(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】オリザノール含有ソープストックを原料としてオリザノールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07J 53/00 20060101AFI20220623BHJP
C07J 9/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
C07J53/00
C07J9/00
(21)【出願番号】P 2021544705
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2020129370
(87)【国際公開番号】W WO2021098680
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】201911156181.6
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521299570
【氏名又は名称】フーナン・ファチェン・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUNAN HUACHENG BIOTECH,INC
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ファーシュエ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ゲングイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,アンル
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ルンチン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105256(JP,A)
【文献】特開2012-041304(JP,A)
【文献】特開2004-300034(JP,A)
【文献】特開2002-293793(JP,A)
【文献】特開2020-172464(JP,A)
【文献】国際公開第2004/055040(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/023599(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/116264(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110294784(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103435677(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101440115(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102464696(CN,A)
【文献】J. Food Eng.,2011年,102,16-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 53/00
C07J 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリザノール含有ソープストックを原料としてオリザノールを製造する方法であって、
原料にエタノールを加えて、50~60℃まで加熱し、系を弱アルカリ性に調整して、原料を溶解させ、溶解液を得る、アルカリとアルコールによる熱溶解ステップ1)と、
ステップ1)の温度を維持し、精密フィルタを使用して溶解液をろ過する、保温精密ろ過ステップ2)と、
50~60℃の条件下で、ろ液を耐高温限外ろ過膜で膜分離し、分子量が1000~5000の範囲の膜分離液を収集する、保温限外ろ過膜分離ステップ3)と、
膜分離液に無機脱色剤を加えて、十分に撹拌し、ろ過して脱色液を得る、保温脱色ステップ4)と、
希酸で脱色液を中和し、冷却、放置して、沈殿物を完全に析出させ、遠心分離して遠心分離沈殿物を収集する、酸性化中和・ろ過ステップ5)と、
遠心分離沈殿物に酢酸エチル、高濃度エタノール、温水を順次加えて洗浄するステップであって、遠心分離沈殿物に前記溶媒又は溶液の洗浄液を加えて、十分に撹拌して混合し、遠心分離して遠心分離沈殿物を得た後、次のステップの洗浄を行う、洗浄ステップ6)と、
沈殿物を乾燥させて、オリザノール完成品を得る、乾燥ステップ7)とを
含み、
ステップ1)において、前記弱アルカリ性に調整するとは、pHを8.5~9.5に調整することであり、前記エタノールは、濃度が80%より大きいエタノールであり、
ステップ3)において、前記耐高温限外ろ過膜の材質は、80℃の温度に耐えられ、
ステップ6)において、前記高濃度エタノールは、濃度が85%より大きいものであり、前記温水は、温度40~45℃の純水である、方法。
【請求項2】
ステップ1)~ステップ4)において、系の温度を50~60℃に維持する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ1)に記載のエタノールは、濃度が85%より大きいエタノールであって、
エタノールの添加量は、オリザノール含有石鹸素地の重量の5~10倍であり、
前記加熱は、加熱温度が50~60℃に達する加熱であり、
前記弱アルカリ性に調整する
ことは、アルカリ水酸化物を用いて行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ2)において、ろ過の温度を50~60℃に制御し、
前記ろ過は、運転圧力が0.2~0.4MPaである折り畳み式フィルタエレメントを備えた精密フィルタを用い、前記フィルタエレメントの孔径が0.45μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ3)において、前記耐高温限外ろ過膜の材質は、ポリエーテルスルホン
である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ3)において、前記膜は、分画分子量1000~5000、膜運転圧力1.0~2.0MPaに設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記膜分離の順序は、まず、分子量5000の限外ろ過膜を透過させて膜下流液としての透過液を収集し、次に透過液を分子量1000の限外ろ過膜を透過させて膜上流液としての分画液を収集することである、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ4)において、前記脱色剤は活性白土及び活性炭の少なくとも一方であり、脱色剤の添加量がオリザノール含有ソープストック原料の重量の3~6%で
ある、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ4)において、前記脱色剤は、活性白土と活性炭とを1~2:1~2の質量比で配合したものである、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ6)における遠心分離沈殿物の質量と、洗浄液である酢酸エチル、高濃度エタノール、及び温水の体積との質量体積比(kg/L)は1~2:2~5:2~5:3~6で
ある、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ6)における遠心分離沈殿物の質量と、洗浄液である酢酸エチル、高濃度エタノール、及び温水の体積との質量体積比(kg/L)は1~1.3:2~3:3~4:3.5~5である、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出分離の技術分野に属し、オリザノールの製造方法に関し、具体的には、オリザノール含有ソープストックを原料としてオリザノールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリザノール(Oryzanol)は、米ぬか油に存在し、トリテルペン(アルケン)アルコールを主成分とするフェルラ酸エステルの混合物である。主に間脳の自律神経系や内分泌系の中枢に作用し、自律神経機能を調整し、内分泌バランス障害を軽減し、神経障害の症状を改善することができる。また、血中脂質の低下、肝臓脂質の低下、脂質酸化防止、酸化防止などの多種の生理学的機能を持っている。さらに、最近、オリザノールをスキンケア製品や食品の抗酸化剤の原料として利用することもある。一般的にオリザノールを豊富に含む米ぬか油などのソープストックを原料としてオリザノールを抽出・製造するが、一般的な製品の純度や収率は満足のいくものではない。
【0003】
中国国内では、オリザノールに関する特許技術の報道が多いが、それぞれにいくつかの欠陥があり、以下、分類して詳述する。
【0004】
1、使用する溶媒の種類に応じて、次のようにそれぞれ説明する。
【0005】
CN201710073967、CN201510769436、CN201310659297、CN201310099264、CN201010542976、CN201010224081、CN200810231528、CN02135610等の特許はいずれもメタノールを抽出溶媒とし、一連の精製を経てオリザノールを製造するものであり、メタノールが残存しやすく、輸出製品の要件に適合しない。CN201510769436、CN201010542976等の特許は、ヘキサンを用いて精製又は結晶化し、いくつかのステップを経てオリザノール製品を得るものであり、ヘキサンが残存しやすく、残留物が基準値を超えることが発生しやすい。従来技術の多くはメタノールを使用しており、主にメタノールによるオリザノールの抽出効率が高いためであるが、後処理の要件が高く、そうしないと、残存するメタノールが基準値を超えてしまう。また、生産プロセスでメタノールを大量に使用すると、作業者の健康にも潜在的な危険性がある。
【0006】
2、プロセスに応じて、次のようにそれぞれ説明する。
【0007】
出願番号がCN201710073967.6である特許出願では、オリザノール抽出技術が公開されており、まず米原油を脱ガムして脱ガム油を得、脱ガム油をアルカリで精製してソープストックを得て、ソープストックを追加鹸化した後、メタノール、水、及び炭酸ナトリウムを加えてアルカリ溶解し、上層の清澄液を得て、上層の清澄液に塩酸、クエン酸を順次加えてpHを調整し、オリザノール粗製品を得て、洗浄して乾燥させ、精製オリザノールを得る。この方法は、アルカリ性メタノールを使用して抽出するものであり、溶媒が有毒であり、製品に溶媒が残留されてしまい、また、炭酸ナトリウムは弱アルカリ性であり、実際にはオリザノール分子中のフェノール性水酸基と結合することができず、オリザノールの溶解を促進することができない。
【0008】
出願番号がCN201510769436.1である特許出願では、γ-オリザノールの生産方法が開示されており、ろ過粕を溶解槽に注入して、メタノールを加えて混合した後、ヘキサンを加えて撹拌し、酢酸を加えて中和し、撹拌して還流し、50℃まで水浴で加熱し、加温して撹拌し還流させ、水を加えて撹拌し続けた後、1時間静置し、粗製品としてγ-オリザノールを析出させ、溶液が自発的に層化し、上層はヘキサン溶液であり、下層は粗製品γ-オリザノール析出物とメタノールの溶解層であり、上下層のメタノール溶解層を分流し、下層を水浴で加熱し、水浴加熱後の粗製品γ-オリザノール析出物とメタノール溶解層を減圧ろ過し、ろ紙の上層で粗γ-オリザノールを得て、粗γ-オリザノール析出粒子にヘキサンを加えてヘキサンに溶解可能な不純物を洗い出し、γ-オリザノール析出粒子を収集し低温で乾燥させる。加熱条件下で、オリザノールはヘキサンに溶解しやすく、しかもメタノールでの溶解度が大きく、メタノールは毒性が高く、しかも製品に残留しやすく、二相溶媒のいずれにもオリザノールが溶解しているが、その方法で分離の目的を達成することができないので、更なる研究が必要であり、ヘキサンは非常に可燃性で爆発性が高いため、生産の安全性をさらに向上させる必要がある。
【0009】
出願番号CN201310659297.8では、米ぬかミール廃油脂からオリザノールを抽出する方法が開示されており、米ぬかミール廃油脂に高温耐性酵素を米ぬかミール廃油脂の質量に対して0.5~5%添加し、70~95℃で60~120min撹拌して消化した後、ろ過して油脂清澄液を得るステップ1)と、アルカリ性メタノール溶液とステップ1)の油脂清澄液を1:5~1:8の質量比で混合し、60℃に加温し、撹拌して静置して、二相分離し抽出するアルカリ溶解のステップ2)と、ステップ2)の抽出液を40~60℃に加熱し、酸を加えてpHを3.0~6.0に調整し、一晩静置し、遠心分離してオリザノール粗製品を得る酸析のステップ3)と、ステップ3)で得られたオリザノール粗製品を蒸留水で洗浄し、乾燥させて精製オリザノールを得るオリザノール精製のステップ4)とを含む。酵素の化学本質は蛋白質であり、70℃以上では多数の酵素は不活性化し、このため、その方法の科学性についてさらなる研究が必要であり、メタノールは有毒試薬であり、オリザノールは水不溶性物質であり、その中の不純物も油由来であるので、同様に強親油性物質であり、蒸留水で洗浄した後に乾燥するだけでは精製の目的を達成することは不可能であり、このため、この精製方法には更なる研究が必要である。
【0010】
出願番号CN201310099264.2では、米ぬか原油からオリザノールを抽出する方法が開示されており、4級米ぬか油を製造し、すなわち、[1]米ぬか原油を水和して脱ガム・脱蝋し、[2]脱ろう米ぬか油を脱色し、[3]脱色米ぬか油を物理的に精製するステップ(1)と、粗製オリザノールを抽出し、すなわち、[1]石鹸素地を調製し、[2]アルカリ溶解操作を行い、[3]酸析操作を行うステップ(2)と、粗製オリザノールを精製し、すなわち、[1]粗製オリザノールを再溶解して、ミネラルスピリットを用いて液-液洗浄し、[2]酸析と酸浸出を行い、[3]オリザノールを乾燥させて粉砕するステップ(3)とを含む。この方法は、有毒なメタノールを使用して、製品にメタノールが残留されてしまい、製品は結晶化のステップを経ていないので、含有量については更に実証する必要があり、ミネラルスピリットは非常に可燃性で爆発性が高いため、生産の安全性をさらに向上させる必要がある。
【0011】
出願番号CN201010542976.3では、米ぬかからオリザノールを抽出するプロセスが開示されており、毛ぬか油にメタノールを加え、水酸化ナトリウムでpHを調整し、加熱して保温しながら撹拌し、冷却して層化まで静置し、下層の油相を捨てて、上層のメタノール液にクエン酸を加えてpHを7に調整し、静置して沈殿物をろ別し、粗製品を得て、ヘキサンで再結晶し、洗浄して乾燥させ、精製品を得る。この方法は、有毒なメタノールを使用して、製品にメタノールが残留されてしまい、ヘキサンは非常に可燃性で爆発性が高いため、生産の安全性をさらに向上させる必要がある。
【0012】
出願番号CN201010224081.5では、非極性溶媒抽出法によるオリザノール抽出方法が開示されており、米ぬか油のアルカリ精製によるソープストックを用いて、メタノール・エチルエーテルのアルカリ溶液を加え、十分に撹拌した後、静置して中性物質である上層とオリザノール含有アルカリ物質である下層とに層化し、塩酸溶液でpH値を調整すると、オリザノールを結晶化させて析出する。その後、洗浄して真空乾燥させて、オリザノール完成品を得る。この方法は、有毒なメタノールとエチルエーテルを使用して、製品にメタノールやエチルエーテルが残留されてしまい、エチルエーテルは規製試薬であり、非常に可燃性で爆発性が高いため、生産の安全性をさらに向上させる必要があり、酸調整によって析出させたオリザノールの含有量が基準に達しているかどうかは、さらに実証する必要がある。
【0013】
出願番号CN200810231528.8では、米ぬか油ソープストックからオリザノールを抽出する生産方法が開示されており、オリザノールを豊富に含む米ぬか油ソープストックを加熱して溶解した後、メタノールで希釈し、アルカリを加えて追加鹸化を行い、その後、アルカリ溶解してろ過し、鹸化液のろ液を得て、鹸化ろ液を再びろ過し、水洗後、酸浸出、精製、造粒を経て、その後乾燥させる。この方法は、有毒なメタノールを使用して、製品にメタノールが残留されてしまい、主なプロセスはアルカリ性アルコール溶解と酸析であり、簡単に精製した後のオリザノールの含有量が基準に達しているかどうかは、さらに実証する必要がある。
【0014】
出願番号CN200810244052.8では、オリザノールの抽出方法が開示されており、米ぬか原油を原料とし、まず米ぬか油とn-ヘキサンとの混合油をエタノールアミンで予備脱酸した後、NaOH溶液でオリザノールをソープストックに富化し、次いでソープストック中のオリザノールナトリウム塩をメタノールで抽出し、最後に酸溶液でpHを調整して、オリザノールナトリウム塩に含まれるオリザノールを結晶化させて析出し、分離してオリザノールを得る。この方法は、有毒なメタノールを使用して、製品にメタノールが残留されてしまい、主なプロセスはアルカリ性アルコール溶解と酸析であり、得られた製品中のオリザノールの含有量が低い。
【0015】
出願番号CN02135610.6では、溶媒抽出法によるオリザノールの抽出方法が開示されており、まず米ぬか原油を前処理し、前処理した米ぬか油を物理的に精製して、油中の遊離脂肪酸を除去し、精製された米ぬか油にアルカリ性メタノールを加えて連続的に向流抽出し、抽出したメタノール母液に酸を加えて、母液に含まれるオリザノールを結晶化させて析出し、分離してオリザノールを得る。この方法は、有毒なメタノールを使用して、製品にメタノールが残留されてしまい、主なプロセスはアルカリ性アルコール溶解と酸析であり、得られた製品中のオリザノールの含有量が低い。
【0016】
以上のように、現在市販されているオリザノールには、主に以下の3つの問題が存在している。1、溶媒の残留が基準を超えていること、及び違反溶媒の使用:主にメタノール、エチルエーテル、ヘキサンなどの有機溶媒が使用され、残留されてしまい、その結果、グリーン輸出基準では、輸出製品が生産過程でメタノールなどの有毒溶媒を使用してはならないと規定しているので、オリザノール製品は欧米や日本に輸出できない。2、多くのオリザノール製品は、実際のオリザノール含有量が基準に達していないこと:いくつかの市販製品は、色が白いが、含有量が95%程度であり、分析したところ、これらの製品の生産過程でいくつかの新しい分解物質が発生したことがわかり、白色であるものの、オリザノール含有量を下げて、これは生産プロセスに繋がる。3、いくつかのオリザノール製品の色が基準に達していないこと:その製品の含有量は98%に達したが、脱色ステップを経ていない場合が多く、このため、このような製品の色は類白色や灰白色、淡黄白色になり、このような製品は欧米などの区域に販売することが制限されている。したがって、製品の収率及び純度が満足のいく程度に達するようにし、しかも生産プロセスが環境に優しく、有毒又は可燃性・爆発性の試薬を使用しないオリザノールの生産プロセスを提案する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術に存在する上記の欠点を解決し、生産プロセスで使用される溶媒、及び残留溶媒が輸出基準に適合し、生産の安全性を高め、メタノールなどの毒性の大きい溶媒、及びエチルエーテル、ヘキサン、ミネラルスピリットなどの極めて可燃性・爆発性の有機溶媒を使用せず、工業的普及に適した生産プロセスを確立し、良質なオリザノール工業製品を大規模で生産することができ、しかも、オリザノールの実際含有量が98%より大きく、収率が73%より大きく、純度と色がともに優れている白色の工業製品が得られ、生産コストを下げ、企業の経済的・社会的利益を高める、オリザノールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明がその技術的課題を解決するために採用する技術案は以下の通りである。
【0019】
オリザノール含有ソープストックを原料としてオリザノールを製造する方法であって、
アルカリ性アルコールで熱溶解し、すなわち、原料にエタノールを加えて、50~60℃まで加熱して、系を弱アルカリ性に調整し、原料を溶解して、溶解液を得るステップ1)と、
保温して精密ろ過し、すなわち、ステップ1)の温度を維持し、精密フィルタを使用して溶解液をろ過するステップ2)と、
保温して限外ろ過膜で分離し、すなわち、50~60℃の条件下で、ろ液を耐高温限外ろ過膜で膜分離し、分子量範囲が1000~5000の膜分離液を収集するステップ3)と、
保温して脱色し、すなわち、膜分離液に無機脱色剤を加えて、十分に撹拌し、ろ過して脱色液を得るステップ4)と、
酸性化して中和しろ過し、すなわち、希酸で脱色液を中和して、冷却して放置し、沈殿物を完全に析出させ、遠心分離して遠心分離沈殿物を収集するステップ5)と、
洗浄し、すなわち、遠心分離沈殿物に酢酸エチル、高濃度エタノール、温水を順次加えて洗浄し、前記洗浄においては、遠心分離沈殿物に上記溶媒や溶液の洗浄液を加えて、十分に撹拌して混合して、遠心分離して遠心分離沈殿物を得て、次のステップの洗浄を行うステップ6)と、
乾燥させ、すなわち、沈殿物を乾燥させて、オリザノール完成品を得るステップ7)とを含む。
【0020】
好ましくは、本発明の上記方法では、ステップ1)~ステップ4)において、系の温度を50~60℃に維持する。温度を上記範囲に制御し、残りのステップのプロセス条件とパラメータと組み合わせることにより、オリザノールの抽出効率を最大限に高め、製品中のオリザノールの純度を確保し、オリザノールを含有する良質な製品を工業的に製造するための要件を満たすことができる。
【0021】
好ましくは、ステップ1)において、前記エタノールは、濃度が80%より大きいエタノール、好ましくは濃度が85%より大きいエタノールであり、より好ましくは、濃度が85%より大きいエタノールを採用し、エタノールの添加量は、オリザノール含有石鹸素地の重量の5~10倍であり、前記加熱は、加熱温度が50~60℃に達し、前記弱アルカリ性に調整するとは、水酸化ナトリウム等のアルカリ水酸化物や水酸化剤を用いてpHを8.5~9.5に調整することである。
【0022】
従来、メタノールを用いたpH調整方法でオリザノールを抽出することが文献で報告されていたが、発明者は、高濃度の食用エタノールを用いて、全過程の温度を50~60℃に制御することによって、オリザノールも抽出することができ、輸出製品についての溶媒使用及び残留基準に適合することを発見した。技術的には、エタノールで抽出されたオリザノールは、色が薄く、不純物がより少なく、純度が高い。食用エタノールの濃度が低いと、大部分のオリザノールを抽出することができず、損失が大きくなり、食用エタノールの濃度が高いと、生産中に高濃度の食用エタノールを回収することが困難であり、加熱温度が50~60℃に達する。加熱温度が高いか、溶解時間が長いと、アルカリ条件下でオリザノールに対して顕著な破壊作用があり、そして製品の収率が深刻に下がることを招き、加熱温度が低いか、溶解時間が短いと、オリザノールの溶出に不利であり、不溶物が増加して、製品の収率を下げるとともに、精密ろ過のろ過速度を低下させ、最終的に調整された溶解液のpHが高すぎると、オリザノールを著しく破壊し、オリザノールの収率低下を招き、低すぎると、オリザノールの溶解に不利でなり、生産量が少なくなり、適切なpH範囲では、その後の膜分離操作において系は膜に影響を与えず、膜が耐えられるpH範囲である。
【0023】
好ましくは、ステップ2)において、ろ過の温度を50~60℃に制御し、前記ろ過は、孔径が0.45μm、運行圧力が0.2~0.4MPaである折り畳み式フィルタエレメントを備えた精密フィルタを用いる。
【0024】
温度が60℃より高いと、アルカリ条件下ではオリザノールに対して顕著な破壊作用があり、そして製品の収率が深刻に下がることを招き、温度が50℃より低いと、オリザノールの溶出量が減少し、不溶物が増加し、製品の収率を低下させるとともに、精密ろ過のろ過速度を大幅に低下させ、生産効率の低下を招き、そしてフィルタエレメントが目詰まりしやすくなる。さらに、発明者が数回の実験をしたところ、選択する上記折り畳みフィルタエレメントは、オリザノールを含有する高濃度エタノール溶液に対して良好なろ過効果があり、得られたろ過液は清澄で透明な溶液であり、一方、同じ条件では、微孔性ろ過膜などのろ過材は非常に目詰まりしやすく、正常な運行ができない。適切なフィルタエレメントの孔径を選択するのは、溶液に対する限外ろ過膜分離の清澄度の要件とマッチングするためであり、孔径が大きすぎると、透過する不純物が多く、限外ろ過膜の耐用年数に影響を与え、孔径が小さすぎると、ろ過速度が遅くなり、生産効率に影響を与える。精密フィルタの運行圧力はフィルタエレメントによる影響を受け、フィルタエレメント表面に蓄積された不純物が増加した場合、運行圧力がそれに伴い増加し、ある程度まで圧力が増加すると、ろ過の効果や速度を確保するために、フィルタエレメントをタイムリーに清掃する必要がある。
【0025】
好ましくは、ステップ3)において、50~60℃で限外ろ過を行い、使用される耐高温限外ろ過膜は、材質がポリエーテルスルホン、例えばGE社のDurathermシリーズ(具体的なイオンはNF 8040HF、NF RO8040、RO 8040HR、NF 8040HR、NF 3840HR、FLD-UFを含む)である。70℃の温度に耐えられる。ステップ2)のろ液の保温温度は50℃~60℃であり、限外ろ過膜による分離操作の保温温度も同じ温度であり、通常の限外ろ過膜は45℃以下の温度にしか耐えられないので、本発明は大量の調査研究により、70℃の温度に耐えられる耐高温限外ろ過膜を用いることで、オリザノール溶液の保温膜分離条件に適応する。限外ろ過時の温度は50~60℃に設定され、温度が60℃より高いと、アルカリ条件下でオリザノールに対して顕著な破壊作用があり、そして製品の収率が深刻に下がることを招き、温度が50℃より低いと、オリザノールの溶出量が減少し、不溶物が増加し、製品の収率を低下させるとともに、限外ろ過膜の運行速度を大幅に低下させ、生産効率を低下させ、限外ろ過膜が目詰まりしやすくなる。
【0026】
より好ましくは、ステップ3)において、前記膜は、分画分子量1000~5000、膜運行圧力1.0~2.0MPaに設定される。膜の種類及び性能が要件に適合していることを確認した後、オリザノールの分子量、化学構造と不純物の種類に応じて、限外ろ過膜の分画分子量を選択する必要がある。本発明では、溶液中のオリザノールの95%が膜分画分子量1000~5000の範囲に分布し、溶液の色が赤褐色から黄色に変化すること、すなわち、この分子量の膜分離により顕著な脱色や精製効果があることを多くの実験により証明した。限外ろ過膜は適切な圧力で運行する必要があり、圧力が低すぎると、膜透過速度が遅くなり、圧力が高すぎると、オリザノールの損失を引き起こしやすい。
【0027】
さらに好ましくは、ステップ3)において、前記膜分離の順序は、まず、分子量5000の限外ろ過膜を透過させて膜下流液としての透過液を収集し、次に透過液を分子量1000の限外ろ過膜を透過させて膜上流液としての分画液を収集することである。上記の順序で限外ろ過を行うことにより、分離精製の効果をさらに高めることができる。ステップ4)において、脱色する時に温度を50~60℃に維持したままであり、温度が60℃より高いと、アルカリ条件下でオリザノールに対して顕著な破壊作用があり、そして製品の収率が深刻に下がることを招き、温度が50℃より低いと、オリザノールの溶出量が減少し、無機脱色剤への吸着量が増加し、製品の収率を低下させるとともに、プレスフレームろ過が困難になる。
【0028】
好ましくは、ステップ4)において、前記脱色剤は活性白土及び活性炭の少なくとも一方であり、脱色剤の添加量がオリザノール含有ソープストック原料の重量の3~6%であり、より好ましくは、前記脱色剤は、活性白土と活性炭とを1~2:1~2の質量比で配合したものである。本発明では、活性白土は油脂を有する脂溶性成分に対して良好な脱油・脱色効果を有し、ろ過を補助し、活性炭は極性溶液中でも良好な脱色効果を有し、ろ過を補助することができることを実験により証明した。両者の相乗作用により、油脂除去と脱色の効果がより良く、また、オリザノールの最終収率に対する影響が最小である。
【0029】
さらに好ましくは、ステップ4)において、前記ろ過方式は、濾材が帆布型濾布であるプレスフレームろ過である。プレスフレームろ過は微細な活性白土と活性炭の粒子を完全に除去することができ、しかも速度が速い。したがって、保温条件下でプレスフレームろ過をすることにより、淡い黄色の清澄で透明な脱色液を得ることができる。他のろ過方式を使用してもよいが、粒子の小さい無機脱色剤を効果的に除去することができないか、又はろ過時間が長く、これは、本発明では全過程の温度を50~60℃に維持するためであり、長時間のろ過方式では、エネルギー消費量を低減し、コストを節約するのに不利である。
【0030】
ステップ5)において、前記希酸は希塩酸又は希硫酸の水溶液であり、それぞれの濃度は5~10wt%であり、pHは6.5~7.5に調整される。塩酸水溶液と硫酸水溶液はいずれも生産中にアルカリ溶液のpHを中性又は弱酸性に調整するために使用でき、応用範囲が広く、主製品と化学反応を起こすことがない。濃度が低すぎると、使用量が多くなり、濃度が高すぎると、調製過程で大量の溶解熱が発生し、作業の安全に不利である。最終的に調整されたpHが低すぎると、大量の脂肪酸が主製品のオリザノールに付着し、オリザノールの精製に不利であり、pHが高すぎると、主製品の析出が不完全で、収率が低くなる。
【0031】
好ましくは、ステップ5)において、前記沈殿が完了するまでの時間は5~12hである。沈殿時間が低すぎると、オリザノールの沈殿は不完全で、収率を下げ、沈殿時間が長すぎると、生産周期に影響を与え、生産効率を低下させる。
【0032】
さらに好ましくは、ステップ5)において、前記遠心分離方式はバッグ遠心分離である。本発明は、沈降遠心分離、バッグ遠心分離、水平デカンタ型遠心分離及びディスク型遠心分離を比較することによって、バッグ遠心分離には最適な効果があり、乾燥し色が薄く性状の良い遠心分離沈殿物を得ることができ、他の遠心分離方式では達成できない乾燥度、純度や色を実現できることを発見した。
【0033】
ステップ6)において、前記高濃度エタノールは濃度が85%より大きい食用エタノールであり、前記温水は温度40~45℃の純水、例えば脱イオン水、蒸留水、超純水である。温度が45℃を超えると、オリザノールの吸水膨張は明らかになり、かえって更に多くの不純物を吸い込んで、そしてこの部分の膨張物質中の水を除去することが難しく、残留エタノールを除去するのに不利であり、温度が40℃より低いと、エタノールの溶解除去効果がやや低下する。この温度範囲に制御することにより、エタノール及び不純物の除去効果を高める。
【0034】
本発明では、実際生産と組み合わせて、複数の有機溶媒を比較したところ、酢酸エチルが以下の顕著な利点を有することが明らかになる。低毒性で、実質的に無毒であること、欧米や日本で禁止されている溶媒に属していない、すなわち生産に使用できること、オリザノールに対する溶解性が小さく、実質的に不溶性であり、一方、親油性不純物や色素に対する溶解性に優れているので、オリザノールを精製することができ、精製と脱色の両方の利点を兼ね備えたこと。高濃度の食用エタノールと酢酸エチルが相互に溶解することができるので、遠心分離によって、残存する酢酸エチルを除去することができ、一定温度の精製水と食用エタノールが相互に溶解するので、遠心分離によって、残存する食用エタノールを除去することができる。
【0035】
好ましくは、ステップ6)において、高濃度エタノール及び/又は温水を用いた洗浄ステップでは、前のステップの遠心分離沈殿物に高濃度エタノール又は/及び温水を50~70%添加し、十分に撹拌して混合した後、遠心分離し、残りの高濃度エタノール又は/及び温水を遠心分離機に複数回分けて添加する。前記複数回分けて添加する回数は特に限定されておらず、一般的には、残りの洗浄液を2~4回に分けて均一に添加すればよい。
【0036】
好ましくは、ステップ6)における遠心分離沈殿物の質量と、洗浄液である酢酸エチル、高濃度エタノール、温水の体積との質量体積比(kg/L)は1~2:2~5:2~5:3~6であり、好ましくは、1~1.3:2~3:3~4:3.5~5である。洗浄の順序は上記3種類の溶液の順に操作し、遠心分離方式はバッグ遠心分離とする。すなわち、まず酢酸エチル、次に高濃度の食用エタノール、最後に一定温度の精製水が使用される。隣接する2種類の溶媒は、バッグ遠心分離と複数回分けて少量で加えるような洗浄方式とを用い、後者の溶媒は前者の溶媒残留を除去することができる。本発明では、まず、酢酸エチルを用いてオリザノールを精製し、次に高濃度の食用エタノールで溶出し、バッグ遠心分離で酢酸エチルを除去し、最後に一定温度の精製水で溶出し、バッグ遠心分離で食用エタノールを除去する。以上の3種類の溶媒を組み合わせて使用し、バッグ遠心分離操作と組み合わせることにより、オリザノールを精製すると同時に、残留溶媒を除去し、製品の品質と安全性を向上させることを実験により証明した。
【0037】
ステップ7)において、前記乾燥方法は特に限定されておらず、例として、送風乾燥、真空乾燥、マイクロ波真空乾燥などが挙げられ、乾燥温度は55~65℃である。オリザノール結晶の理化学的性質は55~65℃で比較的安定であり、生産効率を高めるために、上記の乾燥方式の1つ又はその組み合わせを選択することができる。
【0038】
本発明の原理は以下の通りである。オリザノール含有ソープストック、すなわち、アルカリで動植物油脂を精製する際のオリザノール含有副産物、好ましくは米ぬか油ソープストックを原料としてオリザノールを抽出するものであり、原料に主にオリザノールと脂肪酸、親油性不純物と脂溶性色素などが含まれており、これらの成分は濃度85%以上の食用エタノールによってpH8.5~9.5、温度50~60℃の条件下で十分に溶解することができ、しかもオリザノールはこの条件下で比較的安定である。50~60℃に保温した条件下で、適切なろ過方式を選択すると、アルカリ性エタノールに不溶な不純物を溶液と分離し、清澄で透明な溶液を得ることができ、それによって、精製操作の正常な進行と最終製品の溶液の清澄性を確保する。この条件下でのオリザノールと不純物の溶解特徴、それぞれの分子量と分子構造、系の温度に応じて、適切な限外ろ過膜を選択して膜分離を行い、脱色すると同時に、オリザノールの純度を高め、分子量1000~5000の範囲を選択すると、色が薄くて、含有量が高いオリザノールを得ることができる。限外ろ過膜で分離された溶液は一定の色があり、油脂の親油性の特性によって、活性白土や活性炭などの無機脱色剤を併用することにより、脂溶性不純物や色素をさらに除去すると同時に、オリザノールをさらに精製し、オリザノールの収率への影響を最小限に抑えることができ、プレスフレームろ過により、溶液中に残存する無機脱色剤粉末を完全に除去することができる。前述のプロセスで分離精製しても、オリザノールといくつかの不純物は依然として溶液の中に存在して、オリザノールが酸性エタノールに溶解しないような性質によって、溶液のpHを6.5~7.5に調整することによって、オリザノールを沈殿析出させて、大部分の不純物を酸性エタノールに溶解し、そして遠心分離によってオリザノールと不純物を更に分離して、比較的高純度のオリザノールを得る。遠心分離により得られたオリザノールにはまだ少量の親油性不純物や色素が含まれており、本発明では、特定の順序の洗浄ステップ、すなわち酢酸エチル、高濃度エタノール、温水のような順序の洗浄を採用している。酢酸エチルは、以下の顕著な利点がある。低毒性で、実質的に無毒性であり、欧米や日本で禁止されている溶媒に属しておらず、生産で使用することができること、オリザノールに対する溶解度が小さく、実質的に不溶性である一方、親油性不純物と色素に対して優れた溶解性能があり、そのため、オリザノールを精製することができ、精製と脱色の2つの利点を兼ねていること。高濃度の食用エタノールと酢酸エチルが相互に溶解することができるので、遠心分離によって、残存する酢酸エチルを除去することができる。一定温度の精製水と食用エタノールとが相互に溶解するので、遠心分離によって、残存する食用エタノールを除去することができる。以上の3種類の溶媒を特定の順序で組み合わせて使用し、バッグ遠心分離操作と組み合わせることにより、オリザノールを精製すると同時に残留溶媒を除去し、製品の品質と安全性を向上させることができる。
【0039】
本発明は、オリザノールの実際含有量が99%を超え、色が白色であり、すなわち、純度と色がいずれも基準に達し、かつ製品の生産過程で使用される溶媒及び溶媒残留が輸出基準に適合している工業製品を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本発明の方法の有益な効果は以下の通りである。
【0041】
一、本発明の方法により得られたオリザノールは白色粉末であり、紫外-可視分光吸収クロマトグラフィー(UV)により測定したところ、得られたオリザノールは、純度は98%以上に達し、不純物の含有量が少なく、色が白色の良質なオリザノール製品である。
【0042】
二、オリザノールの最終収率は73%より大きく、本発明に係るオリザノールの製造方法は、高純度と高収率という特徴を兼ね備える。
【0043】
三、本発明によるオリザノールの抽出過程において、全過程の温度を50~60℃に制御し、発明者は、この温度範囲内で、製品のオリザノールの含有量と収率が最適なバランスを取ることを発見した。
【0044】
四、製品の生産過程で使用される溶媒及び溶媒残留は輸出基准に適合し、メタノールなどの毒性の大きい溶媒、及びエチルエーテル、ヘキサン、ミネラルスピリットなどの極めて可燃性・爆発性の有機溶媒を使用しない。検出の結果、溶媒の残留がなく、製品使用の安全性が向上する。
【0045】
五、本発明はオリザノールの抽出と調製に適した工業化方法を確立し、抽出技術は簡単で、生産設備への要件は低く、良質なオリザノール工業製品を大規模で生産することができ、生産コストは低く、工業的量産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施例を参照して、本発明の抽出プロセスの方法をさらに説明する。
【0047】
本発明の実施例で使用される原料はオリザノール含有ソープストックであり、湖南東翔油脂有限公司から購入したものであり、オリザノールの含有量が13.65%である。本発明の実施例で使用される食用エタノールは、純度が95%であり、必要に応じて脱イオン水で所望の濃度まで希釈され、酢酸エチルの純度は99.5%(食品グレード)である。本発明の実施例で使用される化学試薬及び原材料や副材料は、特に断らない限り、いずれも通常の商業手段を通じて入手される。
【0048】
製品中のオリザノール含有量は紫外-可視分光吸収クロマトグラフィー(UV)を用いて検出する。
【0049】
実施例1
1、アルカリとアルコールで熱溶解する。すなわち、まず、6m3抽出槽に濃度89%の食用エタノール2000Lを加えて撹拌し、絶えず撹拌しながらオリザノール含有ソープストック600kgを抽出槽に投入し、さらに濃度89%の食用エタノール2200Lを加えた。蓋をかけて、引き続き撹拌し、冷却水を入れ、蒸気を導入して加熱した。54℃まで加熱した後、抽出槽に計量した4wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、系のpHを9.0に調整した。サンプルを採取して溶液の溶解状況を観察し、20min後、原料は完全に溶解し、少量の油かすは残され、溶解液4500Lを得た。
【0050】
2、保温して精密ろ過する。すなわち、温度を54℃に維持し、ろ過エレメントの孔径が0.45umである精密フィルタを配置し、溶解液を精密フィルタでろ過し、運転圧力を0.3MPaに維持して、清澄なろ過液を得た。
【0051】
3、保温して限外ろ過膜で分離する。すなわち、温度を54℃に維持して、限外ろ過膜管にポリエーテルスルホン材質かつ最高で温度70℃に耐えられる耐高温膜(GE膜Duratherm HWS UFシリーズ)を充填しておき、それぞれ分画分子量5000(FLD-UF001)と1000(FLD-UF005)の2組を設置し、膜の運転圧力1.5MPaを維持して、まず分子量5000の限外ろ過膜を透過させて、膜下流液を収集し、次に、濃度89%の食用エタノール100Lを加えて膜での残留物を洗浄し、供給透過液と洗浄透過液を合わせて、透過液を得た。さらに透過液を分子量1000の限外ろ過膜に通し、膜上流液を収集し、分画液、すなわち膜分離液4550Lを得た。
【0052】
4、保温して脱色する。すなわち、温度を54℃に維持し、膜分離液に活性白土32kgと活性炭32kgを加えて十分に20min撹拌し、プレスフレームに1000メッシュの帆布ろ布を設置してろ過を行い、微黄色の清澄で透明な脱色液を得た。
【0053】
5、酸性化による中和とろ過を行う。すなわち、絶えず撹拌しながら、濃度6%希硫酸で脱色液のpHを7.0まで調整して、撹拌を停止し、水道水を導入して冷却し、8h放置して、沈殿物を完全に析出させた。三脚付きバッグで遠心分離して、遠心分離沈殿物を収集し、湿潤な遠心分離沈殿204kgを得た。
【0054】
6、洗浄する。すなわち、遠心分離沈殿物に酢酸エチル500Lを加えて、十分に撹拌して均一に混合し、三脚付きバッグで遠心分離して遠心分離沈殿物を収集し、次に、沈殿物に濃度89%の食用エタノール600Lを加えて、十分に撹拌して均一に混合し、三脚付きバッグで遠心分離し、遠心分離機に、毎回で濃度89%の食用エタノール50Lを2回加えて、十分に沈殿物を透過させ、遠心分離沈殿物を収集し、さらに沈殿物に温度40℃の精製水600Lを加え、十分に撹拌して均一に混合し、三脚付きバッグで遠心分離し、遠心分離機に毎回で温度40℃の精製水50Lを3回加えて、沈殿物を十分に透過させ、遠心分離沈殿物を収集した。
【0055】
7、乾燥する。すなわち、乾燥温度を62℃に制御して沈殿物をマイクロ波真空乾燥させ、オリザノール完成品63.26kgを得た。
【0056】
測定の結果、完成品のオリザノール含有量は99.12%であり、製品の収率は76.56%であった。
【0057】
実施例2
1、アルカリとアルコールで熱溶解する。すなわち、まず、3m3抽出槽に濃度92%の食用エタノール1000Lを加えて撹拌し、絶えず撹拌しながらオリザノール含有ソープストック250kgを抽出槽に投入し、さらに濃度92%の食用エタノール1000Lを加えた。蓋をかけて、引き続き撹拌して、冷却水を入れ、蒸気を導入して加熱した。52℃まで加熱した後、抽出槽に計量した6%水酸化ナトリウム水溶液を加え、系のpHを9.3に調整した。サンプルを採取して溶液の溶解状況を観察し、15min後、原料は完全に溶解し、少量の油かすは残され、溶解液2100Lを得た。
【0058】
2、保温して精密ろ過する。すなわち、温度を52℃に維持し、ろ過エレメントの孔径が0.45umである精密フィルタを配置し、溶解液を精密フィルタでろ過し、運行圧力を0.25MPaに維持して、清澄なろ過液を得た。
【0059】
3、保温して限外ろ過膜で分離する。すなわち、温度を52℃に維持し、限外ろ過膜管にポリエーテルスルホン材質かつ最高で温度70℃に耐えられる輸入耐高温膜を充填しておき、それぞれ分画分子量5000と1000の2組を設置し、膜の運行圧力1.7MPaを維持して、まず分子量5000の限外ろ過膜を透過させて、膜下流液を収集し、次に、濃度92%の食用エタノール100Lを加えて膜での残留を洗浄し、供給透過液と洗浄透過液を合わせて、透過液を得た。さらに透過液を分子量1000の限外ろ過膜に通し、膜上流液を収集し、分画液、すなわち膜分離液2150Lを得た。
【0060】
4、無機脱色剤で保温して脱色する。すなわち、温度を52℃に維持し、膜分離液に活性白土20kgと活性炭10kgを加えて十分に20min撹拌し、プレスフレームに1000メッシュの帆布ろ布を設置してろ過を行い、微黄色の清澄で透明な脱色液を得た。
【0061】
5、酸性化して中和しろ過する。すなわち、絶えず撹拌しながら、濃度9%希塩酸で脱色液のpHを7.2まで調整して、撹拌を停止し、水道水を導入して冷却し、10h放置して、沈殿物を完全に析出させた。三脚付きバッグで遠心分離して、遠心分離沈殿物を収集し、湿潤な遠心分離沈殿83kgを得た。
【0062】
6、洗浄する。すなわち、遠心分離沈殿物に酢酸エチル250Lを加えて、十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離して遠心分離沈殿物を収集し、次に、沈殿物に濃度92%の食用エタノール230Lを加えて、十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離して、遠心分離機に、毎回濃度92%の食用エタノール50Lを2回に分けて加えて、十分に沈殿物を透過させ、遠心分離沈殿物を収集し、さらに沈殿物に温度40℃の精製水250Lを加えて、十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離し、遠心分離機に温度40℃の精製水50Lを3回に分けて加え、沈殿物を十分に透過させて、遠心分離沈殿物を収集した。
【0063】
7、乾燥する。乾燥温度を65℃に制御して沈殿物を送風乾燥し、オリザノール完成品25.70kgを得て、製品は白色粉末であった。
【0064】
検出の結果、完成品のオリザノール含有量は99.35%であり、製品の収率は74.82%であった。
【0065】
実施例3
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が50℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に60.81kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は99.04%であり、製品の収率は73.53%であった。
【0066】
実施例4
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が56℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に62.11kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は99.26%であり、製品の収率は75.28%であった。
【0067】
実施例5
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が60℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.53kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は99.18%であり、製品の収率は74.51%であった。
【0068】
実施例6
ステップ4)の脱色剤は64kgの活性白土のみを使用した以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.18kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は98.67%であり、製品の収率は73.71%であった。
【0069】
実施例7
ステップ4)の脱色剤は64kgの活性炭のみを使用した以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.90kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は98.25%であり、製品の収率は74.26%であった。
【0070】
実施例8
ステップ3)において、まず、分子量1000の限外ろ過膜を透過させて、膜下流液を収集し、次に濃度92%の食用エタノール100Lを加えて膜での残留を洗浄し、供給透過液と洗浄透過液を合わせて、透過液を得て、次に、透過液を分子量5000の限外ろ過膜に通した以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.09kgのオリザノール完成品が得られ、完成品のオリザノール含有量は98.14%であり、製品の収率は73.20%であった。
【0071】
比較例1
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が46℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に57.79kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は95.38%であり、製品の収率は67.30%であった。
【0072】
比較例2
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が43℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。ステップ3)では保温して限外ろ過膜で分離する時に膜の目詰まりが発生し、効率的な生産ができなかった。
【0073】
比較例3
ステップ1)~ステップ4)の全過程にわたり系の温度が65℃に制御された以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に54.46kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は96.72%であり、製品の収率は64.31%であった。
【0074】
比較例4
ステップ6)の洗浄では、酢酸エチルをイソアミルアルコールに変更した以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.94kgのオリザノール完成品が得られ、完成品のオリザノール含有量は95.84%であり、製品の収率は72.48%であった。
【0075】
比較例5
ステップ6)の洗浄では、洗浄の順序は、遠心分離沈殿物に酢酸エチル500Lを加え、十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離し、遠心分離沈殿物を収集し、次に、沈殿物に温度40℃の精製水600Lを加えて、十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離して、遠心分離機に、毎回温度40℃の精製水50Lを3回に分けて加えて、十分に沈殿物を透過させ、遠心分離沈殿物を収集し、さらに沈殿物に濃度89%の食用エタノール600Lを加えて十分に撹拌して混合し、三脚付きバッグで遠心分離し、遠心分離機に濃度89%の食用エタノール50Lを2回に分けて加え、沈殿物を十分に透過させて遠心分離沈殿物を収集した以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に61.75kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は96.38%であり、製品の収率は72.67%であった。
【0076】
比較例6
ステップ6)の洗浄では、酢酸エチルの洗浄を省略し、エタノールと温水の洗浄を直接行った以外、残りのステップは実施例1と同様であった。最終的に64.75kgのオリザノール完成品が得られ、検出の結果、完成品のオリザノール含有量は91.36%であり、製品の収率は72.23%であった。
【0077】
上記の詳細な説明は、本発明の1つの実行可能な実施例についての具体的な説明であり、該実施例は、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明から逸脱することなくされる同等の実施や変更はすべて本発明の技術案の範囲に含まれるべきである。