(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】コンタクト間の係合が安定している電気機械式スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
H01H50/54 B
(21)【出願番号】P 2021507035
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2019056654
(87)【国際公開番号】W WO2020031068
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-22
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】ティーイー・コネクティビティ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】リー,アルバート ヨン
(72)【発明者】
【氏名】スラシュ,ロジャー リー
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-199117(JP,A)
【文献】特開2012-199194(JP,A)
【文献】特開平06-200856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 - 1/66
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式スイッチ(101)であって、
- 互いに離間されており、その対接端部(306)に突出部(502)を有する第1の固定コンタクト(108)およびその対接端部(306)に突出部(504)を有する第2の固定コンタクト(109)と、
- 対接面(202)を有し、かつ、前記対接面(202)に沿って第1の凹部(308)および第2の凹部(309)を画定する可動コンタクト(124)と、を備え、
前記第1の凹部(308)および前記第2の凹部(309)の各々は、丸みを帯びたクレータであり、
前記第1の凹部(308)および前記第2の凹部(309)は、前記可動コンタクト(124)の長さに沿って互いに離間されており、前記可動コンタクト(124)は、閉位置へ出入りするように、前記第1の固定コンタクト(108)および前記第2の固定コンタクト(109)に対して往復移動可能であり、
前記閉位置では、前記可動コンタクト(124)の前記対接面(202)は、前記第1の固定コンタクト(108)の前記突出部(502)が前記第1の凹部(308)内へ突出し、前記第2の固定コンタクト(109)の前記突出部(504)が前記第2の凹部(309)内へ突出するように、前記第1の固定コンタクト(108)および前記第2の固定コンタクト(109)の前記対接端部(306)に係合する、
電気機械式スイッチ(101)。
【請求項2】
前記閉位置では、前記第1の固定コンタクト(108)の前記突出部(502)は前記第1の凹部(308)の縁部(402)に複数の接点(702)において係合し、かつ、前記第2の固定コンタクト(109)の前記突出部(504)は前記第2の凹部(309)の縁部(402)に複数の接点において係合する、
請求項1に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項3】
前記可動コンタクト(124)は、前記対接面(202)に沿った平面状の表面(404)を有し、
前記第1の凹部(308)および前記第2の凹部(309)の各々は、前記平面状の表面のそれぞれの縁部(402)から前記平面状の表面に対して窪んでいるそれぞれの底部(406)まで内向きに延在し、
前記閉位置では、前記第1の固定コンタクト(108)の前記突出部(502)および前記第2の固定コンタクト(109)の前記突出部(504)は、対応する前記第1の凹部(308)の前記縁部(402)および前記第2の凹部(309)の前記縁部(402)に係合し、前記底部(406)には係合しない、
請求項1に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項4】
前記第1の固定コンタクト(108)の前記突出部(502)は、前記第1の凹部(308)の前記丸みを帯びたクレータよりも大きい直径を有し、
前記第2の固定コンタクト(109)の前記突出部(504)は、前記第2の凹部(309)の前記丸みを帯びたクレータよりも大きい直径を有する、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項5】
前記可動コンタクト(124)の前記長さはその第1の端部(302)からその第2の端部(304)まで延びており、
前記第1の凹部(308)は前記第1の端部(302)まで延在し、前記第2の凹部(309)は前記第2の端部(304)まで延在する、
請求項1
から4のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項6】
前記第1の凹部(308)および前記第2の凹部(309)の周縁部を画定する縁部(402)は、円形または部分的に円形である、
請求項1に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項7】
前記電気機械式スイッチ(101)は、リレーデバイスである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項8】
前記電気機械式スイッチ(101)は、コンタクタデバイスである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項9】
前記第1の固定コンタクト(108)の前記突出部(502)は、前記第1の固定コンタクト(108)における前記対接端部(306)の全表面積を占め、かつ、
前記第2の固定コンタクト(109)の前記突出部(504)は、前記第2の固定コンタクト(109)における前記対接端部(306)の全表面積を占める、
請求項1
から8のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【請求項10】
シャフト(134)と前記シャフトに連結されている強磁性プランジャ(132)とを含むアーマチャ組立体(122)を更に備え、
前記シャフト(134)は、前記可動コンタクト(124)に連結されている第1の端部(142)を有し、
前記アーマチャ組立体(122)は、前記強磁性プランジャ(132)を包囲しているワイヤのコイル(110)を流れる電流によって誘起された磁場に基づいて、前記可動コンタクト(124)を、前記第1の固定コンタクト(108)および前記第2の固定コンタクト(109)に対して往復移動させる、
請求項1
から9のいずれか一項に記載の電気機械式スイッチ(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における主題は一般に、回路を通る電力の流れを制御する電気機械式スイッチ(例えば、コンタクタまたはリレー)に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械式スイッチは、電力の流れ(例えば電流)を選択的に制御することが望ましいいくつかの用途で使用され得る。コンタクタまたはリレーなどの電気機械式スイッチは、可動コンタクトと複数の固定コンタクトとを含み得る。可動コンタクトは選択的に移動されて固定コンタクトとの係合または係合解除を行う。可動コンタクトが固定コンタクトに係合しているとき、閉回路が形成され、可動コンタクトを介して固定コンタクトに電流が流れることができる。可動コンタクトが固定コンタクトのうちの少なくとも1つから離間されているとき、回路は開いており、コンタクトを通る電流の流れが防止される。
【0003】
いくつかの用途では、可動コンタクトと固定コンタクトの間の界面(interfaces)に沿って可聴ノイズ(audible noise)が生成される。例えば、コンタクトを流れる電流のサージによって、コンタクト同士の間の係合界面(engagement interfaces)に反発力が生じ得る。この反発力によって可動コンタクトが揺動(oscillate)および振動(vibrate)し、可聴ノイズが発生する。可聴ノイズは近くにいる人にとって、煩わしいおよび/または不快な可能性がある。可動コンタクトの揺動はまた、可動コンタクトおよび/または固定コンタクトの係合表面を劣化させ、これらの構成要素の動作寿命を短くする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、解決すべき課題は、電流のサージ中のコンタクトの揺動を防止または少なくとも低減する電気機械式スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、第1の固定コンタクトおよび第2の固定コンタクトと可動コンタクトとを含む電気機械式スイッチによって解決される。第1の固定コンタクトおよび第2の固定コンタクトは互いに離間されている。第1の固定コンタクトおよび第2の固定コンタクトの各々は、その対接端部(mating end)にそれぞれの突出部を有する。可動コンタクトは対接面(mating side)を有し、対接面に沿って第1の凹部および第2の凹部を画定する。第1の凹部および第2の凹部は、可動コンタクトの長さに沿って互いに離間されている。可動コンタクトは、閉位置へ出入りするように、第1の固定コンタクトおよび第2の固定コンタクトに対して往復移動可能である。閉位置では、可動コンタクトの対接面は、第1の固定コンタクトの突出部が第1の凹部内へ突出し、第2の固定コンタクトの突出部が第2の凹部内へ突出するように、第1の固定コンタクトおよび第2の固定コンタクトの対接端部に係合する。
【0006】
ここで本発明について、添付の図面を参照して例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ある実施形態に従って形成された電力回路の概略図であり、開状態における電力回路の電気機械式スイッチの断面図を示す図である。
【
図2】電気機械式スイッチが、可動コンタクトが固定コンタクトに係合する閉状態である、
図1に示した電力回路の概略図である。
【
図3】ある実施形態に係る電気機械式スイッチの一部の斜視図である。
【
図4】
図3に示した実施形態に係る電気機械式スイッチの可動コンタクトの斜視図である。
【
図5】
図3に示した電気機械式スイッチの一部の断面図である。
【
図6】
図3から
図5に示した実施形態に係る、第1の固定コンタクトおよび可動コンタクトの第1の端部を示す、電気機械式スイッチの一部の端面図である。
【
図7】
図6に示した電気機械式スイッチの一部の端面図であり、可動コンタクトが閉位置にあり第1の固定コンタクトに係合している状態を示す図である。
【
図8】第1の代替の実施形態に係る、可動コンタクトが閉位置にある電気機械式スイッチの一部の端面図である。
【
図9】第2の代替の実施形態に係る、電気機械式スイッチの可動コンタクトの斜視図である。
【
図10】
図9に示した第2の代替の実施形態に係る電気機械式スイッチの一部の端面図であり、可動コンタクトが閉位置にあり第1の固定コンタクトに係合している状態を示す図である。
【
図11】第3の代替の実施形態に係る電気機械式スイッチの一部の断面図であり、
図3に示した線5-5に沿った断面図である。
【
図12】
図11に示した第3の代替の実施形態に係る、第1の固定コンタクトおよび可動コンタクトの第1の端部を示す端面断面図である。
【
図13】第4の代替の実施形態に係る電気機械式スイッチの一部の端面図であり、可動コンタクトが第1の固定コンタクトに対する開位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態は、電源と電気負荷の間の電気回路を選択的に確立および遮断するように構成されている、リレーまたはコンタクタなどの電気機械式スイッチを提供する。電気機械式スイッチは、1000アンペア(A)以上などの高電流レートの伝達を行うように構成され得る。本明細書に記載する実施形態に係る電気機械式スイッチでは、スイッチが閉じられた導通位置にあるときに可動コンタクトと固定コンタクトの間の係合が安定しており、このことにより、コンタクト間での高電流サージに曝されるときでさえ、係合界面における揺動および振動が排除または少なくとも軽減される。本明細書に記載する電気機械式スイッチでは、知られている電気機械式スイッチのコンタクト同士の間の、コンタクトを流れる電流のサージ(例えば高スルーレート)中の揺動および振動に起因して生じる、煩わしいおよび/または不快な可聴ノイズの発生が根絶され得る。
【0009】
図1は、ある実施形態に従って形成された電力回路100の概略図であり、開状態における電力回路100の電気機械式スイッチ101の断面図を示す。電力回路100は、電気機械式スイッチ101、負荷電源102、電気負荷104、およびスイッチ電源112を含むいくつかの構成要素、ならびにこれらの構成要素を相互接続するワイヤ、トレースなどの導電要素105を有する。
【0010】
電気機械式スイッチ101は、電力回路100の負荷電源102と電気負荷104の間を流れる電流の有無を選択的に制御するために使用される電気作動スイッチである。電気機械式スイッチ101が回路を閉じる(または確立する)と、電力回路100の負荷電源102から電気負荷104へ電流が流れて、負荷104に電力供給できるようになる。電気機械式スイッチ101が回路を開くと(または遮断する)と、電力回路100を通って電気負荷104に至る電流の流れが止められる。電気機械式スイッチ101はリレーデバイスまたはコンタクタデバイスとすることができる。
【0011】
1つの非限定的な例示の用途では、電力回路100は、ハイブリッドまたは完全電化の自動車などの車両内に設置され得る。負荷電源102は、車両の推進の電力を供給するために使用されるトラクションバッテリなどのバッテリを表し得るか、または含み得る。電気負荷104は、モータ、加熱および/または冷却システム、照明システム、車両電子機器システムなどを表し得るか、または含み得る。例えば、電気機械式スイッチ101は、トラクションバッテリと、車輪を回転させ車両を推進するためのトルクを生むために利用されるトラクションモータとの間の導電経路に沿って、配設されてもよい。車両の運転手が加速ペダルを押圧すると、電気機械式スイッチ101のコンタクトは互いと係合して導電経路を閉じる(例えば形成する)ことができ、車両を加速させるためにバッテリがトラクションモータに電流を供給することを可能にし得る。
電気機械式スイッチ101はまた、車両の回生制動(regenerative braking)中などに負荷電源102を充電するために、反対方向に電気負荷104から負荷電源102へ電流を伝達するためにも使用され得る。あるいは、電力回路100は、産業機械において、または自動車以外の車両、例えばオフハイウェイ車両、鉄道車両、および/もしくは船舶においてなどの、他の用途で利用されてもよい。
【0012】
電気機械式スイッチ101は、第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109と、可動コンタクト124と、を含む。第1の固定コンタクト108は、第2の固定コンタクト109から離間されている。第1の固定コンタクト108は負荷電源102に電気接続されており、第2の固定コンタクト109は電気負荷104に電気接続されている。電気機械式スイッチ101はハウジング106も含む。第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109はハウジング106に装着され、ハウジング106に対して固定された位置に固着される。
【0013】
可動コンタクト124は、固定コンタクト108、109との係合および係合解除を行うように、固定コンタクト108、109に対して往復移動可能である。
図1では、可動コンタクト124は、可動コンタクト124が固定コンタクト108、109と係合していないことを意味する開位置にある。開位置では、3つのコンタクト108、109、124を通る閉回路経路は確立されず、負荷電源102は電気負荷104から接続解除されている。電気機械式スイッチ101が閉位置にあるとき、可動コンタクト124は第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109の両方と係合し、3つのコンタクト108、109、124を通る閉回路経路が形成され、電源102と電気負荷104の間に電流が流れることが可能になる。
【0014】
図示されている実施形態では、電気機械式スイッチ101はアーマチャ組立体122も含む。アーマチャ組立体122は固定コンタクト108、109に対して、作動軸線128に沿って往復(例えば双方向に)移動する。可動コンタクト124はアーマチャ組立体122に連結されており、固定コンタクト108、109に対してアーマチャ組立体122と一緒に移動する。例えば、アーマチャ組立体122は、固定コンタクト108、109との係合および係合解除を行うように、可動コンタクト124を移動させることができる。
【0015】
ある実施形態では、アーマチャ組立体122の移動は、ワイヤコイル110を流れる電流によって誘起された磁場に基づくことができる。ワイヤコイル110は、1つまたは複数の導電要素107を介して、磁場を誘起するためにワイヤコイル110に電流を提供するスイッチ電源112に電気接続されている。スイッチ電源112は、ワイヤコイル110によって誘起された磁場を制御するように選択的に操作することができる。一例では、スイッチ電源112がワイヤコイル110に電流を供給すると、誘起された磁場が、アーマチャ組立体122、およびこれに連結されている可動コンタクト124を、固定コンタクト108、109に向かって作動軸線128に沿って、可動コンタクト124が両方の固定コンタクト108、109に係合するまで移動させる。
スイッチ電源112が電流供給を停止するまたは異なる電流を供給するのに応答して、アーマチャ組立体122は、重力および/またはばね力などの付勢力に起因して、開始位置に向かって軸線方向に戻ることができ、このことにより可動コンタクト124が固定コンタクト108、109から係合解除し分離する。
図1では、ワイヤコイル110はハウジング106内に配設されており、アーマチャ組立体122の少なくとも一部を包囲している。
【0016】
アーマチャ組立体122は、シャフト134と、強磁性プランジャ132と、コンタクトばね130と、を含む。シャフト134は、強磁性プランジャ132(本明細書ではプランジャ132と呼ぶ)および可動コンタクト124の両方に連結されている。シャフト134は、シャフト134の第1の端部142と、シャフト134の反対側の第2の端部144との間の細長いものである。シャフト134の第1の端部142は可動コンタクト124に連結されている。例えば、第1の端部142は、可動コンタクト124の開口部212内へ延在し得る。シャフト134の第1の端部142は、示されているようにクリップ210を介して可動コンタクト124に連結されてもよく、あるいは別法として、可動コンタクト124上に螺着、または偏向可能なラッチ、接着剤、もしくは他の固定具を介して接続されてもよい。
シャフト134は、第2の端部144においてまたはその近くで、プランジャ132に連結されている。例えば、第2の端部144は、シャフト134をクリップ214を介してプランジャ132に固着するために、プランジャ132のチャネル136内へ延在し得る。別法として、シャフト134は、締まりばめ、1つもしくは複数の偏向可能なラッチ、接着剤、および/または同様のものによって、プランジャ132に固着され得る。プランジャ132は、プランジャ132がシャフト134と一緒に作動軸線128に沿って移動するようにシャフト134に固定的に固着され、これら2つの構成要素の間の作動軸線128に沿った相対移動は存在しない。
可動コンタクト124は、可動コンタクト124がシャフト134に沿って軸線方向に(例えば、第2の端部144に向かうおよびそこから離れるように)移動できるように、シャフト134に移動可能に連結され得る。可動コンタクト124およびプランジャ132は、シャフト134の長さに沿って互いに離間されている。
【0017】
ハウジング106は、可動コンタクト124とワイヤコイル110の間に位置する、分割壁156を含む。ハウジング106は図示されている実施形態では、内部チャンバ174を画定する容器である。分割壁156はチャンバ174を、コンタクト領域120と電磁的領域116とにセグメント化する。固定コンタクト108、109および可動コンタクト124は、コンタクト領域120内に位置する。固定コンタクト108、109はハウジング106のチャンバ174から外に突出して、導電要素105に電気接続している。ワイヤコイル110は電磁的領域116内に配設されている。
【0018】
シャフト134は、コンタクト領域120および電磁的領域116の両方の中へ延在する。分割壁156は、分割壁156を通る開口150を画定し、シャフト134は開口150を通って延在する。可動コンタクト124およびプランジャ132は、分割壁156の両側に沿って位置する。可動コンタクト124はコンタクト領域120内に位置しており、プランジャ132は電磁的領域116内に位置する。アーマチャ組立体122は、分割壁156に対して作動軸線128に沿って移動する。
【0019】
電磁的領域116内のプランジャ132は、ワイヤコイル110によって周方向に包囲されている。プランジャ132は、鉄、ニッケル、コバルト、ならびに/または鉄、ニッケル、およびコバルトのうちの1つもしくは複数を含有する合金などの、強磁性材料を含む。プランジャ132は、ワイヤコイル110によって誘起された磁場の存在下でプランジャ132が並進することを可能にする磁気特性を有する。
【0020】
コンタクトばね130はシャフト134を包囲している。コンタクトばね130は、コンタクト領域120内で可動コンタクト124と分割壁156の間に位置する。コンタクトばね130は図示されている実施形態ではコイルばねである。コンタクトばね130を可動コンタクト124と分割壁156の間で圧縮して、可動コンタクト124を固定コンタクト108、109に向けて押しやることができる。コンタクトばね130は、分割壁156の方に面する可動コンタクト124の装着面204に、直接的または間接的に係合する。コンタクトばね130は、可動コンタクト124に、可動コンタクト124の対接面202をクリップ210と持続的に係合させるように付勢する、付勢力を及ぼす。対接面202は装着面204の反対側にあり、固定コンタクト108、109の方に面する。閉位置では、可動コンタクト124の対接面202は、固定コンタクト108、109に係合する。
【0021】
図2は、ある実施形態に係る、電気機械式スイッチ101が閉状態である、
図1の電力回路100の概略図である。電気機械式スイッチ101の閉状態は、可動コンタクト124が閉位置にあるときに現れる。閉位置では、可動コンタクト124は、固定コンタクト108、109の両方に係合し、導電的に接続される。可動コンタクト124は、2つの固定コンタクト108、109を橋渡しして電流が3つ全てのコンタクト108、109、124を流れることを可能にする、閉回路経路を提供する。図示されている実施形態では、可動コンタクト124が閉位置にあるとき、負荷電源102からの電流は第1の固定コンタクト108から可動コンタクト124、次いで第2の固定コンタクト109を介して電気負荷104に伝達されて、負荷104に電力供給する。
図1および
図2には2つの固定コンタクト108、109および1つの可動コンタクト124が示されているが、他の実施形態での電気機械式スイッチ101は、異なる数の固定コンタクトおよび/または異なる数の可動コンタクトを有し得ることが認識される。
【0022】
閉位置は、アーマチャ組立体122が
図1に示す位置から作動軸線128に沿って固定コンタクト108、109に向かって移動することによって達成される。可動コンタクト124は、アーマチャ組立体122が固定コンタクト108、109から離れていくのに応じて、閉位置から
図1に示す開位置へ移行することができ、このことにより可動コンタクト124が固定コンタクト108、109から分離し係合解除する。この接続解除によって回路が遮断され、負荷電源102と電気負荷104の間の電流の流れが止まる。
【0023】
図3は、ある実施形態に係る電気機械式スイッチ101の一部の斜視図である。電気機械式スイッチ101の図示されている部分は、第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109と、可動コンタクト124と、ハウジング106の分割壁156と、を含む。電気機械式スイッチ101は、横方向軸線191、高さ軸線192、および長手軸線193に対して方向付けされている。軸線191~193は互いに直交している。高さ軸線192は、
図1および
図2に示す作動軸線128と平行である。高さ軸線192は
図3では重力と平行な垂直方向に延びているように見えるが、軸線191~193は重力に対して何らかの特定の向きを有する必要の無いことが理解される。
【0024】
第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109は、長手軸線193に沿って互いに離間されている。可動コンタクト124は、可動コンタクト124の第1の端部302から可動コンタクト124の第2の端部304までの、長手軸線193に沿った長さに延在する。可動コンタクト124の対接面202は、第1の端部302と第2の端部304の間に延在し、固定コンタクト108、109の方に面している。固定コンタクト108、109の各々は、可動コンタクト124の方に面するそれぞれの対接端部306を有する。
図3では可動コンタクト124は開位置にあり、固定コンタクト108、109から切り離されているが、閉位置にあるときは、固定コンタクト108、109の対接端部306は、可動コンタクト124の対接面202に係合して、導電回路の経路を確立する。
【0025】
可動コンタクト124は、対接面202に沿って第1の凹部308および第2の凹部309を画定する。第1の凹部308は、第2の凹部309から可動コンタクト124の長手方向長さに沿って離間されている。第1の凹部308は第1の固定コンタクト108と位置合わせされており、第2の凹部309は第2の固定コンタクト109と位置合わせされている。
【0026】
図4は、
図3に示した実施形態に係る電気機械式スイッチ101の可動コンタクト124の斜視図である。シャフト134を受け入れる開口部212は第1の凹部308と第2の凹部309の間に配設されており、可動コンタクト124を貫通して装着面204から対接面202まで延在する。図示されている実施形態では、第1の凹部308および第2の凹部309は、いずれも長方形の溝である。凹部308、309は、長手軸線193に沿って(例えば、可動コンタクト124の第1の端部302と第2の端部304の間の長さと平行に)細長いものである。凹部308、309は対接面202に対して窪んでおり、装着面204に向かって内向きに延在する。
【0027】
各凹部308、309の周縁部は、対接面202においてそれぞれの縁部402によって画定される。対接面202は表面404を有する。凹部308、309の縁部402は表面404に存在する(例えばこれと同一平面上にある)。表面404は図示されている実施形態では平面状であるが、代替の実施形態では非平面状であってもよい。凹部308、309の各々は、それぞれの縁部402から表面404に対して窪んでいるそれぞれの底部406まで内向きに延びる、(例えば高さ軸線192に沿った)深さを有する。底部406は、それぞれの凹部308、309の最も深い(例えば最も内部の)位置を表す。
【0028】
凹部308、309が長方形の溝である図示されている実施形態では、凹部308、309の各々の縁部402は、2つの細長い縁部区域408を含む。この細長い縁部区域408は互いと平行であり、それらの間に凹部308、309の各々の横方向幅が画定される。細長い縁部区域408は
図4では直線状で、長手軸線193と平行に延在する。代替の実施形態では、細長い縁部区域408は直線状でも平行でもなく、むしろ湾曲し、互いに反対方向に膨出しており、この結果、凹部308、309は対接面202を上方から見ると、矩形ではなく楕円に似ている。細長い縁部区域408は、湾曲した傾斜表面410を有するようにテーパ状であってもよい。湾曲した傾斜表面410の各々は、横方向軸線191および高さ軸線192の両方に沿って湾曲している。別法として、細長い縁部区域408は、湾曲した傾斜表面410の代わりに直角のコーナーを有してもよい。
【0029】
図示されている実施形態では、第1の凹部308は可動コンタクト124の第1の端部302まで完全に延在し、第2の凹部309は第2の端部304まで完全に延在する。例えば、表面404における第1の凹部308の縁部402は、凹部308の3つの面の周囲にのみ延在し、第4の面は第1の端部302において開いている。第1の端部302における可動コンタクト124の端部壁412は、第1の凹部308が第1の端部302と交わる切欠きエリア414を画定する。第2の端部304における可動コンタクト124の端部壁416に沿って、第2の凹部309が第2の端部304と交わる同様の切欠きエリア414が画定される。対応する端部302、304まで延在する凹部308、309は、可動コンタクト124が固定コンタクト108、109に対して最初に接続および/または接続解除されるときに、コンタクト接合部から外向きに吹き出すように電気アークを導くためのチャネルを提供し得る。
アークが係合界面から出ていくための経路を提供することによって、コンタクト108、109、124に対する負担および損傷が低減される。代替の実施形態では、凹部308、309のうちの少なくとも一方は、可動コンタクト124の対応する端部302、304まで完全には延在しない。
【0030】
図5は、
図3に示した電気機械式スイッチ101の一部の断面図である。この断面は
図3の線5-5に沿って取られている。シャフト134は2つの凹部308、309の間で可動コンタクト124の開口部212を貫通して突出している。コンタクトばね130は可動コンタクト124を付勢して、クリップ210と持続的に係合させる。図示されている実施形態では、第1の固定コンタクト108の対接端部306は突出部502を有し、第2の固定コンタクト109の対接端部306は突出部504を有する。突出部502、504は図示されている向きでは下向きに、可動コンタクト124に向かって膨出している。例えば、突出部502、504の各々の中央部は、高さ軸線192に沿って、突出部502、504の外縁部よりも可動コンタクト124のより近くに配設されている。第1の固定コンタクト108の突出部502は第1の凹部308と位置合わせされており、第2の固定コンタクト109の突出部504は第2の凹部309と位置合わせされている。
【0031】
図示されている実施形態では、第1の固定コンタクト108は、可動コンタクト124の第1の端部302を越えて横方向に突出しており、第2の固定コンタクト109は、可動コンタクト124の第2の端部304を越えて横方向に突出しており、このことにより、電気アークが外向きに吹き出すための空間が提供され得る。ただし、代替の実施形態では、可動コンタクト124は、固定コンタクト108、109が端部302、304を越えて突出しないように、より長くてもよい。
【0032】
図6は、
図3から
図5に示した実施形態に係る、第1の固定コンタクト108および可動コンタクト124の第1の端部302を示す、電気機械式スイッチ101の一部の端面図である。可動コンタクト124は図示されている実施形態では開位置にあり、固定コンタクト108の対接端部306は、可動コンタクト124の対接面202から離間されている。以下の説明では第1の固定コンタクト108に言及しているが、第2の固定コンタクト109は第1の固定コンタクト108と同一(またはサイズおよび形状が実質的に同様)であってもよく、したがって以下の説明は第2の固定コンタクト109にも当てはまり得る。更に、以下の説明では可動コンタクト124の第1の凹部308に言及しているが、第2の凹部309は第1の凹部308と同一(またはサイズおよび形状が実質的に同様)であってもよく、したがって以下の説明は第2の凹部309にも適用可能とすることができる。
【0033】
図示されている実施形態では、可動コンタクト124の第1の凹部308は全体的に多角形の形状を有し、湾曲した傾斜表面410と底部406の間に延在する2つの側壁602を含む。底部406および側壁602は、比較的直線的かつ平坦である。代替の実施形態では、凹部308はより湾曲している(例えば椀形状である)。
【0034】
第1の固定コンタクト108の対接端部306における突出部502は、
図5を参照して上記したように、図示されている実施形態では、丸みを帯びた膨出部である。
図6では、突出部502は、対接端部306の全表面積を占める。例えば、突出部502の縁部604は、固定コンタクト108の円筒形の外側表面606に位置する。突出部502の中央部608は、縁部604を越え、可動コンタクト124に向かって下向きに突出している。
【0035】
図7は、
図6に示した電気機械式スイッチ101の一部の端面図であり、可動コンタクト124が閉位置にあり第1の固定コンタクト108に係合している状態を示す。可動コンタクト124を第1の固定コンタクト108および第2の固定コンタクト109(
図3に示す)に向けて閉位置へ移動させると、可動コンタクト124の対接面202は固定コンタクト108、109の対接端部306に係合する。
図7に示すように、第1の固定コンタクト108の突出部502は、可動コンタクト124の第1の凹部308内へ突出する。突出部502は、第1の凹部308の縁部402に複数の接点702において係合する。例えば、
図7には2つの接点702が示されている。接点702は、凹部308の幅を画定する細長い縁部区域408上に位置する。突出部502は、2つの細長い縁部区域408の各々に、1つまたは複数の接点において係合する。
【0036】
突出部502は、突出部502の中央部608が可動コンタクト124の表面404を越えて突出するように、第1の凹部308内へ延在する。図示されている実施形態では、中央部608は、凹部308の底部406から離間されており、これと係合しない。この場合、突出部502は凹部308の底部には達しない。突出部502と凹部308間の係合は、凹部308の縁部402(例えば、細長い縁部区域408)に限定され得る。
【0037】
図7には示されていないが、第2の固定コンタクト109(
図3に示す)は、可動コンタクト124が閉位置にあるとき、上記したものと同じように可動コンタクト124の第2の凹部309に係合する。例えば、第2の固定コンタクト109の突出部504は第2の凹部309内へ突出し、第2の凹部309の縁部402に、複数の接点において係合する。
【0038】
固定コンタクト108、109の突出部502、504は、可動コンタクト124の対応する凹部308、309内に、安定した係合界面を成して効果的に埋め込まれる(nest)。例えば、知られている一部の電気機械式スイッチにおける面同士の当接の代わりに、
図7に示す突出部502は、細長い縁部部分408と係合して、安定した着座構成(seated configuration)を達成する。図示されている実施形態における埋め込まれた構成は、知られている面同士のコンタクト接合部を有する電気機械式スイッチなどよりも安定している場合があり、したがって電流のサージ中に揺動および振動する可能性がより低い。安定性が改善される結果、本明細書に記載する電気機械式スイッチ101は、コンタクト接合部における揺動に起因する可聴ノイズの発生を排除、または少なくとも低減することができる。
【0039】
図8は第1の代替の実施形態に係る電気機械式スイッチ101の一部の端面図であり、
図7に示したように可動コンタクト124が閉位置にある状態を示す。
図8では、可動コンタクト124は
図3から
図7に示した実施形態から変更されていないが、第1の固定コンタクト108の対接端部306における突出部502が修正されている。例えば、突出部502は図示されている実施形態では、対接端部306の全面積を占めていない、または覆っていない。例えば、突出部502の直径は、対接端部306まで延在する固定コンタクト108の円筒形部分の直径よりも小さい。固定コンタクト108は、円筒形の外側表面606から突出部502(例えばその縁部604)まで半径方向内向きに延在する、平坦なエリア802を含む。他の実施形態では、第1の固定コンタクト108の突出部502および第2の固定コンタクト109の突出部504(
図5に示す)は、
図5から
図8に示した実施形態とは異なるサイズおよび/または形状を有してもよい。
【0040】
図9は、第2の代替の実施形態に係る、電気機械式スイッチ101の可動コンタクト124の斜視図である。長方形の溝の代わりに、可動コンタクト124の第1の凹部308および第2の凹部309は、図示されている実施形態では丸みを帯びたクレータ(crater)である。例えば、凹部308、309の周縁部を画定する縁部402は、円形または部分的に円形である。図示されている実施形態では、凹部308、309は、可動コンタクト124の対応する第1の端部302および第2の端部304まで延在し、縁部402は一部のみが円形である。
【0041】
図10は、電気機械式スイッチ101の一部の端面図であり、
図9に示した第2の代替の実施形態に係る可動コンタクト124が閉位置にあり第1の固定コンタクト108に係合している状態を示す。第1の固定コンタクト108の突出部502は、
図6および
図7に示した実施形態の場合と同じである。突出部502および凹部308はいずれも丸みを帯びている。図示されている実施形態では、固定コンタクト108の突出部502は、凹部308のクレータよりも大きい直径を有する。例えば、
図10の端面図における突出部502および凹部308の各々は、より大きい円の対応する弧長さを一般に表し得る。突出部502は凹部308よりも湾曲が緩やかであり、したがって、突出部502と関連付けられたより大きい円は、凹部308と関連付けられたより大きい円よりも大きい直径を有する。
この結果、閉位置では、突出部502は凹部308の縁部402に複数の接点702において係合し、凹部308内に埋め込まれる。突出部502の中央部608は凹部308内へ突出するが、凹部308の底部406とは係合しない。
【0042】
図11は、第3の代替の実施形態に係る、
図3に示す線5-5に沿った電気機械式スイッチ101の一部の断面図である。
図12は、
図11に示した第3の代替の実施形態に係る、第1の固定コンタクト108および可動コンタクト124の第1の端部302を示す端面断面図である。図示されている実施形態では、第1の固定コンタクト108の対接端部306は凹部902を画定し、第2の固定コンタクト109の対接端部306は凹部904を画定する。例えば、凹部902、904の縁部906は対接端部306に沿っており、凹部902、904のそれぞれの中央部(または底部)908よりも、可動コンタクト124により近い。
【0043】
可動コンタクト124は、固定コンタクト108、109に向かって対接面202の表面404を越えて突出している、第1の突出部910および第2の突出部912を含む。第1の突出部910は第1の固定コンタクト108と位置合わせされている。第2の突出部912は可動コンタクト124の長さに沿って第1の突出部910から離間されており、第2の固定コンタクト109と位置合わせされている。可動コンタクト124が閉位置へ移動されると、第1の突出部910は、第1の固定コンタクト108の凹部902内へ突出して、その縁部906に複数の接点において係合し、第2の突出部912は、第2の固定コンタクト109の凹部904内へ突出して、その縁部906に複数の接点において係合する。
図12に示すように、可動コンタクト124の第1の突出部910は、
図10に示す実施形態と同様だが反転させた様式で、第1の固定コンタクト108の凹部902内に埋め込まれてもよい。
図11および
図12は、コンタクト接合部における揺動を阻止する安定した埋め込み係合を提供すべく、可動コンタクト124が固定コンタクト108、109のそれぞれの凹部902、904内に受け入れられる突出部910、912を有するように、
図1から
図10に示した実施形態を反転させてもよいことを示す。
【0044】
図13は、第4の代替の実施形態に係る電気機械式スイッチ101の一部の端面図であり、可動コンタクト124が第1の固定コンタクト108に対する開位置にある状態を示す。
図13は、第1の固定コンタクト108の凹部902が丸みを帯びた椀形状のクレータの代わりに長方形の溝であることを除いて、
図11および
図12に示す実施形態と同様である。凹部902は、サイズおよび/または形状が、
図4に示した実施形態に係る可動コンタクト124の凹部308、309と同様であってもよい。可動コンタクト124が閉位置へ移動されると、可動コンタクト124の第1の突出部910は凹部902内へ突出し、凹部902の縁部906に複数の接点において係合する。