(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】ブレース固定ユニット及び該ブレース固定ユニットを用いた床支持構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220623BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20220623BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E04B1/58 G
E04B1/18 F
E04B5/02 M
(21)【出願番号】P 2018124531
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000177139
【氏名又は名称】三洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】菊川 幸浩
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214916(JP,A)
【文献】特開2017-089218(JP,A)
【文献】特開2017-206884(JP,A)
【文献】特開2015-063850(JP,A)
【文献】特開2013-032689(JP,A)
【文献】特開2015-194002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/18
E04B 5/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の側面を有するブレース材を固定するための固定金具と、
前記固定金具用の支持金具と、
前記固定金具を、前記支持金具に固定するための締結部材と
を備えたブレース固定ユニットであって、
前記固定金具が、
取付孔が形成された平板状の支持部と、
前記支持部の前後方向側辺から、それぞれ略垂直に下方にのびる一対のブラケットと
を一体的に形成して成り、かつ、
前記各ブラケットの左右両側部分に、各々ブレース取付孔が設けられ、
一対のブラケット間で前記ブレース材の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を前記ブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定することができるように構成され、
前記支持金具が、大引材に取り付けることができるようにU字形又はL字形に形成され、
該支持金具の底板に、内面にネジ部を有する突孔部が形成され、
前記支持金具の突孔部と、前記固定金具の取付孔とを合わせた状態で、前記締結部材で前記固定金具を前記支持金具に固定することができるように構成されている
ことを特徴とするブレース固定ユニット。
【請求項2】
各ブラケットに、複数のブレース取付孔をマトリックス状に配置した
ことを特徴とする請求項1に記載のブレース固定ユニット。
【請求項3】
基礎面に並設された複数の床支持脚によって支持される大引材と、基礎面との間にブレース材を取り付ける床支持構造において、
前記大引材に、請求項1又は2に記載のブレース固定ユニットを、その固定金具が、水平面において大引材の長さ方向に対して適切な角度になるように固定し、
前記基礎面上の適切な位置に、底板部と底板部の両側辺から上方に向けて伸びる、ブレース取付孔を備えた一対のブラケットを有する下部ブレース固定金具を固定し、
前記ブレース固定ユニットにおける固定金具の一対のブラケットの間と、前記下部ブレース固定金具における一対のブラケット間とで、少なくとも対向する一対の側面を有するブレース材の両端部の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を、ブラケットのブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定して成る
ことを特徴とする床支持構造。
【請求項4】
前記ブレース固定ユニットにおける前記固定金具が、そのブラケットが、大引材の長手方向に対して水平面において所定の角度をなして位置し、それにより、取付後のブレース材が、床支持脚を避けることができるように、前記支持金具に固定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の床支持構造。
【請求項5】
前記ブレース固定ユニットにおける前記固定金具が、そのブラケットが、大引材の長手方向に水平面において直交する方向に位置するように前記支持金具に固定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の床支持構造。
【請求項6】
前記下部ブレース固定金具のブラケットの少なくとも一方の側辺と水平面との間の角度が60°以下である
ことを特徴とする請求項3~5の何れか一項に記載の床支持構造。
【請求項7】
前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける両側辺と水平面との間の角度が異なる角度である
ことを特徴とする請求項6に記載の床支持構造。
【請求項8】
前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける一方の側辺と水平面との間の角度が45°であり、他方の側辺と水平面との間の角度が60°である
ことを特徴とする請求項7に記載の床支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床支持強度を高めるために使用されるブレース材を固定するためのブレース固定ユニット及び該ブレース固定ユニットを用いた床支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床スラブ上に床支持脚を介して大引材を配置し、該大引材に根太材及び床板を設けて成る床支持構造において、支持強度を上げるために、大引材と床支持脚との間、又は、大引材と床スラブとの間に、斜材としてブレース材を設けることが行われている(特許文献1参照)。
特許文献1における床支持構造では、大引材に平板から成るブラケットを固定すると共に、床支持脚の下部にも同様に平板から成るブラケットを固定し、これらのブラケット間に、斜材としてブレース材を設けることが開示されている(特許文献1参照)。
この床支持構造では、大引材と床支持脚との間にブレース材を固定しているため、大引材がその長手方向に揺れる振動を防止することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-165786号公報
【文献】実用新案登録第2600408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の床支持構造では、大引材の側面に平板から成るブラケットを固定し、そのブラケットにブレース材を固定しているため、ブレース材は大引材の長手方向に沿って設けられることになる。このため、ブレース材の最大長さは、ブラケットから、ブラケットを挟んで配置されている床支持脚の下部までの長さに制限され、ブレース材が床支持脚に当たってしまうため、それ以上長くすることはできないという問題がある。このようにブレース材の長さに制限があると、例えば、予め準備したブレース材の寸法が異なるだけで補強工事が行えなくなるため施工性が悪い。また、ブレース材の取付角度も、床支持脚との接触が原因で制限を受ける。
さらに、上記した従来の床支持構造は、大引材の側面に平板からなるブラケットを固定し、そのブラケットにブレース材の一端を固定する構造であるため、ブレース材の取付方向も制限される。例えば、大引材の長手方向と直交する方向にブレース材を設けたり、また、前記床支持脚を避けるように大引材の長手方向に対して水平方向にある程度の角度を付けてブレース材を設ける場合には、異なる形状のブラケットを使用しなければならず、複数種類の形状のブラケットが必要になるという問題もある。
さらにまた、上記した特許文献1においても、そうであるが、従来から斜材として用いるブレース材は、両端に羽子板ボルト等の羽子板状部分を設けて成るブレース材が一般的に使用されている(特許文献2)。そして、上記したブレース材は、その両端の羽子板状部分を平板から成るブレラケットにボルトで固定することによって使用される。このため、ブレース材とブラケットとの連結部の強度がそれ程高くないという問題が残っている。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、ブレース材の長さ、水平面に対する取付角度、及び取付向きに対する制限がなく、任意の長さのブレース材を使用することが可能であり、かつ、任意の取付角度及び取付向きでブレース材を大引材に固定することができ、さらに、耐震構造を高める必要性がある現在において、羽子板状部を平板から成るブレケットに固定する従来の床支持構造よりも、さらに支持強度を高めることができるブレース固定ユニット及び該ブレース固定ユニットを用いた床支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るブレース固定ユニットは、
少なくとも一対の側面を有するブレース材を固定するための固定金具と、
前記固定金具用の支持金具と、
前記固定金具を、前記支持金具に固定するための締結部材と
を備えたブレース固定ユニットであって、
前記固定金具が、
取付孔が形成された平板状の支持部と、
前記支持部の前後方向側辺から、それぞれ略垂直に下方にのびる一対のブラケットと
を一体的に形成して成り、かつ、
前記各ブラケットの左右両側部分に、各々ブレース取付孔が設けられ、
一対のブラケット間で前記ブレース材の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を前記ブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定することができるように構成され、
前記支持金具が、大引材に取り付けることができるようにU字形又はL字形に形成され、
該支持金具の底板に、内面にネジ部を有する突孔部が形成され、
前記支持金具の突孔部と、前記固定金具の取付孔とを合わせた状態で、前記締結部材で前記固定金具を前記支持金具に固定することができるように構成されていることを特徴とする。
また、上記したブレース固定ユニットにおいては、各ブラケットに、複数のブレース取付孔をマトリックス状に配置することができる。
また、本発明に係る床支持構造は、
基礎面に並設された複数の床支持脚によって支持される大引材と、基礎面との間にブレース材を取り付ける床支持構造において、
前記大引材に、上記ブレース固定ユニットを、その固定金具が、水平面において大引材の長さ方向に対して適切な角度になるように固定し、
前記基礎面上の適切な位置に、底板部と底板部の両側辺から上方に向けて伸びる、ブレース取付孔を備えた一対のブラケットを有する下部ブレース固定金具を固定し、
前記ブレース固定ユニットにおける固定金具の一対のブラケットの間と、前記下部ブレース固定金具の一対のブラケット間とで、少なくとも対向する一対の側面を有するブレース材の両端部の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を、ブラケットのブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定して成ることを特徴とする。
上記した床支持構造では、前記ブレース固定ユニットにおける前記固定金具を、そのブラケットが大引材の長手方向に対して水平面において所定の角度をなして位置し、それにより、取付後のブレース材が、床支持脚との干渉を避けることができるように、前記支持金具に固定することができる。
また、上記した床支持構造では、前記ブレース固定ユニットにおける前記固定金具を、そのブラケットが大引材の長手方向に水平面において直交する方向に位置するように、前記支持金具に固定することもできる。
さらに、上記床支持構造においては、前記下部ブレース固定金具のブラケットの少なくとも一方の側辺と水平面との間の角度が60°以下であり得る。
また、前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける両側辺と水平面との間の角度を異なる角度にしてもよい。この場合、例えば、前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける一方の側辺と水平面との間の角度が45°であり、他方の側辺と水平面との間の角度が60°であり得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るブレース固定ユニットは、少なくとも一対の側面を有するブレース材を固定するための固定金具と、前記固定金具用の支持金具と、前記固定金具を、前記支持金具に固定するための締結部材とを備えたブレース固定ユニットであって、前記固定金具が、取付孔が形成された平板状の支持部と、前記支持部の前後方向側辺から、それぞれ略垂直に下方にのびる一対のブラケットとを一体的に形成して成り、かつ、前記各ブラケットの左右両側部分に、各々ブレース取付孔が設けられ、一対のブラケット間で前記ブレース材の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を前記ブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定することができるように構成され、前記支持金具が、大引材に取り付けることができるようにU字形又はL字形に形成され、該支持金具の底板に、内面にネジ部を有する突孔部が形成され、前記支持金具の突孔部と、前記固定金具の取付孔とを合わせた状態で、前記締結部材で前記固定金具を前記支持金具に固定することができるように構成されているので、それ自体の強度が高い角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等から成る一対の側面を有する材料をブレース材として使用することが可能になり床の支持強度を上げることができる。
また、本発明に係るブレース固定ユニットは、羽子板部を一枚のブラケットにボルトで固定する場合に比べて、二枚のブラケットでブレース材の一対の側面を挟持した状態で固定することができるので、ブレース材の連結部における強度があがる。
さらに、本発明に係るブレース固定ユニットは、その固定金具の支持部に取付孔を設け、大引材に取付られる支持金具に内面にネジ部を有する突孔部を設け、前記突孔部と前記取付孔とを合わせた状態で、締結部材で前記固定金具を前記支持金具に固定するように構成しているので、締結部材で固定する前に、前記支持金具に対する前記固定金具の水平面における角度位置を任意に調整することが可能になる。これにより、大引材の長手方向に対するブレース材の水平面における取付角度を任意に調整することが可能になるため、必要に応じて、支持脚との干渉を避ける角度でブレース材を固定したり、また、大引材の長手方向に直交する角度でブレース材を固定したりすることが可能になる。このため、複数種類の形状のブラケットを用意することなく、一種類のブレース固定ユニットを用いて、ブレース材の長さ、水平面における取付角度(即ち、取付向き)及び水平面に対する取付角度の制限なく、任意のブレース材を任意の取付向き及び取付角度で固定することが可能になる。
さらにまた、特別な加工をすることなく強度の高い角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼をブレース材として使用することが可能になるので、コストを抑えることも可能になる。
また、各ブラケットに、複数のブレース取付孔をマトリックス状に設けることにより、ブレース材をどのような角度でブレース固定ユニットのブラケット間に配置しても、ブレース取付孔がブレース材の前記側面と対面するように構成しているので、ブレース材を固定する角度を自由に選択することが可能になり、施工が容易になる。
さらに、本発明に係る床支持構造は、基礎面に並設された複数の床支持脚によって支持される大引材と、基礎面との間にブレース材を取り付ける床支持構造において、前記大引材に、上記ブレース固定ユニットを、その固定金具が、水平面において大引材の長さ方向に対して適切な角度になるように固定し、前記基礎面上の適切な位置に、底板部と底板部の両側辺から上方に向けて伸びる、ブレース取付孔を備えた一対のブラケットを有する下部ブレース固定金具を固定し、前記ブレース固定ユニットにおける固定金具の一対のブラケットの間と、前記下部ブレース固定金具における一対のブラケット間とで、少なくとも対向する一対の側面を有するブレース材の両端部の前記一対の側面を挟持した状態で、前記ブレース材を、ブラケットのブレース取付孔を介して止着具によって一対のブラケットに固定して成る。このように、本発明に係る床支持構造は、ブレース固定ユニットと、下部ブレース固定金具とが、各々一対のブラケットを備え、各固定金具のブラケット間でブレース材の前記一対の側面を挟持した状態で固定するので、上記したブレース固定ユニットについて述べた効果と同様の効果を有する。さらに、本発明に係る床支持構造は、角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等のそれ自体の強度が高い鋼材をブレース材として使用でき、前記ブレース材の両端部を、一対のブラケット間で挟んで固定しているため、羽子板部を一枚のブラケットにボルト等で固定する場合に比べて、ブレース材の連結部における強度あがり、角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等のように一対の側面を有する材料そのものの強度が高いことも相まって、床の支持強度が高くなる。
また、前記ブレース固定ユニットにおける前記固定金具を、そのブラケットが、大引材の長手方向に対して水平面において所定の角度をなして位置し、それにより、取付後のブレース材が、床支持脚を避けることができるように、前記支持金具に固定することにより、大引材がその長手方向に揺れる振動を防止することができる。
また、上記床支持構造において、前記ブレース固定ユニットを、大引材の長手方向に直交する方向に、そのブラケットが位置するよう前記床支持脚に固定し、前記下部ブレース固定金具を、基礎面上における大引材の長手方向と直交する方向の所定位置に固定することで、大引材がその長手方向と直交する方向に揺れる振動を防止することができる。
さらに、上記床支持構造において、前記下部ブレース固定金具のブラケットの少なくとも一方の側辺と水平面との間の角度を60°以下とすることで、ブレース材を固定する時にブレース材を下部ブレース固定金具のブラケットの傾斜に沿って配置するだけで、ブレース材を一定の角度で配置することが容易になる。これにより施工容易性を非常に高めることが可能になる。
また、前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける両側辺と水平面との間の角度を異なる角度にし、例えば、前記下部ブレース固定金具のブラケットにおける一方の側辺と水平面との間の角度を45°とし、他方の側辺と水平面との間の角度を60°とすることで、一つの下部ブレース固定金具を用いて、45°又は60°の角度でブレース材を容易に固定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るブレース固定ユニットの固定金具の正面図である。
【
図5】本発明に係るブレース固定ユニットの支持金具の正面図である。
【
図6】
図6に示した支持金具のA-A断面図である。
【
図7】ブレース固定金具における固定金具、支持金具及び締結部材の分解組立図である。
【
図8】本発明に係るブレース固定金具における固定金具と支持金具との連結部の詳細を示す一部断面拡大図である。
【
図9】本発明に係る床支持構造の一実施例を示す図である。
【
図11】
図10に示した下部ブレース固定金具の平面図である。
【
図12】
図10に示した下部ブレース固定金具の底面図である。
【
図13】
図10に示した下部ブレース固定金具の斜視図である。
【
図14】本発明に係るブレース固定ユニットの固定金具の別の実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した一実施例を参照して、本発明に係るブレース固定ユニット及び該ブレース固定ユニットを用いた床支持構造の実施の形態を説明していく。
【0009】
図1~
図4は、本発明に係るブレース固定ユニットの固定金具の正面図、平面図、底面図及び斜視図を各々示している。
図面に示すように、このブレース固定ユニットXの固定金具1は、一枚の鋼板を折り曲げ加工して形成されたものである。
固定金具1は、平板状の支持部2と、該支持部2の前後方向側辺から、それぞれ略垂直に下方にのび、かつ、前記支持部2より左右両方向に突出する一対のブラケット3,3とを折り曲げ加工により一体的に形成して成る。
支持部2には、後述する支持金具5に固定するための支持金具取付孔2aが形成されており、各ブラケット3の左右両側部分には、複数(この実施例では9つ)のブレース取付孔4がマトリックス状に形成されている。
一対のブラケット3,3間の距離T1は、ブレース材として使用する少なくとも一対の側面を有する材料における前記一対の側面間の幅に合わせて寸法決めされている。
上記したように構成することにより、ブレース材の一対の側面を一対のブラケット3間で挟んで保持した状態で、該ブレース材を、任意のブレース取付孔4を使用してボルト又はビス等の適当な止着具で一対のブラケット3に固定することができる。ここで、少なくとも一対の側面を有する材料としては、具体的には、例えば、角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等の鋼材が挙げられ、これらの材料は、従来使用されてきた両端に羽子板状部を有するブレース材に比べて、それ自身の強度が高い。また、ブレース材を一対のブラケット3間で挟んで両側から固定することにより、一枚のブラケットに羽子板状部を固定していた従来のブレース材に比べて連結部の支持強度が高くなる。従って、床支持構造全体の支持強度を上げることが可能になる。また、床支持構造の支持強度を上げるために特別な構造のブレース材を使用する必要がなく、一般的な角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等の鋼材を使用することができるので、コストが上がることがない。
さらに、ブラケット3に複数のブレース取付孔4をマトリックス状に配置することにより、ブレース材がどのような角度で、ブラケット3間に配置されても、必ず少なくとも一つのブレース取付孔4がブレース材と対面するようになるので、ブレース材の取付も容易になる。
【0010】
次に、
図5及び
図6を用いて、本発明に係るブレース固定ユニットXにおける支持金具5の構成について説明していく。
支持金具5は、鋼板をU字状に折り曲げ加工して成り、その内面にはクッション材5aが設けられている。支持金具5の底板部6の中央部分には、バーリング加工により上方に筒状に突出する突孔部6aが形成され、該突孔部6aの内側にはネジ溝が形成されている。また、一対の側板部7,7の上部には、ボルト及びナットから成る大引締結部材8を通すための締結孔7a、7aが形成されている。
上記したように構成された支持金具5における側板部7,7間の距離T2は、取り付けるべき大引材の幅に合わせて寸法決めされる。
【0011】
上記したように構成されたブレース固定ユニットXの組み立てについて
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、ブレース固定ユニットの展開組立図であり、
図8は、固定金具1を、そのブラケット3が大引材12の長手方向に対して水平面において直交する向きになるように支持金具5に固定した状態を示す図である。
図7及び
図8に示すように、固定金具1は、その支持部2の支持金具取付孔2aと、支持金具5の突孔部6aとを合わせた状態で、スプリングワッシャ9aを介して締結部材としてのボルト9bによって支持金具5に固定される。
より具体的には、支持金具5を大引材12に装着した後、支持金具5の各側板部7に形成された締結孔7aに大引締結部材8のボルトを貫通させてナットで締め付ける。これにより、支持金具5は大引材12に締結される。
固定金具1は、その支持部2の取付孔2aと前記支持金具5の突孔部6aとを合わせた状態で、前記支持金具5の底面に配置される。この時、固定金具1は、未だ固定されていないため、前記取付孔2aを中心として水平面において回転可能である。固定金具1の水平面における角度位置を画定した後に、スプリングワッシャ9aを介してボルト9bを用いて固定金具1は支持金具5に固定される(
図8参照)。
【0012】
以下、上記したように構成されたブレース固定ユニットを上部ブレース固定ユニットとして使用した床支持構造について説明していく。
【0013】
図9は、本発明に係る床支持構造の一実施例を示す図である。
この実施例における床支持構造は、
基礎面としての床スラブ10に併設される複数の床支持脚11と、
これら床支持脚11により下方から支持される複数の大引材12と、
前記大引材12に固定された上部ブレース固定ユニットXと、
床スラブ10に固定された下部ブレース固定金具20と、
前記上部ブレース固定ユニットA及び下部ブレース固定金具20とによって、両端部が固定されるブレース材13と
を備えている。
前記大引材12の上には根太材14が配置され、根太材14の上には床板材15が敷設されている。
尚、この実施例で使用されるブレース材も、少なくとも一対の側面を有する材料が用いられ、具体的には、例えば、角鋼、H形鋼、C形鋼又は丸鋼等が使用され得る。
【0014】
上部ブレース固定ユニットXは、上記したように、その支持金具5が大引材12に固定され、その固定金具1が締結部材9によって支持金具5に固定されている。
この実施例では、固定金具1は、そのブラケット3が、大引材12の長手方向に対して、水平面において僅かにずれる角度、具体的には、約45度の角度となるように位置決めされて固定されている。これにより、この固定金具1に支持されたブレース材13は、床支持脚11に干渉することがなくなる。
【0015】
次に、床スラブ10に固定される下部ブレース固定部材20について説明していく。
図10~
図13は、床スラブ10に固定される下部ブレース固定金具20の正面図、平面図、底面図及び斜視図を各々示している。
図面に示すように、下部ブレース固定金具20は、床スラブ10に固定される底板部21と、底板部21の前後方向両側辺から上方に伸びる一対のフランジ部22と、各フランジ部22の左右方向略中央付近から、右斜め上方に向けてさらに伸びる一対のブラケット23とを折り曲げ加工により一体成形したものである。
前記各ブラケット23は、その右側辺23aと水平線Hとの間の角度αが45°となり、その左側辺23bと水平線Hとの角度βが60°となるように形成されており、各ブラケット23には、複数(本実施例では3つ)のブレース取付孔24が形成されている。
さらに、底板部21にも、複数(本実施例では3つ)の取付孔21aが形成されており、この取付孔21aを介して、下部ブレース固定金具20は床スラブ10にボルトやビス等の適当な止着具で固定される。
上記したように構成された下部ブレース固定金具20は、そのブラケット23における右側辺23aと水平線Hとの間の角度αを45°とし、左側辺23bと水平線Hとの間の角度βを60°としているので、ブレース材を、例えば、右側辺23aに沿って配置してブラケット23に固定した場合には、ブレース材を床スラブ10に対して45°の角度で固定することが可能になり、左側辺23bに沿って配置してブラケット23に固定すれば、ブレース材を床スラブ10に対して60°の角度で固定することができる。これら45°及び60°は、斜材としてのブレース材の配置角度に適した角度である。従って、上記したように構成された下部ブレース固定金具20によれば、予め下部ブレース固定金具20の床スラブ10に対する固定位置を決めておくだけで、簡単にブレース材を好ましい角度で取り付けることが可能になり、施工が著しく容易になる。尚、この下部ブレース固定金具20におけるブラケット23の両側辺と水平線との角度は、任意に設定することができ、例えば、右側辺及び左側辺とも水平線に対して同じ角度であってもよく、また、45°及び60°以外の角度の組み合せであってもよい。具体的には、例えば、一方の側辺と水平線との間の角度を30°になるようにブラケット23を形成してもよい。
【0016】
上記したように大引材12に固定された上部ブレース固定ユニットXのブラケット3間と、床スラブ10に固定された下部ブレース固定金具20のブラケット23間とに、その側面13aが挟持されるように、ブレース材13の上端部及び下端部を配置した状態で、ブレース取付孔4,24を介してボルトやビス等の適当な止着具によりブラケット3及び23にブレース材13が固定される。これにより、ブレース材13は、その上端及び下端において、その両側面13aが一対のブラケット4及び33間に挟まれた状態で固定されることになる。
【0017】
上記した実施例では、上部ブレース固定ユニットAが、その固定金具1のブラケット3が、大引材12の長手方向から水平面において僅かにずれる角度をなすように固定されているため、大引材12がその長手方向に揺れる振動を防止することができる。
【0018】
上部ブレース固定ユニットAの固定方向は、本実施例に限定されることなく、例えば、その固定金具1のブラケット3が、大引材12の長手方向に直交する方向に位置するように固定してもよく、このように固定することにより、大引材11がその長手方向と直交する方向に揺れる振動を防止することができる。
また、上記した実施例では、上部ブレース固定ユニットAのブラケット3に9つのブレース取付孔4がマトリックス状に設けられているが、この構成は本実施例に限定されることなく、ブレース取付孔4の数は任意に設定することができる。
【0019】
次に、本発明に係るブレース固定ユニットXにおける固定金具1の別の実施例を、
図14~
図16を参照しながら説明していく。尚、
図14~
図16に示す実施例における固定金具1‘は、一部の構成を除いて、
図1~
図4に示した固定金具1と同じ構成であるため、同一又は類似する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図1~
図4に示した実施例では、固定金具1は、平板状の支持部2と、該支持部2の前後方向側辺から、それぞれ略垂直に下方にのび、かつ、前記支持部2より左右両方向に突出する一対のブラケット3,3とを折り曲げ加工により一体的に形成して成っている。即ち、平板状の支持部2の左右方向の長さは、一対のブラケット3の左右方向の長さより短い。
この
図14~
図16に示す実施例では、前記平板状の支持部2の左右方向の長さがブラケット3の左右方向の長さと同一である。このように構成することにより、一対のブラケット3の強度が高くなると共に、加工も容易になるという効果を奏する。
【0020】
以上説明したように、本発明に係るブレース固定ユニットXでは、その固定金具の一対のブラケットによって、一対の側面を有するブレース材の挟持した状態でブレース材を固定するので、例えば、固定金具がL字状から成る場合に比べてブレース材の連結強度が高くなり、結果として、床支持強度を上げることができる。
【符号の説明】
【0021】
X ブレース固定ユニット
1 固定金具
2 支持部
2a 支持金具取付孔
3 ブラケット
4 ブレース取付孔
5 支持金具
5a クッション材
6 底板部
6a 突孔部
7 側板部
7a 締結孔
8 大引締結部材
9a スプリングワッシャ
9b ボルト
10 床スラブ
11 床支持脚
12 大引材
13 ブレース材
13a ブレース材の側面
14 根太材
15 床板材
20 下部ブレース固定金具
21 底板部
21a 取付孔
22 フランジ部
23 ブラケット
23a 右側辺
23b 左側辺
24 ブレース取付孔
T1 ブラケット間の距離
T2 側板部間の距離
α ブラケット部33の右側辺33aと水平線Hとの間の角度
β ブラケット部33の左側辺33aと水平線Hとの間の角度
H 水平線