(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】積層造形のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20220623BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220623BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220623BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220623BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220623BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220623BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20220623BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/295
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
B33Y70/10
B29K105:08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018124100
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィレンスキ, マーク スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン, サミュエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, ニック シャーベ
(72)【発明者】
【氏名】トルレス, ファラオン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074773(JP,A)
【文献】特開2017-071213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0341300(US,A1)
【文献】特開2018-086814(JP,A)
【文献】特開2016-107454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(102)を積層造形するためのシステム(300)であって、
原料ライン(106)の供給源(302)であって、前記供給源(302)に由来する前記原料ライン(106)が、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で樹脂(110)内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維(108)を含む、供給源(302)、
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)が前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で、前記供給源(302)から前記原料ライン(106)を受け入れる堅化機構(112)であって、前記堅化機構(112)が、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を、前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成され、前記原料ライン(106)及び前記樹脂(110)は、前記樹脂(110)が前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い、堅化機構(112)、
前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに、前記堅化機構(112)から前記原料ライン(106)を受け入れる搬送ガイド(116)であって、プリント経路(114)に沿って前記原料ライン(106)を堆積するように構成された搬送ガイド(116)、
前記搬送ガイド(116)を通して前記原料ライン(106)を供給するように構成された供給機構(126)、
前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を通過する際に又は前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を出る際に、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成された軟化機構(118)であって、前記搬送ガイド(116)によって前記原料ライン(106)が前記プリント経路(114)に沿って堆積される前に、前記搬送ガイド(116)を出る前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)が、前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあり、前記原料ライン(106)及び前記樹脂(110)は、前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、前記樹脂(110)が前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない、軟化機構(118)、及び
前記プリント経路(114)に沿って前記搬送ガイド(116)によって堆積された前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を、前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させるように構成された硬化機構(120)
を備えているシステム(300)。
【請求項2】
前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.08GPaより大きく、0.1GPa以下の剛性率を有し、
前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.1GPaより大きい剛性率を有し、
前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.1GPa以下の剛性率を有する、請求項1に記載のシステム(300)。
【請求項3】
前記堅化機構(112)が、前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)から熱を引き出し、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成され、且つ
前記軟化機構(118)が、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を加熱して、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム(300)。
【請求項4】
制御システム(130)をさらに含み、前記制御システム(130)が、前記原料ライン(106)に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知するように構成された少なくとも1つのセンサ(132)を備え、
前記制御システム(130)が、前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、前記堅化機構(112)、前記供給機構(126)、前記軟化機構(118)、又は前記硬化機構(120)のうちの少なくとも1つを動的に制御するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項5】
前記制御システム(130)が、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記樹脂(110)の堅さを制御するために、前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、前記堅化機構(112)を動的に制御するように構成されている、請求項4に記載のシステム(300)。
【請求項6】
前記制御システム(130)が、前記原料ライン(106)の供給速度を制御するために、前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、前記供給機構(126)を動的に制御するように構成されている、請求項4又は5に記載のシステム(300)。
【請求項7】
前記制御システム(130)が、前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記樹脂(110)の堅さを制御するために、前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、前記軟化機構(118)を動的に制御するように構成されている、請求項4から6のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項8】
前記制御システム(130)が、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)の硬化速度を制御するために、前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、前記硬化機構(120)を動的に制御するように構成されている、請求項4から7のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項9】
前記搬送ガイド(116)が前記プリント経路(114)に沿って前記原料ライン(106)を堆積する際に、前記搬送ガイド(116)の先にある前記プリント経路(114)を加熱するように構成されたプリント経路ヒータ(138)をさらに備えている、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項10】
前記搬送ガイド(116)によって前記原料ライン(106)が堆積された後に、前記原料ライン(106)を加熱するように構成された堆積原料ラインヒータ(140)をさらに備えている、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム(300)。
【請求項11】
樹脂(110)内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維(108)を含む原料ライン(106)から物体(102)を積層造形する方法(400)であって、
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることであって、前記原料ライン(106)及び前記樹脂(110)は、前記樹脂(110)が前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることと、
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、前記原料ライン(106)を搬送ガイド(116)の中へ導入することと、
前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を通過する際に又は前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を出る際に、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることであって、前記原料ライン(106)及び前記樹脂(110)は、前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、前記樹脂(110)が前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることと、
前記樹脂(110)が前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、前記搬送ガイド(116)を使用して、プリント経路(114)に沿って前記原料ライン(106)を堆積することと、
前記プリント経路(114)に沿って前記搬送ガイド(116)から前記原料ライン(106)が分配された後、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させることであって、前記少なくとも部分的に硬化した状態にある前記樹脂(110)が、前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記樹脂(110)より硬化されている、前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させることと
を含む方法(400)。
【請求項12】
前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.08GPaより大きく、0.1GPa以下の剛性率を有し、
前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.1GPaより大きい剛性率を有し、
前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)が、0.1GPa以下の剛性率を有する、請求項11に記載の方法(400)。
【請求項13】
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることが、前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)から熱を引き出すことを含み、
前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を通過する際に又は前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を出る際に、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることが、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を加熱することを含む、請求項11又は12に記載の方法(400)。
【請求項14】
前記原料ライン(106)に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知することと、
前記原料ライン(106)に関連する前記少なくとも1つの物理的特性を感知したことに応答して、
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること、
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)が前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、前記原料ライン(106)を前記搬送ガイド(116)の中へ導入すること、
前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を通過する際に又は前記原料ライン(106)が前記搬送ガイド(116)を出る際に、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること、又は
前記原料ライン(106)が前記プリント経路(114)に沿って前記搬送ガイド(116)から分配された後、前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から前記少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させること
のうちの少なくとも1つを動的に制御することとをさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法(400)。
【請求項15】
前記原料ライン(106)の前記樹脂(110)を前記第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることを動的に制御することが、前記堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある前記樹脂(110)の堅さを制御することを含む、請求項14に記載の方法(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層造形に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形プロセスは、部品を製造するためにコンピュータ制御の下で三次元で移動することができるプリントヘッド又はノズルから原材料を分配する又は押し出すことを含み得る。原材料の特性に応じて、原材料がプリントヘッドを通って前進する際に、困難が生じるか、又は望ましくない効果がもたらされ得る。例えば、原材料が粘着性の材料であったり、粘着性の材料を含んだりすると、その原材料は、プリントヘッドに付着したり、プリントヘッドを詰まらせたり、さもなければ汚したりする恐れがある。別の例として、原材料が細長い炭素又はその他の繊維を含む場合、繊維は、よじれたり、割れたり、又はさもなければ、曲がったりして、損傷を受け、或いはプリントヘッドを詰まらせる場合がある。さらに別の例として、原材料が、未硬化な硬化性樹脂又は部分的に硬化した硬化性樹脂であったり、又はそれを含んだりすると、その樹脂は、望ましくない状態で徐々にプリントヘッドの内部で硬化し、漸進的にプリントヘッドを詰まらせ、プリントヘッドを通る原材料の前進動作を部分的又は完全に妨げる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、少なくとも上述の懸念に対処することを意図した装置及び方法が有用性を見いだすであろう。
【0004】
以下の記載は、本発明に係る主題の実施例の非網羅的なリストである。これらの実施例は、特許請求される場合があり、されない場合もある。
【0005】
本発明による主題の一実施例は、物体を積層造形するためのシステムに関する。当該システムは、原料ライン(feedstock line)の供給源、堅化機構、搬送ガイド、供給機構、軟化機構、及び硬化機構を備えている。供給源に由来する原料ラインは、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で樹脂内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維を含む。堅化機構は、原料ラインの樹脂が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で、供給源から原料ラインを受け入れる。堅化機構は、原料ラインの樹脂を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成されている。原料ライン及び樹脂は、樹脂が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い。搬送ガイドは、樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに、堅化機構から原料ラインを受け入れる。搬送ガイドは、プリント経路に沿って原料ラインを堆積するように構成されている。供給機構は、搬送ガイドを通して原料ラインを供給するように構成されている。軟化機構は、原料ラインが搬送ガイドを通過する際に又は原料ラインが搬送ガイドを出る際に、原料ラインの樹脂を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成され、それにより、搬送ガイドによってプリント経路に沿って原料ラインが堆積される前に、搬送ガイドを出る原料ラインの樹脂は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある。原料ライン及び樹脂は、樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない。硬化機構は、プリント経路に沿って搬送ガイドによって堆積された原料ラインの樹脂を、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させるように構成されている。
【0006】
したがって、当該システムは、原料ラインから物体を製造するために使用され得る。さらに、当該システムは、細長い繊維を有する物体を製造するために使用され得る。この細長い繊維は、例えば、物体の所望の特性を規定するために、物体の全体にわたり所望の且つ/又は所定の配向に配向される。原料ラインが供給源内にあるとき、細長い繊維が樹脂内に封入されるので、供給源に由来する原料ラインは、プリプレグ原料ラインであると説明してもよい。さらに、原料ラインはかなりの長さを有する場合があるので、供給源がコンパクト又は管理し易いサイズであるように、供給源内の原料ラインをコイル巻きするか、又はスプールする必要があり得る。したがって、供給源に由来する原料ラインは、損傷を受けずに細長い繊維にコイル巻きされるためには、十分に可撓性又は屈曲可能でなければならないが、さらに、樹脂を流出させず、継続的な可撓性ラインとして原料ラインの一体性を保つために、十分に堅くなければならない。しかしながら、原料ラインの第1の少なくとも部分的に未硬化の状態は、搬送ガイドを通して操作的に供給させ前進させるには、あまりにも可撓性が高い場合があり、当該システムの複合部品に付着したり、さもなければ複合部品を汚したりせずに、当該システムによって操作的に取り扱うには、あまりにもべとべとしていたり、粘着質であったりする場合がある。したがって、堅化機構は、原料ラインを第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させる。それにより、供給機構が汚染又は損傷されることなく、且つ、細長い繊維が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、供給機構は、原料ラインを搬送ガイド内に前進させることができる。さらに、その後、原料ラインは、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるので、容易に搬送ガイドを通って前進することとなり、最終的にプリント経路に沿って堆積され、物体を製造する。しかし、その堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ラインは、三次元のプリント経路に沿って堆積するには堅過ぎる。したがって、軟化機構は、原料ラインを堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から十分に軟化した未硬化状態、すなわち、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させ、最終的にプリント経路に沿って堆積するために設けられる。軟化機構は、軟化機構の構成に応じて、且つ、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ラインの特性に応じて、原料ラインが搬送ガイドを通過する際又は原料ラインが搬送ガイドを出る際のいずれかにおいて、原料ラインを軟化することができる。最後に、硬化機構は、樹脂を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させ、当該物体を、製造中に又は原位置で、少なくとも部分的に硬化させる。
【0007】
本発明に係る主題の別の実施例は、原料ラインから物体を積層造形する方法に関し、原料ラインは、樹脂内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維を含む。当該方法は、原料ラインの樹脂を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることを含む。原料ライン及び樹脂は、樹脂が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い。当該方法は、原料ラインの樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ラインを搬送ガイドの中へ導入することさらに含む。当該方法は、原料ラインが搬送ガイドを通過する際に又は原料ラインが搬送ガイドを出る際に、原料ラインの樹脂を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることをさらに含む。原料ライン及び樹脂は、樹脂が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない。当該方法は、搬送ガイドを使用して、樹脂が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、プリント経路に沿って原料ラインを堆積することをさらに含む。当該方法は、原料ラインがプリント経路に沿って搬送ガイドから分配された後、原料ラインの樹脂を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させることをさらに含む。少なくとも部分的に硬化した状態にある樹脂は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂より硬化されている。
【0008】
したがって、当該方法は、原料ラインから物体を製造するために実装され得る。さらに、当該方法は、細長い繊維を有する物体を製造するために実装され得る。この細長い繊維は、物体の所望の特性を規定するなどのために、物体の全体にわたり所望の且つ/又は所定の配向に配向される。細長い繊維が樹脂内に封入されるので、原料ライン106は、プリプレグ原料ラインであると説明してもよい。さらに、原料ラインはかなりの長さを有する場合があるので、搬送ガイドの中に導入する前に、原料ラインをコイル巻きするか、又はスプールすることができる。したがって、原料ラインは、損傷を受けずに細長い繊維にコイル巻きされるためには、十分に可撓性又は屈曲可能でなければならないが、さらに、樹脂を流出させず、継続的な可撓性ラインとして原料ラインの一体性を保つために、十分に堅くなければならない。しかしながら、原料ラインの第1の少なくとも部分的に未硬化の状態は、搬送ガイドを通して操作的に供給させ前進させるには、あまりにも可撓性が高い場合があり、関連システムの複合部品に付着したり、さもなければ複合部品を汚したりせずに、システムによって操作的に取り扱うには、あまりにもべとべとしていたり、粘着質であったりする場合がある。したがって、原料ラインを第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることにより、細長い繊維が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、且つ、樹脂が関連システムを汚染させずに、原料ラインを、搬送ガイドの中へ導入し搬送ガイドを通過させることが容易になる。続いて、原料ラインが搬送ガイドを通過する際に又は原料ラインが搬送ガイドから出る際に、原料ラインを堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることにより、原料ラインは、物体を積層造形するために、搬送ガイドによって三次元で操作可能に堆積するのに十分な可撓性を有することになる。当該方法の幾つかの実装形態では、原料ラインの特性に応じて、原料ラインが搬送ガイドを通過する際に、原料ラインを第2の軟化した硬化状態へ変質させることは有益であり得る。本方法の他の実施態様では、原料ラインが搬送ガイドを出る際に、原料ラインを第2の軟化した未硬化状態へ変質させることは有益であり得る。最後に、樹脂を、第2の少なくとも部分的に未硬化状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ、少なくとも部分的に硬化させることにより、物体の製造中に又はその原位置で、当該物体の硬化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
したがって、本発明の1つ又は複数の実施例を一般論として説明したが、次に、添付図面を参照することとなる。それらは必ずしも正寸で描かれている訳ではなく、複数の図を通して、類似の参照記号は同一又は類似の部分を示している。
【0010】
【
図1】本開示の1つ又は複数の実施例に係る、物体を積層造形するためのシステムのブロック図である。
【
図2】本開示の1つ又は複数の実施例に係る、
図1のシステムの概略図である。
【
図3】本開示の1つ又は複数の実施例に係る、物体を積層造形する方法のフロー図である。
【
図4】航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の
図1において、様々な要素及び/又は構成要素を連結する実線が存在する場合、これらの実線は、機械的、電気的、流体的、光学的、電磁的、及びその他の連結、並びに/又はこれらの組み合わせを表し得る。本明細書における「連結(coupled)」とは、直接的並びに間接的に関連付けられていることを意味する。例えば、部材Aは部材Bに直接的に関連付けられるか、又は、例えば、別の部材Cを介して間接的に関連付けられ得る。様々な開示された要素間のすべての関係が必ずしも表わされているわけではないことが理解されるであろう。そのため、ブロック図に示されているもの以外の連結も存在し得る。様々な要素及び/又は構成要素を示すブロックを接続する破線が存在する場合、これらの破線は、機能及び目的の点で実線によって表されているものに類似した連結を表わす。しかしながら、破線によって表わされた連結は、選択的に設けられるか、又は、本開示の代替的な実施例に関連するかのいずれかであり得る。同様に、破線で表わされた要素及び/又は構成要素が存在する場合、それらは本開示の代替的な実施例を示す。実線及び/又は破線で示されている1つ又は複数の要素は、本開示の範囲から逸脱せずに、特定の実施例から省略してもよい。環境要素が存在する場合、それらは点線で表わされる。仮想的な(架空の)要素も、明確性のために示され得る。
図1に示す特徴の一部は、
図1、他の図面、及び/又はそれらに伴う開示において説明されている他の特徴を含むことを必要とせずに、様々な方法で組み合わせることができるが、このような1つ又は複数の組み合わせは、本明細書では明示的に示されていないことを当業者は理解されよう。同様に、提示された実施例に限定されない追加の特徴を本明細書で図示且つ説明された特徴の一部又は全部と組み合わせることができる。
【0012】
上記の
図3及び
図4では、ブロックは、工程及び/又はその一部を表すことが可能であり、様々なブロックを接続する線は、工程又はその一部の任意の特定の順序又は従属関係を示唆しない。破線で示されるブロックは、代替的な工程及び/又はその一部を表す。様々なブロックを接続する破線がある場合、その破線は工程又はその一部の代替的な従属関係を表わす。様々な開示された工程間のすべての従属関係が必ずしも表わされるわけではないことを理解されよう。本明細書に明記された1つ又は複数の方法の工程を記載している
図3及び
図4、並びに付随する開示は、必ずしも工程が実行されるべき順序を決定付けていると解釈すべきではない。むしろ、ある例示的な順序が示されているが、工程のシーケンスは、適切な場合に修正することができることを理解されたい。したがって、ある特定の工程は、異なる順序で又は同時に実行してもよい。さらに、当業者であれば、記載されたすべての工程を実施する必要はないことを認識するであろう。
【0013】
以下の説明において、開示された概念の完全な理解をもたらすために、多数の特定の詳細が明記されるが、その概念はこれらの特定事項の一部又は全てがなくとも実施され得る。他の事例においては、開示を不必要に分かりにくくすることを避けるために、既知のデバイス及び/又はプロセスの詳細が省略されている。一部の概念は特定の実施例と併せて説明されることになるが、それらの実施例は、限定を目的とするものではないことが理解されよう。
【0014】
別途提示されない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本明細書では単に符号として使用されており、これらの用語が表すアイテムに対して、順序的、位置的、又は序列的な要件を課すことを意図していない。さらに、例えば「第2」のアイテムへの言及は、例えば「第1」の、又はより小さい数が振られたアイテム、及び/又は、例えば「第3」の、又はより大きな数が振られたアイテムの存在を、必要とすることも、排除することもない。
【0015】
本明細書における「一実施例」への言及は、その実施例に関連して説明される1つ又は複数の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実装形態に含まれることを意味する。明細書内で頻出する「一実施例」という表現は、同一の実施例を表すこともあり、又は同一の実施例を表さないこともある。
【0016】
本明細書において、特定の機能を実施するように「構成/設定された」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、実際には、任意の変更も伴わずにその特定の機能を実施することが可能であり、さらなる改変の後にその特定の機能を実施する可能性があるにすぎないというものではない。言い換えると、特定の機能を実施するように「構成/設定された」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、その特定の機能を実施するという目的のために、特に選択、創出、実装、利用、プログラミング、且つ/又は設計される。本明細書において、「ように構成/設定された(configured to)」という表現は、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアがさらなる改変なしで特定の機能を実行することを可能にする、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアの既存の特性を意味する。この開示の目的のために、特定の機能を実施するように「構成/設定されている」と説明されたシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、追加的又は代替的には、その機能を実施するよう「適合している(adapted to)」、且つ/又は「動作可能である(operative to)」と説明してもよい。
【0017】
本開示に係る主題の例示的で非網羅的な実施例が、以下で提供される。これらの実施例は、特許請求されることもあり、又はされないこともある。
【0018】
概して
図1、及び特に
図2を参照すると、物体102を積層造形するためのシステム300が開示されている。システム300は、原料ライン106の供給源302、堅化機構112、搬送ガイド116、供給機構126、軟化機構118、及び硬化機構120を備えている。供給原302に由来する原料ライン106は、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で樹脂110内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維108を含む。堅化機構112は、原料ライン106の樹脂110が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態で、供給源302から原料ライン106を受け入れる。堅化機構112は、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成されている。原料ライン106及び樹脂110は、樹脂110が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い。搬送ガイド116は、樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに、堅化機構112から原料ライン106を受け入れる。搬送ガイド116は、プリント経路114に沿って原料ライン106を堆積するように構成されている。供給機構126は、搬送ガイド116を通して原料ライン106を供給するように構成されている。軟化機構118は、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成され、それにより、搬送ガイド116によってプリント経路114に沿って原料ライン106が堆積される前に、搬送ガイド116を出る原料ライン106の樹脂110は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある。原料ライン106及び樹脂110は、樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂110が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない。硬化機構120は、プリント経路114に沿って搬送ガイド116によって堆積された原料ライン106の樹脂110を、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態に変質させるように構成されている。この段落中の上記の主題は、本開示の実施例1を特徴付けるものである。
【0019】
したがって、システム300は、原料ライン106から物体102を製造するために使用され得る。さらに、システム300は、細長い繊維108を有する物体102を製造するために使用され得る。この細長い繊維は、例えば、物体102の所望の特性を画定するために、物体102の全体にわたり所望の且つ/又は所定の配向に配向される。原料ライン106が供給源302内にあるとき、細長い繊維108が樹脂110内に封入されるので、供給源302に由来する原料ライン106は、プリプレグ原料ラインであると説明してもよい。さらに、原料ライン106はかなりの長さを有する場合があるので、供給源302がコンパクト又は管理し易いサイズであるように、供給源302内の原料ライン106をコイル巻きするか、又はスプールする必要があり得る。したがって、供給源302に由来する原料ライン106は、損傷を受けず細長い繊維108にコイル巻きされるためには、十分に可撓性又は屈曲可能でなければならないが、さらに、樹脂110を流出させず、継続的な可撓性ラインとして原料ライン106の一体性を保つために、十分に堅くなければならない。しかしながら、原料ライン106の第1の少なくとも部分的に未硬化の状態は、搬送ガイド116を通して操作的に供給させ前進させるには、あまりにも可撓性が高い場合があり、システム300の複合部品に付着したり、さもなければ複合部品を汚したりせずに、システム300によって操作的に取り扱うには、あまりにもべとべとしていたり、粘着質であったりする場合がある。したがって、堅化機構112は、原料ライン106を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させる。それにより、供給機構126が汚染又は損傷されることなく、且つ、細長い繊維108が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、供給機構126は、原料ライン106を搬送ガイド116内に前進させることができる。さらに、その後、原料ライン106は、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるので、容易に搬送ガイド116を通って前進することとなり、最終的にプリント経路114に沿って堆積され、物体102を製造する。しかし、その堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、三次元のプリント経路114に沿って堆積するには堅過ぎる。したがって、軟化機構188は、原料ライン106を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から十分に軟化した未硬化状態、すなわち、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させ、最終的にプリント経路114に沿って堆積するために設けられる。さらに、軟化機構118は、一定の長さの原料ライン106が、以前に堆積した一定の長さの原料ライン106に対して堆積されるときに、原料ライン106の2つの隣接する層の間での適切な湿潤又は接着を保証する。軟化機構118は、軟化機構118の構成に応じて、且つ、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の特性に応じて、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際のいずれかにおいて、原料ライン106を軟化し得る。最後に、硬化機構120は、樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させ、物体102を、製造中に又は原位置で、少なくとも部分的に硬化させる。
【0020】
システム300の幾つかの実施例は、追加的又は代替的に3Dプリンタと表現されてもよい。
【0021】
システム300によって製造される物体102の所望の特性に応じて、細長い繊維108は、任意の適切な形態をとり、任意の適切な材料から構築され得る。一実施例では、細長い繊維108は、炭素繊維、ガラス繊維、合成有機繊維、アラミド繊維、天然繊維、木質繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、光ファイバー、繊維束、繊維トウ、繊維織り、繊維編み、ワイヤー、金属ワイヤー、導電性ワイヤー、及びワイヤー束を含むが、これらに限定されない。原料ライン106は、細長い繊維108の単一の構成又は種類から生成されてもよく、又は細長い繊維108の1つより多くの構成又は種類から生成されてもよい。「細長い」と言った場合、細長い繊維108が、生成されている際に原料ライン106に沿って本質的に概して連続的であることを意味しており、例えば、チョップド繊維のセグメントを使用することとは異なる。そうは言っても、細長い繊維108は、不連続なセグメントの繊維を含み得る。この場合、不連続なセグメントの繊維は、束にされていたり、織られていたり、編まれていたり、又はさもなければ組み合されていたりするが、それでも、原料ライン106に沿って本質的に概して連続的であるとみなされる。細長い繊維108は、その長さに対して横断的な又は垂直な寸法(例えば、直径又は幅)よりも大幅に大きい長さを有する。例示的で非排他的な一実施例として、細長い繊維108は、それらの直径又は幅よりも、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10000倍、少なくとも100000倍、又は少なくとも1000000倍だけ大きい長さを有し得る。
【0022】
樹脂110は、物体102の所望の特性に応じて、且つ、システム300及び硬化機構120の機能性に応じて、任意の適切な形態をとる場合がある。幾つかの実施例では、樹脂110は、光の選択的な適用によって硬化するように構成された感光性樹脂を含み得る。他の実施例では、樹脂110は、熱又は放射線の選択的適用によって硬化されるように構成された熱硬化性樹脂を含み得る。他の種類の樹脂110も使用することができ、システム300内に組み込むことができる。
【0023】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.08GPaより大きく、0.1GPa以下の剛性率を有する。堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.1GPaより大きい剛性率を有する。第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.1GPa以下の剛性率を有する。この段落の上述の記載は、本開示の実施例2を特徴付けており、実施例2は、上述の実施例1に係る主題をさらに含む。
【0024】
剛性率又は堅さの閾値が0.1Gpaであるので、原料ライン106は、堅化機構112によって堅くされたときに、搬送ガイド116の中へ及び搬送ガイド116を通って、供給機構126によって前進させられるのに十分な堅さを有する。さらに、原料ライン106を0.1GPa未満の剛性率へ軟らかくすることによって、原料ライン106は、曲がりくねったプリント経路、例えば、二次元又は三次元の湾曲を有するプリント経路114に沿って堆積され得る。しかしながら、細長い繊維108の剛性、対応するトウにおける細長い繊維108の数、原料ライン106の形状、原料ライン106の直径、樹脂110の特性等に基づいて、他の閾値の剛性率を利用してもよい。
【0025】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、堅化機構112は、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の樹脂110から熱を引き出して、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成されている。軟化機構118は、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の樹脂110を加熱して、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように構成されている。この段落の前述の主題は、本開示の実施例3を特徴付けており、実施例3は、上述の実施例1又は2に係る主題をさらに含む。
【0026】
堅化機構112が、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるために、原料ライン106の樹脂110から熱を引き出すときに、堅化機構112は、原料ライン106の剛性率又は堅さが供給機構126に対して十分に高くなる程度まで樹脂110を冷却し、それにより、供給機構126及び搬送ガイド116を望ましくなく汚染したり、べとべとにしたり、又は損傷を与えたりすることなく、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ且つ搬送ガイド116を通して操作可能に前進させる。幾つかの実施例では、堅化機構112は、樹脂110及び/又は原料ライン106を凍結させるものとして説明され得る。その後、樹脂110及び原料ライン106の堅さを逆転させるために、軟化機構118は、プリント経路114に沿った搬送ガイド116による操作可能な堆積のために、樹脂110を加熱して、樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させる。
【0027】
堅化機構112及び軟化機構118は、任意の適切な構成を有する場合があり、それぞれ、熱を引き出したり、熱を加えたりするために任意の適切な機構を利用する。例えば、堅化機構112は、樹脂110から熱を引き出すために、冷凍サイクルを利用し得る。追加的に又は代替的に、堅化機構112は、樹脂110から熱を引き出すために、原料ライン106を通り過ぎて原料ライン106と接触する冷却流体を利用し得る。幾つかの実施例では、軟化機構118は、抵抗ヒータ、誘導ヒータ、又は放射ヒータであってもよく、又はこれらを含んでもよい。これらのヒータは、例えば、原料ライン106が搬送ガイド116を出るところ又はその近傍において、例えば、搬送ガイド116内で操作可能に連結又は位置付けされている。追加的又は代替的に、軟化機構118は、樹脂110を加熱するレーザ又は加熱流体の流れを含むか、又は利用し得る。幾つかの実施例では、硬化機構120は、さらに軟化機構118として作動し得る。堅化機構112及び軟化機構118の他の実施例も、本開示の範囲内にあり、システム300内に組み込まれ得る。
【0028】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、供給機構126は、搬送ガイド116を通して原料ライン106を押し出すように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例4を特徴付けており、実施例4は、上記の実施例1から3のいずれかに係る主題も含む。
【0029】
供給機構126は、搬送ガイド116の中へ、搬送ガイド116を通して、搬送ガイド116の外へ、原料ライン106を前進させることを促進する。供給機構126は、搬送ガイド116を通して原料ライン106を押し出すように位置付けられ、搬送ガイド116の出口の上流にあり、したがって、搬送ガイド116の動き及びプリント経路114に沿った原料ライン106の堆積の外側に位置付けられる。
【0030】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、供給機構126は、互いに対向するローラ又はベルト128を備えている。ローラ又はベルト128は、原料ライン106の両側と係合し、搬送ガイド116を通して原料ライン106を押し出すために選択的に回転するように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例5を特徴付けており、実施例5は、上記の実施例4に係る主題も含む。
【0031】
互いに対向するローラ又はベルト128は、選択的に回転させられたときに、原料ライン106と摩擦を起こしながら係合するように作動し、それにより、互いに対向するローラ又はベルト128の間に原料ライン106が供給され、搬送ガイド116の中へ及び搬送ガイド116を通して押し出される。追加的に又は代替的に、供給機構126は、搬送ガイド116を通して原料ライン106を押し出すように構成された他のピンチ機構を備え得る。
【0032】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、システム300は、制御システム130をさらに備えている。制御システム130は、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知するように構成された少なくとも1つのセンサ132を備えている。制御システム130は、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、堅化機構112、供給機構126、軟化機構118、又は硬化機構120のうちの少なくとも1つを動的に制御するように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例6を特徴付けており、実施例6は、上記の実施例1から5のいずれかに係る主題も含む。
【0033】
システム300は、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知することと、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に基づいて、堅化機構112、供給機構126、軟化機構118、及び/又は硬化機構120を動的に制御することとによって、原料ライン106の堅さ、原料ライン106の供給速度、及び原料ライン106の硬化速度をリアルタイムで制御することができる。
【0034】
少なくとも1つのセンサ132によって感知され得る、原料ライン106に関連する物理的特性の例示的で非限定的な実施例には、堅さ、剛性、可撓性、硬度、粘性、温度、硬化の程度、サイズ、体積分率、及び形状が含まれる。
【0035】
図2では、制御システム130とシステム100の様々な構成要素との間の通信は、稲妻マークによって概略的に表されている。かかる通信は、事実上、有線及び/又は無線であり得る。
【0036】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、制御システム130は、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂110の堅さを制御するために、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、堅化機構112を動的に制御するように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例7を特徴付けており、実施例7は、上記の実施例6に係る主題も含む。
【0037】
原料ライン106の少なくとも1つの物理的特性に基づいて、堅化機構112を動的に制御することによって、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の堅さを制御することができ、それにより、原料ライン106は、供給機構126によって搬送ガイド116の中へ及び搬送ガイド116を通って操作可能に前進させられるのに十分な堅さを確実にもつようになる。
【0038】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、制御システム130は、原料ライン106の供給速度を制御するために、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、供給機構126を動的に制御するように構成されている。この段落の前述の主題は、本開示の実施例8を特徴付けており、実施例8は、上述の実施例6又は7に係る主題も含む。
【0039】
原料ライン106の1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、供給機構126を動的に制御することによって、原料ライン106の供給速度を制御することができ、それにより、堅化機構112は、原料ライン106を適切に堅くするための十分な時間を確実に有し、且つ/又は、軟化機構118は、原料ライン106を適切に軟らかくするための十分な時間を確実に有するようになる。
【0040】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、制御システム130は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂110の堅さを制御するために、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、軟化機構118を動的に制御するように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例9を特徴付けており、実施例9は、上記の実施例6から8のいずれかに係る主題も含む。
【0041】
原料ライン106の1つの物理的特性に少なくとも基づいて、軟化機構118を動的に制御することによって、原料ライン106の第2の少なくとも部分的に未硬化の状態を制御することができ、それにより、搬送ガイド116によってプリント経路114に沿って操作可能に堆積するために、原料ライン106が十分な可撓性を確実にもつようになる。さらに、軟化機構118を動的に制御することにより、一定の長さの原料ライン106が以前に堆積した長さの原料ライン106に対して堆積されるときに、原料ライン106の2つの隣接する層の間での湿潤又は接着が保証される。
【0042】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、制御システム130は、原料ライン106の樹脂110の硬化速度を制御するために、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性に少なくとも部分的に基づいて、硬化機構120を動的に制御するように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例10を特徴付けており、実施例10は、上記の実施例6から9のいずれかに係る主題も含む。
【0043】
原料ライン106の1つの物理的特性に少なくとも基づいて、硬化機構120を動的に制御することによって、硬化エネルギーの強度又は電力を制御することができ、それにより、物体102がシステム300によって製造されている際に、原料ライン106に所望の程度の硬化又は硬化速度が確実に付与される。
【0044】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、システム300は、表面134及び駆動アセンブリ136をさらに備えている。プリント経路114は、表面134に対して静止している。駆動アセンブリ136は、物体102を積層造形するために、搬送ガイド116又は表面134のうちの少なくとも一方を互いに対して操作可能に且つ選択的に移動させるように構成されている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例11を特徴付けており、実施例11は、上記の実施例1から10のいずれかに係る主題も含む。
【0045】
駆動アセンブリ136は、搬送ガイド116を介して原料ライン106が堆積される際に、原料ライン106から物体102が製造されるように、搬送ガイド116と表面134との間の相対移動を促進する。
【0046】
駆動アセンブリ136は、物体102の積層造形のために、搬送ガイド116と表面134を三次元で互いに対して操作可能に移動させることができるように、任意の適切な形態をとり得る。幾つかの実施例では、駆動アセンブリ136は、ロボットアームであり得る。搬送ガイド116は、ロボットアームのエンドエフェクタとして説明され得る。駆動アセンブリ136は、任意の複数の自由度で、搬送ガイド116と表面134との間の相対移動をもたらすことができる。この任意の複数の自由度には、例えば、互いに対して三次元で直交する、三次元での互いに対する少なくとも3つの自由度、三次元での互いに対する少なくとも6つの自由度、三次元での互いに対する少なくとも9つの自由度、及び/又は三次元での互いに対する少なくとも12の自由度が含まれる。
【0047】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、システム300は、搬送ガイド116がプリント経路114に沿って原料ライン106を堆積する際に、搬送ガイド116の先にあるプリント経路114を加熱するように構成されたプリント経路ヒータ138をさらに備えている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例12を特徴付けており、実施例12は、上記の実施例1から11のいずれかに係る主題も含む。
【0048】
搬送ガイド116がプリント経路114に沿って原料ライン106を堆積する際に、搬送ガイド116の先にあるプリント経路114を加熱することによって、プリント経路ヒータ138は、原料ライン106が堆積される表面を整える。例えば、原料ライン106が、硬化機構120により既に硬化した又は少なくとも部分的に硬化した以前の長さの原料ライン106に対して堆積されるとき、以前の長さの原料ライン106を加熱することにより、原料ライン106の2つの層の間の湿潤及び接着が促進される。
【0049】
幾つかの実施例では、プリント経路ヒータ138は、例えば、原料ライン106内の細長い繊維108に誘導的に且つ/又は電気的に接続された状態で、誘導加熱及び/又は抵抗加熱を利用することができる。追加的又は代替的に、プリント経路ヒータ138は、プリント経路114を加熱するための放射ヒータ及び/又はレーザを備え得る。
【0050】
概して
図1及び特に
図2を参照すると、システム300は、原料ライン106が搬送ガイド116によって堆積された後、原料ライン106を加熱するように構成された堆積原料ラインヒータ140をさらに備えている。この段落の上述の主題は、本開示の実施例13を特徴付けており、実施例13は、上記の実施例1から12のいずれかに係る主題も含む。
【0051】
原料ライン106が搬送ガイド116によって堆積された後、原料ライン106を加熱することによって、堆積原料ラインヒータ140は、原料ライン106のそれ自体に対する後続の堆積及び接着のために、既に堆積した原料ライン106を適切に整える。例えば、硬化機構120によって一定の長さの原料ライン106が硬化したり、又は部分的に硬化したりしたときに、一定の長さの原料ライン106の後続の又は同時発生的な加熱は、一定の長さの原料ライン106に対して堆積される原料ライン106の後続の層との間の接着を促進することができる。さらに、原料ライン106が搬送ガイド116によって堆積された後、原料ライン106を加熱することは、原料ライン106の硬化の度合いを高めることができ、原料ライン106の樹脂110の硬化動特性又は硬化速度の制御のために用いることができる。
【0052】
幾つかの実施例では、堆積原料ラインヒータ140は、例えば、原料ライン106内の細長い繊維108に誘導的に且つ/又は電気的に連結された状態で、誘導加熱及び/又は抵抗加熱を利用することができる。追加的に又は代替的に、堆積原料ラインヒータ140は、原料ライン106を加熱するための放射ヒータ及び/又はレーザを備え得る。
【0053】
概して
図1及び
図2、特に
図3を参照すると、原料ライン106から物体102を積層造形する方法400が開示されている。原料ライン106は、樹脂110内に少なくとも部分的に封入された細長い繊維108を備えている。方法400は、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック402)を含む。原料ライン106及び樹脂110は、樹脂110が第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときにより堅い。方法400は、原料ライン106の樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入すること(ブロック404)をさらに含む。方法400は、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック406)をさらに含む。原料ライン106及び樹脂110は、樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときよりも、樹脂110が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にあるときに堅くない。方法400は、樹脂110が第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、搬送ガイド116を使用して、原料ライン106をプリント経路114に沿って堆積すること(ブロック408)をさらに含む。方法400は、プリント経路114に沿って搬送ガイド116から原料ライン106が分配された後、原料ライン106の樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させること(ブロック410)をさらに含む。少なくとも部分的に硬化した状態にある樹脂110は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂110より硬化されている。この段落中の上記の主題は、本開示の実施例14を特徴付けるものである。
【0054】
したがって、方法400は、原料ライン106から物体102を製造するために実装され得る。さらに、方法400は、細長い繊維108を有する物体102を製造するために実装され得る。この細長い繊維108は、例えば、物体102の所望の特性を画定するために、物体102の全体にわたり所望の且つ/又は所定の配向に配向される。細長い繊維108が樹脂110内に封入されるので、原料ライン106は、プリプレグ原料ラインであると説明してもよい。さらに、原料ライン106はかなりの長さを有する場合があるので、搬送ガイド116の中に導入する前に、原料ライン106をコイル巻きするか、又はスプールすることができる。したがって、原料ライン106は、損傷を受けず細長い繊維108にコイル巻きされるためには、十分に可撓性又は屈曲可能でなければならないが、さらに、樹脂110を流出させず、継続的な可撓性ラインとして原料ライン106の一体性を保つために、十分に堅くなければならない。しかしながら、原料ライン106の第1の少なくとも部分的に未硬化の状態は、搬送ガイド116を通して操作的に供給させ前進させるには、あまりにも可撓性が高い場合があり、関連システム(例えば、システム300)の複合部品に付着したり、さもなければ複合部品を汚したりせずに、システムによって操作的に取り扱うには、あまりにもべとべとしていたり、粘着質であったりする場合がある。したがって、原料ライン106を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることにより、細長い繊維108が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、且つ、樹脂110が関連システム(例えば、システム300)を汚染させずに、原料ライン106を、搬送ガイド116の中へ導入し搬送ガイド116を通過させることが容易になる。続いて、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116から出る際に、樹脂106を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることは、物体102を積層造形するために搬送ガイド116によって三次元内で操作可能に堆積するのに十分柔軟な原料ライン106をもたらす。方法400の幾つかの実施態様では、原料ライン106の特性に応じて、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に、原料ライン106を第2の軟化した未硬化状態へ変質させることが有益であり得る。方法400の他の実施態様では、原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106を第2の軟化した未硬化状態へ変質させることが有益であり得る。最後に、樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ少なくとも部分的に硬化させることにより、物体の製造中に又はその原位置で、物体102の硬化が可能となる。
【0055】
方法400に従って、概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.08GPaより大きく、0.1GPa以下の剛性率を有する。堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.1GPaより大きい剛性率を有する。第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106は、0.1GPa以下の剛性率を有する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例15を特徴付けており、実施例15は、上記の実施例14に係る主題も含む。
【0056】
剛性率又は堅さの閾値が0.1Gpaであるので、原料ライン106は、堅化機構112によって堅くされたときに、細長い繊維108が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、搬送ガイド116の中へ導入されるのに十分な堅さを有する。さらに、0.1GPa未満の剛性率を有すると、原料ライン106を、曲がったプリント経路、例えば、二次元又は三次元の湾曲を有するプリント経路114に沿って堆積することができる。しかしながら、細長い繊維108の剛性、対応するトウ内の細長い繊維108の数、原料ライン106の形状、原料ライン106の直径、樹脂110の特性等に基づいて、他の閾値の剛性率が利用されてもよい。
【0057】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック402)は、第1の少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の樹脂110から熱を引き出すこと(ブロック412)を含む。さらに、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック406)は、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の樹脂110を加熱すること(ブロック414)を含む。この段落の前述の主題は、本開示の実施例16を特徴付けており、実施例16は、上述の実施例14又は15に係る主題も含む。
【0058】
原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるために、原料ライン106の樹脂110から熱を引き出すことにより、樹脂110が十分に冷却され、原料ライン106の剛性率又は堅さは、細長い繊維108が曲がったり、割れたり、又はさもなければ損傷を受けたりせずに、搬送ガイド116の中へ導入されるのに十分な高さ又は程度となる。方法400の幾つかの実施態様では、樹脂110から熱を引き出すことは、樹脂110を冷凍させることであると説明することができる。その後、樹脂110及び原料ライン106の堅さを逆転させるために、樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させるように樹脂110を加熱することにより、プリント経路114に沿った搬送ガイド116による原料ライン106の操作可能な堆積が容易となる。
【0059】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、原料ライン106の樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入すること(ブロック404)は、原料ライン106の樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ押し出すこと(ブロック416)を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例17を特徴付けており、実施例17は、上記の実施例14から16のいずれかによる主題も含む。
【0060】
原料ライン106を搬送ガイド116の中へ押し出すことによって、関連する積層造形システム(例えば、本明細書のシステム300)の供給機構(例えば、供給機構126)は、搬送ガイド116の上流に位置付けられ、結果的に、プリント経路114に対して操作可能に移動する搬送ガイド116の通り道の外側に位置付けされ得る。
【0061】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、搬送ガイド116の中へ原料ライン106を押し出すこと(ブロック416)は、互いに対向するローラ又はベルト128によって実行される。対向するローラ又はベルト128は、搬送ガイド116を通して原料ライン106を押し出すために、原料ライン106の両側と係合し選択的に回転する。この段落の上述の記載は、本開示の実施例18を特徴付けており、実施例18は、上記の実施例17に係る主題も含む。
【0062】
互いに対向するローラ又はベルト128は、選択的に回転すると、原料ライン106と摩擦を起こしながら係合するように作動する。それにより、互いに対向するローラ又はベルト128の間で原料ライン106が供給され、搬送ガイド116の中へ且つ搬送ガイド116を通して押し出される。
【0063】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400は、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知すること(ブロック418)をさらに含む。方法400は、原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知したこと(ブロック418)に応答して、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック402)、原料ライン106の樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入すること(ブロック404)、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック406)、又はプリント経路114に沿って搬送ガイド116から原料ライン106が分配された後、原料ライン106の樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させること(ブロック410)のうちの少なくとも1つを動的に制御すること(ブロック420)を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例19を特徴付けており、実施例19は、上記の実施例14から18のいずれかに係る主題も含む。
【0064】
原料ライン106に関連する少なくとも1つの物理的特性を感知することによって、方法400の実施態様は、原料ライン106の堅さ、原料ライン106の供給速度、及び原料ライン106の硬化速度をリアルタイムで制御することができる。
【0065】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、原料ライン106の樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック402)を動的に制御すること(ブロック420)は、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂110の堅さを制御すること(ブロック422)を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例20を特徴付けており、実施例20は、上記の実施例19に係る主題も含む。
【0066】
樹脂110を第1の少なくとも部分的に未硬化の状態から堅い少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることを動的に制御することによって、堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある原料ライン106の堅さは、原料ライン106が、搬送ガイド116の中へ操作可能に導入され及び搬送ガイド116を通って前進するのに十分な堅さを有することを確実にするように制御され得る。
【0067】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、原料ライン106の樹脂110が堅い少なくとも部分的に未硬化の状態にある状態で、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入すること(ブロック404)を動的に制御すること(ブロック420)は、原料ライン106の供給速度を制御すること(ブロック424)を含む。この段落の前述の主題は、本開示の実施例21を特徴付けており、実施例21は、上述の実施例19又は20に係る主題も含む。
【0068】
原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入することを動的に制御することによって、原料ライン106の供給速度を制御することができ、それにより、原料ライン106を搬送ガイド116の中へ導入する前に、原料ライン106を適切に堅くするのに十分な時間を有し、且つ/又は、搬送ガイド116によってプリント経路114に沿った原料ライン106の操作可能な堆積の前に、原料ライン106を適切に軟化するのに十分な時間を有することが確実なものとされる。
【0069】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、原料ライン106が搬送ガイド116を通過する際に又は原料ライン106が搬送ガイド116を出る際に、原料ライン106の樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させること(ブロック406)を動的に制御すること(ブロック420)は、第2の少なくとも部分的に未硬化の状態にある樹脂110の堅さを制御すること(ブロック426)を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例22を特徴付けており、実施例22は、上記の実施例19から21のいずれかに係る主題も含む。
【0070】
樹脂110を堅い少なくとも部分的に未硬化の状態から第2の少なくとも部分的に未硬化の状態へ変質させることを動的に制御することによって、原料ライン106の第2の少なくとも部分的に未硬化の状態を制御することができ、それにより、プリント経路114に沿った搬送ガイド116による操作可能な堆積のために、原料ライン106が確実に十分な可撓性を有する。
【0071】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400によれば、プリント経路114に沿って搬送ガイド116から原料ライン106が分配された後、原料ライン106の樹脂110を第2の少なくとも部分的に未硬化の状態から少なくとも部分的に硬化した状態へ変質させること(ブロック410)を動的に制御すること(ブロック420)は、原料ライン106の樹脂110の硬化速度を制御すること(ブロック428)を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例23を特徴付けており、実施例23は、上記の実施例19から22のいずれかに係る主題も含む。
【0072】
樹脂110を少なくとも部分的に硬化させることを動的に制御することによって、物体102が製造されている際に原料ライン106に付与される硬化速度を制御することができる。
【0073】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400は、搬送ガイド116がプリント経路114に沿って原料ライン106を堆積する際に、搬送ガイド116の先にあるプリント経路114を加熱すること(ブロック430)をさらに含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例24を特徴付けており、実施例24は、上記の実施例14から23のいずれかに係る主題も含む。
【0074】
搬送ガイド116がプリント経路114に沿って原料ライン106を堆積する際に、搬送ガイド116の先にあるプリント経路114を加熱することによって、原料ライン106が堆積される表面が適切に整えられる。例えば、原料ライン106が、既に硬化した又は少なくとも部分的に硬化した以前の長さの原料ライン106に対して堆積されているとき、以前の長さの原料ライン106を加熱することにより、原料ライン106の2つの層の間の湿潤及び接着が促進される。
【0075】
概して
図1及び
図2並びに特に
図3を参照すると、方法400は、原料ライン106がプリント経路114沿って搬送ガイド116によって堆積された後、原料ライン106を加熱すること(ブロック432)をさらに含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例25を特徴付けており、実施例25は、上記の実施例14から24のいずれかに係る主題も含む。
【0076】
原料ライン106が搬送ガイド116によって堆積された後、原料ライン106を加熱することによって、堆積された原料ライン106は、それ自体に対する原料ライン106の後続の堆積及び接着のために適切に整えられる。例えば、一定の長さの原料ライン106が硬化するか、又は部分的に硬化するときに、一定の長さの原料ライン106の後続の又は同時発生的な加熱は、一定の長さの原料ライン106に対して堆積される原料ライン106の後続の層との間の接着を促進することができる。
【0077】
本開示の実施例は、
図4に示す航空機の製造及び保守方法1100、並びに
図5に示す航空機1102に照らして説明することができる。製造前の段階で、例示的な方法1100は、航空機1102の仕様及び設計(ブロック1104)と材料調達(ブロック1106)とを含み得る。製造段階では、航空機1102の構成要素及びサブアセンブリの製造(ブロック1108)と、システムインテグレーション(ブロック1110)とが行われ得る。その後、航空機1102は、認可及び納品(ブロック1112)を経て運航(ブロック1114)に供され得る。運航中、航空機1102には、定期的な整備及び保守(ブロック1116)が予定され得る。定期的な整備及び保守は、航空機1102の1つ又は複数のシステムの改変、再構成、改修等を含み得る。
【0078】
例示的な方法1100の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば、顧客)によって実行又は実施され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレータとは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要システムの下請業者を含んでもよく、第三者とは、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含んでもよく、オペレータとは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであってもよい。
【0079】
図5に示すように、例示的な方法1100によって製造された航空機1102は、複数の高レベルのシステム1120及び内装1122を有する機体1118を含み得る。高レベルシステム1120の実施例には、推進システム1124、電気システム1126、油圧システム1128、及び環境システム1130のうちの1つ又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムも含まれてよい。ここでは航空宇宙産業の実施例を示したが、本明細書で開示される原理は、自動車産業のような他の産業にも適用することができる。そのため、本明細書で開示される原理は、航空機1102以外に、他のビークル(例えば、陸上ビークル、海洋ビークル、宇宙ビークル等)にも適用することができる。
【0080】
本明細書で示され又は説明された装置及び方法は、製造及び保守方法1100の、1つ又は複数の任意の段階において利用することができる。例えば、構成要素及びサブアセンブリの製造(ブロック1108)に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機1102の運航(ブロック1114)中に製造される構成要素又はサブアセンブリと同様の様態で製作又は製造され得る。さらに、装置、方法、又はこれらの組み合わせの1つ又は複数の実施例は、例えば、航空機1102の組立てを著しく効率化するか、又はコストを削減することにより、製造段階1108及び1110において利用することができる。同様に、装置又は方法を実現する1つ又は複数の実施例、或いはこれらの組み合わせは、例えば、限定するわけではないが、航空機1102の運航(ブロック1114)中に、及び/又は整備及び保守(ブロック1116)において利用することができる。
【0081】
本明細書で開示された装置及び方法の種々の実施例は、多種多様な構成要素、特徴、及び機能を含む。本明細書で開示された装置及び方法の様々な実施例は、本明細書で開示された装置及び方法のその他の任意の実施例の任意の構成要素、特徴、及び機能を任意の組み合わせで含んでもよく、かかる可能性は全て本開示の範囲内に含まれることが意図されていることを理解すべきである。
【0082】
上記の説明及び添付図面に提示された教示を利用して、本開示が関係する当業者には、本明細書に明記された実施例の多数の修正例が、想起されるであろう。
【0083】
したがって、本開示は例示された特定の実施例に限定されることがないことと、修正例及びその他の実施例は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることとを理解されたい。さらに、上述の記載及びこれに関連する図面では、要素及び/または機能の特定の例示的な組み合わせに照らして本開示の実施例が記載されているが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、代替的な実装形態によって、要素及び/又は機能の異なる組み合わせを提供することができることを理解するべきである。そのため、添付の特許請求の範囲で括弧でくくられた参照番号は、例示目的でのみ提示されており、特許請求される主題の範囲を本開示で提供される特定の実施例に限定することを意図しているわけではない。