(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】熱交換器、室外側熱交換機、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20220623BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20220623BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220623BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20220623BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F1/02 B
F28D1/053 A
F28F1/32 B
F25B39/00 E
(21)【出願番号】P 2018019795
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】法福 守
(72)【発明者】
【氏名】平田 匠弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚毅
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-133075(JP,A)
【文献】特開2004-198021(JP,A)
【文献】特開2008-138917(JP,A)
【文献】特開2005-121317(JP,A)
【文献】特開2002-130979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 1/02
F28D 1/053
F28F 1/32
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚が厚さ方向に並んで配置されるフィンと、
前記各フィンと接合され、横断面形状は外形が扁平形状をなし
、前記外形の長手方向に向かって複数の第1小分け流路
に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第1隔壁によって分割されている複数本の伝熱管と、
前記複数本の伝熱管の両端部にそれぞれ接合され、当該複数本の伝熱管を流れる流体を集合させ又は分配する内部空間を有する一対のヘッダ集合管とを備え、
前記ヘッダ集合管は
、長手方向に向かって複数の第2小分け流路に
流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第2隔壁によって分割されていて、前記各第2小分け流路と前記各第1小分け流路とは1対
1で対応して
おり、
前記ヘッダ集合管には、前記伝熱管を差し込んで接合するための孔が設けられ、
前記孔において、それぞれの前記第1隔壁の先端は、複数の前記第2隔壁のうちいずれかに突き合わされており、
それぞれの前記第1小分け流路は、複数の前記第2小分け流路のうちのいずれか1つに連通していることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ヘッダ集合管は、横断面形状の外形が扁平形状をなしていて前記第2小分け流路は当該外形の長手方向に向かって並んでいることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
側部に吸気口が形成された筺体と、
前記筺体内に収納されている請求項1又は請求項2に記載の熱交換器と、
前記吸気口を介して外気を取り入れて前記熱交換器に吹き付ける送風機とを備えることを特徴とする室外機。
【請求項4】
室内機と、
前記室内機と冷媒配管で接続されている請求項3に記載の室外機と、
前記冷媒配管に接続され冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記冷媒配管に接続され冷媒を減圧する膨張弁とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項5】
横断面形状は外形が扁平形状をなし
、前記外形の長手方向に向かって
複数の第1小分け流路
に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第1隔壁によって分割されている複数本の伝熱管と、当該複数本の伝熱管の両端部にそれぞれ接合されて、複数本の伝熱管を流れる流体を集合させ又は分配するための内部空間を有し
、長手方向に向かって複数の第2小分け流路に
流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第2隔壁によって分割されているヘッダ集合管と、前記伝熱管に接合される複数枚のフィンとを準備する準備工程と、
前記各伝熱管を複数個の孔が形成された前記複数枚のフィンの当該各孔に挿通するフィン挿通工程と、
前記ヘッダ集合管の側部の複数個所に前記伝熱管を差し込んで接合するための孔を形成する孔形成工程と、
前記ヘッダ集合管の各孔に前記伝熱管を差し込
み、当該各孔において、それぞれの前記第1隔壁の先端を複数の前記第2隔壁のうちいずれかに突き合わせる伝熱管差込工程と、
前記フィン挿通工程及び前記伝熱管差込工程後に、前記フィンと前記伝熱管及び前記伝熱管と前記ヘッダ集合管を接合するようにロウ付けする接合工程とを備え、
前記各第2小分け流路と前記各第1小分け流路とは1対
1で対応するように
し、
それぞれの前記第1小分け流路が、複数の前記第2小分け流路のうちのいずれか1つに連通するようにしたことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程は、前記伝熱管として前記ヘッダ集合管の孔に差し込む先端部がテーパ状をなしているものを準備し、
前記伝熱管差込工程は、前記テーパ状の先端部を前記ヘッダ集合管の孔に差し込むことを特徴とする請求項5に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、室外側熱交換機、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平2016-125748号公報(特許文献1)がある。この公報には、「室外熱交換器の折返しヘッダ集合管の上昇用空間に対して上下に所定の間隔で複数の扁平多穴管が接続されている。上昇用空間と下降用空間は、上方で上部連通路を介して連通し、下方で下部連通路を介して連通している。上昇用開口を通過して上昇用空間を上昇した冷媒は、上昇用空間に接続されている複数の扁平多穴管のうち最上段における扁平多穴管と上から2番目の扁平多穴管との間の高さ位置に下縁部を有する上部連通路を介して下降用空間側に流れた後、下部連通路を介して再度上昇用空間の下方に戻されることでループする。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の技術では、ヘッダ集合管における扁平管の接続側の第1空間と、これとは反対側の第2空間とを仕切る仕切部材が設けれ、当該仕切部材の上下には上部連通路及び下部連通路が形成されている。そして、冷媒を上部連通路及び下部連通路を介して第1空間と第2空間との間で循環させることで、冷媒を効率よく各扁平管に分配供給しようとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、熱交換器の製造コストが過大なものとなってしまう不具合がある。
そこで、本発明は、低製造コストでヘッダ集合管から各伝熱管に適切に冷媒を分配することができる熱交換器、室外側熱交換機、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一形態である熱交換器は、複数枚が厚さ方向に並んで配置されるフィンと、前記各フィンと接合され、横断面形状は外形が扁平形状をなし、前記外形の長手方向に向かって複数の第1小分け流路に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第1隔壁によって分割されている複数本の伝熱管と、前記複数本の伝熱管の両端部にそれぞれ接合され、当該複数本の伝熱管を流れる流体を集合させ又は分配する内部空間を有する一対のヘッダ集合管とを備え、前記ヘッダ集合管は、長手方向に向かって複数の第2小分け流路に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第2隔壁によって分割されていて、前記各第2小分け流路と前記各第1小分け流路とは1対1で対応しており、前記ヘッダ集合管には、前記伝熱管を差し込んで接合するための孔が設けられ、前記孔において、それぞれの前記第1隔壁の先端は、複数の前記第2隔壁のうちいずれかに突き合わされており、それぞれの前記第1小分け流路は、複数の前記第2小分け流路のうちのいずれか1つに連通していることを特徴とする。
【0007】
本発明の別の一形態である熱交換器の製造方法は、横断面形状は外形が扁平形状をなし、前記外形の長手方向に向かって複数の第1小分け流路に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第1隔壁によって分割されている複数本の伝熱管と、当該複数本の伝熱管の両端部にそれぞれ接合されて、複数本の伝熱管を流れる流体を集合させ又は分配するための内部空間を有し、長手方向に向かって複数の第2小分け流路に流体が分かれて流れるように、その流路が複数の第2隔壁によって分割されているヘッダ集合管と、前記伝熱管に接合される複数枚のフィンとを準備する準備工程と、前記各伝熱管を複数個の孔が形成された前記複数枚のフィンの当該各孔に挿通するフィン挿通工程と、前記ヘッダ集合管の側部の複数個所に前記伝熱管を差し込んで接合するための孔を形成する孔形成工程と、前記ヘッダ集合管の各孔に前記伝熱管を差し込み、当該各孔において、それぞれの前記第1隔壁の先端を複数の前記第2隔壁のうちいずれかに突き合わせる伝熱管差込工程と、前記フィン挿通工程及び前記伝熱管差込工程後に、前記フィンと前記伝熱管及び前記伝熱管と前記ヘッダ集合管を接合するようにロウ付けする接合工程とを備え、前記各第2小分け流路と前記各第1小分け流路とは1対1で対応するようにし、それぞれの前記第1小分け流路が、複数の前記第2小分け流路のうちのいずれか1つに連通するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低製造コストでヘッダ集合管から各伝熱管に適切に冷媒を分配することができる熱交換器、室外熱交換機、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置を示す冷凍サイクル系統図である。
【
図2】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の天板を外した状態の室外機の内部を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置における
図2の室外側熱交換器の変形例となる室外側熱交換器の上面図である。
【
図4】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるフィンと扁平伝熱管との接合構造を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管の横断面図である。
【
図7】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管と扁平伝熱管との接続部を示すヘッダ集合管の一部の正面図である。
【
図9】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管と扁平伝熱管との接続部の横断面図である。
【
図10】本発明の一実施例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管と扁平伝熱管との接続部の縦断面図である。
【
図11】本発明の一実施例である熱交換器の製造方法の孔形成工程を説明するヘッダ集合管の一部の斜視図である。
【
図12】本発明の一実施例である熱交換器の製造方法の接合工程を説明するヘッダ集合管と扁平伝熱管の一部の斜視図である。
【
図13】本発明の一実施例の変形例である冷凍サイクル装置の室外側熱交換器におけるヘッダ集合管と扁平伝熱管との接続部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は本実施例の冷凍サイクル装置100を示す冷凍サイクル系統図である。この冷凍サイクル装置100は、空気調和機の例であり、室外機1と室内機2とを備えていて、室外機1と室内機2は冷媒配管(液側接続配管3とガス側接続配管4)により接続されている。
【0011】
室外機1には、アキュムレータ5、圧縮機6、四方弁7、室外側熱交換器8及び第1膨張弁9などが液側接続配管3及びガス側接続配管4等の配管に接続されて設けられている。また、液側接続配管3と接続される液阻止弁10及びガス側接続配管4と接続されるガス阻止弁11が設けられている。
室内機2には、室内側熱交換器12及び第2膨張弁13などが設けられている。
【0012】
冷凍サイクル装置100で冷房運転を行う場合の動作について説明する。圧縮機6で圧縮された高温高圧のガス冷媒は冷凍機油とともに圧縮機6から吐出され、その後、四方弁7を経て、室外側熱交換器8へと流入して、ここで室外空気等と熱交換して凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は全開とされた第1膨張弁9を通り、液阻止弁10及び液側接続配管3を経て、室内機2へ送られる。室内機2に流入した液冷媒は、第2膨張弁13で減圧されて膨張して、低温・低圧の気液二相流となって、室内側熱交換器12に入り、ここで室内空気等の利用側媒体と熱交換して利用側媒体を冷却するとともに、自らは蒸発気化する。その後、ガス冷媒はガス側接続配管4を通り、ガス阻止弁11、四方弁7、アキュムレータ5を経て圧縮機6へ戻るという冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルの余剰冷媒はアキュムレータ5に貯留され、冷凍サイクルの運転圧力、温度が正常な状態に保たれるように構成されている。
【0013】
冷凍サイクル装置100は、暖房運転を行う場合には次のように動作する。圧縮機6で圧縮された高温高圧のガス冷媒は冷凍機油とともに圧縮機6から吐出され、四方弁7、ガス阻止弁11、ガス側接続配管4を経て室内機2の室内側熱交換器12へ流入して、ここで室内空気等の利用側媒体と熱交換して利用側媒体を加熱し、自らは凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は、液側接続配管3、液阻止弁10を経て、第1膨張弁9で減圧され、室外側熱交換器8で室外空気等の熱源媒体と熱交換して蒸発気化する。蒸発気化した冷媒は四方弁7、アキュムレータ5を経て圧縮機6へ戻るという冷凍サイクルを構成する。
【0014】
図1に示す室外機1に設けられている室外側熱交換器8(熱交換器)などは、通常、筺体内部に設置されている。
図2は、天板を外した状態の室外機1の内部を示す平面図である。室外機1の筺体20は、天板(図示せず)と、底板21と、側板22~25を備えており、その内部空間は仕切り板26により、熱交換室31と機械室32に区画されている。熱交換室31には室外側熱交換器8と送風機30が配置され、機械室32にはアキュムレータ5や圧縮機6などが配置されている。側板22~25は、機械室側前側板22、機械室側後側板23、熱交換室側前側板24及び熱交換室側後側板25である。機械室32は機械室側前側板22、機械室側後側板23及び仕切り板26で構成されている。一方、熱交換室31は、熱交換室側前側板24と熱交換室側後側板25とを備え、さらに、機械室側後側板23と熱交換室側後側板25の間、及び熱交換室側前側板24と熱交換室側後側板25の間にそれぞれ設けた吸気口27,28を備えている。吸気口27,28は空気の吸い込み口である。さらに、熱交換室側前側板24には、室外側熱交換器8により熱交換された空気を室外機1の前面から排出させるための排気口29が設けられている。このような構造により、送風機30によって、室外機1の背面及び側面に設けられた吸気口27,28から吸い込んだ空気と冷媒とを室外側熱交換器8により熱交換した後、室外機前面に設けられた排気口29から室外機1の外に排出させることができる。
【0015】
図1及び
図2に示す冷凍サイクル装置(空気調和機)100における室外側熱交換器8は、本実施例では、アルミニウム(以下、アルミニウム合金を含む)製の2本のヘッダ集合管41と、ヘッダ集合管42とを備えている。また、ヘッダ集合管41と、ヘッダ集合管42との間に上下方向に配列され、一端が一方のヘッダ集合管41に連結されていて、他端が他方のヘッダ集合管42に連結されたアルミニウム製の複数の扁平伝熱管43(伝熱管)を備えている。さらに、扁平伝熱管43に接合されたアルミニウム製の複数のフィン44を備えている。
図2の例の室外側熱交換器8は、吸気口27,28に沿うようにL字型に屈曲して筺体20に配置されている。
【0016】
また、
図3は
図2の室外側熱交換器8の変形例となる室外側熱交換器8aの上面図である。この室外側熱交換器8aは、上面視で略コ字形に屈曲した2枚の熱交換器8a1,8a2を重ね合わせて形成されている。各熱交換器8a1,8a2を上面視で略コ字形に屈曲させることで、
図2の上面視L字形の室外側熱交換器8よりも外気との接触面積を増やし、熱交換効率を高めることができる。また、2枚の熱交換器8a1,8a2を用いることで、室外側熱交換器8aと外気との接触面積を略2倍に増やすことができて、この点でも室外側熱交換器8よりも外気との接触面積を増やし、熱交換効率を高めることができる。なお、室外側熱交換器8aを1枚の熱交換器で構成してもよい。
【0017】
このように、
図2の室外側熱交換器8としては室外側熱交換器8aを用いてもよいが、以下では、室外側熱交換器8の例で本実施例の特徴的な技術内容について説明する。
【0018】
ところで、前記の特許文献1の技術では、ヘッダ集合管を製造するためには次のような工程が必要になる。まず、ヘッダ集合管における扁平管の接続側の第1空間と、これとは反対側の第2空間とを仕切る仕切部材を押出し成形で形成する必要がある。その上で、仕切部材の上下には上部連通路及び下部連通路を形成する。そして、横断面が半円形状で当該半円形の直線部が開口しているヘッダ集合管となる湾曲した長尺状の板材を用意し、その長手方向の上下に天板及び底板をそれぞれ接合する。次に、この湾曲した板材の内部に前記した仕切部材を接合する。次に、仕切部材接合後の湾曲した板材の開口部に平板材を接合することで横断面が半円形状のヘッダ集合管を製造することができる。
このように前記の特許文献1ではヘッダ集合管を製造する工程が多く、ヘッダ集合管、ひいては熱交換器の製造コストが増大してしまう。
【0019】
以下では、製造コストを低減しつつも、ヘッダ集合管41,42から各扁平伝熱管43に適切に冷媒を分配することができる室外側熱交換器8の構造や製造方法について説明する。
【0020】
図4は、室外側熱交換器8の斜視図である。
図4においては、
図2に図示するようなL字形やコ字形のような曲がりは省略して室外側熱交換器8を図示しており、各扁平伝熱管43の並びや扁平伝熱管43の軸方向は直線状である。室外側熱交換器8は、ヘッダ集合管41と、ヘッダ集合管42と、複数の扁平伝熱管43と複数のフィン44を備えており、何れも例えばアルミニウム製の部材であって、お互いにロウ付けにより接合されている。
【0021】
図5は、フィン44と扁平伝熱管43との接合構造を示す斜視図である。
図4では、フィン44と扁平伝熱管43との接合構造の上部部分のみを図示している。フィン44は、例えば矩形状の縦長の板材であり、その厚さ方向に多数枚が並んでいる。この各フィン44の上下方向には扁平伝熱管43が挿通する横長の孔44aが扁平伝熱管43の本数の数だけ並んで形成されている。各フィン44の各孔44aには、各扁平伝熱管43が挿通されていて、両者はロウ付けにより接合され、各孔44aの周囲にはフィレット44bが形成されている。
【0022】
扁平伝熱管43は、その横断面形状の外形が、上下に薄い扁平形状をなし、左右端部が例えば円弧形状をしている。扁平伝熱管43の流路43aは、複数(
図5の例で5本)の隔壁43b(第1隔壁)によって前記外形の長手方向に向かって略均等間隔に仕切られて分割されている。この隔壁43bで仕切られた各流路は、それぞれ小分け流路43c(第1小分け流路)をなす。
【0023】
図6は、ヘッダ集合管41,42の横断面図である。
図4に示すように、一対のヘッダ集合管41とヘッダ集合管42は、両端が閉塞された細長い扁平筒状に形成されており、本実施例の場合、その横断面の外形形状は、前記の扁平伝熱管43と略同様である。しかし、本発明は係る形状に限定されるものではなく、ヘッダ集合管41,42の横断面形状は、長方形や半円形等であってもよい。ヘッダ集合管41とヘッダ集合管42は、長手方向が垂直方向となる。ヘッダ集合管42の平坦な一側部には各扁平伝熱管43の一端部がヘッダ集合管42の上下の長手方向に並べて接続されている。また、ヘッダ集合管41の平坦な一側部には各扁平伝熱管43の他端部がヘッダ集合管41の上下の長手方向に並べて接続されている(
図4においては見えないが、ヘッダ集合管42の例と同様である。)。ヘッダ集合管42には、ガス冷媒の出入り口となるアルミニウム製のガス管45がヘッダ集合管41の上側に接続されている。また、ヘッダ集合管42には、液冷媒の出入り口となるアルミニウム製の液管46がヘッダ集合管42の下側に接続されている。
ヘッダ集合管41とヘッダ集合管42は、各扁平伝熱管43を流れる流体となる冷媒を集合させ又は分配する内部空間を有する。
【0024】
ヘッダ集合管41,42は、
図6に示すように、その横断面形状の外形が、扁平形状をなし、左右端部が例えば円弧形状をしている。ヘッダ集合管41,42の流路41a,42aは、複数(
図6の例で7本)の隔壁41b,42b(第2隔壁)によって前記外形の長手方向に向かって両端部の空間を除いて略均等間隔に仕切られて分割されている(空間41d,42dを除く)。この41b,42bで仕切られた各流路は、それぞれ小分け流路41c,42c(第2小分け流路)をなす。ただし、小分け流路41c,42cの並びの両側端部に位置する前記空間41d,42dは、中空でもアルミニウム等の材料で埋められていてもよい。
【0025】
図7は、ヘッダ集合管41,42の縦断面図である。各小分け流路41c,42cは、ヘッダ集合管41,42の内部全体に亘って空洞となっている。ただし、ヘッダ集合管41に関しては、各小分け流路41cを高さ方向の中央部の上下に仕切る仕切り部材41eが設けられているが、ヘッダ集合管42には設けられていない。
【0026】
図8は、ヘッダ集合管41,42と扁平伝熱管43との接続部を示すヘッダ集合管41,42の一部の正面図である。扁平伝熱管43は横断面図で示している。各ヘッダ集合管41,42の一方の面には、扁平伝熱管43を接続する孔41f,42fがヘッダ集合管41,42の上下の長手方向に扁平伝熱管43の数だけ形成されている。この各孔41f,42fには扁平伝熱管43の先端部が接続され、両者はロウ付け接合されている。よって、接合部にはフィレット47が形成されている。
【0027】
図9は、ヘッダ集合管41,42と扁平伝熱管43との接続部の横断面図である。
図10は、同接続部の縦断面図である。ヘッダ集合管41,42における孔41f,42fが形成されている部分は、隔壁41b,42bも流路41a,42aの奥行きの2分の1程度が削り取られている。そして、各小分け流路41c,42cと各小分け流路43cとは1対
1で対応している。すなわち、削り取られた各隔壁41b,42bの先端部と、各隔壁43bの先端部とは突き合わされていて、ヘッダ集合管41,42の両側の最外周における隔壁41b,42bには、
図8に示す扁平伝熱管43の両端部壁43eが突き合わされている。
【0028】
次に以上のような構造の室外側熱交換器8の製造方法について説明する。室外側熱交換器8を製造するには、次の各工程を実行する。
(準備工程)
前記構成のヘッダ集合管41,42と、必要な本数の前記構成の扁平伝熱管43と、必要な枚数の前記構成のフィン44を用意する。
(フィン挿通工程)
前記準備工程終了後、各扁平伝熱管43を各フィン44の各孔44aに挿通する。
【0029】
(孔形成工程)
前記準備工程終了後、
図11に示すように、ヘッダ集合管41,42の側部の複数個所(各扁平伝熱管43を接続する箇所)に扁平伝熱管43を差し込んで接合するための孔41f,42fを形成する。この際には、前記の説明に明らかなように、隔壁41b,42bをヘッダ集合管41,42の流路41a,42aの短手方向における奥行きの2分の1程度を削り取る。
(伝熱管差込工程)
前記孔形成工程終了後、ヘッダ集合管41,42の各孔41f,42fに伝熱管を差し込む。
【0030】
(接合工程)
前記フィン挿通工程及び前記伝熱管差込工程終了後に、フィン44と扁平伝熱管43及び扁平伝熱管43とヘッダ集合管41,42をそれぞれ接合するようにロウ付けする。すなわち、予めロウ材が付与されているフィン44及び扁平伝熱管43を用いて、前記フィン挿通工程及び前記伝熱管差込工程を行う。そして、これらのヘッダ集合管41,42、扁平伝熱管43並びにフィン44の組み付けられた状態の製品を炉内に入れて加熱することにより、各部を接合する。
また、前記準備工程では、
図12に示すように、扁平伝熱管43としてヘッダ集合管41,42の孔41f,42fに差し込む先端部43gがテーパ状をなしているものを準備する。そして、前記伝熱管差込工程では、このテーパ状の先端部43gをヘッダ集合管41,42の孔41f,42fに差し込む。
【0031】
以上説明した本実施例の室外側熱交換器8によれば、室外側熱交換器8を凝縮器として用いる場合は、ガス管45からヘッダ集合管41の上部に流入したガス冷媒は上部の扁平伝熱管43を通過してフィン44により外気で冷却される。そして、当該冷媒は、ヘッダ集合管42を通過して、今度は下部の扁平伝熱管43を通過してフィン44により外気で冷却される。そして、液冷媒となり、ヘッダ集合管41の下部に流入して液管46から流出する。一方、室外側熱交換器8を蒸発器として用いる場合は、これとは冷媒の流れが逆になり、液冷媒からガス冷媒となってガス管45から流出する。
【0032】
ヘッダ集合管41,42は小分け流路41c,42cに分割され、各小分け流路41c,42cはそれぞれ各扁平伝熱管43の各小分け流路43cに対応している。そのため、冷媒は各小分け流路41c,42cに略均等に流れて、各小分け流路41c,42cを流れた冷媒は各扁平伝熱管43の特定の小分け流路43cだけを流れていき、ヘッダ集合管41,42内での冷媒の流れの偏りが少なくなる。
【0033】
また、ヘッダ集合管41,42は横断面形状が扁平形状であるため、各小分け流路41c,42cの径方向断面の面積を略均等にしやすく、よって、各小分け流路41c,42cを流れる冷媒の量も均等にし易い。
したがって、本実施例の室外側熱交換器8によれば、ヘッダ集合管41,42から各扁平伝熱管43に適切に冷媒を分配することができる。
【0034】
また、ヘッダ集合管41,42は、その軸方向を長さ方向とする隔壁41b,42bによって内部が分割されているだけで、横断面形状は長手方向のどの位置でも同じである。そのため、ヘッダ集合管41,42は、その天板及び底板、液管46及びガス管45並びに仕切り部材41eを除けば、容易に一体成形することができる。さらに、ヘッダ集合管41,42は隔壁41b,42bで分割されているので、薄肉に形成しても強度を高く維持することができるため、一体成型に必要な材料も少なくて済む。
そのため、ヘッダ集合管41,42は、低製造コストで製造することができる。
さらに、ヘッダ集合管41,42は、隔壁41b,42bで径方向断面の面積が比較的小さな複数の小分け流路41c,42cに分割されているので、冷媒の膨張圧により破損しにくい。
【0035】
その上、前記伝熱管差込工程では、扁平伝熱管43のテーパ状の先端部43gをヘッダ集合管41,42の孔41f,42fに差し込む。この状態で、両者をロウ付け接合するので、テーパ状の先端部43gと孔41f,42fとの間に断面が略逆V字形の空間が空いて扁平伝熱管43とヘッダ集合管41,42との間にフィレット47が形成されやすい。そのため、扁平伝熱管43とヘッダ集合管41,42とを強固に接合することができる。
【0036】
図13は、前記実施例の変形例となる室外側熱交換器8のヘッダ集合管41,42と扁平伝熱管43との接続部の横断面図である。本変形例が前記実施例と共通する部材等については、前記実施例と同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。
本変形例が前記実施例と相違する点は、前記のようにヘッダ集合管41,42の小分け流路41c,42cと扁平伝熱管43の小分け流路43cとが1対1で対応していない点である。すなわち、当該小分け流路41c,42cと小分け流路43cとが1対多で対応している。
図13の例では、単一の小分け流路41c,42cと3つの小分け流路43cとが対応しているが、本変形例に係る発明はこれに限定されない。単一の小分け流路41c,42cに4つ以上又は2つの小分け流路43cが対応していてもよい。
【0037】
この場合も、隔壁41b,42bが存在するので、各小分け流路41c,42cで流れる冷媒の流量を均等にし易い。また、前記実施例同様、各小分け流路41c,42cを流れる冷媒の量も均等にし易い。よって、前記実施例と同様に、ヘッダ集合管41,42から各扁平伝熱管43に適切に冷媒を分配することができる。
また、前記実施例同様に、ヘッダ集合管41,42並びに扁平伝熱管43は、低製造コストで製造することができる。
【0038】
さらに、前記実施例同様、隔壁41b,42bの存在で、ヘッダ集合管41,42は冷媒の膨張圧により破損しにくい。
なお、前記各実施例は、
図2に示す室外側熱交換器8に適用する例で説明したが、言うまでもなく、
図3に示す室外側熱交換器8aにも適用することができる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0040】
例えば、前記各実施例では本発明の熱交換器を室外側熱交換器8,8aに適用する例で説明したが、室内側熱交換器12に適用してもよい。
また、前記の各実施例は、空気調和機である冷凍サイクル装置100の例で説明したが、本発明は、自然冷媒ヒートポンプ給湯機等の他種類の冷凍サイクル装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 室外機
3 液側接続配管(冷媒配管)
4 ガス側接続配管(冷媒配管)
6 圧縮機
9 第1膨張弁(膨張弁)
8,8a 室外側熱交換器(熱交換器)
13 第2膨張弁(膨張弁)
20 筺体
30 送風機
41,42 ヘッダ集合管
41a,42a 流路
41b,42b 隔壁(第2隔壁)
41c,42c 小分け流路(第2小分け流路)
43 伝熱管(扁平伝熱管)
43a 流路
43b 隔壁(第1隔壁)
43c 小分け流路(第1小分け流路)
43g 先端部
44 フィン
100 冷凍サイクル装置