(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20220623BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220623BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220623BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220623BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20220623BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220623BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/209
B29C64/241
B29C64/236
B29C64/232
B29C64/268
(21)【出願番号】P 2019518811
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018793
(87)【国際公開番号】W WO2018212193
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2017096973
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】本間 周平
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 泰志
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 晋平
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204570038(CN,U)
【文献】特開2017-035693(JP,A)
【文献】特開2017-30366(JP,A)
【文献】特表2017-507813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形された物体を支持する台と、
前記台に対して移動可能である第1ノズルと、前記台に対して移動可能であるとともに前記第1ノズルに対して移動可能である第2ノズルと、を有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの少なくとも一方から粉体を吐出し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの少なくとも一方からエネルギー線を照射して前記粉体を溶融又は焼結させ、前記台に支持された前記物体を積層造形する造形部と、
を具備
し、
前記台は、当該台に支持された前記物体を第1軸まわりに回転させ、
前記造形部は、第1移動装置を有し、
前記第1移動装置は、前記台に対して第1方向に平行移動する第1移動部と、前記第1移動部に接続され、前記第1移動部に対して前記第1方向と交差する第2方向に平行移動する第2移動部と、前記第2移動部に接続され、前記第2移動部に対して前記第2方向と交差する第3方向に平行移動する第3移動部と、前記第3移動部に接続された前記第1ノズルを当該第3移動部に対して第2軸まわりに回転させる第1回転部と、を有し、
前記造形部は、第2移動装置を有し、
前記第2移動装置は、前記台に対して第3軸まわりに回転する第2回転部と、前記第2回転部に接続され、前記第2回転部に対して第4方向に平行移動する第4移動部と、前記第4移動部に接続され、前記第4移動部に対して前記第4方向と交差する第5方向に平行移動する第5移動部と、前記第5移動部に接続された前記第2ノズルを当該第5移動部に対し、前記第3軸に対して傾いた第4軸まわりに回転させる第3回転部と、を有する、
積層造形装置。
【請求項2】
前記第2ノズルは、前記第1ノズルが前記粉体を吐出するとともに前記エネルギー線を照射する方向と異なる方向に、前記粉体を吐出するとともに前記エネルギー線を照射可能である、請求項1の積層造形装置。
【請求項3】
前記第1方向は、前記第1軸が延びる方向と直交し、
前記第2方向は、前記第1軸が延びる方向と平行であり、
前記第3方向は、前記第1方向と直交するとともに前記第2方向と直交し、
前記第2軸は、前記第1方向に延びる、
請求項1又は請求項2の積層造形装置。
【請求項4】
前記第3軸は、前記第1軸と平行に延び、
前記第4方向は、前記第3軸が延びる方向と平行であり、
前記第5方向は、前記第4方向と直交し、
前記第4軸が延びる方向は、前記第3軸が延びる方向と直交する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの積層造形装置。
【請求項5】
前記造形部は、前記台、前記第1ノズル、及び前記第2ノズルに対して移動可能な第3ノズル、を有し、前記第1乃至第3ノズルのうち少なくとも一つから粉体を吐出し、前記第1乃至第3ノズルのうち少なくとも一つからエネルギー線を照射して前記粉体を溶融又は焼結させ、前記台に前記物体を積層造形し、
前記第1移動装置は、前記第2移動部に接続され、前記第2移動部に対して前記第3方向に
平行移動する第6移動部と、前記第6移動部に接続された前記第3ノズルを当該第6移動部に対して第5軸まわりに回転させる第4回転部と、を有する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一つの積層造形装置。
【請求項6】
前記第5軸は、前記第2軸と平行に延びる、
請求項5の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから粉末状の材料を供給するとともに、レーザー光を照射することで当該材料を固化させ、固化した材料の層を形成する積層造形装置が知られる。固化した材料の層が積層されることで、立体形状の物体が積層造形される。ノズル又はワークが、例えば多関節ロボットアームの先端に配置される。これにより、種々の方向に材料の層が積層可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの多関節ロボットアームにノズル又はワークを配置して積層造形する場合、多関節ロボットアームは、制御が複雑であったり、動作範囲が狭かったり、積層造形されている物体に干渉したりするため、積層造形の効率という点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態に係る積層造形装置は、積層造形された物体を支持する台と、前記台に対して移動可能である第1ノズルと、前記台に対して移動可能であるとともに前記第1ノズルに対して移動可能である第2ノズルと、を有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの少なくとも一方から粉体を吐出し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルの少なくとも一方からエネルギー線を照射して前記粉体を溶融又は焼結させ、前記台に支持された前記物体を積層造形する造形部と、を備える。前記台は、当該台に支持された前記物体を第1軸まわりに回転させる。前記造形部は、第1移動装置を有する。前記第1移動装置は、前記台に対して第1方向に平行移動する第1移動部と、前記第1移動部に接続され、前記第1移動部に対して前記第1方向と交差する第2方向に平行移動する第2移動部と、前記第2移動部に接続され、前記第2移動部に対して前記第2方向と交差する第3方向に平行移動する第3移動部と、前記第3移動部に接続された前記第1ノズルを当該第3移動部に対して第2軸まわりに回転させる第1回転部と、を有する。前記造形部は、第2移動装置を有する。前記第2移動装置は、前記台に対して第3軸まわりに回転する第2回転部と、前記第2回転部に接続され、前記第2回転部に対して第4方向に平行移動する第4移動部と、前記第4移動部に接続され、前記第4移動部に対して前記第4方向と交差する第5方向に平行移動する第5移動部と、前記第5移動部に接続された前記第2ノズルを当該第5移動部に対し、前記第3軸に対して傾いた第4軸まわりに回転させる第3回転部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施例の積層造形装置を概略的に示す例示的な正面図である。
【
図2】
図2は、実施例の積層造形装置による積層造形物の第1の造形例を概略的に示す例示的な図である。
【
図3】
図3は、実施例の積層造形装置による積層造形物の第2の造形例を概略的に示す例示的な図である。
【
図4】
図4は、実施例の積層造形装置による積層造形物の第3の造形例を概略的に示す例示的な図である。
【
図5】
図5は、実施例の他の造形物を概略的に示す例示的な正面図である。
【
図6】
図6は、実施例の他の造形物を概略的に示す例示的な平面図である。
【
図7】
図7は、実施例の羽根の第1の例を概略的に示す例示的な図である。
【
図8】
図8は、実施例の羽根の第2の例を概略的に示す例示的な図である。
【
図9】
図9は、他の実施例の積層造形装置を概略的に示す例示的な正面図である。
【
図10】
図10は、
図1の実施例に係る積層造形装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【
図11】
図11は、実施例の第1ノズル及び積層造形物を概略的に示す例示的な断面図である。
【
図12】
図12は、
図9の実施例に係る積層造形装置を概略的に示す例示的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明による実施例を以下に示す。
図1は本発明の実施例である積層造形装置1の構造を示している。積層造形装置1は、テーブル2に積層造形物8を造形する。テーブル2は鉛直方向の軸(c軸)まわりに回転可能である。
テーブル2の両側に一対の第1コラム3が配置され、この一対の第1コラム3によって第1クロスレール4のスパンの両端が支持されている。
第1クロスレール4には粉体材料を射出し、この粉体材料を溶融するレーザー光を射出する第1ノズル11が支持されている。
【0008】
第1コラム3は図示しないアクチュエーターによってX軸方向に移動可能である。第1クロスレール4は第1コラム3内に配置したボールねじとアクチュエーターにより、Z軸方向(鉛直方向)に移動可能である。また、第1ノズル11は第1クロスレール4内に配置したボールねじとアクチュエーターによりY軸方向に移動可能である。
また、第1ノズルはX軸と平行な軸(a1軸)を中心として回転可能である。
【0009】
また、テーブル2の外側に第2コラム5が配置されている。第2コラム5は鉛直方向の軸(c2軸)まわりに回転可能である。第2クロスレール6は第2コラム5に支持され、水平に延びている。第2クロスレール6は例えばテーブル2の回転中心軸に向かって延びるが、第2コラム5がc2軸まわりに回転することで第2クロスレール6が延びる方向は変わる。
第2クロスレール6には、粉体材料を射出し、この粉体材料を溶融するレーザー光を射出する第2ノズル12が支持されている。
【0010】
第2クロスレール6は第2コラム5内に配置したボールねじとアクチュエーターにより、w軸方向(鉛直方向)に移動可能である。また、第2クロスレール6は第2クロスレール6内に配置したボールねじとアクチュエーターによりv軸方向に移動可能である。v軸方向は第2コラム5から第2クロスレール6が延びる、高さ(Z軸)一定の直線方向を表す。
図1では正面から見て第2コラム5は右側に位置しているが、この第2コラム5を正面に配置し、v軸をX軸と平行になるようにすると、第1コラム3、第1クロスレール4と第2コラム5、第2クロスレール6との干渉を少なくすることができる。
また、第2ノズルはv軸とw軸の両軸に直交するa2軸を中心として回転可能である。
【0011】
積層造形装置1は、テーブル2の上に積層造形物8を造形する。また、既存の造形物をテーブル2の上に設置し、この造形物上に新たな積層造形物8を造形してもよい。積層造形装置1は、第1ノズル11のみで造形してもいいし、第2ノズル12のみで造形してもよい。積層造形装置1は、第1ノズル11、第2ノズル12を同時に使用して造形してもよい。
第1ノズル11と第2ノズル12を使用して造形する場合に射出される粉体としては、第1ノズル11と第2ノズル12で同じ材料を用いてもいいし異なる材料を用いてもよい。
また、一方のノズルが材料噴出用に使用され、他方のノズルは材料を噴出せずにレーザーのみを照射し加熱用に用いられてもよい。加熱は、予熱や後熱、または造形と同時にされる場合もある。
【0012】
図2に本発明の実施例の積層造形装置を用いた造形例を示す。この造形物8は円錐台31の部分と横に張り出したつば32の部分から構成されている。この造形例では円錐台31を第1ノズル11、つば32を第2ノズル12により造形している。
第1ノズル11のような構造では、円錐台31の水平方向から、つば32を造形することが困難である。逆に第2ノズル12だけでは、円錐台31の造形は難しい。門型の工作機械ではテーブルを傾け(チルトさせ)ワークの横から加工できるようにしたものがある。本発明の実施例の積層造形装置ではテーブルを傾けずに造形をすることができる。
【0013】
一本のノズルのみで
図2のような造形に対応するには、テーブルを傾ける機能を付加したり、ノズルの制御にロボットなみの自由度を持たせたりすることになる。このような構造の制御は複雑になる。また、ノズルの制御にロボットのような自由度を持たせると剛性が不足したり、動作範囲が狭くなったりしてしまう。
【0014】
図2で第2ノズル12を使用してつば32を造形する場合は、第2ノズル12を適切な位置に移動させ、静止する。その後、テーブル2を回転させるだけで一周分のつば32の部分が造形される。このように制御が単純になる。
【0015】
図3は第1ノズル11と第2ノズル12の角度が造形物8に対して同じになるようにして、同時に照射し造形する例である。積層造形では結晶方位を制御し、結晶方向を任意方向にして造形することが知られている。本発明の実施例の造形装置では、ノズルの造形物に対する角度の自由度が大きいので、結晶方位の制御に適している。特定な荷重の方向に強度を持った異方性の材料を造形できる。
また
図3の例で、それぞれのノズルから射出される材料を変えることで、結晶方位を制御した合金を造形することができる。材料の射出を一方のノズルのみが行い、他方が加熱のみに用いられることで他と異なった性質を持つ造形物を製造することができる。
【0016】
図2の例でつば32を造形しないで、円錐台31のみを造形する場合を考える。円錐台31を第1ノズル11で造形した後、第2ノズル12がレーザー照射のみを行い円錐台31の側面を加熱すると、円錐台31の側面の粗さを解消することができる。
【0017】
図4は造形物8の同一な面を2本のノズルで同じ角度により造形する例である。このように第1ノズル11、第2ノズル12で造形する場合において、2つのノズルを平行にして造形できる面の角度に制約が生じることがある。しかし、
図2の円錐台31の側面の表面のような例においては、造形が可能である。また、後述するように第1ノズル11と第3ノズル13を使用する場合には、2つのノズルを平行にした造形が容易になる。
2つのノズルの距離が、互いのノズル先端から吐出される粉とガスの流れに影響されない距離まで離されて、造形が行われる。または、先に造形するノズルによって加熱された部分が冷却されないうちに、後から他のノズルによって造形を行うこともできる。
この実施例では2本のノズルの例を示してあるが、さらにノズルの数を増やし偶数個として、2本のノズルを1セットとして造形することも可能である。また、ノズルの数は偶数個でなくても良いし、1セットに含まれるノズルは2本でなくても良い。
【0018】
図5及び
図6は他の造形物20の例である。円錐台21の部分は他の工作機械で製造され、羽根22の部分が積層造形される。
図5が造形物20の正面図、
図6が平面図である。
図6のAで示した部分を拡大したものが
図7,8で、これらの図は別々の造形方法により製造された羽根22を示している。
【0019】
図7は第2ノズル12により層26を造形した羽根22を示す。層26は、X-Y平面において、円錐台21の回転中心を中心とした同心円状に造形されている。層25は第1ノズルによりY軸に平行に円錐台21の中心から放射状に造形されている。このように造形する方向を層により変化させることで、色々な方向の荷重に対して強度がある造形物を製造できる。
【0020】
図8は第2ノズル12により一番下の層26を造形し、その後層25のみを第1ノズルによりY軸に平行に造形した羽根22の例である。
図8の例は、この造形物20の使用状況では層25のような向きで造形した方が、強度的に望ましい場合のものである。
しかし、層25のみで造形する場合には、羽根22の下に治具等を設置しないと層25の造形は困難である。
このような場合、最初に層26を円錐台21の回転中心から放射状に造形して、その後層25を造形することにより治具等を使用しないで造形物20の製造が可能となる。層25は円錐台21の中心から同心円状に造形してもよいし、放射状に造形してもよい。
【0021】
図9は本発明の他の実施例である。第1クロスレール4に支持され、粉体材料を射出し、この粉体材料を溶融するレーザー光を射出する第3ノズル13がさらに設けられている。この第3ノズルは第1ノズル11と独立にY軸方向を移動可能な軸(Y2軸)が設けてある。また、X軸方向を回転中心として第3ノズルを回転できるa3軸を設けてある。このような構成では、
図3のような造形が容易になる。
図9では第1クロスレール4に第1ノズル11と第3ノズル13が支持されているが、それぞれ独立のクロスレールで支持してもよい。
また
図9では第2ノズル12が設けてあるが、第1ノズル11、第3ノズル13の2本のノズルのみでもよい。
【0022】
以下に、以上述べた実施例について、より詳しく説明する。各図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。Z軸は、例えば鉛直方向に延びる。X軸及びY軸は、例えば水平方向に延びる。なお、積層造形装置1は、Z軸が鉛直方向から傾斜するように配置されても良い。
【0023】
図10は、
図1の実施例に係る積層造形装置1を概略的に示す例示的な斜視図である。積層造形装置1は、いわゆるレーザーマテリアルデポジション方式の三次元プリンターである。なお、積層造形装置1はこの例に限らない。
【0024】
図11は、実施例の第1ノズル11及び積層造形物8を概略的に示す例示的な断面図である。第1ノズル11と第2ノズル12とは、略同一の構造を有する。このため、
図11は、第1ノズル11を示すとともに、実質的に第2ノズル12をも示す。
【0025】
積層造形装置1は、例えば、粉末状の材料Mを層状に積み重ねることにより、所定の形状の積層造形物8を積層造形(付加製造)する。材料Mは、粉体の一例である。積層造形物8は、物体の一例である。
【0026】
材料Mは、第1ノズル11や第2ノズル12により供給され、テーブル2、又はテーブル2に支持されたベースの上に積み重ねられる。材料Mは、例えば、粉末状の金属である。なお、材料Mはこれに限られず、合成樹脂及びセラミックスのような他の材料であっても良い。積層造形装置1は、複数種類の材料Mにより、積層造形物8を積層造形しても良い。
【0027】
図10に示されるように、積層造形装置1は、テーブル2と、造形部100と、制御部101と、複数の信号線102とを有する。テーブル2は、台の一例である。テーブル2、造形部100、及び制御部101は、例えば、積層造形装置1の筐体に覆われ、又は造形のための部屋の中に配置される。
【0028】
テーブル2は、積層造形された積層造形物8や、積層造形物8の仕掛品や、材料Mを積層させるためのベースを支持する。以下の説明において、積層造形物8は、積層造形が完了した積層造形物8、積層造形物8の仕掛品、及びベースを含む。積層造形が完了すると、積層造形物8において、材料Mが積層された部分は、ベースと一体化している。
【0029】
テーブル2は、当該テーブル2の少なくとも一部が回転することにより、当該テーブル2に支持された積層造形物8をc軸まわりに回転させる。c軸は、第1軸の一例である。c軸は、鉛直方向(Z軸方向)に延びる。
図10は、c軸と、c軸まわりの回転方向を示す矢印に符号cを付す。
【0030】
テーブル2は、積層造形物8をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させても良い。また、テーブル2は積層造形物8を、Y軸方向に延びる軸や、X軸方向に延びる軸まわりにさらに回転させても良い。
【0031】
造形部100は、第1ノズル11と、第2ノズル12と、供給装置110と、第1移動装置120と、第2移動装置130とを有する。第1ノズル11及び第2ノズル12の少なくとも一方は、テーブル2、又はテーブル2の上の積層造形物8に材料Mを吐出する。また、
図11に示すように、レーザー光Lが、第1ノズル11及び第2ノズル12の少なくとも一方から、吐出された材料Mやテーブル2の上の積層造形物8に照射される。レーザー光Lは、エネルギー線の一例である。
【0032】
レーザー光Lが、材料Mの供給と並行して第1ノズル11及び第2ノズル12から照射される。第1ノズル11及び第2ノズル12から、レーザー光Lに限らず、他のエネルギー線が照射されても良い。エネルギー線は、レーザー光Lのように材料Mを溶融又は焼結できるものであれば良く、例えば、電子ビームや、マイクロ波乃至紫外線領域の電磁波であっても良い。
【0033】
造形部100は、ベースや吐出された材料Mをレーザー光Lにより加熱し、溶融領域8aを形成する。レーザー光Lは、溶融領域8aにおいて、材料Mを溶融又は焼結させ、材料Mを集合させる。このように、溶融領域8aは、供給された材料Mのみならず、レーザー光Lを照射されたベースや積層造形物8の一部を含み得る。また、溶融領域8aは、完全に溶融した材料Mのみならず、部分的に溶融した材料M同士が結合したものであっても良い。
【0034】
溶融領域8aが固化することで、ベースや積層造形物8の上に、層状又は薄膜状等の材料Mの集合としての層8bが形成される。なお、材料Mは、材料Mの集合への伝熱によって冷却されることにより、粒状で積層され、粒状の集合(層)となっても良い。
【0035】
造形部100は、第1ノズル11及び第2ノズル12から、材料Mの集合にレーザー光Lを照射することで、アニール処理を行っても良い。材料Mの集合は、レーザー光Lにより再溶融又は再焼結され、固化することにより層8bになる。
【0036】
造形部100は、層8bを反復的に積み重ねることにより、積層造形物8を積層造形する。このように、造形部100は、第1ノズル11及び第2ノズル12の少なくとも一方からレーザー光Lを照射して材料Mを溶融又は焼結させ、テーブル2に支持された積層造形物8を積層造形する。
【0037】
第1ノズル11及び第2ノズル12はそれぞれ、ノズルヘッド140を有する。ノズルヘッド140の先端141は、間隔を介して積層造形物8に向く。ノズルヘッド140に、出射路142及び吐出路143が設けられる。出射路142及び吐出路143は、例えば、先端141に開口する。
【0038】
出射路142は、略円形の断面を有する孔である。レーザー光Lが、出射路142を通り、ノズルヘッド140の外部に出射される。吐出路143は、略円環状の断面を有する孔であり、出射路142を囲むように設けられる。キャリアガス及び材料Mが、吐出路143を通り、ノズルヘッド140の外部に吐出される。
【0039】
第2ノズル12のノズルヘッド140は、吐出路143から、略水平方向に材料Mを吐出することがある。この場合、重力によって、狙った位置よりも下方に噴射される材料Mの割合が多くなる。積層造形装置1は、第2ノズル12のノズルヘッド140を多少上方に向くように傾けることで、狙った位置に噴射される材料Mの割合を多くすることができる。
【0040】
ノズルヘッド140に、複数の吐出路143が設けられても良い。複数の吐出路143は、互いに区切られるとともに、全体として略円環状の断面を有する。ノズルヘッド140が略水平方向に向く場合、例えば、上に位置する吐出路143から吐出される材料Mの量が、下に位置する吐出路143から吐出される材料Mの量よりも多く設定される。これにより、重力による影響を緩和することができる。
【0041】
図10に示すように、供給装置110は、光学装置111と、材料供給装置112とを有する。光学装置111は、例えば、光源及び光学系を有する。光源は、発振素子を有し、発振素子の発振によりレーザー光Lを出射する。光源は、出射されるレーザー光Lのパワーを変更可能である。
【0042】
光源は、出射されたレーザー光Lを光学系に入射させる。レーザー光Lは、光学系を経て第1ノズル11及び第2ノズル12に入る。光学装置111は、第1ノズル11及び第2ノズル12の出射路142にレーザー光Lを供給し、出射路142からレーザー光Lを出射させる。
【0043】
第1ノズル11及び第2ノズル12は、レーザー光Lの照射によって、吐出された材料Mを加熱することにより、材料Mの層を形成するとともにアニール処理を行うことができる。また、第1ノズル11及び第2ノズル12は、積層造形物8の不要な部位をレーザー光Lの照射によって除去することができる。
【0044】
材料供給装置112は、材料供給部112aと、第1タンク112bと、第2タンク112cとを有する。第1タンク112b及び第2タンク112cは、材料Mを収容する。第1タンク112bに収容される材料Mと、第2タンク112cに収容される材料Mとが異なっても良い。
【0045】
材料供給部112aは、第1タンク112bの材料Mを、供給管11aを介して第1ノズル11へ供給する。材料供給部112aは、第2タンク112cの材料Mを、供給管12aを介して第2ノズル12へ供給する。
【0046】
材料供給部112aは、例えば、キャリアガスにより材料Mを第1ノズル11及び第2ノズル12へ供給する。キャリアガスは、例えば、窒素やアルゴンのような不活性ガスである。材料供給部112aは、供給管11a(供給管12a)を介して、ノズルヘッド140の吐出路143にキャリアガスと材料Mとを供給する。
【0047】
材料供給部112aは、例えば、キャリアガスを収容するタンクと、当該タンクのキャリアガスを供給管11a,12aへ流すポンプと、キャリアガスの流れに第1タンク112b又は第2タンク112cの材料Mを供給する装置と、を有する。なお、材料供給部112aは、他の手段により材料Mを第1ノズル11及び第2ノズル12へ供給しても良い。
【0048】
供給装置110はさらに、パージガスやシールドガスを、供給管11a,12aを介して第1ノズル11及び第2ノズル12へ供給しても良い。パージガス及びシールドガスは、例えば、窒素やアルゴンのような不活性ガスである。供給管11a,12aはそれぞれ、キャリアガス及び材料Mが通る管、パージガスが通る管、シールドガスが通る管、及びレーザー光Lが通るケーブルを包含している。
【0049】
制御部101は、造形部100及びテーブル2に、信号線102を介して電気的に接続される。制御部101は、例えば、CPUのような処理装置と、ROM、RAM、及びHDDのような記憶装置と、他の種々の装置とを有する。
【0050】
CPUがROM又はHDDに組み込まれたプログラムを実行することで、制御部101は、積層造形装置1の各部を制御する。例えば、制御部101は、造形部100の第1ノズル11、第2ノズル12、光学装置111、材料供給装置112、第1移動装置120、及び第2移動装置130を制御する。
【0051】
第1移動装置120は、一対の第1コラム3と、第1クロスレール4と、第1移動体11bと、第1回転機構11cとを有する。第1コラム3は、第1移動部の一例である。第1クロスレール4は、第2移動部の一例である。第1移動体11bは、第3移動部の一例である。第1回転機構11cは、第1回転部の一例である。
【0052】
一対の第1コラム3は、Y軸方向に互いに離間するとともに、Z軸方向に延びる。Y軸方向において、一対の第1コラム3の間に、テーブル2が位置する。第1コラム3は、例えば、第1コラム3及びフロアに設けられた移動機構3aにより、テーブル2に対してX軸方向に移動可能である。X軸方向は、第1方向の一例である。すなわち、第1コラム3が移動する方向は、c軸が延びる方向と直交する。
【0053】
移動機構3aは、例えば、第1コラム3の内部に設けられたアクチュエーターや、フロアに設けられてX軸方向に延びたレールのような、第1コラム3をX軸方向に移動させる種々の部品を有する。一対の第1コラム3は、互いに連結され、X軸方向に平行移動可能である。
【0054】
第1クロスレール4は、Y軸方向に略直線状に延びる。第1クロスレール4の両端が、一対の第1コラム3に支持される。言い換えると、第1クロスレール4は、第1コラム3に接続される。
【0055】
第1クロスレール4は、例えば、第1コラム3及び第1クロスレール4に設けられた移動機構3bにより、第1コラム3に対してZ軸方向に移動可能である。Z軸方向は、第2方向の一例である。すなわち、第1クロスレール4が移動する方向は、X軸方向と直交し、c軸が延びる方向と平行である。
【0056】
移動機構3bは、例えば、第1コラム3の内部に設けられたボールねじ及びアクチュエーターのような、第1クロスレール4をZ軸方向に移動させる種々の部品を有する。第1クロスレール4は、Y軸方向に延びる状態で、Z軸方向に平行移動可能である。すなわち、第1クロスレール4は、第1コラム3に沿って移動する。
【0057】
第1移動体11bは、例えば、第1クロスレール4に設けられた移動機構4aにより、第1クロスレール4に対してY軸方向に移動可能である。Y軸方向は、第3方向の一例である。すなわち、第1移動体11bが移動する方向は、第1コラム3が移動する方向と直交するとともに、第1クロスレール4が移動する方向と直交する。
【0058】
移動機構4aは、例えば、第1クロスレール4の内部に設けられたボールねじ及びアクチュエーターのような、第1移動体11bを移動させる種々の部品を有する。第1移動体11bは、例えば、第1クロスレール4の内部に配置された、ボールねじのナットである。このため、第1移動体11bは、第1クロスレール4の移動機構4aに接続される。第1移動体11bは、移動機構4aにより、第1クロスレール4に沿って移動させられる。
【0059】
第1ノズル11は、第1移動体11bに接続される。第1回転機構11cは、第1ノズル11を、第1移動体11bに対してa1軸まわりに回転させる。a1軸は、第2軸の一例であり、X軸方向に延びる。
図10は、a1軸と、a1軸まわりの回転方向を示す矢印に符号a1を付す。第1回転機構11cは、第1ノズル11の内部に設けられたアクチュエーターのような、第1ノズル11を回転させる種々の部品を有する。
【0060】
第1移動装置120は、第1コラム3によって、第1ノズル11をテーブル2に対してX軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第1クロスレール4によって、第1ノズル11をテーブル2に対してZ軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第1移動体11bによって、第1ノズル11をテーブル2に対してY軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第1回転機構11cによって、第1ノズル11をa1軸まわりに回転させる。以上のように、第1移動装置120は、第1ノズル11を、テーブル2に対して移動させる。
【0061】
第2移動装置130は、第2コラム5と、第2移動体6aと、第2クロスレール6と、第2回転機構12bとを有する。第2コラム5は、第2回転部の一例である。第2移動体6aは、第4移動部の一例である。第2クロスレール6は、第5移動部の一例である。第2回転機構12bは、第3回転部の一例である。
【0062】
第2コラム5は、テーブル2とX軸方向に間隔を介して並べられるとともに、Z軸方向に延びる。Y軸方向において、一対の第1コラム3の間に、第2コラム5が位置する。例えば、第2コラム5は、一対の第1コラム3の間の中間地点に配置される。
図10の第2コラム5は、テーブル2の正面に配置されており、第1クロスレール4と第2コラム5及び第2クロスレール6との干渉を少なくすることができる。なお、第2コラム5は、
図1のように、テーブル2と第1コラム3との間に位置しても良い。
【0063】
第2コラム5は、例えば、第2コラム5及びフロアに設けられた回転機構5aにより、テーブル2に対してc2軸まわりに回転可能である。c2軸は、第3軸の一例であり、Z軸方向に延びる。すなわち、c2軸は、c軸と平行に延びる。
図10は、c2軸と、c2軸まわりの回転方向を示す矢印に符号c2を付す。回転機構5aは、例えば、第2コラム5の内部に設けられたアクチュエーターのような、第2コラム5をc2軸まわりに回転させる種々の部品を有する。
【0064】
第2移動体6aは、例えば、第2コラム5に設けられた移動機構5bにより、第2コラム5に対してw軸方向に移動可能である。w軸方向は、第4方向の一例であり、Z軸方向(鉛直方向)と平行な方向である。すなわち、第2移動体6aが移動する方向は、c2軸が延びる方向と平行である。
【0065】
移動機構5bは、例えば、第2コラム5の内部に設けられたボールねじ及びアクチュエーターのような、第2移動体6aを移動させる種々の部品を有する。第2移動体6aは、例えば、第2コラム5の内部に配置された、ボールねじのナットである。このため、第2移動体6aは、第2コラム5の移動機構5bに接続される。第2移動体6aは、移動機構5bにより、第2コラム5に沿って移動させられる。
【0066】
第2クロスレール6は、第2移動体6aに接続される。第2クロスレール6は、v軸方向に略直線状に延びる。v軸方向は、第5方向の一例であり、w軸方向と直交する。すなわち、第2クロスレール6は、水平方向に延びる。
【0067】
v軸方向は、第2コラム5が回転することにより変化し、
図10のようにX軸と平行に延びることもあれば、例えばY軸と平行に延びることも可能である。例えば、v軸方向は、c軸の径方向として設定される。すなわち、第2クロスレール6は、c軸に近づく方向、又はc軸から遠ざかる方向に延びる。
【0068】
第2クロスレール6は、例えば、第2クロスレール6の内部に設けられた移動機構により、第2移動体6aに対してv軸方向に移動可能である。第2クロスレール6の内部の移動機構は、例えば、ボールねじ及びアクチュエーターのような、第2クロスレール6をv軸方向に移動させる種々の部品を有する。
【0069】
第2ノズル12は、第2クロスレール6に接続される。第2回転機構12bは、第2ノズル12を、第2クロスレール6に対してa2軸まわりに回転させる。a2軸は、第4軸の一例である。
図10は、a2軸と、a2軸まわりの回転方向を示す矢印に符号a2を付す。第2回転機構12bは、第2ノズル12の内部に設けられたアクチュエーターのような、第2ノズル12を回転させる種々の部品を有する。
【0070】
a2軸は、w軸方向と直交するとともにv軸方向と直交する方向に延びる。このため、a2軸はc2軸に対して傾いており、a2軸が延びる方向はc2軸が延びる方向と直交する。言い換えると、a2軸はc2軸と平行ではなく、a2軸は、c2軸と交差するか、c2軸に対して捩れの位置にある。
【0071】
第2移動装置130は、第2コラム5によって、第2ノズル12をテーブル2に対してc2軸まわりに回転させる。第2移動装置130は、第2移動体6aによって、第2ノズルをテーブル2に対してw軸方向に平行移動させる。第2移動装置130は、第2クロスレール6によって、第2ノズル12をテーブル2に対してv軸方向に平行移動させる。第2移動装置130は、第2回転機構12bによって、第2ノズル12をa2軸まわりに回転させる。以上のように、第2移動装置130は、第2ノズル12を、テーブル2に対して移動させる。また、第2移動装置130は、第2ノズル12を、第1ノズル11に対しても移動させる。すなわち、第1ノズル11と第2ノズル12とは、互いに独立して移動可能である。
【0072】
以上のように、第1移動装置120が第1ノズル11を平行移動及び回転させ、第2移動装置130が第2ノズル12を平行移動及び回転させる。このため、第2ノズル12は、第1ノズル11が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する方向(
図10の例においてはZ軸方向)と異なる方向(
図10の例においてはX軸方向)に、材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射可能である。
【0073】
積層造形装置1は、例えば、以下のように積層造形物8又は造形物20を積層造形する。なお、積層造形装置1が積層造形物8又は造形物20を積層造形する方法は、以下に説明されるものに限らない。
【0074】
まず、制御部101に、例えば外部のパーソナルコンピュータから、積層造形物8又は造形物20の三次元形状のデータが入力される。当該三次元形状のデータは、例えばCADのデータであるが、他のデータであっても良い。
【0075】
次に、制御部101は、取得した上記データの三次元形状を、複数の層に分割する(スライス)。制御部101は、スライスされた三次元形状を、例えば複数の点や直方体(ピクセル)の集まりに変換する(ラスタライズ、ピクセル化)。このように、制御部101は、取得した積層造形物8又は造形物20の三次元形状のデータから、複数の二次元形状の層のデータを生成する。生成されたデータは、例えば、制御部101のRAM又は記憶装置に記憶される。
【0076】
次に、制御部101に制御された第1移動装置120は、第1ノズル11を移動及び回転させる。さらに、制御部101に制御された第2移動装置130は、第2ノズル12を移動及び回転させる。第1ノズル11と第2ノズル12とは、互いに異なる位置に配置される。
【0077】
次に、制御部101に制御された第1ノズル11と第2ノズル12との少なくとも一方が、材料Mを吐出するとともに、レーザー光Lを照射して材料Mを溶融又は焼結させ、材料Mの層を形成する。材料Mの層が形成される間、テーブル2は、積層造形物8又は造形物20を回転させる。これにより、材料Mの層が積層され、積層造形物8又は造形物20が積層造形される。
【0078】
第1ノズル11と第2ノズル12との位置、向き(角度)、材料Mの吐出時期、及びレーザー光Lの出射時期は、三次元形状のデータに含まれても良いし、制御部101が三次元形状のデータに基づき算出しても良い。第1ノズル11と第2ノズル12との位置、向き(角度)、材料Mの吐出時期、及びレーザー光Lの出射時期は、例えば、材料Mの種類、表面粗さ、及び造形時間のような、要求される諸条件によって変わり得る。
【0079】
例えば、
図2の積層造形物8を積層造形する場合、第1ノズル11は、Z軸方向に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第1移動装置120により移動及び回転させられる。これにより、材料Mの層がZ軸方向に積層され、円錐台31が積層造形される。
【0080】
第1移動装置120は、第1ノズル11を、所望の位置で静止させる。第1ノズル11が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する間、テーブル2が積層造形物8をc軸まわりに回転させる。これにより、c軸まわりの一周分の層が形成される。このように、単純な動作で円錐台31が形成される。なお、第1ノズル11が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する間、第1移動装置120が第1ノズル11を移動させることで、c軸まわりの一周分の層が形成されても良い。
【0081】
一方、第2ノズル12は、Z軸と直交する方向(例えばY軸方向)に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第2移動装置130により移動及び回転させられる。これにより、材料Mの層がZ軸と直交する方向に積層され、つば32が積層造形される。
【0082】
第2移動装置130は、第2ノズル12を、所望の位置で静止させる。第2ノズル12が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する間、テーブル2が積層造形物8をc軸まわりに回転させる。これにより、c軸まわりの一周分の層が形成される。このように、単純な動作でつば32が形成される。
【0083】
積層造形において、材料Mの層は、例えば、積層造形物8の既に造形された部分、治具、又はサポートの上に積層される。このため、第1ノズル11がつば32を積層造形する場合、Z軸方向に材料Mの層を支持する治具やサポートが用いられる。しかし、本実施例では、第2ノズル12がつば32を積層造形する。第2ノズル12は、材料Mの層を、既に造形された円錐台31の上に、Y軸方向に積層させることができる。このため、第2ノズル12は、つば32を支持する治具やサポート無しに、またテーブル2を傾けること無しに、つば32を積層造形することができる。
【0084】
例えば、
図3の積層造形物8を積層造形する場合、第1ノズル11及び第2ノズル12は、互いに異なる方向から同一位置に向き、材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第1移動装置120及び第2移動装置130によって移動させられる。言い換えると、第1ノズル11と第2ノズル12とは、線対称又は回転対称に配置される。
【0085】
第1ノズル11から吐出された材料Mによって形成された部分と、第2ノズル12から吐出された材料Mによって形成された部分とは、結晶の伸長方向及び結晶方位が異なる。例えば、積層造形物8の結晶組織は、積層方向に平行に伸長する。積層方向は、各ノズルによるレーザー光Lの出射方向である。このため、第1ノズル11による材料Mの吐出量及び角度と、第2ノズル12による材料Mの吐出量及び角度とを制御することで、積層造形物8の結晶の伸長方向及び結晶方位が制御され、特定方向の荷重に対する強度を高められた積層造形物8が積層造形される。
【0086】
一つのノズルにより結晶の伸長方向及び結晶方位を制御する場合、当該ノズルを複雑に移動及び回転させることになり、配線も複雑化する。しかし、本実施例によれば、第1ノズル11及び第2ノズル12を静止させたままでも、結晶の伸長方向及び結晶方位を制御可能であり、配線も単純化可能である。
【0087】
また、第1ノズル11が吐出する材料Mと、第2ノズル12が吐出する材料Mとが異なっても良い。この場合、少なくとも一部が複数種類の材料を含む合金によって作られた積層造形物8が積層造形される。
【0088】
第1ノズル11及び第2ノズル12のうち、一方が材料Mの吐出及びレーザー光Lの照射により積層造形物8の積層造形を行い、他方がレーザー光Lの照射のみを行っても良い。レーザー光Lの照射のみを行うノズルは、積層造形物8の表面を加熱し、アニール処理をしたり、粗さを解消したり、不要な部分を除去したりすることができる。
【0089】
例えば、
図4の積層造形物8を積層造形する場合、第1ノズル11と第2ノズル12とが、同一方向に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第1移動装置120及び第2移動装置130によって移動させられる。この場合、二つのノズルによる積層造形が行われるため、造形速度は約2倍となる。
【0090】
第1移動装置120及び第2移動装置130は、互いに十分離間した位置に第1ノズル11及び第2ノズル12を配置する。これにより、第1ノズル11から吐出される材料M及びキャリアガスと、第2ノズル12から吐出される材料M及びキャリアガスとが、互いに影響することが抑制される。
【0091】
例えば、
図7及び
図8の羽根22を積層造形する場合、第1ノズル11は、Z軸方向に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第1移動装置120により移動及び回転させられる。一方、第2ノズル12は、Z軸と直交する方向(例えばY軸方向)に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射するように、第2移動装置130により移動及び回転させられる。
【0092】
図7の羽根22を形成する場合、まず、第2ノズル12が一番下の層26を積層造形する。第2ノズル12は、Y軸方向に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する。これにより、材料Mが溶融又は焼結され、複数の層26がY軸方向に積層される。次に、第1ノズル11が、層26の上に層25を形成する。第1ノズル11は、Z軸方向に材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する。これにより、材料Mが溶融又は焼結され、一つの層25が層26の上にZ軸方向に重ねられる。以降、第2ノズル12によるY軸方向への層26の積層と、第1ノズル11によるZ軸方向への層25の積層とが繰り返されることで、
図7の羽根22が積層造形される。
【0093】
図8の羽根22を形成する場合、まず、第2ノズル12が一番下の層26を積層造形する。第2ノズル12は、複数の層26をY軸方向に積層させる。次に、第1ノズル11が、層26の上に複数の層25を形成する。第1ノズル11は、複数の層25を層26の上にZ軸方向に積層させる。これにより、
図8の羽根22が積層造形される。
【0094】
第2移動装置130は、第2ノズル12を、所望の位置で静止させる。第2ノズル12が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する間、テーブル2が積層造形物8をc軸まわりに回転させる。これにより、c軸まわりの一周分の層26が形成される。
【0095】
第1移動装置120は、第1ノズル11を、所望の位置で静止させる。第1ノズル11が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する間、テーブル2が積層造形物8をc軸まわりに回転させる。これにより、c軸まわりの一周分の層25が形成される。第1移動装置120が第1ノズル11をY軸方向へ移動させることで、層25が水平方向に広がる。
【0096】
以上のように、単純な動作で羽根22が形成される。羽根22は、例えば、タービンの羽根である。同様の単純な動作で積層造形可能な製品は多く、積層造形装置1は多様な製品を積層造形可能である。
【0097】
また、制御部101が一つの羽根22を積層造形するプログラムを有すれば、積層造形装置1は複数の羽根22を積層造形可能である。積層造形装置1は、上記プログラムにより一つの羽根22を積層造形した後、テーブル2によって造形物20を回転させ、上記プログラムを再度実行して他の羽根22を積層造形する。これにより、造形物20を積層造形するためのプログラムを単純化できる。
【0098】
以上のように、第1ノズル11及び第2ノズル12は、互いに異なる方向へ材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを出射することができる。このため、材料Mの層が、種々の方向へ積層可能となる。上述のように、材料Mの層は、上方向(Z軸の矢印が向く方向)、及び水平方向(X軸方向やY軸方向)へ積層可能である。さらに、例えば、第2ノズル12が上方向へ材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを出射することで、下方向(Z軸の矢印の反対方向)へ材料Mの層を積層させることも可能である。
【0099】
以上説明された実施例に係る積層造形装置1において、造形部100は、第1ノズル11及び第2ノズル12の少なくとも一方から材料Mを吐出し、第1ノズル11及び第2ノズル12の少なくとも一方からレーザー光Lを照射して材料Mを溶融又は焼結させ、テーブル2に支持された積層造形物8を積層造形する。第1ノズル11は、テーブル2に対して移動可能である。第2ノズル12は、テーブル2に対して移動可能であるとともに第1ノズル11に対して移動可能である。このため、第1ノズル11及び第2ノズル12がそれぞれ適切な位置に配置されて、協働して同時に一つの積層造形物8を積層造形できる。従って、造形時間が短縮され、積層造形物8を効率良く積層造形することができる。さらに、第1ノズル11と第2ノズル12とが動作範囲を補い合うことで、積層造形が可能な範囲を広くすることができる。加えて、第1ノズル11と第2ノズル12との個々の動作範囲を小さくすることができ、配線を単純化することができる。また、例えば、第1ノズル11により積層造形物8を積層造形しつつ、第2ノズル12によりレーザー光Lを当該積層造形物8に照射することで、積層造形物8の粗さを効率良く解消できる。
【0100】
複数の方向に材料Mの層を積層させる場合、テーブル2を傾けたり、サポートを作ったり、治具を用いたりする方法がある。しかし、テーブル2を傾ける場合、積層造形装置1の大型化や動力源のコスト増を招く。また、サポートや治具を用いる場合、造形時間が長くなる。これに対し、本実施例において、第2ノズル12は、第1ノズル11が材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射する方向と異なる方向に、材料Mを吐出するとともにレーザー光Lを照射可能である。これにより、テーブル2を傾けたり、サポートを作ったり、治具を用いたりすることなく、複数の方向に材料Mの層を積層させることができる。従って、種々の形状を有する積層造形物8を、効率良く積層造形することができる。
【0101】
テーブル2は、当該テーブル2に支持された積層造形物8を回転させる。これにより、積層造形物8と、第1ノズル11及び第2ノズル12との相対的な位置を効率良く変えることができ、造形時間が短縮され、積層造形物8を効率良く積層造形することができる。
【0102】
第1移動装置120は、テーブル2に対してX軸方向に移動する第1コラム3と、第1コラム3に接続され、第1コラム3に対してZ軸方向に移動する第1クロスレール4と、第1クロスレール4に接続され、第1クロスレール4に対してY軸方向に移動する第1移動体11bと、第1移動体11bに接続された第1ノズル11を当該第1移動体11bに対してa1軸まわりに回転させる第1回転機構11cと、を有する。言い換えると、第1ノズル11は、第1コラム3、第1クロスレール4、及び第1移動体11bにより互いに交差する三方向に平行移動させられ、第1回転機構11cにより回転させられる。これにより、例えば、複数の回転部分(関節)を有する多関節型ロボットアームによって第1ノズル11が平行移動する場合に比べ、第1移動装置120の剛性を確保しやすい。従って、例えば、材料Mの吐出時に第1ノズル11が振動することが抑制され、積層造形物8を精度良く積層造形することができる。また、第1移動装置120の動作は多関節ロボットアームに比べて単純であるため、ロボットアームに用いられるような複雑な制御無しに第1ノズル11を所望の位置へ移動させることができ、配線の複雑化も抑制される。
【0103】
第1コラム3は、移動機構3aのレールに沿ってX軸方向に平行移動する。テーブル2、第1クロスレール4、第1移動体11b、及び第1回転機構11cの移動及び回転を停止した状態で、第1コラム3がX軸方向に平行移動することで、第1ノズル11は、X軸方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0104】
第1クロスレール4は、第1コラム3に沿ってZ軸方向に平行移動する。テーブル2、第1コラム3、第1移動体11b、及び第1回転機構11cの移動及び回転を停止した状態で、第1クロスレール4がZ軸方向に平行移動することで、第1ノズル11は、Z軸方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0105】
第1移動体11bは、第1クロスレール4に沿ってY軸方向に平行移動する。テーブル2、第1コラム3、第1クロスレール4、及び第1回転機構11cの移動及び回転を停止した状態で、第1移動体11bがY軸方向に平行移動することで、第1ノズル11は、Y軸方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0106】
第1コラム3、第1クロスレール4、第1移動体11bが同時に一定速度で移動することで、第1ノズル11は3次元空間で任意の方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0107】
第1コラム3が移動するX軸方向は、積層造形物8の回転の中心となるc軸が延びる方向と直交する。第1クロスレール4が移動するZ軸方向は、c軸が延びる方向と平行である。第1移動体11bが移動するY軸方向は、X軸方向と直交するとともにZ軸方向と直交する。第1ノズル11の回転の中心となるa1軸は、X軸方向に延びる。このように、第1移動装置120は、第1ノズル11を互いに直交する三方向に平行移動させるため、第1ノズル11の移動範囲をより広くすることができる。
【0108】
第2移動装置130は、テーブル2に対してc2軸まわりに回転する第2コラム5と、第2コラム5に接続され、第2コラム5に対してw軸方向に移動する第2移動体6aと、第2移動体6aに接続され、第2移動体6aに対してv軸方向に移動する第2クロスレール6と、第2クロスレール6に接続された第2ノズル12を当該第2クロスレール6に対し、c2軸に対して傾いたa2軸まわりに回転させる第2回転機構12bと、を有する。言い換えると、第2ノズル12は、第2移動体6a及び第2クロスレール6により二つの方向に平行移動させられ、第2コラム5及び第2回転機構12bにより互いに傾いた二つの軸まわりに回転させられる。これにより、例えば、平行な軸まわりに回転する複数の回転部分(関節)を有する多関節型ロボットアームによって第2ノズル12が移動する場合に比べ、第2移動装置130の剛性を確保しやすい。従って、例えば、材料Mの吐出時に第2ノズル12が振動することが抑制され、積層造形物8を精度良く積層造形することができる。また、ロボットアームに用いられるような複雑な制御無しに、第2ノズル12を所望の位置へ移動させることができる。
【0109】
第2移動体6aは、第2コラム5に沿ってw軸方向に平行移動する。第2コラム5、第2クロスレール6、及び第2回転機構12bの移動及び回転を停止した状態で、第2移動体6aがw軸方向に平行移動することで、第2ノズル12は、w軸方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0110】
第2クロスレール6は、当該第2クロスレール6が延びる方向であるv軸方向に平行移動する。第2コラム5、第2移動体6a、及び第2回転機構12bの移動及び回転を停止した状態で、第2クロスレール6がv軸方向に平行移動することで、第2ノズル12は、v軸方向に直線状に延びる積層造形物8を容易に積層造形できる。
【0111】
第2移動体6aがw軸方向に一定速度で移動すると同時にテーブル2が一定速度で回転することで、第2ノズル12は、円柱台の側面に螺旋状に延びる積層造形物8を容易に造形できる。
【0112】
第2移動体6aがw軸方向に一定速度で移動し、第2クロスレール6がv軸方向に一定速度で移動すると同時に、テーブル2が一定速度で回転することで、第2ノズル12は、円錐台の側面に螺旋状に延びる積層造形物8を容易に造形できる。
【0113】
第2コラム5の回転の中心となるc2軸は、c軸と平行に延びる。第2移動体6aが移動するw軸方向は、c2軸が延びる方向と平行である。第2クロスレール6が移動するv軸方向は、w軸方向と直交する。第2ノズル12の回転の中心となるa2軸が延びる方向は、c2軸が延びる方向と直交する。このように、第2移動装置130は、第2ノズル12を互いに直交する二方向に平行移動させ、互いに直交する方向に延びる二つの軸まわりに回転させるため、第2ノズル12の移動範囲をより広くすることができる。
【0114】
図12は、
図9の実施例に係る積層造形装置1を概略的に示す例示的な斜視図である。
図12の例において、造形部100は第3ノズル13をさらに有する。第3ノズル13は、供給管13aを介して、材料供給装置112から第3タンク112dの材料Mを供給される。
【0115】
第1移動装置120は、第3移動体13bと、第3回転機構13cとをさらに有する。第3移動体13bは、第6移動部の一例である。第3回転機構13cは、第4回転部の一例である。
【0116】
第3移動体13bは、例えば、第1クロスレール4に設けられた移動機構4bにより、第1クロスレール4に対してY2軸方向に移動可能である。Y2軸方向は、第3方向の一例であり、Y軸方向と平行な方向である。
【0117】
移動機構4bは、例えば、第1クロスレール4の内部に設けられたボールねじ及びアクチュエーターのような、第3移動体13bを移動させる種々の部品を有する。第3移動体13bを移動させる移動機構4bは、第1移動体11bを移動させる移動機構4aと別途設けられる。このため、第3ノズル13は、第1ノズル11から独立してY2軸方向に移動可能である。
【0118】
第3移動体13bは、例えば、第1クロスレール4の内部に配置された、ボールねじのナットである。このため、第3移動体13bは、第1クロスレール4の移動機構4bに接続される。第3移動体13bは、移動機構4bにより、第1クロスレール4に沿って移動させられる。
【0119】
第3ノズル13は、第3移動体13bに接続される。第3回転機構13cは、第3ノズル13を、第3移動体13bに対してa3軸まわりに回転させる。a3軸は、第5軸の一例であり、X軸方向に延びる。すなわち、a3軸は、a1軸と平行に延びる。
図12は、a3軸と、a3軸まわりの回転方向を示す矢印に符号a3を付す。第3回転機構13cは、第3ノズル13の内部に設けられたアクチュエーターのような、第3ノズル13を回転させる種々の部品を有する。
【0120】
第1移動装置120は、第1コラム3によって、第3ノズル13をテーブル2に対してX軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第1クロスレール4によって、第3ノズル13をテーブル2に対してZ軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第3移動体13bによって、第3ノズル13をテーブル2に対してY軸方向に平行移動させる。第1移動装置120は、第3回転機構13cによって、第3ノズル13をa3軸まわりに回転させる。以上のように、第1移動装置120は、第3ノズル13を、テーブル2に対して移動させる。さらに、第1移動装置120は、第3ノズル13を、第1ノズル11及び第2ノズル12に対しても移動させる。
【0121】
造形部100は、第1ノズル11、第2ノズル12、及び第3ノズル13のうち少なくとも一つから材料Mを吐出する。さらに、造形部100は、第1ノズル11、第2ノズル12、及び第3ノズル13のうち少なくとも一つからレーザー光Lを照射して材料Mを溶融又は焼結させ、テーブル2に支持された積層造形物8を積層造形する。
【0122】
例えば
図3の例の積層造形物8を積層造形する場合、第2ノズル12の代わりに第3ノズル13を、第1ノズル11と線対称に配置することができる。また、第1ノズル11と第3ノズル13とを、c軸に対して線対称に配置しても良い。この配置で第1ノズル11及び第3ノズル13が同時に積層造形することで、造形時間を短縮することができる。
【0123】
図4に示すように、積層造形物8の同一な面を2本のノズルで造形する場合、第1ノズル11と第3ノズル13との組み合わせによる造形は、第1ノズル11と第2ノズル12との組み合わせによる造形よりも容易である。第1ノズル11と第3ノズル13とは共に、第1クロスレール4に支持される。このため、第1ノズル11と第3ノズル13とは、大きな移動をすることなく、鉛直方向(Z軸方向)において略同一位置(高さ)に配置される。このため、ノズルと積層造形物8との距離を調整しやすい。さらに、第1クロスレール4は、テーブル2の上に位置することができる。加えて、第3ノズル13は、第2ノズル12よりも移動可能な範囲が広い。このため、第3ノズル13は、第2ノズル12よりもテーブル2及び積層造形物8の上に容易に配置されることができる。以上より、第3ノズル13は第2ノズル12よりも、第1ノズル11と並ぶとともに、第1ノズル11と同一方向に向く
図4の例の造形に用いやすい。
【0124】
以上説明された実施例に係る積層造形装置1において、造形部100は、第3ノズル13をさらに有する。第1移動装置120は、第1クロスレール4に接続され、第1クロスレール4に対してY軸方向に移動する第3移動体13bと、第3移動体13bに接続された第3ノズル13を当該第3移動体13bに対してa3軸まわりに回転させる第3回転機構13cと、を有する。このように、第1移動装置120の第1コラム3及び第1クロスレール4が、第1及び第3ノズル11,13を互いに交差する二方向に平行移動させる。このため、積層造形装置1の大型化を抑制しつつ、第1ノズル11及び第3ノズル13を相対的に移動させることができる。なお、第3ノズル13は、第1移動装置120と異なる移動装置によって移動させられても良い。
【0125】
第3ノズル13の回転の中心となるa3軸は、第1ノズル11の回転の中心となるa1軸と平行に延びる。これにより、第3回転機構13c及び第2ノズルを第1移動装置120に配置しやすく、積層造形装置1の大型化を抑制できる。
【0126】
上述のように、積層造形装置1は、第1ノズル11及び第3ノズル13のみを有し、第2ノズル12を省略されても良い。この場合、第3ノズル13が第2ノズルの一例である。上述のように、
図4の例の造形は、第1ノズル11と第3ノズル13との組み合わせにより容易となる。従って、積層造形装置1は、第2ノズル12を省略され、第1ノズル11及び第3ノズル13のみを有しても、積層造形の効率を向上させることができる。
【0127】
以上複数の実施例について説明したが、様々な形状の積層造形物8を積層造形する場合、ノズルを様々な方向へ移動及び回転させることになる。しかし、多関節型ロボットアームが一つのノズルを移動及び回転させ、積層造形物8を積層造形する場合、支持方法及び制御方法が複雑化する。さらに、旋回精度や剛性が不十分となる場合がある。これに対し、説明された実施例の積層造形装置1は、第1ノズル11及び第2ノズル12という複数のノズルを移動及び回転させることができる。このため、積層造形可能な範囲を広くしたとしても造形時間の増大を抑制できるとともに、多関節型ロボットアームのように複雑な支持及び制御が不要で、第1ノズル11及び第2ノズル12の移動及び回転を単純化でき、積層造形の高速化及び広範囲化が可能となる。さらに、複数のノズルにより同時に積層造形が行われることで、造形時間が短縮化される。従って、実施例の積層造形装置1は、積層造形の効率を向上させることができる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1…積層造形装置、2…テーブル、3…第1コラム、4…第1クロスレール、5…第2コラム、6…第2クロスレール、6a…第2移動体、8…積層造形物、11…第1ノズル、11b…第1移動体、11c…第1回転機構、12…第2ノズル、12b…第2回転機構、13…第3ノズル、13b…第3移動体、13c…第3回転機構、20…造形物、100…造形部、120…第1移動装置、130…第2移動装置、M…材料、L…レーザー光。