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特許7093896広帯域調整可能エネルギー電子ビームパルサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-22
(45)【発行日】2022-06-30
(54)【発明の名称】広帯域調整可能エネルギー電子ビームパルサー
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/087 20060101AFI20220623BHJP
   G21K 1/093 20060101ALI20220623BHJP
   H01J 37/065 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
G21K1/087 D
G21K1/093 D
H01J37/065
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021562100
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020029728
(87)【国際公開番号】W WO2020219817
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】16/393,469
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/662,434
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521456184
【氏名又は名称】ユークリッド・テックラブス・リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EUCLID TECHLABS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン・チュンガン
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・ジャキ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ・オー
(72)【発明者】
【氏名】モンゴメリー・エリック・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ツャオ・ユビン
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ・ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】コスティン・ロマン
(72)【発明者】
【氏名】カナレイキン・アレクセイ
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0293377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 1/00-3/00
G21K 5/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁機械式パルサー(「EMMP」)であって、
連続入力電子ビームを受け取るように構成された入力部と、
前記入力部の下流に位置する少なくとも1つの進行波金属コームストリップライン(「TWMCS」)であって、前記TWMCSの各々は、前記電子ビームが通過する内部通路を有し、前記TWMCSの各々は、前記TWMCSを通って伝搬されるRF進行波によって前記TWMCS内で生成される横方向時間変化電場及び横方向時間変化磁場のうちの少なくとも1つに応じて、振動する横方向偏向を前記電子ビームに与えるように構成され、前記少なくとも1つのTWMCSのうちの第1のTWMCSは、TWMCSキッカーである、進行波金属コームストリップラインと、
前記TWMCSキッカーの下流に位置するチョッピングコリメートアパーチャ(「CCA」)であって、前記電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、前記電子ビームを遮断し、それにより、前記電子ビームをチョッピングして、チョップド電子パルス繰返し周波数及びチョップドパルスデューティサイクルを有する、チョップド電子パルスのチョップドストリームにするように構成された、チョッピングコリメートアパーチャと、
電子パルスが、出力パルス繰返し周波数及び出力パルスデューティサイクルを有する、電子パルスの出力ストリームとして、前記EMMPから出現することを可能にするように構成された出力部と、
前記EMMPの全ての要素を取り囲む真空チャンバであって、残留ガスによる前記電子ビームの大幅な減衰なしに、前記電子ビームが前記EMMPを通過することを可能にするのに十分な真空を提供するように構成された、真空チャンバと、を備え、
前記TWMCSの各々は、少なくとも1つの対向するコーム対を含み、
前記コーム対のうちの前記対向するコームの各々がストリップを備え、等間隔に配置された同一の複数のブロックが前記ストリップから歯として延び、
前記コーム対のうちの前記コームは、歯が内側を向くように間隔を空けて配置され、その結果、前記電子ビームが通過する前記内部通路が前記コーム対の前記歯の間に存在し、
前記コーム対は、前記コームの近位端に近接するRFエネルギー入力部と、反対側の前記コームの遠位端に近接するRFエネルギー出力部とを含み、
前記コーム対の前記歯は、前記コーム対の前記近位端から前記遠位端に伝搬する進行RF波の位相速度を制御して、前記位相速度を前記電子ビームの電子速度に一致させるように構成され、
前記コーム対の全ての露出面が導電性である、電磁機械式パルサー。
【請求項2】
請求項1に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つがピッカーTWMCSであり、前記ピッカーTWMCSは、前記ピッカーTWMCSに電子パルスピッカー(EPP)パルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を更に含み、前記EPPパルスの各々が、前記ピッカーTWMCSの前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、前記横方向電場は、前記EPPパルス印加中に、前記ピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された前記電子を前記電子ビームから除去するように構成されていることを含む、EMMP。
【請求項3】
請求項2に記載のEMMPであって、前記EPPは、前記ピッカーTWMCSの第1の対向するコーム対の第1のコームに電気バイアスを維持するように構成され、前記EPPパルスの各々は、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対の他方の第2のコームに等しい電気バイアスを印加し、その結果、前記EPPパルスの各々の印加中に、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対の両方のコームが、等しい電気バイアスを保持し、それにより、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対を横断する前記電場が無効になる、EMMP。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のEMMPであって、前記EPPパルスのパルス繰返し周波数が1kHz~10MHzの範囲にわたって調整可能である、EMMP。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは、前記CCAの下流に分散抑制セクションを更に備え、前記分散抑制セクションは、前記TWMCSキッカーによって与えられる前記偏向から生じる電子パルスの前記ストリームの残留分散を抑制するように構成されている、EMMP。
【請求項6】
請求項5に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの第2のTWMCSは、前記分散抑制セクションに含まれる復調ミラーTWMCSであり、前記電子ビームは、前記CCAの下流の前記ミラーTWMCSの前記内部通路を通過し、前記ミラーTWMCSは、前記ミラーTWMCSを通って伝搬する前記RF進行波の位相速度を前記電子ビームの速度に一致させる物理的構成を有し、前記ミラーTWMCSは、前記TWMCSキッカーによって前記電子ビームに与えられた前記振動する横方向偏向を復調するように構成されている、EMMP。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のEMMPであって、前記分散抑制セクションは少なくとも1つの磁気四重極を含む、EMMP。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力パルス繰返し周波数が、0.1GHz~20GHzで調整可能である、EMMP。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスのパルス長が100fs~10psで調整可能である、EMMP。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力デューティサイクルが1%~10%で調整可能である、EMMP。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力パルス繰返し周波数及び前記出力デューティサイクルが独立して調整可能である、EMMP。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは、100~500keVの運動エネルギーを有する入力電子ビームを受け入れるように構成されている、EMMP。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSキッカーは、前記電子ビームが同時に通過する2つの対向するコーム対を含み、前記2つの対向するコーム対は、その第1の対が前記電子ビームを第1の偏向面内で偏向させ、その第2の対が前記電子を前記第1の偏向面と直交する第2の偏向面内で偏向させるように構成され、前記第1の偏向面と前記第2の偏向面との交線が、前記電子ビームが通過する前記内部通路に沿って存在する、EMMP。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの第3のTWMCSがダウン選択TWMCSであり、前記ダウン選択TWMCSは、前記CCAの下流に配置され、前記CCAから出現する電子パルスの前記チョップドストリームから出てくるいくつかのパルスを偏向させることにより、前記出力ストリームの前記出力パルス繰返し周波数を低減させるように構成されている、EMMP。
【請求項15】
請求項14に記載のEMMPであって、前記ダウン選択TWMCSの下流に位置するダウン選択アパーチャを更に含む、EMMP。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記コームのうちの少なくとも1つが、前記コーム対の前記コームの他方に向かって及び離れるように横方向にシフトされ得る、EMMP。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記RFエネルギー出力が、終端インピーダンスに接続されている、EMMP。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記コームのうちの少なくとも1つの向きが、前記コーム対の前記コームの間の角度を調整するように変更され得る、EMMP。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記CCAのアパーチャサイズが機械的に調整可能である、EMMP。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは電気的に絶縁された要素を有するアパーチャを含み、前記要素は、前記アパーチャがビーム位置モニタ及びビーム電流モニタのうちの少なくとも1つとして機能することを可能にする、EMMP。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記電子ビームの伝搬方向を調整するように構成された少なくとも1つの磁気又は静電ビーム偏向要素を更に備える、EMMP。
【請求項22】
電子パルスを生成する方法であって、前記方法は、
請求項1~21のいずれか一項に記載のEMMPを提供することと、
前記TWMCSキッカーの前記RFエネルギー入力部にRFエネルギーを印加しながら、連続電子ビームが前記TWMCSキッカーを通過することを生じさせることであって、前記RFエネルギーは、進行RF波が前記TWMCSキッカーを通って伝搬することを生じさせ、前記進行RF波は、前記電子ビームの電子速度に等しい位相速度を有し、それにより前記連続電子ビームに空間振動を与える、ことと、
空間的に振動する前記電子ビームが前記CCAに影響を与えるようにして、前記電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、前記CCAが前記電子ビームを遮断するようにし、それにより、前記電子ビームをチョッピングして、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数を有する、チョップド電子パルスのストリームにすることと、
前記チョップド電子パルスの幅を、所望のチョップド電子パルス幅に等しくなるように調整するように、前記TWMCSキッカーに印加される前記RFエネルギーの振幅を調整することと、
前記TWMCSキッカーに適用される前記RFエネルギーの周波数を調整して、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数の半分に等しくなるようにすることと、を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記所望の電子パルス繰返し周波数が100MHz~50GHzであり、前記所望の電子パルス幅が100fs~10psの範囲にある、方法。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の方法であって、前記指定された電子パルスエネルギーは100keV~500keVである、方法。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSキッカーは、2つの直交するコーム対を含み、前記方法は、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第1の対に第1の周波数でRFエネルギーを印加することと、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第2の対に第2の周波数でRFエネルギーを印加することと、を更に含む、方法。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項に記載の方法であって、
前記TWMCSキッカーは、2つの直交するコーム対を含み、
前記CCAは、非円形の形状を有するアパーチャ開口部を含み、
前記方法は、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第1の対に第1のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第2の対に第2のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、前記第1のRF振幅と前記第2のRF振幅との差を変化させることにより、前記チョップド電子パルス幅を変化させることと、を更に含む、方法。
【請求項27】
請求項22~26のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つがピッカーTWMCSであり、前記ピッカーTWMCSは、前記ピッカーTWMCSに電子パルスピッカー(EPP)パルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を含み、前記方法は、前記ピッカーTWMCSにEPPパルスを印加することにより、前記ピッカーTWMCSの前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、前記EPPパルスの印加中に前記ピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された前記電子を前記電子ビームから除去することを更に含む、方法。
【請求項28】
請求項22~27のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSのうちの第2のTWMCSが、前記CCAの下流に配置されたダウン選択TWMCSであり、前記方法は、前記TWMCSキッカーに第1のRF周波数F1でRFエネルギーを印加することと、前記ダウン選択TWMCSに第2のRF周波数F2でRFエネルギーを印加することと、を更に含み、F1/F2又はF2/F1のいずれかが整数である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[政府利益の説明]
本発明の一部は、エネルギー省SBIR Phase IIA Grant #DE-SC0013121に基づく米国政府の資金援助を受けて行われ、米国政府は一定の権利を有し得る。
[関連出願]
本出願は、2019年4月24日に出願された米国特許出願第16/393,469号であり、現在は2019年12月24日に発行された米国特許第10,515,733号の優先権を主張する。本出願はまた、2019年10月24日に出願された米国特許出願第16/662,434号の優先権を主張する。これら出願の両方は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、パルス電子ビームを生成するための装置及び方法に関し、より具体的には、低エネルギー及び中エネルギーのパルス電子ビームを非常に高速で生成及び制御するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低エネルギー及び中エネルギーのパルス電子ビームの生成と正確な制御は多くの産業、医療、及び研究用途で必要であり、これら用途は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、水平/垂直加速器ベースビームライン(HAB/VAB)、並びに、SEM若しくはTEM、又はHAB/VABにおける電子ビームをプローブとして使用する関連実験分析方法を含む。
【0004】
研究では、超短パルス持続時間を有するパルス電子ビームが、様々な材料の動的プロセスを調査するために使用される。多くの場合、電子ビームは、レーザービームなどの他の一次励起プローブ、又はX線ビームなどの他の光子ベースプローブと組み合わされる。一例として、「ポンププローブ」クラスの実験がある。
【0005】
特定の長さと電荷(すなわち強度)の電子ビームパルスを周期的なシーケンスで生成する手法の1つは、外部電場と組み合わせてレーザー又は熱のいずれかを使用して電子を励起することにより、電子源(カソード)の表面上で直接、電子パルスを生成することである。
【0006】
励起方法としてレーザーを使用する場合、電子パルスのシーケンスは、レーザー光子パルスの波長、出力、及び/又は時間的構造(パルス長及び繰返し周波数)を調整することによって制御される。例えば、フェムト秒レーザーと光電陰極電子エミッタの組み合わせが使用される場合、電子パルス長は、fsレーザーのパルス長と光電陰極の応答時間によって厳密に決定される。この手法を使用すると、100フェムト秒(「fs」)以下の短いパルス長を日常的に取得することが可能である。
【0007】
しかしながら、本明細書では、少なくとも1GHz以上の繰返し周波数として定義される高い繰返し周波数は、レーザー励起電子ビームには単純には利用できない。なぜなら、最新のレーザーは、およそ100MHz以下の繰返し周波数しか可能ではないからである。例えば、市販のUTEM(Ultrafast TEM)は、ポンプ信号とプローブ信号の両方がレーザーで作動されるストロボスコープ式ポンププローブ法である。電気的、磁気的、又はその両方で駆動される多くのプロセスを含む大部分のレーザー駆動プロセスは、1GHzを超える周波数で永久にサイクルでき、したがってオペランド顕微鏡検査において実際に可能になり、その最も顕著な例が半導体デバイスでのスイッチングである。しかしながら、UTEMでは、データが長期間にわたって繰り返し収集されており、調査対象のプロセスが不可逆的に損傷されないように、ポンプレーザーからの熱負荷を管理する必要がある。したがって、より高い繰返し周波数のレーザーが利用可能であったとしても、UTEMシステムは典型的には0.1GHz未満で動作し、実験に応じて約0.1MHzで動作することもある。
【0008】
加えて、実験システムでは多くの場合、連続ビームモードとパルスビームモードを切り替えるための柔軟で単純なソリューションを提供することが重要である。パルスビーム生成のために光電陰極とfsレーザーの組み合わせを使用する場合、必要な連続ビームは、別個の熱電子源又は電界放出源を使用して生成される必要がある。
【0009】
これに対して、励起方法として熱と外部電場とを組み合わせて使用する場合、電子パルスのシーケンスは、電場強度と、電場パルスの時間的構造(パルス長とパルス繰返し周波数)とによって制御される。
【0010】
パルス電子ビームを生成する更に別の手法は、連続電子ビームを、所望の電子パルスタイミングに従って所望の周期で機械的又は電磁的に遮断及び遮断解除(すなわち、「チョップ」)することである。典型的には、ビームに横方向振動を与え、次いでアパーチャを使用して振動するビームをパルスにチョップする。GHz周波数範囲における数十kVの電子ビームをチョップする偏向キャビティ技術を使用する手法が1970年代から知られている。
【0011】
この手法によれば、連続電子ビームが、本明細書では電磁機械式パルサー(EMMP)と称されるデバイスを通して導かれ、このデバイスは、ビームをチョップして出力をコリメートするように動作する。EMMPは「キッカー」を含み、キッカーは、キッカー内で生成された時間変化電場及び時間変化磁場のうちの少なくとも1つに従って、無線周波数エネルギーを使用してビームに横方向振動を与え、その後、横方向振動しているビームをアパーチャがパルスに「チョップ」する。RFは、キッカー内で「横方向」モードで生成される。これは、キッカーの電界成分及び磁界成分が、ビーム伝搬方向に対して横方向に振動することを意味する。より具体的には、RF波の電気成分及び磁気成分は、電子が伝搬する方向に沿ったEMMPの長軸を含む直交平面内を伝搬する。
【0012】
EMMPキッカーを実装する可能性の1つは、「ストリップライン」を使用することである。周知のように、最も単純な形である、2つの平坦な金属平行スラブを備える金属進行波ストリップラインでは、2つのスラブ間の媒体が真空又は空気である場合、RF電磁波の位相速度はストリップラインに沿って光速で移動する。しかしながら、多くの用途では電子は遥かにゆっくりと移動する。例えば、TEM用途では、電子のエネルギーは典型的には100keV~300keVの範囲にあり、電子ビームの速度は約2.1×108m/sであり、これは光速の約70%に過ぎない。
【0013】
したがって、多くのEMMP用途では、RF波と電子との相互作用時間を制限することが必要である。なぜなら、そうしないと、電子に位相すべりが発生するからであり、これは、印加される全体的なキック力が大幅に低減される又は更には打ち消されるであろうことを意味する。とりわけ、この理由から、現在の手法では、多くの場合、単一セルの偏向キャビティを1つだけ使用し、典型的には、パルス長はせいぜい1ピコ秒(「ps」)、繰返し周波数は1GHz以下に限定され、変更又は調整することができない。更には、これらの手法は、100キロ電子ボルト(「keV」)未満のエネルギーを有する低エネルギー電子ビームを生成するためにのみ適用可能である。おそらく更により重要なことに、これらの手法は、典型的には、横方向(ビーム直径及び発散)と長手方向(時間的コヒーレンス)の両方において、非常に広範囲の電子ビームの品質劣化をもたらす。
【0014】
横方向偏向キャビティ(TDC-EMMP)を実装するEMMPは、米国特許第9,697,982号、及びUltramicroscopy 161(2016)130-136において発行された記事で開示されており、これらは両方とも、あらゆる目的で本明細書に参照として組み込まれる。これらの参考文献に開示されているTDC-EMMPは、連続入力電子ビームに空間振動を与えるメカニズムとして、横方向偏向キャビティ内に進行波ではなく定常電磁波を生成させることにより、位相速度不整合の問題を回避している。このTDC-EMMP手法は、1GHzを超えるパルス周波数で、及び横方向及び長手方向の分散を最小限に抑えて、高デューティサイクルでパルス化できる電子ビームを生成できる。次いで、空間的に振動するビームを調整可能チョッピングコリメートアパーチャ(「CCA」)に適用して、ビームを一連のパルスに分割し、その後、複数の空洞共振器及び/又は磁気四重極を備える分散抑制セクションを使用して、パルスビームの時間的及び空間的分散を抑制する。
【0015】
図1Aは、TDC-EMMP手法の基礎となる基本的概念を示す概念図である。図示した例では、初期的には連続的な「DC」電子ビーム100が、1GHz~10GHzの範囲内にある共振周波数で動作する真空充填されたTDC102を通過する際に、横方向変調されて正弦波110になる。正弦波110の振幅は、変調されたビームが伝搬するにつれて大きくなり、次いでビーム110は、10μm~200μmで調整可能な開口部106を有するチョッピングコリメートアパーチャ、すなわち「CCA」104に衝突する。CCAは、ビームを「チョップ」してパルス108にし、パルスは、TDC変調周波数の2倍である超高繰返し周波数でCCAから現れる。なぜなら、パルス108は、ビーム変調の正弦波110をアップスイングとダウンスイングの両方で切断することによって生成されるからである。アパーチャ開口部106とTDCの変調フィールドは一緒に作用してパルス長を100fs~10psに調整し、その結果、TDC-EMMPデバイスのデューティサイクルは20%以下になる。
【0016】
ビーム100がチョップされてパルス108になった後、更に何もなされなければ、パルス108のストリームの長手方向発散及び横方向発散の両方が増加するであろう。換言すれば、パルスはより長くなり(伝搬方向、すなわち「z」方向、における時間的発散)、広がる(x方向及びy方向における空間的分散)であろう。これを回避するために、この発散を逆転及び抑制する追加の構成要素112、114が、図1Aに示すように、CCA110の下流の発散抑制セクションに含まれる。図1Aの例では、発散抑制セクションは、追加の復調するTDC 114を含み、これは設計が、変調TDC102並びに磁気四重極112と同じである。TDC-EMMPの特徴及び基礎をなす原理に関する追加の詳細は、米国特許出願第15/091,639号、及びUltramicroscopy 161(2016)130-136に示されている。
【0017】
図1Bを参照すると、同様の実装において、TDC-EMMP120は、第1の電磁キッカー102、コリメートアパーチャ112、第1の磁気四重極112、復調要素として機能する第2の「ミラー」電磁キッカー114、第2の磁気四重極116、及び第3の磁気四重極118を含む。入射する長手方向のDC電子ビーム100は、光軸に沿って導かれる(図1Bの破線)。TDC-EMMP120の入口において、第1のビームキッカー102によって生成された電磁場によって、DCビーム100に横方向の正弦波運動量が与えられる。電磁場は横方向に振動するので、直角をなすその電気成分と磁気成分とは時間と共に変化し、その結果、入射する電子100に印加される変調力は、その電子がTDCキッカー102に到着する時間に依存する。
【0018】
変調されたビームが光軸100に沿って(図1Bの下向きに)伝搬するにつれて、正弦波の振幅は横方向(図の水平方向)に大きくなる。ビームが、第1のキッカー102の下流において光軸100上に配置されたコリメートアパーチャ104に到達すると、アパーチャ104におけるスリットがビーム100をチョップし、ビームをパルスシーケンスに変換する。しかしながら、アパーチャを通過した後、ビームは拡大し、ビームサイズと発散の両方が増加する。図1Bに示すように、四重極磁石112、116、118、及び第2の「ミラー」ビームキッカー114の追加により、ビーム100は復調され、そのエミッタンス拡大及びエネルギー拡散の両方(すなわち、ビームの空間的及び時間的コヒーレンスの両方)が減少し得る。
【0019】
TDC-EMMP手法によれば、パルス長、したがってパルスのデューティサイクルは、RF振幅を変化させることにより調整できる。しかしながら、TDCキッカー内の定在波の波長はTDCの寸法により固定される。したがって、パルス周波数は、電子速度を変えることによってのみ調整可能であり、独立して調整することはできない。
【0020】
EMMP電子ビームパルスへの別の手法は、RFがキッカーを通って伝搬する際にRFの位相速度を低下させるように構成されたストリップラインに進行RF波を実装することである。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に含まれる米国特許出願第15/368,051号は、そのような手法を開示している。その手法によると、キッカー内で進行RF波が生成されるが、RF波は誘電体を通って伝搬されて、RF波の位相速度は光速よりも遅くなり、それにより電子速度をRF位相速度に一致させることができる。より具体的には、この手法によれば、「キッカー」は、インピーダンス負荷によって終端される進行波伝送ストリップライン(TWTS)である。この手法の例示的な実装形態では、TWTSキッカーは誘電体で充填された中空の連続管である。電子ビームは管の中空中心を通って伝搬する一方で、横モードRF波は同時にチューブを通って伝搬する。上述したように、誘電体は、RFの位相速度を、ビーム中の電子の速度に一致させることができる準光速に低減させる役割を担う。
【0021】
TWTSキッカー内のRF位相速度はRF周波数に依存しないので、RF周波数を所望の値に調整することにより、ビームの変調周波数と結果として得られるパルス周波数とを非常に広い範囲にわたって調整できる。電子ビーム変調の振幅、それゆえパルス幅、したがってパルスデューティサイクルは、適用されるRFの振幅を変化させることにより、独立して変化させることができる。実施形態では、この手法による発散抑制セクションは、パルスビームの残留横方向振動及び発散を抑制するように機能する「ミラー」誘電体TWTSを含む。
【0022】
TWTS-EMMPは、超広動作帯域幅にわたってパルス幅とデューティサイクルを独立して連続的に調整できる利点を提供し、また製造が単純であるという利点も含む。実施形態では、これにより、データを迅速に蓄積するために高いパルス繰返し周波数を維持しながら、放射線照射レートを測定サンプルの損傷閾値レベル未満に低減させることが可能になる。重要な用途には、広範囲の空間的及び時間的スケールにわたる細胞構造の電子トモグラフィが含まれる。TWTS-EMMPはまた、透過型電子顕微鏡(TEM)用途において高周波ストロボスコープモードを可能にするのに有利であり、それによりTEMの照射レートを変化させることができる。低照射レートTEMは、例えば、高エネルギー電子によって引き起こされる放射線損傷に対して脆弱である生体サンプルを検査する場合に非常に重要になり得る。
【0023】
「デューティサイクル」という用語は、本明細書では、電子ビームパルス幅を、連続する電子ビームパルス間の時間で割った比として定義されることに留意すべきである。「連続的変動」という用語及びその派生語は、本明細書では、その定義された範囲全体にわたって間隙なしでスムーズに調整できるパラメータを指すために使用されることに更に留意すべきである。
【0024】
TWTS-EMMPは以前の手法に比べて多くの利点を提供するが、ある状況下では、TWTS-EMMPに含まれる誘電体は、入射電子の衝撃により誘電体が電荷を獲得する「電子帯電」を受ける可能性がある。これは、誘電体に薄膜導電性コーティングを施すことにより軽減され得るが、そのような導電性フィルムを施すと、電磁エネルギーの損失及びシステム効率の低下がもたらされ得る。
【0025】
したがって、必要なのは、広範囲のパルス繰返し周波数とパルスデューティサイクルとにわたって独立して連続的に調整可能なパルス電子ビームの生成を含むが電子帯電の影響を受けない、TWTS-EMMPの多くの利点を提供するTWTS-EMMPの代替である。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、新規の「進行波金属コームストリップライン」キッカーを実装する電磁機械式パルサー(EMMP)であり、本明細書ではTWMCS-EMMPと呼ばれる。開示されるTWMCS-EMMPは、TWTS-EMMPの代替であり、広範囲のパルス繰返し周波数及びパルスデューティサイクルとにわたって独立して連続的に調整可能なパルス電子ビームの生成を含む、TWTS-EMMPの大部分の利点を提供する。加えて、TWMCSキッカーの外面は完全に金属性であるため、TWMCS-EMMPは電子帯電の影響を受けない。実施形態では、開示されるTWMCS-EMMPシステムによって生成される電子パルスの周波数は、100MHz~50GHzで連続的に調整でき、電子照射エネルギーはまた、パルスのデューティサイクルを調整することにより、実施形態では少なくとも1%から10%に及ぶ範囲内で連続的に調整できる。
【0027】
TWTSキッカーの場合のように誘電体を実装することにより進行RF波の位相速度を遅くする代わりに、本発明のTWMCSキッカーは、一方の端部にRF励起入力部を有し、実施形態では他方の端部に、50オーム負荷などの終端負荷を有する一対の対向する金属(又は金属被覆された)「コーム」を使用する。同様の実施形態は、例えば2つ以上の周波数及び/又は振幅のRFがTWMCSに印加される実施形態では、両端にRF入力部を含む。
【0028】
本発明によれば、キッカーの構成、特に、コームの「歯」の幅、間隔、形状、オフセット、及び他の構造的特徴は、横方向電磁モードにてキッカーを通って伝搬するRF波の位相速度を制御及び決定し、このとき、位相速度は、広い周波数範囲にわたって駆動RF周波数に実質的に依存しない。したがって、本発明の各実現形態では、TWMCSキッカーの形状は、横方向電磁波の位相速度が入射電子ビームの電子速度と同期するように最適化され、入射電子ビームは、実施形態では100~300keV、そしていくつかの実施形態では100~500keVの電子運動エネルギーを有する連続ビームであり得る。
【0029】
実施形態は、パルサーに更なる調整能力を提供するように機械的に調整可能なTWMCS-EMMPの態様を含む。様々な実施形態では、これらの特徴は、調整可能なアパーチャを有するCCA、及びそれらの横方向及び/又は長手方向のオフセットを調整可能なコームを有するTWMCSを含み得る。いくつかの実施形態は、1つ以上の磁気又は静電ビームステアリング機能を含み、これは、例えば、TWMCSキッカーへの入力部、CCAの出力部、及び/又はTWMCS-EMMPの出力部に配置できる。
【0030】
実施形態は、例えば、TWMCSキッカーへの電子ビーム入力部に配置され得る1つ以上の追加のアパーチャを更に含んで、例えば、追加的にビームのコリメーションを提供する。CCAの要素及び/又は追加アパーチャのうちの1つ(含まれる場合)の要素は、アパーチャがビーム位置モニタ及び/又はビーム電流モニタとして使用され得るように、互いに電気的に絶縁され得る。
【0031】
本発明の実施形態は、分散抑制セクションに「ミラー」TWMCSを更に含む。いくつかの実施形態は、CCAの下流に「ダウン選択(down-selecting)」TWMCSを更に含み、これは、TWMCSキッカーの励起周波数F1の分数調波である第2のRF周波数F2(すなわちF1/F2=整数)においてRFによって励起され得る。その結果、ダウン選択キッカーは電子パルスの一部を偏向させてビームから外し、それにより、電子パルスの一部はダウン選択TWMCSの下流に位置するダウン選択アパーチャによって遮断されることにより、ビームに残っているパルスの数が減少し、その結果、TWMCSキッカー及びCCAによって決定されるパルス幅が狭くなり、ダウン選択TWMCSによって決定されるパルス繰返し周波数は遅くなる。
【0032】
本発明の実施形態は、装置の少なくとも1つのTWMCS内の少なくとも1つのコーム対にわたって横方向電場を印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を更に含む。横方向電場が存在する場合、電子がTWMCSを通過するときに横方向電場が電子を偏向させるので、電子は電子ビームから除去される。ビームと同期してピッカーフィールドのオンとオフを切り替えることにより、ビームから電子及び/又は電子のグループを選択的に除去する一方で、その他のものを通過させることが可能である。
【0033】
実施形態では、固定DCバイアスが、TWMCSコーム対の1つのコームに印加される。コーム対の他方のコームが電気的に中立の場合、印加されたバイアスは、電子をビームから偏向させるのに十分な振幅を有する、TWMCSを横切る横方向の「ピッカー」場を形成する。これらの実施形態のいくつかでは、EPP装置は、固定バイアスと等しい振幅のDC電気パルス(EPPパルス)がコーム対の他方のコームに印加されることを可能にするように更に構成され、その結果、各DCパルスの印加中に、ピッカー場は一時的に中立になり、ビーム中の電子はTWMCSを通過できる。したがって、EPPパルスは、EPPパルスが印加されている間だけ電子がビーム内に留まるという点で、電子ゲートパルスとして機能する。これらの実施形態のいくつかでは、EPPパルスは、1kHz以下から1MHz以上までの任意の繰返し周波数でTWMCSに印加され得る。
【0034】
様々な実施形態では、EPPパルスは、ビームの1つの電子のみが通過することを可能にする狭い幅を有することができる、又はEPPパルスは、所望の数の電子を含む電子バーストがTWMCSを通過することを可能にする任意の長さを有することができる。例えば、実施形態では、EPPパルスの長さは100ピコ秒から10マイクロ秒で可変である。様々な実施形態では、EPPパルスのタイミングは、例えば、TWMCSを駆動するRF信号、及び/又は横断型電子(TEM)サンプルのポンピングをトリガーする信号と同期させることができ、その結果、サンプルの動態像をリアルタイムで取得できる。
【0035】
実施形態では、一連のEPPパルスがTWMCSに印加され、EPPパルスの全てが等しい長さであり、間隔が等しい。他の実施形態では、単一のEPPパルスのみが印加され、更に他の実施形態では、EPPパルス幅及びEPPパルス間の間隔が任意の所望のパターンである一連のEPPパルスが印加される。
【0036】
本発明の第1の全般的な態様は、連続入力電子ビームを受け入れるように構成された入力部と、入力部の下流に位置する少なくとも1つの進行波金属コームストリップライン(「TWMCS」)と、を含む電磁機械式パルサー(「EMMP」)である。TWMCSの各々は、電子ビームが通過する内部通路を有し、TWMCSの各々は、TWMCSを通って伝搬されるRF進行波によってTWMCS内で生成される横方向時間変化電場及び横方向時間変化磁場のうちの少なくとも1つに応じて、振動する横方向偏向を電子ビームに与えるように構成されている。TWMCSのうちの第1のTWMCSはTWMCSキッカーである。
【0037】
EMPは、TWMCSキッカーの下流に位置するチョッピングコリメートアパーチャ(「CCA」)であって、電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、電子ビームを遮断し、それにより、電子ビームをチョッピングして、チョップド電子パルス繰返し周波数及びチョップドパルスデューティサイクルを有する、チョップド電子パルスのチョップドストリームにするように構成された、チョッピングコリメートアパーチャを更に含む。
【0038】
EMPは、電子パルスが、出力パルス繰返し周波数及び出力パルスデューティサイクルを有する、電子パルスの出力ストリームとして、EMMPから出現することを可能にするように構成された出力部と、EMMPの全ての要素を取り囲む真空チャンバであって、残留ガスによる電子ビームの大幅な減衰なしに、電子ビームがEMMPを通過することを可能にするのに十分な真空を提供するように構成された、真空チャンバと、を更に含む。
【0039】
TWMCSの各々は、少なくとも1つの対向するコーム対を含み、コーム対のうちの対向するコームの各々がストリップを含み、実質的に同一で等間隔に配置された複数のブロックがストリップから歯として延びている。コーム対のうちのコームは、歯が内側を向くように間隔を空けて配置され、その結果、電子ビームが通過する内部通路がコーム対の歯の間に存在する。コーム対は、コームの近位端に近接するRFエネルギー入力部と、反対側のコームの遠位端に近接するRFエネルギー出力部とを含む。コーム対の歯は、コーム対の近位端から遠位端に伝搬する進行RF波の位相速度を制御して、位相速度を電子ビームの電子速度に一致させるように構成され、コーム対の全ての露出面は導電性である。
【0040】
実施形態では、TWMCSのうちの少なくとも1つがピッカーTWMCSであり、ピッカーTWMCSは、ピッカーTWMCSにEPPパルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を更に含み、EPPパルスの各々が、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、該横方向電場は、EPPパルスの印加中に、ピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された電子を電子ビームから除去するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、EPPは、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの第1のコーム対の第1のコームに電気バイアスを維持するように構成され、EPPパルスの各々は、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの第1のコーム対の他方の第2のコームに等しい電気バイアスを印加し、その結果、EPPパルスの各々の印加中に、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの第1のコーム対の両方のコームが、等しい電気バイアスを保持し、それにより、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの第1のコーム対を横断する電場が無効になる。これら実施形態のいずれにおいても、EPPパルスのパルス繰返し周波数が1kHz~10MHzの範囲にわたって調整可能であり得る。
【0041】
上記の実施形態のいずれも、CCAの下流に分散抑制セクションを更に含むことができ、分散抑制セクションは、TWMCSキッカーによって与えられる偏向から生じる電子パルスのストリームの残留分散を抑制するように構成されている。これらの実施形態のいくつかでは、TWMCSのうちの第2のTWMCSは、分散抑制セクションに含まれる復調ミラーTWMCSであり、電子ビームは、CCAの下流のミラーTWMCSの内部通路を通過し、ミラーTWMCSは、ミラーTWMCSを通って伝搬するRF進行波の位相速度を、電子ビームの速度に一致させる物理的構成を有し、ミラーTWMCSは、TWMCSキッカーによって電子ビームに与えられた振動する横方向偏向を復調するように構成されている。これらの実施形態のいずれも、少なくとも1つの磁気四重極を更に含むことができる。
【0042】
上記の実施形態のいずれにおいても、出力ストリームにおける電子パルスの出力パルス繰返し周波数は0.1GHz~20GHzで調整可能である。
【0043】
上記の実施形態のいずれにおいても、出力ストリームにおける電子パルスのパルス長は100fs~10psで調整可能である。
【0044】
上記の実施形態のいずれにおいても、出力ストリームにおける電子パルスの出力デューティサイクルは1%~10%で調整可能である。
【0045】
上記の実施形態のいずれにおいても、出力ストリームにおける電子パルスの出力パルス繰返し周波数及び出力デューティサイクルは独立して調整可能である。
【0046】
上記の実施形態のいずれにおいても、EMMPは、100~500keVの運動エネルギーを有する入力電子ビームを受け入れるように構成され得る。
【0047】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSキッカーは、電子ビームが同時に通過する2つの対向するコーム対を含むことができ、2つの対向するコーム対は、その第1の対が電子ビームを第1の偏向面内で偏向させ、その第2の対が、第1の偏向面と直交する第2の偏向面内で偏向させるように構成され、第1の偏向面と第2の偏向面との交線が、電子ビームが通過する内部通路に沿って存在する。
【0048】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの第2のTWMCSがダウン選択TWMCSであり、ダウン選択TWMCSは、CCAの下流に配置され、CCAから出現する電子パルスのチョップドストリームから出てくるいくつかのパルスを偏向させることにより、出力ストリームの出力パルス繰返し周波数を低減させるように構成され得る。これらの実施形態のいくつかでは、EMMPは、ダウン選択TWMCSの下流に位置するダウン選択アパーチャを更に含む。
【0049】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの少なくとも1つの、対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、コームのうちの少なくとも1つが、コーム対のコームの他方に向かって及び離れるように横方向にシフトするように構成され得る。
【0050】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの少なくとも1つの、対向するコーム対のうちの少なくとも1つのRFエネルギー出力が、終端インピーダンスに接続され得る。
【0051】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの少なくとも1つの、対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、コームのうちの少なくとも1つの向きが、コーム対のコームの間の角度を調整するように変更されるように構成され得る。
【0052】
上記の実施形態のいずれにおいても、CCAのアパーチャサイズは、機械的に調整可能であり得る。
【0053】
上記の実施形態のいずれにおいても、EMMPは電気的に絶縁された要素を有するアパーチャを含むことができ、要素は、アパーチャがビーム位置モニタ及びビーム電流モニタのうちの少なくとも1つとして機能することを可能にする。
【0054】
上記の実施形態のいずれも、電子ビームの伝搬方向を調整するように構成された少なくとも1つの磁気又は静電ビーム偏向要素を含み得る。
【0055】
本発明の第2の全般的な態様は、電子パルスを生成する方法である。本方法は、第1の全般的な態様の任意の実施形態によるEMMPを提供することと、TWMCSキッカーのRFエネルギー入力部にRFエネルギーを印加しながら、連続電子ビームがTWMCSキッカーを通過することを生じさせることと、を含み、該RFエネルギーは、進行RF波がTWMCSキッカーを通って伝搬するようにさせ、該進行RF波は、電子ビームの電子速度に実質的に等しい位相速度を有し、それにより連続電子ビームに空間振動を与える。
【0056】
本方法は、空間的に振動する電子ビームがCCAに影響を与えるようにして、電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、CCAが電子ビームを遮断するようにし、それにより、電子ビームをチョッピングして、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数を有する、チョップド電子パルスのストリームにすることと、チョップド電子パルスの幅を、所望のチョップド電子パルス幅に等しくなるように調整するように、TWMCSキッカーに印加されるRFエネルギーの振幅を調整することと、TWMCSキッカーに適用されるRFエネルギーの周波数を調整して、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数の半分に等しくなるようにすることと、を更に含む。
【0057】
実施形態では、所望の電子パルス繰返し周波数は100MHz~50GHzであり、所望の電子パルス幅は100fs~10psの範囲にある。
【0058】
上記の実施形態のいずれにおいても、特定の電子パルスエネルギーは、100keV~500keVであり得る。
【0059】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSキッカーは、直交する2つのコーム対を含むことができ、この方法は、TWMCSキッカーのコーム対のうちの第1の対に第1の周波数でRFエネルギーを印加することと、TWMCSキッカーのコーム対のうちの第2の対に第2の周波数でRFエネルギーを印加することと、を更に含み得る。
【0060】
上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSキッカーは、直交する2つのコーム対を含むことができ、CCAは、非円形の形状を有するアパーチャ開口部を含むことができ、本方法は、TWMCSキッカーのコーム対のうちの第1の対に第1のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、TWMCSキッカーのコーム対のうちの第2の対に第2のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、第1のRF振幅と第2のRF振幅との差を変化させることにより、チョップド電子パルス幅を変化させることと、を更に含むことができる。
【0061】
上記実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの少なくとも1つをピッカーTWMCSとすることができ、ピッカーTWMCSは、ピッカーTWMCSに電子パルスピッカー(EPP)パルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を含み、本方法は、ピッカーTWMCSにEPPパルスを印加することを更に含むことができ、それにより、ピッカーTWMCSの対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、EPPパルスの印加中にピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された電子を電子ビームから除去することができる。
【0062】
そして、上記の実施形態のいずれにおいても、TWMCSのうちの第2のTWMCSを、CCAの下流に配置されたダウン選択TWMCSとすることができ、本方法は、TWMCSキッカーに第1のRF周波数F1でRFエネルギーを印加することと、ダウン選択TWMCSに第2のRF周波数F2でRFエネルギーを印加することと、を更に含むことができ、F1/F2又はF2/F1のいずれかが整数である。
【0063】
本明細書に記載の特徴及び利点は全てを含むものではなく、特に、図面、明細書、及び特許請求の範囲を考慮すると、多くの追加の特徴及び利点が当業者には明らかであろう。その上、本明細書で使用される言語は、主に可読性及び指示目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1A図1Aは、従来技術のTDC-EMMP手法の基礎となる基本的概念を示す概念図である。
【0065】
図1B図1Bは、復調キッカー及び3つの磁気四重極を備える復調セクションを含む、従来技術によるEMMPシステムを示す概念図である。
【0066】
図2A図2Aは、TWMCSが「コーム」を一対のみ含む一実施形態におけるTWMCSキッカーの簡略化された側面図である。
【0067】
図2B図2Bは、図2AのTWMCSの端面図である。
【0068】
図2C図2Cは、TWMCSが2対の「コーム」を含む一実施形態におけるTWMCSキッカーの簡略化された側面図である。
【0069】
図2D図2Dは、図2CのTWMCSの端面図である。
【0070】
図2E図2Eは、式1の基礎となる、図2AのTWMCSの同等モデルの側面図である。
【0071】
図2F図2Fは、式1から導出された一群の分散曲線を提示するグラフである。
【0072】
図3A図3Aは、TWMCSによる電子ビームの偏向、及びCCAによる電子ビームのチョッピングを示す概念図である。
【0073】
図3B図3Bは、パルス電子ビームのデューティサイクルの定義を示す簡略図である。
【0074】
図4図4は、ミラー復調TWMCSと、3つの磁気四重極とを含む復調セクションを含む一実施形態のブロック図である。
【0075】
図5A図5Aは、本発明の一実施形態におけるTWMCSの側面斜視図である。
【0076】
図5B図5Bは、図5AのTWMCSの内部構造を示す断面図である。
【0077】
図6図6は、本発明の一実施形態における、TWMCSを介して伝搬する電磁波の位相速度のグラフである。
【0078】
図7】本発明の一実施形態における、TWMCS-EMMPに関する出力電流のシミュレーション結果を時間の関数として提示するグラフである。
【0079】
図8図8は、図2Cの実施形態における、アパーチャプレート上でトレースされたリサージュパターンを示し、2つのコーム対の駆動周波数は4:3の周波数比で位相ロックされている。
【0080】
図9A図9Aは、所望のアパーチャサイズを選択するようにスライド可能である、異なるサイズの複数のアパーチャが貫通したプレートを含むCCAの正面図である。
【0081】
図9B図9Bは、図9AのCCAの背面図である。
【0082】
図10A図10Aは、CCAのアパーチャサイズを調整するために使用できる複数の重なり合うスライド可能な要素を含むCCAの正面図である。
【0083】
図10B図10Bは、図10AのCCAの背面図である。
【0084】
図11A図11Aは、アパーチャサイズを調整するために機械的に作動させることができる絞りを含むCCAの正面図である。
【0085】
図11B図11Bは、図11AのCCAの背面図である。
【0086】
図12A図12Aは、それらの相対的な緯度方向オフセットで調整可能なコームを有するTWMCSの側面図である。
【0087】
図12B図12Bは、それらの相対的な向きで調整可能なコームを有するTWMCSの側面図である。
【0088】
図13図13は、様々な場所にビームステアリングデバイスを含むTWMCS-EMMPのブロック図である。
【0089】
図14A図14Aは、「ダウン選択」TWMCS及びアパーチャを含む本発明の実施形態の簡略図である。
【0090】
図14B図14Bは、図14Aの実施形態における2つのキッカーの機能を説明する2つの曲線を提示する。
【0091】
図15図15は、電子パルスピッカー(EPP)を含むTWMCS-EMMPのブロック図である。
【0092】
図16A図16Aは、狭いEPPパルスを使用して電子ビームからの単一電子を選択することを示す図である。
【0093】
図16B図16Bは、図16AのEPPパルスの2倍の幅のEPPパルスを使用して、電子ビームから連続する電子対を選択することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明は、新規の「進行波金属コームストリップライン」キッカー(「TWMCS」)を実装する電磁機械式パルサー(「EMMP」)であり、本明細書ではTWMCS-EMMPと呼ばれる。開示されるTWMCS-EMMPは、TWTS-EMMPの代替であり、広範囲のパルス繰返し周波数とパルスデューティサイクルとにわたって独立して連続的に調整可能なパルス電子ビームの生成を含む、TWTS-EMMPの大部分の利点を提供する。加えて、TWMCSの外面は完全に金属性であるため、TWMCSは電子帯電を影響を受けない。実施形態では、開示されるTWMCS-EMMPシステムによって生成される電子パルスの周波数は、100MHz~50GHzで連続的に調整でき、電子照射エネルギーは、RFの振幅を、そしてそれによりパルスのデューティサイクルを調整することにより、実施形態では少なくとも1%から10%に及ぶ範囲内で、独立して連続的に調整できる。
【0095】
図2A図2Dを参照すると、TWMCS 210は、少なくとも1つの対向するコーム対200を含み(図2A及び図2B)、実施形態では、2つの直交する対向するコーム対200を含む(図2C及び図2D)。図から分かるように、一対の対向するコームの各コーム200はストリップ206を含み、電子ビーム204が通過する内部通路がコーム200対のコーム200の間に存在するように、複数の実質的に同一の等間隔のブロックがストリップから歯202として内側に延びている。コーム200の少なくとも露出面は金属性である。図2A図2Dの実施形態では、コームは全て互いに平行であり、対向するコームの歯は互いに整列している。他の実施形態では、所望の電磁波モードを励起し所望のビーム変調を実現するために、コームは互いに平行ではなく、及び/又は歯は整列していない。様々な実施形態では、歯202及び/又はストリップ206は、断面が正方形ではなく、用途の要件に応じて、長手方向又は横方向のいずれか又は両方に成形されている、及び/又は角度付けされている。
【0096】
本発明によれば、電磁進行波(図示せず)が、キッカー210を通って、コーム200に沿ってそしてコーム200の間を長手方向に伝搬するにつれて、位相速度は歯202によって遅くなる。図2Eを参照すると、広範囲にわたる任意の所与の電子ビーム204入力運動エネルギー(実施形態では100~300keVであり得る)について、TWMCS210を通って伝搬される電磁進行波の位相速度が、ビーム204中の電子の非相対論的速度と同期するように、TWMCSキッカー210が、幅t、間隔d、繰返し間隔P、及び歯202の高さhの構成を有するように準備できる。
【0097】
図2Eの簡単な実施例を取り上げて、TWMCSキッカー210が差動RF信号によって駆動される、すなわち、TWMCS210の2つのコーム200が同じ振幅を有するが位相が180度だけ外れたRF信号によって駆動されると想定すれば、図2Aの実施形態のRF伝搬は、仮想の無限に薄い導電面214がTWMCS212のコーム200の間の中央に挿入されている物理モデル、すなわち図2Eに示す同等の構造と同等になる。
【0098】
図2Eと等価の構造によれば、分散関係は次式で与えられる。
【数1】
ここで、kはRFの波数、τn及びβnはそれぞれ、x(横)方向及びz(長手)方向の伝搬定数の次数であり、他の変数は図2Eで定義されているとおりである。式1を使用して、図2Fに示すような分散関係曲線のファミリーを数値的に計算でき、このとき、RFの位相速度を電子の運動速度と一致させるように、d、t、b、及びhの適切な値が選択され得る。実施形態は、図中の下の曲線によって示されるように、最低モード、β=0、を実装し、このモードでは電場も磁場も波の伝搬方向zにいかなる成分も持たない。このモードは、電子がTWMCSキッカー210を通過する際に、電子の運動エネルギーが影響を受けないことを保証するので理想的である。図2Eの実施形態のより完全なフィールド分析は、Keqian Zhang及びDejie Liによる、Electromagnetic Theory for Microwaves and Optoelectronics,2nd Edition,ISBN 978-3-540-74295-1 Springer Berlin Heidelberg New York,Chapter 7、に見出すことができ、あらゆる目的でその全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0099】
したがって、電子に対するTWMCSキッカー210の作用は、TWTSキッカーと同様であるが、誘電体材料を使用しておらず、したがって、キッカーの電子帯電がない。
【0100】
図3Aは、入射する連続電子ビーム100がどのように電子パルスのビーム300に変換されるかを示す、本発明の実施形態におけるTWMCS-EMMPの簡略化されたモデルである。各電子がTWMCSキッカー200を通過する際に、電子はキック角度θkにて偏向される。アパーチャ104まで距離Lを移動した後、θk<θ(図にθが示される)の場合、電子はアパーチャ104を通過する。そうでない場合、電子はアパーチャ104によって遮断される。したがって、電子の一部のみがアパーチャ104を通過し、したがって、出現するパルス電子ビームの平均電流は、デューティサイクル(図3Bに図示するように、D=Δt/T)によって決定される、流入するDC電流の一部である。
【0101】
本発明のトンネル電子顕微鏡(TEM)用途に関して、典型的なTEMバイオサンプルグリッドは、200~400のメッシュを有する。例えば、200メッシュのメッシュサイズは127μmである。電子が、およそ1.6×104平方マイクロメートルの単一のメッシュ穴を通して集束されると想定し、バイオサンプル用の照射レートが毎秒1平方オングストローム当たり10電子未満である必要があると想定すると、その場合の照射レートの下限は、毎秒1.6×1013電子、すなわち、平均パルスビーム電流が2.5マイクロアンペアになる。本発明のTWMCS-EMMPの実施形態では、100MHz~10GHzの間で連続的に調整可能なパルス周波数の場合、デューティサイクルは1%~10%で可変であり、これは、実施形態が0.25~2.5μAの連続可変ビーム電流を供給できることを意味する(すなわち、毎秒1平方オングストロームあたり1~10個の電子)。TEMへの様々な用途において、たとえ総放射線照射レートが同じであっても、すなわち、高い繰返し周波数ではパルスあたりの電子数が少ないのに対し、低い繰返し周波数ではパルスあたりの電子数が多い場合であっても、本発明によって提供される、電子パルス幅及びデューティサイクルと、入射電子ビームの強度との独立した制御を使用して、2つ以上の異なる低照射レートレジームの効果を研究することができる。
【0102】
図4を参照すると、本発明の実施形態は、図1Bに示すTWC-EMMPと同様の方法で構成されるが、図4の実施形態では、図1Bの2つのTWCキャビティ102の代わりに、2つの金属コームキッカー210が含まれることを除く。歯202の寸法及びそれらの間の間隔、並びにコーム200間の間隙は、以下を実現するように選択される:
1)電子が2つのコーム200間の間隙を横断するのに必要な横方向のキック力を提供する;
2)電子の速度と一致するようにRF波の位相速度を減速する;
3)可能な限り広い周波数範囲にわたって実質的に純粋な進行波を形成するように、伝送線路210のインピーダンスを終端インピーダンス(例えば50オーム)に一致させる。
【0103】
本発明の様々な実施形態では、TWMCS210の外側表面は、銅などの様々な低抵抗金属の任意の組み合わせであり得る。TWMCSのコーム200は、全体を低抵抗金属から作製することができる、又はコームを別の材料から作製し低抵抗金属でコーティングすることができる。例えば、コームは、銅の表面コーティングが施された固体アルミニウムから作製することができる。100MHz以上の電磁波は、TWMCSコーム200の導電性表面「表皮」上(浅い「表皮深さ」)だけを伝搬するので、コームが低抵抗金属でコーティングされている限り、例えば3D印刷プラスチックであっても、TWMCSコーム200の内部には任意の材料を使用することができる。低抵抗コーティングは、例えば、電気めっき、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、スパッタリング、又は分子線エピタキシー(MBE)によって適用できる。いくつかの実施形態では、TWMCS210は、真空ガス放出を最小限に抑えるように、異種金属の薄層でコーティングされた金属ベース材料を含む。
【0104】
図4を引き続き参照すると、実施形態では、TWMCS-EMMPデバイス420に2つのTWMCSユニット210、220が含まれる。第1のTWMCS210は、DC電子ビーム100がCCAアパーチャ104によってチョップされ得るように、DC電子ビーム100を変調するキッカーとして使用される。第2のTWMCS220は、分散抑制セクションに含まれ、第1のTWMCS210の変調動作から生じる、パルスビームの横方向の運動量及び分散(ビームアーチファクト)を抑制するための「ミラー」TWMCSとして使用される。ミラーキッカー220は、キッカーTWMCS210と比較して、同じ周波数及び振幅で、しかし反対方向に、電子に横方向の力を加えることによって、これらのアーチファクトを抑制する。TWMCSデバイス210、220の両方は、外部RF源(図示せず)によって駆動され。外部RF源は、実施形態では、広い周波数範囲にわたって作動するので、生成される電子パルスの繰返し周波数は、非常に広い範囲にわたって連続的に調整できる。実施形態は、TWMCSデバイス210、220のそれぞれに印加されるRFの相対位相をシフトさせることができる位相シフタを含む。実施形態では、RF源は振幅も可変であり、それにより、電子パルスのデューティサイクルを別々に調整することが可能である。他の実施形態では、2つのTWMCSデバイス210、220は、互いに位相ロックされているが異なる周波数でRFを印加できる別個のRF源によって駆動される。
【0105】
TWMCS-EMMP 420の全ての要素は、残留ガスによる大幅な減衰なしに電子がTWMCS-EMMP420を通過できるように、十分に高い真空を提供するように構成された真空チャンバ内に包囲されていることに留意すべきである。
【0106】
図5Aは、本発明の一実施形態におけるTWMCS210の斜視図である。図5Bは、TWMCS210の中心面に沿って見た図5Aの実施形態の斜視断面図である。TWMCS210の、このより詳細な図は真空チャンバ500を含み、真空チャンバは、キッカー210のコーム200、並びに、そこを通ってRFエネルギーがTWMCSに入る、近位端にある第1の真空フィードスルー502と、そこを通って進行RF波が抵抗性負荷(図示せず)によって終端されるか又はフィードバック読み取り値として送信される、遠位端にある第2の真空フィードスルー504とを取り囲んでいる。
【0107】
図6は、TWMCSを通って伝搬する電磁波の分散曲線(円)600を示すグラフであり、位相速度(分散曲線の傾き)が、本発明の実施形態では200keVの入力電子ビームと一致するように最適化されている。RF電磁波の位相速度が、最大約5GHzの周波数に対して、200keV電子の電子運動エネルギーに一致していること(グラフ602の左下隅の破線)が図から分かる。図に示す例では、位相速度は2.14×108m/s、すなわち光速の69.1%であり、これは、200keVの電子ビーム運動エネルギーに相当する。
【0108】
図7は、本発明の一実施形態における、TWMCS-EMMPに関する出力電流のシミュレーション結果を時間の関数として提示するグラフである。電流振幅700は、時間の関数として任意の単位で表されている。ここでは、入力連続ビームは一定である一方で、出力ビームは、TWMCS 210に適用されるRFの周波数によって決定される6GHzの周波数でパルス化される(CCA「チョッピングコリメートアパーチャ」は固定されていると想定)。電子パルスの繰返し周波数は、前述したように、TWMCSに適用されるRFの周波数の2倍である。
【0109】
図8は、一実施形態においてCCA104のアパーチャプレート104上に時間の経過と共にトレースされたリサージュパターンを示し、TWMCS210は、図2C及び図2Dに示すように、2つの直交するコーム対200を含み、2つのコーム対200の駆動周波数は等しくなく、代わりに4:3の周波数比で位相ロックされている。これにより、CCAアパーチャプレート104上に形成される、結果として得られるリサージュパターンは、CCAアパーチャ104の中央開口部を通過するパルス列をもたらし、このパルス列は、2つの駆動周波数の整数分数であるパルス繰返し周波数を有する。このリサージュ構成におけるTWMCSの広帯域の性質により、駆動周波数を任意の整数比で選択することが可能になり、それにより、パルス幅とパルス列周波数の連続的に調整可能な範囲を独立に選択することが可能になる。
【0110】
本発明の実施形態は、パルサーに更なる調整能力を提供するように機械的に調整可能である。様々な実施形態では、これらの特徴は、調整可能なアパーチャを有するCCAを含み得る。その最も単純な形態では、アパーチャ104は、電子が偏向されていないときに、電子が通過できる開口部を含む障壁である。開口部は、任意のサイズ、及び任意の形状、例えば円形、矩形、又はスリット形状とすることができる。
【0111】
本発明の実施形態は、より精巧なアパーチャを含む。例えば、図9A及び図9Bは、それぞれ、一実施形態におけるCCAの正面図及び背面図であり、CCAは、異なるサイズの複数の開口部が貫通しているスライディングストリップ900を含む。ストリップ900を上下に移動させて、下にあるプレートに設けられた、より大きな穴902の前に、選択された開口部を配置することにより、アパーチャのサイズを変化させることができる。
【0112】
図10A及び図10Bは、それぞれスライディングパネル1000の2つの直交する対を含むCCAの正面図及び背面図であり、この対は、CCAプレート内の大きな開口部902を覆って配置され、互いに近づくように及び離れるように移動して、アパーチャのサイズを連続的に変化させることができる。同様の実施形態では、スライディングパネル1000は一対のみが設けられて、アパーチャはスリットとして形作られる。これらの実施形態のいくつかでは、例えば図8に示すように、垂直方向及び水平方向への電子ビームの相対的な偏向の程度を調整すると、所与のアパーチャスリット幅に対してパルス幅が調整される。これらの実施形態のいくつかでは、パネル1000は、EMMPの他の部分から電気的に絶縁されており、その結果、CCA104をビーム電流モニタ及び/又はビーム位置モニタとして使用できる。
【0113】
図11A及び図11Bは、それぞれ、連続的に変化可能なアパーチャを提供するために回転され得る絞り1100を含むCCAの正面図及び背面図である。
【0114】
図12Aを参照すると、いくつかの実施形態では、TWMCS1210のコーム1200のうちの少なくとも1つを、例えば機械的アクチュエータによって、他方に対して位置をシフトさせて、コーム間のスペースを変化させることができ、それにより、進行波位相速度を、例えば、+/-500keVの運動エネルギー範囲にわたって、入力電子204の可変運動エネルギーに一致するように調整することが可能になる。実施形態は、この特徴を、階段状の歯1202、又は断面がスムーズなテーパを有する三角形として形作られた歯1202を有するコーム1200と組み合わせており、その結果、コーム1200間の間隙を調整すると、進行波に提示される歯1202の深さが効果的に調整される。
【0115】
同様に、図12Bに示すように、実施形態では、TWMCS 1212のコーム1204は平行ではない。これらの実施形態のいくつかでは、コーム1204は向きが可変であり、その結果、2つのコーム1204の間に形成される角度、したがってコーム1204間の通路の幅は可変であり、それにより、特別な電磁波モードが励起され、特別なビーム変調パターンが実現される。実施形態では、歯1202は矩形ではなく、凹状(図12Aに示すように)、凸状(図12Bに示すように)、尖った、面取りされた、又は伝搬RF波に所望の効果をもたらす任意の形態で形作られ得る。また、ビーム方向に対して直角をなすコーム200の断面形状は、所与の用途に最も適した任意の形状であり得る。
【0116】
図13を参照すると、実施形態は、例えば、キッカー210への電子ビームの入力部に位置し得る1つ以上の追加のアパーチャ1300を更に含む。いくつかの実施形態は、1つ以上の磁気又は静電ビームステアリング機能1302を含み、これは、例えば、TWMCSキッカー210への入力部、CCA104の出力部、及び/又はパルサー420の出力部に配置することができる。
【0117】
図14を参照すると、いくつかの実施形態は、CCA 104の下流に位置する「ダウン選択」TWMCS 1400及びダウン選択アパーチャ1402を更に含む。図示を簡略にするために、図にはミラーキッカー220及び四重極112、116、118などの、EMMPのアーチファクト抑制要素は含まれていない。図示した実施形態では、第1のキッカー210は、第1のRF周波数F1でRFによって励起され、アパーチャ104が、上述したように、横方向変調されたビームをパルスビームに変換する。ダウン選択キッカー1400は、F1の分数調波である第2のRF周波数F2(すなわちF1/F2=整数)においてRFによって励起される。その結果、ダウン選択キッカー1400は電子パルスの一部を偏向させてビームから外し、それにより、電子パルスの一部はダウン選択アパーチャ1402によって遮断されることにより、残っているパルスの数が減少し、その結果、TWMCSキッカー210及びCCA104によって決定されるパルス幅が狭くなり、ダウン選択TWMCS1400によって決定されるパルス繰返し周波数は遅くなる。
【0118】
図14Bは、図14Aの実施形態における2つのキッカー210、1400及び関連するアパーチャ104、1402の機能を示す2つの曲線1404、1406を提示する。図示する実施形態では、F1/F2=4である。例えば、F1=2GHzの場合、第1のキッカー210及びアパーチャ104は、入射電子ビーム204をチョップして4GHzのパルス列(曲線1404の黒丸)にする。そして、位相ロックされた分数調波波形がダウン選択TWMCS 1400に500MHzで印加されると、下部の曲線1406の黒丸で示すように、ダウン選択TWMCS 1400内のRFが「ゼロ交差」するときに、電子パルスは妨害されることなくダウン選択TWMCS1400及びアパーチャ1402を通過することになる。しかしながら、ダウン選択TWMCS 1400内のRF波形の振幅がゼロでない場合、図14Bの下部の曲線1406において白丸で示すように、電子パルスは、ビームから横方向に偏向され、ダウン選択アパーチャ1402によって遮断されることになる。その結果、ダウン選択TWMCS1400の下流において、パルスがアパーチャ104から出てくるときに、ビームのパルス繰返し周波数の整数分数である繰返し周波数を有するが、TWMCSキッカー210に印加される周波数よりも高いRF F1周波数に起因する短いパルス幅を有するダウン選択パルス列が得られる。したがって、図14A及び図14Bは、低い繰返し周波数と短いパルス長とを組み合わせたパルスビームを生成するために使用できる実施形態を示す。
【0119】
例えば、第1のキッカー210及びアパーチャ104によって生成されたパルスが、2GHzで励起されたとき、アパーチャ104の寸法に依存して、幅が10psの幅を有する場合、及びRFが500MHzでダウン選択TWMCS1400に印加される場合、ダウン選択TWMCS1400が存在しない場合に得られるであろう4GHzパルス列と比較すると、1GHzの「ダウン選択」された10psのパルス列になる。
【0120】
図15を参照すると、本発明の実施形態は、装置の少なくとも1つのTWMCS210内の少なくとも1つのコーム対200a、200bにわたって横方向電場を印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を更に含む。横方向電場が存在する場合、電子がTWMCS210を通過するときに横方向電場が電子を偏向させるので、電子は電子ビーム204から除去される。ビーム204と同期して、例えば、適用されたRFと同期して、したがって結果として生じるEM進行波と同期して、ピッカーフィールドのオンとオフを切り替えることにより、選択された電子又は電子のグループをビームから除去する一方で、その他のものを通過させることが可能である。
【0121】
図15の実施形態では、固定DCバイアスが、TWMCSコーム対の1つのコーム200aに印加される。図面で「DCバイアスT」1500と称される単純な回路を使用してDCバイアスを導入する。バイアスT1500は、そのコーム200aに同相RFを印加するRF増幅器1502にDCバイアスが入ることを防止する直列コンデンサを含み、DCバイアスは、DCバイアス源を同相RFから分離するコイルを介してコーム200aに印加される。同相RFは、コンデンサ1506を介してコーム200aに結合された50オームの負荷1504によって終端され、その結果、コーム200aは、DCバイアス源から電流を全く引き出すことなく、DCバイアス電圧に維持される。
【0122】
対210の他方のコーム200bは、50オームの負荷1508に直接接続されているので、通常はゼロバイアスに保持される。しかしながら、位相が外れたRFを第2のコーム200bに適用するRF増幅器1510はまた、DCバイアスT 1512を介してコーム200bに結合され、それにより、DCパルス(EPPパルス)を第2のコーム200bに印加できる。50オーム負荷1508と第2のコーム200bとの間にDCブロックが存在しないので、いくらかの電流がEPPパルス源から引き出されるが、これはEPPパルスの印加中だけである。
【0123】
したがって、図15の実施形態では、EPPパルスが存在しない場合、第1のバイアスT1500を介して印加されるDCバイアスが、TWMCS210のコーム200a、200bの間に横方向DC場を生成し、それが電子を偏向させ(1514)、電子をビーム204から除去する。しかしながら、DCバイアスと同じ振幅に設定されたEPPパルスの印加中に、TWMCS210の両方のコーム200a、200bは同じ電位にあり、その結果、コーム200a、200bの間のDC場は一時的に中立になり、ビーム204中の電子は通過できる(1516)。
【0124】
したがって、EPPパルス1512は、EPPパルスが印加されている間だけ電子がビーム204内に留まるという点で、電子ゲートパルスとして機能する。実施形態では、EPPパルスは、1kHz以下から1MHz以上までの任意の繰返し周波数でTWMCSに印加され得る。
【0125】
図16Aを参照すると、様々な実施形態では、EPPパルス1600は、ビーム1602の1つの電子のみが通過することを可能にする狭い幅を有することができる、又は図16Bを参照すると、EPPパルス1604は、所望の数の電子を含む電子バースト1606がTWMCSを通過することを可能にする任意の長さを有することができる。図16Bでは、EPPパルス1604は、図16AのEPPパルス1600の2倍の長さである。結果として、図16Bでは、2つの電子の「バースト」1606が、TWMCSを通過することが可能であり、一方で、図16Aでは、1つの電子1602だけが通過することが可能である。実施形態では、EPPパルスの長さは100ピコ秒から10マイクロ秒で可変である。様々な実施形態では、EPPパルスのタイミングは、例えば、TWMCS 210を駆動するRF信号、及び/又は横断型電子顕微鏡(TEM)サンプルのポンピングをトリガーする信号と同期させることができ、その結果、TEMサンプルの動態像をリアルタイムで取得できる。
【0126】
いくつかの実施形態では、一連のEPPパルスがTWMCSに印加され、EPPパルスの全てが等しい長さであり、間隔が等しい。他の実施形態では、単一のEPPパルスのみが印加され、更に他の実施形態では、EPPパルス幅及びEPPパルス間の間隔が任意の所望のパターンである一連のEPPパルスが印加される。
【0127】
本発明の実施形態の上述の説明は、例示及び説明を目的として提示されている。本提出物のあらゆるページ、及びその全内容は、どのように特徴付けられ、識別され、又は番号付けされていても、本出願における形式又は配置に関係なく、全ての目的のために本出願の実質的部分であると見なされる。
【0128】
この明細書は、網羅的であることを意図するのではない。本出願は限られた数の形態で示されているが、本発明の範囲はこれらの形態にだけに限定されず、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更及び修正が適用される。当業者は、前述した明細書に含まれる特許請求される主題に関連する教示を学習した後に、本開示に照らして、多くの修正及び変形が可能であることを理解するはずである。したがって、特許請求される主題は、本明細書において別途記載のない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、上述した要素の任意の組み合わせを、その全ての可能な変形形態にて含む。特に、以下の従属請求項に示される制限は、従属請求項が互いに論理的に両立しない場合を除き、本開示の範囲から逸脱しない限り、それらの対応する独立請求項を任意の数で及び任意の順序で組み合わせることができる。本発明は以下の適用例としても実現できる。
[適用例1]
電磁機械式パルサー(「EMMP」)であって、
連続入力電子ビームを受け取るように構成された入力部と、
前記入力部の下流に位置する少なくとも1つの進行波金属コームストリップライン(「TWMCS」)であって、前記TWMCSの各々は、前記電子ビームが通過する内部通路を有し、前記TWMCSの各々は、前記TWMCSを通って伝搬されるRF進行波によって前記TWMCS内で生成される横方向時間変化電場及び横方向時間変化磁場のうちの少なくとも1つに応じて、振動する横方向偏向を前記電子ビームに与えるように構成され、前記少なくとも1つのTWMCSのうちの第1のTWMCSは、TWMCSキッカーである、進行波金属コームストリップラインと、
前記TWMCSキッカーの下流に位置するチョッピングコリメートアパーチャ(「CCA」)であって、前記電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、前記電子ビームを遮断し、それにより、前記電子ビームをチョッピングして、チョップド電子パルス繰返し周波数及びチョップドパルスデューティサイクルを有する、チョップド電子パルスのチョップドストリームにするように構成された、チョッピングコリメートアパーチャと、
電子パルスが、出力パルス繰返し周波数及び出力パルスデューティサイクルを有する、電子パルスの出力ストリームとして、前記EMMPから出現することを可能にするように構成された出力部と、
前記EMMPの全ての要素を取り囲む真空チャンバであって、残留ガスによる前記電子ビームの大幅な減衰なしに、前記電子ビームが前記EMMPを通過することを可能にするのに十分な真空を提供するように構成された、真空チャンバと、を備え、
前記TWMCSの各々は、少なくとも1つの対向するコーム対を含み、
前記コーム対のうちの前記対向するコームの各々がストリップを備え、実質的に同一で等間隔に配置された複数のブロックが前記ストリップから歯として延び、
前記コーム対のうちの前記コームは、歯が内側を向くように間隔を空けて配置され、その結果、前記電子ビームが通過する前記内部通路が前記コーム対の前記歯の間に存在し、
前記コーム対は、前記コームの近位端に近接するRFエネルギー入力部と、反対側の前記コームの遠位端に近接するRFエネルギー出力部とを含み、
前記コーム対の前記歯は、前記コーム対の前記近位端から前記遠位端に伝搬する進行RF波の位相速度を制御して、前記位相速度を前記電子ビームの電子速度に一致させるように構成され、
前記コーム対の全ての露出面が導電性である、電磁機械式パルサー。
[適用例2]
適用例1に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つがピッカーTWMCSであり、前記ピッカーTWMCSは、前記ピッカーTWMCSに電子パルスピッカー(EPP)パルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を更に含み、前記EPPパルスの各々が、前記ピッカーTWMCSの前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、前記横方向電場は、前記EPPパルス印加中に、前記ピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された前記電子を前記電子ビームから除去するように構成されていることを含む、EMMP。
[適用例3]
適用例2に記載のEMMPであって、前記EPPは、前記ピッカーTWMCSの第1の対向するコーム対の第1のコームに電気バイアスを維持するように構成され、前記EPPパルスの各々は、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対の他方の第2のコームに等しい電気バイアスを印加し、その結果、前記EPPパルスの各々の印加中に、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対の両方のコームが、等しい電気バイアスを保持し、それにより、前記ピッカーTWMCSの前記第1の対向するコーム対を横断する前記電場が無効になる、EMMP。
[適用例4]
適用例2又は3に記載のEMMPであって、前記EPPパルスのパルス繰返し周波数が1kHz~10MHzの範囲にわたって調整可能である、EMMP。
[適用例5]
適用例1~4のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは、前記CCAの下流に分散抑制セクションを更に備え、前記分散抑制セクションは、前記TWMCSキッカーによって与えられる前記偏向から生じる電子パルスの前記ストリームの残留分散を抑制するように構成されている、EMMP。
[適用例6]
適用例5に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの第2のTWMCSは、前記分散抑制セクションに含まれる復調ミラーTWMCSであり、前記電子ビームは、前記CCAの下流の前記ミラーTWMCSの前記内部通路を通過し、前記ミラーTWMCSは、前記ミラーTWMCSを通って伝搬する前記RF進行波の位相速度を前記電子ビームの速度に一致させる物理的構成を有し、前記ミラーTWMCSは、前記TWMCSキッカーによって前記電子ビームに与えられた前記振動する横方向偏向を復調するように構成されている、EMMP。
[適用例7]
適用例5又は6に記載のEMMPであって、前記分散抑制セクションは少なくとも1つの磁気四重極を含む、EMMP。
[適用例8]
適用例1~7のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力パルス繰返し周波数が、0.1GHz~20GHzで調整可能である、EMMP。
[適用例9]
適用例1~8のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスのパルス長が100fs~10psで調整可能である、EMMP。
[適用例10]
適用例1~9のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力デューティサイクルが1%~10%で調整可能である、EMMP。
[適用例11]
適用例1~10のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記出力ストリームにおける前記電子パルスの前記出力パルス繰返し周波数及び前記出力デューティサイクルが独立して調整可能である、EMMP。
[適用例12]
適用例1~11のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは、100~500keVの運動エネルギーを有する入力電子ビームを受け入れるように構成されている、EMMP。
[適用例13]
適用例1~12のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSキッカーは、前記電子ビームが同時に通過する2つの対向するコーム対を含み、前記2つの対向するコーム対は、その第1の対が前記電子ビームを第1の偏向面内で偏向させ、その第2の対が前記電子を前記第1の偏向面と直交する第2の偏向面内で偏向させるように構成され、前記第1の偏向面と前記第2の偏向面との交線が、前記電子ビームが通過する前記内部通路に沿って存在する、EMMP。
[適用例14]
適用例1~13のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの第3のTWMCSがダウン選択TWMCSであり、前記ダウン選択TWMCSは、前記CCAの下流に配置され、前記CCAから出現する電子パルスの前記チョップドストリームから出てくるいくつかのパルスを偏向させることにより、前記出力ストリームの前記出力パルス繰返し周波数を低減させるように構成されている、EMMP。
[適用例15]
適用例14に記載のEMMPであって、前記ダウン選択TWMCSの下流に位置するダウン選択アパーチャを更に含む、EMMP。
[適用例16]
適用例1~15のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記コームのうちの少なくとも1つが、前記コーム対の前記コームの他方に向かって及び離れるように横方向にシフトされ得る、EMMP。
[適用例17]
適用例1~16のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記RFエネルギー出力が、終端インピーダンスに接続されている、EMMP。
[適用例18]
適用例1~17のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つの、前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つの、前記コームのうちの少なくとも1つの向きが、前記コーム対の前記コームの間の角度を調整するように変更され得る、EMMP。
[適用例19]
適用例1~18のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記CCAのアパーチャサイズが機械的に調整可能である、EMMP。
[適用例20]
適用例1~19のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記EMMPは電気的に絶縁された要素を有するアパーチャを含み、前記要素は、前記アパーチャがビーム位置モニタ及びビーム電流モニタのうちの少なくとも1つとして機能することを可能にする、EMMP。
[適用例21]
適用例1~20のいずれか一項に記載のEMMPであって、前記電子ビームの伝搬方向を調整するように構成された少なくとも1つの磁気又は静電ビーム偏向要素を更に備える、EMMP。
[適用例22]
電子パルスを生成する方法であって、前記方法は、
適用例1~21のいずれか一項に記載のEMMPを提供することと、
前記TWMCSキッカーの前記RFエネルギー入力部にRFエネルギーを印加しながら、連続電子ビームが前記TWMCSキッカーを通過することを生じさせることであって、前記RFエネルギーは、進行RF波が前記TWMCSキッカーを通って伝搬することを生じさせ、前記進行RF波は、前記電子ビームの電子速度に実質的に等しい位相速度を有し、それにより前記連続電子ビームに空間振動を与える、ことと、
空間的に振動する前記電子ビームが前記CCAに影響を与えるようにして、前記電子ビームの偏向が最大閾値又は最小閾値を超えたときに、前記CCAが前記電子ビームを遮断するようにし、それにより、前記電子ビームをチョッピングして、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数を有する、チョップド電子パルスのストリームにすることと、
前記チョップド電子パルスの幅を、所望のチョップド電子パルス幅に等しくなるように調整するように、前記TWMCSキッカーに印加される前記RFエネルギーの振幅を調整することと、
前記TWMCSキッカーに適用される前記RFエネルギーの周波数を調整して、所望のチョップド電子パルス繰返し周波数の半分に等しくなるようにすることと、を含む方法。
[適用例23]
適用例22に記載の方法であって、前記所望の電子パルス繰返し周波数が100MHz~50GHzであり、前記所望の電子パルス幅が100fs~10psの範囲にある、方法。
[適用例24]
適用例22又は23に記載の方法であって、前記指定された電子パルスエネルギーは100keV~500keVである、方法。
[適用例25]
適用例22~24のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSキッカーは、2つの直交するコーム対を含み、前記方法は、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第1の対に第1の周波数でRFエネルギーを印加することと、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第2の対に第2の周波数でRFエネルギーを印加することと、を更に含む、方法。
[適用例26]
適用例22~25のいずれか一項に記載の方法であって、
前記TWMCSキッカーは、2つの直交するコーム対を含み、
前記CCAは、非円形の形状を有するアパーチャ開口部を含み、
前記方法は、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第1の対に第1のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、前記TWMCSキッカーの前記コーム対のうちの第2の対に第2のRF振幅でRFエネルギーを印加することと、前記第1のRF振幅と前記第2のRF振幅との差を変化させることにより、前記チョップド電子パルス幅を変化させることと、を更に含む、方法。
[適用例27]
適用例22~26のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSのうちの少なくとも1つがピッカーTWMCSであり、前記ピッカーTWMCSは、前記ピッカーTWMCSに電子パルスピッカー(EPP)パルスを印加するように構成された電子パルスピッカー(EPP)を含み、前記方法は、前記ピッカーTWMCSにEPPパルスを印加することにより、前記ピッカーTWMCSの前記対向するコーム対のうちの少なくとも1つにわたって横方向電場を生成させ、前記EPPパルスの印加中に前記ピッカーTWMCS内にある電子を偏向させて、偏向された前記電子を前記電子ビームから除去することを更に含む、方法。
[適用例28]
適用例22~27のいずれか一項に記載の方法であって、前記TWMCSのうちの第2のTWMCSが、前記CCAの下流に配置されたダウン選択TWMCSであり、前記方法は、前記TWMCSキッカーに第1のRF周波数F1でRFエネルギーを印加することと、前記ダウン選択TWMCSに第2のRF周波数F2でRFエネルギーを印加することと、を更に含み、F1/F2又はF2/F1のいずれかが整数である、方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B