(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】心室性期外収縮電気生理学マップを生成するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20220623BHJP
A61B 5/25 20210101ALI20220623BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/25
(21)【出願番号】P 2019531787
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 US2018013277
(87)【国際公開番号】W WO2018132543
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ マーコヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ローゼンバーグ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503319(JP,A)
【文献】特表2016-526474(JP,A)
【文献】特開2015-054250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整脈活動をマッピングする
ための電気解剖学的マッピングシステムの動作方法であって、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップであって、前記少なくとも二つの不整脈テンプレート信号は、第1不整脈マップと関連付けられる第1不整脈テンプレート信号と、第2不整脈マップと関連付けられる第2不整脈テンプレート信号と、を備え、前記少なくとも二つの不整脈テンプレート信号の少なくとも一つは、心室性期外収縮(「PVC」)テンプレート信号を備える、ステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号と前記第1不整脈テンプレート信号との間の第1形態学的類似性を計算するステップと、
前記第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えている場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学データポイントを前記第1不整脈マップに加えるステップと、
前記第1形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えていない場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号と前記第2不整脈テンプレート信号との間の第2形態学的類似性を計算するステップと、
前記第1形態学的類似性が前記閾値を超えておらず、かつ、前記第2形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えている場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学データポイントを前記第2不整脈マップに加えるステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記第1形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えておらず、かつ、前記第2形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えていない場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号を、前記少なくとも二つの不整脈テンプレート信号の第3不整脈テンプレート信号として定義するステップであって、前記第3不整脈テンプレート信号は第3不整脈マップと関連付けられる、ステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学データポイントを前記第3不整脈マップに加えるステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
事前に設定された前記閾値は、0.55から1.00の間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
事前に設定された前記閾値は0.85である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1不整脈マップが事前に設定された数より多くの電気生理学データポイントを含む場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1不整脈マップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に出力するステップと、
前記第2不整脈マップが事前に設定された前記数より多くの電気生理学データポイントを含む場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2不整脈マップのグラフィカル表示を前記三次元心臓モデル上に出力するステップと、
をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2不整脈マップが前記第1不整脈マップよりも多くの電気生理学データポイントを含む場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2不整脈テンプレート信号を前記第1不整脈テンプレート信号として再定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1不整脈テンプレート信号を前記第2不整脈テンプレート信号として再定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2不整脈マップを前記第1不整脈マップとして再定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1不整脈マップを前記第2不整脈マップとして再定義するステップと、
をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップは、
前記電気解剖学的マッピングシステム
が、第1電気生理学的信号を含む第1電気生理学データポイントと、第2電気生理学的信号を含む第2電気生理学データポイントとを選択するユーザ入力を受信するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1電気生理学的信号を前記第1不整脈テンプレート信号として定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1電気生理学データポイントを前記第1不整脈マップに加えるステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2電気生理学的信号を前記第2不整脈テンプレート信号として定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2電気生理学データポイントを前記第2不整脈マップに加えるステップと、
を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップは、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、第1電気生理学的信号を含む第1電気生理学データポイントを収集するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号を前記第1不整脈テンプレート信号として定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第1電気生理学データポイントを前記第1不整脈マップに加えるステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、第2電気生理学的信号を含む第2電気生理学データポイントを収集するステップであって、前記第2電気生理学的信号と前記第1電気生理学的信号との間の形態学的類似性が、事前に設定された前記閾値を超えない、ステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2電気生理学的信号を前記第2不整脈テンプレート信号として定義するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記第2電気生理学データポイントを前記第2不整脈マップに加えるステップと、
を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも二つの不整脈テンプレート信号は、少なくとも二つのEKG信号を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも二つの不整脈テンプレート信号は、少なくとも二つの電位図信号を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
心室性期外収縮(「PVC」)活動をマッピングする
ための電気解剖学的マッピングシステムの動作方法であって、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、複数のPVCマップを確立するステップであって、前記複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有する、ステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えること、又は、前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることなく、前記電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されること、のうちどちらかが最初に起こるまで、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号とPVCマップに関連付けられた前記PVCテンプレート信号とを順次比較するステップであって、前記電気生理学的信号が前記複数のPVCマップに関連付けられたPVCテンプレート信号と順次比較される順序は、前記複数のPVCマップにおける電気生理学データポイントの数の減少に対応する、ステップと、
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることが最初に起こる場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学データポイントを前記PVCテンプレート信号に関連付けられた前記PVCマップに加えるステップと、
を備える方法。
【請求項12】
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることなく、前記電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されることが最初に起きる場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性を計算するステップと、
前記電気生理学的信号と前記不要な信号との間の前記形態学的類似性が、事前に設定された前記閾値を超えない場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号を関連するPVCテンプレート信号として有する追加PVCマップを定義するステップと、
をさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数のPVCマップの各PVCマップが少なくとも一つの電気生理学データポイントを含むように、以下の各ステップを複数回繰り返すステップをさらに備え、
前記各ステップは、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えること、又は、前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることなく、前記電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されること、のうちどちらかが最初に起こるまで、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号とPVCマップに関連付けられた前記PVCテンプレート信号とを順次比較するステップと、
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることが最初に起こる場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学データポイントを前記PVCテンプレート信号と関連付けられた前記PVCマップに加えるステップと、
前記電気生理学的信号と前記PVCテンプレート信号との間の前記形態学的類似性が事前に設定された前記閾値を超えることなく、前記電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号との比較されることが最初に起こる場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性を計算するステップと、
前記電気生理学的信号と前記不要な信号との間の前記形態学的類似性が、事前に設定された前記閾値を超えない場合に、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記電気生理学的信号を関連するPVCテンプレート信号として有する追加PVCマップを定義するステップと、
を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数のPVCマップのうち、事前に設定された数よりも少ない電気生理学データポイントを含む任意のPVCマップを破棄するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、複数のPVCマップを確立するステップであって、前記複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有するステップは、
前記電気解剖学的マッピングシステム
が、複数の電気生理学データポイントを選択するユーザ入力を受信するステップであって、選択された電気生理学データの各々は関連付けられた電気生理学的信号を含む、ステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、選択された電気生理学データポイント各々に対してPVCマップを確立するステップと、を備え、
前記PVCマップは、それぞれ選択された電気生理学データポイントを含み、
前記PVCマップに関連付けられた前記PVCテンプレート信号は、選択されたそれぞれの前記電気生理学データポイントに関連付けられた前記電気生理学的信号である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、複数のPVCマップを確立するステップであって、前記複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有するステップは、
前記電気解剖学的マッピングシステム
が、複数の電気生理学データポイントを収集するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数の電気生理学データポイント内で、複数の異なる電気生理学的信号形態を識別するステップと、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数の異なる電気生理学的信号形態を使用して、前記複数のPVCマップを確立するステップと、
を備える、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数のPVCマップのうち二つ以上のPVCマップを結合PVCマップへマージするステップをさらに備える、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記電気解剖学的マッピングシステムが、前記複数のPVCマップのうち少なくとも一つのPVCマップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に出力するステップをさらに備える、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
心室性期外収縮(「PVC」)活動をマッピングするためのシステムであって、
電気生理学データポイントに関連付けられた電気生理学的信号と複数のPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性を計算し、計算された前記形態学的類似性に基づいて、前記電気生理学データポイントをPVCマップに加えるように構成されているPVC比較プロセッサと、
少なくとも一つの前記PVCマップが事前に設定された数より多くの電気生理学データポイントを含む場合に、少なくとも一つの前記PVCマップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に生成するように構成されているマッピングプロセッサと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年1月13日に出願された米国仮出願第62,446,039号の利益を主張するものであり、これは本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は概して、心臓の診断及び治療の処置で実施することができるような電気生理学的マッピングに関する。特に、本開示は、複数の心室性期外収縮形態を含む電気生理学マップを生成するためのシステム、機器、及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気生理学的マッピング、特に心電図マッピングは、多くの心臓、診断及び治療の処置の一部である。しかしながら、このような処置の複雑さが増すにつれて、利用される電気生理学マップの品質、密度、及びそれらを生成する速さ及び容易さは向上しなければならない。
【0004】
最も時間のかかる電気生理学処置には、特に処置中に臨床形態がまれにしか見られない、心室性頻拍(「VT」)及び/又は持続性の心室性期外収縮(「PVC」)のマッピングが含まれる。これらの処置では、医者は、ポイントを収集するために、各マップポイントでPVCが発生するのを待つ必要がある可能性がある。複数のPVC形態がマッピングされている場合、このタスクにはさらに時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示される電気解剖学的マッピングシステムを使用して不整脈活動をマッピングする方法は、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップであって、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号は、第1不整脈マップと関連付けられる第1不整脈テンプレート信号と、第2不整脈マップと関連付けられる第2不整脈テンプレート信号と、を備えるステップと、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、電気生理学的信号と第1不整脈テンプレート信号との間の第1形態学的類似性を計算するステップと、第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えている場合、電気生理学データポイントを第1不整脈マップに加えるステップと、第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていない場合、電気生理学的信号と第2不整脈テンプレート信号との間の第2形態学的類似性を計算するステップと、第1形態学的類似性が閾値を超えておらず、かつ第2形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えている場合、電気生理学データポイントを第2不整脈マップに加えるステップと、を備える。
【0006】
方法は、第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えておらず、かつ第2形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていない場合、電気生理学的信号を、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号の第3不整脈テンプレート信号として定義するステップであって、第3不整脈テンプレート信号は第3不整脈マップと関連付けられる、ステップと、電気生理学データポイントを第3不整脈マップに加えるステップと、をさらに備えてもよい。
【0007】
さらなる実施形態では、方法は、第1形態学的類似性及び第2形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていない場合、電気生理学的信号と不要な信号との間の第3形態学的類似性を計算するステップと、第3形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えている場合、任意の不整脈マップに含まれる電気生理学データポイントを破棄するステップと、を備えてもよい。
【0008】
事前に設定された閾値は、例えば、約0.85のように、約0.55から約1.00の間であってもよい。
【0009】
方法は、第1不整脈マップが事前に設定された数より多くの電気生理学データポイントを含む場合に、第1不整脈マップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に出力するステップと、第2不整脈マップが事前に設定された数より多くの電気生理学データポイントを含む場合に、第2不整脈マップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に出力するステップと、を備えてもよいと考えられる。
【0010】
さらに、第2不整脈マップが第1不整脈マップよりも多くの電気生理学データポイントを含む場合に、方法は、第2不整脈テンプレート信号を第1不整脈テンプレート信号として再定義するステップと、第1不整脈テンプレート信号を第2不整脈テンプレート信号として再定義するステップと、第2不整脈マップを第1不整脈マップとして再定義するステップと、第1不整脈マップを第2不整脈マップとして再定義するステップと、を備えてもよい。
【0011】
本開示の態様によれば、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップは、電気解剖学的マッピングシステムにおいて、第1電気生理学的信号を含む第1電気生理学データポイント、及び第2電気生理学的信号を含む第2電気生理学データポイントを選択するユーザ入力を受信するステップと、第1電気生理学的信号を第1不整脈テンプレート信号として定義するステップと、第1電気生理学データポイントを第1不整脈マップに加えるステップと、第2電気生理学的信号を第2不整脈テンプレート信号として定義するステップと、第2電気生理学データポイントを第2不整脈マップに加えるステップと、を備える。
【0012】
本開示の他の態様では、少なくとも二つの不整脈テンプレート信号を定義するステップは、第1電気生理学的信号を含む第1電気生理学データポイントを収集するステップと、電気生理学的信号を第1不整脈テンプレート信号として定義するステップと、第1電気生理学データポイントを第1不整脈マップに加えるステップと、第2電気生理学的信号を含む第2電気生理学データポイントを収集するステップであって、第2電気生理学的信号と第1電気生理学的信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えない、ステップと、第2電気生理学的信号を第2不整脈テンプレート信号として定義するステップと、第2電気生理学データポイントを第2不整脈マップに加えるステップと、を備える。
【0013】
少なくとも二つの不整脈テンプレート信号は、少なくとも二つのEKG信号、及び/又は少なくとも二つの電位図信号を含んでもよい。少なくとも二つの不整脈テンプレート信号の少なくとも一つは、心室性期外収縮(「PVC」)テンプレート信号を含んでもよい。
【0014】
また、本明細書に開示される電気解剖学的マッピングシステムを使用して心室性期外収縮(「PVC」)活動をマッピングする方法は、複数のPVCマップを確立するステップであって、複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有する、ステップと、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えること、又は電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることなく、電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されること、のうちどちらかが最初に起こるまで、電気生理学的信号とPVCマップに関連付けられたPVCテンプレート信号とを順次比較するステップと、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることが最初に起こる場合に、電気生理学データポイントをPVCテンプレート信号に関連付けられたPVCマップに加えるステップと、を備える。
【0015】
電気生理学的信号が複数のPVCマップに関連付けられたPVCテンプレート信号と順次比較される順序は、複数のPVCマップにおける電気生理学データポイントの数の減少に対応することが考えられる。
【0016】
本開示の実施形態では、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることなく、電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されることが最初に起きる場合に、方法は、電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性を計算するステップと、電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えない場合、電気生理学的信号を関連するPVCテンプレート信号として有する追加PVCマップを定義するステップと、を備える。
【0017】
方法は、複数のPVCマップの各PVCマップが少なくとも一つの電気生理学データポイントを含むように、以下の各ステップを複数回繰り返すステップをさらに備え、各ステップは、電気生理学的信号を含む電気生理学データポイントを収集するステップと、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えること、又は、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることなく、電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号と比較されること、のうちどちらかが最初に起こるまで、電気生理学的信号とPVCマップに関連付けられたPVCテンプレート信号とを順次比較するステップと、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることが最初に起こる場合、電気生理学データポイントをPVCテンプレート信号と関連付けられたPVCマップに加えるステップと、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えることなく、電気生理学的信号が各PVCマップの各PVCテンプレート信号との比較されることが最初に起こる場合、電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性を計算するステップと、電気生理学的信号と不要な信号との間の形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えない場合、電気生理学的信号を関連するPVCテンプレート信号として有する追加PVCマップを定義するステップと、を備えてよい。そして、複数のPVCマップのうち、事前に設定された数よりも少ない電気生理学データポイントを含む任意のPVCマップは、破棄されてもよい。
【0018】
複数のPVCマップを確立するステップであって、複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有するステップは、電気解剖学的マッピングシステムにおいて、複数の電気生理学データポイントを選択するユーザ入力を受信するステップであって、選択された電気生理学データの各々は関連付けられた電気生理学的信号を含む、ステップと、選択された電気生理学データポイント各々に対してPVCマップを確立するステップと、を備え、PVCマップはそれぞれ選択された電気生理学データポイントを含み、PVCマップに関連付けられたテンプレート信号は、選択されたそれぞれの電気生理学データポイントに関連付けられた電気生理学的信号であってもよい。
【0019】
他の実施形態では、複数のPVCマップを確立するステップであって、複数のPVCマップの各PVCマップは関連付けられたPVCテンプレート信号を有するステップは、電気解剖学的マッピングシステムを使用して複数の電気生理学データポイントを収集するステップと、複数の電気生理学データポイント内で複数の異なる電気生理学的信号形態を識別するステップと、複数の異なる電気生理学的信号形態を使用して複数のPVCマップを確立するステップと、を備えてもよい。
【0020】
本開示のさらなる態様によると、方法は、複数のPVCマップのうち二つ以上のPVCマップを結合PVCマップへマージするステップ、及び/又は、複数のPVCマップのうち少なくとも一つのPVCマップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に出力するステップを備えてもよい。
【0021】
さらなる実施形態において、本開示は、電気生理学データポイントに関連付けられた電気生理学的信号と複数のPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性を計算し、計算された形態学的類似性に基づいて、電気生理学データポイントをPVCマップに加えるように構成されているPVC比較プロセッサと、少なくとも一つのPVCマップのグラフィカル表示を三次元心臓モデル上に生成するように構成されているマッピングプロセッサと、を備える心室性期外収縮(「PVC」)活動をマッピングするためのシステムを提供する。
【0022】
本発明の上記及び他の態様、特徴、詳細、有用性及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読むことから、そして添付の図面を検討することから明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】電気解剖学的マッピングシステムの例示的な模式図である。
【
図2】電気生理学研究に使用することができる例示的なカテーテルである。
【
図3】本明細書に開示される例示的な実施形態に沿った代表的なステップのフローチャートである。
【0024】
複数の実施形態が開示されているが、本開示のさらなる他の実施形態は、例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、当業者には明らかになるであろう。従って、図面及び詳細な説明は本質的に例示的なものであり、限定的ではないと見なされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、電気生理学的マッピングシステムを使用すること(例えば、St.Jude MedicalのEnsite Precision(登録商標)心臓マッピングシステムのような電気解剖学的マッピングシステムを使用すること)により、電気生理学マップ(例えば、心電図マップ)を生成する方法、機器、及びシステムを提供する。説明のために、いくつかの例示的な実施形態が、PVC活動のマップの生成に関連する心臓電気生理学的処置の文脈において、本明細書に詳細に記載される。しかしながら、本明細書に記載の方法、機器、及びシステムは、心房電気生理学マッピングを含むが、これには限定されない他の文脈でも利用することができると考えられる。例えば、本明細書の教示は、洞調律と心房細動との間で変動する患者の左心房をマッピングするときに、非常に有利に適用することができる。
【0026】
図1は、心臓カテーテルをナビゲートし、患者11の心臓10で起こる電気的活動を測定することにより心臓電気生理学研究を行い、そのように測定された電気的活動及び/又はそのように測定された電気的活動と関連する又はそれを代表する情報の三次元マッピングを行う例示的なシステム8の概略図を示す。システム8は、例えば、一つ又は複数の電極を使用して、患者の心臓10の解剖学的モデルを生成するために使用することができる。また、システム8は、例えば、患者の心臓10の診断データマップを生成するために、心臓表面に沿った複数のポイントで電気生理学データを測定し、電気生理学データが測定された各測定ポイントに対して位置情報と測定データを関連付けて記憶するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書においてさらに考察されるように、システム8は、PVC活動の電気生理学マップを生成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、例えば、システム8は、PVC活動の検出及び分類に役立つ機能を持つ様々なソフトウェアやハードウェアを含む。
【0027】
当業者であれば認識するように、そして以下にさらに記載されるように、システム8は、典型的には三次元空間内において、対象の位置、及びいくつかの態様においては、対象の向きを決定し、それらの位置を少なくとも一つの基準に対して決定された位置情報として表わす。
【0028】
説明を簡単にするために、患者11は楕円として概略的に描かれている。
図1に示す実施形態では、3組の表面電極(例えば、パッチ電極)が患者11の表面に適用されて示されており、本明細書においてx軸、y軸、z軸と呼ばれる三つの略直交軸を定義する。他の実施形態では、電極は他の配置で設けられてよく、例えば、特定の体表面上に複数の電極を配置してもよい。さらに別の方法として、電極は体の表面にある必要はなく、体の内部に配置されてもよい。
【0029】
図1では、x軸表面電極12、14は、患者の胸部領域の側面上といった第1の軸に沿って患者に適用されており(例えば、患者の各腕の下の皮膚に適用される)、左電極及び右電極と呼ばれる場合がある。y軸電極18、19は、患者の内股部及び首部に沿うようなx軸と略直交する第2の軸に沿って患者に適用されており、左足電極及び首電極と呼ばれる場合がある。z軸電極16、22は、患者の胸部領域の胸骨及び脊椎に沿うようなx軸及びy軸の両方と略直交する第3の軸に沿って患者に適用されており、胸部電極及び背面電極と呼ばれる場合がある。心臓10は、これらの表面電極の対12/14、18/19、及び16/22の間にある。
【0030】
追加の表面基準電極21(例えば「腹部パッチ」)は、システム8のための基準及び/又は接地電極を提供する。腹部パッチ電極21は、以下でさらに詳細に記載される固定された心臓内電極31の代替物であってもよい。さらに、患者11は、適当な位置に従来の心電図(「ECG」又は「EKG」)システムのリード線の大部分又は全てを有していてもよいことも理解されるべきである。ある実施形態では、例えば、患者の心臓10の心電図を感知するために、12本のECGリード線の標準セットが利用されてもよい。このECG情報は、システム8において利用可能である(例えば、コンピュータシステム20への入力として提供されてよい)。ECGリード線がよく理解されている限りにおいて、そして図の明確さのために、
図1には、単一のリード線6のコンピュータ20への接続のみが示されている。
【0031】
少なくとも一つの電極17(例えば、遠位電極)を有する代表カテーテル13も示されている。この代表カテーテル電極17は、本明細書を通して、「ロービング電極」、「移動電極」、又は「測定電極」と呼ばれる。典型的には、カテーテル13又は複数のそのようなカテーテル上の複数の電極が使用されるであろう。一つの実施形態では、例えば、システム8は、患者の心臓及び/又は脈管構造内に配置された12個のカテーテル上にある64個の電極を備えてもよい。もちろん、この実施形態は単なる例示であり、任意の数の電極及びカテーテルが使用され得る。
【0032】
同様に、カテーテル13(又はこのような複数のカテーテル)は、典型的には、一つ又は複数のイントロデューサを介して、よく知られた手順で、患者の心臓内及び/又は脈管構造内に導入されることを理解されたい。本開示の目的のために、例示的な多電極カテーテル13の一部を
図2に示す。
図2では、カテーテル13は、経中隔シース35を通って、患者の心臓10の左心室50へと伸びている。左心室への経中隔アプローチの使用はよく知られており、当業者にもよく知られているので、本明細書でさらに説明する必要はない。もちろん、カテーテル13は他の任意の適切な方法で、心臓10に導入することができる。
【0033】
図示の実施形態では、カテーテル13はその遠位端に電極17を備え、さらにその長さに沿って間隔を置いて配置された複数の追加の測定電極52、54、56も備える。一般的に、隣接する電極間の間隔は既知であるが、電極はカテーテル13に沿って均等な間隔で配置されていなくてもよく、互いに同じサイズでなくてもよいことを理解されたい。これらの電極17、52、54、56は患者の体内にあるため、システム8によって、各電極に対する位置データが同時に収集されてもよい。
【0034】
同様に、各電極17、52、54、及び56は、心臓表面からの電気生理学的データを集めるために使用することができる。当業者は、電気生理学データポイントの取得及び処理(例えば、接触及び非接触電気生理学マッピングの両方を含む)についての様々な様相に詳しいため、それらについてのさらなる議論は、本明細書に開示される技術を理解するために必要ではない。同様に、当技術分野でよく知られている様々な技術を、複数の電気生理学データポイントからグラフ表示を生成するために使用することできる。当業者が電気生理学データポイントから電気生理学マップを作成する方法を理解する限りにおいて、それに関する態様は、本開示を理解するために必要な範囲でのみ本明細書に記載されるであろう。
【0035】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、任意の固定基準電極31(例えば、心臓10の壁に取り付けられている)が、第2カテーテル29の上に示されている。キャリブレーションの目的のために、この電極31は静止していてよく(例えば、心臓の壁又はその近くに取り付けられている)又はロービング電極(例えば、電極17、52、54、56)と不変の空間関係で配置されてもよいため、「ナビゲーション基準」又は「ローカル基準」と呼ばれてもよい。固定基準電極31は、上記の電極21とともに、又はその代替として使用されてもよい。多くの場合、心臓10内の冠状静脈洞電極又は他の固定電極は、電圧及び変位を測定するための基準として使用することができる。すなわち、後述するように、固定基準電極31は、座標系の原点を定義してよい。
【0036】
各表面電極は多重スイッチ24に結合されており、表面電極の対はコンピュータ20で起動するソフトウェアによって選択され、コンピュータ20は表面電極を信号発生器25に結合する。あるいは、スイッチ24を排除し、複数(例えば三つ)の信号発生器25のインスタンスを設けてもよく、それらは、各測定軸(すなわち、各表面電極の対)に対して一つずつ設けられる。
【0037】
コンピュータ20は、例えば、従来の汎用コンピュータ、特殊用途のコンピュータ、分散コンピュータ、又は他の任意のタイプのコンピュータを含んでもよい。コンピュータ20は、中央処理装置(CPU)や、一般に並列処理環境と呼ばれる複数の処理ユニットのような一つ又は複数のプロセッサ28を備えてもよく、これらは本明細書に記載の様々な態様を実践するための指示を実行してもよい。
【0038】
一般に、生物学的導体におけるカテーテルナビゲーションを実現するために、三つの名目上直交する電場が、一連の駆動及び感知された電気ダイポール(例えば、表面電極の対12/14、18/19、及び16/22)によって生成される。あるいは、これらの直交場は分解されてよく、任意の表面電極の対をダイポールとして駆動して、効果的な電極三角測量を提供してもよい。同様に、電極12、14、18、19、16、22(又は任意の数の電極)は、心臓内の電極に電流を流す、又は心臓内の電極から電流を感知するために、他の任意の有効な配置で位置づけられてもよい。例えば、複数の電極が、患者11の背面、側面、及び/又は腹部に配置されてよい。さらに、そのような非直交の方法は、システムの柔軟性を増す。任意の所望の軸に対して、所定の一組の駆動(ソースシンク)の構成から得られるロービング電極間で測定された電位は代数的に組み合わされ、直交軸に沿って均一の電流を単に流すことによって得られるものと同じ効果的な電位をもたらしてよい。
【0039】
従って、表面電極12、14、16、18、19、22のうちの任意の二つは、腹部パッチ21などの接地基準に対するダイポールのソース及びドレインとして選択されてもよく、一方で、励起されていない電極は、接地基準に対する電圧を測定する。心臓10内に配置されたロービング電極17、52、54、56は電流パルスからの電場にさらされ、腹部パッチ21などの接地に対して測定される。実際には、心臓10内のカテーテルは、図示された四つよりも多い、又は少ない電極を含んでよく、各電極の電位を測定してもよい。前述の通り、心臓の内面に固定された少なくとも一つの電極は、固定基準電極31を形成してよく、固定基準電極31も、腹部パッチ21などの接地に対して測定され、位置特定システム8の測定位置に関連する座標系の原点として定義されてもよい。表面電極、内部電極、及び仮想電極のそれぞれからのデータセットは全て、心臓10内のロービング電極17、52、54、56の位置を決定するために使用されてもよい。
【0040】
測定された電圧は、基準電極31のような基準の位置に対する、ロービング電極17、52、54、56のような心臓内の電極の三次元空間での位置を決定するために、システム8で使用されてもよい。すなわち、基準電極31において測定された電圧は、座標系の原点を定義するために使用されてよく、一方で、ロービング電極17、52、54、56において測定された電圧は、原点に対するロービング電極17、52、54、56の位置を表すために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、座標系は三次元(x、y、z)デカルト座標系であるが、極座標系、球面座標系、円柱座標系などの他の座標系も考えられる。
【0041】
前述の議論から明らかなように、心臓内の電極の位置を決定するために使用されるデータは、表面電極の対が心臓に電界を印加している間に測定される。電極データはまた、例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,263,397号に記載されているように、電極位置の生の位置データを改善するために使用される呼吸補正値を作成するために使用されてもよい。さらに、この電極データは、例えば、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,885,707号に記載されているように、患者の体のインピーダンスの変化を補償するために使用されもよい。
【0042】
従って、代表的な一実施形態では、システム8は初めに一組の表面電極を選択し、次にそれらを電流パルスで駆動する。電流パルスが供給されている間に、残りの表面電極及び生体内の電極のうちの少なくとも一つを用いて測定された電圧などの電気的活動が測定及び記憶される。呼吸及び/又はインピーダンスシフトといったアーチファクトの補償は、上記のように実行されてよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、システム8は、セント・ジュード・メディカル インコーポレイテッドのEnsite(登録商標)Velocity(登録商標)又はEnsite Precision(登録商標)心臓マッピング及び視覚化システムである。しかしながら、例えば、バイオセンス・ウェブスター インコーポレイテッドのCARTOナビゲーション及び位置決めシステム、ノーザン・ディジタル インコーポレイテッドのAURORA(登録商標)システム、ステレオタクシスのNIOBE(登録商標)磁気ナビゲーションシステム、及び、セント・ジュード・メディカル インコーポレイテッドのMediGuide(登録商標)テクノロジーを含む他の位置特定システムが本教示に関連して使用されてもよい。
【0044】
以下の特許に記載の位置特定及びマッピングシステム(これらの全ては、全内容が参照により本明細書に組み込まれる)もまた、本発明とともに使用することができる。米国特許第6,990,370号、第6,978,168号、第6,947,785号、第6,939,309号、6,728,562号、第6,640,119号、第5,983,126号、及び第5,697,377号。
【0045】
本開示の態様は、PVCマップの作成に関する。従って、システム8は、不整脈モジュール58も含んでよく、不整脈モジュール58は、関心不整脈活動(例えばPVC活動)について電位図を解析し、それらの形態に基づいて電位図を分類するために使用される。この解析及び分類に基づいて、そして本明細書でさらに議論されるように、PVCマップを含むがこれに限定されない様々な不整脈マップを作成することができる。
【0046】
PVCマップは、電気生理学マップの一種である。当業者であれば、PVCマップを含むがこれに限定されない電気生理学マップは複数の電気生理学データポイントを含み、各電気生理学データポイントは測定された電気生理学データ(例えば、心電図(「EGM」)のような電気生理学的信号)と位置データ(例えば、カテーテル13、及び/又は、その上にある電極17、52、54、56の位置に関する情報)との両方を含んでいるため、測定された電気生理学情報を空間内の特定の位置に関連付けることが可能である(すなわち、測定された電気生理学情報が、患者の心臓上の点における電気的活動を示すものとして解釈される)ことが理解されるであろう。
【0047】
当業者はまた、電気生理学データポイントの収集、及びそれらからの電気生理学マップの作成に関する様々な態様に精通しているであろう。しかしながら、ほんの一例として、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0057507号は、本開示の教示が適用され得る電気生理学データポイントの収集及び電気生理学マップの作成のための様々な方法やシステムを記載する。
【0048】
本教示によるPVC活動をマッピングするための一つの例示的な方法は、
図3として提示される代表的なステップのフローチャート300を参照して説明される。いくつかの実施形態では、例えば、フローチャート300は、
図1のコンピュータ20によって(例えば、不整脈モジュール58を含むプロセッサ28によって)実行することができるいくつかの例示的なステップを表してもよい。以下に記載される代表的なステップは、ハードウェア実装、又はソフトウェア実装のいずれかであり得ることを理解されたい。説明のために、「信号プロセッサ」という語が、本明細書における教示のハードウェアベース、及びソフトウェアベースの実装形態の両方を説明するために本明細書において使用される。
【0049】
ブロック302において、第1PVCテンプレート信号が定義され、第1PVCマップに関連付けられる。本明細書で使用されるように、「PVCテンプレート信号」は、電気生理学研究における(例えば、PVC活動をマッピングするときに)、実施者の関心形態(「PVCテンプレート形態」)を有する電気生理学信号である。特に、第1PVCテンプレート信号は、収集された電気生理学データポイントと関連付けられた電気生理学的信号として定義され、その電気生理学データポイントは第1PVCマップに加えられる。
【0050】
第1PVCテンプレート信号を定義し、第1PVCマップを確立するために使用される電気生理学データポイントを識別するための様々なアプローチが考えられる。本開示の態様によれば、電気生理学データポイントは、グラフィカルユーザインタフェース上の「静止及び保存」ボタンをクリックすることなどによって、実施者によって手動で収集される。本開示の他の態様によれば、第1電気生理学データポイントは、一つ又は複数のユーザ定義の非形態学包含基準をみたし、カテーテル13の移動中に収集される。電気生理学マップの作成における包含基準(形態学的及び非形態学的の両方)の使用は、例えば、米国特許出願公開第2015/0057507号に記載されている。
【0051】
ブロック304において、第2PVCテンプレート信号が定義され、第2PVCマップと関連付けられる。第1PVCテンプレート信号と同様に、第2PVCテンプレート信号は、収集された電気生理学データポイントと関連付けられた電気生理学的信号として定義され、その電気生理学データポイントもまた第2PVCマップに加えることができる。
【0052】
第2PVCテンプレート信号を定義し、第2PVCマップを確立するために使用される電気生理学データポイントを識別するための様々なアプローチが考えられる。本開示の態様によれば、電気生理学データポイントは、グラフィカルユーザインタフェース上の「新しいマップ」ボタンをクリックすることなどによって、実施者によって手動で収集され、実施者が第1PVCテンプレート信号と比較して異なる関心形態を表わすと考える場合に、そのように選択され得る。
【0053】
本開示の他の態様では、第2PVCテンプレート信号を定義し、第2PVCマップを確立するために使用される電気生理学データポイントは、例えば、収集された電気生理学データポイントと関連付けられた電気生理学的信号の形態が、第1PVCテンプレート信号の形態と十分に異なることが解析により立証された場合に、システム8(例えば、不整脈モジュール58)によって自動的に識別される。これについては、以下により詳しく記載する。
【0054】
上記のPVCテンプレート信号は、表面ECG信号及び/又は心臓内EGM信号であってよい。PVCテンプレート信号が表面ECG要素を含む実施形態においては、複数の(例えば二本から六本の)ECGリード線(例えば、リード線I、aVF、V2、及びV5)からの信号を使用することが望ましい。これは、異なる病巣に由来する興奮順序の識別を容易にする。
【0055】
ブロック306において、電気生理学データポイントが収集される(例えば、カテーテル13上の電極17、52、54、56を使用する)。例えば、米国特許出願公開第2015/0057507号に開示されているように、包含基準が使用されている場合、収集された電気生理学データポイントがこの包含基準を満たしていなければ、電気生理学データポイントは破棄されてよい。しかしながら、本開示の目的のため、収集された電気生理学データポイントは、任意の適切な非形態学的包含基準を満たすと仮定する。
【0056】
ブロック308の初めでは、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号が、PVCテンプレート信号(例えば、それぞれブロック302及び304で定義された第1及び第2PVCテンプレート信号)と順次比較され、電気生理学的信号とPVCテンプレート信号との間の形態学的類似性が計算される。計算された各形態学的類似性は、事前に設定された閾値と比較され、該当するマップがあれば、どのPVCマップに収集された電気生理学データポイントを加えるべきかを決定する。
【0057】
形態比較を実施する目的のために形態学的類似性を計算する様々な技術は、本開示の範囲であるとみなされる。これらの技術は一般に、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と、PVCテンプレート信号と、の間の形態学マッチングスコアを計算することを含む。マッチングスコアが高いほど、類似性が高いことを示す。本開示の形態によると、事前に設定された閾値は約0.85であるが、適切な閾値の範囲は約0.55から1.00の範囲である。
【0058】
マッチングスコアを計算するためのいくつかのアプローチは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0057507号記載されている。しかしながら、読者の利便性のために、それらの技術のうちのある技術は、以下にも記載される。
【0059】
一態様において、マッチングスコアは以下のように計算され得る。まず初めに、PVCテンプレート信号と、ゼロ信号と、の間の距離が計算され得る。この距離は、本明細書では「テンプレートエリア」と呼ばれる。
【0060】
次に、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と、PVCテンプレート信号と、の間の距離が計算される。この距離は、テンプレートエリアで割ることができる。結果として得られる比率を1から引いて、マッチングスコアのパーセンテージとして表わすことができる。比率が1より大きい場合、0%のマッチングスコアが割り当てられる。上記のように、マッチングスコアが高いほど、二つの信号の間の形態学的類似性がより高いことに対応する。
【0061】
本開示の他の実施形態では、距離関数に代えて、又は加えて、ピアソン相関係数を使用して、形態学マッチングスコアを計算してよい。例えば、スコアSは、式S=P*f(r)に従って計算することができ、ここで、(1)Pは、PVCテンプレート信号と、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と、のピアソン相関係数であり、(2)rは、PVCテンプレート信号の振幅と、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号の振幅と、の振幅の比であり、例えば0≦r≦1(例えば、rを計算するときに、大きい方の振幅が分母である)で定義され、(3)f(r)は、出力の範囲が0≦f(r)≦1をみたす単調増加関数である。信号の振幅は、例えば、標準偏差、又はピークツーピーク測定によって測定することができる。
【0062】
判断ブロック308において、システム8(例えば、不整脈モジュール58)は、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と第1PVCテンプレート信号との間の第1形態学的類似性を計算し、それを事前に設定された閾値と比較する。第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていた場合、収集された電気生理学データポイントが第1PVCマップに加えられる(判断ブロック308で「YES」、ブロック310へ向かう)。次に、ブロック306へと戻り、新しい電気生理学データポイントを収集する。
【0063】
第1形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていない場合(判断ブロック308で「NO」)、判断ブロック312において、システム8(例えば、不整脈モジュール58)は、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と第2PVCテンプレート信号との間の第2形態学的類似性を計算し、それを事前に設定された閾値と比較する。第2形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていた場合、収集された電気生理学データポイントが第2PVCマップに追加される(判断ブロック312で「YES」、ブロック314へ向かう)。次に、ブロック306へと戻り、新しい電気生理学データポイントを収集する。
【0064】
収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号は、まず、最も多くの電気生理学データポイントを持つPVCマップと関連付けられているPVCテンプレート信号と比較され、次に、二番目に多い電気生理学データポイントを持つPVCマップと関連付けられているPVCテンプレート信号と比較され、以下同様にして、最終的に、最も少ない電気生理学データポイントを持つPVCマップと関連付けられているPVCテンプレート信号と比較されると、計算上有利である。換言すれば、判断ブロック308及び312(及び本明細書の教示に従って定義される追加のPVCテンプレート信号のための任意の類似の判断ブロック)は、それぞれのPVCマップにおける電気生理学データポイント数の減少に従って順序付けされることが望ましい。
【0065】
例えば、上記の二つのPVCテンプレート信号とそれらに関連付けられたマップを参照すると、第2PVCマップが、第1PVCマップよりも多くの電気生理学データポイントを含む場合、第1及び第2PVCテンプレート信号とそれらのPVCマップは逆になる。すなわち、第2PVCテンプレート信号が第1PVCテンプレート信号として再定義され、その逆も同様に再定義され、第2PVCマップが第1PVCマップとして再定義され、その逆も同様に再定義される。PVCテンプレート信号及びそれらに関連付けられたマップの再順序付けは、電気生理学研究を通して、必要に応じて何度も実施されてよく、存在する数のPVCテンプレート信号/PVCマップに対して実施されてもよいことを理解されたい。
【0066】
さらなる態様において、本開示は、電気生理学データポイントの形態が不要な信号と十分に類似していること、及び電気生理学データポイントの形態が以前に定義されたPVCテンプレート信号のどれとも類似していないことに基づいた電気生理学データポイントの自動的な却下又は除外に関する。「不要な信号」は、特定の電気生理学研究において、実施者にとって関心のない形態(「不要な形態」)を有する電気生理学的信号として定義される。例えば、本開示の態様において、不要な信号は、カテーテル13が機械的にPVCを誘発することに起因するQS形態を有する信号である。
【0067】
本開示の
図3を参照して要約されている電気生理学データポイントの自動的な却下又は除外の一つの好適なアプローチは、全内容が本明細書に参照として組み込まれる2016年11月11日出願の米国仮特許出願第62/420,811により詳しく開示されている。
【0068】
特に、第2形態学的類似性も、事前に設定された閾値を超えていない場合(判断ブロック312で「NO」)、システム8(例えば、不整脈モジュール58)は判断ブロック316に進むことができる。判断ブロック316において、収集された電気生理学データポイントの電気生理学的信号と不要な信号との間の第3形態学的類似性が計算され、事前に設定された閾値と比較される。第3形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていた場合(判断ブロック316で「YES」)、ブロック318において、収集された電気生理学データポイントは破棄され、追加の電気生理学データポイントを収集するためにブロック306に戻る。
【0069】
一方で、第3形態学的類似性が事前に設定された閾値を超えていない場合(判断ブロック316で「NO」)、システム8(例えば、不整脈モジュール58)は収集された電気生理学データポイントを使用して、ブロック320において、新しい(例えば、第3の)PVCテンプレート信号を定義し、収集された電気生理学データポイントを含む新しい(例えば、第3の)PVCマップを確立することができる。次に、ブロック306へと戻り、新しい電気生理学データポイントを収集する。
【0070】
収集された複数の電気生理学データポイントに対して、上記のプロセスを繰り返すことにより、複数のPVCマップが確立され、複数のPVCマップの各々に一つ又は複数の電気生理学データポイントが追加されている。事前に設定された数より少ないポイントの数(例えば、3ポイントより少ない)が追加されている任意のPVCマップは、破棄してよい。これは、カテーテル13と心内膜との接触などの非臨床的要因を反映するPVCマップの排除を容易にするのに役立つ。
【0071】
特定のPVCマップを破棄することに代えて、又は加えて、実施者は、二つ以上のPVCマップを結合PVCマップにマージすることを選択してよい。例えば、実施者は、異なる形態を有すると確信して二つ以上のPVC信号を手動で定義したが、のちにそれらが異なる形態ではないと判断する場合、これらの二つのPVCマップは一つに結合され得る。
【0072】
残っているPVCマップのうち任意のもの又は全てを、三次元心臓モデル上にグラフィカル表示することができる。
【0073】
上記のいくつかの実施形態はある程度詳細に説明されたが、当業者であれば、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して多くの変更を加えることができる。
【0074】
例えば、本明細書の教示は、リアルタイムで(例えば、電気生理学研究の最中に)又は後処理中に(例えば、先に行われた電気生理学研究の最中に収集された電気生理学データポイントに)適用することができる。
【0075】
上記では、三つのテンプレートPVC信号及び三つのPVCマップを含む実施例が説明されているが、他の例として、例えば、電気生理学研究中にシステム8(例えば不整脈モジュール58)によって検出された非類似のPVC形態の数、及び/又は実施者にとって関心のある(例えば、手動で選択された)非類似のPVC形態の数によって、任意の数のPVCテンプレート信号を定義してよく、従って、それに対応する任意の数のPVCマップを確立してもよい。
【0076】
全ての方向に関する言及(例えば、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、天側、底側、上側、下側、垂直、水平、時計回り及び反時計回り、など)は、本発明の読者の理解を助けるための識別の目的でのみ使用されており、特に本発明の位置、配向、及び使用に関して制限を生じさせるものではない。結合に関する言及(例えば、取り付けられた、結合された、接続された、など)は広く解釈されるべきであり、要素の接続間の中間部材及び要素間の相対的な移動を含み得る。そのため、結合に関する言及は、二つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあるとは必ずしも推論しない。
【0077】
上記の説明又は添付の図面に示されている全ての事項は、例示としてのみ解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではないことが意図されている。添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神から逸脱することなく、詳細又は構造の変更がなされ得る。