(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】階段昇降台車
(51)【国際特許分類】
B62D 55/075 20060101AFI20220623BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20220623BHJP
B62D 57/024 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B62D55/075 A
B62B5/02 C
B62D57/024 P
(21)【出願番号】P 2018122628
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿 篤司
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-071362(JP,U)
【文献】特開平10-129541(JP,A)
【文献】特開昭63-087364(JP,A)
【文献】特開平10-264865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0037789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/075
B62B 5/02
B62D 57/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段としてのクローラと、
荷台と、
前記クローラを駆動する走行駆動部と、
前記荷台の角度を変更する角度変更部と、
オペレータによって把持されるハンドルと、
前記走行駆動部と前記角度変更部を操作する操作部と、
前記荷台の傾斜角度を検知する荷台傾斜計と、
前記荷台傾斜計で検知された前記荷台の傾斜角度に基づいて、前記オペレータに警報を発報する警報装置と、を備え、
前記警報装置は、前記荷台の傾斜角度をθとし、傾斜角度の下限値をT1とし、傾斜角度の上限値をT2とする場合で、かつ、T1<θ<T2の条件を満たさないときに、前記警報を発報する
とともに、上側フロアの床面又は下側フロアの床面を目的地とし、少なくとも階段昇降台車が前記目的地に到達したことが検知されるまで、前記条件を満たすか否かを繰り返し判定する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【請求項2】
請求項
1に記載の階段昇降台車において、
前記警報装置は
、階段昇降台車が前記目的地に到達したときに、前記オペレータに到達通知を発報する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【請求項3】
請求項
2に記載の階段昇降台車において、
前記警報装置は、前記警報のパターンとは異なるパターンで前記到達通知を発報する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【請求項4】
請求項
1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の階段昇降台車において、
前記警報装置は、水平方向に対する前記クローラの角度に基づいて
、階段昇降台車が前記目的地に到達したか否かを判定する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の階段昇降台車において、
前記警報装置は、スピーカを有しており、前記警報として警報音を前記スピーカで発報する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の階段昇降台車において、
前記警報装置は、ディスプレイを有しており、前記警報として警報画面を前記ディスプレイに表示する
ことを特徴とする階段昇降台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段昇降台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物を荷台に搭載した状態で階段を昇降する装置として階段昇降台車が普及している。この種の階段昇降台車は、走行手段としてのクローラと、荷物を搭載する荷台と、オペレータが把持するハンドルと、を有している。階段昇降台車のオペレータは、ハンドルを把持しながら操作部を操作してクローラを走行させることで、階段昇降台車に階段を昇降させる。その際に、階段昇降台車は、荷台の角度を変更する(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載された装置は、車いす用のものであるが、階段昇降台車は、車いすに限らず、様々な物品を運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の階段昇降台車は、以下に説明するように、多大な負担をオペレータに強いる、という課題があった。
【0005】
例えば、階段昇降台車は、比較的重たい荷物を荷台に搭載した状態で階段を昇降する。その際に、階段昇降台車は、特に、荷物の重心が前後方向に移動し易い場所で、前後方向にバランス(姿勢)を崩し易い。そのような場所としては、例えば、上側フロアの床面付近や、下側フロアの床面付近等がある。
【0006】
例えば、階段を昇る場合において、オペレータが、階段昇降台車よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車を操作するものとする。この場合において、階段昇降台車が下側フロアから階段を昇り始めるときに、階段昇降台車は水平な状態から階段の角度に傾き始める。このとき、荷物の重心が階段下側方向(進行方向の逆側)に移動する。そのため、階段昇降台車は、階段下側方向(進行方向の逆側)にバランスを崩し易くなる。そして、階段昇降台車が階段を昇り続け、上側フロアの床面(階段の最上段)に到達したときに、クローラの進行方向側の先端部が階段に当接しなくなる。そのため、階段昇降台車は、階段上側方向(進行方向側)に傾くように動作する。このとき、荷物の重心が階段上側方向(進行方向側)に移動する。そのため、階段昇降台車は、階段上側方向(進行方向側)にバランスを崩し易くなる。
【0007】
また、例えば、階段を降る場合において、オペレータが、階段昇降台車よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車を操作するものとする。この場合において、階段昇降台車が上側フロアの床面(階段の最上段)から階段を降り始めるときに、クローラの進行方向側の先端部が階段に当接しなくなる。そのため、階段昇降台車は、階段下側方向(進行方向)に傾くように動作する。このとき、荷物の重心が階段下側方向(進行方向)に移動する。そのため、階段昇降台車は、階段下側方向(進行方向)にバランスを崩し易くなる。そして、階段昇降台車が階段を降り続け、下側フロアの床面に到達したときに、クローラの進行方向側の先端部が下側フロアの床面に突き当たる。そのため、階段昇降台車は、階段上側方向(進行方向の逆側)に傾くように動作する。このとき、荷物の重心が階段上側方向(進行方向の逆側)に移動する。そのため、階段昇降台車は、階段上側方向(進行方向の逆側)にバランスを崩し易くなる。
【0008】
そこで、オペレータは、階段昇降台車のバランスが崩れないように、階段昇降台車の昇降操作と荷台の傾斜角度の変更操作を慎重に行っていた。しかしながら、従来の階段昇降台車は、その際に、荷台の傾斜角度が適切であるのか否かをオペレータに認識させる手段を有していなかった。そのため、オペレータは、昇降動作の開始から終了までの全期間を通して、荷台の傾斜角度を自身の感覚で推し量りつつ、階段昇降台車の昇降操作と荷台の傾斜角度の変更操作を行っていた。このような従来の階段昇降台車は、階段の昇降時に多大な負担をオペレータに強いていた。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、オペレータの負担を軽減する階段昇降台車を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、階段昇降台車であって、走行手段としてのクローラと、荷台と、前記クローラを駆動する走行駆動部と、前記荷台の角度を変更する角度変更部と、オペレータによって把持されるハンドルと、前記走行駆動部と前記角度変更部を操作する操作部と、前記荷台の傾斜角度を検知する荷台傾斜計と、前記荷台傾斜計で検知された前記荷台の傾斜角度に基づいて、前記オペレータに警報を発報する警報装置と、を備え、前記警報装置は、前記荷台の傾斜角度をθとし、傾斜角度の下限値をT1とし、傾斜角度の上限値をT2とする場合で、かつ、T1<θ<T2の条件を満たさないときに、前記警報を発報するとともに、上側フロアの床面又は下側フロアの床面を目的地とし、少なくとも階段昇降台車が前記目的地に到達したことが検知されるまで、前記条件を満たすか否かを繰り返し判定する構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オペレータの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る階段昇降台車の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る階段昇降台車の正面図である。
【
図3】実施形態に係る階段昇降台車の側面図である。
【
図4】実施形態に係る階段昇降台車の内部ブロック図である。
【
図5】実施形態に係る階段昇降台車の動作説明図である。
【
図6】実施形態に係る階段昇降台車に設けられた角度表示警報装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る階段昇降台車に設けられた角度表示警報装置の表示例の説明図である。
【
図8】比較例の階段昇降台車での操作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
[実施形態]
本実施形態は、階段の昇降時において、荷台の傾斜角度が適切であるのか否かをオペレータに認識させることが可能な階段昇降台車を提供することを意図している。
【0015】
<階段昇降台車の構成>
以下、
図1乃至
図4を参照して、本実施形態に係る階段昇降台車の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る階段昇降台車10の構成を示す図である。
図2は、階段昇降台車10の正面図である。
図3は、階段昇降台車10の側面図である。
図4は、階段昇降台車10の内部ブロック図である。なお、
図1乃至
図3に示す「右」、「左」、「上」、及び、「下」の向きは、階段昇降台車10を操作するオペレータから見た方向を示している。また、階段昇降台車10の向きは、後記するハンドル30に近い側が階段上側方向となり、後記するハンドル30から遠い側が階段下側方向となる。階段上側方向は、階段を昇る時に前方向となり、階段を降る時に後方向となる。一方、階段下側方向は、階段を昇る時に後方向となり、階段を降る時に前方向となる。
【0016】
図1乃至
図3に示すように、階段昇降台車10は、台車本体20と、クローラ21(走行手段)と、荷台22と、走行駆動部23と、角度変更部24と、本体制御部25と、ハンドル30と、コントローラ31(操作部)と、角度表示警報装置32(警報装置)と、電源部40と、本体傾斜計41と、荷台傾斜計42と、を備えている。
【0017】
台車本体20は、クローラ21や、荷台22、走行駆動部23、角度変更部24等が組み込まれた主体部分である。
【0018】
クローラ21は、階段昇降台車10の走行手段として機能する無限軌道である。クローラ21は、台車本体20の両横部分に配置されている。本実施形態では、クローラ21は、ハンドル30よりも後方部分が斜め上方向に屈曲した構造になっている。
【0019】
荷台22は、荷物が搭載される台である。荷台22は、台車本体20の上側に配置されている。荷台22は、角度を変更することができる。
【0020】
走行駆動部23は、クローラ21を駆動する駆動部である。
角度変更部24は、荷台22の角度を変更する駆動部である。
【0021】
本体制御部25は、走行駆動部23と本体制御部25の動作を制御する制御部である。本体制御部25は、コントローラ31によるオペレータの操作に応じて、走行駆動部23の動作を制御する。また、本体制御部25は、階段の昇降時に、台車本体20の前後方向の傾斜角度に合わせて、水平方向に対する荷台22の傾斜角度が所望の範囲内の角度になるように、角度変更部24の動作を自動的に制御する。ただし、本体制御部25は、コントローラ31によるオペレータの操作に応じて、角度変更部24の動作を制御することもできる。本実施形態では、本体制御部25は、オペレータの腰付近に対向配置されるように、ハンドル30の立設している部分(支柱)に取り付けられているものとして説明する。
【0022】
ハンドル30は、オペレータによって把持される部位である。ハンドル30は、台車本体20から立設するように、また、その上端部が横方向に延在するように、配置されている。
【0023】
コントローラ31は、走行駆動部23と角度変更部24を操作する操作部である。コントローラ31は、ハンドル30の上端部に取り付けられている。本実施形態では、コントローラ31は、ジョイスティック31a(
図1及び
図3参照)を有しており、ジョイスティック31aで走行駆動部23と角度変更部24を操作することができる。
【0024】
角度表示警報装置32は、水平方向に対する荷台22の傾斜角度を表示したり、荷台22の傾斜角度に基づいて、オペレータに警報を発報したりする装置である。ここでは、角度表示警報装置32がタブレット型のパーソナルコンピュータによって構成されているものとして説明する。本実施形態では、角度表示警報装置32は、ハンドル30の上端部において、コントローラ31の直下の位置に取り付けられているものとして説明する。
【0025】
角度表示警報装置32は、好ましくは、ハンドル30との取付部分が軸支されていて、自由端側を上下方向に回動させることが可能な構造になっているとよい。この構造の場合に、オペレータは、角度表示警報装置32のディスプレイ33a(
図1参照)が見易くなるように、角度表示警報装置32の上下方向の向きを調整することができる。そのため、角度表示警報装置32は、ディスプレイ33a(
図1参照)の視認性を向上させることができる。
【0026】
また、角度表示警報装置32は、好ましくは、横方向に摺動可能な構造になっているとよい。この構造の場合に、オペレータは、状況に応じて、角度表示警報装置32の位置を横方向にずらすことができる。そのため、角度表示警報装置32は、ディスプレイ33a(
図1参照)の視認性を向上させることができる。
【0027】
電源部40は、走行駆動部23や、角度変更部24、本体制御部25、コントローラ31、角度表示警報装置32に電力を供給するバッテリーである。本実施形態では、電源部40は、オペレータの腰付近に対向配置されるように、ハンドル30の立設している部分(支柱)に取り付けられているものとして説明する。
【0028】
本体傾斜計41は、台車本体20の前後方向の傾斜角度(水平方向に対するクローラ21の角度)を検知する傾斜計である。本体傾斜計41は、例えば、
図2及び
図3に示す位置に配置されている。ただし、本体傾斜計41は、
図2に示す位置とは逆側の位置に配置されるようにしてもよい。つまり、
図2に示す例では、本体傾斜計41は、台車本体20の左右方向の中央よりも左寄りの位置に配置されているが、右寄りの位置に配置されるようにしてもよい。
【0029】
荷台傾斜計42は、荷台22の傾斜角度を検知する傾斜計である。荷台傾斜計42は、好ましくは、荷台22の前後方向の傾斜角度と荷台22の左右方向の傾斜角度とを検知することができるように、2軸傾斜計であるとよい。本実施形態では、荷台傾斜計42は、オペレータの腰付近に対向配置されるように、ハンドル30の立設している部分(支柱)に取り付けられているものとして説明する。
【0030】
図1及び
図4に示すように、角度表示警報装置32は、ディスプレイ33aと、スピーカ33bと、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信手段33cと、を有している。
【0031】
本実施形態では、ディスプレイ33aは、荷台傾斜計42で検知された荷台22の傾斜角度を表示する傾斜角度表示手段として機能する。
また、本実施形態では、スピーカ33bは、荷台傾斜計42で検知された荷台22の傾斜角度に基づいて、オペレータに警報音を発報する発報手段として機能する。
【0032】
無線通信手段33cは、他の電子装置との間で無線通信を行うことができる。例えば、オペレータが他の作業者と共同して荷物の運搬を行う場合に、無線通信手段33cは、その作業者によって所持されたスマートフォン等のモバイル装置(図示せず)に、荷台22の傾斜角度等の情報を送信することができる。その作業者は、モバイル装置で荷台22の傾斜角度等をチェックすることで、階段昇降台車10の操作に関連する好適なアドバイスをオペレータに与えることができる。
【0033】
<階段昇降台車と角度表示警報装置の動作>
以下、
図5乃至
図7を参照して、階段昇降台車10と、階段昇降台車10に設けられた角度表示警報装置32の動作について説明する。
図5は、階段昇降台車10の動作説明図である。
図6は、階段昇降台車10に設けられた角度表示警報装置32の動作を示すフローチャートである。
図7は、角度表示警報装置32の表示例の説明図である。
【0034】
図5に示すように、階段昇降台車10は、比較的重たい荷物99を荷台22に搭載した状態で階段を昇降する。なお、
図5は、階段を降る場合において、オペレータが、階段昇降台車10よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車10を操作する例を示している。階段を昇る場合においても、オペレータは、階段昇降台車10よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車10を操作する。階段昇降台車10の動作は、階段を昇る場合も降る場合もほぼ同じである。
【0035】
昇降時において、階段昇降台車10は、荷物99の重心が若干階段上側寄りの位置(ハンドル30側の位置)になるように、角度変更部24を駆動して荷台22の傾斜角度θを調整し、その状態で階段を昇降する。しかしながら、昇降中において、荷台22の傾斜角度θが小さ過ぎる場合に、階段昇降台車10は、バランス(姿勢)を崩して、階段下側方向に傾くように動作する(白抜き矢印A10参照)。また、昇降中において、荷台22の傾斜角度θが大き過ぎる場合に、階段昇降台車10は、バランス(姿勢)を崩して、階段上側方向に傾くように動作する(白抜き矢印B10参照)。したがって、どちらの場合も好ましくない。
【0036】
階段昇降台車10は、特に、荷物99の重心が前後方向に移動し易い場所で、前後方向にバランスを崩し易い。そのような場所としては、例えば、上側フロアの床面付近や、下側フロアの床面付近等がある。
【0037】
例えば、階段を昇る場合において、オペレータが、階段昇降台車10よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車10を操作するものとする。この場合において、階段昇降台車10が下側フロアから階段を昇り始めるときに、階段昇降台車10は水平な状態から階段の角度に傾き始める。このとき、荷物99の重心が階段下側方向(進行方向の逆側)に移動する。そのため、階段昇降台車10は、階段下側方向(進行方向の逆側)にバランスを崩し易くなる。そして、階段昇降台車10が階段を昇り続け、上側フロアの床面(階段の最上段)に到達したときに、クローラ21の進行方向側の先端部が階段に当接しなくなる。そのため、階段昇降台車10は、階段上側方向(進行方向側)に傾くように動作する。このとき、荷物99の重心が階段上側方向(進行方向側)に移動する。そのため、階段昇降台車10は、階段上側方向(進行方向側)にバランスを崩し易くなる。
【0038】
また、例えば、階段を降る場合において、オペレータが、階段昇降台車10よりも階段の上段側に立ち、階段の上段側から階段昇降台車10を操作するものとする。この場合において、階段昇降台車10が上側フロアの床面(階段の最上段)から階段を降り始めるときに、クローラ21の進行方向側の先端部が階段に当接しなくなる。そのため、階段昇降台車10は、階段下側方向(進行方向)に傾くように動作する。このとき、荷物99の重心が階段下側方向(進行方向)に移動する。そのため、階段昇降台車10は、階段下側方向(進行方向)にバランスを崩し易くなる。そして、階段昇降台車10が階段を降り続け、下側フロアの床面に到達したときに、クローラ21の進行方向側の先端部が下側フロアの床面に突き当たる。そのため、階段昇降台車10は、階段上側方向(進行方向の逆側)に傾くように動作する。このとき、荷物99の重心が階段上側方向(進行方向の逆側)に移動する。そのため、階段昇降台車10は、階段上側方向(進行方向の逆側)にバランスを崩し易くなる。
【0039】
そこで、オペレータは、階段昇降台車10のバランスが崩れないように、コントローラ31のジョイスティック31a(
図1及び
図3参照)で階段昇降台車10の昇降操作と荷台22の傾斜角度の変更操作を行う。その際に、階段昇降台車10の角度表示警報装置32は、例えば、
図6に示す動作を行う。
【0040】
図6に示すように、階段昇降台車10の角度表示警報装置32は、昇降を開始すると、以下の式(1)の条件を満たしているか否かを判定する(ステップS105)。
T1<θ<T2 …(1)
ここで、「θ」は、荷台傾斜計42で検知された荷台22の傾斜角度を表している(
図5参照)。
また、「T1」は、荷台22の傾斜角度の下限値を表している。
また、「T2」は、荷台22の傾斜角度の上限値を表している。
【0041】
その際に、
図7に示すように、角度表示警報装置32は、好ましくは、オペレータに注意を促すための警報画面IM11をディスプレイ33aに表示するとよい。
図7に示す例では、警報画面IM11は、荷台22の傾斜角度θを表す棒線BAと、OKと表示された領域(以下、「OK領域」)と、その両横にNGと表示された領域(以下、「NG領域」)と、を含む構造になっている。
【0042】
警報画面IM11は、荷台22の傾斜角度θに応じて棒線BAを左右方向に振れさせることで、荷台22の傾斜角度θが所望の範囲(前記した式(1)の条件を満たす範囲)内であるのか否かを示している。棒線BAがOK領域内に収まっている場合に、荷台22の傾斜角度θは良好な状態になっている。一方、棒線BAがNG領域に入った場合に、荷台22の傾斜角度θは不良な状態になる。例えば、
図7に示す例において、荷台22の傾斜角度θが前記した下限値T1を下回る場合に、棒線BAは左側のNG領域に入り、一方、荷台22の傾斜角度θが前記した上限値T2を上回る場合に、棒線BAは右側のNG領域に入る。オペレータは、棒線BAがNG領域に入りそうな場合に、コントローラ31のジョイスティック31a(
図1及び
図3参照)で荷台22の傾斜角度θの変更操作を行うとよい。
【0043】
図6に戻り、ステップS105の判定で、前記式(1)の条件を満たしていないと判定された場合(“No”の場合)に、角度表示警報装置32は、スピーカ33bから警報音を発報する(ステップS110)。オペレータは、発報された警報音に応じて、コントローラ31のジョイスティック31a(
図1及び
図3参照)で荷台22の傾斜角度θの変更操作を行う。ステップS110の後、処理は、ステップS105に戻る。
【0044】
一方、ステップS105の判定で、前記式(1)の条件を満たしていると判定された場合(“Yes”の場合)に、角度表示警報装置32は、目的地への到着が検知されたか否かを判定する(ステップS115)。ここで、階段を昇る場合では、目的地は、上側フロアの床面(階段の最上段)を意味する。また、階段を降る場合では、目的地は、下側フロアの床面を意味する。目的地に到着したか否かは、本体傾斜計41で検知される台車本体20の前後方向の傾斜角度(水平方向に対するクローラ21の角度)に基づいて判定される。
【0045】
ステップS115の判定で、目的地への到着が検知されていないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、ステップS105に戻る。一方、ステップS115の判定で、目的地への到着が検知されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、角度表示警報装置32は、スピーカ33bから到着通知音を発報する(ステップS120)。これにより、一連のルーチンの処理を終了する。なお、オペレータは、発報された到着通知音に応じて、コントローラ31のジョイスティック31a(
図1及び
図3参照)で階段昇降台車10の昇降操作と荷台22の傾斜角度θの変更操作を行う。
【0046】
係る動作において、角度表示警報装置32は、上側フロアの床面(階段の最上段)又は下側フロアの床面を目的地とし、少なくとも階段昇降台車10(例えば、クローラ21の進行方向側の先端部)が目的地に到達したことが検知されるまで、前記式(1)の条件を満たすか否かを繰り返し判定する。
【0047】
<階段昇降台車の主な特徴>
(1)階段昇降台車10は、走行手段としてのクローラ21と、荷台22と、クローラを駆動する走行駆動部23と、荷台22の傾斜角度θを変更する角度変更部24と、オペレータによって把持されるハンドル30と、走行駆動部23と角度変更部24を操作するコントローラ31(操作部)と、荷台22の傾斜角度θを検知する荷台傾斜計42と、荷台傾斜計42で検知された荷台22の傾斜角度θに基づいて、オペレータに警報を発報する角度表示警報装置32(警報装置)と、を備えている。角度表示警報装置32は、荷台22の傾斜角度θの下限値をT1とし、荷台22の傾斜角度θの上限値をT2とする場合で、かつ、T1<θ<T2の条件を満たさないときに、警報(音及び/又は画面)を発報する。
【0048】
このような階段昇降台車10は、荷台22の傾斜角度θが下限値T1を下回る場合や、荷台22の傾斜角度θが上限値T2を上回る場合に、警報(音及び/又は画面)を発報して、荷台22の傾斜角度θが不適切であることをオペレータに通知する。これにより、オペレータは、警報(音及び/又は画面)が発報されたときにのみ、集中的に荷台22の傾斜角度θの変更操作を行えばよい。その結果、オペレータは、昇降動作の開始から終了までの全期間を通して、荷台22の傾斜角度θを自身の感覚で推し量りつつ、階段昇降台車10の昇降操作と荷台22の傾斜角度θの変更操作(例えば、
図8に示す比較例の階段昇降台車での操作)を行わなくてもよくなる。そのため、階段昇降台車10は、オペレータの負担を軽減することができる。
【0049】
また、オペレータは、ハンドル30を把持しながら警報(音及び/又は画面)を認識することができる。そのため、オペレータは、階段昇降台車がバランス(姿勢)を崩さないように、階段昇降台車10を支持しながら荷台22の傾斜角度θの変更操作することができる。これによっても、階段昇降台車10は、オペレータの負担を軽減することができる。
【0050】
なお、
図8は、比較例の階段昇降台車での操作を示すフローチャートである。比較例の階段昇降台車は、荷台の傾斜角度θが適切であるのか否かをオペレータに認識させる手段を有しない台車であり、従来の階段昇降台車に相当する。
図8に示すように、比較例の階段昇降台車では、昇降動作の開始から終了までの全期間を通して、オペレータは、オペレータ自身の感覚で荷台22の傾斜角度θを推し量ることで、荷台22の傾斜角度θを認識する(ステップS605)。そして、オペレータは、オペレータ自身の感覚で階段昇降台車が目的地(上側フロアの床面又は下側フロアの床面)に到着したか否かを判断する(ステップS610)。比較例の階段昇降台車では、昇降動作の開始から終了までの全期間を通して、オペレータがステップS605とステップS610とを繰り返し行う。そのため、比較例の階段昇降台車は、多大な負担をオペレータに強いる。これに対して、前記した通り、本実施形態に係る階段昇降台車10は、オペレータがステップS605とステップS610とを行わなくてもよくなる。そのため、本実施形態に係る階段昇降台車10は、オペレータの負担を軽減することができる。
【0051】
(2)角度表示警報装置32は、階段昇降台車10が目的地に到達したときに、オペレータに到達通知(音及び/又は画面)を発報する。その際に、角度表示警報装置32は、好ましくは、警報(音及び/又は画面)のパターンとは異なるパターンで到達通知(音及び/又は画面)を発報するとよい。これにより、角度表示警報装置32は、階段昇降台車10がどのような状況であるのかをオペレータに容易に認識させることができる。
【0052】
(3)角度表示警報装置32は、本体傾斜計41で検知される台車本体20の前後方向の傾斜角度(水平方向に対するクローラ21の角度)に基づいて、階段昇降台車10が目的地に到達したか否かを判定する。このような角度表示警報装置32は、階段昇降台車10が目的地に到達したときに、その情報を走行駆動部23と角度変更部24の操作にフィードバックすることができる。これにより、階段昇降台車10は、荷物99の重心が前後方向にほとんど移動しないように、バランス(姿勢)を安定させることができる。
【0053】
以上の通り、本実施形態に係る階段昇降台車10によれば、オペレータの負担を軽減することができる。
【0054】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0055】
例えば、階段昇降台車10は、
図9に示すように変形することができる。
図9は、変形例に係る階段昇降台車の斜視図である。
図9に示す変形例では、階段昇降台車10は、カメラ51を備えている。カメラ51は、荷台22及び/又は角度変更部24を撮影して、その撮影画像を角度表示警報装置32に出力する。角度表示警報装置32は、例えば、撮影画像をディスプレイ33a(
図1参照)に表示することで、オペレータに荷台22の傾斜角度を容易に認識させることができる。その際に、オペレータは、ハンドル30を把持しながらディスプレイ33a(
図1参照)を見ることができる。そのため、オペレータは、階段昇降台車がバランス(姿勢)を崩さないように、階段昇降台車を支持しながら荷台22の傾斜角度を認識することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 階段昇降台車
20 台車本体
21 クローラ(走行手段)
22 荷台
23 走行駆動部
24 角度変更部
25 本体制御部
30 ハンドル
31 コントローラ(操作部)
31a ジョイスティック
32 角度表示警報装置(警報装置)
33a ディスプレイ(傾斜角度表示手段)
33b スピーカ(発報手段)
33c 無線通信手段
40 電源部
41 本体傾斜計
42 荷台傾斜計
51 カメラ
99 荷物