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  • 特許-エンジン洗浄方法 図1
  • 特許-エンジン洗浄方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】エンジン洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/04 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
F02B77/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020218729
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】521001331
【氏名又は名称】奥村 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 猛
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111425300(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191412(US,A1)
【文献】特開2016-109011(JP,A)
【文献】国際公開第2014/025249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力装置のエンジンに動力部を接続した状態で、前記エンジンの燃料室内に水素ガスを一定時間供給する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記水素ガスの供給を停止する第2の工程と
を有し、
前記第1の工程は、
前記エンジンに動力部が接続されていない状態で前記エンジンを始動する始動工程と、
前記始動工程の後に前記エンジンの前記燃料室内への前記水素ガスの供給を開始する供給工程と、
前記供給工程の後に、前記エンジンに前記動力部を接続する接続工程と
を有するエンジン洗浄方法。
【請求項2】
前記エンジンからの吸い上げに応じて、前記水素ガス及び空気が前記エンジン内に流入する
請求項1に記載のエンジン洗浄方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、
前記接続工程の後に、所定時間が経過すると、マフラーから排出される黒鉛と、前記エンジンの馬力とを基に、追加の所定時間を決定し、当該追加の所定時間さらに前記水素ガスの注入を継続する
請求項2に記載のエンジン洗浄方法。
【請求項4】
前記第2の工程の後に、前記動力装置の走行と停止を繰り返す第3の工程
をさらに有する請求項1~3のいずれかに記載のエンジン洗浄方法。
【請求項5】
前記動力装置は船舶であり、
前記第3の工程は、前記船舶のスクリューの回転を、回転状態と停止状態とで交互に繰り返す
請求項4に記載のエンジン洗浄方法。
【請求項6】
前記第1の工程は、水素生成装置からの水素ガスを前記エンジンに供給する
請求項1~5のいずれかのエンジン洗浄方法。
【請求項7】
水素ガスを生成する水素ガス生成装置を用い、当該水素ガス生成装置と前記動力装置とは別装置でなる
請求項1~6のいずれかに記載のエンジン洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等のエンジンを洗浄するエンジン洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジンでは、走行距離に応じて、エンジンの内部にカーボン(燃料の燃えカス)が堆積する。
【0003】
エンジンにカーボンが堆積すると、燃費が落ち、加速が悪くなり、エジン音が大きくなり、エンジンの不調の原因となる。
従って、従来からエンジンに堆積されたカーボンを除去して洗浄している。
【0004】
従来、エンジンの洗浄は、動力装置のエンジンを動力部と非接続にしtニュートラル状態で洗浄用ガスを導入して、エンジンに堆積したカーボンを除去して洗浄するのが一般的であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジン内部からカーボンを十分に除去するまでに長時間を要し、大量の洗浄用ガスを必要となるという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためになされ、船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンの内部に堆積したカーボンを短時間で少ない洗浄用ガスで洗浄することが可能なエンジン洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術問題を解決し、上述した目的を達成するために、本発明のエンジン洗浄方法は、動力装置のエンジンに動力部を接続した状態で、前記エンジンの燃料室内に水素ガスを一定時間供給する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記水素ガスの供給を停止する第2の工程とを有し、前記第1の工程は、前記エンジンに動力部が接続されていない状態で前記エンジンを始動する始動工程と、前記始動工程の後に前記エンジンの前記燃料室内への前記水素ガスの供給を開始する供給工程と、前記供給工程の後に、前記エンジンに前記動力部を接続する接続工程とを有す
【0009】
好適には、前記エンジンからの吸い上げに応じて、前記水素ガス及び空気が前記エンジン内に流入する。
【0010】
好適には、前記第1の工程は、前記接続工程の後に、所定時間が経過すると、マフラーから排出される黒鉛と、前記エンジンの馬力とを基に、追加の所定時間を決定し、当該追加の所定時間さらに前記水素ガスの注入を継続する。
【0011】
好適には、前記第2の工程の後に、前記動力装置の走行と停止を繰り返す第3の工程をさらに有する。
好適には、前記動力装置は船舶であり、前記第3の工程は、前記船舶のスクリューの回転を、回転状態と停止状態とで交互に繰り返す。
【0012】
好適には、前記第1の工程は、水素生成装置からの水素ガスを前記エンジンに供給する。
【0013】
好適には、水素ガスを生成する水素ガス生成装置を用い、当該水素ガス生成装置と前記動力装置とは別装置でなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンの内部に堆積したカーボンを短時間で少ない洗浄用ガスで洗浄することが可能なエンジン洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、エンジンクリーニングシステム1の構成図である。
図2図2は、水素ガスをエンジン5の吸気口に導入する形態を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るエンジンクリーニングシステムの動作について説明するためのフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るエンジンクリーニングシステムについて説明する。
図1は、エンジンクリーニングシステム1の構成図である。
本実施形態のエンジンクリーニングシステムでは、電源3から電力の供給を受けた水素ガス発生装置2が、動力装置(船舶)のエンジン54に対して水素ガス(洗浄用ガス)を供給することにより、エンジン5の洗浄を行う。
【0017】
電源3としては、コンセントを介した電源であってもよく、移動型のバッテリー装置であっても良いが、供給する電流を制御できる機能を有することが好ましい。もちろん電源3ではなく、水素ガス発生装置2に電流を制御できる機能を有していても良い
【0018】
動力装置は、内燃機関としてのエンジンを有する各種の動力装置であり、例えば、船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を有している。
【0019】
動力装置は、エンジン5に対して接続された動力部6を動かすことにより、動力装置として動作する。例えば、動力装置4が船舶であった場合、動力部6は船舶のスクリューであり、スクリューが回転することにより、船舶が走行する。
【0020】
本実施形態のエンジン洗浄方法では、稼働させたエンジン5に動力部6を接続した状態(ギアを前進又は後進に入れた状態)で、エンジン5に対して水素ガスを供給し、エンジンを洗浄する。
【0021】
本実施形態では、エンジン5と動力部6とを接続した状態で、水素ガス発生装置2から水素ガスをエンジンの燃料室内に供給する。
【0022】
図2は、水素ガスをエンジン5の吸気口に導入する形態を説明するための図である。
図2に示すように、水素ガスは、ホース11などを介して水素ガス発生装置2からエンジン5の吸気口13に対して供給され、マフラーなどの排気部7を介して排出される。
図2に示すように、水素ガス発生装置2に接続されたホース11の吐出口13がエンジン5の吸気口13に置かれている。
【0023】
当該水素ガスの供給は、エンジンの馬力(サイズ)に応じた時間行われ、馬力が大きくなるに従って供給時間は長くなる。
【0024】
本実施形態のエンジン洗浄方法では、稼働させたエンジン5に動力部6を接続した状態(ギアを前進又は後進に入れた状態)で、エンジン5に対して水素ガスを供給することで、ニュートラル状態の場合に比べて、エンジン5内の燃料室内が高い温度になった状態で水素ガスが流入でき、洗浄効率を高めることができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るエンジンクリーニングシステムの動作について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るエンジンクリーニングシステムの動作について説明するためのフロチャートである。
【0026】
ステップST1:
船舶を岸壁にしっかりと固定する。
【0027】
ステップST2:
船舶のエンジン5を始動する。
【0028】
ステップST3:
ニュートラル状態で水素ガス発生装置2から水素ガスを注入する。
【0029】
ステップST4:
ギアを前進又は後進に入れる。すなわち、稼働させたエンジン5に動力部6を接続する。これにより、エンジン5の燃料室内の温度がニュートラル時よりも高くなる。
ニュートラル時は、船舶の水温計は60℃を示すが、航行時は80℃を示し、ギア入り非航行時は65~70℃を示す。このような水温(すなわち、エンジン5の温度)を上昇させることで、エンジン5内で水素ガスがカーボンを分解する時間が短縮される。これにより、水素ガスの消費量を少なくできる。
水素ガス注入量は例えばリットル/時とする。
【0030】
ステップST5:
所定時間が経過したかを確認し、経過した場合はステップST6に進む。
【0031】
ステップST6:
水素ガスによるエンジン5の燃料室内のカーボン除去の状況を確認し、次の所定時間を決定する。このとき、マフラーより排出される黒煙を見ながら、あるいは画像等で自動的に認識しながら確認し、さらににエンジン5の馬力に応じて追加で水素注入する時間を決定する。
【0032】
なお、水素ガスの注入時間は、エンジン5の馬力に応じて、例えば、以下のように設定する。
200馬力以下⇒合計1時間30分
200~350馬力⇒2時間
350~500馬力⇒2時間30分
500馬力~1000馬力⇒3時間
【0033】
ステップST7:
ステップST6で決定した追加の時間が経過したかを判断し、経過したと判断した場合にはステップST8に進む。
【0034】
ステップST8:
作業完了後は船舶の走行と停止を繰り返し、水素ガスにより分解された燃焼室内部のカーボンをマフラーより排出させる。その後、作業を終了する。
具体的には、船舶(動力措置)をスクリューの回転始動と、回転停止を繰り返す。これにより、エンジン5の燃焼室に負荷がかかり、カーボンが剥がれてエンジン5外に吐き出される。
【0035】
なお、あまりにもカーボンの蓄積が酷い場合や重油を燃料としていた場合は船舶に装置を積み込み航行しなが水素ガスを注入し除去作業を行う。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のエンジン洗浄方法によれば、船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンの内部に堆積したカーボンを短時間で少ない洗浄用ガスで洗浄することが可能になる。
【0037】
すなわち、本実施形態のエンジン洗浄方法では、稼働させたエンジン5に動力部6を接続した状態(ギアを前進又は後進に入れた状態)で、エンジン5に対して水素ガスを供給することで、ニュートラル状態の場合に比べて、エンジン5内の燃料室内が高い温度になった状態で水素ガスが流入でき、洗浄効率を高めることができる。
【0038】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、船舶のエンジン洗浄方法について例示したが、船舶以外に、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの洗浄を同様に行ってもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、図3に示すステップST1で船舶を岸壁に固定した実施したが、走行中に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、船舶、車両、発電機、建設機械等のガソリンエンジンやディーゼルエンジンのエンジン洗浄方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
2…水素ガス発生装置
3…電源
5…エンジン
6…動力部
7…排気部

【要約】
【課題】 エンジンの内部に堆積したカーボンを短時間で少ない洗浄用ガスで洗浄することが可能なエンジン洗浄方法を提供する

【解決手段】 ニュートラル状態で水素ガス発生装置2から水素ガスを注入する。ギアを前進又は後進に入れる。すなわち、稼働させたエンジン5に動力部6を接続する。稼働させたエンジン5に動力部6を接続した状態(ギアを前進又は後進に入れた状態)で、エンジン5に対して水素ガスを供給することで、ニュートラル状態の場合に比べて、エンジン5内の燃料室内が高い温度になった状態で水素ガスが流入でき、洗浄効率を高めることができる。
【選択図】図3
図1
図2
図3