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特許7093797付加製造時の凝固速度制御のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】付加製造時の凝固速度制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20220623BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20220623BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220623BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220623BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220623BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220623BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20220623BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B22F3/16
B29C64/135
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/393
B33Y50/02
B29C64/268
B22F3/105
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019567730
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018036278
(87)【国際公開番号】W WO2018226844
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】62/515,877
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】320005590
【氏名又は名称】ディーエムジー モリ アドバンスト ソリューションズ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】DMG MORI ADVANCED SOLUTIONS, INC.
【住所又は居所原語表記】2400 Huntington Blvd. Hoffman Estates, Illinois 60192 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】ハイアット エイ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット エル ジェニファー
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0185048(US,A1)
【文献】特表2002-519200(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に三次元造形物体を形成する方法であって、
前記基板上に、該基板上を任意の処理速度で任意の処理方向に移動するエネルギービームを照射し、前記基板上にメルトプールを形成すること、
前記メルトプール内に付加材料を堆積させること、
前記メルトプールが放射するエネルギーを測定すること、
測定された前記エネルギーに基づいて前記メルトプールの熱的特徴を決定すること、
前記熱的特徴に基づいて、前記メルトプールの液相領域、前記メルトプールを囲む固相領域及び前記液相領域と前記固相領域との間のメルトプールの遷移領域を同定すること、
前記メルトプールの前記遷移領域の物理パラメータを定量化すること、
前遷移領域の前記物理パラメータと前記処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定すること、
前記実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整することを含む方法。
【請求項2】
前記メルトプールの前記熱的特徴の決定は、前記メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することを含み、
前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域の同定は、前記メルトプールの前記見かけ熱的特徴に基づいて前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域を同定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記メルトプールの前記熱的特徴の決定は、前記メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することを含み、
前記方法は、さらに、
前記メルトプールの平均実温度を決定すること、
前記見かけ熱的特徴の平均見かけ温度を算出すること、
前記平均見かけ温度と前記平均実温度との比較に基づいて補正係数を決定すること、
前記見かけ熱的特徴に前記補正係数を付加して前記メルトプールの補正熱的特徴を得ることを含み、
前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域の同定は、前記メルトプールの前記補正熱的特徴に基づいて前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域を同定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記補正係数は前記平均見かけ温度と前記平均実温度との差に比例する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記メルトプールの前記平均実温度の決定は、前記メルトプールにパイロメータを向けることを含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記パイロメータは二波長パイロメータであり、
前記メルトプールの前記平均実温度の決定は、第1の波長で第1エネルギープロファイルを決定すること、第2の波長で第2エネルギープロファイルを決定すること、前記第1エネルギープロファイルと前記第2エネルギープロファイルの比率に基づいて前記平均実温度を算出することを含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記メルトプールの前記遷移領域の前記物理パラメータの定量化は、前記遷移領域の面積と前記遷移領域及び前記液相領域を合計した面積の比率を決定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
基板上に三次元造形物体を形成するための付加製造装置であって、
前記基板上にメルトプールを形成するためのエネルギービームを前記基板上に照射するように構成されたエネルギー源と、
前記メルトプール内に付加材料を堆積させるように構成されたノズルと、
前記メルトプールが放射するエネルギーを測定するように構成されたカメラと、
前記エネルギー源及び前記カメラに作動的に接続された制御装置とを備え、
前制御装置は、
前記エネルギー源を、前記エネルギービームが任意の処理速度で任意の処理方向に前記基板上を移動するように移動させ、
前記カメラによって測定された前記メルトプールのエネルギーに基づいて前記メルトプールの熱的特徴を決定し、
前記熱的特徴に基づいて、前記メルトプールの液相領域、前記メルトプールを囲む固相領域、及び前記液相領域と前記固相領域との間の前記メルトプールの遷移領域を同定し、
前記メルトプールの前記遷移領域の物理パラメータを定量化し、
前記遷移領域の前記物理パラメータと前記処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定し、
前記実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整するようにプログラムされた装置。
【請求項9】
前記制御装置は、さらに、
前記メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することによって前記メルトプールの前記熱的特徴を決定し、
前記メルトプールの前記見かけ熱的特徴に基づいて前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域を同定するようにプログラムされた請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記メルトプールの平均実温度を測定するように構成されたパイロメータをさらに備えた請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記制御装置は、さらに、
前記メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することによって前記メルトプールの前記熱的特徴を決定し、
前記見かけ熱的特徴の平均見かけ温度を算出し、
前記平均見かけ温度と前記平均実温度との比較に基づいて補正係数を決定し、
前記見かけ熱的特徴に前記補正係数を付加して前記メルトプールの補正熱的特徴を得、
前記メルトプールの前記補正熱的特徴に基づいて前記液相領域、前記固相領域及び前記遷移領域を同定するようにプログラムされた請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記制御装置は、さらに、前記平均見かけ温度と前記平均実温度との差に比例する前記補正係数を決定するようにプログラムされた請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記パイロメータは、第1の波長で前記メルトプールの第1エネルギープロファイルを決定し、第2の波長で前記メルトプールの第2エネルギープロファイルを決定するように構成された二波長パイロメータであり、
前記制御装置は、さらに、前記第1エネルギープロファイルと前記第2エネルギープロファイルの比率に基づいて前記平均実温度を算出するようにプログラムされた請求項11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して付加製造システム及び付加製造方法に関し、より具体的には、付加製造時に凝固速度を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造制御システムは、メルトプールサイズ及び/又はメルトプール温度を監視するために存在する。このようなシステムは、通常、パイロメータ、フォトダイオード、赤外線(IR)カメラ又は電荷結合素子(CCD)カメラを用いてメルトプール温度を推定し、推定された温度に基づいてレーザパワーを減衰させる。
【0003】
付加製造システム及び付加製造処理では、材料の連続層が作製されて三次元物体(本明細書では「造形物体」と称する)が形成されることが一般に知られている。付加製造技術には、レーザ焼結,レーザ溶融,電子ビーム溶融などの粉末床溶融結合法、レーザ直接積層,レーザクラッディングなどの指向性エネルギー堆積法、熱溶解積層などの材料押出法、連続式又はドロップ・オン・デマンド式を含む材料噴射法、結合剤噴射法、液槽重合法、超音波積層造形を含むシート積層法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの指向性エネルギー堆積法では、基板材料を溶融させて小さいプールを形成するための集束レーザビーム内に1つ又は複数のノズルから粉体が注入される。プールに接触する粉体が溶融して基板上に堆積物を生成する。
【0004】
ある種の付加材料を指向性エネルギー堆積法で使用する場合、特有の課題が見られる。例えば、材料は、冷えて凝固する際にミクロ組織を形成する場合がある。いくつかの材料については、そのミクロ組織形成態様が堆積後の冷却速度によって変化し得、したがって、造形工程において凝固速度を監視制御すると有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、メルトプールの凝固速度を監視制御するものであり、メルトプールの見かけ熱的特徴を決定し、メルトプールの実温度から得られる補正係数を付加して補正熱的特徴を決定し、補正熱的特徴に基づいて実凝固速度を導出し、実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整することによってメルトプールの凝固速度の監視制御を行う。
【0006】
本開示のある態様によれば、基板上に三次元造形物体を形成する方法が提供され、該方法は、基板上に、該基板上を任意の処理速度で任意の処理方向に移動するエネルギービームを照射して該基板上にメルトプールを形成すること、メルトプール内に付加材料を堆積させること、メルトプールが放射するエネルギーを測定することを含む。測定されたエネルギーに基づいてメルトプールの熱的特徴を決定する。該方法は、熱的特徴に基づいて、メルトプールの液相領域、メルトプールを囲む固相領域、及びメルトプールの遷移領域を同定することをさらに含む。メルトプールの遷移領域の物理パラメータを定量化し、遷移領域の物理パラメータと処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定し、実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整する。
【0007】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールの熱的特徴の決定は、メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することを含み、上記の液相領域、固相領域及び遷移領域の同定は、メルトプールの見かけ熱的特徴に基づいて液相領域、固相領域及び遷移領域を同定することを含む。
【0008】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールの熱的特徴の決定は、メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することを含み、当該方法は、メルトプールの平均実温度を決定すること、見かけ熱的特徴の平均見かけ温度を算出すること、平均見かけ温度と平均実温度との比較に基づいて補正係数を決定すること、見かけ熱的特徴に補正係数を付加してメルトプールの補正熱的特徴を得ることをさらに含み、上記の液相領域、固相領域及び遷移領域の同定は、メルトプールの補正熱的特徴に基づいて液相領域、固相領域及び遷移領域を同定することを含む。
【0009】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記補正係数は平均見かけ温度と平均実温度との差に比例する。
【0010】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールの平均実温度の決定は、メルトプールにパイロメータを向けることを含む。
【0011】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記パイロメータは二波長パイロメータであり、上記のメルトプールの平均実温度の決定は、第1の波長で第1エネルギープロファイルを決定すること、第2の波長で第2エネルギープロファイルを決定すること、第1エネルギープロファイルと第2エネルギープロファイルの比率に基づいて平均実温度を算出することを含む。
【0012】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールの遷移領域の物理パラメータの定量化は、処理方向における液相領域と固相領域との間の凝固距離を決定することを含む。
【0013】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、実凝固速度は上記凝固距離を処理速度で除した値に比例する。
【0014】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールの遷移領域の物理パラメータの定量化は、遷移領域の面積と遷移領域及び液相領域を合計した面積の比率を決定することを含む。
【0015】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、実凝固速度は上記比率を処理速度で除した値に比例する。
【0016】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記の実凝固速度に基づく処理パラメータの調整は、エネルギービームのパワーレベルを調整することを含む。
【0017】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記の実凝固速度に基づく処理パラメータの調整は、メルトプールに付加材料を堆積させる速度を調整することを含む。
【0018】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記の実凝固速度に基づく処理パラメータの調整は、処理速度を調整することを含む。
【0019】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記の実凝固速度に基づく処理パラメータの調整は、エネルギービームのパワーレベルを調整すること、メルトプールに付加材料を堆積させる速度を調整すること、処理速度を調整することを含む。
【0020】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記のメルトプールが放射するエネルギーの測定は、メルトプールに赤外線カメラを向けることを含む。
【0021】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、基板上に三次元造形物体を形成するための付加製造装置が提供される。該装置は、基板上に、該基板上にメルトプールを形成するためのエネルギービームを照射するように構成されたエネルギー源と、メルトプール内に付加材料を堆積させるように構成されたノズルと、メルトプールが放射するエネルギーを測定するように構成されたカメラとを備える。エネルギー源及びカメラには、エネルギー源を、エネルギービームが任意の処理速度で任意の処理方向に基板上を移動するように移動させ、カメラによって測定されたメルトプールのエネルギーに基づいてメルトプールの熱的特徴を決定し、熱的特徴に基づいて、メルトプールの液相領域、メルトプールを囲む固相領域、及び液相領域と固相領域との間のメルトプールの遷移領域を同定し、メルトプールの遷移領域の物理パラメータを定量化し、遷移領域の物理パラメータと処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定し、実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整するようにプログラムされた制御装置が作動的に接続される。
【0022】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することによってメルトプールの熱的特徴を決定し、メルトプールの見かけ熱的特徴に基づいて液相領域、固相領域及び遷移領域を同定するようにプログラムされる。
【0023】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、当該装置は、メルトプールの平均実温度を測定するように構成されたパイロメータをさらに含む。
【0024】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、メルトプールの見かけ熱的特徴を決定することによってメルトプールの熱的特徴を決定し、見かけ熱的特徴の平均見かけ温度を算出し、平均見かけ温度と平均実温度との比較に基づいて補正係数を決定し、見かけ熱的特徴に補正係数を付加してメルトプールの補正熱的特徴を得、メルトプールの補正熱的特徴に基づいて液相領域、固相領域及び遷移領域を同定するようにプログラムされる。
【0025】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、平均見かけ温度と平均実温度との差に比例する補正係数を決定するようにプログラムされる。
【0026】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、上記パイロメータは、第1の波長でメルトプールの第1エネルギープロファイルを決定するとともに第2の波長におけるメルトプールの第2エネルギープロファイルを決定するように構成された二波長パイロメータであり、制御装置は、さらに、第1エネルギープロファイルと第2エネルギープロファイルの比率に基づいて平均実温度を算出するようにプログラムされる。
【0027】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、処理方向における液相領域と固相領域との間の凝固距離を決定することによってメルトプールの遷移領域の物理パラメータを定量化するようにプログラムされる。
【0028】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、上記凝固距離を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようにプログラムされる。
【0029】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、遷移領域の面積とメルトプールの面積の比率を決定することによってメルトプールの遷移領域の物理パラメータを定量化するようにプログラムされる。
【0030】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、上記比率を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようにプログラムされる。
【0031】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、エネルギービームのパワーレベルを調整することによって処理パラメータを調整するようにプログラムされる。
【0032】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、メルトプールに付加材料を堆積させる速度を調整することによって処理パラメータを調整するようにプログラムされる。
【0033】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、処理速度を調整することによって処理パラメータを調整するようにプログラムされる。
【0034】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、制御装置は、さらに、エネルギービームのパワーレベルを調整し、メルトプールに付加材料を堆積させる速度を調整し、処理速度を調整することによって処理パラメータを調整するようにプログラムされる。
【0035】
本開示の、本明細書に特定される他の態様のいずれかと組み合わせることができる付加的な態様によれば、カメラは赤外線カメラである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
上記の開示した方法及び装置をより完全に理解するために、以下の添付図面においてより詳細に説明している実施形態を参照すべきである。
【0037】
図1】本開示の一実施形態にかかるコンピュータ数値制御機械の、安全扉を閉じた状態の正面図である。
【0038】
図2図1のコンピュータ数値制御機械の、安全扉を開いた状態の正面図である。
【0039】
図3図1及び図2のコンピュータ数値制御機械の内部構成要素の斜視図であり、加工主軸、第1チャック、第2チャック及びタレットを図示している。
【0040】
図4】加工主軸と、該主軸が平行移動する際に使用する水平方向及び鉛直方向のレールとを図示した、図3よりも拡大した斜視図である。
【0041】
図5図1のマシニングセンタの第1チャック、加工主軸及びタレットの側面図である。
【0042】
図6図5と同様の図であるが、加工主軸をY軸方向に平行移動させている。
【0043】
図7図1のコンピュータ数値制御機械の主軸、第1チャック及び第2チャックの正面図であり、主軸の回転移動の許容経路を表した線を含む。
【0044】
図8図3の第2チャックの、図3よりも拡大した斜視図である。
【0045】
図9図2の第1チャック及びタレットの斜視図であり、図2におけるタレットの位置からの該タレット及びタレット台のZ軸方向への移動を示している。
【0046】
図10図1のコンピュータ数値制御機械の、正面扉を開いた状態の正面図である。
【0047】
図11】材料堆積アセンブリの概略図である。
【0048】
図12】取り外し可能な堆積ヘッドを有する材料堆積アセンブリの側面図である。
【0049】
図13】取り外し可能な堆積ヘッドを有する材料堆積アセンブリの代替的な実施形態の側面図である。
【0050】
図14図14の材料堆積アセンブリで使用される下処理ヘッドの一部断面側面図である。
【0051】
図15】材料堆積アセンブリの代替的な実施形態の側面図である。
【0052】
図16】サーマルカメラの出力及びパイロメータの出力の両方を用いたメルトプールの温度対距離のプロットを示したグラフ図である。
【0053】
図17】メルトプールの補正熱的特徴の平面図である。
【0054】
図18】実凝固速度を用いた造形物体の製造方法を図示したブロック図である。
【0055】
尚、図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、開示されている実施形態は図式的に又は部分図で示されていることもある。開示されている方法及び装置の理解に必要でない詳細や他の詳細の認識を困難にするような詳細を省略している場合もある。尚、当然のことながら、本開示は本明細書に示される特定の実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本明細書に開示した方法と合わせて、任意の適切な装置を採用することができる。いくつかの実施形態では、図1乃至図10に概要を図示したコンピュータ数値制御機械を用いて当該方法を実施する。他の実施形態では、コンピュータ数値制御機械自体を提供する。図1乃至図10に図示した機械100は、DMG Mori社から複数のバージョンが入手可能なNTシリーズ又はLTシリーズ機である。或いは、本明細書に開示した装置及び方法と合わせて、DMG Mori社のLaserTec 65 3D(付加・除去ハイブリッド型5軸工作機械)工作機械、或いは、軸の向き又は数が異なる他の工作機械を用いてもよい。このような機械を用いて、付加製造のための方法を対象とする、本明細書に開示したシステム及び方法を実施することができるが、本明細書の内容はこのような機械での実施に限定されない。
【0057】
基本的に、図1乃至図3に図示したNTシリーズ機を参照すると、ある適切なコンピュータ数値制御機械100は少なくとも第1保持部及び第2保持部を有しており、これらの保持部はそれぞれ、工具保持部(主軸144と関連させる主軸保持部又はタレット108と関連させるタレット保持部など)又はワーク保持部(チャック110、112など)とすることができる。図示した実施形態では、コンピュータ数値制御機械100は、主軸144と、タレット108と、第1チャック110と、第2チャック112とを備える。コンピュータ数値制御機械100は、以下により詳細に説明するように、第1保持部と第2保持部とに作動的に接続されてこれら保持部を制御するコンピュータ制御システムも有する。尚、コンピュータ数値制御機械100は、実施形態によって、上記の構成要素の全てを含んでいなくてもよい場合や、本明細書で指定するものに加えて付加的な構成要素を含んでいてもよい場合がある。
【0058】
図1及び図2に示すように、コンピュータ数値制御機械100は、基本的にワーク(図示せず)に対して各種作業が行われる機械チャンバ116を有する。主軸144、タレット108、第1チャック110及び第2チャック112はそれぞれ、全体又は一部を機械チャンバ116内に配置することができる。図示の実施形態では、2つの可動式の安全扉118がユーザと機械チャンバ116とを分離し、ユーザの負傷や、コンピュータ数値制御機械100が動作する際の干渉を防いでいる。図2に示すように、安全扉118を開いて機械チャンバ116へのアクセスさせることができる。本明細書では、直交配向された3つの直線軸(X、Y及びZ)に関してコンピュータ数値制御機械100を説明する。これら3つの直線軸については、図4に示し、以下により詳細に説明する。X、Y及びZ軸周りの回転軸は、それぞれ、「A」、「B」及び「C」回転軸とする。
【0059】
コンピュータ数値制御機械100は、該コンピュータ数値制御機械内の各手段を制御するためのコンピュータ制御システム113を備える。図示の実施形態では、機械は、連結された2つのコンピュータシステムである、ユーザインタフェースシステム(図1に114で概要を示す)からなる第1コンピュータシステムと、該第1コンピュータシステムに作動的に接続された第2コンピュータシステム(図示せず)とを備える。第2コンピュータシステムは当該機械の主軸やタレットなどの手段の動作を直接制御するものであり、一方、ユーザインタフェース114はオペレータに第2コンピュータシステムを制御させるものである。機械制御システム及びユーザインタフェースシステムと当該機械での作業を制御するための各機構とを総合して1つのコンピュータ制御システムと考えてもよい。
【0060】
コンピュータ制御システムは、メインメモリに接続された中央演算処理装置(CPU)を有する機械制御回路を含むことができる。CPUは、Intel社製やAMD社製などの任意の適切なプロセッサを含むことができる。一例として、CPUは、マスタープロセッサ、スレーブプロセッサ及びセカンダリ又はパラレルプロセッサを含む複数のマイクロプロセッサを含むことができる。ここで用いる機械制御回路は、機械100の内外に配設されたハードウェア、ソフトウェア又はファームウェアの組み合わせからなり、バスや別のコンピュータ、プロセッサ、装置、サービス又はネットワークと通信する又は機械100とこれらとの間のデータの伝送を制御するように構成されている。機械制御回路、より具体的にはCPUは、1つ又は複数の制御装置又はプロセッサを備え、このような1つ又は複数の制御装置又はプロセッサは、相互に近接して配設する必要はなく、別々の装置内又は別々の位置に配置することができる。機械制御回路、より具体的にはメインメモリは、相互に近接して配設する必要がなく、別々の装置内又は別々の位置に配置することができる1つ又は複数のメモリ装置を備える。機械制御回路は、本明細書に開示した各工作機械方法及びその他の処理の全てを実行するように動作させることができる。
【0061】
実施形態によって、ユーザがユーザインタフェースシステムを操作して機械をプログラミングしたり、外部ソースを介して機械にプログラムをロード又は伝送することが可能であったりする。例えば、PCMCIAインタフェース、RS-232インタフェース、ユニバーサルシリアルバスインタフェース(USB)又はネットワークインタフェース、特にTCP/IPネットワークインタフェースを介してプログラムをロードすることができると考えられる。また、従来のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)機構(図示せず)を介して機械を制御することができる場合もある。
【0062】
図1及び図2にさらに示すように、コンピュータ数値制御機械100は、工具マガジン142及び工具交換装置143を有することができる。これらは、主軸144と協働して該主軸を複数の工具のうちのいずれか1つとともに動作させる。一般に、様々な工具を設けることができ、いくつかの実施形態では、同じ種類の工具を複数設けることができる。
【0063】
主軸144は、X軸及びZ軸に沿って平行移動させることができるキャリッジアセンブリ120に取り付けられるとともに、主軸144をY軸方向に移動させることができるラム132に取り付けられる。ラム132には、以下により詳細に記載するように、モータが備え付けられており、主軸をB軸方向に回転させることができる。図示のように、キャリッジアセンブリは、2本のねじ状の鉛直レール(一方のレールを126で示す)に沿って進む第1キャリッジ124を有しており、該第1キャリッジ124及び主軸144をX軸方向に平行移動させる。キャリッジアセンブリは、水平に配設された2本のねじ状のレール(一方を図3に130で示す)に沿って進む第2キャリッジ128も含んでおり、該第2キャリッジ128及び主軸144をZ軸方向に移動させることができる。各キャリッジ124,128は、それぞれ、複数のボールねじ装置を介してレールに係合しており、これにより、レール126,130を回転させることで当該キャリッジがX方向又はZ方向に平行移動する。レールには、それぞれ、水平に配設された又は鉛直に配設されたレールの用のモータ170,172が備え付けられている。
【0064】
主軸144は、主軸接続部及び工具保持部106によって工具102を保持する。主軸接続部145(図2に図示)は、主軸144に接続されるとともに該主軸144内に収納されている。工具保持部106は、主軸接続部に接続され、工具102を保持する。当該技術分野では様々なタイプの主軸接続部が知られており、これらをコンピュータ数値制御機械100とともに用いることができる。通常、主軸の寿命を考慮して、主軸接続部は主軸144内に収納される。主軸144へのアクセスプレート122を図5及び図6に図示する。
【0065】
第1チャック110は、爪136を備え、コンピュータ数値制御機械100の基台111に対して静止している台150に配設される。第2チャック112も爪137を備えるが、第2チャック112はコンピュータ数値制御機械100の基台111に対して移動可能である。より具体的には、機械100は、前述のようにボールねじ機構を介して第2台152をZ方向に平行移動させるためのねじ状のレール138及びモータ139を備える。第2台152は、切屑除去を補助するために、傾斜した遠心面174と、Z方向に傾斜した面177、178を備えたサイドフレーム176とを備える。チャック110、112のための、図1及び図2に示した圧力計182及び制御つまみ184のような油圧制御手段及び関連する表示器を設けることができる。各台は、当該チャックを回転させるためのモータ(それぞれ161,162)を備える。
【0066】
タレット108は、図5図6及び図9に最良に図示しているが、同じくレール138に係合し、同様にボールねじ装置を介してZ方向に平行移動させることができるタレット台146(図5)に取り付けられる。タレット108は、図9に示すように、各種のタレットコネクタ134を備える。各タレットコネクタ134は、工具保持部135、又は工具に接続するための他の接続部に接続することができる。タレット108は様々なタレットコネクタ134及び工具保持部135を有することができるため、該タレット108によって種々の異なる工具を保持して操作することができる。タレット108は、C’軸方向に回転させて様々な工具保持具(ひいては、多くの実施形態において様々な工具)をワークに対向させることもできる。
【0067】
このように、様々な作業を実施することができることがわかる。工具保持部106に保持された工具102を参照すると、該工具102は、チャック110、112の一方又は両方に保持されたワーク(図示せず)に当接させることができる。工具102の交換が必要である又は望ましいときは、工具交換装置143によって代わりの工具102を工具マガジン142から取り出すことができる。図4及び図5を参照すると、主軸144は、X及びZ方向(図4に示す)並びにY方向(図5及び図6に示す)に平行移動させることができる。図7にB軸方向の回転を示しているが、図示の実施形態では、鉛直線の両側に120度の範囲内での回転が可能となっている。Y方向の移動及びB軸方向の回転は、キャリッジ124の裏に配置されたモータ(図示せず)から動力が供給される。
【0068】
一般に、図2及び図7に見られるように、機械は、機械チャンバ116の壁を画定するとともに切屑が該チャンバから出ないようするために、複数の鉛直に配設されたリーフ180及び水平に配設されたリーフ181を備える。
【0069】
機械100の構成要素は前述のものに限定されない。例えば、場合によって、追加のタレットを設けてもよい。追加のチャック及び/又は主軸を設けもよい場合もある。一般に、機械は、機械チャンバ116内に冷却液を導入するための1つ又は複数の機構を備える。
【0070】
図示の実施形態では、コンピュータ数値制御機械100は多くの保持部を備える。チャック110は爪136とともに保持部を形成しており、チャック112も爪137とともに保持部を形成している。多くの場合、これらの保持部はワークの保持にも用いられる。例えば、チャック及びこれに関連する台は、回転するワークのための主軸台及び任意で設けられる心押台として、旋盤のように機能する。さらに、主軸144及び主軸接続部145も保持部を形成している。また、タレット108も、複数のタレットコネクタ134が備え付けられた場合、複数の保持部を提供する(図9に示す)。
【0071】
コンピュータ数値制御機械100は、当該技術分野で知られている、或いは、適切であると考えられる種類が異なる多数の工具のいずれかを用いることができる。例えば、工具102は、フライス工具,穴あけ工具,研削工具,刃工具,ブローチ工具,旋削工具などの切削工具、又はコンピュータ数値制御機械100と関連して適切であるとみなされる他の種類の切削工具とすることができる。加えて又は或いは、以下により詳細に説明するように、工具を付加製造技術に合わせて構成することができる。いずれの場合も、コンピュータ数値制御機械100は二種類以上の工具を備えることができ、工具交換装置143及び工具マガジン142の機構を介して主軸144に工具を交換させることができる。同様に、タレット108は1つ又は複数の工具102を備えることができ、オペレータは、タレット108を回転させて新たなタレットコネクタ134を適切な位置に持ってくることによって工具102の入れ替えを行うことができる。
【0072】
図10には、コンピュータ数値制御機械100を、安全扉を開いた状態で図示している。図示のように、コンピュータ数値制御機械100は、少なくとも、主軸144に配設された工具保持部106と、タレット108と、1つ又は複数のチャック又はワーク保持部110、112と、該コンピュータ数値制御機械100のコンピュータ制御システムと連動するように構成されたユーザインタフェース114とを備えることができる。工具保持部106、主軸144、タレット108及びワーク保持部110、112はそれぞれ、加工領域190内に配設することができ、これらを、選択的に、様々な軸の1つ又は複数に沿って相対的に回転及び/又は移動させることができる。
【0073】
図10に示すように、例えば、直交する移動方向はX、Y及びZ軸で示すことができ、X、Y及びZ軸周りの回転方向は、それぞれ、A、B及びC軸で示すことができる。これらの軸は三次元空間での移動を説明しやすくするために設けたものであり、したがって、添付の請求の範囲から逸脱することなく他の座標スキームを用いることもできる。加えて、移動の説明にこれらの軸を用いることは、互いに交わる実際の物理的な軸だけでなく、物理的には交わっていない場合もある仮想軸も包含することを意図している。制御装置による工具経路の操作は仮想軸で行われるが、その際、工具経路は、該仮想軸が物理的に交わっているかのように挙動する。
【0074】
図10に示した軸を参照すると、工具保持部106は、これを支持する主軸144のB軸周りに回転させることができ、主軸144自体は、X軸、Y軸及びZ軸に沿って移動可能に構成することができる。タレット108は、X軸に略平行であるXA軸及びZ軸に略平行であるZA軸に沿って移動可能に構成することができる。ワーク保持部110、112は、C軸周りに回転可能、且つ、加工領域190に対して1つ又は複数の軸に沿って独立して平行移動可能に構成することができる。尚、コンピュータ数値制御機械100は6軸機として示しているが、移動軸の数は例示的なものにすぎず、該機械は、請求の範囲から逸脱することなく6軸よりも少ない又は多い数の軸での移動が可能であってもよい。
【0075】
コンピュータ数値制御機械100は、付加製造処理を行うための材料堆積アセンブリを含むことができる。図11に、例示的な材料堆積アセンブリ200を、基板204に向けられるエネルギービーム202を含めて概略的に図示している。材料堆積アセンブリ200は、例えば、指向性エネルギー堆積法で用いることができる。基板204は、チャック110、112などのワーク保持部の1つ又は複数によって支持することができる。材料堆積アセンブリ200は光学素子206をさらに含むことができ、該光学素子206によって基板204に集中エネルギービーム208を向けることができるが、該光学素子206は、集中エネルギービーム208のエネルギー密度が十分に高ければ省略してもよい。エネルギービーム202は、レーザビーム、電子ビーム、イオンビーム、クラスタビーム、中性粒子ビーム、プラズマジェット又は単純放電(アーク)とすることができる。集中エネルギービーム208は、蒸発、飛び散り、浸食、衝撃波の相互作用又はその他の動的作用によって基板材料を失うことなく成長表面基板204の小部分を溶融させてメルトプール210を形成するのに十分なエネルギー密度を有することができる。集中エネルギービーム208は、連続ビームであっても断続的なパルスビームであってもよい。
【0076】
メルトプール210は、基板204由来の液化した材料並びに付加材料を含むことができる。例示的な実施形態では、付加材料は供給粉体として供給することができ、該供給粉体は、1つ又は複数のノズル214から吐出される供給粉体/プロペラントガス混合物212の形態でメルトプール210に供給される。ノズル214は、供給粉体槽216及びプロペラントガス槽218と流体連通することができる。ノズル214は供給粉体/プロペラントガス混合物212のフローパターンを形成しており、該フローパターンは、供給粉体がメルトプール210に取り込まれるように、先端215又は物理的断面が最も小さい領域に十分に集束させることができる。材料堆積アセンブリ200を基板204に対して相対移動させることで、該アセンブリが工具経路を移動し、該工具経路が基板204上にビード層を形成する。最初のビード層に隣接して又はこれの上にさらにビード層を形成し、立体的な三次元物体を作製することができる。
【0077】
図示の実施形態では付加材料を粉体形状としているが、付加材料は他の形状であってもよい。例えば、付加材料は、ワイヤ送給材料、箔状材料、又は付加製造処理で使用されることが知られている他のタイプの材料として供給してもよい。
【0078】
使用される材料及び求められる物体公差によるが、多くの場合、ネットシェイプ物体、即ち、想定された用途で使用するためのさらなる加工を必要としない(研磨等は許容される)物体を形成することが可能である。求められる公差が材料堆積アセンブリ200によって得られるものより精密であれば、除去仕上げ処理を行ってもよい。さらに仕上げ加工を行う必要がある場合、本明細書では、材料堆積アセンブリ200によって生成された仕上げ前の物体を「ニアネットシェイプ」と称し、作製工程を完了させるためには若干の材料又は加工が必要であることを示す。
【0079】
材料堆積アセンブリ200は、図12に最良に示すように、コンピュータ数値制御機械100に組み込むことができる。この例示的な実施形態では、材料堆積アセンブリ200は、上処理ヘッド219a及び下処理ヘッド219bを有する処理ヘッドアセンブリ219を含む。下処理ヘッド219bは、上処理ヘッド219aに着脱可能に接続されており、上処理ヘッド219aを様々な下処理ヘッド219bとともに使用することが可能となっている。下処理ヘッド219bを交換可能であるということは、様々な堆積特性が望まれる場合、例えば、様々な形状及び/又は密度のエネルギービーム202及び/又は供給粉体/プロペラントガス混合物212が必要な場合などに有利となり得る。
【0080】
より具体的には、上処理ヘッド219aは、主軸144を含むことができる。複数のポートを主軸144に接続することができ、該ポートは、接続時に下処理ヘッド219bと連動するように構成される。例えば、主軸144は、供給粉体槽及びプロペラント槽を含むことができる供給粉体供給部(図示せず)と流体連通する供給粉体/プロペラントポート220を搭載することができる。加えて、主軸144は、シールドガス供給部(図示せず)と流体連通するシールドガスポート222、及びクーラント供給部(図示せず)と流体連通するクーラントポート224を搭載することができる。供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224は、個別に、又は管路アセンブリ226のような束ねられた管路群を介して、各々の供給部に接続することができる。
【0081】
上処理ヘッド219aは、さらに、作製エネルギー供給部(図示せず)に作動的に接続された作製エネルギーポート228を含むことができる。図示の実施形態では、作製エネルギー供給部は、主軸144のハウジング内を通るレーザファイバ230によって作製エネルギーポート228に接続されたレーザ装置である。レーザファイバ230は、主軸144の本体内を進行するようにしてもよく、この場合、作製エネルギーポート228は、主軸144の底部に形成されたソケット232内に配置することができる。したがって、図12の実施形態では、作製エネルギーポート228はソケット232の内部に配設されており、一方、供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224はソケット232に隣接して配設されている。上処理ヘッド219aは、エネルギービームを形作るために、さらなる光学素子、例えば、コリメーションレンズ、部分反射ミラー又は湾曲ミラーなどをさらに含むことができる。
【0082】
上処理ヘッド219aは、複数の下処理ヘッド219bの1つに選択的に接続することができる。図12に示すように、例示的な下処理ヘッド219bは、基本的に、基部242、光学チャンバ244及びノズル246を含むことができる。さらに、ノズル調節アセンブリを設けて、エネルギービームに対するノズル246の位置及び/又は向きを平行移動又は回転させる、或いは調節するようにしてもよい。基部242は、下処理ヘッド219bと上処理ヘッド219aとを解除可能に係合させることができるようにソケット232の内部に密接に嵌合するように構成されている。図12の実施形態では、基部242は、作製エネルギーポート228に着脱可能に接続するように構成された作製エネルギーインタフェース248も含んでいる。光学チャンバ244は、何も含んでいなくても、所望の集中エネルギービームを提供するように構成された集束光学素子250などの最終光学装置を含んでいてもよい。下処理ヘッド219bは、それぞれ、供給粉体/プロペラントポート220、シールドガスポート222及びクーラントポート224と作動的に接続するように構成された供給粉体/プロペラントインタフェース252、シールドガスインタフェース254及びクーラントインタフェース256をさらに含むことができる。
【0083】
ノズル246は、供給粉体/プロペラントを所望の対象領域に向けるように構成することができる。図14に図示した実施形態では、ノズル246は、内側ノズル壁272から間隔を空けた外側ノズル壁270を含み、該外側ノズル壁270と内側ノズル壁272との間の空間に粉体/プロペラントチャンバ274を画定している。粉体/プロペラントチャンバ274は、一端が供給粉体/プロペラントインタフェース252と流体連通しており、他端はノズル出口オリフィス276を終点としている。例示的な実施形態では、ノズル出口オリフィス276は環状形状を有するが、それ以外では、ノズル出口オリフィス276は本開示の範囲を逸脱することなく他の形状を有することができる。粉体/プロペラントチャンバ274及びノズル出口オリフィス276は、1つ又は複数の供給粉体/プロペラントジェットを所望の収束角度で提供するように構成することができる。図示の実施形態のノズル246は、単一の円錐形の粉体/プロペラントガスジェットを搬送することができる。しかしながら、ノズル出口オリフィス276は複数の分離した粉体/プロペラントガスジェットを提供するように構成することもできる。また、生じる粉体/プロペラントガスジェットが円錐形以外の形状を有するようにしてもよい。
【0084】
ノズル246は、さらに、エネルギービームが対象領域に向かう際に該ノズル246を通過できるように構成することができる。図14に最良に示すように、内側ノズル壁272は、光学チャンバ244及び任意で設けられる集束光学素子250と整列した作製エネルギー出口282を有する中央チャンバ280を画定している。よって、ノズル246は、作製エネルギービームが該ノズル246を通過して下処理ヘッド219bから外部に放出されるようになっている。
【0085】
代替的な実施形態では、図13に最良に示すように、上処理ヘッド219a’は、主軸144のハウジングの外に作製エネルギーポート228を設けることができる。この実施形態では、作製エネルギーポート228は、主軸144の側部に設けられたエンクロージャ260に配置されており、したがって、上記の実施形態とは異なり、ソケット232内に設けられていない。エンクロージャ260は、作製エネルギーを主軸144のソケット232の下方に向けるための第1ミラー262を含む。代替的な下処理ヘッド219b’は光学チャンバ244を含み、該光学チャンバ244は、作製エネルギーがエンクロージャ260から該光学チャンバ244の内部まで進む際に通過することができる作製エネルギーレセプタクル264を含む。光学チャンバ244は、ノズル246を通過して所望の対象位置に向かうように作製エネルギーの方向を変えるための第2ミラー266をさらに含む。
【0086】
尚、例示的な実施形態では作製エネルギーを処理ヘッドアセンブリ219に組み込んでいるが、作製エネルギーは処理ヘッドアセンブリ219から独立して設けてもよい。即ち、別個のアセンブリ、例えば、タレット108、第1チャック110、第2チャック112又は機械100とともに設けた専用のロボットなどを用いて作製エネルギーを基板204に向けることができる。この代替的な実施形態では、処理ヘッドアセンブリ219は、作製エネルギーポート、作製エネルギーインタフェース、作製エネルギー出口、光学チャンバ及び集束光学素子を省略することになる。
【0087】
処理ヘッドアセンブリ219が複数の下処理ヘッド219bのいずれか1つと選択的に接続するように構成された上処理ヘッド219aを有する場合、コンピュータ数値制御機械100を様々な付加製造技術に合わせて素早く且つ容易に構成し直すことができる。工具マガジン142は一組の下処理ヘッド219bを保持することができ、各下処理ヘッドはそれぞれ、特定の付加製造工程に適した独自の仕様を有する。例えば、下処理ヘッドは、それぞれ異なる種類の光学素子やインタフェース並びに異なるノズル角度を有することができ、これらにより、基板上に材料を堆積させる態様又はエネルギーを対象領域に照射する態様が変化する。様々な付加製造技術を用いて部品を形成しなければならない(又は複数の異なる技術を用いるとより素早く且つ効率的に形成できる)場合、工具交換装置143を用いて主軸144に接続された堆積ヘッドを素早く且つ容易に交換することができる。図12及び図13に図示した例示的な実施形態では、エネルギー供給部、供給粉体/プロペラントガス供給部、シールドガス供給部及びクーラント供給部の堆積ヘッドへの接続を1つの取付工程で行うことができる。同様に、取り外しは1つの接続解除工程で行うことができる。よって、機械100を様々な材料堆積技術に合わせてより素早く且つ容易に変更することができる。
【0088】
ある付加製造応用では、とある材料を用いた、且つ/又は、とある物体形状を造形する製造の場合、付加材料が凝固する速度(本明細書では凝固速度と称する)を制御するとよい場合がある。インコネル718などの極限環境用のニッケル系の高硬度材料は、造形時の堆積層の体積変化の影響を受けやすく、これは、反り、造形物の寸法完全性の悪化、表面粗度の増加につながる可能性がある。凝固速度を制御することで、これらの問題を軽減することができる。
【0089】
メルトプール308の凝固速度を制御することができる、例示的な実施形態にかかる付加製造装置300を図15に図示する。この付加製造装置300は、エネルギービーム304を基板306上に向けるように構成されたエネルギー源302を備えており、これによってメルトプール308が形成される。いくつかの実施形態では、エネルギー源302はレーザ装置である。ノズル310は、メルトプール308内に粉体312などの付加材料を堆積させるように構成される。ノズル310は、粉体312をメルトプール308に供給するためのキャリアガス303を搬送することもできる。粉体312がメルトプール308に到達するまではエネルギービーム304と粉体312とを隔離するためのシールドガス305も供給することができる。エネルギー源302及びノズル310は、コンピュータ数値制御機械100に組み込んで、基板306に対して相対移動するように支持することができる。例えば、エネルギー源302及びノズル310は、主軸144によって支持することができる。或いは、装置300を機械100から独立して設ける場合、エネルギー源302及びノズル310は、移動可能な堆積支持体309、例えば、ロボットアーム等によって支持することができる。
【0090】
装置300は、メルトプール308が放射するエネルギーを測定するためのカメラ314を備える。例示的な実施形態では、カメラ314は、赤外線エネルギーを測定するように構成されるが、近IRなどの他の波長のエネルギーを検出することができるカメラを用いてもよい。或いは、カメラ314は、電荷結合素子(CCD)カメラ又は相補性金属酸化膜半導体(CMOS)カメラとして設けてもよい。カメラ314は、メルトプール308の見かけ熱的特徴315(図16にグラフ形式で示す)を測定することができ、これにより、メルトプール308内の相対的に温度が高い又は低い領域が同定される。
【0091】
装置300は、実温度を測定するための装置、例えば、パイロメータ316を任意で備えることができる。パイロメータ316は、メルトプール308の平均実温度317(図16にグラフ形式で示す)を測定する。代替的な実施形態では、パイロメータ316を熱電体(平均実温度317を得るには逆算が必要)に換えてもよい。又は、シミュレーションによって平均実温度317を導出してもよい。
【0092】
図15では、カメラ314は及びパイロメータ316は、エネルギー源302からオフセットされて図示されており、これらの装置に対して独立した光学素子連鎖を用いることが示唆されている。或いは、カメラ314及びパイロメータ316は、エネルギー源302と同じ光学素子連鎖を共有するように配置してもよい。例えば、カメラ314及びパイロメータ316は、ノズル310内を進行する光学素子経路に沿ってメルトプールの温度を測定するように配向される。
【0093】
エネルギー源302、カメラ314及びパイロメータ307に制御装置320が作動的に接続されている。装置300がコンピュータ数値制御機械100に組み込まれる実施形態では、制御装置320はコンピュータ制御システム113に組み込むことができ、この場合、制御装置320は、さらに、エネルギー源302及びノズル310を支持する主軸144又はその他の工具保持部に作動的に接続される。或いは、装置300は機械100から独立して設けることもでき、この場合、制御装置320は、装置300専用であり、さらに、移動可能な堆積支持体309に作動的に接続される。
【0094】
制御装置320は、エネルギー源302を基板306に対して相対移動させるようにプログラムされる。相対移動時、エネルギービーム304は、任意の処理速度で任意の処理方向(図15では矢示322で表す)に基板306上を移動する。エネルギー源302が移動するのに伴って、ノズル310は、メルトプール308内に付加材料を堆積させて付加材料の軌道324を形成する。制御装置320は、カメラ314から信号を受信し、該信号から、メルトプール308のエネルギーに基づいたメルトプール308の見かけ熱的特徴315を決定する。
【0095】
いくつかの実施形態では、制御装置320は、さらに、見かけ熱的特徴315に補正係数330を付加するようにプログラムすることができ、これにより、図17に最良に示すような補正熱的特徴326が得られる。制御装置320は、まず、見かけ熱的特徴315の平均見かけ温度328(図16にグラフ形式で示す)を算出することできる。その後、制御装置320は、平均見かけ温度328と平均実温度317とを比較して補正係数330を導出することができる。図示の実施形態では、補正係数330は、平均見かけ温度328と平均実温度317の差である。或いは、補正係数330は、平均見かけ温度328と平均実温度317の差に比例してもよい。また、付加材料の堆積にかかる放射率曲線を示す係数を作成し、該係数を平均見かけ温度328と平均実温度317の差に付加してもよい。その後、補正係数330を見かけ熱的特徴315に付加してメルトプール308の補正熱的特徴326を得ることができる。該補正熱的特徴326は、メルトプール308の実温度をより正確に表したものになる。
【0096】
制御装置320は、さらに、見かけ熱的特徴315又は補正熱的特徴326のいずれかに基づいてメルトプール308の領域を分類することができる。図17に図示した例示的な実施形態では、付加材料が液状である最も低い温度より高温の領域であるメルトプール308の液相領域332が同定される。さらに、付加材料が固体状である最も高い温度より低温の領域である、メルトプール308を囲むメルトプール308の固相領域334が同定される。また、制御装置320は、さらに、液相領域の温度閾値と固相領域の温度閾値の間の温度である、液相領域332と固相領域334の間に存在するメルトプール308の遷移領域336を同定することができる。尚、上記温度閾値は、純物質については同じ温度となり得るが、インコネル718などの合金については異なる温度となる可能性がある。
【0097】
メルトプール308の領域を分類した後、制御装置320は、遷移領域336の物理パラメータを定量化することができる。定量化される物理パラメータは、付加材料の実凝固速度を示す、遷移領域336の任意の測定可能な特徴とすることができる。例えば、物理パラメータは、図17に最良に示すように、遷移領域336において処理方向332に測定される凝固距離340とすることができる。或いは、物理パラメータは、遷移領域336の面積とメルトプール308の面積の比率とすることができる。
【0098】
定量化された遷移領域336の物理パラメータを用いて、制御装置320は、遷移領域336の物理パラメータと処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定することができる。本明細書において、凝固速度とは、付加材料が液状温度から固体状温度まで冷えるのにかかる時間のことである。物理パラメータが凝固距離340である場合、例えば、制御装置320は、凝固距離340を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようにプログラムすることができる。物理パラメータが遷移領域336の面積とメルトプール308の面積の比率である場合、制御装置320は、該比率を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようにプログラムすることができる。
【0099】
制御装置320は、実凝固速度に基づいて、付加製造処理に関連する処理パラメータを調整し、メルトプール308内に堆積される付加材料の凝固速度を変更することができる。例えば、制御装置320は、エネルギービーム304のパワーレベルの調整、メルトプール308内に付加材料(粉体312等)を堆積させる速度の調整、処理速度の調整、滞留時間の導入、又は基板306の温度の調整(基板306が能動冷却式基板である場合)を行うようにプログラムすることができる。さらに、これらの調整作業を組み合わせて同時に行い、所望の付加材料凝固速度を得ることもできる。
【0100】
次に図18を参照すると、造形物体の付加製造のための例示的な方法400がブロック図で示されている。この方法400は、機械100又はその一部に関連するあらゆる要素を含む上述のシステム、方法及び装置のいずれかを用いることができる。この方法400は、具体的には、付加材料の実凝固速度をその場で正確に決定し、該実凝固速度を用いて1つ又は複数の処理パラメータを調整することで、凝固速度を所望の速度に変更するように構成することができる。代替的な実施形態では、方法400は、見かけ熱的特徴315に補正係数330を付加することも含む。
【0101】
方法400のブロック402において、基板306上に、該基板306上を任意の処理速度で任意の処理方向322に移動するエネルギービーム304が照射されて基板204上にメルトプール308が形成される。上述のように、エネルギービーム304は、所望の形状及び大きさのメルトプール308を形成するように光学素子206を介して照射されるレーザビームとすることができる。エネルギービーム304の移動は、コンピュータ数値制御機械100を介して、又は、機械100とともに又は機械100から独立して設けられる移動可能な堆積支持体309、例えば、ロボットアーム等を介して行うことができる。
【0102】
続いて、方法400のブロック404において、メルトプール308内に付加材料が堆積される。図示の実施形態では、付加材料は、キャリアガスによってノズル310を介して搬送される粉体312の形態で供給される。
【0103】
方法400は、ブロック406において、メルトプール308が放射するエネルギーを測定することを含む。エネルギーの測定は、任意の波長、例えば、IR、近IR又はその他の波長において行うことができる。メルトプール308が放射するエネルギーの測定に適した装置には、IRカメラ、CCDカメラ、CMOSカメラなどがある。
【0104】
方法400は、ブロック408において、ブロック406で測定されたエネルギーに基づいてメルトプール308の見かけ熱的特徴315を決定する。見かけ熱的特徴315は、メルトプール308内の相対的に温度が高い又は低い領域を同定する。ブロック406で使用されるIRカメラ等の装置は、見かけ熱的特徴315を生成するように構成する、或いは、見かけ熱的特徴315を示す信号を制御装置320に送信できるものとすることができる。
【0105】
次に、方法400のブロック410とした任意の工程において、見かけ熱的特徴315に補正係数330が付加されて、補正熱的特徴326となる。補正係数330の付加には、平均見かけ温度328を算出すること、メルトプール308の平均実温度317を決定すること、及び、平均見かけ温度328と平均実温度317との比較に基づいて補正係数330を決定することを含むことができる。その後、見かけ熱的特徴315に補正係数330が付加されてメルトプール308の補正熱的特徴326が得られる。
【0106】
続いて、方法400のブロック412において、メルトプール308の液相領域332、メルトプール308を囲む固相領域334及び液相領域332と固相領域334との間のメルトプール308の遷移領域336が同定される。これらの領域の同定は、見かけ熱的特徴315又は補正熱的特徴326のいずれかに基づいて行うことができる。
【0107】
ブロック414において、メルトプール308遷移領域336の物理パラメータが定量化される。上述のように、物理パラメータは、付加材料の実凝固速度を示す、遷移領域336の任意の測定可能な特徴とすることができる。例えば、物理パラメータは、図17に最良に示すように、遷移領域336において処理方向322に測定される凝固距離340とすることができる。或いは、物理パラメータは、遷移領域336の面積とメルトプール308の面積の比率とすることができる。
【0108】
方法400は、ブロック416において、遷移領域336の物理パラメータと処理速度との比較に基づいて実凝固速度を決定する。物理パラメータが凝固距離340である場合、例えば、制御装置320は、凝固距離340を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようにプログラムすることができる。物理パラメータが遷移領域336の面積とメルトプール308の面積の比率である場合、制御装置320は、該比率を処理速度で除した値に比例する実凝固速度を決定するようプログラムすることができる。
【0109】
最後に、方法400は、ブロック418において、実凝固速度に基づいて処理パラメータを調整して、所望の凝固速度を達成する。例えば、制御装置320は、エネルギービーム304のパワーレベルの調整、メルトプール308内に付加材料(粉体312等)を堆積させる速度の調整、処理速度の調整、滞留時間の導入、又は基板306の温度の調整(基板306が能動冷却式基板である場合)を行うようにプログラムすることができる。さらに、これらの調整作業を組み合わせて同時に行い、所望の付加材料凝固速度を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本明細書に開示した方法及び装置を用いて付加製造処理を改良することができる。ある種の付加製造応用時、例えば、とある材料を用いた、且つ/又は、とある物体形状を造形する製造の場合等は、付加材料が凝固する速度を制御するとよい場合がある。例えば、インコネル718などの極限環境用のニッケル系の高硬度材料は、造形時の堆積層の体積変化の影響を受けやすく、反り、造形物の寸法完全性の悪化、表面粗度の増加につながる。これらの問題は、実凝固速度を正確に決定し、処理パラメータを調整して所望の凝固速度を達成することで軽減することが可能である。
【0111】
本明細書で引用された、出版物、特許出願及び特許を含む全ての参照文献は、言及により本明細書に組み込まれるものとする。ある特定の実施形態を「好ましい」実施形態とする記述及びその他の好ましい実施形態、特徴又は範囲の記載は、制限的なものとみなされず、現状ではそれらより好ましさが劣ると考えられる実施形態も請求の範囲に包含されるものとみなされる。本明細書で説明した全ての方法は、特に記載のない限り、或いは、文脈により明白に否定されない限り、任意の適切な順序で実施可能である。本明細書で挙げた一切の例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、開示した主題を明確にすることを意図しており、請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書における例示的な実施形態の性質又は利点に関する陳述は制限を意図したものではなく、添付の特許請求の範囲は、このような陳述により制限されるとみなされるべきではない。より全般的には、明細書におけるどの文言も、請求された主題の実施に非請求要素が必要不可欠であることを示しているという解釈をされるべきでない。請求の範囲は、適用法により認められている場合、該請求の範囲に挙げた主題の全ての変更形態及び均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形形態おける上述した要素のどのような組み合わせも、特に記載のない限り、或いは、文脈により明白に否定されない限り、請求の範囲に包含される。本明細書における参照文献又は特許についての記述は、「先行」と記されていたとしても、当該参照文献又は特許を本開示に対する先行技術として利用できることの容認を意図したものではない。
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