IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ステアリングコラム装置 図1
  • 特許-ステアリングコラム装置 図2
  • 特許-ステアリングコラム装置 図3
  • 特許-ステアリングコラム装置 図4A
  • 特許-ステアリングコラム装置 図4B
  • 特許-ステアリングコラム装置 図5A
  • 特許-ステアリングコラム装置 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/184 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B62D1/184
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018231311
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020093601
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】富士機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】澤村 浩司
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178260(JP,A)
【文献】特開2017-019340(JP,A)
【文献】特開2016-049918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、車幅方向に沿って互いに離間している一対の側壁を有する車体取付ブラケットと、
前記車体取付ブラケットの一対の側壁相互間にて移動自在に支持され、ステアリングシャフトを備えるステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムの前記車体取付ブラケットに対する移動を規制するようにロックするロック機構と、備え、
前記ロック機構は、
前記車体取付ブラケットの一対の側壁及び前記ステアリングコラムを車幅方向に沿って貫通する軸部と、
前記側壁の車幅方向外側に設けられる車体側ロック歯と、
前記車体側ロック歯に対し、前記軸部の軸方向に沿って接近移動することで噛み合う可動側ロック歯と、
前記車体側ロック歯が設けられた前記側壁の車幅方向外側において、前記軸部上に位置する固定カムと、
前記固定カムの固定山部に対し、可動山部が軸方向に当接して押し付けることで、前記軸部上において前記ステアリングコラムを前記一対の側壁により挟持させる可動カムと、
前記可動カムを回転操作する操作レバーと、
前記固定カムの外周側に一体的に設けられるロック解除用固定カムと、
前記操作レバーの回転操作によって、前記固定山部と前記可動山部との当接状態が解除されたときに、前記ロック解除用固定カムの解除用固定山部に解除用可動山部が当接することで、前記可動側ロック歯を前記車体側ロック歯から離間させるロック解除用可動カムと、を備えることを特徴とするステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記ロック解除用可動カムは円筒部を備え、前記可動カムは、前記円筒部の内部に軸方向に移動自在に挿入され、前記可動カムと前記円筒部との間に、前記可動カムと前記ロック解除用可動カムとの相対回転を規制する回転規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記可動側ロック歯を前記車体側ロック歯に押し付ける押し付け部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側の車体取付ブラケットに対し、ステアリングコラムが上下方向に揺動自在に設けられたチルト式のステアリングコラム装置では、チルト位置を調整した状態でロックするロック機構が設けられている。ロック機構は、車体取付ブラケット側のロック歯に対し、操作レバーの操作によってロック部材が接近移動することで噛み合ってロック状態となる。ロック解除時では、ロック部材に一体的に形成された解除用ばねによって、ロック部材をロック歯から離間させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-19340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロック解除時に、解除用ばねによってロック部材をロック歯から離間させる構成では、ロック解除動作が不充分となる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、ロック機構におけるロック解除をより確実なものとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステアリングコラム装置は、車体に取り付けられ、車幅方向に沿って互いに離間している一対の側壁を有する車体取付ブラケットと、前記車体取付ブラケットの一対の側壁相互間にて移動自在に支持され、ステアリングシャフトを備えるステアリングコラムと、前記ステアリングコラムの前記車体取付ブラケットに対する移動を規制するようにロックするロック機構と、備える。前記ロック機構は、前記車体取付ブラケットの一対の側壁及び前記ステアリングコラムを車幅方向に沿って貫通する軸部と、前記側壁の車幅方向外側に設けられる車体側ロック歯と、前記車体側ロック歯に対し、前記軸部の軸方向に沿って接近移動することで噛み合う可動側ロック歯と、前記車体側ロック歯が設けられた前記側壁の車幅方向外側において、前記軸部上に位置する固定カムと、前記固定カムの固定山部に対し、可動山部が軸方向に当接して押し付けることで、前記軸部上において前記ステアリングコラムを前記一対の側壁により挟持させる可動カムと、前記可動カムを回転操作する操作レバーと、前記固定カムの外周側に一体的に設けられるロック解除用固定カムと、前記操作レバーの回転操作によって、前記固定山部と前記可動山部との当接状態が解除されたときに、前記ロック解除用固定カムの解除用固定山部に解除用可動山部が当接することで、前記可動側ロック歯を前記車体側ロック歯から離間させるロック解除用可動カムと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作レバーの操作によるロック解除時に、ロック解除用可動カム及びロック解除用固定カムの山部同士が当接して可動側ロック歯が車体側ロック歯から離間するため、ロック解除がより確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係わるステアリングコラム装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】ステアリングコラム装置のロック機構を示す分解斜視図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4A】ロック時に可動山部が固定山部に当接した状態を示す斜視図である。
図4B】ロック時でのロック解除用可動カムとロック解除用固定カムとの位置関係を示す斜視図である。
図5A】ロック解除時に可動山部と固定山部との当接が外れた状態を示す斜視図である。
図5B】ロック解除時に解除用可動山部と解除用固定山部とが当接した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明で、「前後方向」は車体の前後方向に対応し、「左右方向」は、車体の左右方向(車幅方向)に対応する。図1において、「前後方向」の前側をF、後側をRとし、「左右方向」の左側をLH、右側をRHとしている。
【0010】
図1は、ステアリングコラム装置1の斜視図であり、車体取付ブラケット3が図示しない車体に取り付けられる。車体取付ブラケット3は、上部の前後方向両側に、車体に取り付けられる前方取付部5及び後方取付け部7をそれぞれ備えている。前方取付部5及び後方取付け部7の左右方向両側から左右一対の側壁9L,9Rが下方に向けて延出している。一対の側壁9L,9R相互間に、ステアリングコラム13が上下方向に揺動自在に取り付けられる。ステアリングコラム13は、ステアリングシャフト15を備え、ステアリングシャフト15の車体後方側の端部に図示しないステアリングホイールが取り付けられる。
【0011】
ステアリングコラム13は、前方側の端部が、左右方向に延在する揺動支持軸17を中心として車体取付ブラケット3に対して上下方向に揺動する。ステアリングコラム13は、ロアジャケット19、アッパジャケット20及び中間ジャケット23を備えている。ロアジャケット19は上部が開口する略U字形状で、中間ジャケット23は、上部に略逆U字形状のディスタンスブラケット21を有する略矩形の筒形状で、アッパジャケット20は略矩形の筒形状である。中間ジャケット23の内方には、アッパジャケット20が支持されている。
【0012】
中間ジャケット23に対し、ディスタンスブラケット21が上方から被さるようにして溶接により固定されている。ロアジャケット19は、下方から中間ジャケット23を覆い、かつ、ディスタンスブラケット21の下部を覆っている。この状態で、ディスタンスブラケット21を有する中間ジャケット23及びアッパジャケット20が、ロアジャケット19に対して前後方向に移動自在となっている。これにより、ステアリングホイールを備えるステアリングシャフト15が前後に移動するテレスコピック機構を構成する。
【0013】
ロアジャケット19は、底壁25と、底壁25の左右両側から立ち上がる左右一対のコラム側壁27L,27Rとを備える。コラム側壁27L,27Rの左右方向の両外側に、車体取付ブラケット3の側壁9L,9Rが挟むようにして配置される。この状態で、ロアジャケット19、アッパジャケット20及び中間ジャケット23を含むステアリングコラム13が、ステアリングシャフト15と共に車体取付ブラケット3に対して上下に揺動する。
【0014】
車体取付ブラケット3の側壁9L,9Rの後部には上下方向に長いチルト軸ガイド孔9aが形成されている(図2参照)。チルト軸ガイド孔9aは、揺動支持軸17を中心とした円弧形状である。チルト軸ガイド孔9aに対応してコラム側壁27L,27Rには、チルト軸挿入孔27aが形成されている(図3参照)。チルト軸ガイド孔9a及びチルト軸挿入孔27aを貫通するように軸部としてのチルト軸31が、右側から左側に向けて挿入されている。チルト軸挿入孔27aは、チルト軸ガイド孔9aのような長孔ではなく、略正方形の孔である。
【0015】
チルト軸31は、右側の端部に図示しないボルト頭部が形成され、左側の端部に雄ねじ31aが形成されている。図3に示すように、チルト軸31の雄ねじ31aが形成された部位は、コラム側壁27L及び操作レバー37を貫通して左側に突出しており、雄ねじ31aにナット33がワッシャー35を介して締結される。操作レバー37は、チルト軸31の軸心を中心として回転自在である。操作レバー37の回転操作によって、後述するロック機構39のロック時に、一対の側壁9L,9Rが一対のコラム側壁27L,27Rに対して左右両側から挟持して固定する。
【0016】
次に、ロック機構39について説明する。
【0017】
ロック機構39は、車体取付ブラケット3の側壁9Lに固定されるロック片41を備えている。ロック片41は、板状で上下方向にやや長い矩形状となっている。ロック片41は、側壁9Lの車幅方向外側に固定されており、固定された状態で、チルト軸ガイド孔9aに対応する位置に、上下方向に長い開口部41aが形成されている。ロック片41は、開口部41aの前後両側における側壁9Lと反対側の側面に、車体側ロック歯としてのロック歯41bが形成されている。ロック歯41bは上下方向に沿って複数形成されており、車体側のロック歯を構成する。開口部41aは、前後方向の寸法がチルト軸ガイド孔9aの前後方向の寸法よりも充分大きい。
【0018】
ロック機構39は、さらに、ロック歯41bに噛み合うロックツース43と、固定カム部材45と、可動カム部材47と、ロック解除用可動カム部材49と、押し付け部材としての押圧スプリング51とを備えている。
【0019】
ロックツース43は、前後方向に長い略直方体形状の上側部分53と、上側部分53の前後方向中央から下方に延びる上下方向に長い略直方体形状の下側部分55とを備えている。上側部分53の前後方向中央に円形孔53aが形成されている。円形孔53aの直径は、チルト軸31の直径よりも充分大きい。
【0020】
上側部分53の前部及び後部に、可動側ロック歯としてのツース側ロック歯53bが形成されている。ツース側ロック歯53bは、上下方向に沿って複数形成されており、前述したロック歯41bに噛み合うことで、ロック機構39はロック状態となる。上側部分53のツース側ロック歯53bが形成された部位の上下方向の長さは、ロック片41のロック歯41bが形成された部位の上下方向の長さよりも短い。
【0021】
固定カム部材45は、左右方向に長い直方体形状のボス部45aを有する。ボス部45aの左側端部に環状の固定カム45bが形成されている。固定カム45bは、左方向に突出する固定山部45b1と、固定谷部45b2とを有する。固定山部45b1の固定谷部45b2と反対側には、固定山部45b1よりもさらに左方向に突出するストッパ突起45b3が形成されている。
【0022】
固定カム部材45は、固定カム45bの外周側にロック解除用固定カム45cが一体的に形成されている。ロック解除用固定カム45cは、左方向に突出する解除用固定山部45c1と、解除用固定谷部45c2とを有する。固定山部45b1と解除用固定山部45c1とは、円周方向に沿ってずれた位置にあり、かつ、円周方向に沿って隣接している。
【0023】
ボス部45aは、側壁9Lのチルト軸ガイド孔9aに対し、図3に示すように、上下方向に移動自在に挿入される。ボス部45aの前後方向の幅寸法は、チルト軸ガイド孔9aの前後方向の幅寸法より僅かに小さい。
【0024】
ボス部45aがチルト軸ガイド孔9aに挿入された状態で、ロック解除用固定カム45c及び固定カム45bの右側の側面は、車体取付ブラケット3の側壁9Lに左側から当接する。このとき、ロック解除用固定カム45c及び固定カム45bは、ロック片41の開口部41aに入り込んでいる。すなわち、ロック解除用固定カム45cの外径は、開口部41aの前後方向の寸法よりも小さい。
【0025】
ボス部45aは、さらに図3に示すように、コラム側壁27Lのチルト軸挿入孔27aに挿入される。ボス部45aの断面形状は略正方形で、これに対応してチルト軸挿入孔27aは、ボス部45aの正方形状よりもやや小さい略正方形であり、ボス部45aはチルト軸挿入孔27aに嵌合した状態となる。このため、ボス部45aを備える固定カム部材45のチルト軸挿入孔27aに対する回転が規制される。この状態で、固定カム部材45が、チルト軸ガイド孔9aを上下方向に移動することで、コラム側壁27L(ロアジャケット19)が、ステアリングコラム13として上下に揺動する。
【0026】
なお、側壁9Rのチルト軸ガイド孔9a及びコラム側壁27Rのチルト軸挿入孔27aには、ボス部45aと断面形状が同様の略正方形の図示しないブッシュが挿入される。その際、ブッシュは、チルト軸挿入孔27aに嵌合し、かつ、チルト軸ガイド孔9aに対して上下方向に移動自在である。ブッシュ内にはチルト軸31が挿入される。ブッシュは、右側の端部にフランジを備え、当該フランジが側壁9Rの右側に位置する。したがって、車体取付ブラケット3の左右の側壁9L,9Rは、ロック解除用固定カム45c及び固定カム45bと、ブッシュのフランジとの間に挟まれた状態となっている。
【0027】
可動カム部材47は、固定カム45bに対し軸方向(左右方向)において対向した位置にある。可動カム部材47は、固定カム45bと対向する側に可動カム47aが形成されている。可動カム47aは、右方向に突出する可動山部47a1と、可動谷部47a2とを有する。可動カム部材47は、可動カム47aの固定カム45bと反対側に嵌合部47bが形成されている。嵌合部47bは、操作レバー37の嵌合孔37aに嵌合して固定される。
【0028】
操作レバー37を可動カム部材47と共に回転操作して、可動山部47a1が固定山部45b1に乗り上げて軸方向に当接した状態では、可動カム部材47によって固定カム部材45が右側に押し付けられる。これにより、ロック解除用固定カム45c及び固定カム45bの右側の側面が側壁9Lを右側に押圧する。図4Aに、可動山部47a1が固定山部45b1に乗り上げて軸方向に当接している状態を示す。図4Bは、図4Aに対し、後述するロック解除用可動カム部材49を固定カム部材45及び可動カム部材47に組み付けた状態を示す。
【0029】
可動山部47a1が固定山部45b1に軸方向に当接した状態では、ロック解除用固定カム45c及び固定カム45bと、前述したブッシュのフランジとの間で、車体取付ブラケット3の左右の側壁9L,9Rを挟み込む。挟み込まれた左右の側壁9L,9Rは、その内側に位置するロアジャケット19の左右のコラム側壁27L,27Rを押し付ける。これにより、ロアジャケット19は車体取付ブラケット3によってロック固定される。このとき、ロックツース43のツース側ロック歯53bが、押圧スプリング51に押されてロック片41のロック歯41bに噛み合っている。
【0030】
操作レバー37を可動カム部材47と共に回転操作して、図5Aのように、可動山部47a1が固定谷部45b2に対向した状態では、固定カム部材45が右側に押し付けられる動作が解除される。そのため、ロアジャケット19は、車体取付ブラケット3の側壁9L,9Rから押し付けられなくなり、ステアリングコラム13は、車体取付ブラケット3に対して上下に移動自在となる。この状態で、使用者は、ロアジャケット19を含むステアリングコラム13の上下揺動位置を調整できる。
【0031】
ロック解除用可動カム部材49は、円筒部49aの右側の端部にロック解除用可動カム49bが形成されている。ロック解除用可動カム49bは、右方向に突出する解除用可動山部49b1と、解除用可動谷部49b2とを有する。図3に示すように、円筒部49a内には可動カム部材47が挿入され、円筒部49aは、ロックツース43の円形孔53aに対し、相対的な回転移動及び軸方向移動が可能に挿入される。円筒部49aが円形孔53aに挿入した状態では、ロック解除用可動カム49bの左側の側面が、ロックツース43の右側の側面に対向する。
【0032】
図4Aに示すように、円筒部49aの内面には軸方向に沿って溝49cが形成されている。一方、可動カム部材47の外周面には、軸方向に沿って突起47cが形成されている。溝49c及び突起47cは、円周方向に沿って複数(ここでは180度隔てた位置に二箇所)形成されている。円筒部49aの溝49cが形成された部位は、可動カム部材47の突起47cが形成された部位よりも、軸方向の長さが長い。
【0033】
可動カム部材47を円筒部49a内に挿入したときに、突起47cが溝49cに対して軸方向に移動自在に入り込む。これにより、可動カム部材47とロック解除用可動カム部材49とは、軸方向に相対移動自在であるが、チルト軸31を中心とした相対回転は突起47c及び溝49cにより規制される。すなわち、突起47c及び溝49cは、可動カム部材47とロック解除用可動カム部材49との相対回転を規制する回転規制部を構成している。なお、図2では、突起47c及び溝49cを省略している。
【0034】
ロック機構39がロックされた状態に対応する図4A図4Bでは、図4Bに示すように解除用可動山部49b1は、解除用固定谷部45c2に対向した位置にある。この状態から、操作レバー37を回転操作して可動カム部材47を回転させると、可動山部47a1が固定山部45b1に当接している状態(図4A)が解除される。このとき、図5Aに示すように、可動山部47a1は固定谷部45b2に対向する位置となる。
【0035】
可動カム部材47の回転によってロック解除用可動カム部材49も一体となって回転する。このため、解除用可動山部49b1は、図4Bの解除用固定谷部45c2に対向した位置から、図5Bのように解除用固定山部45c1に対向する位置となり、解除用固定山部45c1に軸方向に当接する。これにより、ロック解除用可動カム部材49は、ロック解除用固定カム45c(固定カム部材45)によって左方向に押されることになり、ロック解除用固定カム45cから軸方向に沿って左側へ離れるように移動する。
【0036】
ロック解除用固定カム45c(固定カム部材45)の上記した左方向への移動によって、ロックツース43が、押圧スプリング51の押圧力に抗して押され、ロック片41から離れる方向に移動する。これにより、ロックツース43のツース側ロック歯53bが、ロック片41のロック歯41bから離間し、ツース側ロック歯53bとロック歯41bとが接触する状態が回避される。
【0037】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0038】
本実施形態は、車体に取り付けられ、車幅方向に沿って離間している一対の側壁9L,9Rを有する車体取付ブラケット3と、側壁9L,9R相互間にて移動自在に支持され、ステアリングシャフト15を備えるステアリングコラム13と、ステアリングコラム13の車体取付ブラケット3に対する移動を規制するようにロックするロック機構39と、を備える。
【0039】
ロック機構39は、車体取付ブラケット3の側壁9L,9R及びステアリングコラム13を車幅方向に沿って貫通するチルト軸31と、側壁9Lの車幅方向外側に設けられる車体側ロック歯41bと、ロック歯41bに対し、チルト軸31の軸方向に沿って接近移動することで噛み合うツース側ロック歯53bと、と備える。
【0040】
ロック機構39は、ロック歯41bが設けられた側壁9Lの車幅方向外側において、チルト軸31上に位置する固定カム45bと、固定カム45bの固定山部45b1に対し、可動山部47a1が軸方向に当接して押し付けることで、チルト軸31上においてステアリングコラム13を側壁9L,9Rにより挟持させる可動カム47aと、可動カム47aを回転操作する操作レバー37と、を有する。
【0041】
ロック機構39は、固定カム45bの外周側に一体的に設けられるロック解除用固定カム45cと、操作レバー37の回転操作によって、固定山部45b1と可動山部47a1との当接状態が解除されたときに、ロック解除用固定カム45cの解除用固定山部45c1に解除用可動山部49b1が当接することで、ツース側ロック歯53bをロック歯41bから離間させるロック解除用可動カム49bと、を有する。
【0042】
ステアリングコラム装置1は、操作レバー37の操作部37bを上方に押し上げるように回転操作して、図4Aのように固定山部45b1と可動山部47a1とが当接した状態では、車体取付ブラケット3の左右の側壁9L,9Rによってステアリングコラム13を左右両側から挟持して固定する。このとき、ツース側ロック歯53bがロック歯41bに噛み合っており、ロック機構39はロック状態にある。
【0043】
ロック機構39のロック状態から使用者がステアリングコラム13の上下位置を調整する際には、操作部37bを上記とは逆の下方に押し付ける方向に回転操作してロック状態を解除する。これにより、図5Aのように固定山部45b1と可動山部47a1との当接が外れ、車体取付ブラケット3の側壁9L,9Rによるステアリングコラム13に対する挟持固定状態が解除される。これと略同時に、解除用可動山部49b1は、図4Bの解除用固定谷部45c2に対向する位置から、図5Bの解除用固定山部45c1に対向して当接する状態に移行する。
【0044】
このとき、ロック解除用可動カム49bは、ロック解除用固定カム45cに左側に押されるので、ロックツース43は左方向に押し付けられて移動する。その結果、ツース側ロック歯53bが、ロック片41のロック歯41bから離間し、ロック機構39のロックが解除された状態となる。ロックが解除された状態で、ステアリングコラム13を上下に移動させて使用者の希望とする位置で、操作部37bを上方に向けて回転操作して、図4Aの固定山部45b1と可動山部47a1とが当接した状態としてロック機構39を図4A図4Bのロック状態に戻す。
【0045】
ロック機構39のロックが解除された状態では、図5Bのように解除用可動山部49b1と解除用固定山部45c1とが軸方向に当接することで、ロック解除用可動カム部材49が、左方向に移動してロックツース43をロック片41から離間する方向に移動させる。これにより、ツース側ロック歯53bとロック歯41bとの接触が回避され、ロック解除がより確実になされる。この場合、ステアリングコラム13を上下に移動させる際に、ツース側ロック歯53bとロック歯41bとが互いに乗り上がった状態となってロックできない事態を回避できる。
【0046】
本実施形態は、ロック解除用可動カム49bを備えるロック解除用可動カム部材49は円筒部49aを備え、可動カム47aを備える可動カム部材47は、円筒部49aの内部に軸方向に移動自在に挿入される。可動カム部材47と円筒部49aとの間に、可動カム部材47とロック解除用可動カム部材49との相対回転を規制する回転規制部(溝49cと突起47c)が設けられている。
【0047】
この場合、操作レバー37を回転操作するときに、回転規制部の作用によって、ロック解除用可動カム49bが可動カム部材47と一体となって回転する。このため、可動カム部材47をアンロック位置(図5A)からロック位置(図4A)とする際に、ロック解除用可動カム49bも一緒に回転してツース側ロック歯53bをロック歯41bに噛み合わせることができる。逆に、可動カム部材47をロック位置(図4A)からアンロック位置(図5A)とする際には、ロック解除用可動カム49bも一緒に回転してツース側ロック歯53bをロック歯41bから離間させることができる。
【0048】
本実施形態は、ツース側ロック歯53bをロック歯41bに押し付ける押圧スプリング51を備える。このため、ロック時には、ツース側ロック歯53bをロック歯41bに対して確実に噛み合わせることができ、ハーフロックとなることを抑制できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【0050】
例えば、上記した実施形態では、回転規制部として、円筒部49aの内面に溝49cを、可動カム部材47の外周面に突起47cをそれぞれ形成しているが、円筒部49aの内面に突起を、可動カム部材47の外周面に溝をそれぞれ形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
3 車体取付ブラケット
9L,9R 車体取付ブラケットの一対の側壁
13 ステアリングコラム
15 ステアリングシャフト
31 チルト軸(軸部)
37 操作レバー
39 ロック機構
41b ロック歯(車体側ロック歯)
45b 固定カム
45b1 固定山部
45c ロック解除用固定カム
45c1 解除用固定山部
47a 可動カム
47a1 可動山部
47c 突起(回転規制部)
49a 円筒部
49b ロック解除用可動カム
49b1 解除用可動山部
49c 溝(回転規制部)
51 押圧スプリング(押し付け部材)
53b ツース側ロック歯(可動側ロック歯)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B