(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】分解可能の導電複合膜の調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220623BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220623BHJP
C08J 7/044 20200101ALI20220623BHJP
C12P 19/04 20060101ALN20220623BHJP
B09B 3/70 20220101ALN20220623BHJP
【FI】
C08J5/18
H01B5/14 Z
C08J7/044 CEP
C12P19/04 C ZAB
B09B3/00 304Z
(21)【出願番号】P 2021047772
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2021-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521162470
【氏名又は名称】杭州加▲みょう▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋暁玲
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109161569(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111725489(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08J 7/044
C12P 19/04
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解可能の導電複合膜の調製方法であって、ステップ1~ステップ4を含み、
前記ステップ1は、タバコ廃棄物を粉砕し、80~100メッシュの篩に通した後に容器に入れ、そして水を加えて十分に撹拌して6~10h浸し、この時、前記タバコ廃棄物と前記水の質量比を1:8~12とし、濾過して浸出液と濾滓を収集し、
前記ステップ2は、前記浸出液に
質量分率が60~85%の酢酸溶液または質量分率が80~90%のリン酸溶液を加え、そして95~110℃下で30~60min撹拌し、アルカリ性過酸化水素を滴加してPH値を6.2~7.0に調節して該温度下で引き続き45~60min撹拌し、前記濾滓をエタノール溶液でソックスレー抽出してソックスレー抽出液を得て、そしてPH値調節後に撹拌した前記浸出液と前記ソックスレー抽出液とを混合して高温殺菌した後に培地に加え、そしてバクテリアセルロース生成菌を加えて35~37℃下で5~8日間培養し、バクテリアセルロース膜を得、
前記ステップ3は、前記バクテリアセルロース膜を蒸留水で洗浄してビーカーの底部に平らに広げ、メタノール水溶液をガラス棒で適量加えた後、コバルト塩を適量加え、振動台で8~15h揺らした後に2‐メチルイミダゾールを適量加え、3~6h揺らし、
前記ステップ4は、前記ステップ3を経た膜をもう一つのビーカーに平らに広げ、N,N‐ジメチルホルムアミドと脱イオン水とをガラス棒で適量加え、この時、前記N,N‐ジメチルホルムアミドと前記脱イオン水の体積比を1:1とし、そしてピロールを適量加えて該ビーカーを0~5℃の環境に置いて酸化剤溶液を適量滴加して前記ピロールを7~10h重合反応させた後、乾燥して複合膜を得る、
ことを特徴とする分解可能の導電複合膜の調製方法。
【請求項2】
前記タバコ廃棄物は、タバコの栽培、生産および加工過程に生じる廃棄物であり、タバコの茎と、タバコと、タバコの花と、タバコの葉と、タバコの種と、葉脈と、タバコの粉末と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解可能の導電複合膜の調製方法。
【請求項3】
前記コバルト塩は、二硝酸コバルト六水和物と、酢酸コバルト四水和物と、硫酸コバルト・7水和物と、のいずれか一つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解可能の導電複合膜の調製方法。
【請求項4】
前記酸化剤溶液は、塩化第二鉄の塩酸溶液である、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解可能の導電複合膜の調製方法。
【請求項5】
前記塩酸溶液は、質量分率が30~36%である、
ことを特徴とする請求項5に記載の分解可能の導電複合膜の調製方法。
【請求項6】
前記ピロールと前記酸化剤溶液との質量体積比は、(0.4~0.85)g:(0.096~0.255)mLである、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解可能の導電複合膜の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜材料調製分野に関し、具体的には、分解可能の導電複合膜の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースポリマーは繰り返しのグルコース単量体がβ‐1,4グリコシド結合で重合されて形成され、その種類は植物セルロース、動物セルロース及び部分が微生物で合成されたセルロースを含む。自然界でセルロースを生成することができる微生物は、酢酸桿菌属、アグロバクテリウム属、根粒菌属等を含む。ここで、キシリヌムは生産量が最も多い一種の菌種である。植物セルロースと比較して、バクテリアセルロースは微生物により単糖分子を基質として合成され、したがってバクテリアセルロースは高い純度を有する。また、バクテリアセルロースはさらに多くの優れた物理化学的特性、例えば高重合度、高結晶化度、良好な生体適合性、小さい熱膨張係数、高ヤング率及び引張強度及び高含水性を有する。
タバコは特殊な経済作物として、その良質の葉が原料として巻きタバコを製造するために用いられ、その根、茎、枝、頂部及び適用しない葉が廃棄物として廃棄され、巻きタバコ製造加工過程において約20%~25%のタバコ廃棄物を生成し、大量の場所を占用するだけでなく、長期に堆積してカビが発生して環境問題を引き起こす。煙管の処理に対して、一部はバイオカーボンを生成し、燃料として使用し、その燃焼エネルギーは基本的に等量の石炭燃焼のレベルに達するが、燃焼残留物は環境に対して深刻な汚染をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第108962485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における上記問題を解決するために、分解可能の導電複合膜の調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
分解可能の導電複合膜の調製方法であって、ステップ1~ステップ4を含み、
前記ステップ1は、タバコ廃棄物を粉砕し、80~100メッシュの篩に通した後に容器に入れ、そして水を加えて十分に撹拌して6~10h浸し、この時、前記タバコ廃棄物と前記水の質量比を1:8~12とし、濾過して浸出液と濾滓を収集し、
前記ステップ2は、前記浸出液に質量分率が60~85%の酢酸溶液または質量分率が80~90%のリン酸溶液を加え、そして95~110℃下で30~60min撹拌し、アルカリ性過酸化水素を滴加してPH値を6.2~7.0に調節して該温度下で引き続き45~60min撹拌し、前記濾滓をエタノール溶液でソックスレー抽出してソックスレー抽出液を得て、そしてPH値調節後に撹拌した前記浸出液と前記ソックスレー抽出液とを混合して高温殺菌した後に培地に加え、そしてバクテリアセルロース生成菌を加えて35~37℃下で5~8日間培養し、バクテリアセルロース膜を得、
前記ステップ3は、前記バクテリアセルロース膜を蒸留水で洗浄してビーカーの底部に平らに広げ、メタノール水溶液をガラス棒で適量加えた後、コバルト塩を加え、振動台で8~15h揺らした後に2‐メチルイミダゾールを適量加え、3~6h揺らし、
前記ステップ4は、前記ステップ3を経た膜をもう一つのビーカーに平らに広げ、N,N‐ジメチルホルムアミドと脱イオン水とをガラス棒で適量加え、この時、前記N,N‐ジメチルホルムアミドと前記脱イオン水の体積比を1:1とし、そしてピロールを適量加えて該ビーカーを0~5℃の環境に置いて酸化剤溶液を適量滴加して前記ピロールを7~10h重合反応させた後、乾燥して複合膜を得る。
【0006】
前記ステップ3において、前記バクテリアセルロース膜におけるバクテリアセルロースは、三次元網目構造を有するため、金属コバルトイオンが水素結合作用により前記バクテリアセルロース膜の内表面に付着し、そして前記2‐メチルイミダゾールを加えることにより、前記2‐メチルイミダゾールが前記金属コバルトイオンと室温下で前記メタノール水溶液において金属有機フレームZIF‐8を形成し、形成した金属有機フレーム材料のほとんどが膜の表面に付着する。
【0007】
優先的には、前記タバコ廃棄物は、タバコの栽培、生産および加工過程に生じる廃棄物であり、タバコの茎と、タバコと、タバコの花と、タバコの葉と、タバコの種と、葉脈と、タバコの粉末と、を含む。
【0008】
優先的には、前記酸溶液は、質量分率が60~85%の酢酸溶液または質量分率が80~90%のリン酸溶液である。
【0009】
優先的には、前記亜鉛塩は、二硝酸コバルト六水和物と、酢酸コバルト四水和物と、硫酸コバルト・7水和物と、のいずれか一つである。
【0010】
優先的には、前記酸化剤溶液は、塩化第二鉄の塩酸溶液である。
【0011】
優先的には、前記塩酸溶液は、質量分率が30~36%である。
【0012】
優先的には、前記ピロールと前記酸化剤溶液との質量体積比は、(0.4~0.85)g:(0.096~0.255)mLである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、バクテリアセルロースをマトリックスとし、高導電性材料を有する金属有機フレームZIF‐8と導電高分子ポリピロリドンとを採用して高導電性の複合膜を調製し、その導電率はテストにより最高で21.339 S/cmに達し、優れた導電性能を備え、タバコの廃棄物はバクテリアセルロース培養の原料として、大量なフルフラールとニコチンを含み、金属イオンを容易に水素結合させることにより、金属イオンをバクテリアセルロース膜に付着させ、また、ポリピロリドンは高分子材料として本発明の複合膜に優れた機械的性質を与える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1に調製の複合膜のSEMグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1
分解可能の導電複合膜の調製方法であって、ステップ1~ステップ4を含み、
前記ステップ1は、タバコ廃棄物を粉砕し、80メッシュの篩に通した後に容器に入れ、そして水を加えて十分に撹拌して6h浸し、この時、前記タバコ廃棄物と前記水の質量比を1:8とし、濾過して浸出液と濾滓を収集し、
前記ステップ2は、前記浸出液に質量分率が60%の酢酸溶液を加え、そして95℃下で30min撹拌し、アルカリ性過酸化水素を滴加してPH値を6.2に調節して該温度下で引き続き45min撹拌し、前記濾滓をエタノール溶液でソックスレー抽出してソックスレー抽出液を得て、そしてPH値調節後に撹拌した前記浸出液と前記ソックスレー抽出液とを混合して高温殺菌した後に培地に加え、そしてバクテリアセルロース生成菌を加えて35℃下で5日間培養し、バクテリアセルロース膜を得、
前記ステップ3は、前記バクテリアセルロース膜を蒸留水で洗浄してビーカーの底部に平らに広げ、メタノール溶液をガラス棒で適量加えた後、二硝酸コバルト六水和物を適量加え、振動台で8h揺らした後に2‐メチルイミダゾールを適量加え、3h揺らし、
前記ステップ4は、前記ステップ3を経た膜をもう一つのビーカーに平らに広げ、N,N‐ジメチルホルムアミドと脱イオン水とをガラス棒で適量加え、この時、前記N,N‐ジメチルホルムアミドと前記脱イオン水の体積比を1:1とし、そしてピロールを適量加えて該ビーカーを0℃の環境に置いて塩化第二鉄の質量濃度が30%の塩酸溶液を適量滴加し、この時、前記ピロールと塩化第二鉄の塩酸溶液との質量体積比を0.4g:0.096mLとする。次に、前記ピロールを7h重合反応させた後、乾燥して複合膜を得る。
【0016】
実施例2
分解可能の導電複合膜の調製方法であって、ステップ1~ステップ4を含み、
前記ステップ1は、タバコ廃棄物を粉砕し、100メッシュの篩に通した後に容器に入れ、そして水を加えて十分に撹拌して10h浸し、この時、前記タバコ廃棄物と前記水の質量比を1:12とし、濾過して浸出液と濾滓を収集し、
前記ステップ2は、前記浸出液に質量分率が90%のリン酸溶液を加え、そして110℃下で60min撹拌し、アルカリ性過酸化水素を滴加してPH値を7.0に調節して該温度下で引き続き60min撹拌し、前記濾滓をエタノール溶液でソックスレー抽出してソックスレー抽出液を得て、そしてPH値調節後に撹拌した前記浸出液と前記ソックスレー抽出液とを混合して高温殺菌した後に培地に加え、そしてバクテリアセルロース生成菌を加えて37℃下で8日間培養し、バクテリアセルロース膜を得、
前記ステップ3は、前記バクテリアセルロース膜を蒸留水で洗浄してビーカーの底部に平らに広げ、メタノール水溶液をガラス棒で適量加えた後、酢酸コバルト四水和物を適量加え、振動台で15h揺らした後に2‐メチルイミダゾールを適量加え、6h揺らし、
前記ステップ4は、前記ステップ3を経た膜をもう一つのビーカーに平らに広げ、N,N‐ジメチルホルムアミドと脱イオン水とをガラス棒で適量加え、この時、前記N,N‐ジメチルホルムアミドと前記脱イオン水の体積比を1:1とし、そしてピロールを適量加えて該ビーカーを5℃の環境に置いて塩化第二鉄の質量濃度が36%の塩酸溶液を適量滴加し、この時、前記ピロールと塩化第二鉄の塩酸溶液の質量体積比を0.85g: 0.255mLとする。次に、前記ピロールを10h重合反応させた後、乾燥して複合膜を得る。
【0017】
実施例3
分解可能の導電複合膜の調製方法であって、ステップ1~ステップ4を含み、
前記ステップ1は、タバコ廃棄物を粉砕し、90メッシュの篩に通した後に容器に入れ、そして水を加えて十分に撹拌して8h浸し、この時、前記タバコ廃棄物と前記水の質量比を1:10とし、濾過して浸出液と濾滓を収集し、
前記ステップ2は、前記浸出液に質量分率が85%の酢酸溶液を加え、そして105℃下で50min撹拌し、アルカリ性過酸化水素を滴加してPH値を6.6に調節して該温度下で引き続き50min撹拌し、前記濾滓をエタノール溶液でソックスレー抽出してソックスレー抽出液を得て、そしてPH値調節後に撹拌した前記浸出液と前記ソックスレー抽出液とを混合して高温殺菌した後に培地に加え、そしてバクテリアセルロース生成菌を加えて36℃下で7日間培養し、バクテリアセルロース膜を得、
前記ステップ3は、前記バクテリアセルロース膜を蒸留水で洗浄してビーカーの底部に平らに広げ、メタノール水溶液をガラス棒で適量加えた後、硫酸コバルト・7水和物を適量加え、振動台で12h揺らした後に2‐メチルイミダゾールを適量加え、5h揺らし、
前記ステップ4は、前記ステップ3を経た膜をもう一つのビーカーに平らに広げ、N,N‐ジメチルホルムアミドと脱イオン水とをガラス棒で適量加え、この時、前記N,N‐ジメチルホルムアミドと前記脱イオン水の体積比を1:1とし、そしてピロールを適量加えて該ビーカーを2℃の環境に置いて塩化第二鉄の質量濃度が34%の塩酸溶液を滴加し、この時、前記ピロールと塩化第二鉄の塩酸溶液の質量体積比を0.65g: 0.172mLとする。次に、前記ピロールを8h重合反応させた後、乾燥して複合膜を得る。
【0018】
試験例
性能テスト1(導電率テスト):実施例1~3に調製の導電複合膜に対し、M‐6手持ち式四プローブ試験装置を使用して4×2cmの矩形膜サンプルをテストし、プローブの間隔を2mmとし、サンプルの厚さを測定範囲0~25 mmの外側マイクロメーターで測定して薄片に加圧成形する。前記薄片の抵抗率測定は、それぞれ使用マニュアルの付録を参照して厚さ補正係数(G)と形状位置補正係数(D)を得て、サンプルの抵抗率をテストし、換算してサンプルの導電率を得て、サンプルの抵抗率ρ(Ω・cm)を得た後に、公式σ=1/ρで導電率σ(S/cm)を得る。テスト結果を表1に示す。
性能テスト2(耐引裂強度):実施例1~3に調製の導電複合膜をPN‐TT1000コンピューター紙引裂強さ測定器でテストし、GB/T 450の標準で試料を取り、試料を大きさを60±0.5mm×50±2mmとし、それぞれサンプルの縦横向きに沿って切り取り、テスト結果を表1に示す。
性能テスト3(引張強さ):実施例1~3に調製の導電複合膜をPN‐TT300コンピューター紙引裂強さ測定器でテストし、GB/T 450の標準で試料を取り、試験に規定の方向に沿って、少なくともそれぞれ10枚の試料を切り取り、試料の幅を15.0mm±0.1mmとし、試料の両辺がなめらかであり且つ互いに平行し、テスト結果を表1に示す。
【0019】
【0020】
表1からわかるように、本発明の実施例1~3に調製の導電膜は、いずれも20.796 S/cmを超えた導電率を有するとともに、耐引裂強度がいずれも293.56 mNを超え、引張強さがいずれも3.97 kN/mを超え、本発明の導電膜は優れた機械的性質を有する。
【要約】 (修正有)
【解決手段】分解可能の導電複合膜の調製方法であって、バクテリアセルロースをマトリックスとし、高導電性材料を有する金属有機フレームZIFー8と導電高分子ポリピロリドンとを採用して高導電性の複合膜を調製する。
【効果】調製した複合膜の導電率はテストにより最高で21.339S/cmに達し、優れた導電性能を備え、タバコの廃棄物はバクテリアセルロース培養の原料として、大量なフルフラールとニコチンを含み、金属イオンを容易に水素結合させることにより、金属イオンをバクテリアセルロース膜に付着させ、また、ポリピロリドンは高分子材料として本発明の複合膜に優れた機械的性質を与える。
【選択図】
図1