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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20220623BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020193570
(22)【出願日】2020-11-20
(62)【分割の表示】P 2018092302の分割
【原出願日】2013-09-30
(65)【公開番号】P2021036128
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】大久保 麻友
(72)【発明者】
【氏名】浦田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287331(JP,A)
【文献】特開2013-170364(JP,A)
【文献】特開2011-174363(JP,A)
【文献】特開2013-044179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水供給源から供給される洗浄水により便器本体を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物受け面を備えたボウル部と、
このボウル部の上縁に形成され内部にリム通水路が形成されたリム部と、
このリム部の前方側に形成され、上記洗浄水供給源から供給された洗浄水を前方に吐水し、汚物受け面上を旋回する旋回流を形成する1つのリム吐水部と、
このリム吐水部から吐水された洗浄水がその上を流れる棚部と、
上記ボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水トラップ管路と、を有し、
上記ボウル部の汚物受け面は、上方汚物受け面と、この上方汚物受け面と上記排水トラップ管路との間に形成された凹部と、を備え、
上記上方汚物受け面は、その両側方領域が横方向に沿って凸面により形成され、その前方領域と後方領域が前後方向に沿って上記両側方領域より小さな曲率の凸面又は凹面により形成されると共に、その表面形状が下方に傾斜しており
上記棚部は、少なくとも上記凹部の前後方向の中心より前方に形成され、上記凹部の前後方向の中心より後方には、上記棚部が形成されていない領域があり、
上記凹部は、平面視において、その左右の側面が上記凹部の前後方向の中心又はこの中心よりも後方側から前方に向けて先が細くなる先細り形状となり、上記左右の側面同士がなす上記先細り形状の角度は、上記凹部における上記左右の側面とこの側面の後方の後面とがなす角度よりも小さいことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
【請求項2】
上記棚部は、上記リム吐水部の下流側に形成された第1の棚部と、この第1の棚部の内側に位置し且つ上記第1の棚部よりも低い位置に設けられた第2の棚部を備えており、上記第1の棚部が上記リム吐水部から上記ボウル部の右側の前方領域まで延びており、さらに、上記第2の棚部は、その左側及び右側の後端が、上記凹部の前後方向の中心より後方で 上記汚物受け面の後端より前方の領域まで延びている請求項1に記載の水洗大便器。

【請求項3】
上記第2の棚部は、上記第1の棚部との接合部が段差により垂直になっており、上記第2の棚部と上記上方汚物受け面との接合部は、上記第1の棚部と上記第2の棚部との接合部に比べて滑らかに接合されている請求項2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水供給源から供給される洗浄水により便器本体を洗浄して汚物を排出する洗い落とし式等の水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、ボウル部の汚物受け面を洗浄するためにリムに設けられたリム吐水口に加え、凹部の溜水部の洗浄水を攪拌するためにジェット吐水口を備えた水洗大便器が知られている。さらに、特許文献1の水洗大便器においては、リム吐水口として、ボウル部の側方に設けられた第1リム吐水口とボウル部の後方に設けられた第2リム吐水口の2つのリム吐水口を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-058300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているような水洗大便器においては、ジェット吐水口が設けられているので、製造工程が複雑となり、また、ジェット吐水口を設けている分だけ清掃性が悪化するという問題がある。また、2つのリム吐水口が設けられているので、凹部の溜水部に溜まった汚物を含む洗浄水を効果的に攪拌させることができるが、リム吐水口が1つの場合に比べて、清掃性が悪化するという問題もある。
【0005】
一方、リム吐水口のみを設け、さらに、1つのリム吐水口にすることにより、製造工程が簡易となり、さらに、清掃性も向上するが、ボウル部において汚物を含む洗浄水の攪拌作用が低下するという洗浄性能に関係する基本的な問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、1つのリム吐水部を設けた場合であっても、汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌して汚物の排出効率を高めることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水供給源から供給される洗浄水により便器本体を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、汚物受け面を備えたボウル部と、このボウル部の上縁に形成され内部にリム通水路が形成されたリム部と、洗浄水供給源から供給された洗浄水を前方に吐水し、汚物受け面上を旋回する旋回流を形成する1つのリム吐水部と、このリム吐水部から吐水された洗浄水がその上を流れる棚部と、ボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水トラップ管路と、を有し、ボウル部の汚物受け面は、上方汚物受け面と、この上方汚物受け面と排水トラップ管路との間に形成された凹部と、を備え、上方汚物受け面は、その両側方領域が横方向に沿って凸面により形成され、その前方領域と後方領域が前後方向に沿って両側方領域より小さな曲率の凸面又は凹面により形成され、凹部は、平面視において、その左右の側面が凹部の前後方向の中心又はこの中心よりも後方側から前方に向けて先が細くなる先細り形状となり、左右の側面同士がなす先細り形状の角度は、凹部における左右の側面とこの側面の後方の後面とがなす角度よりも小さいことを特徴としている。
このような構成した水洗大便器においては、ボウル部の汚物受け面の上方汚物受け面はその両側方領域が横方向に沿って凸面により形成され、その前方領域と後方領域が前後方向に沿って両側方領域より小さな曲率の凸面又は凹面により形成されているので、1つのリム吐水部から洗浄水を吐水する場合であっても、ボウル部の凹部の前方から及び後方からそれぞれ凹部に流入する主流を形成することができる。具体的には、凹部の前方から流入する洗浄水の主流が、排水トラップ管路内への押し込み流を発生させ、凹部の後方から流入する洗浄水の主流が、横方向(水平方向)の旋回流を発生させる。その結果、本発明によれば、1つのリム吐水部から吐水された洗浄水によりボウル部の凹部内で汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
また、凹部の左右の側面同士がなす先細り形状の角度が、凹部における左右の側面とこの側面の後方の後面とがなす角度よりも小さいため、凹部内の前側領域が狭くなることにより、凹部内に縦旋回流を効果的に形成することができると共に、この縦旋回流の速度を高めることができる。よって、凹部内において形成された縦旋回流及び横旋回流により汚物(浮遊系汚物等)を含む洗浄水を効果的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、棚部は、リム吐水部の下流側に形成された第1の棚部と、この第1の棚部の内側に位置し且つ第1の棚部よりも低い位置に設けられた第2の棚部を備えており、第1の棚部がリム吐水部から凹部の前後方向の中心より後方で且つ上方汚物受け面の後端より前方の領域まで形成され、さらに、第2の棚部の後端から上方汚物受け面の後端までの領域は第2の棚部が形成されていない
このように構成された本発明によれば、第1の棚部がリム吐水部から凹部の前後方向の中心より後方で且つ上方汚物受け面の後端より前方の領域まで形成され、さらに、第2の棚部の後端から上方汚物受け面の後端までの領域は棚部が形成されていないので、凹部の後方から流入する洗浄水の主流を大きく形成することができるので、凹部の横方向(水平方向)の旋回を強くすることができ、それにより、凹部内の汚物の排出効率を高めることができる
【0009】
本発明において、好ましくは、第2の棚部は、第1の棚部との接合部が段差により垂直になっており、第2の棚部と上方汚物受け面との接合部は、第1の棚部と第2の棚部との接合部に比べて滑らかに接合されている
このように構成された本発明によれば、第1の棚部と第2の棚部との段差により、第1の棚部の棚面と第2の棚部とが離れているため、第1の棚部の洗浄水が第1の棚部の棚面の表面張力によって段差から第2の棚部に行きにくくなる。これにより、第1の棚部に沿って流れた洗浄水の早い流れが横方向の旋回流を発生させることができる。
また、第2の棚部と上方汚物受け面との接合部が第1の棚部と第2の棚部との接合部に比べて滑らかに接合されているため、第2の棚部を流れた洗浄水は、上方汚物受け面から凹部内に流下するまでに表面張力により下方に引っ張られて一気に流れ落ちることができる。これにより、凹部に流入する洗浄水の運動エネルギーを効果的に利用して、縦旋回流を形成することができるため、汚物の排出効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、1つのリム吐水部を設けた場合であっても、汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌して汚物の排出効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器の壁面に設置されている状態を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
図3図2のIII-III線に沿って見た水洗大便器の側面断面図である。
図4図2の水洗大便器を後方の斜め上方から見た斜視図である。
図5図2の水洗大便器を側方の上方から視た斜視図である。
図6図2のVI-VI線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
図7図2のVII-VII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
図8図2のVIII-VIII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
図9図2のIX-IX線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
図10】本発明の実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れの様子を示す側方から視た斜視図である。
図11】本発明の実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れの様子を示す上方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面により、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。先ず、図1により、本実施形態による水洗大便器の設置状態を説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の壁面に設置されている状態を示す概略図である。図1に示すように、符号1は、本実施形態による水洗大便器1を示し、この水洗大便器1は、後述する排水トラップ管路内の水位上昇による落差を利用して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器(ウオッシュダウン式便器)である。なお、本実施形態においては、水洗大便器は他のタイプの便器であってもよい。
【0015】
水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2は、壁4に取り付けられている。壁4の裏側には、洗浄水を貯水する貯水タンク6が取り付けられ、また、壁4の表面には、操作スイッチ8が取り付けられている。この操作スイッチ8をON操作すると、貯水タンク6内の洗浄水が便器本体2に供給され、便器本体2が洗浄されるようになっている。また、壁4の裏側には、汚物を排出するための排水管10が設けられ、この排水管10により、便器本体2からの汚物を外部へ排出するようになっている。
【0016】
次に、図2乃至図9により、本実施形態による水洗大便器1を詳細に説明する。図2は本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図3図2のIII-III線に沿って見た水洗大便器の側面断面図であり、図4図2の水洗大便器を後方の斜め上方から見た斜視図であり、図5図2の水洗大便器を側方の上方から視た斜視図である。図6図9は、それぞれ、図2のVI-VI線、VII-VII線、VIII-VIII線、及び、IX-IX線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1の便器本体2は、ボウル部12と、このボウル部12の底部から連通して延びる排水トラップ管路14を有する。ボウル部12は、汚物受け面16と、この汚物受け面16の上縁に形成されたリム部18を備えている。さらに、ボウル部12の汚物受け面16は、ボウル形状の上方汚物受け面20と、この上方汚物受け面20と排水トラップ管路14との間に形成された凹部22を備えている。
【0018】
排水トラップ管路14は、ボウル部12の底部に開口した入口14aから斜め上方に延び、最高点14bを通った後、斜め下方に延びて、出口14cに達し、上述した排水管10(図1参照)に接続されている。水洗大便器1の溜水水位Lは、排水トラップ管路14の最高点14bの高さと等しくなる。
【0019】
また、便器本体2の後部には、通水室24が形成され、この通水室24には、上述した貯水タンク6から洗浄水が供給されるようになっている。この通水室24は、その前方側がリム部18まで延び、リム部18の内部に形成されたリム通水路26に接続されている。便器本体1を前方から見て、リム部18の左側の前方領域の内周側には、リム吐水口28が形成され、上述したリム通水路26がリム吐水口28まで延び、洗浄水がリム吐水口28まで供給されるようになっている。このリム吐水口28から前方に向けて洗浄水が吐水され、ボウル部12内において旋回流を形成するようになっている。
【0020】
次に、図2乃至図5により、水洗大便器1の棚部について説明する。図2乃至図5に示すように、リム部18の内周側で且つリム吐水口28の下流側には、洗浄水がその上を流れるための第1の棚部30が形成されている。この第1の棚部30は、リム吐水口28と同じレベルに形成されており、リム吐水口28の位置(前方から見てボウル部12の左側前方領域)からボウル部12の右側の前方領域まで延びている。
【0021】
また、リム部18と上方汚物受け面20の間には、第2の棚部32が形成されている。この第2の棚部32は、第1の棚部30の内側に位置し、段差を介して、第1の棚部30より低い位置に設けられている。第2の棚部32は、図2に示されているように、ボウル部12の前から見て左側の後方領域から前端を経由して右側の後方領域まで延びている。具体的には、第2棚部32は、その左側及び右側の後端32a,32bが、上述した凹部22の前後方向の中心22aより後方で上方汚物受け面20の後端20aより前方の領域まで延びている。また、第2の棚部32は、その長さ方向に沿って、同じ高さ位置(レベル)に形成されている。なお、第2の棚部32の後端32a,32bと上方汚物受け面20の後端20aとの間の領域には、棚部は形成されておらず、湾曲形状となっている。
ここで、第2の棚部32は、左右対称に形成されているが、左右非対称に形成されていてもよく、リム吐水口28近傍から洗浄水の旋回方向の上流側であるボウル部の右側の後方領域まで延びて形成されてもよい。なお、洗浄水の旋回方向の上流側とは、旋回する洗浄水が上方汚物受け面において実質的に先に流れる部分を指す。したがって、本実施形態では、リム吐水口はボウル部前方から見て左側に位置するため、ごく少量の洗浄水は左側の上方汚物受け面に先に流れるが、ほとんどの洗浄水は左側より右側の上方汚物受け面に先に流れるため、ボウル部の左右を比較すると、洗浄水の旋回方向の上流側は右側になる。
【0022】
次に、図2乃至図9により、ボウル部12の汚物受け面16の上方汚物受け面20の表面形状について詳細に説明する。図2に示すように、ボウル部12の上方汚物受け面20は、平面視で、前方領域A、後方領域B、右側方領域C、及び左側方領域Dを有する。
上方汚物受け面20の右側方領域C及び左側方領域Dは、横方向(便器本体1の前後方向に直交する方向)に沿って同じ曲率の凸面により形成され(図8及び図9参照)、前方領域Aは前後方向に沿って凹面により形成され(図3参照)、後方領域Bは、右側方領域C及び左側方領域Dの凸面よりも小さな曲率の凸面により形成されている(図2参照)。
【0023】
ここで、前方領域Aは、後方領域Bと同様に、前後方向に沿って右側方領域C及び左側方領域Dの凸面よりも小さな曲率の凸面により形成されてもよい。また、後方領域Bは、前方領域Aと同様に、前後方向に沿って凹面により形成されてもよい。
さらに、洗浄水の旋回方向の上流側である右側方領域Cが下流側の左側方領域Dよりも横方向に沿って大きな曲率の凸面により形成されてもよい。
【0024】
ボウル部12の汚物受け面16の上方汚物受け面20の表面形状を上述したように形成することにより、詳細は後述するが、リム吐水口28から吐水された洗浄水の一部がボウル部12を1周して前方から凹部22に流入する主流F1を形成し、さらに、リム吐水口28から吐水された洗浄水の一部が後方から凹部22に流入する主流F2を形成する(図10図11参照)。
【0025】
次に、図2図3図8により、ボウル部12の汚物受け面16の凹部22について詳細に説明する。
凹部22は、平面視でほぼ三角形状であり、前方に向けて先が細くなる先細り形状となっている。凹部22は、壁面34と底面36により形成され、さらに、底面36は、前方に位置する前方底面36aと後方に位置する後方底面36bとを備えている。前方底面36aは、後方底面36bに比べて浅くなるように形成されている(図3参照)。また、後方底面36bは、上述した排水トラップ管路14の入口14aと接続されている。
【0026】
ここで、図8に示すように、凹部22の前方底面36aは、横方向に沿って、R形状に形成されている。具体的には、後述する縦旋回流Vを効果的に形成するために、前方底面36aは、その曲率半径Rが30mmから80mmの範囲内に形成されるのが好ましい。
【0027】
また、凹部22の先細り形状の角度θは、縦旋回流Vを効果的に形成するために、35度~70度であるのが好ましく、より好ましくは35度~60度であり、最も好ましくは40度~50である。
さらに、図2に示すように、凹部22の三角形状の後方側は、平面視で円弧形状となっており、後述する横旋回流Hが効果的に形成できるようになっている。
【0028】
次に、主に図10及び図11を参照して、上述した本発明の実施形態による水洗大便器の動作を説明する。図10は本発明の実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れの様子を示す側方から視た斜視図であり、図11は本発明の実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れの様子を示す上方から視た斜視図である。
【0029】
使用者が操作スイッチ8をON操作すると、貯水タンク6内の洗浄水が、便器本体2の通水室24に入り、この通水室24から、リム通水路26を経て、リム吐水口28から、ボウル部12へ吐水される。
【0030】
リム吐水口28から吐水された洗浄水は、先ず、第1の棚部30上を流れ、次に、第2の棚部32に流下し、第2の棚部32上を流れて、ボウル部12内で旋回流を形成する。このとき、ボウル部12内を1周した洗浄水の一部は、リム吐水口28から吐水された洗浄水の内周側を流れ、斜め前方から、凹部22内に流入する主流F1となる。
【0031】
また、リム吐水口28から吐水された洗浄水は、第2の棚部32上を流れるが、上方汚物受け面20の後端領域では、棚部が形成されず、曲面形状となっているので、洗浄水の一部が、斜め後方から、凹部22内に流入する主流F2となる。
【0032】
次に、斜め前方から凹部22内に流入する主流F1は、凹部22の側壁に沿って流下し、前方底面36aに沿って流れることにより上方に向きを変え、側壁に沿って上昇し、縦旋回流Vを形成する。また、主流F1は、排水トラップ管路14内への押し込み流を発生させる。
一方、斜め後方から凹部22内に流入する主流F2は、凹部22の側壁に沿ってほぼ水平方向に流れ、横旋回流Hを形成する。
【0033】
このように、本実施形態による水洗大便器1においては、従来の水洗大便器のようにジェット吐水口を設けなくても、凹部22内において形成された縦旋回流V及び横旋回流Hにより汚物を含む洗浄水を効果的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
【0034】
以下、本実施形態による水洗大便器1による作用を具体的に説明する。先ず、本実施形態による水洗大便器1においては、ボウル部12の汚物受け面16の上方汚物受け面20は、その右側方領域C及び左側方領域Dが横方向に沿って凸面により形成され、その前方領域Aと後方領域Bが前後方向に沿って両側方領域より小さな曲率の凸面又は凹面により形成されているので、ジェット吐水口を設けなくても、さらに、1つのリム吐水口28から洗浄水を吐水する場合であっても、ボウル部12の凹部22の前方から及び後方からそれぞれ凹部22に流入する主流F1,F2を形成することができる。具体的には、凹部22の前方から流入する洗浄水の主流F1が、排水トラップ管路14内への押し込み流を発生させ、凹部22の後方から流入する洗浄水の主流F2が、横方向(水平方向)の旋回流Hを発生させる。その結果、本実施形態による水洗大便器1によれば、リム吐水口28から吐水された洗浄水によりボウル部12の凹部22内で汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
【0035】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、ボウル部12の上方汚物受け面20の前方領域Aが凹面により形成され、後方領域Bが右側方領域C及び左側方領域Dよりも小さな曲率の凸面により形成されている場合には、凹部22の前方から流入する洗浄水の主流F1をより大きく形成することができるので、排水トラップ管路14内への押し込み力を大きくすることができ、これにより、汚物の排出効率をより高めることができる。
【0036】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、ボウル部12の上方汚物受け面20の洗浄水の旋回方向の上流側の右側方領域Cが下流側の左側方領域Dよりも大きな曲率の凸面により形成されている場合には、凹部22の前方から流入する洗浄水の主流F1をより大きく形成することができるので、排水トラップ管路14内への押し込み力を大きくすることができ、これにより、汚物の排出効率をより高めることができる。
【0037】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、リム吐水口28は、リム部18の前方側に設けられているので、リム吐水項28から吐水された洗浄水がほぼ1周旋回した後、前方から凹部22に流れ込む主流F1を形成するので、より多くの洗浄水により上方汚物受け面20の全域を洗浄することができ、洗浄性能が向上する。
【0038】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、第2の棚部32がリム吐水口28から凹部22の前後方向の中心22aより後方で且つ上方汚物受け面20の後端20aより前方の領域まで形成され、さらに、第2の棚部32の後端から上方汚物受け面20の後端までの領域は棚部が形成されていないので、後方から凹部22に流入する洗浄水の量を多くすることができ、凹部22内で汚物を含む洗浄水をより効果的に旋回させることができる。その結果、本実施形態による水洗大便器1によれば、1つのリム吐水口28から吐水された洗浄水によりボウル部12の凹部22内で汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
【0039】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、リム吐水口28の直下流の領域に設けられた第1の棚部30と、この第1の棚部30よりも内側で且つ第1の棚部30よりも低い位置に設けられた第2の棚部32とが設けられているので、リム吐水口28から吐水された洗浄水は、先ず、第1の棚部30上を流れ、次に、洗浄水は第2の棚部32上を流れて1周旋回するので、リム吐水口28から吐水された直後の洗浄水が、1周旋回した洗浄水と衝突することを防止することができる。
【0040】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、第1の棚部30は、リム吐水口28から凹部22の前後方向の中心22aより前方の領域まで形成されているので、リム吐水口28から吐水された洗浄水が第1の棚部30上を流れ、次に、第2の棚部32上に流出するので、第2の棚部32上で1周旋回した洗浄水は、第1の棚部30から第2の棚部30上に流出した洗浄水の流れが強いので、この強い流れの内周側に沿って流れ、前方から凹部22に流入する。これにより、凹部22の前方から流入する洗浄水の主流F1をより大きく形成し、排水トラップ管路14内への押し込み力を大きくすることができ、汚物の排出効率をより高めることができる。
【0041】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、第2の棚部32は、その長さ方向に沿って同じ高さ位置に形成されているので、第2の棚部32上を流れる洗浄水が後方側に流れ易くなり、それにより、凹部22の後方から流入する洗浄水の主流F2をより大きく形成し、より大きな横方向(水平方向)の旋回流を発生させることができ、汚物の排出効率をより高めることができる。
【0042】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、上方汚物受け面16は、その右側方領域C、左側方領域D、及び、前方領域Aが、平面視で斜め前方から凹部22内に流入する主流F1を形成するように構成され、凹部22は、平面視で先細り形状に形成され凹部に流入する主流F1を縦旋回させる縦旋回形成部である側壁34及び前方底面36aを備えているので、ジェット吐水口を設けず、リム吐水口28のみから洗浄水を吐水する場合であっても、凹部22内に縦旋回流Vを形成して凹部22内の汚物を含む洗浄水を効果的に攪拌することができ、それにより、汚物の排出効率を高めることができる。
【0043】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、排水トラップ管路14は凹部22の後方側にその入口14aが接続され、縦旋回形成部である側壁34及び前方底面36aは凹部22の前方側に設けられているので、洗浄水の縦旋回流Vにより、凹部22内の汚物を含む洗浄水を排水トラップ管路14へ押し込むことができ、それにより、汚物の排出効率を高めることができる。
【0044】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、凹部22の前方底面36aが横方向に沿ってR形状に形成されているので、凹部22に流入した洗浄水をスムーズに旋回させることができ、効果的に縦旋回流Vを形成することができ、それにより、汚物の排出効率を高めることができる。
【0045】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、凹部22の前方底面36aが後方底面36bに比べて浅く形成されているので、凹部22に流入する洗浄水の運動エネルギーを効果的に利用して、縦旋回流Vを形成することができ、これにより、汚物の排出効率を高めることができる。
【0046】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、凹部22は、35度~70度の先細り形状に形成されているので、主流F1が凹部にほぼ直交する角度で流入するので、縦旋回形成部である側壁34及び前方底面36aにより、効果的に縦旋回流を形成することができる。
【0047】
次に、本実施形態による水洗大便器1において、凹部22の前方底面36aのR形状は曲率半径が30mm~80mmであるので、凹部22に流入した洗浄水をよりスムーズに旋回させることができ、効果的に縦旋回流Vを形成することができ、それにより、汚物の排出効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 水洗大便器
2 便器本体
6 貯水タンク
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 汚物受け面
18 リム部
20 上方汚物受け面
22 凹部
26 リム通水路
28 リム吐水口
30 第1の棚部
32 第2の棚部
34 壁面
36 底面
36a 前方底面
A 上方汚物受け面の前方領域
B 上方汚物受け面の後方領域
C 上方汚物受け面の右側方領域
D 上方汚物受け面の左側方領域
F1,F2 主流
H 横旋回流
L 溜水水位
R 凹部の前方底面の曲率半径
V 縦旋回流
θ 凹部の先細り形状の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図11