(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/27 20180101AFI20220623BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220623BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220623BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20220623BHJP
【FI】
F21S41/27
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W102:155
(21)【出願番号】P 2018020840
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】西村 将太
(72)【発明者】
【氏名】上岡 一馬
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-010817(JP,A)
【文献】特開2017-174734(JP,A)
【文献】国際公開第2016/162921(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0281948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方レンズ体と、
前記前方レンズ体の後方に配置された後方レンズ部と、
前記後方レンズ部の後方に配置され、前記後方レンズ部及び前記前方レンズ体をこの順に透過して前方に照射されてロービーム用配光パターンを形成する光を発光する光源と、を備え、
前記後方レンズ部は、前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを規定するエッジ部と、前記エッジ部と前記後方レンズ部の後端部との間に設けられ、前記後方レンズ部に入光した前記光源からの光の少なくとも一部を内面反射する反射面と、を含み、
前記エッジ部は、左カットオフラインに対応する第1エッジ部と、右カットオフラインに対応する第2エッジ部と、前記左カットオフラインと前記右カットオフラインとを接続する斜めカットオフラインに対応する第3エッジ部と、を含み、
前記反射面は、前記第1エッジ部を含む第1反射面と、前記第2エッジ部を含む第2反射面と、前記第3エッジ部を含む第3反射面と、を含み、
前記第3反射面は、車両前後方向に延びる基準軸に対して傾斜して
おり、
前記第3反射面は、当該第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記後方レンズ部の出光面以外の方向に向かうように、前記基準軸に対して傾斜している車両用灯具。
【請求項2】
前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光が出光する出光面を含む請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を内面反射する付加反射面を含み、
前記付加反射面は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記後方レンズ部の出光面で1又は複数回内面反射される方向に、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を内面反射する反射面として構成される請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を遮光する遮光部を含む請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前方レンズ体と、
前記前方レンズ体の後方に配置された後方レンズ部と、
前記後方レンズ部の後方に配置され、前記後方レンズ部及び前記前方レンズ体をこの順に透過して前方に照射されてロービーム用配光パターンを形成する光を発光する光源と、を備え、
前記後方レンズ部は、前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを規定するエッジ部と、前記エッジ部と前記後方レンズ部の後端部との間に設けられ、前記後方レンズ部に入光した前記光源からの光の少なくとも一部を内面反射する反射面と、を含み、
前記エッジ部は、左カットオフラインに対応する第1エッジ部と、右カットオフラインに対応する第2エッジ部と、前記左カットオフラインと前記右カットオフラインとを接続する斜めカットオフラインに対応する第3エッジ部と、を含み、
前記反射面は、前記第1エッジ部を含む第1反射面と、前記第2エッジ部を含む第2反射面と、前記第3エッジ部を含む第3反射面と、を含み、
前記第3反射面は、車両前後方向に延びる基準軸に対して傾斜しており、
前記第3反射面は、当該第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記ロービーム用配光パターン以外の方向に向かうように、前記基準軸に対して傾斜している
車両用灯具。
【請求項6】
前記後方レンズ部は、当該後方レンズ部を透過する前記光源からの光を第1方向に関し集光させるレンズ部で、
前記前方レンズ体は、当該前方レンズ体を透過する前記後方レンズ部からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させるレンズ部で、
前記前方レンズ体の入光面及び出光面のうち少なくとも一方は、前記第1方向に延びるシリンドリカル面である請求項1から
5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、ロービーム用配光パターンの斜めカットオフライン近傍にグレアが発生するのを抑制することができる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(a)は従来の車両用灯具100の上面図(主要光学面以外省略)、
図8(b)は
図8(a)のA-A断面図(主要光学面以外省略)、
図8(c)は
図8(a)のB-B断面図(主要光学面以外省略)である。
【0003】
従来、
図8(a)に示すように、前方レンズ体101と、その後方に配置された後方レンズ部102と、後方レンズ部102の後方に配置され、後方レンズ部102及び前方レンズ体101をこの順に透過して前方に照射されてロービーム用配光パターン(
図9参照)を形成する光を発光する光源103と、を備えた車両用灯具100が知られている(例えば、特許文献1(
図32等)参照)。後方レンズ部102は第1方向(例えば、
図8(a)中、上下方向)の集光を担当するレンズ部で、前方レンズ体101は第1方向に直交する第2方向(例えば、
図8(a)中、紙面に直交する方向)の集光を担当するレンズ部である。
【0004】
後方レンズ部102は、第1入光面102aと、その反対側の第1出光面102bと、第1入光面102aと第1出光面102bとの間(焦点F)に設けられたエッジ部102cと、エッジ部102cから後方に向かって延びた反射面102dと、を含む。
【0005】
エッジ部102cは、左カットオフラインCL1aに対応する第1エッジ部e1aと、右カットオフラインCL2aに対応する第2エッジ部e2aと、左カットオフラインCL1aと右カットオフラインCL2aとを接続する斜めカットオフラインCL3aに対応する第3エッジ部e3aと、を含む。
【0006】
反射面102dは、第1エッジ部e1aを含む第1反射面r1aと、第2エッジ部e2aを含む第2反射面r2aと、第3エッジ部e3aを含む第3反射面r3aと、を含む。
【0007】
第3反射面r3aは、第3エッジ部e3aから車両前後方向に延びる基準軸AXLoに沿って後方に向かって延びている。つまり、第3反射面r3aは、基準軸AXLoに対して平行な面である。
【0008】
前方レンズ体101は、第2入光面101aと、その反対側の第2出光面101bと、を含む。
【0009】
上記構成の車両用灯具100においては、光源103を点灯すると、光源103からの光は、第1入光面102aから後方レンズ部102に入光して反射面102dによって一部遮光された後、反射面102dからの反射光と共に、第1出光面102bから出光する。その際、第1出光面102bから出光する光源103からの光は、第1出光面102bの作用により、第1方向に関し集光される。そして、第1出光面102bから出光した光源103からの光は、後方レンズ部102と前方レンズ体101との間の空間Saを通過して、さらに、第2入光面101aから前方レンズ体101に入光して第2出光面101bから出光して前方に照射される。その際、第2出光面101bから出光する光源103からの光は、第2出光面101bの作用により、第2方向に関し集光される。これにより、ロービーム用配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らがシミュレーションで確認したところ、上記構成の車両用灯具100においては、第3反射面r3aで反射されてB-B断面を通った光源103からの光RayB(
図8(c)参照)により、
図9に示すように、仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンの斜めカットオフラインCL3a近傍にグレア(
図9中、四角Gaで囲った範囲参照)が発生することが判明した。
図9は、車両用灯具100によって形成されるロービーム用配光パターンの斜めカットオフラインCL3a近傍の部分拡大図(シミュレーション結果)である。
【0012】
斜めカットオフラインCL3a近傍にグレアが発生するのは、A-A断面での第1出光面102bと第2入光面101aとの間の間隔SA(
図8(b)参照)と、B-B断面での第1出光面102bと第2入光面101aとの間の間隔SB(
図8(c)参照)とが異なるため、A-A断面での焦点位置(集光位置)FA(
図8(b)参照)とB-B断面での焦点位置(集光位置)FB(
図8(c)参照)とが大幅にずれることによるものである(特に、
図8(a)に示すように、前方レンズ体101を車幅方向に延びる基準軸AX1に対して後退角θ1傾斜させて配置した場合)。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロービーム用配光パターンの斜めカットオフライン近傍にグレアが発生するのを抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一つの側面は、前方レンズ体と、前記前方レンズ体の後方に配置された後方レンズ部と、前記後方レンズ部の後方に配置され、前記後方レンズ部及び前記前方レンズ体をこの順に透過して前方に照射されてロービーム用配光パターンを形成する光を発光する光源と、を備え、前記後方レンズ部は、前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを規定するエッジ部と、前記エッジ部と前記後方レンズ部の後端部との間に設けられ、前記後方レンズ部に入光した前記光源からの光の少なくとも一部を内面反射する反射面と、を含み、前記エッジ部は、左カットオフラインに対応する第1エッジ部と、右カットオフラインに対応する第2エッジ部と、前記左カットオフラインと前記右カットオフラインとを接続する斜めカットオフラインに対応する第3エッジ部と、を含み、前記反射面は、前記第1エッジ部を含む第1反射面と、前記第2エッジ部を含む第2反射面と、前記第3エッジ部を含む第3反射面と、を含み、前記第3反射面は、車両前後方向に延びる基準軸に対して傾斜している車両用灯具であることを特徴とする。
【0015】
この側面によれば、ロービーム用配光パターンの斜めカットオフライン近傍にグレアが発生するのを抑制することができる車両用灯具を提供することができる。
【0016】
これは、第3反射面が車両前後方向に延びる基準軸に対して傾斜していることによるものである。
【0017】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記第3反射面は、当該第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記後方レンズ部の出光面以外の方向に向かうように、前記基準軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0018】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光が出光する出光面を含むことを特徴とする。
【0019】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を内面反射する付加反射面を含み、前記付加反射面は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記後方レンズ部の出光面で1又は複数回内面反射される方向に、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を内面反射する反射面として構成されることを特徴とする。
【0020】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記後方レンズ部は、前記第3反射面で内面反射された前記光源からの光を遮光する遮光部を含むことを特徴とする。
【0021】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記第3反射面は、当該第3反射面で内面反射された前記光源からの光が前記ロービーム用配光パターン以外の方向に向かうように、前記基準軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0022】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記後方レンズ部は、当該後方レンズ部を透過する前記光源からの光を第1方向に関し集光させるレンズ部で、前記前方レンズ体は、当該前方レンズ体を透過する前記後方レンズ部からの光を前記第1方向に直交する第2方向に関し集光させるレンズ部で、前記前方レンズ体の入光面及び出光面のうち少なくとも一方は、前記第1方向に延びるシリンドリカル面であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】車両用灯具10によって形成されるロービーム用配光パターンP
Loの一例である。
【
図4】
図1に示す車両用灯具10のA-A断面図である。
【
図5】(a)エッジ部31c及び反射面31dの部分拡大斜視図、(b)上面図である。
【
図6】(a)後方レンズ部31に第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1が出光する出光面31fを設けた例、(b)後方レンズ部31に第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1を内面反射する付加反射面31gを設けた例、(c)後方レンズ部31に第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1を遮光する遮光部31hを設けた例である。
【
図7】ロービーム用配光パターンP
Loの斜めカットオフラインCL3近傍の部分拡大図(シミュレーション結果)である。
【
図8】(a)従来の車両用灯具100の上面図(主要光学面以外省略)、(b)
図8(a)のA-A断面図(主要光学面以外省略)、(c)
図8(a)のB-B断面図(主要光学面以外省略)である。
【
図9】車両用灯具100によって形成されるロービーム用配光パターンの斜めカットオフラインCL3近傍の部分拡大図(シミュレーション結果)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0025】
図1は、車両用灯具10の上面図である。
図2は、車両用灯具10の正面図である。
【0026】
図1、
図2に示す車両用灯具10は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であり、例えば、自動車等の車両の前端部の左右両側にそれぞれ搭載される。左右両側に搭載される車両用灯具10は左右対称の構成であるため、以下、代表して、車両の前端部の左側(車両前方に向かって左側)に搭載される車両用灯具10について説明する。車両用灯具10は、図示しないが、アウターレンズとハウジングとによって構成される灯室内に配置され、ハウジング等に取り付けられる。
【0027】
図3は、車両用灯具10によって形成されるロービーム用配光パターンP
Loの一例である。
図3には、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンP
Loの一例が示されている(右側通行の場合)。ロービーム用配光パターンP
Loは、上端縁にカットオフラインCLを含む。カットオフラインCLは、左カットオフラインCL1、右カットオフラインCL2及び左カットオフラインCL1と右カットオフラインCL2とを接続する斜めカットオフラインCL3を含む。斜めカットオフラインCL3は、水平線Hに対して45°傾斜している。なお、斜めカットオフラインCL3は、水平線Hに対して15°傾斜している場合もある。
【0028】
図1に示すように、車両用灯具10は、所定方向に延びた前方レンズ体20と、前方レンズ体20の後方に所定方向に沿って配置された複数の後方レンズ部31A~31Bと、複数の後方レンズ部31A~31Bの後方に設けられ、後方レンズ部31A~31B及び前方レンズ体20をこの順に透過して前方に照射されてロービーム用配光パターンP
Loを形成する光を発光する複数の光源40A~40Bと、を備える。
【0029】
後方レンズ部31A~31B、光源40A~40Bは同じ構成であるため、以下、これらを特に区別しない場合、後方レンズ部31、光源40と記載する。
【0030】
前方レンズ体20は、所定方向(以下、第1方向ともいう)に延びたレンズ部である。前方レンズ体20は、当該前方レンズ体20を透過する後方レンズ部31からの光の第1方向に直交する第2方向の集光を主に担当する。
【0031】
前方レンズ体20は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂製で、射出成形により成形される。所定方向は、例えば、
図1に示すように、上面視で、車幅方向に延びる基準軸AX1に対して後退角θ1傾斜し、かつ、
図2に示すように、正面視で、車幅方向に延びる基準軸AX1に対してつり目角θ2傾斜した方向である。θ1及びθ2は、それぞれ、0~90度内の任意の角度である。
【0032】
図1に示すように、前方レンズ体20は、第1方向に延びた第2入光面21及びその反対側の、第1方向に延びた第2出光面22を含む。
【0033】
第2入光面21は、例えば、平坦面(例えば、鉛直面)である。第2出光面22は、当該第2出光面22から出光する後方レンズ部31からの光を第1方向に直交する第2方向に集光させるため、円柱軸が第1方向に(ライン状に)延びる半円柱状の面(シリンドリカル面)として構成される。
【0034】
図4は、
図1に示す車両用灯具10のA-A断面図である。
【0035】
図4に示すように、前方レンズ体20、後方レンズ部31及び光源40は、ロービーム用光学系を構成する。
【0036】
一般的な車両用灯具では、1つの投影レンズが第1方向の集光及び第1方向に直交する第2方向の集光を担当するのに対して、本実施形態では、投影レンズを構成する2つのレンズ(前方レンズ体20及び後方レンズ部31)が第1方向の集光及び第1方向に直交する第2方向の集光を担当する。すなわち、本実施形態では、後方レンズ部31が第1方向の集光を主に担当し、前方レンズ体20が第2方向の集光を主に担当する。
【0037】
光源40は、矩形(例えば、1mm角)の発光面を備えたLEDやLD等の半導体発光素子で、発光面を前方(正面)に向けた状態で基板K1に実装される。基板K1は、ネジ止め等によりハウジング(図示せず)等に取り付けられる。
【0038】
後方レンズ部31は、第1入光面31aと、その反対側の第1出光面31bと、第1入光面31aと第1出光面31bとの間(焦点F)に設けられたエッジ部31cと、エッジ部31cから後方に向かって延びた反射面31dと、エッジ部31cから下方に向かって延びた延長面31eと、を含む。後方レンズ部31は、当該後方レンズ部31を透過する光源40からの光の第1方向の集光を主に担当する。後方レンズ部31は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂製で、射出成形により成形される。
【0039】
第1入光面31aから後方レンズ部31に入光した光源40からの光は、少なくとも鉛直方向(
図4中上下方向)に関しエッジ部31cに向かって集光される。これにより、ロービーム用配光パターンP
Loは、カットオフライン付近が相対的に明るいものとなる。
【0040】
第1出光面31bは、当該第1出光面31bから出光する光源40からの光を第1方向に関し集光させるため、例えば、円柱軸が第2方向に延びた半円柱状の面(シリンドリカル面)として構成される。
【0041】
図5(a)はエッジ部31c及び反射面31dの部分拡大斜視図、
図5(b)は上面図である。
【0042】
図5(a)、
図5(b)に示すように、エッジ部31cは、ロービーム用配光パターンP
LoのカットオフラインCLに対応した形状に構成される。エッジ部31cは、例えば、Z型の段差部を有する。具体的には、エッジ部31cは、左カットオフラインCL1に対応する第1エッジ部e1と、右カットオフラインCL2に対応する第2エッジ部e2と、左カットオフラインCL1と右カットオフラインCL2とを接続する斜めカットオフラインCL3に対応する第3エッジ部e3と、を含む。
【0043】
左カットオフラインCL1に対応する第1エッジ部e1は、鉛直方向に関し、右カットオフラインCL2に対応する第2エッジ部e2より一段高い位置に配置される(右側通行の場合)。第3エッジ部e3は、第1エッジ部e1(及び第2エッジ部e2)に対して45°傾斜している。なお、第3エッジ部e3は、第1エッジ部e1(及び第2エッジ部e2)に対して15°傾斜している場合もある。なお、左側通行の場合、左右を反転させたエッジ部31cが用いられる。
【0044】
反射面31dは、エッジ部31cと後方レンズ部31の後端部(第1入光面31a)との間に設けられ(
図4参照)、後方レンズ部31に入光した光源40からの光の少なくとも一部を内面反射する。具体的には、
図5(a)、
図5(b)に示すように、反射面31dは、第1エッジ部e1を含む第1反射面r1と、第2エッジ部e2を含む第2反射面r2と、第3エッジ部e3を含む第3反射面r3と、を含む。
【0045】
図5(b)に示すように、第3反射面r3は、第3エッジ部e3aから、車両前後方向に延びる基準軸AX
Loに対して所定角度θ3傾斜した直線Lに沿って後方に向かって延びている。つまり、第3反射面r3aは、基準軸AX
Loに対して所定角度θ3傾斜した傾斜面である。
【0046】
具体的には、
図6(a)~
図6(c)に示すように、第3反射面r3は、当該第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1(従来斜めカットオフライン近傍に発生するグレアの原因となっていた光)が後方レンズ部31の第1出光面31b以外の方向に向かうように(つまり、第1出光面31bに入射しないように)、基準軸AX
Loに対して所定角度θ3傾斜している。別言すると、第3反射面r3は、当該第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1がロービーム用配光パターンP
Lo以外の方向に向かうように、基準軸AX
Loに対して所定角度θ3傾斜している。
【0047】
なお、第3反射面r3は、基準軸AX
Loに対して所定角度θ3傾斜していればよく、第3エッジ部e3からの長さ(
図5(b)に示す直線Lに沿った長さ)は特に限定されない。例えば、第3反射面r3の長さ(
図5(b)に示す直線Lに沿った長さ)は、第3エッジ部e3から後方レンズ部31の後端部に達する長さ(
図5(b)参照)であってもよいし、図示しないが、第3エッジ部e3から数mm程度(例えば、5mm)の長さであってもよい。
【0048】
第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1は、例えば、
図6(a)に示すように、後方レンズ部31に設けた出光面31fから出光させることが考えられる。出光面31fは、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1の光路上に設けられる。
【0049】
また、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1は、例えば、
図6(b)に示すように、後方レンズ部31に設けた付加反射面31g、後方レンズ部31の第1出光面31bでこの順に内面反射させることも考えられる。付加反射面31gは、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1の光路上に設けられる。付加反射面31gは、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1が後方レンズ部31の第1出光面31bで1又は複数回内面反射されて第1出光面31b以外の方向に向かう方向Ar(
図5(b)参照)に、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1を内面反射する反射面として構成される。
【0050】
また、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1は、例えば、
図6(c)に示すように、後方レンズ部31に設けた遮光部31hにより、遮光することも考えられる。遮光部31hは、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1の光路上に設けられる。遮光部31hは、
図6(c)に示すように、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1を第1出光面31b以外の方向に内面反射する反射面であってもよいし、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1を拡散させる拡散面(例えば、シボ面等の複数の微小凹凸面)であってもよいし、その他の遮光面であってもよい。
【0051】
以上のように、第3反射面r3が基準軸AX
Loに対して傾斜しており、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1が後方レンズ部31の第1出光面31b以外の方向に向かうため(つまり、第1出光面31bに入射しないため)、
図7に示すように、ロービーム用配光パターンP
Loの斜めカットオフラインCL3近傍にグレアが発生するのを抑制することができる。
図7は、ロービーム用配光パターンP
Loの斜めカットオフラインCL3近傍の部分拡大図(シミュレーション結果)である。
図7に示す四角Gで囲った範囲を参照すると、
図9に示す四角Gaで囲った範囲(従来技術)と比べ、黒く塗りつぶされた領域(光度が相対的に低い領域)が増加しており、グレアの発生が抑制されていることが分かる。
【0052】
上記構成の車両用灯具10においては、光源40を点灯すると、光源40からの光は、第1入光面31aから後方レンズ部31に入光して反射面31dによって一部遮光された後、反射面31d(第1反射面r1及び第2反射面r2)からの反射光と共に、第1出光面31bから出光する。その際、第1出光面31bから出光する光源40からの光は、第1出光面31bの作用により、第1方向に関し集光される。そして、第1出光面31bから出光した光源40からの光は、後方レンズ部31と前方レンズ体20との間の空間S1を通過して、さらに、第2入光面21から前方レンズ体20に入光して第2出光面22から出光して前方に照射される。その際、第2出光面22から出光する光源40からの光は、第2出光面22の作用により、第2方向に関し集光される。これにより、ロービーム用配光パターンPLoが形成される。
【0053】
別言すると、後方レンズ部31に入光した光源40からの光によってエッジ部31c近傍に形成される光度分布が、投影レンズとして機能する後方レンズ部31(第1出光面31b)及び前方レンズ体20によって前方に反転投影される。これにより、ロービーム用配光パターンPLoが形成される。ロービーム用配光パターンPLoは、上端縁にエッジ部31cによって規定されるカットオフラインCLを含む。
【0054】
以上のようにロービーム用配光パターンP
Loが形成される際、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1は、
図6(a)に示すように、後方レンズ部31の第1出光面31b以外の方向に向かい、その後、後方レンズ部31に設けた出光面31fから出光する。または、
図6(b)に示すように、後方レンズ部31に設けた付加反射面31g、後方レンズ部31の第1出光面31bでこの順に内面反射される。または、
図6(c)に示すように、後方レンズ部31に設けた遮光部31hにより遮光される。
【0055】
このように、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1(従来斜めカットオフライン近傍に発生するグレアの原因となっていた光)が、後方レンズ部31の第1出光面31b以外の方向に向かい、後方レンズ部31の第1出光面31bから出光しないため、ロービーム用配光パターンPLoの斜めカットオフラインCL3近傍にグレアが発生するのを抑制することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンの斜めカットオフラインCL3近傍にグレアが発生するのを抑制することができる車両用灯具10を提供することができる。
【0057】
これは、第3反射面r3が車両前後方向に延びる基準軸AXLoに対して傾斜していることによるものである。
【0058】
すなわち、第3反射面r3が車両前後方向に延びる基準軸AXLoに対して傾斜しているため、第3反射面r3で内面反射された光源40からの光Ray1(従来斜めカットオフライン近傍に発生するグレアの原因となっていた光)が後方レンズ部31の第1出光面31b以外の方向に向かい、第1出光面31bから出光しないことによるものである。
【0059】
次に、変形例について説明する。
【0060】
上記実施形態では、前方レンズ体20の第2入光面21として平坦面(例えば、鉛直面)を用い、第2出光面22として円柱軸が第1方向に延びる半円柱状の面(シリンドリカル面)を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0061】
例えば、前方レンズ体20の第2入光面21として円柱軸が第1方向に延びる半円柱状の面(シリンドリカル面)を用い、第2出光面22として平坦面(例えば、鉛直面)を用いてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、後方レンズ部31の第1出光面31bとして円柱軸が第2方向に延びた半円柱状の面(シリンドリカル面)を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0063】
例えば、後方レンズ部31の第1出光面31bとして車両前方に向かって凸の凸レンズ面を用いてもよい。
【0064】
上記実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0065】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…車両用灯具、20…前方レンズ体、21…第2入光面、22…第2出光面、31…後方レンズ部、31a…第1入光面、31b…第1出光面、31c…エッジ部、31d…反射面、31e…延長面、31f…出光面、31g…付加反射面、31h…遮光部、40…光源