(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】高甘味度甘味料含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/60 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A23L2/00 C
A23L2/60
(21)【出願番号】P 2021056752
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】都丸 理紗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
(72)【発明者】
【氏名】石引 智子
(72)【発明者】
【氏名】武邑 哲彦
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-295370(JP,A)
【文献】特開2016-136882(JP,A)
【文献】特開2017-023017(JP,A)
【文献】特開2011-045305(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmであ
り、
高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項2】
甘味度が2.5~12.5である、請求項
1に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項3】
さらに乳を含む、請求項1
または2に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項4】
容器詰めされた、請求項1乃至
3いずれか一項に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
【請求項5】
高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含
み、
前記高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
【請求項6】
高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含
み、
前記高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料含有飲料に関する。より詳細には、高甘味度甘味料含有飲料、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法、および高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高甘味度甘味料は、ショ糖の数百倍から数千倍の甘味度を有する甘味料として知られる。高甘味度甘味料は、低カロリーであるため、消費者の健康志向等に応える点から、広く飲料に用いられている。しかし、甘味料として、高甘味度甘味料を用いた場合、ショ糖と比較して、甘味の残存性、不快な後味等が感じられる傾向があった。そのため、高甘味度甘味料を用いた飲料の味質・呈味を改善するための研究開発がなされている。例えば、特許文献1には、酸味付与物質と苦味付与物質とをともに含むことで、高甘味度甘味料含有飲料のボディ感と後切れを改善する方法が開示されている。
【0003】
一方で、飲料の香味・呈味を改善する観点から特定の香気成分を用いる試みが行われている。例えば、特許文献2には、飲食品にまろやかな味わいを付与し又は増強させるため、フェネチルアルコール等の香気成分を有効成分とする香味改善剤が開示されている。また、特許文献3には、より自然で飲食品の嗜好性を損なうことがない甘味増強剤に関し、アントラニル酸メチル等の香気成分を有効成分とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-127855号公報
【文献】特開2020-028244号公報
【文献】特開2018-130086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、高甘味度甘味料含有飲料におけるショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さを向上させることに着目し検討を行ったところ、新たに、アントラニル酸メチルまたはα-フェニルエチルアルコールの少なくとも一方を用いることが有効であることを知見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmである高甘味度甘味料含有飲料が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高甘味度甘味料含有飲料におけるショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上させる技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0011】
本明細書において、「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「甘味料の総覧」(精糖工業会1990年5月発行)、「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(株式会社光琳2003年5月発行)、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)等に記載されている値を採用することができる。なお、記載された甘味度の値に幅がある場合には、その中央値を採用する。例えば、代表的な甘味料の甘味度は、ショ糖1、ブドウ糖0.65、果糖1.5、スクラロース600、アセスルファムカリウム200、アスパルテーム200である。
また、飲料の甘味度は、容器詰め飲料の容器に成分表示されている甘味成分の甘味度と、分析等により特定した甘味成分の含有量をもとに算出することができる。上記方法で算出できない場合は、訓練された味覚官能パネリストが甘味標準水溶液を用いた官能評価を行って、当該飲料と同等の甘味を持つショ糖溶液の濃度を特定し、その濃度を甘味度とすることもできる。
【0012】
<高甘味度甘味料含有飲料>
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料(以下、「飲料」とも称する。)は、アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmである。すなわち、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、アントラニル酸メチルを0.01~40ppm、α-フェニルエチルアルコールを0.01~40ppmのうち少なくとも一方を含有するものであり、併用するものであってもよい。
これにより、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、飲料を飲んだ時の高甘味度甘味料に由来する後味の不快感を低減し、ショ糖らしい後味の良さを得つつ、ショ糖らしい甘さの良さを向上できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、香気成分の中でもアントラニル酸メチルがもつ特有の甘い香りと、α-フェニルエチルアルコールがもつ特有のフローラルな香りが、高甘味度甘味料特有の不快な甘味を効果的にマスキングしつつ甘味を複雑化させることができると推測される。その結果、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスよく得られると考えられる。
また、本実施形態の飲料によれば、高甘味度甘味料の種類によらず、アントラニル酸メチルを0.01~40ppm、α-フェニルエチルアルコールを0.01~40ppmのうち少なくとも一方を含むことで、高甘味度甘味料含有飲料におけるショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上させることができる。
【0013】
以下、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料に含まれる各成分について説明する。
【0014】
[高甘味度甘味料]
本実施形態において高甘味度甘味料とは、ショ糖の数百倍から数千倍の甘味度を有する甘味料をいう。高甘味度甘味料としては、例えば、甘草抽出物、ラカンカ抽出物、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、及びこれらの混合物が挙げられる。なかでも、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
また、ステビアに含まれる甘味成分としては、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC、及びズルコサイドA等のステビオール配糖体が知られるが、これらは糖類の置換率が異なり、甘味度も異なる。また、ステビアの規格としては、高純度ステビア(ステビア抽出物)、酵素処理ステビア(α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア)が挙げられるが、いずれもステビオール配糖体を80%以上含むものである。本実施形態の飲料においては、ステビア甘味度や規格によらず、ショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上させることができる。
【0015】
高甘味度甘味料の含有量は、特に限定されず、飲料の甘味度に応じて適宜調整されることが好ましい。
【0016】
[アントラニル酸メチル]
アントラニル酸メチルは、2-アミノ安息香酸メチル等とも呼ばれる香気成分であり、ネロリ、ジャスミン等の各種花精油、スウィートオレンジ、マンダリンなどの果皮油などに含まれる。本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、アントラニル酸メチルを0.01~40ppm含有することが好ましい。これにより、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスよく得られる。
また、雑味、苦みを抑制しつつ、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスを向上する観点から、0.05ppm以上が好ましく、0.2ppm以上がより好ましく、0.5ppm以上がさらに好ましい。一方、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスを向上させつつ、おいしさ保持し、雑味、苦みの抑制効果を保持する観点から、30ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、15ppm以下がさらに好ましく、9ppm以下がことさら好ましい。
【0017】
[α-フェニルエチルアルコール]
α-フェニルエチルアルコールとは、α-メチルベンジルアルコール等とも呼ばれる香気成分であり、ライラック、ジャスミン等のローズ様香料、フルーツフレーバーなどに用いられる。本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、α-フェニルエチルアルコールを0.01~40ppm含有することが好ましい。これにより、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスよく得られる。
また、雑味、苦みを抑制しつつ、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスを向上する観点から、0.05ppm以上が好ましく、0.2ppm以上がより好ましく、0.5ppm以上がさらに好ましい。一方、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスを向上させつつ、おいしさ保持し、雑味、苦みの抑制効果を保持する観点から、30ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、15ppm以下がさらに好ましく、9ppm以下がことさら好ましい。
【0018】
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料は、上記のアントラニル酸メチル、α-フェニルエチルアルコールをそれぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。併用する場合、その割合は特に限定されないが、アントラニル酸メチルとα-フェニルエチルアルコールと濃度比が、100:1~1:1が好ましく、80:1~1:1がより好ましい。これにより、ショ糖らしい甘味の良さと、後味の良さがバランスよく得られ、おいしさも向上できる。
【0019】
本実施形態において、上記のアントラニル酸メチル、α-フェニルエチルアルコールの濃度は、本発明の効果が損なわれない範囲において、香料やエキス等を添加する等して、調整することができる。
また、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料に含まれるアントラニル酸メチル、α-フェニルエチルアルコールの各濃度は、GC/MS分析により測定することができる。
【0020】
[その他の成分]
本実施形態の飲料においては、本発明の効果が奏される限り、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、高甘味度甘味料以外の甘味料、果汁、酸味料、乳、香料、ビタミン、着色料、食塩、ミネラル、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの、飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0021】
上記の果汁としては、例えば、ブドウ果汁、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
なお、果汁とは、果物・果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分や、それらを酵素処理などして透明化した液体成分をいう。本実施形態の飲料の果汁率(ストレート果汁換算)は、特に限定されず、嗜好性に応じて適宜調整されるが、例えば、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは1~30質量%である。
【0022】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ただし、本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料の後味改善効果をより顕著に得る観点から、高甘味度甘味料以外の甘味料を含まないことが好ましい。
【0023】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、酢酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0024】
上記の乳としては、動物又は植物由来のいずれの乳であってもよい。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳を用いることができ、なかでも、牛乳が一般的である。これらの乳は、単独又は二種類以上の混合物として用いることができる。また、これらの乳を、乳酸菌やビフィズス菌等の微生物を用いて発酵させた発酵乳として用いることもできる。
乳の形態は特に限定されず、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物が挙げられ、また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。
乳入り飲料である場合、乳の含有量は特に限定されないが、良好な乳風味を得つつ、ショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さを向上させる観点から、乳固形分量を0.1~3.0質量%とすることが好ましく、乳固形分量を0.5~2.5質量%とすることがより好ましい。なお、乳固形分量は、乳脂肪分と無脂乳固形分(SNF)とを合わせたものを意味する。
【0025】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、例えば、糖度1~20°が好ましく、糖度1~10°がより好ましい。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
また、糖度は、例えば、上記の高甘味度甘味料等の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0026】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.1g/100ml以上、0.5g/100ml以下であることが好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0027】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.5であることが好ましく、3.1~4.2であることがより好ましく、3.3~4.0であることがさらに好ましい。これにより、おいしさを良好に保持できる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0028】
[炭酸ガス、アルコール]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0029】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0030】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)や、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法などが挙げられる。
【0031】
[高甘味度甘味料含有飲料の製造方法]
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料の製造方法は、高甘味度甘味料を配合する工程と、アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、を含む。
これにより、ショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上できる高甘味度甘味料含有飲料が得られる。
高甘味度甘味料に含まれる各成分および物性などは、上記飲料と同様である。
【0032】
[高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法]
本実施形態の高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法は、高甘味度甘味料を配合する工程と、アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、を含む。
これにより、ショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上できる高甘味度甘味料含有飲料が得られる。
高甘味度甘味料に含まれる各成分および物性などは、上記飲料と同様である。
【0033】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmである、高甘味度甘味料含有飲料。
2. 前記高甘味度甘味料が、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びスクラロースの中から選ばれる1種又は2種以上である、1.に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
3. 甘味度が2.5~12.5である、1.または2.に記載の高甘味度甘味料含有飲料。
4. さらに乳を含む、1.乃至3.いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
5. 容器詰めされた、1.乃至4.いずれか一つに記載の高甘味度甘味料含有飲料。
6. 高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の製造方法。
7. 高甘味度甘味料を配合する工程と、
アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmとなるように調製する工程と、
を含む、高甘味度甘味料含有飲料の後味改善方法。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0035】
(1)飲料中の香気成分の定量
飲料中のアントラニル酸メチル、α-フェニルエチルアルコールの濃度(ppbまたはppm)は、以下のようにして測定した。
分析対象である各飲料10mLを、20ml容バイアルに入れ密栓した。
ゲステル社製MPSを用いるDHS(ダイナミックヘッドスペース)法によりGC/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。
検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
[GC/MSの分析条件]
GC:Agilent Technologies社製7890B。
MS:Agilent Technologies社製5977B。
捕集管(吸着剤):Tenax TA
カラム:AgilentTechologies社製 DB-WAX UI 30m×0.25mm、膜厚0.25μm。
注入法:スプリットレス。キャリアガス:He。
注入口温度:240℃。トランスファーライン:240℃。
オーブン温度:40℃(2min)→8℃/min→230℃(5min)。
MS条件:SIMモード
定量イオン:アントラニル酸メチルm/z151、α-フェニルエチルアルコールm/z107、シクロヘキサノール(内標)m/z57
【0036】
(2)飲料の官能評価
飲料について訓練された5名のパネリストによる官能試験を実施した。具体的には、各パネリストが飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「甘味質の良さ」、「後味の良さ」、「苦みの強さ」、「雑味の強さ」、「おいしさ」について、以下の評価基準に従い、対照を4点とした7段階評価を行い、その平均値を算出した。
・評価基準「甘味質の良さ」、「後味の良さ」、「苦みの強さ」、「雑味の強さ」
評点7:対照と比較してとても強い(良い)と感じた
評点6:対照と比較して強い(良い)と感じた
評点5:対照と比較してやや強い(良い)と感じた
評点4:対照と比較してあまり変わらない
評点3:対照と比較してやや弱い(良くない)と感じた
評点2:対照と比較して弱い(良くない)と感じた
評点1:対照と比較して非常に弱い(良くない)と感じた
・評価基準「おいしさ」
評点7:とても香味のバランスが良く、良好な風味であった
評点6:香味のバランスが良く、良好な風味であった
評点5:やや香味のバランスが良く、良好な風味であった
評点4:対照と比較してあまり変わらない
評点3:やや香味のバランスが良くなく、良好な風味ではなかった
評点2:香味のバランスが良くなく、良好な風味ではなかった
評点1:とても香味のバランスが良くなく、良好な風味ではなかった
【0037】
(3)ベース液A~Fの調製
表1に示す原料を混合して、高甘味度甘味料の種類が異なるベース液A~Fをそれぞれ得た。また、各ベース液に含まれるα-フェニルエチルアルコールは0.10ppb、アントラニル酸メチルは1.1ppbであった。
得られた各ベース液を、95℃瞬間殺菌にて殺菌して容器詰めにした。
なお、以下の試験例では、容器を開栓してから香気成分を添加し、その後、速やかに、官能評価を行った。
【0038】
【0039】
(4)試験例1:香気成分の比較
ベース液Aを用いて、表2、3に示す濃度となるようにα-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチル、酢酸スチラリル、酪酸フェニルエチルを配合して各飲料を調製し、得られた各飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、ベース液Aとした。結果を表2、3に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
(5)試験例2:香気成分の併用
ベース液Aに、α-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチルを表4に示す濃度となるように添加して、飲料を調製した。
得られた飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、ベース液Aとした。結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
(6)試験例3:ベース液の変更(ステビアの種類の変更)
ベース液Bを用いて、表5,6に示す濃度となるようにα-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチル、酢酸スチラリル、酪酸フェニルエチルを配合して各飲料を調製し、得られた各飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、ベース液Bとした。結果を表5,6に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
(7)試験例4:ベース液の変更(高甘味度甘味料の種類の変更)
ベース液C,D,Eを用いて、表7に示す濃度となるようにα-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチル、酢酸スチラリル、酪酸フェニルエチルを配合して各飲料を調製し、得られた各飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、ベース液C,D,Eそれぞれとした。結果を表7に示す。
【0048】
【0049】
(8)試験例5:甘味度の変更
酵素処理ステビア濃度を表8,9となるように変更した以外は、ベース液Aと同様に各原料を混合し、甘味度の異なるベース液a~gを調製した。なお、ベース液dと、ベース液Aとは実質的に同じものである。
つづけて、表8,9に示す濃度となるようにα-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチルを配合して各飲料を調製し、得られた各飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、各香気成分を配合する前の各ベース液a~gとした。結果を表8,9に示す。
【0050】
【0051】
【0052】
(9)試験例6:乳(脱脂粉乳)非含有
ベース液Fを用いて、表10に示す濃度となるようにα-フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチル、酢酸スチラリル、酪酸フェニルエチルを配合して各飲料を調製し、得られた各飲料について上記(1)の測定、上記(2)の官能評価を行った。対照は、ベース液Fとした。結果を表10に示す。
【0053】
【要約】
【課題】高甘味度甘味料含有飲料におけるショ糖らしい甘味の良さ、および後味の良さのバランスを向上させる技術を提供する。
【解決手段】本発明の高甘味度甘味料含有飲料は、アントラニル酸メチル濃度が0.01~40ppm及び/又はα-フェニルエチルアルコール濃度が0.01~40ppmである。
【選択図】なし