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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】感染性廃棄物の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20220623BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20220623BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
C02F1/50 510A
C02F1/50 531M
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 540B
C02F1/50 550B
C02F1/50 550C
C02F1/50 550H
C02F1/50 550L
C02F1/50 520P
C02F1/78
A61L2/20 100
A61L2/20
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019167383
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021037502
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019154697
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520205567
【氏名又は名称】株式会社エム・イー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 孝雄
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-024922(JP,A)
【文献】特開2012-161786(JP,A)
【文献】特開昭51-046747(JP,A)
【文献】特開2007-144391(JP,A)
【文献】特開2011-088979(JP,A)
【文献】特開2012-161785(JP,A)
【文献】特開2014-033955(JP,A)
【文献】米国特許第06103130(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1704345(CN,A)
【文献】特開2017-213519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
C02F11/00-11/20
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
B01J10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽と、前記処理槽に感染性廃棄物を含む廃水を供給する廃水供給手段と、廃水を前記処理槽から循環路を循環させて前記処理槽に戻す循環手段と、処理した廃水を放出する放出手段とを備えた感染性廃棄物の処理装置において、
前記循環路は、前記処理槽の出口から前記放出手段の放出路との分岐部までの輸送通路と、前記分岐部から処理槽の戻し口までの戻し通路とを備え、
前記輸送通路にオゾンの微細気泡を生成する微細気泡生成手段が設けられ、前記戻し通路に二酸化塩素の微細気泡を生成する微細気泡生成手段が設けられ、
前記二酸化塩素の微細気泡とオゾンの微細気泡が、同時に廃水中に供給されて廃水の処理が進行することを特徴とする感染性廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば医療機関における廃水の処理方法および処理装置に関し、特に手術や解剖時に出る感染性廃棄物の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術や解剖時に出る廃棄物の廃水には、血液が混じっており、病原菌に汚染されている可能性が高く、下水道や河川に放流する場合には、消毒しておく必要があり、法令によっても適正処理が定められている。従来の推奨される処理方法は、廃水を80℃に加熱して加熱殺菌する方法であるが、処理量に対して大規模で高価な処理設備が必要となり、コスト的に合わず、一部の大規模医療機関を除き、大部分の医療機関では一般の雑廃水と一緒に処理され、十分な殺菌処理がなされずに下水や河川に放流されていた。
【0003】
かかる状況に鑑み、本出願人は、既に、特許文献1に記載のような感染性廃棄物の廃水処理方法および処理装置を提案している。この処理装置は、オゾン処理の前処理として二酸化塩素での殺菌処理を行うことで、処理設備を大型化することなく、効率的な殺菌処理を可能とし、しかも環境への影響を小さくするものであった。特に、二酸化塩素とオゾンの組み合わせによって、炭疽菌等の芽胞菌も滅菌できること、ウィルスの不活化、残存する薬剤、毒性のある各種物質等を分解処理できることも確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3496094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の設備は、小型で、殺菌能力も高く、多くの医療機関で採用されているが、より低コストで、より効率的な処理設備を開発すべく、ファインバブル、ウルトラファインバブルといった微細気泡の技術に着目した。
本発明の目的は、微細気泡を用いることで、より低コストで効率的に感染性破棄物を処理できる感染性廃棄物の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る感染性廃棄物の処理装置は、
処理槽と、前記処理槽に感染性廃棄物を含む廃水を供給する廃水供給手段と、廃水を前記処理槽から循環路を循環させて前記処理槽に戻す循環手段と、処理した廃水を放出する放出手段とを備えた感染性廃棄物の処理装置において、
前記循環路は、前記処理槽の出口から前記放出手段の放出路との分岐部までの輸送通路と、前記分岐部から処理槽の戻し口までの戻し通路とを備え、
前記輸送通路にオゾンの微細気泡を生成する微細気泡生成手段が設けられ、前記戻し通路に二酸化塩素の微細気泡を生成する微細気泡生成手段が設けられ、
前記二酸化塩素の微細気泡とオゾンの微細気泡が、同時に廃水中に供給されて廃水の処理が進行することを特徴とする。
【0007】
本明細書でいう「微細気泡」とは、100μm以下のファインバブルとして総称される、1μm以上100μm以下のマイクロバブル及び1μm未満のナノバブルが含まれる。
上限は100μmに厳格に規定されるものではなく、100μm程度より小さい気泡という意味で、本明細書では微細気泡という呼ぶものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微細気泡を用いることにより、廃水中に分散するオゾン、二酸化塩素の微細気泡の気液界面の面積が飛躍的に大きくなるので、廃水中に存在する炭疽菌に代表される芽胞菌等の病原菌、その他の細菌、ウィルス、残存する薬剤、毒性のある各種物質等が、オゾン、二酸化塩素に曝露される確率、度合いが増大し、これらの分解処理が飛躍的に促進され、処理設備を大型化することなく、より低コストで効率的に感染性破棄物を処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の参考形態1に係る感染性廃棄物の処理装置の構成図である。
図2図2は本発明の参考形態2に係る感染性廃棄物の処理装置の構成図である。
図3図3は本発明の参考形態3に係る感染性廃棄物の処理装置の構成図である。
図4図4は本発明の実施形態に係る感染性廃棄物の処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を図示の参考形態および実施の形態に基づいて説明する。
[参考形態1]
図1は本発明の参考形態1に係る感染性廃棄物の処理装置を示している。
すなわち、この処理装置10は、第1処理槽1と、第2処理槽2と、第1処理槽1に殺菌消毒剤としての二酸化塩素Cを注入する二酸化塩素注入手段としての二酸化塩素注入装置3と、感染性廃棄物を含む廃水Dを第1処理槽1に供給する廃水供給手段としての廃水供給装置5と、廃水Dを第1処理槽1と第2処理槽2との間を循環させる循環装置(循環手段)7と、循環する廃水中にオゾンを供給するオゾン供給装置(オゾン供給手段)8と、処理した廃水を放流するための放出手段としての放流装置9と、第1処理槽1内に設けられた微細気泡生成装置(微細気泡生成手段)200と、を備えている。
【0011】
感染性廃棄物とは、廃棄物処理法によれば、解剖・手術等に伴って発生する病理廃棄物(臓器、組織等)と、解剖・手術等に伴って発生する血液、血清、血漿、体液(精液を含む)を含む感染性産業廃棄物に分類されているが、本発明が対象としている感染性廃棄物は、主として感染性産業廃棄物が該当する。もちろん、法令の定義に限定されるものではなく、殺菌の必要のある医療廃棄物全般に適用可能である。二酸化塩素としては水溶液の形態で、特に二酸化塩素をアルカリ溶液中にとかして安定化させた安定化二酸化塩素を用いることが好適である。
【0012】
図示例では、第1処理槽1と第2処理槽2は、地下の設備室100内に配置されているが、設備室100は地上にあってもよい。設備室100には、設備室100の空気の入れ換えをするための給気ファン等の吸気設備101、排気ファン等の排気設備102が設けられ、また、清掃時や水漏れ等が生じた場合に水を排水するための排水ポンプ103が設
けられている。この廃水は外部に放流することなく、再び第1処理槽1に戻される。第1処理槽1は密閉された容器で、第1処理槽1内部に貯まるガスを排気するための排気パイプ11と、液面スイッチ12とが設けられている。排気パイプ11は第1処理槽1上部に設けられ、パイプ途中に脱臭器13が設けられている。
【0013】
第2処理槽2は圧力容器で、上部には減圧弁21と、内部のガスを排気するための排気通路22が設けられている。排気通路22には排オゾン吸着器23が設けられている。また、第2処理槽2内の内圧を計測する圧力計24が設けられている。二酸化塩素注入装置3は、二酸化塩素を貯留するタンク31と、このタンク31と第1処理槽1間を接続する注入路6と、タンク31内の二酸化塩素を第1処理槽1に送り出すポンプ33とを備えている。また、図示しないが、給水路120のラインを分岐させてタンク内に給水可能とし、二酸化塩素濃度を調整可能としてもよい。その場合には、タンク31内の二酸化塩素を撹拌する攪拌器、タンク31内の液面を検出する液面計,タンク内に水位が所定量に達すると給水を停止するリミットスイッチ等が適宜設けられる。
【0014】
また、第1処理槽1の上部には洗浄用の散水器14が配置され、この散水器14に給水路120が接続されている。廃水供給装置5は、解剖室等の廃棄物発生部署からの廃水を流す排水路51と、排水路51からの廃水を受けて異物を除去する異物除去具としての排水桝52と、排水桝52と第1処理槽1間を連通する供給路53と、を備えている。排水桝52の位置は第1処理槽1より高く、廃水は排水桝52から第1処理槽1に重力によって流入する。廃水供給装置5は、解剖室等からの廃棄物発生部署から直接第1処理槽1に供給される場合だけでなく、別にピット等の一時貯留槽を設け、一時的に貯留槽に貯留するようにしてもよい。
【0015】
また、二酸化塩素の注入路6はタンク31と第1処理槽1とを直接結んでいるが、途中に排水桝52に至る分岐通路61が設けられ、二酸化塩素Cの一部を排水桝52に注入している。排水桝52に供給された二酸化塩素は排水桝52を消毒し、供給路53を通じて供給路53を消毒しながら第1処理槽1に送られる。したがって、二酸化塩素Cは、タンク31から直接注入される経路と、排水桝52を介して注入される経路の2経路を通じて注入されることになり、分岐通路61,排水桝52および供給路53も殺菌消毒剤である二酸化塩素の注入手段として機能する。
【0016】
循環装置7は、第1処理槽1と第2処理槽2を結ぶ循環路70と、循環路70に設けられ廃水を第1,第2処理槽1,2間を循環させる循環ポンプ73とを備えた構成となっている。
循環路70は第1処理槽1の底部と第2処理槽2の上部とを接続する輸送通路71と、第2処理槽の底部と第1処理槽1の上部とを接続する戻し通路72とを備えている。循環ポンプ73は輸送通路71に2つ並列に設けられ、一つが予備となっている。輸送通路71の循環ポンプ73の上流側にはストレーナ74、さらに、通路を開閉する電動の開閉バルブ75が設けられている。オゾン供給装置8は、オゾン供給装置80と、輸送通路71の第2処理槽2近傍に設けられるエゼクタ81と、オゾン供給装置8とエゼクタ81間を接続するオゾン供給路82と、を備えており、エゼクタ81を通じて循環する廃水中に供給される。
【0017】
また、処理した廃水を放流する放流装置9は、一端が電動の第1切換バルブ93を介して循環路70に接続され他端が解放された放出路91と、放出路91に設けられる放流ポンプ92とを備えている。この放流ポンプ92によって、第1,第2処理槽内の廃水を循環路70を介して放流する。第1処理槽1の底部には戻し通路72に設けられた電動の第2切換バルブ95に接続される抜き取り通路94が設けられており、第1処理槽1からの放流は、この抜き取り通路94,戻し通路72および放出路91に至る経路と、第1処理
槽1から輸送通路71および第2処理槽2および放出路91を通る経路の2経路を通じて放流される。第2処理槽2からの放流経路は、戻し通路72および放出路91を通じて放流される。戻し通路72を経由させずに、輸送通路71のみから放流するようにしてもよいし、場合によっては、抜き取り通路94および戻し通路72のみから放流するようにしてもよい。また、戻し通路72の第2切換バルブ95の下流側には、廃水を取り出してサンプリングするためのサンプリング通路130が設けられ、水質を検査するようになっている。
微細気泡生成装置200は、第1処理槽1の廃液中に沈められる構成で、水中ポンプ202と、水中ポンプによって供給される廃水中から微細気泡を生成するノズル204とを備えている。このノズル204としては、たとえば、流路が絞られて急激に拡大する部分を有するベンチュリ―式を採用すれば、急激に拡大する部分でキャビテーションを引き起こし、微細気泡を生成することができる。微細気泡は、主として粒径が100μm以下のファインバブルであり、1μm以上100μm以下のマイクロバブル及び1μm未満のナ
ノバブルが含まれる。粒径の上限は100μmに厳格に規定されるものではなく、100μm程度より小さい気泡を意味する。また、エゼクタ式であるが、YJノズル(エンバイロビジョン株式会社の商品名)の吸気ポートを閉塞したものを用いることによっても、微細気泡を生成することが可能である。
【0018】
上記構成の廃棄物処理装置は、次のように作動する。
まず、解剖室等の廃棄物発生部署から排水路51を通じて流された廃水は排水桝52を経て供給路53に流入し、供給路53を通じて第1処理槽1に供給される。一方、廃水が第1処理槽1に流入すると同時に、二酸化塩素注入装置3のポンプ33を駆動して注入路6を通じて二酸化塩素を一定量注入する。二酸化塩素の大部分は注入路6を通じて直接第1処理槽1内に注入され、一部は注入路6から分岐通路61を経てを排水桝52に供給され、排水桝52から供給路53を経由して第1処理槽1に流入する。排水桝52から供給路53を流れていく途中廃水が二酸化塩素に接触し、殺菌されつつ第1処理槽1に流入するので、薬液が廃水によく混じり合い、殺菌を促進することができる。この二酸化塩素の注入は、排水桝52を経由させずに、第1処理槽1のみに注入するようにしてもよいし、第1処理槽1に直接注入せず、全量を排水桝52を経由させて注入するようにしてもよい。
【0019】
第1処理槽1に供給される廃水の量が所定量に達すると廃水の供給を停止する。第1処理槽1における二酸化塩素の濃度が所定範囲となるように、注入する二酸化塩素Cの量が決定される。
次いで、微細気泡生成装置200により、二酸化塩素Cの微細気泡による殺菌処理を行う。
微細気泡生成装置200では、ポンプ202によって、第1処理槽1内で、廃水が吸引されてノズル204に送り込まれ、ノズル204に流入した廃水に生じる急激な圧力低下によってキャビテーションが生じ、廃水に溶存していた二酸化塩素が微細気泡として生成される。微細気泡には、マイクロバブル、ナノバブルの混在した大きさのものが含まれる。これらの微細気泡が、ノズル204から第1処理槽1内に噴き出し、水流の動きに乗って処理槽内に分散される。微細気泡より小さい細菌等は微細気泡の気液境界面に吸着され、二酸化塩素に曝されて死滅する。また、微細気泡より大きい病原菌等の細菌に対しては、多数の微細気泡がその表面に吸着され、二酸化塩素の酸化作用によって分解が進行する。このように微細気泡化することで、気液界面の面積は飛躍的に広くなり、広範囲にわたって細菌を捕捉し、効率的に殺菌することができる。また、細菌だけでなく、ウィルスについても効率的に不活化され、さらに、残存する薬剤、毒性のある各種物質等についても、分解処理が飛躍的に進行する。
【0020】
一定時間、二酸化塩素による処理が終了した後、オゾン処理を行う。このオゾン処理中
も、二酸化塩素による殺菌も進行する。オゾンを加えることで、二安定化二酸化塩素のガス化が促進され、二酸化塩素による殺菌効果が促進される。
すなわち、輸送通路71の開閉バルブ75を開くと共に循環ポンプ73を回転駆動し、廃水を輸送通路71および戻し通路72を通じて第1,第2処理槽1,2間を循環させる。廃水がエゼクタ81を通過する際に、オゾンが輸送通路71内に自動的に吸引され、オゾンが廃水に供給されながら第2処理槽2に流入する。循環している間、エゼクタ81を通じて廃水に常時オゾンが供給され続ける。この間、二酸化塩素の微細気泡のうち、比較的大径のものは浮き上がって消滅し、小さいものは収縮して消滅したり、ウルトラファインバブルとなって浮遊しながら循環する。
第1処理槽1においては、微細気泡生成装置200が駆動を継続する。第2処理槽2から第1処理槽1に流入する廃水は、一部が微細気泡生成装置200を通過する。この微細気泡生成装置200を通過する際に、廃水中に溶存しているオゾンがキャビテーションによって微細気泡として生成され、第1処理槽1に滞留している廃水中に噴出される。
このオゾンの微細気泡についても、二酸化塩素と同様に、微細気泡より小さい細菌等は微細気泡の気液境界面に吸着され、オゾンの酸化作用により死滅する。また、微細気泡より大きい病原菌等の細菌に対しては、多数の微細気泡がその表面に吸着され、オゾンの酸化作用によって分解が進行する。このように微細気泡化することで、気液界面の面積は飛躍的に広くなり、広範囲にわたって細菌を捕捉し、効率的に殺菌することができる。オゾンについても、細菌だけでなく、ウィルスについても効率的に不活化され、さらに、残存する薬剤、毒性のある各種物質等についても、分解処理が飛躍的に進行する。オゾンの作用は、ガスの状態で分離したラジカルな酸素原子による酸化作用、あるいは水中で酸素原子によって生成されたOHラジカルの酸化作用によって殺菌され、分解が進行する。さらに、残存する二酸化塩素についても、最終的には分解される。
所定時間運転後、サンプリング通路130から廃水を取水し、水質を検査し、検査基準内に収まっていれば、循環ポンプ73およびオゾン供給装置8を停止する。
【0021】
放流は、第1,第2切換バルブ93,95を切り換えると共に、放流ポンプ92を駆動する。第2処理槽2内に残留している廃水は、戻し通路72の一部、放出路91を通じて放流される。第1処理槽1内に残留している廃水は、輸送通路71および第2処理槽2を通じて放流される分と、戻し通路72と放出路91を通じて抜かれる分の2系統の通路を通じて放流される。上記した各バルブ類の切換およびポンプ類の制御は、電気室104内に設けられた不図示の制御盤によって自動制御される。
以上、本実施形態によれば、前処理工程で二酸化塩素をファインバブル、ウルトラファインバブル等の微細気泡を生成して殺菌処理することにより、オゾン処理設備を大型化することなく、効率的に廃水を処理することができる。特に、微細気泡を利用することで、処理時間を短縮することができ、また、必要な二酸化塩素及びオゾンの量を大幅に少なくすることができ、省エネ及びコスト削減を図ることができる。
【0022】
次に本発明の他の参考形態と本発明の実施形態について説明する。以下の説明で、上記参考形態1と同一の構成部分については、同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
参考形態2]
図2は、本発明の参考形態2に係る感染性廃棄物の処理装置を示している。
上記参考形態1では、エゼクタ81によってオゾンを供給しているが、このエゼクタ81の代わりに、公知のエゼクタ方式の微細気泡生成装置300を用いたものである。微細気泡生成装置300としては、たとえば、上記したYJノズル(エンバイロビジョン株式会社の商品名)等を用いることができる。
この微細気泡生成装置300は、基本的にエゼクタ81と同様に、ノズル本体302の通路の一部を細く絞り、ベンチュリ―効果によって流速を高速にして圧力を低下させ、吸気ポート304からオゾンガスを自己吸引するものであるが、通路が拡大する部分に剥離流が多数生じるようにし、廃水中に混入したオゾンガスの気泡を剥離流のせん断作用によって微細化するものである。
このようにすれば、オゾンが微細気泡として廃液中に供給され、第1処理槽1と第2処理槽2間を循環して廃水を処理することができる。この場合、第1処理槽1内の微細気泡生成装置200は停止しておいてもよいし、駆動しておいてもよい。駆動しておけば、溶存している廃液中から、さらにオゾン及び二酸化塩素のファインバブル及びウルトラファインバブルが生成され、より効率的に殺菌、分解することができる。
なお、この実施形態2においては、第2処理槽2を無くしてもよい。
【0023】
参考形態3]
図3は、本発明の参考形態3に係る感染性廃棄物の処理装置を示している。
この実施形態3は、第1処理槽1内に沈められた微細気泡生成装置200のノズル204の側壁に設けられた吸気ポート206に、二酸化塩素の注入路6を接続したものである。
このようにすれば、水中ポンプ202でノズル204内に送り込まれる廃液の流速が絞り部で急激に上昇し、その圧力低下によって、吸気ポート206から二酸化塩素がノズル204内に自己吸引されて廃液中に気泡として混入し、さらに、気泡が、ノズル204内の絞り部を通過した流れの剥離流(渦流)によってせん断作用を受け、微細化され、ノズル204の出口から第1処理槽1内に噴射される。
なお、注入路6から注入されるのは、安定化二酸化塩素の水溶液であるが、活性化することによってガス化させ、二酸化塩素ガスを吸気ポート307から吸引させることができる。
また、ノズル204に水中ポンプ202で送り込まれる廃液中に溶存している二酸化塩素についても、実施形態1と同様に、ノズル204に流入した廃水に生じる急激な圧力低下によってキャビテーションが生じ、廃水に溶存していた二酸化塩素が微細気泡として生成される。
このように、キャビテーション効果による微細気泡と、自己吸引される二酸化塩素の剥離流により生成される微細気泡が相乗的に生成されるので、二酸化塩素の微細気泡がより大量に生成され、第1処理槽1の廃水中に供給することができる。
オゾン処理工程については、実施形態1と同様である。
【0024】
[実施形態
図4は、本発明の実施形態に係る感染性廃棄物の処理装置を示している。
この実施形態は、参考形態1のように第1処理槽1内に微細気泡生成装置を設けず、
オゾンの微細気泡生成装置300と、二酸化塩素の微細気泡生成装置400とを、第1処理槽1と第2処理槽2を結ぶ循環路70に設置したものである。いずれの微細気泡生成装置300,400もエゼクタ方式であり、オゾンの微細気泡生成装置300は、参考形態2と同様で、循環路70の輸送路71に配置し、二酸化塩素の微細気泡生成装置400を戻し通路72に配置している。
この実施形態は、オゾンを溶解する第2処理槽は不要で、第1処理槽に対応する処理槽41と、二酸化塩素注入装置3と、廃水供給装置5と、廃水D循環させる循環装置7と、オゾン供給装置8と、放流手段としての放流装置9等を備えている。このうち、処理槽41、二酸化塩素注入装置3、循環装置7、オゾン供給装置8が処理ユニット500を構成する。
二酸化塩素注入装置3からは、一時貯留槽55及びスクリーンユニット54に二酸化塩素を供給する供給路62、63が設けられている。また、二酸化塩素の注入路6が、二酸化塩素の微細気泡生成装置400の吸気ポート404に接続されている。
廃水供給装置5については、解剖室や手術等から流される感染性廃水が、スクリーンユニット54を介して一時貯留槽55に貯留される。一時貯留槽55にはブロワ56が設けられ、廃水中に空気を送り込んで攪拌すると共に微生物による分解を促進している。一時貯留槽55からの排気ガスが、除菌ユニット57を介して排気される。除菌ユニット57は、一時貯留槽55から漏れる排ガス中に浮遊する細菌等を除菌するもので、たとえば、紫外線を照射して空気中の酸素をオゾンを生成するオゾンランプ等が用いられる。また、一時貯留槽55の廃水を処理槽41に輸送する供給路53が設けられ、不図示のポンプによって処理槽41に輸送される。
なお、除菌ユニット57は処理ユニット500内に設けられ、処理ユニット500には、除菌ユニット57と共に、排オゾン分解器223が設けられ、処理ユニット500内の排気を行っている。
循環装置7は、処理槽41の出口16から廃液を戻し口17に戻して循環させる循環路70と、循環路70に設けられる循環ポンプ73と、ストレーナ74とを有している。循環路70は、放出路91との分岐部に位置する切換バルブ97までの輸送通路71と、切換バルブ97から処理槽41の戻し口17までの戻し通路72とを備えている。循環ポンプ73とストレーナ74は輸送通路71に設けられている。
放流装置9については、循環路70から切換バルブ97を介して放出路91に切り換えられて放出されるが、放流タンク96に一時貯留される。なお、放流ポンプ92の図示は省略されている。また、第2切換バルブ95に接続される抜き取り通路94等についても、図示は省略されている。
【0025】
オゾンの微細気泡生成装置300は、ノズル本体302と、ノズル本体302の側壁に設けられる吸気ポート304とを有し、ノズル本体302の入口ポートと出口ポートを、輸送通路71を構成する配管に接続している。また、吸気ポート304は、オゾン供給路82を通じてオゾン供給装置8と接続されている。
二酸化塩素の微細気泡生成装置400は、ノズル本体402と、ノズル本体402の側壁に設けられる吸気ポート404とを有し、ノズル本体402の入口ポートと出口ポートを、戻し通路72を構成する配管に接続している。また、吸気ポート404は、注入路6を通じて二酸化塩素注入装置3と接続されている。
この実施形態の処理装置は、一時貯留槽55から処理槽41に所定量の廃水を供給する。供給した後、循環ポンプ73を駆動し、廃水を、輸送通路71及び戻し通路72を通じて循環させる。廃水が循環を開始すると、輸送通路71には、微細気泡生成装置300を通じて、オゾンガスが自己吸引されてオゾンガスの微細気泡が生成されて廃水中にオゾンガスの微細気泡が供給される。さらに、戻し通路72には、微細気泡生成装置400を通じて二酸化塩素が自己吸引され、二酸化塩素の微細気泡が廃水中に供給され処理槽41に流入し、二酸化塩素ガスの微細気泡とオゾンガスの微細気泡が、同時に廃水中に供給されて廃水の処理が進行する。
このように、エゼクタタイプの微細気泡生成装置300,400を用いることによって、循環ポンプの供給圧を利用して微細気泡を生成するので、参考形態1のようなオゾン溶解を主とする第2処理槽2が不要となり、処理ユニット500の小型化が可能となる。
【0026】
その他の形
・微細気泡生成方式
上記実施形態では、微細気泡をベンチュリ式、エゼクタ式によって生成する場合を例示して説明したが、微細気泡の生成方式としては、その他に、旋回流方式、スタティックミキサ方式、微細孔方式、加圧溶解式、超音波キャビテーション式等が公知であり、二酸化
塩素やオゾンの供給方式、設備に応じて種々の方式を適用することができる。たとえば、上記参考形態のように、液体中に溶解した二酸化塩素の微細気泡を生成する場合には、ベンチュリ方式の他に、加圧溶解式、超音波キャビテーション式等の方法をとり、気体を液中に吸引して微細気泡を生成する場合には、旋回流方式、エゼクタ式、スタティックミキサ方式、微細孔式等を採用することができる。
・二酸化塩素処理とオゾン処理の順序
また、上記した参考形態1~3では、オゾン処理の前に、二酸化塩素処理のみを行う前処理工程を設けているが、二酸化塩素処理の前にオゾン処理を行ってもよい。また、二酸化塩素処理の前と後にオゾン処理を行ってもよいし、二酸化塩素処理とオゾン処理を同時に行ってもよい。
施形態では、二酸化塩素処理とオゾン処理を同時に行っており、廃水が酸性となって安定化二酸化塩素のガス化が促進され、廃水中に二酸化塩素ガスとオゾンガスの気泡が混り合った気液二相構成で循環する。
・微細気泡生成装置を使用しない構成
上記各参考形態では、処理装置に微細気泡生成装置を設置しているが、たとえば、二酸化塩素の微細気泡を水中に分散させた微細気泡水、およびオゾンの微細気泡を水中に分散させた微細気泡水を用意し、二酸化塩素の代わりに二酸化塩素の微細気泡水を、オゾンの代わりにオゾンの微細気泡水を供給すれば、微細気泡生成装置は不要である。たとえば、図1において、二酸化塩素注入装置3のタンク31内に、二酸化塩素の微細気泡水を貯留し、オゾン発生装置の代わりにオゾンの微細気泡を貯留し、エゼクタ81で送り込むことが可能である。微細気泡として1μm未満のウルトラバルブとしておけば、長期保存が可
能である。この微細気泡水の生成は、感染性廃棄物の処理装置の設備外で製造したものを用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 処理装置
1 第1処理槽、2 第2処理槽
41 処理槽
3 二酸化塩素注入装置
31 タンク、32 ポンプ、6 注入路
5 廃棄物供給装置
52 排水桝、53 供給路
7 循環装置
70 循環路、71 輸送通路、72 戻し通路、73 循環ポンプ、
75 バルブ
8 オゾン供給装置
80 オゾン発生器、81 エゼクタ、82 オゾン供給路
9 放流装置
91 放出路、92 放流ポンプ、93 第1放流バルブ、94 抜き取り通路、95 第2放流バルブ、97 切換バルブ
130 サンプリング通路
200 微細気泡生成装置
300 微細気泡生成装置
400 微細気泡生成装置
図1
図2
図3
図4