(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20220623BHJP
F24H 1/54 20220101ALI20220623BHJP
【FI】
F24H9/02 301Z
F24H1/54 303E
(21)【出願番号】P 2017192933
(22)【出願日】2017-10-02
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】鹿鳥 彰
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096524(JP,A)
【文献】特開2003-014312(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03076102(EP,A1)
【文献】特開2014-126259(JP,A)
【文献】特開2011-047566(JP,A)
【文献】特開2013-072569(JP,A)
【文献】特開2016-119931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を開放可能な筐体の内部に、下側にバーナを設置し、上側に、互いに異なる配管がそれぞれ接続される2つの熱交換器を併設してなる燃焼室を収容し、前記2つの熱交換器にそれぞれ接続される前記配管のうち、少なくとも2本の配管において、前記燃焼室からの引き出し側と前記筐体における外部配管との接続側とが左右逆となる給湯器であって、
前記引き出し側と前記接続側とが左右逆となる前記配管は、前記燃焼室から引き出された後、前記2つの熱交換器の前方で互いに交差し
て、それぞれ前記引き出し側と反対側で前記筐体の側板と前記燃焼室との間を通って前記外部配管との接続側へ引き回されていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
一方の前記熱交換器には、給湯回路の給水管と出湯管とが接続され、他方の前記熱交換器には、外部の浴槽へ繋がる風呂戻り管と風呂往き管とが接続されて、前記引き出し側と前記接続側とが左右逆となる前記2本の配管は、前記出湯管及び前記風呂戻り管であることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナを備えた1つの燃焼室に、湯水の経路が異なる2つの熱交換器を併設したいわゆる一缶二水路型の給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、バーナに加熱される熱交換器に、給水管と出湯管とを接続し、出湯管が繋がる外部の給湯栓の開栓により、水道管を介して給水管から供給される水をバーナの燃焼排気で熱交換して出湯させる給湯回路を備えている。これに加えて、熱交換器と外部の浴槽や暖房機等とを接続する経路を形成して、湯水を循環させながら熱交換器で加熱して追い焚きや暖房を行うものも知られている。
このような給湯器では、浴槽や暖房機側の熱交換器を給湯回路側の熱交換器と別に設置してそれぞれ異なるバーナで加熱する構成の他、特許文献1に開示されるように、1つの燃焼室内に給湯回路側の熱交換器と浴槽や暖房機側の熱交換器とを併設して、湯水の経路が異なる2つの熱交換器を共通のバーナで加熱するようにした所謂「一缶二水路型」と称される構成もよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一缶二水型の給湯器は、燃焼室とバーナとを共用できる分、省スペースで設置することができる利点がある。
しかし、省スペースを目的として燃焼室及びこれを収容する筐体の横幅を狭くすると、給水管や出湯管、浴槽と繋がる風呂往き管や風呂戻り管等の配管を配設するスペースが制限されてしまう。特に、熱交換器からの配管の引き出し側と、筐体の底面で固定される外部配管との接続側とが左右逆になるような場合は、燃焼室の前側を横切って配管を配設する必要が生じる。すると、筐体の前面を開放して燃焼室内のバーナやその下側のファン、電装部品等のメンテナンスを行う際、前側の配管が邪魔になって作業がやりにくく、配管を取り外さないと作業が行えないこともあって手間と時間とがかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は、一缶二水路型であってもメンテナンスに係る作業性を向上させることができる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前面を開放可能な筐体の内部に、下側にバーナを設置し、上側に、互いに異なる配管がそれぞれ接続される2つの熱交換器を併設してなる燃焼室を収容し、2つの熱交換器にそれぞれ接続される配管のうち、少なくとも2本の配管において、燃焼室からの引き出し側と筐体における外部配管との接続側とが左右逆となる給湯器であって、
引き出し側と接続側とが左右逆となる配管は、燃焼室から引き出された後、2つの熱交換器の前方で互いに交差して、それぞれ引き出し側と反対側で筐体の側板と燃焼室との間を通って外部配管との接続側へ引き回されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、一方の熱交換器には、給湯回路の給水管と出湯管とが接続され、他方の熱交換器には、外部の浴槽へ繋がる風呂戻り管と風呂往き管とが接続されて、引き出し側と接続側とが左右逆となる2本の配管は、出湯管及び風呂戻り管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、燃焼室におけるバーナの収容部の前方や燃焼室の下方には配管が通らないように配設できる。従って、配管が邪魔になることなくバーナや電装部品等のメンテナンスが行え、一缶二水路型であってもメンテナンスに係る作業性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、燃焼室からの引き出し側と外部配管との接続側とが左右逆となる2本の配管を、出湯管及び風呂戻り管としているので、接続側が左右に離れる両配管を、筐体内で邪魔になることなく省スペースで配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】風呂給湯器の外観説明図で、(A)は正面、(B)は平面、(C)は側面をそれぞれ示す。
【
図4】フロントカバーを省略した筐体内部の正面図である。
【
図5】筐体とコントローラ及びこれに繋がる配線を省略した内部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(風呂給湯器の概略構成)
図1は、風呂給湯器の一例を示す概略回路図である。この風呂給湯器1は、燃焼室2の下部に、互いに数が異なる複数のバーナ4,4・・を備えた3つのバーナユニット3,3・・と、各バーナユニット3に燃焼用空気を供給する燃焼ファン5とが設けられ、燃焼室2内の上部には、バーナ4,4・・の燃焼排気が通過する給湯熱交換器6と風呂熱交換器7とが併設されている。8は点火プラグ、9はフレームロッドで、燃焼室2の上部には、両熱交換器6,7を通過した燃焼排気を排出する排気フード10が設けられ、燃焼室2の外側には、燃焼室2からの燃焼排気の漏出を検出するヒューズ回路をプリントしたシート状の過熱防止装置11が巻回されている。
【0010】
燃焼室2等を収容する器具のガス入口には、外部からのガス配管が接続されるガス管12が接続されて、各バーナユニット3には、ガス管12から分岐する分岐管13,13・・がそれぞれ接続されると共に、各分岐管13には、ガス流路を開閉するガス電磁弁14がそれぞれ設けられている。また、分岐前のガス管12には、上流側から元ガス電磁弁15、ガス比例弁16がそれぞれ設けられている。
【0011】
給湯熱交換器6は、所定間隔をおいて配設された複数のフィン17,17・・を蛇行状に貫通する給湯伝熱管18を備え、給湯伝熱管18の入口には、器具の水入口に接続される給水管19が接続され、給湯伝熱管18の出口には、器具の湯出口に接続される出湯管20が接続されている。給湯熱交換器6の外側に露出する給湯伝熱管18の屈曲部には、給湯伝熱管18の温度を検出する水管サーミスタ21が設けられている。また、給水管19と出湯管20との間には、給湯熱交換器6をバイパスするバイパス管22が接続されて、給水管19とバイパス管22との接続部には、ステッピングモータにより駆動してバイパス管22の流量を可変制御する分配弁23が設けられている。
いる。
【0012】
さらに、給水管19におけるバイパス管22との接続部の上流側には、入水温度を検出する入水サーミスタ24と、給水管19を流れる水量を検出する給湯水量センサ25とが設けられている。
そして、出湯管20における給湯熱交換器6の出口際には、出口温度を検出する給湯熱交換器サーミスタ26が設けられ、バイパス管22との接続部の下流側には、出湯温度を検出する給湯出湯サーミスタ27と、ステッピングモータにより駆動して出湯管20の流量を可変制御する水量制御弁28が設けられている。
よって、ここには、バーナユニット3に加熱される給湯熱交換器6と、給湯熱交換器6に接続される給水管19及び出湯管20、バイパス管22を含む給湯回路Aが形成される。
【0013】
一方、風呂熱交換器7は、フィン17,17・・を蛇行状に貫通する風呂伝熱管30を備え、風呂伝熱管30の入口には、外部配管を介して外部の浴槽31のバスアダプタ32と接続される風呂戻り管33が接続され、風呂伝熱管30の出口には、外部配管を介してバスアダプタ32と接続される風呂往き管34が接続されている。風呂戻り管33には、ポンプ35が設けられると共に、その上流側には、風呂戻り温度を検出する風呂戻りサーミスタ36が設けられ、ポンプ35の下流側には、風呂戻り管33内の湯水の流れによってON/OFF動作する風呂水流スイッチ37と、水圧によって浴槽31内の水位を検出する水位センサ38が設けられている。また、風呂往き管34には、風呂往き温度を検出する風呂往きサーミスタ39が設けられている。
よって、ここには、バーナユニット3に加熱される風呂熱交換器7と、風呂熱交換器7と浴槽31との間に接続される風呂戻り管33及び風呂往き管34とを含む風呂回路Bが形成される。
このように、風呂給湯器1は、1つの燃焼室2内に経路が異なる給湯熱交換器6と風呂熱交換器7とが併設されて共通のバーナユニット3,3・・によって加熱される1缶2水路型となっている。
【0014】
そして、給湯回路Aと風呂回路Bとの間には、出湯管20における水量制御弁28の下流側と、風呂戻り管33におけるポンプ35と風呂戻りサーミスタ36の間で落とし込み管41が接続されている。この落とし込み管41には、上流側に、落とし込み管41を流れる水量を検出する風呂水量センサ42が、下流側に、落とし込み管41を開閉する落とし込み水電磁弁43がそれぞれ設けられている。さらに、落とし込み水電磁弁43の下流側には、2つの逆止弁44,44がそれぞれ設けられて、逆止弁44,44の間には、風呂戻り管33から逆流した湯水をオーバーフロー口から排出する縁切弁45が接続されている。この縁切弁45については後述する。
50は、各サーミスタやセンサ等の検出信号を受けて各弁等を動作させて出湯温制御や浴槽31への湯張り制御等を行うコントローラ、51は給湯リモコン、52は風呂リモコンである。
【0015】
(風呂給湯器の通常動作)
この風呂給湯器1においては、通常の給湯は以下の如くなされる。
湯出口に接続された外部配管の給湯栓が開栓されて器具内に通水され、その通水を給湯水量センサ25で検知すると、コントローラ50は、燃焼ファン5を所定時間回転させて、燃焼室2内に貯留している燃焼排気を排出させる(プリパージ)。その後、ガス管12の元ガス電磁弁15、各ガス電磁弁14を開弁させ、ガス比例弁16を所定開度で開弁させて、各バーナユニット3へガスを供給すると共に、イグナイタを作動させて点火プラグ8でバーナ4,4・・に点火する。
これにより、給湯熱交換器6において、給湯伝熱管18を流れる水がバーナ4の燃焼排気と熱交換されて、加熱された湯が出湯管20及び外部配管を通って給湯栓から出湯される。
【0016】
コントローラ50は、出湯管20の給湯熱交換器サーミスタ26によって出口温度を監視し、分配弁23のステッピングモータを駆動させて、出口温度が、給湯熱交換器6でのドレンの発生や過熱を防止できる温度範囲内に維持されるようにバイパス管22への流量(バイパス率)を制御する。
また、給湯出湯サーミスタ27によって出湯温度を監視し、出湯温度が給湯リモコン51又は風呂リモコン52によって指示された設定温度となるように、各ガス電磁弁14の開閉制御と、ガス比例弁16の開度調整とを行うと共に、燃焼ファン5の回転数制御によって空気量を連続的に変化させる。
給湯栓を閉じると、給湯水量センサ25からの信号停止を確認したコントローラ50は、元ガス電磁弁15及びガス電磁弁14を閉じてバーナ4を消火させ、所定時間燃焼ファン5を回転させる(ポストパージ)。
【0017】
一方、給湯リモコン51又は風呂リモコン52の自動スイッチを押すと、コントローラ50は、落とし込み管41の落とし込み水電磁弁43を開弁して給湯熱交換器6に通水させてバーナ4を燃焼させる。出湯管20からの湯は、落とし込み管41及び風呂戻り管33を通って浴槽31に供給される。落とし込み管41に設けた風呂水量センサ42で検出した水量が設定水量に達すると、落とし込み水電磁弁43を閉じて通水を停止し、バーナ4を消火させる。
次に、ポンプ35を作動させて、風呂熱交換器7と浴槽31との間で湯を循環させる。このとき、風呂戻りサーミスタ36と風呂往きサーミスタ39とで循環する湯の温度を監視し、設定温度からの低下を確認すると、給湯時と同様にバーナ4,4・・が点火されると共に、燃焼ファン5によって燃焼用空気が供給される。よって、風呂熱交換器7と浴槽31との間を循環する風呂循環水は、風呂伝熱管30を流れる際にバーナ4の燃焼排気と熱交換されて設定温度まで加熱される。設定温度に達すると、バーナ4の燃焼を停止させ、ポンプ35を停止させる。
【0018】
(風呂給湯器の外観)
そして、
図2は、風呂給湯器1の外観を示す説明図で、(A)は正面、(B)は平面、(C)は側面をそれぞれ示している。この風呂給湯器1は、天板61及び底板62、左右の側板63A,63B及び背板54に囲まれて前面を開口する縦長箱状の筐体60と、その筐体60の前面を閉塞するフロントカバー65とを有し、フロントカバー65の上部に、排気フード10の前方に設けられた横長筒状の排気口66を突出させている。フロントカバー65の下部及び側部には吸気口67,67・・が設けられている。
【0019】
また、
図3は、風呂給湯器1の底面図で、底板62において、左側後方には、給水管19を外部の水道管に接続するための水入口68が設けられ、その前方には、出湯管20を外部の給湯栓に接続するための湯出口69が設けられている。また、右側前方には、風呂戻り管33を浴槽31に接続するための風呂戻り口70が設けられ、中央後方には、風呂往き管34を浴槽31に接続するための風呂往き口71が設けられている。中央部には、ガス管12を外部のガス配管に接続するためのガス入口72が設けられて、その前方には、電源線の引き込み口73が設けられている。湯出口69と引き込み口73との間でやや前方には、後述する縁切弁ユニット80の排水管86が接続されるオーバーフロー口74が設けられている。
【0020】
(風呂給湯器の筐体内部)
図4は、フロントカバー65を取り外した筐体60内部の正面図、
図5は、筐体60と、コントローラ50及びこれに繋がる配線とを省略した内部の正面図、
図6はその前方からの斜視図、
図7は後方からの斜視図である。
燃焼室2は、筐体60内の上側に配置されて、バーナユニット3を収容する下ケーシング75と、給湯熱交換器6及び風呂熱交換器7を収容する上ケーシング76とを組み付けてなり、上ケーシング76の上側に排気フード10が組み付けられている。燃焼ファン5は、燃焼室2の下部後側に設けられて、燃焼室2の下部で筐体60の開口際には、電装基板を正面視四角形状の箱体に収容してなるコントローラ50が横向きに設置されている。
水入口68に接続される給水管19は、燃焼室2と筐体60の左側の側板63Aとの間を通って上方向に配設され、上ケーシング76の左側方から後方を通って右側方へ回り込んで、上ケーシング76と右側の側板63Bとの間を前方へ移動して、上ケーシング76の右側面前側下部で給湯熱交換器6の給湯伝熱管18に接続されている。
【0021】
給湯側伝熱管18は、給水管19が接続される上ケーシング76の右側面前側から上ケーシング76内で、フィン17,17・・を蛇行状に貫通しながら後側へ配設された後、上ケーシング76の後部で上側に移動し、今度はフィン17,17・・を蛇行状に貫通しながら前側へ配設されて、上ケーシング6の右側面前側上部で出湯管20に接続されている。
出湯管20は、上ケーシング76の右側面前側上部から上ケーシング76の前方へ引き回されて上ケーシング76の前方を斜め下向きに横切った後、給水管19の前方で、正面視で燃焼室2と左側の側板63Aとの間となるように下方向に屈曲して、水量制御弁28を介して湯出口69に接続されている。バイパス管22も、燃焼室2と側板63Aとの間で上下方向に配設されている。
【0022】
一方、風呂伝熱管30は、上下に配設される給湯伝熱管18の間でフィン17,17・・を蛇行状に貫通しながら前後方向に配設され、風呂伝熱管30の前端は、上ケーシング76の左側面前側中央部で風呂戻り管33に接続され、後端は、上ケーシング76の右側面後側中央部で風呂往き管34に接続されている。
風呂戻り管33は、上ケーシング76の前方へ引き回されて、出湯管20の後方で上ケーシング76の前方を斜め下向きに横切って出湯管20と正面視で交差した後、上ケーシング76の右側を後方へ移動し、燃焼室2と右側の側板63Bとの間で下向きに屈曲して、風呂水流スイッチ37及びポンプ35を介して風呂戻り口70に接続されている。
風呂往き管34は、上ケーシング76の後方から左側へ回り込んだ後、給水管19の後方で、正面視で燃焼室2と左側の側板63Aとの間となるように下方向に屈曲して、燃焼ファン5の後方で中央側へ斜めに折曲した後、風呂往き口71に接続されている。
【0023】
このように、給水管19や出湯管20、風呂戻り管33、風呂往き管34等の各配管は、正面視で下ケーシング75やコントローラ50の側方或いは後方に配設されてこれらの前側に位置しないので、フロントカバー65を取り外せば、そのまま下ケーシング75内のバーナユニット3やコントローラ50等のメンテナンスを行うことができ、コントローラ50等の着脱も配管が邪魔になることなく行える。特に、一缶二水型の燃焼室2では、狭いスペースでの引き回しの都合上、出湯管20と風呂戻り管33とは、燃焼室2からの引き出し側と底板62への通常の接続側とが左右逆となっているが、下ケーシング75の上側で互いに交差させて反対側へ配設しているので、引き出し側と底板62への接続側とが左右逆でも下側のスペースは確保できる。
【0024】
(縁切弁ユニット)
落とし込み管41は、水量制御弁28から上向きに配設されて、燃焼室2の下方左側で上下方向に配設された縁切弁ユニット80を介して右側の風呂戻り管33に接続されている。
この縁切弁ユニット80は、
図8に示すように、ユニットケース81内に、落とし込み管41と連通してその一部となる落とし込み経路82を上下方向に備え、落とし込み経路82内に、上下2つの逆止弁44,44を直列的に配置している。また、落とし込み経路82において逆止弁44,44の間には、分岐経路83が後ろ向きに分岐形成されると共に、分岐経路83の下流側は、前側の排水路84と後側の導入路85とに分岐形成されている。排水路84には、オーバーフロー口74に接続される排水管86が接続され、導入路85には、給水管19と接続される導入管87が接続されている。
【0025】
縁切弁45は、分岐経路83における排水路84の上流側に設けられている。この縁切弁45は、排水路84と導入路85との間を仕切る隔膜88と、隔膜88の上流側(
図8の前側)で隔膜88と一体に設けられ、排水路84の上流側で分岐経路83に設けた弁座89に着座可能なシート部91を備えた弁体90とを備える。シート部91はOリング等の弾性リングで、弁体90は、前面にシート部91を保持して後端が隔膜88に結合される外側保持部材92と、外側保持部材92の前面に嵌着されてシート部91を内側から押圧固定する円盤状の内側保持部材93とを備えている。
このうち外側保持部材92は、
図9に示すように、正面視が円形状を有し、前面には、シート部91が保持されるリング状の凹溝94が形成されると共に、前面の中心には、内側保持部材93が嵌合される突起95が突設されている。また、前端外周には、凹溝94を部分的に外側と連通させる四角形状の切欠き96,96・・が、周方向に等間隔をおいて形成されている。
【0026】
以上の如く構成された風呂給湯器1において、縁切弁ユニット80では、通常時は、導入管87から導入路85に加わる給湯回路A側の水圧が、落とし込み経路82から分岐経路83に加わる浴槽31側の水圧よりも高いため、隔壁88が導入路85側の水圧を受けて弁体90を前方へ移動させ、シート部91を弁座89に着座させて弾性変形させ、分岐経路83を閉塞する閉弁状態となる。
そして、下流側の逆止弁44からの逆流が生じて落とし込み経路82から分岐経路83に加わる水圧が導入路85側の水圧より高くなると、隔壁88が浴槽31側の水圧を受けて弁体90を後方へ移動させ、シート部91を弁座89から離間させる開弁状態となる。よって、逆流した湯水は、分岐経路83から排水路84へ流れ込み、排水路84から排水管86を介してオーバーフロー口74から排出される。
この開弁時に、弁座89とシート部91との離間距離(開度)が小さいと、張力によって湯水が、弁座89とシート部91及び外側保持部材92の前端との間にとどまろうとするが、外側保持部材92の前端外周には切欠き96,96・・が形成されているので、張力が破壊されて湯水がとどまることがない。よって、分岐経路83に逆流した湯水は、排水路84へ確実に排出され、冬季に凍結するおそれも生じなくなる。
【0027】
(縁切弁に係る発明の効果)
このように、上記形態の縁切弁45及び風呂給湯器1によれば、縁切弁45における弁座89との着座部分(シート部91)の外側に、開弁位置で弁座89との間での湯水の滞留を防止する切欠き96を形成したことで、縁切弁45による開閉部分での残水を防止して水抜き性能を向上させることができる。
特にここでは、切欠き96を周方向に等間隔で複数設けているので、開閉部分での湯水の張力を確実に破壊でき、水抜き性能の一層の向上が期待できる。
【0028】
なお、切欠きの数や形状は上記形態に限らず、数は1つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、切欠きの形状はV字状や半円状等の他の形状であってもよいし、周方向に長く形成しても差し支えない。
また、縁切弁自体の構成も上記形態に限らず、外側保持部材と内側保持部材とのそれぞれの形状は適宜変更可能であるし、外側と内側とでなく軸方向に2分割される半割部材から弁体を形成してもよい。さらに、2部材からに限らず、3部材以上で弁体を形成することも可能である。
【0029】
一方、上記形態では、一缶二水路型の風呂給湯器で説明しているが、縁切弁に係る発明は一缶二水路型に限らず、給湯熱交換器を有する給湯燃焼室と、風呂熱交換器を有する風呂燃焼室とを別個に備えて風呂回路が給湯回路と分離して形成される風呂給湯器であっても差し支えない。
そして、縁切弁に係る発明では、風呂熱交換器と浴槽との間を繋ぐ風呂戻り管及び風呂往き管は必須ではなく、給湯回路の出湯管を浴槽と接続する落とし込み管のみを備える風呂給湯器であっても適用可能である。バイパス管も必須ではない。
【0030】
(配管の交差に係る発明の効果)
上記形態の風呂給湯器1によれば、燃焼室2からの引き出し側と底板62での外部配管との接続側とが左右逆となる配管(出湯管20と風呂戻り管33)は、燃焼室2から引き出された後、給湯熱交換器6及び風呂熱交換器7の前方で互いに交差して外部配管との接続側へ引き回されていることで、燃焼室2においてバーナユニット3が収容される下ケーシング75の前方や燃焼室2の下方には配管が通らないように配設できる。従って、配管が邪魔になることなくバーナユニット3やコントローラ50等のメンテナンスが行え、一缶二水路型であってもメンテナンスに係る作業性を向上させることができる。
特にここでは、燃焼室2からの引き出し側と外部配管との接続側とが左右逆となる2本の配管は、出湯管20及び風呂戻り管33であるので、底板62での接続側が左右に離れる両配管を、筐体2内で邪魔になることなく省スペースで配設することができる。
【0031】
なお、上記形態では、出湯管を前、風呂戻り管を後にして交差させているが、前後逆に交差させても差し支えない。
また、交差させる配管は出湯管と風呂戻り管とに限らず、燃焼室からの引き出し側によっては、給水管と風呂戻り管とを交差させたり等、上記形態に限定されない。
さらに、交差させる配管は2本に限らず、3本以上で交差させることも可能である。
【0032】
その他、上記形態では、一方の熱交換器を給湯に、他方の熱交換器を浴槽の追い焚きに用いているが、配管の交差に係る発明はこれに限らず、例えば他方の熱交換器を床暖房機等に接続して暖房用とするものであっても適用可能である。すなわち、一缶二水路の用途については上記形態の給湯器に限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1・・風呂給湯器、2・・燃焼室、3・・バーナユニット、4・・バーナ、5・・燃焼ファン、6・・給湯熱交換器、7・・風呂熱交換器、12・・ガス管、17・・フィン、18・・給湯伝熱管、19・・給水管、20・・出湯管、22・・バイパス管、25・・給湯水量センサ、28・・水量制御弁、30・・風呂伝熱管、31・・浴槽、33・・風呂戻り管、34・・風呂往き管、35・・ポンプ、41・・落とし込み管、44・・逆止弁、45・・縁切弁、50・・コントローラ、60・・筐体、62・・底板、65・・フロントカバー、68・・水入口、69・・湯出口、70・・風呂戻り口、71・・風呂往き口、74・・オーバーフロー口、75・・下ケーシング、76・・上ケーシング、80・・縁切弁ユニット、81・・ユニットケース、82・・落とし込み経路、83・・分岐経路、84・・排水路、85・・導入路、86・・排水管、87・・導入管、88・・隔膜、89・・弁座、90・・弁体、91・・シート部、92・・外側保持部材、93・・内側保持部材、94・・凹溝、96・・切欠き。