(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】熱溶融性接着剤組成物、電極積層体の製造方法及び電極積層体を備える二次電池
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20220623BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20220623BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220623BHJP
H01M 4/139 20100101ALN20220623BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J123/26
H01M4/04 Z
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2018107081
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【氏名又は名称】柴 大介
(72)【発明者】
【氏名】金田 秀文
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221801(WO,A1)
【文献】特開2013-112697(JP,A)
【文献】特開2014-225378(JP,A)
【文献】特開平02-298570(JP,A)
【文献】特開平04-236287(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
H01M 4/04
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体の表面に熱溶融させて塗布するための、非晶性ポリオレフィン(化合物A)を主成分とする熱溶融性熱接着剤組成物であって、
前記熱接着剤組成物が、さらにα,β-不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン(化合物B)を含む熱溶融性接着剤組成物
(但し、前記熱溶融性接着剤組成物が、
硬化剤を含む場合と、
アジリジン基含有化合物を含む場合、又は、化合物Bのカルボキシル基の合計1molに対して沸点が70~300℃の3級アミンを含有する場合とを除く)。
【請求項2】
前記硬化剤が、エポキシ化合物、ポリイソシアネート、カルボジイミド、オキサゾリン及びメラミン樹脂から選ばれる硬化剤を含む、請求項1記載の熱溶融性接着剤組成物。
【請求項3】
前記化合物Bが前記化合物A100重量部に対して0.1~10重量部である請求項1
又は2記載の熱溶融性接着剤組成物。
【請求項4】
前記化合物A中、α-オレフィン-1-ブテン共重合体(化合物A1)が95~10重量%である請求項1
~3のいずれか1項記載の熱溶融性接着剤組成物。
【請求項5】
電極体の表面1、熱溶融性接着剤組成物層及び前記表面1に対向する表面2を備える部材が、前記熱溶融性接着剤組成物層と前記表面1及び前記表面2とが接触して積層されている電極積層体の製造方法であって、
前記表面1又は前記表面2に、請求項1~
4のいずれか1項記載の熱溶融性接着剤組成物を溶融塗布して、前記熱溶融性接着剤組成物層を形成する電極積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項
5記載の製造方法で得られた電極積層体を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融性接着剤組成物、電極積層体の製造方法及び電極積層体を備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミ箔、SUS箔等の金属箔と、PPフィルムをラミネート接着した金属箔ラミネート外包材を使用したリチウムイオン二次電池は、薄型、軽量の二次電池として特にスマートフォン等の民生分野で需要が増加しており、大容量化と安全性の両立を求められている。
【0003】
大容量化と安全性を両立するための検討課題として、限られた外包スペースに電極材料をできるだけ多く配置して大容量化するのに伴う、ガス等の発生による外包スペースの膨張を抑えることが挙げられる(例えば、引用文献1及び引用文献2)。
【0004】
かかる検討課題に対して、例えば、リチウムイオン二次電池の場合は、アルミ箔で構成される電極体の表面と、金属箔ラミネートのPPフィルムを、熱接着性絶縁フィルムを介して積層接着し、外包スペースの膨張を抑えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-151512号公報
【文献】WO2012-056846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の熱接着性絶縁フィルムは、ポリイミド、ホモPP、ブロックPP等を支持体とし、支持体の両面に、例えば、低融点のα,β-不飽和カルボン酸変性PPの接着層を形成した積層体とした場合、電解液に接触する環境下での接着力の低下を見込んで、接着層の厚みを25~50μm程度にしなければならず、で外包スペースにおける電極体の配置スペースを確保するのに障害となっていた。
【0007】
本発明は、表面に熱溶融した特定の熱溶融性接着剤組成物の塗布層を形成した電極体の表面と金属箔ラミネート外包材を圧着固定することにより、電解液に接触する環境下でも接着層の厚みを抑制でき、従来の熱接着性絶縁フィルムを使用した場合よりも電極体の配置スペースを確保できる熱溶融性接着剤組成物、当該熱溶融性接着剤組成物層備える電極積層体の製造方法並びに当該電極積層体を備える二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕電極体の表面に熱溶融させて塗布するための、非晶性ポリオレフィン(化合物A)を主成分とする熱溶融性熱接着剤組成物であって、
前記熱接着剤組成物が、さらにα,β-不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン(化合物B)を含む熱溶融性接着剤組成物(以下「本発明1」ともいう)、
〔2〕電極体の表面1、熱溶融性接着剤組成物層及び前記表面1に対向する表面2を備える部材が、前記熱溶融性接着剤組成物層と前記表面1及び前記表面2とが接触して積層されている電極積層体の製造方法であって、
前記表面1又は前記表面2に、前項〔1〕記載(本発明1)の熱溶融性接着剤組成物を溶融塗布して、前記熱溶融性接着剤組成物層形成する電極積層体の製造方法(以下「本発明2」ともいう)、及び、
〔3〕前項〔2〕記載の製造方法で得られた電極積層体を備える二次電池(以下「本発明3」ともいう)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面に熱溶融した特定の熱溶融性接着剤組成物の塗布層を形成した電極体の表面と金属箔ラミネート外包材を圧着固定することにより、電解液に接触する環境下でも接着層の厚みを抑制でき、従来の熱接着性絶縁フィルムを使用した場合よりも電極体の配置スペースを確保できる熱溶融性接着剤組成物、当該熱溶融性接着剤組成物層備える電極積層体の製造方法並びに当該電極積層体を備える二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本発明1〕
本発明1は、電極体の表面に熱溶融させて塗布するための非晶性ポリオレフィン(化合物A)を主成分とする熱溶融性熱接着剤組成物であって、
前記熱接着剤組成物が、さらにα,β-不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン(化合物B)含む熱溶融性接着剤組成物である。
【0011】
《化合物A》
化合物Aは非晶性ポリオレフィンである。
【0012】
非晶性ポリオレフィンとは、立体規則性の少ないアタクチックポリマーを用いることで、結晶化度を低くし、実質的に融点(示差走査熱量測定(DSC)における吸熱ピーク温度)を有しないポリオレフィンをいう。
【0013】
非晶性ポリオレフィンとしては、少なくともモノマー単位としてオレフィンを含み、非環状又は環状のいずれの構造であってもよい。
【0014】
非環状ポリオレフィンとしては、
低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;
ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の非晶性ポリプロピレン等が挙げられ、
環状ポリオレフィンとは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、
環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。 環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。
【0015】
これらのポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
化合物Aとしては、本発明1の電解液に接触する環境下での接着力の維持(以下「耐電解液性」)の観点から、
非晶性ポリプロピレン並びに/又はプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体等のα-オレフィン-1-ブテン共重合体であることが好ましく、少なくともα-オレフィン-1-ブテン共重合体を含むことが好ましく、α-オレフィン-1-ブテン共重合体及び非晶性ポリプロピレンを含むことがより好ましい。
【0017】
化合物Aが少なくともα-オレフィン-1-ブテン共重合体(化合物A1)を含む場合、耐電解液性の観点から、α-オレフィン-1-ブテン共重合体は、化合物A中95~10重量%であることが好ましく、80~15重量%であることがより好ましく、60~20重量%であることがより好ましく、50~30重量%であることが更に好ましい。
【0018】
化合物Aが少なくとも化合物A1を含む場合、耐電解液性の観点から、化合物A中のそれ以外の非晶性ポリオレフィンとしては、非晶性ポリプロピレン(化合物A2)であることが好ましく、
化合物A1及び化合物A2の重量比(化合物A1/化合物A2)は、
95/5~10/90であることが好ましく、80/20~15/85であることがより好ましく、60/40~20/80であることがより好ましく、50/50~30/70であることが更に好ましい。
【0019】
化合物Aは、ホットメルト塗布性の観点から、180~200℃溶融粘度が50~9000mPa・sであることが好ましく、500~6000mPa・sであることがより好ましく、1000~3000mPa・sであることが更に好ましい。
【0020】
化合物Aは、市販品として、プロピレン-1-ブテン共重合体であるKFケミカル社製RT2732、RT2730、RT2715等を、非晶性ポリプロピレンであるKFケミカル社製RT2115等を使用できる。
《化合物B》
化合物Bはα,β-不飽和カルボン酸変性ポリプロピレンである。
【0021】
化合物Bは結晶性ポリプロピレンにα,β-不飽和カルボン酸をグラフト重合して変性して得ることができる。
【0022】
α,β-不飽和カルボン酸としては、耐電解液性の観点から、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、フタル酸、トリメリット酸、ノルボルネンジカルボン酸等の不飽和ポリカルボン酸又はこれらの誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が好ましく、無水イタコン酸及び/又は無水マレイン酸がより好ましく、無水マレイン酸が更に好ましい。
【0023】
α,β-不飽和カルボン酸のグラフト重量率は、耐電解液性の観点から、
α,β-不飽和カルボン酸100重量%とした場合に、
0.1~20重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましい。
【0024】
化合物Bは、耐電解液性の観点から、重量平均分子量は、好ましくは15000~200000、より好ましくは30000~200000である。
【0025】
化合物Bは、市販品として、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである三井化成社製ユーメックス5500等を使用できる。
【0026】
《熱溶融性熱接着剤組成物》
本発明1は、化合物Aを主成分とし、さらに化合物Bを含む熱溶融性熱接着剤組成物である。
【0027】
化合物Aを主成分であるとは、耐電解液性及び耐ブロッキング性の観点から、化合物Bを除いた本発明1中、化合物Aが好ましくは70~100重量%、より好ましくは80~100重量%、更に好ましくは90~100重量%、更に好ましくは95~100重量%であることをいう。
【0028】
本発明1は、耐電解液性及び耐ブロッキング性の観点から、化合物A100重量部に対して、化合物Bは好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~7重量部、更に好ましくは1~5重量部、更に好ましくは1.5~3重量部である。
【0029】
本発明1は、耐電解液性及び耐ブロッキング性の観点から、その効果を損なわない範囲で、エチレン共重合体、プロピレン重合体、エチレン・プロピレン共重合体等のα-オレフィン(共)重合体及び/又は(無水マレイン酸以外の)酸変性α-オレフィン(共)重合体を含むことができる。
【0030】
本発明1は、化合物A及びB以外に、その効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意にその他の化合物、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等の各化合物を含むことができる。
【0031】
本発明1は、耐電解液性の観点から、実施例に記載した条件で測定される耐電解液性が、好ましくは1N/30mm以上、より好ましくは1~100N/30mm、更に好ましくは2~50N/30mm、更に好ましくは3~20N/30mmである。
【0032】
〔本発明2〕
本発明2は、
電極体の表面1、熱溶融性接着剤組成物層及び前記表面1に対向する表面2を備える部材が、前記熱溶融性接着剤組成物層と前記表面1及び前記表面2が接触して積層されている電極積層体の製造方法であって、
前記表面1又は前記表面2に、本発明1の熱溶融性接着剤組成物を溶融塗布して、前記熱溶融性接着剤組成物層形成する電極積層体の製造方法である。
【0033】
工程1で本発明1の熱溶融性接着剤組成物を塗布する電極体は、例えば、リチウム電池が典型的であるが、電極体表面に電解液等の液体、スラリー、ゲル等の含液物質が接触する環境で使用される場合が、本発明1及び2の好適な対象である。
【0034】
リチウム2次電池の場合を例にして、本発明2を説明する。
【0035】
(1)電極体
(1-1)巻回電極体の例
リチウム2次電池は、例えば、偏平な形状の巻回電極体が、外装部材の間に挟み込んだ構成を有する。
【0036】
外装部材は、絶縁性樹脂層、例えばアルミニウムからなる金属箔、及び熱融着樹脂層をこの順に積層して貼り合わせてなる金属ラミネートフィルム、すなわちアルミラミネートフィルムである。
【0037】
絶縁性樹脂層は、例えばナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等により構成されている。
熱融着樹脂層は、例えば無延伸ポリプロピレン(CPP),ポリエチレン(PE)等により構成されている。
【0038】
外装部材に上記したようなラミネートフィルムを使用すると、リチウム2次電池を高温保存の際に、リチウム2次電池内部で発生する電解液成分の蒸気や電解液の分解により発生する水素ガス,炭酸ガス等のガスにより、リチウム2次電池が膨張する。
【0039】
このようなリチウム2次電池の膨張を抑制するために、外装部材の内部表面に対向する巻回電極体の表面を本発明1の熱溶融性接着剤組成物を介して接着させて、リチウム2次電池を構成する。
【0040】
(1-2)積層電極体の例
正極部材、セパレータ部材および負極部材をこの順序で積層した積層電極体を外装体内に格納したリチウム2次電池の場合、正極部材を構成する正極集電箔の未塗布部と負極部材を構成する負極活物質塗布部分が相対する部分にイオン透過性を有さない絶縁フィルムを配置することにより、リチウムイオン二次電池が充放電を繰り返しても電解液であるイオン液体の負極活物質へのインターカレーションを抑制し、負極の膨張や剥がれを防止ができる。
【0041】
そこで、対向する正極部材と負極部材を本発明1の熱溶融性接着剤組成物層を介して接着させて、本発明1の熱溶融性接着剤組成物層をセパレータ部材とするリチウム2次電池を構成する。
【0042】
(2)製造方法
電極体の表面1、熱溶融性接着剤組成物層及び前記表面1に対向する表面2を備える部材が、前記熱溶融性接着剤組成物層と前記表面1及び前記表面2が接触して積層されている電極積層体の製造方法であって、
前記表面1又は前記表面2に、熱溶融性接着剤組成物を溶融塗布して、前記熱溶融性接着剤組成物層形成する電極積層体の製造方法である。
【0043】
電極体の表面1とは、例えば、巻回電極体では外装部材の内部表面に対向する電極体表面、積層電極体では対向する正極部材又は負極部材の表面であり、表面1に対向する表面2を備える部材とは、巻回電極体では外装部材であり、積層電極体では、電極体の表面1が正極部材の表面であれば、正極部材の表面と対向する負極部材の表面である。
【0044】
例えば、ホットメルト吐出機から溶融した本発明1の熱溶融性接着剤組成物を電極体表面上に吐出して、接着性を有する本発明1の熱溶融性接着剤組成物層を有する接着性電極体を得ることができる。
【0045】
電極体表面に形成する熱溶融性接着剤組成物層は、冷却して流動性のない熱溶融性接着剤組成物の連続したビード(紐)状パターンで形成されていても、網目状パターン形成されていても、ドット状パターンで形成されていてもよいが、電解液が熱溶融性接着剤組成物層側まで十分回りこむ為にドット状パターン又は短ビード状で形成されていることが好ましい。
【0046】
表面1と表面2とを熱溶融性接着剤組成物層を介して貼り合わせて、熱溶融性接着剤組成物層を圧諦することが好ましく、電解液との接触の下でも十分な耐電解液性となる程度の厚みにするために、電極体表面に形成する熱溶融性接着剤組成物層の厚みは、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは30~60μmになるようにする。
【0047】
ホットメルト吐出機としては、液体定量吐出システムであるディスペンサー等を使用することができ、市販品としては、JETディスペンサー(HM-SuperJet、武蔵エンジニアリング社製、ノズル径38G(50μm))、VulcanJet(ノードソン社製、ノズル径100μ)等を使用できる。
【0048】
熱溶融性接着剤組成物層は、出来る限り薄層にすることが好ましく、例えば、エアパルス式ディスペンサー、メカニカル式ディスペンサー(例えば、ジェット式ディスペンサー)によって、塗付面積、塗付量及び塗布パターンを正確かつ高速に制御することが好ましい。
【0049】
ジェット式ディスペンサーを使用する場合、例えば、本発明1の熱溶融性接着剤組成物の溶融粘度が、好ましくは50~9000mPa・s、より好ましくは500~6000mPa・s、更に好ましくは1000~3000mPa・sになるように、ジェット式ディスペンサーのホットメルトアプリケーターの加熱温度を調節する。
【0050】
ジェット式ディスペンサーを使用してドットパターンを形成する場合ドットの最大直径は、好ましくは0.1~10.0mm、より好ましくは0.15~5.0mm、更に好ましくは0.2~3.0mm、更に好ましくは0.3~2.5mmである。
【0051】
圧着後の熱溶融性接着剤組成物層の厚みは、耐電解液性の観点から、好ましくは1~15μm、より好ましくは4~10μmある。
【0052】
〔本発明3〕
本発明3は、本発明2の製造方法で得られた電極積層体を備える二次電池である。
本発明2の製造方法で得られた電極積層体を構成する熱溶融性接着剤組成物層は加圧貼りあわせ後に厚みが15μm以下であるのに対して、熱溶融性接着剤組成物層の代わりに従来使用されていた熱接着性絶縁フィルムの厚さは電解液に接触する環境下での接着力の低下を見込んで、接着層の厚みを25~50μm程度にしていたことを考慮すると、本発明1及び2を適用すれば二次電池の厚みを薄くすることができ、二次電池システムの大容量化に寄与することができる。
【実施例】
【0053】
〔化合物〕
(1)化合物A1(プロピレン-1-ブテン共重合体)
化合物a1-1:RT2732(KFケミカル社製)
化合物a1-2:RT2730(KFケミカル社製)
化合物a1-3:RT2715(KFケミカル社製)
【0054】
(2)化合物A2(非晶性ポリプロピレン)
化合物a2-1:R2115(KFケミカル社製)
【0055】
(3)化合物B(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)
化合物b1:ユーメックス5500(三井化成社製)(表1では「UM5500」)
【0056】
(4)その他の化合物
R2535(エチレン-ポリプロピレン共重合体)
【0057】
各化合物の(化合物b1は160℃、化合物b1以外は190℃での)溶融粘度を表1に記載した。
【0058】
〔材料と装置〕
(1)電極体
アルミ端子材(日本製箔社製、長さ80mm、幅40mm、厚さ20μm)
【0059】
(2)ポリオレフィンフィルム
外包部材のモデルとして、ポリプロピレンフィルムが組み込まれた、ナイロン/アルミ/ポリプロピレンのフィルム層からなるパウチ材を使用した(大日本印刷社製、長さ80mm、幅42mm、厚さ100μm)
【0060】
(3)電解液
エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1
【0061】
(4)ホットメルト吐出機1(実施例1で使用)
VulcanJet(ノードソン社製、ノズル径100μ、シリンジ加温温度200℃)
【0062】
(5)ホットメルト吐出機2(実施例1以外で使用))
JETディスペンサー(HM-SuperJet、武蔵エンジニアリング社製、ノズル径38G(50μm)、シリンジ加温温度180℃)
【0063】
(6)MCH(メチルシクロヘキサン)(業務用MCH 大伸化学社製)
(7)ドクターコーター(金属ブレード、ギャップ50μm、自製品)
(8)電気乾燥機(品番DRN620DB、アドバンテック社製)
(9)テンションゲージ(品番50Nテンションゲージ、大場計器製作所製)
(10)引っ張り試験機(AGS-2kN、ミネベア社製)
(11)マイクロメーター(MDC-25MJ、株式会社ミツトヨ製)
【0064】
〔実施例1~5及び比較例1~7〕
表1記載の化合物(ペレット)を、表1記載の重量(g)ずつ混合して、実施例1の熱溶融性接着剤組成物を製造した。
【0065】
(1)測定用サンプルの製造条件
実施例1の熱溶融性接着剤組成物について、以下の条件で測定用サンプルを製造した。
【0066】
実施例1の熱溶融性接着剤組成物をMCHで溶解して得た実施例1の熱溶融性接着剤組成物20重量%溶液を、ドクターコーターにて電極体の表面の60mm×30mmの領域に厚さ50~70μmで塗工し、90~100℃×3~5分間静置して溶剤を揮発させて厚さ10~15μの実施例1の熱溶融性接着剤組成物層が塗工された接着性電極体を得た。
【0067】
接着性電極体の熱溶融性接着剤組成物層上に電解液をほぼ全面に少量塗布後、すぐにパウチ材のポリプロピレン面を貼り合わせ、パウチ材側から熱溶融性接着剤組成物層領域を温度85℃に加熱しつつ、450kgの加重を加えて圧諦して、
電極体、熱溶融性接着剤組成物層及びパウチ材がそれぞれの対向面が密着して積層された電極積層体(測定用サンプル)を得た。
【0068】
(2)電極積層体における熱溶融性接着剤組成物層の厚み
マイクロメーターで電極積層体のトータル厚みd1と、電極体及びパウチ材の厚みd2とを測定し、d1―d2を熱溶融性接着剤組成物層の厚みとした。
【0069】
(3)常態剥離強度
電極積層体の180°剥離強度(JISK6854-2準拠)を、電極体を引張速度100mm/分で引っ張って測定した。
熱溶融性接着剤組成物層が凝集破壊した場合を 「CF」
熱溶融性接着剤組成物層と電極体とが界面剥離した場合を 「アルミAF」
とした。
【0070】
(4)耐電界液性
電極積層体を、電解液中に室温(25℃)で7日間浸漬した後、取り出して、室温(25℃)で、取り出し直後の常態剥離強度を測定した。
熱溶融性接着剤組成物層が凝集破壊した場合を 「CF」
熱溶融性接着剤組成物層と電極体とが界面剥離した場合を 「アルミAF」
とした。
(5)耐ブロッキング性
接着性電極体の熱溶融性接着剤組成物層面にアルミ端子材を載せたものと、接着性電極体をさらに200℃×10分乾燥を加えた接着性電極体の熱溶融性接着剤組成物層面にアルミ端子材を載せたものについて、室温で200gの加重を20秒間加えてから90°剥離強度をテンションゲージを用いてアルミ端子材を引っ張って測定した。
強度が150g超である場合を×
強度が50超~150gである場合を△
強度が0超~50gである場合を○
強度が0gである場合を◎
とした。
【0071】
〔製造実施例1~5、製造比較例1~5〕
【0072】
実施例1の熱溶融性接着剤組成物について以下の工程を実施して製造実施例1とした。
(工程1)ホットメルト吐出機の耐熱シリンジ容器(30cc)に、実施例1の熱溶融性接着剤組成物を投入して、
溶融温度200℃、ノズル温度185度で熱溶融した場合と、
溶融温度180℃、ノズル温度185度とで熱溶融した場合とについて、
実施例1の熱溶融性接着剤組成物を、
電極体の表面の60mm×30mmの領域に、ドット径400~600μφにて16~31ドット×31~61ドットの塗付パターンで、塗布して、表面に実施例1の熱溶融性接着剤組成物層を備える接着性電極体を得た。
【0073】
(工程2)電極体の熱溶融性接着剤組成物層上に電解液をほぼ全面に少量塗布後、すぐにパウチ材のポリプロピレン面を貼り合わせ、パウチ材側から熱溶融性接着剤組成物層領域を温度85℃に加熱しつつ、450kgの加重を加えて圧諦して、
電極体、熱溶融性接着剤組成物層及びパウチ材がそれぞれの対向面が密着して積層された電極積層体(測定用サンプル)を得た。
【0074】
実施例1の熱溶融性接着剤組成物を実施例2~5、比較例1~5の熱溶融性接着剤組成物に置き換えて、上記工程1及び2を実施して、製造実施例2~5、製造比較例2~5とした。
なお、マイクロメーターで電極積層体のトータル厚みd1と、電極体の厚みd3とを測定し、d1―d3を熱溶融性接着剤組成物層の厚み(ドット高さ)とした。
【0075】
(ホットメルト吐出性の試験条件)
工程1において各組成物をホットメルト吐出機で吐出した際に、
ジェット吐出できなかった場合を ×、
ジェット吐出でき、得られた接着性電極体のドット高さが
100μm以上の場合を △、
100μm未満60μm以上の場合を 〇、
60μm未満の場合を ◎
とした。
【0076】
表1に結果を示す。
【0077】