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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A45D34/04 515C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018567467
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2018004214
(87)【国際公開番号】W WO2018147327
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2017023636
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017148064
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】直井 正宏
(72)【発明者】
【氏名】荒井 啓
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-194773(JP,A)
【文献】特開2008-044643(JP,A)
【文献】国際公開第2016/062888(WO,A1)
【文献】特開2010-246723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、
前記筒状頸部の内側に装着された扱き部材と、
前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部と、前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内の前記化粧料に浸漬される保持部とを備えた前記蓋部材とを備えた容器であって、
前記扱き部材は、
前記筒状頸部内に嵌合される筒状部であり、外周面と、内周面と、前記外周面と前記内周面との間を延びる貫通孔とを備えた前記筒状部と、
前記筒状部の前記内周面から前記筒状部の内側に突出して前記筒状部内を通過する前記保持部を扱くための扱き片と、前記扱き片の位置を固定する固定部と、前記貫通孔に位置し、前記扱き片と前記固定部とを繋ぐ接続部とを備える扱き部と、を備え、
前記筒状部は硬質材料で形成された硬質部であり、前記扱き部は前記硬質材料よりも軟質の軟質材料で形成された軟質部であり、
前記貫通孔は、前記外周面に臨む外周開口端と、前記内周面に臨む内周開口端とを備え、前記外周開口端は、前記内周開口端より大きく、
前記筒状部は、前記外周面に凹部を備え、前記凹部に前記固定部が嵌め込まれており、
前記外周開口端は、前記凹部の底面に位置する、容器。
【請求項2】
前記筒状部は、前記外周面から突出し前記容器本体の一部に係合する突起部を備える
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器本体は、前記収容部に対して前記筒状頸部を縮径した形状とする段差部を備え、
前記突起部は、前記固定部の下側に位置し、前記段差部と係合する
請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記固定部は、前記外周面から外側に膨らむ形状を有し、前記外周面に露出して配置されている
請求項1ないし3のうち、何れか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記筒状部は、前記筒状部の下端部に切欠部を備える
請求項1ないしのうち、何れか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記貫通孔の側面は、前記内周開口端から前記外周開口端に向けて開口を大きくする傾斜面を備える
請求項1ないし5のうち、何れか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収容した化粧料を塗布する保持部を蓋部材に備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラなどの粘性液状化粧料を収容した容器は、粘性液状化粧料を収容する容器本体と、容器本体に対して着脱可能な蓋部材とを備えている。具体的には、容器本体は、粘性液状化粧料を収容する収容部の一端部に筒状頸部を備えている。蓋部材は、蓋部材が筒状頸部に装着されたときに筒状頸部を通じて容器本体内に進入する軸部と、軸部の先端部に設けられ容器本体内の粘性液状化粧料に浸漬される保持部とを備えている。さらに、筒状頸部の内側には、扱き部材が嵌合されている。扱き部材は、全体が弾性材料で形成されており、保持部を扱く扱き片を備えている。扱き片は、保持部が筒状頸部を通過するとき、保持部を扱き、保持部に保持された余分な粘性液状化粧料を掻き落とし、保持部に保持された粘性液状化粧料を適量に調整する。また、扱き部材は、中栓としても機能し、閉栓時における容器の気密性を確保する。なお、同種の容器として、特許文献1に示した液体塗布容器がある。このような容器は粘性液状化粧料のみならず粉体化粧料を収容する容器としても利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-44643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような容器の扱き部材は、使用の都度、保持部が通過し、余分な粘性液状化粧料を掻き落とすため、扱き部材に粘性液状化粧料が留まったりする部材である。また、扱き部材は、保持部及び軸部を容器本体に対して引き抜いたり押す動作が繰り返される度に変位を繰り返す部材であり、使用により劣化してしまうおそれのある部材である。このような課題は、粘性液状化粧料の容器のみならず、粉体化粧料を収容する容器にも当てはまる。このため、容器本体から扱き部材が外れてしまうおそれがある。また、特に、マスカラのように被膜を形成する粘性液状化粧料は、被膜形成成分や揮発性成分を含有するものが多いため、繰り返し使用しているうちに、扱き部材に対して蓋部材や蓋部材の一部である軸部や保持部が接着してしまうことがある。このような場合、扱き部材は、全体が弾性を有するため、蓋部材によって、上方に引かれたり下方に押されたりすることで、大きく変形し、筒状頸部から上方に抜けてしまったり、容器本体内に落ちてしまうことがある。扱き部材が上方に抜けてしまった場合、使用者が筒状頸部に扱き部材を再嵌合しようとしても、容器本体内には、粘性液状化粧料が入っているため再嵌合の作業を行いにくい。また、扱き部材が容器本体内に落ちてしまった場合、使用者が容器本体内から筒状頸部を通じて取り出すことは困難である。また、扱き部材を容器本体内に落ちた状態で放置した場合、蓋部材を装着しても、しっかりと密閉できず、粘性液状化粧料の乾燥が進んでしまう。
【0005】
本発明の目的は、容器本体から扱き部材が外れることを抑制可能とした容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための容器は、化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、前記筒状頸部の内側に装着された扱き部材と、前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部と、前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内の前記化粧料に浸漬される保持部とを備えた前記蓋部材とを備える。前記扱き部材は、前記筒状頸部内に嵌合される筒状部であり、外周面と、内周面と、前記外周面と前記内周面との間を延びる貫通孔とを備えた前記筒状部と、前記筒状部の前記内周面から前記筒状部の内側に突出して前記筒状部内を通過する前記保持部を扱くための扱き片と、前記扱き片の位置を固定する固定部と、前記貫通孔に位置し、前記扱き片と前記固定部とを繋ぐ接続部とを備える扱き部と、を備える。前記筒状部は硬質材料で形成された硬質部であり、前記扱き部は前記硬質材料よりも軟質の軟質材料で形成された軟質部である。前記貫通孔は、前記外周面に臨む外周開口端と、前記内周面に臨む内周開口端とを備え、前記外周開口端は、前記内周開口端より大きい。
【0007】
上記構成によれば、貫通孔において、外周開口端は、内周開口端より大きい開口形状を有している。したがって、貫通孔に位置する接続部も、内周開口端の部分より外周開口端の部分で断面形状が大きく太くなる。したがって、扱き片と保持部や軸部が接着し扱き片が上下方向に引っ張られたとしても、筒状部を筒状頸部内に残して扱き部だけが筒状頸部から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。また、保持部によって扱き片が押されて収容部内に落下することも防ぐことができる。
【0008】
上記容器において、前記筒状部は、前記外周面から突出し前記容器本体の一部に係合する突起部を備える構成としてもよい。
上記構成によれば、突起部が容器本体の一部に係合していることで、扱き部材を筒状部から一層抜けにくくすることができる。したがって、力強く蓋部材を容器本体から取り外そうとしても、保持部や軸部や蓋部材ともに扱き部材が筒状頸部から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
上記容器において、前記容器本体は、前記収容部に対して前記筒状頸部を縮径した形状とする段差部を備え、前記突起部は、前記固定部の下側に位置し、前記段差部と係合する構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、突起部が容器本体の段差部に係合していることで、扱き部材を筒状部から一層抜けにくくすることができる。
上記容器において、前記筒状部は、前記外周面に凹部を備え、前記凹部に前記固定部が嵌め込まれている構成としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、凹部に固定部を配置するので、容器本体および扱き部材を合わせた厚さを薄くすることができ、その結果、小型化することができる。
上記容器において、前記固定部は、前記外周面から外側に膨らむ形状を有し、前記外周面に露出して配置されている構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、固定部と容器本体の内周面との密着性が高くなることで、気密性を一層高めることができる。あわせて、固定部の強度を高め、扱き片が接続部で固定部と分裂されてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
上記容器において、前記筒状部は、該筒状部の下端部に切欠部を備える構成としてもよい。
上記構成によれば、切欠部の位置に金型のゲートを配置する。ゲートに対応する位置には、バリなどか生成されやすいが、仮にバリが発生しても、バリは、切欠部の内側に位置する。したがって、バリが筒状部を容器本体に挿入する際の妨げになることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器本体から扱き部材が外れることを抑制可能とした容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の化粧料を収容する容器を示す斜視図。
図2図1の容器の扱き部材を示す斜視図。
図3】(a)は、図2の扱き部材の扱き部の斜視図、(b)は、(a)の3b-3b線に沿った断面図。
図4】(a)は、図2の扱き部材の筒状部の斜視図、(b)は、(a)の4b-4b線に沿った断面図、(c)は、(a)の4c-4c線に沿った断面図。
図5図2の扱き部材の筒状部を成形する1次金型を説明する横断面図。
図6】(a)は、図1の容器の容器本体および扱き部材の要部縦断面図であって、軸部および保持部と扱き片との関係を示す要部縦断面図、(b)は、(a)の扱き部材の要部縦断面図。
図7図2の扱き部材の貫通孔(接続部)の面積と連結部の面積との関係を示す要部横断面図。
図8】第2実施形態として示す扱き部材の斜視図。
図9】第3実施形態として示す扱き部材の断面図。
図10】(a)は、第4実施形態として示す扱き部材の斜視図、(b)は、(a)の扱き部材の貫通孔部分の拡大縦断面図、(c)は、(a)の扱き部材の貫通孔部分の拡大横断面図。
図11】第5実施形態として示す扱き部材の断面図。
図12】第6実施形態として示す扱き部材の断面図。
図13】第7実施形態として示す扱き部材の断面図。
図14】両軸タイプの蓋部材を備えた変形例の容器を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1ないし図14を参照して、本発明の容器を具体化した実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、容器1は、マスカラなどの化粧料を収容した容器であって、化粧料を収容する容器本体11と、容器本体11に対して装着される蓋部材21とを備える。
【0017】
容器本体11は、細長い有底円筒形状を有し、内部に化粧料を収容する収容部12と、収容部12の一端部に設けられた筒状頸部13とを備えている。筒状頸部13には、蓋部材21が着脱可能に装着される。容器本体11は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)などやこれらの共重合体や積層体、エチレンビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂やガラスなどで形成されており、一例として、ブロー成形によって成形されている。
【0018】
収容部12には、一例として、マスカラなどの粘性液状化粧料である化粧料が収容されている。ここで使用する化粧料は、揮発性成分や被膜形成成分を含み、かつ、粘性の高い液体である。筒状頸部13は、収容部12に対して段差部14を介して縮径した円筒状形状を有している。筒状頸部13の外周面は、蓋部材21を装着するためのねじ部15を備えている。筒状頸部13には、化粧料が揮発することを抑制する中栓となる扱き部材31が嵌合される。
【0019】
蓋部材21は、筒状頸部13に装着される。蓋部材21は、有天筒状形状を有しており、外周壁の内周面には、筒状頸部13のねじ部15に対して螺合されるねじ溝22を備えている。また、蓋部材21は、その内部空間から延出する軸部23と、軸部23の先端部に設けられた保持部24とを備えている。軸部23の基端部は、蓋部材21の天板に固定されている。保持部24は、収容部12内の化粧料に浸漬され化粧料を保持するように構成されている。保持部24は、筆、スポンジ、ブラシ、チップなどのように化粧料を保持する機能を備えている。軸部23および保持部24を合わせた長さは、一例として、蓋部材21が筒状頸部13に装着されたとき、保持部24の先端部が収容部12の底面に当接する程度とされる。蓋部材21が筒状頸部13に装着された状態では、軸部23は筒状頸部13を通じて収容部12内に延びて進入しているとともに、保持部24は収容部12内の化粧料に浸漬されている。
【0020】
図2に示すように、筒状頸部13の内側に嵌合される扱き部材31は、筒状頸部13に内嵌可能な外径を有する円筒形状を有した筒状部32と、筒状部32の内周面から突出する扱き部36とを備えた成形体である。
【0021】
筒状部32は、筒状頸部13の開口端に隣接する上端部32aと、上端部32aに対して反対側に位置する下端部32bとを備えている。上端部32aと下端部32bとの間の長さは、筒状頸部13より長く、下端部32bは、筒状頸部13の下部に位置する段差部14より収容部12の方向に突出するように設定されている。筒状部32の上端部32aは、外周方向に張り出す鍔部33を備えている。鍔部33は、筒状頸部13の先端部における開口端の内径よりも大きい外径を備え、筒状頸部13の開口端に係合し、扱き部材31が筒状頸部13に嵌合された状態から収容部12に落下することを防ぐ。鍔部33の外径は、筒状頸部13の外径とほぼ一致し、鍔部33の外周端が筒状頸部13から外側に張り出さないようにしている。鍔部33の外表面は、他の部材によって覆われるのではなく、蓋部材21が筒状頸部13に装着されていない状態で露出する部分となる。蓋部材21の天面と対向する鍔部33の頂面は、環状の突部33aが設けられている。ここでの突部33aは、中心を一致させた二重円であり、内周側の凸の方が大きく形成されている。突部33aは、蓋部材21を装着した際その天面に当接し気密性を高めることができ、更に鍔部33の頂面に付着した化粧料が被膜を形成したとしても蓋部材21の天面に対して接着面積を減らし、しっかりと接着されないようにする。上端部32aは、下方から上端に向けて漸次拡径する傾斜面32eを備えており、傾斜面32eは、保持部24を筒状部32内に挿入し易くしている。
【0022】
筒状部32の外周面32cには、上端部32aと下端部32bの間であって下端部32bに近い位置に突起部34を備えている。突起部34は、筒状部32の周回方向に延びる複数の突起部であって、周回方向に間欠的に設けられている。筒状部32における上端部32aと下端部32bとの間における突起部34の設けられる位置は、筒状部32が筒状頸部13に嵌合されたとき、収容部12と筒状頸部13との間に存する段差部14に対応する位置である。複数の突起部34は、段差部14に係合することによって、扱き部材31が筒状頸部13から上方に引き抜かれにくくする。各突起部34は、上端部32a側の上面が筒状部32の外周面に対して垂直に張り出して段差部14に係合する係合面34aとされ、下端部32b側の面は、傾斜面で構成され、筒状頸部13に筒状部を挿入する際の案内面34bとされる。また、複数の突起部34は、筒状部32の周回方向に間欠的に設けられることで、筒状部32を筒状頸部13に圧入するとき、筒状部32の径方向に変形できるようにしている。容器本体11は、ブロー成形された場合、容器本体の内面形状が設計通りの形状が形成されないことがある。このような場合にも、突起部34は、段差部14に係合し、扱き部材31が筒状頸部13から引き抜かれにくくする。
【0023】
筒状部32において、突起部34と下端部32bとの間は、扱き部材31を筒状頸部13に挿入するときの挿入案内部30となる。挿入案内部30の下端部は、筒状頸部13の開口端内側に係合し易くするため、先端に向かって縮径する傾斜面30aを備えている。
【0024】
筒状部32は、上端部と突起部34との間であって上端部32aの近くにリブ35を備えている。リブ35は、複数設けられ、各々が周回方向に連続し筒状部32の外周面に対して突出し、互いに平行に設けられている。複数のリブ35は、一例として2本設けられている。複数のリブ35が設けられる位置は、筒状部32が筒状頸部13に嵌合されたとき、筒状頸部13の内周面と重なる位置である。複数のリブ35は、筒状頸部13の内周面に圧接されることで、扱き部材31が筒状頸部13から抜けにくくするとともに気密性を高めている。突起部34およびリブ35の外周面32cからの高さは、一例として、同じである。なお、突起部34の方がリブ35より高くてもよいし、リブ35の方が突起部34より高くてもよい。ただし、突起部34およびリブ35の外周面32cからの高さは、後述の扱き部36の固定部38の外周面32cからの高さより高いことが好ましい。
【0025】
筒状部32は、上端部32aと下端部32bとの間に扱き部36が配置されている。さらに具体的には、扱き部36は、突起部34とリブ35との間に配置されている。図3(a)に示すように、扱き部36は、筒状部32の内周面より突出する扱き片37と、筒状部32の外周面に露出して配置される固定部38と、扱き片37の基端部と固定部38とを繋ぐ接続部39とを備える。扱き片37と固定部38と接続部39とは、一体の成形体である。
【0026】
図3(b)に示すように、扱き片37は、筒状部32の周回方向に連続した環状形状を有した弾性片であり、扱き片37の先端部で囲まれた中心部に、円形の挿通部37aを構成している。また、扱き片37は、外周部側の基端部から中心部側の先端部に向かって低くなる漏斗形状を有している。挿通部37aは、挿通部37aを保持部24が通過する際に扱き片37の先端部が少なくとも保持部24に接触する大きさを有している。これにより、扱き片37は、挿通部37aを保持部24が通過する際、保持部24に余分に保持された化粧料を掻き落とすことができる。一例として、挿通部37aは、挿通部37aを保持部24が通過する際に扱き片37の先端部が軸部23の外周面に接触する大きさを有している。これにより、扱き片37は、保持部24だけでなく軸部23の外周面にも余分に付着した化粧料を掻き落とすことができる。
【0027】
図4(a)および(b)に示すように、筒状部32の外周面32cは、突起部34とリブ35との間に、筒状部32の周回方向に連続した底を有する凹部38aを備えている。固定部38は、環状形状を有しており、凹部38aに位置する。固定部38は、扱き片37の基端部に位置し、凹部38aに位置することで、扱き片37を上端部32aと下端部32bとの間に位置させる。
【0028】
扱き片37と固定部38との間は、複数の接続部39によって繋がれている。凹部38aの底面は、周回方向において間欠的に、筒状部32を厚さ方向に貫通した貫通孔39aを備えている。互いに隣り合う貫通孔39aの間は、連結部39bとなっており、筒状部32における凹部38aより上端部32a側の上側部分と凹部38aより下端部32b側の下側部分とを連結している。接続部39は、貫通孔39aを通り、扱き片37の基端部と凹部38aに位置する固定部38とを一体的に繋ぐ。
【0029】
貫通孔39aは、筒状部32の外周面32cと内周面32dとの間を延びてこれらを繋いでいる。貫通孔39aは、外周面32cに外周開口端40aを備え、内周面32dに内周開口端40bを備えている。そして、外周開口端40aは、内周開口端40bより大きい開口形状を有している。具体的に、外周開口端40aおよび内周開口端40bを繋ぐ貫通孔39aの側面40cは、内周開口端40bから漸次外周開口端40aに向けて開口を大きくする傾斜面を備えている。一例として、外周開口端40aは、内周開口端40bに対して筒状部32の上下方向ではなく横方向(周回方向)に広がりを有するように形成される。一例として、側面40cにおける傾斜面の方向は、外周面32cを成形する金型の離型方向(図5中矢印方向)に合わせて設定される。なお、傾斜面は、内周開口端40bに対して筒状部32の上下方向に広がりを有するように形成することもできる。
【0030】
図4(c)に示すように、内周面32dにおいて、凹部38aを構成する上側段差に対応する位置から上端部32aまでの上側領域は段差を有しない面一であり、凹部38aを構成する上側段差に対応する位置から下端部32bまでの下側領域も段差を有しない面一である。また、内周面32dは、内周面32dの上側領域と下側領域との境界位置(凹部38aを構成する上側段差に対応する位置)に1つの段差39cを備えている。これに対して、外周面32cは、底面に外周開口端40aを有する凹部38aを備え、凹部38aを構成する2つの段差(上側段差と下側段差)を有している。
【0031】
図5に示すように、筒状部32を成形する1次金型100は、外周面32cを成形する第1外周金型101および第2外周金型102と、内周面32dを成形する内周金型103とを備えている。外周面32cは、第1外周金型101および第2外周金型102が筒状部32の径方向(図5中矢印で示す上下方向)に離間することで離型される。第1外周金型101および第2外周金型102には、凹部38aを成形する凹部成形部や貫通孔39aを成形する貫通孔成形部を備えている。貫通孔39aにおいて、側面40cは、内周開口端40bから漸次外周開口端40aに向けて開口を大きくする傾斜面を備えており、側面を傾斜面にすることで、第1外周金型101および第2外周金型102が容易に離型できるようになる。すなわち、1つの貫通孔39aを構成する相対する一対の側面40cのうち、一方の側面40cは、離型方向(図5中矢印で示す上下方向)に延びている。第1外周金型101の側では、一対の側面40cのうちの一方の側面40c1が離型方向に沿って延びており、第2外周金型102の側では、一対の側面40cのうち、一方の側面40c2が離型方向に沿って延びている。このような形状を採用することで、筒状部32に外周面32cと凹部38aと貫通孔39aを成形することができる。また、内周金型103は、貫通孔39aの上縁より上側の内周面32dを成形する上内周金型と、貫通孔39aの上縁より下側の内周面32dを成形する下内周金型とを備えている。上内周金型と下内周金型とは、上下方向に離間するように離型される。型締めされた状態において、上内周金型と下内周金型との境界位置は、段差39cに対応する位置であり、これにより、1つの段差39cを有する内周面32dを、上内周金型および下内周金型を無理抜きをすることなく成形することができる。
【0032】
下端部32bは、切欠部43を備えている。切欠部43は、1次金型100で筒状部32を成形する際、溶融樹脂を射出するゲートに対応する位置に設けられている。ゲートに対応する位置には、バリなどが生成されやすいが、仮にバリが発生しても、バリは、切欠部43の内側に位置することになる。したがって、バリが筒状部32を筒状頸部13に挿入する際の妨げになることを防ぐことができる。
【0033】
ところで、筒状部32は、第1硬さを備えた第1樹脂材料で成形されることによって硬質部を構成している。第1樹脂材料(硬質材料)としてはPE、PP、PET、ナイロンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。これに対して、扱き部36は、筒状部32より柔らかい第2硬さを備えた第2樹脂材料によって軟質部を構成している。第2樹脂材料(軟質材料)としては、NBR(ニトリルゴム)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー、軟質PE、軟質PP、シリコンゴム、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)などが挙げられるが、これらに限定されない。筒状部32は、硬質部として硬質材料で形成されることで、しっかりと筒状頸部13内に嵌合された状態が維持されるようにしている。また、鍔部33も硬質部であることから、筒状頸部13の先端部にしっかりと係合され、筒状部32が収容部12内に落ちにくいものとなる。
【0034】
図6(a)に示すように、これに対して、扱き部36は、軟質部として軟質材料で形成されることによって、保持部24の移動方向(図5中矢印D1およびD2方向)に従って変位し、保持部24に保持されている余分な化粧料を掻き落とすことができる。また、扱き片37は、接続部39を介して固定部38と繋がっており、固定部38は、凹部38aによって上下方向の移動が規制されている。したがって、扱き片37が上下方向の何れの方向に力が加わったとしても、筒状部32が筒状頸部13から引き抜かれたり、収容部12内に落ちてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
図6(b)に示すように、固定部38は、外周面32cに対して膨らむように、すなわち外周面32cから外側に膨らむように構成され、固定部38の強度を高めている。外周面32cには、上端部32aから下端部32bに向けて、リブ35、固定部38、突起部34が位置している。固定部38の高さH1は、リブ35および突起部34の高さH2より低く設定されている。固定部38は、リブ35および突起部34より低いが、筒状頸部13の内周面に圧接されることで、気密性を高めている。
【0036】
ところで、図7に示すように、貫通孔39aの位置での横断面(図4(a)の4b-4b線に沿った断面と同じ位置)において、貫通孔39a内に位置する接続部39の総面積(ドット部分)は、一例として、連結部39bおよび接続部39の総面積(ドット部分と斜めハッチング部分とを合わせた部分)に対して、30%から60%とされる。30%未満の場合、扱き部36の接続部39の強度が低くなり過ぎ、扱き片37が軸部23や保持部24によって引っ張られたときに扱き片37と固定部38が分裂するおそれがある。60%より大きい場合、凹部38aの連結部39bの強度が低くなり過ぎ、凹部38aに対する上側部分と凹部38aに対する下側部分とが分裂するおそれがある。なお、貫通孔39a内に位置する接続部39の総面積は、連結部39bおよび接続部39の総面積に対して、40%から50%がさらに好ましい。また、一例として、接続部39の総面積は、連結部39bの総面積と同じ、または、小さいことが好ましい。
【0037】
以上のような扱き部材31は、一例として、二色成形により筒状部32と扱き部36とを一体に成形することができる。二色成形の場合、共通金型に1次金型を取り付けて第1樹脂材料(硬質材料)をキャビティに充填し筒状部32を成形し、次いで、1次金型に代わって共通金型に2次金型を取り付け、第2樹脂材料(軟質材料)をキャビティに充填し扱き部36を筒状部32に対して一体的に成形することができる。なお、二色成形に際しては、第2樹脂材料(軟質材料)で扱き部36を成形してから第1樹脂材料(硬質材料)で筒状部32を扱き部36に対して一体的に成形するようにしてもよい。
【0038】
次に、容器1の製造方法を説明する。先ず、以上のように成形された扱き部材31は、鍔部33が筒状頸部13の開口端に係合されるまで筒状頸部13内に圧入される。この際、扱き部材31の筒状部32の下端部32bは、筒状頸部13に対して挿入される挿入端に相当し、若干径方向に潰されるように変位されつつ、筒状頸部13内に挿入される。そして、突起部34が容器本体11の段差部14に係合される。また、筒状部32のリブ35は、筒状頸部13の内周面に圧接される。これにより、扱き部材31は、鍔部33が筒状頸部13の開口端に係合することで、収容部12の内部に落ちにくくなり、また、突起部34が段差部14に係合することで、上方に引き抜かれにくくなる。なお、筒状部32が硬質部であり、形状が変形しにくい部材である。したがって、筒状頸部13内に扱き部材31を圧入する作業は、扱き部材31を、筒状頸部13に対して、扱き部材31の取付装置を用いて確実に行うことができる。
【0039】
この後、容器本体11には、筒状頸部13の開口端から扱き部材31、特に挿通部37aの大きさや形状などに合わせた第1充填ノズルが挿入され、化粧料が充填される。化粧料の充填後、蓋部材21が筒状頸部13に装着される。具体的には、保持部24が筒状頸部13から収容部12の内部に挿入され、次いで、蓋部材21が筒状頸部13に締め付けられる。
【0040】
また、容器本体11には、化粧料を充填した後に扱き部材31を装着することもできる。この場合、一例として、筒状頸部13に扱き部材31が取り付けられる前において、容器本体11には、筒状頸部13の開口端から第2充填ノズルが挿入され、化粧料が充填される。第2充填ノズルは、挿通部37aの内径に合わせた第1充填ノズルより大きいものとすることができ、化粧料の充填効率を向上させることができる。化粧料の充填後、扱き部材31は、鍔部33が筒状頸部13の開口端に係合されるまで筒状頸部13内に圧入される。なお、扱き部材31は硬質部であるため、形状が変形しにくい。したがって、筒状頸部13内に扱き部材31を圧入する作業は、容器本体11に化粧料を充填した後であっても、扱き部材31を、筒状頸部13に対して、扱き部材31の取付装置を用いて確実に行うことができる。
【0041】
次に、容器1の使用方法を説明する。容器1の使用時には、容器本体11から蓋部材21が取り外され、保持部24が筒状頸部13から引き出される。この際、保持部24は、扱き片37で囲まれた挿通部37aを通過し、扱き片37が保持部24および軸部23の移動方向に倣って変位することによって、余分な化粧料が掻き取られる。使用後、保持部24は容器本体11内に挿入されて、蓋部材21が筒状頸部13に装着される。扱き部材31は、中栓としても機能することから、化粧料が揮発することを抑制する。
【0042】
以上、上記第1実施形態によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)蓋部材21が筒状頸部13の開口端を閉めた状態であっても、例えば長期間に亘って不使用な場合には、化粧料の一部が揮発してしまうことがある。このような場合、保持部24や軸部23と扱き片37や筒状部32の下端部32bとが接着してしまっていることがある。このような場合でも、筒状頸部13の内周面の大部分が接触する筒状部32が硬質部であるため、扱き部材31の筒状部32は、剛性を有している。したがって、扱き部材31はしっかりと筒状頸部13の内周面に対して圧着され嵌合されているので、力強く蓋部材21を容器本体から取り外そうとしても、保持部24や軸部23と扱き片37や筒状部32の下端部32bとを分離させることができる。すなわち、扱き部材31が保持部24や軸部23とともに筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。また、扱き部材31が筒状頸部13から収容部12へ落ちにくくすることができる。
【0043】
(2)軟質部である扱き部36は、筒状部32の上端部32aと下端部32bとの間の凹部38aに配置された固定部38と、扱き片37と、貫通孔39aを通って配置されるとともに扱き片37と固定部38とを接続する接続部39と、を備えている。そして、貫通孔39aにおいて、外周開口端40aは、内周開口端40bより大きい開口形状を有している。したがって、貫通孔39a内に位置する接続部39も、内周開口端40bの部分より外周開口端40aの部分で断面形状が大きく太くなる。これにより、扱き片37と保持部24や軸部23が接着し扱き片37が上下方向に引っ張られたとしても、筒状部32を筒状頸部13内に残して扱き部36だけが筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。また、繰り返し使用されたとしても、保持部24によって扱き片37が押されて収容部12内に落下することも防ぐことができる。
【0044】
(3)扱き片37が軟質材料で形成された軟質部であるので、挿通部37aを小径化することができる。すなわち、扱き片37が硬質材料で形成された硬質部であるときには、扱き片37が撓みにくくなり、保持部24が挿通部37aを通過しにくくなるため大径化してしまう。これに対して、扱き片37は、軟質部であるため、挿通部37aを小径化することができ、軸部23や保持部24に保持された余分な化粧料をしっかりと掻き取ることができる。結果として、筒状頸部13を細くすることができる。
【0045】
(4)硬質部である筒状部32と軟質部である扱き部36とは、二色成形で製造されるため、筒状部32と扱き部36とが一体化され、筒状部32と扱き部36とが分離されにくくなる。また、容易に製造することができ、量産性に優れたものとなる。
【0046】
(5)筒状部32における凹部38aより上端部32a側の上側部分と凹部38aより下端部32b側の下側部分とは、隣り合う貫通孔39aの間の連結部39bによって連結されて一体化されている。したがって、扱き部材31に対して上方に引き抜く力が加わったり、また、収容部12の方向へ押す力が加わったとしても、凹部38aの部分で、上側部分と下側部分とが分裂してしまうおそれをなくすことができる。
【0047】
(6)筒状部32の外周面に臨む固定部38が軟質部であるので、筒状頸部13の内周面との摩擦力を高め、また、当該部分での密閉性も高めることができる。特に、固定部38は、外周面32cに対して膨らむように構成されている。これにより、固定部38は、一層、固定部38と筒状頸部13の内周面との密着性を高め、気密性を高めることができる。あわせて、固定部38の強度を高め、扱き片37が接続部39で固定部38と分裂されてしまうことを防ぐことができる。
【0048】
(7)突起部34が段差部14に係合していることで、扱き部材31を筒状部32から一層抜けにくくすることができる。したがって、力強く蓋部材21を容器本体から取り外そうとしても、保持部24や軸部23や蓋部材21とともに扱き部材31が筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。
【0049】
(8)扱き部36は、筒状部32に対して重ねて設けるのではなく、筒状部32に凹部38aを設けて、凹部38aに固定部38を配置するようにしている。したがって、筒状頸部13および扱き部材31を合わせた厚さを薄くすることができ、その結果、筒状頸部13を小径化することができる。
【0050】
(9)内周面32dは、1つの段差39cを有するだけであり、扱き部36を挟んだ上側部分および下側部分はそれぞれ面一である。したがって、扱き片37以外の部分において、保持部24は、筒状頸部13内を図6(a)に示すD1およびD2方向に円滑に移動させることができる。
【0051】
(10)外周面32cは、凹部38aによる段差を有している。このような構造であれば、1次金型100によって、容易に筒状部32を成形することができる。
(11)下端部32bは、切欠部43を備えている。切欠部43は、1次金型100で筒状部32を成形する際、溶融樹脂を射出するゲートに対応する位置に設けられている。ゲートに対応する位置には、バリなどか生成されやすいが、仮にバリが発生しても、バリは、切欠部43の内側に位置することになる。したがって、バリが筒状部32を筒状頸部13に挿入する際の妨げになることを防ぐことができる。
【0052】
(12)筒状頸部13の開口端では、硬質部の鍔部33が露出している。このため、鍔部33に付着した化粧料の揮発性成分が揮発した場合被膜を形成して蓋部材21と鍔部33とが接着するおそれがある。しかし、蓋部材21と鍔部33とが接着したとしても、鍔部33が硬質部であるため、軟質の材料で形成された軟質部であるときよりも、接着を剥がすため引っ張られた際の形状変化を少なくすることができる。したがって、筒状頸部13と鍔部33との嵌合力の方が、蓋部材21と鍔部33との接着力よりも強くなり、蓋部材21と鍔部33とを分離させやすくなる。そして、扱き部材31が蓋部材21とともに筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまうことを防ぐことができる。
【0053】
(13)筒状頸部13は、外周面にリブ35を備え、リブ35が筒状頸部13の内周面に圧着されるので、一層、扱き部材31が筒状頸部13から外れることを防ぐことができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態としての扱き部材41を示す。この扱き部材41は、筒状部32の突起部34の間であって、下端部32bから上端部32aの方向に向かってスリット42が設けられている。スリット42の深さおよび本数は、深いほどおよび数が多いほど、扱き部材41を筒状頸部13に圧入する際に、下端部32bを変位させやすくなり、圧入しやすくなる一方で、筒状頸部13の内周面に対する圧着力が弱まってしまう。そこで、一例として、スリット42の最も上側に位置する最深部は、上端部32aと下端部32bとの間において、突起部34よりも上端部32a側に位置することが好ましく、ここでは、スリット42の最深部が突起部34と凹部38aの間に位置している。また、スリット42は、隣り合う突起部34の間に一本ずつ設けられている。これにより、扱き部材31を筒状頸部13に圧入する際に、下端部32bを変位させやすくすることができるとともに、必要な筒状頸部13の内周面に対する圧着力を維持することができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
図9は、第3実施形態としての扱き部材51を示す。この扱き部材51は、筒状部32の内周面に、凹部52が設けられている。凹部52は、下端部32bにおいて下方に抜けた形状を有している。すなわち、凹部52は、下端部32bにおいて、段差を有しておらず、内周面32dを成形する下内周金型を無理抜きをすることなく、円滑に離型できる形状を有している。凹部52に配置される扱き部53は、扱き片54の基端部に対して上方および下方に延びる内側固定部55を備えている。内側固定部55は、凹部52に配置される。また、扱き部53は、上述の扱き部36と同様、凹部38aに位置される固定部56と、固定部56と扱き片54とを繋ぐ接続部58を備えている。このような扱き部材51によっても、固定部56および内側固定部55によって、筒状部32に強固に固定される。したがって、扱き部53は、筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまったり、保持部24によって扱き片54が押されて収容部12内に落下してしまうことを防ぐことができる。
【0056】
〔第4実施形態〕
図10(a)および(b)は、第4実施形態としての扱き部材61を示す。この扱き部材61は、第1および第2実施形態の変形例であって、扱き部62の固定部63が環状形状ではなく、筒状部32の周回方向に間欠的に設けられている。この場合、筒状部32の外周面に設けられる凹部64も、周回方向に間欠的に設けられることになる。そして、凹部64の底面には、それより小さい貫通孔65が形成されている。各固定部63と扱き片67とを繋ぐ接続部66は、各凹部64の底面に形成された貫通孔65を通じて筒状部32の内周面まで延びており、扱き片67が筒状部32の内周面に設けられる。この場合における貫通孔65に対する固定部63の大きさは、上述のように扱き部62が筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまったり、保持部24によって扱き片67が押されて収容部12内に落下してしまうことを防ぐことができる大きさとされる。そして、図10(c)に示すように、外周開口端65aは、内周開口端65bより大きい開口形状を有している。したがって、扱き片67が上下方向に引っ張られたとしても、内側に引き込まれることを防ぐことができる。
【0057】
〔第5実施形態〕
図11は、第5実施形態としての扱き部材81を示す。この扱き部材81は、図9に示した第3実施形態の変形例であって、筒状部32の内周面に設けられる凹部82が段差39cより上側に設けられており、凹部82は、上端部32aにおいて上方に抜けた形状を有している。凹部82は、上端部32aにおいて、段差を有しておらず、内周面32dを成形する上内周金型を無理抜きをすることなく、円滑に離型できる形状を有している。凹部52に配置される扱き部83は、扱き片84の基端部に対して上方に延びる内側固定部85を備えている。内側固定部85は、凹部82に配置される。内側固定部85は、扱き片84の基端部に対して上方に延びるだけの構成であるので、図9に示した第3実施形態の上下に延びる内周側固定部55に比べて軟質部の範囲を小さくすることができる。
【0058】
また、扱き部83は、上述の扱き部36と同様、凹部38aに位置される固定部86と、固定部86と扱き片84とを繋ぐ接続部88を備えている。また、内側固定部85の上端部は、筒状部32の鍔部33を覆う被覆部87を備えている。被覆部87は、鍔部33に下側から支持された状態で鍔部33の頂面を覆い、その外周端は、鍔部33の外周端と揃う形状を有している。被覆部87は、軟質部であるので、蓋部材21との密着性を高めることができる。なお、被覆部87の頂面は、環状の突部33aを備えている。
【0059】
〔第6実施形態〕
図12は、第6実施形態としての扱き部材91を示す。この扱き部材91は、図11に示した第5実施形態の変形例であって、筒状部32の鍔部33を省略する構成となっている。そして、省略された筒状部32の鍔部33に代えて、扱き部92は、内側固定部85の上端部に鍔部93を備えている。鍔部93の外周端は、筒状頸部13の先端部における開口端の内径よりも大きい外径を備え、筒状頸部13の開口端に係合し、扱き部材91が筒状頸部13に嵌合された状態から収容部12に落下しにくくする。また、鍔部93の外径は、筒状頸部13の外径とほぼ一致し、筒状頸部13から外側に張り出さないようにしている。さらに、鍔部93は、図11に示した第5実施形態における鍔部33と被覆部87とを合わせた厚さを備えるようにして、軟質部で構成されていても撓みにくくし、扱き部材91が筒状頸部13に嵌合された状態から収容部12に落下しにくくしている。なお、鍔部93の頂面は、環状の突部33aを備えている。
【0060】
〔第7実施形態〕
図13は、第7実施形態としての扱き部材96を示す。この扱き部材96は、図9に示した第3実施形態における内側固定部55のように、内側固定部97が扱き片84の基端部に対して上方および下方に延びる構成を有し、筒状部32の内周面に設けられる凹部52に配置される。その上で、内側固定部97の上端部は、第5実施形態の被覆部87と同様である筒状部32の鍔部33を覆う被覆部98を備えている。以上のような構成によれば、第3実施形態のように、固定部86および内側固定部97によって、筒状部32に強固に固定される。したがって、扱き部83は、筒状頸部13から上方に引き抜かれてしまったり、保持部24によって扱き片84が押されて収容部12内に落下してしまうことを防ぐことができる。また、第5実施形態のように被覆部98と蓋部材21との密着性を高めることができる。
【0061】
なお、上記実施形態は以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第2実施形態において、スリット42の周回方向に設ける位置や数は、筒状頸部13の内周面に対する必要な圧着力との関係で決まるものであり、例えば、下端部32bから凹部38aと重なる位置まで設けてもよい。また、スリット42の数も1本でもよいし、複数本であってもよい。例えば、隣り合う突起部34の間に複数本のスリット42を設けるようにしてもよい。
【0062】
・第3実施形態(図9)において、凹部52を設ける範囲は、上端部32aと下端部32bを除くほぼ全域より狭い範囲であってもよい(例えば第5実施形態(図11参照)、第6実施形態(図12参照))。凹部52を設ける範囲は、狭すぎると、扱き部53を凹部52に固定する力が小さくなり過ぎて凹部52から扱き部53が外れる可能性が高まるため、このような事象が生じないような大きさとされる。また、凹部52や内側固定部55は、周回方向に間欠的に設けられるものであってもよい。
【0063】
・切欠部43は、下端部32bの円周上の何れの位置に設けられていてもよい。また、下端部32b以外の外周面32cや内周面32dにゲートが設けられる場合は、切欠部43を省略してもよい。
【0064】
・扱き部材31は、扱き部36を筒状部32に対してインサート成形によっても、一体的に設けることができる。この場合、筒状部32の成形金型に第1樹脂材料を射出することによって筒状部32を成形する。この後、扱き部36を成形する成形金型に筒状部32をセットし、第2樹脂材料を射出することによって筒状部32に対して扱き部36をインサート成形する。また、逆に、扱き部36を第2樹脂材料で成形し、筒状部32を成形する成形金型に扱き部36をセットし、第1樹脂材料を射出することによって扱き部36に対して筒状部32を成形するようにしてもよい。
【0065】
・扱き片37,54,84は、筒状部32の周回方向に連続した弾性片ではなく、径方向にスリットが設けられ個片化されていてもよい。個片化されているとき、各片は、柔らかくなり変位しやすくなる。
【0066】
・扱き片の筒状部における上下方向の位置は、上端部と下端部との間であれば特に限定されるものではない。
・リブ35の数は特に限定されるものではない。また、リブ35を省略してもよい。リブ35の形状は特に限定されず、周回方向に連続せず、間欠であってもよい。連続しているものは気密性が向上するが、粉体化粧料の場合はあえて間欠にして、装着を容易にする場合もある。
【0067】
また、突起部34の数は特に限定されるものではない。また、突起部34を省略してもよい。例えば、扱き部材31,41,51,61,81,91,96が筒状頸部13から抜けにくいのであれば、リブ35を設けて、突起部34を省略してもよいし、突起部34を設けてリブ35を省略してもよい。突起部34の形状は特に限定されず、周回方向に連続していてもよい。
【0068】
・筒状部32の長さを筒状頸部13とほぼ同じ長さとして、上端部32aおよび下端部32bの各々に外周方向に張り出す鍔部を設けるようにしてもよい。この場合、下端部32bにおける鍔部は、突起部34に相当する部分となる。なお、リブ35を設ける場合には、下端部32bにおける突起部34を省略してもよい。このような構成によれば、下端部32bにおける突起部34が省略される分、筒状部32を簡素化することができる。さらに、筒状部32の長さを筒状頸部13より短くしてもよい。この場合には、下端部32bにおける突起部34は設けられず、リブ35を設けることになる。
【0069】
・筒状部32から固定部が配置される凹部38aを省略するようにしてもよい。
・固定部38の表面は、筒状部32の外周面32cに対して膨出していなくてもよい。一例として、固定部38の表面は、外周面32cと面一でもよいし、外周面32cよりも低くてもよい。固定部38の表面が外周面32cと面一であったり外周面32cに対して低い構成の場合は、扱き部材31の中栓としての機能低下を抑えるため、リブ35の本数を増やすなどして密閉性を高める構成を採用してもよい。
【0070】
・第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第5実施形態、第6実施形態および第7実施形態において、貫通孔39aの全てが、外周開口端40aの方が内周開口端40bより大きくなくてもよい。すなわち、貫通孔39aの中の幾つかにおいて、外周開口端40aと内周開口端40bとが同じ大きさであってもよいし、内周開口端40bの方が外周開口端40aより大きくてもよい。また、第4実施形態において、貫通孔65の全てが、外周開口端65aの方が内周開口端65bより大きくなくてもよい。
【0071】
・第1実施形態~第4実施形態において、蓋部材21の天面と対向する鍔部33の頂面は、環状の突部33a以外に、1つまたは複数の微小突起を設けたり、粗面で構成することによって、蓋部材21の天面に対してしっかりと接着されないようにしてもよい。また、環状に非連続の突部を設けてもよい。さらに、突部33aは、二重円でなく、一重の円であってもよいし、三重円以上であってもよい。第5実施形態~第7実施形態においても、蓋部材21の天面と対向する軟質部の被覆部87の頂面や鍔部93の頂面は、同じような構成によって、蓋部材21の天面に対してしっかりと接着されないようにしてもよい。
【0072】
・容器本体11は、ブロー成形ではなく、インジェクション成形などの成形体であってもよい。
・鍔部33は、上端部32aの周回方向に連続的に設けられるのではなく、上端部32aの周回方向に間欠的に設けられていてもよい。また、鍔部33の外径は、筒状頸部13の外径と比べ大きくてもよい。
【0073】
・容器本体11に収容される化粧料としては、マスカラの他に、リップグロス、リップカラー、リップオーバーコート、ファンデーション、コンシーラー、頬紅、アイカラー、マニキュア、トップコート、マスカラ、アイブロウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料であってもよい。また、アイクリーム、リップクリーム、美容液、リムーバー、クレンジング等のスキンケア化粧料、整髪料、染毛料、ヘアクリーム等の頭髪化粧料であってもよい。また、剤形としては、粘性液状化粧料、低粘性液状化粧料、粉末固型状化粧料、油性固型状化粧料、粉末状化粧料等が挙げられ、乳化型、非乳化型であってもよい。化粧料は、被膜形成成分や揮発性成分を含有するものであっても、被膜形成成分や揮発性成分を含有しないものであってもよい。たとえば、粉体、油性成分等で構成された化粧料であって、高分子物質の被膜形成成分や溶剤、水等の揮発性成分を含有しないものであってもよい。低粘性液状化粧料、油性固型状化粧料、粉末状化粧料等の容器として使用するときにも、粉末状化粧料を容器本体に充填した後に、扱き部材を取り付けることができる。
【0074】
・容器本体11は、収容部12の端部に筒状頸部13を備えていれば、筒状頸部13が収容部12に対して縮径することにより構成される段差部14を省略する構成であってもよい。一例として、容器本体11は、例えば底面から上面に至るまでが同一直径の円筒形状であってもよい。段差部14としては、容器本体11の内周面に対して突出または凹んだ突起部34と係脱可能な係合部であってもよい。また、容器本体11に段差部14を省略する場合には、段差部14と係合する突起部34も省略し、筒状部32の構造を簡素化してもよい。また、容器本体11は、全体形状を水滴のような形状とし、容積または体積が大きくなる下側を収容部とし、上側に蓋部材が装着される筒状頸部を設けるようにしてもよい。
【0075】
図14に示すように、蓋部材を両軸タイプとし、蓋部材の両側に容器本体11を配置する構成としてもよい。この容器71は、2つの第1容器本体72および第2容器本体73と、1つの蓋部材74を備えており、ここでは、一例として、第1容器本体72および第2容器本体73には、化粧料として、リップグロスを収容している。そして、第1容器本体72および第2容器本体73には、色違いや成分違いのリップグロスを収容している。第1容器本体72および第2容器本体73のそれぞれは、容器本体11と同様な構成を備えており、また、第1容器本体72および第2容器本体73の各筒状頸部13には、上述した扱き部材31が配置されている。
【0076】
蓋部材74は、中心軸線に沿った第1方向に第1軸部75を設け、第1方向と反対方向となる第2方向に更なる第2軸部76を設けている。そして、第1軸部75の先端部には、第1保持部75aが設けられ、第2軸部76の先端部には、第2保持部76aが設けられている。第1保持部75aおよび第2保持部76aは、一例として、フロッキー処理したリップへらとなっている。そして、第1容器本体72は、第1軸部75および第1保持部75aが第1容器本体72に挿入されて、蓋部材74に装着される。また、第2容器本体73は、第2軸部76および第2保持部76aが第2容器本体73に挿入されて、蓋部材74に装着される。
【0077】
以上のような容器71であっても、第1容器本体72と蓋部材74との関係、および、第2容器本体73と蓋部材74との関係で、上述した(1)~(13)で記載したような効果を得ることができる。また、第2実施形態~第7実施形態のように変形例を適用することもできる。
【0078】
・容器としては、1つの容器本体に対して、2つの蓋部材が装着されるものであってもよい。この場合、1つの容器本体の各端部に設けられた筒状頸部に対して、保持部と軸部を備えた蓋部材が装着されることになる。そして、容器本体の各筒状頸部には、上述した扱き部材31が配置されることになる。このような容器であっても、各蓋部材と容器本体との関係で、上述した(1)~(13)で記載したような効果を得ることができる。また、第2実施形態~第7実施形態のように変形例を適用することができる。
【0079】
・2つの保持部を備える容器において、2つの保持部は、同じ構成であってもよいし、化粧料の種類に応じて異ならせてもよい。2つの保持部の構成を異ならせる場合、例えば、一方の保持部を筆とし、他方の保持部をチップとしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…容器、11…容器本体、12…収容部、13…筒状頸部、14…段差部、15…ねじ部、21…蓋部材、22…ねじ溝、23…軸部、24…保持部、30…挿入案内部、31…扱き部材、32…筒状部、32a…上端部、32b…下端部、32c…外周面、32d…内周面、32e…傾斜面、33…鍔部、33a…突部、34…突起部、34a…係合面、34b…案内面、35…リブ、36…扱き部、37…扱き片、37a…挿通部、38…固定部、38a…凹部、39…接続部、39a…貫通孔、39b…連結部、39c…1つの段差、40a…外周開口端、40b…内周開口端、40c(40c1,40c2)…側面、41…扱き部材、42…スリット、43…切欠部、51…扱き部材、52…凹部、53…扱き部、54…扱き片、55…内周側固定部、56…固定部、58…接続部、61…扱き部材、62…扱き部、63…固定部、64…凹部、65…貫通孔、65a…外周開口端、65b…内周開口端、66…接続部、67…扱き片、71…容器、72…第1容器本体、73…第2容器本体、74…蓋部材、75a…第1保持部、76…第2軸部、76a…第2保持部、81…扱き部材、82…凹部、83…扱き部、84…扱き片、85…内周側固定部、86…固定部、87…被覆部、88…接続部、91…扱き部材、92…扱き部、93…鍔部、96…扱き部材、97…内周側固定部、98…鍔部、100…1次金型、101…第1外周金型、102…第2外周金型、103…内周金型。
図1
図2
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図4
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図9
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図14