状態とされる前に、前記洗剤バルブが先に開状態とされるように構成されていることを特徴とする、浴室洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室洗浄装置であって、
前記複数回の洗剤液散布動作のうち、少なくとも1回の洗剤液散布動作の終了時においては、前記洗剤バルブが前記注湯バルブに遅れたタイミングで閉状態とされるように構成されている、浴室洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浴室洗浄装置であって、
前記複数回の洗剤液散布動作が終了した後には、前記洗剤バルブが閉状態とされ、かつ前記注湯バルブが開状態とされることにより、前記洗浄ノズルから前記洗浄対象に湯水を散布するすすぎ動作が実行可能とされており、
前記複数回の洗剤液散布動作のうち、最終回の洗剤液散布動作においては、前記洗剤バルブが閉状態のまま前記注湯バルブが開状態とされることにより、その時点で前記湯水流路に残存していた洗剤液が前記洗浄ノズルから散布されるように構成されている、浴室洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の浴室洗浄装置であって、
前記複数回の洗剤液散布動作を実行する前に、前記注湯バルブを開状態とすることにより、前記洗浄ノズルから予備すすぎ用の湯水を散布する予備すすぎ動作が実行可能とされており、
前記予備すすぎ動作の終了前の所定時間は、前記洗剤バルブが開状態とされる構成とされている、浴室洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の浴室洗浄装置であって、
前記湯水流路における湯水の流量を検出するための流量センサを、さらに備えており、
前記洗剤液散布動作は、所定の実行回数に達するまで繰り返し実行されるように構成されており、
前記洗剤液散布動作が実行されるべく前記注湯バルブを開状態としたにも拘わらず、前記流量センサによって所定以上の湯水の流量が検出されないときには、その際の洗剤液散布動作は正常に実行されていないものとし、前記洗剤液散布動作の実行回数にはカウントされないように構成されている、浴室洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、浴室洗浄装置の具体例として、特許文献1~3に記載のものを先に提案している。
これらの文献に記載の浴室洗浄装置においては、たとえば浴槽の底部に洗浄ノズルが取付けられており、この洗浄ノズルに繋がった湯水流路には、洗浄ノズルへの湯水供給のオン・オフを切替え可能な注湯バルブが設けられている。一方、前記湯水流路には、洗剤供給路が繋がっており、この洗剤供給路には、前記湯水流路への洗剤供給のオン・オフを切替え可能な洗剤バルブが設けられている。注湯バルブおよび洗剤バルブをともに開状態とすれば、湯水流路を流れる湯水に洗剤が混入した洗剤液が生成された上で、この洗剤液が洗浄ノズルから噴出され、浴槽の内壁に散布される。このような洗剤液散布動作は、好ましくは、複数回にわたって間欠的に実行される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、特許文献1においては、洗剤液散布動作を実行する場合に、注湯バルブと洗剤バルブとの開閉タイミングを一致させており、洗剤液散布動作の開始時には、これら両バルブを同時に開状態としている。また、洗剤液散布動作の終了時には、前記両バルブを同時に閉状態としている。
ところが、このように注湯バルブと洗剤バルブとの開閉タイミングを一致させたとしても、湯水流路を湯水が流れ始めるタイミングと、湯水に対する洗剤の混入タイミングとにずれを生じてしまい、湯水流路中に洗剤が混入されていない湯水が発生する場合がある。このため、洗剤液散布動作を複数回にわたって間欠的に繰り返す場合に、洗剤が混入されていない湯水が洗浄ノズルから噴出され、洗浄対象に先に散布されている洗剤液が前記湯水によって流される虞がある。これでは、優れた洗浄作用が得られなくなる。
【0005】
一方、特許文献2,3においては、洗剤液散布動作の終了時には、注湯バルブの閉動作に遅延したタイミングで洗剤バルブを閉状態としているために、特許文献1と比較すると、洗剤が混入されていない湯水が洗浄ノズルから噴出する割合を低くすることは可能である。ところが、特許文献2,3においても、洗剤液散布動作の開始時には、特許文献1と同様に、注湯バルブと洗剤バルブとを同時に開状態としているため、洗剤が混入されていない湯水が洗浄ノズルから噴出される場合がある。したがって、特許文献2,3においても、洗浄対象に先に散布されている洗剤液が前記湯水によって流され、優れた洗浄作用が得られなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6205705号公報
【文献】特許第6111619号公報
【文献】特開2017-131407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、洗剤液散布動作を複
数回にわたって繰り返し実行する場合に、先に散布された洗剤液が湯水によって流されるなどの不具合をなくし、従来よりも優れた洗浄能力を得ることが可能な浴室洗浄装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される浴室洗浄装置は、洗浄ノズルに繋がった湯水流路に設けられ、かつ前記洗浄ノズルへの湯水の供給のオン・オフを切り替え可能な注湯バルブと、前記湯水流路のうち、前記洗浄ノズルと前記注湯バルブとの相互間の途中位置に設けられたベンチュリ部と、このベンチュリ部を洗剤タンクに接続する洗剤供給路と、この洗剤供給路の途中に設けられ、かつ前記洗剤タンクから前記ベンチュリ部への洗剤の流通の可能状態・不可能状態を切替え可能な洗剤バルブと、を備えており、前記洗浄ノズルから剤液が洗浄対象に散布される複数回の洗剤液散布動作が間欠的に実行可能であり、かつこれら複数回の洗剤液散布動作のそれぞれにおいては、前記注湯バルブおよび前記洗剤バルブがともに開状態に設定されることにより、前記ベンチュリ部には前記湯水の流通に基づく負圧が発生して、この負圧により前記洗剤供給路から前記ベンチュリ部に前記洗剤が流入し、前記洗剤液が生成されるように構成されている、浴室洗浄装置であって、前記複数回の洗剤液散布動作のうち、少なくとも1回の洗剤液散布動作の開始時においては、前記注湯バルブが開状態とされる前に、前記洗剤バルブが先に開状態とされるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、注湯バルブが開状態とされて湯水流路を洗浄ノズルに向けて湯水が流れ始める際には、それに先立って洗剤バルブが既に開状態とされており、湯水流路への洗剤供給が可能な状態となっている。このため、洗剤が混入されないまま洗浄ノズルに到達する湯水が発生しないようにすることが可能となる。その結果、複数回の洗剤液散布動作を繰り返し実行する場合において、洗浄対象に先に散布されている洗剤液が、洗剤を含まない湯水によって流される不具合をなくし、従来技術よりも優れた洗浄能力を得ることが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記複数回の洗剤液散布動作のうち、少なくとも1回の洗剤液散布動作の終了時においては、前記洗剤バルブが前記注湯バルブに遅れたタイミングで閉状態とされるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、洗剤を含まない湯水が洗浄ノズルから洗浄対象に散布されることをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記複数回の洗剤液散布動作が終了した後には、前記洗剤バルブが閉状態とされ、かつ前記注湯バルブが開状態とされることにより、前記洗浄ノズルから前記洗浄対象に湯水を散布するすすぎ動作が実行可能とされており、前記複数回の洗剤液散布動作のうち、最終回の洗剤液散布動作においては、前記洗剤バルブが閉状態のまま前記注湯バルブが開状態とされることにより、その時点で前記湯水流路に残存していた洗剤液が前記洗浄ノズルから散布されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、複数回の洗剤液散布動作が終了した後において、すすぎ動作が開始される際に、湯水流路に残存していた洗剤液が洗浄ノズルから洗浄対象に散布されることを防止または抑制することができる。したがって、すすぎ動作を迅速に完了する上で好ましいものとなる。また、すすぎ動作が開始される前に、洗剤供給路から湯水流路に供給された洗剤の全量またはこれに近い量を洗浄対象に散布することも可能となる。その結果、洗剤の無駄をなくし、または少なくすることができるとともに、洗浄対象への洗剤液の散布量を多くし、優れた洗浄作用を得る上においても、より好ましいものとすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記複数回の洗剤液散布動作を実行する前に、前記注湯
バルブを開状態とすることにより、前記洗浄ノズルから予備すすぎ用の湯水を散布する予備すすぎ動作が実行可能とされており、前記予備すすぎ動作の終了前の所定時間は、前記洗剤バルブが開状態とされる構成とされている。
【0016】
このような構成によれば、予備すすぎ動作を終了する直前に、湯水流路内に洗剤液を生成して存在させておき、その後に洗剤液散布動作を開始した際に、洗剤を含まない湯水が洗浄対象に多く散布されないようにすることができる。これは、洗浄対象に洗剤液を散布する動作を有効的に、かつ迅速に開始する上で好ましい。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記湯水流路における湯水の流量を検出するための流量センサを、さらに備えており、前記洗剤液散布動作は、所定の実行回数に達するまで繰り返し実行されるように構成されており、前記洗剤液散布動作が実行されるべく前記注湯バルブを開状態としたにも拘わらず、前記流量センサによって所定以上の湯水の流量が検出されないときには、その際の洗剤液散布動作は正常に実行されていないものとし、前記洗剤液散布動作の実行回数にはカウントされないように構成されている。
【0018】
このような構成によれば、注湯バルブを開状態にしたにも拘わらず、たとえば湯水流路の水圧低下などに起因して、湯水流路に所定以上の流量の湯水が流れず、洗浄ノズルから洗浄対象に対して洗剤液が十分に散布されない事態が発生した場合には、これが洗剤液散布動作の実行回数にはカウントされないこととなる。したがって、洗浄対象への洗剤液の散布量が不十分であるにも拘わらず、洗剤液散布動作が終了する不具合を適切に防止することができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る浴室洗浄装置の一例を示す概略説明図である。
図2図1に示す浴室洗浄装置の動作例の概要を示すフローチャートである。
図3図1に示す浴室洗浄装置において実行される予備すすぎ動作の例を示すフローチャートである。
図4図1に示す浴室洗浄装置において実行される複数回の洗剤液散布動作の例を示すフローチャートである。
図5】(a)~(c)は、図1に示す浴室洗浄装置の動作例を示すタイムチャートである。
図6】(a)~(c)は、図1に示す浴室洗浄装置の他の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1に示す浴室洗浄装置Aは、浴槽1を洗浄するための浴槽洗浄装置として構成されており、その基本的なハード構成自体は、特許文献3に記載されたものと同様である。
【0023】
具体的には、この浴室洗浄装置Aは、浴槽1の底部に取付けられた洗浄ノズル2、この洗浄ノズル2に繋がった湯水流路3、この湯水流路3に設けられ、かつ洗浄ノズル2への湯水供給のオン・オフ切り替えを行なうための注湯バルブVa、湯水流路3の途中に具備されたベンチュリ部30、洗剤タンク5からベンチュリ部30に洗剤を供給するための洗剤供給路6、この洗剤供給路6に設けられ、かつベンチュリ部30への洗剤供給のオン・オフ切り替えを行なうための洗剤バルブVb、および洗剤バルブVbならびに注湯バルブ
Vaの開閉制御を実行する制御部7を備えている。浴槽1(厳密には、浴槽1の内面)は、本発明でいう洗浄対象の一例である。
【0024】
湯水流路3には、不図示の給湯装置あるいは水道管などの湯水供給源から湯水供給が可能である。この湯水流路3には、流量センサSaおよび流量調整弁Vcが適宜設けられており、流量センサSaによる検出値に基づいて流量調整弁Vcの弁開度の制御が実行される。ベンチュリ部30の詳細については省略するが、このベンチュリ部30は、湯水流路3の一部を構成する絞り部を備えており、この絞り部を湯水が高速で流れることによりその付近に負圧が発生する。この負圧に基づいて洗剤供給路6からベンチュリ部30内、ひいては湯水流路3内に洗剤が円滑に流入することにより、この洗剤と湯水とが混合した洗剤液を生成可能である。洗剤は、たとえば液体洗剤であるが、粉体洗剤などを用いることもできる。
【0025】
注湯バルブVaおよび洗剤バルブVbは、たとえば電磁開閉弁である。制御部7は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されており、注湯バルブVaおよび洗剤バルブVbを、後述するような態様で制御するように構成されている。制御部7には、各種の操作スイッチを備えた操作部70が接続されている。
【0026】
次に、浴室洗浄装置Aにおいて実行される動作制御の例を、図2図4に示すフローチャート、および図5に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0027】
浴室洗浄装置Aにおいては、概略的には、図2のフローチャートで示すような態様の動作が、制御部7の制御により実行される。
すなわち、ユーザが操作部70を利用して所定のスイッチ操作を行なうと、予備すすぎ動作が所定の第1の時間T1だけ実行される(S1:YES,S2)。次いで、複数回の洗剤液散布動作が間欠的に実行され、その後にすすぎ(本すすぎ)動作が所定の第2の時間T2だけ実行される(S3,S4)。
【0028】
前記予備すすぎ動作は、洗剤を含まない湯水を利用し、浴槽1をラフに洗浄するための動作であり、具体的には、図3のフローチャートに示すような手順で実行される。すなわち、予備すすぎ動作は、注湯バルブVaおよび洗剤バルブVbのうち、注湯バルブVaのみが開状態とされ、洗浄ノズル2から洗剤を含まない湯水が噴出することにより実行される(S21)。
【0029】
本来的には、予備すすぎ動作は、湯水の噴出を所定の第1の時間T1だけ行なえば足りるが、本実施形態では、これとは異なる動作がさらに追加されて実行される。すなわち、予備すすぎ動作の終了予定時期(図5の時刻t2)が近づき、この終了予定時期よりも所定の第3の時間T3だけ前の時期(図5の時刻t1)になると、洗剤バルブVbが開状態とされる(S22:YES,S23)。その後は、洗剤バルブVbの開状態時から第3の時間T3がタイムアップになった時点(時刻t2)で、注湯バルブVaが閉状態とされる(S24:YES,S25)。洗剤バルブVbは、注湯バルブVaと同時に閉状態とされてもよいが、好ましくは、所定の第8の時間T8だけ遅れた時点(時刻t2’)で閉状態とされる(S26)。
【0030】
前記した動作手順によれば、予備すすぎ動作が終了した時点で、湯水流路3内に洗剤液が存在する状態とすることができる。また、洗剤バルブVbの閉状態時期を注湯バルブVaの閉状態時期に対して遅延させれば、洗剤が混入されていない湯水が、湯水流路3内において発生しないようにすることの確実化が図られる。
したがって、その後に洗剤液散布動作が実行される際には、当初から浴槽1に洗剤液を適切に散布することが可能となる。本実施形態とは異なり、湯水流路3中に洗剤液が存在
しない場合には、その後に洗剤液散布動作が開始されてから暫くの期間は、洗剤液を含まない湯水が浴槽1に散布され、浴槽1に洗剤液が実際に散布されるタイミングが遅くなる。これに対し、本実施形態では、そのようなことを適切に解消することができる。
【0031】
湯水流路3のうち、ベンチュリ部30から洗浄ノズル2までの容積をL、湯水流路3における湯水の瞬時流量(単位時間当たり流量)をVとした場合、前記した第3の時間T3は、好ましくは、L/Vの値、またはこれに近い値とされる。このように設定すれば、予備すすぎ動作が終了した時点において、ベンチュリ部30から洗浄ノズル2までの経路に、洗剤液が充満した状態にしつつ、多くの洗剤液が洗浄ノズル2から散布されないようにすることが可能である。
【0032】
前記複数回の洗剤液散布動作は、洗浄ノズル2から浴槽1への洗剤液の散布が間欠的に行なわれる動作であり、図4のフローチャートに示すような手順で実行される。すなわち、洗剤液散布動作は、洗剤バルブVbが注湯バルブVaよりも早い時期(図5の時刻t3)で開状態とされ、その後に所定の第4の時間T4が経過した時点(図5の時刻t4)から所定の第5の時間T5だけ注湯バルブVaが開状態とされる(S31,S32)。なお、注湯バルブVaが開状態の際に、流量センサSaによる流量検知がなされる。次いで、注湯バルブVaが閉状態とされた時点(図5の時刻t5)から所定の第6の時間T6が経過した時点(図5の時刻t6)で、洗剤バルブVbも閉状態とされる(S33:YES,S34)。
【0033】
前記した態様の洗剤液散布動作によれば、注湯バルブVaよりも先に洗剤バルブVbが開状態とされるために、注湯バルブVaの開状態に伴って湯水流路3を流れ始める湯水に対し、洗剤の供給が遅れないようにすることができる。したがって、洗剤を含まない湯水が洗浄ノズル2に向けて送られないようにすることが可能である。その結果、洗剤液散布動作が複数回にわたって間欠的に繰り返される際に、浴槽1に先に散布されている洗剤液が、洗剤を含まない湯水によって不当に流されないようにし、洗浄能力を高めることが可能である。また、洗剤バルブVbが閉状態とされるタイミングは、注湯バルブVaが閉状態とされるタイミングよりも遅くされているため、湯水流路3に洗剤を含まない湯水が発生し、かつこれが洗浄ノズル2から散布されることを、より確実に防止することが可能である。
【0034】
一方、制御部7は、流量センサSaからの検知信号に基づき、前記した1回の洗剤液散布動作の期間中における湯水の流量が、所定以上であるか否かを判断しており、湯水の流量が所定以上である場合には、先の洗剤液散布動作は適切に実行されたものとしてカウントし、そのカウント数のデータを記憶する(S35:YES,S36)。なお、前記湯水の流量は、瞬時流量(単位時間当たり流量)、および洗剤液散布動作中における積算流量のいずれであってもよい。
【0035】
前記した1回の洗剤液散布動作の期間中における湯水の流量が、所定未満である場合には、その洗剤液散布動作は適切に実行されていないとし、洗剤液散布動作の実行回数としてはカウントしない(S35:NO,S40)。洗剤液散布動作では、注湯バルブVaが所定の第5の時間T5だけ開状態とされるために、本来ならば、湯水流路3には、所定以上の流量で湯水が流れるはずである(図5(c)を参照)。ただし、たとえば湯水流路3に繋がった他の配管部(不図示)に湯水が流通し、湯水流路3への湯水供給圧が一時的に低下することや、その他の理由により、湯水流路3に所定以上の流量で湯水が流れない場合がある。この場合、適量の洗剤液を浴槽1に適切に散布できないこととなるが、本実施形態では、そのような場合には、洗剤液散布動作の実行回数はノーカウントとされる。
【0036】
たとえば、図6の符号n3で示す3回目の洗剤液散布動作時においては、同図(c)に
示すように、所定以上の流量検知がなされていない。この場合、3回目の洗剤液散布動作は不実行とみなされ、洗剤液散布動作の実行回数にはカウントされない。したがって、洗剤液の散布量が不足気味であって、浴槽1が適切に洗浄されていないにも拘わらず、複数回の洗剤液散布動作が終了してしまう不具合を適切に回避することが可能である。なお、注湯バルブVaを開状態にしたにも拘わらず、湯水流路3に所定以上の流量で湯水が流れない事態が多発し、その発生回数が所定の回数を超えた場合には、浴槽1の洗浄処理を強制終了させるようにしてもよい。
【0037】
前記した洗剤液散布動作の実行予定回数N(図5および図6に示した例では、実行予定回数Nは6回)に関するデータは、制御部7において予め設定されて記憶されており、制御部7は、洗剤液散布動作の実行回数のカウント値が、実行予定回数Nに達したか否かを判断する(S37)。この判断において、未だ実行予定回数Nに達していない場合には、次に実行される洗剤液散布動作が最終回(N回目)の洗剤液散布動作に該当しない限り、所定のインターバルを介して前記した一連の洗剤液散布動作が繰り返し実行される(S37:NO,S38:NO,S41,S31)。
【0038】
一方、最終回の洗剤液散布動作は、前記した洗剤液散布動作とは異なる態様で実行される。すなわち、最終回の洗剤液散布動作においては、洗剤バルブVbは閉状態のままとされた上で、注湯バルブVaのみが所定の第7の時間T7だけ開状態とされる(S38:YES,S39)。
【0039】
この動作では、最終回の洗剤液散布動作が開始される際に、湯水流路3に残存していた洗剤液が洗浄ノズル2から浴槽1に向けて噴出されることとなり、最終回の洗剤液散布動作を終えた時点で、湯水流路3内に多くの洗剤液が残存しないようにすることが可能である。このため、その後にすすぎ(本すすぎ)動作が開始される際に、湯水流路3に残存していた多くの洗剤液が浴槽1に散布されるといったことがないようにすることができる。また、すすぎ動作が開始される前に、洗剤供給路6から湯水流路3に供給された洗剤の全量またはこれに近い量を浴槽1に効果的に散布することができるため、洗剤の無駄がなく、または少なくすることも可能である。
【0040】
第7の時間T7は、好ましくは、先の第3の時間T3について述べたのと同様なL/Vの値、またはこれに近い値とされる。第7の時間T7をそのような値にすれば、湯水流路3中に洗剤液が殆ど残存しないように、湯水流路3中の洗剤液を洗浄ノズル2から噴出させることが可能である。また、洗浄ノズル2から洗剤を含まない湯水が多く噴出しないようにすることも可能である。
【0041】
前記した最終回の洗剤液散布動作が終了し、制御部7による洗剤液散布動作のカウント数が、所定の実行予定回数Nになれば、その時点で複数回にわたる間欠的な洗剤液散布動作は終了する(S39,S35:YES,S36,S37:YES)。その後は、すすぎ(本すすぎ)動作が開始されるが、この動作は、注湯バルブVaを所定の第2の時間T2だけ開状態とし、洗浄ノズル2から洗剤液を含まない湯水を浴槽1に散布する動作である。
【0042】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室洗浄装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0043】
上述の実施形態では、複数回の洗剤液散布動作のうち、最終回の洗剤液散布動作を除き、他の洗剤液散布動作において、洗剤バルブを注湯バルブよりも先に開状態としたが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、最終回の洗剤液散布動作においても、洗剤バルブを注湯バルブよりも先に開状態としてもよい。また、本発明においては、複数回
の洗剤液散布動作のうち、少なくとも1回の洗剤液散布動作の開始時において、洗剤バルブを注湯バルブよりも先に開状態とする構成であればよい。複数回の洗剤液散布動作のうち、洗剤バルブが注湯バルブよりも先に開状態とされる洗剤液散布動作が、少なくとも1回実行されれば、従来技術よりも洗浄作用を優れたものにすることが可能である。
【0044】
また、本発明では、上述の実施形態とは異なり、各洗剤液散布動作を終了する際に、洗剤バルブと注湯バルブとが同時に閉状態とされる構成とすることもできる。
洗剤液散布動作は、複数回にわたって間欠的に実行されるが、その具体的な回数も限定されない。洗剤液散布動作の実行回数を、操作スイッチの操作などによって変更可能な構成とすることもできる。
【0045】
注湯バルブおよび洗剤バルブは、必ずしも電磁弁に限らず、他の種類のバルブを用いることもできる。洗剤の種類も問わない。
洗浄対象は、浴槽に限定されず、これ以外として、たとえば浴室の床面、側壁面、天井、浴槽蓋などとすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
A 浴室洗浄装置
Sa 流量センサ
Va 注湯バルブ
Vb 洗剤バルブ
1 浴槽(洗浄対象)
2 洗浄ノズル
3 湯水流路
5 洗剤タンク
6 洗剤供給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6