(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】シースルー表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220623BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2018566855
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 US2017038481
(87)【国際公開番号】W WO2017223167
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】506144891
【氏名又は名称】イシイ フサオ
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100208395
【氏名又は名称】北畠 健二
(72)【発明者】
【氏名】中西 美木子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和彦
(72)【発明者】
【氏名】油川 雄司
(72)【発明者】
【氏名】村上 圭一
(72)【発明者】
【氏名】フサオ イシイ
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071309(JP,A)
【文献】特開2015-072436(JP,A)
【文献】特開2001-166211(JP,A)
【文献】特開2015-121740(JP,A)
【文献】特開2007-079592(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134374(WO,A1)
【文献】特開2004-069868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0302773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
H04N 13/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースルー表示システムであって、
レーザー若しくはLEDである発光デバイスを有する光源およびLCD、LCOS、マイクロミラー、マイクロシャッター若しくはレーザービームスキャナーから画像を形成する
ために前記光源からビームを投射する、又は、OLEDにより画像を形成する表示装置と、
観察者の前にあるホログラフィック光学素子(HOE)又は回折光学素子(DOE)であるシースルー光学素子と、
少なくとも1つのミラーと、少なくとも1つの自由曲面を有する少なくとも1つのレンズとを有する投影光学系と、
を備え、
前記投影光学系は、前記投射されたビームの水平幅が最小となる位置が、前記投射されるビームの垂直幅が最小となる位置よりも前記シースルー光学素子により近くなるように、前記表示装置から前記シースルー光学素子に向けてビームを投射するシースルー表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
表示装置、レンズおよびミラーを含む前記投影光学系は、眼鏡のテンプル内に埋め込まれ、画像は、前記投影光学
系の空気を通って観察者の前方の前記シースルー光学素子に投影される。
【請求項3】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記投影光学系は、前記シースルー光学素子に向かう水平方向と垂直方向とで異なる焦点距離を有する。
【請求項4】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
1つの自由曲面を有する前記1つのレンズは、回転非対称面を有するレンズである。
【請求項5】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
1つの自由曲面を有する前記1つのレンズは、
レンズ領域内に対称軸を有さない非球面レンズである。
【請求項6】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記投影光学系の前記ミラーは自由曲面である。
【請求項7】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
光源は、少なくとも3つの中心波長を有するビームを照射するために、少なくとも3つの中心波長を有する。
【請求項8】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
光源には、レーザー活性化燐光体又は第2高調波発生を伴うレーザーの装置が含まれる。
【請求項9】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記シースルー光学素子は、光透過率を変化させるフォトクロミック材料、エレクトロクロミック材料および液晶の群から選択される層を有する。
【請求項10】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記シースルー光学素子は、紫外線によって光学素子が劣化しないように、紫外線保護層を有する。
【請求項11】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記表示装置を駆動する回路は画像の歪み及び色の非収束を電子的に補正できるようにメモリ補正システムを有する。
【請求項12】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記投影光学系は、焦点距離を変えることができるLCD、アナログマイクロミラーアレイおよび電気光学材料の群から選択された適応レンズを有する。
【請求項13】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
投影光学系は、マイクロミラー、ピエゾ振動ディフューザー、および多層のディフューザーの群から選択されるスペックル除去装置を有する。
【請求項14】
請求項1に記載のシースルー表示システムであって、
前記表示装置を駆動する回路は、逆ノイズ信号を加算することにより、前記シースルー光学素子の望ましくない回折によって生じる光学ノイズのノイズキャンセルシステムを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連する出願]
本出願は、2016年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/493982号の利益を主張する非仮出願である。この出願は2013年6月27日に出願された米国仮特許出願第61/957,258号の非仮出願である、2014年6月23日に出願された国際出願PCT/US2014/000153号の部分係属出願(CIP)でもある。
【0002】
本発明は、高解像度で広視野のシースルー表示を可能にする回折光学素子に画像を投影するための表示システムに関する。より詳細には、本発明は、非常に小さいフォームファクタを有するウェアラブルディスプレイに適したディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
ウェアラブルディスプレイは、スマートフォンが普及し市場に受け入れられた後、近年広く注目されている。ウェアラブルディスプレイは、ハンズフリー動作の利点を提供し、通常の視界と同じ距離にディスプレイを装着した人に画像を表示する。これらの利点のために、ウェアラブルディスプレイには非常に大きなニーズがある。しかしながら、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、アイグラスタイプディスプレイなどの従来の近視眼ディスプレイは、視聴者に満足のいくウェアラブルディスプレイのソリューションを提供していない。これらの従来のデバイスは、重すぎ、大きすぎ、暗すぎることが多いからである。さらに、これらの従来のウェアラブルディスプレイは、しばしば低解像度であり、それらの多くは、シースルービューを提供せず、ほとんどが高価であり、小さなサイズの画像しか表示することができない。したがって、透視性の光路を利用して、明るく、小さく、明るく、高解像度のウェアラブルディスプレイ装置を提供することが緊急に求められている。新しいウェアラブル装置は、大きな画像を表示することができる安価で、そのようなウェアラブル装置を身に着けていることを他人に気づかれることなく、ステルス的に装着できることがさらに望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7460286号公報
【文献】米国特許第7369317号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】SID 2008 Digest, ISSN/008-0966X/08/3901-0089, "A Full Color Eyewear Display using Holographic Planar Waveguides"
【文献】SID 2006 Digest, ISSN0006-64・SID 06 DIGEST 0966X/06/3701-0064, entitled "Novel Diffractive Optical Components for Near to Eye Displays"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1および
図1Aに示されるように、Kasaiらは、米国特許第7460286号(特許文献1)において、ホログラフィ光学素子をシースルー(透視)する能力を提供する光学系を実現するディスプレイシステムの一種であるアイグラスを開示している。この表示システムは、液晶表示装置の表面に対して垂直方向に沿って表示装置から法線方向に画像を投影し、光導波路に導かれて観察者の眼に向けて反射された画像を含む光を投影する。しかしながら、導波路の使用のために、視野および解像度は非常に限られている。
【0007】
図2および
図2Aに示すように、Mukawaらは、SID 2008 Digest, ISSN/008-0966X/08/3901-0089, "A Full Color Eyewear Display using Holographic Planar Waveguides"(非特許文献1)において、2枚のホログラフィック光学素子でシースルー能力を実現するタイプのディスプレイシステムとして、別のアイグラスを開示している。ここでもまた、このタイプのアイグラスは、画像および視野の解像度を制限する導波路を使用する。
【0008】
図3に示されているように、Levolaは、SID 2006 Digest, ISSN0006-64・SID 06 DIGEST 0966X/06/3701-0064, entitled "Novel Diffractive Optical Components for Near to Eye Displays"(非特許文献2)において、2つの目の中央にLCD装置を配置することによって実施される別のディスプレイシステムを開示している。しかしながら、このような表示システムは、大きな突出スペースを必要とし、フォームファクタを大きくし、したがって、ウェアラブルディスプレイシステムとして装置を大き過ぎて不便にする。上記の3種類のディスプレイは、ホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element/HOE)または回折光学素子(Diffractive Optical Element/DOE)のいずれかを使用しており、これらの光学ディスプレイはすべて、大きな色収差、色のクロストーク、大きな像面湾曲収差および歪曲収差の基本的な困難を有する。Mukawaらは、複数の導波管を使用して色のクロストークを低減する方法について説明し、システムをより重く厚くし、さらに光の利用効率を低下させる。Kasaiらは、光の利用効率を向上させる単一のHOEを使用したが、他の収差は残っており、FOB(視野)は小さくなければならず、これらの収差は目立たない。これらの困難のために、上述の問題および限界を取り除くことができるように、新規かつ改善されたウェアラブルディスプレイシステムを提供することが緊急に求められている。
【0009】
図4および
図4Aに示されるように、Liらは、米国特許第7369317号(特許文献2)において、目の眼鏡に取り付け可能なコンパクトなディスプレイおよびカメラモジュールを開示している。この眼鏡は、厚いPBS(偏光ビームスプリッタ)を必要とし、FOB(視野)はかなり小さい。さらに、この眼鏡はディスプレイの存在が非常に明白であるためステルスではない。
【0010】
図1および
図2に示すような例では、ホログラムおよび導波管を使用することにより、透視画像を有するウェアラブルディスプレイが可能であることを公に実証している。しかしながら、視野の大きさ及び解像度のために、これらのシステムは有用性が限られている。60度を超える非常に大きな視野と100万画素以上の高解像度を達成するためには、新しい革新的なシステムを提供する必要がある。本発明の1つの観点は、60度以上の視野角および100万画素から800万画素の高解像度、例えば4K表示を可能にする新しいシステムおよび設計を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの見通しは、眼鏡のほぼ完全なサイズである視野を有するシースルー近目ディスプレイを提供することである。本発明の別の見通しは、本発明の異なる実施形態でさらに例示されるように、眼鏡のテンプル内に埋め込むことができるシステムの非常にコンパクトな光学部品および電子機器を備えたウェアラブルディスプレイシステムを提供することである。具体的には、本発明は、テンプルから眼鏡のレンズに向けて画像を投影するために使用される
OLED、LCOS、LCDまたはDMDのような表示装置を開示する。様々な実施形態に示すように、本発明は、眼鏡のテンプルからその接眼レンズに投影され、人間の目に反射される眼鏡および人間の眼の幾何学的構成の利点を利用する。さらに、外界の視認性を保つために、ホログラムが用いられている。ホログラムは特定の狭い帯域幅の光のみを反射することができ、残りの光は通過することができる。ホログラムの狭帯域選択性のために、特定の帯域幅を有する画像光を反射し、観察者が眼鏡を通して見ることができるように画像が外部画像に重ね合わされる。
図1および
図2に示す従来の表示システムとは異なり、画像光は導光板を通さずに直接眼鏡から投射される。このようにすれば、導波路を用いた投影光学系よりも投影面積を大きくすることができる。したがって、本発明の着用可能な表示装置は、視聴者が、改善された解像度でより大きな視野を知覚することを可能にする。さらに、ウェアラブル装置の傾斜投影によって引き起こされる非点収差およびコマ収差のような大きな収差は、高解像度を達成するために補償される。これらの収差の問題は、本発明では、自由形状のレンズおよびミラーの使用に加えて、幾何学的光学および波動光学の両方を同時に組み合わせることによって、新しく開発された技術で実施されるハイブリッド光学構成によって解決される。
【0012】
2つの自由形状のレンズ1905、1906、ミラー1904、およびホログラム1902を組み込んだ、本発明の例示的な実施形態を
図19および
図22に示す。具体的には、
図19、
図22は、必ずしも回転対称性を有さないコンピュータにより生成された面を有するレンズとして定義される自由曲面レンズを備えるウェアラブルディスプレイ装置として、このシステムが人間の顔の周りにどのように適合することができるかを示している。
【0013】
分解能を上げ、ひずみを最小にするために、
図20に示すように、別のレンズが追加される。この例では、3つの自由曲面レンズ2005,2006,2007、フリーミラー2004およびホログラム2002が組み込まれています。
【0014】
本発明の別の例示的な実施形態が
図21に示されており、視野を拡大するために3つの自由形状レンズが使用される。この例示的な実施形態は、分解能および歪みを犠牲にすることなく、67度の視野を有する着用可能な表示装置を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】米国特許第7460286号に関連する公開された技術報告書にKasaiによって示された従来技術の画像表示システムの断面図である。
【
図1A】シースルー機能を実証した実際のサンプルの写真である。
【
図2A】SID 2008 Digest, ISSN/008-0966X/08/3901-0089, "A Full Color Eyewear Display using Holographic Planar Waveguides"でMukawaらによって示された着用可能な表示装置であり、
図2Aはシースルー能力を示した。
【
図3】SID 2006 Digest, ISSN0006-64・SID 06 DIGEST 0966X/06/3701-0064, entitled "Novel Diffractive Optical Components for Near to Eye Displays"でLevolaによって報告された従来技術の別の例である。
【
図4】米国特許US7369317号に記載されているディスプレイとカメラの両方を有するシースルー能力を有するウェアラブルディスプレイの別の従来技術の開示を示す。
【
図6】ディスプレイの存在が目立たないように、本発明のすべての光学機器および電子機器を埋め込むのに十分な大きさのテンプルを有する眼鏡の例示的な実施形態である。
【
図7】眼鏡のテンプルからの画像を含む投射光7102が眼の瞳に向けて反射され7105、光が網膜7107上に集束されて、画像7104をホログラムの前にある距離に置いた図である。
【
図8】実質的に平行な光線8102がホログラム8103に投影され、眼の瞳孔8105に反射される別の実施形態の光路を示す図である。したがって、ホログラムは、ホログラムミラーの焦点距離として決定される、ホログラムと瞳孔との間の距離の焦点距離(8109)。
【
図9】ミラー軸9104に平行な入射光線9101を単一の焦点9103に反射する凹面鏡9102を示し、ミラー9102の表面は球面または非球面である。
【
図10】入射光線10101をミラー軸から単一の焦点10103に傾斜した方向から反射する凹面鏡10102を示し、このミラー10102の表面は、単一の焦点10103に収束し、焦点距離f2は前の例f1と同じに調整することができる。
【
図11】入射光線11101を水平軸から傾いた方向から水平軸上の単一の焦点11103に反射する凹面鏡11102を示し、このミラー11102の表面は11103と焦点距離f3で収束するフリーフォームを前の例f1と同じように調整することができる。
【
図12】水平軸から傾斜した方向からの入射光線12101を水平軸上の単一の焦点12103に反射するホログラム12102を示し、このホログラム12102の表面は平坦である12103に収束させ、焦点距離f4を前の例f1と同様に調整することができる。ホログラムの非常に狭い帯域の波選択性のために、指定された光の帯域幅のみが反射され、光の大部分が通過し、シースルーメガネ表示を生成する。
【
図13】焦点距離13103の右側に配置された物体13101を示し、ホログラムミラー13104の右側に画像が生成されているが、これは目には見えない。なぜなら、画像の焦点が合っていない。
【
図14】物体14101が焦点距離14103の左側に位置するとき、眼鏡のホログラムの短い焦点距離があってもある距離で画像が生成されることを示し、画像はホログラムミラー14102の左側に配置され、画像の位置に焦点を合わせることができるため、目に見える。この図は、ホログラム眼鏡14102とホログラムの焦点との間に位置する物体が、眼鏡を着用している人によって視認可能であることを示す。
【
図15】目画像と目との間に実画像15127が生成されると、距離15129に仮想画像15122が生成されるため、アイ・グラス15120と人間の目15125との間に物理的な物体が存在しない理由を示す図である。
【
図16】眼球が、傾斜した方向16130に沿って画像を見るとき、眼球および瞳孔16131が物体に向かって移動する眼球の動きの効果を示す。
【
図17】主光線が、瞳孔の表面ではなく眼球の中心で交差すべきであることを示す図である。これは、ホログラムの焦点が眼球の中心17132に位置すべきであることを示唆している。
【
図18】リレーレンズ1806がディスプレイ1801から光を受けてミラー1805に通過する、1Kまでの解像度に適した、本発明の別の例示的な実施形態としての単純な2つのレンズシステムを示す。光ビームは観察者の顔に沿って曲げられ、プリズム1804に投影される。プリズムは、ホログラムの収差を補償する収差を生成する。
【
図19】自由形状レンズ1905、1906、1907および自由形状ミラー1904が使用され、光学系の厚さを実質的に減少させるようにミラーが実施される本発明の別の例示的な実施形態を示す図である。この3レンズ系は、従来の2レンズ系に比べて解像度が向上する。
【
図20】4つの自由形状レンズ2005、2006、2007、2008、自由形状ミラー2004及びホログラム2002を実装することによって、対角67度(水平60度)の視野、2Kの解像度を実現する、本発明の別の例示的な実施形態を示している。このシステムはまた、レンズの幅を減少させ、小型フォームファクタの製造を可能にする利点を追加する。
【
図21】眼鏡ディスプレイ2101が画像光を眼に向けて投影し、画像光の反対方向の外挿線2103が虚像を形成する虚像2102の位置を示している。
【
図22】顔に光学系をどのようにフィットさせるかをチェックし、十分なクリアランスを提供するために、3D-CADにおいて顔にフィッティングされた
図18に記載の光学系の形状を示す。
【
図23】顔に光学系をどのようにフィットさせるかをチェックし、十分なクリアランスを提供するために、3D CADにおいて顔にフィットする
図19に記載の光学系の形状を示す。
【
図24】ホログラム2002による投影された光の光線2409および目の中心2003における人間の頭部(灰色領域、2411)の断面図を示しており、顔は2410として示されている。
【
図25】コリメートされたレーザービーム25103および反射レーザービーム25102および実質的に凹状の自由形状ミラー25105を使用することによってホログラム25101を生成する方法を示す。
【
図26】コリメートされたレーザービーム26103及び反射レーザービーム26102及び実質的に凸面である自由形状ミラー26106を使用することによってホログラム26101を生成する別の方法を示す。
【
図27】プリズム27120及び透過性レーザービーム27121を通したコリメートされたレーザービーム27103と、実質的に凸状である自由形状レンズ27106とを用いてホログラム27101を生成する別の方法を示す。プリズムは、ホログラム27101を保持する基板の表面でのTIR(Total Internal Reflection/全反射)を避けるためのものである。
【
図28】水平断面28102および垂直断面28103を有するレーザービームがホログラム28101に向けて投影される、本発明の別の例示的な実施形態を示す。ビームは、接線(垂直)平面内の位置28104および矢状(水平)平面内の別の位置28105で、これら2つの位置の間の有限距離で集束される。
【
図29】自由曲面2902、2903および光ビームが通過するレンズ領域2904を有する自由曲面レンズ2901の別の例示的な実施形態を示す。この用途では、自由曲面は、レンズ領域内に同軸対称軸を有さない面として定義される。
【
図31】眼鏡3101および表示領域3102が可変光透過層を有する、本発明の別の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0017】
以下の様々な実施形態の詳細な説明は、4K(800万画素)までの高解像度を有する様々なシースルー型ディスプレイウェアラブル装置を示し、60度を超える大きな視野は、非常に小さいフォームファクタを有する装置により提供される。
【0018】
図7は、視聴者の目の前にシースルー表示としての空気中の画像、すなわち虚像が生成される例を示す。画像を含む光線7102は、眼鏡枠7101に向けて側方に投影され、光学素子7103は、眼の瞳孔7105に向けて光線を反射し、網膜7107に焦点を合わせる。光学素子7103は、対称的な鏡面反射とは異なる任意の方向に光線7102を反射して光学素子を薄く保たなければならない。光学素子7103は、ホログラム(HOE)または回折光学素子(Diffractive Optical Element/DOE)とすることができる。これらの両方は、画像7104を生成するためのシースルー要素とすることができる。
光学素子7103は、光透過率を変化させるフォトクロミック材料、エレクトロクロミック材料および液晶の群から選択される層を有する。また、光学素子7103は、紫外線によって光学素子が劣化しないように、紫外線保護層を有する。ハーフミラーの使用には、厚い構造となる、このタイプの用途には適していないミラーの傾斜が必要である。
【0019】
図8は、入射光線8102が発散または収束していない実質的に平行なビームであり、入射光線は、眼鏡枠8101と眼の瞳孔8105との間の距離である焦点距離を有する光学素子8103に投影されて網膜8107に焦点を合わせる。入射光線8108が発散している場合は、さらに短い焦点距離が必要となる。
【0020】
図9から
図12は、入射光線9101が水平軸9104と平行である最も単純な場合として、傾いた入射光線が水平軸9104上の単一点9103に収束することを示している。光線9101は凹面鏡9102で反射され、焦点距離f1の凹面鏡の焦点9103に集光される。ミラーの曲率は、球面収差のない球面収差または非球面を許容する球面とすることができる。
【0021】
図10は、傾斜した光線10101が単一の点10103に収束する様子を示す。傾斜した入射光線は、球面ミラーまたはレンズを用いて強いコマ収差および乱視収差を生じる。自由曲面を有する焦点距離f2を有するミラー10102は、これらの収差を最小にすることができる。この自由曲面は、数学的に計算して最適化することができる。この自由曲面は、通常、多項式またはスプライン関数で表される。
【0022】
図11は、傾斜した光線11101を水平軸11104上の点11103に収束させる自由形状の表面を有する傾斜ミラー11102を示す。傾斜ミラー11102は、より大きなフォームファクタを必要とし、スリムな眼鏡ディスプレイには必ずしも適していない。
【0023】
図12は、光ビーム12101を軸12104上の単一点12103に収束させるために、焦点距離f4を有するホログラムまたはDOEで作られた薄く平坦なミラー12102を示す。ホログラムおよびDOEは、制御されたまたは予め指定されたガイド方向に光を反射することができる。収差は、数学的に設計されたホログラムまたはDOEの位相シフト機能によって最小限に抑えることができるが、いくつかの残留収差が残っており、高分解能の画像を投影するためにアプリケーションにさらなる低減が必要である。本発明の以下に示す実施形態は、これらの残りの収差が、新規かつ改良された光学系によってどのようにさらに最小化され得るかを示す。
【0024】
図13および
図14は、ディスプレイ装置を装着した人によるシースルー視聴のための虚像を生成するためのオブジェクトの位置を示す。
図13に示すように、光を放射する物体13101は、ミラー13102から遠い焦点13103よりも大きな距離に配置され、画像は、以下の式に従う位置13104に生成される。
【0025】
1/a+1/b=1/f
【0026】
であり、a、b、fは正である。
【0027】
上式によれば、a>f、b>0の条件では、画像はミラーの右側に位置する。
図14は、ミラーの左側に虚像14104が生成され、a<fであり、fはミラー14102の焦点距離であることを示す。したがって、対象物14101は、ミラー14102と焦点14103との間に位置する。
図15は、ガラスレンズ15120と眼15125との間の光路の外側に位置する物理的発光物体を示し、実像15127は、ミラー15121と目15125との間の位置に配置されている。収束点15127で実像を生成し、実像はミラーに光を投影する投光対象であり15124、虚像15122を生成する距離15129。目15125は虚像15122を観察し、光線15130は光線が網膜の表面上の点15126に収束すると知覚する。したがって、人間の目15125は、点15122に位置する画像を見る。
【0028】
図16は、眼球の動きの効果を示している。観察者が軸外の傾斜した方向16130に沿って画像を見ると、眼球の瞳孔16131は傾斜した方向16130に向かって移動する。虚像からの主光線は、
図17に示すように、眼球の中心17132の軸を横切るように傾けられている。大きな視野(Field Of View/FOV)の場合、光学的効果は、
図17に示すように、主光線が瞳孔の表面ではなく眼球の中心で交差するように考慮されなければならない。したがって、ホログラムの焦点は眼球の中心に位置しなければならない。
【0029】
図18は、ホログラムまたはDOEを含む光学素子が眼鏡1802に配置され、特定波長の特定の位相関数を有する光を眼球の中心1803に向けて投影する好ましい実施形態を示す。あたかも仮想フレネルミラーと残りの光が通過するかのように、光学素子は特定波長の光を反射する。観察者のために、光学素子によって反射された像と外部場面が重ね合わされる。リレーレンズ1806に光を放射する1801に配置された光源を有する表示システムである。
光源は、レーザー活性化燐光体又は第2高調波発生を伴う。ディスプレイシステムは、反射LCOS、透過型LCD、狭帯域発光ダイオード、またはレーザーダイオードを有する反射型マイクロミラー、または透過型マイクロシャッターをさらに備える。
図18に示すように、ディスプレイシステムは、自由形状の表面1804、1806およびミラー1805を有する2つのレンズを備える。2つのレンズシステムを用いて実現された表示システムは、1Kの解像度及び40度水平FOVに適している。人間の顔に対するこの例の適合性を
図22に示す。ミラー1805は、人間の顔の周縁にフィットするように使用される。
【0030】
好ましい実施形態の別の例が
図19に示されており、3つのレンズおよび自由形状表面を有するミラーが、HOEまたはDOE(HOEはHOEおよびDOEの両方を表す)の前に使用される)。自由形状の表面を有するミラー1904は、レンズ(1905,1906および1907)のサイズを縮小するのに役立つ。
【0031】
4つのレンズと自由形状表面を有するミラーとで実現される別の好ましい実施形態が
図20に示されている。傾斜した入射光線は、HOEでの高いコマ収差および乱視収差を引き起こし、これらの収差は眼鏡の前に補償されます。必要な収差は
図28に示されている。到来する光線は、HOEによって接平面(垂直方向)よりも矢状面(水平方向)でより曲がる。これにより、水平焦点距離が短くなり、HOEの垂直焦点距離が長くなる。この差は、レンズおよびミラーによって補償されなければならないので、水平方向(28105)の収束点は垂直方向28104のHOE28101に近づけなければならない。これらの補正は、自由曲面を有する非対称レンズまたはミラーを用いて行うことができる。球面レンズと非球面レンズまたは鏡面は、回転対称性を持ち、傾きや軸ずれを起こさずにこれらの非対称性を作り出すことができません。
図23は、この例の正面に対する適応性を示す。ディスプレイとレンズと、どのように配置されているか)が比較的直線上に配置されています(
図23の線を表示できますか?)とミラー(ミラーはどこですか?顔の丸い周縁に合うようにする。ミラーは、光学系の幅を縮小して眼鏡の寺院に埋め込むのに役立つ。
図24は、人の顔の周辺からの光線のクリアランス(2410)を有する眼鏡を着用することを示しており、グレー領域(2411)は眼の中心(2103)の顔の断面であるこの図の2103)。この例のHOEへの入射角はHOEの中心で60度であり、周縁領域はさらに大きくなります。この4枚構成レンズは、水平60度、対角線67度の非常に大きなFOVを提供し、2Kの解像度とフルカラーで、画像サイズは幅2.3m、高さ1.3m、距離2mです。
【0032】
図25は、別の好ましい実施形態を示し、HOEの製造方法が示されている。原色のレーザー光源は、光学シャッタ25113で25114,25115および25116に配置され、ダイクロイックミラー25118、25119は、レーザービームを単一のビームに結合するために使用される。複数の波長のビームは2つのビーム25111、25112に分割される。ビームの1つは、レンズ25104でコリメートされ、ホログラム25101を露光する。同時に、他方のビーム25111は、自由形状の表面ミラー25105に導かれ、ホログラムに反射される。ミラーの表面は、反射光ビームの波面の位相がHOEの波面をエミュレートするように設計されなければならない。
【0033】
図26は別の好ましい実施形態を示す。組み合わされたビームを分割した後、ホログラム26101を露光するために自由形状の表面を有する球体のミラー26106が使用される。波面の位相は、HOEの位相をエミュレートしなければならないので、反射光は、設計されたものと同じ虚像を生成する。
【0034】
図27は、自由形状表面を有するレンズ27106が、光ビームの波面の位相をエミュレートするために使用される、好ましい実施形態の別の例を示す。コリメートされた光ビーム27103は、ホログラムのガラス基板によるTIR(全反射)を回避するプリズム27120に導かれる。
図28は、水平断面28102および垂直断面28103を有するレーザービームがホログラム28101に向けて投影される、本発明の別の例示的な実施形態を示す。ビームは、接線(垂直)平面内の位置28104および矢状(水平)平面内の別の位置28105で、これら2つの位置の間の有限距離で集束される。
【0035】
図29は、自由曲面2902、2903および光線が通過するレンズ領域2904を有する自由曲面レンズ2901の別の例示的な実施形態を示す。この用途では、自由曲面は、レンズ領域内に同軸対称軸を有さない面として定義される。
【0036】
図30は、3001が3つのカラービーム3014,3015,3016を単一のビーム3013に結合するビームコンバイナである、本発明の別の例示的な実施形態を示す。例えば、3002,3008および3009は青色レーザーまたは3色の中で最も効率的なLEDである。レーザーとLEDで効率的な赤と緑の光源を見つけることは困難だが、非常に効率的な青色レーザーとLEDが市販されている。プレート3004は、青色光を赤色光に変換する蛍光体を有し、3012は、青色光を緑色光に変換する蛍光体を有するプレートである。光ビーム3014、3015、3016は統合され、結合器3001によって単一のビーム3013を作る。光ビーム3015はミラー3010で反射され、光ビーム3014は、ダイクロイックミラー3005で赤色光のみ反射され、緑色光を透過され、別のダイクロイックミラー3006は青色を反射するが、緑色光および赤色光を透過する。
【0037】
図31は、眼鏡3101および表示領域3102が可変光透過層を有する、本発明の別の例示的な実施形態を示す。3102の画像は、明るい周囲でより良いコントラストを有する。
【0038】
本願補正前の特許請求の範囲に記載された発明は以下のとおりである。
[1]
シースルー表示システムであって、レーザー、LED又はOLEDからの発光デバイスを有する光源およびLCD、LCOS、マイクロミラー、マイクロシャッター、OLED又はレーザービームスキャナーから画像を形成するために前記光源からビームを投射する表示装置と、観察者の前にあるホログラフィック光学素子(HOE)又は回折光学素子(DOE)からのシースルー光学素子と、少なくとも1つのミラーと、少なくとも1つの自由形状表面を有する少なくとも1つのレンズとを有する投影光学系と、を備え、前記投影光学系は、前記投射されたビームの最小水平幅の位置が、前記投射されるビームの最小垂直幅よりも前記シースルー光学素子により近くなるように、前記表示装置から前記シースルー光学素子に向けてビームを投射するシースルー表示システム。
[2]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、表示装置、レンズおよびミラーを含む前記投影光学系は、眼鏡のテンプル内に埋め込まれ、画像は、前記投影光学系からの空気を通って観察者の前方の前記シースルー光学素子に投影される。
[3]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記投影光学系は、前記シースルー光学素子に向かう水平方向と垂直方向とで異なる焦点距離を有する。
[4]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、1つの自由曲面を有する前記1つのレンズは、回転非対称面を有するレンズである。
[5]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、1つの自由曲面を有する前記1つのレンズは、同軸対称軸がオフセットされた非球面レンズである。
[6]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記投影光学系の前記ミラーは自由曲面である。
[7]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、光源は、少なくとも3つの中心波長を有するビームを照射するために、少なくとも3つの中心波長を有する。
[8]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、光源には、レーザー活性化燐光体又は第2高調波発生を伴うレーザーの装置が含まれる。
[9]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記シースルー光学素子は、光透過率を変化させるフォトクロミック材料、エレクトロクロミック材料および液晶の群から選択される層を有する。
[10]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記シースルー光学素子は、紫外線によって光学素子が劣化しないように、紫外線保護層を有する。
[11]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記表示装置を駆動する回路は画像の歪み及び色の非収束を電子的に補正できるようにメモリ補正システムを有する。
[12]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記投影光学系は、焦点距離を変えることができるLCD、アナログマイクロミラーアレイおよび電気光学材料の群から選択された適応レンズを有する。
[13]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、投影光学系は、マイクロミラー、ピエゾ振動ディフューザー、および多層のディフューザーの群から選択されるスペックル除去装置を有する。
[14]
上記[1]に記載のシースルー表示システムであって、前記表示装置を駆動する回路は、逆ノイズ信号を加算することにより、前記シースルー光学素子の望ましくない回折によって生じる光学ノイズのノイズキャンセルシステムを有する。
[15]
複数のカラーレーザー光源のセットを提供し、複数のカラーレーザービームを単一のビームに結合するステップと、結合された複数のカラービームを2つのビームに分割するステップと、光の波面の所望の位相を生成し、ホログラムの第1の表面を露光する自由形状の表面を有するミラーによって分割されたビームの1つを反射させるステップと、他方の分割ビームをコリメートし、ホログラムの第2の面を露光するステップと、を備えるホログラフィック光学素子製造方法。
[16]
複数のカラーレーザー光源のセットを提供し、複数のカラーレーザービームを単一のビームに結合するステップと、結合された前記複数のカラーレーザービームを2つのビームに分割するステップと、光の波面の所望の位相を生成し、ホログラムの第1の面を露光する自由形状の表面を有する球体を用いて分割されたビームの1つを反射させるステップと、他方の分割ビームをコリメートし、ホログラムの第2の面を露光するステップと、を備えるホログラフィック光学素子製造方法。
[17]
複数のカラーレーザー光源のセットを提供し、複数のカラーレーザービームを単一のビームに結合するステップと、結合された複数のカラービームを2つのビームに分割するステップと、光の波面の所望の位相を生成し、ホログラムの第1の面を露光する自由形状の表面を有するレンズを通して分割されたビームの1つを透過させるステップと、他方の分割ビームをコリメートし、ホログラムの第2の面を露光するステップと、を備えるホログラフィック光学素子製造方法。
[18]
複数のカラーレーザー光源のセットを提供し、複数のカラーレーザービームを単一のビームに結合ステップと、結合された複数のカラービームを2つのビームに分割ステップと、光の波面の所望の位相を生成し、ホログラムの第1の面を露光する光学系によって分割されたビームの1つの波面の位相を変化させるステップと、他方の分割ビームをコリメートし、第2の面に取り付けられたプリズムを通してホログラムの第2の面を露光するステップと、を備えるホログラフィック光学素子製造方法。
本発明の特定の実施形態が本明細書に図示され説明されてきたが、当業者には他の修正および変更が行われることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内にあるすべての改変および変更を包含することが意図されていることを理解されたい。