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▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】即効型インスリン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20220623BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220623BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220623BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K38/28 ZNA
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61P3/10
C07K14/62
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018079985
(22)【出願日】2018-04-18
(62)【分割の表示】P 2017531725の分割
【原出願日】2015-12-09
(65)【公開番号】P2018138578
(43)【公開日】2018-09-06
【審査請求日】2018-12-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/092,407
(32)【優先日】2014-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エイカーズ,ミッチェル パトリック
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダ,ラナジョイ
(72)【発明者】
【氏名】グエン,チ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】パボラ,チャッド デイ.
(72)【発明者】
【氏名】サリン,ビエンダー クマル
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,ナネッテ エリザベス
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】馬場 亮人
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519695(JP,A)
【文献】特表2014-518216(JP,A)
【文献】特表2007-510675(JP,A)
【文献】特表2018-500314(JP,A)
【文献】NovoLog Insulin aspart,2004年,p.1-14,[online],[検索日 2019.10.02],<URL,https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2004/20986slr020_novolog_lbl.pdf>
【文献】HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION,2014年 5月,APIDRA,[online],[検索日 2019.10.02],<URL,https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2014/021629s029lbl.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTplus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(a)約100U/mLの濃度でのインスリンアスパルトと
(b)約20~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約0.2~約0.4mMの濃度での亜鉛と、
(d)約0.001~約0.2%w/vの濃度でのポリソルベート界面活性剤と
(e)m-クレゾールとを含み、
pHが約7.0~7.8である、前記医薬組成物。
【請求項2】
m-クレゾールの濃度が1.67~3.8mg/mLである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
亜鉛の濃度が約0.3mMである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
約1から約50mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
塩化ナトリウムの濃度が約10mMである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
フェノールをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
フェノールの濃度が1.46mg/mLである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なくとも20%迅速である血中へのインスリンの取り込みを提供する、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が、2~8℃で少なくとも24ヵ月の保存及び30℃までの温度で28日までの使用を可能にするほど安定である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物がEDTAを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物がどんな血管拡張剤も含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物がどんなオリゴ糖も含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
糖尿病の治療のための請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後血糖変動に対抗する糖尿病の治療で使用するための及び高血糖の急性期
治療のためのインスリン医薬組成物である。組成物には、場合によっては塩化ナトリウム
、亜鉛及び任意で塩化マグネシウム及び/または界面活性剤の添加を含む、ヒトのインス
リンまたはインスリン類似体、及び特定の濃度のクエン酸塩、塩化物が含まれる。組成物
は、既存の市販インスリン組成物よりも注射部位からのインスリンの素早い取り込みを有
する。組成物は、食事時のインスリン活性またはインスリンを必要とする場合の高血糖の
急性期治療を提供するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
食後血糖のレベルを制御するにはインスリンの時間/作用プロファイルが重要である。
健常な人では、膵臓は吸収された食物に応答してスパイク状のインスリンを分泌し、それ
は数分以内に血中インスリンレベルの上昇を生じる。1型糖尿病の人及び2型糖尿病の特
定の人では、インスリンが投与されなければならない。しかしながら、投与されたインス
リンはゆっくりと血液に入る。インスリンの不適切な放出及び食事の開始時での遅すぎる
効果の発現は食事中または食事直後の高血糖をもたらす。作用の長すぎる持続時間及び食
事間の過剰なインスリンは食後低血糖の原因となる。
【0003】
インスリン製品の時間/作用を減らす以前の取り組みがあった。そのような製品を開発
する初期の取り組みには、インスリンリスプロ(HUMALOG(登録商標))、インス
リンアスパルト(NOVOLOG(登録商標))、及びインスリングルリジン(APID
RA(登録商標))のような新規の「即効型」インスリン類似体の開発が含まれた。イン
スリンリスプロ及びインスリンアスパルトは、ヒトのインスリンにおけるアミノ酸鎖の配
列からのアミノ酸配列の変化を介して即効作用を達成している。インスリングルリジンも
ヒトのインスリンにおけるアミノ酸鎖の配列での変化を含むが、亜鉛も欠き、安定してい
る6量体を形成しない。即効型インスリン類似体は1990年代及び2000年代初頭に
利用可能になった。しかしながら、いわゆる即効型インスリン類似体であっても、注射後
50~90分までインスリンの最大レベルには達しない。これは、正常に機能している膵
臓によって放出されるインスリンよりも遅く、炭水化物の吸収プロファイルと一致すると
は限らない。
【0004】
探索されている即効作用を達成するもう1つの手段は、インスリンと併用して提供され
るとインスリンの時間作用プロファイルを改善する成分または賦形剤の使用である。
【0005】
たとえば、US2013/0231281は単独で、またはポリアニオン性化合物との
併用で、インスリンと特定のオリゴ糖とを含む水性組成物を開示している。ポリアニオン
性化合物は、デキストランメチルカルボン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、
PAA(ポリアクリル酸)、アルギネート、ヒアルロン酸、グルクロン酸に基づくまたは
ガラクツロン酸及びその塩に基づくポリマーから成る群から選択されるアニオン性ポリマ
ー、またはクエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、ア
ジピン酸、シュウ酸、トリホスホネート、ポリホスホネート及びそれらの塩から成る群か
ら選択されるアニオン性化合物である。一実施形態では、ポリアニオン性化合物はクエン
酸ナトリウムである。ポリアニオン性化合物は、オリゴ糖単独またはポリアニオン性化合
物単独が時間作用に対して効果を有さない場合でさえ、オリゴ糖含有組成物の性能を改善
すると言われている。クエン酸塩を含有するが、オリゴ糖を欠く組成物についてのインス
リンの時間作用の成績は開示されていない。
【0006】
加えて、US2012/0178675及びUS2014/0113856は、たとえ
ば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような亜鉛キレート剤と、たとえば、クエン
酸またはクエン酸ナトリウムのような「溶解/安定化」剤として記載されるものとの組み
合わせでインスリンを含有する組成物を開示している。US2014/0113856は
、そのような組成物の初期の臨床試験が注射部位での不快感を示したことを述べ、マグネ
シウム含有化合物の添加を介して注射部位の寛容性を高めると主張している。そのような
マグネシウム化合物には、無機塩、たとえば、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、
塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、
硫酸マグネシウム7水和物及び酸化マグネシウム;及び有機塩、たとえば、マグネシウム
EDTA、乳酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マ
グネシウム、クエン酸マグネシウム、及びグルコン酸マグネシウムが挙げられる。US2
012/0178675及びUS2014/0113856は、クエン酸またはクエン酸
塩を含有するが、EDTAを含有しない組成物についてのインスリンの時間作用の成績を
開示しなかった。しかしながら、それら出願の指定代理人による2012年のポスターは
、クエン酸塩を含有するが、EDTAを含有しないインスリンリスプロ組成物の時間作用
プロファイルを様々な濃度のEDTA及びクエン酸塩を含有する組成物と比較し、そのポ
スターは、「製剤におけるクエン酸塩単独は[インスリンリスプロ]の吸収プロファイル
を改善するには不十分であり」、「EDTAによる亜鉛のキレート(あまり安定ではない
インスリン類似体6量体の分解を加速する)とクエン酸塩(表面電荷を覆い隠し、再凝集
を阻む)の双方が、吸収の皮下速度を高める閾値濃度を上回って必要とされる」と述べて
いる。http://files.shareholder.com/download
s/BIOD/3315705516x0x602912/3C955886-6AA4
-4D66-BD33-3FFB4C906B25/EASD_Poster_Sept
ember_2012_FINAL.pdfで入手可能であるRoderike Poh
lら, “Development of Ultra-Rapid-Acting P
randial Insulin Analogs Requires Chelati
on of Zinc Ions and Charge Masking to In
crease the Rate of Subcutaneous Absorpti
on”。
【0007】
US2015/0065423は、ペプチドと血管拡張剤(たとえば、ニトログリセリ
ン)と、任意で「電荷マスキング剤」と記載されるもの、たとえば、クエン酸塩、ジケト
ピペラジン、ジケトピペラジン誘導体、EDTA、ジアルギニンピペラジン、ジアルギニ
ンピペラジン塩、ジアルギニンピペラジン異性体、ジアルギニンピペラジンエステル及び
それらの任意の組み合わせを含む組成物を記載している。クエン酸塩を含有するが、血管
拡張剤を欠いている組成物は開示されていない。
【0008】
従来技術はまとめて、本発明に含まれる賦形剤を伴った超即効型インスリン製剤及びそ
の特定の濃度を教示していない。
【0009】
上述の取り組みにもかかわらず、食事時での使用が意図され、注射部位からの血中への
インスリンのさらに迅速な取り込み;既存のインスリン製品よりも早い作用の発現;及び
保存の間での化学的な及び物理的な安定性を有するインスリン組成物に対するニーズが残
っている。本発明は、これらのニーズを満たす組成物を提供しようとする。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、特定濃度のクエン酸塩を含有する組成物が、既存の市販
のインスリン組成物よりもインスリンの血中への迅速な取り込み及び/または作用の発現
を有することを見いだしている。時間作用の改善を排除することなく、たとえば、亜鉛、
塩化ナトリウム、及び任意で塩化マグネシウム及び/または界面活性剤のような、特定濃
度の安定剤を組成物に含めることによって特定の条件下で組成物の化学的な及び物理的な
安定性が維持される。
【0011】
従って、本発明は、約100~約200IU/mLの濃度でのインスリンと、約15~
約35mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.2~約0.8mMの濃度での亜鉛と、保存剤
とを含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬組成物はさらに約5mMまで
の濃度での塩化マグネシウムをさらに含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は一般に、インスリンと特定濃度のクエン酸塩と安定剤とを
含む組成物を提供する。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、インスリンと、約10~約30mMの濃度でのクエン
酸塩と、約0.2~約2mMの濃度での亜鉛と、約1~約15mMの濃度でのマグネシウ
ムと、約10~約60mMの濃度での総塩化物と、約0.001~約0.2%w/vの濃
度での界面活性剤と、保存剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、インスリンと、約10~約30mMの濃度でのクエン
酸塩と、約0.2~約2mMの濃度での亜鉛と、約1~約15mMの濃度でのマグネシウ
ムと、約1~約50mMの濃度での塩化ナトリウムと、約0.001~約0.2%w/v
の濃度での界面活性剤と、保存剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約500IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約10~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約2~約9mM
の濃度でのマグネシウムと、約0.3~約1.3mMの濃度での亜鉛と、約15~約35
mMの濃度での総塩化物と、約0.03~約0.12%w/vの濃度でのポロキサマー1
88と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際、組
成物のpHは約7.0~7.8である。
【0016】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約500IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約10~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約2~約9mM
の濃度でのマグネシウムと、約0.3~約1.3mMの濃度での亜鉛と、約1~約25m
Mの濃度での塩化ナトリウムと、約0.03~約0.12%w/vの濃度でのポロキサマ
ー188と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際
、組成物のpHは約7.0~7.8である。
【0017】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約200IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mM
の濃度での塩化マグネシウムと、約0.3~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約20~約
25mMの濃度での総塩化物と、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマ
ー188と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際
、組成物のpHは約7.0~7.8である。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約200IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mM
の濃度での塩化マグネシウムと、約0.3~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約1~約2
0mMの濃度での塩化ナトリウムと、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキ
サマー188と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、そ
の際、組成物のpHは約7.0~7.8である。
【0019】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約200IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mM
の濃度での塩化マグネシウムと、約0.6~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約20~約
25mMの濃度での総塩化物と、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマ
ー188と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際
、組成物のpHは約7.0~7.8である。
【0020】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約100~約200IU/mLの濃度で
のインスリンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mM
の濃度での塩化マグネシウムと、約0.6~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約1~約2
0mMの濃度での塩化ナトリウムと、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキ
サマー188と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、そ
の際、組成物のpHは約7.0~7.8である。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、100IU/mLの濃度でのインスリン
リスプロと、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.6~約0.9mMの濃度での亜
鉛と、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約20~約25mMの濃度での総塩化物
と、約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、約3.15mg/mLの濃度
でのメタクレゾールとを含み、その際、組成物のpHは約7.4である。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、100IU/mLの濃度でのインスリン
リスプロと、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.6~約0.9mMの濃度での亜
鉛と、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約1~約20mMの濃度での塩化ナトリ
ウムと、約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、約3.15mg/mLの
濃度でのメタクレゾールとを含み、その際、組成物のpHは約7.4である。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、100IU/mLの濃度でのインスリン
リスプロと、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.9mMの濃度での亜鉛と、約5
mMの濃度での塩化マグネシウムと、約20~約25mMの濃度での総塩化物と、約0.
09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、約3.15mg/mLの濃度でのメタク
レゾールとを含み、その際、組成物のpHは約7.4である。
【0024】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、100IU/mLの濃度でのインスリン
リスプロと、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.9mMの濃度での亜鉛と、約5
mMの濃度での塩化マグネシウムと、約1~約20mMの濃度での塩化ナトリウムと、約
0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、約3.15mg/mLの濃度でのメ
タクレゾールとを含み、その際、組成物のpHは約7.4である。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約200IU/mLの濃度でのインスリ
ンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mMの濃度での
塩化マグネシウムと、約0.8~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約20~約25mMの
濃度での総塩化物と、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と
、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際、組成物の
pHは約7.0~7.8である。
【0026】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約200IU/mLの濃度でのインスリ
ンリスプロと、約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約3~約8mMの濃度での
塩化マグネシウムと、約0.8~約1.1mMの濃度での亜鉛と、約1~約20mMの濃
度での塩化ナトリウムと、約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー18
8と、約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際、組成
物のpHは約7.0~7.8である。
【0027】
加えて、本発明はまた、それを必要とするヒトに有効用量の本発明の医薬組成物を投与
することを含む糖尿病を治療する方法も提供する。
【0028】
加えて、本発明は、治療法で使用するための本発明の医薬組成物を提供する。さらに詳
しくは、本発明は、糖尿病の治療で使用するための本発明の医薬組成物を提供する。本発
明はまた、糖尿病の治療のための薬物を製造することにおける本発明の医薬組成物の使用
も提供する。
【0029】
加えて、本発明は、本発明の医薬組成物を含む製造物品を提供する。特に、本発明は、
製造物品が複数回使用バイアルである本発明の医薬組成物を含む製造物品を提供する。特
に、本発明は、製造物品が再利用できるペン型注入器である本発明の医薬組成物を含む製
造物品を提供する。特に、本発明は、製造物品が連続皮下インスリン注入療法のためのポ
ンプ装置である本発明の医薬組成物を含む製造物品を提供する。
【0030】
実施形態では、インスリンは、ヒトインスリン、または、たとえば、インスリンリスプ
ロ、インスリンアスパルトもしくはインスリングルリジンのようなヒトインスリンの即効
型構造の変異体、突然変異体もしくは類似体から成る群から選択される。好まれる実施形
態では、インスリンはインスリンリスプロである。
【0031】
実施形態では、保存剤はフェノール及びメタクレゾールから成る群から選択される。好
ましくは、保存剤はメタクレゾールである。実施形態では、メタクレゾールの濃度は約2
.5mg/mL~約3.8mg/mLである。好ましくは、メタクレゾールの濃度は3.
15mg/mLである。
【0032】
実施形態では、組成物はさらに等張化剤を含む。実施形態では、等張化剤はグリセロー
ルである。特定の実施形態では、グリセロールの濃度は約1~約16mg/mLである。
【0033】
実施形態では、組成物はさらに緩衝液を含む。特定の実施形態では、緩衝液はリン酸ナ
トリウムである。
【0034】
特定の実施形態では、組成物はさらに追加の安定剤を含む。特定の実施形態では、組成
物はさらに界面活性剤を含む。
【0035】
特定の実施形態では、組成物は、たとえば、EDTAのような追加のキレート剤、ニト
ログリセリンのような追加の血管拡張剤、及び/またはオリゴ糖を含まない。
【0036】
実施形態では、組成物のpHは約7.0~約7.8である。特定の好まれる実施形態で
は、組成物のpHは約7.3~約7.5である。特定の好まれる実施形態では、組成物の
pHは約7.4である。
【0037】
特定の実施形態では、時間作用に関連する1以上の薬物動態または薬物力学のパラメー
タ、たとえば、インスリンの最高濃度までの時間(Tmax);インスリンの最高濃度の
半分に達する時間(初期1/2Tmax);濃度対時間曲線の下降相の間でインスリンの
最高濃度の半分に達する時間(後期1/2Tmax);初期と後期の1/2Tmaxの間
の時間(Tmaxスプレッド);インスリン濃度曲線のもとでの分画面積に基づく異なる
時間での吸収されたインスリン総用量の比率(たとえば、AUC0-30分、AUC0-
60分、AUC0-120分、AUC0-180分);総インスリン濃度の半分に達する
時間(T50);最高グルコース注入速度に達する時間(GIRmax)、最高グルコー
ス注入速度の半分に達する時間(初期1/2GIRmax);濃度対時間曲線の下降相の
間で最高グルコース注入速度の半分に達する時間(後期1/2GIRmax);GIR曲
線のもとでの分画面積に基づく異なる時間での注入された総グルコースの比率(たとえば
、GIR0-30分、GIR0-60分、GIR0-120分、GIR0-180分)に
よって測定されたとき、医薬組成物は、クエン酸塩を含有しない即効型のインスリン類似
体の組成物よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも
40%、または少なくとも50%迅速である血中へのインスリンの取り込み及び/または
作用の発現を提供する。
【0038】
特定の実施形態では、医薬組成物は、上記で記載されているもののような時間作用に関
連する1以上の薬物動態または薬物力学のパラメータによって測定されたとき、クエン酸
塩を含有しない即効型のインスリン類似体の組成物よりも10%~50%の間迅速である
血中へのインスリンの取り込み及び/または作用の発現を提供する。
【0039】
特定の実施形態では、医薬組成物は、2~8℃で少なくとも24ヵ月の保存を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で28日までの使用を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、2~8℃で少なくとも36ヵ月の保存を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で32日までの使用を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、組成物は、7日間までの連続皮下インスリン注入療法のためのポンプ装置での使用を可能にするほど安定である。
【0040】
特定の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプ
ロと、約15mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約15mM
の濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg
/mLの濃度でのメタクレゾールと約7.6mg/mLの濃度でのグリセロールとを含む
【0041】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約15mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg/
mLの濃度でのメタクレゾールと約4.5mg/mLの濃度でのグリセロールとを含む。
【0042】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約35mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約23mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg/
mLの濃度でのメタクレゾールとを含む。
【0043】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約25mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約3.15mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含む。
【0044】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約15mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約15mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg/
mLの濃度でのメタクレゾールと約7.6mg/mLの濃度でのグリセロールとを含み、
その際、医薬組成物は、上記で記載されているもののような時間作用に関連する1以上の
薬物動態または薬物力学のパラメータによって測定されたとき、クエン酸塩を含有しない
即効型のインスリン類似体の組成物よりも10%~20%の間、20%~30%の間、3
0%~40%の間、または40%~50%の間迅速である血中へのインスリンの取り込み
及び/または作用の発現を提供する。
【0045】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約15mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg/
mLの濃度でのメタクレゾールと、約4.5mg/mLの濃度でのグリセロールとを含み
、その際、医薬組成物は、上記で記載されているもののような時間作用に関連する1以上
の薬物動態または薬物力学のパラメータによって測定されたとき、クエン酸塩を含有しな
い即効型のインスリン類似体の組成物よりも10%~50%の間迅速である血中へのイン
スリンの取り込み及び/または作用の発現を提供する。
【0046】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約35mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約23mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、約3.15mg/
mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、その際、医薬組成物は、上記で記載されている
もののような時間作用に関連する1以上の薬物動態または薬物力学のパラメータによって
測定されたとき、クエン酸塩を含有しない即効型のインスリン類似体の組成物よりも10
%~50%の間迅速である血中へのインスリンの取り込み及び/または作用の発現を提供
する。
【0047】
別の実施形態では、医薬組成物は、約100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロ
と、約25mMの濃度でのクエン酸塩と、約0.3mMの濃度での亜鉛と、約25mMの
濃度での塩化ナトリウムと、約3.15mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、
その際、医薬組成物は、上記で記載されているもののような時間作用に関連する1以上の
薬物動態または薬物力学のパラメータによって測定されたとき、クエン酸塩を含有しない
即効型のインスリン類似体の組成物よりも10%~50%の間迅速である血中へのインス
リンの取り込み及び/または作用の発現を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、インスリン及び他の成分または賦形剤
が単一の複合製剤で組み合わせられているインスリン及び他の成分または賦形剤の組み合
わせを指す。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「インスリン」は、ヒトインスリンまたはヒトインスリン
の機能的な活性を有するが、それよりも速い作用の発現を有するヒトインスリンの即効型
構造の変異体、突然変異体または類似体を意味する。ヒトインスリンの特定の即効型類似
体は、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、及びインスリングルリジンである。
市販製品のためのインスリンは組換えDNA法を用いて、または化学合成によって製造さ
れてもよい。組換え法は周知であり、強く好まれる。ヒトインスリンの分子(CAS番号
.11061-68-0)は2本のアミノ酸鎖A及びBから成り、その配列は周知である
【0050】
ヒトインスリンA鎖はアミノ酸の以下の配列を有する:
GlyIleValGluGlnCysCysThrSerIleCysSerLeuT
yrGlnLeuGluAsnTyrCysAsn(配列番号1)
【0051】
ヒトインスリンB鎖はアミノ酸の以下の配列を有する:
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluA
laLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrTh
rProLysThr(配列番号2)
【0052】
鎖は2つのジスルフィド結合:CysA7-CysB7及びCysA20-CysB1
9によって連結されている。A鎖はCysA6-CysA11にて鎖内ジスルフィド結合
を有する。ヒトインスリンは実験式C2573836577及び5808の分
子量を有する。
【0053】
HUMALOG(登録商標)における薬剤物質であるインスリンリスプロは、28位及
び29位でのB鎖上の天然のプロリン-リジンの逆位(28-L-リジン-29-L
-プロリン ヒトインスリン)を除いてその一次アミノ酸配列という点ではヒトインスリ
ンと同一である。インスリンリスプロ(CAS番号133107-64-9)は、モル基
準でヒトインスリンと等しい効力であることが示されているが、皮下注射後のその効果は
注射された可溶性ヒトインスリンよりも迅速で短い持続時間である。HUMALOG(登
録商標)は、保存剤としてのm-クレゾール、及び安定剤、等張化調整剤(グリセロール
)、緩衝化剤(二塩基リン酸ナトリウム)、安定剤(酸化亜鉛)及びビヒクル用のpH調
整剤を含有する。
【0054】
インスリンリスプロの分子は、インスリンリスプロB鎖と架橋したヒトインスリンA鎖
(配列番号1)から成り、インスリンリスプロB鎖のアミノ酸配列は以下の配列番号3に
よって与えられる:
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluA
laLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrTh
rLysProThr(配列番号3)
【0055】
インスリンリスプロの化学式はC2573836577であり、その分子量
はおよそ5808である。インスリンリスプロの1単位は0.0347mgのインスリン
リスプロと等価である。
【0056】
NOVOLOG(登録商標)における薬剤物質であるインスリンアスパルト(CAS番
号116094-23-6)は、別の即効型インスリン類似体である。その構造は、ヒト
インスリンのA鎖(配列番号1)と、以下のアミノ酸配列で反映されるようなB28にお
けるProがAspで置き換えられている(Pro-B28-Asp-ヒトインスリン)
B鎖とから成る:
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluA
laLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrTh
rAspLysThr(配列番号4)
【0057】
インスリンアスパルト(28アスパラギン酸-ヒトインスリン)は実験式C256
3816579及び約5826の分子量を有する。インスリンアスパルトの1単
位は、0.035mgの塩を含まない無水インスリンアスパルトに相当する6ナノモルに
相当する。
【0058】
APIDRA(登録商標)における薬剤物質であるインスリングルリジン(CAS番号
207748-29-6)はさらに別の即効型インスリン類似体である。インスリングル
リジンの分子は、ヒトインスリンA鎖(配列番号1)と、以下のアミノ酸配列で反映され
るようなヒトインスリンと比べて修飾されたB鎖(Asn-B3-Lys、Lys-B2
9-Glu)とから成る:
PheValLysGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluA
laLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrTh
rProGluThr(配列番号5)
【0059】
インスリングルリジン(3-リジン-29-グルタミン酸-ヒトインスリン)は実
験式C2583846478及び5823の分子量を有する。インスリングル
リジンの1単位は0.0349mgのインスリングルリジンに近似して相当する。
【0060】
以下のスキームは、血糖の食事時変動を治療することにおける使用について現在認可さ
れているヒトインスリン及び即効型インスリン類似体のアミノ酸配列及びジスルフィド結
合を示す。
ヒトインスリンA鎖
【化1】
【0061】
特定の実施形態では、本発明の組成物は約100~約500IU/mLのインスリンの
濃度を有する。特定の実施形態では、本発明の組成物は約100~約300IU/mLの
インスリンの濃度を有する。特定の実施形態では、本発明の組成物は約100~約200
IU/mLのインスリンの濃度を有する。特定の組成物は約100IU/mLを含む。特
定の組成物は約200IU/mLを含む。
【0062】
本発明で実証された上記で参照されたインスリン類似体の時間作用プロファイルにおけ
る改善は、特定の特別な濃度のクエン酸塩の使用を介して、US2012/017867
5及びUS2014/0113856にて記載されたもの(たとえば、EDTA)のよう
な追加のキレート剤、US2015/0065423にて記載されたもの(たとえば、ニ
トログリセリン)のような追加の血管拡張剤、またはUS2013/0231281にて
記載されたもののような他のオリゴ糖を必要とすることなく達成される。
【0063】
クエン酸イオンは、化学名2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボキシレート
、分子式C -3、及び189の分子量を有する。クエン酸イオンは植物及び動
物に広く分布し、食事の天然に存在する成分である。それは、酸化的代謝の一般的な代謝
産物であり、骨の重要な成分である。多数のクエン酸塩は、以下を含めて、食物での使用
について米国食品医薬品局によってGRAS(安全であると一般に見なされる)となって
いる。
【表1】
【0064】
たとえば、クエン酸、クエン酸一水和物、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、無水ク
エン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム2水和物を含む種々のクエン酸含有化合物も
米国食品医薬品局の不活性成分データベースに従って非経口薬剤製品における成分として
も含められる。本発明の組成物で使用される特定のクエン酸化合物は酸性形態または種々
の塩形態、特にそのアルカリ(たとえば、ナトリウム及びカリウム)塩及び/またはその
一水和物または二水和物であってもよい。当然、クエン酸ナトリウムが好まれる。一部の
実施形態では、本発明の組成物におけるクエン酸塩の濃度は約10から約35mMまたは
約15mMから約35mMに及ぶ。好まれる実施形態では、クエン酸塩の濃度は約10か
ら約30mMまたは約15mMから約30mMに及ぶ。特定の好まれる実施形態では、ク
エン酸塩の濃度は約15から約25mMに及ぶ。特定の実施形態では、クエン酸塩の濃度
は約15から約25mMに及ぶ。特定の実施形態では、クエン酸塩の濃度は約15から約
20mMまたは約20mMから約25mMに及ぶ。特定の組成物は約15、約20、約2
5、約30または約35mMのクエン酸塩濃度を有する。
【0065】
クエン酸塩の添加は時間作用における改善を生じることが見いだされているけれども、
クエン酸塩の添加はまた安定性の見地からのさらに大きな不利益ももたらす。従って、長
期間の保存及び使用のために十分な化学的且つ物理的な安定性を有するために、本発明の
組成物はさらに、たとえば、亜鉛、マグネシウム、塩化物及び界面活性剤のような安定化
剤を含み、含有する。
【0066】
酸化亜鉛を加えて所望の化学量論の亜鉛イオンを提供してもよい。インスリン6量体は
2つの特異的で高親和性の亜鉛結合部位を有する。そのような6量体に組み込まれた亜鉛
イオンは「結合された」亜鉛と呼ばれることがある。現在利用できる亜鉛含有の製剤には
インスリンの6量体当たり約2~4の間の亜鉛イオンが含まれる。一部の市販のインスリ
ン組成物はインスリンの6つの分子(HUMULIN(登録商標)RU-500)当たり
亜鉛の約2.4のイオンを有し、一部はインスリンの6つの分子(HUMALOG(登録
商標)、NOVOLOG(登録商標))当たり亜鉛の約3.0のイオンを有する。インス
リンリスプロ(HUMALOG(登録商標))及びインスリンアスパルト(NOVOLO
G(登録商標))の100U/mL製剤はインスリンの6つの分子当たり亜鉛の約3.0
のイオンを有し、それは約0.3mMの濃度に一致する。HUMALOG(登録商標)の
現在利用できる200U/mL製剤はインスリンの6つの分子当たり亜鉛の約3.5のイ
オンを有し、それは約0.7mMの亜鉛濃度に一致する。Eli Lilly and
Company(HUMULIN(登録商標)R)によって販売されているヒトインスリ
ンの現在利用できる100U/mL製剤はインスリンの6つの分子当たり亜鉛の約2.3
のイオンを含有し、それは約0.23mMの亜鉛濃度に一致する。
【0067】
本発明の組成物は、インスリン分子が安定している6量体を形成するのに少なくとも十
分な亜鉛イオンを供給するのに十分な亜鉛濃度を有する。従って、本発明の組成物は、イ
ンスリンの6量体当たり亜鉛の少なくとも2イオンを提供するのに十分な亜鉛を含まなけ
ればならない。本発明の特定の実施形態の組成物は、約0.2mM~約0.8mMの亜鉛
濃度を有する。インスリン濃度が100IU/mLである場合、本発明の特定の実施形態
の亜鉛濃度は約0.3mMである(約3.0のZn/6つのインスリン分子)。たとえば
、約100U/mL、約200U/mL、約300U/mL、または約500U/mLの
インスリン濃度を有する本発明の特定の実施形態では、インスリン6量体当たり亜鉛の2
イオンを提供するのに必要な最少の亜鉛濃度はそれぞれ、約0.2mM、約0.4mM、
約0.6mM、約1mMということになる。
【0068】
過剰な亜鉛の包含-すなわち、インスリン6量体で結合されるのよりも多い亜鉛を用い
て本発明の組成物をさらに安定させてもよい。そのような亜鉛は「遊離の」または「未結
合の」亜鉛と呼ばれることがある。本発明の特定の組成物では、過剰な遊離のまたは未結
合の亜鉛の包含は安定化効果を有することが見いだされている。約100U/mLのイン
スリンリスプロと約1mMまでの亜鉛濃度を有する組成物は、―約0.2mMの結合亜鉛
と約0.8mMの未結合または遊離の亜鉛を構成することになるが―即効であり且つ安定
であることが見いだされている。しかしながら、多すぎる遊離のまたは未結合の亜鉛の包
含は時間作用における改善を減衰させ得る。たとえば、約100U/mLのインスリンリ
スプロと約5mMの亜鉛濃度を有する組成物は、―約4.8mMの未結合の亜鉛を構成す
ることになるが―さらに低い亜鉛濃度の組成物で見られる時間作用における改善を有さな
いことが見いだされた。本発明の特定の実施形態では、亜鉛の濃度は、約0.2から約2
mM、約0.4から約1mM、または約0.6から約0.9mMに及ぶ。特定の実施形態
では、亜鉛の濃度は、約0.6、約0.7、約0.8または約0.9mMである。
【0069】
本発明の組成物におけるマグネシウム(Mg+2)の包含も安定化効果を有することが
見いだされている。マグネシウムイオンは、種々の方法にて、たとえば、MgClの分
子式及び95.211の分子量を有する塩化マグネシウムの添加を介して提供されてもよ
い。
【0070】
マグネシウムは特定の組成物にて安定化効果を有してもよい一方で、クエン酸塩の濃度
を超える濃度はインスリンの沈殿を生じるであろう。従って、含められてもよいマグネシ
ウムの最大量は、含まれるクエン酸塩の量によって限定される。たとえば、本発明の組成
物における安定剤としてMgClが使用される場合、マグネシウムのクエン酸塩に対す
るモル比は約1:10から約1:2に及ぶ。好ましくは、塩化マグネシウムのクエン酸塩
に対するモル比は約1:5から約1:3に及ぶ。従って、たとえば、クエン酸塩濃度が約
10~約30mMの間である組成物にて約1:10~約1:2のマグネシウムのクエン酸
塩に対するモル比を達成するために、マグネシウムの濃度は約1~約15mMの間である
。同様に、クエン酸塩濃度が25mMである組成物にて約1:5~約1:3のマグネシウ
ムのクエン酸塩に対するモル比を達成するために、マグネシウムの濃度は5から8.3m
Mに及ぶ。特定の実施形態では、マグネシウムの濃度は約1から約15mMに及ぶ。特定
の実施形態では、マグネシウムの濃度は約1から約5mM、約5から約10mM、または
約10から約15mMに及ぶ。本発明の特定の実施形態における塩化マグネシウムの濃度
は1から約5mM(約0.48mg/mL)に及ぶ。特定の実施形態では、マグネシウム
の濃度は約5mMである。
【0071】
本発明の組成物における塩化物イオン(Cl)の特定の濃度の包含も安定化効果を有
することが見いだされている。塩化物イオンは、上述のようにマグネシウムを提供するた
めのMgClの使用を介して、または塩化ナトリウムの添加を介してを含む種々の方法
で提供されてもよい。本発明の特定の実施形態の組成物は塩化ナトリウムを含む。塩化ナ
トリウムの分子式はNaClであり、その分子量は58.44である。塩化ナトリウムは
、たとえば、5mg/mLの塩化ナトリウムを含むAPIDRA(登録商標)(インスリ
ングルリジン)、0.58mg/mLの塩化ナトリウムを含むNOVOLOG(登録商標
)(インスリンアスパルト)のような即効型インスリン類似体の一部の現在利用できる製
剤にて使用されている。
【0072】
たとえば、MgClまたはNaClのような塩化物含有賦形剤の組成物における包含
を介した特定量の塩化物の添加は安定化効果を有することが見いだされている一方で、組
成物の総塩化物含量が高すぎると、組成物におけるインスリンが低温で結晶化し得る。従
って、組成物の総塩化物含量が考慮に入れられなければならない。
【0073】
組成物の総塩化物含量を決定するために、安定剤として塩化マグネシウム及び/または
塩化ナトリウムの添加を介して添加され得る塩化物イオンだけでなく、インスリンのバル
ク医薬品有効成分(API)を伴った、pH調整に必要であってもよい少量のHClの添
加を介した、及び/またはHClによる酸化亜鉛(ZnO)の可溶化により調製される溶
液の形態で添加されてもよいZnの提供と合わせた他の成分の添加を介した塩化物イオン
も考慮に入れなければならない。
【0074】
特定の実施形態では、塩化ナトリウムを用いて目標の塩化物の濃度または濃度範囲に達
するのに必要とされる追加の塩化物の量を提供する―すなわち、添加される塩化ナトリウ
ムの量は、目標の塩化物濃度から、たとえば、インスリンAPIの添加を介した、pH調
整及び/または酸化亜鉛の安定化に必要であってもよい塩化マグネシウム及び/またはH
Clの添加を介した、他の成分の添加を介して提供される塩化物の量を差し引くことによ
って決定される。たとえば、製剤における目標の塩化物濃度が約20mMであり、15m
Mの塩化物がバルクインスリンAPI、塩化マグネシウム及びpH調整に使用されるHC
lの組み合わせを介して提供されるならば、5mMの塩化ナトリウムを添加しなければな
らない。当業者は、そのような製剤に添加される塩化ナトリウムの量は、(1)他の供給
源を介して加えられる理論的な塩化物含量に基づいて必要とされるであろう追加の塩化物
の量を予め算出すること、または(2)塩化ナトリウムを除く賦形剤すべての製剤を調製
し、その製剤の塩化物含量を測定し、その量と目標とする塩化物の濃度または濃度範囲と
の間の差異を計算することによって決定されてもよいことを理解するであろう。水性製剤
の塩化物含量は、たとえば、滴定またはイオン選択性電極法のような種々の既知の技法を
用いて測定されてもよい。
【0075】
加えて、相対的に高い塩化物濃度に関連する低温結晶化の課題はクエン酸塩濃度に敏感
であることが見いだされている。従って、本明細書で提供される範囲の下端でのクエン酸
塩濃度を有する本発明の組成物は、本明細書で提供される範囲の上端でのクエン酸塩濃度
を有する組成物よりも相対的に高い塩化物濃度に寛容であってもよい。たとえば、25m
Mのクエン酸塩を含有する製剤への50~75mMもの高い塩化ナトリウム濃度の添加は
、低温結晶化の課題をもたらすことが観察されているが、そのような課題は、50mMの
塩化ナトリウムを15mMのクエン酸塩製剤に加える場合または25mMの塩化ナトリウ
ムを25mMのクエン酸塩製剤に加える場合では、一貫して観察されるわけではない。
【0076】
明瞭さの目的で、本明細書で使用されるとき、用語「塩化物」または「総塩化物」は、
任意の成分の添加に関連して、たとえば、25mMの塩化物を含むと述べられている組成
物における塩化物イオンの供給源、またはpH調整もしくはZnOの可溶化に必要とされ
るMgCl、NaCl及び/またはHClの添加を介して提供される塩化物に含まれる
総塩化物に関連して提供される組成物における塩化物イオンの総量を指す。一方、用語「
塩化マグネシウム」、{MgCl」、「塩化ナトリウム」及び「NaCl」は、組成物
に添加されるこれら特定の塩の量を指す。従って、5mMの塩化マグネシウムと10mM
の塩化ナトリウムとを含むとして記載されている組成物では、たとえば、塩化物または総
塩化物の濃度には、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及び、たとえば、HClのような
他の供給源によって提供される塩化物イオンの合わせた量が含まれる。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、総塩化物の濃度は約10から約60mMに及ぶ。特定の
実施形態では、総塩化物の濃度は約15から約35mMに及ぶ。特定の実施形態では、総
塩化物の濃度は約20から約25mMに及ぶ。特定の実施形態では、総塩化物の濃度は約
20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mMまたは約25mMである。
【0078】
本発明の特定の実施形態では、組成物は約1から約50mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウ
ム含む。特定の実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は約1~約25mMである。特定の
実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は約1から約20mMに及ぶ。本発明の特定の実施
形態における塩化ナトリウムの濃度は約15mM(約0.88mg/mL)から約25m
M(約2.0mg/mL)に及ぶ。特定の実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は、約1
、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13
、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20mMである。
【0079】
必要に応じて十分な化学的且つ物理的な安定性を達成するために、組成物はさらに1以
上の追加の安定剤を含んでもよい。例となる安定剤には界面活性剤が挙げられる。驚くべ
きことに、安定剤としての界面活性剤とマグネシウムの組み合わせは本発明の組成物にお
いて相加または相乗を上回る安定化効果を有し得ることが発見されている。
【0080】
非経口用医薬組成物での使用のために開示される界面活性剤の例には、ポリソルベート
20(TWEEN(登録商標)20)のようなポリソルベート、PEG400、PEG3
000、TRITON(商標)X-100のようなポリエチレングリコール、ポリエチレ
ン(23)ラウリルエーテル(CAS番号:9002-92-0、商品名BRIJ(登録
商標)のもとで販売)のようなポリエチレングリコール、たとえば、MYRJ(商標)の
ようなアルコキシル化脂肪酸、ポリプロピレングリコール、ブロックコポリマー、たとえ
ば、ポロキサマー188(CAS番号9003-11-6、商品名PLURONIC(登
録商標)F-68のもとで販売)及びポロキサマー407(PLURONIC(登録商標
)F127)、ソルビタンアルキルエステル(たとえば、SPAN(登録商標))、ポリ
エトキシ化ヒマシ油(たとえば、KOLLIPHOR(登録商標)、CREMOPHOR
(登録商標))ならびにトレハロース及びその誘導体、たとえば、ラウリン酸トレハロー
スエステルが挙げられる。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン(2
3)ラウリルエーテル、ポロキサマー188及びラウリン酸トレハロースエステルから成
る群から選択される。好まれる界面活性剤はポロキサマー188である。特定の実施形態
では、たとえば、ポロキサマー188のような界面活性剤の濃度は、約0.001から約
2%w/v、約0.001から約0.2%w/v、約0.03から約0.12%w/v、
または約0.06から約0.09%w/vに及ぶ。特定の実施形態では、ポロキサマー1
88の濃度は約0.06、約0.07、約0.08または約0.09%w/vである。
【0081】
加えて、本発明の組成物は1以上の保存剤を含み、それは抗菌特性を提供するが、さら
に安定性の利益を提供してもよい。組成物は最初に製造されたとき無菌であるが、複数回
使用のバイアルまたはカートリッジで組成物が提供される場合、製剤の他の成分と相溶性
である抗菌保存剤化合物または化合物の混合物が通常、規制上及び薬局方上の抗菌保存剤
の要件を満たすのに十分な強さで加えられる。U.S.Pharmacopeia Mo
nographs.Insulin lispro injection.USP29-
NF24;British Pharmacopeia Monographs 200
8 Volume III:Insulin aspart injection;U.
S.Pharmacopeia Monographs.Insulin assays
;及びU.S.Pharmacopeia general chapters.USP
29-NF24.Rockville,MD:U.S.Pharmacopeial C
onvention;2005.Antimicrobial effectivene
ss testing;pp.2499-2500を参照のこと。好まれる保存剤はアリ
ール酸及びフェノール化合物、またはそのような化合物の混合物である。
【0082】
従って、本発明の組成物は1以上の保存剤を含む。上記で参照された方法を用いて有効
な濃度を容易に突き止めることができる。インスリン製品で一般に使用される保存剤には
、フェノール(CAS番号108-95-2、分子式COH、分子量94.11,
)、及びm-クレゾール(CAS番号108-39-4、分子式CO、分子量10
8.14)が挙げられる。現在の市販の組成物は、たとえば、3.15mg/mLのm-
クレゾール(HUMALOG(登録商標)及びAPIDRA(登録商標))、1.72m
g/mLのm-クレゾール及び1.50mg/mLのフェノール(NOVOLOG(登録
商標))、ならびに2.5mg/mLのm-クレゾール(HUMULIN(登録商標)R
U-500)を含有する。本発明の組成物は1以上の保存剤を含む。実施形態では、保存
剤はフェノール及びメタクレゾール及びそれらの混合物から成る群から選択される。好ま
しくは、保存剤はメタクレゾールである。特定の実施形態では、メタクレゾールの濃度は
約2.5mg/mL~約3.8mg/mLである。好ましくは、メタクレゾールの濃度は
約3.15mg/mLである。
【0083】
体液とほぼ等張ではない溶液は投与された際、痛く刺すような感覚を生じ得るので、組
成物を投与する際、注射部位での体液の等張性(すなわち、浸透圧)に出来るだけ近くほ
ぼ一致することが望ましい。従って、組成物は注射の部位での体液とほぼ等張であること
が望ましい。等張化剤の非存在下で組成物の浸透圧が組織の浸透圧(血液については30
0mOsmol/kg;浸透圧についての欧州薬局方の要件は>240mOsmol/k
gである)よりも十分に低ければ、そのときは、等張化剤を一般に加えて組成物の等張性
を約300mOsmol/kgまで上げるべきである。典型的な等張化剤はグリセロール
(グリセリン)及び塩化ナトリウムである。等張化剤の添加が必要とされるのであれば、
グリセロールが好まれる。添加される等張化剤の量は標準の技法を用いて容易に決定され
る。Remington:The Science and Practice of
Pharmacy,David B.Troy and Paul Beringer,
eds.,Lippincott Williams & Wilkins,2006,
pp.257-259;Remington:Essentials of Pharm
aceutics,Linda Ed Felton,Pharmaceutical
Press,2013,pp.277-300。特定の実施形態では、グリセロールの濃
度は約1~約16mg/mLである。
【0084】
特定の実施形態では、医薬組成物は保存及び使用の条件下では安定である。本明細書で使用されるとき、用語「安定な」は、たとえば、5%未満のインスリン効能の喪失、1.5%以下のA-21デスアミドの形成、4%以下のインスリン及びA-21デスアミド以外の物質(まとめて他の関連物質(ORS)と呼ばれる)の発生、1.5%未満の高分子量(HMW)形成、及び沈殿のない透明で無色の溶液の維持によって示されるような化学的及び物理的双方の安定性を指す。そのような特性は、たとえば、以下で記載される試験にて要約されるものを含む既知の技法によって測定されてもよい。特定の実施形態では、医薬組成物は2~8℃で少なくとも24ヵ月の保存を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で28日までの使用を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、2~8℃で少なくとも36ヵ月の保存を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、医薬組成物は、再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で32日までの使用を可能にするほど安定である。特定の実施形態では、組成物は、7日間まで連続皮下インスリン注入療法のためのポンプ装置での使用を可能にするほど安定である。
【0085】
上記で言及されたように、時間作用における改善に寄与するために添加されるクエン酸
塩は、特定のpHレベルで緩衝特性を有することも知られているが、所望であれば、追加
の緩衝化合物を含めてもよい。そのような緩衝化合物の例は、たとえば、二塩基リン酸ナ
トリウムのようなリン酸緩衝液、または酢酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)
アミノメタン(TRIS)である。リン酸塩またはTRISの緩衝液が好まれる。市販の
インスリン組成物のpHは普通7.2~7.6の範囲であり、一般的な目標pHとしては
7.4±0.1である。本発明の組成物のpHは通常7.0~7.8であり、それは、生
理的に適当な酸及び塩基、通常、塩酸10%及び水酸化ナトリウム10%を用いて調整さ
れる。好ましくは、pHは約7.4である。
【0086】
本発明の組成物の投与の経路は、静脈内、皮内または腹腔内の経路も使用されてもよい
けれども、通常、たとえば、注射器またはペン型用具による自己投与される皮下注射によ
る、または、インスリンポンプ装置による連続皮下インスリン注入療法によるであろう。
好ましくは、投与の経路は自己投与される皮下注射による。注射される活性剤の用量は患
者の主治医と相談して患者によって決定されるであろう。
【0087】
本発明の追加の実施形態には以下で記載されるものが含まれる。
インスリン、クエン酸塩、亜鉛、マグネシウム、塩化物、界面活性剤及び保存剤を含む医
薬組成物。
【0088】
インスリンがヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルトまたはイン
スリングルリジンから成る群から選択される、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0089】
インスリンがインスリンリスプロである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0090】
インスリン濃度が約100~500U/mLである、上述の実施形態のいずれかの医薬
組成物。
【0091】
インスリン濃度が約100~300U/mLである、上述の実施形態のいずれかの医薬
組成物。
【0092】
インスリン濃度が約100~200U/mLである、上述の実施形態のいずれかの医薬
組成物。
【0093】
インスリン濃度が約100U/mLである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
インスリン濃度が約100U/mLである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0094】
クエン酸塩の濃度が約10~約35mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0095】
クエン酸塩の濃度が約10~約30mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0096】
クエン酸塩の濃度が約15~約35mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0097】
クエン酸塩の濃度が約15~約30mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0098】
クエン酸塩の濃度が約15~約25mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0099】
クエン酸塩の濃度が約15~約20mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0100】
クエン酸塩の濃度が約20~約25mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0101】
亜鉛の濃度が約0.2~約2mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0102】
亜鉛の濃度が約0.3~約1mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0103】
亜鉛の濃度が約0.4~約1mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0104】
亜鉛の濃度が約0.6~約0.9mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0105】
マグネシウムのクエン酸塩に対するモル比が約1:10~約1:2である、上述の実施
形態のいずれかの医薬組成物。
【0106】
マグネシウムのクエン酸塩に対するモル比が約1:5~約1:3である、上述の実施形
態のいずれかの医薬組成物。
【0107】
マグネシウムの濃度が約1~約15mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0108】
マグネシウムの濃度が約1~約5mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0109】
マグネシウムの濃度が約5~約10mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成
物。
【0110】
マグネシウムの濃度が約10~約15mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組
成物。
【0111】
マグネシウムの濃度が約3~約8mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0112】
マグネシウムの濃度が塩化マグネシウムの包含を介して提供される、上述の実施形態の
いずれかの医薬組成物。
【0113】
総塩化物の濃度が約10~約60mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0114】
総塩化物の濃度が約15~約35mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0115】
総塩化物の濃度が約15~約30mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0116】
総塩化物の濃度が約20~約25mMである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0117】
組成物が約1から約50mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む、上述の実施形態のい
ずれかの医薬組成物。
【0118】
組成物が約1から約25mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む、上述の実施形態のい
ずれかの医薬組成物。
【0119】
組成物が約1から約20mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む、上述の実施形態のい
ずれかの医薬組成物。
【0120】
界面活性剤の濃度が約0.001~約0.2%w/vである、上述の実施形態のいずれ
かの医薬組成物。
【0121】
界面活性剤がポロキサマー188である、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0122】
ポロキサマー188の濃度が約0.003~約0.2%w/vである、上述の実施形態
のいずれかの医薬組成物。
【0123】
ポロキサマー188の濃度が約0.03~約0.12%w/vである、上述の実施形態
のいずれかの医薬組成物。
【0124】
ポロキサマー188の濃度が約0.06~約0.09%w/vである、上述の実施形態
のいずれかの医薬組成物。
【0125】
保存剤がフェノール及びメタクレゾールから成る群から選択される、上述の実施形態の
いずれかの医薬組成物。
【0126】
保存剤がメタクレゾールである、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0127】
メタクレゾールの濃度が約2.5~約3.8mg/mLである、上述の実施形態のいず
れかの医薬組成物。
【0128】
さらに等張化剤を含む、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0129】
等張化剤としてグリセロールを含む、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0130】
約1~約16mg/mLの濃度で等張化剤としてグリセロールを含む、上述の実施形態
のいずれかの医薬組成物。
【0131】
さらに追加の緩衝液を含む、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0132】
組成物のpHが約7.0~約7.8である、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0133】
組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なく
とも20%迅速である血中へのインスリンの取り込みを提供する、上述の実施形態のいず
れかの医薬組成物。
【0134】
組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なく
とも20%迅速である作用の発現を提供する、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0135】
組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なく
とも30%迅速である血中へのインスリンの取り込みを提供する、上述の実施形態のいず
れかの医薬組成物。
【0136】
組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なく
とも30%迅速である作用の発現を提供する、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0137】
組成物が2~8℃で少なくとも24ヵ月の保存を可能にするほど安定である、上述の実
施形態のいずれかの医薬組成物。
【0138】
組成物が再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で28日までの使用を可能にするほど安定である、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0139】
組成物が2~8℃で少なくとも36ヵ月の保存を可能にするほど安定である、上述の実
施形態のいずれかの医薬組成物。
【0140】
組成物が再利用できるペン型注入器におけるバイアル用またはカートリッジ用に30℃までの温度で32日までの使用を可能にするほど安定である、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0141】
組成物が7日間までの連続皮下インスリン注入療法のためのポンプ装置での使用を可能
にするほど安定である、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0142】
組成物が追加のキレート剤を含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0143】
組成物がEDTAを含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0144】
組成物が、EDTA、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、アルギン酸、アルファ
リポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、または1,2-ジアミノシクロヘキサン四
酢酸(CDTA)を含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0145】
組成物がどんな血管拡張剤も含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0146】
組成物がどんなニトログリセリンも含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物
【0147】
組成物が、アデノシン、内皮由来過分極因子、ホスホジエステラーゼ5型(PDES)
阻害剤、カリウムチャンネル開口薬、プロスタサイクリン、フォルスコリン、ニトログリ
セリン、酸化窒素形成剤、亜硝酸アミル、またはニトロプルシドを含まない、上述の実施
形態のいずれかの医薬組成物。
【0148】
組成物がどんなオリゴ糖も含まない、上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0149】
それを必要とするヒトに有効用量の上述の実施形態のいずれかの医薬組成物を投与する
ことを含む、糖尿病を治療する方法。
【0150】
治療法で使用するための上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0151】
糖尿病の治療で使用するための上述の実施形態のいずれかの医薬組成物。
【0152】
糖尿病の治療のための薬物の製造において使用するための上述の実施形態のいずれかの
医薬組成物。
【0153】
上述の実施形態のいずれかの医薬組成物のいずれか1つを含む複数回使用バイアル。
【0154】
上述の実施形態のいずれかの医薬組成物のいずれか1つを含む再使用できるペン型注入
器。
【0155】
上述の実施形態のいずれかの医薬組成物のいずれか1つを含む連続皮下インスリン注入
療法のためのポンプ装置。
【0156】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、それらは限定として解釈されるべ
きではない。
【実施例
【0157】
薬物動態試験及び薬物力学試験
35mMのクエン酸塩と0.3mMの亜鉛と5mMのMgClと23mMのNaClと
共に製剤化されたインスリンリスプロ
以前固定した血管アクセスポートを持つ糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オス
のユカタンミニブタをスタッフ及び獣医の監督のもとで使用した。糖尿病の動物は個別に
飼育し、新鮮な水を自由摂取させる。1日2回の標準餌の食餌を与え、1日2回の適当な
維持基準及び食餌時のインスリンを与えて糖尿病状態を管理する。
【0158】
試験物品(以下の表における組成物A)を製剤化し、試験場所に送ったが、Humal
og(登録商標)インスリン対照は試験場所でのその場の市販のバイアルだった。
表1
【表2】
【0159】
試験の前日、動物には1日の分配量の半分の餌を与え、朝の維持投与で0.2U/kg
のHumalog(登録商標)Mix75/25インスリンを投与した。試験動物すべて
を一晩絶食させ、試験日での薬剤投与に先立って夕方のインスリンまたは餌を与えなかっ
た。
【0160】
試験の朝、拘束するために動物すべてをスリングに入れ、血管アクセスポート(採血の
ために設けた)にアクセスし、開存性をチェックした。動物を無作為に処理群に入れた。
これはn=13での完全なクロスオーバー計画だった。1匹の動物が組成物A処理群に参
加しなかったので、その処理群ではn=12だった。
【0161】
2回のベースライン血液試料(-30分と-20分)を採取した後、動物を檻に戻し、
約300gを食べさせた。完全な餌の消費の提示の20分後、Terumoインスリン注
射器(1/2”の針で0.3または0.5mL)によって試験物品を動物の脇腹の皮下に
注射した(0分)。残りの採血期間全体を通して試験動物はすべて清潔で新鮮な水にアク
セスさせた。
【0162】
以下の時点:-30、-20(次いで直ちに餌を与えた)、0(投与直前)、皮下投与
後5、10、15、30、45、60、75、90、105、120、150、180、
240及び360分にて各動物から連続血液試料(各2.0mL)を採取した。
【0163】
血液試料(抗凝固剤:なし[血清])を少なくとも30分間、しかし、2時間を超えず
に常温で維持して凝固させた。次いで遠心分離によって血清を分離し、2つのアリコート
に分け、ほぼ-70℃で凍結保存した。
【0164】
血清グルコース濃度は、自動AU480臨床検査分析器(Beckman Coult
er,Inc.,Brea,California)を用いて測定した。PK用のアリコ
ートは翌日配送サービスによってドライアイス上でEMD Millipore Cor
p.,St.Charles,MOに送り、詳細な試料伝票を含めた。
【0165】
血清グルコースのデータは指定されない限り、平均値(mg/dL)±SEMとして以
下の表2に示す。
表2
【表3】
【0166】
異なる時点で異なる製剤のもとで血清グルコースの変化を統計的に比較するために、微
分解析を利用した。各時点での血中グルコースの変化は現時点での一次微分係数(瞬間方
向変化)を特徴とする。次数10までの多項式を各個動物の時間経過データに当て嵌める
。Bayesian情報基準(BIC)を用いて多項式の最適な次数を選択する。各時点
での変化の比率をその時点での適合させた多項式曲線の微分係数として算出する。いった
ん微分係数が得られると、ANOVAモデルを当て嵌めて各時間での異なる製剤を比較す
る。動物ごとの変動はANOVAモデルで説明される。対比を構築して異なる製剤を比較
し、Rパッケージ「multcomp」を用いてp値を調整する。時間0の後に動物に投
与するので、時間0は解析に含まれない。150分を超える時点については、微分係数を
堅実に推定するのに十分な時点はないので、これらの時点は統計的解析から除外される。
【0167】
組成物AはHumalog(登録商標)に比べて、投与後5、10及び15分で有意に
(p≦0.01)速い血清グルコースの低下を生じた。
【0168】
総インスリンRIAを用いて、組成物A処理群及びHumalog(登録商標)処理群
について血清PK試料のインスリンレベルを測定した。アッセイについての定量の下限及
び上限はそれぞれ20pM及び5000pMである。定量の下限を下回る値は20pMで
あると見なされる。Phoenix WinNonlin v6.3を用いて非コンパー
トメント薬物動態解析を行う。
表3
【表4】

略記:Tmax=最大濃度までの時間、Cmax=最大濃度、AUCINF=0から無限
までの曲線下面積、CL/F=クリアランス/生体利用効率
Tmaxの平均値及び中央値はHumalogよりも組成物Aにおいてそれぞれ55%及
び72%速い。
【0169】
25~35mMのクエン酸塩と0.285mMの亜鉛と5mMのMgClと15~23
mMのNaClと共に製剤化されたインスリンリスプロ
【0170】
一般に上述の手順に従って糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オスのユカタンミ
ニブタにて、種々の濃度のクエン酸塩及び亜鉛、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを
含む組成物の試験を行う。
【0171】
試験物品(以下の表における組成物A’及びB)を製剤化し、試験場所に送り、Hum
alog(登録商標)インスリン対照は試験場所でのその場の市販のバイアルである。
表4
【表5】
【0172】
試験は、ブタすべてを処理すべてにおいて検討する21匹のブタの完全クロスオーバー
計画として設計する(n=21)。1匹の動物が<200mg/dlのベースライン血糖
のためにHumalog(登録商標)処理群から除外され、1匹の動物が非特許ポートの
ためにHumalog(登録商標)処理群から除外されるので、その処理群ではn=19
である。1匹の動物が注射時の用量の報告ミスのために組成物A’処理群から除外される
ので、その処理群ではn=20である。1匹の動物が<200mg/dlのベースライン
血糖のために組成物B処理群から除外されるので、その処理群ではn=20である。
【0173】
血清グルコースのデータは平均値(mg/dL)±SEMとして以下の表5にて提示さ
れる。
表5
【表6】
【0174】
異なる時点で異なる製剤のもとで血清グルコースの変化を統計的に比較するために、一
般に上述の手順に従って、微分解析を利用した。組成物A’及びBはそれぞれ、Huma
log(登録商標)に比べて投与後5、10及び15分で血清グルコースにて有意に(p
≦0.01)速い低下を生じた。
【0175】
血清インスリン濃度及びPKパラメータを生成し、上述のように一般に解析し、PKの
結果を以下の表6にて提供する。
表6
【表7】

中央値Tmaxは、Humalog(登録商標)よりも組成物A’及びBにおいて33%
及び67%速く、平均値TmaxはHumalogよりも組成物Bにて48%速い。
【0176】
15mMのクエン酸塩と0.285mMの亜鉛と5mMのMgClと15mMのNaC
lと共に製剤化されたインスリンリスプロ
【0177】
一般に上述の手順に従って糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オスのユカタンミ
ニブタにて、クエン酸塩、亜鉛、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む組成物で試
験を行う。組成物Cを製剤化し、試験場所に送り、Humalog(登録商標)対照は市
販のバイアルである。
表7
【表8】
【0178】
試験は、ブタすべてを処理すべてにおいて検討する13匹のブタの完全クロスオーバー
計画として設計する(n=13)。1匹の動物が<200mg/dlのベースライン血糖
のために組成物C処理群から除外され、1匹の動物が注射時の用量の報告ミスのために組
成物C処理群から除外されるので、結果的にその処理群ではn=11である。
【0179】
血清グルコースのデータは平均値(mg/dL)±SEMとして以下の表8にて提示す
る。

表8
【表9】
【0180】
組成物CはHumalog(登録商標)対照のプロファイルに比べてグルコースのプロ
ファイルでシフトを生じた。
【0181】
血清インスリン濃度及びPKパラメータを生成し、上述のように一般に解析し、PKの
結果を以下の表9にて提供する。
表9
【表10】

Tmaxの平均値及び中央値はそれぞれ、Humalogよりも組成物Cにて28%及び
25%速い。
【0182】
25mMのクエン酸塩と0.285mMの亜鉛と25mMのNaClと共に製剤化され
たインスリンリスプロ
【0183】
一般に上述の手順に従って糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オスのユカタンミ
ニブタにて、25mMのクエン酸塩、亜鉛、及び塩化ナトリウムを含む組成物で試験を行
う。
【0184】
試験物品(以下の表における組成物D)を製剤化し、試験場所に送り、Humalog
(登録商標)インスリン対照は試験場所でのその場の市販のバイアルだった。
表10
【表11】
【0185】
この試験は、同じ用量でのHumalog(登録商標)と比較される3つの用量(0.
1、0.2及び0.4単位/kg)の組成物Dから成る。試験は、ブタすべてを処理すべ
てにおいて検討する21匹のブタの完全クロスオーバー計画として設計する(n=21)
。0.4単位/kgの用量については、2匹の動物を組成物D処理群から除外した(1匹
は病気のために及び1匹はポート非特許性のために)ので、その処理群ではn=19だっ
た。1匹の動物がHumalog(登録商標)0.4単位/kg処理群から除外された(
ポート非特許性のために)ので、その処理群ではn=20だった。他の用量すべては各群
でn=21だった。
【0186】
血清グルコースのデータは平均値(mg/dL)±SEMとして表11にて提示する。
表11
【表12】
【0187】
異なる時点で異なる製剤のもとで血清グルコースの変化を統計的に比較するために、一
般に上述の手順に従って、微分解析を利用した。それぞれ同じ用量でのHumalog(
登録商標)に対して比較すると、組成物Dの3つの用量(0.1、0.2及び0.4U/
kg)はすべて5、10及び15分の時点での血糖レベルで有意に(p≦0.01)速い
低下を生じる。
【0188】
薬物動態解析については、オンラインの無作為化ツールを用いて11匹のブタを無作為
に選択した。これらのブタについての血清PK試料のためのインスリンレベルを、総イン
スリンRIAを用いて測定する。アッセイについての定量の下限及び上限はそれぞれ20
pM及び5000pMである。定量の下限を下回る値は20pMであると見なされる。P
hoenix WinNonlin v6.3を用いて非コンパートメント薬物動態解析
を行う。
表12
【表13】

中央値Tmaxの値は、Humalog(登録商標)による同じ用量に比べて0.1U/
kg、0.2U/kg及び0.4U/kgの組成物D群にて67%、50%及び40%速
い。平均値Tmaxの値は、Humalog(登録商標)による同じ用量に比べて0.1
U/kg及び0.4U/kgの組成物D群にて20%及び35%速かった。総曝露及びC
maxは、0.2U/kg及び0.4U/kgの用量にてHumalog(登録商標)よ
りも組成物Dで大きいと思われる。
【0189】
25mMのクエン酸塩と5mMのMgClと共に製剤化されたヒトインスリン、イン
スリンアスパルト及びインスリングルリジン
【0190】
一般に上述の手順に従って糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オスのユカタンミ
ニブタにて、3種の異なるインスリン、25mMのクエン酸塩及び塩化マグネシウムを含
む組成物で試験を行う。
【0191】
HUMULIN-R(登録商標)、NOVOLOG(登録商標)及びAPIDRA(登
録商標)の市販のバイアルに十分なクエン酸塩と塩化マグネシウムとを加え、25mMの
クエン酸塩と5mMの塩化マグネシウムの濃度に達することによって試験物品(以下の表
における組成物E、F及びG)を製剤化する。
表13
【表14】
【0192】
試験は、ブタすべてを処理すべてにおいて検討する完全クロスオーバー計画として設計
する(n=20)。1匹の動物が<200mg/dlのベースライン血糖のために組成物
F処理群から除外されるので、結果的にその群ではn=19である。血清グルコースのデ
ータは平均値(mg/dL)±SEMとして表14にて提示する。
【0193】
表14
【表15】
【0194】
インスリンアスパルト及びヒトインスリンのクエン酸塩含有製剤はそれぞれ、Novo
log(登録商標)及びHumulin-R(登録商標)の対照に比べてグルコースのプ
ロファイルにてシフトを生じる。インスリングルリジンのクエン酸塩含有製剤は、Api
dra(登録商標)対照に比べて投与の後、最初のおよそ90分間であまり顕著ではない
シフトを生じる。
【0195】
種々の濃度のクエン酸塩とMgClと亜鉛と界面活性剤とNaClと共に製剤化された
インスリンリスプロ
【0196】
一般に上述の手順に従って糖尿病(アロキサンで誘導された)の去勢オスのユカタンミ
ニブタにて、種々の濃度のクエン酸塩、塩化マグネシウム、亜鉛、界面活性剤及び/また
は塩化ナトリウムを含む組成物で試験を行う。
【0197】
以下の表における試験組成物H及びJはバルクインスリンリスプロの医薬品有効成分(
API)から調製され、以下の表における試験物品I及びKはHumalog(登録商標
)製剤のバイアルにクエン酸塩と示した安定剤とを加えることによって調製され、それら
を試験場所に送付し、Humalog(登録商標)インスリン対照は試験場所でのその場
の市販のバイアルである。
表15
【表16】
【0198】
試験は、ブタすべてを処理すべてにおいて検討する完全クロスオーバー計画として設計
する(n=19)。1匹の動物が、ポート障害または動物の状態のために組成物I、J及
びKの処理群のそれぞれから除外されるので、結果的にそれらの処理群ではn=18であ
る。血清グルコースのデータは平均値(mg/dL)±SEMとして表16にて提示する
【0199】
表16
【表17】
【0200】
クエン酸塩含有の製剤はHumalog(登録商標)対照に比べてグルコースのプロフ
ァイルにてシフトを生じる。
【0201】
Humalog(登録商標)及び組成物H、J及びKについての血清インスリン濃度及
びPKパラメータを生成し、上述のように一般に解析し、PKの結果を以下の表17にて
提供する。
表17
【表18】
【0202】
結果は、組成物H、J及びKがHumalog(登録商標)よりも速いPKの作用発現
を有することを示している。
【0203】
安定性試験
種々の濃度のクエン酸塩と塩化ナトリウムと塩化マグネシウムと共に製剤化されたインス
リンリスプロ
【0204】
加速保存可能期間安定性試験を行って、種々の濃度のクエン酸塩、塩化ナトリウム、及
び任意で塩化マグネシウムと同時製剤化された場合のインスリンリスプロの安定性を評価
する。以下の表で述べられる組成を有する安定性試料は、以下の表で示される他の賦形剤
と共にインスリンリスプロの医薬品有効成分を製剤化することによって(組成物L、M及
びN)、またはHumalog(登録商標)製剤のバイアルにクエン酸塩と塩化ナトリウ
ムとを加えることによって(組成物O)調製される。
表18
【表19】
【0205】
0.22ミクロンのPVDF膜(Cat番号SLGV013SL,Millex,Mi
llipore)を用いて溶液を濾過し、上にネジ蓋の付いた(Cat番号C4015-
67A,National Scientific,Thermo Scientifi
c,Inc)ガラス製のバイアル(Cat番号NC4015-1,National S
cientific,Thermo Scientific,Inc.)に分配し、それ
ぞれ2~8℃及び30℃でインキュベートする。30℃のインキュベート温度から分析の
ために開始時、8、16、27、36、44、54及び66日の時点で試料を取り出した
。5℃のインキュベート温度から分析のために開始時、27、36、44、54及び66
日の時点で試料を取り出す。
【0206】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)解析を行って、タンパク質
の有効性を評価し、276nmでUV検出器を用いて安定性の時点での各組成物における
高分子量種を定量する。25分の流れ時間にわたって定組成溶出の移動相(0.1%TF
A、50%ACN)にて1.0mL/分の流速でSepax Zenix-C SEC-
80、7.8×300mmの3μm粒子のカラム(catalog番号233080-7
830)を用いて室温にて各試料(10μL)を分離する。インスリン濃度は、インスリ
ンリスプロの基準面積とインスリンのピーク面積を比較し、逆相HPLCにより決定され
た純度について調整することによって算出される。IU/mLで報告された結果を以下で
示す。
表19
【表20】

表20
【表21】
【0207】
クエン酸塩含有の試料及びHumalog(登録商標)対照試料のインスリンの損失は
4℃及び30℃で66日目まで試料すべてについて5%未満である。
【0208】
高分子量の比率(%HMW)は主ピークに先立って溶出するピークすべての総面積%を
積分することによって算出される。結果(%HMW)を以下の表で示す。
表21
【表22】

表22
【表23】
【0209】
HMWの形成は、クエン酸塩含有の試料及びHumalog(登録商標)対照試料のす
べてについて4℃及び30℃で66日目まで1%未満である。
【0210】
逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)解析を行って、214nmでのUV
検出器を用いて安定性の時点で各組成物におけるタンパク質の純度を評価する。移動相A
(50mMの硫酸塩、pH2.3+20%アセトニトリル(v/v))及び移動相B(5
0mMの硫酸塩、pH2.3+50%アセトニトリル(v/v))による0.6mL/分
の流速でのWaters BioSuite C18 PA-B、3.5μm、2.1×
150mmのHPLCカラム(Part番号186002435)、または匹敵するカラ
ムを用いることによって各試料(5μL)を40℃にて分離する。0、3、15、21、
26、27、27.5及び35.0分での移動相Bの勾配はそれぞれ、21、25、25
、30、80、80、21及び21%である。主ピークとA-21デスアミドの外側にあ
る試料の比率は、100パーセントから主ピークの比率とA-21デスアミドの比率を差
し引くことによって決定される。まとめて、これらのピークは他の関連物質(ORS)と
見なされる。結果(主ピークとA-21デスアミドの外側の%)を以下で示す。
表23
【表24】

表24
【表25】
【0211】
クエン酸塩含有の試料及びHumalog(登録商標)対照試料のすべてについてのO
RSは4℃にて66日間で1.5%未満であり、30℃にて66日間で3.0%未満であ
る。
25mMのクエン酸塩と0.3mMの亜鉛と5mMのMgClと0.09%のポロキサ
マーと種々の濃度の塩化物と共に製剤化されたインスリンリスプロの物理的安定性
【0212】
バルク無菌操作用の水にて200U/mLのインスリンリスプロ/mLと32mgのグ
リセリン/mLと6.30mgのメタクレゾール/mLと0.6mMの亜鉛を含むリスプ
ロの濃縮ストック製剤を調製する。製剤は塩酸でpH調整を行い、インスリンリスプロを
溶解し、次いで水酸化ナトリウムで7.45のpHに合わせる。
【0213】
次いで、インスリンリスプロ濃縮液をクエン酸ナトリウム緩衝液、塩化マグネシウム6
水和物粉末、ポロキサマー188溶液、及び顆粒状塩化ナトリウムで希釈し、バルク無菌
操作用の適量の水で、23.2mM(組成物P)または17.7mM(組成物Q)の総塩
化物を伴った25mMのクエン酸塩、5mMのMgCl、0.09%のポロキサマー1
88、100単位/mLのリスプロ、16mg/mLのグリセリン、3.15mg/mL
メタクレゾール、及び0.3mMの亜鉛の組成物にすることによって試験製剤を調製する
【0214】
製剤を無菌濾過し、次いで容積測定して10mLのガラス製バイアルに移し、7mL満
たし、栓をしてクリンプシールする。
【0215】
13日間で、加速安定性試験(30℃、1分当たり75回のストロークで振盪(spm
))のバイアルは2、4、8及び13日目での目視検査を受ける。沈殿のない透明で無色
の溶液を含有するバイアルを「合格」としてスコア化されたと見なす一方で、粒子状物質
を含有するまたは透明ではない及び/または変色している溶液含有するバイアルを「不合
格」として記録する。データは表25にて以下で提供する。
表25
【表26】
【0216】
マグネシウムを伴って及び伴わずに25mMのクエン酸塩と0.3mMの亜鉛と0.0
9%のポロキサマーと23mMの総塩化物と共に製剤化されたインスリンリスプロの物理
的な安定性
【0217】
バルク無菌操作用の水にて200U/mLのインスリンリスプロ/mLと32mgのグ
リセリン/mLと6.30mgのメタクレゾール/mLと0.6mMの亜鉛を含むリスプ
ロの濃縮ストック製剤を調製する。製剤は塩酸でpH調整を行い、インスリンリスプロを
溶解し、次いで水酸化ナトリウムで7.45のpHに合わせる。
【0218】
次いで、インスリンリスプロ濃縮液をクエン酸ナトリウム緩衝液、ポロキサマー188
溶液、顆粒状塩化ナトリウム、任意で塩化マグネシウム6水和物粉末で希釈し、バルク無
菌操作用の適量の水で、25mMのクエン酸塩、0.09%のポロキサマー188、10
0単位/mLのリスプロ、16mg/mLのグリセリン、3.15mg/mLメタクレゾ
ール、0.3mMの亜鉛、23mMの総塩化物及び0mM(組成物R)または5mM(組
成物S)のMgClの組成物にすることによって試験製剤を調製する。
【0219】
製剤を無菌濾過し、次いで容積測定して10mLのガラス製バイアルに移し、7mL満
たし、栓をしてクリンプシールする。
【0220】
一般に上述の方法に続いて定期的な目視検査を伴う13日間の加速安定性試験にバイア
ルを供する。データは表26にて以下で提供する。
表26
【表27】
【0221】
結果は、マグネシウムが組成物Rに比べて組成物Sの安定性を改善したことを支持して
いる。
25mMのクエン酸塩と5mMのMgClと20mMの塩化物と0.6mMの亜鉛と0
.09%のポロキサマーと共に製剤化されたインスリンリスプロの物理的な安定性
【0222】
100U/mLのインスリンリスプロ、5mMのMgCl、20mMの塩化物、0.
6mMの亜鉛、0.09%w/vのポロキサマー188、5mg/mLのグリセリン、及
び3.15mg/mLメタクレゾール含む製剤(組成物T)で69日間の加速保存可能期
間試験を行う。
【0223】
HClの添加によりpHを下げることによってグリセリン、メタクレゾール、リスプロ
及び酸化亜鉛をバルク無菌操作用の水に溶解することによりバルク濃縮製剤を調製する。
NaOHでpHを7.4~7.5に合わせた後、組成物Tの最終的な目標賦形剤濃度を達
成するための適当な濃度のクエン酸塩と追加の安定剤の溶液を加える。この溶液は、バル
ク無菌操作用の水におけるクエン酸ナトリウム緩衝液と塩化亜鉛と塩化マグネシウム6水
和物とポロキサマー188とで構成される。必要に応じてpHを7.4~7.5に合わせ
た後、塩化ナトリウム溶液を加えて目標の総塩化物濃度を達成する。次いでバルク無菌操
作用の水によって製剤を適量の容積に合わせる。
【0224】
製剤を無菌濾過し、次いで容積測定して10mLのガラス製バイアルに移し、10.3
mL満たし、栓をしてクリンプシールする。バイアルを静止且つ直立にて30℃で保存し
、36日目と69日目に一般に上述の方法に従って目視検査する。各時点で検査したバイ
アルはすべて合格する(36日目でn=3、69日目でn=5)。これらの結果は、組成
物Tが加速保存可能期間試験にて沈殿がなく透明で且つ無色のままであることを支持して
いる。
【0225】
種々の濃度のクエン酸塩とマグネシウムと塩化物と亜鉛と界面活性剤とグリセリンとT
RISと共に製剤化されたインスリンリスプロ
【0226】
以下の7種の製剤の物理的な安定性を使用試験における32日間の模擬患者で調べる。
表27
【表28】
【0227】
HClの添加によりpHを下げることによってバルク無菌操作用の水に適当量のグリセ
リン、メタクレゾール、リスプロ、酸化亜鉛及び任意でTRISを溶解することにより濃
縮リスプロストック溶液を調製する。2つの濃縮溶液の組成は以下とおりである:(1)
200U/mLのリスプロ、12mMの総塩化物、10mg/mLのグリセリン、6.3
mg/mLのメタクレゾール、0.6mMの総亜鉛、及び(2)200U/mLのリスプ
ロ、51mMの総塩化物、2.6mg/mLのグリセリン、6.3mg/mLのメタクレ
ゾール、0.6mMの総亜鉛、80mMのTRIS。次いでNaOHまたはHClによっ
て溶液を7.4~7.5のpHに合わせ、バルク無菌操作用の水によって容積を合わせる
【0228】
クエン酸ナトリウム緩衝液、亜鉛のHCl溶液、pHを合わせるための水酸化ナトリウ
ム、塩化マグネシウム6水和物溶液、ポロキサマー188溶液、及び塩化ナトリウム溶液
を順次加えることによりリスプロストック溶液を希釈することによって試験組成物を調製
する。組成物を無菌濾過し、次いで容積測定してバルク無菌操作用の水で適量に容積を合
わせる。組成物を容積測定して10mLのガラス製バイアルに移し、10.3mL満たし
、栓をしてクリンプシールする。
【0229】
組成物を30℃で保存し、以下のステップで記載されているような疑似使用中投薬状態
に1日3回供する:インスリン注射器を入手し、8単位の空気を引き入れる;バイアルを
直立の位置におきながら針をバイアルに挿入する;針の先端がインスリン溶液に確実に触
れないようにする;バイアルに空気を注入する;針をバイアルの中で保持しながら、バイ
アルと注射器をひっくり返す;8単位の組成物を引き抜く;注射器に気泡があれば、プラ
ンジャーをゆっくり動かして気泡をバイアルに戻す;最終投与量が8単位であるように注
射器のプランジャーを調整する;注射器を取り出し、バイアルを30℃のインキュベータ
に戻す。
【0230】
一般に上述の方法に従って15、20、25、28及び32日目に目視検査を行う。デ
ータは表28にて提供される。
表28
【表29】
【0231】
まとめると、上述の試験は、特定の特別な濃度のクエン酸と、たとえば、亜鉛、マグネ
シウム、塩化物及び界面活性剤のような他の賦形剤とを伴ったインスリンの組成物は作用
のさらに速い発現を有すると共にさらに速いグルコース低下効果を有し、特定の実施形態
では、化学的に且つ物理的に安定であることを実証している。
【0232】
配列
ヒトのインスリンA鎖
GlyIleValGluGlnCysCysThrSerIleCysSerLeuTyrGlnLeuGluAsnTyrCysAsn(配列番号1)
ヒトのインスリンB鎖
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluAlaLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrThrProLysThr(配列番号2).
インスリンリスプロB鎖
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluAlaLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrThrLysProThr(配列番号3)
インスリンアスパルトB鎖
PheValAsnGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluAlaLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrThrAspLysThr(配列番号4)
インスリングルリジンB鎖
PheValLysGlnHisLeuCysGlySerHisLeuValGluAlaLeuTyrLeuValCysGlyGluArgGlyPhePheTyrThrProGluThr(配列番号5)

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
医薬組成物であって、
(a)インスリンと
(b)約10~約30mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約0.2~約2mMの濃度での亜鉛と、
(d)約1~約15mMの濃度でのマグネシウムと、
(e)約10~約60mMの濃度での総塩化物と
(f)約0.001~約0.2%w/vの濃度での界面活性剤と
(g)保存剤とを含む、前記医薬組成物。
[2]
前記インスリンがインスリンリスプロである[1]に記載の医薬組成物。
[3]
前記インスリンリスプロの濃度が約100~約500U/mLである[1]または[2]のいずれかに記載の医薬組成物。
[4]
前記クエン酸塩の濃度が約15~約25mMである[1]~[3]のいずれかに記載の医薬組成物。
[5]
前記亜鉛の濃度が約0.3~約1.1mMである[1]~[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]
前記マグネシウムの濃度が塩化マグネシウムの包含を介して提供される[1]~[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]
前記マグネシウムの濃度が約3~約8mMである[1]~[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8]
前記塩化物の濃度が約15~約35mMである[1]~[7]のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]
前記塩化物の濃度が約20~約25mMである[1]~[8]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]
約1から約50mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む[1]~[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]
約1から約25mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む[1]~[10]のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]
約1から約20mMに及ぶ濃度で塩化ナトリウムを含む[1]~[11]のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]
前記界面活性剤がポロキサマー188である[1]~[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[14]
前記ポロキサマー188の濃度が約0.003~約0.2%w/vである[13]に記載の医薬組成物。
[15]
前記ポロキサマー188の濃度が約0.03~約0.12%w/vである[14]に記載の医薬組成物。
[16]
前記ポロキサマー188の濃度が約0.06~約0.09%w/vである[15]に記載の医薬組成物。
[17]
前記保存剤が、フェノール及びメタクレゾール及びそれらの混合物から成る群から選択される[1]~[16]のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]
前記保存剤がメタクレゾールである[1]~[17]のいずれかに記載の医薬組成物。
[19]
前記メタクレゾールの濃度が約2.5~約3.8mg/mLである[18]に記載の医薬組成物。
[20]
さらに等張化剤を含む[1]~[19]のいずれかに記載の医薬組成物。
[21]
前記等張化剤がグリセロールである[20]に記載の医薬組成物。
[22]
さらに追加の緩衝液を含む[1]~[21]のいずれかに記載の医薬組成物。
[23]
前記組成物のpHが約7.0~約7.8である[1]~[22]のいずれかに記載の医薬組成物。
[24]
医薬組成物であって
(a)約100~約200IU/mLの濃度でのインスリンリスプロと
(b)約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約3~約8mMの濃度での塩化マグネシウムと、
(d)約0.6~約0.9mMの濃度での亜鉛と、
(e)約20~約25mMの濃度での総塩化物と、
(f)約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、
(g)約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、
前記組成物のpHが約7.0~7.8である、前記医薬組成物。
[25]
医薬組成物であって
(a)100IU/mLの濃度でのインスリンリスプロと
(b)約25mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約0.9mMの濃度での亜鉛と、
(d)約5mMの濃度での塩化マグネシウムと、
(e)約20~約25mMの濃度での総塩化物と、
(f)約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、
(g)約3.15mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、
前記組成物のpHが約7.4である、前記医薬組成物。
[26]
医薬組成物であって
(a)200IU/mLの濃度でのインスリンリスプロと
(b)約15~約25mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約3~約8mMの濃度での塩化マグネシウムと、
(d)約0.6~約0.9mMの濃度での亜鉛と、
(e)約20~約25mMの濃度での総塩化物と、
(f)約0.06~約0.09%w/vの濃度でのポロキサマー188と、
(g)約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、
(h)前記組成物のpHが約7.0~7.8である、前記医薬組成物。
[27]
医薬組成物であって
(a)約100~約200IU/mLの濃度でのインスリンと
(b)約15~約35mMの濃度でのクエン酸塩と、
(c)約5mMまでの濃度での塩化マグネシウムと、
(d)約0.2~約0.8mMの濃度での亜鉛と、
(e)約15~約25mMの濃度での塩化ナトリウムと、
(f)界面活性剤と、
(g)約2.8~約3.5mg/mLの濃度でのメタクレゾールとを含み、
(h)前記組成物のpHが約7.0~7.8である、前記医薬組成物。
[28]
前記組成物が、同じインスリンを含有するが、クエン酸塩を含有しない組成物よりも少なくとも20%迅速である血中へのインスリンの取り込みを提供する[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[29]
前記組成物が、2~8℃で少なくとも24ヵ月の保存及び30℃までの温度で28日までの使用中を可能にするほど安定である[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[30]
前記組成物がEDTAを含まない[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[31]
前記組成物がどんな血管拡張剤も含まない[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[32]
前記組成物がどんなオリゴ糖も含まない[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[33]
それを必要とするヒトに有効用量の[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、糖尿病の治療方法。
[34]
治療法で使用するための[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[35]
糖尿病の治療で使用するための[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[36]
糖尿病の治療のための薬物の製造における[1]~[27]のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
[37]
[1]~[27]に記載の医薬組成物のいずれか1つを含む製造物品。
[38]
複数回使用のバイアルである[37]に記載の製造物品。
[39]
再利用できるペン型注入器である[37]に記載の製造物品。
[40]
連続皮下インスリン注入療法のためのポンプ装置である[37]に記載の製造物品。

【配列表】
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