(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】投射用ズームレンズおよび画像投射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20220623BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220623BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20220623BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
G02B13/16
G03B21/14 Z
(21)【出願番号】P 2017096687
(22)【出願日】2017-05-15
【審査請求日】2020-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】宮 健二
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212753(JP,A)
【文献】特開2016-095395(JP,A)
【文献】特開2017-058511(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017725(WO,A1)
【文献】特開2017-037165(JP,A)
【文献】特開2011-053663(JP,A)
【文献】特開2011-013469(JP,A)
【文献】特開2010-266577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も拡大側に配置され、負の屈折力を備える第1レンズ群を有する投射用ズームレンズであって、
前記第1レンズ群は、拡大共役側から縮小共役側に向かって順に第1サブレンズ群と、
負の屈折力を備える第2サブレンズ群と、正の屈折力を備える第3サブレンズ群と、を有し、
当該第1レンズ群は、ズーミングを行う際には固定され、フォーカシングを行う際には前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群と前記第3サブレンズ群とがそれぞれ独立して光軸上を移動可能であって、
前記第3サブレンズ群が光軸上を移動するとともに前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群の間隔が変化
し、
遠距離側から近距離側へフォーカシングを行う際に、前記第2サブレンズ群と前記第3サブレンズ群の間隔が広がる方向へ変化し、
前記フォーカシングを行う際には、第1サブレンズ群と、第2サブレンズ群とが何れも拡大側へと移動し、第3サブレンズ群は縮小側へと移動するように移動する投射用ズームレンズであって、
前記第2サブレンズ群の焦点距離f
1b
と、前記第3サブレンズ群の焦点距離f
1c
とが条件式:
(1)-0.5<f
1b
/f
1c
<-0.1
を満たす
ことを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の投射用ズームレンズ
において、
前記第1レンズ群の焦点距離:f
1G
と、前記ズーミングにおける広角端での全系の焦点距離fwとが条件式:
(2)-3.0<f
1G
/fw<-1.5
を満たすことを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の投射用ズームレンズにおいて、
前記第2サブレンズ群の焦点距離f
1b
と、前記第3サブレンズ群の焦点距離f
1c
と、前記ズーミングにおける広角端での全系の焦点距離fwとが条件式
(3)-2.0<f
1b
/fw<-0.5
(4)3.0<f
1c
/fw<9.0
を満たすことを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の投射用ズームレンズにおいて、
第1レンズ群が少なくとも1つの非球面レンズを有することを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の投射用ズームレンズにおいて、
前記第1レンズ群は、少なくとも1つの負の屈折力を備える球面レンズを有し、
負の屈折力を備えた当該球面レンズの屈折率N
dave_1G
の平均値が条件式
(5)1.55<N
dave_1G
<1.75
を満たすことを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の投射用ズームレンズにおいて、
前記第1レンズ群は、少なくとも1つの負の屈折力を備える球面レンズを有し、
負の屈折力を備えた当該球面レンズのアッベ数の平均値ν
d1ave_1G
が条件式
(6)45.0<ν
d1ave_1G
を満たすことを特徴とする投射用ズームレンズ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の投射用ズームレンズを有する画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投射用ズームレンズ、画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像をスクリーンなどに向けて投射するプロジェクタ等の画像投射装置が知られている。
【0003】
このような画像投射装置において、表示される画像の大きさを変えるために、広角端から望遠端まで変倍する、所謂ズーミングを行う構成が知られている。
このようなズーミングを行う際には、焦点距離をはじめ様々な光学的パラメータが変化して収差変動が生じることが知られている。
【0004】
画像投射装置に備えられる投射用のズームレンズにおいては、かかる収差変動を抑制し、適切に収差補正を行う構成が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、新規な投射用ズームレンズの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の投射用ズームレンズは、最も拡大側に配置され、負の屈折力を備える第1レンズ群を有する投射用ズームレンズであって、前記第1レンズ群は、拡大共役側から縮小共役側に向かって順に第1サブレンズ群と、負の屈折力を備える第2サブレンズ群と、正の屈折力を備える第3サブレンズ群を有し、当該第1レンズ群は、ズーミングを行う際には固定され、フォーカシングを行う際には前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群と前記第3サブレンズ群とがそれぞれ独立して光軸上を移動可能であって、前記第3サブレンズ群が光軸上を移動するとともに前記第1サブレンズ群と前記第2サブレンズ群の間隔が変化し、遠距離側から近距離側へフォーカシングを行う際に、前記第2サブレンズ群と前記第3サブレンズ群の間隔が広がる方向へ変化し、前記フォーカシングを行う際には、第1サブレンズ群と、第2サブレンズ群とが何れも拡大側へと移動し、第3サブレンズ群は縮小側へと移動するように移動する投射用ズームレンズであって、前記第2サブレンズ群の焦点距離f
1b
と、前記第3サブレンズ群の焦点距離f
1c
とが条件式:(1)-0.5<f
1b
/f
1c
<-0.1を満たす。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、適切に収差補正が可能な新規な投射用ズームレンズを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】撮像装置の実施形態の一例を説明するための図である。
【
図2】実施例1の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図3】実施例2の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図4】実施例3の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図5】実施例4の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図6】実施例5の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図7】実施例6の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図8】実施例7の投射用ズームレンズを説明するための図である。
【
図9】実施例1の投射用ズームレンズのフォーカシング時の動作の一例を表す図である。
【
図10】実施例1の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図11】実施例1の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図12】実施例1の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図13】実施例1の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図14】実施例2の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図15】実施例2の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図16】実施例2の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図17】実施例2の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図18】実施例3の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図19】実施例3の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図20】実施例3の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図21】実施例3の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図22】実施例4の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図23】実施例4の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図24】実施例4の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図25】実施例4の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図26】実施例5の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図27】実施例5の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図28】実施例5の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図29】実施例5の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図30】実施例6の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図31】実施例6の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図32】実施例6の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図33】実施例6の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【
図34】実施例7の投射用ズームレンズの広角端における縦収差図の一例である。
【
図35】実施例7の投射用ズームレンズの広角端における横収差図の一例である。
【
図36】実施例7の投射用ズームレンズの望遠端における縦収差図の一例である。
【
図37】実施例7の投射用ズームレンズの望遠端における横収差図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の実施形態の一例として、投射用ズームレンズたる投射レンズ群1を備えた画像投射装置100を示す。
本実施形態における画像投射装置100は、画像表示素子たる液晶パネル101に表示された原画像を投射面たるスクリーン104へと拡大して投射するプロジェクタである。
【0010】
原画像の表示を液晶パネル101で行うプロジェクタは、3原色(赤・緑・青)に対応した3枚の液晶パネル101により変調された3つの光を色合成光学系たるプリズム102により合成して投射レンズ1に入射させる。
【0011】
また、本実施形態では原画像の画像表示素子として液晶パネル101を用いたが、かかる構成に限定されるものではなく、微小ミラーを並べて構成されたDMD等の反射型表示素子で行うとしても良い。
かかる反射型表示素子を用いる構成では、反射型表示素子を照明する光路を、反射型表示素子と投射レンズ1との間に確保する必要がある。
【0012】
投射レンズ群1は、一般には小さなサイズで表示された原画像を拡大して投射するレンズ系であり、原画像を倍率可変で拡大して投射可能なズームレンズである。
投射レンズ群1は、
図1においては、拡大側から順に、第1レンズ群1Gと、第2レンズ群2Gと、第3レンズ群3Gと、開口絞りSと、第4レンズ群4Gと、第5レンズ群5Gと、を有する5群構成の投射光学系である。
本発明の実施形態の具体的な構成を
図2~
図8において例示する。なお、
図2~
図8においては、図の左方が拡大側(拡大共役側)、図の右方が縮小側(縮小共役側)である。また、繁雑化を避けるため、
図2~
図8において、符号は共通化する。
【0013】
また、
図2~
図8において、(a)をズーミングの広角端(Wide)とし、(b)をズーミングの望遠端(Tele)とする。
【0014】
第1レンズ群G1は、
図2(a)、(b)に示すように、拡大側から順に第1サブレンズ群1aと、負の屈折力を有する第2サブレンズ群1bと、正の屈折力を持つ第3サブレンズ群1cと、を有している。
第1レンズ群G1は、
図2(a)、(b)に示すズーミングの際には固定されて、第1レンズ群G1全体で負の屈折力を有している。
【0015】
また、第1レンズ群G1は、後述するフォーカシングの際には、第1サブレンズ群1a、第2サブレンズ群1b、第3サブレンズ群1cのそれぞれが独立に移動可能なように設置されている。
かかるフォーカシングの際には、第3サブレンズ群1cが光軸上を移動するとともに、第1サブレンズ群1aと第2サブレンズ群1bとの間隔が変化する。
このとき、最も好ましくは、例えば第1サブレンズ群1aが固定された状態で、第3サブレンズ群1cの光軸上の移動に合わせて第2サブレンズ群1bが光軸上を移動することで第1サブレンズ群1aと第2サブレンズ群1bの間隔が変化する。
なお、かかる構成に限定されるものではなく、3つのサブレンズ群が全て動作するとしても良い。
【0016】
第1サブレンズ群1aは、正の屈折力、負の屈折力、どちらでも所望の設計値に合わせて設定すればよいが、第1サブレンズ群1aと、第2サブレンズ群1bとを合計すると負の屈折力を備えるように設定することが望ましい。
このように、フォーカシング群内で拡大側から順に負・正となるような構成とすることで、距離変動時に発生する収差を補正する。
また、第3サブレンズ群1cが移動するとともに、第1サブレンズ群1a、第2サブレンズ群1bの間隔も変化することによって、より効果的に収差が補正される。
【0017】
また、第2サブレンズ群1bの焦点距離f1bと、第3サブレンズ群1cの焦点距離f1cとは、条件式(1)を満たす。
【0018】
【0019】
かかる条件式(1)を満たすことにより、より効果的に収差が補正される。
かかる条件式の上限を超えた場合には、第2サブレンズ群1bの負の屈折力が第3サブレンズ群1cの正の屈折力に比べて強くなりすぎることを示し、広角化に対して有利に働く一方で歪曲収差の増大や、像面湾曲、非点収差等の収差の補正が困難となるため望ましくない。
また、条件式(1)の下限を超えた場合には、第2サブレンズ群1bの負の屈折力が第3サブレンズ群1cの正の屈折力に比べて弱くなりすぎることを示し、像面湾曲や非点収差などの収差の補正が容易になる一方で、広角化の達成が難しくなるため望ましくない。
【0020】
また、本実施形態では、
図9に示すように、遠距離側から近距離側へフォーカシングするときに、第2サブレンズ群1bと第3サブレンズ群1cの間隔が広くなるように変動する。なお、
図9では特に移動の様子を明らかとする目的で、移動距離について誇張して記載しているが、実際の移動量は後述する数値例の通りである。
遠距離側から近距離側へと物点が変動した場合には、画角は狭くなる方向へ変化し、像面はオーバー方向に湾曲し易い。そこで、物点変動による像面湾曲を補正するために、第1サブレンズ群1aと、第2サブレンズ群1bとの間隔を広げる必要がある。
【0021】
第1サブレンズ群1aと、第2サブレンズ群1bとの間隔を広げることで、像面湾曲を補正することができるが、単に第1サブレンズ群1aと第2サブレンズ群1bとの間隔が広がるのみでは、合焦位置が変化してしまうため、第3サブレンズ群1cを移動させて、かかる合焦位置の補正を行う。
そのとき、負の屈折力を有する第1レンズ群G1において、数式(1)から明らかなように、第3サブレンズ群1cは全体が強い負パワー支配下の第1レンズ群G1中では屈折力が比較的弱いため、移動量を大きくする必要がある。
結果として、像面補正のための第2サブレンズ群1bの移動量よりも、合焦位置補正のための第3サブレンズ群1cの移動量が大きくなり、第2サブレンズ群1bと第3サブレンズ群1cとの間隔が広がる方向に変化する。
【0022】
したがって、本実施形態では、遠距離側から近距離側へフォーカシングするときには、第2サブレンズ群1bと第3サブレンズ群1cの間隔が広くなるように変動することが望ましい。
かかる構成により、遠距離側から近距離側への物点の変動により生じる像面湾曲を補正しながらも、合焦位置の変動を抑制して、適切に収差補正が可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、第1レンズ群1Gの焦点距離f1Gと、広角端における全系の焦点距離fwとが条件式(2)を満たしている。
【0024】
【0025】
かかる条件式(2)の上限値を超えると、第1レンズ群1Gの負の屈折力が強くなり、広角化達成に有利に働くが歪曲収差が大きくなり補正が難しい。
条件式(2)の下限値を超えると、第1レンズ群の負の屈折力が弱くなり、歪曲収差などの収差が補正しやすくなる一方で広角化の達成が難しい。
第1レンズ群1Gの焦点距離f1Gと、広角端における全系の焦点距離fwとをかかる条件式(2)の範囲内に収めることにより、レンズ系の広角化を図りながらも、収差を適切に補正することができる。
【0026】
また、本実施形態では、第1レンズ群1Gに含まれる第2サブレンズ群の焦点距離f1bと、第3サブレンズ群の焦点距離f1cとは、広角端における全系の焦点距離fwに対して、下記の条件式(3)、(4)を満たす。
【0027】
【0028】
【0029】
かかる条件式(3)は第1レンズ群1Gの中で、負の屈折力を備えた第2サブレンズ群1bの焦点距離と、全系の焦点距離との関係を示している。
条件式(3)の上限値を超えた場合、第1レンズ群1Gの負の屈折力が弱くなり、像面湾曲・非点収差等は有利になるが、広角化が困難となる。
下限値を超えた場合には、第1レンズ群1G全体の負の屈折力が強くなり、広角化へは有利に働くが、歪曲収差の補正が難しい。
【0030】
条件式(4)は、第1レンズ群1Gの中で、正の屈折力を備える第3サブレンズ群1cの焦点距離と、全系の焦点距離との関係を示している。
条件式(4)の上限値を超えると、第1レンズ群1Gの正の屈折力が弱まり、歪曲収差の補正が難しくなったり、フォーカシングの際の移動量が増大して構造上の自由度が小さくなるという問題が生じうる。一方で、正レンズの曲率の条件が緩くなり、コマ収差を抑制することが容易になる。
また、条件式(4)の下限値を超える場合、第1レンズ群1Gの正の屈折力が強くなり、像面湾曲や非点収差の補正は行いやすくなるが、広角化が難しい。
【0031】
また、本実施形態では、第1レンズ群1Gは、少なくとも1枚の非球面レンズを有している。
かかる構成により、広角化によって生じる歪曲収差やコマ収差がより精度良く補正される。
【0032】
また、本実施形態では、ズーミングの際に第1サブレンズ群1aが固定された状態で、各レンズの位置が調整される。すなわち、第1レンズ群1Gに含まれる複数のレンズ群のうち、少なくとも1つの固定となるサブレンズ群を有している。
【0033】
かかる構成により、鏡筒の構造が容易となり、自由度が向上する。
【0034】
また本実施形態では、第1レンズ群1Gを構成する負の屈折力を有する球面レンズの屈折率の平均値Ndave1Gが、条件式(5)を満たしている。
【0035】
【0036】
かかる条件式(5)は、負レンズの屈折率の関係を表しており、広角化とペッツバール和に関係する。
条件式(5)の上限を超えたとき、負レンズの屈折率が高くなり広角化に有利であり、曲率半径も抑えることができてコマ収差の発生も抑えられるが、ペッツバール和は不利となる。
また、条件式(5)の下限を超えた場合には、ペッツバール和は所定の範囲内に抑えられて像面湾曲や非点収差を小さく抑えることができるが、広角化達成のためには曲率半径がきつくなるのでコマ収差などの収差の補正が困難となる。
負の屈折力を有する球面レンズの屈折率の平均値Ndave1Gが、かかる条件式(5)の範囲内に収まるように設計されることで、広角化によって生じる歪曲収差やコマ収差がより精度良く補正される。
【0037】
また本実施形態では、第1レンズ群1Gを構成する負の屈折力を持つ球面レンズのアッベ数の平均値νd1Gが、条件式(6)を満たしている。
【0038】
【0039】
かかる条件式(6)は、フォーカシングによる倍率色収差の変動を抑えるための条件であり、下限値を超えた場合には、第1レンズ群1Gにおける全体のアッベ数が小さくなるため、フォーカシングによる変動分を押さえることが難しくなり、倍率色収差が増大してしまう。
【0040】
以上に述べたような投射レンズ1の具体的な構成例を、実施例1~7に数値として表1~表35に示す。また、実施例1~7におけるそれぞれの収差図を、
図10~37にそれぞれ示す。
【0041】
なお、実施例1~7は、何れも既に述べた条件式(1)を満足する数値実施例である。なお、条件式(1)に加えて条件式(2)~(6)の何れかあるいはすべてを満たしているが、かかる構成に限定されるものではない。
また、実施例1~7において、以下の符号を用いている。
R:曲率半径
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
f:全系の焦点距離
ω:半画角
【0042】
[数値実施例1]
実施例1のレンズ構成について表1~表5に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
また、表5に記載した各非球面の面変位は、下記の数式に従う。
【0049】
【0050】
[数値実施例2]
実施例2のレンズ構成について表6~表10に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
[数値実施例3]
実施例3のレンズ構成について表11~表15に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
[数値実施例4]
実施例4のレンズ構成について表16~表20に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
[数値実施例5]
実施例5のレンズ構成について表21~表25に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
[数値実施例6]
実施例6のレンズ構成について表26~表30に示す。
なお、本実施形態においては、表26から明らかなように、第1サブレンズ群1a、第3サブレンズ群1cはフォーカシングの際にレンズ光軸上を動作し、第2サブレンズ群1bは固定される。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
[数値実施例7]
実施例7のレンズ構成について表31~表35に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
図10~37には、実施例として示した7つの投射レンズ1の収差図を示す。
なお、実施例1に関する
図10~
図13において、
図10は広角端での縦収差図を示し、
図11は広角端での横収差図を示している。また、
図12は望遠端での縦収差図を示し、
図13は望遠端での横収差図を示している。
また、球面収差図におけるR、G、Bの符号はそれぞれの対応する波長(R=620nm、G=550nm、B=460nm)ごとの収差曲線を表している。
【0087】
実施例2に関する
図14~
図17において、
図14は広角端での縦収差図を示し、
図15は広角端での横収差図を示している。また、
図16は望遠端での縦収差図を示し、
図17は望遠端での横収差図を示している。
【0088】
実施例3に関する
図18~
図21において、
図18は広角端での縦収差図を示し、
図19は広角端での横収差図を示している。また、
図20は望遠端での縦収差図を示し、
図21は望遠端での横収差図を示している。
【0089】
実施例4に関する
図22~
図25において、
図22は広角端での縦収差図を示し、
図23は広角端での横収差図を示している。また、
図24は望遠端での縦収差図を示し、
図25は望遠端での横収差図を示している。
【0090】
実施例5に関する
図26~
図29において、
図26は広角端での縦収差図を示し、
図27は広角端での横収差図を示している。また、
図28は望遠端での縦収差図を示し、
図29は望遠端での横収差図を示している。
【0091】
実施例6に関する
図30~
図33において、
図30は広角端での縦収差図を示し、
図31は広角端での横収差図を示している。また、
図32は望遠端での縦収差図を示し、
図33は望遠端での横収差図を示している。
【0092】
実施例7に関する
図34~
図37において、
図34は広角端での縦収差図を示し、
図35は広角端での横収差図を示している。また、
図36は望遠端での縦収差図を示し、
図37は望遠端での横収差図を示している。
【0093】
各実施例の収差図に示されたように、各実施例とも収差は高いレベルで補正され、フォーカシングによる像面湾曲の変化も抑制されている。
球面収差は、フォーカシングに伴って変化するが、変化量は絶対値としては十分に小さい。
【0094】
軸上色収差・倍率色収差も小さく、コマ収差やその色差の乱れも最周辺部まで良く抑えられている他、歪曲収差も十分に小さく補正されている。
【0095】
即ち、実施例1ないし7の投射レンズ1は何れも、各種収差が十分に低減され、フォーカシングに伴う性能の変化が少ない高性能の投射用ズームレンズとなっている。
【0096】
この発明によれば、新規な投射用ズームレンズと、これを用いる画像投影装置を実現できる。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、この発明は上述した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において種々の構成をとることが可能である。
【0098】
この発明の実施形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は、「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1G 第1レンズ群
1a 第1サブレンズ群
1b 第2サブレンズ群
1c 第3サブレンズ群
S 絞り
2G 第2レンズ群
3G 第3レンズ群
4G 第4レンズ群
5G 第5レンズ群
6G 第6レンズ群
1 投射レンズ(投射用ズームレンズ)
100 撮像装置
104 スクリーン(投射面)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】特許第6027453号公報
【文献】特許第5026929号公報
【文献】特許第5637110号公報
【文献】特許第5006113号公報