(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】電気パルスを哺乳動物の望ましい組織へ送達するために使用する電極装置および針電極
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20220623BHJP
A61N 1/30 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/30
(21)【出願番号】P 2020504353
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018070440
(87)【国際公開番号】W WO2019020801
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520028461
【氏名又は名称】スカンディナヴィアン キーモテック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリック,モーハン
(72)【発明者】
【氏名】ペアッソン,ベアティル アールアール
(72)【発明者】
【氏名】マーンフェルド,ヨハン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-503586(JP,A)
【文献】特開2004-41434(JP,A)
【文献】特開2008-284203(JP,A)
【文献】特表2010-506660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14 - 18/16
A61N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の望ましい組織への電気パルスの送達に使用するための電極装置(100)であって、前記電極装置(100)が、
第1の電極接続部(111)および第2の電極接続部(112)含むハンドル部(110)と、
第1の取付端(121)を含む第1の針電極(120)および第2の取付端(121´)を含む第2の針電極(120´)であって、前記第1および第2の取付端(121、121´)はそれぞれ前記第1の電極接続部(111)および前記第2の電極接続部(112)に取り外し可能に取り付けられるように構成される、第1の針電極(120)および第2の針電極(120´)と
を含み、
前記第1および第2の電極接続部(111,112)のそれぞれは、内側電極位置(111a、112a)および外側電極位置(111b、112b)で構成され、前記内側および外側電極位置(111a,112a;111b,112b)は導電性であり、
前記第1および第2の取付端(121,121´)のそれぞれは、前記内側電極位置と前記外側電極位置のうちの1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部(121a、121´a)で構成され、また前記内側電極位置または前記外側電極位置のもう一方に供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部(121b、121´b)とで構成される
ことを特徴とする、電極装置(100)。
【請求項2】
前記第1の電極接続部(111)の前記内側電極位置(111a)と前記第2の電極接続部(112)の前記内側電極位置(112a)との間の距離d
iは、前記第1の電極接続部(111)の前記外側電極位置(111b)と前記第2の電極接続部(111)の前記外側電極位置(111b)との間の距離d
oよりも小さい、請求項1に記載の電極装置(100)。
【請求項3】
前記第1および第2の針電極(120、120´)のそれぞれは、前記取付端部(121,121´)の対向する端部(122、122´)に、前記哺乳動物の前記望ましい組織に配置される電極チップ(124、124´)を備えている、請求項1または2に記載の電極装置(100)。
【請求項4】
前記第1および第2の針電極(120、120´)のそれぞれは、前記第1および第2の針電極(120、120´)のそれぞれの、それぞれの絶縁部分(125、125´)を通って長手方向に延びる第1の電極(123)および第2の電極(123´)をそれぞれ含み、前記それぞれの第1および第2の電極チップ(124、124´)は、前記電極(123,123´)のそれぞれの第1のセクション(123-1、123-1´)のそれぞれの端部に配置され、前記第1のセクション(123-1、123-1´)に対向する前記電極(123、123´)のそれぞれの第2のセクション(123-2,123-2´)は、前記導電部(121b、121´b)を含む、請求項3に記載の電極装置(100)。
【請求項5】
前記ハンドル部(110)は、ヘッド部(115)と、該ヘッド部(115)に対して角度を付けて配置された本体部(116)とを含み、前記ヘッド部(115)と前記本体部(116)との間の角度αは、10~30度の範囲にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極装置(100)。
【請求項6】
前記ハンドル部(110)は平坦な前部セクション(115a)を含み、前記第1の電極接続部(111)および前記第2の電極接続部(112)は、前記第1および第2の針電極(120、120´)が前記それぞれの電極接続部(111、112)に配置されるとき、前記平面状の前部セクション(115a)に対して垂直またはほぼ垂直になるように配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極装置(100)。
【請求項7】
前記第1および第2の電極接続部(111、112)のそれぞれは、電気配線(118)を介して前記それぞれの第1および第2の電極接続部(111、112)をパルス発生装置(200)に接続するように構成されたそれぞれの第1および第2のコネクタ(119a、119b)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極装置(100)。
【請求項8】
前記ハンドル部分(110)が、それぞれの導電性内側電極位置(113a、114a)およびそれぞれの導電性外側電極位置(113b、114b)を有する第3および第4の電極接続部(113、114)をさらに備え、前記電極装置(100)は、
第3の取付端部(121´´)を含む第3の針電極(120´´)および第4の取付端部(121´´´)を含む第4の針電極(120´´´)であって、前記それぞれの取付端部(121´´、121´´´)は前記それぞれの第3および第4の電極接続部(113,114)に取り外し可能に取り付けられるように構成され、また前記それぞれの取付端部(121´´、121´´´)は、前記それぞれの内側電極位置(113a、114a)または前記それぞれの外側電極位置(113b、114b)を、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成されたそれぞれの絶縁部(121a´´、121a´´´)と、前記それぞれの内側電極位置または前記それぞれの外側電極位置に供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成されたそれぞれの導電部(121b´´、121b´´´)とで構成される、第3の針電極(120´´)および第4の針電極(120´´´)を更に含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の電極装置(100)。
【請求項9】
電気パルスを哺乳動物の望ましい組織に送達するための請求項1から8のいずれか一項に記載の電極装置(100)で使用する針電極(120)であって、前記針電極(120)は、電極装置(100)の電極接続部(111、112、113、114)に取り外し可能に取り付けるための取付端部(121)を含み、前記取付端部(121)は、電極接続部(111、112、113、114)の導電性内側電極位置(111a、112a、113a、114a)および導電性外側電極位置(111b、112b、113b、114b)のうちの1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部(121a)で構成され、また前記内側電極位置(111a、112a、113a、114a)および前記外側電極位置(111b、112b、113b、114b)のうちの別の1つに供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部(121b)で構成されることを特徴とする、針電極(120)。
【請求項10】
前記取付端部(121)に対向する端部(122)の前記針電極(120)は、前記哺乳動物の前記望ましい組織に配置される電極チップ(124)を含む、請求項9に記載の針電極(120)。
【請求項11】
前記針電極(120)は、絶縁部分(125)と、前記絶縁部分(125)を通って長手方向に延びる細長い電極(123)とを備え、前記電極チップ(124)は、前記電極(123)の第1の部分(123-1)の端部に配置され、また前記第1の部分(123-1)に対向し、かつ前記絶縁部分(125)から少なくとも部分的に延びる前記電極(123)の第2の部分(123-2)は、前記導電部(121b)を含む、請求項10に記載の針電極(120)。
【請求項12】
前記絶縁部(121a)および前記導電部(121b)は長手方向に平行に配置され、前記絶縁部(121a)を含むセクション(127)に配置される前記絶縁部分(125)は、前記導電部(121b)に対して角度βで前記絶縁部(121a)を配置するようにねじられている、請求項11に記載の針電極(120)。
【請求項13】
前記絶縁部分(125)は、絶縁材料からなり、その包絡面に配置された1つ以上の突起(126)を含む、請求項11または12に記載の針電極(120)。
【請求項14】
前記電極(123)の前記第1の部分(123-1)は、前記第2の部分(123-2)の剛性と比較して高い剛性を提供する第1の導電性合金を含み、前記電極(123)の前記第2の部分(123-2)は前記電極装置(100)の前記電極接続部(111、112、113、114)との電気的接触を提供する第2の導電性合金を含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の針電極(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、電極装置、針電極、およびその方法に関する。特に、本明細書の実施形態は、哺乳動物の望ましい組織への電気パルスの送達に関する。
【背景技術】
【0002】
生体細胞および組織に印加されるパルス電界は、細胞膜に横チャネルまたは細孔を作製し、これは、電気透過処理またはエレクトロポレーションと呼ばれる現象である。細孔形成の説明は、パルス印加電界による脂質二重層膜の構造における界面水の再編成である。
【0003】
エレクトロポレーションは、細胞膜を通る親水性分子の移動の確率を高める。したがって、細胞外の分子は細胞質に移動し、細胞質から細胞内抗原分子を細胞外空間に移動する。膜の再密閉および細胞の回復の速度は、印加電圧の強さと、印加電気パルスの数および長さとに依存する。
【0004】
実験、臨床、およびバイオテクノロジーの用途向けのほとんどのエレクトロポレーションプロトコルは、パルス、例えば少なくとも100μSの持続時間を有する約1000V/cmの直流(DC)パルスを使用する。しかし、膜透過処理は、100nsの範囲のパルス長のより短いパルスでも起こり得るが、電界強度ははるかに高くなる。
【0005】
電気透過処理の概念は、腫瘍細胞の透過性を高めることにより腫瘍治療に採用され、したがって、投与された細胞毒性剤の固形腫瘍へのアクセスを強化する。一般的に、通常は腫瘍細胞膜に浸透しない高毒性の抗生物質である低用量のブレオマイシンを、電気パルスが腫瘍に印加される前に、静脈内投与(15000~25000国際単位(IU))するか、腫瘍に直接投与(260~1000IU/cm3)する。しかしながら、薬剤の静脈内投与と直接投与の組み合わせが適用されてもよい。電気パルスを印加することにより、化学療法の治療効果を高めることができる。
【0006】
臨床的に適用されるこの手順は通常、電気化学療法(ECT)と呼ばれ、約1000V/cm(つまり、約4~12mm、例えば約8~10mmの距離のピン電極間に印加される1000Vの電圧を意味する)の公称電界強度で5kHzで送達される8個の矩形パルスのパルス列を使用し、各パルスの持続時間は100μsである。例示的なプロトコルでは、アプリケータ内の複数の(例えば、12個)電極対にわたって合計96個の電気パルスが送達され得る。一般的な仮説によると、ECTの効果は印加電圧と電極間の距離によるものである。パルスあたりの吸収電力は約500J/kg、電流は約16Aと推定される。ただし、これは頭頸部治療の組織にとって、あまりにも有害であると思われる。高すぎる電界強度および高すぎる電流を使用すると、炎症反応および免疫抑制が生じ、キラーT細胞の治療腫瘍への浸潤が制限される。
【0007】
特許文献1は、器具に含まれる電極に電圧を印加するための短い電圧パルスを発生させる電圧発生器と、電極に結合された測定ユニットとを含む器具を開示している。電極は、電極間の組織に電界を形成するために、人間または動物の制限された領域の組織に固定または挿入されるように設計されている。測定ユニットは、電極間のインピーダンスを決定するために配置され、インピーダンスは、電極間に位置する組織の電気特性によって実質的に決定される。登録および計算装置は制御ユニットを形成し、これは測定ユニットによって決定されたインピーダンスに基づいて、組織に形成される電界が常に所定の値になるように、電圧発生器の出力電圧を制御する。電界による治療は、組織内の細胞膜の穿孔を実現し、それにより、身体に供給された物質、例えば、細胞増殖抑制または遺伝物質の通過を可能にする。
【0008】
特許文献2は、ハンドルアセンブリに取り外し可能に取り付け可能な交換可能な皮膚電極円板を含むエレクトロポレーション装置を開示している。電極円板は、選択された組織を貫通するための空間的配置で支持構造に取り付けられた複数の針皮膚電極を有する。
【0009】
これまでに知られている装置の欠点は、電極間の距離を哺乳動物の治療容積に適合させることが難しいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第9952589号
【文献】米国特許出願公開第2008/0091135号明細書
【発明の概要】
【0011】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態の目的は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを克服または緩和することである。
【0012】
本明細書の実施形態の一態様によれば、目的は、電気パルスを哺乳動物の望ましい組織に送達するための電極装置によって達成される。
【0013】
電極装置は、第1の電極接続部および第2の電極接続部を備えるハンドル部を備える。
【0014】
更に、電極装置は、第1の取付端部を含む第1の針電極と、第2の取付端部を含む第2の針電極とを含み、第1および第2の取付端部は、それぞれ第1の電極接続部および第2の電極接続部に取り外し可能に取り付けられるように構成される。
【0015】
更に、第1および第2の電極接続部のそれぞれは、内側電極位置および外側電極位置で構成される。内側および外側電極位置は導電性である。
【0016】
更に、電極の第1および第2の取付端部のそれぞれは、内側電極位置および外側電極位置の1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部と、内側電極位置または外側電極位置のもう一方に供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部とで構成される。
【0017】
本明細書の実施形態の別の態様によれば、目的は、哺乳動物の望ましい組織に電気パルスを送達するための電極装置で使用される針電極によって達成される。
【0018】
針電極は、電極装置の電極接続部への取り外し可能な取り付けのための取付端部を含む。
【0019】
更に、取付端部は、第1の電極接続部の導電性内側電極位置および導電性外側電極位置に位置している場合、それらのうちの1つを、電気的に絶縁するように構成された絶縁部で構成される。
【0020】
更に、取付端部は、内側電極位置および外側電極位置に位置している場合、それらのうちの他方に供給された電流を伝導するように構成された導電部で構成される。
【0021】
第1および第2の電極接続部のそれぞれは、導電性内側電極位置および導電性外側電極位置で構成され、またそれぞれの針電極の第1および第2の取付端部のそれぞれは、内側電極位置および外側電極位置の1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部と、内側電極位置または外側電極位置のもう一方に供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部とで構成されるため、それぞれの針電極の導電部の位置は、内側電極位置と外側電極位置の間で変えることができる。
【0022】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態の利点は、2つの導電部間、すなわち第1の針電極の導電部と第2の針電極の導電部との間、の距離を容易に変更でき、それにより哺乳動物、例えば患者の治療領域および/または治療容積が簡単に変更できてもよい。
【0023】
本明細書の実施形態の例は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2A】電極装置のハンドル部の実施形態の正面図を概略的に示し、ハンドル部は4つの電極接続部を含む。
【
図2B】それぞれの1つの電極接続部に配置された4つの針電極を含むハンドル部の実施形態の正面図を概略的に示す。
【
図3B】
図3Aの針電極と比較して90度回転した針電極の実施形態を概略的に示す。
【
図3C】
図3Aの線A-Aに沿った針電極の実施形態の断面を概略的に示す。
【
図5B】ハンドル部の実施形態の分解図を概略的に示す。
【
図6A】4つの針電極のそれぞれの電極がハンドル部のそれぞれの外側電極位置に配置される例を概略的に示す。
【
図6B】4つの針電極のそれぞれの電極がハンドル部のそれぞれの内側電極位置に配置される例を概略的に示す。
【
図7】特定の領域を覆うために電極装置をどのように段階的に動かし得るかを概略的に示している。
【
図8】ケースA(電極対の電極間12mm)での可能な電極対の組み合わせのマトリックスと、第1のパルスの外側電極位置A1での1200-0Vと、第2のパルスの外側電極位置A4での0-1200Vでの励起を概略的に示す。
【
図9】ケースB(電極対の電極間8mm)での可能な電極対(x;y)の組み合わせのマトリックスと、公称電界強度V/d=1000V/cmを達成するための励起を概略的に示し、対角線励起でx=1131;y=0V、第1のパルスで側面に沿ってx=800-;y=0V、そして第2のパルスでx=0-;y=1131Vおよびx=0;y=800Vに反転される。 または、公称電界強度V/d=1000V/cmを達成するための励起は、対角励起でx=+566;y=-566V、第1のパルスで側面に沿ってx=+400;y=-400V、そして第2のパルスでx=-566-;y=+566Vおよびx=-400;y=+400Vに反転される電極対(x;y)を有することである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
動的エレクトロポレーション強化化学療法(Dynamic Electroporation Enhanced Chemotherapy(DEECT(登録商標))の臨床応用には、例えば様々な領域および/または容積の、様々なサイズの腫瘍の治療を簡単に処理できる電極装置が必要である。本明細書に記載の電極装置は、治療領域および/または容積を変更するために、1つ以上の針電極の1つ以上の導電部の位置を変えることができる。更に、電極装置で覆われた領域よりも大きい拡張部を有する腫瘍の治療では、電極装置は、腫瘍を周辺から中心まで覆うパターンで、周辺から中心に段階的に動かされてもよい。
【0026】
本開示では、電極装置という用語が使用される。ただし、アプリケータが参照される場合があり、そのような参照は電極装置を参照すると理解するべきである。従って、電極装置およびアプリケータという用語は、本開示では時々交換可能に使用される。
【0027】
本明細書の実施形態によって対処される目的は、電極装置の性能を改善し、改善された針電極を提供する方法である。
【0028】
以下において、本明細書の実施形態は、例示的な実施形態によって例示される。これらの実施形態は相互に排他的ではないことに留意されたい。一実施形態からの構成要素は、別の実施形態に存在することを暗黙のうちに想定することができ、それらの構成要素が他の例示的な実施形態でどのように使用できるかは当業者には明らかであろう。
【0029】
更に、当業者は、主に同等の機能を備えた以下の実施形態のいくつかの実現があることに留意されたい。
【0030】
図1は、哺乳動物の望ましい組織への電気パルスの送達に使用される電極装置100の実施形態を概略的に示している。
【0031】
電極装置100は、第1の電極接続部111および第2の電極接続部112を備えるハンドル部110を備える。第1および第2の電極接続部111、112は、それぞれ針電極用の接続部である。針電極については、以下で更に詳しく説明する。従って、第1および第2の電極接続部111、112により、2つの針電極、ハンドル部110に取り付けられて、例えば取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0032】
ハンドル部110は、ヘッド部115と、ヘッド部115に対して角度を付けて配置された本体部116とを備えてもよい。これは、ハンドル部110の実施形態を示す
図5Aに概略的に示されている。いくつかの実施形態では、ヘッド部115と本体部116との間の角度αは、160から180度の範囲、好ましくは約170度である。いくつかの実施形態では、角度αは168度である。160~180度の範囲、好ましくは約170度の角度αを選択することにより、電気パルスの送達に電極装置100を使用するとき、電極装置100のオペレータの視界が改善される。それにより、電気パルスの曝露中に望ましい組織の視野を改善する。更に、ヘッドと本体部との間に角度を設けることにより、電極装置100はより人間工学的に使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ハンドル部110は、平坦な前部セクション115aを含む。そのような実施形態では、第1の電極接続部111および第2の電極接続部112は、平坦な前部セクション115aに配置される。平坦な前部セクション115aは、ヘッド部115の一部であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、
図2A、2B、5A、5B、6Aおよび6Bを参照し、電極装置100のハンドル部110は、第3の電極接続部113および第4の電極接続部114を含む。これらはまた、平坦な前部セクション115aに配置されてもよい。電極装置100は、少なくとも2つの電極接続部を含むことを理解されたい。更に、第3および第4の電極接続部113、114は、第1および第2の電極接続部111、112に対応し、従って、本開示で更に詳細に説明しなくても、対応する部品および特徴を含むことを理解されたい。従って、第3および第4の電極接続部113、114により、2つの針電極は、ハンドル部110に取り付けられて、例えば取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0035】
使用されない電極接続部は、絶縁材料、例えば、絶縁プラグによって密閉されてもよい。例えば、電極装置100が4つの電極接続部を含むが、治療中に2つの針電極のみが使用される場合、使用されない電極接続部は、絶縁プラグによって密閉されてもよい。
【0036】
第1および第2の電極接続部111、112のそれぞれは、内側電極位置111a、112aおよび外側電極位置111b、112bで構成され、内側および外側電極位置111a、112a、111b、112bは導電性である。従って、各電極接続部111、112は、1つの針電極に対して2つの導電位置、すなわち、1つの導電性内側電極位置111a、112aと、1つの導電性外側電極位置111b、112bとを含む。
図2Aは、電極装置のハンドル部の実施形態の正面図を概略的に示し、ハンドル部は4つの電極接続部を含む。
図2Aに概略的に示されるように、内側電極位置111a、112aは、平坦な前部セクション115aの中心近くに配置され、外側電極位置111b、112bは、平坦な前部セクション115aの周辺近くに配置される。
【0037】
いくつかの実施形態では、距離、例えば第1の電極接続部111の内側電極位置111aと第2の電極接続部112の内側電極位置112aとの間の内側距離d
iは、第1の電極接続部111の外側電極位置111bと第2の電極接続部111の外側電極位置111bとの間の距離、例えば外側距離d
oよりも小さい。これを
図2Aに概略的に示す。例えば、内側距離d
iは約6~8mmの範囲、好ましくは約6または8mmであり得、外側距離d
oは約10~12mmの範囲、好ましくは約10または12mmであり得る。
【0038】
更に、
図2Aは、第3および第4の電極接続部113、114、ならびに対応する導電性内側電極位置113a、114aおよび導電性外側電極位置113b、114bを含む実施形態を概略的に示す。
図2Aに概略的に示すように、内側電極位置113a、114aは平坦な前部セクション115aの中心近くに配置され、外側電極位置113b、114bは、平坦な前部セクション115aの周辺近くに配置される。それにより、内側距離d
iは外側距離d
oよりも小さい。その結果、2つの針電極の2つの導電部間の距離は、導電部がそれぞれの内側電極位置に配置される場合、導電部がそれぞれの外側電極位置に配置される場合よりも小さくなる。
【0039】
図5Bは、ハンドル部110の実施形態の分解図を概略的に示す。図示されているように、本体部116は、例えばスナップフィットにより互いに取り付けられるように構成された2つのカバー部品116a、116bを含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1および第2の電極接続部111、112のそれぞれは、電気配線すなわちケーブル118を介してそれぞれの第1および第2の電極接続部111、112をパルス発生装置200に接続するように構成されたそれぞれの第1および第2のコネクタ117a、117bを備える。パルス発生装置200については、以下でより詳細に説明する。第1および第2のコネクタ117a、117bの一方は雌型コネクタであり、第1および第2のコネクタ117a、117bの他方は雄型コネクタであってもよい。
図5Bは、ハンドル部100の端部で、かつ配線118の周りに配置されたケーブル移行部119を更に示す。
【0041】
更に、電極装置100は、第1の取付端部121を含む第1の針電極120と、第2の取付端部121´を含む第2の針電極120´とを含み、第1および第2の取付端部121、121´は、それぞれ第1の電極接続部111および第2の電極接続部112に取り外し可能に取り付けられるように構成される。
【0042】
針電極の数は、電極装置の電極接続部の数に対応し得ることを理解されたい。従って、本開示では、第1の針電極120、第2の針電極120´、第3の針電極120´´および第4の針電極120´´´が参照されることがある。他の針電極が記載されていない場合の針電極120への言及は、針電極120、120´、120´´、120´´´のいずれかを指すと理解されたい。
【0043】
前述のように、第1の電極接続部111および第2の電極接続部112は、平坦な前部セクション115aに配置されてもよい。そのような実施形態では、第1および第2の針電極120、120´は、それぞれの電極接続部111、112に配置される場合、平坦な前部セクション115aに対して垂直またはほぼ垂直に配置される。
【0044】
哺乳動物、例えば患者の、望ましい組織への電気パルスの送達中、各電極対は、パルス発生装置100、例えばパルス発生器105によって、電極の1つ、例えば第1の針電極120において正の電圧、他の針電極、例えば第2の針電極120´においてゼロ電圧で、最初に励起された第1の励起にある。従って、第1の励起では、第1の針電極120の導電部121bは正の電圧で励起され、第2の針電極120の導電部121b´はゼロ電圧で励起される。それにより、第1の針電極120の導電部121bと第2の針電極120の導電部121b´との間に電圧が印加され、望ましい組織の治療をもたらす。各電極対の第2の励起では、一方の電極、例えば第1の針電極120で電圧がゼロ電圧に、また他方、例えば第2の針電極120´で正の電圧に反転し、望ましい組織の標的容積における化学療法効果の均一性を促進する。従って、第2の励起では、第1の針電極120の導電部121bはゼロ電圧で励起され、第2の針電極120の導電部121b´は正の電圧で励起される。
【0045】
4つの電極で治療容積内の均一な電界曝露分布を促進するために、対角線を含む正および負のパルス適用の12個の可能な組み合わせすべてを適用することができる。
【0046】
図2Bは、4つの針電極120、120´、120´´、120´´´を含む電極装置100のいくつかの実施形態の正面図を概略的に示している。
【0047】
図3A~
図3Cは、針電極120のいくつかの実施形態を概略的に示している。
図3Aと
図3Bとの間で、針電極120は、その長手方向軸に沿って90度回転している。
図3Cは、
図3Aの線A-Aに沿った針電極の実施形態の断面を概略的に示している。
【0048】
以下に、第1および第2の針電極120、120´の実施形態を説明する。しかしながら、説明される特徴および部品は、いくつかの第3および第4の針電極120´´、120´´´に等しく適用可能であることを理解されたい。明確にするために、図では、それぞれの部分が第1、第2、第3または第4に属するか否かを示す1つ以上のアポストロフィなしの番号のみが参照されている。
【0049】
第1および第2の取付端部121、121´のそれぞれは、内側電極位置111a、112aおよび外側電極位置111b、112bのうちの1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部121a、121´aと、内側電極位置111a、112aまたは外側電極位置111b、112bのうちの別の1つに供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部121b、121´bとで構成される。それにより、各電極接続部111、112における各針電極120、120´の位置について2つの選択肢が存在する。言い換えれば、針電極120は、各電極接続部111、112に2つの異なる方法で配置することができる。例えば、導電部121b、121b´は、内側電極位置または外側電極位置のいずれかに位置してもよい。導電部121b、121b´が内側電極位置にあるとき、対応する絶縁部121a、121a´は外側電極位置にあり、逆もまた同様である。
【0050】
取付端部121の絶縁部121aは、絶縁部の電極接続部111、112の内側または外側電極位置への密閉した嵌合部を提供するように更に構成されてもよい。導電部の電極接続部111、112の内側または外側電極位置への密閉した嵌合部を提供するために、取付端部の導電部121b、121b´の周りに密閉部121a-1を設けることができる。
【0051】
前述のように、2つの内側電極位置111a、112a間の距離はdiであり、従って、内側電極位置111a、112aに配置された2つの導電部121b、121b´の中心間の距離はdiである。
【0052】
同様に、外側電極位置111b、112bに配置された2つの導電部121b、121b´の中心間の距離はdoである。
【0053】
第1および第2の針電極120、120´のそれぞれは、取付端部121、121´の対向する端部122、122´に、哺乳動物の望ましい組織に配置される電極チップ124、124´を備えてもよい。電極チップ124、124´は、望ましい組織への容易な挿入のために尖っていてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1および第2の針電極120、120´のそれぞれは、それぞれ第1の電極23および第2の電極123´を含む。
図4は、電極123の実施形態を概略的に示している。第1および第2の電極123、123´は、第1および第2の針電極120、120´のそれぞれの絶縁部分125を通って長手方向に延びる。
【0055】
それぞれの第1および第2の電極チップ124、124´は、電極123、123´のそれぞれの第1のセクション123-1、123-1´のそれぞれの端部に配置されてもよい。第1のセクション123-1、123-1´に対向する電極123、123´のそれぞれの第2のセクション123-2、123-2´は、導電部121b、121´bを備えてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、導電部121b、121´bは電極123、123´の一体化された部分であり、絶縁部121a、121a´は絶縁部分125の一体化された部分である。そのような実施形態では、針電極120は、2つの部分、例えば電極123および絶縁部分125を含むとされてもよい。
【0057】
前述のように、いくつかの実施形態では、ハンドル部110は、それぞれ導電性内側電極位置113a、114aおよびそれぞれ導電性外側電極位置113b、114bを備えた第3および第4の電極接続部113、114を含む。そのような実施形態では、電極装置100は、第3の取付端部121´´を含む第3の針電極120´´と、第4の取付端部121´´´を含む第4の針電極120´´´とを更に含み得る。更に、それぞれの取付端部121´´、121´´´は、それぞれの第3および第4の電極接続部113、114に取り外し可能に取り付けられるように構成されてもよい。更に、それぞれの取付端部121´´、121´´´は、それぞれの内側電極位置113a、114aまたはそれぞれの外側電極位置113b、114bを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成されたそれぞれの絶縁部121a´´、121a´´´と、それぞれの内側電極位置またはそれぞれの外側電極位置に供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成されたそれぞれの導電部121b´´、121b´´´とで構成されてもよい。
【0058】
前述のように、
図3は針電極120の実施形態を概略的に示している。電気パルスを哺乳動物または患者の望ましい組織に送達するための電極装置100で使用する針電極120は、電極装置100の電極接続部111、112、113、114に取り外し可能に取り付けるための取付端部121を含む。取付端部121は、電極接続部111、112、113、114の内側電極位置111a、112a、113a、114aおよび外側電極位置111b、112b、113b、114bのうちの1つを、その中に配置されたときに電気的に絶縁するように構成された絶縁部121aと、内側電極位置111a、112a、113a、114aおよび外側電極位置111b、112b、113b、114bのうちの別の1つに供給された電流を、そこに配置されたときに流すように構成された導電部121bとで構成される。
【0059】
また、上述のように、およびいくつかの実施形態では、針電極120は、取付端部121に対向する端部122に、哺乳動物、例えば患者の望ましい組織に配置される電極チップ124を含む。
【0060】
更に、前にも述べたように、針電極120は、絶縁部分125と、絶縁部分125を通って長手方向に延びる細長い電極123とを備えている。
【0061】
いくつかの実施形態では、電極チップ124は電極123の第1のセクション123-1の端部に配置され、第1の部分123-1に対向する、絶縁部分125から外に少なくとも部分的に延びている電極123の第2のセクション123-2は、導電部121bを備えてもよい。電極123は、第1および第2のセクション123-1、123-2が接続される第3のセクション123-3を更に備えてもよい。電極123は、第1のセクション123-1の直径を、第2のセクション123-2の電極123の直径よりも小さくすることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、電極123の第1の部分123-1は、第2の部分123-2の剛性と比較して高い剛性を提供する第1の導電性合金を含み、電極123の第2の部分123-2は電極装置100の電極接続部111、112、113、114との電気的接触を提供する第2の導電性合金を含む。
【0063】
絶縁部121aおよび導電部121bは、針電極120の長手方向に平行に配置されてもよい。更に、いくつかの実施形態では、絶縁部分125は、絶縁部121aを含むねじれセクション127において、導電部分121bに対して角度βで絶縁部121aを配置するようにねじられてもよい。これを
図3Cに概略的に示す。例えば、角度βは、20度から50度の範囲、好ましくは30度から40度の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、角度βは約36度である。
【0064】
絶縁部分125は、絶縁材料からなり得、その包絡面に配置された1つ以上の突起126を備え得る。1つ以上の突起126は、針電極120のグリップを形成してもよい。また、密閉部121a-1は、絶縁部分125の一部を形成してもよい。
【0065】
絶縁部分125の非ねじれセクション128は、1つ以上の突起126を備えてもよい。
【0066】
図6Aは、4つの針電極120、120、120´´、120´´´のそれぞれの電極123、123´、123´´、123´´がハンドル部のそれぞれの外側電極位置に配置される例を概略的に示す。
図6Bは、4つの針電極120、120´、120´´、120´´´のそれぞれの電極123、123´、123´´、123´´´がハンドル部のそれぞれの内側電極位置に位置する例を概略的に示している。
【0067】
更に、
図6Aおよび
図6Bは、人差し指および親指が第2の針電極120´の絶縁部分125´をどのように把持することができるかを概略的に示している。
【0068】
特に、人差し指および親指は、絶縁部分125´の非ねじれセクション128を掴むことができる。
【0069】
図6Aに示すように、絶縁部121a´が内側電極位置112aに配置されている間、そして導電部121b´が外側電極位置112bに配置されている間、ねじれセクション127´のねじれは、人差し指と親指が非ねじれセクション128´を掴むのに十分なスペースを提供する。
【0070】
図6Bに示すように、絶縁部121a´が外側電極位置112bに配置されている間、そして導電部121b´が内側電極位置112aに配置されている間、ねじれセクション127´のねじれは、人差し指と親指が非ねじれセクション128´を掴むのに十分なスペースを提供する。
【0071】
図7は、特定の領域を覆うために電極装置100をどのように段階的に動かし得るかを概略的に示している。
図7の点線は、望ましい組織の輪郭を模式的に示し、番号1~16は、位置1から位置16への電極装置の段階的な移動の例を示す。各ボックスの端部は、使用される4つの電極の位置を概略的に示している。
【0072】
パルス発生装置200の例
パルス発生装置200は入力/出力インタフェース201を備え、パルス発生装置200のオペレータなどのユーザとの通信を容易にできる。インタフェースは、例えば、モニタ、例えばディスプレイ装置などの出力装置、キーボード、キーパッド、マウスなどの入力装置、またはタッチスクリーンなどの入力装置と出力装置の組み合わせを備えてもよい。入力および出力インタフェース201は、追加的または代替的に、別の装置(図示せず)との有線または無線通信用の手段を備えてもよい。
【0073】
パルス発生装置200は、1つ以上の他の装置から情報またはデータを受信するように構成された受信モジュール202によって、1つ以上の他の装置から情報またはデータを受信するように構成されてもよい。受信モジュール202は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実装されるか、または、パルス発生装置200のプロセッサ210と通信するように構成されてもよい。
【0074】
パルス発生装置200は、1つ以上の他の装置から情報またはデータを送信するように構成された送信モジュール203によって、1つ以上の他の装置から情報またはデータを送信するように構成されてもよい。送信モジュール203は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実装されるか、または、パルス発生装置200のプロセッサ210と通信するように構成されてもよい。
【0075】
パルス発生装置200は、例えば、少なくとも2つの針電極120、120´間に発生する電気パルスの電圧振幅を決定し、発生する連続する電気パルスの数を決定するように構成される決定モジュール204によって、少なくとも2つの針電極120、120´間に発生する電気パルスの電圧振幅を決定し、発生する連続する電気パルスの数を決定するように構成される。決定モジュール204は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実装されるか、または、パルス発生装置200のプロセッサ210と通信するように構成されてもよい。
【0076】
パルス発生装置200は、例えば決定モジュール204によって、発生する電気パルスのパルス形状、および/または休止期間、例えばパルスの発生を一時停止する期間、従ってパルスが発生しない期間を決定するように更に構成されてもよい。
【0077】
パルス発生装置200は、例えば、1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されたパルス発生器205によって、1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されてもよい。パルス発生器205は、パルス発生装置200のプロセッサ210と通信するように配置されてもよい。
【0078】
パルス発生装置200は、例えばパルス発生器205によって、少なくとも2つの針電極120、120´と電気通信するように配置され、1つ以上の決定された、例えば、所定の数の連続する電気パルスを発生させるように構成され、その結果、発生した第1の電気パルスが第1の電圧振幅を有し、1つ以上の発生した連続する電気パルスが、連続して発生した電気パルス間で連続して減少するそれぞれの電圧振幅を有する。それにより、閾値を超える1つ以上の発生した連続する電気パルスの電流値の増加が回避される。
【0079】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置200は、例えばパルス発生器205によって、2つの連続する電気パルス間の事前設定された振幅値で減少するそれぞれの電圧振幅で、1つ以上の決定された数の連続する電気パルスを発生させるように構成され、事前設定された振幅値の範囲は400~1200Vである。
【0080】
パルス発生装置200は、例えばパルス発生器205によって、2つの連続する電気パルス間で指数関数的に減少するそれぞれの電圧振幅を有する1つ以上の決定された数の連続する電気パルスを発生させるように構成され得る。例えば、それぞれの電圧振幅は、e-fctの関数として2つの発生した連続電気パルス間で指数関数的に減少する場合があり、ここでfc=σ/C、σは望ましい組織の伝導率、Cはパルス発生器205のコンデンサの容量であり、tは、発生した2つの連続する電気パルス間の時間である。
【0081】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置200は、例えばパルス発生器205によって、2つの電極120、120´のうちの第1の電極を正の電圧で、2つの電極201、202のうちの第2の電極をゼロ電圧で励起するように構成される。次いで、パルス発生器205は、第2の励起において、2つの電極120、120´のうちの第2の電極を正の電圧で、2つの電極のうちの第1の電極をゼロ電圧で励起し得る。それにより、標的容積における治療効果の改善された均一性が達成される。第3の励起では、パルス発生器105は、2つの電極120、120´のうちの第1の電極を正の電圧で、2つの電極120、120´のうちの第2の電極をゼロ電圧で励起してもよく、これを後続の励起毎に繰り返すことができる。各励起は、発生した1つのパルスに対応することを理解されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置200は、例えばパルス発生器205によって、望ましい組織の正方形のそれぞれの角に配置された4つの針電極にパルスを発生させるように構成される。電極のそのような位置決めにより、治療容積は容易に変更され得る。4つの電極での治療容積内の均一な電界分布を促進するために、水平、垂直および対角線を含む正および負のパルス適用の12個の可能な組み合わせすべてが適用され、各電極対の第1の励起では、1つの電極の電圧は正で、対応する電極はゼロ電圧であり、第2の励起では、1つの電極の電圧がゼロに、対応する電極で正の電圧に反転する。このパターンは、すべての電極の組み合わせに対してパルス発生装置200によって実行されて、標的容積における電気強化化学療法効果の均一性を促進することができる。
【0083】
1つ以上のドライバユニット205aは、パルス発生器205に含まれるか、またはパルス発生器205に接続され得る。1つ以上のドライバユニット205aのそれぞれは、一対の電極120、120´、120´´、120´´´間に電気パルスを発生させるように構成され得る。従って、数対の電極の場合、パルス発生器205は、電極の各対に対してドライバユニット205aを備えてもよく、従って、ドライバユニット205aの数は、電極の対の数に対応する。しかしながら、ドライバユニット205aの数は、電極対の数より少なくても多くてもよいことを理解されたい。
【0084】
1つ以上のコンデンサ205bは、パルス発生器205に含まれるか、またはパルス発生器205に接続されてもよい。1つ以上のコンデンサ205bのそれぞれは、望ましい電圧値、例えば、事前設定された電圧値まで充電されてもよく、放電して1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されてもよい。例えば、コンデンサ205bは、パルスを発生させるために段階的に放電されるように構成されてもよい。
【0085】
パルス発生装置200は、例えば、1つ以上の電気パルスの発生を終了するように構成された終了モジュール206によって、1つ以上の電気パルスの発生を終了するように構成されてもよい。終了モジュール206は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実施されるか、またはプロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0086】
パルス発生装置200は、例えば終了モジュール206によって、1つ以上の発生された電気パルスによって望ましい組織で引き起こされる総吸収エネルギーの値が望ましい閾値を超えたときに、1つ以上の決定された数の電気パルスの発生を終了するように構成されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、吸収エネルギーは、比吸収エネルギー、例えば、キログラムあたりの与えられた吸収エネルギー値である。
【0088】
パルス発生装置200は、例えば終了モジュール206によって、発生した電気パルスのそれぞれの電流値の1つが望ましい電流間隔外にあるときに、1つ以上の決定された数の電気パルスの発生を終了するようにさらに構成され得る。
【0089】
パルス発生装置200は、例えば、1つ以上の発生した電気パルスに関連するフィードバックを与えるように構成されたフィードバックモジュール207によって、1つ以上の発生した電気パルスに関連するフィードバックを与えるように構成される。フィードバックモジュール207は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実施されるか、またはプロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置200は、例えばフィードバックモジュール207によって、1つ以上の発生した電気パルスのそれぞれの、それぞれの吸収エネルギーを決定し、決定されたそれぞれの吸収エネルギーおよび場合によってはそれぞれの発生した電気パルスに関する情報を終了モジュール206に送信するように構成される。
【0091】
パルス発生装置200は、例えば、パルスの電流、例えば発生したパルスの電流を測定するように構成された電流測定モジュール208によって、パルスの電流、例えば発生したパルスの電流を測定するように構成されてもよい。電流測定モジュール208は、パルス発生装置200のプロセッサ210によって実施されるか、またはプロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0092】
パルス発生装置200はまた、データを記憶する手段を含むか、またはデータを記憶する手段に接続することができる。いくつかの実施形態では、パルス発生装置200は、電気パルスの哺乳動物の望ましい組織への送達に関するデータを記憶するように構成されたメモリ209をさらに含むか、またはメモリ209に接続することができる。データは、処理済みまたは未処理のデータおよび/またはそれに関連する情報であり得る。メモリ209は、1つ以上のメモリユニットを備えてもよい。さらに、メモリ209は、コンピュータデータ記憶装置、またはコンピュータメモリ、読み取り専用メモリ、揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどの半導体メモリであってもよい。メモリ209は、取得された情報、データ、構成およびアプリケーションを格納して、パルス発生装置200で実行されるときに本明細書の方法を実行するために使用されるように構成される。
【0093】
哺乳動物の望ましい組織に電気パルスを送達するための本明細書の実施形態は、本明細書の実施形態の機能および/または方法動作を実行するためのコンピュータプログラムコードとともに、
図1に示された配置のプロセッサ210などの、1つ以上のプロセッサを通じて実施され得る。上述のプログラムコードは、例えば、パルス発生装置200にロードされたときに、本明細書の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムコードを運ぶデータキャリアの形態で、コンピュータプログラム製品として提供されてもよい。そのようなキャリアの1つは、電子信号、光信号、無線信号またはコンピュータ可読記憶媒体の形態であり得るコンピュータ可読記憶媒体は、CD-ROMディスク、SIMカードまたはメモリスティックであり得る。
【0094】
コンピュータプログラムコードはさらに、サーバに格納され、パルス発生装置200にダウンロードされるプログラムコードとして提供されてもよい。
【0095】
当業者はまた、上記の入力/出力インタフェース201、受信モジュール202、送信モジュール203、決定モジュール204、パルス発生器205、終了モジュール206、フィードバックモジュール207および電流測定モジュール208は、アナログおよびデジタル回路の組み合わせ、および/またはパルス発生装置200内のプロセッサなどの1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、上記のように実行する、例えばメモリ209に格納された、ソフトウェアおよび/またはファームウェアで構成された1つ以上のプロセッサを指してもよいことを理解するであろう。1つ以上のこれらのプロセッサ、ならびに他のデジタルハードウェアは、単一の特定用途向け集積回路(ASIC)に含まれていてもよいか、あるいはいくつかのプロセッサおよび様々なデジタルハードウェアは、個別にパッケージ化されているか、またはシステムオンチップ(SoC)に組み込まれているかに関係なく、いくつかの個別の構成要素に分散されてもよい。
【0096】
電極材料
アノード、例えば第1の電極120とカソード、例えば第2の電極120´では異なる電気化学プロセスが発生する。アノードは負に帯電した電子が出て正に帯電した電流が入る電極であり、カソードは正に帯電した電流が入って負に帯電した電子が出てくる電極であることを理解されたい。水素ガスが存在する場合、水素ガスは堆積した正の金属イオンをカソードで形成する。塩素および酸素ガスがアノードで放出され、イオンが金属電極から抽出される。鉄イオンは、ブレオマイシンの活性を刺激し、いわゆるハーバーワイス反応を開始して、攻撃的な・OHラジカルを形成する。従って、カソードでの化学的環境は、組織に対して最も有毒である。これらのプロセスは、電荷変位量Qとともに増加する。
【0097】
電荷変位Q(As/m
2)は、以下の式で定義され、in vivoでのエレクトロポレーションの効率を推定するときに考慮するパラメータである。
単一パルスの電荷変位Q(As/m
2)、
N個のパルスの電荷変位
ここで、
σ=組織伝導率[S.m
-1]
σ
n=個々のパルスnの間の組織伝導率[S.m
-1]
E=印加電界強度[V.m
-1]
t
p=パルス長[s]
N=パルスの総数
ファラデーの法則は、
によって要約され、ここで、
・Nは電極で放出される分子の数である。
・gは、グラム単位の電極で遊離したグラム単位の物質の質量である。
・Mは、モル当たりのグラム単位の物質のモル質量(モル/グラム)である。
・Aは物質の1モル(g/M)の分子の数、または原子数であるアボガドロ数6.02310
23(分子量をグラム単位で定義)。
・Qは、クーロン単位の物質を通過した総電荷である。
・F=96485As.mol
-1はファラデー定数である。
・zは、物質のイオンの価数である(イオンあたりの転送される電子)。
【0098】
組織の伝導率が0.1S.m-1、電界強度が1000V.cm-1、パルス長が0.1ms、電極での各パルスで約3,12・1015分子/cm3が生成され、これは5ナノモルの範囲の濃度に対応する。
【0099】
動的電気強化化学療法(Dynamic Electro Enhanced Chemotherapy(D-EECT))
【0100】
動的電気強化化学療法(D-EECT)では、徐々に電圧が低下する電気パルスのパルス列、例えば擬似指数関数的に減少する電圧が印加され、各パルスの電流が上限電流閾値、例えば6~14Aのオーダー、例えば6~10Aのオーダーの事前設定された電流閾値を超えないように制御される。各パルスの電流を制御する理由は、各パルスで生成される電流の大きさが治療の臨床結果に影響を与えるため、制御する必要があるためである。
【0101】
パルスの電流は、治療する臓器または組織の伝導率に依存する。さらに、伝導率はさまざまな組織や臓器の間で大きく異なる。例えば、in vivoのヒト組織の伝導率の値は、1kHz未満の低周波数で0.02~1.5S/mの間で変化する。磁気共鳴画像法(MRI)と電気インピーダンストモグラフィを組み合わせて検査した組織ファントム(生理食塩水、フィルム)では、伝導率は約0.09S/mである。さらに、前立腺組織では、高電圧パルス、例えば1100V/cmのパルスの露出により、電気伝導率が0.3から0.9S/mに増加する。
【0102】
D-EECTは、同じ電極対の第2のパルスごとに極性を反転させることにより、標的容積での均一な治療効率を促進する。
【0103】
すべての4つの電極120、120´、120´´、120´´´がそれぞれの外側電極位置111b、112b、113b、114bに配置されると、以下の電極対励起が最大印加電圧1200Vで実行され得る。これもまた
図8に示されており、外側電極位置はA1、A2、A3、A4と示されている。
図8は、ケースA(電極対の電極間12mm)での可能な電極対の組み合わせのマトリックスと、第1のパルスの外側電極位置A1での1200-0Vと、第2のパルスの外側電極位置A4での0-1200Vでの励起を示す。
【0104】
電極対励起は、第1のパルスシーケンスであって、
外側電極位置A1を正電圧、外側電極位置A2、A3、A4をゼロ電圧とする第1のパルスと、
外側電極位置A2を正電圧、外側電極位置A3、A4をゼロ電圧とする第2のパルスと、
外側電極位置A3を正電圧、外側電極位置A4をゼロ電圧とする第3のパルスと
を有する、第1のパルスシーケンスを含んでもよい。
さらに、電極対励起は、第2のパルスシーケンスであって、
外側電極位置A4を正電圧、外側電極位置A1、A2、A3をゼロ電圧とする第1のパルスと、
外側電極位置A3を正電圧、外側電極位置A1、A2をゼロ電圧とする第2のパルスと、
外側電極位置A2を正電圧(赤)、外側電極位置A1をゼロ電圧とする第3のパルスと
を有する、第2のパルスシーケンスを含んでもよい。
【0105】
すべての4つの電極120、120´、120´´、120´´´がそれぞれの内側電極位置111a、112a、113a、114aに配置されると、以下の電極対励起が最大印加電圧1200Vで実行され得る。これもまた
図9に示されており、内側電極位置はB1、B2、B3、およびB4と示されている。
図9は、ケースB(電極対の電極間8mm)での可能な電極対の組み合わせのマトリックスと、公称電界強度V/d=1000V/cmを達成するための励起を示し、対角線励起で1131-0V、第1のパルスで側面に沿って800-0V、そして第2のパルスで0-1131Vおよび0-800Vに反転される。
【0106】
つまり、ケースB(電極対の電極間8mm)での可能な電極対(x;y)の組み合わせのマトリックスと、公称電界強度V/d=1000V/cmを達成するための励起を概略的に示し、対角線励起でx=1131;y=0V、第1のパルスで側面に沿ってx=800;y=0V、そして第2のパルスでx=0-;y=1131Vおよびx=0;y=800Vに反転される。
【0107】
電極対励起は、第1のパルスシーケンスであって、
内側電極位置B1を正電圧、内側電極位置B2、B3、B4をゼロ電圧とする第1のパルスと、
内側電極位置B2を正電圧、内側電極位置B3、B4をゼロ電圧とする第2のパルスと、
内側電極位置B3を正電圧、内側電極位置B4をゼロ電圧とする第3のパルスと
を有する、第1のパルスシーケンスを含んでもよい。
さらに、電極対励起は、第2のパルスシーケンスであって、
内側電極位置B4を正電圧、内側電極位置B1、B2、B3をゼロ電圧とする第1のパルスと、
内側電極位置B3を正電圧、内側電極位置B1、B2をゼロ電圧とする第2のパルスと、
内側電極位置B2を正電圧、内側電極位置B1をゼロ電圧とする第3のパルスと
を有する、第2のパルスシーケンスを含んでもよい。
【0108】
抵抗値R1d、R1s、R2d、およびR2sは、データベース、例えばメモリ209にセーブされ、記憶される。
または、公称電界強度V/d=1000V/cmを達成するための励起は、対角励起でx=+566;y=-566V、第1のパルスで側面に沿ってx=+400;y=-400V、そして第2のパルスでx=-566-;y=+566Vおよびx=-400;y=+400Vに反転される電極対(x;y)を有することである。
【0109】
「含む」または「備える」という単語が本開示で使用される場合、非限定的、すなわち「少なくとも~からなる」という意味として解釈されるものとする。
【0110】
前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する当業者は、説明された実施形態の修正および他の変形を思い浮かぶであろう。従って、本明細書の実施形態は、開示された特定の例に限定されず、修正および他の変形が本開示の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を使用することがあるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的ではない。