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<図1>
  • 特許-製本装置 図1
  • 特許-製本装置 図2
  • 特許-製本装置 図3
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  • 特許-製本装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】製本装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 9/00 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B42C9/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018012316
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019130677
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】山下 明浦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 良
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-236718(JP,A)
【文献】特開2017-132138(JP,A)
【文献】特開2008-296536(JP,A)
【文献】特開2008-265150(JP,A)
【文献】米国特許第5605575(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00- 9/06
B42C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束を挟持する挟持部と、
挟持部により挟持された用紙束の背に接着剤を塗布する接着剤塗布部とを備えた製本装置であって、
接着剤塗布部によって接着剤が塗布された後の用紙束の背に接触し、接着剤の付着した各用紙の間隔を広げる接触部材を備え、
前記挟持部は、用紙束を立設状態で挟持し、
前記接着剤塗布部は、用紙束の下面の背部分に接着剤を塗布し、
前記接触部材は、用紙束の背の長手方向に沿って延在し、用紙束の背への接触面積可変、かつ、設置高さ可変に構成される製本装置。
【請求項2】
接触部材は、用紙束の背の端面位置から各用紙を用紙束の内方へ押し込む押込み部を備えた請求項1に記載の製本装置。
【請求項3】
接触部材は、用紙束の各用紙に順次接触するよう構成される請求項1または請求項2に記載の製本装置。
【請求項4】
接触部材は、用紙束の各用紙を順次撓ませる撓み形成部を備えた請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の製本装置。
【請求項5】
接触部材は、用紙束の背の厚さ方向に沿って順次用紙に接触するよう構成される請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の製本装置。
【請求項6】
用紙束を接触部材に対し相対移動させる移動部と、
前記移動部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、用紙束の背に、接触部材を複数回接触させるよう前記移動部を制御する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の製本装置。
【請求項7】
用紙束を接触部材に対し相対移動させる移動部と、
移動部の動作を制御する制御部と、
用紙束の背に接触部材を接触させるかどうかを選択する選択部とを備え、
前記制御部は、前記選択部の選択に基づいて前記移動部を制御する請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製本装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙束の背に接着剤を塗布することで冊子を得る製本装置が知られている。下記特許文献1には、接着剤塗布前の用紙束の背に接触して背の部分の用紙の間隔を広げる拡張部材を備えた製本装置の開示がある。この拡張部材は、用紙束の背の長手方向に沿って往復移動され、接着剤が塗布される前に、用紙の間隔を広げることで、接着剤が用紙の間に浸入しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-296536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、拡張部材は、接着剤塗布前の用紙束に接触するので、接着剤を塗布する時点では、用紙の間隔が元の状態に戻ってしまい、多くの接着剤を浸入させることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、用紙束の接着力を向上させることの可能な製本装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の製本装置は、用紙束を挟持する挟持部と、挟持部により挟持された用紙束の背に接着剤を塗布する接着剤塗布部とを備えた製本装置であって、接着剤塗布部によって接着剤が塗布された後の用紙束の背に接触し、接着剤の付着した各用紙の間隔を広げる接触部材を備え、前記挟持部は、用紙束を立設状態で挟持し、前記接着剤塗布部は、用紙束の下面の背部分に接着剤を塗布し、前記接触部材は、用紙束の背の長手方向に沿って延在し、用紙束の背への接触面積可変、かつ、設置高さ可変に構成される
【0007】
また、前記構成において、接触部材は、用紙束の背の端面位置から各用紙を用紙束の内方へ押し込む押込み部を備えた。
【0008】
そして、前記各構成において、接触部材は、用紙束の各用紙に順次接触するよう構成される。
【0009】
更に、前記各構成において、接触部材は、用紙束の各用紙を順次撓ませる撓み形成部を備えた。
【0010】
更に、前記各構成において、接触部材は、用紙束の背の厚さ方向に沿って順次用紙に接触するよう構成される。
【0012】
更に、前記各構成において、用紙束を接触部材に対し相対移動させる移動部と、前記移動部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、用紙束の背に、接触部材を複数回接触させるよう前記移動部を制御する。
【0013】
更に、加工処理装置前記各構成において、用紙束を接触部材に対し相対移動させる移動部と、移動部の動作を制御する制御部と、用紙束の背に接触部材を接触させるかどうかを選択する選択部とを備え、前記制御部は、前記選択部の選択に基づいて前記移動部を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、接着剤塗布部によって接着剤が塗布された後の用紙束の背に接触し、接着剤の付着した各用紙の間隔を広げる接触部材を備え、前記挟持部は、用紙束を立設状態で挟持し、前記接着剤塗布部は、用紙束の下面の背部分に接着剤を塗布し、前記接触部材は、用紙束の背の長手方向に沿って延在し、用紙束の背への接触面積可変、かつ、設置高さ可変に構成されるので、用紙束の背の端面から各用紙の間に接着剤をより多く付着させることができ、接着力を向上させることができる。また、用紙束の背の互いに平行な用紙に接触部材を順次適切に接触させることができる。更に、用紙束へ付着させる接着剤の量を加減することができ、所望する接着力の製本が可能である。
【0017】
また、接触部材は、用紙束の背の端面位置から各用紙を用紙束の内方へ押し込む押込み部を備えた場合は、各用紙の間により多くの接着剤を付着させ、接着力を向上させることができる。
【0018】
そして、接触部材は、用紙束の各用紙に順次接触するよう構成される場合は、用紙を一枚ずつばらばらになるように捌くことができ、各用紙の間に更に多くの接着剤を付着させ、接着力を向上させることができる。
【0019】
更に、接触部材は、用紙束の各用紙を順次撓ませる撓み形成部を備えた場合には、各用紙の間に形成される空間をより大きくすることができ、当該空間に接着剤を入り込ませて、接着力を向上させることができる。
【0020】
更に、接触部材は、用紙束の背の厚さ方向に沿って順次用紙に接触するよう構成される場合は、用紙を厚さ方向に沿って一枚ずつばらばらになるように捌くことができ、接着力をより向上させることができる。
【0022】
更に、制御部は、用紙束の背に、接触部材を複数回接触させるよう移動部を制御する場合は、用紙束の背の端面から各用紙の間に複数回に渡って接着剤を付着させることができ、接着力を向上させることができる。
【0023】
更に、制御部は、選択部の選択に基づいて前記移動部を制御する場合は、多くの接着剤を用いた接着の必要がないときに、適正に用紙束を製本することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る製本装置の模式縦断面図である。
図2】前記製本装置の平面図である。
図3】前記製本装置の使用態様図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる製本装置の使用態様図である。
図5】本発明の更に他の実施形態にかかる製本装置の使用態様図である。
図6】本発明の更に他の実施形態にかかる製本装置の使用態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる製本装置の模式縦断面図である。図2は、前記製本装置の平面図である。製本装置1は、直立させた状態の用紙束Sを挟持する挟持部2と、挟持部2により挟持された用紙束Sの背Bを下方より支持する支持部3と、ミーリング部5と、用紙束Sの背Bに接着剤Gを塗布する接着剤塗布部4と、製本後の用紙束Sを回収する回収部8と、用紙束Sを支持部3、ミーリング部5、接着剤塗布部4、及び回収部8の間で水平方向に往復移動させる移動部9と、制御部(図示省略)とを備える。
【0028】
挟持部2は、用紙束Sを挟持する挟持ユニット20を備える。挟持ユニット20は、前後一対のクランプ21、クランプ移動操作部22、クランプ解除部24を備える。一対のクランプ21は、用紙束Sを前後両側から挟持する。クランプ移動操作部22は、一対のクランプ21を用紙束Sの厚さ方向に相互に近接及び離間させる。クランプ移動操作部22は、操作ノブ221及び連結機構222を備える。作業者は操作ノブ221を回動操作することで、連結機構222を介して一対のクランプ21を近接及び離間させることができる。尚、操作ノブ221を用いて作業者が手動で一対のクランプ21を移動させる構成に替えて、モータの駆動により自動でクランプ21が移動される構成としてもよい。
【0029】
クランプ解除部24は、レバー241及びバネ242を備える。作業者がレバー241を操作することで、一対のクランプ21を所定量離間させる。
【0030】
支持部3は、支持台31と、ニップ部32を備える。支持台31の上面は、用紙束Sの背Bを下方より支持する。支持台31上には、用紙束Sに表紙を付ける際に、表紙が載置される。支持台31は、図示しない支持台移動部によって図1において二点鎖線で示すように上下方向に移動可能に構成される。支持台31は、用紙束Sの背Bが突き当たる突当位置と、用紙束Sを用紙束移動部98によって水平方向に移動する際に突当位置から下方へ待避した待機位置と、用紙束Sに表紙を付ける際に位置する表紙接着位置との間で移動される。
【0031】
本実施形態では、支持台31が上下方向に昇降する構成としたが、これに替えて、支持台31は、揺動軸を軸心に揺動可能に構成されてもよい。
【0032】
ニップ部32は、支持台31の上面に設けられる。ニップ部32は、用紙束Sの下端の前後側面を両側から挟む一対のニップ部材321を備える。一対のニップ部材321は、それぞれ挟持部2により挟持される用紙束Sの背Bの長手方向に平行に延在される。一対のニップ部材321は、図示しないニップ部材移動部の駆動により互いに近接および離間するよう移動可能とされる。ニップ部材移動部は、用紙束Sに表紙を付ける際に、支持台31の上面において一対のニップ部材321を、用紙束Sの背Bを前後両側から挟む方向に移動させる。
【0033】
ミーリング部5は、支持部3と接着剤塗布部4の間に設置される。ミーリング部5は、周面に複数の切裂き刃51が設けられたミーリングローラ52を備える。ミーリングローラ52は、左右一対の側壁11によって回転自在に軸支される。ミーリングローラ52は、ミーリングローラ駆動部53によって回転される。
【0034】
ミーリングローラ52は、図示しないミーリングローラ移動部によって用紙束Sの背Bに接触可能な接触位置と、用紙束Sの背Bから所定量下方へ離間し、待避した待機位置との間で移動される。ミーリングローラ52は、前方へ向けて往路を移動する用紙束Sの下面に接触して用紙束Sの背Bの端面を傷付けることで、用紙束Sの背Bに接着剤Gを浸透しやすくする。
【0035】
接着剤塗布部4は、接着剤貯留槽41、塗布ローラ42、掻落しローラ43、ローラ駆動部44、塗布量調整部45を備える。接着剤貯留槽41は、ホットメルト等の接着剤Gを槽内に収容する。図示省略するが、接着剤貯留槽41はヒーターを内蔵している。接着剤貯留槽41は、塗布ローラ42の回転軸421及び塗布量調整部45により支持されている。すなわち、接着剤貯留槽41は、塗布ローラ42の回転軸421を軸心に揺動可能に設置されるとともに、揺動により低く傾斜配置される接着剤貯留槽41の前端部が塗布量調整部45によって下方より支持され、略水平姿勢となるよう維持される。
【0036】
塗布ローラ42は、挟持ユニット20によって挟持される用紙束Sの背Bの長手方向に平行して延在される。塗布ローラ42の下部は、接着剤貯留槽41の内部に収容され、貯留されている接着剤Gに浸漬されている。塗布ローラ42の頂部は、用紙束Sの背Bの高さより所定量低い位置となるよう調整されている。
【0037】
用紙束Sが用紙束移動部98によって、接着剤塗布部4に移動されたとき、塗布ローラ42の周面の接着剤が用紙束Sの背Bに接触し、接着剤Gを塗布する。塗布ローラ42の回転軸421は接着剤貯留槽41の側板411及び側壁11の双方に回動自在に軸支される。塗布ローラ42の回転軸421の一方の端部は、ローラ駆動部44に連結される。
【0038】
掻落しローラ43は、塗布ローラ42とミーリング部5との間に設置される。掻落しローラ43は、塗布ローラ42に平行して延在される。掻落しローラ43は、接着剤貯留槽41の側板411に回動自在に軸支される。掻落しローラ43の下部は、接着剤貯留槽41の内部に収容されている。掻落しローラ43の外周面にはスクレーパー433が接触している。スクレーパー433は、用紙束Sの背Bから掻落した余分な接着剤Gを掻落しローラ43から擦り落とす。ローラ掻落しローラ43の回転軸431は、連結機構432によって塗布ローラ42の回転軸421に連結される。塗布ローラ42がローラ駆動部44によって回動されると、掻落しローラ43は塗布ローラ42の回転方向と逆の方向に回転される。
【0039】
塗布量調整部45は、図2において、接着剤塗布部4の前左端部に設置される場合を示す。なお、塗布量調整部45の設置位置は、図2に示す位置に限定されず、接着剤塗布部4の右端部であってもよく、他の位置でもよい。塗布量調整部45は、調整操作部452及び支持棒451を備える。調整操作部452は、支持棒451の下部に連結される。調整操作部452が回動操作されると、支持棒451の設置位置が上下方向に移動されるよう構成される。なお、支持棒451の構成に替えて、偏心カムを用いてもよい。
【0040】
支持棒451は接着剤貯留槽41の前端部に設置された上板415の下方に立設される。支持棒451の上端部は、上板415に設けられた被支持部418を下方より支持する。
【0041】
接着剤貯留槽41は塗布ローラ42の回転軸421を軸心に側壁11に揺動自在に揺動されるとともに、揺動軸心より前側の方が後側より低くなるようバネで付勢されている。そして、接着剤貯留槽41の前端部に設けられた被支持部418が、支持棒451によって支持されることで略水平姿勢を維持している。
【0042】
調整操作部45の操作によって支持棒451の設置高さが調整されると、図1において二点鎖線で示すように、接着剤貯留槽41が揺動され、掻落しローラ43の設置高さが変化する。支持棒451が通常より高い位置にあるときは、水平姿勢の接着剤貯留槽41の前部が後部より押し上げられる。これより、掻落しローラ43の高さが通常より低い位置に移動される。この場合、掻落しローラ43が用紙束Sの背Bへの接触量が少なくなり、塗布ローラ42により塗布された接着剤Gを掻き落とす量が少なくなる。
【0043】
逆に、支持棒451が通常より低い位置にあるとき、接着剤貯留槽41の前部が後部より低い位置となる。この場合、掻落しローラ43の高さが通常より高い位置に調整される。掻落しローラ43の用紙束Sの下面への接触量が多くなり、一旦塗布された接着剤Gを掻き落とす量が多くなる。
【0044】
背接触部7は、接着剤貯留槽41の上方であって塗布ローラ42の前方に設置される。背接触部7は、接着剤塗布部4によって接着剤Gが塗布された後の用紙束Sの背Bに接触し、接着剤Gの付着した各用紙Pの間隔を広げる接触部材71を備える。
【0045】
接触部材71は、用紙束Sの背Bの長手方向に沿って延在する。接触部材71は、左右の側壁11に支持されている。接触部材71は傾斜部712を備える。傾斜部712は、水平方向に延在する平板711が、用紙束Sの背Bの長手方向に沿って中央部近傍の所定位置で水平面から5°~85°好ましくは10°~80°程度上方に屈曲して形成される。
【0046】
傾斜部712の上端縁は、用紙束移動部98により移動される用紙束Sの背Bの端面の高さ、即ち、突当位置にある支持台31上面の高さより所定量高い位置となるよう位置合わせされている。
【0047】
また、接触部材71は、設置高さ可変に構成される。背接触部7は、作業者が接触部材71の設置高さを調整するための高さ調整部717を備える。作業者が高さ調整部717の操作部を回動することで、手動により接触部材71の設置高さが変更される。
【0048】
傾斜部712は、用紙束移動部98により移動される用紙束Sの背Bに接触することで、接着剤Gが塗布された用紙束Sの用紙Pを一枚ずつばらばらになるように捌くことができる。また、傾斜部712は、用紙束Sの背Bの端面位置から各用紙Pを用紙束Sの内方へ押し込む押込み部を構成する。
【0049】
接触部材71の傾斜部712は、用紙束Sの背Bの厚さ方向に沿って順次用紙Pに接触するよう構成される。傾斜部712は、用紙束Sの各用紙Pを順次撓ませる撓み形成部を構成する。また、接触部材71は、用紙束Sの背Bへの接触面積可変に構成される。これらより、塗布された接着剤Gは各々の用紙Pの間に入り込みやすくなり、接着力を向上可能である。
【0050】
回収部8は、支持部3の後方に設置される。回収部8は、回収窓81及び回収板82を備える。製本後の用紙束Sは、回収窓81から下方へ落下され、傾斜配置された回収板82上で回収される。
【0051】
移動部9は、用紙束Sを接触部材71に対し相対移動させる。移動部9は用紙束Sを挟持した挟持ユニット20を移動させる用紙束移動部98を備える。用紙束移動部98は、一対の案内部材91と、移動駆動部92とを備える。案内部材91は、一対の側壁11の外側に設置される。案内部材91は挟持ユニット20の移動方向に沿って延在する。
【0052】
移動駆動部92は、モータ921及び動力伝達部922を備える。動力伝達部922は、図示省略するが、ベルト及び複数のプーリなどにより構成される。挟持ユニット20は、前記ベルトに固定される。移動駆動部92の駆動に伴って挟持ユニット20が案内部材91に案内されつつ往復走行する。
【0053】
制御部は、挟持部2、支持部3、接着剤塗布部4、回収部8及び移動部9の動作を制御する。制御部は、操作ボタンや操作パネル等から構成される図示しない操作部、及び所定位置に設置された各種センサから入力された情報に基づき各部を作動させる。操作部は、用紙束Sの背Bに接触部材71を接触させるかどうかを選択する図示しない選択部を含む構成とすることができる。
【0054】
制御部は、用紙束Sの背Bに、接触部材71を複数回接触させるよう移動部9を制御する。また、制御部は、前記選択部の選択に基づいて移動部9を制御する。
【0055】
次に、本発明の製本装置の動作を説明する。
作業者は、支持台移動部を駆動し、支持台31を用紙束Sの当接位置まで上昇させる。作業者により一対のクランプ21の間に用紙束Sが挿入される。その際用紙束Sは、接着を行う背Bの部分が下面となる向きとされ、直立した状態とされる。そして、用紙束Sの背Bの部分が支持台31上面で支持されて揃えられる。作業者が操作ノブ221を所定方向に回転することで、連結機構を介してクランプ21が相互に近接され、用紙束Sがクランプ21によって挟持される。
【0056】
その後、作業者が、図示しない操作ボタンまたは操作パネルを操作すると、支持台移動部が駆動され、支持台31が待機位置まで下降される。用紙束Sに表紙を付ける場合には、作業者によって待機位置に至った支持台31の上に表紙が載置される。
【0057】
更に、作業者によって接着剤塗布開始の操作が行われると、モータ921が駆動され、用紙束Sを挟持した状態で、挟持ユニット20が案内部材91に案内されつつ支持部3から前方へ向けて移動される。
【0058】
挟持ユニット20がミーリングローラ52の設置位置に至ると、回転するミーリングローラ52の切裂き刃51が用紙束Sの背Bに接触する。これより、用紙束Sの背Bの部分を傷付け、背Bへの接着剤Gの浸透性を向上させる。
【0059】
その後、挟持ユニット20が接着剤塗布部4に至ると、用紙束Sの背Bに接着剤Gが塗布される。その際、ローラ駆動部44の駆動により、塗布ローラ42および掻落しローラ43が回転される。塗布ローラ42の上部は、用紙束Sの移動方向と同じ方向に所定の周速度で回転される。一方、掻落ローラ43の上部は用紙束Sの移動方向とは反対の向きに、所定の周速度で回転される。
【0060】
塗布ローラ42の下部は、接着剤貯留槽41の接着剤Gに浸漬されており、挟持ユニット20に挟持された用紙束Sが接着剤貯留槽41の上方を通過する間に、接着剤Gが付着した塗布ローラ42の頂面領域が用紙束Sの背Bに接触することによって用紙束Sの背Bに接着剤Gが塗布される。
【0061】
用紙束Sが背接触部7の設置位置に至ると、接触部材71の傾斜部712の上端部が用紙束Sの背Bに接触する。これより、接着剤Gが塗布された用紙束Sの用紙Pが一枚ずつばらばらになるように捌かれ、塗布ローラ42により塗布された接着剤Gは各用紙Pの前後両面に回り込み、接着力を向上させることができる。
【0062】
接触部材71は、用紙束Sの背Bに接触することで、接着剤Gが塗布された用紙束Sの用紙Pが一枚ずつばらばらになるように捌く。このとき、図3に示すように、押込み部としての傾斜部712によって用紙束Sの背Bの端面位置Eから各用紙Pを用紙束Sの内方へ押し込むことができる。また、接触部材71は、用紙束Sの各用紙Pに順次接触する。撓み形成部は、用紙束Sの各用紙Pを順次撓ませ、背Bの端面に付着した接着剤Gを各用紙Pの間へ効率よく入り込ませることができる。
【0063】
そして、接触部材71は、用紙束Sの背Bへの接触面積可変に構成されるので、用紙Sの種類等に応じて背Bに塗布された接着剤Gが各用紙Pの間に入り込む量を調整し、所望する接着状態とすることができる。
【0064】
挟持ユニット20が接着剤貯留槽41の前端部に至ると、用紙束移動部98は挟持ユニット20の前方への移動を停止する。そして、用紙束移動部98は、挟持ユニット20を停止位置から折り返して後方へ移動開始し、再び接着剤貯留槽41の上方を通過させる。
【0065】
復路において、用紙束Sの下端部は再度接触部材71の傾斜部712の上端部に接触する。このように、制御部は、用紙束移動部98を制御し、用紙束Sの背Bに接触部材71を往路と復路の2回にわたり接触させるようする。よって、用紙束Sを構成する用紙Pは更に捌かれ、更に多くの接着剤Gを用紙Pの前後両面に回り込ませることができる。
【0066】
ここで、用紙束Sの用紙Pが薄いときなどに、作業者が選択部を用いて、用紙束Sの背Bに接触部材71を接触させないことを選択した場合には、制御部は、これに基づき用紙束移動部98を制御する。そして、挟持ユニット20を接触部材71設置位置の手前で停止させる。この接触部材71設置位置の手前の停止位置で挟持ユニット20を折り返して走行させ、復路を移動させる。これより、制御部は、用紙束Sを接触部材71に接触させないよう移動部9を制御することができる。よって、用紙が薄く腰が弱いときなどの多くの接着剤Gを用いた接着の必要がないときに、適正に用紙束Sを製本することができる。
【0067】
また、作業者は、高さ調整部717を操作することで、接触部材71の設置高さを調整し、接触部材71の用紙束Sの背Bへの接触面積を変更することができる。これより、接着剤Gの付着した各用紙Pの間隔を広げる量を加減することができ、適切な接着力の製本物を得ることができる。
【0068】
また、用紙束Sに復路の移動方向と同じ方向に回転する塗布ローラ42の上部に用紙束Sが再度接触し、接触部材71に複数回接触することで、各用紙Pの間隔が広げられた用紙束Sに対し、再度接着剤Gが塗布され、より多くの接着剤Gを付着させる
【0069】
掻落しローラ43の上部は、用紙束Sの移動方向とは反対の向きに回転している。用紙束Sが掻落しローラ43の上方に至ると、用紙束Sの背Bが掻落しローラ43に接触する。これより、用紙束Sに付着した余分な接着剤Gが掻き落とされる。作業者は、調整操作部452を回動操作することで、掻落しローラ43の設置高さを調整することによって、掻落しローラ43によって用紙束Sから取り除かれる余分な接着剤Gの量を調整することができる。
【0070】
用紙束Sが復路を移動するまでに、ミーリングローラ52はミーリングローラ移動部によって下方の待機位置まで移動される。よって、用紙束Sがミーリング部5を通過する際、用紙束Sにミーリングローラ52が接触することはない。
【0071】
用紙束Sが支持部3に到達すると用紙束移動部98は挟持ユニット20の移動を停止する。用紙束Sに表紙を付ける場合、所定のタイミングで支持台移動部が駆動され、支持台31が表紙接着位置まで上昇される。それによって、表紙が用紙束Sの背に押し付けられる。また、ニップ部材駆動部が駆動され、一対のニップ部材321が用紙束Sを表紙の外側から掴む。これより、表紙が用紙束Sの前後両側に押し付けられ、製本処理が完了する。
【0072】
その後、ニップ部材駆動部の駆動により一対のニップ部材321が所定量離間される。また、支持台移動部の駆動により支持台31が待機位置まで下降される。さらに、用紙束移動部98のモータ921が駆動され、挟持ユニット20を後方の回収部8まで移動させる。
【0073】
挟持ユニット20が、案内部材91に案内されつつ製本装置1の後側へ移動され、回収部8に至ると、挟持ユニット20の移動が停止される。作業者が、レバー241を操作すると、一対のクランプ21が所定量離間され、用紙束Sを挟持した状態が解除される。用紙束Sは、回収窓81から下方へ落下され、回収板82に回収される。
【0074】
以上より、本実施形態に係る製本装置1は、接着剤塗布部4によって接着剤Gが塗布された後の用紙束Sの背Bに接触し、接着剤Gの付着した各用紙Pの間隔を広げる接触部材71を備えたので、用紙束Sの背Bの端面から各用紙Pの前後両側に接着剤Gを回り込ませ、より多く付着させることができ、接着力を向上させることができる。
【0075】
尚、本発明に係る製本装置は、挟持部が用紙束を立設状態で挟持したが、これに限定されず、横向き、斜めなど他の方向で挟持してもよい。また、接着剤塗布部4は、用紙束Sの下面に接着剤Gを塗布したが、横向きに挟持された用紙束の鉛直面や斜めの面に塗布してもよく、用紙束の上面に塗布してもよい。また、接着剤塗布部は、ヒーターを内蔵し、ホットメルトなどの接着剤を加熱して使用する場合を示したが、アクリル、EVAや酢酸ビニル等の水系接着剤等他の接着剤を用いてもよい。
【0076】
移動部9は用紙束Sを挟持した挟持ユニット20を移動させる用紙束移動部98を備えたが、用紙束の移動を停止した状態で、接触部材を移動することで、用紙束を接触部材に対し相対移動させてもよい。また、用紙束Sの背Bに接触部材71を接触させるかどうかを選択する選択部を備えたが、接触部材が常時用紙束の背に接触する構成としてもよい。また、制御部は、用紙束Sの背Bに、接触部材71を2回にわたり接触させるよう移動部9を制御したが、1回のみの接触であってもよく、3回以上接触させてもよい。
接触部材71は、設置高さ可変に構成されたが、装置内部での高さや位置が固定されていてもよい。
【0077】
また、接触部材71は、用紙束の背の端面位置から各用紙を用紙束の内方へ押し込む押込み部を備えたが、接触部材は単に接着剤が塗布された用紙を捌くように接触するだけとしてもよくこの場合押込み部を備えなくてもよい。 また、接触部材71は、用紙束Sの各用紙Pに順次接触するよう構成されたが、接着剤塗布後の用紙束の背に一度に接触してもよく、複数の用紙に部分的に接触してもよい。また、接触部材71は、用紙束Sの各用紙Pを順次撓ませる撓み形成部を備えたが、接触部材は、用紙束の一部の用紙ごとにまとめて撓ませてもよく、用紙をほとんど撓ませないようにしてもよい。
【0078】
また、接触部材71は、用紙束Sの背Bの厚さ方向に沿って順次用紙に接触するよう構成されたが、一部の用紙ごとにまとめて接触してもよい。接触部材71は、用紙束Sの背Bの長手方向に沿って延在したが、用紙束の背の向きに対し斜め方向に延在してもよく、直交して延在してもよい。
【0079】
更に、接触部材71は、側壁11に設置されたが、他の位置、例えば接着剤貯留槽等に固定されてもよい。接触部材71は、図1,2に示す平板711を中央部近傍で所定角度折り曲げた形状に限定されない。接触部材の他の実施形態としては、図4-6に示すものが挙げられる。
【0080】
図4では、接触部材71aは中央部近傍で平板711aを折り曲げる際の角度が略直角とされる。このため、上記実施形態の傾斜部712に替えて垂設部720を備える。図5に示す接触部材71bは、平板711bの上面に、断面三角形状に形成され上方に向けて突出した突出部721を有する。図6に示す接触部材71cは、断面円形の棒状部材722により構成される。棒状部材722は、用紙束Sの背Bの長手方向に沿って延在する。棒状部材722は、左右の側壁に支持されている。垂設部720の上端部、突出部721の上端部及び棒状部材722は、それぞれ用紙束Sの背Bに接触する。また、垂説部720、突出部721及び棒状部材722はいずれも押込み部を構成する。
【符号の説明】
【0081】
1 製本装置、2 挟持部、4接着剤塗布部、9 移動部、71、71a、71b、71c 接触部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6