(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】フライホイールエネルギー貯蔵システムのための単極モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 19/18 20060101AFI20220623BHJP
H02K 19/02 20060101ALI20220623BHJP
H02K 7/02 20060101ALI20220623BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
H02K19/18
H02K19/02
H02K7/02
H02K7/14 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021133821
(22)【出願日】2021-08-19
(62)【分割の表示】P 2018568345の分割
【原出願日】2017-06-29
【審査請求日】2021-08-19
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515050068
【氏名又は名称】アンバー キネティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AMBER KINETICS, INC.
【住所又は居所原語表記】32920 Alvarado-Niles Rd.,Suite 250 Union City,CA 94587 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】サンダース セス
(72)【発明者】
【氏名】ホー マイク
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-106811(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116921(WO,A1)
【文献】特開2001-268822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/00- 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む単極モータ:
ハウジング;
前記モータのシャフトに取り付けられ、垂直軸の周りに前記シャフトとともに回転するロータ;
前記ロータを囲み、複数の極片を含むステータ、ここで、各極片と前記ロータとの間の空間が第1の放射状のエアギャップを形成している;
前記ハウジングに取り付けられ、前記第1のギャップに磁気的にエネルギーを与える磁束を発生させる固定界磁巻線;及び
間を置いて配置された頂部及び底部を含むフィールド結合器、ここで、前記頂部は前記ロータに取り付けられて前記ロータとともに回転し、前記底部は前記ハウジングに取り付けられて静止しており、ここで、前記フィールド結合器の前記間を置いて配置された頂部と底部との間の空間が第2の軸方向のエアギャップを形成しており、ここで、前記間を置いて配置された頂部の断面が上から下に向かって狭くなる少なくとも1個の下向き台形であり、前記間を置いて配置された底部の断面が下から上に向かって狭くなる少なくとも1個の上向き台形であり、ここで、前記台形のそれぞれが角度θを有する等脚台形であり、角度θが前記台形
の底辺とその2つの等しい長さの各辺の間にあり、ここで、θが実質的に75°及び85°の間であり、これによって、前記第2のエアギャップの表面積を増大させ、前記第2のエアギャップを交差する磁束密度を比例的に減少させる。
【請求項2】
請求項1に記載の単極モータであって、ここで、前記頂部及び前記底部の両方に少なくとも2個の連なった台形がある。
【請求項3】
請求項1に記載の単極モータであって、ここで、前記フィールド結合器の軸方向エアギャップ磁束密度はcos(θ)だけ減少する。
【請求項4】
請求項1に記載の単極モータであって、ここで、前記界磁巻線は、アルミニウム又は銅で形成されている。
【請求項5】
請求項1に記載の単極モータであって、ここで、前記界磁巻線は、絶縁されたアルミニウム又は銅で形成されている。
【請求項6】
請求項1に記載の単極モータであって、前記シャフトに取り付けられて前記シャフトとともに回転し、前記シャフトに取り付けられたフライホイールロータと、前記モータの前記ロータと、前記フィールド結合器の前記頂部と、を含むロータアセンブリをさらに含む。
【請求項7】
請求項6に記載の単極モータであって、ここで、前記ロータアセンブリは、前記ハウジング内に直接的に下降し、ステータ積層体と、前記複数の極片と、前記界磁巻線と、前記フィールド結合器の前記底部と、を含む組み立てられたステータアセンブリと結合するように構成される。
【請求項8】
請求項1に記載の単極モータであって、フライホイールロータと直接的に結合し、前記フライホイールロータとともに回転し、前記フライホイールロータと、前記モータの前記ロータと、前記フィールド結合器の前記頂部と、を含むロータアセンブリをさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールエネルギー貯蔵システムの主要な要素、モータ及びオルタネータとして機能する装置に関し、ここでは、単極モータと称する。
【背景技術】
【0002】
フライホイールエネルギー貯蔵システムは、フライホイールロータに運動エネルギーを貯蔵する。運動エネルギーは、ロータの角回転速度を加速させることによってロータに伝達される、又はロータに貯蔵される。逆もまた同様であり、ロータを減速させることによってエネルギーが取り出される。
【0003】
このようにして、本発明は、このような考慮などについてなされたものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、単極モータ及びそれとフライホイールロータとの機械的結合を対象にする。単極モータはロータを含み、さらなる軸受、シャフト、歯車、プーリなどが、フライホイールロータ及び単極モータのロータを結合するために必要とされない。
【0005】
単極モータは、ステータ積層体及び複数のステータ極片を有するステータを含む。複数の極片は、第1放射状ギャップを跨ってロータアセンブリへ磁束を発生させてトルクを発生させる。ロータアセンブリは、シャフトに結合されてシャフトとともに回転し、シャフトは、次に、フライホイールロータを回転させる。ロータアセンブリは、ロータ積層体スタック及びフィールド結合器を含む。フィールド結合器は、シャフトとともに回転する頂部及びハウジングに取り付けられて静止している底部を含む。フィールド結合器の静止した底部は、低磁気抵抗の磁路によってステータに磁気的に結合されている。この低磁気抵抗の磁路は、中実の鋼又は他の透磁性材料で構成されてもよい。さらに、この低磁気抵抗路は、単極モータのハウジング、フライホイールハウジング全体又は任意の組み合わせに組み込まれてもよい。
【0006】
単極モータは、フィールド結合器の2つの間を置いて置かれた部分の間のギャップを跨って磁束を発生させる界磁巻線をさらに含む。フィールド結合器の間を置いて置かれた部分によって形成されるギャップは、第2、又は補助ギャップと称する。
【0007】
特定の実施形態において、単極モータはロータ及びステータ要素に対してp極設計を有する。一実施形態において、ロータ積層体は4個のローブ及び8個の極を有し、ステータは12個の歯及び12個のスロットを有する。特定の実施形態において、各歯は極片として実現され、スロットは2個の隣接する極片の間の空間によって形成される。各極片はステータのセクタを形成し、各極片は巻線又はコイルをステータの積層セクタの周りに取り付けることによって形成される。
【0008】
特定の実施形態において、フィールド結合器の頂部の断面は、上から下に向かって狭くなる1個、2個又はそれ以上の連なった二等辺三角形として現れる。フィールド結合器の底部の断面は、フィールド結合器の頂部のそれとは逆となっており、すなわち下から上に向かって狭くなる同じサイズの1個、2個又はそれ以上の連なった三角形となっている。さらに、フィールド結合器の頂部及び底部の表面の間には、均一な第2ギャップがある。フィールド結合器の傾斜面及び結果としてそれらが形成するギャップは、界面ギャップの全体面積を増大させ、その結果、ギャップを置いて配置される表面を交差する磁束密度が比例的に減少する。磁束がギャップ表面に垂直な方向を向いているため、結果として生じる合力の軸方向成分はcos(θ)だけ減少する。ここで、θ(シータ)は二等辺三角形の底辺とその2つの等しい長さの各辺との間の角度である。
【0009】
一般に、結合器の下部表面の輪郭は、二等辺三角形に限定される必要はない。この選択は、多くの選択肢のうちの一の利便性のある形状である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
開示された実施形態は、詳細な説明、添付の請求の範囲及び付随の図面からより容易に明らかになる他の利点及び特徴を有している。図面の簡単な説明は以下のとおりである。
【0011】
【
図1】フライホイールエネルギー貯蔵システム(フライホイールユニットとも称する。)の一実施形態を示す簡略断面図である。
【0012】
【
図2(a)】単極モータの実施形態の要素を含む、
図1のフライホイールユニットの実施形態における回転要素を示す。
【0013】
【
図2(b)】フライホイールユニットを駆動するために用いられる単極モータの一実施形態を示す簡略断面である。
【0014】
【
図3(a)】単極モータのロータ及びステータの極構成の実施形態を示す。
【0015】
【
図3(b)】単極モータのステータからの極片の実施形態を示す。
【0016】
【
図4(a)】単極モータの界磁巻線及びフィールド結合器の非回転部分の実施形態の等角図である。
【0017】
【
図4(b)】単極モータの界磁巻線及びフィールド結合器の非回転部分の実施形態の断面図である。
【0018】
図面は、本発明の実施形態を、例示のみを目的として描写している。以下の説明から、当業者は、ここに例示された構造及び方法の代替の実施形態を、ここに記載された本発明の原理から逸脱することなく採用することができることを容易に理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
現代のフライホイールエネルギー貯蔵システムは、残留気体の抗力による摩擦損失を回避するために、真空外囲器内で動作する。そのため、真空外囲器内で電磁モータ/ジェネレータをエネルギー貯蔵ロータと一体化し、その一体化を可能な限りシームレスにすることが好ましい。例えば、ベルト、プーリ、歯車、長いシャフトなどを避けることが好ましい。電磁モータ/ジェネレータのロータがフライホイールロータに非常にしっかりと結合され、実質的なさらなる機械的結合要素を必要としないことが理想的である。
【0020】
ここに記載の一体型電磁モータ/ジェネレータは、いかなる所与のエネルギー貯蔵用途における要求に応じて、エネルギー貯蔵ロータを加速又は減速させるための電気的インタフェースを用いて動作する。
【0021】
フライホイールエネルギー貯蔵システムにおける使用に適したモータ/ジェネレータのタイプに対する一部の制約には、摩損に関連するライフサイクル危険及び真空環境の汚染を回避するように、スリップリング、ブラシ及び/又は整流子に関連する接触又は滑り接触の回避が含まれる。そのため、好ましい機械のタイプとしては、そのような滑り接点を含まない交流機が挙げられる。
【0022】
他の制約は、ロータに関連する許容損失に対するものである。ロータで損失する電力は、放射、密閉残留気体による弱い対流、又は存在する場合は機械的軸受による非常に限られた伝導によってハウジングに伝達されることのみができる。そのため、従来の交流誘導機はその固有のロータ損失のために、現代のフライホイールシステムにおいては一般的に使用されていない。フライホイールエネルギー貯蔵システムにおける従来の誘導機の使用が検討される場合もあるが、誘導機は、その固有のロータ損失及び上述の選択肢のうちの一部に対して比較的弱いロータ構造のために、通常、好ましくない。このように、ロータ損失は真空環境での作動に対する熱管理に関する問題を提示する。
【0023】
単極同期機(単極機、単極モータ、単極モータ及びジェネレータ、モータ及びオルタネータ又は単にモータ/オルタネータとも称する。)は、回転界磁巻線及び付随するスリップリングを有する従来の同期機タイプとは対照的に、固定界磁巻線を有する同期機である。そのため、単極機は、スリップリングの必要性並びに関連するライフサイクル及び汚染危険性をなくす。単極機は、従来の同期機と類似した動作特性を有するので、界磁巻線励磁及び関連する動作点の調整における全機能を有する。例えば、非常に低損失の待機惰性を達成するために、界励磁を消勢することができ、その結果、電磁損失が実質的にゼロになる。単極同期機は、無視できるほど低いロータ損失に対する設計が容易であるので、さらに有利である。
【0024】
さらに、界励磁は、各動作速度及び各動作電力レベルについて調整することができ、全体的なシステム効率を最適化するようにする。伝導、電磁コア損失(例えば鉄損)及び電力変換による損失は、各速度及び電力レベルにおいて全体的に最小限に抑えることができる。この調整レベルは、磁界強度が容易に調整されないために、永久磁石タイプの機械においては容易に実現されない。同期リラクタンス機は磁場調整を可能にするが、典型的には比較的低力率に限定される。
【0025】
単極同期機は、典型的に三次元の磁束経路を必要とする。磁界又は直流バイアス磁束は、ギャップ及び中実又は非中実の鋼透磁性磁路を通じて磁束を向ける固定界磁巻線によって影響を受ける。その目的は、能動ロータローブ及びステータの間のギャップに磁気的にエネルギーを与えるためである。各能動ロータローブはN極と考えることができ、これらのローブの間にある各谷はS極と考えることができる。この配置において磁束は一方向性であるため、この機械は単極と呼ばれる。一般性を失うことなく、逆界励磁に応じて、磁束経路が完全に反転することができることに留意されたい。直流界励磁の適用により、この機械は、従来の同期機の主な特徴を受け継ぐ。
【0026】
このタイプの機械のためのステータ巻線は、適切な極数を有する従来の三相パターンで配置することができ、ロータローブごとに2個の極を有することができる。ステータ巻線は、従来の歯-スロット配置を用いてスロット内に又はスロットレス配置で直接的にエアギャップ内に設置することができる。
【0027】
本発明は、単極同期機、単極モータ又は単極機の実施形態を含む。ここに記載の単極モータの主な適用は、フライホイールエネルギー貯蔵システムのためのものである。ただし、ここに記載の単極モータはそれに限定されず、他のエネルギー貯蔵システム及び他の機械にも使用することができる。
フライホイールエネルギー貯蔵システム
【0028】
図1は、一実施形態において、フライホイールハウジング110にパワーエレクトロニクスサブシステム又はパワーエレクトロニクスユニット120を搭載したフライホイールエネルギー貯蔵システム(フライホイールユニット100とも称する。)の一実施形態を示す簡略断面図である。フライホイールユニット100は、フライホイールロータアセンブリ130(単にフライホイールロータ130とも称する。)、モータ及びオルタネータ140(両機能は通常単一のサブシステムによって実行されるので、モータ/オルタネータ140とも称する。)、フライホイールハウジング110、パワーエレクトロニクスユニット120、交流又は直流である電力線150、及び制御線160を含む。例えば、電力線150は従来の三相60Hzの交流線であってもよい。一般的に、以下でフライホイールエネルギー貯蔵システム又はフライホイールユニットという用語は、単一のフライホイールハウジング110及びそれが収容する任意のロータ、モータ/オルタネータ及び他の要素とともに、
図1に示すようにフライホイールハウジング110に収容及び搭載されてもよいか、又はフライホイールハウジング110の内部に組み込まれるか又はフライホイールユニット100とは別に設けられてもよい他のパワーエレクトロニクス要素を指す。
【0029】
特定の実施形態において、パワーエレクトロニクスユニット120は、入力交流をモータ/オルタネータ140に許容可能な交流に変換するための電力変換器を含む電気部品を包囲して収容するパワーエレクトロニクスハウジング125を含む。あるいは、他の実施形態において、パワーエレクトロニクスユニット120は、モータ/オルタネータ140からの交流を直流出力に変換する。パワーエレクトロニクスユニット120は、フライホイールユニット100の通信、制御及び状態監視を行うために、必要に応じてセンサ、プロセッサ、メモリ、コンピュータ記憶装置及びネットワークアダプタを含んでもよい。センサは、多軸加速度計、ジャイロ、近接センサ、温度センサ、歪検出素子などを含んでもよい。パワーエレクトロニクス120は、交流又は直流である電力線150を介して電力を取り込みかつ供給する。特定の実施形態において、パワーエレクトロニクス120は、制御信号を送受信するための制御線120を有する。制御線160は、イーサネットケーブルなどの物理的ケーブルであってもよく、あるいはWIFI又はBLUETOOTHなどの無線通信リンクを介して通信してもよい。
【0030】
モータ/オルタネータ140は、電気的及び機械的エネルギーを変換し、エネルギーがフライホイール130に貯蔵され、又はフライホイール130から引き出されることができる。モータ/オルタネータ140は、モータ及びオルタネータの機能を兼ね備えているので、モータ及びオルタネータ140とも称されることがある。モータ/オルタネータ140は、例えば、支持軸受にも接続されるスタブシャフトによってフライホイールロータ130に直接的に又は間接的に結合する。モータ/オルタネータ140は、フライホイールハウジング110を通じて真空フィードスルーを通常貫通するワイヤ又は他の電気結合を介して、パワーエレクトロニクスユニット120に結合される。
【0031】
フライホイールハウジング110は、単一のフライホイールロータ130及び単一のモータ/オルタネータ140を囲んでいるように示されているが、他の実施形態においては単一のハウジングが複数のロータ及びモータ/オルタネータを囲んでいてもよい。
フライホイールロータとモータ/オルタネータの一体化
【0032】
図2(a)は、単極モータ200(
図2(b)に図示)のフライホイールロータ130、シャフト210及びロータアセンブリ205の機械的結合の一実施形態を示している。単極モータ200は、モータ/オルタネータ140の一実施形態である。この配置では、さらなる軸受、シャフト、歯車、プーリなどが2個のロータを結合するために必要とされない。この実施形態において、シャフト210はロータ130に取り付けられたスタブシャフトとして示される。他の実施形態において、シャフト210はスタブシャフト構成を用いず、ロータ130から直接的に出てもよく又は他の方法で接続されてもよい。本発明で使用され得るスタブシャフトの実施形態は、2015年7月28日付の米国特許出願第2016/0061289号に記載されており、その全体の内容がここに組み込まれる。特定の実施形態において、単極モータ200はフライホイールロータに直接的に結合する。このような実施形態において、シャフトはフライホイールロータ130をロータアセンブリ205に結合するために必要とされない。
【0033】
図2(b)は、単極モータ200の一実施形態を示す簡略断面図である。単極モータ200は、スタブシャフトとして示されるシャフト210にトルクを与える。
【0034】
単極モータは、ステータ積層体スタック240及び複数のステータ極片242(以後、極片242と称する。)を含むステータを含む。極片242は、第1の又は主な放射状ギャップ1を跨ってロータアセンブリ205へ磁束を案内して(又は向けて)トルクを発生させる。ロータアセンブリ205は、シャフト210に結合されてシャフト210とともに回転し、シャフト210は、次に、フライホイールロータ130を回転させる。ロータアセンブリ205は、ロータ積層体スタック250及びフィールド結合器230の頂部(フィールド結合器230Aと称する。)を含む。フィールド結合器230の底部(フィールド結合器230Bと称する。)は、ハウジング260に取り付けられて静止している。ロータ積層体スタック250(ロータ積層体250とも称する。)は、交流過電流を遮蔽する同一の鋼積層のスタックから形成される。あるいは、ロータ積層体250は中実の鋼から形成されてもよい。
【0035】
単極モータ200は、フィールド結合器230の2個の間を置いて配置される部分、すなわちシャフト210とともに回転するフィールド結合器230Aの頂部及び静止しているフィールド結合器230Bの底部の間のギャップ(総じてギャップ2と称する。)を跨って磁束を発生させる界磁巻線220をさらに含む。フィールド結合器230は、その固定部分230Aからその回転部分230Bまで、界磁巻線220によって発生した磁束の経路を提供する。
【0036】
特定の実施形態において界磁巻線220は、絶縁され、又は陽極酸化された、薄いアルミニウム又は銅のコイルによって形成される。これにより、低抵抗の電気伝導体が提供される。
【0037】
単極モータ200は、フライホイールロータ130とともに、フライホイールロータ130、シャフト210、ロータ積層体250及びフィールド結合器230Aの頂部を含む組み立てられたロータアセンブリ205をフライホイールハウジング110内に下降させることで、支障なく容易に組み立てられる。フィールド結合器230並びにギャップ1及び2は、この簡単な組み立てステップを妨げず又は何ら干渉しない。フライホイールロータがフライホイールハウジング内に挿入された後は、回転群に組み立てるステップは必要なくなる。
P極設計
【0038】
図3(a)及び
図3(b)は、単極モータ200のロータ及びステータ要素のためのp極設計の実施形態を示している。
【0039】
図3(a)は、4個のローブ及び8個の極を有するロータ並びに12個の歯及び12個のスロットを有する対応するステータの実施形態を示す。単極モータ200において、各歯は極片242として用いられ、スロット244は2個の隣接する極片242の間の空間によって形成される。各極片242は、ステータ240のセクタを含む。各極片242は、巻線又はコイルをステータの積層セクタの周りに取り付けることによって形成される。
【0040】
図3(a)の構成は、ステータのスロット又は歯の数と、ロータの極数との間に3/2の関係を有するp極設計であり、すなわち、pが極数である場合、スロットの数は3/2×pである。各歯は、ステータコイルを有しており、ロータ極の2/3に効果的に広がり、強い基本的な鎖交磁束機能を提供するが、最小限の導体エンドターン長を必要とする。さらに、個々のコイルは重なっていないので、巻線は、その場で、又は個々の独立した歯部に製造することが非常に容易である。
【0041】
スロットの数、すなわち極片及び極、pには、いくつかのとり得る選択肢がある。いくつかの簡単な規定に従う必要がある:(1)スロットの数、すなわち極片の数は、均衡のとれた方法で三相発電を調整するために、3の倍数でなければならない;(2)好適な選択肢は、スロットの数に近いが等しくないpを有することが多い;極は対となっているので、pは偶数の整数である。
図3(a)に示す構成は、12個のスロット及び8個の極を有するが、3/2の比率は必須条件ではない。例えば、他の有効な選択肢として、12個のスロット及び10個の極、12個のスロット及び14個の極が挙げられる。
【0042】
図3(b)は、単極モータ200のステータからの1個のステータ極片242の実施形態を示している。極片242は、ギャップ1を跨ってロータ積層体250及びロータローブ252を含むロータへ磁束を向ける。この構成は、コスト及び効率の面で、ステータ導体の使用を最適化する。特に、巻回構成は、従来のマルチスロット巻線と比べて比較的短いエンドターンを有する。これは、短いスタック長による実施にとって重要である。また、重ならない巻線は製造を簡単にし、エンドターン長をさらに短くする。
【0043】
別の構成では、単一の一体型ステータ積層体を用いて、各歯に巻線を取り付けて、ステータを製造してもよい。
直流フィールド磁束の経路
【0044】
図4(a)及び
図4(b)は、主な能動ロータ-ステータギャップ1にエネルギーを与えるために補助結合器ギャップ2を形成するフィールド結合器230の実施形態を示している。ギャップ2は、強磁束密度、実質的なMMFの減少、磁力及び付随する負磁気剛性に潜在的に関連するので、いくつかの問題を呈する。
図4(a)及び
図4(b)に示す、主なロータギャップ1にエネルギーを与えるために用いられ、フィールド結合器230とも称される補助結合器の一実施形態は、これらの問題を実質的に解決する。
【0045】
図4(a)は、界磁巻線220及びフィールド結合器230の底部の非回転部分(フィールド結合器230Bと称する。)の実施形態を示す等角図である。
【0046】
図4(b)は、界磁巻線、フィールド結合器230の下部であり非回転部分であるフィールド結合器230Aと、フィールド結合器230の頂部又は上部であり回転部分であるフィールド結合器230Bの実施形態を示す断面図である。図に示すように、フィールド結合器230は、2個の間を置いて配置された部分、すなわち頂部のフィールド結合器230A及び底部のフィールド結合器23Bを有する。頂部フィールド結合器230Aの断面は、上から下に向かって狭くなる1個又は2個以上の連なった二等辺三角形として現れる。底部フィールド結合器230Bの断面は、頂部フィールド結合器230Bのそれとは逆になっており、すなわち、下から上に向かって狭くなる同じサイズの1個又は2個以上の連なった二等辺三角形として現れる。さらに、特定の実施形態において、頂部フィールド結合器230A及び底部フィールド結合器230Bの表面の間のギャップ、すなわちギャップ2は、均一な距離を有する。
【0047】
フィールド結合器230の断面は、上下2個の互いに間を置いて離間された二等辺三角形として示されているが、特定の実施形態において1個の三角形又は2個より多くの三角形を使用してもよい。さらに、特定の実施形態において、三角形は二等辺三角形でなくてもよい。さらに、長方形又は他の四辺形のような、三角形でない他の幾何学的形状を使用してもよい;一般的な要件は、頂部フィールド結合器230A及び底部フィールド結合器230Bの断面形状の間の噛み合いパラーンである。
【0048】
フィールド結合器230は、その傾斜面に垂直に磁束を向ける。この手法はギャップ2の全体面積を増大させ、その結果、ギャップ表面を交差する磁束密度が比例的に減少する。これにより、磁気飽和及び境界面に垂直な磁気吸引力に関する問題が軽減する。この実施形態において、ギャップ2における全体の磁束強度はcos(θ)だけ減少する。ここで、θはフィールド結合器230の内部表面が水平面となす角度であり、すなわち、
図4(b)に示すように、二等辺三角形の底辺及びその2つの等しい長さの各辺の間の角度である。次いで、磁束はギャップ2の表面に垂直な方向に向けられるため、結果として生じる総力の軸方向成分はcos(θ)だけ減少する。大きな変動軸力がフライホイール軸受及び懸架システムにとって課題となることに留意されたい。この構成により、フィールド結合器のギャップ磁束密度はcos(θ)だけ減少し、その結果、表面に垂直な引力密度(磁気応力)はcos
2(θ)だけ減少する。力は主軸方向に対して斜めに向けられているので、さらにcos(θ)だけ減少する。したがって、フィールド結合器230の表面積は1/cos(θ)だけ増大し、正味の軸力はcos
2(θ)だけ減少し、これにより磁気飽和の確率が実質的に減少する。
【0049】
最も好ましい実施形態においては、角度θは75及び85°の間である。他の実施形態において、30及び90°の間の角度を用いてもよい。
さらなる構成考慮
【0050】
本開示を読むにあたって、当業者は、ここに開示された原理を通じてさらに付加的な代替の構造的及び機能的設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態及び用途を例示し、かつ記載したが、開示された実施形態は、本明細書に開示された正確な構成及び要素に限定されないことを理解されたい。添付の請求の範囲に規定された趣旨及び範囲から逸脱することなく、ここに開示された方法及び装置の配置、動作及び詳細において、当業者にとって自明な様々な修正、変更及び変形がなされ得る。