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特許7093660造形システム、製造方法、3次元造形物、支援装置、動作データ作成方法及び動作データ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】造形システム、製造方法、3次元造形物、支援装置、動作データ作成方法及び動作データ
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220623BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220623BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220623BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220623BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220623BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220623BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/209
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/106
B33Y10/00
B29C70/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018065035
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019171769
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】荒金 陽介
(72)【発明者】
【氏名】古屋 光啓
(72)【発明者】
【氏名】澤田 瑞穗
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536178(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182675(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106515041(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0061974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料により3次元造形物を造形する造形システムであって、
前記繊維樹脂材料を賦形して吐出するノズル部と、前記ノズル部を搭載するヘッド部と、前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、前記ヘッド部を駆動し且つ前記ノズル駆動部から独立しているヘッド駆動部とを備える吐出手段と、
前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付手段と、
前記造形物情報に基づき前記吐出手段の動作データを作成する作成手段と、
前記動作データに基づいて前記吐出手段の駆動を制御する駆動制御手段と
を備え
前記動作データは前記ノズル部用データと前記ヘッド部用データとを含み、
前記駆動制御手段は、前記ノズル部用データに基づいて前記ノズル駆動部を制御することで、前記3次元造形物の造形部分の形状に賦形した繊維樹脂材料を前記吐出手段から吐出させる
造形システム。
【請求項2】
前記造形物情報は前記3次元造形物の3次元形状情報を含む
請求項1に記載の造形システム。
【請求項3】
前記ノズル部は一対の駆動ローラを備え、
前記ノズル駆動部は、前記一対の駆動ローラの回転速度を独立して調整可能に前記一対の駆動ローラを駆動する
請求項1又は2に記載の造形システム。
【請求項4】
複数種類の繊維樹脂材料に関する素材情報を記憶する記憶部と、
前記3次元造形物の造形に使用する前記繊維樹脂材料として前記複数種類の繊維樹脂材料の中から選択する材料選択手段と
をさらに備える
請求項1~3の何れか1項に記載の造形システム。
【請求項5】
前記造形物情報は前記3次元造形物に要求される物性を含み、
前記素材情報は前記連続繊維及び前記樹脂の機械的特性情報を含み、
前記物性を満たすように前記連続繊維の配向角度を決定する配向決定手段をさらに備え、
前記作成手段は、前記連続繊維の配向が前記配向決定手段により決定された配向角度となるように、前記動作データを作成する
請求項4に記載の造形システム。
【請求項6】
連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料を吐出手段が吐出しながら移動することにより3次元造形物を製造する製造方法であって、
前記吐出手段は、前記繊維樹脂材料を賦形して吐出するノズル部と、前記ノズル部を搭載するヘッド部と、前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、前記ヘッド部を駆動し且つ前記ノズル駆動部から独立しているヘッド駆動部とを備え、
前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付ステップと、
前記造形物情報に基づき賦形した繊維樹脂材料を吐出する前記吐出手段の動作データを作成する作成ステップと、
前記動作データに基づいて前記吐出手段を駆動する駆動ステップと
を含み、
前記動作データは前記ノズル部用データと前記ヘッド部用データとを含み、
前記駆動ステップでは、前記ノズル部用データに基づいて前記ノズル駆動部を駆動することで、前記3次元造形物の造形部分の形状に賦形した繊維樹脂材料を前記吐出手段から吐出させる
製造方法。
【請求項7】
前記ノズル部は一対の駆動ローラを備え、
前記駆動ステップでは、前記一対の駆動ローラの回転速度を独立して調整可能に前記一対の駆動ローラを駆動する
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料を吐出手段が吐出しながら移動することにより3次元造形物を造形する造形装置の動作データを作成する支援装置であって、
前記吐出手段は、前記繊維樹脂材料を賦形して吐出するノズル部と、前記ノズル部を搭載するヘッド部と、前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、前記ヘッド部を駆動し且つ前記ノズル駆動部から独立しているヘッド駆動部とを備え、
前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付手段と、
前記造形物情報に基づき賦形した繊維樹脂材料を吐出する前記吐出手段の動作データを作成する作成手段と
を備え、
前記動作データは、前記ノズル駆動用のデータであって前記3次元造形物の造形部分の形状に賦形した繊維樹脂材料を前記ノズル部から吐出するための前記ノズル部用データと、前記ヘッド駆動部用のデータであって前記3次元造形物の形状に沿って前記ヘッド部を移動させるための前記ヘッド部用データとを含む
支援装置。
【請求項9】
連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料をノズル部が吐出しながら、前記ノズル部を搭載するヘッド部が移動することにより3次元造形物を造形する造形装置の動作データ作成方法であって、
前記動作データは、前記ノズル部を駆動するノズル駆動部用のノズル部用データと、前記ヘッド部を駆動するヘッド駆動部用のヘッド部用データとを含み、
前記3次元造形物に関する造形物情報に基づき、前記3次元造形物を分割するステップと、
前記ヘッド部が前記分割された領域に沿って移動するための前記ヘッド部用データを作成するステップと、
前記ノズル部が前記分割された領域の形状に前記繊維樹脂材料を賦形しながら吐出するための前記ノズル部用データを作成するステップと
を含む
動作データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料により3次元造形物を造形する造形システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂組成物(FRP成形品)は、軽量で機械的特性に優れるため、航空宇宙用途からスポーツ用途等に至るまで幅広い分野において利用されている。
一方、立体的な形状(三次元形状)を有する造形物を製造する製造装置として、例えば溶融した熱可塑性樹脂を積み重ねる3D(三次元)プリンタが知られており、近年、この3Dプリンタ技術を応用して、FRP成形物を成形する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
この技術は、溶融した熱可塑性樹脂と繊維とが一体化された繊維樹脂材料を型材に積層し、積層した繊維樹脂材料上にさらに繊維樹脂材料を積層するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/197732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、型材又はすでに型材に積層された繊維樹脂材料等(以下、単に「型材等」とする。)の上に溶融状態の繊維樹脂材料を積層するため、必ず型材等が必要となる。
本開示は、上記のような問題点に着目し、型材等を必要とせずに繊維樹脂材料から造形物を造形できる造形システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る造形システムは、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料により3次元造形物を造形する造形システムであって、賦形した繊維樹脂材料を吐出しながら移動する吐出手段と、前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付手段と、前記造形物情報に基づき前記吐出手段の動作データを作成する作成手段と、前記動作データに基づいて前記吐出手段の駆動を制御する駆動制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、賦形した繊維樹脂材料を吐出しながら移動するため、型材等を利用せずに3次元造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る造形システムのブロック図である。
図2】第1実施形態に係る造形装置の概略図である。
図3】第1実施形態に係るノズル部の概略図である。
図4】第1実施形態に係る制御装置の構成図である。
図5】第1実施形態の実施例1における造形物の概略図である。
図6】実施例1に係る曲線情報である。
図7】実施例1に係る交点情報である。
図8】第1実施形態に係る制御装置のフローチャートである。
図9】実施例1に係る動作データ作成処理のフローチャートである。
図10】実施例1に係る造形軌道テーブルである。
図11】実施例1に係る回転比テーブルである。
図12】実施例1に係る接合軌道テーブルである。
図13】実施例1に係る造形処理のフローチャートである。
図14】第2実施形態に係る造形システムのブロック図である。
図15】第2実施形態に係る支援装置のフローチャートである。
図16】第2実施形態に係る造形装置のフローチャートである。
図17】第2実施形態に係る造形装置の制御手段の構成図である。
図18】第3実施形態に係る造形システムのブロック図である。
図19】第3実施形態に係る造形物の各層の走査方向を説明する図であり(a)は1層目であり、(b)は2層目である。
図20】第3実施形態に係る造形軌道テーブルを示す図である。
図21】第3実施形態に係る支援装置のフローチャートである。
図22】第3実施形態に係る造形装置のフローチャートである。
図23】第4実施形態に係る造形システムの概略図である。
図24】第4実施形態に係る造形システムのブロック図である。
図25】第4実施形態に係る造形システムの造形処理のフローチャートである。
図26】第4実施形態に係る造形システムの素材情報変更処理のフローチャートである。
図27】第4実施形態に係る造形装置の素材テーブルを示す図である。
図28】第4実施形態に係る支援装置の素材テーブルを示す図である。
図29】変形例に係る造形システムの概略図である。
図30】変形例に係る曲線情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施形態の一態様に係る造形システムは、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料により3次元造形物を造形する造形システムであって、賦形した繊維樹脂材料を吐出しながら移動する吐出手段と、前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付手段と、前記造形物情報に基づき前記吐出手段の動作データを作成する作成手段と、前記動作データに基づいて前記吐出手段の駆動を制御する駆動制御手段とを備える。
実施形態の別態様に係る造形システムにおいて、前記造形物情報は前記3次元造形物の3次元形状情報を含む。
実施形態の別態様に係る造形システムにおいて、前記吐出手段は、前記繊維樹脂材料を賦形して吐出するノズル部と、前記ノズル部を搭載するヘッド部とを備え、前記動作データは前記ノズル部用データと前記ヘッド部用データとを含む。
【0009】
実施形態の別態様に係る造形システムにおいて、複数種類の繊維樹脂材料に関する素材情報を記憶する記憶部と、前記3次元造形物の造形に使用する前記繊維樹脂材料として前記複数種類の繊維樹脂材料の中から選択する材料選択手段とをさらに備える。ここでの材料選択手段は、解析結果等に基づいて自動的に繊維樹脂材料を選択する場合と、操作者の操作を受け付けて繊維樹脂材料を選択する場合等を含む。
実施形態の別態様に係る造形システムにおいて、前記造形物情報は前記3次元造形物に要求される物性を含み、前記素材情報は前記連続繊維及び前記樹脂の機械的特性情報を含み、前記物性を満たすように前記連続繊維の配向角度を決定する配向決定手段をさらに備え、前記作成手段は、前記連続繊維の配向が前記配向決定手段により決定された配向角度となるように、前記動作データを作成する。ここでの配向決定手段は、解析結果等に基づいて自動的に配向を選択する場合と、操作者の操作を受け付けて配向を決定する場合等を含む。
【0010】
実施形態の一態様に係る製造方法は、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料を吐出手段が吐出しながら移動することにより3次元造形物を製造する製造方法であって、前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付ステップと、前記造形物情報に基づき賦形した繊維樹脂材料を吐出する前記吐出手段の動作データを作成する作成ステップと、前記動作データに基づいて前記吐出手段を駆動する駆動ステップとを含む。
実施形態の一態様に係る3次元造形物は、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料を造形して製造される3次元造形物であって、上記製造方法により製造された3次元造形物である。
【0011】
実施形態の一態様に係る支援装置は、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料を吐出手段が吐出しながら移動することにより3次元造形物を造形する造形装置の動作データを作成する支援装置であって、前記3次元造形物に関する造形物情報を受け付ける受付手段と、前記造形物情報に基づき賦形した繊維樹脂材料を吐出する前記吐出手段の動作データを作成する作成手段とを備える。
実施形態の一態様に係る動作データ作成方法は、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料をノズル部が吐出しながら、前記ノズル部を搭載するヘッド部が移動することにより3次元造形物を造形する造形装置の動作データ作成方法であって、前記3次元造形物に関する造形物情報に基づき、前記3次元造形物を分割するステップと、前記ヘッド部が前記分割された領域に沿って移動するための移動データを作成するステップと、前記ノズル部が前記分割された領域の形状に前記繊維樹脂材料を賦形しながら吐出するための吐出データを作成するステップとを含む。
【0012】
実施形態の一態様に係る動作データは、連続繊維と樹脂とからなる繊維樹脂材料をノズル部が吐出しながら、前記ノズル部を搭載するヘッド部が移動することにより3次元造形物を造形する造形装置の動作データであって、前記ヘッド部が前記分割された領域に沿って移動するための移動データと、前記ノズル部が前記分割された領域の形状に前記繊維樹脂材料を賦形しながら吐出するための吐出データとを含む。
【0013】
<実施形態の概要>
造形システムは、図1に示すように、受付手段51で受け付けた造形物情報に基づいて、造形装置3の動作データを作成手段53が作成し、当該動作データにしたがって吐出手段37が移動しながら繊維樹脂材料D(図2参照)を吐出する。これにより、造形物情報に表された造形物が造形される。
造形物情報は、例えば、図1及び図14に示すように造形システム1,1001の外部で作成されてもよいし、例えば、図18に示すように造形システム2001内で作成されてもよい。
造形システム1は、少なくとも、受付手段51、作成手段53、駆動制御手段55及び吐出手段37を備えていればよい。つまり、受付手段、作成手段及び吐出手段は、1つの装置内に含まれてもよいし、図14及び図18に示すように支援装置と造形装置との2つの装置内に含まれてよいし、3以上の装置内に含まれてもよい。造形システムが複数個の装置から構成される場合、複数個の装置が、直接接続されてもよいし、例えばLANやインタネット等のネットワークを介して接続されてもよい。
【0014】
<第1実施形態>
1.概要
造形システム1は、図1に示すように、造形装置3と制御装置5とを備える。
造形装置3は、所望形状に賦形した繊維樹脂材料D(図2参照)を吐出しながら移動して造形物を造形する。
制御装置5は、受け付けた造形物情報にしたがって動作データを作成して、当該動作データに基づいて造形装置3の吐出手段37の動作を制御する。これにより、造形物情報に基づいた3次元造形物が造形される。
【0015】
2.造形装置
(1)概要
造形装置3は、繊維Aと樹脂Bとからなる繊維樹脂材料Cを加熱して、任意の形状に賦形しながら吐出する。ここでは、繊維Aとして炭素繊維を、樹脂として熱可塑性樹脂をそれぞれ利用している。繊維Aの走行方向において、繊維Aの進む側を下流側とする。また、賦形前の繊維樹脂材料を「C」とし、賦形後の繊維樹脂材料を「D」とする。
造形装置3は、図2に示すように、上流側から、繊維供給手段31、樹脂供給手段33、加熱手段35、吐出手段37をこの順で備える。造形装置3は、繊維Aや繊維樹脂材料Cを走行させるための走行用ローラを有する。造形装置3は、骨組み構造の造形物を造形する際に、交点を接合する接合手段38(図1参照)を有する。造形装置3は吐出手段37や接合手段38等を駆動するための駆動手段39を備える(図1参照)。
以下、各手段について説明する。
【0016】
(2)各部の構成
(2-1)繊維供給手段
ここでの繊維Aはボビン311に巻き付けられたロービング313を利用する。
繊維供給手段31はロービング313から引き出された繊維Aをローラ315やニップローラ317で誘導しつつ供給する。なお、ニップローラ317はロービング313から繊維Aを引き出す機能も有する。
【0017】
(2-2)樹脂供給手段
樹脂供給手段33は繊維Aが吐出手段37に達する前に樹脂Bを供給する。ここでは溶融状態の樹脂Bが繊維Aに供給される。樹脂供給手段33は、樹脂Bを貯留する樹脂貯留タンク331と、繊維Aが通過する樹脂槽333と、樹脂貯留タンク331から樹脂槽333に樹脂Bを送り出すポンプ335とを備える。
樹脂貯留タンク331にはヒータ(図示省略)が設けられている。これにより、樹脂貯留タンク331内の樹脂Bを溶融したり、溶融状態を維持したり等可能となる。樹脂槽333には貫通孔334が設けられ、この貫通孔334を1本又は複数本の繊維Aが通過する。
貫通孔334は通過する繊維Aの太さに対応しており、溶融状態の樹脂Bが供給されている樹脂槽333の貫通孔334を繊維Aが通過することで、所定量の樹脂Bが繊維Aに塗布(供給)される。この樹脂Bが供給されたものが繊維樹脂材料Cである。なお、貫通孔334の形状を適宜選択することで、所望の断面形状の繊維樹脂材料Cが得られる。例えば、貫通孔334を偏平な矩形状にすると板状の繊維樹脂材料Cが得られ、貫通孔334を円形状にすると丸棒状の繊維樹脂材料Cが得られる。
なお、繊維供給手段31と樹脂供給手段33とで、繊維樹脂材料供給手段34(図1参照)が構成される。
【0018】
(2-3)加熱手段
加熱手段35は、繊維樹脂材料Cの走行方向に沿って配されたヒータ351を備える。一例としてのヒータは、円筒状の電気ヒータであり、ヒータ351の内部を繊維樹脂材料Cが走行する。なお、吐出手段37から繊維樹脂材料Cが吐出される際には変形可能(軟化状態)であることが必要であり、樹脂供給手段33の余熱で変形可能な場合は、加熱手段35を備えなくてもよいし、加熱機能を利用しなくてもよい。
【0019】
(2-4)吐出手段
吐出手段37はヘッド部371にノズル部373を有する。
ここで、図3に示すように、ノズル部373に進入する直前の繊維樹脂材料Cの走行方向をX方向とし、X方向と直交する方向をY方向とZ方向とすると、ヘッド部371は、X方向と平行なX軸、Y方向と平行なY軸、Z方向と平行なZ軸の3軸に移動可能であって各軸廻りに回転可能に支持され、駆動手段39(図1参照)のヘッド用駆動モータにより独立駆動される。これにより、ヘッド部371が3次元内を自由に移動可能となる。なお、駆動手段(ヘッド用駆動モータ)は図1に示す制御装置5(駆動制御手段55)により制御される。
ここでのノズル部373は複数個の駆動ローラにより構成されている。ここでは一対の駆動ローラ375,377により構成され、図3のY軸を回転軸とし、その回転速度が独立して調整可能に設けられている。駆動ローラ375の回転速度を駆動ローラ377の回転速度に対して変える(調整する)ことで、繊維樹脂材料Cがその回転速度差(回転比)に対応した曲率で湾曲して吐出される。なお、駆動ローラ375,377は、駆動手段39(図1参照)のノズル用駆動モータにより独立駆動される。駆動手段(ノズル用駆動モータ)39は図1に示す制御装置5(駆動制御手段55)により制御される。
【0020】
(2-5)接合手段
接合手段38は加熱手段により構成される。つまり、固化した又は固化前の繊維樹脂材料Dを局部的に加熱して、樹脂Bを溶融させることで、骨組み構造の交点を接合する。ここでの加熱手段は、例えば、樹脂Bの融点以上に設定された温風を吹き付けるヒートガンを利用している。接合手段38は、上記のヘッド部371と同様に6軸に移動可能に構成されている。
【0021】
3.制御装置
(1)機能構成
制御装置5は、図1に示すように、受付手段51、作成手段53、駆動制御手段55を備える。以下、各手段について説明する。
(1-1)受付手段
受付手段51は、上述の通り、造形物情報を受け付ける。一例としての受付手段51は、外部装置(例えばPC端末9等)から受け付ける。造形物情報は造形しようとする造形物に関する情報である。なお、ここでの造形物情報はPC端末9により3D-CAD等を利用して作成される。造形物情報は造形物の3次元の形状情報を含む。
【0022】
(1-2)作成手段
作成手段53は、造形物情報の造形物を造形装置3が造形する際に、造形装置3の吐出手段37を動作させる(制御する)ための動作データを作成する。動作データは、吐出手段37に供給される繊維樹脂材料Cや造形物の形状等により決定される。
作成手段53は、例えば、造形物の形状・構造等から造形物を複数個の分割領域に分割し、当該分割領域の形状に沿ってヘッド部371が移動する移動データと、分割領域の形状に繊維樹脂材料Dを賦形しながら吐出させる吐出データとを含む。駆動ローラ375,377を備える吐出手段37の場合、吐出データは駆動ローラ375,377の回転比となる。
これにより、造形装置3の吐出手段37から吐出された繊維樹脂材料Dは造形物の一部である分割領域の形状を有することとなる。
【0023】
(1-3)駆動制御手段
駆動制御手段55は、動作データに基づいて造形装置3の駆動手段39を駆動制御する。具体的には、駆動制御手段55は、ヘッド部371を駆動するヘッド用駆動モータと、ノズル部373の駆動ローラ375,377を駆動するノズル用駆動モータとを駆動制御する。
ここでのヘッド用駆動モータは、図3に示すように、X軸、Y軸及びZ軸の3軸並びにX軸廻りの回転、Y軸廻りの回転及びZ軸方向の回転の3軸の合計6軸分ある。また、ノズル用駆動モータは、駆動ローラ375,377用の合計2軸分ある。
【0024】
(2)ハード構成
上記の機能構成を有する制御装置5は、図4に示すように、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部(例えば、ハードディスク)64、入力部65、表示部66、通信部67、ドライブ69等を備え、これらはバス68を介して相互に接続されている。制御装置5は、これらのハードウェア構成がコンピュータプログラム(以下、単に、「プログラム」という)を実行することにより、上記機能を実現する。
CPU61は、ROM62や記憶部64に記憶されているプログラムを実行することで、造形物情報から動作データを作成したり、動作データを記憶部64等に記憶させたり、動作データに基づいて駆動手段39を制御したりする。
なお、制御装置5は、ドライブ69を介して外部の記憶媒体70に接続され、当該記憶媒体70から造形物情報を受け付けたり、動作データやプログラムを記憶したり又は読み出したり等可能である。
入力部65は、キーボード、マウス等により構成され、例えば、造形物の分割数等の種々の情報の入力が可能である。表示部66は造形物情報、入力情報の表示が可能である。通信部67は受付手段51を構成する。制御装置5は、通信部67に接続されたLAN71を介して、PC端末9(図1参照)等の外部装置と通信可能に接続されている。
【0025】
<実施例1>
(1)概略
以下、図5に示す骨組み構造の造形物10を造形する場合を例にして、以下、制御装置5の処理等について説明する。
図5に示す造形物10は、中心軸L0の廻りに回転してなる回転体状の骨組み構造を有する。造形物10は、9本の曲線L1~L9を有し、9本の曲線L1~L9が18個の交点N1~N18で交差する。
本実施例では、骨組み構造の造形物情報として、図6に示す曲線情報T1と、図7に示す交点情報T2とを含む。造形システム1は、骨組み構造の中間造形物を造形した後に、中間造形物の交差部分を接合して造形物10とする。
なお、作成手段53は、中間造形物を造形するための造形軌道データを曲線情報T1から、中間造形物の交点(接合の有無は関係なし)を接合するための接合軌道データを交点情報T2からそれぞれ作成する。
【0026】
(2)造形物
(2-1)構造
図5を用いて造形物10について説明する。
6本の曲線L1~L6は、造形物10の中心軸L0の廻りに等角度(ここでは60度)の間隔で設けられている。曲線L1~L6は中心軸L0に沿って延伸する。
3本の曲線L7~L9は、造形物10の中心軸L0と直交する面内において円形状をしている。曲線L7~L9は中心軸L0の延伸する方向(以下、「中心軸方向」とする)に等間隔で離間している。
6本の曲線L1~L6は3本の曲線L7~L9と交差する。なお、交差する部分が交点である。交点を示す番号(数字)は、図5に示すように、曲線L1から始まり、中心軸方向の一端側に位置する曲線L7との交点を交点N1とし、曲線L1内を中心軸方向の他方端に向かって順次増加した後、曲線L2から曲線L6まで順次増加する。
【0027】
(2-2)造形物情報
造形物情報は、図6に示すような各曲線L1~L9を示す曲線情報T1と、図7に示すような各曲線L1~L9の交点N1~N18を示す交点情報T2とを含む。
【0028】
(2-2-1)曲線情報
曲線情報T1は、図6に示すように、曲線L1~L9を示す曲線番号(例えば、「1」である)と、当該曲線番号の曲線に含まれる点を示す点番号と、各点番号により規定される点の座標とを含む。なお、座標は3次元で記憶されている。
曲線番号は、図5における曲線L1~L9を識別するための番号であり、図6に示すように、「1」から「9」まである。
曲線L1~L6の各々は21個の点を結んで構成されている。21個の点は各曲線内に等間隔で位置する。なお、21個の点番号は、中心軸方向であって一端側端に存在する点が1であり、他端に向かって加算される。
曲線L7~L9の各々は49個(曲線番号「7」参照)の点から構成されている。49個の点は各曲線L7~L9内に等間隔で配されている。49個の点番号は、曲線L1と交差する位置に存在する点が1であり、曲線L2が存在する側に向かって加算され、点番号49の点は、点番号「1」の点と一致する(これにより円形状となる)。
なお、座標は、曲線番号を示す数字と、「P」と、曲線L1~L9内の点番号を示す数字とを組み合わせて便宜上記載している。
【0029】
(2-2-2)交点情報
交点情報T2は、図7に示すように、交点N1~N18を示す交点番号(例えば「1」である)と、交点番号で示される交点の座標と、交点を構成する2つの曲線を示す第1曲線の曲線番号と第2曲線の曲線番号とを含む。なお、第1曲線と第2曲線とは、交差する2本の曲線L1~L9のうち、曲線番号の小さい方が第1曲線であり、大きい方が第2曲線である。交点の座標は第1曲線の座標で表している。例えば、交点番号が「1」の交点は、曲線L1と曲線L7とが交差する交点N1であり、その座標は1P5である。
ここでは、曲線L1~L6は21個の点を結んでなり、各曲線において、点番号が「5」、「13」、「21」の3点で曲線L7~L9と交差する。曲線L7~L9は49個の点を結んでなり、各曲線において、点番号が「1」、「9」、「17」、「25」、「33」、「41」、「49」の6点で曲線L1~L6と交差する。
なお、交点番号「0」の座標の項目には、交点数が格納され、ここでは「18」が格納されている。
【0030】
(3)制御装置
(3-1)主処理
制御装置5の主処理について図8を用いて説明する。
制御装置5は、受付手段51が造形物情報を受け付ける(S1における「Yes」である)と、動作データを作成手段53に作成させ(S2)、その動作データに基づいて造形物10を造形装置3に造形させる(S3)。これにより、図5に示すような造形物10が造形される。
以下、動作データ作成処理(S2)及び造形処理(S3)について説明する。
【0031】
(3-2)動作データ作成処理
動作データ作成処理(S2)について図9を用いて説明する。
ステップS20において、造形物情報から曲線本数Nと交点数Kとを計数(取得)する。
ステップS21において、曲線番号を示す変数i(iは1~9までの自然数)の曲線Liのポリライン化(微小分割)を行う。
ポリライン化は1本の曲線Liをj(自然数)個の微小分割曲線に分割することである。ここでは、図10に示すように、曲線L1~L6においての分割数を示す変数jは「5」であり(曲線番号「1」参照)、曲線L7~L9においての変数jは「12」である(曲線番号「7」参照)。なお、各ポリラインはその曲線の延伸方向に連続する4個の点により構成され、例えば、1番目のポリラインは、点番号「1」、「2」、「3」、「4」で構成されている(曲線番号「1」参照)。
【0032】
ステップS22において、曲線Liにおいて、j番目のポリラインの接線方向と曲率を算出して、図10に示すように、始点、接線ベクトル及び曲率を造形軌道テーブルT3に記憶する。ここで、曲線Li中のj番目のポリラインの接線ベクトルを便宜上「iTj」とし、例えば、iが「1」である曲線L1の1番目のポリラインの接線ベクトルは「1T1」となる。同様に、曲線Li中のj番目のポリラインの曲率を便宜上「iCj」とし、例えば、iが「1」である曲線L1の1番目のポリラインの曲率は「1C1」となる。
【0033】
各ポリラインの始点は、各ポリラインに含まれる点番号の最も小さい点である。
接線ベクトルiTjは、例えば各ポリラインの始点に対してその前後に位置する複数の点から算出(近似)される。曲率iCjは、例えばポリラインにより算出される。
ステップS23において、曲線Li中のj番目のポリラインの曲率iCjを回転比に変換して、図10に示すように造形軌道テーブルT3に記憶する。算出は、図11に示す、曲率と回転比とを対応づけた回転比テーブルT5を利用して行われる。なお、回転比テーブルT5は予め実験等を行うことで得られる。
ステップS24において、ステップS22及びステップS23の処理が、変数jが「1」から行われ、変数jが分割数に達したか否かを判定し、分割数に達していない場合は、ステップS22に戻り、分割数に達している場合はステップS25に進む。
ステップS25において、ステップS21~ステップS24までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが曲線本数である「N」に達した否かを判定し、「N」に達していない場合はステップS21に戻り、「N」に達している場合はステップS26に進む。なお、ステップS21~S25までの処理を造形軌道データ作成処理ともいう。
【0034】
ステップS26において、交点数Kが「0」である場合は、曲線同士の交点がなく接合する必要がない場合であり、図8のステップS3に進む。交点数Kが「0」でない場合は、ステップS27に進む。
ステップS27において、交点番号を示す変数iの交点Niに対して、当該交点Niから離れた座標NPiを算出する。この座標NPiは造形装置3の接合手段38の移動先である。なお、交点Niから離れる方向は、造形物10の中心軸L0から離れる方向である。これにより、接合手段38が、造形物10となる前の骨組み構造の中間造形物と接触することを防止できる。
ステップS28において、算出したi番目の交点Niに対応する座標NPiを図12に示す接合軌道テーブルT4に記憶する。
ステップS27~ステップS28までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが交点数である「K」に達した否かを判定し、「K」に達していない場合は、ステップS27に戻り、「K」に達している場合は、図8のステップS3に進む。なお、ステップS27~S29までの処理を接合軌道データ作成処理ともいう。
【0035】
(4)造形処理
造形処理(S3)について図13を用いて説明する。
ステップS31において、動作データ(造形軌道テーブルT3及び接合軌道テーブルT4)を読み出す。
ステップS32において、曲線番号が「i」の曲線Liの初期位置へヘッド部371を移動させる。初期位置は、曲線Liの1番目の始点位置である。この時点では、ノズル部373から繊維樹脂材料Dは吐出されていない。
ステップS33において、曲線Li中のj番目のポリラインにしたがってヘッド部371をその始点から移動ささせると共に駆動ローラ375,377を回転させる。ヘッド部371は、図10中の始点から接線ベクトルiTjの方向を図10中の曲率に従って移動する。駆動ローラ375,377の回転は、図10中の回転比とヘッド部371の移動速度とから算出されている。なお、ノズル部373から吐出する繊維樹脂材料Dが湾曲するような場合、駆動ローラ375,377の回転速度が互いに異なる。
ステップS34において、ステップS33の処理が、変数jが「1」から行われ、変数jが分割数に達したか否かを判定し、分割数に達していない場合は、ステップS33に戻り、分割数に達している場合はステップS35に進む。
ステップS35において、ステップS32~ステップS34までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが曲線数に達した否かを判定し、曲線数に達していない場合は、ステップS33に戻り、曲線数に達している場合は、ステップS36に進む。なお、ステップS32~S35まで処理を造形処理ともいう。
【0036】
ステップS36において、交点があるか否かを判定する。交点があると、交点の接合処理が行われる。
交点がない場合(「No」である)は、交点の接合処理は行わない場合であり、図8に戻って処理を終了する。
交点がある場合(「Yes」である)は、ステップ37に進んで、図12に示す、交点番号が「i」の交点Niの座標NPiに接合手段38を移動させて、ステップS38において交点部分を所定の時間加熱する。これにより、繊維樹脂材料Dの樹脂Bが溶融して、交点Niを構成する2本の曲線L1~L9が接合される。
ステップS39において、ステップS37~ステップS38までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが交点数に達した否かを判定し、交点数に達していない場合は、ステップS37に戻り、交点数に達している場合は、図8に戻って処理を終了する。なお、ステップS37~S39まで処理を接合処理ともいう。
【0037】
<第2実施形態>
1.概要
造形システム1001は、図14に示すように、造形装置1003と支援装置1005とを備える。造形装置1003は、繊維樹脂材料D(図2参照)を吐出しながら移動して造形物を造形する。支援装置1005は、受け付けた造形物情報にしたがって動作データを作成して、当該動作データを造形装置1003に送信(出力)する。造形装置1003は、受信した動作データに基づいて吐出手段37を動作させる。これにより、造形物情報に基づいた3次元造形物が造形される。
【0038】
2.支援装置
支援装置1005は造形物情報から動作データを作成するのを支援する。支援装置1005は、図14に示すように、受付手段51及び作成手段53の他、送信手段1051を備える。ここでの受付手段51及び作成手段53は、第1実施形態と同じ構成を有し、その説明を省略する。送信手段1051は作成手段53により作成された動作データを造形装置1003に送信する。
支援装置1005は、図15に示すように、PC端末9等から造形物情報を受け付ける(ステップS1の「Yes」である)と、造形物情報に基づいて造形装置1003の吐出手段37の動作を規定する動作データを作成し(S2)、造形装置1003へ動作データを送信して(S103)、処理を終了する。なお、ステップS2の動作データ作成処理は第1実施形態と同じ処理内容である。
支援装置1005は、第1実施形態の制御装置5と同様のハードウェア構成を有している。つまり、支援装置1005は、図4に示すように、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部64、入力部65、表示部66、通信部67、ドライブ69、バス68等を備え、第2実施形態に係るプログラムをCPU61が実行することで、図15に示す処理を行う。なお、上記プログラムを実行することで、図4に示す通信部67が図14に示す受付手段51と送信手段1051として機能する。
【0039】
3.造形装置
造形装置1003は、図14に示すように、繊維供給手段(31)と樹脂供給手段(33)とからなる繊維樹脂材料供給手段34、加熱手段35、吐出手段37、接合手段38、駆動手段39、制御手段1031を備える。ここでの繊維樹脂材料供給手段34、加熱手段35、吐出手段37、接合手段38及び駆動手段39は、第1実施形態と同じ構成を有し、その説明を省略する。
制御手段1031は、支援装置1005で作成された動作データを受信(受付)したり、駆動手段39を駆動制御したりする。
制御手段1031は、図16に示すように、支援装置1005から動作データを受け付ける(ステップS121の「Yes」である)と、動作データに基づいて造形処理を行い(S3)、処理を終了する。なお、ステップS3における造形処理は第1実施形態と同じ処理内容である。
制御手段1031は、図17に示すように、CPU1361、ROM1362、RAM1363、記憶部1364、通信部1365、バス1366等を備え、ROM1362に記憶されている第2実施形態に係るプログラムをCPU1361が実行することで、図16に示す処理が行われる。なお、図17に示す通信部1365は、動作データを受け付ける機能を有する。
【0040】
<第3実施形態>
1.概要
造形システム2001は、図18に示すように、造形装置2003と支援装置2005とを備える。造形装置2003は、繊維樹脂材料D(図2参照)を吐出しながら移動して造形物を造形する。支援装置2005は、造形物情報を作成し、その作成した造形物情報にしたがって動作データを作成し、当該動作データを造形装置2003に送信(出力)する。造形装置2003は、受信した動作データに基づいて吐出手段37を動作させる。これにより、造形物情報に基づいた3次元造形物が造形される。
以下、造形物を造形する場合について説明する。造形物は、図19の(a)に示す1層目を造形した後に、繊維樹脂材料Dの吐出方向を変えて図19の(b)に示す2層目を造形し、繊維樹脂材料Dの吐出方向を変えて図示しない3層目を造形して、構成される。つまり、造形物は3層構造をし、1層目と3層目とが同じ繊維配向であり、2層目は、1層目と2層目とに対して直交する(90度)の繊維配向である。
なお、各層を区別するために、1層目に関する情報に「a」を付し、2層目に関する情報に「b」を付し、3層目に関する情報に「c」を付して表す。
【0041】
2.支援装置
支援装置2005は造形物情報及び動作データの作成を支援する。支援装置2005は、図18に示すように、造形物情報作成手段2051、動作データ作成手段2053、表示手段2055、入力手段2057、記憶手段2058及び送信手段2059を備える。
(1)造形物情報作成手段
造形物情報作成手段2051は、操作者の入力データに基づいて、図19の造形物の造形物情報を作成する。なお、作成した造形物情報は記憶手段2058に記憶される。造形物情報の作成には、CAD等を利用しており、操作者が造形物情報(CADデータ)の作成に必要な情報を表示手段2055の指示にしたがって入力手段2057から入力する。なお、造形物情報は記憶手段2058に記憶される。
【0042】
(2)動作データ作成手段
動作データ作成手段2053は、造形物情報作成手段2051で作成された造形物情報を使って動作データを作成する。
ここでは、吐出手段37は、繊維樹脂材料Dを吐出しながら移動し、移動が終了すると、移動方向と直交する方向にずれて、再度繊維樹脂材料Dを吐出しながら移動する。なお、吐出手段37が繊維樹脂材料Dを吐出しながら移動することを「主走査」又は「走査」ともいい、移動方向を「主走査方向」とし、主走査方向と直交する方向にずれることを「副走査」ともいい、直交する方向を「副走査方向」とする。
本例においては、1層目(3層目も同じ)において、図19の(a)に示すYZ平面内の方向、つまり、X方向と直交する方向が主走査方向であり、X方向が副走査方向である。2層目において、図19の(b)に示すXZ平面内の方向、つまり、Y方向と直交する方向が主走査方向であり、Y方向が副走査方向である。
【0043】
動作データ作成手段2053は、入力された(受け付けた)材料情報から、1主走査当たりの副走査方向の幅(この幅を走査幅とし、ここでは一定値である)を算出し、当該走査幅で造形物を図19に示すように副走査方向に分割する。なお、走査幅に分割された1つを走査領域とする。走査領域は、図19において、積層順を示すアルファベットの「a」、「b」と、主走査順を意味する走査番号を示す数字の「1」~「10」とを組み合わせて表示される。例えば、図19の(a)では、1層目であって走査番号が「3」の走査領域は「a3」となる。
【0044】
動作データ作成手段2053は、入力された(受け付けた)分割情報から、一個の走査領域をポリゴン化(例えば四角形)し、各ポリゴンにおける中心軸(X方向と直交する)の近似曲線、中心軸(を含むYZ平面)に対する各ポリゴンの傾斜角度、近似曲線の曲率、回転比を算出して、図20に示すような造形軌道テーブル2T3に記憶する。なお、造形軌道テーブル2T3は記憶手段2058に保存される。
【0045】
(3)その他
表示手段2055は、造形物情報を作成する際や動作データを作成する際に、造形物の形状、繊維樹脂材料Cの材料情報、走査領域の分割情報の入力を案内する画面を表示したり、入力された情報を表示したりする。
入力手段2057は、造形物情報を作成する際や動作データを作成する際に、造形物の形状、繊維樹脂材料の材料情報、走査領域の分割情報等を入力する。なお、支援装置2005側からすると入力手段はこれらの情報を受け付ける受付手段でもある。なお、各種の情報入力に際し、表示手段2055の表示に従って行われる。
記憶手段2058は、造形物情報、動作データ、受け付けたデータ等を記憶する。
送信手段2059は動作データを造形装置2003に送信する。
【0046】
(4)ハードウェア構成
支援装置2005は、第1実施形態の制御装置5と同様のハードウェア構成を有している。つまり、支援装置2005は、図4に示すように、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部64、入力部65、表示部66、通信部67、ドライブ69、バス68等を備え、第3実施形態に係るプログラムをCPU61が実行することで、造形物情報作成手段2051、動作データ作成手段2053の処理が行われる。
なお、表示手段2055は表示部66により、入力手段2057は入力部65により、記憶手段2058は記憶部64により、送信手段2059は通信部67により、それぞれ構成される。
【0047】
(5)処理内容
支援装置2005の処理内容について図21を用いて説明する。
ステップS201において、造形物情報を記憶部64から読み出し、ステップS203において、材料情報及び走査方向情報の入力案内を表示部66に表示させる。
ここでの材料情報は、例えば、繊維樹脂材料Cの形状、寸法等である。厚みは造形物を造形する際の積層回数Kを規定する。幅は走査幅を規定し、走査方向情報とで、各層の走査回数Nと走査領域の大きさを規定する。なお、主走査方向は繊維樹脂材料Cの繊維方向と一致し、繊維の配向角度を規定する。
【0048】
ステップS205において、材料情報と走査方向情報とを受け付ける(「Yes」である)と、ステップS207において、走査回数N、走査領域の大きさ、積層回数Kを決定する。なお、この際、図20に示すように、走査方向情報(例えば「YZ」や「XZ」等)は、造形軌道テーブル2T3において各積層番号の走査番号が「0」の項目の「ポリゴン番号」の項目内に記憶され、1走査における副走査方向の移動量(例えば「b」等)は、造形軌道テーブル2T3において各積層番号の走査番号が「0」の項目の「始点」の項目内に記憶される。
本例では、吐出手段37に供給される繊維樹脂材料Cは、テープ状をし、厚みと幅とが入力される。
入力された繊維樹脂材料Cの厚みは造形物の厚みの1/3であり、積層回数Kは3回と決定される。
入力された繊維樹脂材料Cの幅(走査幅に相当する)は、造形物のX方向の寸法の1/10であり、Y方向の寸法の1/8である。入力された副走査方向は、1層目及び3層目はX方向であり、2層目はY方向である。これにより、走査領域の大きさが、1層目と3層目では造形物の1/10と決定され、2層目では造形物の1/8と決定される。走査回数Nは、造形物の副走査方向の寸法を走査幅で割った値に相当し、図19の(a)に示すように1層目(3層目)の走査回数Nは10回と決定され、図19の(b)に示すように2層目の走査回数Nは8回と決定される。
なお、図19及び図20において、1層目を示すデータには「a」を、2層目を示すデータには「b」を、3層目を示すデータには「c」を最初に付している。
また、1層目の1回目の走査を「a1」とし、1層目の最後の10回目の走査を「a10」として表している。走査領域は、図19の(a)に示すように、矩形曲面をし、その中心軸がYZ平面内に存在する。k層のi番目の走査領域は、「k」と「i」を用いて、「ki」と表す。つまり、1層目の3番目に走査する走査領域の記号を「a3」とする。
【0049】
ステップS209において、1個の走査領域kiの分割情報の入力案内を表示部66に表示させる。
ここでの分割情報は、1個の走査領域kiのポリゴンの主走査方向の寸法(分割寸法である)である。分割情報は1個の走査領域kiの分割数を規定する。なお、分割数Mは造形物の主走査方向の寸法を分割寸法で割った値に相当する。
【0050】
ステップS211において、分割情報を受け付ける(「Yes」である)と、ステップS213において、k層目のi番目の走査領域kiのポリゴン化を行う。ポリゴン化は、ステップS209の表示により受け付けた分割情報を利用している。入力された分割寸法は、走査幅と同じであり、ポリゴンは方形状に近い形状となる。図19の(a)に示すように1層目及び3層目の各走査領域ai,biの分割数は8個と、図19の(b)に示すように2層目の各走査領域biの分割数Mは10個とそれぞれ決定される。なお、分割寸法が小さいほど、造形しようとする造形物の形状に近づく。
図19及び図20において、k層におけるi番目の走査領域kiにおいて、j番目のポリゴンを「kiPj」で表す。例えば、図19の(a)に示すように、1層(k=1)目の10番(i=10)目の走査領域(記号は「a10」である)の6番(j=6)目のポリゴンの記号は、「a10P6」となる。
【0051】
ステップS215において、k層のi番目の走査領域ki内のj番目のポリゴンkiPjの中心軸(ポリゴンkiPjの幅方向(副走査方向)の中心を通り、走査方向に延伸する)の近似曲線と、当該近似曲線の曲率と、ポリゴンkiPjの中心軸周りの傾斜角度を算出して、図20に示す造形軌道テーブル2T3に記憶する。なお、図20に示すように、k層のi番目の走査領域kiのj番目のポリゴンkiPjにおいて、始点を「kiSj」で、近似曲線を「kifj」で、傾斜角度を「kiθj」で、曲率を「kiCj」で、回転比を「kirj」でそれぞれ表している。
【0052】
ステップS217において、ステップS215で算出した曲率kiCjを回転比kirjに変換して造形軌道テーブル2T3に記憶する。ここでの変換には、第1実施形態と同様に、図11に示す回転比テーブルT5を利用して行われる。
【0053】
ステップS219において、ステップS215及びステップS217の処理が、変数jが「1」から行われ、変数jが分割数Mに達したか否かを判定し、分割数Mに達していない場合は、ステップS215に戻り、分割数Mに達している場合はステップS221に進む。
ステップS221において、ステップS213~ステップS219までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが走査回数Nに達したか否かを判定し、走査回数Nに達していない場合はステップS213に戻り、走査回数Nに達している場合はステップS223に進む。
ステップS223において、ステップS213~ステップS221までの処理が、変数kが「1」から行われ、変数kが積層回数Kに達したか否かを判定し、積層回数Kに達していない場合はステップS213に戻り、走査回数Kに達している場合は、造形軌道テーブル2T3を造形装置2003に送信して(S225)、処理を終了する。
【0054】
3.造形装置
(1)構造
造形装置2003は、図18に示すように、繊維樹脂材料供給手段34、加熱手段35、吐出手段37、駆動手段39、制御手段2031を備える。ここでの繊維樹脂材料供給手段34、加熱手段35、吐出手段37及び駆動手段39は、第1実施形態と同じ構成を有し、その説明を省略する。
制御手段2031は、支援装置2005で作成された動作データを受信(受付)する受信処理をしたり、駆動手段39を駆動制御する駆動制御処理をしたり等する。つまり、制御手段2031は、支援装置2005から動作データを受け付け、受け付けた動作データに基づいて造形処理を行う。
制御手段2031は、第2実施形態の制御手段1031と同様に、CPU、ROM、RAM、記憶部、通信部、バス等を備え、ROMに記憶されている第3実施形態に係るプログラムがCPUで実行されることで、受付処理や造形処理が行われる。
【0055】
(2)処理
制御手段2031の処理について図22のフローチャートを利用して説明する。
制御手段2031の処理はプログラムの実行でスタートする。
制御手段2031は、支援装置2005から動作データを受け付ける(ステップS231の「Yes」である)と、その動作データを記憶部に記憶する(S233)。
【0056】
ステップS235において、k層目のi番目の走査領域kiの初期位置へヘッド部を移動させる。ここでの初期位置は、走査領域kiの1番目のポリゴンkiP1の始点kiS1である。
ステップS237において、k層目のi番目の走査領域のj番目のポリゴンkiPjの近似曲線kifjと傾斜角度kiθjに従ってヘッド部(371)の移動と駆動ローラ(375,377)の回転を行う。この際、ヘッド部(371)の走査方向は、図20に示すように、造形軌道テーブル2T3において各積層番号の走査番号が「0」の項目の「ポリゴン番号」内に記憶された「YZ」や「XZ」の方向であり、1走査における副走査方向の移動量(例えば「b」等)は、造形軌道テーブル2T3において各積層番号の走査番号が「0」の項目の「始点」の項目内に記憶された「b」である。
【0057】
ステップS239において、ステップS237の処理が、変数jが「1」から行われ、変数jが分割数Mに達したか否かを判定し、分割数Mに達していない場合は、ステップS237に戻り、分割数Mに達している場合はステップS241に進む。
ステップS241において、ステップS235~ステップS239までの処理が、変数iが「1」から行われ、変数iが走査回数Nに達した否かを判定し、走査回数Nに達していない場合はステップS235に戻り、走査回数Nに達している場合はステップS243に進む。
ステップS243において、ステップS235~ステップS241までの処理が、変数kが「1」から行われ、変数kが積層回数Kに達した否かを判定し、積層回数Kに達していない場合はステップS235に戻り、走査回数Kに達している場合は終了する。
【0058】
<第4実施形態>
1.概要
造形システム3001は、図23に示すように、造形装置3003A、3003Bと支援装置3005とを備える。造形装置3003Aは、第1繊維樹脂材料1Cを用いて賦形された第1繊維樹脂材料1D(図2参照)を吐出しながら移動して造形物を造形する。造形装置3003Bは、第2繊維樹脂材料2Cを用いて賦形された第2繊維樹脂材料2D(図2参照)を吐出しながら移動して造形物を造形する。
造形装置3003Aと造形装置3003Bとは、動作データから造形物の造形が可能な構成を有し、使用する繊維樹脂材料が異なる。なお、造形装置3003Aと造形装置3003Bとは、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。また、ここでは、2台の造形装置3003A,3003Bを示しているが、3台以上の造形装置がインタネット(ネットワーク)に接続されていてもよい。なお、造形装置を区別する必要がない場合、「3003」の符号を用いる。
支援装置3005はウエブサーバとして機能し、PC端末3007が支援装置3005にアクセスすることで、支援装置3005の支援プログラムを受けることができる。支援プログラムとしては、造形物情報の作成、造形物の造形に使用される素材の選択、構造解析による最適化設計、動作データ作成等がある。作成された動作データは、選択した素材で造形可能な造形装置3003に送信される。これを受けて、造形装置3003は、指定された繊維樹脂材料を用いて造形物を造形する。
【0059】
2.構成
図24を用いて、各装置の構成を説明する。
(1)PC端末
PC端末3007は、ブラウザ3071、入力手段3073、出力(表示)手段3075を備える。
ブラウザ3071は、ウェブサイト(ウェブページ)を閲覧可能とするものであり、支援装置3005から送信される素材情報や構造解析結果等を表示(出力)したり、造形物の形状や造形物の実使用下において作用する負荷等を入力したりできる。
入力手段3073は、支援装置3005に係るウェブページにおいて各種の情報を入力する機能を有し、例えば、キーボードやマウス等である。出力(表示)手段3075は、支援装置3005に係るウェブページを出力(表示)する機能を有し、例えば、ディスプレイである。
【0060】
(2)支援装置
支援装置3005は、少なくとも、造形物情報作成手段3051、構造解析手段3053、動作データ作成手段3055、記憶更新手段3056、記憶手段3057、制御手段3058及び通信手段3059を備える。支援装置3005のハードウェア構成は、第1実施形態の制御装置5と略同じ(図4参照)であり、第4実施形態に係るプログラムを実行することで、各手段の機能処理が行われる。
記憶更新手段3056は、記憶手段3057に記憶している情報に変更があった場合に、その記憶内容の更新を行う。なお、記憶している情報としては、例えば、造形装置3003が使用する繊維樹脂材料Cの情報等がある。
【0061】
(3)造形装置
造形装置3003は、第2実施形態の造形装置2003と同様に、繊維樹脂材料供給手段34、加熱手段35、吐出手段37、駆動手段39及び制御手段3035を備える。
造形装置3003のハードウェア構成は、第2実施形態の制御手段1031と同じ(図17参照)であり、第4実施形態に係るプログラムを実行する各種の処理が行われる。
【0062】
3.動作
(1)造形処理
図25を用いて説明する。
なお、図25では、造形装置3003Aを使用するものとし、1台の造形装置3003Aを示している。
まず、PC端末3007は、支援装置3005にアクセスして、造形物の形状情報と負荷情報とをウェブサイトから支援装置3005に送信する(S311)。形状情報は、造形物の形状を示す情報であり、例えば、CADに入力するような情報である。負荷情報は、造形物を実使用した際に作用する負荷を示す情報であり、例えば、CAE(Computer Aided Engineering)に入力するような情報である。なお、負荷情報は、造形物に要求される物性でもある。また、ここでの造形物情報は形状情報と負荷情報とを含むとしてもよい。
これを受けて、支援装置3005は、造形装置3003A,3003Bが使用する繊維樹脂材料1C,2Cの種類を示す素材情報をPC端末3007に送信する(S321)。
【0063】
PC端末3007は、支援装置3005から素材情報を受信すると、素材情報を画面に表示し(S312)、表示された素材から造形物に使用する素材を入力手段から受け付けると、選択素材の情報を支援装置3005に送信する(S313)。
これを受けて、支援装置3005は、造形物情報を作成し(S322)、造形物情報及び負荷情報から構造解析を行い(S323)、解析結果をPC端末3007に送信する(S324)。造形物情報は、所謂、CADデータであり、例えば第2実施形態の支援装置2005の造形物情報作成手段2051で説明した処理で作成される。構造解析は、造形物情報を用いて、例えば有限要素法等を利用して行われる。構造解析は、応力の高い領域に対して連続繊維の配向角度が低角度(例えば0度)となるように、最適化設計又は良好な設計を行うようにしてもよい。この場合、CAE等を利用することで配向決定手段が構成される。
【0064】
PC端末3007は、支援装置3005から受信した解析結果を画面に表示する(S314)。表示された解析結果について、「OK」の旨の入力を操作者から受け付ける(S315の「Yes」である)と、OK情報を支援装置3005に送信し、「OK」でない旨の入力を操作者から受け付ける(S315の「No」である)と、ステップS312に戻り、素材の選択をやり直す。
【0065】
支援装置3005は、OK情報を受け取ると、選択素材に対応した繊維樹脂材料C1を用いて、設計された連続繊維の配向角度で動作データを作成して、造形装置3003Aに動作データを送信する(S325)。なお、動作データの作成及びデータ内容は第1実施形態や第3実施形態で説明した通りであるが、ステップS323で行った構造解析結果に対応した繊維配向となるように作成される。
これに受けて、造形装置3003Aは造形物を造形する(S331)。
【0066】
(2)記憶内容変更処理
図26を用いて説明する。
なお、図26では、造形装置3003Aを使用するものとし、1台の造形装置3003Aを示しているが、複数台の他の造形装置が接続されてもよい。
支援装置3005(記憶更新手段3056)は、処理をスタートすると、造形装置3003Aに対して、繊維樹脂材料Cの素材情報を要求する(S341)。
一方、造形装置3003Aは、素材送信の要求があれば(S335の「Yes」である)、素材情報を支援装置3005に送信する(S336)。造形装置3003Aは、自装置にセットされている繊維樹脂材料Cの繊維Aと樹脂Bの素材情報を例えば素材テーブルに格納しており、これらの情報を送信する。なお、素材送信の要求がなければ(S335の「No」である)、ステップS337ヘ進む。
【0067】
支援装置3005は、ステップS341において素材情報の要求をした後、設定時間内に造形装置3003Aから素材情報を受信しているか否かを判定する(S342、S343)。素材情報を受信している場合(S342で「Yes」である)、その情報を、既存の記憶内容に置き換え又は追加して記憶内容を変更する(S344)。また、設定時間経過しても(S343の「Yes」である)、情報受信がない場合は、ステップS345に進む。
【0068】
造形装置3003において、繊維Aの切り替え等により、繊維樹脂材料Cの変更等が生じる。造形装置3003は、素材変更がある(S337の「Yes」である)と、素材テーブルに記憶している素材情報を変更し(S338)、その変更内容(素材情報)を支援装置3005に送信する(S339)。なお、素材変更がない場合(S337の「No」である)は、ステップS335に進む。
【0069】
支援装置3005は、ステップS345において時間をリセットした後、設定時間が経過すると(S346の「Yes」である)、素材情報の受信があるか否かを判定する(S347)。受信がある(「Yes」である)場合、記憶内容を変更した(S348)後、ステップS345に進む。受信がない(「No」である)場合、ステップS345に進む。
【0070】
4.データ構造
(1)造形装置の素材情報
造形装置3003の制御手段3058に記憶されている素材情報は、図27に示すように、素材番号、繊維の種類、樹脂の種類、素材形状、素材寸法、弾性率、強度等であり、素材テーブル4T1に記憶されている。
繊維の種類は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等である。樹脂の種類は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等である。
素材の形状は、繊維方向と直交する断面形状であり、例えば、円形状、矩形状、方形状等がある。素材の寸法は、繊維方向と直交する断面における寸法であり、素材形状が「円」の場合は直径Dが記憶され、素材形状が「矩形」の場合は幅W×厚みtが記憶される。素材形状や素材寸法は動作データ作成に利用される。
弾性率及び強度は、繊維の機械的特性を示す情報である。弾性率及び強度等の機械的特性の情報は構造解析に利用される。なお、これらの情報は、不揮発性の記憶部に変更可能に記憶されている。
なお、造形装置3003は、使用する素材を複数種類備える場合、各素材に対応した造形条件を造形条件テーブルに有してもよい。造形条件としては、繊維樹脂材料Cの吐出速度、ヘッド部の移動速度、吐出時の繊維Aのテンション、樹脂の加熱温度等である。また、これらの情報をPC端末3007から操作者が選択入力するようにしてもよい。
【0071】
(2)支援装置の素材情報
支援装置3005の制御手段3058に記憶されている素材情報は、図28に示すように、造形装置、素材番号、繊維の種類、樹脂の種類、素材形状、素材寸法、弾性率、強度等であり、素材テーブル4T2に記憶されている。素材テーブル4T2中の造形装置は、造形装置を識別するためのものであり、例えば、造形装置3003Aでは、素材番号が1~5までの5種類を利用して造形物を造形できる。
これらの情報は、支援装置3005が処理を開始した後に各造形装置3003に素材情報を要求(図26のステップS341である)することで記憶部に記憶され、また、各造形装置3003において、使用する素材の変更があった場合に送信される(図26のステップS339である)素材情報により変更される。
【0072】
(3)動作データ
支援装置3005から対象の造形装置3003Aに送信される動作データは、造形時の吐出手段の移動軌道や回転比を含む(接合する場合は、接合時の加熱手段の移動軌道を含む)。
本実施形態の動作データは、さらに、造形時に使用する素材情報が含まれる。
【0073】
<変形例>
以上、実施形態に係る造形システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例、変形例同士を組み合わせたものであってよい。
また、実施形態や変形例に記載していない例や、要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0074】
1.実施例1の造形システム1は、図1及び図4に示すように、LAN(有線及び無線を含む)71を介してPC端末9に接続されているが、例えば、図29に示すように、インタネットを介してPC端末9に接続されてもよいし、例えばLANケーブル(クロスケーブル)を介して直接PC端末9に接続されてもよい。
【0075】
2.実施例1では、曲線をポリライン化しているが、例えば、曲線を1個又は複数個の線分や円弧やスプライン関数により構成してもよい。これらの場合も、円弧や関数における接線ベクトルや曲率を算出することで、造形軌道データを作成できる。
【0076】
3.実施例1の駆動制御手段55は、曲線Liのj番目のポリラインの接線ベクトルの向きを当該ポリラインの曲率にしたがってヘッド部371を移動させているが、例えば、曲線Liを構成する複数の点を結ぶように移動させてもよい。但し、この場合においても、ノズル部373の駆動ローラ375,377についての回転比の情報は必要である。
【0077】
4.実施例1の造形物情報は、曲線情報T1と交点情報T2とを別テーブルで記憶しているが、例えば、図30の曲線情報T1aに示すように、曲線情報中の「点」と対応付けて「交点番号」と「交点曲線」とを記憶するようにしてもよい。なお、図30中の「交点曲線」は、交点を構成する他の曲線を指し、当該他の曲線を示す曲線番号が記憶されている。
【0078】
5.第1実施形態では、ノズル部373は一対の駆動ローラ375,377を備えているが、繊維樹脂材料Cの進入方向を中心軸として、その廻りに等間隔(等角度)をおいて3個以上の駆動ローラを備えてもよい。この場合においても、3個以上の駆動ローラの回転比と、賦形された繊維樹脂材料Dの曲率とその向きとの関係を予め求めておくことで、動作データを作成できる。
【0079】
6.第1~第3実施形態では、造形物情報を操作者が入力しているが、例えば、3次元測定器(3Dスキャナー)等を利用して入力してもよい。
第1及び第2実施形態では骨組み構造の造形物を造形し、第3実施形態で湾曲板構想の造形物を造形している。しかしながら、例えば、骨組み構造体(第1造形物)を造形した後に、当該骨組み構造体に対して板状体(第2造形物)を貼り付けるよう造形した造形物であってもよい。この場合、第1造形物を造形する造形装置と、第2造形物を造形する造形装置とが、同一装置であってもよいし、別装置であってもよいし、第1造形物を造形した後に別の場所の別の造形装置で第1構造物に対して第2造形物を造形してもよい。
なお、実施形態で説明した造形物は各実施形態を説明するための一例であり、他の構造・形状であってもよい。
【0080】
7.第3実施形態では、造形物は3層構造を有し、各層を構成する繊維樹脂材料Cや厚みは同じあったが、例えば、各層ごとに使用する繊維Aが異なってもよいし、各層ごとに厚みが異なってもよい。さらに、各層ごとで繊維配向が異なってもよいし、各層で樹脂Bが異なってもよい。
また、各層を複数台の造形装置により積層(造形)してもよいし、各層を設置場所の異なる複数台の造形装置により積層(造形)してもよい。
【0081】
8.第3実施形態では造形物の1層目と2層目で走査方向が異なる。しかしながら、ヘッド部の走査方向と副走査方向とを一定として、例えば、造形中の中間体、つまり、中間体を載置しているベッドを回転・移動可能に構成して、中間体を配向角度に合わせて回転させてようにしてもよい。
【0082】
9.第1~第4実施形態の造形システム1,1001,2001,3001では、造形物を加工する加工装置(加工処理、加工データ作成部)について説明していないが、加工装置(加工処理、加工データ作成部)を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0083】
10.第1~第4実施形態の造形システム1,1001,2001,3001では、造形装置3,1003,2003,3003が動作データを受信するように構成されている。しかしながら、造形装置は、造形する予定がない場合やもうすぐ造形が終了する場合に、動作データを制御装置(5)や支援装置(1005,2005,3005)から取得するようにしてもよい。
【0084】
11.第1~第4実施形態の造形装置は、1種類の吐出手段(ノズル部)37を備えているが、繊維樹脂材料Dの賦形範囲の異なる複数種類の吐出手段を備えてもよく、造形物に合わせて自動又は手動で適宜選択するようにしてもよい。なお、賦形範囲の異なる複数種類の例として、駆動ローラの直径が異なる吐出手段や、可動範囲の異なる吐出手段等がある。
【0085】
12.第4実施形態の支援装置3005は、素材テーブルを有しているが、例えば、各造形装置のスケジューリングテーブルを有し、各造形装置の稼働状況を判断して、動作データを送信するようにしてもよい。
各造形装置が、造形物の造形処理の開始と終了の際に、その稼働情報を支援装置に送信する送信手段を備え、支援装置は、動作データを送信する際に、稼働していない又は所定時間内に終了予定の造形装置に動作データを送信するようにしてもよい。
支援装置は、造形物の送付先を受け付ける受付手段と、各造形装置が存在する場所を示す位置テーブルとを有し、送付先に近い場所に存在する造形装置に動作データを送信するようにしてもよい。
【0086】
13.第4実施形態において、造形装置は連続繊維の残量を計測する計測センサと、残量を支援装置に送信する送信手段とを備え、支援装置は、造形物の体積、使用する繊維樹脂材料の比重等から、対象の造形物に使用する連続繊維の使用量を算出する算出手段を備え、支援装置は、各造形装置の連続繊維の残量と使用量とを比較して、造形途中で連続繊維の切り替えが生じない造形装置に動作データを送信するようにしてよい。
逆に、造形装置が動作データを受け取ると、当該造形物の造形に必要な繊維樹脂材料の使用量を算出して、連続繊維の残量から連続繊維の切り替えが生じる場合に、切り替えが必要である旨の情報を支援装置に送信するようにしてもよい。
【0087】
14.第4実施形態において、造形装置は連続繊維の残量を計測する計測センサと、残量を支援装置に送信する送信手段とを備え、支援装置は、造形物の造形数を受け付ける受付手段と、受け付けた造形物とその数量から、対象の造形物の全量の造形に必要な連続繊維の使用量を算出する算出手段とを備え、造形装置の連続繊維の残量と使用量とを比較して、造形途中で連続繊維の切り替えが生じない造形装置に動作データを送信するようにしてよいし、複数台の造形装置に動作データと造形数とを送信して、造形量を複数台の造形装置に分担させてもよい。
逆に、造形装置が動作データを受け取ると、当該造形物の造形数に必要な繊維樹脂材料の使用量を算出して、連続繊維の残量と比較して、全量の造形物を造形できない場合に、自装置で造形できる数量を支援装置に送信するようにしてもよいし、残りの造形物の数量と動作データとを他の造形装置に送信するようにしてもよい。
【0088】
15.第4実施形態において、造形装置はノズル部から吐出される繊維樹脂材料Cの曲率、厚み、幅を測定するセンサと、これらの寸法情報を支援装置に送信する送信手段とを備え、支援装置は、動作データと、センサから送られた数値とを比較して、造形装置の造形精度を算出し、造形物情報から造形物に必要な精度を取得して、造形物に要求される寸法精度に対応可能な造形装置に動作データを送信するようにしてもよい。
逆に、造形装置が動作データを受け取ると、当該造形物の寸法精度を取得して、要求されている造形物を造形できない場合に、できない旨を支援装置に送信するようにしてもよいし、動作データを他の造形装置に送信するようにしてもよい。
【0089】
16.第4実施形態において、支援装置は、造形発注者に対して造形物に対する評価(アンケート)を発注者のブラウザに表示させて、その回答を受け付けるプログラムを有し、評価の高い造形装置に動作データを送信するようにしてもよい。
【0090】
17.第4実施形態において、支援装置は、発注履歴から発注サイクルを算出する算出手段を有し、前回の発注から所定期間経過すると、発注者(PC端末)に受注の有無の問合せを送信するようにしてもよい。
18.上記で説明した変形例を適用するシステムは第1~第4実施形態で説明したシステムであってもよいし、変形例を組み合わせたシステムであってもよいし、別のシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 造形システム
3 造形装置
5 制御装置
37 吐出手段
51 受付手段
53 作成手段
55 駆動制御手段
371 ヘッド部
373 ノズル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
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図30