(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】担持触媒粒子
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20220623BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220623BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220623BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B01J23/46 311A
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2021501891
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005392
(87)【国際公開番号】W WO2020175142
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2019035818
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】河村 省梧
(72)【発明者】
【氏名】相川 智将
(72)【発明者】
【氏名】内藤 功
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】島野 紀道
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/202949(WO,A1)
【文献】特開2017-200674(JP,A)
【文献】特開2010-215534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323785(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102728356(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104801316(CN,A)
【文献】特開2008-031554(JP,A)
【文献】特開2015-042403(JP,A)
【文献】特表2018-502982(JP,A)
【文献】特開2019-111511(JP,A)
【文献】VLAIC, G. et al,Journal of Catalysis,2000年02月15日,Vol.190,pp.182-190,<DOI:10.1006/jcat.1999.2731>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 ー 38/74
B01D 53/94
F01N 3/10
F01N 3/28
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物担体粒子、及び前記酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有し、
前記酸化物担体粒子が、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の金属の酸化物の粒子であり、
前記貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択され、
前記貴金属粒子の質量が、前記酸化物担体粒子の質量を基準として5質量%以下であり、
透過型電子顕微鏡観察により測定された前記貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり
、標準偏差σが
0.2nm以上0.8nm以下であり、
粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、前記貴金属粒子の全質量に対して5質量%以下であり、かつ、
排ガス浄化触媒として用いられる、
担持触媒粒子。
【請求項2】
前記貴金属粒子の粒径の標準偏差σが0.6nm以下である、請求項1に記載の担持触媒粒子。
【請求項3】
前記貴金属粒子の平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、かつ粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、前記貴金属粒子の全質量に対して
4質量%以下である、請求項1又は2に記載の担持触媒粒子。
【請求項4】
前記貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム及び白金から選択され、かつ
前記貴金属粒子の質量が、酸化物担体粒子の質量を基準として1.0質量%以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の担持触媒粒子。
【請求項5】
液状媒体、及び前記液状媒体中に分散されている貴金属粒子前駆体を含有する貴金属粒子前駆体分散液であって、
前記貴金属粒子前駆体が貴金属の水酸化物であり、
動的光散乱法によって測定した前記貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)が1.4nm以上2.9nm以下であり、
前記貴金属粒子前駆体分散液を、アルミナと接触させた後、焼成して、前記アルミナ、及び前記アルミナ上の貴金属粒子を有し、前記貴金属粒子の質量が前記アルミナの質量を基準として5質量%以下である担持触媒粒子を製造したときに、
前記担持触媒粒子の透過型電子顕微鏡観察により測定された前記貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが
0.2nm以上0.8nm以下である、
貴金属粒子前駆体分散液。
【請求項6】
前記担持触媒粒子中の前記貴金属粒子の平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、かつ粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、前記貴金属粒子の全質量に対して5質量%以下である、請求項5に記載の貴金属粒子前駆体分散液。
【請求項7】
前記貴金属粒子前駆体が、貴金属の水酸化物である、請求項5又は6に記載の貴金属粒子前駆体分散液。
【請求項8】
酸化物担体粒子、及び前記酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有する担持触媒粒子の製造方法であって、
前記酸化物担体粒子を、請求項5~7のいずれか一項に記載の貴金属粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することを含む、
担持触媒粒子の製造方法。
【請求項9】
前記貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択される、請求項8に記載の担持触媒粒子の製造方法。
【請求項10】
前記酸化物担体粒子が、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の金属の酸化物の粒子である、請求項8又は9に記載の担持触媒粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持触媒粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化触媒、燃料電気電極用触媒等は、担体上に、触媒活性を有する貴金属が微粒子として担持された担持触媒の形態で使用されることが多い。
【0003】
このような担持触媒では、高価な貴金属の有効利用を図る観点からは、貴金属粒子の粒径を小さくして、表面積を大きくすることが望まれる。一方で、貴金属粒子の粒径が過度に微細であると、触媒反応中に粒子の凝集が生じ易くなり、触媒活性及び触媒寿命を損なうことがある。
【0004】
したがって、担持触媒では、担持されている貴金属粒子の粒径を所望の範囲に制御することが重要である。
【0005】
担持触媒粒子を製造する簡易な方法として、担体を貴金属塩水溶液中に含浸させた後、乾燥及び焼成して貴金属塩を分解し、貴金属粒子として担体上に担持させる方法が知られている。この方法によると、貴金属粒子は、平均粒径が1.0nm未満と小さく、かつ粒径分布が広い粒子として生成される傾向にあり、貴金属粒子の粒径制御は困難である。
【0006】
一方、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程と、を含む触媒の製造方法が開示されている。この特許文献1の実施例には、酸化物担体上に、触媒全体に対して、5~15質量%のPt、10質量%のPd、又は10質量%のRhを担持したときの貴金属粒子の粒径を、2.8以上3.8nm以下の範囲に制御することができたと説明されている。
【0007】
また、特許文献2には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させた貴金属担持触媒に対して、アルコール系還元剤を作用させて小粒径の貴金属微粒子を肥大化させ、該貴金属微粒子の最小粒径を1nm以上にする工程を有する、触媒の製造方法が開示されている。この特許文献2の実施例には、酸化物担体上にPt又はPdを担持したときの貴金属粒子の粒径を、3.0nm以上4.1nm以下に制御できたと説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】特開2007-38085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、貴金属粒子の担持量が比較的少なく、かつ貴金属粒子の平均粒径が比較的小さい貴金属担持触媒において、貴金属粒子の粒径分布が制御され、微細及び粗大な貴金属粒子の存在割合が小さい、担持触媒粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下のとおりである。
【0011】
《態様1》
酸化物担体粒子、及び上記酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有し、
上記貴金属粒子の質量が、上記酸化物担体粒子の質量を基準として5.0質量%以下であり、
透過型電子顕微鏡観察により測定された上記貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である、
担持触媒粒子。
《態様2》
上記貴金属粒子の粒径の標準偏差σが0.6nm以下である、態様1に記載の担持触媒粒子。
《態様3》
上記貴金属粒子の平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、かつ粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、上記貴金属粒子の全質量に対して5.0質量%以下である、態様1又は2に記載の担持触媒粒子。
《態様4》
上記貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択される、態様1~3のいずれか一項に記載の担持触媒粒子。
《態様5》
上記貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム及び白金から選択され、かつ
上記貴金属粒子の質量が、酸化物担体粒子の質量を基準として1.0質量%以下である、
態様4に記載の担持触媒粒子。
《態様6》
上記酸化物担体粒子が、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の金属の酸化物の粒子である、態様1~5のいずれか一項に記載の担持触媒粒子。
《態様7》
液状媒体、及び上記液状媒体中に分散されている貴金属粒子前駆体を含有する貴金属粒子前駆体分散液であって、
動的光散乱法によって測定した上記貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)が1.4nm以上2.9nm以下であり、
上記貴金属粒子前駆体分散液を、アルミナと接触させた後、焼成して、上記アルミナ、及び上記アルミナ上の貴金属粒子を有し、上記貴金属粒子の質量が上記アルミナの質量を基準として5.0質量%以下である担持触媒粒子を製造したとき、
上記担持触媒粒子の透過型電子顕微鏡観察により測定された上記貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である、
貴金属粒子前駆体分散液。
《態様8》
上記担持触媒粒子中の上記貴金属粒子の平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、かつ粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、上記貴金属粒子の全質量に対して5.0質量%以下である、態様7に記載の貴金属粒子前駆体分散液。
《態様9》
上記貴金属粒子前駆体が、貴金属の水酸化物である、態様7又は8に記載の貴金属粒子前駆体分散液。
《態様10》
態様1~6のいずれか一項に記載の担持触媒粒子の製造方法であって、
上記酸化物担体粒子を、態様7~9のいずれか一項に記載の貴金属粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することを含む、
担持触媒粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、貴金属粒子の担持量が比較的少なく、かつ貴金属粒子の平均粒径が比較的小さい貴金属担持触媒において、貴金属粒子の粒径分布が制御され、微細及び粗大な貴金属粒子の存在割合が小さい、担持触媒粒子が提供される。
【0013】
本発明の担持触媒粒子は、例えば、自動車等の排ガスを浄化するための排ガス浄化触媒として、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1及び2、並びに比較例2で得られたロジウム担持触媒粒子上のロジウム粒子の粒径分布(累積頻度)を示すグラフである。
【
図2】
図2(a)は、実施例1で得られたロジウム担持触媒粒子のSTEM像であり、
図2(b)は、比較例2で得られたロジウム担持触媒粒子のSTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の担持触媒粒子は、
酸化物担体粒子、及び酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有し、
貴金属粒子の質量が、酸化物担体粒子の質量を基準として5.0質量%以下であり、
透過型電子顕微鏡観察により測定された貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である。
【0016】
本発明の担持触媒粒子は、貴金属粒子の担持量が比較的少なく、貴金属粒子の平均粒径が比較的小さく、かつ粒径分布が狭い。
【0017】
本発明の担持触媒粒子は、担持されている貴金属粒子の平均粒径が小さいから、貴金属粒子の担持量が少なくても有意に大きな比表面積を示し、高い触媒活性を発揮することができる。
【0018】
本発明の担持触媒粒子は、貴金属粒子の粒径分布が狭く、粗大粒子及び微細粒子の割合が少ない。粗大な貴金属粒子は、有効表面積が小さく、触媒活性に劣ると考えられる。したがって、粗大な貴金属粒子の割合が少ない本発明の担持触媒粒子は、高い触媒活性示すことができる。一方、微細な貴金属粒子は、触媒反応中に凝集して粗大化し、触媒活性が損なわれると考えられる。したがって、微細な貴金属粒子の割合が少ない本発明の担持触媒粒子は、高い触媒活性を長期間維持することができる。
【0019】
このような本発明の担持触媒粒子は、例えば、酸化物担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御された貴金属粒子前駆体を含有する貴金属粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することを含む、担持触媒粒子の製造方法によって製造することができる。
【0020】
本発明の担持触媒粒子の製造方法によると、焼成によって貴金属粒子となる貴金属粒子前駆体が、予め所定の粒径分布を持つように制御されているから、担持触媒粒子における貴金属粒子の粒径及びその分布を、容易かつ確実に制御することができる。
【0021】
上記のような制御された粒径分布を持つ貴金属粒子前駆体を含有する貴金属粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させることを含む、貴金属粒子前駆体分散液の製造方法(方法1)、及び
(2)貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理することを含む、貴金属粒子前駆体分散液の製造方法(方法2)。
【0022】
方法1は、貴金属粒子前駆体を製造するために、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液とを反応させるときに、反応場のクリアランスを所定の範囲に設定することによって、得られる貴金属粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御する方法である。
【0023】
方法2は、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液との反応によって、大粒径の粒子として生成した貴金属粒子前駆体に、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後の貴金属粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御する方法である。
【0024】
なお、本明細書における担持触媒粒子、酸化物担体粒子、及び貴金属粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察において撮影した画像を元に、直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られた個数平均粒子径である。本明細書において、透過型電子顕微鏡(TEM)は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を含む概念である。
【0025】
貴金属粒子前駆体分散液中の貴金属粒子前駆体の粒径は、動的光散乱測定によって得られた粒径分布において、累積相対度数が50%となる粒径である。この粒径は、「メジアン径」、「D50」等とも呼ばれる。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
《担持触媒粒子》
本発明の担持触媒粒子は、
酸化物担体粒子、及び酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有し、
貴金属粒子の質量が、酸化物担体粒子の質量を基準として5.0質量%以下であり、
透過型電子顕微鏡観察により測定された貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である。
【0028】
〈酸化物担体粒子〉
本発明の担持触媒粒子における酸化物担体粒子は、例えば、金属の酸化物の粒子であってよい。この金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族、及び13族から選択される1種又は2種以上の金属であってよい。酸化物担体粒子が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物であってよく、2種以上の金属を含む複合酸化物であってよく、又は1種若しくは2種以上の金属酸化物と、1種若しくは2種以上の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0029】
酸化物担体粒子を構成する金属酸化物は、具体的には例えば、スカンジウム、イットリウム、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ルテチウム、チタニウム、ジルコニウム、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはチタニウム、ジルコニウム、セリウム、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の金属の酸化物である。
【0030】
酸化物担体粒子の粒径は、目的に応じて、当業者によって適宜に設定されてよい。
【0031】
〈貴金属粒子〉
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子は、酸化物担体粒子上に担持されている。
【0032】
(貴金属)
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子を構成する貴金属は、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択される1種又は2種以上であってよい。貴金属粒子が2種以上の貴金属から構成されるとき、各単体の貴金属の粒子を含んでいてよく、2種以上の貴金属の合金粒子であってよく、又は1種若しくは2種以上の単体の貴金属の粒子と、1種若しくは2種以上の合金粒子とを含んでいてもよい。
【0033】
(貴金属粒子の担持量)
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準とする貴金属粒子の質量割合として、5.0質量%以下である。貴金属粒子の担持量を5.0質量%以下に制限することにより、担持触媒粒子の製造コストを削減することができる。一方で、貴金属粒子の平均粒径を本発明所定の1.0nm以上2.0nm以下に調整することにより、貴金属粒子の表面積を十分に高くすることができるから、貴金属粒子の担持量が5.0質量%以下に制限されても、高度の触媒活性が発現される。貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準とした貴金属粒子の質量割合として、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.7質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下であってよい。
【0034】
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子の担持量は、高い触媒活性を確保する観点から、酸化物担体粒子の質量を基準とする貴金属粒子の質量割合として、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、又は0.8質量%以上であってよい。
【0035】
貴金属のうちのロジウム又は白金は、例えば排ガス浄化触媒に適用したときに、非常に高い触媒活性を示す。したがって、本発明の担持触媒粒子が、ロジウム及び白金から選択される貴金属の粒子を含むとき、その担持量は比較的少なくてよい。この観点から、本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子を構成する貴金属が、ロジウム及び白金から選択されるとき、該貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準として、1.0質量%以下であってよく、0.7質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下であってもよい。この場合、貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準として、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってよい。
【0036】
一方、パラジウムは、例えば排ガス浄化触媒に適用したときに、有意に高い触媒活性を示すためには、一定の担持量が確保されることを要する。この観点から、本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子を構成する貴金属がパラジウムを含むとき、該貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準として、0.3質量%以上であってよく、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、又は0.8質量%以上であってもよい。この場合、貴金属粒子の担持量は、酸化物担体粒子の質量を基準として、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってよい。
【0037】
(貴金属粒子の粒径)
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子について、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径(数平均粒子径)は、1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ粒径分布の標準偏差σは0.8nm以下である。貴金属粒子の平均粒径を1.0nm以上とすることにより、触媒反応中に凝集する粒径1.0nm未満の微細粒子の割合を低減することができ、担持触媒粒子の高活性を長期間維持することができる。金属粒子の平均粒径を2.0nm以下とすることにより、貴金属粒子の表面積を大きくすることができ、触媒活性を高くすることができる。金属粒子の平均粒径は、1.1nm以上又は1.2nm以上であってもよく、2.0nm未満、1.9nm以下、又は1.8nm以下であってもよい。
【0038】
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子について、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒径の標準偏差σは、0.8nm以下である。本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子は、粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるから、粒径分布がシャープであって、微細粒子及び粗大粒子の含有割合が低い。微細な貴金属粒子が少ないことにより、触媒反応中の貴金属粒子の凝集が抑制され、長寿命の触媒が得られる。粗大な貴金属粒子が少ないことにより、貴金属粒子の表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0039】
貴金属粒子の粒径の標準偏差σは、0.7nm以下、0.6nm以下、又は0.5nm以下であってもよい。貴金属粒子の粒径は単分散であってもよいが、標準偏差σが概ね0.2nm以上、0.3nm以上、又は0.4nm以上であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0040】
本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子は、特に粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が少ないことにより、貴金属粒子の触媒反応中の凝集が抑制されるから、担持触媒粒子の高活性を長期間維持することができる。本発明の担持触媒粒子では、粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、貴金属粒子の全質量に対して、5質量%以下である。この値は、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.1質量%以下であってよく、これを全く含まなくてもよい。
【0041】
本発明の担持触媒粒子おける貴金属粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定したときに、典型的には、平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、かつ粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合が、貴金属粒子の全質量に対して5.0質量%以下であってよい。
【0042】
《担持触媒粒子の製造方法》
本発明の担持触媒粒子は、例えば、所望の酸化物担体粒子を、所定の貴金属粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することを含む、担持触媒粒子の製造方法によって製造されてよい。
【0043】
〈貴金属粒子前駆体分散液〉
本発明の担持触媒粒子の製造方法に用いられる貴金属粒子前駆体分散液は、
液状媒体、及び液状媒体中に分散されている貴金属粒子前駆体を含有する貴金属粒子前駆体分散液であって、
動的光散乱法によって測定した貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)が1.4nm以上2.9nm以下であり、
貴金属粒子前駆体分散液を、アルミナと接触させた後、焼成して、アルミナ、及びアルミナ上の貴金属粒子を有し、貴金属粒子の質量が前記アルミナの質量を基準として5.0質量%以下である担持触媒粒子を製造したときに、
担持触媒粒子の透過型電子顕微鏡観察により測定された貴金属粒子の平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、かつ標準偏差σが0.8nm以下である、
貴金属粒子前駆体分散液である。
【0044】
このような、仮想の担持触媒粒子における貴金属粒子は、本発明の担持触媒粒子における貴金属粒子と同じであってよく、したがってその平均粒径は1.2nm以上1.8nm以下であってよく、粒径1.0nm未満の貴金属粒子の存在割合は、貴金属粒子の全質量に対して5.0質量%以下であってよい。
【0045】
本発明における貴金属粒子前駆体分散液は、制御された粒径分布の貴金属粒子前駆体を含有する。貴金属粒子前駆体分散液中の貴金属粒子前駆体の粒径及び粒径分布は、例えば、動的光散乱法によって、一応、測定することができる。動的光散乱法によって測定した貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)は、例えば、1.4nm以上、1.6nm以上、1.8nm以上、又は2.0nm以上であってよく、例えば、2.9nm以下、2.8nm以下、2.7nm以下、2.6nm以下、2.5nm以下、又は2.4nm以下であってよい。
【0046】
本発明における貴金属粒子前駆体分散液は、含有される貴金属粒子前駆体の粒径分布が制御されている。具体的には、貴金属粒子前駆体分散液を、アルミナと接触させた後、焼成して、アルミナ、及びアルミナ上の貴金属粒子を有し、貴金属粒子の質量が前記アルミナの質量を基準として5.0質量%以下である担持触媒粒子を製造したときに、粒径1.0nm未満の微細な貴金属粒子を形成する微細な貴金属粒子前駆体、及び、触媒活性に劣る大粒径の貴金属粒子を形成する大粒径の貴金属粒子前駆体の存在割合が低減されている。
【0047】
動的光散乱法では、貴金属粒子前駆体分散液中の貴金属粒子前駆体の平均粒径(メジアン径)を測定することは可能である。しかしながら、動的光散乱法では、貴金属粒子前駆体分散液中の貴金属粒子前駆体が制御された粒径分布を有することの検証は容易ではない。特に、1.0nm以下の小粒径領域の分解能には限界があるため、小粒径領域の分布曲線において、本発明の貴金属粒子前駆体分散液と、従来技術の前駆体分散液とを峻別することは、困難である。したがって、本発明における貴金属粒子前駆体分散液を従来技術における前駆体分散液と区別するためには、上記のような仮想の担持触媒粒子における貴金属粒子の粒径及び粒径分布によって特定するか、又は後述の製造方法によって特定することが適当であると考えられる。
【0048】
本発明における貴金属粒子前駆体分散液に含まれる貴金属粒子前駆体は、貴金属の水酸化物であってよい。この貴金属の水酸化物とは、貴金属イオンがその電荷数と等しい数の水酸基と結合した典型的な場合の他、一部に貴金属-貴金属結合を含んでいてもよく、一部に貴金属-酸素原子-貴金属結合を含んでいてもよく、又は一部に貴金属-有機基結合を含んでいてもよい。
【0049】
本発明における貴金属粒子前駆体分散液における分散媒は、好ましくは水性媒体であり、水、又は水と水性有機溶媒との混合物であってよく、典型的には水であってよい。
【0050】
〈貴金属粒子前駆体分散液の製造方法〉
本発明の担持触媒粒子の製造方法に用いられる貴金属粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造されてよい。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させることを含む方法(方法1)、又は
(2)貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理することを含む方法(方法2)。
【0051】
(反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器)
方法1は、貴金属粒子前駆体を製造するために、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液とを反応させるときに、反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器を用いることにより、得られる貴金属粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御する方法である。
【0052】
この反応器は、例えば、適当なクリアランス設定部材を有していてよく、これによって反応場のクリアランスが所定の範囲に設定されていてよい。
【0053】
このような反応場に、貴金属化合物の酸性溶液、及び塩基性溶液を導入して反応させる。導入された貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とは、所定のクリアランスの反応場で反応した後に、反応場から排出される。ここで、反応場のクリアランスは一定値に設定されているから、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液との反応によって不溶分が生成した場合、当該不溶分の粒径は、反応場のクリアランスによって制限されて、過度に成長することが抑制される。
【0054】
本発明の貴金属粒子前駆体分散液の製造方法のうちの方法1では、貴金属化合物(例えば貴金属の無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば含窒素有機化合物の水溶液)とを反応させる際に、このような反応器を用いることにより、得られる分散体中に含まれる貴金属粒子前駆体(例えば貴金属の水酸化物)の粒径を、所望の範囲に制御するのである。
【0055】
反応器が有するクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。
【0056】
クリアランス調節部材が2枚の平板である場合、所定の間隔を開けてこれら2枚の平板を配置することにより、2枚の平板の間隙が反応場となり、2枚の平板間の距離が反応場のクリアランスとなる。平板の少なくとも一方にスリットを形成してもよい。反応中、これら2枚の平板を、相対的に回転又は平行移動させてもよい。平板の平面形状は問わず、例えば、矩形、円形(ディスク状)、多角形状等の任意の形状であってよい。
【0057】
クリアランス調節部材が平板と波状板との組み合わせである場合、これらを互いに接して配置することにより、波状板の凹部が反応場となり、該凹部の深さが反応場のクリアランスとなる。反応中、平板と波状板とを、相対的に回転又は平行移動させてもよい。平板及び波状板の平面形状は問わず、例えば、矩形、円形(ディスク状)、多角形状等の任意の形状であってよい。
【0058】
クリアランス調節部材が細管である場合、該細管の内部が反応場となり、該細管の内径が反応場のクリアランスとなる。
【0059】
反応場のクリアランスは、例えば、1μm以上、2μm以上、4μm以上、6μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30μm以上であってよい。この反応場のクリアランスは、例えば、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0060】
反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器としては、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクター等を挙げることができる。反応器としては、市販品を使用してよい。
【0061】
(高速ミキサー)
方法2は、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液との反応によって、大粒径粒子として生成した貴金属粒子前駆体に、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後の貴金属粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御する方法である。
【0062】
高速ミキサーを用いる方法では、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液との反応によって生成した、貴金属粒子前駆体の粒子を含む反応液を、ミキサーの撹拌槽内に導入する。そして、反応液を高速で撹拌する。すると反応液中に含まれる貴金属粒子前駆体の粒子は、遠心力によって容器内壁に押し付けられ、容器内壁に対する相対的な移動が抑制される。しかし、反応液中の溶媒(分散媒)は、撹拌操作による移動を続け、液流として回転を継続するから、この回転する液流によって容器内壁に押し付けられた貴金属粒子前駆体の粒子に強い応力が加えられる。大粒径の貴金属粒子前駆体粒子は、この応力の強い剪断力によって分散され、本発明所定の平均粒径及び粒径分布を持つように制御されるのである。
【0063】
高速ミキサーとしては、例えば、周速が6m/sec以上の高速ミキサー等を用いることができる。高速ミキサーとしては、市販品を使用してよい。
【0064】
〈貴金属化合物の酸性溶液〉
方法1及び2で用いられる貴金属化合物の酸性溶液は、貴金属化合物が適当な溶媒中に溶解された溶液であってよい。
【0065】
貴金属化合物は、所望の貴金属の無機酸塩であってよく、具体的には例えば、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択される貴金属の、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩等であってよい。
【0066】
貴金属化合物の酸性溶液における溶媒は、所望の貴金属粒子前駆体分散液における分散媒と同じであってよい。
【0067】
貴金属化合物の酸性溶液のpHは、7.0未満であり、例えば、6.0以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、又は1.0以下であってよく、例えば、0.1以上、0.3以上、0.5以上、0.7以上、又は1.0以上であってよい。
【0068】
〈塩基性溶液〉
方法1及び2で用いられる塩基性溶液は、塩基、特に有機塩基が適当な溶媒中に溶解された溶液であってよい。
【0069】
有機塩基は、含窒素有機化合物であってよく、アミン化合物、環の構成原子として窒素原子を含む複素乾式化合物等から選択されることが好ましい。具体的には例えば、アミン化合物として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノナフタレン等を;環の構成原子として窒素原子を含む複素乾式化合物として、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン等を、それぞれ挙げることができる。
【0070】
塩基性溶液における溶媒は、所望の貴金属粒子前駆体分散液における分散媒と同じであってよい。
【0071】
塩基性溶液のpHは、7.0超であり、例えば、8.0以上、9.0以上、10.0以上、11.0以上、12.0以上、又は13.0以上であってよく、例えば、14.0以下、13.5以下、13.0以下、12.5以下、又は12.0以下であってよい。
【0072】
〈貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液との反応〉
貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液とを反応させて得られる貴金属粒子前駆体分散液は、塩基性(アルカリ性)であってもよいし、酸性であってもよい。
【0073】
塩基性の貴金属粒子前駆体分散液を調製する場合、貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液とを反応させるときの両液の使用割合は、塩基と貴金属化合物とのモル比(塩基/貴金属化合物)が、例えば、2以上、5以上、10以上、15以上、又は20以上となるように設定されてよく、この値が、例えば、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、又は20以下となるように設定されてよい。
【0074】
一方、酸性の貴金属粒子前駆体分散液を調製する場合、両液の使用割合は、塩基と貴金属化合物とのモル比(塩基/貴金属化合物)が1以下となるように設定されることが好ましい。
【0075】
貴金属化合物の酸性溶液と塩基性溶液とを反応させるときの反応温度は、例えば、-10℃以上100℃以下の範囲で適宜に設定されてよく、例えば室温でもよい。反応時間は、使用する反応器の種類に応じて、例えば、0.1秒以上1時間以下の範囲で適宜に設定されてよい。
【0076】
〈酸化物担体粒子と貴金属粒子前駆体分散液との接触、及び接触後の焼成〉
本発明の担持触媒粒子を製造する際の、酸化物担体粒子と貴金属粒子前駆体分散液との接触、及び接触後の焼成は、それぞれ、公知の方法にしたがって行われてよい。
【実施例】
【0077】
《実施例1》
〈貴金属粒子前駆体分散液の調製〉
イオン交換水50mL中に硝酸ロジウム(III)0.2gを加えて溶解し、貴金属化合物の酸性溶液(pH1.0)を調製した。
【0078】
有機塩基溶液として、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(濃度175g/L、pH14)を準備した。
【0079】
貴金属化合物の酸性溶液と有機塩基溶液との反応は、
【0080】
クリアランス調節部材としての2枚の平板を有する反応器を用い、クリアランスが10μmに設定された反応場に、上記の貴金属化合物の酸性溶液及び有機塩基溶液を導入する手法により、両液を水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)と硝酸ロジウム(RN)とのモル比(TEAH/RN)が18となる条件で反応させて、貴金属粒子前駆体分散液を調製した。得られた貴金属粒子前駆体分散液のpHは14であった。また、得られた貴金属粒子前駆体分散液に含まれる貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)を、動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、2.0nmであった。
【0081】
〈担持触媒粒子の調製及び評価〉
(1)貴金属粒子の粒径
アルミナの質量に対する貴金属(ロジウム)の質量の割合が0.5質量%となるように、貴金属粒子前駆体分散液とアルミナとを接触させた後、焼成することにより、担持量0.5質量%の粒径測定用ロジウム担持触媒粒子を得た。
【0082】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察により、得られた担持触媒粒子に担持されたロジウム粒子の粒径分布を調べた。この担持触媒粒子に担持されたロジウム粒子の平均粒径は1.40nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。
【0083】
(2)触媒性能(NOx浄化T50)
ジルコニアの質量に対する貴金属(ロジウム)の質量の割合が0.2質量となるように、貴金属粒子前駆体分散液とジルコニアとを接触させた後、焼成することにより、担持量0.2質量%の性能評価用ロジウム担持触媒粒子を得た。
【0084】
得られた性能評価用ロジウム担持触媒粒子2gを触媒活性評価装置に導入し、ストイキ条件下の前処理、及び耐久を行った後、触媒床温度を昇温させながらモデル排ガスを流して排ガス浄化試験を行い、NOx浄化率が50%になる温度(NOx浄化T50)を調べたところ、319℃であった。耐久、及び排ガス浄化試験の条件は、以下のとおりとした。
【0085】
(耐久)
ガス組成(質量基準):CO=2%及びN2=バランスと、O2=5%及びH2O=10%並びにN2=バランスとを、5分ごとに切替え
耐久温度:1,000℃
耐久時間:10時間
(触媒性能評価)
ガス組成(質量基準):CO=5,200ppm、NO=3,200ppm、C3H6=炭素原子換算3,000ppm、O2=0.53%、CO2=14%、H2O=3%、N2=バランス
ガス流量:15L/分
【0086】
また、耐久後の性能評価用ロジウム担持触媒粒子について、COパルス法によってロジウム金属の表面積を測定し、平均粒径を算出したところ、14nmであった。
【0087】
《実施例2》
〈貴金属粒子前駆体分散液の調製〉
貴金属化合物の酸性溶液と有機塩基溶液との反応時のモル比(TEAH/RN)を24に調整した他は、実施例1の〈貴金属粒子前駆体分散液の調製〉と同様にして、貴金属粒子前駆体分散液を調製した。得られた貴金属粒子前駆体分散液のpHは14であり、貴金属粒子前駆体のメジアン径(D50)は2.4nmであった。
【0088】
〈担持触媒粒子の調製及び評価〉
(1)貴金属粒子の粒径
上記で得られた貴金属粒子前駆体分散液を用いた他は、実施例1と同様にして、担持量0.5質量%の粒径測定用ロジウム担持触媒粒子を調製し、ロジウム粒子の粒径分布を実施例1と同様にして調べた。その結果、ロジウム粒子の平均粒径は1.47nmであり、粒径の標準偏差σは0.59nmであった。
【0089】
(2)触媒性能(NOx浄化T50)
上記で得られた貴金属粒子前駆体分散液を用いた他は、実施例1と同様にして、担持量0.2質量%の性能評価用ロジウム担持触媒粒子を調製し、NOx浄化T50を実施例1と同様にして調べた。その結果、NOx浄化T50は327℃であった。
【0090】
《比較例1》
貴金属粒子前駆体分散液の代わりに、実施例1と同様にして調製した貴金属化合物の酸性溶液を用いて、担持量0.5質量%の粒径測定用ロジウム担持触媒粒子、及び担持量0.2質量%の性能評価用ロジウム担持触媒粒子をそれぞれ調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0091】
粒径測定用ロジウム担持触媒粒子におけるロジウム粒子の平均粒径は0.7nmであった。性能評価用ロジウム担持触媒粒子を用いて測定したNOx浄化T50は、330℃であった。また、耐久後の性能評価用ロジウム担持触媒粒子について、COパルス法による表面積から算出されたロジウム粒子の平均粒径は、18nmであった。
【0092】
《比較例2》
クリアランス調節部材を有する反応器を用いずに、貴金属化合物の酸性溶液と有機塩基溶液との反応をビーカー中で行った他は実施例1と同様にして、担持量0.5質量%の粒径測定用ロジウム担持触媒粒子、及び担持量0.2質量%の性能評価用ロジウム担持触媒粒子をそれぞれ調製し、評価した。
【0093】
粒径測定用ロジウム担持触媒粒子におけるロジウム粒子の平均粒径は1.42nmであり、粒径の標準偏差σは0.94nmであった。性能評価用ロジウム担持触媒粒子を用いて測定したNOx浄化T50は、335℃であった。また、耐久後の性能評価用ロジウム担持触媒粒子について、COパルス法による表面積から算出されたロジウム粒子の平均粒径は、17nmであった。
【0094】
【0095】
実施例1及び2、並びに比較例2で得られたロジウム担持触媒粒子上のロジウム粒子の粒径分布(累積頻度)を示すグラフを、
図1に示した。
図1において、粒径1.0nm未満の粒子の累積頻度値について、粒径0.9nmの実測値を指標として、実施例1及び2と、比較例2とを比較する。すると、比較例2の担持触媒におけるロジウム粒子では、粒径1.0nm未満の粒子が全体の約18%を占めているのに対し、実施例1及び2では、約3%に制御されていることが確認された。また、実施例1及び2の担持触媒では、粒径約2.0nm以上の大粒径粒子の割合が、比較例2に比べて低減されていることが検証された。
【0096】
実施例1及び比較例2で得られたロジウム担持触媒粒子のSTEM像を
図2に示した。
図2では、担持触媒状のロジウム粒子が、画像中の白い点として確認できる。
図2(b)に示した比較例2の担持触媒では、ロジウム粒子の粒径がばらついているのに対し、
図2(a)に示した実施例1の担持触媒では、比較的小さな均一の粒径を示していることが確認された。