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特許7093763熱可塑性ポリエステルを含むポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステルを含むポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20220623BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220623BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20220623BHJP
   B29C 48/16 20190101ALI20220623BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L101/02
C08G63/199
B29C48/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019504835
(86)(22)【出願日】2017-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 FR2017052144
(87)【国際公開番号】W WO2018020193
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】1657426
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ アムドロ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504650(JP,A)
【文献】特表2013-526645(JP,A)
【文献】特表2016-521797(JP,A)
【文献】特表2015-518915(JP,A)
【文献】特開2003-285879(JP,A)
【文献】特開平11-106617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0222157(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0072642(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288241(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148515(US,A1)
【文献】米国特許第06140422(US,A)
【文献】特表2018-515666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00
C08L 101/02
C08G 63/199
B29C 48/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む熱可塑性ポリエステルであって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.10および最大で0.75であり、前記ポリエステルは、前記ポリエステルの全てのモノマー単位に対して%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、および前記ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1Lあたり5g)は、70mL/gより大きい、熱可塑性ポリエステル、
- 芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルブロックアミドおよびポリウレタンから選択される追加のポリマー
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたは前記ジオールの混合物から選択されるジオールであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステルは、いかなる脂肪族非環式ジオール単位も含有しないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
1種以上の添加剤および/または相溶化剤を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ポリマーの物理的または化学的特性を改善するための方法であって、
- 芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルブロックアミドおよびポリウレタンから選択されるポリマーを提供するステップ、
- 前記ポリマーを、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む熱可塑性ポリエステルとブレンドするステップであって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、少なくとも0.10および最大で0.75であり、前記ポリエステルは、前記ポリエステルの全てのモノマー単位に対して%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、および前記ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1Lあたり5g)は、70mL/gより大きい、ステップ、
- 前記ブレンドを回収するステップ
を含む方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリエステルは、(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比、1.05~1.5であるモノマーを反応させて得られることを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項8】
前記ブレンドステップは、押出成形または共押出成形技術によって実行されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソソルビドベースの熱可塑性ポリエステルを含み、改善された特性を有するポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、物品の大量生産において不可避となっている。実際に、それらの熱可塑性特性は、これらの材料が高い割合であらゆる種類の物品に変換されることを可能にする。
【0003】
例えば、特定の熱可塑性芳香族ポリエステルは、材料の製造のためにそれらを直接使用することを可能にする熱特性を有する。それらは、脂肪族ジオールおよび芳香族二価酸単位を含む。これらの芳香族ポリエステルの中でも、エチレングリコールおよびテレフタル酸単位を含むポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)が言及され得る。
【0004】
しかしながら、特定の用途に関してまたは特定の使用条件下において、特定の特性、特に衝撃強さまたは他に熱抵抗を改善することが必要である。これは、グリコール変性PET(PETg)が開発された理由である。これらは、一般に、エチレングリコールおよびテレフタル酸単位に加えて、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)単位を含むポリエステルである。PET中へのこのようなジオールの導入は、特にPETgが非晶質である場合、それが意図された用途に特性を順応させること、例えば、その衝撃強さまたはその光学特性を改善することを可能にする。
【0005】
他の変性PETも、ポリエステル中に1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位、特にイソソルビド(PEIT)を導入することによって開発されている。これらの変性ポリエステルは、未変性PETまたはCHDMを含むPETgより高いガラス転移温度を有する。加えて、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、でんぷんなどの再生可能資源から得ることができるという長所を有する。
【0006】
これらのPEITの1つの欠点は、それらが不十分な衝撃強さ特性を有し得ることである。加えて、ガラス転移温度は、特定のプラスチック物品の製造のために不十分であり得る。
【0007】
ポリエステルの衝撃強さ特性を改善するために、従来技術から、結晶化度が減少したポリエステルを使用することが知られている。イソソルビドベースのポリエステルに関して、改善された衝撃強さ特性を有する、1~60モル%のイソソルビドおよび5~99%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むテレフタル酸単位およびジオール単位を含むポリエステルを記載する米国特許出願公開第2012/0177854号明細書が言及され得る。
【0008】
この出願の導入部分で示されるように、目的は、結晶化度がコモノマーの添加により、したがって、この場合には1,4-シクロヘキサンジメタノールの添加によって排除されるポリマーを得ることである。実施例部分において、種々のポリ(エチレン-コ-1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PECIT)の製造およびまたポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PCIT)の例が記載されている。
【0009】
PECIT型ポリマーは、営利事業化向け開発の対象であったが、PCITの場合には異なることも留意され得る。実際に、イソソルビドが第二級ジオールとして低反応性を有するため、それらの製造は、これまで複雑であると考えられていた。したがって、Yoonら(Synthesis and Characteristics of a Biobased High-Tg Terpolyester of Isosorbide,Ethylene Glycol,and 1,4-Cyclohexane Dimethanol:Effect of Ethylene Glycol as a Chain Linker on Polymerization,Macromolecules,2013,46,7219-7231)は、PCITの合成が、PECITの合成よりも達成が難しいことを示した。この論文は、PECIT製造動力学に及ぼすエチレングリコール含有量の影響の研究を記載している。
【0010】
Yoonらの文献において、(ジオールの合計に対して約29%のイソソルビドおよび71%のCHDMを含む)非晶質PCITが製造され、その合成およびその特性がPECIT型ポリマーのものと比較されている。第7222ページの合成部分の第1パラグラフを参照すると、合成中に高温を使用することにより、形成されたポリマーの熱分解が誘発され、このような分解は、特にイソソルビドなどの脂肪族環式ジオールの存在に関連する。したがって、Yoonらは、重縮合温度が270℃までに制限されるプロセスを使用した。Yoonらは、重合時間を増やしても、このプロセスがまた、十分な粘度を有するポリエステルを得ることを可能にしないことを観察した。したがって、エチレングリコールを添加せずに、長時間の合成時間の使用にもかかわらず、ポリエステルの粘度は限定的なままである。
【0011】
プラスチック分野において、改善された特徴を有する物品を製造するかまたは得るために、特にイソソルビドをベースとする利用可能な新規解決策を有することが常に必要とされている。
【0012】
この目的を達成するために、より広範囲にわたる適用および使用分野を有することを可能にする改善された特性を有する組成物を得るために、ポリマーを一緒にブレンドすることは既知の慣例である。
【0013】
米国特許第6140422号明細書は、イソソルビドベースのポリエステルおよび他の熱可塑性ポリマーのブレンドを記載している。イソソルビドベースのポリエステルは、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位を含み、かつ少なくとも0.35dL/gの粘度を有する。ポリエステルのブレンドは、スチレン樹脂、ポリアリールエーテルまたは他のポリヒドロキシエーテルなどの熱可塑性ポリマーによって実行され得る。一般に、ポリマーブレンドの特性の改善は、良好な物理的または化学的適合性を伴い、この場合、ポリエステルが熱可塑性ポリマーとブレンドされる場合、選択されたポリマーに応じてエステル交換反応が生じ得、この反応に関して、この反応を促進するために湿潤媒体で実行することが特に有利であり得る。しかしながら、それらがイソソルビドベースのポリエステルとブレンドされる場合、この特許において使用される全ての熱可塑性ポリマーが湿潤媒体中でエステル交換を実行することができるわけではない。
【0014】
改善された特性を有するプラスチック物品を得ることを可能にするイソソルビドベースのポリマー組成物が依然として必要とされており、また、ブレンド後に改善された特性を有するポリマー組成物を得るために、既存のポリマーの特性を改善するためのイソソルビドベースのポリエステルを開発することが依然として必要とされている。
【0015】
しかしながら、前例のない特性を有する有利なポリマー組成物を得るには、2種のポリマーをブレンドするのみでは不十分である。実際に、わずかな例外を除き、分子規模で2
種のポリマーをブレンドすることは不可能である。前記ポリマーは、弱い界面によって分離されたマクロ寸法の領域中に必然的に分離される。得られたポリマー組成物から生じる材料は、別々の出発ポリマーよりも一般に品質が低い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、エチレングリコールが、前記イソソルビドの組み込みのために必須であることはこれまで知られていたが、ブレンド中に使用される熱可塑性ポリマーの適切な選択を実行し、かつ(出発ポリマーブレンド中の湿分の存在下において)エステル交換を促進することが可能である方法を利用することにより、いかなるエチレングリコールも有さないイソソルビドベースの熱可塑性ポリエステルを用いて、あらゆる期待に反して、この目的が達成可能であることを発見したことは本出願人の功績である。
【0017】
他のポリマーとのこれらの熱可塑性ポリエステルのブレンドから得られるポリマー組成物は、したがって、改善された技術特徴を有する物品を入手することを可能にする。
【0018】
本発明の第1の主題は、ポリマー組成物であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む熱可塑性ポリエステルであって、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.05および最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いかなる脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、またはポリエステルの全てのモノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、および前記ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1Lあたり5g)は、70mL/gより大きい、熱可塑性ポリエステル、
- 芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、およびイソシアネートを含有しないポリウレタンから選択される追加のポリマー
を含むポリマー組成物に関する。
【0019】
本発明の第2の主題は、上記で定義された特定のポリマーの物理的および化学的特性を改善するための方法に関する。
【0020】
本発明によるポリマー組成物は、特に有利であり、かつ改善された特性を有する。実際に、組成物中の熱可塑性ポリエステルの存在により、追加の特性を導入することおよび他のポリマーの応用分野を広げることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
したがって、本発明の第1の主題は、ポリマー組成物であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む熱可塑性ポリエステルであって、(A)/[(A)+(B)]比は、少なくとも0.05および最大で0.75であり、前記ポリエステルは、いかなる脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、またはポリエステルの全てのモノマー単位に対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含み、および前記ポリエステルの還元溶液粘度(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル1Lあたり5g)は、70mL/gより大きい、熱可塑性ポリエステル;
- 芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリアミド、ポ
リカーボネート、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタンおよびポリウレタンから選択されるポリマー
を含むポリマー組成物に関する。
【0022】
「(A)/[(A)+(B)]モル比」は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比を意味するように意図される。
【0023】
熱可塑性ポリエステルは、いかなる脂肪族非環式ジオール単位も含有しないか、またはその少量を含む。
【0024】
「小モル量の脂肪族非環式ジオール単位」は、特に5%未満の脂肪族非環式ジオール単位のモルの量を意味するように意図される。本発明によれば、このモルの量は、場合によりポリエステルの全てのモノマー単位に対して同一であるかまたは異なる脂肪族非環式ジオール単位の合計の比率を表す。
【0025】
脂肪族非環式ジオールは、直鎖または分枝鎖脂肪族非環式ジオールであり得る。それは、飽和または不飽和脂肪族非環式ジオールであり得る。エチレングリコールを除き、飽和直鎖脂肪族非環式ジオールは、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールおよび/または1,10-デカンジオールであり得る。飽和分枝鎖脂肪族非環式ジオールの例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、プロピレングリコールおよび/またはネオペンチルグリコールが挙げられ得る。不飽和脂肪族ジオールの例としては、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオールが挙げられ得る。
【0026】
脂肪族非環式ジオール単位のこのモル量は、有利には1%未満である。好ましくは、ポリエステルは、いかなる脂肪族非環式ジオール単位も含有せず、より好ましくはエチレングリコールを含有しない。
【0027】
合成のために使用される脂肪族非環式ジオール、したがってエチレングリコールの少ない量にもかかわらず、高い還元溶液粘度を有し、かつイソソルビドが特に良好に組み込まれる熱可塑性ポリエステルが驚くべきことに得られる。いずれかの1つの理論によって拘束されないが、これは、エチレングリコールの反応動力学が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのものよりもはるかに速いという事実によって説明されるであろう。これは、ポリエステルへの後者の集積を非常に制限する。したがって、得られるポリエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの低い集積度、したがって比較的低いガラス転移温度を有する。
【0028】
モノマー(A)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、かつイソソルビド、イソマンニド、イソヨージドまたはその混合物であり得る。好ましくは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドである。
【0029】
イソソルビド、イソマンニドおよびイソヨージドは、それぞれソルビトール、マンニトールおよびイジトールの脱水によって入手され得る。イソソルビドに関して、商品名Polysorb(登録商標)Pで本出願人によって販売されている。
【0030】
脂環式ジオール(B)は、脂肪族環式ジオールとも呼ばれる。それは、特に1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキ
サンジメタノールまたはこれらのジオールの混合物から選択され得るジオールである。脂環式ジオール(B)は、非常に好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。脂環式ジオール(B)は、シス型立体配置であるか、トランス型立体配置であるか、またはシスおよびトランス型立体配置におけるジオールの混合物であり得る。
【0031】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比、すなわち、(A)/[(A)+(B)]は、少なくとも0.05および最大で0.75である。有利には、この比率は、少なくとも0.10および最大で0.65である。
【0032】
ポリマー組成物を得るために特に適切である熱可塑性ポリエステルは、
・2.5~54モル%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・5~42.5モル%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55モル%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含む。
【0033】
ポリマー組成物を使用する所望の用途次第で、熱可塑性ポリエステルは、半結晶質熱可塑性ポリエステルであり得、したがって、
・2.5~14モル%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・31~42.5モル%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55モル%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含む。
【0034】
しかしながら、他の用途に関して、熱可塑性ポリエステルは、非晶質熱可塑性ポリエステルであり得、したがって、
・16~54モル%の範囲のモル量の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・5~30モル%の範囲のモル量の、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・45~55モル%の範囲のモル量のテレフタル酸単位(C)
を含む。
【0035】
したがって、当業者は、異なる単位のモル量を調節する方法、および特にX線回折線の検出または示差走査型熱量測定(DSC)分析における吸熱溶融ピークの存在により、得られたポリエステルの半結晶質または非晶質の外観を確認する方法を知っているであろう。
【0036】
ポリエステル中の異なる単位の量は、ポリエステルの完全加水分解またはメタノリシスから生じるモノマーの混合物のH NMRまたはクロマトグラフィー分析により、好ましくはH NMRにより決定され得る。
【0037】
当業者は、ポリエステルの単位のそれぞれの量を決定するための分析条件を容易に見つけることができる。例えば、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)のNMRスペクトルから、1,4-シクロヘキサンジメタノールに関連する化学シフトは、0.9~2.4ppmおよび4.0~4.5ppmであり、テレフ
タレート環に関連する化学シフトは、7.8~8.4ppmであり、かつイソソルビドに関連する化学シフトは、4.1~5.8ppmである。それぞれのシグナルの積分により、ポリエステルのそれぞれの単位の量を決定することが可能になる。
【0038】
熱可塑性ポリエステルは、それらが半結晶質である場合、85~200℃、例えば90~115℃の範囲のガラス転移温度を有し、それらが非晶質である場合、例えば116~200℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0039】
ガラス転移温度および融点は、従来法により、特に10℃/分の加熱速度を使用する示差走査型熱量測定(DSC)法を使用して測定される。実験プロトコルの詳細は、以下の実施例部分で説明する。
【0040】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリエステルは、それらが半結晶質である場合、210~295℃、例えば240~285℃の範囲の融点を有する。
【0041】
有利には、熱可塑性ポリエステルが半結晶質である場合、それは、10J/gより高い、好ましくは20J/gより高い融解熱を有し、この融解熱の測定は、このポリエステルの試料に16時間にわたって170℃の加熱処理を受けさせ、次いで試料を10℃/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価することを含む。
【0042】
本発明によるポリマー組成物の熱可塑性ポリエステルは、特に40より大きい明度Lを有する。有利には、明度Lは、55より大きく、好ましくは60より大きく、最も好ましくは65より大きく、例えば70より大きい。パラメーターLは、CIE研究室モデルを介して分光測光器を使用して決定され得る。
【0043】
最終的に、本発明による前記熱可塑性ポリエステルの還元溶液粘度は、70mL/gより大きく、好ましくは150mL/g未満であり、この粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノールおよびオルト-ジクロロベンゼンの機器質量混合物中で25℃においてUbbelohde毛細管粘度計を使用して測定することが可能である。
【0044】
還元溶液粘度を測定するためのこの試験は、溶媒の選択および使用されたポリマーの濃度のため、完全に下記の方法によって調製される粘性ポリマーの粘度を決定するために適切である。
【0045】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリエステルの半結晶質または非晶質特性は、170℃において16時間の熱処理後、X線回折線、あるいは示差走査型熱量測定(DSC)分析における吸熱溶融ピークの存在または不在によって特徴付けられる。したがって、X線回折線が存在し、かつ示差走査熱量測定(DSC)分析において吸熱溶融ピークが存在する場合、熱可塑性ポリエステルは半結晶質であり、およびそれらが不在の場合、それは非晶質である。
【0046】
上記で定義される熱可塑性のポリエステルは、ポリマー組成物において多くの利点を有する。
【0047】
実際に、特に少なくとも0.05および最大で0.75の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比により、ならびに70mL/gより大きくかつ好ましくは150mL/g未満の還元溶液粘度により、熱可塑性ポリエステルは、より広範囲にわたる適用および
使用分野を有することを可能にする改善された特性を有するポリマー組成物を得ることを可能にする。
【0048】
熱可塑性ポリエステルに加えて、本発明による組成物は、以下では追加のポリマーと記載される別のポリマーを含む。
【0049】
本発明によると、追加のポリマーは、
- 例えば、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリブチレンナフタレート(PBN)などの芳香族ポリエステル;
- 例えば、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアゼレートまたはポリブチレンセバケートなどの脂肪族ポリエステル;
- 例えば、熱可塑性エラストマーHytrel(登録商標)(ポリ(ブチレンテレフタレート)-ブロック-ポリ(ブチルエーテル))などのポリエステルエーテル;
- 例えば、半芳香族ポリアミドmXD6、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(PA PPD-T)またはポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)などのポリアミド;
- ポリカーボネート;
- ポリエーテルブロックアミド;
- イソシアネートの有無にかかわらないポリウレタン
から選択される。
【0050】
好ましくは、追加のポリマーは、ポリエステルエーテルまたはポリアミドであり、さらにより好ましくはmXD6または例えばHytrel(登録商標)などの熱可塑性エラストマーである。
【0051】
本発明によるポリマー組成物は、ブレンドポリマーに関する当業者に既知の慣用法に従って得ることができる。例えば、ブレンドは、密閉式混合機もしくはブレンダーを使用して、または押出成形もしくは共有押出成形機などの熱可塑性ポリマー形成のための習慣的なシステムを使用して入手可能である。
【0052】
さらに、ポリマー組成物は、熱可塑性ポリエステルおよびポリマーの重合後に溶融ブレンドすることによって直接得ることができる。
【0053】
ポリマー組成物は、得られると、意図された用途に従って形成され得る。
【0054】
1つの代替形態によれば、熱可塑性ポリエステルおよび追加のポリマーは、ブレンドされる前に、ペレットまたは顆粒などの取り扱うことが容易な形態で包装され得る。好ましくは、熱可塑性ポリエステルおよびポリマーは、顆粒の形態で包装される。したがって、本発明によるポリマー組成物は、例えば、種々の顆粒の押出成形または共有押出成形によって入手され得る。
【0055】
したがって、本発明によるポリマー組成物は、熱可塑性ポリエステルおよび追加のポリマー間のブレンドによって得られる。ブレンドは、特に乾燥させることなく製造され、換言すれば、熱可塑性ポリエステルおよび追加のポリマーは、例えば、押出成形によってブレンドされる前に乾燥させる必要がない。好ましくは、ブレンドステップ前の残留湿分含有量は、150ppmより高く、好ましくは200ppmより高く、より好ましくは300ppmより高い。
【0056】
したがって、ブレンド中に生じ得る化学反応の中でもエステル交換反応が促進される。
【0057】
本発明による熱可塑性ポリエステルを追加のポリマーとブレンドすることにより、追加のポリマー単独の場合と比較して使用範囲が強化された組成物を得ることが可能となる。
【0058】
例えば、本発明によるポリエステルをポリエステルエーテルとブレンドすることにより、ポリエステルエーテル単独の場合と比較してより高い融点を有するポリマー組成物を得ることが可能となる。
【0059】
別の実施例は、本発明による熱可塑性ポリエステルをポリアミドとブレンドすることによって得られ得る。そのようにして得られるポリマー組成物は、特にフィルムの形態に製造される場合、改善された気体透過性を示す。
【0060】
1つの特定の実施形態によると、ポリマー組成物は、触媒として作用することによってエステル化反応を強化することが可能である相溶化剤を含む。そのような薬剤の例は、特に多官能性アルコールおよび酸である。例えば、相溶化剤は、チタンテトラブトキシドであり得る。
【0061】
熱可塑性ポリエステルからポリマー組成物を得る間に、それに特定の特性を与えるために1種以上の添加剤が添加され得る。
【0062】
したがって、添加剤の例として、有機または無機、ナノメートルまたは非ナノメートル、官能化または非官能化特性のフィラーまたは繊維が記載され得る。それらは、シリカ、ゼオライト、ガラス繊維またはビーズ、粘土、雲母、チタネート、シリケート、グラファイト、炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ、木部繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、タンパク質、セルロースベースの繊維、リグノセルロース繊維および構造分解されない粒状でんぷんであり得る。これらのフィラーまたは繊維は、硬度、剛性または水もしくは気体透過性の改善を可能にする。
【0063】
添加剤は、乳白剤、染料および顔料から選択され得る。それらは、酢酸コバルトならびに次の化合物:HS-325 Sandoplast(登録商標)Red BB(Solvent Red 195の名称でも知られる、アゾ官能性を有する化合物)、アントラキノンであるHS-510 Sandoplast(登録商標)Blue 2B、Polysynthren(登録商標)Blue RおよびClariant(登録商標)RSB Violetから選択され得る。
【0064】
添加剤は、例えば、BASFからのTinuvin(商標)範囲:例えば、tinuvin 326、tinuvin Pまたはtinuvin 234などのベンゾフェノンもしくはベンゾトリアゾール型の分子、またはBASFからのChimassorb(商標)範囲:例えば、Chimassorb 2020、Chimassorb 81もしくはChimassorb 944などのヒンダードアミンなどのUV抵抗剤であり得る。
【0065】
添加剤は、防火剤または難燃剤、例えばハロゲン化誘導体もしくは非ハロゲン化難燃剤(例えば、Exolit(登録商標)OPなどのリンベースの誘導体)、またはメラミンシアヌレートの範囲(例えば、melapur(商標):melapur 200)、または他に水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウムなどでもあり得る。
【0066】
最終的に、添加剤は、帯電防止剤または他の抗ブロック剤、例えば、疎水性分子の誘導体、例えば、CrodaからのIncroslip(商標)またはIncromol(商
標)などであり得る。
【0067】
所望の用途次第で、ポリマー組成物は、当業者に既知の技術に従って形成され得、したがって多数の態様、例えばフィルムを有することが可能であるであろう。
【0068】
有利にはおよびその特定の特性により、本発明によるポリマー組成物は、プラスチック物品または要素の製造のための最も特定の用途を有する。
【0069】
本発明の第2の主題は、ポリマーの物理的または化学的特性を改善するための方法に関する。
【0070】
本発明による方法は、ポリマーを熱可塑性ポリエステルとブレンドすることにより、特定のポリマーの機械的または物理的特性を改善することを可能にする。
【0071】
したがって、本発明による方法は、
- 芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルブロックアミドおよびポリウレタンから選択されるポリマーを提供するステップ、
- 前記ポリマーを、上記で定義される熱可塑性ポリエステルとブレンドするステップ
- 前記ブレンドを回収するステップ
を含む。
【0072】
ブレンドステップは、当業者に既知の技術に従って実行され得る。例えば、ブレンドは、押出成形または共有押出成形技術によって実行され得る。
【0073】
したがって、本発明による方法は、提供されたポリマーの機械的および/または物理的特性を改善することを可能にする。
【0074】
ポリマー組成物の入手のために特に適切である熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、および少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含むモノマーを反応器中に導入するステップであって、モル比((A)+(B))/(C)は、1.05~1.5の範囲であり、前記モノマーは、いかなる脂肪族非環式ジオールも含有しないか、または導入された全てのモノマーに対して5%未満のモル量の脂肪族非環式ジオール単位を含む、ステップと;
・反応器中に触媒系を導入するステップと;
・前記モノマーを重合してポリエステルを形成するステップであって、
・オリゴマー化の第1段階であって、その間に、反応媒体が265~280℃、有利には270~280℃の範囲の温度、例えば275℃で不活性雰囲気下において撹拌される、オリゴマー化の第1段階;
・オリゴマーの縮合の第2段階であって、その間に、形成されたオリゴマーが、ポリエステルを形成するように278~300℃、有利には280~290℃の範囲の温度、例えば285℃で減圧下において撹拌される、オリゴマーの縮合の第2段階
からなるステップと;
・熱可塑性ポリエステルを回収するステップと
を含む合成方法によって調製され得る。
【0075】
方法のこの第1の段階は、不活性雰囲気、すなわち少なくとも1種の不活性気体の雰囲気下で実行される。この不活性気体は、特にジニトロゲンであり得る。この第1の段階は
、気体流下で実行され得、かつそれは、圧力下、例えば1.05~8バールの圧力において実行され得る。
【0076】
好ましくは、圧力は、3~8バール、最も好ましくは5~7.5バールの範囲、例えば6.6バールである。これらの好ましい圧力条件下において、全てのモノマーの互いとの反応は、この段階中のモノマーの損失を制限することによって促進される。
【0077】
オリゴマー化の第1の段階前にモノマーの脱酸素化のステップが好ましくは実行される。それは、例えば、モノマーが反応器中に導入されると、減圧を生じることにより、次いでそれに窒素などの不活性気体を導入することにより実行することができる。この減圧-不活性気体導入サイクルは、数回、例えば3~5回にわたって繰り返すことができる。好ましくは、試薬および特にジオールが完全に溶解するように、この減圧-窒素サイクルは、60~80℃の温度で実行される。この脱酸素化ステップは、方法の終了時に得られるポリエステルの着色特性を改善するという長所を有する。
【0078】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、減圧下で実行される。段階的に圧力減少ランプを使用することにより、または代わりに圧力減少ランプおよび階段の組合せを使用することにより、この第2の段階中に連続的に圧力を減少させ得る。好ましくは、この第2の段階の終了時、圧力は、10ミリバール未満、最も好ましくは1ミリバール未満である。
【0079】
重合ステップの第1の段階は、好ましくは、20分~5時間の範囲の継続時間を有する。有利には、第2の段階は、30分~6時間の範囲の継続時間を有し、この段階の開始は、反応器が減圧下、すなわち1バール未満の圧力に配置された時点からなる。
【0080】
この方法は、反応器中に触媒系を導入するステップも含む。このステップは、事前に実行され得るかまたは上記の重合ステップ中に実行され得る。
【0081】
触媒系は、任意選択的に不活性支持体上に分散または固定された触媒または触媒の混合物を意味するように意図される。
【0082】
触媒は、ポリマー組成物を入手するために、高粘度のポリマーを入手するための適切な量で使用される。
【0083】
エステル化触媒は、オリゴマー化段階中に有利に使用される。このエステル化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびストロンチウムの誘導体、パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)もしくはメタンスルホン酸(MSA)などの有機触媒、またはこれらの触媒の混合物から選択することができる。このような化合物の例として、米国特許出願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0026]~[0029]および国際公開第2013/062408A1号パンフレットの第5ページに記載されるものが挙げられ得る。
【0084】
好ましくは、亜鉛誘導体またはマンガン、スズもしくはゲルマニウム誘導体がエステル交換の第1の段階中に使用される。
【0085】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマー化段階中の触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0086】
エステル交換の終了時、第1のステップからの触媒は、亜リン酸またはリン酸を添加することにより、任意選択的にブロックされるか、またはスズ(IV)の場合、トリフェニルホスフィットもしくはトリス(ノニルフェニル)ホスフィット、または代わりに米国特
許出願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0034]に記載されるものなどのホスフィットによって還元され得る。
【0087】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、任意選択的に、触媒の添加によって実行され得る。この触媒は、有利には、スズ誘導体、好ましくはスズ、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、ハフニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、コバルト、鉄、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウムもしくはリチウムの誘導体、またはこれらの触媒の混合物から選択される。このような化合物の例は、例えば、欧州特許第1882712B1号明細書のパラグラフ[0090]~[0094]に記載されるものであり得る。
【0088】
好ましくは、触媒は、スズ、チタン、ゲルマニウム、アルミニウムまたはアンチモン誘導体である。
【0089】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマーの縮合の段階中の触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0090】
最も好ましくは、触媒系は、重合の第1の段階および第2の段階中に使用される。前記系は、有利には、スズをベースとする触媒、またはスズ、チタン、ゲルマニウムおよびアルミニウムをベースとする触媒の混合物からなる。
【0091】
例として、重量による量として、導入されたモノマーの量に対して、触媒系中に含有される10~500ppmの金属が使用され得る。
【0092】
調製方法によれば、モノマーの重合のステップ中、酸化防止剤が有利に使用される。これらの酸化防止剤により、得られるポリエステルの着色を減少させることが可能である。酸化防止剤は、一次および/または二次酸化防止剤であり得る。一次酸化防止剤は、化合物Hostanox(登録商標)03、Hostanox(登録商標)010、Hostanox(登録商標)016、Ultranox(登録商標)210、Ultranox(登録商標)276、Dovernox(登録商標)10、Dovernox(登録商標)76、Dovernox(登録商標)3114、Irganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)1076などの立体障害フェノール、またはIrgamod(登録商標)195などのホスホネートであり得る。二次酸化防止剤は、Ultranox(登録商標)626、Doverphos(登録商標)S-9228、Hostanox(登録商標)P-EPQまたはIrgafos 168などの三価リン化合物であり得る。
【0093】
重合添加剤として、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなど、望ましくないエーテル化反応を制限することが可能である少なくとも1種の化合物を反応器中に導入することも可能である。
【0094】
最終的に、方法は、重合ステップから得られるポリエステルを回収するステップを含む。そのようにして回収された熱可塑性ポリエステルは、その後、上記に記載のように形成され得る。
【0095】
合成方法の1つの変形形態に従い、ポリエステルが半結晶質である場合、モル質量を増加するステップが、熱可塑性ポリエステルの回収ステップの後に実行され得る。
【0096】
モル質量を増加させるステップは、重合後に実行され、かつ半結晶質熱可塑性ポリエステルの固体状態重縮合(SSP)のステップまたは少なくとも1種の連鎖延長剤の存在下
での半結晶質熱可塑性ポリエステルの反応性押出成形のステップからなり得る。
【0097】
したがって、製造方法の第1の変形形態に従い、重合後のステップは、SSPによって実行される。
【0098】
SSPは、一般に、ガラス転移温度とポリマーの融点との間の温度で実行される。したがって、SSPを実行するために、ポリマーが半結晶質であることが必要である。好ましくは、後者は、10J/gより高い、好ましくは20J/gより高い融解熱を有する。この融解熱の測定は、より低い還元溶液粘度のこのポリマーの試料に16時間にわたって170℃の加熱処理を受けさせ、次いで試料を10K/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価することを含む。
【0099】
有利には、SSPステップは、190~280℃、好ましくは200~250℃の範囲の温度において実行され、このステップは、必ず半結晶質熱可塑性ポリエステルの融点未満の温度で実行されなければならない。
【0100】
SSPステップは、不活性雰囲気下、例えば窒素下、またはアルゴン下、または減圧下で実行され得る。
【0101】
製造方法の第2の変形形態に従い、重合後のステップは、少なくとも1つの連鎖延長剤の存在下での半結晶質熱可塑性ポリエステルの反応性押出成形によって実行される。
【0102】
連鎖延長剤は、反応性押出成形において、半結晶質熱可塑性ポリエステルのアルコール、カルボン酸および/またはカルボン酸エステル官能基と反応することができる2個の官能基を含む化合物である。連鎖延長剤は、例えば、2個のイソシアネート、イソシアヌレート、ラクタム、ラクトン、カーボネート、エポキシ、オキサゾリンおよびイミド官能基を含む化合物から選択され得、前記官能基は、同一であるかまたは異なり得る。熱可塑性ポリエステルの連鎖延長は、溶融材料と反応器の気体のヘッドスペースとの間の良好な界面を確実にするために十分に発散性である、非常に粘着性の媒体を撹拌しながら混合することが可能である反応器のいずれにおいても実行され得る。特に、この処理ステップのために適切である反応器は、押出成形機である。
【0103】
反応性押出成形は、いずれの種類の押出成形機でも、特に一軸スクリュー押出機、共回転二軸スクリュー押出機または反対回転二軸スクリュー押出機で実行され得る。しかしながら、共回転押出器を使用してこの反応性押出成形を実行することが好ましい。
【0104】
反応性押出成形ステップは、
・押出成形機中にポリマーを導入して、前記ポリマーを溶融させること;
・次いで、溶融ポリマーに連鎖延長剤を導入すること;
・次いで、押出成形機中でポリマーを連鎖延長剤と反応させること;
・次いで、押出成形ステップで得られた半結晶質熱可塑性ポリエステルを回収すること
によって実行され得る。
【0105】
押出成形中、押出成形機中の温度は、ポリマーの融点より高くなるように調整される。押出成形機中の温度は、150~320℃の範囲であり得る。
【0106】
モル質量を増加させるステップの後に得られた半結晶質熱可塑性ポリエステルは、回収され、かつその後、上記に記載のように形成され得る。
【0107】
純粋に説明目的であるように意図され、かつ保護の範囲を決して限定しない以下の実施
例および図により、本発明がより明確に理解されるであろう。
【実施例
【0108】
ポリマーの特性は、次の技術によって調査した。
【0109】
還元溶液粘度
還元溶液粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノールおよびオルト-ジクロロベンゼンの機器質量混合物中、25℃においてUbbelohde毛細管粘度計を使用して評価する。
【0110】
DSC
ポリエステルの熱的特性は、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定した。試料を最初に開放るつぼ中、窒素雰囲気下において10℃から320℃まで加熱し(10℃.分-1)、10℃まで冷却し(10℃.分-1)、次いで第1段階と同一条件下で320℃まで再加熱する。ガラス転移温度は、第2の加熱の中点において計られた。いずれの融点も、第1の加熱において吸熱ピーク(開始)上で決定される。
【0111】
同様に、融合のエンタルピー(曲線下面積)は、第1の加熱において決定される。
【0112】
以下に提示された説明例のために、次の試薬を使用した。
1,4-シクロヘキサンジメタノール(純度99%、シスおよびトランス異性体の混合物)
Roquette Freresからのイソソルビド(純度>99.5%)Polysorb(登録商標)P
Acrosからのテレフタル酸(純度99+%)
BASF AGからのIrganox(登録商標)1010
Sigma Aldrichからのジブチルスズオキシド(純度98%)
Hytrel(登録商標):DupontからのHytrel 5556
mXD6:Mitsubishi Gaz ChemicalからのグレードS6007
【0113】
実施例1:熱可塑性ポリエステルおよびポリエステルエーテルを含むポリマー組成物。
A:熱可塑性ポリエステルP1の重合
1432g(9.9モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノール、484g(3.3モル)のイソソルビド、2000g(12.0モル)のテレフタル酸、1.65gのIrganox1010(酸化防止剤)および1.39gのジブチルスズオキシド(触媒)を7.5L反応器に添加する。イソソルビド結晶から残留酸素を抽出するために、反応媒体の温度が60℃になったら4回の減圧-窒素サイクルを実行する。
【0114】
次いで、87%のエステル化度(回収された蒸留物の質量から推測される)が得られるまで、6.6バールの圧力下において、常に撹拌しながら(150rpm)反応混合物を275℃(4℃/分)まで加熱する。次いで、対数的勾配に従って圧力を90分かけて0.7ミリバールまで減少させ、かつ温度を285℃にする。
【0115】
初期の軸トルクと比較した12.1Nmの軸トルクの増加が得られるまで、これらの減圧および温度条件を維持する。
【0116】
最終的に、反応器の底部バルブを介してポリマーロッドをキャストし、熱調節水浴中で15℃まで冷却し、かつ約15mgの果粒G1の形態に切断する。
【0117】
次いで、固体状態縮合後ステップにおいて顆粒G1を使用する。
【0118】
したがって、顆粒G1は、170℃において減圧下、オーブン中で2時間結晶化される。
【0119】
固体状態縮合後のステップは、モル質量を増加させるために、窒素流下(1500L/時間)において210℃で20時間にわたり、これらの顆粒10kgに対して実行された。固体状態縮合後の樹脂は、103.4mL.g-1の還元溶液粘度を有する。
【0120】
ポリエステルのH NMR分析により、ポリエステルP1がジオールに対して17.0モル%のイソソルビドを含有することが示される。
【0121】
熱的特性に関して、ポリエステルP1は、23.2J/gの融合のエンタルピーとともに、96℃のガラス転移温度、253℃の融点を有する。
【0122】
B:ブレンドのための押出成形
70重量%のポリエステルP1(残留湿分含有量0.1%)および10重量%のHytrel(登録商標)ポリエステルエーテルを含有する「乾燥」ブレンドを、直径26、L/D比40であり、8つの加熱ゾーンを有するTSA押出成形機中に導入する。
【0123】
全顆粒フローレートを5kg/時間で固定し、加熱ゾーンを以下の表1に記載される温度に調節する。
【0124】
【表1】
【0125】
押出成形機出口において押出形成されたロッドを切断して、それぞれ20~25mgの顆粒G1’を形成する。
【0126】
射出成形前にこれらの粒剤G1’を150℃において減圧乾燥する。顆粒G1’の残留湿分含有量は、125ppmである。
【0127】
C:形成のための射出成形
Engel Victory 80プレスにおいて射出成形を実行する。
【0128】
押出成形ステップにおいて得られた顆粒G1’を乾燥雰囲気中に保持し、次の温度(4つの加熱ゾーン、ノズル→供給):275/275/260/260を有する射出成形プレスのホッパー中に導入し、金型温度を50℃に固定する。顆粒を厚さ4mmのバー(または試験試料)の形態に射出成形する。
【0129】
射出成形のために使用されるパラメーターを以下の表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
そのようにして試験試料を得る。
【0132】
動的熱力学分析により、低温(-55℃)におけるアルファ1転移温度(Tα1)および85℃におけるアルファ2転移温度(Tα2)が示される。
【0133】
DSC分析により、285℃において融点および-55℃におけるTα1と関連するガラス転移温度Tgが示される。
【0134】
Tα2と関連するTgは、示差熱図上に現われない。
【0135】
本実施例において、ポリマー組成物は、熱可塑性エラストマーの定義に対応し、Hytrel(登録商標)と比較して広い使用範囲を有する。実際に、融点Mpは、Hytrel(登録商標)単独に関する222℃の代わりに258℃において測定される。
【0136】
実施例2:熱可塑性ポリエステルおよびポリアミドを含むポリマー組成物。
A:重合
重合は、実施例1と同一手順、同一量および同一化合物に従って実行される。
【0137】
B:ブレンドのための押出成形
「乾燥」ブレンドは、重合ステップで得られた80重量%のポリエステルP1(残留湿分含有量0.1%)および20重量%のポリアミドmXD6を用いて調製され、相溶化剤として0.1%のチタンテトラブトキシドを添加する。これにより、エステル交換反応に触媒作用をもたらすことが可能である。次いで、ブレンドを、直径26、L/D比40であり、8つの加熱ゾーンを有するTSA押出成形機中に導入する。
【0138】
全顆粒フローレートを5kg/時間で固定し、加熱ゾーンを以下の表3に記載される温度に調節する。
【0139】
【表3】
【0140】
押出成形機出口において押出形成されたロッドを切断して、それぞれ20~25mgの顆粒G2を形成する。
【0141】
C:形成のための押出成形
300ppm未満の残留湿分含有量を達成するために、押出成形ステップBにおいて得られた顆粒G2を140℃において減圧乾燥させる。本実施例において、顆粒の水分含有量は、148ppmである。
【0142】
乾燥雰囲気で保持された顆粒を次いで押出成形機のホッパー中に導入する。
【0143】
使用された押出成形機は、フラットダイを備えたCollin押出形成機である。アセンブリは、カレンダー機によって仕上げられる。押出成形パラメーターを以下の表4にまとめる。
【0144】
【表4】
【0145】
そのようにしてポリエステルから押出成形されたシートは、4mmの厚さを有する。
【0146】
次いで、シートを11.2×11.2cmのサイズの正方形に切断し、次いでBrueckner Karo IV延伸機を使用してシートの切断片を2方向で延伸する。これは、130℃~140℃の温度において2.8×2.8の延伸比および2方向で2秒間実行される。
【0147】
この処理後、厚さ14μmの二軸配向フィルムが得られる。
【0148】
本発明によるポリマー組成物から得られるフィルムは、ポリエステル単独で得られるフィルムと比較して気体透過性に関する特性が向上した。