(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】化学的に修飾されたガイドRNAを使用する高特異性ゲノム編集
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220623BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220623BHJP
C40B 10/00 20060101ALI20220623BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20220623BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20220623BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/09 110
C40B10/00
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6834 Z
(21)【出願番号】P 2018564259
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(86)【国際出願番号】 US2017036648
(87)【国際公開番号】W WO2017214460
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-01
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】デリンジャー,ダグラス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,ダニエル・イー
(72)【発明者】
【氏名】スバディープ,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】サンプソン,ジェフリー・アール
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523856(JP,A)
【文献】特表2017-537626(JP,A)
【文献】国際公開第2015/026885(WO,A1)
【文献】Nature Biotechnology (2015) Vol.33, No.9, pp.985-991
【文献】MEGHDAD RAHDAR, et al.,"Synthetic CRISPR RNA-Cas9-guided genome editing in human cells",PNAS (2015), E7110-E7117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
C40B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から3の間の整数であり、
前記ガイド配列が、前記ガイド配列の5’末端を起点とした番号付けで4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nまたは16-Nの位置に位置する少なくとも1つの修飾を含み、
前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)および2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)から選択される、合成ガイドRNA。
【請求項2】
単一ガイドRNA(sgRNA)である、請求項1に記載の合成ガイドRNA。
【請求項3】
PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列を含む合成crRNAであって、前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から3の間の整数であり、前記ガイド配列が、前記ガイド配列の5’末端を起点とした番号付けで4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nまたは16-Nの位置に位置する少なくとも1つの修飾を含み、
前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)および2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)から選択される、合成crRNA。
【請求項4】
前記少なくとも1つの修飾が、前記ガイド配列の位置5-Nもしくは11-N、またはそれらの組合せに位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
【請求項5】
前記ガイドRNAまたはcrRNAの5’末端、3’末端または両末端に1つまたは複数の修飾をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
【請求項6】
前記標的ポリヌクレオチドが、HBB遺伝子、IL2RG遺伝子、またはVEGFA遺伝子内に位置する、請求項1~5のいずれか1項に記載の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
【請求項7】
CRISPR機能の特異性を増強するインビトロの方法であって、
標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
請求項1~
6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの合成ガイドRNAを用意するステップと;
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記gRNAの前記標的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーション、およびCRISPR機能の遂行をもたらすための条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと
を含み、
前記Casタンパク質が、タンパク質として、または前記Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして用意される、方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチオチド標的の前記gRNA:Casタンパク質複合体との前記接触が、細胞内で実施され、前記複合体の前記形成が、細胞外または内で実施される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年6月8日に出願した米国特許仮出願第62/347553号および2017年4月20日に出願した正規の米国特許出願第15/493,129号の利益を主張するものであり、前記出願の全体の内容は、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター(clusters of regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)技術に関する。
【背景技術】
【0003】
天然原核生物のCRISPR-Cas系は、一定の長さの可変配列が介在する短いリピートのアレイ(すなわち、規則的な配置の短い回文配列リピートのクラスター(clusters of regularly interspaced short palindromic repeats)、または「CRISPR」)およびCRISPR関連(「Cas」)タンパク質を含む。転写されたCRISPRアレイのRNAは、Casタンパク質のサブセットによって小さいガイドRNAへプロセシングされ、これは、一般に、以下に論じられるような2つの成分を有する。少なくとも6つの異なる系、I型、II型、III型、IV型、V型およびVI型がある。RNAの成熟したcrRNAへのプロセシングに関与する酵素は、6つの系で異なっている。天然原核生物のII型系では、ガイドRNA(「gRNA」)は、CRISPR RNA(「crRNA」)およびトランス作動性RNA(「tracrRNA」)と呼ばれる2つの短い非コーディングRNA種を含む。例示的な系では、gRNAは、Casヌクレアーゼと複合体を形成する。gRNA:Casヌクレアーゼ複合体は、プロトスペーサー隣接モチーフ(「PAM」)およびgRNAの部分と相補的である配列であるプロトスペーサーを有する標的ポリヌクレオチド配列と結合する。gRNA:Casヌクレアーゼ複合体による標的ポリヌクレオチドの認識および結合は、標的ポリヌクレオチドの切断を誘導する。天然CRISPR-Cas系は、原核生物において、gRNA:Casヌクレアーゼ複合体が、真核生物におけるRNAiと類似の方法で外因性遺伝要素を認識し、サイレンシングし、それによって、プラスミドおよびファージなどの外因性遺伝要素に対する耐性を付与する免疫系として機能する。
【0004】
crRNAとtracrRNAが共有結合によって連結している単一ガイドRNA(「sgRNA」)が、天然に存在するcrRNAおよびtracrRNA間で形成される複合体の代わりになることができることは実証されている。
【0005】
sgRNAを含むgRNAの開発に関連する考慮として、特異性、安定性および機能性が挙げられる。特異性とは、特定のgRNA:Casヌクレアーゼ複合体が、所望の標的配列と結合し、ニックを入れ、および/またはそれを切断する能力を指し、所望の標的とは配列および/または位置が異なるポリヌクレオチドの結合、ニッキング、および/または切断は、ほとんどまたは全く生じない。したがって、特異性とは、gRNA:Casヌクレアーゼ複合体のオフターゲット効果を最小化することを指す。オフターゲット効果の低減を伴う標的ポリヌクレオチドに対する所望の結合親和性を有し、それにもかかわらず、所望のgRNA機能性を有するsgRNAを含むgRNAを提供する必要がある。標的ポリヌクレオチドに対する所望の結合親和性および/または所望のオフターゲット低減の結合を有する、特異性が増強されたgRNA(sgRNAを含む)を作製および使用するための改善された方法も必要である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】例示的なCRISPR-Cas系の説明図である。単一ガイドRNAおよびCasタンパク質によって複合体が形成され、その複合体が標的ポリヌクレオチドを認識し、結合する。Casヌクレアーゼは、化膿性連鎖球菌(S.pyrogenes)Cas9ヌクレアーゼである。化膿性連鎖球菌(S.pyrogenes)Cas9ヌクレアーゼは、PAM配列を認識する(ここで、PAM配列は、NGGの3ヌクレオチドの配列であり、ここで、Nは、A、G、CまたはTであるが、NAGなどのその他のPAM配列も存在するとわかっている)。sgRNAは、ガイド配列、crRNA配列またはセグメントおよびtracrRNA配列またはセグメントを含む。sgRNAのガイド配列は、PAM配列のすぐ上流のDNA標的とハイブリダイズする。
【
図2A】crRNAセグメント203およびtracrRNAセグメント205を含む、例示的なガイドRNA201を示す図である。
【
図2B】crRNAセグメント209およびtracrRNAセグメント211を含み、前記crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントがループ213を介して連結される、例示的な単一ガイドRNA207を示す図である。
【
図3】ガイドRNAに含めることができる種々の化学修飾の一部についての構造を示す図である。もちろん、
図3は、限定を意図したものではなく、本明細書において記載される多くのその他の修飾を使用することができる。
【
図4】オリゴヌクレオチド二本鎖が加熱によって別個の鎖に分離するにつれて紫外線(UV)吸光度がどのように上昇するのかを示すグラフである。シグモイド曲線は、別個の鎖への二本鎖の解離を表し、シグモイド曲線の中点が、二本鎖のT
mである。この曲線は、生理的塩濃度での20ヌクレオチドRNA/DNA二本鎖の融解温度が、およそ50℃であることを示す。
【
図5A】crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントがハイブリダイズされた二本鎖を形成している、単一ガイドRNA(sgRNA)または2ピースのデュアルガイドRNA(「dgRNA」)を示す図であって、ガイドRNAの伸長領域、ロッキング領域、サンプリング領域、シード領域(通常、10mer)、デュアルガイドステムまたは単一ガイドステム-ループ、およびtracrRNA領域を示す図である。
【
図5B】ガイド配列と相補的DNA配列とのシード部分間でのシード二本鎖の最初の形成後、ヌクレオチドの結合が、どうのようにして、サンプリング領域およびロッキング領域を通じて逐次的に進行して、融解温度を有するRNA/DNA二本鎖を形成するかを示す図である。
【
図5C】シード領域のヌクレオチドにおける化学修飾が、高い協同性レベルを維持しながら個々の塩基対の結合エネルギーを減少させ、それによって、サンプリング領域を伸長し、RNA/DNA二本鎖の融解温度を低下させることができることを示す図である。
図5Cは、サンプリング領域における化学修飾も示す。
【
図6A】20ヌクレオチドのガイド配列を有し、該ガイド配列内の種々の位置に組み込まれた種々の種類の化学修飾によって修飾されている例示的crRNAポリヌクレオチドを示す図である。
【
図6B】修飾されていないcrRNAを含むRNA/DNA二本鎖についての融解曲線を示す図である。
【
図6C】別個のガイド配列内のヌクレオチド6~9に異なる種類の修飾を含む化学修飾されたcrRNAを含むRNA/DNA二本鎖についての融解曲線を示す。
【
図6D】別個のガイド配列内のヌクレオチド6~9に異なる種類の修飾を含む化学修飾されたcrRNAを含むRNA/DNA二本鎖についての融解曲線を示す。
【
図6E】別個のガイド配列内のヌクレオチド6~9に異なる種類の修飾を含む化学修飾されたcrRNAを含むRNA/DNA二本鎖についての融解曲線を示す。
【
図6F】別個のガイド配列内のヌクレオチド6~9に異なる種類の修飾を含む化学修飾されたcrRNAを含むRNA/DNA二本鎖についての融解曲線を示す。
【
図7】x軸上の負または正の整数によってそれぞれ示される、ガイド配列の漸増的な5’末端切除または5’ 末端伸長後の相補的DNA鎖にハイブリダイズされた(crRNA内の)ガイド配列の20塩基対の二本鎖の融解温度の変化を示すグラフである。
【
図8A】CLTA1オンターゲット、CLTA1オフ1ターゲットおよびCLTA1オフ3ターゲットをそれぞれ表す、「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断ならびに「オフ1」および「オフ3」と呼ばれる2種の異なるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイされた切断に関する、ヒトCLTA遺伝子内の「CLTA1」配列に標的化されたgRNAの化学修飾の影響を示す図である。
【
図8B】
図8Aの切断結果を、アッセイされた各合成sgRNAについての、切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する切断された標的ポリヌクレオチドの比を算出したことに由来する図である。アッセイされたガイドRNAごとに、それぞれのオンターゲット切断パーセンテージを各比に掛けることによって、「特異性スコア」も算出されている。陰付きの比および特異性スコアは、
図8Bに示されている他のものより大きい値であることが注目に値する。
【
図9A】「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断ならびに「オフ1」、「オフ2」および「オフ3」と呼ばれる3種の異なるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイされた切断(それぞれ、CLTA4オンターゲット、CLTA4オフ1ターゲット、CLTA4オフ2ターゲットおよびCLTA4オフ3ターゲットを表す)に関する、ヒトCLTA遺伝子内の「CLTA4」配列に標的化されたgRNA内の種々の位置での2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾の影響を示す図である。
【
図9B】
図9Aの切断結果を、アッセイされた各合成sgRNAについての、切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する切断された標的ポリヌクレオチドの比を算出したことに由来する図である。特異的スコアは、
図8Bについて説明したように算出され、1.5以上のスコアに陰が付けられている。オフターゲットポリヌクレオチドごとに3つの最高スコアが、より濃い陰を付けることによって示されている。
【
図10】IL2RGオンターゲットおよびIL2RGオフ3ターゲットをそれぞれ表す、この図で「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断および「オフ3」と呼ばれるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイされた切断に関する、ヒトIL2RG遺伝子内の配列に標的化されたgRNA内の種々の位置でのMP修飾の影響を示す図である。アッセイされた各合成sgRNAについての、切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する切断された標的ポリヌクレオチドの比が算出されている。特異的スコアは、
図8Bについて説明したように算出され、2.0より大きいスコアに陰が付けられている。より濃い陰を付けることによって3つの最高スコアが示されている。
【
図11A】HBBオンターゲットおよびHBBオフ1ターゲットをそれぞれ表す、この図で「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断および「オフ1」と呼ばれるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイされた切断に関する、ヒトHBB遺伝子内の配列に標的化されたgRNA内の種々の位置でのMP修飾の影響を示す図である。アッセイされた各合成sgRNAについての、切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する切断された標的ポリヌクレオチドの比が算出されている。特異的スコアは、
図8Bについて説明したように算出され、2.0より大きいスコアに陰が付けられている。より濃い陰を付けることによって3つの最高スコアが示されている。
【
図11B】合成sgRNAおよびCas9発現プラスミドがトランスフェクトされたヒトK562細胞における、ヒトHBB遺伝子内の配列に標的化されたgRNAの種々の種類の修飾の影響であって、この図で「オン」と呼ばれる標的ゲノム遺伝子座の切断に関する影響を、「オフ1」、「オフ2」および「オフ3」と呼ばれる3種の異なるオフターゲットゲノム遺伝子座の同時切断に関する影響を示す図であり、前記「オン」、「オフ1」、「オフ2」および「オフ3」は、内因性HBBオンターゲット、HBBオフ1ターゲット、HBBオフ2ターゲットおよびHBBオフ3ターゲット部位をそれぞれ表す。「Unmodif」は、化学修飾されていないsgRNAを示す。「3xM」は、2’-O-メチル(「M」)ヌクレオチドが、sgRNA鎖の最初の3つおよび最後の3つのヌクレオチドに、すなわち、それぞれ5’および3’末端に組み込まれたことを示す。同様に、「3xMS」は、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)ヌクレオチドが、sgRNAの5’および3’末端に同様に組み込まれたことを示し、それに対して「3xMSP」は、2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)ヌクレオチドが、sgRNAの5’および3’末端に同様に組み込まれたことを示す。すべてのsgRNAを、トランスフェクトされた細胞における示されている遺伝子座の編集についてアッセイした。
【
図12A】
図11Aに示されている同一のエントリー1~17に関する結果を、該エントリーを特異性スコアに従って最高から最低へと順位づけして、示す図である。エントリー18~64は、HBBオンターゲットおよびHBBオフ1ターゲットをそれぞれ表す、「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断および「オフ1」と呼ばれるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイされた切断に関する、ヒトHBB遺伝子内の配列に標的化されたgRNA内の種々の位置でのさらなるMP修飾の影響を示す。「1xMP」は、5’末端と3’末端両方の末端ヌクレオチドが、MPで修飾されていることを示す。アッセイされた各合成sgRNAについての、切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する切断された標的ポリヌクレオチドの比が算出されている。特異性スコアは、
図8Bについて説明したように算出されている。最高スコアに陰が付けられている。
【
図12B】内因性HBBオンターゲットゲノム遺伝子座およびHBBオフ1ターゲット部位をそれぞれ表す、この図で「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドの切断および「オフ1」と呼ばれるオフターゲットゲノム遺伝子座の同時切断に関する、トランスフェクト細胞におけるヒトHBB遺伝子内の配列に標的化されたgRNA内の種々の位置でのMP修飾の影響を示す図である。合成sgRNAと組換えCas9タンパク質の複合体がトランスフェクトされた培養細胞において、どちらかまたは両方の部位で生じた切断のパーセンテージは、精製されたゲノムDNAの別々のサンプルにおけるオンターゲットおよびオフターゲット遺伝子座をPCR増幅し、続いて、プールされたアンプリコンを次世代シークエンシングし、評価中のオンターゲットまたはオフターゲット切断部位付近にインデルが存在するか、存在しないかに従って配列リードをバイオインフォマティクスにより分割することによって、トランスフェクションの48時間後に決定されている。トランスフェクトされた細胞の各サンプルにおいて生じたインデルは、sgRNA:Cas9複合体ではなく、バッファーで処理されたmockトランスフェクト細胞の対照サンプルに対して正規化されている。標的部位インデルを示す配列リード数の、別途トランスフェクトされた各sgRNAについてのオフターゲット部位インデルを示すリード数に対する比が、算出されている。特異性スコアは、
図8Bについて説明したように算出されている。「1xMP」は、5’末端と3’末端両方の末端ヌクレオチドが、MPで修飾されていることを示す。エントリー1~21は、K562細胞にトランスフェクトし、該細胞を培養することによって得られた結果を示し、それに対してエントリー22~42は、誘導多能性幹細胞(iPS細胞またはiPSCとしても公知である)にトランスフェクトし、該細胞を培養することによって得られた結果を示す。エントリー1~12は、特異性スコアに従って最高から最低へと順位づけされている。同様に、エントリー13~19、エントリー22~33、およびエントリー34~40は、特異性スコアによってグループごとに順位づけされている。2.0より大きい特異性スコアに陰が付けられている。
【
図12C】グループごとに最高比から最低比へと並べ替えられた、測定された比による
図12Bにおける結果の代替構成を示す図である。
【
図13】
図9A、9B、10および11Aに提示されている結果の比較を示す図である。
図13は、化学修飾されたガイドRNAについての、Cas系において標的ポリヌクレオチドを切断するために使用されたときの標的特異性に関する研究からの、いくつかの傾向を示す図である。これらの傾向によって裏付けられる概念は、オフターゲットポリヌクレオチドもCas系に存在するとき特に有用である。
【
図14】K562細胞におけるIL2RG-sgRNAおよびVEGFA-sgRNAの種々のタイプの修飾の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、gRNAへの特定の化学修飾が、CRISPR-Cas系により許容され、Cas:gRNAの標的ポリヌクレオチドとの結合、標的ポリヌクレオチドのニッキングおよび/または切断の有効性を実質的に損なうことなく、Cas:gRNA複合体形成のオフターゲット効果を低減するという予期しない発見に、少なくとも幾分かは基づいている。
【0008】
本発明は、少なくとも1種の特異性を増強する修飾(特異性増強修飾)を含む合成ガイドRNAを提供する。特定の実施形態では、少なくとも1種の特異性増強修飾は、合成ガイドRNAと標的ポリヌクレオチドとの間の少なくとも1つのヌクレオチド対の会合を弱化もしくは強化し、および/または合成ガイドRNAと少なくとも1種のオフターゲットポリヌクレオチドとの間の少なくとも1つのヌクレオチド対の会合を弱化し、ここで、前記オフターゲット弱化の少なくとも1つは、存在する場合にはオンターゲットの弱化より大きい。合成ガイドRNAは、gRNA機能性を有する。特異性増強修飾(複数でもよい)は、ガイド配列内に、例えば、ロッキング領域、サンプリング領域および/またはシード領域内に、位置し得る。特定の実施形態では、特異性増強修飾(複数でもよい)は、gRNAと標的ポリヌクレオチド配列とオフターゲットポリヌクレオチド配列(複数でもよい)とによって形成される二本鎖の融解温度を低下させるか、またはgRNA/標的二本鎖の融解温度を上昇させ、少なくとも1種のgRNA/オフターゲット二本鎖の融解温度を低下させる。本発明は、これらの合成ガイドRNAを含むgRNA:Casタンパク質複合体、前記合成ガイドRNAを使用して標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れる、また結合するための方法、ならびに前記合成ガイドRNAを含むセット、ライブラリー、キットおよびアレイも提供する。本発明は、合成ガイドRNAを調製する方法も提供する。
【0009】
[I.定義]
本明細書において、用語「ガイドRNA」とは、一般に、Casタンパク質と結合し、Casタンパク質を、標的ポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはmRNA分子)内の特定の位置に対して標的化するのに役立ち得るRNA分子(または集合的に、RNA分子の群)を指す。ガイドRNAは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントを含み得る。いくつかの実施形態において、ガイドRNAはcrRNAを含むが、tracrRNAを含まない。本明細書において、用語「crRNA」または「crRNAセグメント」とは、ポリヌクレオチドを標的化するガイド配列、ステム配列(さらに明確にするために、該ステム配列は、単一ガイドRNA内でtracrRNAの対応する部分を有するステムを形成する、ステム形成配列を包含する)、任意選択的に、5’-オーバーハング配列を含むRNA分子またはその一部を指す。本明細書において、用語「tracrRNA」または「tracrRNAセグメント」とは、タンパク質結合セグメント(例えば、タンパク質結合セグメントは、Cas9などのCRISPR関連タンパク質と相互作用可能である)を含むRNA分子またはその一部を指す。tracrRNAは、crRNAと部分的にまたは完全にハイブリダイズするセグメントも含む。用語「ガイドRNA」は、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、同一RNA分子または鎖中に位置する単一ガイドRNA(sgRNA)を包含する。また、用語「ガイドRNA」とは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、別個のRNA分子中に位置する2種以上のRNA分子の群を集合的に包含する。用語「ガイドRNA」は、Cas9以外のCasタンパク質(例えば、Cpf1タンパク質)に結合するRNA分子または好適な分子セグメント群であって、標的ポリヌクレオチド内の相補的配列(または「標的配列」)に結合すること、ニックを入れることおよび/またはそれを切断することができるgRNA:Casタンパク質複合体を形成するためのCasタンパク質結合を含むガイドRNAの機能を有する、RNAの1本のまたはセグメント化された鎖内のガイド配列を備えている、RNA分子または好適な分子セグメント群も包含する。
【0010】
用語「ガイド配列」とは、標的ポリヌクレオチド内の標的配列と部分的または完全な相補性を有し、Casタンパク質によって容易にされる塩基対形成によって標的配列とハイブリダイズすることができる、ガイドRNA内の連続ヌクレオチド配列を指す。
図1に示されている例で説明されるように、標的配列は、PAM部位(PAM配列、およびPAM部位を一緒に構成する、他の鎖上のその相補的配列)に隣接している。PAM配列(cas9についてはNGG)のすぐ上流に、標的配列と相補的な配列(
図1中の太字の、下部の鎖)がある。ガイド配列とハイブリダイズする標的配列は、PAM配列の成分(cas9についてはCCN)のすぐ下流にある。ガイド配列のヌクレオチド1(5’における最初のヌクレオチド)は、標的配列の最後のヌクレオチドと相補的であり、その一方で、ガイド配列の最後のヌクレオチド(
図1中のガイド配列のヌクレオチド20)は、PAM部位の隣(およびPAM配列の相補体のすぐ下流)にある、標的配列の最初のヌクレオチドと相補的である。Cpf1などの他の例では、ガイド配列とハイブリダイズする標的配列の位置は、PAM配列の相補体の上流にあり得る。
【0011】
ガイド配列は、約10ヌクレオチド程度に短いこともあり、約30ヌクレオチド程度に長いこともある。通常のガイド配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23および24ヌクレオチド長である。合成ガイド配列は、通例は20ヌクレオチド長であるが、より長くてもよく、またはより短くてもよい。ガイド配列が20ヌクレオチドより短い場合、それは、通常、20ヌクレオチドガイド配列と比較して5’末端からの欠失である。例として、ガイド配列は、標的配列と相補的な20ヌクレオチドからなり得る。言い換えると、ガイド配列は、DNAとRNAとの間のA/Uの相違を除いて、PAM配列の上流の20ヌクレオチドと同一である。このガイド配列が、5’末端から3ヌクレオチド、末端切除されると、20ヌクレオチドガイド配列のヌクレオチド4は、この場合、その17merのヌクレオチド1になり、20ヌクレオチドのガイド配列であるヌクレオチド5は、この場合、その17merのヌクレオチド2になる、等々。この新たな位置は、元の位置マイナス3である。同様に、ガイド配列は、標的部位における20を超えるヌクレオチドとハイブリダイズすることができ、これらのさらなるヌクレオチドは、ガイド配列の5’末端に位置する。なぜなら、ガイド配列の3’末端は、PAM部位の隣の標的と相補的であるからである。かさねて例として、22ヌクレオチドのガイド配列では、20merにおける元のヌクレオチド1は、この場合、ヌクレオチド3になり、20merにおける元のヌクレオチド2は、ヌクレオチド4になる、等々。この新たな位置は、元の位置プラス2、またはマイナス(-2)である。したがって、ガイド配列は、5’末端から数えると、ヌクレオチド1から「20マイナスN」(20-N)からなり、Nは、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の正または負の整数である。ガイド配列内の所与のヌクレオチド位置は、「位置番号マイナスN(番号-N)」と記載されることになる。例えば、位置5におけるヌクレオチドは、ガイド配列が5’末端においてNヌクレオチドだけ末端切除されたまたは伸長された場合に生じる、20ヌクレオチドガイド配列から得られる参照位置からの位置5のシフトを示すために、「5-N」(5マイナスN)と記載されることになる。ヌクレオチド位置は、正の整数である。したがって、負またはゼロであるいずれの(番号-N)位置も非現実的であり、無視すべきである。ガイド配列は、gRNAを構成する鎖(1つまたは複数)内のどこに位置してもよい。通常のガイド配列は、gRNA鎖の5’末端もしくは3’末端に、またはその付近に位置する。
【0012】
用語「スキャフォールド」とは、実質的に同一であるか、または天然の生物学的種にわたって高度に保存されている配列を含むガイドRNA分子の一部を指す。スキャフォールドは、tracrRNAセグメント、およびcrRNAセグメントの3’末端にまたはその付近にポリヌクレオチドを標的化するガイド配列(リピート部分)以外のcrRNAセグメントの一部を含む。
【0013】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」とは、DNA分子、RNA分子またはその類似体を指す。本明細書において、用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、これらに限定されないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドもしくはベクトルDNA、または合成DNAなどのDNA分子およびガイドRNA、メッセンジャーRNAまたは合成RNAなどのRNA分子を含む。さらに、本明細書において、用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、一本鎖および二本鎖形態を含む。当該技術分野での標準規定は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、RNA分子、DNA分子の別個の鎖、および2つ以上のヌクレオチドを含む種々の核酸は、一般に、それらの5’末端から番号づけされ、この規定は、そのような分子に共有結合によって連結している5’伸長部または「オーバーハング」の事例を含めて、全体を通して使用される。
【0014】
本明細書において「修飾」または「化学修飾」とは、最も一般的な4つの天然リボヌクレオチドであるアデノシン、グアノシン、シチジンおよびウリジンリボヌクレオチドに見られるものとは異なる化学部分、または化学構造の一部を指す。したがって、用語「修飾」とは、アデノシン、グアノシン、シチジンまたはウリジンリボヌクレオチドの最も一般的な天然分子構造のまたはそのような天然分子構造に関する分子変化を指す。用語「修飾」は、核酸塩基のもしくは核酸塩基に関する変化、糖のもしくは糖に関する変化、および/またはヌクレオチド間ホスホジエステル連結の変化を指すことがある。用語「修飾」は、天然転移RNA(tRNA)、例えば、これらに限定されないが、2’-O-メチル、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2-チオシトシン、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、シュードリジン、ジヒドロウリジン、リボチミジンなどにおいて起こる化学修飾などの、自然に起こるリボヌクレオチドの化学構造変化を指すこともある。用語「修飾」は、通常は自然界に見られない化学修飾、例えば、これらに限定されないが、2’-フルオロ、2’-O-メトキシエチル、2’-O-フェニルなどを指すこともある。用語「同一修飾」とは、糖のもしくは糖に関する、またはヌクレオチド間結合の、同一種類の化学修飾を指し、例えば、2’-O-メチルが、アデノシン、グアノシン、シチジンおよび/またはウリジンリボヌクレオチドの2’位に結合していることがあり、そのような修飾は、同一種類の修飾または「同一修飾」と呼ばれ得る。逆に言えば、核酸塩基への修飾は、修飾核酸塩基が同一の分子構造で構成されていた場合にのみ「同一修飾」と同定されることになる。例を挙げて差異を説明すると、1-メチルグアノシンおよび7-メチルグアノシンの両方は、最も一般的な天然グアノシンのメチル基修飾を有するが、修飾核酸塩基が異なる分子構造を有するため、「同一修飾」ではない。さらなる例では、RNAの鎖は、3つの修飾ヌクレオチド、例えば、各々が2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸によって修飾されている、グアノシンおよび2つのシチジンを含むことがあり、そのようなヌクレオチドは、同一の方法で修飾されたまたは同一修飾で修飾されたと的確に説明することができる。逆に言えば、RNAの異なる鎖は、5-メチルシチジン、および5-メチル置換基を欠くシチジンを含むこともあり、両方のシチジンヌクレオチドが2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸によって修飾されていることもあるが、それでもこれら2つのシチジンヌクレオチドは異なる修飾を有し、同一の方法で修飾されているとは言われないだろう。
【0015】
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの関連において、用語「修飾」とは、これらに限定されないが、(a)末端修飾、例えば、5’末端修飾または3’末端修飾、(b)塩基の置換または除去を含む、核酸塩基(または「塩基」)修飾、(c)2’、3’および/または4’位での修飾を含む糖修飾、ならびに(d)ホスホジエステル連結の修飾または置換を含む骨格修飾を含む。用語「修飾されたヌクレオチド」とは、一般に、塩基、糖およびホスホジエステル連結またはヌクレオチドホスフェートを含む骨格部分のうち1種以上の化学構造への修飾を有するヌクレオチドを指す。ガイドRNAへの化学修飾は、その全内容が参照により本明細書の一部をなす、2015年12月3日に出願された米国特許出願第14/757,204号に開示されている。
【0016】
用語「xA」、「xG」、「xC」、「xT」、「xU」または「x(A、G、C、T、U)」および「yA」、「yG」、「yC」、「yT」、「yU」または「y(A、G、C、T、U)」とは、その内容が参照によって全文が本明細書の一部をなす、Krueger et al “Synthesis and Properties of Size-Expanded DNAs:Toward Designed,Functional Genetic Systems”,(2007)Acc.Chem.Res.40,141-50によって記載されるようなヌクレオチド、核酸塩基または核酸塩基類似体を指す。
【0017】
用語「構造不定の核酸」または「UNA」とは、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものである米国特許第7,371,580号に記載されるような、ヌクレオチド、核酸塩基または核酸塩基類似体を指す。構造不定の核酸またはUNA、修飾はまた、「偽相補性」ヌクレオチド、核酸塩基または核酸塩基類似体とも呼ばれる(例えば、Lahoud et al.(1991)Nucl.Acids Res.36:10,3409-19を参照のこと)。
【0018】
用語「PACE」および「チオPACE」とは、それぞれ、ホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸基を含有するヌクレオチド間ホスホジエステル連結類似体を指す。これらの修飾は、ホスホノカルボン酸部分、ホスホノカルボン酸エステル部分、チオホスホノカルボン酸部分およびチオホスホノカルボン酸エステル部分を含む広いクラスの化合物に属する。これらの連結は、それぞれ一般式P(CR1R2)nCOORおよび(S)-P(CR1R2)nCOORによって記載することができ、式中、nは、0~6の整数であり、R1およびR2の各々は独立に、H、アルキルおよび置換アルキルからなる群から選択される。これらの修飾の一部は、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものであるYamada,Dellinger,et al.,“Synthesis and Biochemical Evaluation of Phosphonoformate Oligodeoxyribonucleotides”(2006)J.Am.Chem.Soc.128:15,5251-61によって記載されている。
【0019】
本開示の一部の場所では、特に、合成ガイドRNAの構造および配列ならびにそのような合成ガイドRNAに関する実験結果を開示する図では、特定の修飾を示すために特定の略語が使用される。「M」は、本明細書では2’-O-メチル修飾を示すために使用され、「S」は、本明細書では3’-ホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾を示すために使用され、「P」は、本明細書では3’-ホスホノ酢酸(またはPACE)ヌクレオチド間連結修飾を示すために使用され、「MS」は、本明細書では2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾を示すために使用され、「MP」は、本明細書では2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(または2’-O-メチル-3’-PACE)ヌクレオチド間連結修飾を示すために使用され、「MSP」は、本明細書では2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結修飾を示すために使用される。
【0020】
「糖パッカー」とは、糖5員環の1または2個の原子を平面から出させる立体斥力のために非平面である糖環を指す。リボフラノースの場合、平面C1’-O4’-C4’は、固定されている。エンドパッカーとは、C2’またはC3’が、この面から外にO5’方向へ変えられていることを意味する。エクソパッカーは、反対方向のシフトを記述するものである。C2’-エンドおよびC3’-エンドは、天然には平衡状態であるが、化学修飾は、その糖を好ましいパッカーに至らせることができる。RNAでは、C3’-エンドコンホメーションが優勢である。DNAは、両方のコンホメーションに適合することが可能であり、それらのコンホメーションを取ることができる。
【0021】
用語「シード領域」とは、標的核酸配列と相補的であるガイド配列の領域であって、ガイド配列と標的核酸配列とのハイブリダイゼーションを開始させる領域を指す。一部の事例では、シード領域は、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質複合体によって補助される準安定性二本鎖を形成する。一般に、gRNAのガイド配列内のシード領域という用語は、20ヌクレオチドのガイド配列内の、該ガイド配列の5’末端から数えて、ヌクレオチド11~20からなるが、この領域は、ヌクレオチド配列およびこの領域内のRNAヌクレオチドに対する化学修飾に依存して、または会合しているペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質複合体の修飾によって、より短いまたはより長い範囲にわたり得る。
【0022】
用語「サンプリング領域」とは、シード領域に隣接する領域を指し、これらのヌクレオチドの結合は、二本鎖の結合エネルギーが、その結合が起こる温度と同等になるまで、進行する。一般に、gRNA内のサンプリング領域という用語は、別段の指示がない限り、20ヌクレオチドガイド配列内の、該ガイド配列の5’末端から数えて、ヌクレオチド5~10からなるが、1つまたは複数の修飾によってサンプリング領域が機能的に伸長され、その結果、ガイド配列内のヌクレオチド1~10、あるいは2~10、あるいは3~10、あるいは4~10、あるいは1~11、あるいは2~11、あるいは3~11、あるいは4~11、あるいは5~11、あるいは1~12、あるいは2~12、あるいは3~12を包含する場合もあり得る。
【0023】
用語「ロッキング領域」とは、サンプリング領域に隣接する領域であって、形成される二本鎖の結合エネルギーが、その結合が起こる温度より高い領域を指す。一般に、gRNA内のロッキング領域という用語は、別段の指示がない限り、20ヌクレオチドガイド配列内の、該ガイド配列の5’末端から数えて、ヌクレオチド1~4からなるが、1つまたは複数の修飾によって、ロッキング領域が、ガイド配列の5’末端のヌクレオチド1、あるいはヌクレオチド1~2、あるいはヌクレオチド1~3へと機能的に短縮される場合もあり得る。ロッキング領域は、1つまたは複数のヌクレオチドが、ガイド配列を通常の20ヌクレオチドから21ヌクレオチドに、あるいは22ヌクレオチドに、あるいは23ヌクレオチドに、あるは24ヌクレオチドに、あるいは25ヌクレオチド以上に伸長させるように、5’末端に共有結合によって連結された場合、CRISPR-Cas9系の通常のガイド配列の長さ20ヌクレオチドを超えて伸長し得る。
【0024】
本明細書において、用語「標的ポリヌクレオチド」または「標的」とは、標的核酸配列を含有するポリヌクレオチドを指す。標的ポリヌクレオチドは、一本鎖である場合も二本鎖である場合もあり、特定の実施形態では、二本鎖DNAである。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、一本鎖RNAである。本明細書において、「標的核酸配列」または「標的配列」とは、CRISPR系を使用して結合し、ニックを入れ、または切断するよう望む、特定の配列またはその相補配列を意味する。特定の実施形態では、2つ以上の標的配列は、例えば、相同組換えを目的として2つの特定の標的配列間の配列を置き換えるために、同一の反応で結合させる、ニックを入れる、または切断することができるように選択され得る。あるいは、2つ以上の標的配列は、複数の標的を同時に結合および濃縮すべき場合にも有用である。したがって、2つ以上の標的配列が使用される場合、それぞれの標的ポリヌクレオチドは、目的に依存して、同一遺伝子内にあってもよく、またはなくてもよい。
【0025】
「オフターゲットポリヌクレオチド」または「オフターゲット」とは、意図される標的核酸と部分的に相同な酸配列を含有するポリヌクレオチドを指す。オフターゲットポリヌクレオチドは、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよく、特定の実施形態では、二本鎖DNAである。本明細書において「オフターゲット核酸配列」または「オフターゲット配列」とは、CRISPR系を使用して結合する、ニックを入れる、または切断することが望まれない、特定の配列またはその相補体であって、標的核酸配列と実質的な配列同一性を有するが同一ではない、特定の配列またはその相補体を意味する。例えば、オフターゲット核酸配列は、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約90~95%、少なくとも約97%、またはそれより高いヌクレオチド(またはアミノ酸)配列同一性を有する場合、標的核酸配列と実質的な配列同一性を有する。
【0026】
用語「HBBポリヌクレオチド」、「VEGFAポリヌクレオチド」、「IL2RGポリヌクレオチド」、「CLTA1ポリヌクレオチド」、および「CLTA4ポリヌクレオチド」とは、遺伝子HBB、VEGFA、IL2RG、CLTA1またはCLTA4の少なくとも一部をそれぞれ含む任意のポリヌクレオチドを指す。そのようなポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド、または合成ポリヌクレオチドを含む。そのようなポリヌクレオチドは、そのような遺伝子に関連するゲノム内の遺伝子座に見られるポリヌクレオチド配列を含むことができ、したがって、そのような遺伝子の対立遺伝子および変異体を包含する。
【0027】
用語「特異性」とは、ガイド配列が、オンターゲットポリヌクレオチドと1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドとを、どの程度十分に識別することができるかを指す。ガイドRNAの特異性は、例えば、オンターゲット切断、結合またはニッキングパーセンテージおよびオフターゲット切断、結合もしくはニッキングパーセンテージの算出、オン:オフ比の算出、ならびに/または匹敵するオンおよびオフターゲットパーセンテージから導き出される特異性スコアによって、決定することができる(本開示の実施例を参照のこと)。用語「オンターゲットパーセンテージ」とは、アッセイサンプル中での標的ポリヌクレオチドの切断、ニッキングまたは結合のパーセンテージを指し、したがって、例として、ガイドRNAは、アッセイ中に存在する標的ポリヌクレオチドの90%の切断、ニッキングまたは結合をもたらす場合、90%のオンターゲットパーセンテージを有する。用語「オン:オフ比」とは、アッセイされるガイドRNAごとのオンターゲットパーセンテージ対オフターゲットパーセンテージの比を指し、例として、80%のオンターゲットパーセンテージおよび8%のオフターゲットパーセンテージを有するガイドRNAは、10のオン:オフ比を有する。用語「特異性スコア」とは、アッセイされるガイドRNAごとのオン:オフ比にそのそれぞれのオンターゲットパーセンテージを掛けることによって得られる数を指し、例として、80%のオンターゲットパーセンテージおよび8%のオフターゲットパーセンテージを有するガイドRNAは、10のオン:オフ比となり、8の特異性スコアを有する。一部のアッセイでは、結合またはニッキングは、代替として切断を使用して評価され、例えば、標的部位でのインデル形成をシークエンシングによって定量して切断を評価するアッセイでは、そのようなアッセイを使用して、gRNAの結合またはニッキング活性も評価することができる。
【0028】
用語「連続する特異性増強修飾」とは、ガイドRNA内の互いに隣接する2以上の特異性増強修飾を指す。ガイドRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24の連続する特異性増強修飾を含み得る。広く使用されているCRISPR-Cas9系におけるガイドRNAは、ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20を含むガイド配列を含む。1つまたは複数の連続する特異性増強修飾は、例えば、ヌクレオチド1および2、ヌクレオチド1~3、ヌクレオチド1~4、ヌクレオチド1~5、ヌクレオチド1~6、ヌクレオチド1~7、ヌクレオチド1~8、ヌクレオチド1~9、ヌクレオチド1~10、ヌクレオチド2および3、ヌクレオチド2~4、ヌクレオチド2~5、ヌクレオチド2~6、ヌクレオチド2~7、ヌクレオチド2~8、ヌクレオチド2~9、ヌクレオチド2~10、ヌクレオチド3および4、ヌクレオチド3~5、ヌクレオチド3~6、ヌクレオチド3~7、ヌクレオチド3~8、ヌクレオチド3~9、ヌクレオチド3~10などに、修飾を含み得る。
【0029】
用語「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」とは、完全にまたは部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖が、適したハイブリダイゼーション条件下で一緒になって、2つの成分鎖が水素結合によって接合される二本鎖構造または領域を形成するプロセスを指す。本明細書において、用語「部分ハイブリダイゼーション」は、二本鎖構造または領域が、1つまたは複数のバルジまたはミスマッチを含有する場合を含む。水素結合は、通常、アデニンとチミンまたはアデニンとウラシル(AとTまたはAとU)またはシトシンとグアニン(CとG)の間に形成するが、その他の非標準塩基対が形成し得る(例えば、Adams et al.,“The Biochemistry of the Nucleic Acids”,11th ed.,1992を参照のこと)。修飾されたヌクレオチドは、非標準的な手法でハイブリダイゼーションを可能にする、または促進する水素結合を形成し得ることが考慮される。
【0030】
用語「切断」または「切断すること」とは、ポリヌクレオチドのホスホジエステル骨格における共有ホスホジエステル連結の分断を指す。用語「切断」または「切断すること」は、一本鎖分断および二本鎖分断の両方を包含する。二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こり得る。切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。
【0031】
用語「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」とは、野生型Casタンパク質、その断片またはその突然変異体または変異体を指す。用語「Cas突然変異体」または「Cas変異体」とは、野生型Casタンパク質のタンパク質またはポリペプチド誘導体、例えば、1つまたは複数の点突然変異、挿入、欠失、末端切除、融合タンパク質またはそれらの組合せを有するタンパク質を指す。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、ヌクレアーゼドメインの一方または両方が不活性であるように突然変異されている。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、ヌクレアーゼ活性を有する。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部またはすべてを欠く。用語「CRISPR関連タンパク質」または「Casタンパク質」は、原核生物の種々の種の野生型Cpf1タンパク質(ならびにプレボテラ(Prevotella)およびフランシセラ(Francisella)1リボ核タンパク質からの、クラスター化されて規則的な配置の短い回文配列リピートにちなんで名付けられたもの、またはCRISPR/Cpf1リボ核タンパク質)、その断片、またはその突然変異体もしくは変異体も含む。
【0032】
Casタンパク質の用語「ヌクレアーゼドメイン」とは、DNA切断のための触媒活性を有するタンパク質内のポリペプチド配列またはドメインを指す。通常は、Cas9は、PAM配列の上流の二本鎖切断を触媒する。ヌクレアーゼドメインは、単一ポリペプチド鎖中に含有され得、または切断活性は、2種(またはそれを超える)ポリペプチドの会合に起因し得る。単一ヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内の2つ以上の単離されたアミノ酸のストレッチからなり得る。これらのドメインの例として、RuvC様モチーフ(配列番号1中のアミノ酸7-22、759-766および982-989)およびHNHモチーフ(アミノ酸837-863)が挙げられる。Gasiunas et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.USA109:39,E2579-E2586およびWO2013176772を参照のこと。
【0033】
「gRNA機能性」を有する合成ガイドRNAは、Casタンパク質と会合するなどの天然に存在するガイドRNAの機能またはCasタンパク質と関連してガイドRNAによって実施される機能のうち1つまたは複数を有するものである。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドを結合することを含む。特定の実施形態では、機能性は、Casタンパク質またはgRNA:Casタンパク質複合体が、標的ポリヌクレオチドに標的化することを含む。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドにニックを入れることを含む。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドを切断することを含む。特定の実施形態では、機能性は、Casタンパク質と会合することまたはそれと結合することを含む。例えば、Casタンパク質は、融合しているタンパク質またはその(それらの)一部によって1つまたは複数の機能が遂行されるように、1つまたは複数のタンパク質もしくはそれらの一部、例えば、転写因子エンハンサーまたはリプレッサー、デアミナーゼタンパク質などと融合された、「デッド」Cas9(dCas)になるように遺伝子操作され得る。特定の実施形態では、機能性は、遺伝子操作されたCasタンパク質を有する人工CRISPR-Cas系を含む、Casタンパク質を有するCRISPR-Cas系における、ガイドRNAの任意のその他の公知の機能である。特定の実施形態では、機能性は、天然ガイドRNAの任意のその他の機能である。合成ガイドRNAは、天然に存在するガイドRNAより大きなまたは小さなgRNA機能性を有し得る。特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、同様の天然に存在するガイドRNAとの比較において、ある特性についてより大きな機能性を、別の特性についてより小さな機能性を有し得る。
【0034】
一本鎖「ニッキング」活性を有するCasタンパク質とは、野生型Casタンパク質と比較して、dsDNAの2つの鎖のうち一方を切断する能力が低減した、Cas突然変異体またはCas変異体を含むCasタンパク質を指す。例えば、特定の実施形態では、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質は、RuvCドメイン(またはHNHドメイン)の機能を低減し、結果として、標的DNAの一方の鎖を切断する能力を低減する突然変異(例えば、アミノ酸置換)を有する。このような変異体の例は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9におけるD10A、H839A/H840Aおよび/またはN863A置換を含み、また、その他の種のCas9酵素中の同等の部位での同一または同様の置換を含む。
【0035】
「結合」活性を有する、または標的ポリヌクレオチドに「結合する」Casタンパク質とは、ガイドRNAと複合体を形成するCasタンパク質を指し、そのような複合体中にあるとき、前記ガイドRNAは、標的ポリヌクレオチド配列などの別のポリヌクレオチドと、前記ガイドRNAとその他のポリクレオチドの塩基間の水素結合によってハイブリダイズして、塩基対を形成する。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成によって起こることもあり、または任意のその他の配列特異的な方法で起こることもある。そのハイブリッドは、二本鎖を形成する2本の鎖を含むこともあり、多重鎖の三本鎖(multi-stranded triplex)を形成する3本以上の鎖を含むこともあり、またはこれらの任意の組合せを含むこともある。
【0036】
「CRISPR機能」とは、CRISPR系によって達成され得る任意の機能または効果を意味し、そのような機能または効果には、これらに限定されないが、遺伝子編集、DNA切断、DNAニッキング、DNA結合、遺伝子発現の調節、CRISPR活性化(CRISPRa)、CRISPR干渉(CRISPRi)、およびcasタンパク質を別のエフェクターに連結させることによって達成され得る任意のその他の機能であって、それによってcasタンパク質により認識される標的配列に対するエフェクター機能を達成することができる機能が含まれる。例えば、ヌクレアーゼを含まないcasタンパク質を転写因子、デアミナーゼ、メチラーゼなどに融合させることができる。結果として得られる融合タンパク質を標的のためのガイドRNAの存在下で使用して、標的の転写を調節すること、標的を脱アミノ化することまたはメチル化することができる。
【0037】
本明細書において、用語、配列の「一部」または「断片」とは、完全配列よりも小さい配列の任意の一部(例えば、ヌクレオチド部分配列またはアミノ酸部分配列)を指す。ポリヌクレオチドの一部は、任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300または500またはそれを超えるヌクレオチドの長さであり得る。ガイド配列の一部は、ガイド配列の約50%、40%、30%、20%、10%、例えば、ガイド配列の3分の1またはそれより短い、例えば、7、6、5、4、3または2ヌクレオチドの長さであり得る。
【0038】
分子との関連において、用語「に由来する」とは、親分子または親分子に由来する情報を使用して単離された、または作製された分子を指す。例えば、Cas9単一突然変異体ニッカーゼおよびCas9二重突然変異体ヌル-ヌクレアーゼ(不活性化されたCas9、「デッド」Cas9またはdCas9としても知られる)は、野生型Cas9タンパク質に由来する。
【0039】
2種以上のポリヌクレオチド(または2種以上のポリペプチド)との関連において、用語「実質的に同一の」とは、配列比較アルゴリズムを使用して、または目視検査によって最大限対応するように比較されアラインされた場合に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約90~95%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはそれを超えるヌクレオチド(またはアミノ酸)配列同一性を有する配列または部分配列を指す。好ましくは、ポリヌクレオチド間の「実質的な同一性」は、少なくとも約20ヌクレオチドの長さの、少なくとも約50ヌクレオチドの長さの、少なくとも約100ヌクレオチドの長さの、少なくとも約200ヌクレオチドの長さの、少なくとも約300ヌクレオチドの長さの、少なくとも約500ヌクレオチドの長さのポリヌクレオチドの領域にわたって、またはポリヌクレオチドの全長にわたって存在する。好ましくは、ポリペプチド間の「実質的な同一性」は、少なくとも約50個のアミノ酸残基の長さの、少なくとも約100個のアミノ酸残基の長さのポリペプチドの領域にわたって、またはポリペプチドの全長にわたって存在する。
【0040】
本明細書において開示されるように、いくつかの範囲の値が提供される。また、その範囲の上限と下限の間に介在する値は各々、下限の単位の少数第1位まで、具体的に考慮されることが理解される。述べられた範囲によって包含される、より小さい範囲または介在する値も各々、具体的に考慮される。用語「約」とは、一般に、示された数のプラスまたはマイナス10%を指す。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示し得、「約20」は、18~22を意味し得る。四捨五入することなど、「約」のその他の意味は、文脈から明らかとなり得、そのため、例えば、「約1」は、0.5~1.4を意味することもある。
【0041】
[II.CRISPR媒介性の配列特異的結合および/もしくは切断またはニッキング]
図1に示されるものは、DNAのCRISPR-Cas9媒介性の配列特異的切断の図である。ガイドRNAは、5’ドメイン内の例示的な20ヌクレオチド(または20nt、ヌクレオチドはしばしば「nt」と略される)のガイド配列(その他のガイド配列は、例えば、約15~約30ntの長さであり得る)、内部に位置する塩基対形成しているステム、および3’ドメインを有するsgRNAとして表されている。ガイド配列は、DNA標的中の例示的な20nt標的配列に対して相補的である。ステムは、crRNA中のリピート配列に対応し、tracrRNA中の配列に対して相補的である。ガイドRNAの3’ドメインは、Cas9ヌクレアーゼと結合するtracrRNAの3’ドメインに対応する。Cas9:gRNA複合体は、標的DNA配列またはCas9によって認識されるPAM配列のすぐ上流のプロトスペーサーと結合し、切断する。
図1では、3ntのPAM配列が例示されているが、4nt、5ntおよびさらに長いPAM配列を含むその他のPAM配列が公知である。
【0042】
CRISPR-Casゲノム編集のためのガイドRNAは、RNA-タンパク質複合体で機能し、該複合体で、RNAは、タンパク質のスキャフォールドとしても、二本鎖DNA標的の配列認識としても働く。複合体は、先ずヌクレオチドPAM配列をスキャンすることによって、ゲノムDNAを認識する。PAM配列が同定されると、RNA-タンパク質複合体は、ゲノムDNA標的とガイドRNAのガイド配列間でのRNA/DNA二本鎖の形成を試みる。この二本鎖は、先ず、gRNAの「シード領域」のCasタンパク質媒介性の塩基対形成によって開始され、前記シード領域は、およそ10ヌクレオチドの長さであると考えられる。シード領域の結合後、安定したRNA/DNA二本鎖が、ガイドRNAの5’末端に残存ヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって形成され、これは、通常、20ヌクレオチドのDNA/RNA二本鎖をもたらし、続いてタンパク質複合体による標的DNAの二本鎖切断が起きる。
【0043】
ゲノム編集に対するCRISPR-Cas RNA-タンパク質複合体の有用性を可能にするための重要な態様は、配列特異性である。CRISPR-Cas RNA-タンパク質複合体は、修復または組換えによって遺伝子を不活性化または修飾するためのプロセスの第1段階として、ゲノムDNAを切断する。このプロセスでは、意図していない「オフターゲット」部位でのゲノムDNAの切断は、そのゲノム内の他の位置で配列突然変異を生じさせるなどの、望ましくない結果をもたらし得る。現在、これらのオフターゲット切断事象は、スクリーニング技術によって検出されるか、育種技術によって除去されるか、または無視される。CRISPR-Cas RNA-タンパク質複合体は、原核生物において適応免疫系として進化した。これらの複合体の配列特異性の改善は、真核生物ゲノムにおけるツールとして幅広い有用性を有するCRISPR-Cas RNA-タンパク質複合体に向けての有意な前進および技術革新となるだろう。
【0044】
配列特異性は、生物の全ゲノム内の標的部位または連続するヌクレオチドの連なりをスキャンし、検出し、それと結合することができるgRNA:Casタンパク質複合体によって始まる。これを行うために、標的配列は、連続するヌクレオチドの連なりまたは配列が、対象の生物の全ゲノム内に1つだけ存在し、かつ所望のゲノム編集部位に位置するのに十分な長さである必要がある。ゲノム内での唯一性を付与するために必要な連続するヌクレオチドの連なり、またはポリヌクレオチドの長さは、その特定のポリヌクレオチドの「情報内容」によって決まる。大部分の真核細胞および生物について、標的ポリヌクレオチドは、全ゲノムにおいて唯一無二であるために十分な情報内容を有するために長さが18~22ヌクレオチドの範囲である必要がある(J.Mol.Biol.(1986),188,415-431)。一般に、標的ポリヌクレオチドが長いほど、情報内容は多く、その配列がゲノム内に1つだけ存在する可能性が高くなり、19ヌクレオチド配列は、18ヌクレオチド配列より多くの情報内容を有し、20ヌクレオチド配列は、19ヌクレオチド配列より多くの情報内容を有する、等々である。しかし、唯一無二な20ヌクレオチド配列は、そのゲノム内のどこかの異なる20nt配列中の1ヌクレオチドではなく全ヌクレオチドの配列とマッチする可能性もあり、単一のミスマッチを含有する配列は、オフターゲット部位を含む。20ヌクレオチドターゲット配列に対するオフターゲット配列へのガイド配列の相対的結合は、ガイド配列とオンターゲット配列の間およびオフターゲット配列の間のそれぞれの結合エネルギーおよび速度論的平衡によって制御される。
【0045】
オリゴヌクレオチドの結合エネルギー差は制御され、DNAおよびRNA結合の協同効果によって最大化され得る。DNAおよびRNA結合についてハイブリダイゼーション中の協同性が2つの方法で定義されている。第一に、オリゴヌクレオチドが、その個々のヌクレオチドサブユニットに結合し始めた場合、ヌクレオチドサブユニットの相補的核酸塩基との結合は、オリゴヌクレオチド配列内の次の隣接サブユニットの逐次的結合にプラスの効果をもたらす。同時に、個々のヌクレオチドの結合解除は、次の隣接ヌクレオチドの結合にマイナスの効果をもたらす。ミスマッチが塩基対形成を試みた場合、ミスマッチ対の結合解除は、隣接ヌクレオチド対の結合にマイナスの効果をもたらし、同様に、マッチしたヌクレオチド対がうまく結合した場合、それは、隣接ヌクレオチド対の結合にプラスの効果をもたらす。全体的なエネルギーの観点から、オリゴヌクレオチドが、漸増するいくつもの段階を踏んで結合し、かつ結合解除を起こす個々のヌクレオチドサブユニットとして結合し始めた場合、中間状態は、それらの段階が互いに独立して起こるシステムと比較して確率的に割合が少なくなる。言い換えると、結合状態または非結合状態以外の動力学的状態の自由度はわずかであり、数もわずかである。分子の観点から、ヌクレオチドの連なりは、やや剛性であり、ヌクレオチドが結合すると、隣接ヌクレオチドには、結合につながるもの以外に採用することができるエネルギーの確証(energetic confirmations)がほとんどない。DNAとRNAの協同的結合を保持するための分子の剛性の必要性は、ほぼ30年前にZ.A.Shabarova(1988)Bioorg.Khim.14:12,1656-62によって初めて実証された。化学ライゲーションを使用することによって1,3-ジアミノプロパンまたは1,3-プロパンジオール結合により共有結合によって連結された、各々が7ヌクレオチドの長さの2つのオリゴヌクレオチドから、14ヌクレオチドの長さを有するDNAオリゴヌクレオチドが構築された。その可動性オリゴヌクレオチドを、相補的な14ヌクレオチドのDNAオリゴヌクレオチドと結合させ、結合エネルギーが測定された。天然DNA主鎖の剛性がないとき、可動性14ヌクレオチドDNAの一本鎖は、協同性を欠く2つの独立した7ヌクレオチドDNAオリゴヌクレオチドであるかのごとく、有意により低いエネルギーで結合した。協同性として公知のこの観察された現象は、非協同的な系で見られるであろうものより高いマッチ対ミスマッチの区別を可能とするものであり、およびヌクレオチド配列の特異性を増大させるための重要な構成要素である。Casタンパク質は、シード領域の10ヌクレオチドをA型ヘリックスの一本鎖部分に事前に秩序づけることが結晶構造によって示されてきた。RNAのA型ヘリックスへの事前の秩序づけは、gRNAのガイド配列が採ることができる動力学的状態の数を制限し、したがって、シード領域におけるDNA/RNAハイブリダイゼーションの協同性を増大させる。
【0046】
ヌクレオチドの連なりと前記ヌクレオチドの相補的な連なりとの全結合エネルギーは、通常は融解温度(Tm)によって定義される。融解温度は、結合している2本のヌクレオチドの連なりまたは鎖(すなわち、塩基対形成またはハイブリダイゼーションによって結合しているもの)を、それらが50%結合しており、50%非結合であるところまで解離させるのに必要な温度である。融解温度は、濃色効果として公知の現象によって測定される。UV吸収は、2本の結合しているオリゴヌクレオチド鎖が加熱によって分離されているときに増大される。オリゴヌクレオチドの熱変性に起因して二重ヘリックス構造が巻き戻されて一本鎖オリゴヌクレオチドが形成される。溶液中の結合している2つのオリゴヌクレオチドが、それらの融解温度より高い温度に加熱されると、二本鎖は巻き戻って、二本鎖より多くの光を吸収する2本の一本鎖を形成する。UV吸光度が、温度の関数としてグラフに描かれる場合、二本鎖が解離し始める時点でシグモイド曲線が得られ、そのシグモイド曲線の中点がTmとして定義される。
【0047】
図4は、オリゴヌクレオチド二本鎖が加熱によって別個の鎖に分離するにつれてUV吸光度がどのように上昇するのかを実証するグラフである。シグモイド曲線は、別個の鎖への二本鎖の解離を表し、シグモイド曲線の中点が、二本鎖のT
mである。この曲線は、生理的塩濃度での20ヌクレオチドDNA/RNA二本鎖の融解温度が、およそ50℃であることを示す。
【0048】
オリゴヌクレオチド二本鎖は、二本鎖の50%しか形成されない融解温度で最大のマッチ対ミスマッチ特異性を有する。この温度で、二本鎖の結合および結合解除が高い協同度を有するか、または急勾配のシグモイド曲線を示す場合、オフターゲットポリヌクレオチドでの単一のミスマッチによって、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが阻止されることになる。遺伝子編集実験が37℃で実施される場合には、その標的との結合が37℃のTmを有することになるガイドRNAを使用してマッチ対ミスマッチの最良の判別が達成されることになる。ここでの問題点は、この態様が、一本鎖核酸の熱力学のみに基づいており、これとは対照的に、37℃のTmを有するガイドRNAが、その二本鎖標的と部分的にしか結合せず、その結果、低い全活性または遺伝子編集をもたらすことになる点である。それでもなお、活性をモニターしながら漸進的にガイドRNAのその標的への全Tmを低下させることによって、特異性は増大されるはずである。この原理は、Yanfang et al.(2014)Nat.Biotechnol.32,279-284によって、ガイドRNAを20ヌクレオチドから17ヌクレオチドの長さに末端切除することによって実証され、彼らは、オンターゲットゲノム変種効率を犠牲にすることなく特定のオフターゲット部位での特異性の5,000倍増大を主張した。生理的塩条件でのRNA/DNA二本鎖中のRNAの末端切除は、その二本鎖のTmを塩基対あたり約2℃低下させる。gRNA中のガイド配列の17ヌクレオチドへの末端切除は、およそ6℃、結合エネルギーを減少させ、その結果として二本鎖Tmはおよそ42℃になる。しかし、ガイド配列が20ヌクレオチドから17ヌクレオチドに末端切除された場合、有意な情報内容が失われ、その結果、全ゲノムにわたって17ntガイド配列と同一または同様のオフターゲット部位数の増加をより容易に見いだすことができる。より有用なアプローチは、結合と結合解除の協同性を保持しながら化学修飾によって20ヌクレオチドRNA/DNA二本鎖の結合エネルギーを減少させるアプローチであるだろう。
【0049】
CRISPR-Casゲノム編集のためのガイドRNA、または標的ポリヌクレオチドの切断またはニッキングのためのガイドRNAは、単一ガイドRNAまたは2ピースデュアルガイドRNAのいずれかとして存在し、前記2ピースは、crRNA(クラスター化したリピートRNA(clustered repeat RNA))およびtracrRNA(トランス活性化性のクラスター化したリピートRNA(trans-activating clustered repeat RNA))とも称される。上記
図2Aおよび2Bを参照のこと。
図5Aもまた、単一ガイドRNAまたは2ピースのデュアルガイドRNA501(この場合、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントは、ハイブリダイズされた二本鎖を形成する)を示す。左から右へ(すなわち、ガイドRNAの5’末端から3’末端へ)進めて、
図5Aは、一般に、ガイドRNA上の伸長部503(オーバーハングと称されることもある)と、サンプリングおよびロッキング領域505と、Casタンパク質結合シード領域507(通常は10nt部分)と、デュアルガイドステム509またはシングルガイドステムループ511と、tracrRNA領域513とを示す。Cas9タンパク質は、おそらく503を除いて、これらのgRNA領域のいずれかまたはすべてに結合することができる。ガイド配列は、ロッキング、サンプリングおよびシード領域を含む。単一ガイドRNAとデュアルガイドRNAの両方について、ガイドRNAの5’末端上の約20ヌクレオチドのガイド配列は、標的DNAと結合し、安定した二本鎖を形成するものである。同様の配列のその他の部位との競合ハイブリダイゼーションに対するこのハイブリダイゼーション結合が、標的に対するgRNAの全特異性、およびしたがってgRNA:Casタンパク質複合体によるゲノム編集またはゲノム不活性化の特異性を決める。
【0050】
ガイドRNAのそれらの標的ポリヌクレオチドとの結合は、ガイド配列の3’末端により開始されるCas9媒介性シードRNA/DNA二本鎖形成によって起こる。最初のシード二本鎖が形成されると、gRNAは、その5’末端に向かってジッパーのようにハイブリダイズし続けるはずである。
【0051】
図5Bは、gRNA501およびゲノムDNA515からのシード二本鎖517の最初の形成後にヌクレオチドの結合が続いてサンプリング領域を通って進行する方法を示す。サンプリング領域は、シード領域に隣接する領域であり、これらのヌクレオチドのハイブリダイゼーション結合は、二本鎖の結合エネルギーが、その結合が起こる温度とほぼ同等になるまで、進行する。この領域における結合および結合解除の速度は、結合対非結合RNA(例えば、501対519、または501対521)のより大きい平衡によって制御され、この平衡もまた、Cas9タンパク質の相互作用によって制御される。生理的塩濃度かつ37℃においてゲノムDNAとともにRNA/DNA二本鎖を形成するガイドRNAの場合、通常のサンプリング領域は、15~16ヌクレオチドのRNA/DNA二本鎖がおおよそ37℃のTmを有するという事実に基づいて、10ヌクレオチドのシード領域のすぐ5’側の5~6ヌクレオチドにわたる。結合ヌクレオチド数がTm閾値を超えると、結合は、ロッキング領域を通って、ガイド配列の20ヌクレオチドが結合した状態になるまで、逐次的に継続し、標的相補的伸長部または5’ハングがガイド配列の5’末端に存在する場合、結合はさらに進行し得る。結合がロッキング領域に達すると、結合RNA対非結合RNA(例えば、501対523)間の平衡は、その結合解除、または標的ポリヌクレオチドの放出が、そのときには有意に結合またはハイブリダイズ状態の方向にある結合対非結合RNAの全平衡によってマイナスの影響を受けるように、変化する。結合対非結合RNAのより大きい平衡が特異性にもたらす効果が、Slaymaker et al.(2016),“Rationally engineered Cas9 nucleases with improved specificity”,Science 351,84-8によって明らかにされた。Slaymakerらは、タンパク質の核酸結合溝(またはnt溝)中の正の電荷を有するアミノ酸を、中性電荷を有するアラニン残基に変換することによって、オフターゲットのインデル形成が減少したCas9タンパク質を遺伝子操作により作製したことを報告した。これらの変化は、Cas9によって媒介されるガイドRNAの二本鎖標的DNAに対する全親和性を低下させ、塩基対認識を含むRNA/DNAハイブリダイゼーションに親和性がより大きく依存するようにさせる。
【0052】
図5Cは、個々の塩基対の結合エネルギーを減少させるが、高い協同性レベルを保持するヌクレオチドの化学修飾を、gRNA525のシードおよびサンプリング領域において使用して、5または6ヌクレオチドを超えてサンプリング領域を伸長する方法を示す。この効果は、化学修飾が、結合が起こる温度と同等のハイブリダイゼーション結合エネルギーを獲得するために必要なヌクレオチドの数を増加させるので、ガイドRNA525のゲノムDNA515との結合の特異性を有意に増大させることができる。同様の効果で、結合対非結合RNA(525対527、または531対533)のより大きい平衡をシフトさせるために必要なヌクレオチドの総数が増加され、これは、配列特異性の全体的増加が結果として得られるように計算される。
【0053】
ヌクレオチド修飾を使用して、複素環式核酸塩基、糖、およびヌクレオチド間リン酸連結の、ガイド配列部分内の3つの異なるモチーフのいずれかによって、部分的に相補的なオフターゲットポリヌクレオチドに向けてのgRNA:Casタンパク質複合体の活性を減少させることができるという発見は、驚くべきことであり、予期されなかった。化学修飾(複数でもよい)を有するgRNAでは、修飾が、非特異的結合を有意に増加させないことまたはハイブリダイゼーションの協同性を有意に低下させないことが重要である。どちらかまたは両方ともが、Casタンパク質によるオフターゲット結合、ニッキングまたは切断を促進することができ、これは望ましくないからである。
【0054】
ガイド配列中の核酸塩基の中で、塩基対形成に利用可能な原子の数を減少させ、このようにして、ハイブリダイゼーションを駆動する水素結合の可能性を低下させることができる。しかし、水素結合の可能性を低下させることはまた、代替塩基対形成によるオフターゲットポリヌクレオチド配列の認識を増加させ得る。これを回避するために、ガイド配列中の高特異性塩基対形成を使用することが重要である。高い特異性を促進するための核酸塩基の修飾の例は、ガイド配列中のウリジンの代わりに2-チオウリジンを組み込むことである。2つの水素結合によってアデノシンヌクレオチドと通常は結合するウリジンヌクレオチドは、その代わりにグアニンヌクレオチドと結合して、かなり弱い塩基対を生じさせることができ、この塩基対は、G-Uゆらぎ対と称されることが多い。2-チオウリジンがウリジンの代わりに使用される場合、2-チオウリジンは、安定したG-Uゆらぎ対を形成するとしても少数のみである。なぜなら、ウラシル塩基のC2位の硫黄置換基は水素結合アクセプターとして役立つことができないからである。
【0055】
【0056】
この同一の戦略は、例えば、2-チオシチジンまたは4-チオグアノシンのどちらかを使用することにより、可能性ある水素結合の数を3から2に低減させることによって、通常のグアノシン/シチジン塩基対の水素結合の可能性を低下させるために使用することができる。修飾G-C塩基対中で水結合を形成するそれらの減少の可能性が、ここで例証される。
【0057】
【0058】
リボヌクレオチドの糖部分の修飾もまた、相補的DNA鎖へのガイド配列の親和性を低下させるために使用することができる。これは、2つの方法で行うことができ、第1の方法は、糖パッカーを変化させる方法であり、第2の方法は、立体的な混み合いによってRNA/DNA二本鎖を変形させる方法である。一般に、糖パッカーは、2’-エンド(south、DNA様)糖パッカー、または3’-エンド(north、RNA様)糖パッカーの、2つの状態のうちのどちらか一方であるするように記載される。2’-エンドパッカーは、塩基対形成に対する不安定化効果があると考えられ、これは、グリコシド結合のねじれ角の変化の結果であり、したがって、親和性が最も高い塩基スタッキング構造の形成を防止すると考えられる。塩基対形成に対する不安定化効果を生じさせる結果となり得るRNAへの修飾の例は、デオキシリボース、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシル、2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシル、2’-O-フェニル、2’-チオフェニル、2’-S-チオフェニル、2’-メチル、2’-エチル、2’-プロピル、2’-アリル、2’-アリルフェニル、2’-メチルヒドロキシ、2’-メチルオキシメチル、2’-O-カルバミン酸、2’-O-エチルアミノ、2’-O-アリルアミノ、2’-O-プロピルアミノおよび2’-O-置換フェニル置換基である。
【0059】
ヌクレオチド間結合の修飾は、塩基対ハイブリダイゼーションの協同性を維持しながらヌクレオチドの結合親和性を低下させることもできる。これらの例は、ホスホノ酢酸、チオホスホノ酢酸、ホスホノカルボン酸、チオホスホノカルボン酸、ホスホノプロピオン酸、チオホスホノプロピオン酸、メチルホスホネート、メチルチオホスホネート、およびボラノホスホネートである。
【0060】
特定の実施形態では、全ガイドRNAの結合エネルギーを増加または減少させる糖修飾または核酸塩基修飾を加えて、ガイドRNAへのその他の修飾の組込みからの結合エネルギーを調節またはさらに微調整することができる。一例として、2’-O-メチル-チオホスホノ酢酸(MSP)の組込みは、非修飾ガイド配列と比較して≒1.5度、ガイドRNAの結合エネルギーを減少させることになる。2’-O-メチルヌクレオチドは、ガイド配列の他の箇所に組み込まれると、全結合エネルギーを≒0.2度増加させることになり、結果として得られるガイドRNAは、非修飾ガイドRNAと比較して≒1.3度の全結合エネルギーの減少を有することになる。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキル、例えば、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3)を含み、これは、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても公知である。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-ハロ、例えば、2’-F、2’-Br、2’-Cl、または2’-Iを含む。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-NH2を含む。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-H(例えば、2’-デオキシヌクレオチド)を含む。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-アラビノまたは2’-F-アラビノを含む。特定の実施形態では、糖修飾は、2’-LNAまたは2’-ULNAを含む。特定の実施形態では、糖は、4’-チオリボシルを含む。
【0061】
特定の実施形態では、全ガイドRNAの結合エネルギーを増加または減少させるヌクレオチド糖修飾または核酸塩基修飾を同一ヌクレオチドに組み込むことができ、この場合、修飾ヌクレオチドの結合エネルギーを調節するためにホスホジエステル連結が修飾される。一例として、3’-ホスホノカルボン酸連結を、糖修飾、例えば、2’-O-メチル、2’-F、または2’-O-(2-メトキシエチル)とともに使用することができる。特定の実施形態では、糖は、2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキル、例えば、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3)を含み、これは、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても公知である。特定の実施形態では、糖は、2’-ハロ、例えば、2’-F、2’-Br、2’-Cl、または2’-Iを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-NH2を含む。特定の実施形態では、糖は、2’-H(例えば、2’-デオキシヌクレオチド)を含む。特定の実施形態では、糖は、2’-アラビノまたは2’-F-アラビノを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-LNAまたは2’-ULNAを含む。特定の実施形態では、糖は、4’-チオリボシルを含む。
【0062】
[III.ガイドRNA]
少なくとも1つの態様では、本発明は、ガイドRNA機能性を有する化学修飾されたガイドRNAを含む。化学修飾されたガイドRNAは、少なくとも1つの特異的増強性修飾を含み、特異性増強より多くの機能または特異性増強とは異なる機能を有するその他の化学修飾を含むこともある。
【0063】
非天然であるか天然であるかに関わらず4種の標準リボヌクレオチド、すなわち、A、C、GおよびU以外の任意のヌクレオチド(例えば、シュードリジン、イノシンまたはデオキシヌクレオチド)を含むガイドRNAは、化学修飾されたガイドRNAである。同様に、天然ホスホジエステルヌクレオチド間連結以外の任意の骨格またはヌクレオチド間連結を含むガイドRNAは、化学修飾を有し、従って、化学修飾されたガイドRNAである。特定の実施形態では、保持される機能性として、Casタンパク質と結合することが挙げられる。特定の実施形態では、保持される機能性として、標的ポリヌクレオチドと結合することが挙げられる。特定の実施形態では、保持される機能性として、Casタンパク質またはgRNA:Casタンパク質複合体を、標的ポリヌクレオチドに標的化することが挙げられる。特定の実施形態では、保持される機能性として、gRNA:Casタンパク質複合体によって標的ポリヌクレオチドにニックを入れることが挙げられる。特定の実施形態では、保持される機能性として、gRNA:Casタンパク質複合体によって標的ポリヌクレオチドを切断することが挙げられる。特定の実施形態では、保持される機能性は、遺伝子操作されたCasタンパク質を有する人工CRISPR-Cas系を含む、Casタンパク質を有するCRISPR-Cas系におけるガイドRNAの任意のその他の公知の機能である。特定の実施形態では、保持される機能性は、天然ガイドRNAの任意のその他の機能である。
【0064】
[A.例示的修飾]
特定の実施形態では、特異性増強修飾は、デオキシリボースヌクレオチド;2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシルヌクレオチド;2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシルヌクレオチド;2’-O-フェニル、2’-S-チオフェニル、2’-メチル、2’-エチル、2’-プロピル、2’-アリル、2’-アリルフェニル、2’-メチルヒドロキシ、2’-メチルオキシメチル、2’-O-カルバミン酸、2’-O-エチルアミノ、2’-O-アリルアミノ、2’-O-プロピルアミノもしくは2’-O-置換フェニルを有する糖;またはそれらの組合せである。特定の実施形態では、特異性増強修飾は、ホスホノ酢酸、チオホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、チオホスホノプロピオン酸、メチルホスホネート、メチルチオホスホネートもしくはボラノホスホネート、または前述のもののいずれかの組合せである。
【0065】
特定の実施形態では、ガイドRNAに組み込まれるヌクレオチド糖修飾は、デオキシリボース;2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシル;2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシル;ならびに2’-O-フェニル、2’-S-チオフェニル、2’-メチル、2’-エチル、2’-プロピル、2’-アリル、2’-アリルフェニル、2’-メチルヒドロキシ、2’-メチルオキシメチル、2’-O-カルバミン酸、2’-O-エチルアミノ、2’-O-アリルアミノ、2’-O-プロピルアミノおよび2’-O-置換フェニルを有する糖からなる群から選択される。特定の実施形態では、ガイドRNA中に組み込まれるヌクレオチド間連結修飾は、ホスホロチオエート「P(S)」(P(S))、ホスホノ酢酸「PACE」(P(CH2COO-))などのホスホノカルボン酸(P(CH2)nCOOR)、チオホスホノ酢酸「チオPACE」((S)P(CH2COO-))などのチオホスホノカルボン酸((S)P(CH2)nCOOR)、メチルホスホネート-P(CH3)などのアルキルホスホネート(P(C1-3アルキル)、ボラノホスホネート(P(BH3))およびジチオリン酸(P(S)2)からなる群から選択される。特定の実施形態では、ガイドRNAに組み込まれるヌクレオチド間連結修飾は、ホスホノ酢酸、チオホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、チオホスホノプロピオン酸、メチルホスホネート、メチルチオホスホネートおよびボラノホスホネートからなる群から選択される。
【0066】
特定の実施形態では、ガイドRNA中に組み込まれる核酸塩基(「塩基」)修飾は、2-チオウラシル(「2-チオU」)、2-チオシトシン(「2-チオC」)、4-チオウラシル(「4-チオU」)、6-チオグアニン(「6-チオG」)、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルシトシン(「5-メチルC」)、5-メチルウラシル(「5-メチルU」)、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-エチニルシトシン、5-アミノアリルウラシル(「5-アミノアリルU」)、5-アミノアリル-シトシン(「5-アミノアリルC」)、脱塩基ヌクレオチド、構造不定の核酸(「UNA」)、イソグアニン(「イソG」)、イソシトシン(「イソC」)[“Enzymatic Incorporation of a New Base pair into DNA and RNA Extends the Genetic Alphabet.”Piccirilli,J.A.;Krauch,T.;Moroney,S.E.;Benner,S.A.(1990)Nature,343,33に記載されるような]、5-メチル-2-ピリミジン(Rappaport,H.P.(1993)Biochemistry,32,3047に記載されるような)、x(A、G、C、T、U)およびy(A、G、C、T、U)からなる群から選択される。
【0067】
特定の実施形態では、1種または複数の同位体的修飾が、ヌクレオチド糖、核酸塩基、ホスホジエステル連結および/またはヌクレオチドホスフェート上に導入される。このような修飾として、トレーサーとして使用される1種または複数の15N,13C、14C、重水素、3H、32P、125I、131I原子またはその他の原子または元素を含むヌクレオチドが挙げられる。
【0068】
特定の実施形態では、ガイドRNA中に組み込まれる「末端」修飾は、PEG(ポリエチレングリコール)、炭化水素リンカー(ヘテロ原子(O,S,N)置換炭化水素スペーサー、ハロ置換炭化水素スペーサー、ケト-、カルボキシル-、アミド-、チオニル-、カルバモイル-、チオノカルバマオイル含有炭化水素スペーサーを含む)、スペルミンリンカー、例えば、6-フルオレセイン-ヘキシルなどのリンカーと結合している蛍光色素(例えば、フルオレセイン、ローダミン、シアニン)を含む色素、クエンチャー(例えば、ダブシル、BHQ)およびその他の標識(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、アクリジン、ストレプトアビジン、アビジン、ペプチドおよび/またはタンパク質)からなる群から選択される。特定の実施形態では、「末端」修飾は、ガイドRNAの、オリゴヌクレオチド(デオキシヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、糖、オリゴ糖、ステロイド、脂質、葉酸、ビタミンおよび/またはその他の分子を含む別の分子とのコンジュゲーション(または連結)を含む。特定の実施形態では、ガイドRNA中に組み込まれる「末端」修飾は、例えば、ホスホジエステル連結として組み込まれており、ガイドRNA中の2つのヌクレオチド間のどこにでも組み込まれ得る、2-(4-ブチルアミドフルオレセイン)プロパン-1,3-ジオールビス(ホスホジエステル)リンカー(以下に表される)などのリンカーを介してガイドRNA配列中の内部に位置する。
【0069】
【0070】
その他のリンカーとして、例えば、例として、これに限定されないが
【化4】
を含む。
【0071】
特定の実施形態では、末端修飾は、アミン、チオール(またはスルフヒドリル)、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、チオニル、チオカルボニル、カルバモイル、チオカルバモイル、ホスホリル、アルケン、アルキン、ハロゲンまたは官能基で終端したリンカーなどの末端官能基を含み、そのいずれかは続いて、所望の部分、例えば、蛍光色素または非蛍光標識またはタグまたは例えば、オリゴヌクレオチド(アプタマーを含む、デオキシヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドを含む)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、オリゴ糖、ステロイド、脂質、葉酸、ビタミンなどの任意のその他の分子とコンジュゲートされ得る。コンジュゲーションは、これらに限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミド、イソチオシアネート、DCC(またはDCI)を介したカップリングを含む当技術分野で周知の標準化学および/または任意のその他の標準方法を使用する。
【0072】
特定の実施形態では、標識または色素は、gRNA中の修飾されたヌクレオチドに結合またはコンジュゲートされる。蛍光色素または非蛍光標識もしくはタグ(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンまたは
15N,
13C、
14C、重水素、
3H、
32P、
125Iなどといった同位体標識を含有する部分)などのその他の部分または例えば、オリゴヌクレオチド(アプタマーを含む、デオキシヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドを含む)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、オリゴ糖、ステロイド、脂質、葉酸、ビタミンもしくはその他の分子などの任意のその他の分子のコンジュゲーションは、いわゆる「クリック」ケミストリーまたはいわゆる「スクレート」コンジュゲーションケミストリーを使用して実現され得る。「クリック」ケミストリーとは、例えば、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものである、El-Sagheer,A.H and Brown,T.“Click chemistry with DNA”,Chem.Soc.Rev.,2010,39,1388-1405 and Mojibul,H.M.and XiaoHua,P.,DNA-associated click chemistry,Sci.China Chem.,2014,57:2,215-31に記載されるような以下のスキーム:
【化5】
によって示されるような2つの部分間のトリアゾロ連結につながる、アジド部分を用いるアルキン部分の[3+2]環化付加を指す。
【0073】
特定の実施形態では、コンジュゲーションは、π-コンジュゲートジエン部分の、アルケン部分を用いるディールズ・アルダー[4+2]環化付加などの代替的な環化付加によって実現され得る。
【0074】
「スクアレート」コンジュゲーションケミストリーは、スクアレート誘導体を介し、それぞれがアミンを有している2つの部分を連結して、スクアレート部分を含有するスクアレートコンジュゲートをもたらす(例えば、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものである、Tietze et al.(1991)Chem.Ber.,124,1215-21を参照のこと)。例えば、以下のスキームに記載されるように、リンカーアミンを含有するフルオレセインが、スクアレートリンカーを介してアミンを含有するオリゴリボヌクレオチドにコンジュゲートされる。スクアレートリンカーの一例は、以下のスキーム中に表されている。
【0075】
【0076】
[B.少なくとも1つの特異性増強修飾を有するガイドRNA]
一態様では、本技術は、修飾されたgRNAおよび任意選択的に特異性増強修飾により構成される、少なくとも1つの特性増強性修飾を有するガイドRNAを提供する。
【0077】
特定の実施形態では、少なくとも1つの特異性増強修飾は、ガイドRNAのガイド配列またはcrRNAセグメント内にある。特定の実施形態では、修飾は、crRNAのガイド配列内にある。特定の実施形態では、修飾は、ガイド配列またはcrRNAセグメントの5’末端の最初の5つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、修飾は、ガイド配列またはcrRNAセグメントの最初の4つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、修飾は、ガイド配列またはcrRNAセグメントの最初の3つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、修飾はまた、crRNAセグメントの5’-オーバーハング内にある。ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-Nからなり、Nが、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の正または負の整数である、特定の実施形態では、少なくとも1つの特異性増強修飾は、ヌクレオチド4-N~20-N内、あるいはヌクレオチド5-N~20-N内、あるいはヌクレオチド10-N~20-N内、あるいはヌクレオチド13-N~20-N内、あるいはヌクレオチド13-N~14-Nもしくは16-N~19-N内、あるいはヌクレオチド13-N~14-Nもしくは16-N~18-N内にある。特定の実施形態では、修飾は、ヌクレオチド4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-N、16-N、またはそれらの組合せにおけるものである。
【0078】
特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、gRNAのガイド配列部分に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の特異性増強修飾されたヌクレオチドを含み、gRNAの他の部分またはセグメントに100以下のさらなる修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、ガイド配列部分上に5’伸長部またはオーバーハングを含み、前記伸長部は、1~20ヌクレオチドの長さであり、これは、gRNAのガイド配列部分中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の特異性増強修飾されたヌクレオチドに加えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の特異性増強修飾されたヌクレオチドを含み、gRNAの他の部分に100以下のさらなる修飾されたヌクレオチドを任意選択的に含む。特定の実施形態では、gRNAのすべてのヌクレオチドが修飾される。特定の実施形態では、すべての修飾は同一である。特定の実施形態では、すべての修飾されたヌクレオチドは、同一種類の修飾を有する。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、異なって修飾されたヌクレオチドの組合せを含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、2つ以上の修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、3つ以上の修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは連続して配置される。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つの連続ストレッチを含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50の修飾されたヌクレオチドの連続ストレッチを含む。修飾されたヌクレオチドは各々、1種または複数の種類の修飾を独立に含み得る。特定の実施形態では、修飾されたgRNAの配列中、修飾されたヌクレオチドは連続しないか、すべてではなく一部が連続している。
【0079】
特定の実施形態では、化学修飾は、ガイドRNAの5’部分内である。ガイドRNAが、デュアルガイドRNAである場合、5’部分内の化学修飾は、ガイドRNAのcrRNAセグメントの5’部分内の修飾を指し、tracrRNAセグメントの5’部分内の修飾を指さない。ガイドRNAが、単一ガイドRNAである場合、そのガイドRNAは、crRNAセグメント内に位置する1つの5’部分を有する。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの5’部分の最初の5つのヌクレオチド内である。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの5’部分の最初の3つのヌクレオチド内である。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの3’部分内である。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの3’部分の最後の5つのヌクレオチド内である。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの3’部分の最後の3つのヌクレオチド内である。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの内部領域内(すなわち、5’末端と3’末端の間)である。
【0080】
特定の実施形態では、化学修飾は、例えば、RNAをヌクレアーゼによる分解から保護するために、またはその他の目的のために、ガイドRNAの5’部分または3’部分中に、特に、5’部分の最初の5もしくは10のヌクレオチド内に、または3’部分の最後の5もしくは10のヌクレオチド内に組み込まれる。いくつかのその他の実施形態では、修飾は、例えば、RNAをヌクレアーゼによる分解から保護するために、またはその他の目的のために、ガイドRNAの5’部分および3’部分の両方中に、特に、5’部分の最初の5または10のヌクレオチド内および3’部分の最後の5または10ヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、2以上の種類の修飾が、ガイドRNAの5’部分および3’部分の両方中に存在する。特定の実施形態では、修飾は、ガイドRNAの5’末端に、3’末端におよび内部配列内に位置する。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’または3’部分中に40個以下の、あるいは20個以下の、あるいは15個以下の、あるいは10個以下の、あるいは5個以下の、あるいは3個以下のデオキシリボヌクレオチド残基を含む。ガイドRNAが、デュアルガイドである場合、各RNA分子は、5’末端、3’末端、または両方に修飾を含むことができる。特定の実施形態では、末端(5’、3’、または両方)の連続するヌクレオチド、例えば、2、3、4、5またはそれより多くの連続するヌクレオチドが、修飾されている。
【0081】
一般に、ガイド配列は、20-Nヌクレオチドからなり、Nは、-10から10の間(任意選択的に10~6の間)の整数である。Nは、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択することができる。例えば、ガイド配列は、20ヌクレオチド長(N=0)、19ヌクレオチド長(N=1)、21ヌクレオチド長(N=-1)などであり得る。特定の実施形態では、ガイド配列は、ヌクレオチド位置(ガイド配列の5’末端から出発して)4-N、5-N、7-N、9-N、11-N、14-Nもしくは16-N、またはそれらの組合せの位置に少なくとも1つの特異性増強修飾を含む。2、3の例が下記で説明される。
【0082】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20からなり、位置4、5、7、9、10および11から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0083】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~19からなり、位置3、4、6、8、9および10から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0084】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~18からなり、位置2、3、5、7、8、および9から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0085】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~17からなり、位置1、2、4、6、7および8から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0086】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~16からなり、位置1、3、5、6および7から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0087】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~15からなり、位置2、4、5および6から選択される少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0088】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~21からなり、ヌクレオチド5、6、8、10、11および12のうちの少なくとも1つに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0089】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~22からなり、ヌクレオチド6、7、9、11、12および13のうちの少なくとも1つに化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0090】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド20-N(ここでのNは、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の正または負の整数である)からなり、4-N~20-Nの任意のヌクレオチドに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、ヌクレオチド4-N~20-Nから選択される少なくとも2つのヌクレオチドに修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、ヌクレオチド4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-N、または16-Nに少なくとも1つの修飾を含み、4-N~20-Nから選択される(しかし15-Nではない)ヌクレオチドに少なくとも別の修飾も含む。特定の実施形態では、4-N~20-Nから選択されるヌクレオチドは、5-N、6-N、7-N、8-N、9-N、10-N、16-N、または17-Nである。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾をさらに含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0091】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20からなり、位置5、6、7、8、9、10、16および17から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド17にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド10およびヌクレオチド17にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド16にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド10およびヌクレオチド16にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9およびヌクレオチド16にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8およびヌクレオチド17にある。特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも1つの末端修飾を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、ガイド配列の上流に5’伸長部またはオーバーハングを含む。
【0092】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~19からなり、位置4、5、6、7、8、9、15および16から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド9にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド16にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9およびヌクレオチド16にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド15にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド9およびヌクレオチド15にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8およびヌクレオチド15にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7およびヌクレオチド16にある。
【0093】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~18からなり、位置3、4、5、6、7、8、14および15から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド8にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド15にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8およびヌクレオチド15にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド14にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド8およびヌクレオチド14にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7およびヌクレオチド14にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド15にある。
【0094】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~17からなり、位置2、3、4、5、6、7、13および14から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド7にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド14にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド4にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7およびヌクレオチド14にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド7およびヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド14にある。
【0095】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~16からなり、位置1、2、3、4、5、6、12および13から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド6にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1およびヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド3にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド13にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1およびヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド6およびヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1およびヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド13にある。
【0096】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~15からなり、位置1、2、3、4、5、11および12から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1およびヌクレオチド5にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド1およびヌクレオチド2にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド12にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド5およびヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド12にある。
【0097】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~14からなり、位置1、2、3、4、10および11から選択されるヌクレオチドに少なくとも2つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド11にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド4およびヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド3およびヌクレオチド10にある。特定の実施形態では、化学修飾は、ガイド配列のヌクレオチド2およびヌクレオチド11にある。
【0098】
特定の実施形態では、化学修飾は、5’末端修飾または3’末端修飾などの末端修飾を含む。末端修飾の例として、これらに限定されないが、リン酸化(例えば、アルキルホスホネート、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ボラノホスホネート、ホスホロチオエート、ジチオリン酸などといった、天然リン酸基またはポリリン酸基としてまたは修飾されたリン酸基として)、ビオチン化、コンジュゲート化またはコンジュゲートされた分子、リンカー、色素、標識、タグ、官能基(例えば、これらに限定されないが、5’-アミノ、5’-チオ、5’-アミド、5’カルボキシなど)、逆連結、またはエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、エステル、ヒドロキシル、アリール、ハロ、ホスホジエステル、二環式、複素環式もしくはその他の有機官能基を含み得る炭化水素部分を含む。特定の実施形態では、末端修飾は、ジメトキシトリチルを含む。
【0099】
特定の実施形態では、化学修飾は、修飾された塩基を含む。本明細書において、「非修飾」塩基として、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾された塩基の例は、これらに限定されないが、2-チオU、2-チオC、4-チオU、6-チオG、2-アミノA、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルC、5-メチルU、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルU、5-アリルC、5-アミノアリル-ウラシルおよび5-アミノアリル-シトシンなどの合成および天然塩基を含む。特定の実施形態では、修飾は、脱塩基ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾は、ZまたはP、イソCまたはイソG、UNA、5-メチルピリミジン、x(A、G、C、T、U)またはy(A、G、C、T、U)などの非標準プリンまたはピリミジン構造を含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個の修飾された塩基を含む。その他の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130または140個の修飾された塩基を含む。特定の実施形態では、gRNA中のすべての塩基が、修飾されている。
【0100】
特定の実施形態では、修飾は、修飾された糖を含む。修飾された糖の例は、これらに限定されないが、2’位に修飾または4’位に修飾を有する糖を含む。例えば、特定の実施形態では、糖は、2’-O-メチル(2’-OMe)などの2’-O-C1-4アルキルを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても公知である2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3)などの2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキルを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-F、2’-Br、2’-Clまたは2’-Iなどの2’-ハロを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-NH2を含む。特定の実施形態では、糖は、2’-H(例えば、デオキシヌクレオチド)を含む。特定の実施形態では、糖は、2’-アラビノまたは2’-F-アラビノを含む。特定の実施形態では、糖は、2’-LNAまたは2’-ULNAを含む。特定の実施形態では、糖は、4’-チオリボシルを含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50の修飾された糖を含む。その他の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130または140の修飾された糖を含む。特定の実施形態では、gRNA中のすべての糖が修飾されている。
【0101】
特定の実施形態では、修飾は、修飾された骨格(すなわち、天然ホスホジエステル以外のヌクレオチド間連結)を含む。修飾されたヌクレオチド間連結の例は、これらに限定されないが、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結、キラルホスホロチオエートヌクレオチド間連結、ジチオリン酸ヌクレオチド間連結、ボラノホスホネートヌクレオチド間連結、メチルホスホネートヌクレオチド間連結などのC1-4アルキルホスホネートヌクレオチド間連結、ボラノホスホネートヌクレオチド間連結、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結などのホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、ホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結などのホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結、例えば、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結などのチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、チオホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結などのチオホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結を含む。種々の塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50の修飾されたヌクレオチド間連結を含む。その他の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130または140の修飾されたヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、gRNA中のすべてのヌクレオチド間連結が修飾されている。
【0102】
特定の実施形態では、修飾は、2’-O-C1-4アルキル、2’-H、2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキル、2’-F、2’-NH2、2’-アラビノ、2’-F-アラビノ、2’-LNA、2’-ULNA、4’-チオリボシル、2-チオU、2-チオC、4-チオU、6-チオG、2-アミノA、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-MeC、5-MeU、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルU、5-アリルC、5-アミノアリル-ウラシル、5-アミノアリル-シトシン、脱塩基ヌクレオチド、Zヌクレオチド、Pヌクレオチド、UNA、イソC、イソG、5-メチル-ピリミジン、x(A、G、C、T、U)ヌクレオチド、y(A、G、C、T、U)ヌクレオチド、3’-ホスホロチオエート基、3’-ホスホノ酢酸基、3’-ホスホノ酢酸エステル基、3’-チオホスホノ酢酸基、3’-チオホスホノ酢酸エステル基、3’-メチルホスホネート基、3’-ボラノホスホネート基、もしくは3’-ホスホロジチオリン酸基またはそれらの組合せである、またはこれらを含む。
【0103】
特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-O-メチル-3’-ホスホノカルボン酸塩を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-デオキシ-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-デオキシ-3’-ホスホノカルボン酸塩を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-ハロ-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-ハロ-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-ハロ-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-ハロ-3’-ホスホノカルボン酸塩を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、2’-フルオロ-3’-ホスホノカルボン酸塩を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、Z塩基を含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、P塩基を含む。
【0104】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、式(I)
W-YまたはY-W(I)
[式中、Wは、少なくとも1つの特異性増強修飾を含むオリゴヌクレオチドのヌクレオチドまたはヌクレオチドのストレッチを表し、Yは、オリゴヌクレオチドの非修飾部分を表す]によって表されるオリゴヌクレオチドを含む。
【0105】
特定の実施形態では、Wは、ガイドRNAの5’部分内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的にガイドRNAの5’部分の最初の5つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的にガイドRNAの5’部分の最初の4つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的にガイドRNAの5’部分の最初の3つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的にヌクレオチド4~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド5~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド10~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~14または16~19内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~14または16~18内にある。
【0106】
特定の実施形態では、Wは、2’-O-C1-4アルキル、2’-H、2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキル、2’-F、2’-NH2、2’-アラビノ、2’-F-アラビノ、2’-LNA、2’-ULNA、4’-チオリボシル、2-チオU、2-チオC、4-チオU、6-チオG、2-アミノA、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-MeC、5-MeU、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルU、5-アリルC、5-アミノアリル-ウラシル、5-アミノアリル-シトシン、脱塩基ヌクレオチド、Zヌクレオチド、Pヌクレオチド、UNA、イソC、イソG、5-メチル-ピリミジン、x(A、G、C、T、U)、y(A、G、C、T、U)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結、ホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結、チオホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結、メチルホスホネートヌクレオチド間連結、ボラノホスホネートヌクレオチド間連結、ジチオリン酸ヌクレオチド間連結またはそれらの組合せを含む。
【0107】
特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-ホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-ホスホロチオエート基を含む。特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-チオホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-Fおよび3’-ホスホロチオエート基を含む。特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-Fおよび3’-ホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、Wは、同一ヌクレオチド上に2’-Fおよび3’-チオホスホノ酢酸基を含む。
【0108】
特定の実施形態では、Wは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは各々、同一修飾を含む。特定の実施形態では、Wは、多様に修飾されたヌクレオチドの組合せを含む。特定の実施形態では、Wは、2以上の修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、Wは、3以上の修飾されたヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、1つまたは複数の非修飾ヌクレオチドが間に入り得るので、配列中に連続して配置されない、または少なくとも完全には連続して配置されない。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、連続して配置される。特定の実施形態では、Wは、修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つの連続ストレッチを含む。特定の実施形態では、Wは、少なくとも3つの修飾されたヌクレオチドの連続ストレッチを含む。特定の実施形態では、Wは、少なくとも4つの修飾されたヌクレオチドの連続ストレッチを含む。特定の実施形態では、Wは、少なくとも5つの修飾されたヌクレオチドの連続ストレッチを含む。
【0109】
特定の実施形態では、修飾は、安定性変更性修飾である。安定性とは、ヌクレアーゼなどの酵素ならびに細胞内および細胞外環境中に存在するその他の物質による分解に抵抗するgRNAの能力を指す。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのヌクレアーゼ耐性を増大し、したがって、ガイドRNAの安定性を増強する。特定の実施形態では、安定性を変更する修飾は、安定性を増強する修飾(安定性増強修飾)である。例えば、特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-O-メチルまたは2’-O-C1-4アルキルヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-F、2’-Br、2’-Clまたは2’-Iなどの2’-ハロヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-MOEまたは2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキルを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-NH2ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-H(または2’-デオキシ)ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、2’-アラビノまたは2’-F-アラビノを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、4’-チオリボシル糖部分を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-ホスホロチオエート基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-ホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-チオホスホノ酢酸基を含有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-メチルホスホネート基を含有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-ボラノホスフェート基を含有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、3’-ジチオリン酸基を含有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、アンロックド核酸(「ULNA」)ヌクレオチドを含む。
【0110】
特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-ホスホロチオエート基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-ホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-O-メチルおよび3’-チオホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-フルオロおよび3’-ホスホロチオエート基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-フルオロおよび3’-ホスホノ酢酸基を含む。特定の実施形態では、安定性増強修飾は、同一ヌクレオチド上に2’-フルオロおよび3’-チオホスホノ酢酸基を含む。
【0111】
特定の実施形態では、修飾は、特異性を変更する修飾(特異性変更修飾)である。いくつかの実施形態では、特異性の増強は、オンターゲット結合および/もしくは切断を増強すること、またはオフターゲットの結合および/もしくは切断を低減すること、または両方の組合せによって達成され得る。いくつかのその他の実施形態では、特異性の低減は、例えば、オンターゲット結合および/もしくは切断を低減すること、またはオフターゲットの結合および/もしくは切断を増大すること、または両方の組合せによって達成され得る。
【0112】
特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2’-O-メチルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2’-フルオロなどの2’-ハロを含む。
【0113】
特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2-チオウラシル塩基(2-チオU)を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2-チオCを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、4-チオUを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、6-チオGを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2-アミノAを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、2-アミノプリンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、シュードウラシルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ヒポキサンチンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、7-デアザグアニンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、7-デアザ-8-アザグアニンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、7-デアザアデニンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、7-デアザ-8-アザアデニンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-メチルCを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-メチルUを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-ヒドロキシメチルシトシンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-ヒドロキシメチルウラシルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5,6-デヒドロウラシルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-プロピニルシトシンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-プロピニルウラシルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-エチニルシトシンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-エチニルウラシルを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-アリルUを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-アリルCを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-アミノアリルUを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-アミノアリルCを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、脱塩基ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、Z塩基を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、P塩基を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、UNA塩基を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、イソCを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、イソGを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、5-メチル-ピリミジンを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、x(A、G、C、T、U)を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、y(A、G、C、T、U)を含む。
【0114】
特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、メチルホスホネートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ボラノホスフェートヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ジチオリン酸ヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、ULNAを含む。特定の実施形態では、特異性変更修飾は、LNAを含む。
【0115】
特定の実施形態では、修飾は、例えば、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの融解温度(Tm)を変更することによって、RNA塩基対形成を変更する。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのTmを低下させる。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのTmを上昇させる。
【0116】
特定の実施形態では、gRNAは、標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列を含み、ガイド配列は、修飾を有しない同様の二本鎖と比較して、gRNA:標的ポリヌクレオチド二本鎖の融解温度(Tm)を変更することによって、標的ポリヌクレオチド内のガイド配列の塩基対形成を変更する、1つまたは複数の修飾を含む。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しない同様の二本鎖と比較して、gRNA:標的ポリヌクレオチド二本鎖のTmを低下させる。
【0117】
特定の実施形態では、特異性変更修飾は、塩基対形成相互作用のTmを低下させる。特定の実施形態では、特異性増強修飾は、ガイドRNAと標的ポリヌクレオチドとを含む第1のDNA/RNA二本鎖のTmを、例えば、該Tmを約1℃~約13℃、あるいは約1℃~約6℃低下させることによって、少なくとも約1℃、あるいは少なくとも約2℃、少なくとも約3℃、少なくとも約4℃、少なくとも約5℃、および/または約6℃以下、あるいは約8℃以下、あるいは約10℃以下、あるいは約13℃以下、低下させる。特定の実施形態では、特異性増強修飾は、ガイドRNAとのオフターゲットポリヌクレオチドとを含む第2のDNA/RNA二本鎖のTmを、例えば、該Tmを約1℃~約13℃、あるいは約1℃~約6℃低下させることによって、少なくとも約1℃、あるいは少なくとも約2℃、少なくとも約3℃、少なくとも約4℃、少なくとも約5℃、および/または約6℃以下、あるいは約8℃以下、あるいは約10℃以下、あるいは約13℃以下、低下させる。
【0118】
特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのトランスフェクション効率を変更する化学修飾を含む。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのトランスフェクション効率を増大させる。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAのトランスフェクション効率を減少させる。特定の実施形態では、修飾は、リン酸上の陰イオン電荷を中和し、細胞への受動拡散を可能にする。特定の実施形態では、電荷中和性修飾は、ホスホノ酢酸メチルエステルヌクレオチド間連結などのホスホノ酢酸アルキルエステルヌクレオチド間連結を含む。gRNAの開発に関連するさらなる考慮事項としては、トランスフェクト能力および免疫賦活特性が挙げられる。特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、細胞への、特に真核細胞の核への効率的で滴定可能なトランスフェクト能力を促進する、およびトランスフェクトされた細胞における免疫賦活特性を低減させる、化学修飾を含む。特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、意図される細胞、組織、体液または生物内に有効に送達すること、および所望のgRNA機能性を可能にするのに十分な期間、そこで維持することを促進する、化学修飾を含む。特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの免疫賦活性効果を変更する化学修飾を含む。
【0119】
特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの安定性と特異性の両方を増強する化学修飾を含む。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの安定性とトランスフェクション効率の両方を増強する。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの特異性とトランスフェクション効率の両方を増強する。特定の実施形態では、修飾は、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの全体的な有効性を増強する。
【0120】
特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、1より大きい特異性スコアを有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1.1の特異性スコアを有する。したがって、特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1.1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、または少なくとも約55の特異性スコアを有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、約2~約60の特異性スコアを有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、約10~約60の特異性スコアを有する。
【0121】
特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1%のオンターゲット切断を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約5%のオンターゲット切断を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約10%のオンターゲット切断を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAを含むgRNA:Casタンパク質複合体は、少なくとも約30%のオンターゲット切断を有する。したがって、特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のオンターゲット切断を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、約25%~約99.9%のオンターゲット切断を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、約50%~約99.9%のオンターゲット切断を有する。
【0122】
特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、1より大きいオン:オフ比を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1.1:1のオン:オフ比を有する。したがって、特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1.1:1、少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約30:1、少なくとも約35:1、少なくとも約40:1、少なくとも約45:1、少なくとも約50:1、少なくとも約60:1、少なくとも約70:1、少なくとも約80:1、少なくとも約90:1、少なくとも約95:1、または少なくとも約99:1のオン:オフ比を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約1.5:1~約99.9:1のオン:オフ比を有する。特定の実施形態では、本願の化学修飾を有するガイドRNAは、少なくとも約10:1~約99.9:1のオン:オフ比を有する。
【0123】
[C.修飾の組合せを有するガイドRNA]
一態様では、本技術は、2以上の修飾の組合せを有するガイドRNAを提供する。特定の実施形態では、2つの修飾は、同一ヌクレオチド上にある(例えば、1つのヌクレオチドは、2’-O-メチルおよび3’-ホスホノ酢酸部分を含む)。その他の実施形態では、2つの修飾は、2つの異なるヌクレオチド上にある(例えば、1つのヌクレオチドが、2’-O-メチル基を有し、別のヌクレオチドが3’-ホスホノ酢酸部分を有する)。
【0124】
特定の実施形態では、ガイドRNA中の各修飾は、同一である。特定の実施形態では、ガイドRNA中の少なくとも1つの修飾は、ガイドRNA中のその他の修飾の少なくとも1つとは異なっている。特定の実施形態では、ガイドRNAは、異なる種類の修飾の組合せを含み、少なくとも1つの種類の修飾の組合せが、ガイドRNA中の複数の場所に存在する。特定の実施形態では、少なくとも1つの種類の修飾の組合せが、ガイドRNA中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20回現れる。
【0125】
特定の実施形態では、少なくとも1つの種類の修飾の組合せが、2つ以上の修飾されたヌクレオチド中に現れる。特定の実施形態では、少なくとも1つの種類の修飾の組合せが、3つ以上の修飾されたヌクレオチドに現れる。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、1つまたは複数の非修飾ヌクレオチドが間に入り得るので、配列中に連続して配置されない、または少なくとも完全には連続して配置されない。特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、連続して配置される。特定の実施形態では、ガイドRNAは、同一種類の連続する修飾されたヌクレオチドのストレッチを含む。特定の実施形態では、ストレッチは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40の修飾されたヌクレオチドを有する。
【0126】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、修飾された糖を含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40個の修飾された糖を含む。その他の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130または140個の修飾された糖を含む。特定の実施形態では、gRNA中のすべての糖が修飾されている。
【0127】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、修飾された骨格(すなわち、天然ホスホジエステル以外のヌクレオチド間連結)を含む。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40の修飾されたヌクレオチド間連結を含む。その他の実施形態では、修飾されたgRNAは、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130または140の修飾されたヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、gRNA中のすべてのヌクレオチド間連結が修飾されている。
【0128】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、連続する修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の連続する化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチド1および2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、2および3、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、または2~10にある。
【0129】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-アミノ、2’-デオキシ、2’-アラビノ、2’-F-アラビノ、2-チオウラシル、2-アミノアデニン、5-メチルシトシン、5-アミノアリルウラシル、Z塩基、3’-ホスホロチオエート、3’-ホスホノ酢酸、3’-ホスホノ酢酸エステル、3’-チオホスホノ酢酸、3’-チオホスホノ酢酸エステル、3’-メチルホスホネート、3’-ボラノホスホネート、3’-ジチオリン酸またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-O-メチル、2’-デオキシ、Z塩基、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-F、2-チオU、4-チオU、2-アミノA、5-メチルC、5-メチルU、5-アミノアリルUまたはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、末端ホスフェート、PEG、末端アミン、炭化水素リンカーなどの末端リンカー、置換炭化水素リンカー、スクアレートリンカー、トリアゾロリンカー、2-(4-ブチルアミドフルオレセイン)プロパン-1,3-ジオールビス(ホスホジエステル)リンカーなどの内部リンカー、色素とコンジュゲートしているリンカー、非蛍光標識とコンジュゲートしているリンカー、タグとコンジュゲートしているリンカーまたは例えば、ビーズもしくはマイクロアレイなどの固相支持体とコンジュゲートしているリンカーなどの「末端」修飾である。特定の実施形態では、組合せ中の修飾の少なくとも2つは、2’-O-メチルヌクレオチドおよびホスホロチオエートヌクレオチド間連結、2’-O-メチルヌクレオチドおよびホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結または2’-O-メチルヌクレオチドおよびチオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾の少なくとも2つは、2’-O-メチルヌクレオチドおよびホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、2’-O-メチルヌクレオチドおよびホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結、2’-O-メチルヌクレオチドおよびチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、2’-O-メチルヌクレオチドおよびチオホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結またはそれらの組合せを含む。その他の実施形態では、組合せ中の修飾は、2-チオウラシル、2-チオシトシン、4-チオウラシル、6-チオグアニン、2-アミノアデニン、2-アミノプリン、シュードウラシル、イノシン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルウラシル、5-アリルシトシン、5-アミノアリル-ウラシル、5-アミノアリル-シトシンまたは脱塩基ヌクレオチドをさらに含む。
【0130】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-ハロ-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-ハロ-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-ハロ-3’-チオホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエートを含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸を含む。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸を含む。少なくとも2つまたは3つの修飾の可能性ある組み合わせは、それぞれ、
図6および
図7に表されており、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0131】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、式(III)または式(IV)
W-Y-Q(III)、または
Y-W-X-Q(IV)
[式中、QおよびWは各々独立に、少なくとも1つの特異性増強修飾を含むオリゴヌクレオチドのヌクレオチドまたはヌクレオチドのストレッチを表し、YおよびXは各々独立に、オリゴヌクレオチドの非修飾部分を表す]
によって表されるオリゴヌクレオチドを含む。
【0132】
特定の実施形態では、Wは、ガイドRNA5’部分内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的に、ガイドRNAの5’部分の最初の5つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的に、ガイドRNAの5’部分の最初の3つのヌクレオチド内にある。特定の実施形態では、Wは、ガイドRNAの内部領域(すなわち、5’末端と3’末端の間)内にある。特定の実施形態では、Wは、少なくとも部分的にヌクレオチド4~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド5~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド10~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~20内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~14または16~19内、あるいはガイド配列のヌクレオチド13~14または16~18内にある。
【0133】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの安定性および特異性を増強する。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの安定性およびトランスフェクション効率を増強する。特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、修飾を有しないガイドRNAと比較して、ガイドRNAの特異性およびトランスフェクション効率を増強する。
【0134】
特定の実施形態では、組合せ中の修飾のうちの少なくとも1つは、ガイドRNAの二次構造を変更する。この修飾は、ガイドRNA中のRNA/RNA内部二本鎖のいずれかの塩基対形成を変更する。これらの修飾のうちいくつかは、RNA/RNA構造の塩基対形成を増大するか、あるいは、RNA/RNA二本鎖のTmを増大するのに対し、その他の修飾は、RNA/RNA二本鎖(複数でもよい)の塩基対形成(またはTm)を減少させる。このような修飾は、塩基修飾されたヌクレオチド、特に、2-チオウリジンおよび2-アミノアデノシン対などのUNAヌクレオチド、Z/Pヌクレオチド対、イソC/イソG対、6-チオG/5-メチルピリミジン対および糖上に修飾を有するヌクレオチドまたは上記で開示されるようなヌクレオチド間連結を含む。
【0135】
特定の実施形態では、組合せは、特異性を増大する(すなわち、オフターゲット効果を低減する)少なくとも1つの修飾または修飾のセットとともに、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、組合せは、ガイドRNA中のいくつかの塩基対形成のTmを上昇させる少なくとも1つの修飾または修飾のセットとともに、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する、少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、組合せは、ガイドRNA中のいくつかの塩基対形成のTmを低下させる少なくとも1つの修飾または修飾のセットとともに、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、組合せは、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセット、ガイドRNA中のいくつかの塩基対形成のTmを増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットおよびガイドRNA中のいずれかの場所でのいくつかの塩基対形成のTmを減少させる少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、組合せは、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットおよびガイドRNAのCasタンパク質との結合を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、組合せは、ヌクレアーゼ耐性(すなわち、安定性)を増大する少なくとも1つの修飾または修飾のセットおよびガイドRNAのCasタンパク質との結合を減少させる少なくとも1つの修飾または修飾のセットを含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、異なる種類の修飾の組合せを含む。
【0136】
[D.ガイドRNA構造]
特定の実施形態では、ガイドRNAは、CRISPR関連タンパク質と複合体を形成できる。特定の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、RNAによってガイドされるポリヌクレオチド結合および/またはヌクレアーゼ活性を有するCRISPR-CasII型の系によって提供されるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、Cas9、Cas9突然変異体またはCas9変異体である。特定の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9ヌクレアーゼである。特定の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9ヌクレアーゼである。特定の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)に由来するCas9ヌクレアーゼである。特定の実施形態では、合成ガイドRNAまたは合成ガイドRNA:CRISPR関連タンパク質複合体は、修飾されたヌクレオチドを有しない天然ガイドRNAまたは複合体の機能性を維持する。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドと結合することを含む。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドにニックを入れることを含む。特定の実施形態では、機能性は、標的ポリヌクレオチドを切断することを含む。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、in vitroの核酸内にある。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、in vivoまたはin vitroの細胞のゲノム内にある(生物から単離された培養された細胞(複数でもよい)の中など)。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、DNA中のプロトスペーサーである。
【0137】
特定の実施形態では、crRNAセグメントは、25から80ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、crRNAセグメントは、標的配列とハイブリダイズ可能であるガイド配列を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、標的配列またはその一部と相補的である。特定の実施形態では、ガイド配列は、15から30ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、crRNAセグメントは、ステム配列を含む。特定の実施形態では、ステム配列は、10から50ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、crRNAセグメントは、5’-オーバーハング配列を含む。特定の実施形態では、5’-オーバーハング配列は、1から10ヌクレオチド、あるいは、1~5ヌクレオチド、あるいは、1、2または3ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、crRNAは、(i)標的配列とハイブリダイズ可能であるガイド配列および(ii)ステム配列の両方を含む。特定の実施形態では、crRNAは、(i)5’-オーバーハング配列、(ii)標的配列とハイブリダイズ可能であるガイド配列および(iii)ステム配列を含む。crRNAセグメントがステム配列を含む特定の実施形態では、tracrRNAセグメントは、crRNAセグメントのステム配列と部分的にまたは完全に相補的であるヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、tracrRNAセグメントは、少なくとももう1つの二本鎖構造を含む。
【0138】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントがループLを介して連結されている単一ガイドRNAである。特定の実施形態では、ループLは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ループLは、GNRAのヌクレオチド配列を含み、ここで、Nは、A、C、GまたはUを表し、Rは、AまたはGを表す。特定の実施形態では、ループLは、GAAAのヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、2以上のループを含む。
【0139】
ガイドRNAは、5’部分(すなわち、5’の半分)および3’部分(すなわち、3’の半分)を含む。特定の実施形態では、crRNAセグメントは、tracrRNAセグメントの5’(すなわち、上流)である。特定の実施形態では、tracrRNAセグメントは、crRNAセグメントに対して5’である。
【0140】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、少なくとも2つの別個のRNA鎖、例えば、crRNA鎖および別個のtracrRNA鎖を含む。例えば、
図2Aを参照のこと。特定の実施形態では、鎖の各々は、1つまたは複数の修飾を含む合成鎖である。特定の実施形態では、鎖の少なくとも一方は、1つまたは複数の修飾を含む合成鎖である。特定の実施形態では、鎖は一緒に機能して、Cas9などのCasタンパク質による標的ポリヌクレオチドの結合、ニッキングまたは切断をガイドする。特定の実施形態では、crRNA配列およびtracrRNA配列は、別個の鎖上にあり、2つの相補的配列によって互いにハイブリダイズし、ステムまたは二本鎖を形成する。
【0141】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、crRNA配列およびtracrRNA配列を含む単一ガイドRNAである。例えば、
図2Bを参照のこと。特定の実施形態では、crRNA配列およびtracrRNA配列は、ループ配列または「ループ」によって接続される。特定の実施形態では、単一ガイドRNAは、5’部分および3’部分を含み、ここで、crRNA配列は、tracrRNA配列の上流である。特定の実施形態では、ガイドRNAは、tracrRNAセグメントを含まないcrRNAを含み。
【0142】
特定の実施形態では、2つのRNA片の総長は、約50~220(例えば、約55~200、60~190、60~180、60~170、60~160、60~150、60~140、60~130および60~120)ヌクレオチドの長さ、例えば、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200または220ヌクレオチドの長さであり得る。同様に、単一ガイドRNA(例えば、
図2B)は、約50~220(例えば、約55~200、60~190、60~180、60~170、60~160、60~150、60~140、60~130および60~120)ヌクレオチドの長さ、例えば、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200または220ヌクレオチドの長さであり得る。
【0143】
図2Aおよび2Bに示されるように、合成ガイドRNAは、(i)(a)核酸中の標的配列とハイブリダイズ可能なガイド配列(例えば、セグメントG
1~G
n、式中、各Gは、ガイド配列中のヌクレオチドを表す)、(b)第2のステム配列と部分的または完全にハイブリダイズ可能な第1のステム配列(例えば、セグメントX
1~X
n、式中、各Xは、第1のステム配列中のヌクレオチドを表す)および任意選択的に、(c)5’-オーバーハング配列(例えば、セグメントO
1~O
n、式中、各Oは、オーバーハング配列中のヌクレオチドを表す)を含むcrRNA配列と、(ii)第2のステム配列(例えば、セグメントY
1~Y
n、式中、各Yは、第2のステム配列中のヌクレオチドを表す)を含むtracrRNA配列とを含む。tracrRNA配列は、セグメントT
1~T
n(式中、各Tは、tracrRNA配列中のヌクレオチドを表す)をさらに含む。
図2A中に示される合成ガイドRNAは、1つまたは複数の修飾を含む。同様に、
図2B中に示される合成ガイドRNAは、1つまたは複数の修飾を含む。特定の実施形態では、修飾は、crRNA、tracrRNAまたはcrRNAセグメント、tracrRNAセグメントおよび任意選択的に、ループを含む単一ガイドRNAの長さに沿って任意の点に位置する。特定の実施形態では、
図2Aおよび2Bに示される合成ガイドRNA中のO、G、X、YまたはTによって表される任意のヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドであり得る。
図2B中に示されるガイドRNAは、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、配列GNRAを有するループによって接続しており、Nが、A、C、GまたはUを表し、Rが、AまたはGを表す単一ガイドRNA(sgRNA)を表す。
【0144】
特定の実施形態では、ガイドRNAのcrRNAセグメントは、25~70(例えば、30~60、35~50または40~45)ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、ガイド配列は、12~30(例えば、16~25、17~20または15~18)ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、crRNAの5’部分は、標的配列とハイブリダイズしないか、または部分的にしかハイブリダイズしない。例えば、crRNAセグメント上に5’-オーバーハングがあり得る。
【0145】
特定の実施形態では、単一ガイドRNAは、crRNAセグメントのステム配列、tracrRNAセグメントのステム配列および任意選択的に、crRNAセグメントをtracrRNAセグメントと共有結合によって接続するループを含む中央部分を含む。特定の実施形態では、単一ガイドRNAの中央セグメントは、8~60(例えば、10~55、10~50または20~40)ヌクレオチドの長さである。
【0146】
特定の実施形態では、ガイドRNAのtracrRNAセグメントは、10~130(例えば、10~125、10~100、10~75、10~50または10~25)ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、tracrRNAセグメントは、中央セグメント中の任意のヘアピンまたは二本鎖構造に加えて、1つまたは複数のヘアピンまたは二本鎖構造を含む。
【0147】
[E.ガイドRNAの合成]
特定の実施形態では、単一ガイドRNAを含むガイドRNAが、合成有機化学の技術分野を使用する化学合成によって製造される。非天然であるか天然であるかに関わらず、シュードリジン、イノシンまたはデオキシヌクレオチドなどの、4種の主なリボヌクレオチド、すなわち、A、C、GおよびU以外の任意のヌクレオチドを含むガイドRNAは、RNA中の4種の主なヌクレオチドのいずれかと、化学的に/構造的に異なるヌクレオチドに化学修飾または置換を有する。
【0148】
本明細書において記載される合成ガイドRNAは、当該技術分野で周知の方法(例えば、TBDMS化学、TOM化学、ACE化学など)を使用して化学合成することができる。例えば、合成ガイドRNAは、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものであるDellinger et al.(2011)J.Am.Chem.Soc.133,11540、米国特許第8,202,983号、および米国特許出願第2010/0076183A1号に記載された方法によってTCケミストリーを使用して合成され得る。「TCケミストリー」とは、チオノカルバメート保護基によって2’-ヒドロキシル部分で保護されたRNA単量体ヌクレオチド前駆体を使用して、非修飾RNAまたは1つもしくは複数の修飾されたヌクレオチドを含む修飾RNAを合成する組成物および方法を指す。TC-RNAケミストリーを使用して比較的長いRNA(200マー以上にも及ぶ)を化学的に合成する能力によって、4種の主なリボヌクレオチド(A、C、GおよびU)によって可能となるものをしのぐことが可能な、特別な特徴を有するガイドRNAを製造することが可能となる。本明細書に記載されたいくつかの合成ガイドRNAはまた、in vitro転写および細胞ベースの発現を含む当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。例えば、細胞ベースの発現によって製造された合成ガイドRNA中に、2’-フルオロNTPを組み込むことができる。
【0149】
ガイドRNAの合成はまた、RNA配列の化学的または酵素的合成によって達成され得、その後、これが酵素によって一緒にライゲートされるか、またはこれらに限定されないが、臭化シアンケミストリー、R.Kumar et al.(2007)J.Am.Chem.Soc.129,6859-64によって公開されたような「クリック」ケミストリーまたは「Compositions and methods for conjugating oligonucleotides」と題されたWO2013176844においてK.Hillによって記載されたようなスクアレートコンジュゲーションケミストリーを含む化学ライゲーションによってライゲートされる。
【0150】
特定の実施形態では、合成ガイドRNAを調製するための方法が提供される。方法は、ゲノム内の標的ポリヌクレオチドを選択するステップと、ゲノム内の1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドを同定するステップと、前記標的ポリヌクレオチドと前記オフターゲットポリヌクレオチドの両方に存在する1つまたは複数の共有ヌクレオチド残基を同定するステップと、ガイド配列が特異性増強修飾を含む合成ガイドRNAを設計するステップとを含む。方法は、設計されたガイドRNAを合成するステップを含むことができる。特定の実施形態では、オフターゲットポリヌクレオチドは、http://www.rgenome.net/Cas-OFFinder;https://cm.jefferson.edu/Off-Spotter;もしくはhttp://crispr.mit.eduで見付けられるものなどの、オフターゲット部位はもちろんそれらの重要度も予測するためのアルゴリズム;またはTsai et al.(2015)Nat.Biotechnol.33,187-97;Ran et al.(2015)Nature 520,186-91;Frock et al.(2015)Nat.Biotechnol.33,179-86において開示されているような、実際の事例でオフターゲット部位の活性化を同定および定量するためのその他の技術によって、同定される。特定の実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチドおよびオフターゲットポリヌクレオチドの配列間の少なくとも1つの識別位置であって、前記標的ポリヌクレオチドおよびオフターゲットポリヌクレオチドが異なるヌクレオチド残基を有する、少なくとも1つの識別位置を同定するステップと、および前記標的ポリヌクレオチド内の前記少なくとも1つの識別位置におけるヌクレオチドとマッチする(すなわち、それと相補的である)ヌクレオチドを合成ガイドRNAに含めるステップとをさらに含む。
【0151】
以下にさらに記載されるように、修飾されたヌクレオチドおよび/または修飾されたヌクレオチド間連結を含むものを含む、本明細書において開示されるガイドRNAを使用して、細胞不含アッセイにおいて、インタクトな細胞において、または全生物においてなど、in vitroまたはin vivoでの種々のCRISPR媒介性機能(これらに限定されないが、遺伝子を編集すること、遺伝子発現を調節すること、標的配列を切断することおよび標的配列と結合することを含む)を実施することができる。in vitroまたはin vivo適用のために、RNAを、当技術分野で公知の任意の方法で細胞または全生物中に送達することができる。
【0152】
[ライブラリーおよびアレイ]
一態様では、本発明は、複数のガイドRNAのセットまたはライブラリーを提供する。特定の実施形態では、ライブラリーは、本明細書において開示される2つ以上のガイドRNAを含有する。ライブラリーは、約10~約107の個々のメンバー、例えば、約10~約102、約102~約103、約103~約105、約105~約107のメンバーを含有し得る。ライブラリーの個々のメンバーは、ライブラリーのその他のメンバーとは、少なくとも、ガイド配列、すなわち、gRNAのDNAを標的化するセグメントにおいて異なる。他方、特定の実施形態では、ライブラリーの各個々のメンバーは、ライブラリーのすべてのその他のメンバーとtracrRNAセグメントについて同一または実質的に同一のヌクレオチド配列を含有し得る。このような方法で、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド中の異なるポリヌクレオチドまたは異なる配列を標的化するメンバーを含み得る。
【0153】
特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも102種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも103種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも104種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも105種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも106種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも107種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも10種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも102種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも103種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも104種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも105種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも106種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも107種の異なるポリヌクレオチドを標的化する。
【0154】
特定の実施形態では、ライブラリーは、ライブラリー中のメンバーの配列を横断する連続的にシフトしたウィンドウ中に同一配列および同一修飾を有するガイドRNAの収集物を含む。特定の実施形態では、ウィンドウは、RNAの全長を集合的に対象とする。
【0155】
特定の実施形態では、ライブラリーによって、ハイスループット、多重標的ゲノム操作および分析を実施することが可能となる。特定の実施形態では、ガイドRNAにおけるDNAを標的化するセグメントのみが変わり、Casタンパク質結合セグメントは同一である。特定の実施形態では、ライブラリーの第1の部分は、特定のCasタンパク質を認識し、それと結合し、それを指向するCas結合セグメントを有するガイドRNAを含み、ライブラリーの第2の部分は、異なるCasタンパク質(例えば、異なる種に由来するCasタンパク質)を認識し、それと結合し、それを指向する異なるCas結合性セグメントを含み、それによって、ライブラリーが、2種以上の直交性Casタンパク質とともに機能することが可能となる。特定の実施形態では、第1の直交性Casタンパク質の誘導された発現は、第1の直交性Casタンパク質と相互作用するライブラリーの一部を利用する。特定の実施形態では、第1および第2の直交性Casタンパク質の誘導された発現は、それぞれ、第1および第2の直交性Casタンパク質と相互作用するライブラリーの一部を利用する。特定の実施形態では、第1および第2の直交性Casタンパク質の誘導された発現は、異なる時点で起こる。したがって、具体的には、ライブラリーにおいて特定されるような複数の標的を遺伝子操作することまたは修飾することによって、大規模な遺伝子編集または遺伝子調節を実施することができる。
【0156】
特定の実施形態では、ライブラリーは、「アレイド」ライブラリー、すなわち、アドレス可能な配置中の異なる特徴または特徴のプールの収集物である。例えば、アレイの特徴を、選択的に切断し、プレート中の各ウェルが、公知の特徴または公知の特徴のプールを含有するようにマイクロタイタープレートに移すことができる。いくつかのその他の実施形態では、ライブラリーは、48ウェルまたは96ウェルマイクロタイタープレート形式で、または384ウェルプレート中で合成される。
【0157】
特定の実施形態では、本発明のガイドRNAの合成は、化学物質が結合し得る表面を有する固相支持体上で実施され得る。いくつかの実施形態では、合成されているガイドRNAが、同一固相支持体に直接的または間接的に結合され、アレイの部分を形成し得る。「アレイ」は、各配列の位置が公知であるように、空間的に規定され、物理的にアドレス可能な方法で固相支持体上に各々配置された公知の単量体配列の別個の分子の収集物である。本明細書において同義的に使用される「アレイ」または「マイクロアレイ」は、その領域と会合している特定の化学部分(複数でもよい)(リガンド、例えば、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド配列(核酸)、ポリペプチド(例えば、タンパク質)、炭水化物、脂質などといったバイオポリマーなど)を有する、アドレス可能な領域の任意の1次元の、2次元のまたは実質的に2次元の(ならびに3次元の)配置を含む。アレイは、アレイ上の特定の所定の位置(すなわち「アドレス」)で、領域(すなわち、アレイの「特徴」)が、特定の標的または標的のクラスを検出するように(特徴は、その特徴の非標的を偶発的に検出し得るが)、異なる部分(例えば、異なるポリヌクレオチド配列)の複数の領域を有する場合に「アドレス可能」である。アレイ特徴は、通常、介在する空間によって分かれているが、必要ではない。アレイ上に含有され得る特徴の数は、大きくは、基板の表面積、特徴のサイズおよび特徴間の間隔によって決定される。アレイは、2,500~200,000特徴/cm2など、1cm2あたり最大数十万以上の特徴の密度を有し得る。特徴は、共有結合によって基板と結合される場合もされない場合もある。
【0158】
適した固相支持体は、種々の形態および組成を有し、天然に存在する材料、相性的に修飾されている天然に存在する材料または合成材料に由来し得る。適した支持材料の例は、これらに限定されないが、シリカ、ケイ素および酸化ケイ素、テフロン(登録商標)、ガラス、アガロース(例えば、Pharmacia製のセファロース(登録商標))およびデキストラン(例えば、同様にPharmacia製のセファデックス(登録商標)およびセファシル(登録商標))などの多糖、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸メチルのコポリマーなどを含む。いくつかの実施形態では、固相支持体は、複数のビーズである。
【0159】
基板表面上で合成されるべきガイドRNAの最初の単量体をリンカーと結合することができ、これは、順に、シリカ基板上に存在する表面親水基、例えば、表面ヒドロキシル部分と結合する。いくつかの実施形態では、ユニバーサルリンカーを使用する。いくつかのその他の実施形態では、最初の単量体を、表面ヒドロキシル部分、表面アミノまたはその他の反応性の官能基と直接反応させる。あるいは、ガイドRNAを、本発明に従ってまず合成することができ、合成後、当技術分野で公知の任意の方法によって固体基板と結合させる。したがって、本発明を使用して、オリゴヌクレオチドがアレイ上で合成されるか、または合成後にアレイ基板に結合される、ガイドRNAのアレイを調製できる。その後、ガイドRNAまたはガイドRNAのプールもしくは複数のプールを、アレイ基板から任意かつ選択的に切断し、ライブラリー(複数でもよい)として使用できる。
【0160】
[F.crRNA]
本発明は、本明細書において記載されるような、ガイドRNAについて記載されるような化学修飾(複数でもよい)を含む多様なcrRNAも提供する。crRNAは、デュアルガイドなどの、マルチセグメントガイドRNAにおいて機能することができる。特定の実施形態では、crRNAは、例えばCpf1系において、tracrRNAセグメントがないガイドRNAとして機能する。したがって、特定の実施形態では、本発明は、(i)PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列と、(ii)ステム配列とを含む合成crRNAであって、前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間(任意選択的に10~6の間)の整数であり;前記ガイド配列が、少なくとも1つの修飾を含み、合成crRNAが、修飾を有しない対応するcrRNAより、標的ポリヌクレオチドに対する高い特異性、または高いgRNA機能性をもたらす、合成crRNAを提供する。ここで、crRNAは、該crRNAが、ガイドRNAまたはgRNA:casタンパク質複合体に含まれているとき、前記ガイドRNAまたはgRNA:casタンパク質複合体が、crRNAが修飾を欠く対応するガイドRNAまたはgRNA:casタンパク質複合体より、標的ポリヌクレオチドに対する高い特異性、または高いgRNA機能性を有する場合、修飾を有しない対応するcrRNAより、標的ポリヌクレオチドに対する高い特異性、または高いgRNA機能性をもたらす。
【0161】
ガイド配列の、ヌクレオチド4-N~20-Nにおけるまたは4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nおよび16-Nから選択される少なくとも1つのヌクレオチドにおける少なくとも1つの修飾を含むがこれらに限定されない、対象の修飾は、本開示の他の場所で説明される。特定の修飾(複数でもよい)および標的ポリヌクレオチドの種々の実施形態も、本明細書において記載される。
【0162】
[IV.Casタンパク質]
上記のように、機能的CRISPR-Cas系はまた、標的結合または標的ニッキング/切断などの所望の活性を提供するタンパク質成分(例えば、Casヌクレアーゼであり得るCasタンパク質)を必要とする。特定の実施形態では、所望の活性は、標的結合である。特定の実施形態では、所望の活性は、標的ニッキングまたは標的切断である。特定の実施形態では、所望の活性はまた、本明細書において開示されるようなCasタンパク質と共有結合によって融合しているポリペプチドによって提供される機能を含む。特定の実施形態では、所望の活性はまた、本明細書において開示されるようなヌクレアーゼ欠損Casタンパク質と共有結合によって融合しているポリペプチドによって提供される機能を含む。このような所望の活性の例として、以下に記載されるような転写調節活性(活性化または抑制のいずれか)、エピジェニック修飾活性または標的可視化/同定活性が挙げられる。Casタンパク質は、精製もしくは非精製(i)Casタンパク質または(ii)Casタンパク質の発現のためにコードされるmRNAまたは(iii)タンパク質の発現のためにコードされる直鎖もしくは環状DNAとしてin vitroまたはin vivo系の中に導入され得る。Casタンパク質を提供するこれらの3種の方法のいずれも当技術分野で周知であり、Casタンパク質またはCasタンパク質の使用の言及が本明細書においてなされる場合には、同義的に暗示される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、mRNAまたはDNAから構成的に発現される。特定の実施形態では、mRNAまたはDNAからのCasタンパク質の発現が誘導可能であるか、または誘導される。
【0163】
特定の実施形態では、Casタンパク質は化学合成される(例えば、Creighton,“Proteins:Structures and Molecular Principles”,W.H.Freeman & Co.,NY,1983を参照のこと)か、または本明細書において記載されるように組換えDNA技術によって製造される。さらなる指針については、当業者は、Frederick M.Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley & Sons,2003;およびSambrook et al.,“Molecular Cloning,A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,2001を参考にしてもよい。
【0164】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、精製された、または単離された形態で提供される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、約80%、約90%、約95%または約99%の純度で提供される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、組成物の一部として提供される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、RNAによってガイドされるヌクレアーゼ反応のための組成物として使用するのに、または組成物中に含めるのに適した水性組成物中で提供される。当業者は、このようなヌクレアーゼ反応組成物中に含まれ得る種々の物質を十分に承知している。
【0165】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、組換えポリペプチドとして提供される。特定の実施例では、組換えポリペプチドは、融合タンパク質として調製される。例えば、特定の実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸は、融合パートナー、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、6x-HisエピトープタグまたはM13遺伝子3タンパク質をコードする別の核酸と連結される。適した宿主細胞は、融合タンパク質を発現するために使用され得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、当技術分野で公知の方法によって単離される。特定の実施形態では、融合タンパク質は、融合パートナーを除去してCasタンパク質を得るために、例えば、酵素消化によってさらに処理され得る。あるいは、Casタンパク質:gRNA複合体は、当技術分野で公知の宿主細胞系またはin vitro翻訳転写系を使用して組換え技術を用いて作成され得る。このような系および技術の詳細は、例えば、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものである、WO2014144761、WO2014144592、WO2013176772、US20140273226およびUS20140273233に見出すことができる。
【0166】
[野生型Casタンパク質]
特定の実施形態では、Casタンパク質は、RNAによってガイドされるポリヌクレオチド結合および/またはヌクレアーゼ活性を有する、CRISPR-CasI型、II型またはIII型の系に由来するタンパク質を含む。適したCasタンパク質の限定されない例として、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(またはCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(またはCasA)、Cse2(またはCasB)、Cse3(またはCasE)、Cse4(またはCasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csz1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4およびCu1966が挙げられる。例えば、参照によりその全文の内容が本明細書の一部をなすものである、WO2014144761、WO2014144592、WO2013176772、US20140273226およびUS20140273233を参照のこと。
【0167】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、II型CRISPR-Cas系に由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、WO2014144761において同定されるものを含む、細菌Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、連鎖球菌(Streptococcus)の種またはブドウ状球菌(staphylococcus)の種のCas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。
【0168】
特定の実施形態では、野生型Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。特定の実施形態では、野生型Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9タンパク質(配列番号115)である。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、配列番号115の断片を含み得る、それからなり得るまたは本質的にそれからなり得る。
【0169】
一般に、Casタンパク質は、ガイドRNAと相互作用する、少なくとも1つのRNA結合ドメインを含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、タンパク質の核酸結合親和性および/または特異性を増大し、酵素活性を変更し、および/または別の特性を変化させるように修飾される。例えば、Casタンパク質のヌクレアーゼ(すなわち、DNアーゼ、RNアーゼ)ドメインは、修飾、突然変異、欠失または不活性化され得る。あるいは、Casタンパク質は、タンパク質の機能にとって必須ではないドメインを除去するように末端切除型であり得る。特定の実施形態では、Casタンパク質は、エフェクタードメインの活性を最適化するように、末端切除型であるか、または修飾され得る。特定の実施形態では、Casタンパク質は、NLSタグが付けられたCasタンパク質の生存細胞の核への移入を達成する核局在性配列(NLS)を含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、2つ以上の修飾を含む。
【0170】
[突然変異体Casタンパク質]
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、野生型Casタンパク質(Cas9など)またはその断片の突然変異体であり得る。その他の実施形態では、Casタンパク質は、突然変異体Casタンパク質に由来し得る。例えば、Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、タンパク質の1つまたは複数の特性(例えば、ヌクレアーゼ活性、結合親和性、プロテアーゼに対する安定性など)を変更するように修飾され得る。あるいは、RNAによってガイドされる切断に関与していないCas9タンパク質のドメインは、修飾されたCas9タンパク質が、野生型Cas9タンパク質より小さいように、タンパク質から排除され得る。例えば、Cas9コード配列のサイズの低減によって、そうでなければ、中でもAAVベクターなどの野生型配列に適応させることができないトランスフェクションベクター内に適合することが可能となる。いくつかの実施形態では、本系は、細菌中にコードされるような、または真核細胞における発現のためにコドン最適化された、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)由来のCas9タンパク質を利用する。野生型化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9タンパク質配列のアミノ酸配列(配列番号115、www.uniprot.org/uniprot/Q99ZW2で入手可能)が、以下に示される。
【0171】
【0172】
Cas9タンパク質は、一般に、少なくとも2種のヌクレアーゼ(例えば、DNアーゼ)ドメインを有する。例えば、Cas9タンパク質は、RuvC様ヌクレアーゼドメインおよびHNH様ヌクレアーゼドメインを有し得る。RuvCおよびHNHドメインは一緒に働いて、標的部位中の両鎖を切断し、標的ポリヌクレオチド中に二本鎖切断を作製する(Jinek et al.,Science 337:816-21)。特定の実施形態では、突然変異体Cas9タンパク質は、1つのみの機能的ヌクレアーゼドメイン(RuvC様またはHNH様ヌクレアーゼドメインのいずれか)を含有するように修飾される。例えば、特定の実施形態では、突然変異体Cas9タンパク質は、ヌクレアーゼドメインのうち1つが、欠失または突然変異され、その結果、もはや機能的ではない(すなわち、ヌクレアーゼ活性が存在しない)ように修飾される。ヌクレアーゼドメインの1つが不活性であるいくつかの実施形態では、突然変異体は、二本鎖ポリヌクレオチド中にニックを導入可能である(このようなタンパク質は、「ニッカーゼ」と呼ばれる)が、二本鎖ポリヌクレオチドを切断できない。例えば、RuvC様ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの(D10A)変換は、Cas9由来タンパク質をニッカーゼに変換する。同様に、HNHドメインにおけるヒスチジンからアラニンへの(H840A)変換は、Cas9由来タンパク質をニッカーゼに変換する。同様に、HNHドメインにおけるアスパラギン(arsparagine)からアラニンへの(N863A)変換は、Cas9由来タンパク質をニッカーゼに変換する。
【0173】
特定の実施形態では、RuvC様ヌクレアーゼドメインおよびHNH様ヌクレアーゼドメインの両方が、突然変異体Cas9タンパク質が、標的ポリヌクレオチドにニックを入れることができない、または切断できないように修飾されるか、または排除される。特定の実施形態では、Cas9由来タンパク質のすべてのヌクレアーゼドメインが、Cas9由来タンパク質が、すべてのヌクレアーゼ活性を欠くように修飾されるか、または排除される。特定の実施形態では、それにもかかわらず、一部のまたはすべてのヌクレアーゼ活性を欠くCas9タンパク質は、野生型対応物と比較して、標的認識活性をより高いまたはより低い程度に維持する。
【0174】
上記の実施形態のいずれにおいても、ヌクレアーゼドメインのいずれかまたはすべてが、部位特異的突然変異誘発、PCR媒介突然変異誘発および全遺伝子合成並びに当技術分野で公知のその他の方法などの周知の方法を使用する1つまたは複数の欠失突然変異、挿入突然変異および/または置換突然変異によって不活性化され得る。
【0175】
特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、配列番号115に対して少なくとも50%(例えば、50%から100%の間(両端を含む)の任意の数字、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%および99%)同一である。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、RNA分子(例えば、sgRNA)と結合する。特定の実施形態では、「Cas突然変異体」または「Cas変異体」は、RNA分子を介して特定のポリヌクレオチド配列に標的化される。
【0176】
[融合タンパク質]
特定の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質と異種の別のタンパク質またはポリペプチドと融合されて、融合タンパク質が作製される。特定の実施形態では、異種配列は、切断ドメイン、転写活性化ドメイン、転写リプレッサードメインまたはエピジェニック修飾ドメインなどの1つまたは複数のエフェクタードメインを含む。エフェクタードメインのさらなる例は、核局在性シグナル、細胞透過性または転位置ドメインまたはマーカードメインを含む。特定の実施形態では、エフェクタードメインは、融合タンパク質のN末端、C末端にまたは内部位置中に位置する。特定の実施形態では、融合タンパク質のCasタンパク質は、Cas9タンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、融合タンパク質のCasタンパク質は、すべてのヌクレアーゼドメインが不活性化または欠失されている、修飾された、または突然変異されたCasタンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、融合タンパク質のCasタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を欠く、修飾された、または突然変異されたCasタンパク質であるか、またはそれに由来する。特定の実施形態では、Casタンパク質のRuvCおよび/またはHNHドメインは、もはやヌクレアーゼ活性を有しないように修飾される、または突然変異される。
【0177】
[切断ドメイン]
特定の実施形態では、融合タンパク質のエフェクタードメインは、切断ドメインである。本明細書において、「切断ドメイン」とは、DNAを切断するドメインを指す。切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得るエンドヌクレアーゼの限定されない例として、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、New England Biolabsのカタログ、またはBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25,3379-88を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素は、公知である(例えば、51ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNアーゼI、小球菌ヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ)。Linn et al.(eds.)“Nucleases”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1種または複数を、切断ドメインの供給源として使用できる。
【0178】
特定の実施形態では、切断ドメインは、II-S型エンドヌクレアーゼに由来し得る。II-S型エンドヌクレアーゼは、DNAを、通常、エンドヌクレアーゼのDNA認識部位から数塩基対離れた部位で特異的に切断し、そのようなものとして、分離可能な認識および切断ドメインを有する。これらの酵素は、一般に、一時的に会合して二量体を形成し、捻じれた位置でDNAの各鎖を切断する単量体である。適したII-S型エンドヌクレアーゼの限定されない例として、BfiI、BpmI、BsaI、BsgI、BsmBI、BsmI、BspMI、FokI、MbolIおよびSapIが挙げられる。特定の実施形態では、融合タンパク質の切断ドメインは、FokI切断ドメインまたはその断片または誘導体であるMiller et al.(2007)Nat.Biotechnol.25,778-85;Szczpek et al.(2007)Nat.Biotechnol.25,786-93;Doyon et al.(2011)Nat.Methods,8,74-81を参照のこと。
【0179】
[転写活性化ドメイン]
特定の実施形態では、融合タンパク質のエフェクタードメインは、転写活性化ドメインである。一般に、転写活性化ドメインは、転写制御エレメントおよび/または転写調節タンパク質(すなわち、転写因子、RNAポリメラーゼなど)と相互作用し、遺伝子の転写を増大および/または活性化する。特定の実施形態では、転写活性化ドメインは、単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメイン、VP64(VP16の四量体誘導体である)、NFκB p65活性化ドメイン、p53活性化ドメイン1および2、CREB(cAMP反応エレメント結合タンパク質)活性化ドメイン、E2A活性化ドメインまたはNFAT(活性化されたT細胞の核因子)活性化ドメインである。特定の実施形態では、転写活性化ドメインは、Gal4、Gcn4、MLL、Rtg3、Gln3、Oaf1、Pip2、Pdr1、Pdr3、Pho4またはLeu3である。転写活性化ドメインは、野生型であり得る、または元の転写活性化ドメインの修飾された型もしくは末端切除型であり得る。
【0180】
[転写リプレッサードメイン]
特定の実施形態では、融合タンパク質のエフェクタードメインは、転写リプレッサードメインである。一般に、転写リプレッサードメインは、転写制御エレメントおよび/または転写調節タンパク質(すなわち、転写因子、RNAポリメラーゼなど)と相互作用して、遺伝子の転写を減少させるおよび/または妨げる。特定の実施形態では、転写リプレッサードメインは、誘導性cAMP初期リプレッサー(ICER)ドメイン、Kruppel関連ボックスA(KRAB-A)リプレッサードメイン、YY1グリシンリッチリプレッサードメイン、Sp1様リプレッサー、E(spI)リプレッサー、IκBリプレッサーまたはMeCP2である。
【0181】
[エピジェニック修飾ドメイン]
特定の実施形態では、融合タンパク質のエフェクタードメインは、エピジェニック修飾ドメインである。一般に、エピジェニック修飾ドメインは、ヒストン構造および/または染色体構造を修飾することによって遺伝子発現を変更する。特定の実施形態では、エピジェニック修飾ドメインは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼドメイン、ヒストンデアセチラーゼドメイン、ヒストンメチルトランスフェラーゼドメイン、ヒストンデメチラーゼドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼドメインまたはDNAデメチラーゼドメインである。
【0182】
[さらなるドメイン]
特定の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのさらなるドメインをさらに含む。適したさらなるドメインの限定されない例として、核局在性シグナル(NLS)、細胞透過性または転位置ドメインおよびマーカードメインが挙げられる。NLSは、一般に、塩基性アミノ酸のストレッチを含む。例えば、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.,282,5101-5を参照のこと。例えば、特定の実施形態では、NLSは、PKKKRKV(配列番号116)またはPKKKRRV(配列番号117)などのモノパータイト(monopartite)配列である。特定の実施形態では、NLSは、ビパータイト(bipartite)配列である。特定の実施形態では、NLSは、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号118)である。
【0183】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つの細胞透過性ドメインを含む。特定の実施形態では、細胞透過性ドメインは、HIV-1のTATタンパク質に由来する細胞透過性ペプチド配列である。例として、TATの細胞透過性配列は、GRKKRRQRRRPPQPKKKRKV(配列番号119)であり得る。特定の実施形態では、細胞透過性ドメインは、TLM(PLSSIFSRIGDPPKKKRKV、配列番号120)、これはヒトB型肝炎ウイルス由来の細胞透過性ペプチド配列である。特定の実施形態では、細胞透過性ドメインは、MPG(GALFLGWLGAAGSTMGAPKKKRKV、配列番号121またはGALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV、配列番号122)である。特定の実施形態では、細胞透過性ドメインは、Pep-1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV、配列番号123)、VP22、単純ヘルペスウイルス由来の細胞透過性ペプチドまたはポリアルギニンペプチド配列である。
【0184】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのマーカードメインを含む。マーカードメインの限定されない例は、蛍光タンパク質、精製タグおよびエピトープタグを含む。特定の実施形態では、マーカードメインは、蛍光タンパク質である。適した蛍光タンパク質の限定されない例として、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、EGFP、Emerald、Azami Green、単量体Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreen1)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellow1)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、GFPuv、Sapphire、T-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-単量体、HcRed-Tandem、HcRed1、AsRed2、eqFP611、mRasberry、mStrawberry、Jred)、橙色蛍光タンパク質(mOrange、mKO、Kusabira-Orange、単量体Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)および任意のその他の適した蛍光タンパク質が挙げられる。特定の実施形態では、マーカードメインは、精製タグおよび/またはエピトープタグである。例示的タグとして、これらに限定されないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、HA、nus、Softag1、Softag3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、6xHis、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)およびカルモジュリンが挙げられる。
【0185】
[V.使用および方法]
一態様では、本発明は、標的ポリヌクレオチドをCasタンパク質を用いて切断する方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドを、(i)本明細書において記載されるガイドRNAまたはガイドRNA分子のセットおよび(ii)Casタンパク質と接触させることを含む。特定の実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチド中に二本鎖切断をもたらす。特定の実施形態では、Casタンパク質は、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質である。特定の実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチド中に一本鎖切断をもたらす。特定の実施形態では、ガイドRNAおよび一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質を含む複合体は、配列によって標的化される一本鎖DNA切断、すなわち、ニッキングのために使用される。
【0186】
一態様では、本発明は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドを、Casタンパク質を用いて切断する方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドを、(i)本明細書において記載されるガイドRNA分子のセットおよび(ii)Casタンパク質を接触させることを含む。特定の実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチド中に二本鎖切断をもたらす。特定の実施形態では、Casタンパク質は、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質である。特定の実施形態では、方法は、標的ポリヌクレオチド中に一本鎖切断をもたらす。特定の実施形態では、ガイドRNAおよび一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質を含む複合体は、配列によって標的化される一本鎖DNA切断、すなわち、ニッキングのために使用される。
【0187】
一態様では、本発明は、標的ポリヌクレオチドをCasタンパク質と結合するための方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドを、(i)本明細書において記載されるガイドRNAまたはガイドRNA分子のセットおよび(ii)Casタンパク質と接触させて、標的ポリヌクレオチドのCasタンパク質との結合をもたらすことを含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas変異体である。特定の実施形態では、Cas変異体は、対応物野生型Casタンパク質と比較して、一部またはすべてのヌクレアーゼ活性を欠く。
【0188】
一態様では、本発明は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドをCasタンパク質と結合させる方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドを、(i)本明細書において記載されるRNA分子のセットおよび(ii)Casタンパク質と接触させて、標的ポリヌクレオチドのCasタンパク質との結合をもたらすことを含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas変異体である。特定の実施形態では、Cas変異体は、対応物野生型Casタンパク質と比較して、一部またはすべてのヌクレアーゼ活性を欠く。
【0189】
一態様では、本発明は、Casタンパク質を、標的ポリヌクレオチドに標的化するための方法を提供する。方法は、Casタンパク質を、本明細書において記載されるガイドRNAまたはガイドRNA分子のセットと接触させるステップを含む。特定の実施形態では、方法は、ガイドRNA:Casタンパク質複合体の形成をもたらす。特定の実施形態では、Casタンパク質は、野生型Cas9タンパク質である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質の突然変異体または変異体である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を欠くCasタンパク質(例えば、Casタンパク質のヌクレアーゼ欠損突然変異体)である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、融合タンパク質(例えば、(i)Casタンパク質および(ii)異種ポリペプチドを含む融合タンパク質)の一部である。
【0190】
一態様では、本発明は、Casタンパク質を、2種以上の標的ポリヌクレオチドに標的化するための方法を提供する。方法は、Casタンパク質を、本明細書において記載されるガイドRNA分子のセットと接触させるステップを含む。特定の実施形態では、方法は、ガイドRNA:Casタンパク質複合体の形成をもたらす。特定の実施形態では、Casタンパク質は、野生型Cas9タンパク質である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質の突然変異体または変異体である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、一本鎖ニッキング活性を有するCasタンパク質である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を欠くCasタンパク質(例えば、Casタンパク質のヌクレアーゼ欠損突然変異体)である。特定の実施形態では、Casタンパク質は、融合タンパク質(例えば、(i)Casタンパク質またはおよび(ii)異種ポリペプチドを含む融合タンパク質)の一部である。
【0191】
一態様では、本発明は、合成ガイドRNAを選択する方法を提供する。方法は、MP修飾の位置に起因して特異性を増強するガイド配列内の位置(1つまたは複数)を同定するための、gRNAのガイド配列部分を横断するMP修飾の「ウォーキング」を含む。オンターゲット対オフターゲット切断比、標的部位での切断パーセンテージ、および1つもしくは複数のオフターゲット部位での切断パーセンテージ、ならびに/または特異性スコアを用いて試験した各位置について特異性増強の大きさを評価し、このようにして、gRNAの特異性を変更する修飾位置(1つまたは複数)および変更する程度を決定することができる。ガイド配列を横断する単一MPの漸進的なウォーキングによって、試験した位置の中から、化学修飾の1つまたは複数の組合せの結果として生じる特異性の可能性ある相乗的改善のための位置を同定することもできる。
【0192】
ある実施形態では、方法は、少なくとも第1の合成ガイドRNAおよび第2の合成ガイドRNAを用意するステップと(前記合成ガイドRNAの両方は、(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントとを含み、前記第1の合成ガイドRNAは、前記ガイド配列の第1の位置にMP修飾を含み、前記第2の合成ガイドRNAは、前記ガイド配列の第2の位置にMP修飾を含む);Casタンパク質と前記第1の合成ガイドRNAとを含む第1のgRNA:Casタンパク質複合体を形成し、前記標的ポリヌクレオチドを前記第1のgRNA:Casタンパク質複合体と接触させ、前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと;Casタンパク質と前記第2のガイドRNAとを含む第2のgRNA:Casタンパク質複合体を形成し、前記標的ポリヌクレオチドを前記第2のgRNA:Casタンパク質複合体と接触させ、前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと;前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合することにおける、前記第1のgRNA:Casタンパク質複合体および前記第2の合成gRNA:Casタンパク質複合体の特異性を判定するステップと;ガイドRNAのどちらが前記標的ポリヌクレオチドに対してより大きい特異性を有するかを同定するステップとを含む。特定の実施形態では、第1および第2のgRNA:Casタンパク質複合体は、例えば第1および第2のgRNAを異なるフルオロフォアで標識することによって、競合アッセイで一緒に試験される。特定の実施形態では、第1および第2のgRNA:Casタンパク質複合体は、並行してまたは逐次的にアッセイされる同等のまたは別々のサンプルにおいて、個々に試験される。
【0193】
一態様では、本発明は、特異性増強修飾を含むガイドRNAなどの、ガイドRNAを使用することによって遂行される、CRISPR機能の特異性を分析するための方法を提供する。方法は、サンプル中の標的配列および1つまたは複数のオフターゲット配列を同定するステップと(ここで、前記標的配列は、標的ポリヌクレオチドに含まれ、前記オフターゲット配列は、1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドに含まれている);ガイドRNAを使用してCRISPR機能を遂行するステップと;前記標的ポリヌクレオチドおよびオフターゲットポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されているオリゴヌクレオチドベイトのライブラリーを使用することによって、標的ポリヌクレオチドおよびオフターゲットポリヌクレオチドを捕捉するステップと;捕捉されたポリヌクレオチドを単離し、分析して、標的配列およびオフターゲット配列がCRISPR機能に起因して変化したかどうかを評価するステップとを含む。標的配列と非標的配列間の変化の相対的な程度は、ガイドRNAによって媒介されるCRISPR機能の特異性を示す。一部の実施形態では、捕捉されたポリヌクレオチドは、シークエンシングによって分析される。
【0194】
ポリヌクレオチドベイトは、標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されたベイト、およびオフターゲットポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されたベイトを含む。ベイトは、標的(またはオフターゲット)配列と直接ハイブリダイズすることができ、または標的(もしくはオフターゲット)配列の5’もしくは3のいずれかにまたは両方における、標的(もしくは非標的)配列付近の配列、例えば、標的(もしくはオフターゲット)配列の2000、1500、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30もしくは20塩基対以内の配列とハイブリダイズすることができることが企図される。一部のベイトは、部分的に標的(またはオフターゲット)配列と、および部分的に標的(またはオフターゲット)配列外と、ハイブリダイズすることができる。一部の実施形態では、ベイトのライブラリーは、標的(またはオフターゲット)配列とハイブリダイズするベイト、および標的(またはオフターゲット)配列付近とハイブリダイズするベイトの両方を含むことができる。一部の実施形態では、ライブラリーは、標的(またはオフターゲット)配列付近とハイブリダイズする標的のみを含み、標的(またはオフターゲット)配列とハイブリダイズするベイトを含まないか、または逆に、標的(またはオフターゲット)配列とハイブリダイズするベイトのみを含み、標的(またはオフターゲット)配列付近とハイブリダイズするベイトを含まない。一部の実施形態では、ベイトは、標的配列を中心とする約1000bpの領域、および各オフターゲット配列を中心とする約1000bpの領域とハイブリダイズする。一部の実施態様では、ベイトは、タイリングされる。
【0195】
特定の実施形態では、特異性増強修飾は、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、化学修飾は、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む。特定の実施形態では、2’修飾は、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される。特定の実施形態では、第1および第2の合成ガイドRNAは、ガイド配列部分内の異なるヌクレオチドに特異性増強修飾を含む。特定の実施形態では、特異性は、オンターゲット切断活性、オフターゲット切断活性、オン:オフ比、特異性スコア、またはそれらの組合せに基づいて判定される。特定の実施形態では、方法は、ガイド配列部分内の異なるヌクレオチドに特異性増強修飾を含む第1~第20の合成ガイドRNAを用意するステップと;前記合成ガイドRNAの各々を使用してgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;標的ポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させ、前記標的ポリヌクレオチドを切断するか、それにニックを入れるかまたは結合させ、各合成ガイドRNAの特異性を測定するステップと;最大の特異性増強をもたらす1つまたは複数の修飾された部分を同定するステップとを含む。特定の実施形態では、gRNAは、安定性増強性末端修飾をさらに含む。特定の実施形態では、安定性増強性末端修飾は、gRNAの5’末端および/または3’末端に2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸(FP)、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸(FSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエート(FS)、またはそれらの組合せを含む。
【0196】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、トランスフェクションによって細胞中に導入される。RNAトランスフェクションのための技術は、当技術分野で公知であり、エレクトロポレーションおよびリポフェクションを含む。RNAトランスフェクションのための有効な技術は、主に、細胞型に応じて変わる。例えば、HTC-116結腸癌細胞のトランスフェクションを記載し、商業的に得られた修飾されたmiRNAまたは前駆体miRNAのトランスフェクションのためにオリゴフェクタミン(Oligofectamine)(Invitrogen)を使用する、Lujambio et al.(Spanish National Cancer Centre)Cancer Res.Feb.2007を参照のこと。また、K562細胞のトランスフェクションを記載し、転写されたsgRNA(約60nt長)のトランスフェクションのために4D-Nucleofection(商標)(Lonza)エレクトロポレーションを使用する、Cho et al.(Seoul National Univ.)Nat.Biotechnol.Mar.2013も参照のこと。RNAのトランスフェクションの技術もまた、当技術分野で公知である。例えば、治療用RNAは、インベイシンタンパク質を用いてコーティングされた非病原性大腸菌(E.coli)中に送達されており(β-1インテグリンタンパク質を発現する細胞中への取り込みを容易にするために)、大腸菌(E.coli)は、shRNAが大腸菌(E.coli)から細胞質へ通過することを可能にするリステリオリシンO孔形成性タンパク質を発現するようにコードされる。Cho et al.(Seoul National Univ.)Nat.Biotechnol.Mar.2013も参照のこと。
【0197】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、細胞中に導入され、送達される。ガイドRNAの送達のために使用され得る技術として、生分解性ポリマー、リポソームまたはナノ粒子によるカプセル封入を利用するものが挙げられる。このようなポリマー、リポソームおよびナノ粒子は、静脈内に送達され得る。特定の実施形態では、in vivo送達のために、ガイドRNAは、組織部位中に注射される場合も、または全身に投与される場合もある。in vivo送達はまた、その全文が参照により本明細書の一部をなす、米国特許第5,032,401号および同5,607,677号および米国特許出願第2005/0281781号に記載されるものなどのβグルカン送達系によって達成され得る。特定の実施形態では、ガイドRNAまたはガイドRNAを含有する送達ビヒクルは、特定の組織または身体コンパートメントに標的化される。例えば、特定の実施形態では、外因性RNAをその他の組織に標的化するために、合成担体は、受容体取り込みのために細胞特異的リガンドまたはアプタマーを用いて修飾される(例えば、PEGを用いてコーティングされ、腫瘍細胞において高度に発現されるトランスフェリン受容体を介した取り込みのためにヒトトランスフェリンタンパク質を用いて官能基付与されたシクロデキストリンナノ粒子中に包まれたRNA)。さらなるアプローチが、本明細書において以下に記載されているか、または当技術分野で公知である。
【0198】
本発明は、Hendel et al.(2015)Nat.Biotechnol. 33:9,985-9(その全文が本願の一部をなす)に記載されるようにヒト細胞において試験されている。引用された文献では、修飾されたガイドRNAは、K562細胞、ヒト初代T細胞およびCD34+造血幹および前駆体細胞(HSPC)中に導入される。修飾されたガイドRNAは、非修飾ガイドRNAと比較して、ヒト初代T細胞およびCD34+HSPCを含むヒト細胞におけるゲノム編集効率を大幅に増強した。
【0199】
その他の使用の例として、以下に記載されるようなゲノム編集および遺伝子発現調節が挙げられる。
【0200】
[ゲノム編集]
一態様では、本発明は、in vivoまたはin vitro(「in vitro」は、限定されるものではないが、無細胞系、細胞溶解物、細胞の単離された成分、および生存している生物の外側の細胞を含む)において、DNA配列を修飾するためにゲノム編集するための方法を提供する。DNA配列は、染色体配列、エピソーム配列、プラスミド、ミトコンドリアDNA配列またはエンハンサー配列または非コーディングRNAのDNA配列などの機能的遺伝子間配列を含み得る。方法は、DNA配列を、(i)本明細書において記載されるガイドRNAまたはガイドRNA分子のセットと(ii)Casタンパク質とを接触させるステップを含む。特定の実施形態では、DNA配列は、細胞外にて接触する。特定の実施形態では、DNA配列は、細胞内のゲノム中に位置し、in vitroまたはin vivoにて接触する。特定の実施形態では、細胞は、生物または組織内にある。特定の実施形態では、細胞は、ヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、幹細胞、非哺乳動物脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、植物細胞、単細胞生物または胚である。特定の実施形態では、ガイドRNAは、Casタンパク質を、DNA配列中の標的化される部位に標的化するのに役立つ。特定の実施形態では、Casタンパク質は、標的化される部位でDNA配列の少なくとも1つの鎖を切断する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、標的化される部位でDNA配列の両鎖を切断する。
【0201】
特定の実施形態では、方法は、Casタンパク質を細胞または別の系の中に導入することをさらに含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、精製された、または精製されていないタンパク質として導入される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードするmRNAによって導入される。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードする直鎖または環状DNAによって導入される。特定の実施形態では、細胞または系は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードする核酸を含む。
【0202】
特定の実施形態では、二本鎖切断は、エラーが起こりやすい(error-prone)非相同末端結合(「NHEJ」)の修復プロセスによって修復され得る。特定の実施形態では、二本鎖切断は、相同性指向修復(HDR)プロセスによって修復され得、その結果、ドナーポリヌクレオチド中のドナー配列は、標的化されるDNA配列中に組み込まれるか、それと交換され得る。
【0203】
特定の実施形態では、方法は、少なくとも1種のドナーポリヌクレオチドを細胞または系の中に導入するステップをさらに含む。特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、DNA配列中の標的化される部位のいずれかの側の配列と実質的な配列同一性を有する少なくとも1種の相同配列を含む。特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは相同組換えなどの相同性指向修復によって、DNA配列中に組み込まれる、またはそれと交換されるドナー配列を含む。
【0204】
特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、上流相同配列および下流相同配列を含み、その各々は、それぞれ、DNA配列中の標的化される部位の上流および下流に位置する配列に対して実質的な配列同一性を有する。これらの配列類似性によって、例えば、ドナーポリヌクレオチドと標的化されるDNA配列間の相同組換えが可能となり、その結果、ドナー配列が、標的化されるDNA配列中に組み込まれ得る(またはそれと交換され得る)。
【0205】
特定の実施形態では、DNA配列中の標的部位(複数でもよい)は、障害を引き起こすか、またはそれと関連し得る、突然変異、例えば、点突然変異、転位置または逆位に広がるか、または隣接する。特定の実施形態では、方法は、細胞または系の中に、(i)突然変異の野生型対応物と(ii)DNA配列中の標的化される部位の片側上の配列と実質的な配列同一性を有する少なくとも1つの相同配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドとを導入することによって、突然変異を補正するステップを含む。特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、DNA配列中の標的化される部位の両鎖上の配列と実質的な配列同一性を有する相同配列を含む。
【0206】
特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、相同組換えなどの相同性指向修復プロセスによって、標的化されるDNA配列中に組み込まれ得るまたはそれと交換され得る外因性配列を含む。特定の実施形態では、外因性配列は、任意選択的に、外因性プロモーター制御配列と作動可能に連結されるタンパク質コーディング遺伝子を含む。したがって、特定の実施形態では、外因性配列の組込みの際に、細胞は、組み込まれた遺伝子によってコードされるタンパク質を発現し得る。特定の実施形態では、外因性配列は、レシピエント細胞または系におけるその発現が外因性プロモーター制御配列によって調節されるように、標的化されたDNA配列中に組み込まれる。標的化されたDNA配列中への外因性遺伝子の組込みは、「ノックイン」と呼ばれる。その他の実施形態では、外因性配列は、転写制御配列、別の発現制御配列、RNAコード配列などであり得る。
【0207】
特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、標的化される部位の、またはその付近のDNA配列の一部と本質的に同一であるが、少なくとも1つのヌクレオチド変更を含む配列を含む。例えば、特定の実施形態では、ドナー配列は、標的化される部位の、またはその付近のDNA配列の修飾された、または突然変異された型を含み、その結果、標的化される部位の組込みまたはそれとの交換の際に、得られた標的化される部位の配列は、少なくとも1つのヌクレオチド変更を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオチド変更は、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、1つまたは複数のヌクレオチドの置換またはそれらの組合せである。修飾された配列の組込みの結果として、細胞は、標的化されたDNA配列から修飾された遺伝子産物を生成し得る。
【0208】
特定の実施形態では、方法は、マルチプレックス適用のためのものである。特定の実施形態では、方法は、細胞または系の中にガイドRNAライブラリーを導入することを含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも10種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも100種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも1,000種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも10,000種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも100,000種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも1,000,000種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも10種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも10種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも100種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも100種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも1,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも1,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも10,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも10,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも100,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも100,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも1,000,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも1,000,000種の異なる配列を標的化する。
【0209】
[ヒトおよび哺乳動物細胞におけるゲノム編集]
本発明の実施形態は、哺乳動物細胞において、標的ポリヌクレオチド、例えば、DNA配列を修飾するためのゲノム編集するための方法において有用である。
【0210】
特定の実施形態では、DNA配列は、染色体配列である。特定の実施形態では、DNA配列は、タンパク質コード配列である。特定の実施形態では、DNA配列は、エンハンサー配列または非コード配列などの機能的遺伝子間配列である。特定の実施形態では、DNAは、ヒト遺伝子の一部である。いくつかのこのような実施形態では、ヒト遺伝子は、クラスリン軽鎖(CLTA1)遺伝子、ヒトインターロイキン2受容体γ(IL2RG)遺伝子、ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CLTA4)遺伝子、ヒト血管内皮増殖因子A遺伝子(VEGFA)、または、鎌形赤血球貧血およびサラセミアに関与する突然変異を有し得るヒトヘモグロビンβ(HBB)遺伝子である。したがって、特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、HBBポリヌクレオチド、VEGFAポリヌクレオチド、IL2RGポリヌクレオチド、CLTA1ポリヌクレオチド、またはCLTA4ポリヌクレオチドである。
【0211】
特定の実施形態では、合成ガイドRNAは、HBB、IL2RG、CLTA1、VEGFAまたはCLTA4ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる、ガイド配列を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-Nからなり、Nは、-10から0の間の整数であり、前記ガイド配列は、ヌクレオチド4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nまたは16-Nに少なくとも1つの特異性増強修飾を含む。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド11-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド5-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド7-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド10-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド9-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、上記標的ポリヌクレオチドのうちの1つとハイブリダイズすることができるガイド配列は、ヌクレオチド4-Nに化学修飾を有する。特定の実施形態では、Nは、ゼロである。
【0212】
特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~19からなり、ヌクレオチド3、4、6、8、9または10のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~18からなり、ヌクレオチド2、3、5、7、8または9のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~17からなり、ヌクレオチド1、2、4、6、7または8のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~16からなり、ヌクレオチド1、3、5、6または7のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~15からなり、ヌクレオチド2、4、5または6のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~14からなり、ヌクレオチド1、3、4または5のうちの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む。特定の実施形態では、化学修飾は、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、化学修飾は、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾;およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む。特定の実施形態では、2’修飾は、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される。
【0213】
特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。いくつかのこのような実施形態では、ヒト細胞は、初代ヒト細胞である。さらなる実施形態では、初代ヒト細胞は、ヒト初代T細胞である。ヒト初代T細胞は、刺激されている場合も、刺激されていない場合もある。特定の実施形態では、ヒト細胞は、CD34+造血幹および前駆体細胞(HSPC)などの幹/前駆体細胞である。特定の実施形態では、ヒト細胞は、培養細胞株、例えば、商業的に得ることができるものなどに由来する。例示的な細胞株としては、ヒト骨髄性白血病株であるK562細胞が挙げられる。
【0214】
特定の実施形態では、細胞は、生存生物の内部にある。特定のその他の実施形態では、細胞は、生存生物の外部にある。
【0215】
方法は、(i)本明細書において記載されるガイドRNAまたはガイドRNA分子のセットおよび(ii)Casタンパク質と、DNA配列を接触させるステップを含む。
【0216】
特定の実施形態では、方法は、ガイドRNAを細胞中に導入または送達するステップをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、ガイドRNAは、細胞中にトランスフェクションによって導入される。RNAトランスフェクションのための技術は、当技術分野で公知であり、エレクトロポレーションおよびリポフェクションが挙げられる。その他の実施形態では、ガイドRNAは、細胞(より詳しくは、細胞核)中にヌクレオフェクションによって導入される。ヌクレオフェクションのための技術は、当技術分野で公知であり、Lonza Nucleofector 2bまたはLonza 4D-Nucleofectorなどのヌクレオフェクション装置および関連試薬を利用し得る。
【0217】
特定の実施形態では、方法は、Casタンパク質を細胞中に導入または送達するステップをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、Casタンパク質は、精製または非精製タンパク質として導入される。その他の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードするmRNAによって導入される。いくつかのこのような実施形態では、Casタンパク質をコードするmRNAは、細胞中にトランスフェクションによって導入される。その他の実施形態では、Casタンパク質をコードするmRNAは、細胞(より詳しくは、細胞核)中にヌクレオフェクションによって導入される。
【0218】
特定の実施形態では、方法は、Casタンパク質が、ガイドRNAとの複合体で細胞中に導入されるようなリボヌクレオタンパク質(RNP)ベースの送達を使用する。例えば、Cas9タンパク質は、Cas9:gRNA複合体でガイドRNAと複合体形成され得、これは、gRNAおよびCasタンパク質の同時送達を可能にする。例えば、Cas:gRNA複合体は、細胞中にヌクレオフェクトされ得る。
【0219】
特定の実施形態では、方法は、すべてのRNA送達プラットフォームを使用する。例えば、いくつかのこのような実施形態では、ガイドRNAおよびCasタンパク質をコードするmRNAは、同時にまたは実質的に同時に細胞中に導入される(例えば、同時トランスフェクションまたは同時ヌクレオフェクションによって)。特定の実施形態では、CasのmRNAおよび修飾されたgRNAの同時送達は、CasのmRNAおよび非修飾gRNAの同時送達と比較して、より高い編集頻度をもたらす。特に、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)を有するgRNAは、非修飾gRNAと比較してより高い編集頻度を提供する。
【0220】
特定の実施形態では、ガイドRNAおよびCasタンパク質をコードするmRNAは、細胞中に逐次導入される、すなわち、ガイドRNAおよびCasタンパク質をコードするmRNAは、細胞中に異なる時点で導入される。各薬剤の導入間の期間は、数分(またはそれ未満)から数時間または数日で変わり得る。例えば、いくつかのこのような実施形態では、gRNAは最初に送達され、続いて、CasのmRNAが4、8、12または24時間後に送達される。その他のこのような実施形態では、CasのmRNAが最初に送達され、続いて、gRNAが4、8、12または24時間後に送達される。いくつかの特定の実施形態では、最初の修飾されたgRNAの送達、続いてCasのmRNAの送達が、非修飾gRNAとそれに続くCasのmRNAの送達と比較して、より高い編集頻度をもたらす。
【0221】
特定の実施形態では、gRNAは、細胞中に、Casタンパク質をコードするDNAプラスミドと一緒に導入される。いくつかのこのような実施形態では、gRNAおよびCasタンパク質をコードするDNAプラスミドは、細胞中にヌクレオフェクションによって導入される。いくつかの特定の実施形態では、RNPベースの送達プラットフォームまたは全RNA送達プラットフォームは、DNAプラスミドベースの送達系よりも、初代細胞において低い細胞毒性を提供する。
【0222】
特定の実施形態では、方法は、ヒト初代T細胞およびCD34+HSPCを含むヒト細胞において大幅に増強されたゲノム編集効率を提供する。
【0223】
特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、非修飾gRNAと比較して、変異原性NHEJおよび遺伝子破壊を示し得る、挿入または欠失(インデル)の頻度を増大する。特に、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)を有する修飾されたgRNAは、非修飾gRNAと比較してインデルの頻度を増大する。
【0224】
特定の実施形態では、修飾されたgRNAおよびCasのmRNAの、ヒト初代T細胞への同時送達は、非修飾gRNAおよびCasのmRNAの同時送達と比較して、インデルの頻度を増大する。特に、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)を有する修飾されたgRNAは、非修飾gRNAと比較して、ヒト初代T細胞においてインデルの頻度を増大する。
【0225】
特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、非修飾gRNAと比較してgRNA安定性を改善する。1つの例として、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル(「M」)を有するgRNAは、非修飾gRNAを上回って、ヌクレアーゼに対する安定性を中程度に改善し、また塩基対形成の熱安定性を改善する。別の例として、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)を有するgRNAは、非修飾gRNAと比較して、ヌクレアーゼに対する安全性を劇的に改善する。gRNA末端修飾は、エキソヌクレアーゼに対する細胞内安定性を増強し、従って、CasのmRNAおよびgRNAが、細胞または細胞溶解物中に同時送達されるか、逐次送達される場合にゲノム編集の有効性の増大を可能にすることが考慮される。特定の実施形態では、末端における安定性増強修飾は、ガイド配列が同一の末端を含む場合、特異性増強修飾としても役立つことができる。特定の実施形態では、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸(FP)、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸(FSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエート(FS)、2’-O-(2-メトキシエチル)-3’-ホスホノ酢酸、2’-O-(2-メトキシエチル)-チオホスホノ酢酸、2’-O-(2-メトキシエチル)-3’-ホスホロチオエート、またはそれらの組合せを含む末端修飾は、本発明の方法の安定性および特異性を増大させる。特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、標的遺伝子組換えを刺激し、これは、順に、例えば、相同組換えまたはNHEJによる遺伝子編集を可能にする。特に、5’および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込まれた2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(「MS」)、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)または2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)を有するgRNAは、非修飾gRNAよりも高いレベルの相同組換えを刺激する。
【0226】
特定の実施形態では、修飾されたgRNAは、高い特異性を保持する。特定の実施形態では、非修飾gRNAと比較されるように、修飾されたgRNAを用いた場合に、オンターゲット対オフターゲットのインデル頻度の比は改善される。特定の実施形態では、Casタンパク質とのRNP複合体で送達された修飾されたgRNAは、DNAプラスミドベースの送達系と比較して大幅に良好なオンターゲット対オフターゲット比を提供する。
【0227】
[遺伝子発現調節]
特定の実施形態では、本明細書において記載されるガイドRNAは、対象の遺伝子の転写または発現を調節するために使用される。例えば、特定の実施形態では、遺伝子の転写を増大するために、Casタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損Cas9)および転写アクチベーターポリペプチドを含む融合タンパク質が使用される。同様に、特定の実施形態では、Casタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損Cas9)およびリプレッサーポリペプチドを含む融合タンパク質は、遺伝子の転写を干渉することによって遺伝子発現をノックダウンするために使用される。
【0228】
少なくとも1つの態様では、本発明は、in vivoまたはin vitroで対象の遺伝子の発現を調節するための方法を提供する。方法は、細胞または別の系の中に、(i)本明細書において記載される合成ガイドRNAおよび(ii)融合タンパク質を導入するステップを含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、Casタンパク質および転写活性化ドメイン、転写リプレッサードメインまたはエピジェニック修飾ドメインなどのエフェクタードメインを含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヌルヌクレアーゼであるCas9タンパク質などの突然変異したCasタンパク質を含む。特定の実施形態では、Casタンパク質は、D10A、H840Aおよび/またはN863Aなどの1つまたは複数の突然変異を含有する。
【0229】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、精製または非精製タンパク質として細胞または系の中に導入される。特定の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質をコードするmRNAによって細胞または系の中に導入される。特定の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする直鎖または環状DNAによって細胞または系の中に導入される。
【0230】
特定の実施形態では、ガイドRNAは、融合タンパク質を、染色体配列、エピソーム配列、プラスミド、ミトコンドリアDNA配列またはエンハンサーなどの機能的遺伝子間配列または非コーディングRNAのDNA配列を含む特定の標的ポリヌクレオチドに指向させるのに役立つ。特定の実施形態では、エフェクタードメインは、標的ポリヌクレオチドにおいて配列の発現を調節する。遺伝子発現を調節するためのガイドRNAは、機能的RNAをコードする任意の所望の内因性遺伝子または配列を標的化するように設計され得る。ゲノム標的配列は、内因性遺伝子の転写開始部位の付近で、あるいは、内因性遺伝子の翻訳開始部位の付近で選択され得る。特定の実施形態では、標的配列は、遺伝子の「プロモーター近位」領域と伝統的に呼ばれるDNAの領域中にある。特定の実施形態では、標的配列は、転写開始部位の約1,000塩基対上流から転写開始部位の約1,000塩基対下流の領域中にある。特定の実施形態では、標的配列は、遺伝子(例えば、別の染色体上の)の転写のための開始部位から離れている。
【0231】
特定の実施形態では、方法は、マルチプレックス適用のためのものである。特定の実施形態では、方法は、ガイドRNAのライブラリーを細胞または系の中に導入することを含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000または少なくとも1,000,000種の唯一無二なガイド配列を含む。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも10種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも10種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも100種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも100種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも1,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも1,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも10,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも10,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも100,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも100,000種の異なる配列を標的化する。特定の実施形態では、ライブラリーは、1種または複数のポリヌクレオチド内の少なくとも1,000,000種の異なるポリヌクレオチドまたは少なくとも1,000,000種の異なる配列を標的化する。
【0232】
[キット]
一態様では、本発明は、gRNA:Casタンパク質複合体を製造するステップ、および/または標的ポリヌクレオチドを結合、ニッキングもしくは切断するためのその活性を支持するステップを含む、上記の方法を実施するための試薬を含有するキットを提供する。特定の実施形態では、本明細書において開示される方法の1種または複数の反応成分、例えば、1種または複数のガイドRNAおよびCasタンパク質は、使用のためのキットの形態で供給され得る。特定の実施形態では、キットは、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードする核酸および本明細書において記載される1種または複数のガイドRNAまたはガイドRNAのライブラリーのセットを含む。特定の実施形態では、キットは、1種または複数のその他の反応成分を含む。特定の実施形態では、1種または複数の反応成分の適当な量が、1つまたは複数の容器中で提供されるか、または基板上に保持される。
【0233】
特定の実施形態では、本発明は、異なる修飾、またはガイド配列内の異なる位置での修飾を除いて同一である、少なくとも2つの合成ガイドRNAを含む合成ガイドRNAを選択するためのキットを提供する。各ガイドRNAは、(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントとを含み;前記ガイド配列は、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-N(Nは、-10から10の間、任意選択的に10から6の間の整数である)を含み、および該ガイド配列内のヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含み、前記少なくとも2つの合成ガイドRNAは、少なくとも1つの異なる特異性増強修飾を有する点、または前記ガイド配列内の少なくとも1つの異なる位置に特異性増強修飾を有する点で、互いに異なる。キットはまた、Casタンパク質を含むか、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、キット内の各合成ガイドRNAは、異なるヌクレオチドに特異性増強修飾を含む。特定の実施形態では、キットは、各々のものがガイド配列内の異なるヌクレオチド位置に修飾を有する、一連の合成ガイドRNAを含む。特定の実施形態では、キットは、ガイド配列内のヌクレオチドの数と同数の異なるガイドRNAを有する。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9である。特定の実施形態では、特異性増強修飾は、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、もしくは2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、特異性増強修飾は、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む。特定の実施形態では、2’修飾は、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される。特定の実施形態では、ガイドRNAは、合成単一ガイドRNAである。
【0234】
キットのさらなる成分の例は、これらに限定されないが、1種または複数の異なるポリメラーゼ、1種または複数の宿主細胞、外来核酸を宿主細胞中に導入するための1種または複数の試薬、ガイドRNAおよび/もしくはCasのmRNAまたはタンパク質の発現を検出するための、または標的核酸の状態を確認するための1種または複数の試薬(例えば、プローブまたはPCRプライマー)およびバッファー、トランスフェクション試薬または反応のための培養培地(1×またはより濃縮された形態の)を含む。特定の実施形態では、キットは、生化学的および物理的支持体、終結、修飾および/または消化試薬、浸透圧調節物質ならびに反応、トランスフェクションおよび/または検出のための装置の成分のうち、1種または複数を含む。
【0235】
使用される反応成分は、種々の形態で提供され得る。例えば、成分(例えば、酵素、RNA、プローブおよび/またはプライマー)は、水溶液中に懸濁されるか、またはビーズに結合されるか、またはフリーズドライもしくは凍結乾燥された粉末もしくはペレットとしてであり得る。後者の場合には、成分は、再構成されると、アッセイにおいて使用するための成分の完全混合物を形成する。本発明のキットは、任意の適した温度で提供され得る。例えば、液体中にタンパク質成分またはその複合体を含有するキットの貯蔵のためには、それらが0℃未満で、好ましくは、約-20℃で、おそらくは、グリセロールまたはその他の適した凍結防止剤を含有する凍結耐性溶液中で提供され、維持されることが好ましい。
【0236】
キットまたは系は、少なくとも1種のアッセイにとって十分な量で、本明細書において記載される成分の任意の組合せを含有し得る。いくつかの適用では、1種または複数の反応成分は、個々の、通常、ディスポーザブルのチューブまたは同等の容器中に予め測定された単回使用量で提供され得る。このような配置を用いて、標的核酸または標的核酸を含有するサンプルもしくは細胞を、個々のチューブに直接添加することによってRNAによってガイドされるヌクレアーゼ反応が実施され得る。キット中に供給される成分の量は任意の適当な量であり得、製品が向けられる市場に応じて変わり得る。成分が供給される容器(複数でもよい)は、供給された形態を保持可能である任意の従来の容器、例えば、マイクロチューブ、マイクロタイタープレート、アンプル、ボトルまたは流体装置、カートリッジ、ラテラルフローまたはその他の同様の装置などの複合的試験装置であり得る。
【0237】
キットはまた、容器または容器の組合せを保持するためのパッケージング材料を含み得る。このようなキットおよび系の通常のパッケージング材料は、種々の立体配置のいずれかの中に(例えば、バイアル、マイクロタイタープレートウェル、マイクロアレイ中など)反応成分または検出プローブを保持する固体マトリクス(例えば、ガラス、プラスチック、紙、ホイル、微粒子など)を含む。キットは、成分の使用のための有形の形態で記録された使用説明書をさらに含み得る。
【実施例】
【0238】
[実施例1]
生理的塩条件で結合エネルギーに対する化学修飾の効果を評価するために、20ヌクレオチドガイド配列を有する43ヌクレオチドのcrRNAを作製した。DNAオリゴヌクレオチドの各末端上に突出している10ヌクレオチドを含む相補的40ヌクレオチドDNAオリゴヌクレオチドとcrRNAを混合することによって、二本鎖を形成した。その二本鎖の融解温度(「Tm」)を測定した。サンプリングおよびロッキング領域にいくつかの連続する修飾を有し、20ntガイド配列内の位置10に介在または「スペーサー」ヌクレオチドを有する、7つのさらなる43ntのcrRNAを作製した。
図6Aは、修飾の種類および配置を示す。エキソヌクレアーゼ耐性修飾は、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)であり、スペーサーは、非修飾RNAヌクレオチドであった。各修飾crRNA601を、相補的な40ntのDNAオリゴヌクレオチド603と混合することによって二本鎖を個々に形成し、RNA鎖に修飾を含有する各RNA/DNA二本鎖605の融解温度を測定して、種々の修飾が生理的塩条件下で結合エネルギーにもたらす効果を定量した。
【0239】
修飾が二本鎖融解の協同性にもたらす効果は、融解曲線の傾きを測定することによって定量的に評価することができ、より大きい傾きは、結合解除に関して(およびしたがって、平衡可逆性の十分に確証されている原理に従って逆過程中には同じく結合に関して)より大きい協同性を示す。
図6Bは、非修飾gRNAについての融解曲線を示し、
図6C~6Gは、20ntガイド配列部分中のヌクレオチド6~9における種々の種類の修飾についての融解曲線を示す。2’-O-メチル(「M」)および2’-O-メチルホスホロチオエート(「MS」)の付加は、修飾あたり約0.2℃、結合エネルギーを増加させたが、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)は、修飾あたり1℃、Tmを低下または結合エネルギーを減少させ、2’-O-メチル-3’-チオPACE(「MSP」)は、修飾あたり1.4℃、Tmを低下させた。
図7は、gRNAを、17、18もしくは19ヌクレオチドに末端切除した、または21もしくは22ヌクレオチドの長さに伸長したときの、20塩基対gRNA/DNA二本鎖の融解温度の変化を示すグラフである。測定は、生理的塩濃度で実施した。測定は、20ヌクレオチドガイド配列の伸長または末端切除について塩基対あたり約2℃の融解温度の変化を示した。
【0240】
[実施例2]
crRNAのガイド配列内のヌクレオチド9にリンカーまたはリンカー様修飾を含有する実験的crRNAを使用して、さらなる融解温度測定を実施した。リンカーまたはリンカー様修飾は、ULNA(アンロックド核酸)、脱塩基スペーサー、-PO4Y-(CR3
2)m-PO4Y-を含むアルキレンスペーサー、または(-PO4Y-(CR3
2CR3
2O)n-PO3Y-)を含むエチレングリコールスペーサー(前記式中、mは、2、3または4であり、nは、1、2または3であり、各R3は、H、アルキルおよび置換アルキルからなる群から独立に選択され、各Yは、Hまたは負の電荷である)を含んだ。例えば、特定の実施形態では、アルキレンスペーサーは、mが3である、「C3スペーサー」である。その他の実施形態では、エチレングリコールスペーサーは、nが3である、「トリPEGスペーサー」である。これらの修飾はまた、ハイブリダイゼーションの協同性を低下させる、鎖へのより大きい可動性の付与によって、結合エネルギーを減少させる。
【0241】
【0242】
これらの融解温度測定の結果を表1に示す。
【0243】
【0244】
[実施例3~7]
化学合成されたガイドRNAの、DNA標的配列に結合し、切断する能力を評価するために、およびCas9媒介性切断に対する種々の修飾の効果を評価するために、in vitro切断アッセイを使用した。簡単に述べると、表2および7に示す標的ポリヌクレオチド配列(オン)またはオフターゲットポリヌクレオチド(オフ)を含む、PAMによりアドレス可能な(PAM-addressable)DNA構築物を、種々の標的遺伝子のプラスミドにより保持されるヒト配列の分取PCR増幅によって調製した。遺伝子を選択的に編集する本組成物および方法の能力を実証するための例示的な遺伝子として、ヒトクラスリン軽鎖CLTA遺伝子、ヒトヘモグロビンベータ(HBB)遺伝子、ヒトインターロイキン2受容体サブユニットガンマ(IL2RG)遺伝子、およびヒト細胞障害性Tリンパ球関連タンパク質4(CLTA4)遺伝子を、標的遺伝子として使用した。これらは、標的遺伝子を評価および編集するための本明細書において開示される一般的アプローチの代表である。
【0245】
表3~6は、合成ガイドRNAを示す。ガイドRNAの大部分において、5’末端の最初の20ヌクレオチドは、標的DNA内の標的配列と相補的であり、つまりこれらの相補的ヌクレオチドがガイド配列を構成する。一部のガイドRNAには、標的配列と相補的でないオーバーハングまたは伸長部が、ガイド配列の5’末端に存在した。一部のガイドRNAでは、ガイド配列の5’末端を、ヌクレオチド1、または1および2、または1および2および3が存在しないように末端切除した。オンターゲット構築物(「オン」)は、20nt標的配列を含む。オフターゲット構築物(「オフ」)は、1、2または3ヌクレオチド異なる、標的DNAとほぼ同一の20ヌクレオチドを含む。したがって、gRNAは、オフターゲット構築物の配列と完全にではないがほぼ相補的であった。オフターゲット構築物は、ヒトゲノム内に存在することが公知の遺伝子配列に基づいている。
【0246】
gRNAを、Dellinger et al.(2011)J.Am.Chem.Soc.,133,11540-56に記載される手順に従って2’-O-チオノカルバメート保護されたヌクレオシドホスホラミダイトを使用してABI 394 Synthesizer(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)で合成した。2’-O-メチルホスホラミダイトを、2’-O-チオノカルバメート保護されたホスホラミダイトと同一の条件下でRNAオリゴマー中に組み込んだ。チオホスホノ酢酸(チオPACE)修飾されたRNAの合成のために使用された2’-O-メチル-3’-O-(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ酢酸-1,1-ジメチルシアノエチルエステル-5’-O-ジメトキシトリチルヌクレオシドは、公開された方法に本質的にしたがって合成した。Dellinger et al.(2003)J.Am.Chem.Soc.125,940-50およびThrelfall et al.(2012)Org.Biomol.Chem.10,74-54を参照のこと。
【0247】
すべてのオリゴヌクレオチドを、逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して精製し、Agilent 6520 Q-TOF(飛行時間型)質量分析計(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)に連結されたAgilent 1290 Infinity series LC系を使用する液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によって分析した。sgRNAの合成および精製の収率は、LC-MS由来の総イオンクロマトグラムから得られた質量分析スペクトルの逆重畳積分を使用して推定した。100マーのsgRNAの化学合成は、通常、名目上1マイクロモル規模の合成から25~35%全長生成物をもたらした。イオン対形成バッファー条件を使用する逆相HPLC精製は、通常、粗生成物からの20%の収率を与え、最終sgRNAの推定される純度は、90%~95%の範囲にある。
【0248】
DNA標的構築物は、表2に示す標的配列(オンターゲット配列としても公知であり、「ON」として特定される)およびオフターゲット配列(「オフ」)を含んだ。オフターゲット配列中の標的配列と異なる部分は、太字のイタリック体であり、PMA配列(示される場合)は、下線付きである。
【0249】
【0250】
HBBオフ1は、可能性ある標的配列の最初の3つのヌクレオチドがHBBオンと異なることに留意されたい。したがって、17ntのガイド配列を得るためにその20ntのガイド配列の5’末端の3ヌクレオチドを末端切除したgRNAは、HBB-オン標的配列とHBB-オフ1標的配列間の識別ができない。実施例3~7において使用したDNA標的構築物の完全配列を下記の表8に示す。
【0251】
比較のために、20ヌクレオチドから18または17ヌクレオチドへのgRNAのガイド配列の末端切除を有するガイドRNAを、標的遺伝子部位の切断の公知オフターゲット部位の切断に対する比の評価とともに含める。Yanfang et al.(2014)による教示および結論とは対照的に、末端切除は、特定のオフターゲット部位の切断には効果があるが、その他のオフターゲット部位での切断には効果がないことが分った。Yanfang et al.(2014)の教示にもかかわらず、本発明者らは、増強された特異性を有し、ガイド配列の末端切除を有しない、標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するCRISPR-Casのための新規化合物および方法を模索し、同定した。
【0252】
20μLの反応容量中で、2.5nMの線形化DNA標的を、50nMのsgRNA、40nMの組換え精製Cas9タンパク質(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)、Agilent製)および0.8mMのMgCl2の存在下、pH7.6で、37℃で1時間インキュベートした。完了し次第、0.5μLのRNace It(Agilent製)を添加し、インキュベーションを37℃で5分間、次いで、70℃で15分間継続した。粗生成物を、Agilent Bioanalyzer 2200で分析のためにDNA 1000もしくはDNA 7500 LabChipにロードするか、またはAgilent TapeStation 2200もしくは4200での分析のためにゲノムDNA ScreenTapeもしくはD5000 ScreenTapeにロードした。精密検査ステップは、標的DNAとの結合からCas9を解放させるのに役立ち、これを切断についてアッセイした。
【0253】
切断収率は、式a/(a+b)×100(式中、aは、2種の切断生成物のバンド強度の合計であり、bは、存在する場合、残存する未切断DNAである)によって算出した。100%の切断パーセンテージは、検出限界内で、標的DNA構築物のすべてが切断されたことを意味する。
【0254】
[実施例3]
ヒトCLTA遺伝子内の「CLTA1」遺伝子座を標的とする32個の一連のsgRNAを作製した。簡単に言えば、個々のRNA鎖を合成し、HPLC精製した。すべてのオリゴヌクレオチドをHPLC分析による完全長鎖の純度および質量分析による化学組成に基づいて品質管理承認した。表3は、種々のCLTA1-sgRNAの配列を示す。表3は、sgRNAの配列をエントリー1~31として示し、この表は、1つまたは複数の特異性増強修飾を含有する本gRNAの特定の実施形態を開示する。エントリー1は、修飾されておらず、比較例として役立つ。エントリー2は、ガイド配列内のヌクレオチド1、2および3にMS修飾を含有する。エントリー3は、ガイド配列内のヌクレオチド1、2および3にMSP修飾を含有する。エントリー4は、ガイド配列のヌクレオチド1にMSP修飾を含有する。エントリー5および6は、その20ntガイド配列が5’末端で18ヌクレオチドガイド配列または17ヌクレオチドガイド配列へと末端切除されたgRNAをそれぞれ有する比較例である。エントリー7および8は、20ntガイド配列の5’末端にそれぞれ1または2ヌクレオチドオーバーハングがある非修飾gRNAを有する比較例である。エントリー9、10、11、12および13は、ガイド配列内のヌクレオチド1、ヌクレオチド1~2、ヌクレオチド1~3、ヌクレオチド1~4、およびヌクレオチド1~5にそれぞれMP修飾を含有する。エントリー14および15は、ヌクレオチドを一般にポリクレオチドの5’末端から数えることに留意して、gRNAのtracrRNA内の、sgRNAの3’末端から数えてヌクレオチド2~5、またはsgRNAの3’末端から数えてヌクレオチド2~6に、MP修飾をそれぞれ含有する。したがって、エントリー14および15について記載する数え方は、通則の例外である。エントリー16および17は、20ntガイド配列内のヌクレオチド1~2にMP修飾を含有し、MP修飾されたCまたはGヌクレオチドオーバーハングをそれぞれ有する。エントリー18および19は、20ntガイド配列内のヌクレオチド1~3にMP修飾を含有し、MP修飾されたUCまたはAGジヌクレオチドオーバーハングをそれぞれ有する。エントリー20および21は、20ntガイド配列内のヌクレオチド1~4にMP修飾を含有し、MP修飾されたCUCまたはGAGトリヌクレオチドオーバーハングをそれぞれ有し、加えて、gRNAのtracrRNA内の、sgRNAの3’末端にMP修飾を有する。エントリー22~25は、ガイド配列内のヌクレオチド20、19、18または17にMP修飾を含有する。エントリー26は、ガイド配列内のヌクレオチド18および17にMP修飾をそれぞれ含有する。エントリー27~29は、ガイド配列内のヌクレオチド19、18または17にM修飾をそれぞれ含有する。エントリー30は、ガイド配列内のヌクレオチド18および17にM修飾を含有する。エントリー31は、ガイド配列内のヌクレオチド1~20にM修飾を含有する。エントリー32は、20ntガイド配列内のヌクレオチド1~7、9~11、13~14および20にM修飾を含有し、加えて、sgRNA配列の残部にわたっていくつかの選ばれた位置に、特に、ヌクレオチド30~31、33、35~36、39、42、45、47、50、60、65~66、70、71、76~77、80~82、90、93、95~96、100~101、104、および106~112に、M修飾を含有する。
【0255】
【0256】
図8Aは、Cas9媒介性標的ポリヌクレオチド切断対オフターゲットポリヌクレオチド切断に関しての表3からのgRNA(配列番号12~42および124)における化学修飾の影響を示す。より詳細には、CLTA1標的ポリヌクレオチド配列(オンターゲット配列、または「オン」)および比較オフターゲットポリヌクレオチド配列(オフ1およびオフ3)の切断パーセンテージを数値によっておよび棒グラフ形式で示す。アッセイした各合成sgRNA(配列番号12~42および124)について算出した、切断された標的ポリヌクレオチドの切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する比を用いて、
図8Aの結果から
図8Bを導き出す。アッセイしたsgRNAごとにそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを各比に掛けることによって、特異性スコアも算出する。
図8Bのエントリー6、12、13、20、21および31の陰付きの値は、標的ポリヌクレオチド配列(ON1)についての切断収率のわずかな乃至は相当な低減の結果として得られる。重要なこととして、オフターゲットポリヌクレオシドの一方または両方について低減がさらに大きく、2.0より大きいオン:オフ切断比が得られた。陰付きの値は、特異性の少なくとも2倍の改善を得ることができることを示す。この実験で試験した種々の化学修飾および組合せの中で、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾は、特に、ガイド配列内の最適な数の位置にそれを組み込んだとき、高いオンターゲット切断レベルを保持しながら最大の所望されるオフターゲット切断減少効果をもたらした。これらの実施例は、本教示の実施形態として役立つ。
【0257】
[実施例4]
図9Aに示す例について、オフターゲット切断活性に対するオンターゲット切断活性によって判断して特異性の改善を生じさせる修飾位置が分るように、20ntガイド配列を横断して単一または三重のMP修飾の「ウォーキング」を行った。表4に列挙するように、ヒトCLTA遺伝子内の「CLTA4」遺伝子座を標的とする28個の一連のsgRNA(配列番号43~70)を作製し、これらの実験的sgRNAは、最後の(すなわち最も3’側の)ヌクレオチド間連結を含むsgRNAの3’末端のtracrRNA領域内の、ヌクレオチド1および最後から2番目のヌクレオチドにもMP修飾を有することに加えて、ガイド配列内の1つまたは複数の位置に2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾を含有した。したがって、そのような修飾sgRNAをエキソヌクレアーゼによる切断から保護するように、末端ヌクレオチド間連結の修飾を設計した。個々のRNA鎖を合成し、HPLC精製した。すべてのオリゴヌクレオチドをHPLC分析による完全長鎖純度および質量分析による化学組成に基づいて品質管理承認した。CLTA4標的ポリヌクレオチド配列(「オン」)および比較オフターゲットポリヌクレオチド配列(オフ1、オフ2およびオフ3)の切断パーセンテージを数値によっておよび棒グラフ形式で
図9Aに示す。アッセイした各合成sgRNA(配列番号43~70)について算出した、切断された標的ポリヌクレオチドの切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する比を用いて、
図9Aの結果から
図9Bを導き出す。「ラージ」と記録されている比は、オフターゲットDNAポリヌクレオチドの切断がそれらの個別のアッセイにおいて検出されなかったことを示す。上記の
図8Bについての説明の中で述べたように、特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出する。
図9Bによって示される例では、特異性スコア≧2.0に陰を付けて、陰付きでないスコアに対する特異性の改善を示す。陰を付けることで、特異性の少なくとも2倍の改善をもたらしたガイド配列内のMP位置を示す。エントリー1~18におけるMPウォーキングの結果は、ウォーキングを行ったMP修飾の配置に特異性に対する効果があることを示し、アッセイしたオフターゲット部位ごとの特異性スコアの各セットについて、エントリー3~18と比較してエントリー1および2で分るように、ガイド配列の5’末端付近のMP修飾のほうがガイド配列内のその他の位置でのMPより大きく特異性を増強することを示す傾向が明らかである。この傾向は、
図8Bにおけるエントリー12~13および20~21の陰付きスコアによって示されるように、CLTA1-sgRNAの5’末端に加えられたMP修飾が特異性を増強した、CLTA1標的配列に標的化されたgRNAのMP修飾について観察された特異性増強傾向と、一致する。あらゆる事例に有効であるわけではおそらくないが、特異性を改善するための一般戦略は、gRNA内のガイド配列の5’末端における連続するホスホジエステルヌクレオチド間連結に1、2、3、4または5つのMP修飾を組み込むことである。
【0258】
【0259】
[実施例5]
図10に示す実施例では、オフターゲット切断活性に対するオンターゲット切断活性によって判断して特異性の改善を生じさせる修飾位置が分るように、20ntガイド配列を横断して単一または三重のMP修飾の「ウォーキング」を行った。表5に列挙するように、ヒトIL2RG遺伝子内の遺伝子座を標的とする30個の一連のsgRNA(配列番号71~86および173~186)を作製した。実験的sgRNAは、最後の(すなわち最も3’側の)ヌクレオチド間連結を含むsgRNAの3’末端のtracrRNA領域内の、ヌクレオチド1および最後から2番目のヌクレオチドにもMP修飾を有することに加えて、ガイド配列内の1つまたは複数の位置に2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾を含有した。したがって、sgRNAをエキソヌクレアーゼから保護するように、末端ヌクレオチド間連結の修飾を設計した。個々のRNA鎖を合成し、HPLC精製した。すべてのオリゴヌクレオチドをHPLC分析による完全長鎖純度および質量分析による化学組成に基づいて品質管理承認した。IL2RG標的ポリヌクレオチド配列(オン)および比較オフターゲットポリヌクレオチド配列(オフ3)の切断パーセンテージを数値によって
図10に示す。この図は、アッセイした各合成sgRNA(配列番号71~86および173~186)について算出した、切断された標的ポリヌクレオチドの切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する比も示す。特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出する。特異性スコア≧2.0に陰を付けて、陰付きでないスコアに対する特異性の改善を示し、したがって、陰を付けることで、特異性の少なくとも2倍の改善をもたらしたガイド配列内のMP位置を示す。
図10には、特異性の最大の改善をもたらしたガイド配列内の位置を、濃い陰を付けることによって示す。位置7、14または16のMP修飾からの結果をエントリー6、13および15に関してそれぞれ示す。そのような組成物を有するガイドRNAは、特に、臨床的に重要なIL2RG遺伝子座を標的とするgRNAの種々のCRISPR-Casへの応用のために、MP修飾を欠くgRNAなどの、その他の一般に使用される組成物と比較して、特異性の性能を増強することができる。
図10によって表される実施例は、ウォーキングを行うMP修飾位置に起因して特異性増強が生じる位置(1つまたは複数)を同定するための、gRNAのガイド配列部分を横断するMP修飾の本新規「ウォーキング」方法も示す。特異性増強の大きさを、試験した各位置についてのオンターゲット対オフターゲット切断比によって評価し、実施者は、そのような値を、gRNAの全般的性能に恩恵をもたらす可能性が高いMP修飾位置(1つまたは複数)を決定する際に、各設計のために測定されるオンターゲット切断のパーセンテージとともに考慮することができる。ガイド配列を横断する単一MPの漸進的ウォーキングによって、ウォーキングにより試験した位置でのMP修飾の1つまたは複数の組合せの結果として生じる特異性の可能性ある相乗的改善のための配列内の位置を同定することもできる。
【0260】
【0261】
[実施例6]
図11Aに示すようにヒトHBB遺伝子に標的化されたガイド配列を横断して漸進的な位置にMP修飾を組み込むことで修飾「ウォーキング」を行って、20ntガイド配列内の種々の部位が、オンターゲット部位の実質的切断、およびオフターゲット部位の切断減少をもたらすことができるかどうかを見た。表6に列挙するようなHBB遺伝子を標的とする65個の一連のsgRNAを作製し、この場合の実験的sgRNAは、最後の(すなわち最も3’側の)ヌクレオチド間連結を含むsgRNAの3’末端のtracrRNA領域内の、ヌクレオチド1および最後から2番目のヌクレオチドにもMP修飾を有することに加えて、ガイド配列内の1つまたは複数の内部ヌクレオチド位置に2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾を含有した。したがって、sgRNAをエキソヌクレアーゼによる分解から保護するように、末端ヌクレオチド間連結の修飾を設計した。個々のRNA鎖を合成し、HPLC精製した。すべてのオリゴヌクレオチドをHPLC分析による完全長鎖純度および質量分析による化学組成に基づいて品質管理承認した。HBB標的ポリヌクレオチド配列(オン)および比較オフターゲットポリヌクレオチド配列(オフ1)の切断パーセンテージを数値によって
図11Aに示す。この図は、アッセイした各合成sgRNA(配列番号87~103)について算出した、切断された標的ポリヌクレオチドの切断されたオフターゲットポリヌクレオチドに対する比も示す。特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出する。特異性スコア≧2.0に陰を付けて、陰付きでないスコアに対する特異性の改善を示し、したがって、陰を付けることで、特異性の少なくとも2倍の改善をもたらしたガイド配列内のMP位置を示す。
図11Aでは、エントリー2、6および8にそれぞれ示されているように位置5、9または11のMP修飾の結果として生じた特異性の最大の改善をもたらしたガイド配列内の位置を、濃い陰を付けることによって示す。そのような組成物を有するガイドRNAは、特に、臨床的に重要なHBB遺伝子座を標的とするgRNAの種々のCRISPR-Casへの応用のために、MP修飾を欠くgRNAなどの、その他の一般に使用される組成物と比較して、特異性を増強することができる。
図11Aによって表される実施例はまた、ウォーキングを行うMP修飾位置に起因して特異性増強が生じる位置(1つまたは複数)を同定するための、gRNAのガイド配列部分を横断するMP修飾の本発明者らの「ウォーキング」方法を例示する。特異性増強の大きさを、試験した各位置についてのオンターゲット対オフターゲット切断比によって評価し、実施者は、そのような値を、gRNAの全般的性能に恩恵をもたらす可能性が高いMP修飾位置(1つまたは複数)を決定する際に、各設計のために測定されるオンターゲット切断のパーセンテージとともに考慮することができる。ガイド配列を横断する単一MPの漸進的ウォーキングによって、ウォーキングにより試験した位置でのMP修飾の1つまたは複数の組合せの結果として生じる特異性の可能性ある相乗的改善のための配列内の位置を同定することもできる。
【0262】
同一の20ntガイド配列を有するHBB sgRNAを使用する関連実験では、K562細胞内のゲノムHBB標的遺伝子座の編集についての特異性を評価し、このin vivoでの20塩基対標的配列は、表11Aでin vitroでポリヌクレオチド構築物において試験したのと同一であった。
図11Bは、各合成sgRNA(配列番号187~190)をCas9 mRANとともに同時トランスフェクトし、標的遺伝子座の切断、および
図11Aにおいて評価したのと同一のオフターゲット配列オフ1を含む3つのオフターゲット遺伝子座の切断を測定することによって、K562細胞内のヒトHBBゲノムを標的とするsgRNAにおける種々の種類の修飾の影響を示す。アッセイした各合成sgRNAについて、切断された標的ポリヌクレオチド(オン)の切断されたオフターゲットポリヌクレオチド(オフ1)に対する比を算出する。特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出する。結果は、ガイド配列におけるPACE修飾が、試験した種々の種類の修飾について、特に、主要オフターゲット活性(オフ1でのもの)に関して、特異性スコアによって評価して、特異性の実質的改善を生じたことを示す。
【0263】
【0264】
[実施例7]
MP修飾に起因するオンターゲット対オフターゲット特異性増強を判定するためのさらなる実験を、in vitro切断アッセイを使用して溶液中で、または2つの型の培養ヒト細胞において、実施した。2つの細胞型は、K562細胞および誘導多能性幹細胞(iPS細胞またはiPSCとしても公知である)であった。個々のウェルの中で、組換えCasタンパク質と予め複合体を形成しているMP修飾されたgRNAを培養細胞にトランスフェクトした。ゲノムHBB標的遺伝子座についての編集の特異性を評価し、この培養細胞内の20塩基対標的配列は、
図11Aおよび12Aにおいて評価したポリヌクレオチド構築物に関してin vitroでアッセイしたのと同一であった。
図12Aのエントリー1~17(配列番号87~103)は、
図11Aと同一の結果を示す。
図12Aのデータは、特異性スコアに従って最高から最低へと順位づけしたものである。エントリー18~64(配列番号125~171)は、HBBオンターゲットおよびHBBオフ1ターゲットをそれぞれ表す、「オン」と呼ばれる標的ポリヌクレオチドのin vitro切断および「オフ1」と呼ばれるオフターゲットポリヌクレオチドの別途アッセイした切断に関する、ヒトHBB遺伝子内の配列に標的化されたgRNA内の種々の位置におけるさらなるMP修飾の影響を示す。すべてのエントリーについて、アッセイした各合成sgRNAについての切断された標的ポリヌクレオチド(オン)の切断されたオフターゲットポリヌクレオチド(オフ1)に対する比を算出した。特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出した。エントリー18~64は、特異性スコアに従って最高から最低へと順位づけしたものである。最高スコアを有するエントリーに陰を付ける。
【0265】
図12Bは、
図12Aについてポリヌクレオチド構築物に関してin vitroで試験したのと同一の20塩基対配列を有するゲノムHBB標的の編集結果を示す。
図12Bについて、ゲノムHBB標的部位は、試験したヒトK562細胞およびiPS細胞において内因性である。結果を、20ntガイド配列に組み込まれたMP修飾の数によってグループ分けする。
図12A中のエントリー1~17ならびに
図12B中のエントリー1~12および22~33は、5’末端の最初のヌクレオチド間連結におけるMP修飾、およびエキソヌクレアーゼ分解から各sgRNAを保護するための各sgRNAの3’末端の最後のヌクレオチド間連結における別のMPに加えて、20ntガイド配列内の種々の位置における単一の内部MPについての試験を表す。
図12Bのエントリー1~12および22~33について試験したsgRNAは、配列番号88、90、92~94、96、97、99、100、103、171および172であった。
図12Bのエントリー13~19および34~40について試験したsgRNAは、配列番号128、129、133、141、160、165および168であった。これらのグループに、
図12A中のエントリー14ならびに
図12B中のエントリー7~9および29~31に示すものなどの、内部MP修飾を欠く対照の結果を含める。結果のその他のグループを、
図12Aでエントリー18~64ならびに
図12Bでエントリー13~19および34~40について示すように、sgRNAの各末端にエキソヌクレアーゼを阻害するための単一のMP修飾を有することに加えて、20ntガイド配列内の種々の位置に2つの内部修飾を有するsgRNAのために作製した。それらの種々のグループを、これらの図中で太い黒線によって分ける。これらの図は、
図12A中のエントリー1~2ならびに
図12B中のエントリー1~2および22~23に示すように、最大の特異性増強をin vitroでもたらす内部MP位置が、両方の細胞型における最大の増強をもたらす位置と同一であることを示す。
図12A中でエントリー3~5ならびに
図12B中のエントリー3~5および24~26に示すように、より明るい陰を付けることによって、内部MP修飾に起因する特異性増強のすぐ下の階層を示す。HBB sgRNAにおける内部MP修飾の位置の結果として生じる特異性増強の相対順位は、
図12A中のエントリー1~17ならびに
図12B中のエントリー1~12および22~33に示すように、in vitroおよびin vivoアッセイにわたって顕著に一致する。
【0266】
1対の内部MP修飾についての結果を、
図12A中のエントリー18~64に関してならびに
図12B中のエントリー13~19および34~40に関して別々にグループ分けしたところ、特異性スコアによって順位付けしたこれらの設計のin vitroおよびin vivoでの相対性能は、種々のアッセイおよび細胞型にわたって顕著に一致する。特異性増強を評価するわずかに異なる方法は、
図12Aおよび12B中のHBB例についてのオン:オフ1である、オンターゲット対オフターゲット比を単に考慮する方法である。この代替測定基準を使用して、グループごとに最高比から最低比へと並べ替えた、測定された比による
図12B中のグループの再順位付けを、
図12Cに示す。これらの図中の種々のグループを太い黒線によって分ける。
図12B中の特異性スコアについての本発明者らの観察結果に匹敵して、
図12Cに提示するオン:オフ1比による特異性のより単純な評価は、両方の細胞型にわって同様の結果を示す。実施例6および7は、特異性増強が、HBB遺伝子を標的とする20ntガイド配列におけるMP修飾の位置に依存することを実証する。
【0267】
表5中のIL2RG-sgRNAの一部を使用する実験で、K562細胞におけるゲノムIL2RG標的遺伝子座についての編集の特異性を評価した。また、表7(下に示す)のVEGFA-sgRNAを使用して、K562細胞におけるゲノムVEGFA標的遺伝子座の編集についての特異性も評価した。
【0268】
【0269】
このようにして、20ntガイド配列をin vivoで試験した。
図14は、K562細胞におけるIL2RG-sgRNAおよびVEGFA-sgRNAの種々のタイプの修飾の影響を示す。各合成sgRNAをCas9のmRNAとともに同時トランスフェクトし、標的遺伝子座の切断およびオフターゲット遺伝子座オフ2の切断を測定した。アッセイした各合成sgRNAについて、切断された標的ポリヌクレオチド(オン)の切断されたオフターゲットポリヌクレオチド(オフ2)に対する比を算出する。特異性スコアは、比にそのそれぞれのオンターゲット切断パーセンテージを掛けることによって算出する。
【0270】
図14における結果は、IL2RGおよびVEGFAを標的とする合成gRNAのガイド配列における修飾が、試験した種々の種類の修飾について、特に、オフターゲット活性(オフ2でのもの)に関して、特異性スコアによって評価して、特異性の実質的改善をもたらしたことを示す。エントリー1とは対照的に、エントリー2は、5’および3’末端ヌクレオチド間連結が修飾される、IL2RG-sgRNAの両末端におけるMP修飾の結果として生じる有意な特異性増強を示す。エントリー1および2とは対照的に、エントリー3および4は、IL2RGガイド配列内の内部位置に、すなわち、それぞれ位置5または11にMP修飾を有するIL2RG-sgRNAについて、強い印象を与える特異性増強を示す。さらに、位置5のMP修飾は、
図14中のエントリー1~4の中で最も大きい特異性増強をもたらした。
【0271】
エントリー5とは対照的に、エントリー6~10は、VEGFAガイド配列内の内部位置に、すなわち、それぞれ位置5、7、9、10または11にMP修飾を有するVEGFA-sgRNAについて、有意な特異性増強を示す。エントリー5~10にわたって増強を比較したとき、エントリー6について、20ntガイド配列の位置5におけるMP修飾がVEGFAに対する特異性の最大の増強をもたらしたことは、注目に値する。
【0272】
異なるDNA配列を標的とするgRNA内のガイド配列を横断してMPウォーキングを行い、実施例4~7において提示したようにin vitroでオンターゲットおよびオフターゲットポリヌクレオチドの切断をアッセイすることによって、特異性増強をもたらす種々のガイド配列内のMP修飾位置の複合マップを
図13に示す。詳細には、
図13は、
図9A、9B、10および11Aからのin vitro切断の結果の比較を示す。
図13は、いくつかの重要な傾向を示す。第1に、
図13中のすべてのその他のエントリーとは対照的に、エントリー12に示すように、それらの20ntガイド配列内の位置15にMP修飾を有するgRNAは、Cas9媒介性切断活性の実質的喪失を被った。これは、位置15が、Cas9媒介性切断に対するMP修飾に対して特に不耐性であったことを示唆する。第2に、陰付き特異性スコアによって示すように、エントリー1~2を通して特異性増強傾向がある。この傾向は、種々の20ntガイド配列の5’末端へのまたはその付近へのMP修飾の組込みが、gRNAの標的特異性を増強するための一般に有用な設計戦略であり得ることを示唆する。このアプローチの有用性の別の例は、in vitroでCLTA1遺伝子座を標的とするgRNAの5’末端におけるMP修飾に関して
図8Aおよび8Bに提示する結果について、上記実施例3で論じた。この一般アプローチの有用性のさらなる例は、
図11Bに示すように、トランスフェクトK562細胞におけるHBB遺伝子を標的とするgRNAの5’末端でのMSP修飾に関して、上記実施例6で論じた。MP修飾の特異性効果に関する第3の例は、別様に標的化された20ntガイド配列内の位置6のMP修飾の結果として得られる特異性スコアが、上述の位置15についての異常効果を無視すれば、MPウォーキングあたりの最低スコアになる、
図13のエントリー3で明らかである。CLTA4オフ3、IL2RGオフ3およびHBBオフ1を含む一連のMPウォーキング各々について、位置6のMP修飾に起因する特異性増強の最低点は、特に顕著であり、これは、同一ガイド配列内の隣接位置、すなわち、位置4、5または7(エントリー1、2または4を通して陰付きスコアとしてそれぞれ示す)のMP修飾の結果として得られる特異性スコアとは対照的である。
【0273】
実施例3~7は、gRNA内の多くの配列位置での修飾がオンターゲットポリヌクレオチドの標的特異的切断を妨げなかったので、ガイド配列内の特定の位置に修飾を含有するgRNAが、活性Casタンパク質、およびgRNA:Casタンパク質複合体によって許容されることを実証する。実施例3~7は、本gRNA、複合体および方法が、少なくとも1.2、あるいは少なくとも1.5、あるいは少なくとも2、あるいは少なくとも2.5、あるいは少なくとも3、あるいは少なくとも3.5、あるいは少なくとも4、あるいは少なくとも4.5、あるいは少なくとも5のオンターゲット対オフターゲット比を達成することができること、および/または前記比が、10、12、15もしくは20以下であることも実証する。多くの場合、2’-O-メチル-3’-PACE(「MP」)修飾は、特異性増強のために所望どおりの高いオンターゲット切断レベルを保持しながらオフターゲット切断レベルを低下させることによって、比にプラスの効果をもたらした。
【0274】
これらの実験の結果として、ガイド配列全体にわたって特定の部位における結合エネルギーを減少させる複数の修飾の組込みは、公知および未知のオフターゲット切断事象を減少させることになると予測される。
【0275】
上述の実施例3~7において使用したDNA構築物の完全配列を表8に示す。標的ポリヌクレオチドまたはオフターゲット配列をPAM配列とともに太字で示し、PAM配列には下線も付ける。
【0276】
【表8A】
【表8B】
【表8C】
【表8D】
【表8E】
【表8F】
【表8G】
【表8H】
【表8I】
【表8J】
【表8K】
【0277】
[実施例8]
この実施例は、本開示による合成gRNAを使用してCas9切断によって刺激される相同性指向修復(HDR)を実証する。両方の染色体(Chr11)対上に正常HBB遺伝子を有するK562細胞を用意した。鎌状赤血球症(SCD)突然変異を有するHDR用のDNAドナー鋳型も用意した。実験は、ヘテロ接合細胞株を作出するためにSCD突然変異を付加またはノックインするようにK562細胞内のHBB遺伝子を編集しようするものであった。そのような細胞株は、SCD疾患のモデル化に有用であるだろう。
【0278】
化学修飾を有するまたは有しないsgRNAを使用した。より詳細には、非修飾gRNA(Unmodif)、5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(1xMP)、位置5ならびに5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(5MP_1xMP)、位置11ならびに5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(11MP_1xMP)、ならびにsgRNA:Cas9複合体の代わりにバッファーで処理したmockトランスフェクト細胞(Mock)の、20nt合成ガイドRNAを用いて実験を実行した。HBB標的部位でのHDRのための修復鋳型として役立てるためのssDNAオリゴとともに、K562細胞に(エレクトロポレーションによって)トランスフェクトするために、各sgRNAを別々に予めCas9タンパク質との複合体にした。各グループに関して、ドナーDNA鋳型を用いて(
図15におけるドナー+)、およびドナーDNA鋳型を用いずに(
図15におけるドナー-)、実験を実行した。標的部位をsgRNA:Cas9複合体によって切断して、二本鎖切断を形成した。ドナーDNA鋳型の配列が、切断されたDNA標的配列の修復を方向づけるためにトランスフェクト細胞内の内因性DNA修復酵素より使用されるように、HDRプロセスによって、切断を修復した。
【0279】
修復鋳型として役立てるためにK562細胞にトランスフェクトした一本鎖ドナーDNA鋳型の配列は、
TCAGGGCAGAGCCATCTATTGCTTACATTTGCTTCTGACACAACTGTGTTCACTAGCAACCTCAAACAGACACCATGGTGCACCTGACTCCTgtaGAGAAGTCTGCGGTTACTGCCCTGTGGGGCAAGGTGAACGTGGATGAAGTTGGTGGTGAGGCC(配列番後200)
であった。
【0280】
このオリゴヌクレオチドは、158ヌクレオチド長であり、小文字の「gta」は、HDRによってノックインされることになるSCD突然変異のためのコドンである。トランスフェクト細胞を培養し、その後、トランスフェクションの48時間後に回収した。ゲノムDNAを単離し、HBB遺伝子座およびその主オフターゲット遺伝子座を、両方とも、ディープシークエンシングのためにPCRによって増幅して、(i)Cas9誘導インデル(
図15におけるオンターゲットインデルおよびオフターゲットインデル)の形成と、(ii)部分的HDR(部分的オンターゲットHDR)と、(iii)SDCコドンを組込む完全HDR(オンターゲットHDRおよびオフターゲットHDR)とを含む編集結果を定量した。3種類すべての編集をオンターゲット部位(
図15における遺伝子座オン)で測定し、3種類のうちの2種類の編集が、Chr9上のゲノム内の主オフターゲット部位(
図15における遺伝子座オフ)で検出された。
【0281】
図15は、ヒトK562細胞におけるHBB遺伝子の相同性指向修復(HDR)のこれらの実験からの結果を要約するものである。「遺伝子座オン」について報告する結果は(左から右へ)、オンターゲットHDR%、部分的オンターゲットHDR%、およびオンターゲットインデル%である。「遺伝子座オフ」について報告する結果は(左から右へ)、オフターゲットHDR%およびオフターゲットインデル%である。
【0282】
この実験は、20ntガイド配列内の位置5および位置11における特異性を増強するための化学修飾、特にMP修飾が、オフターゲットインデルの形成をかなり大幅に低減させたばかりでなく、オフターゲットHDR活性も有意に低減させたことを実証する。この実験では、オフターゲット部位はまた、HDR編集を受けるために十分なssDNA修復鋳型との配列類似性も有したことに、注目された。
【0283】
[実施例9]
この実験では、合成ガイドRNAによるオフターゲット活性を2つの異なる、しかし補完的な方法で評価した。実施例7および
図12Bに関して上で説明したのと同一のin vivoアッセイを使用してHBB標的部位およびオフターゲット部位に結合し、それを切断するために、いくつかの化学合成したガイドRNAを使用した。したがって、第1の評価のために、ヒトK562細胞からのゲノムDNA内の実施者指定ポリヌクレオチド配列または遺伝子座をPCRによって増幅し、第2の評価のために、前記ゲノムDNAの断片内の約1,000のポリヌクレオチド配列または遺伝子座(実施者によって指定されたもの)のライブラリーを、市販の遺伝子座濃縮キットを使用することによって濃縮した。より詳細には、第1の評価では、ゲノムDNAに対してPCRを行って、HBB内の20bp標的配列に関して3個以下のミスマッチを有し、かつ標的配列と比較して位置21~23にNGG-PAM配列またはNAG-PAM配列(このようなPAM配列は、Cas9認識に必要である)のどちらかも含む、ヒトゲノム内の配列を構成する16のオフターゲット部位を増幅した。第2の評価では、標的部位およびオフターゲット部位を捕捉するためにビオチン化オリゴヌクレオチドベイト(Agilent TechnologiesからのSureSelect Target Enrichment Kit)をK562細胞からのゲノムDNAに対して使用することによって、オフターゲット活性を評価した。HBB内の20bp標的配列に関して5個以下のミスマッチを有し、かつ位置21~23にNGG-PAM配列またはNAG-PAM配列のどちらかも有する、ヒトゲノム内の配列(合計おおよそ960配列)を選択的に捕捉するように、ベイトを設計した。オンターゲット配列およびオフターゲット配列は、次のとおりであった。
【0284】
【0285】
両方の評価に、非修飾gRNA(Unmodif)、5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(1xMP)、位置5ならびに5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(5MP_1xMP)、ならびにsgRNA:Cas9複合体の代わりにバッファーで処理したmockトランスフェクト細胞(Mock)の、20nt合成ガイドRNAを使用した。第1の評価は、位置11ならびに5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(11MP_1xMP)も含んだ。
【0286】
前記実施例で使用したのと同じ手順を使用して、ヒトK562細胞にgRNAおよびCas9をトランスフェクトした。より詳細には、ヒトK562細胞をATCCから入手し、10%ウシ成長血清(Thermo Fisher製)を補充したPRMI1640培地で培養した。Lonza 4Dヌクレオフェクター(96ウェルシャトルデバイス、プログラムFF-120)を製造業者の使用説明書に従って使用して、K562細胞(継代数3~9以内)へのヌクレオフェクションを行った。ヌクレオフェクション条件は、Lonza SF Cell Lineキット(V4SC-2960)を、20μLの培地中の細胞200,000個、125ピコモルの化学修飾されたsgRNA、および50ピコモルの組換えCas9タンパク質(Thermo Fisher製)を使用するものであった。細胞を37℃で、周囲酸素および5%二酸化炭素で培養した。培養した細胞を、トランスフェクションの48時間後に回収した。
【0287】
第2の評価のために、標的濃縮ベイトを含むライブラリーを、HBB標的部位にほぼ中心があるゲノムDNAの1Kbpセグメントを捕捉するために重複する配列カバー範囲(「タイリング」とも称される)を有するように(AgilentからのSureSelect濃縮プラットフォームを使用して)設計した。このライブラリーは、ヒトゲノム内の960の個別のオフセット部位に中心がある1Kbpセグメントを捕捉するための、同様にタイリングされたベイトも含んだ。960のオフターゲット部位は、HBBにおけるCRISPR-Cas9標的化のための20bp標的配列に関して5個以下のミスマッチを有し、かつCas9認識および結合などを可能にするために必要となるような20bpオフターゲット配列に隣接するNGG-PAM配列またはNAG-PAM配列のいずれかも有する、ヒトゲノム内のすべての配列を構成すると考えられる。ゲノムDNAを処理ごとの三つ組みサンプルごとに単離し、Agilent SureSelect HiSeqプロトコールに従って各単離物を処理した。
【0288】
両方の評価のために、増幅または捕捉されたDNAを、ペアードエンド2x150bpシークエンシングリードのためのIllumina試薬を使用してIllumina HiSeq 4000シークエンサーでシークエンシングした。オンまたはオフターゲット配列ごとにCas9切断部位のいずれかの側の少なくとも30bpまでにオンまたはオフターゲット部位を重複しないリードを破棄することによって、HiSeq生データを再処理した。ヒトゲノムへのリードのマッピングは、デフォルトパラメータに設定したBWA-MEM(bwa-0.7.10)ソフトウェアを使用して実施した。一貫性のないペアードエンドマッピング、低品質のマッピング、または二次マッピングを生じさせるリードを分析から破棄した。インデルを有する場合、またはCas9切断についてマッピングされた切断部位の10bp以内に配列の挿入または欠失(すなわち、インデル)を有するかどうかによらずに、各々の保持されたマッピングリードのスコアを生成した。オンまたはオフターゲット部位ごとのマッピングされたリードを、インデルを有したか否かに従ってビニング処理し、ビンごとのリードの集計を使用して、オンターゲット部位でおよび同様に960のオフターゲット部位の各々で形成された%インデルを算出した。それらの%インデル結果を使用して、オン:オフ標的切断比および特異性スコアを算出した(データは省略)。
【0289】
図16は、修飾または非修飾sgRNAについてHBBオンターゲット部位および16の同様のオフターゲット部位でのインデルの形成を測定した、第1の評価からの結果を要約するものである。PCRアンプリコンのディープシークエンシングによって、処理ごとに単離されたゲノムDNAを使用して17部位(前記オンターゲット部位と16のオフターゲット部位)について配列リードを生成した。修飾または非修飾sgRNAのすべてが、オンターゲット部位での高いインデルパーセンテージをもたらした。オフ1部位では、非修飾gRNAおよび1xMPのgRNAもまた高いインデルパーセンテージを生じたが、対照的に、5MP_1xMPのgRNAおよび11MP_1xMPのgRNAは、はるかに低いインデルパーセンテージをもたらした。オフ5部位では、5MP_1xMPのgRNAおよび11MP_1xMPのgRNAは、非修飾gRNAおよび1xMPのgRNAよりはるかに低いインデルパーセンテージを生じた。他のオフ部位では、gRNAのすべてが、非常に低いインデルパーセンテージを生じた。この評価は、特異性を増強するための化学修飾、特に、20ntガイド配列内の位置5および位置11におけるMP修飾が、HBB内の20bpオンターゲット配列に関して3個以下のミスマッチを有し、かつ位置21~23にNGG-PAM配列またはNAG-PAM配列のどちらかも有する、ヒトゲノム内の配列において、オフターゲットインデルの形成をかなり大幅に低減させたことを示す。
【0290】
図17は、両方の評価からの増幅されたDNA遺伝子座(PCR)または捕捉されたDNA遺伝子座(SureSelect)のディープシークエンシング分析からの結果を要約するものである。
図17は、非修飾gRNA(HBB_unmodif(PCR)およびHBB_unmodif(SureSelect))、5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(HBB_1xMP(PCR)およびHBB_1xMP(SureSelect))、位置5ならびに5’および3’末端にMP修飾を有するgRNA(HBB_5xMP(PCR)およびHBB_5xMP(SureSelect))、ならびにsgRNA:Cas9複合体の代わりにバッファーで処理されたmockトランスフェクト細胞(Mock(PCR)およびMock(SureSelect))の、20nt合成ガイドRNAでの実験からの、HBB標的部位(HBBオン)および3つのオフターゲット部位(オフ1、オフ5およびオフ9)で測定されたインデル形成パーセンテージを示す。検出されたインデルのパーセンテージは、2つの評価間で一致し、PCRによって増幅された個別のDNA遺伝子座の分析において見られたのと同様のインデルパーセンテージがSureSelect濃縮による捕捉DNAの分析で見られた。修飾または非修飾sgRNAのすべてが、HBBオンターゲット部位での高いインデルパーセンテージをもたらした。オフ1部位では、HBB_unmodif(PCR)およびHBB_unmodif(SureSelect)実験とHBB_1xMP(PCR)およびHBB_1xMP(SureSelect)実験の両方が、高いインデルパーセンテージを示した。対照的に、5MP_1xMPのgRNAおよび11MP_1xMPのgRNAは、PCRおよびSureSelect評価によって、はるかに低いインデルパーセンテージを示した。オフ5部位では、5MP_1xMPのgRNA(すなわち、HBB_5xMPのgRNA(PCR)およびHBB_5xMPのgRNA(SureSelect))を使用する両方の評価が、非修飾gRNAおよびHBB_1xMPのgRNAよりはるかに低いインデルパーセンテージを生じた。オフ9部位では、試験したgRNAのすべてが、非常に低いインデルパーセンテージを有した。SureSelect濃縮によって評価した残りの957のオフターゲット遺伝子座のうち、32のみが、0.1%の検出限界より高いレベルでインデルを生じ(結果は示されていない)、これらの中で最高のインデル%は、0.5%未満であった。したがって、特異性を増強する化学修飾、特に、20ntガイド配列内の位置5でのMP修飾は、オフターゲットインデルの形成をかなり大幅に低減させた。このような特異性増強は、PCRによって増幅されたゲノム遺伝子座、またはSureSelectなどの標的化ライブラリー濃縮キットを使用することにより濃縮されたゲノム遺伝子座によって実証することができる。
【0291】
[例示的実施形態]
本明細書において開示される対象に従って提供される例示的実施形態として、これらに限定されないが、特許請求の範囲および以下の実施形態を含む。
【0292】
A1.(a)(i)標的配列とハイブリダイズ可能なガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)ステム配列と部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
ガイド配列が、少なくとも1つの特異性増強修飾を含み、合成ガイドRNAがgRNA機能性を有する、合成ガイドRNA。
A2.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態A1の合成ガイドRNA。
A3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態A1の合成ガイドRNA。
A4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態A1の合成ガイドRNA。
A5.ガイドRNAの5’末端または3’末端または両末端に少なくとも1つの安定性増強修飾をさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A6.ガイド配列が、ロッキング領域、サンプリング領域、およびシード領域を含み、少なくとも1つの特異性増強修飾が、サンプリング領域に、および/またはシード領域に存在する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A7.少なくとも1つの特異性増強修飾が、シード領域内に、および/またはサンプリング領域内に、および/またはロッキング領域内に存在する、実施形態A6の合成ガイドRNA。
A8.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド間連結修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A9.少なくとも1つの特異性増強修飾が、化学修飾された核酸塩基を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A10.少なくとも1つの特異性増強修飾が、少なくとも1つのヌクレオチド糖部分内に位置する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A11.少なくとも1つの特異性増強修飾が、3’-ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結、3’-ホスホノ酢酸メチルエステルヌクレオチド間連結、3’-メチルホスホネートヌクレオチド間連結、3’-チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結、3’-メチルチオホスホネートヌクレオチド間連結、3’-ボラノホスホネートヌクレオチド間連結、またはそれらの組合せを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A12.C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A13.少なくとも1つの特異性増強修飾が、
(a)2’-デオキシリボース;2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシル;2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシル;2’-O-フェニル、2’-チオフェニル、2’-S-チオフェニル、2’-メチル、2’-エチル、2’-プロピル、2’-アリル、2’-アリルフェニル、2’-メチルヒドロキシ、2’-メチルオキシメチル、2’-O-カルバミン酸、2’-O-エチルアミノ、2’-O-アリルアミノ、2’-O-プロピルアミノもしくは2’-O-置換フェニルを有するリボースなどの糖;またはそれらの組合せ;
(b)ホスホノ酢酸、チオホスホノ酢酸、ホスホノプロピオン酸、チオホスホノプロピオン酸、メチルホスホネート、メチルチオホスホネートもしくはボラノホスホネート、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(c)(a)と(b)の組合せ
を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A14.2’-O-メチル修飾をさらに含む、実施形態A8、A9、A11またはA13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A15.少なくとも1つの特異性増強修飾が、構造不定の核酸(「UNA」)、アンロックド核酸(「ULNA」)、脱塩基ヌクレオチド、または-PO4Y-(CR3
2)m-PO4Y-を含むアルキレンスペーサー、または(-PO4Y-(CR3
2CR3
2O)n-PO3Y-)を含むエチレングリコールスペーサーであり、mは、2、3または4であり、nが、1、2または3であり、各R3が、H、アルキルおよび置換アルキルからなる群から独立に選択され、各Yが、Hまたは負の電荷である、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A16.少なくとも1つの特異性増強修飾が、核酸塩基修飾を含まない、実施形態A1~A9、A11~A13、またはA15のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A17.少なくとも1つの特異性増強修飾が、2-チオU、2-チオC、4-チオU、6-チオG、2-アミノプリン、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルC、5-メチルU、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-エチニルシトシン、5-アミノアリルU、5-アミノアリルC、脱塩基ヌクレオチド、UNA塩基、イソC、イソG、5-メチル-ピリミジン、x(A、G、C、T、U)、y(A、G、C、T、U)、およびそれらの組合せからなる群から選択される核酸塩基である、実施形態A1~A15のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A18.少なくとも1つの特異性増強修飾が、5-ニトロインドール、ネブラリン、イノシン、ジアミノプリン、脱塩基性連結、および脱塩基性フルオロフォア連結、例えば3-O-イル-2-(4-ブチルアミドフルオレセイン)プロピル-1-O-イル-ホスホジエステルからなる群から選択される、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A19.少なくとも1つの特異性増強修飾が、合成ガイドRNAおよび標的ポリヌクレオチドによって形成される第1のDNA/RNA二本鎖の融解温度(Tm)を、特異性増強修飾を有しない二本鎖のTmと比較して低下させる修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A20.少なくとも1つの特異性増強修飾が、Tmを修飾あたり約0.5℃、あるいは修飾あたり約0.5~1.0℃、あるいは修飾あたり約1.0~2.0℃、あるいは修飾あたり2~8℃低下させる、実施形態A19の合成ガイドRNA。
A21.ガイド配列が、20ヌクレオチドを含み、任意選択的に5’-オーバーハング配列を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
A22.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20と、ヌクレオチド1での、あるいはヌクレオチド1および2での、あるいはヌクレオチド1、2および3での、あるいはヌクレオチド1、2、3および4での、あるいはヌクレオチド1、2、3、4および5での少なくとも1つの特異性増強修飾とを含むか、またはそれらからなる、実施形態A21の合成ガイドRNA。
A23.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-Nからなり、Nが、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の整数であり、少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド4-N~20-N内、あるいはヌクレオチド5-N~20-N内、あるいはヌクレオチド10-N~20-N内、あるいはヌクレオチド13-N~20-N内、あるいはヌクレオチド13-N~14-Nもしくは16-N~19-N内、あるいはヌクレオチド13-N~14-Nもしくは16-N~18-N内にある、実施形態A21の合成ガイドRNA。
A24.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-Nからなり、Nが、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の正または負の整数であり、前記ガイド配列が、ヌクレオチド11-N、12-N、13-N、14-N、16-N、17-N、18-N、19-Nまたは20-Nに位置する、あるいはヌクレオチド13-N、14-N、16-N、17-N、18-N、19-Nまたは20-Nに位置する、あるいはヌクレオチド13-N、14-N、16-N、17-N、または18-Nに位置する1つの特異性増強修飾を含む、実施形態A21の合成ガイドRNA。
A25.ガイドRNAの5’末端のヌクレオチド1から始まる少なくとも1つの安定性増強修飾、および3’末端の5つの末端ヌクレオチド内の少なくとも1つの安定性増強修飾をさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA。
【0293】
B1.前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAおよびCasタンパク質を含むgRNA:Casタンパク質複合体であって、標的ポリヌクレオチドを切断することができるか、それにニックを入れるもしくは結合することができるか、または切断活性、ニッキング活性および/もしくは結合活性を有するgRNA:Casタンパク質複合体。
【0294】
C1.標的ポリヌクレオチドを切断するか、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
前記標的ポリヌクレオチドを実施形態B1のgRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断するか、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含む方法。
C2.少なくとも1つの特異性増強修飾を含む合成ガイドRNAが、非修飾gRNAと比較してオフターゲットポリヌクレオチドの切断、ニッキングまたは結合を減少させる、実施形態C1の方法。
C3.少なくとも1つのオフターゲットポリヌクレオチドが、CRISPR関連タンパク質により切断され、ニックを入れられ、または結合を受け;切断された、ニックを入れられた、または結合を受けた標的ポリヌクレオチドの、切断された、ニックを入れられた、または結合を受けたオフターゲットポリヌクレオチドに対する比が、少なくとも1.2、あるいは少なくとも1.5、あるいは少なくとも2、あるいは少なくとも2.5、あるいは少なくとも3、あるいは少なくとも3.5、あるいは少なくとも4、あるいは少なくとも4.5、あるいは少なくとも5または少なくとも10、12、15もしくは20である、実施形態C2の方法。
【0295】
D1.合成ガイドRNAを調製する方法であって、
ゲノム内の、それぞれのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの標的ポリヌクレオチドを、選択するステップと;
ゲノム内の、それぞれのヌクレオチド配列を含むオフターゲットポリヌクレオチドを、同定するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドの配列を前記オフターゲットポリヌクレオチドの配列とアラインして、両方の鎖の1つまたは複数の同一部分を同定するステップと;
合成ガイドRNAを設計するステップと(設計される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、同定された同一部分のうちの1つと相補的なその配列の部分内に特異性増強修飾を含む)
を含む方法。
D2.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態D1の方法。
D3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態D1の方法。
D4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態D1の方法。
D5.設計されたガイドRNAを合成するステップをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
D6.オフターゲットポリヌクレオチドが、http://www.rgenome.net/Cas-OFFinder;https://cm.jefferson.edu/Off-Spotter;もしくはhttp://crispr.mit.eduで見付けられるものなどの、オフターゲット部位を予測するためのアルゴリズム;またはTsai et al.(2015)Nat.Biotechnol.33,187-97;Ran et al.(2015)Nature 520,186-91;および/もしくはFrock et al.(2015)Nat.Biotechnol.33,179-86において開示されているような、実際の事例でオフターゲット部位の活性化を同定および定量するためのその他の技術によって、同定される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
D7.標的ポリヌクレオチドとオフターゲットポリヌクレオチド間の少なくとも1つの識別ヌクレオチド位置であって、前記標的ポリヌクレオチドとオフターゲットポリヌクレオチドとが異なるヌクレオチド基を有する少なくとも1つの識別ヌクレオチド位置を同定するステップと、
前記標的ポリヌクレオチド内の前記少なくとも1つの識別位置におけるヌクレオチドとマッチするヌクレオチドを合成ガイドRNAに含めるステップと
をさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
D8.特異性増強修飾が、合成ガイドRNAのガイド配列と標的ポリヌクレオチドとによって形成される第1のDNA/RNA二本鎖の融解温度(「Tm」)を、特異性増強修飾を有しない二本鎖のTmと比較して低下させる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
D9.特異性増強修飾が、第1のDNA/RNA二本鎖のTmを、修飾あたり約0.5℃、あるいは修飾あたり約0.5~1℃、あるいは修飾あたり約1~2℃、あるいは修飾あたり約2~8℃低下させる、実施形態D8の方法。
D10.特異性増強修飾が、第1のDNA/RNA二本鎖のTmを、例えば、該Tmを約1℃~約13℃、あるいは約1℃~約6℃低下させることによって、少なくとも約1℃、少なくとも約2℃、少なくとも約3℃、少なくとも約4℃、少なくとも約5℃、および/または約6℃以下、あるいは約8℃以下、あるいは約10℃以下、あるいは約13℃以下、低下させる、実施形態D8の方法。
D11.特異性増強修飾が、合成ガイドRNAのガイド配列と少なくとも1つオフターゲットポリヌクレオチドとによって形成された第2のDNA/RNA二本鎖のTmを低下させる、実施形態D8の方法。
D12.第1のDNA/RNA二本鎖のTmが、第2のDNA/RNA二本鎖のTmより高く、例えば、少なくとも少なくとも約0.5℃高く、あるいは少なくとも約1℃高い、実施形態D8の方法。
【0296】
E1.標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
ゲノム内の標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
合成ガイドRNAを用意および/または設計するステップと(用意および/または設計される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、特異性増強修飾を含む);
前記ガイド配列と前記標的ポリヌクレオチドとのDNA/RNA二本鎖の融解温度(Tm)を算出するステップと;
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを、gRNA:Casタンパク質複合体と、前記Tmの10℃以内、あるいは前記Tmの5℃以内、あるいはほぼ前記Tmである温度で接触させるステップと;
接触させることによって、前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含む方法。
【0297】
F1.標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
ゲノム内の標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
合成ガイドRNAを用意および/または設計するステップと(用意および/または設計される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、少なくとも1つの特異性増強修飾を含む);
前記修飾または修飾の組合せを、前記ガイド配列と前記標的ポリヌクレオチドとのDNA/RNA二本鎖の融解温度(Tm)が25℃から49℃の間になるように、選択するステップと;
Casタンパク質と設計された合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを、gRNA:Casタンパク質複合体と、前記Tmの12℃以内、あるいは前記Tmの8℃以内、あるいは前記Tmの5℃以内、あるいはほぼ前記Tmである温度で接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは前記標的ポリヌクレオチドに結合するステップと
を含む方法。
【0298】
G1.標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
ゲノム内の標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
合成ガイドRNAを、用意および/または設計するステップと(用意および/または設計される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、少なくとも1つの特異性増強修飾を含む);
前記修飾もしくは修飾の組合せを、前記ガイド配列と前記標的ポリヌクレオチドとのDNA/RNA二本鎖の融解温度(Tm)が、非修飾gRNA/標的二本鎖のTmより少なくとも0.5℃~1℃低く、もしくは少なくとも1~3℃低く、もしくは少なくとも1~12℃低くなるように選択する、またはそのような修飾もしくは修飾の組合せを前記ガイド配列に含めるステップと;
Casタンパク質と設計された合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを、gRNA:Casタンパク質複合体と、前記Tmの12℃以内、あるいは前記Tmの8℃以内、あるいは前記Tmの5℃以内、あるいはほぼ前記Tmである温度で接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含む方法。
【0299】
EFG2.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、前記実施形態E1、F1またはG1のいずれか1つの方法。
EFG3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態E1、F1またはG1のいずれか1つの方法。
EFG4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態E1、F1またはG1のいずれか1つの合成ガイドRNA。
【0300】
H1.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、in vitroで行われる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H2.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、細胞内で行われる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H3.細胞が、標的ポリヌクレオチドをgRNA:Casタンパク質複合体と接触させる前に多細胞供給源から単離される、実施形態H2の方法。
H4.供給源が、植物、動物、多細胞原生生物または真菌である、実施形態H3の方法。
H5.細胞、またはそれに由来する細胞が、標的ポリヌクレオチドをgRNA:Casタンパク質複合体と接触させた後、供給源に戻される、実施形態H2~H4のいずれか1つの方法。
H6.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、in vivoで行われる、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H7.Casタンパク質が、Cas9である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H8.切断するまたはニックを入れるステップが、遺伝子編集をもたらす、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H9.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、遺伝子発現の変更をもたらす、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H10.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、標的遺伝子の機能的ノックアウトをもたらす、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H11.切断された標的ポリヌクレオチドを、外因性または内因性鋳型ポリヌクレオチドを用いる相同性指向修復によって修復するステップをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H12.外因性または内因性鋳型ポリヌクレオチドが、切断部位のいずれかの側の配列と実質的な配列同一性を有する少なくとも1つの配列を含む、実施形態H11の方法。
H13.切断された標的ポリヌクレオチドを非相同末端結合によって修復するステップをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H14.修復ステップが、標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失または置換をもたらす、前記実施形態のいずれか1つの方法。
H15.挿入、欠失または置換が、標的ポリヌクレオチドを含む遺伝子から発現されるタンパク質における1つまたは複数のアミノ酸変化をもたらす、実施形態H14の方法。
【0301】
I1.前記実施形態のいずれかの合成ガイドRNAを2種以上含む合成ガイドRNA分子のセットまたはライブラリー。
【0302】
J1.前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAおよび1種または複数のそのほかの成分を含むキット。
【0303】
K1.前記実施形態のいずれかの合成ガイドRNAを2種以上含むRNA分子のアレイ。
【0304】
L1.crRNAセグメントとtracrRNAセグメントの両方を含む単一RNA鎖を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L2.2つのRNA鎖を含み、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、異なるRNA鎖中にある、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L3.合成ガイドRNAが、単一ガイドRNAであり、crRNAセグメントおよびtracrRNAセグメントが、ループLを介して連結されている、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L4.ループLが、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドを含む、実施形態L3の合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L5.ループLが、GNRAのヌクレオチド配列を含み、Nが、A、C、GまたはUを表し、Rが、AまたはGを表す、実施形態L3またはL4の合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L6.ループLが、GAAAのヌクレオチド配列を含む、実施形態L3~L5のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L7.ループLが、1つまたは複数の修飾されたヌクレオチドを含む、実施形態L3~L6のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L8.ループLが、蛍光色素を含む、実施形態L3~L7のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L9.1つまたは複数の同位体標識を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L10.1つまたは複数の蛍光標識を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L11.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(2’-O-メチル-3’-PACE)ヌクレオチドを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L12.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2-チオUを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L13.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの6-チオGを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L14.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2-チオCを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L15.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシル修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L16.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシル修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L17.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-フェニルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L18.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-チオフェニルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L19.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-S-チオフェニルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L20.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-メチルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L21.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-エチルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L22.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-プロピルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L23.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-アリルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L24.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-アリルフェニルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L25.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-メチルヒドロキシリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L26.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-メチルオキシメチルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L27.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-カルバミン酸リボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L28.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-エチルアミノリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L29.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-アリルアミノリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L30.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-プロピルアミノリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L31.合成ガイドRNAが、少なくとも1つの2’-O-置換フェニルリボースを含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
L32.合成ガイドRNAのガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20-Nからなり、Nが、-10から10の間(任意選択的に10から6の間)の整数であり、ヌクレオチド6-N~14-Nの領域が、特異性増強修飾(複数でもよい)を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法、セットまたはライブラリー、キットまたはアレイ。
【0305】
M1.標的HBBポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
標的ポリヌクレオチド内のHBB遺伝子座における標的配列を選択するステップと;
合成ガイドRNAを用意するステップと(用意される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的HBBポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、20-Nヌクレオチドからなり、Nは-10から10の間の整数であり、前記ガイド配列は、位置4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nおよび16-Nから選択されるヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含む);
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的HBBポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含む方法。
M2.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド11-Nにある、実施形態M1の方法。
M3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド5-Nにある、実施形態M1またはM2のいずれか1つの方法。
M4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド7-Nにある、実施形態M1~M3のいずれか1つの方法。
M5.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド10-Nにある、実施形態M1~M4のいずれか1つの方法。
M6.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド9-Nにある、実施形態M1~M5のいずれか1つの方法。
M7.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド4-Nにある、実施形態M1~M6のいずれか1つの方法。
M8.少なくとも1つの特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せでの修飾を含む、実施形態M1~M7のいずれか1つの方法。
M9.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾;ホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾;およびそれらの組合せから選択される、実施形態M1~M7のいずれか1つの方法。
M10.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態M9の方法。
M11.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、in vitroで行われる、実施形態M1~M10のいずれか1つの方法。
M12.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、細胞内で行われる、実施形態M1~M10のいずれか1つの方法。
M13.ガイド配列が、その5’末端、3’末端または両方に修飾、任意選択的に、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸(FP)、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸(FSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエート(FS)、またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の安全性増強性修飾をさらに含む、実施形態M1~M12のいずれか1つの方法。
M14.Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、実施形態M1~M13のいずれか1つの方法。
M15.ガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態M1~M14のいずれか1つの方法。
M16.標的HBBポリヌクレオチドを切断するステップを含む、実施形態M1~M15のいずれか1つの方法。
M17.標的HBBポリヌクレオチドにニックを入れるステップを含む、実施形態M1~M15のいずれか1つの方法。
M18.標的HBBポリヌクレオチドに結合するステップを含む、実施形態M1~M15のいずれか1つの方法。
M19.少なくとも1つの特異性増強修飾が、前記方法の特異性を増大させる、実施形態M1~M18のいずれか1つの方法。
【0306】
N1.(a)(i)標的HBBポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが-10から10の間の整数であり、前記ガイド配列が、位置4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nおよび16-Nから選択されるヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含み、
前記合成ガイドRNAがgRNA機能性を有する、合成ガイドRNA。
N2.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド11-Nにある、実施形態N1の合成ガイドRNA。
N3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド5-Nにある、実施形態N1またはN2の合成ガイドRNA。
N4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド7-Nにある、実施形態N1~N3のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N5.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド10-Nにある、実施形態N1~N4のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N6.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド9-Nにある、実施形態N1~N5のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N7.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド4-Nにある、実施形態N1~N6のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N8.少なくとも1つの特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む、実施形態N1~N7のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N9.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾;ホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾;およびそれらの組合せから選択される、実施形態N1~N8のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N10.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態N9の合成ガイドRNA。
N11.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的HBBポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態N1~N10のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N12.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態N1~N10のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N13.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的HBBポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態N1~N10のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N14.合成単一ガイドRNAである、実施形態N1~N13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
N15.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20からなる、実施形態N1~N14のいずれか1つの方法。
【0307】
O1.標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
合成ガイドRNAを用意するステップと(用意される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、20-Nヌクレオチドからなり、Nが-10から10の間の整数であり、前記ガイド配列は、位置4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nおよび16-Nから選択されるヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含む);
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含む方法。
O2.標的ポリヌクレオチドが、VEGFAポリヌクレオチド、IL2RGポリヌクレオチド、CLTA1ポリヌクレオチド、およびCLTA4ポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態O1の方法。
O3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド11-Nにある、実施形態O1またはO2の方法。
O4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド5-Nにある、実施形態O1~O3のいずれか1つの方法。
O5.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド7-Nにある、実施形態O1~O4のいずれか1つの方法。
O6.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド10-Nにある、実施形態O1~O5のいずれか1つの方法。
O7.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド9-Nにある、実施形態O1~O6のいずれか1つの方法。
O8.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド4-Nにある、実施形態O1~O7のいずれか1つの方法。
O9.少なくとも1つの特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せでの修飾を含む、実施形態O1~O8のいずれか1つの方法。
O10.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む、実施形態O1~O8のいずれか1つの方法。
O11.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態O10の方法。
O12.少なくとも1つの特異性増強修飾が、前記方法の特異性を増大させる、実施形態O1~O11のいずれか1つの方法。
O13.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、in vitroで行われる、実施形態O1~O12の方法。
O14.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、細胞内で行われる、実施形態O1~O12の方法。
O15.Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、実施形態O1~O14のいずれか1つの方法。
O16.ガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態O1~O15のいずれか1つの方法。
O17.標的HBBポリヌクレオチドを切断するステップを含む、実施形態O1~O16のいずれか1つの方法。
O18.標的HBBポリヌクレオチドにニックを入れるステップを含む、実施形態O1~O16のいずれか1つの方法。
O19.標的HBBポリヌクレオチドに結合するステップを含む、実施形態O1~O16のいずれか1つの方法。
O20.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20からなる、実施形態O1~O19のいずれか1つの方法。
【0308】
P1.(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが-10から10の間の整数であり、前記ガイド配列が、位置4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-Nおよび16-Nから選択されるヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含み、
前記合成ガイドRNAがgRNA機能性を有する、合成ガイドRNA。
P2.標的ポリヌクレオチドが、VEGFAポリヌクレオチド、IL2RGポリヌクレオチド、CLTA1ポリヌクレオチド、およびCLTA4ポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態P1の合成ガイド。
P3.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド11-Nにある、実施形態P1またはP2の合成ガイドRNA。
P4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド5-Nにある、実施形態P1~P3のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P5.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド7-Nにある、実施形態P1~P4のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P6.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド10-Nにある、実施形態P1~P5のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P7.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド9-Nにある、実施形態P1~P6のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P8.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ヌクレオチド4-Nにある、実施形態P1~P7のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P9.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む、実施形態P1~P8のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P10.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む、実施形態P1~P9のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P11.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態P10の合成ガイドRNA。
P12.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態P1~P11のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P13.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態P1~P12のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P14.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態P1~P13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P15.合成単一ガイドRNAである、実施形態P1~P14のいずれか1つの合成ガイドRNA。
P16.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20からなる、実施形態P1~P15のいずれか1つの合成ガイドRNA。
【0309】
Q1.標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するための方法であって、
ゲノム内の標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
合成ガイドRNAを用意するステップと(用意される前記合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、少なくとも2つの連続する特異性増強修飾を含む);
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドをgRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと
を含み、
前記少なくとも1つの特異性増強修飾が、前記ガイド配列と前記標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、方法。
Q2.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1および2に修飾を含む、実施形態Q1の方法。
Q3.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2および3に修飾を含む、実施形態Q1の方法。
Q4.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3および4に修飾を含む、実施形態Q1の方法。
Q5.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3、4、および5に修飾を含む、実施形態Q1の方法。
Q6.ガイド配列が、連続する特異性増強修飾を5’末端に含む、実施形態Q1の方法。
Q7.連続する特異性増強修飾が、ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3または4で始まる、実施形態Q1の方法。
Q8.標的ポリヌクレオチドが、HBBポリヌクレオチド、VEGFAポリヌクレオチド、IL2RGポリヌクレオチド、CLTA1ポリヌクレオチド、およびCLTA4ポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態Q1~Q7のいずれか1つの方法。
Q9.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む、実施形態Q1~Q8のいずれか1つの方法。
Q10.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む、実施形態Q1~Q8のいずれか1つの方法。
Q11.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態Q10の方法。
Q12.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、in vitroで行われる、実施形態Q1~Q11のいずれか1つの方法。
Q13.切断する、ニックを入れるまたは結合するステップが、細胞内で行われる、実施形態Q1~Q11のいずれか1つの方法。
Q14.標的HBBポリヌクレオチドを切断するステップを含む、実施形態Q1~Q13のいずれか1つの方法。
Q15.標的HBBポリヌクレオチドにニックを入れるステップを含む、実施形態Q1~Q13のいずれか1つの方法。
Q16.標的HBBポリヌクレオチドに結合するステップを含む、実施形態Q1~Q13のいずれか1つの方法。
Q17.ガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態Q1~Q16のいずれか1つの方法。
Q18.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20を含むか、またはそれからなる、実施形態Q1~A17のいずれか1つの方法。
【0310】
R1.(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列が、少なくとも2つの連続する特異性増強修飾を含む、合成ガイドRNAであって、
gRNA機能を有し;
前記少なくとも1つの特異性増強修飾が、前記ガイド配列と前記標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、合成ガイドRNA。
R2.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1および2に特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R3.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2および3に特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R4.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3および4に特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R5.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3、4および5に特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R6.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えられる連続する特異性増強修飾をその5’末端に含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R7.連続する特異性増強修飾が、ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1、2、3または4で始まる、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R8.ガイド配列が、3つの連続する特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R9.ガイド配列が、4つの連続する特異性増強修飾を含む、実施形態R1の合成ガイドRNA。
R10.標的ポリヌクレオチドが、HBBポリヌクレオチド、VEGFAポリヌクレオチド、IL2RGポリヌクレオチド、CLTA1ポリヌクレオチド、およびCLTA4ポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態R1~R9のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R11.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む、実施形態R1~R10のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R12.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾;ホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾;およびそれらの組合せから選択される、実施形態R1~R10のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R13.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態R12の合成ガイドRNA。
R14.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態R1~R13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R15.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態R1~R13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R16.少なくとも1つの特異性増強修飾が、ガイド配列と標的ポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを強化し、ガイド配列とオフターゲットポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを弱化する、実施形態R1~R13のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R17.ガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態R1~R16のいずれか1つの合成ガイドRNA。
R18.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~20を含むか、またはそれからなる、実施形態R1~R17のいずれか1つの方法。
【0311】
S1.合成ガイドRNAを選択する方法であって、
少なくとも第1の合成ガイドRNAおよび第2の合成ガイドRNAを用意するステップと(用意される前記合成ガイドRNAの各々は、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、
前記ガイド配列の各々は、該ガイド配列の5’末端から数えて20-Nヌクレオチド(Nは、-10から10の間の整数である)からなり、
前記第1の合成ガイドRNAは、前記ガイド配列内の第1の位置に特異性増強修飾を含み、前記第2の合成ガイドRNAは、前記ガイド配列内の第2の位置に特異性増強修飾を含む);
Casタンパク質と前記第1の合成ガイドRNAとを含む第1のgRNA:Casタンパク質複合体を形成し、前記標的ポリヌクレオチドを前記第1のgRNA:Casタンパク質複合体と接触させ、前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと;
Casタンパク質と前記第2の合成ガイドRNAとを含む第2のgRNA:Casタンパク質複合体を形成し、前記標的ポリヌクレオチドを前記第2のgRNA:Casタンパク質複合体と接触させ、前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを切断する、それにニックを入れるまたは結合する点での、前記第1のgRNA:Casタンパク質複合体および前記第2のgRNA:Casタンパク質複合体の特異性を判定するステップと;
第1のgRNA:Casタンパク質複合体および第2のgRNA:Casタンパク質複合体のどちらが前記標的ポリヌクレオチドに対してより大きい特異性を有するかを同定するステップと
を含む方法。
S2.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せを含む、実施形態S1の方法。
S3.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)または2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)を含む、実施形態S2の方法。
S4.少なくとも1つの特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾;およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む、実施形態S1の方法。
S5.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態S4の方法。
S6.第1および第2の合成ガイドRNAが、異なるヌクレオチドに特異性増強修飾を含む、実施形態S1~S5のいずれか1つの方法。
S7.特異性が、オンおよび/もしくはオフターゲット切断、結合もしくはニッキングパーセンテージ、オン:オフ比、特異性スコア、またはそれらの組合せから選択される、実施形態S1~S6のいずれか1つの方法。
S8.ガイド配列部分内の異なるヌクレオチド部分に特異性増強修飾を含む第1~第20の合成ガイドRNAを用意するステップと;前記合成ガイドRNAの各々を使用してgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;前記標的ポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと;前記標的ポリヌクレオチドを切断し、それにニックを入れまたは結合し、各合成ガイドRNAの特異性を測定するステップと;最大の特異性増強をもたらす1つまたは複数の修飾された部分を同定するステップとを含む、実施形態S1~S7のいずれか1つの方法。
S9.ガイド配列が、5’末端および3’末端に、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホノ酢酸(FP)、2’-フルオロ-3’-チオホスホノ酢酸(FSP)、2’-フルオロ-3’-ホスホロチオエート(FS)、またはそれらの組合せでの修飾をさらに含む、実施形態S1~S8のいずれか1つの方法。
S10.標的HBBポリヌクレオチドを切断するステップを含む、実施形態S1~S9のいずれか1つの方法。
S11 標的HBBポリヌクレオチドにニックを入れるステップを含む、実施形態S1~S9のいずれか1つの方法。
S12.標的HBBポリヌクレオチドに結合するステップを含む、実施形態S1~S9のいずれか1つの方法。
S13.第1および第2のガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態S1~S12のいずれか1つの方法。
【0312】
T1.合成ガイドRNAを選択するためのキットであって、
少なくとも2つの合成ガイドRNA
(該少なくとも2つの合成ガイドRNAは、
(a)(i)標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含み、前記ガイド配列は、前記ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド20-N(ここでのNは、-10から10の間の整数である)からなり、前記ガイド配列内のヌクレオチドに少なくとも1つの特異性増強修飾を含み、および
該少なくとも2つの合成ガイドRNAは、少なくとも1つの異なる特異性増強修飾を有する点、または前記ガイド配列内の少なくとも1つの異なる位置に特異性増強修飾を有する点で、互いに異なる);および
Casタンパク質、または前記Casタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含むキット。
T2.少なくとも20の合成ガイドRNAを含む、実施形態T1のキット。
T3.Casタンパク質が、Cas9またはCpf1である、実施形態T1またはT2のキット。
T4.特異性増強修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、または2’-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)を含む、実施形態T1~T3のいずれか1つのガイドRNA。
T5.特異性増強修飾が、C3’-エンド糖パッカーを付与する2’修飾、およびホスホノ酢酸またはチオホスホノ酢酸連結修飾を含む、実施形態T1~T3のいずれか1つのキット。
T6.2’修飾が、2’-Fおよび2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態T5のキット。
T7.ガイドRNAが、合成単一ガイドRNAである、実施形態T1~T6のいずれか1つのキット。
【0313】
U1.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、1より大きい、好ましくは少なくとも1.1、より好ましくは少なくとも1.5、よりいっそう好ましくは少なくとも2、よりいっそう好ましくは少なくとも5、よりいっそう好ましくは少なくとも10、または最適には少なくとも20の特異性スコアを有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
U2.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、約2~約60、または好ましくは約10~約60の特異性スコアを有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
U3.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、または最適には少なくとも90%のオンターゲット切断を有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
U4.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、約25%~99.9%、または好ましくは約50%~約99.9%のオンターゲット切断を有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
U5.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、1より大きい、好ましくは少なくとも1.1:1、より好ましくは少なくとも1.5:1、よりいっそう好ましくは少なくとも3:1、よりいっそう好ましくは少なくとも10:1、よりいっそう好ましくは少なくとも20:1、または最適には少なくとも40:1のオン:オフ比を有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
U6.gRNA:Casタンパク質複合体が、特異性増強修飾を含み、約1.5:1~約99.9:1、または好ましくは約10:1~約99.9:1のオン:オフ比を有する、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
【0314】
W1.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~19からなり、位置3、4、6、8、9および10から選択されるヌクレオチドの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
W2.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~18からなり、位置2、3、5、7、8および9から選択されるヌクレオチドの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
W3.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~17からなり、位置1、2、4、6、7および8から選択されるヌクレオチドの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
W4.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~16からなり、位置1、3、5、6および7から選択されるヌクレオチドの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
W5.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~15からなり、位置2、4、5および6から選択されるヌクレオチドの1つに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
W6.ガイド配列が、該ガイド配列の5’末端から数えてヌクレオチド1~14からなり、位置1、3、4および5から選択されるヌクレオチドに少なくとも1つの化学修飾を含む、前記実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNA、方法またはキット。
【0315】
下記の例示的実施形態において、「X実施形態」とは、番号がXで始まるすべての実施形態を意味する。同様に、下記の例示的実施形態において、「Xn実施形態」とは、番号がXnで始まるすべての実施形態を意味する。例として、「X9実施形態」は、いずれの請求項に記載される場合も、「X9」、および存在する場合には「X9a」から「X9z」までを意味する。
【0316】
X.(a)(i)PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間の整数であり、
前記ガイド配列が、少なくとも1つの修飾を含む、合成ガイドRNA。
X1.(i)PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる、ガイド配列と、
(ii)ステム配列と
を含む合成crRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間の整数であり、
前記ガイド配列が、少なくとも1つの修飾を含む、合成crRNA。
X1a.前記少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置1-Nでの修飾を含む、実施形態XまたはX1の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X1b.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置2-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X1c.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置3-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X2.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置4-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X3.前記少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置5-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X3a.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置6-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X4.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置7-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X4a.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置8-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X5.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置9-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X6.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置10-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置11-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7a.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置12-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7b.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置13-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7c.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置14-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7d.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置15-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7e.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置16-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7f.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置17-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7g.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置18-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7h.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置19-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X7i.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置20-Nでの修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X8.少なくとも1つの修飾が、ホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、任意選択的にホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X8a.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結、任意選択的にホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X8b.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホノプロピオン酸ヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9.前記少なくとも1つの修飾が、チオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結、任意選択的にチオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9a.前記少なくとも1つの修飾が、チオホスホノプロピオン酸ヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9b.前記少なくとも1つの修飾が、チオホスホノカルボン酸エステルヌクレオチド間連結、任意選択的にチオホスホノ酢酸エステルヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9c.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9d.前記少なくとも1つの修飾が、キラルホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9e.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホロジチオエートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9f.前記少なくとも1つの修飾が、ボラノホスホネートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9g.前記少なくとも1つの修飾が、C1-4アルキルホスホネートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9h.前記少なくとも1つの修飾が、メチルホスホネートヌクレオチド間連結を含む、X9g実施形態の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X9i.前記少なくとも1つの修飾が、メチルチオホスホネートヌクレオチド間連結を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10.前記少なくとも1つの修飾が、修飾された糖を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10a.前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシリボース(2’-デオキシ)である、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10b.前記少なくとも1つの修飾が、2’-NH2である、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10c.前記少なくとも1つの修飾が、2’-アラビノフラノシル(2’-アラビノ)である、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10d.前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノフラノシル(2’-F-アラビノ)である、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10e.前記少なくとも1つの修飾が、2’-LNAである、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10f.前記少なくとも1つの修飾が、2’-ULNAである、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10g.前記少なくとも1つの修飾が、4’-チオリボシルである、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10h.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-C1-4アルキルである、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10i.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-C1-3アルキル-O-C1-3アルキルである、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10j.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-フェニル、2’-チオフェニル、2’-S-チオフェニル、2’-メチル、2’-エチル、2’-プロピル、2’-アリル、2’-アリルフェニル、2’-メチルヒドロキシ、2’-メチルオキシメチル、2’-O-カルバミン酸、2’-O-エチルアミノ、2’-O-アリルアミノ、2’-O-プロピルアミノ、および2’-O-置換フェニルから選択される、実施形態X10の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X10k.前記少なくとも1つの修飾が、C3’-エンド糖パッカーコンホメーションを付与する2’修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X11.前記2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、および2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態X10kの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X11a.前記2’修飾が、2’-O-メチルである、実施形態X11の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X11b.前記2’修飾が、2’-デオキシ-2’-フルオロリボフラノシル(2’-フルオロ)である、実施形態X11の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X11c.前記2’修飾が、2’-O-(2-メトキシエチル)である、実施形態X11の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X12.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X13.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X14.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X15.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X16.前記少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置4-N~20-Nのいずれか1つの位置にホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含み、前記修飾が、ガイド配列の位置15-Nにはない、実施形態XまたはX1の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X16a.前記少なくとも1つの修飾が、ヌクレオチド間連結修飾を含み、位置15-Nが、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)または2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)を含まない、実施形態XまたはX1の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X17.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置4-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X16aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X18.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置5-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X17のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X19.前記少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置6-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X18のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X20.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置7-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X19のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X21.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置8-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X20のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X22.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置9-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X21のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X23.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置10-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X22のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X24.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置11-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X23のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X25.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置12-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X24のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X26.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置13-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X25のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X27.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置14-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X26のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X27a.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置15-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16a~X26のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X28.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置16-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X27のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X29.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置17-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X28のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X30.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置18-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X29のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X31.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置19-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X30のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X32.少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置20-Nでのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾を含む、実施形態X、X1およびX16~X31のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X33.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結を含む、実施形態X、X1およびX16~X32のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X34.前記少なくとも1つの修飾が、チオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結を含む、実施形態X、X1およびX16~X32のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X35.前記ホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結が、ホスホノ酢酸連結(P)である、実施形態X、X1およびX16~X33のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X36.前記ホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結が、チオホスホノ酢酸連結(SP)である、実施形態X、X1およびX16~X33のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X37.前記ガイドRNAの5’末端、3’末端または両末端に少なくとも1つの修飾をさらに含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X38.5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態X37の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X38a.5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)、2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態X37の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X39.前記標的ポリヌクレオチドが、HBBポリヌクレオチド内に位置する、実施形態X~X38aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X40.前記標的ポリヌクレオチドが、IL2RGポリヌクレオチド内に位置する、実施形態X~X38aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X41.前記標的ポリヌクレオチドが、VEGFAポリヌクレオチド内に位置する、実施形態X~X38aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X42.前記標的ポリヌクレオチドが、CLTA1ポリヌクレオチド内に位置する、実施形態X~X38aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X43.前記標的ポリヌクレオチドが、CLTA4ポリヌクレオチド内に位置する、実施形態X~X38aのいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X44.標的ポリヌクレオチドが、GCCCCACAGGGCAGTAAを含む、実施形態X39の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X45.標的ポリヌクレオチドが、TAATGATGGCTTCAACAを含む、実施形態X40の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X46.標的ポリヌクレオチドが、GAGTGAGTGTGTGCGTGを含む、実施形態X41の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X47.標的ポリヌクレオチドが、CCTCATCTCCCTCAAGCを含む、実施形態X42の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48.標的ポリヌクレオチドが、GATGTAGTGTTTCCACAを含む、実施形態X43の合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48a.少なくとも1つの修飾が、修飾された塩基を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48b.修飾された塩基が、2-チオU、2-チオC、4-チオU、6-チオG、2-アミノA、2-アミノプリン、シュードウラシル、ヒポキサンチン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、7-デアザ-8-アザアデニン、5-メチルC、5-メチルU、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシン、5-エチニルウラシル、5-アリルU、5-アリルC、5-アミノアリルU、5-アミノアリルC、脱塩基ヌクレオチド、UNA塩基、イソC、イソG、5-メチル-ピリミジン、x(A、G、C、T、U)、y(A、G、C、T、U)、およびそれらの組合せから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48c.修飾された塩基が、2-チオU、2-チオC、4-チオUおよび6-チオUから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48d.修飾された塩基が、2-アミノAおよび2-アミノプリンから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48e.修飾された塩基が、シュードウラシルおよびヒポキサンチンから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48f.修飾された塩基が、イノシンである、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48g.修飾された塩基が、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザアデニン、および7-デアザ-8-アザアデニンから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48h.修飾された塩基が、5-メチル-シトシン、5-メチル-ウラシルおよび5-メチル-ピリミジンから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48i.修飾された塩基が、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5,6-デヒドロウラシル、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-エチニルシトシンおよび5-エチニルウラシルから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48j.修飾された塩基が、5-アリルウラシル、5-アリルシトシン、5-アミノアリルウラシルおよび5-アミノアリルシトシンから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48k.修飾された塩基が、脱塩基ヌクレオチドである、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48l.修飾された塩基が、イソCおよびイソGから選択される、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X48m.修飾された塩基が、UNA塩基である、実施形態X48aの合成ガイドRNAまたはcrRNA。
X49.CRISPR機能の特異性を増強するための方法であって、
標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
前記X実施形態のいずれか1つの少なくとも1つの合成ガイドRNAおよびcrRNAを用意するステップと;
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAまたはcrRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドと前記ガイドRNAまたはcrRNAとのハイブリダイゼーション、およびCRISPR機能の遂行をもたらすための条件下で、前記標的ポリヌクレオチドを前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと
を含む方法。
X49a.CRISPR機能の特異性を増強するための方法であって、
標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
前記X実施形態のいずれか1つの少なくとも1つの合成crRNAを用意するステップと;
Casタンパク質と前記合成crRNAとを含むcrRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを前記crRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと
を含む方法。
X49b.CRISPR機能の特異性を分析するための方法であって、
(1)標的配列を含む標的ポリヌクレオチドと(2)オフターゲット配列を含む1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドとを含むサンプルを用意するステップと;
前記標的配列のための前記X実施形態のいずれか1つの少なくとも1つの合成ガイドRNAまたはcrRNAを用意するステップと;
タンパク質としてまたは前記Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして用意されるCasタンパク質と前記合成ガイドRNAまたはcrRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記gRNAまたはcrRNAの前記標的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーション、およびCRISPR機能の遂行をもたらすための条件下で、前記サンプルと前記gRNA:Casタンパク質複合体とを接触させるステップと;
前記標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されたベイトと、1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されたベイトとを含む、オリゴヌクレオチドベイトのライブラリーを添加して、前記標的ポリヌクレオチドおよび前記1つまたは複数のオフターゲットポリヌクレオチドを捕捉するステップと;
前記捕捉された標的ポリヌクレオチドおよび前記捕捉されたオフターゲットポリヌクレオチドを単離および分析して、前記CRISPR機能に起因する変化を同定し、前記標的ポリヌクレオチドおよび前記オフターゲットポリヌクレオチドにおける相対変化を判定し、それによって前記CRISPR機能の特異性を評価するステップと
を含む方法。
X49c.前記サンプルが、標的配列を各々が含む2つ以上の標的ポリヌクレオチドを含む、実施形態X49bの方法。
X49d.前記ガイドRNAが、任意の前記X実施形態の合成crRNAであり、前記gRNA:Casタンパク質複合体が、crRNA:Cpf1複合体である、実施形態X49bの方法。
X50.接触させるステップが、細胞内で実施される、実施形態X49の方法。
X51.細胞が、初代細胞である、実施形態X50に記載の方法。
X52.Casタンパク質が、タンパク質として、または該Casタンパク質を発現するポリヌクレオチドとして用意される、実施形態X49~51のいずれか1つの方法。
X52a.Casタンパク質が、Cas9である、実施形態X49~52のいずれか1つの方法。
X52b.Casタンパク質が、Cpf1である、実施形態X49~52のいずれか1つの方法。
X53.ポリヌクレオチドが、mRNAである、実施形態X52の方法。
X54.前記形成するステップが、細胞外で実施される、前記X実施形態のいずれか1つの方法。
X55.CRISPR機能が、遺伝子編集である、前記実施X形態のいずれか1つの方法。
X55a.CRISPR機能が、遺伝子編集であり、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドを相同性指向修復のためのドナー鋳型として用意するステップをさらに含む、前記X実施形態のいずれか1つの方法。
X56.CRISPR機能が、CRISPRaである、前記X実施形態のいずれか1つの方法。
X57.CRISPR機能が、CRISPRiである、前記X実施形態のいずれか1つの方法。
X57a.捕捉されたポリヌクレオチドを分析するステップを含み、分析するステップが、シークエンシングによって実施される、実施形態X55~X57のいずれか1つの方法。
X57b.遺伝子発現レベルを測定することによって、任意選択的にqRT-PCRによって、前記CRISPR機能を分析するステップをさらに含む、実施形態X56またはX57の方法。
X57c.遺伝子発現レベルの前記測定が、マイクロアレイを用いて実施される、実施形態X57bの方法。
X58.CRISPR機能が、遺伝子発現の調節である、前記実施X形態のいずれか1つの方法。
X59.Nが0であり、ガイド配列が、20ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X60.Nが1であり、ガイド配列が、19ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X61.Nが2であり、ガイド配列が、18ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X62.Nが3であり、ガイド配列が、17ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X63.Nが4であり、ガイド配列が、16ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X64.Nが5であり、ガイド配列が、15ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X65.Nが-1であり、ガイド配列が、21ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X66.Nが-2であり、ガイド配列が、22ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X67.Nが-3であり、ガイド配列が、23ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X68.Nが-4であり、ガイド配列が、24ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X69.Nが-5であり、ガイド配列が、25ヌクレオチドからなる、実施形態X~X58のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X70.ガイド配列内の10以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X71.ガイド配列内の9以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X72.ガイド配列内の8以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X73.ガイド配列内の7以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X74.ガイド配列内の6以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X75.ガイド配列内の5以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X76.ガイド配列内の4以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X77.ガイド配列内の3以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X78.ガイド配列内の2以下のヌクレオチドが、修飾を含む、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X79.ガイド配列の最初の4つのヌクレオチドが、すべて修飾されている場合、それらが同一の方法で修飾されていない、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X80.ガイド配列の最初の5つのヌクレオチドが、すべて修飾されている/される場合、それらが同一の方法で修飾されていない/されない、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X81.ガイドRNAが、単一ガイドRNAである、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAまたは方法。
X82.ガイドRNAが、修飾を有しない対応するガイドRNAより、標的ポリヌクレオチオに対する高い特異性、または高いgRNA機能性を有する、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X83.少なくとも2つの異なる合成ガイドRNAが、2つの異なる標的ポリヌクレオチドのために用意される、前記X実施形態のいずれか1つの方法。
X84.2つの異なる標的ポリヌクレオチドが、同じ遺伝子内に位置する、実施形態X83の方法。
X85.Nが、-10から6の間であり、ガイド配列が、14~30ヌクレオチドからなる、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X86.Nが、-5から6の間であり、ガイド配列が、14~25ヌクレオチドからなる、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X87.Nが、-4から3の間であり、ガイド配列が、17~24ヌクレオチドからなる、前記X実施形態のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X88.前記少なくとも1つの修飾が、2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)を含む、前記X実施形態方法のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X89.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)を含む、前記X実施形態方法のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X90.2’-デオキシ-3’-ホスホノ酢酸(DP)を含む少なくとも1つの修飾を、5’末端、3’末端または両末端に含む、前記X実施形態方法のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
X91.2’-O-デオキシ-3’-チオホスホノ酢酸(DSP)を含む少なくとも1つの修飾を、5’末端、3’末端または両末端に含む、前記X実施形態方法のいずれか1つの合成ガイドRNAもしくはcrRNAまたは方法。
【0317】
Y1.(a)(i)PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間、任意選択的に10~6の間の整数であり、
前記ガイド配列が、前記ガイド配列の位置4-N、5-N、7-N、9-N、10-N、11-N、14-N、もしくは16-N、またはそれらの組合せに位置する、少なくとも1つの修飾をさらに含む、合成ガイドRNA。
Y2.単一ガイドRNAである、実施形態Y1の合成ガイドRNA。
Y3.前記少なくとも1つの修飾が、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P);チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP);およびC3’-エンド糖パッカーコンホメーションを付与する2’修飾;またはそれらの組合せから選択される、実施形態Y1の合成ガイドRNA。
Y4.前記2’修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、および2’-O-(2-メトキシエチル)から選択される、実施形態Y3の合成ガイドRNA。
Y5.前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)から選択される、実施形態Y1の合成ガイドRNA。
Y6.前記少なくとも1つの修飾が、ガイド配列の位置5-Nもしくは11-N、またはそれらの組合せに位置する、実施形態Y5の合成ガイドRNA。
Y7.前記ガイドRNAの5’末端、3’末端または両末端に少なくとも1つの修飾をさらに含む、実施形態Y1の合成ガイドRNA。
Y8.5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態Y7の合成ガイドRNA。
Y9.5’末端、3’末端または両末端に、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)またはそれらの組合せから独立に選択される少なくとも1つの修飾をさらに含む、実施形態Y5の合成ガイドRNA。
Y10.前記標的ポリヌクレオチドが、HBB遺伝子、IL2RG遺伝子、またはVEGFA遺伝子内に位置する、実施形態Y5の合成ガイドRNA。
Y11.標的ポリヌクレオチドが、HBB遺伝子のGCCCCACAGGGCAGTAA、IL2RG遺伝子のTAATGATGGCTTCAACA、またはVEGFA遺伝子のGAGTGAGTGTGTGCGTGを含む、実施形態Y10の合成ガイドRNA。
Y12.前記ガイドRNAが、単一ガイドRNAであり、前記ガイドRNAの5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態Y10の合成ガイドRNA。
Y13.(a)(i)PAM配列に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列、(ii)ステム配列を含むcrRNAセグメントと、
(b)前記ステム配列に部分的または完全に相補的であるヌクレオチド配列を含むtracrRNAセグメントと
を含む合成ガイドRNAであって、
前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間、任意選択的に10~6の間の整数であり、
前記ガイド配列が、前記ガイド配列の位置4-N~20-Nのいずれかの位置に少なくとも1つのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾をさらに含み、前記修飾が、ガイド配列の位置15-Nにはない、合成ガイドRNA。
Y14.前記ホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結が、ホスホノ酢酸連結(P)およびチオホスホノ酢酸連結(SP)から選択される、実施形態Y13の合成ガイドRNA.
Y15.前記ガイドRNAの5’末端、3’末端または両末端に少なくとも1つの修飾をさらに含む、実施形態Y13の合成ガイドRNA。
Y16.単一ガイドRNAである、実施形態Y13の合成ガイドRNA。
Y17.5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態Y15の合成ガイドRNA。
Y18.PAM部位に隣接する標的配列を含む標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるガイド配列を含む合成crRNAであって、前記ガイド配列が、20-Nヌクレオチドからなり、Nが、-10から10の間、任意選択的に10~6の間の整数であり、前記ガイド配列が、前記ガイド配列の位置4-N~20-Nのいずれかの位置に少なくとも1つのホスホノカルボン酸またはチオホスホノカルボン酸ヌクレオチド間連結修飾をさらに含み、前記修飾が、前記ガイド配列の位置15-Nにはない、合成crRNA。
Y19.前記crRNAの5’末端、3’末端または両末端に少なくとも1つの修飾をさらに含む、実施形態Y18の合成crRNA。
Y20.CRISPR機能の特異性を増強する方法であって、
標的ポリヌクレオチドを選択するステップと;
実施形態Y13の少なくとも1つの合成ガイドRNAを用意するステップと;
Casタンパク質と前記合成ガイドRNAとを含むgRNA:Casタンパク質複合体を形成するステップと;
前記標的ポリヌクレオチドを、前記gRNA:Casタンパク質複合体と接触させるステップと
を含み、
前記Casタンパク質が、タンパク質として、または前記Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして用意される、方法。
Y21.前記ガイドRNAが、単一ガイドRNAである、実施形態Y20の方法。
Y22.前記ガイドRNAが、前記ガイドRNAの5’末端、3’末端または両末端に少なくとも1つの修飾をさらに含む、実施形態Y20の方法。
Y23.5’末端、3’末端または両末端での前記少なくとも1つの修飾が、2’-O-メチル(M)、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結(S)、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(P)、チオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結(SP)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)、またはそれらの組合せから独立に選択される、実施形態Y22の方法。
Y24.前記ガイドRNAが、ホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結およびチオホスホノ酢酸ヌクレオチド間連結またはそれらの組合せから選択される少なくとも1つの修飾を含む、実施形態Y20の方法。
Y25.前記ガイドRNAが、2’-O-メチル-3’-ホスホノ酢酸(MP)および2’-O-メチル-3’-チオホスホノ酢酸(MSP)から選択される少なくとも1つの修飾を含む、実施形態Y20の方法。
Y26.前記ポリヌクレオチド標的の前記gRNA:Casタンパク質複合体との前記接触が、細胞内で実施される、実施形態Y20の方法。
Y27.前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質である、実施形態Y26の方法。
Y28.前記標的ポリヌクレオチドが、HBB遺伝子、IL2RG遺伝子、またはVEGFA遺伝子内に位置する、実施形態Y27の方法。
Y29.前記標的ポリヌクレオチドが、HBB遺伝子のGCCCCACAGGGCAGTAA、IL2RG遺伝子のTAATGATGGCTTCAACA、またはVEGFA遺伝子のGAGTGAGTGTGTGCGTGを含む、実施形態Y28の方法。
Y30.前記形成が、細胞外で実施される、実施形態Y20の方法。
【0318】
例示的または好ましい実施形態の前述の記載は、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の制限としてではなく、例示ととられなければならない。容易に理解されるであろうが、特許請求の範囲において示されるような本発明から逸脱することなく、上記で示される特徴の多数の変更および組合せが利用され得る。このような変更は、本発明の範囲からの逸脱と見なされず、すべてのこのような変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれるものとする。本明細書において引用されたすべての参考文献は、参照により全文が本明細書の一部をなすものとする。
【配列表】