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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220623BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220623BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20220623BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
B32B27/20 A
B41M5/40 210
B41M5/42 220
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020185775
(22)【出願日】2020-11-06
(62)【分割の表示】P 2016224167の分割
【原出願日】2016-11-17
(65)【公開番号】P2021045966
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】小野信一
(72)【発明者】
【氏名】吉田雅彦
(72)【発明者】
【氏名】木村貴之
(72)【発明者】
【氏名】古澤 寛樹
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098171(JP,A)
【文献】特開2009-023250(JP,A)
【文献】特開2005-088557(JP,A)
【文献】特開2006-347052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B05C5/00- 5/04
B41M5/26
5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも加熱によって発色する感熱記録層が形成される感熱記録体であって、
前記感熱記録層は、前記基材の幅方向の一部に形成され、前記感熱記録層が形成される感熱記録層形成領域の、前記幅方向の両端部分の前記感熱記録層の厚さは、その間の表面が平坦な中央部分の前記感熱記録層の厚さ以下である、
ことを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記幅方向の前記両端部分における前記感熱記録層の厚さが、前記中央部分側から各端縁に向かってそれぞれ漸近的に薄くなる、
請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記幅方向の前記両端部分における前記感熱記録層の厚さが、前記中央部分側から各端縁に向かってそれぞれ段階的に薄くなる、
請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記感熱記録層及び前記基材を覆う表面が平坦な保護層を設ける、
請求項1ないし3のいずれかに記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱塗料が塗工されて感熱記録層が形成される感熱紙や感熱フィルムなどの感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベル、あるいは、容器の包装用のフィルムなどとして広範な用途に使用されている。
【0003】
かかる感熱記録体の感熱記録層は、例えば、特許文献1に記載されているようなグラビア塗工装置を用いて、感熱塗料を、長尺の紙やフィルム等の基材上に塗工し、乾燥させて形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-30628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グラビア塗工装置では、外周面にセルと呼ばれる微小な凹部が形成されたグラビアロールを、塗工液、例えば、感熱塗料が貯留された貯留槽に回転させながら浸してセルに感熱塗料を付着保持させ、連続搬送される長尺の紙やフィルム等の基材に、グラビアロールを接触させて、セルに付着保持させた感熱塗料を転写して塗工するものである。
【0006】
かかるグラビア塗工では、紙やフィルム等の基材に対して、その幅方向の一部分のみ、例えば、図2に示すように、長尺の基材7の幅方向(図2の左右方向)の両端部を除いた中央部分のみに連続的に感熱塗料を塗工し、乾燥させて感熱記録層2aを形成する場合がある。
【0007】
グラビアロールでは、その外周面に付着した塗工液が、セルが形成されたセル形成領域の両端部分に溜まりやすいために、グラビアロールのセル形成領域の両端部分に付着する塗工液の量が多めとなる。
【0008】
このため、感熱塗料が転写されて乾燥された感熱記録体8bは、図18の概略断面図に示すように、基材7の幅方向(図18の左右方向)の両端部分、すなわち、塗工された塗工端の感熱記録層2aが、厚く盛り上がった状態となる。
【0009】
このように塗工端が盛り上がった状態になると、塗工後の基材7をロール等にきれいに巻き取ることができず、部分的に撓んで皺が生じる。
【0010】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、感熱記録体をロール等へ巻取る際に、部分的に撓んで皺が生じたりするのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0012】
(1)本発明の感熱記録体は、基材上に少なくとも加熱によって発色する感熱記録層が形成される感熱記録体であって、前記感熱記録層は、前記基材の幅方向の一部に形成され、前記感熱記録層が形成される感熱記録層形成領域の、前記幅方向の両端部分の前記感熱記録層の厚さは、その間の表面が平坦な中央部分の前記感熱記録層の厚さ以下である。
【0013】
本発明の感熱記録体は、基材の幅方向の一部に形成される感熱記録層は、基材の幅方向の両端部分の厚さが、その間の中央部分の厚さ以下であるので、感熱記録層の両端部分が盛り上がって部分的に厚い感熱記録体のように、ロールへの巻取りの際に、部分的に撓んで皺が生じたりすることがない。
【0014】
(2)本発明の他の実施態様では、前記幅方向の前記両端部分における前記感熱記録層の厚さを、前記中央部分側から各端縁に向かってそれぞれ漸近的に薄くしている。
【0015】
この実施態様によると、幅方向の両端部分における感熱記録層の厚さの変化が緩やかとなる。
【0016】
(3)本発明の更に他の実施態様では、前記幅方向の前記両端部分における前記感熱記録層の厚さを、前記中央部分側から各端縁に向かってそれぞれ段階的に薄くしている。
【0017】
この実施態様によると、幅方向の両端部分における感熱記録層の厚さを、段階的に変化させることができる。
【0018】
(4)本発明の他の実施態様では、前記感熱記録層及び前記基材を覆う表面が平坦な保護層を設ける。
【0019】
この実施態様によると、基材の幅方向の一部に形成される感熱記録層及び基材を覆う保護層を設けるので、例えば、全面塗工して保護層を形成することができ、保護層の表面、すなわち、感熱記録体の表面を平坦にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、基材の幅方向の一部に形成される感熱記録層は、基材の幅方向の両端部分の厚さが、その間の中央部分の厚さ以下であるので、感熱記録層の両端部分が盛り上がって部分的に厚い感熱記録体のように、ロールへの巻取りの際に、部分的に撓んで皺が生じたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の一実施形態に係る感熱記録体の感熱記録層の形成に用いる参考例としてグラビア塗工装置の概略構成図である。
図2図2図1のグラビア塗工装置によって感熱塗料が塗工された感熱記録体の平面図である。
図3図3図1のグラビア塗工装置のグラビアロールの概略正面図である。
図4図4図1のグラビア塗工装置によって感熱塗料が塗工された感熱記録体の概略断面図である。
図5図5は感熱記録体の変形例を示す概略断面図である。
図6図6は感熱記録体の他の変形例を示す概略断面図である。
図7図7は保護層が形成された感熱記録体の概略断面図である。
図8図8は他のグラビアロールの概略正面図である。
図9図9図8のグラビアロールを用いて塗工された感熱記録体の平面図である。
図10図10は他の参考例としてのバーコーターの要部の概略側面図である。
図11図11は塗工用バーの概略断面図である。
図12図12は塗工用バーの他の例を示す概略図である。
図13図13図12の塗工用バーの中央部分R3bにおける溝18a及び両端部分R2bにおける溝18aにそれぞれ保持される感熱塗料2を概略的に示す図である。
図14図14は他の参考例としてのロールコーターの要部の概略側面図である。
図15図15は塗工用ロールの概略正面図である。
図16図16は他の参考例としてのカーテンコーターの概略斜視図である。
図17図17は他のカーテンコーターの概略斜視図である。
図18図18は感熱記録層2aの盛り上がった両端部分を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本明細書では、本発明に係る感熱記録体の感熱記録層を形成するのに好適な塗工装置を参考例として説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る感熱記録体の感熱記録層の形成に用いる参考例としてのグラビア塗工装置の概略構成図である。
【0025】
この参考例では、紙やフィルム等の長尺の基材7に対して、感熱塗料2を塗工する場合に適用して説明する。
【0026】
この参考例のグラビア塗工装置1は、塗工液としての感熱塗料2が貯留される貯留槽3と、貯留槽3内の感熱塗料2中に浸漬されるように配置されたグラビアロール4と、グラビアロール4の上方に配置された圧着ロール5と、グラビアロール4の外周面に付着した余分な感熱塗料2を掻き取るドクターブレード6とを備えている。
【0027】
貯留槽3には、感熱塗料2を供給する図示しない感熱塗料供給手段が接続されており、感熱塗料2が供給される。
【0028】
グラビアロール4及び圧着ロール5は、ロール軸回りに回転可能に支持された円筒状のロールであり、グラビアロール4が、図示しない駆動手段によって矢符方向へ駆動されることによって、両ロール4,5が同期して回転する。
【0029】
グラビアロール4は、例えば、炭素鋼やステンレス鋼からなる金属製のロールであって、その外周面には、感熱塗料2を保持できるように微小な凹部であるセル10が、後述のように、その全周に亘って多数形成されている。
【0030】
長尺の基材7は、図示しない搬送手段によって、グラビアロール4と圧着ロール5との間を通過するように搬送される。
【0031】
このグラビア塗工装置1において、長尺の基材7が、グラビアロール4と圧着ロール5との間を通過する際に、貯留槽3内の感熱塗料2に下部が浸漬されるように配置されているグラビアロール4が、矢符で示す方向に回転することによって、感熱塗料2がその外周面のセル10内に付着して保持される。グラビアロール4の外周面に付着した余分な感熱塗料2が、ドクターブレード6によって掻き取られる。
【0032】
グラビアロール4と圧着ロール5との間で、基材7が押圧されることによって、グラビアロール4の外周面のセル10内の感熱塗料2が、基材7のグラビアロール4との対向面に転写される。
【0033】
この参考例のグラビア塗工装置1は、例えば、基材7の幅方向の一部に感熱塗料2を塗工する場合に、基材7の塗工端が、転写された感熱塗料2によって盛り上がるのを防止できるようにしている。
【0034】
ここでは、図2に示すように、長尺の基材7の幅方向(図2の左右方向)の両端を除く中央部のみの塗工幅W1に亘る塗工領域に、連続的に感熱塗料2を塗工し、乾燥させて感熱記録層2aを形成する場合について説明する。
【0035】
図3は、図1のグラビアロール4の概略正面図である。
【0036】
このグラビアロール4の外周面には、基材7に感熱塗料2を塗工する塗工幅W1の塗工領域に応じて、その軸方向の中央に幅W1に亘るセル形成領域R1が設けられている。このセル形成領域R1には、セル10がグラビアロール4の外周面の全周に亘って形成されている。このセル10の形状は特に限定されず、一般的に知られている格子型や斜線型等を採用することができ、セル10によって階調を表現することができる。
【0037】
このセル10が形成されるグラビアロール4の外周面の幅W1に亘るセル形成領域R1の内、その両端から幅W2に亘る両端部分R2におけるセル10は、そのセル容積を、幅W3に亘る中央部分R3におけるセル容積よりも小さくしている。
【0038】
両端部分R2における幅W2は、上記図18の感熱記録層2aが盛り上がる塗工端の幅に対応するように適宜選択される。
【0039】
幅W3に亘る中央部分R3のセル10は、ベタ塗工可能なセル構成となっており、中央部分R3に対応する基材7の全面が感熱塗料2によって塗り潰される、ベタ塗工となる。
【0040】
このグラビアロール4では、幅W3に亘る中央部分R3のセル10のセル容積を、100%としている。
【0041】
これに対して、幅W2に亘る各両端部分R2のセル10のセル容積は、中央部分R3のセル10のセル容積より小さく、例えば、70%~50%としている。なお、各両端部分R2のセル容積は、中央部分W3におけるセル容積より小さければよく、前記70%より大きくてもよく、前記50%より小さくてもよい。
【0042】
また、幅W3に亘る中央部分R3のセル10は、ベタ塗工可能なセル構成であればよく、セル容積が100%でなくてもよい。
【0043】
このようにグラビアロール4のセル形成領域R1の内、グラビアロール4の外周面に付着した感熱塗料が溜まりやすいセル形成領域R1の両端部分R2におけるセル容積を、それ以外の中央部分R3のセル容積に比べて小さくしているので、両端部分R2に付着保持される感熱塗料2の量は、それ以外の中央部分R3に付着保持される感熱塗料2の量に比べて少なくなり、感熱塗料2が転写された基材7の幅方向の両端部分の感熱塗料2が多めとなるのを抑制することができる。
【0044】
これによって、図4の概略断面図に示すように、基材7上に、その幅方向(図4の左右方向)に沿って塗工され、乾燥されて形成された感熱記録層2aの形成領域r1の内、基材7の幅方向の中央部分r3の厚みに比べて、両端部分r2の厚みが薄くなる。なお、グラビアロール4の両端部分R2におけるセル10のセル容積を、中央部分R3のセル容積に近い値にすると、基材7の幅方向の両端部分r2の感熱記録層2aの厚みが、中央部分r3の感熱記録層2aの厚みと同じになる場合があるが、同じ厚みであってもよい。
【0045】
これによって、上記図18に示すように、感熱記録層2aの両端部分r2が盛り上がることがない。
【0046】
このように塗工された感熱記録層2aの塗工端が盛り上がることがないので、塗工後の基材7をロール等に巻き取る際に、部分的に撓んで皺が生じたりすることがなく、円滑に巻き取ることができる。また、サーマルヘッドで印字する際に、皺等に起因する微細な凹凸によって、印字ができなかったり、かすれたりする印字不良が生じることがない。
【0047】
上記のように本参考例では、グラビアロール4のセル形成領域R1の内、グラビアロール4の軸方向の両端部分R2に、その間の中央部分R3に比べて、少ない量の感熱塗料2を保持し、セル形成領域R1に保持した感熱塗料2を基材7に転写して塗工する。
【0048】
なお、感熱記録層2aの基材7の幅方向の両端部分r2の厚さは、グラビアロール4のセル形成領域R1の両端部分R2におけるセル容積を、適宜選択することによって、調整することができ、例えば、感熱記録層2aの両端部分r2の厚さを、中央部分r3の厚さに近づけることができ、上記のように同じ厚さにしてもよい。更に、感熱記録層2aの両端部分r2の厚さを、図5に示すように、中央部分側から両側の各端縁に向かって漸近的にそれぞれ薄くすることができ、あるいは、図6に示すように、段階的、例えば、多段階に薄くするといったことができる。
【0049】
この実施形態の感熱記録体8は、図7に示すように、図4の感熱記録層2a上に、基材7の全幅に亘って保護層9が積層される。このように保護層9を設けることで、感熱記録体8の耐水性や耐候性を向上させることができる。
【0050】
この実施形態の感熱記録体8の感熱記録層2aは、基材7に、グラビア塗工装置1のグラビアロール4によって、基材7の幅方向の中央部分r3に比べて、両端部分r2の感熱塗料の塗工量が少なくなるように塗工されて形成される。
【0051】
保護層9は、感熱記録層2a及び基材7を覆うように、全面に塗工して形成することができるので、部分塗工の場合と異なり、保護層の表面は、平坦に形成することができる。なお、保護層9は、感熱記録層2aの厚みに応じて、基材7の幅方向の両端部分を、中央部分に比べて薄く形成してもよい。
【0052】
この図7の感熱記録体8の基材7は、特に制限はなく、紙や樹脂フィルム等の公知の材料を使用することができる。
【0053】
感熱記録層2aは、加熱により発色する発色剤、顕色剤、充填剤、結着剤(バインダー)、及び滑剤などを含み、公知の材料を用いることができる。
【0054】
保護層9は、結着剤、充填剤、架橋剤、滑剤などを含み、公知の材料を使用することができ、
図8は、他のグラビアロール4aの概略正面図であり、図3に対応する図である。
【0055】
上記のグラビアロール4では、セル10は、グラビアロール4の軸方向に沿って分離されることなく、連続した単一の領域に形成されたが、このグラビアロール4aでは、セル10は、グラビアロール4aの軸方向の一部、この例では中央部で複数、この例では、2つに分離されてそれぞれ形成されている。
【0056】
すなわち、グラビアロール4aでは、その軸方向に沿って、2つのセル形成領域R1a,R1aを有しており、各セル形成領域R1aは、幅W1aに亘ってセル10がそれぞれ形成されている。
【0057】
各セル形成領域R1aは、上記と同様に、その両端から幅W2aに亘る両端部分R2aにおけるセル10は、そのセル容積を、幅W3aに亘る中央部分R3aにおけるセル容積よりも小さくしている。
【0058】
両端部分R2aにおける幅W2aは、上記と同様に、基材7に塗工した感熱記録層2aが盛り上がる塗工端の幅に対応するように適宜選択される。
【0059】
幅W3aに亘る中央部分R3aのセル10は、ベタ塗工可能なセル構成となっており、具体的には、上記と同様に、セル容積が100%である。
【0060】
これに対して、幅W2aに亘る各両端部分R2aのセル10のセル容積は、例えば、70%~50%としている。
【0061】
この図8のグラビアロール4aを用いて感熱塗料2を、基材7に塗工することによって、図9に示すように、基材7の幅方向に沿って、塗工幅W1aに亘る塗工領域の2つの感熱記録層2aを形成することができる。
【0062】
グラビアロール4aの各セル形成領域R1aは、両端部分R2aにおけるセル容積が、中央部分R3aにおけるセル容積よりも小さいので、基材7上に形成される各感熱記録層2aも、基材7の幅方向の両端部の厚みが、その間の中央部分の厚みに比べて薄くなっており、各感熱記録層2aの塗工端が盛り上がることがない。なお、上記と同様に、各感熱記録層2aの基材7の幅方向の両端部の厚みを、その間の中央部分の厚みと同じにしてもよい。
【0063】
この図9の感熱記録層2a及び基材7上に、上記図7と同様に保護層を形成してもよい。
【0064】
この図9の感熱記録体8aでは、基材7の幅方向の中央部分には、感熱記録層2aを形成していないので、感熱塗料2の使用量を低減することができる。
【0065】
また、基材7や保護層9が、感熱記録層2aに比べて透明度が高いときには、透明な領域が広くなり、例えば、この感熱記録体8aを、各種の食品などが収容された容器のラベルや包装用のフィルムとして使用する場合に、透明な領域を通して容器の中身を確認するのが容易となる。
【0066】
上記では、参考例としてグラビア塗工装置に適用して説明したが、基材に塗料を塗工した場合に、基材の塗工端が盛り上がるのと同様の現象は、グラビア塗工に限らず、他の塗工についても起こり得るものである。
【0067】
そこで、グラビア塗工以外の他の塗工について説明する。
【0068】
図10は、塗工用バー11を用いて基材7に感熱塗料2を塗工する参考例としてのバーコーター12の要部を示す概略側面図である。
【0069】
この参考例のバーコーター12は、基材7の表面に感熱塗料2を必要な塗布液量よりも過剰に塗布するピックアップロール13と、基材7に塗布された感熱塗料2の過剰分を掻き取る塗工用バー11と、基材7を、ピックアップロール13及び塗工用バー11に接触するように搬送案内するガイドローラ14,15とを備えている。
【0070】
塗工用バー11は、基材7の搬送方向と直交する方向に延在し、円柱状のバーにワイヤーを巻き付けたワイヤーバーからなる。ガイドローラ14,15は、図示しないモーターによって同じ速度で同方向に回転する。
【0071】
ピックアップロール13は、塗工用バー11の直前において基材7の下面に過剰な感熱塗料2を塗布する。このピックアップロール13によって基材7に塗布された感熱塗料2の過剰分が、塗工用バー11によって掻き落とされて必要な塗布液量とされる、すなわち、掻き取った後の必要な塗布液量のみが塗工用バー11に保持されて基材7に転写されることになる。
【0072】
このバーコーター12は、基材7の幅方向の一部に感熱塗料2を塗工する場合に、基材7の塗工端が、転写された感熱塗料2によって盛り上がるのを防止できるように塗工用バー11を、次のように構成している。
【0073】
図11は、この塗工用バー11であるワイヤーバーの概略断面図である。なお、この図11では、ワイヤー17の径の変化を理解しやすいように誇張して示している。
【0074】
塗工用バー11は、長い円柱状の丸棒であるバー本体16に、径が変化するワイヤー17を、螺旋状に巻回したものである。
【0075】
このようにワイヤー17をバー本体16に螺旋状に巻回してなる塗工用バー11では、その軸方向で隣接するワイヤー17同士の外面に螺旋状の溝18が形成される。この溝18内に、掻き取った後の感熱塗料2が保持され、基材7に転写されて塗工される。
【0076】
このワイヤー17は、そのワイヤー径が、両端側は小径であって、徐々に大きくなって、中央部分が大径となっている。
【0077】
かかるワイヤー17を、バー本体16に螺旋状に巻回してなる塗工用バー11は、ワイヤー17が巻回されて溝18が形成される溝形成領域R1bの内、その両端部分R2bにおける溝18は、中央部分R3bにおける溝18に比べて、小さくなる、すなわち、溝18の幅(ピッチ)は狭くなり、深さ(深度)は浅くなる。したがって、両端部分R2bにおける溝18内に保持される感熱塗料2は、中央部分R3bにおける溝18内に保持される感熱塗料2に比べて少なくなる。
【0078】
このように、感熱塗料2を保持して転写する溝18は、溝形成領域R1bの両端部分R2bが、中央部分R3bに比べて小さいので、基材7の幅方向に沿って延びる塗工領域の内、両端部分の感熱塗料2の量を、中央部分の感熱塗料2の量に比べて少なくすることができる。
【0079】
これによって、上記参考例と同様に、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みに比べて薄くすることができる。なお、上記参考例と同様に、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みと同じにしてもよい。
【0080】
この参考例では、感熱記録体の感熱記録層は、基材7に、バーコーター12の塗工用バー11によって、基材7の幅方向の中央部分に比べて、両端部分の感熱塗料の塗工量が少なくなるように塗工されて形成される。
【0081】
上記のようにバーコーター12では、塗工用バー11の溝形成領域R1bの内、その両端部分R2bに、中央部分R3bに比べて、少ない量の感熱塗料2を保持し、溝形成領域R1bに保持した感熱塗料2を基材7に転写して塗工する。
【0082】
なお、塗工用バー11は、ワイヤーバーに限らず、例えば、図12に示す塗工用バー11aのようにバーの素材そのものに溝18aを形成したものなどであってもよい。
【0083】
図13(a),(b)は、図12の塗工用バー11aの中央部分R3b及び両端部分R2bの溝18a内に保持される感熱塗料2を示す図である。この図13から明らかなように、両端部分R2bにおける溝18aは、中央部分R3bにおける溝18aに比べて、狭く、浅いので、両端部分R2bにおける溝18a内の感熱塗料2は、中央部分R3bにおける溝18a内の感熱塗料2に比べて少なくなる。
【0084】
図14は、塗工用ロールを用いて基材に塗工する参考例としてのロールコーターの要部を示す概略側面図である。
【0085】
この参考例のロールコーター19は、円筒状の塗工用ロール20と、塗工用ロール20の表面に付着する感熱塗料2の量を調整するためのドクターロール21と、塗工用ロール20に対向して配置され、基材7を矢印方向に搬送する搬送ロール22とを備えており、塗工用ロール20とドクターロール21との接する部分に、図示しない供給装置から感熱塗料2が供給される。
【0086】
感熱塗料2は、矢印方向に回転する両ロール20,21の接触圧とドクターロール21の働きによって塗工用ロール20の表面に付着保持され、搬送ロール22によって搬送される基材7に、塗工用ロール20に付着した感熱塗料2が転写されて塗工される。
【0087】
この参考例のロールコーター19は、例えば、基材7の幅方向の一部に感熱塗料2を塗工する場合に、基材7の塗工端が、転写された感熱塗料2によって盛り上がるのを防止できるように塗工用ロール20を、次のように構成している。
【0088】
図15は、塗工用ロール20の概略正面図である。なお、この図15では、塗工用ロール20の径の変化を理解しやすいように誇張して示している。
【0089】
この塗工用ロール20は、その外径を軸方向に異ならせており、基材7の感熱塗料2の塗工領域に対応する領域R1cの内、両端部分R2cの外径を、中央部分R3cに比べて大径としている。したがって、大径の両端部分R2cの外周面に付着保持される感熱塗料は、それよりも小径の中央部分R3bの外周面に付着保持される感熱塗料に比べて少なくなる。
【0090】
これによって、基材7の幅方向に沿って延びる塗工領域の内、両端部分の感熱塗料2の量を、中央部分の感熱塗料2の量に比べて少なくすることができる。したがって、上記参考例と同様に、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みに比べて薄くすることができる。なお、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みと同じにしてもよい。
【0091】
この参考例では、感熱記録体の感熱記録層は、基材7に、ロールコーター19の塗工用ロール20によって、基材7の幅方向の中央部分に比べて、両端部分の感熱塗料の塗工量が少なくなるように塗工されて形成される。
【0092】
上記のように本参考例のロールコーター19では、塗工用ロール20の、基材7の感熱塗料2の塗工領域に対応する領域R1cの内、両端部分R2cに、中央部分R3cに比べて、少ない量の感熱塗料2を保持し、前記領域R1cに保持した感熱塗料2を基材7に転写して塗工する。
【0093】
上記各参考例では、グラビアロール4、塗工用バー11、あるいは、塗工用ロール20等の塗工部材によって、感熱塗料2を保持して基材7に転写して塗工したが、他の参考例として、感熱塗料2をカーテン状に形成して基材7に落下させて塗工してもよい。
【0094】
図16は、他の参考例としてのカーテンコーターの概略構成を示す斜視図である。
【0095】
カーテンコーターは、ポンプ24によって供給された感熱塗料2をカーテン形状に形成するカーテン形成部25と、基材7を搬送する搬送台26とを備えている。
【0096】
カーテン形成部25の上部には、後方が前方に比して高い位置に形成された平滑な塗工液テーブル27が設けられている。この塗工液テーブル27には、幅方向に延設されたスリット形状の吐出口28が設けられている。この吐出口28から吐出された感熱塗料2が、膜を形成しながら塗工液テーブル27上を流れ、塗工液テーブル27の前方端部29より落下することにより、カーテン形状の感熱塗料2が形成される。この塗工液テーブル27の前方端部29は、なめらかに下方に湾曲しているため、感熱塗料2は、形成された膜形状を崩すことなく、カーテン形状を形成しつつ下方に落下する。
【0097】
塗工液テーブル27の前方端部29の下方には、吐出口28の両端部30,30より吐出されてカーテン形状に形成された感熱塗料2の両端部に接するように、エッジガイド36,36が配設されている。
【0098】
エッジガイド36,36の下方には、基材7を積載して前後方向に移動する搬送台26を備えている。より具体的には、搬送台26は、積載した基材7をモーターの動力により移動させるためのベルトコンベアーである。基材7を、このベルトコンベアーによって後方から前方に移動させることにより、カーテン形状の感熱塗料2が基材7に塗工される。
【0099】
この参考例のカーテンコーターでは、幅方向に沿って延びる前記吐出口28の、前記幅方向の両端部分R2d,R2dは、その間の中央部分R3dに比べて、前記吐出口28のサイズを小さくしており、吐出口28から吐出される感熱塗料2の吐出量を、幅方向の両端部分R2d,R2dは、その間の中央部分R3dに比べて少なくしている。なお、吐出口28は、それ自体の形状を変えて、両端部分R2d,R2dのサイズを小さくしてもよいし、例えば、吐出口28の両端部分R2d,R2dのみにチップを取付けてサイズを小さくしてもよい。
【0100】
このように、吐出口28の両端部分R2d,R2dのサイズを、中央部分R3dに比べて小さくしているので、基材7の幅方向に沿って延びる感熱塗料2の塗工領域の内、両端部分の感熱塗料2の量を、中央部分の感熱塗料2の量に比べて少なくすることができる。これによって、上記参考例と同様に、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みに比べて薄くすることができる。なお、基材7の幅方向の両端部の感熱記録層の厚みを、その間の中央部分の厚みと同じにしてもよい。
【0101】
この参考例では、感熱記録体の感熱記録層は、カーテンコーターの吐出口28から吐出される感熱塗料の吐出量を、両端部分R2d,R2dは、その間の中央部分R3dに比べて少なくし、感熱塗料2を、基材7の幅方向の両端部分の厚みが、中央部分に比べて薄いカーテン状に形成して前記基材7上に落下させて形成される。
【0102】
上記のように本参考例のカーテンコーターでは、基材7の幅方向に延びる吐出口28から感熱塗料2を吐出させて、感熱塗料2を、基材7にカーテン状に落下させて塗工するものであって、前記幅方向に沿って延びる吐出口28の、両端部分R2d,R2dは、その間の中央部分R3dに比べて、吐出口からの感熱塗料2の吐出量を少なくして塗工する。
【0103】
すなわち、本参考例では、吐出口28の幅方向の両端部分R2d,R2dは、中央部分R3dに比べて少ない吐出量で感熱塗料2を吐出することによって、感熱塗料2を、前記幅方向の両端部分の厚みが、中央部分に比べて薄いカーテン状に形成し、このカーテン状の感熱塗料2を、基材7上に落下させて塗工する。
【0104】
図16のカーテンコーターでは、塗工液テーブル27を備え、同塗工液テーブル27上に感熱塗料2の液膜を形成させたうえで、カーテン形状に感熱塗料2を落下させるカーテンコーターを説明したが、他の方式のカーテンコーターに適用してもよい。例えば、図17に示すように、吐出口28から直接下方に感熱塗料2を落下させることにより、カーテン形状の感熱塗料2を形成する方式のカーテンコーターに適用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 グラビア塗工装置
2 感熱塗料
2a 感熱記録層
4,4a グラビアロール
6 ドクターブレード
7 基材
8,8a,8b 感熱記録体
9 保護層
10 セル
11,11a 塗工用バー
12 バーコーター
16 バー本体
17 ワイヤー
18,18a 溝
19 ロールコーター
20 塗工用ロール
28 吐出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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