IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クボタ環境サ−ビス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-脱臭装置 図1
  • 特許-脱臭装置 図2
  • 特許-脱臭装置 図3
  • 特許-脱臭装置 図4
  • 特許-脱臭装置 図5
  • 特許-脱臭装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20220623BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20220623BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B01D53/18 110
B01D53/38 120
B01D53/78 ZAB
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017216022
(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019084509
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ-ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】城野 晃志
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196119(JP,A)
【文献】特開2016-179432(JP,A)
【文献】特開2012-115735(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1483392(KR,B1)
【文献】特開平06-099027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
53/34-53/73
53/74-53/85
53/92,53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭処理液を収容する処理槽と、
前記処理槽に脱臭対象ガスを圧入するガス導入室と、
圧入された脱臭対象ガスと前記処理槽内の脱臭処理液とを気液混合して脱臭処理する気液混合室と、
下端から脱臭対象ガスとともに脱臭処理液が前記気液混合室に巻き上がるように、前記ガス導入室と前記気液混合室とを区画する気液混合仕切壁と、
脱臭処理後の脱臭対象ガスを前記処理槽から排出する排気部と、
遮断壁により前記排気部と液封され、溢流壁を介して脱臭処理後の脱臭処理液を前記処理槽から溢流させる排液部と、
前記気液混合仕切壁に対向して配置され、下端が前記処理槽の底壁との間で脱臭処理液が通流可能な隙間が形成される仕切壁と、
を備えている脱臭装置であって、
前記気液混合仕切壁の下端が前記溢流壁の上端よりも下方に位置するように延設され、
前記ガス導入室内で、前記気液混合仕切壁の下端と前記処理槽の底壁との間であって、前記底部から前記気液混合仕切壁の下端までの距離D1に対して、前記底部から距離D1の52%までの深さD2の範囲に、前記ガス導入室の上流側の側壁から延出する整流機構が設けられ、
前記処理槽を構成する壁部のうち、最上流側のガス導入室を構成する側壁または底壁であって前記整流機構より下方に脱臭処理液を供給する給液口を備え、
前記整流機構により前記給液口から給液される脱臭処理液を整流するとともに、前記ガス導入室に圧入される脱臭対象ガスの圧力変動による前記気液混合室の液面の変動を抑制するように構成されている脱臭装置。
【請求項2】
前記ガス導入室と前記気液混合室を脱臭対象ガスの流れ方向に沿って複数段設け、前記気液混合仕切壁のうち下流側の気液混合仕切壁の下端が上流側の気液混合仕切壁の下端より高位となるように設定され、前記整流機構は各ガス導入室内で前記気液混合仕切壁より下方に設けられている請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記整流機構は平坦な板状体で構成され、前記気液混合仕切壁より下方に略水平姿勢に配置されている請求項1または2記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記整流機構は前記気液混合仕切壁より下方に120mm以上の深い位置に配置されている請求項3記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記気液混合室と前記排気部との間に、脱臭処理後の脱臭対象ガスに同伴する飛沫を脱臭処理液の液面に導く飛沫回収案内板を備えている請求項1から4の何れかに記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記飛沫回収案内板は、脱臭対象ガスの流れ方向下流側に沿って下方に傾斜する前記ガス導入室及び前記気液混合室の傾斜天板から延出する天板延出部と、前記天板延出部の先端から下方に方向転換する第1鉛直案内壁と、前記第1鉛直案内壁と前記気液混合仕切壁との間に設置された第2鉛直案内壁とで構成されている請求項5記載の脱臭装置。
【請求項7】
前記気液混合仕切壁の下端高さを調整する気液混合仕切壁高さ調整機構を備えている請求項1から6の何れかに記載の脱臭装置。
【請求項8】
前記気液混合仕切壁の下端面に厚み方向に沿う溝部が複数形成されている請求項1から7の何れかに記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラバー方式の脱臭装置に関し、例えばし尿処理設備でし尿などを浄化処理する際に生じる悪臭を含む臭気ガスとし尿などの浄化処理で生じる汚泥とを気液混合して脱臭する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被処理気体を臭気捕捉液中に導入する導入部と、被処理気体と臭気捕捉液との気液混合が行われて被処理気体中の臭気が除去される気液混合部とを備えた所謂スクラバー方式の脱臭装置が開示されている。
【0003】
当該脱臭装置は、臭気捕捉液や被処理気体の脈動を抑えることを目的として、臭気捕捉液を導入部に供給するための液体供給口を、被処理気体と臭気捕捉液との接触面に対向する導入部の底壁に設けた構造が採用されている。
【0004】
被処理気体の圧力と臭気捕捉液の圧力との均衡を保つことにより装置内の臭気捕捉液の液位の脈動を防止することを企図した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-196119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された脱臭装置でも、装置内に導かれる被処理気体の圧力を常時一定に維持するのは困難であり、多少の揺らぎが生じるのは避け得ないのであり、同様に装置内に導かれる臭気捕捉液の多少の流入圧の変動も避け得ない状況で、両圧力のバランスを保つのは非常に困難であることが判明した。
【0007】
両圧力のバランスが崩れて液面が上下に大きく変動する結果、良好な気液混合が行なえずに脱臭効率が低下するばかりでなく、液面の変動に起因して装置や付帯設備に振動が生じるという問題があった。特に被処理気体である臭気ガスを装置に導く送風ファンに大きな負荷変動が生じ、また送風ダクトに大きな機械的振動が生じるため、それら付帯設備の破損を招く虞もあった。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、臭気捕捉液の液面の上下変動を効果的に抑制し、脱臭効率の低下を抑制可能な脱臭装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による脱臭装置の第一の特徴構成は、脱臭処理液を収容する処理槽と、前記処理槽に脱臭対象ガスを圧入するガス導入室と、圧入された脱臭対象ガスと前記処理槽内の脱臭処理液とを気液混合して脱臭処理する気液混合室と、下端から脱臭対象ガスとともに脱臭処理液が前記気液混合室に巻き上がるように、前記ガス導入室と前記気液混合室とを区画する気液混合仕切壁と、脱臭処理後の脱臭対象ガスを前記処理槽から排出する排気部と、遮断壁により前記排気部と液封され、溢流壁を介して脱臭処理後の脱臭処理液を前記処理槽から溢流させる排液部と、前記気液混合仕切壁に対向して配置され、下端が前記処理槽の底壁との間で脱臭処理液が通流可能な隙間が形成される仕切壁と、を備えている脱臭装置であって、前記気液混合仕切壁の下端が前記溢流壁の上端よりも下方に位置するように延設され、前記ガス導入室内で、前記気液混合仕切壁の下端と前記処理槽の底壁との間であって、前記底部から前記気液混合仕切壁の下端までの距離D1に対して、前記底部から距離D1の52%までの深さD2の範囲に、前記ガス導入室の上流側の側壁から延出する整流機構が設けられ、前記処理槽を構成する壁部のうち、最上流側のガス導入室を構成する側壁または底壁であって前記整流機構より下方に脱臭処理液を供給する給液口を備え、前記整流機構により前記給液口から給液される脱臭処理液を整流するとともに、前記ガス導入室に圧入される脱臭対象ガスの圧力変動による前記気液混合室の液面の変動を抑制するように構成されている点にある。
【0010】
処理槽に収容された脱臭処理液の容量が大きく変動しない状況下で、脱臭対象ガスの圧力によってガス導入室側の液面が下降すると、気液混合室の液面が相対的に上昇して気液混合室側の水頭が相対的に上昇し、気液混合室側の水頭が上昇するとガス導入室側の液面を上昇させる圧力が作用する。このような現象が周期的に繰り返し発生すると、ガス導入室側の液面が継続的に大きく上下変動し、気液混合室での良好な気液混合が行なわれなくなり脱臭効率が大きく低下する虞がある。
【0011】
しかし、ガス導入室側の液面が下降する際に、ガス導入室内で気液混合仕切壁の下端より深い位置に配された整流機構により脱臭処理液が液面に沿う横方向に整流されるので、気液混合室で液面を押し上げるような脱臭処理液への圧力の伝達が抑制されるようになる。
【0012】
このとき、給液口から供給される脱臭処理液の圧力に変動があっても、整流機構によって圧力変動の気液混合室側の液面への伝達が緩衝され、液面の上下変動が抑制される。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記ガス導入室と前記気液混合室を脱臭対象ガスの流れ方向に沿って複数段設け、前記気液混合仕切壁のうち下流側の気液混合仕切壁の下端が上流側の気液混合仕切壁の下端より高位となるように設定され、前記整流機構は各ガス導入室内で前記気液混合仕切壁より下方に設けられている点にある。
【0014】
ガス導入室と気液混合室を脱臭対象ガスの流れ方向に沿って複数段設けることにより、スクラビングの機会が増して脱臭効率を向上させることができる。この様な構成を採用すると、脱臭対象ガスの流れ方向に沿って下流側に位置するガス導入室ほど脱臭対象ガスの圧力が低下して液面が上昇することになる。そのような場合でも、下流側の気液混合仕切壁の下端が上流側の気液混合仕切壁の下端より高位となるように設定されていれば、下流側の気液混合室でも良好なスクラビング処理が行なえるようになる。
【0015】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記整流機構は平坦な板状体で構成され、前記気液混合仕切壁より下方に略水平姿勢に配置されている点にある。
【0016】
気液混合仕切壁より下方に平坦な板状体を略水平姿勢に配することにより、ガス導入室または気液混合室の液面の上下変動が効果的に抑制され、ガス導入室側の液面が上昇する際に整流機構より下方に存在する脱臭処理液への液面を押し上げる方向の圧力の伝達が抑制されるようになる。
【0017】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記整流機構は前記気液混合仕切壁より下方に120mm以上の深い位置に配置されている点にある。
【0018】
気液混合仕切壁の下端から120mm以上の深い位置に配置されていると、液面の上下変動がより効果的に抑制される。
【0019】
同第の特徴構成は、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記気液混合室と前記排気部との間に、脱臭処理後の脱臭対象ガスに同伴する飛沫を脱臭処理液の液面に導く飛沫回収案内板を備えている点にある。
【0020】
気液混合室で気液混合されて脱臭処理された脱臭対象ガスに同伴する飛沫が飛沫回収案内板によって脱臭処理液の液面に導かれて脱臭処理液に回収されるようになり、脱臭対象ガスの排気流路に飛沫が付着堆積することによる汚れが抑制され、流路が閉塞するような事態の発生が回避できるようになる。
【0021】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記飛沫回収案内板は、脱臭対象ガスの流れ方向下流側に沿って下方に傾斜する前記ガス導入室及び前記気液混合室の傾斜天板から延出する天板延出部と、前記天板延出部の先端から下方に方向転換する第1鉛直案内壁と、前記第1鉛直案内壁と前記気液混合仕切壁との間に設置された第2鉛直案内壁とで構成されている点にある。
【0022】
天板延出部と、天板延出部の先端から下方に方向転換する第1鉛直案内壁と、第1鉛直案内壁と気液混合仕切壁との間に設置された第2鉛直案内壁によって、気液混合室から上方に流出する脱臭対象ガスが脱臭処理液側に向くUターン流路となり、効果的に飛沫が回収されるようになる。
【0023】
同第の特徴構成は、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記気液混合仕切壁の下端高さを調整する気液混合仕切壁高さ調整機構を備えている点にある。
【0024】
気液混合仕切壁の高さを適切に調整することで、ガス導入室と気液混合室の差圧を調整でき、その結果、気液混合室での液の巻き上がり具合を調整でき、気液混合効率つまり脱臭効率を最大限調整することができる。
【0025】
同第の特徴構成は、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記気液混合仕切壁の下端面に厚み方向に沿う溝部が複数形成されている点にある。
【0026】
気液混合仕切壁の下端面長手方向の姿勢が液面に対して僅かに傾斜すると、均質なスクラビングが阻害され、気液混合仕切壁の下端面と液面との間隙の大きい領域から脱臭対象ガスが漏洩する虞がある。しかし、気液混合仕切壁の下端面に厚み方向に沿う溝部が複数形成されていれば、気液混合仕切壁の下端面長手方向に沿って各溝部から脱臭対象ガスが均等に流下して、均質なスクラビングが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、臭気捕捉液の液面の上下変動を効果的に抑制し、脱臭効率の低下を抑制可能な脱臭装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による脱臭装置が組み込まれたし尿処理施設の説明図
図2】(a),(b)は非稼働時の脱臭装置の断面図
図3】(a),(b)は気液混合仕切壁の説明図
図4図2(a)に対応した脱臭装置の脱臭処理過程の説明図
図5図2(b)に対応した脱臭装置の脱臭処理過程の説明図
図6】(a),(b)は別実施形態を示した脱臭装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明による脱臭装置を説明する。
図1に示すように、脱臭装置50は高負荷脱窒素処理方式が採用されたし尿処理施設1に組み込まれている。以下、脱臭装置50の説明に先立ち、し尿処理施設1を概説する。
【0030】
し尿処理施設1は、搬入されたし尿や浄化槽汚泥を受け入れて前処理する前処理設備2、前処理されたし尿などを生物処理によって浄化する生物処理設備3、生物処理された後の被処理水を放流に適した状態に後処理する後処理設備4、生物処理などで発生した余剰汚泥などを処理する汚泥処理設備5などを備えている。
【0031】
前処理設備2は、受入槽2Aと貯留槽2Cと予備貯留槽2Dを備え、受入槽2Aと貯留槽2Cの間に前処理装置2Bが設置されている。
【0032】
し尿収集車両等によって搬入されたし尿等の汚水は、先ず受入槽2Aに投入され、カッター付きポンプによって固形物が粉砕されながら、前処理装置2Bに送られ、その後、生物処理に適さないし渣等の固形異物が前処理装置2Bによって除去された後、貯留槽2Cまたは予備として設けられた予備貯留槽2Dに貯留される。
【0033】
そして、貯留槽2Cに貯留された汚水は、ポンプによって生物処理設備3に送水される。生物処理設備3には、例えば深層反応槽3A、硝化槽3B、二次脱窒素槽3C、膜分離槽3D、返送汚泥槽3Eなどが順に設置されている。
【0034】
貯留槽2Cから送水される汚水は、先ず深層反応槽3Aに導かれる。深層反応槽3Aは10m程度の深さの生物処理槽で、その上部に循環ポンプ槽3aが連設されている。循環ポンプ槽3aからポンプ3dで引き抜かれた一部の汚水が深層反応槽3Aに循環供給され、その循環経路にエジェクタ機構が組み込まれて循環汚水と共に空気が供給されるように構成されている。
【0035】
エジェクタ機構に連通する空気供給経路にバルブが設置され、バルブの開度を周期的に制御することにより、循環汚水と共に供給される空気量が調整され、深層反応槽3A内で脱窒素処理に適した無酸素状態と硝化処理に適した好気状態とが数時間間隔で切り替え可能に構成されている。例えば、1時間の嫌気処理と2時間の好気処理を繰り返すようにバルブが開閉され、嫌気処理と好気処理が3時間程度の周期で繰り返される。
【0036】
深層反応槽3Aは、槽底付近で水圧が高く酸素の溶存効率が高くなり、高効率の処理ができる。そのため、流入する汚水の負荷が高くても希釈水を供給する必要は無い。つまり、深層反応槽3Aは硝化脱窒素処理装置として機能する。
【0037】
深層反応槽3Aで嫌気処理と好気処理が繰り返された汚水は、その後、硝化槽3Bに移送されて硝化処理される。好気状態に維持される硝化槽3Bでは、好気性微生物によってアンモニアが硝化、つまり硝酸イオン及び亜硝酸イオンに分解される。
【0038】
硝化槽3Bで硝化処理された汚水は、二次脱窒素槽3Cに供給される。嫌気状態に維持される二次脱窒素槽3Cでは、脱窒素処理、つまり硝酸イオン及び亜硝酸イオンが、嫌気性微生物によって窒素に還元されて脱気される。
【0039】
二次脱窒素槽3Cで脱窒素処理された汚水は、その後、膜分離槽3Dに移送される。膜分離槽3Dには、膜分離装置3Fが浸漬設置されており、槽内の汚水は膜分離装置3Fに接続されたポンプで吸引され、膜分離装置3Fによって固液分離された被処理水が、後処理設備4に送水される。
【0040】
後処理設備4には、混和槽4Aと凝集槽4Bと凝集膜分離槽4Cが設置されている。膜分離装置3Fによって固液分離された被処理水には、コロイド状の微細な浮遊物質が固液分離されずに残存している。そのため、後処理設備4に送水された被処理水には、まず鉄系無機凝集剤が添加されて混和槽4Aで混和され、苛性ソーダ等の添加によりpH調整された凝集槽4Bに送水されて凝集処理される。
【0041】
その後、凝集膜分離槽4Cで膜分離され、高度処理設備6に送られる。高度処理設備6に送られた被処理水は、例えば活性炭吸着処理によりCODや着色成分が吸着除去され、さらに次亜塩素酸等によって滅菌された後に、河川等に放流される。なお、凝集汚泥は汚泥処理設備5に送られ、余剰汚泥とともに処理される。
【0042】
生物処理設備3の膜分離槽3Dに溜まった汚泥は、返送汚泥槽3Eに送られた後、その一部がポンプによって汚泥返送路3b,3cを介して深層反応槽3Aの循環ポンプ槽3aに返送され、余剰汚泥は汚泥脱水設備5Aに送られる。
【0043】
汚泥脱水設備5Aに送られた余剰汚泥や、前処理後に固液分離された浄化槽汚泥の固形分は、鉄系無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤が添加された後に脱水処理され、脱水された汚泥が有機性汚泥として発酵設備30に投入される。ブロワーファン21により送風された外気がヒータ22により加熱されて発酵設備30に供給され、有機性汚泥がコンポスト化される。
【0044】
前処理設備2で生じる臭気ガス及び発酵設備30で生じる粉塵が混入した臭気ガスが高濃度の脱臭対象ガスとしてそれぞれブロワーファンを介して脱臭装置50に供給され、返送汚泥槽3Eから汚泥返送路3bを介して深層反応槽3Aに返送される汚泥が脱臭処理液として脱臭装置50に供給されるように構成されている。そして、脱臭装置50で脱臭処理液に捕捉された臭気ガス成分であるアンモニアが脱臭処理液とともに深層反応槽3Aに返送されて硝化脱窒素処理される。
【0045】
脱臭装置50で気液接触して脱臭された被処理ガスは、生物処理設備3で生じた他の中濃度臭気ガスとともに中濃度脱臭塔80及び活性炭吸着塔90を経て大気開放される。
【0046】
以下、脱臭装置50について詳述する。
図2(a),(b)には脱臭装置50の断面が示されている。図中、実線で示した水面は非稼働時の水面であり、脱臭処理時の水面は破線で示されている。当該脱臭装置50は、所謂スクラバー方式の脱臭装置50で、耐食金属製または樹脂製の底壁BWと上壁CWと前後左右の側壁SWによって脱臭処理空間が区画され、当該脱臭処理空間内部に設けられた耐食金属製または樹脂製の複数の仕切壁52(52A,52E,52G,52H)によって、当該脱臭処理空間が脱臭処理部51A、飛沫除去部51B、排気部51C、排液部51Dに領域区画されている。
【0047】
左側壁LSWの上下中央部から延出し右側壁RSWに向けて斜め下方に傾斜配置された仕切壁52A,52Hによって下方に位置する脱臭処理部51Aと上方に位置する排気部51Cに領域区画され、鉛直姿勢に配置された仕切壁52Eによって左方に位置する脱臭処理部51Aと右方に位置する飛沫除去部51Bに領域区画され、仕切壁52Gによって左方に位置する飛沫除去部51Bと右方に位置する排液部51Dに領域区画されている。
【0048】
脱臭処理空間のうち脱臭処理液が貯留される脱臭処理部51A、飛沫除去部51B及び排液部51Dを構成する部位が処理槽51となる。
【0049】
左側壁LSWのうち仕切壁52Aとの当接部位より下方位置に脱臭対象ガスを投入する給気口G1が形成され、排気部51Cの下流側に位置する上壁CWに排気口G2が形成されている。また、底壁BWのうち左側壁LSW側に脱臭処理液を供給する給液口L1が形成され、排液部51Dの下部に脱臭処理後の脱臭処理液を排出する排液口L2が形成されている。さらに、給液口L1と排液口L2との中間位置にはメンテナンス時などに脱臭処理液を処理槽51内から排出するためのドレン口L3が形成されている。ドレン口L3にはドレンバルブが配されている。
【0050】
脱臭処理部51Aには、左側壁LSWから順に4枚の仕切壁52B,52C,52D,52Eが鉛直姿勢となるように設置されている。給液口L1から処理槽51内に注入された脱臭処理液が通流可能なように、各仕切壁52B,52C,52D,52E,52Gの下端と底壁BWとの間には隙間が形成されている。
【0051】
各仕切壁52B,52C,52D,52E,52Gは幅方向両端部(図中、手前側端部及び奥行側端部)が手前側及び奥行側の両側壁SWに当接するように設置され、仕切壁52B,52Dは仕切壁52Aから下方に延出するように配され、仕切壁52C,52Eは仕切壁52Aとの間に隙間が形成されるように配されている。また、仕切壁52Gの上端は排気部51Cを流れる脱臭対象ガスが排液部51Dに流入しないように右側壁RSWに当接固定され、仕切壁52Gの下端は脱臭処理液で液封されている。
【0052】
左側壁LSWと仕切壁52A及び仕切壁52B(仕切壁52Bから底壁BWへの仮想延出壁を含む)で区画される空間、及び、仕切壁52Cと仕切壁52A及び仕切壁52D(仕切壁52Dから底壁BWへの仮想延出壁を含む)で区画される空間がそれぞれガス導入室53となり、仕切壁52Bと仕切壁52A及び仕切壁52C(仕切壁52Cから仕切壁52Aへの仮想延出壁を含む)で区画される空間、及び、仕切壁52Dと仕切壁52A及び仕切壁52E(仕切壁52Eから仕切壁52Aへの仮想延出壁を含む)で区画される空間がそれぞれ気液混合室54となる。
【0053】
排液部51Dには鉛直姿勢の溢流壁52Iが設けられ、仕切壁52Gの下端から流入する脱臭処理後の脱臭処理液が溢流壁52Iを溢流した後に排液口L2から排液される。
【0054】
排液部51Dには溢流壁52Iによる溢流高さを調整する溢流高さ調整機構が設けられ、給液口L1から流入し処理槽51に貯留される脱臭処理液の液量を調整可能に構成されている。
【0055】
溢流高さ調整機構は、底壁BWに立設された基部56Cと基部56Cの幅方向に隔てた二箇所に形成された取付孔と、当該取付孔と溢流壁52Iに形成された上下方向の長孔を固定するボルト及びナットでなる締結機構で構成され、長孔に沿って溢流壁52Iの取付位置を調整することにより上下高さが調整される。なお、基部56Cと溢流壁52Iはともに両端部(図中、手前側端部及び奥行側端部)が手前側及び奥行側の両側壁SWに当接するように設置されている。
【0056】
また、溢流高さ調整機構により調整された溢流高さより低位となるように気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さを調整する気液混合仕切壁高さ調整機構を備えている。
【0057】
気液混合仕切壁高さ調整機構も溢流高さ調整機構と同様の構成が採用され、図3(a),(b)に示すように、仕切壁52Aに立設された基部56A,56Bと基部56A,56Bの幅方向に隔てた二箇所に形成された取付孔H1と、当該長孔H1と気液混合仕切壁52B,52Dに形成された上下方向の長孔H2とを固定するボルト及びナットでなる締結機構Fで構成され、長孔H2に沿って気液混合仕切壁52B,52Dの取付位置を調整することにより上下高さが調整される。
【0058】
溢流高さ調整機構により溢流壁52Iの高さを上下調節することにより、処理槽51に貯留される脱臭処理液の容量が、脱臭対象ガスの臭気濃度に対応した適量に調整され、装置全体の差圧を調整することができ、脱臭対象ガスの濃度に対応した装置全体の液の巻き上がり量を調整することができる。その調整量に応じて気液混合仕切壁高さ調整機構により気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さが適切に調整される。
【0059】
即ち、脱臭対象ガスの臭気濃度が高い場合には、溢流壁52Iの高さを上方に調節して処理槽51に貯留される脱臭処理液の容量を増し、それに応じて液面が上下に脈動することなく適切に気液混合されるように気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さを調整し、脱臭対象ガスの臭気濃度が低い場合には、溢流壁52Iの高さを下方に調節して処理槽51に貯留される脱臭処理液の容量を減らし、応じて液面が上下に脈動することなく適切に気液混合されるように気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さを調整する。
【0060】
気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さを適切に調整することで、ガス導入室53と気液混合室54の差圧を調整でき、その結果、気液混合室54での液の巻き上がり具合を調整でき、気液混合効率つまり脱臭効率を最大限調整することができる。なお、主に下流側の気液混合仕切壁52Dの高さ調節により液面の脈動を効果的に低減できる。
【0061】
気液混合室54で十分な量の脱臭処理液が巻き上がる良好な気液混合状態では、脱臭処理時の前段のガス導入室53の圧力PAと、初段の気液混合室54及び後段のガス導入室53の圧力PBと、後段の気液混合室54及び排気部51Cの圧力PCとの間に、PA-PB=PB-PCの関係が成立する。なお、圧力PAは臭気ガスを装置に導く送風ファンによる押込み圧力で、ある程度変動する値であり、圧力PCは脱臭後処理ガスが装置から放出される大気圧または吸引用ブロワーファンによる吸引圧力であり、ほぼ一定値である。
【0062】
気液混合仕切壁52Bの下端高さを調整することにより、前段のガス導入室53の圧力PAを安定な値に調整することができ、その後にPA-PB=PB-PCの関係になるように気液混合仕切壁52Dの下端高さを調整することにより、良好な気液混合状態が得られるようになる。
【0063】
気液混合仕切壁52Dの下端高さが適正であるか否かは、前後の気液混合室54,54の脱臭処理液の巻き上り状態を目視確認し、或いは圧力計を用いて圧力PA,PB,PCの値を計測した値に基づいて判断することができる。
【0064】
図2(a)は、脱臭対象ガスの臭気濃度が高い場合に、溢流高さ調整機構により溢流壁52Iが高い位置に調整され、処理槽51に貯留される脱臭処理液の液量が多く調整された場合が示され、図2(b)は、脱臭対象ガスの臭気濃度が低い場合に、溢流高さ調整機構により溢流壁52Iが低い位置に調整され、処理槽51に貯留される脱臭処理液の液量が少なく調整された場合が示されている。
【0065】
脱臭対象ガスの臭気濃度に応じて溢流高さ調整機構により溢流壁52Iの高さが調整され、気液混合仕切壁高さ調整機構により気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さが調整された後に、給気口G1から脱臭対象ガスが供給されて脱臭処理が行なわれる。図2(a)の状態で脱臭対象ガスが供給された場合を図4に示し、図2(b)の状態で脱臭対象ガスが供給された場合を図5に示す。
【0066】
図4及び図5に示すように、処理槽51内に脱臭処理液が貯留された状態で、給気口G1から上流側のガス導入室53に脱臭対象ガスが圧入されると、脱臭対象ガスは脱臭処理液の液面つまり気液境界面を押し下げて、仕切壁52Bの下端から脱臭処理液とともに上流側の気液混合室54に巻き上がる。
【0067】
このとき、気液混合室54では、脱臭対象ガスによって小さな水滴となって巻き上げられた脱臭処理液と脱臭対象ガスとの接触が促進されて効率的に気液混合され、脱臭対象ガス中の臭気成分、水蒸気、微粒子などが脱臭処理液に捕捉されることにより脱臭処理される。
【0068】
さらに、上流側の気液混合室54から水滴となった脱臭処理液を伴って脱臭対象ガスが下流側のガス導入室53に導かれると、同様に脱臭対象ガスが脱臭処理液の液面を押し下げて仕切壁52Dの下端から脱臭処理液とともに下流側の気液混合室54に巻き上がり、上述と同様にして再度脱臭処理される。即ち、仕切壁52B,52Dがガス導入室53と気液混合室54とを区画する気液混合仕切壁52B,52Dとなる。
【0069】
図3(a),(b)に示すように、気液混合仕切壁52B,52Dの下端面520には、厚み方向に沿う方向に複数の溝部521が形成され、下端面520が水平姿勢から僅かに傾斜姿勢となるような場合でも、幅方向に沿って均質なスクラビングが実現されるように構成されている。
【0070】
気液混合仕切壁52B,52Dの下端面520が平坦な形状であれば、下端面520の長手方向の姿勢が水平な液面に対して僅かに傾斜すると、下端面520と液面との間隙の大きい領域から脱臭対象ガスが漏洩して均質なスクラビングが損なわれ脱臭効率が低下する虞があるためである。
【0071】
図3(a),(b)では、溝部521の形状が気液混合仕切壁52B,52Dの厚み方向に沿って直線状に形成されているが、脱臭対象ガスが液混合仕切壁52B,52Dの幅方向に沿って均質に通流するような溝部であれば、その形状は特に限定されることはない。また、溝の深さも特に限定されるものではない。例えば、気液混合仕切壁52B,52Dの下端面520がランダムな凹凸形状に加工され、凹部が連なって溝部が形成されるような構造であってもよい。
【0072】
図4及び図5に戻り、気液混合室54で脱臭処理された脱臭対象ガスは、飛沫除去部51B及び排気部51Cを通過して排気口G2から外部空間に排気される。飛沫除去部51Bには、天板延出部52Hと、第1鉛直案内壁52Fと、第2鉛直案内壁としての仕切壁52Eを備えている。
【0073】
天板延出部52Hは給気口G1の上部から下方に傾斜する傾斜天板である仕切壁52Aの先端に延出形成され、第1鉛直案内壁52Fは天板延出部52Hの先端から鉛直下方に100mm程度延出するように設置され、第2鉛直案内壁52Eは第1鉛直案内壁52Fと気液混合仕切壁52Dとの間に設置されている。
【0074】
下流側の気液混合室54で気液混合され、脱臭処理液の飛沫を伴った脱臭対象ガスが、天板延出部52Hと第1鉛直案内壁52Fと第2鉛直案内壁52Eで構成されるUターン流路に沿って上方から脱臭処理液の液面に向って流れる際に、各壁面に衝突して飛沫が付着し、或いは脱臭処理液に向って飛沫が落下することにより効率的に飛沫が回収される。
【0075】
その結果、脱臭対象ガスの排気流路となる排気部51Cに付着堆積する飛沫の量が低減され、汚れによる流路の閉塞などの不都合な事態の発生を回避できるようになる。なお、飛沫除去部51Bとして第2鉛直案内壁52Eを備えていない場合でも、飛沫を伴う脱臭対象ガスが第1鉛直案内壁52Fに衝突することにより、相当程度の飛沫回収が可能になることは言うまでもない。
【0076】
飛沫除去部51Bを通過した脱臭対象ガスは、仕切壁52A及び天板延出部52Hと傾斜壁52Jで構成されるUターン流路を経て排気口G2から外部空間に排気される。
【0077】
仕切壁52A及び天板延出部52Hは、水平面に対して先端側が5°~8°下方に傾斜するように直線状に延出形成され、その上方に右側壁RSWから左側壁に向って下方に延びるように先端側が5°~8°下方に傾斜する傾斜壁52Jが形成されている。
【0078】
処理槽51へ収容される脱臭処理液の流入量が大きく変動しない状況下で、脱臭対象ガスの圧力によってガス導入室53側の液面が下降すると、気液混合室54の液面が相対的に上昇して気液混合室54側の液面上昇により相対的に水頭が上がり、気液混合室54側の水頭が上昇するとガス導入室53側の液面を上昇させる圧力が作用する。このような現象が周期的に繰り返し発生すると、ガス導入室側の液面が継続的に大きく上下変動する脈動が生じて、気液混合室54での脱臭処理液の飛沫状の巻き上がりが少なくなったり、ガスが気液混合仕切壁の下部からショートパスしたりして良好な気液混合が行なわれず、脱臭効率が大きく低下する虞がある。
【0079】
そこで、脱臭処理中のガス導入室53の液面の下方であって、気液混合仕切壁52B,52Dの下端より深い位置に整流機構55が設けられている。当該整流機構55は、液面と略平行姿勢に配された平坦な板状の整流板55A,55Bで構成されている。当該整流板55A,55Bは、各ガス導入室53の左右幅と略同一幅に形成され、処理槽51の奥行き方向に沿って全域に配置されるように両端部が手前側及び奥行側の両側壁SWに当接するように設置されている。
【0080】
整流板55A,55Bは、気液混合仕切壁52B,52Dの下端より120mm以上の深さ位置で水没するように設置されていることが好ましい。さらには、気液混合仕切壁52B,52Dの下端より130mmの深さ、少なくとも130±10mmの深さの範囲に配置されていることがより好ましく、ガス導入室53の液面の上下変動が効果的に抑制されるようになる。
【0081】
本実施形態では、処理槽51の底部から気液混合仕切壁52Bの下端までの距離D1が250mmに設定されており、整流板55Aは処理槽51の底部から気液混合仕切壁52Bの下端までの距離の48%の深さD2、少なくとも48±4%の深さの範囲に設定されていることが好ましい(図2(a)参照。)。
【0082】
また、処理槽51の底部から気液混合仕切壁52Dの下端までの距離D3が395mmに設定され、整流板55Bは処理槽51の底部から気液混合仕切壁52Dの下端までの距離の67%の深さD4、少なくとも67±2.5%深さの範囲に設定されていることが好ましい(図2(a)参照。)。
【0083】
整流機構55を設けることにより、各のガス導入室53側の液面が下降する際に、ガス導入室53内で気液混合仕切壁52B,52Dの各下端より深い位置に配された整流機構55により脱臭処理液及び脱臭対象ガスが液面に沿う横方向に整流されるので、各気液混合室54で液面を押し上げるような脱臭処理液への圧力の伝達が抑制されるようになる。なお、整流機構55が気液混合仕切壁52B,52Dの鉛直下方よりも下流の気液混合室54側に延出し過ぎると、気液混合室54全体での脱臭が上手くいかなくなり、脱臭効率が低下する。
【0084】
整流機構55として整流板55A,55Bを設ける場合には、ガス導入室53側の液面が脱臭対象ガスの圧力によって押し下げられる際に整流板55A,55Bより下方に存在する脱臭処理液への圧力の伝達が抑制され、また反対に脱臭処理液の圧力によってガス導入室53側の液面が上昇する際に整流板55A,55Bより下方に存在する脱臭処理液への圧力の伝達が抑制されるようになる。整流板55A,55Bより下方に存在する脱臭処理液が、ガス導入室53または気液混合室54の液面を上昇または下降させる圧力の伝達を抑制する緩衝層として機能する結果、ガス導入室53または気液混合室54の液面の上下変動が効果的に抑制されるようになる。
【0085】
また、本実施形態のように、ガス導入室53と気液混合室54を脱臭対象ガスの流れ方向に沿って二段以上の複数段設ける場合には、気液混合仕切壁52B,52Dのうち下流側の気液混合仕切壁52Dの下端が上流側の気液混合仕切壁52Bの下端より一定距離以上高位となるように設定され、整流板55A,55Bが各ガス導入室53の液面の下方に設けられることが好ましい。
【0086】
ガス導入室53と気液混合室54を脱臭対象ガスの流れ方向に沿って複数段設けることにより、スクラビングの機会が増して脱臭効率を向上させることができるようになる。この様な構成を採用すると、脱臭対象ガスの流れ方向に沿って下流側に位置するガス導入室ほど脱臭対象ガスの圧力が低下して液面が上昇することになる。
【0087】
そのような場合でも、気液混合仕切壁高さ調整機構により気液混合仕切壁52B,52Dの下端高さが適切に調整される結果、それぞれのガス導入室と気液混合室の差圧が略同一になり、それぞれの気液混合室での液の巻き上がり具合が等しくなり、それぞれの気液混合効率つまり脱臭効率を最大限にでき、装置全体の脱臭効率を最大限にできる。そして、下流側の気液混合仕切壁52Dの下端が上流側の気液混合仕切壁52Bの下端より一定距離以上高位となるように設定されていれば、下流側の気液混合室53でも良好なスクラビング処理が行なえるようになる。
【0088】
既に図4及び図5に示した様に、給液口L1は、処理槽51を構成する壁部のうち、最上流側のガス導入室53に対向する左側壁LSWまたは底壁BWであって整流板55Aより下方に備えている。そのため、給液口L1から供給される脱臭処理液の圧力に変動があっても、整流板55Aによって圧力変動の液面への伝達が緩衝され、液面の上下変動が抑制される。
【0089】
上述した脱臭装置50の給気口G1から220±20mmAq、28m/分の脱臭対象ガスを流入させた場合に、整流板55A,55Bを設けていない場合には最大11mmの液面の上下変動が生じるが、整流板55A,55Bを設けることにより80%程度低減した約2mm程度の液面の上下変動に抑制でき、圧損も14%程度低減した199mmAqに抑制でき、良好なスクラビング処理が実現できることが判明している。その結果、脱臭装置50、ブロワーファン、ダクトなどに振動によるダメージが生じる虞も無くなった。
【0090】
図6(a),(b)には脱臭装置50の別実施形態が示されている。
図6(a)は、排気部51Cに傾斜壁52Jが無く、飛沫除去部51Bを通過した脱臭対象ガスが、仕切壁52A及び天板延出部52Hと上壁CWとの間の流路を経て上壁CWの左側端部に備えた排気口G2から外部空間に排気されるように構成された例である。
【0091】
図6(b)は、脱臭処理部51Aが単一のガス導入室53と気液混合室54で構成された例である。
【0092】
上述した実施形態では、気液混合室と排気部との間に、脱臭処理後の脱臭対象ガスに同伴する飛沫を脱臭処理液の液面に導く飛沫回収案内板を備えた構成を説明したが、気液混合室で気液混合されて脱臭処理された脱臭対象ガスに同伴する飛沫の回収目的に絞れば、脱臭装置に飛沫回収案内板を備えていれば十分であり、上述した整流板55A,55Bを備えていない脱臭装置であってもよいし、また気液混合仕切壁高さ調整機構を備えていない脱臭装置であってもよい。
【0093】
上述した実施形態では、気液混合仕切壁の下端高さを調整する気液混合仕切壁高さ調整機構を備えた構成を説明したが、気液混合室での液の巻き上がり具合を調整して気液混合効率を高める目的に絞れば、脱臭装置に気液混合仕切壁高さ調整機構を備えていれば十分であり、上述した整流板55A,55Bを備えていない脱臭装置であってもよいし、また飛沫回収案内板を備えていない脱臭装置であってもよい。
【0094】
が飛沫回収案内板によって脱臭処理液の液面に導かれて脱臭処理液に回収されるようになり、脱臭対象ガスの排気流路に飛沫が付着堆積することによる汚れが抑制され、流路が閉塞するような事態の発生が回避できるようになる。
【0095】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的な構造、サイズ、材料などは本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
50:脱臭装置
51:処理槽
51A:脱臭処理部
51B:飛沫除去部
51C:排気部
51D:排液部
53:ガス導入室
54:気液混合室
52B,52D:気液混合仕切壁
52G:遮断壁
52I:溢流壁
55A,55B:整流機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6