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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】誤発進車止め
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20220624BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E04H6/42 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018216179
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020084442
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】595070844
【氏名又は名称】株式会社白石ゴム製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】518369383
【氏名又は名称】トライ・ユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】千葉 武雄
(72)【発明者】
【氏名】上杉 章
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080744(JP,A)
【文献】特開2013-221274(JP,A)
【文献】特開2011-219932(JP,A)
【文献】特開平05-098840(JP,A)
【文献】特開平10-169239(JP,A)
【文献】特開2018-127868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
E04H 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を進入させたくない車両進入禁止エリアと車両の駐車エリアとを仕切る誤発進車止めであって、
路面へ接する板状の基板と、
その基板を前記の路面に対して固定する固定構造と、
前記の基板の上面から上方向へ立てて固定される枠状のフレームと、
そのフレームが車両進入禁止エリア側へ回動した場合にそのフレームが路面となす角度を所定の角度で抑えるための回動規制体と、
を備え、
前記のフレームが立設されている場合には、フレームの枠内に前記の回動規制体の一部または全部が収まるように形成し、
前記の回動規制体は、前記のフレームに対して軸支持されており、
前記のフレームが車両進入禁止エリア側へ回動した場合には、その回動方向とは逆方向へ回動するとともに、逆回転を防止する逆回転防止機構を備えた
誤発進車止め。
【請求項2】
既存の車止めが自動車の軸距に合わせて予め駐車マスの端部へ設置されている場合において、
前記の基板は、その横幅寸法を前記の車止めが離間した距離よりも小さく形成した
請求項1に記載の誤発進車止め。
【請求項3】
前記のフレームにおける少なくとも自動車側には、可撓性のある素材で形成されたプロテクタを備えることとした
請求項1または請求項2のいずれかに記載の誤発進車止め。
【請求項4】
前記のフレームは、自動車の車幅方向へ離間させた複数で一組とするとともに、
その一組のフレームの間を渡す板状体を備えた
請求項1から請求項3のいずれかに記載の誤発進車止め。
【請求項5】
前記の固定構造は、前記の基板におけるフレームとは反対側へ延設させた棒状体とした
請求項1から請求項4のいずれかに記載の誤発進車止め。
【請求項6】
前記のフレームが前記の基板に対して回動を開始した場合に報知する回動報知手段を備えた
請求項1から請求項5のいずれかに記載の誤発進車止め。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場における駐車マスにおいて、停止場所となる車止めであって、誤発進してしまった自動車による事故の軽減に寄与する車止めに関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関連する先行技術を知るため、以下のような検索式を用いて調査した。
[車留め/AC+車止め/AC+車停め/AC+クルマ留め/AC+クルマ止め/AC+クルマ停め/AC]*[乗り越え/AC+乗りこえ/AC+乗越/AC]
この中から、4つの特許文献について検討した。
【0003】
特許文献1には、彩色可能性、可搬容易性および強固定性を備え、電気自動車に対する給電も可能な車止めが開示されている。
特許文献2には、駐停車していたトラック、バスなどの自動車が外し忘れて発車した場合でも乗り越えることができず、しかも小型軽量で効果的、かつ自動車に積み込んでどこへでも運べる車止めが開示されている。
【0004】
特許文献3には、簡易で低コストな構造であり、且つ自動車を確実に停止させることが可能な車止めが開示されている。
特許文献4には、車輪が車止めに衝突して乗り越えようとする事態をなるべく早いタイミングで検出し、車止めの乗り越え防止を図ることができる駐車支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-293239号公報
【文献】特開2011-163101号公報
【文献】特開2013-72223号公報
【文献】特開2013-75621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1を用いて、一般的な車止めにおける近年の問題点を説明する。
図1では、自動車10、駐車マス23、車止め30の関係を示している。すなわち、自動車10が駐車スペース20における舗装路面21へペイント表示22をすることで駐車エリアとしての駐車マス23を示し、その駐車マス23に対する出入り口とは反対側の端部へ左右一対(左車止め31、右車止め32)となった車止め30を固定している。なお、車止め30を境として駐車マス23と反対側は、車両進入禁止エリア(たとえば歩道スペース)25となる。
また、自動車の四輪については、右前輪11、右後輪12、左前輪13、左後輪14を必要に応じて用いる。
【0007】
図1(A)は、自動車を前進させて車止め30へ停止させる「前止め」、図1(B)では、いわゆる自動車を後進させて車止め30へ停止させる「後止め」を示している。
図1に示す駐車マス23、および一対の車止め30における間隔は、一般の自動車の軸距に合わせた寸法としている。駐車スペース20に、トラックやバスなどの大型車両が駐停車することを想定している場合には、大型車両用に駐車マスや大型車両用の車止めを別途用意することが一般的であるが、ここでは図示を省略する。
【0008】
さて、オートマチック変速の自動車が増大するに伴い、高齢者ドライバーなどを中心とした誤発進事故が急増している。誤発進事故とは、駐車マス23へ駐車させていた自動車を発進させる際に、車止め30の方向へ誤って発進させてしまうことにより、車止め30の先にあった建造物を破損させたり、車止め30の先にいた歩行者をはねてしまったりする事故である。ドライバーによるドライブギアとバックギアとの入れ間違い、ブレーキとアクセルとの踏み間違い、更にはそれらの両方を原因として発生している。
【0009】
自動車へカメラを搭載するとともに、そのカメラ映像を分析することによる誤発進抑制を自動化する技術の開発が進んでいる。しかし、既に使われている自動車へ後付けできる技術ではないため、根本的な解決にはならない。
【0010】
前述した特許文献1~4に開示された技術では、誤発進に伴って発生する事故の抑制には不十分であるか、または大きなコスト負担が必要となってしまう。
【0011】
本発明は、停車していた自動車が誤発進をしてしまった場合であっても、事故の程度を軽減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第一の発明)
第一の発明は、車両(10)を進入させたくない車両進入禁止エリア(25)と車両(10)の駐車エリア(23)とを仕切る誤発進車止め(50)に係る(図2図3参照)。
誤発進車止め(50)は、路面へ接する板状の基板(51)と、
その基板(51)を前記の路面に対して固定する固定構造(52)と、
前記の基板(51)の上面から上方向へ立てて固定される枠状のフレーム(53)と、
そのフレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動した場合にそのフレーム(53)が路面となす角度を所定の角度で抑えるための回動規制体(55)と、
を備える。
前記のフレーム(53)が立設されている場合には、フレーム(53)の枠内に前記の回動規制体(55)の一部または全部が収まるように形成されている。
【0013】
(用語説明)
誤発進車止め(50)の大きさは、一般車両用、大型車両用など、車輌の大きさに合わせて寸法を決定することが好ましい。
「固定構造」とは、路面への固定(図5参照)、既存の車止め(30)が存在する場合にその車止め(30)への固定、などの構造がある。
フレーム(53)について、基板(51)の上面に立てられた場合のフレーム(53)の上端が位置する高さは、現状の車止め(30)の高さよりも高いことが最低限の寸法となる。
フレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動した場合に、回動規制体(55)がそのフレーム(53)の回動を抑えるために機能した際、当該フレーム(53)の上端が位置する高さは、現状の車止めの高さ(普通車用で85~120ミリメートル程度、大型車両用で200~300ミリメートル程度)よりも高い。
【0014】
(作用)
誤発進車止め(50)は、車両進入禁止エリア(25)と車両(10)の駐車エリア(23)とを仕切る位置へ固定される。誤発進車止め(50)は、固定構造(52)を用いて、誤発進車止め(50)の基板(51)を路面に対して固定され、枠状のフレーム(53)は、基板(51)の上面から上方向へ立つこととなる。加えて、回動規制体(55)は、前記のフレームが立設されている場合には、フレームの枠内に収まっている(図2参照)。車両進入禁止エリア(25)にも車両進入禁止エリア(25)にも突出しておらず、邪魔にならない。
【0015】
駐車エリア(23)に駐車していた車両(10)が誤って車両進入禁止エリア(25)へ向かって発進してしまった場合、車両(10)に接触したフレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動する。しかし、フレーム(53)が路面となす角度を、回動規制体(55)が所定の角度で抑える。誤って進入した車両(10)は、その所定角度となったフレーム(53)に支えられて傾くこととなる。車両進入禁止エリア(25)へ進入するには、その傾いたフレーム(53)を乗り越える必要があるため、車両進入禁止エリア(25)への進入は、ほぼ防げることとなる(図4(B)参照)。
【0016】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明に係る誤発進車止めは、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の回動規制体(55)は、その上部分を前記のフレーム(53)に対して軸支持される。そして、前記のフレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動した場合には、その回動方向とは逆方向へ回動するとともに、逆回転を防止する逆回転防止機構を備えるのである。
【0017】
(用語説明)
「逆回転防止機構」とは、たとえば、ラチェット機構である。図示を省略するが、回動軸と同時に回転するギアと、そのギアの純回転方向への回動時にはその回動を妨げず、逆回転を使用とした場合には抵抗となるようなギア部品からなるのがラチェット機構である。
【0018】
フレーム(53)に対して軸支持される回動規制体(55)は、たとえば、その上端付近を軸支持されることとする。この場合、フレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動した場合に、自重によって逆方向へ回動することとなる。
【0019】
(作用)
フレーム(53)が車両進入禁止エリア(25)側へ回動した場合、その回動方向とは逆方向へ回動規制体(55)は回動する。フレーム(53)が路面となす角度が所定角度に達していなくても、回動規制体(55)は逆回転しない。
たとえば、誤発進した車両の加速度があまりに大きく、フレーム(53)が路面となす角度が所定角度に達する前に回動範囲を終えてしまっても、跳ね返って逆回転をすることはない。
【0020】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明に係る誤発進車止め(50)は、以下のように形成してもよい。
すなわち、 既存の車止め(30)が車両(10)の軸距に合わせて予め駐車マスの端部へ設置されている場合において、
前記の基板(51)は、その横幅寸法を前記の車止め(30)が離間した距離よりも小さく形成することとするのである(図5参照)。
【0021】
(作用)
誤発進車止め(50)は、既存の誤発進車止め(50)の間に収まることとなる。既存の誤発進車止め(50)の間は、元々デッドスペースであり、誤発進車止め(50)が新たに固定されても、平面的には、既存の状態を調整する必要がほとんど無い。
【0022】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明に係る誤発進車止め(50)は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記のフレーム(53)における少なくとも自動車側には、可撓性のある素材で形成されたプロテクタ(54)を備えることとするのである。
【0023】
「可撓性のある素材」とは、たとえば合成ゴム、ウレタン樹脂などである。
「フレーム(43)における少なくとも自動車側」としているのは、誤発進してしまった自動車や、停止位置をオーバーして停車させようとしてしまった車両(10)へ接触するので、そのような車両(10)に傷が付くこと、破損や変形をすることを抑制するからである。
【0024】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成すると好ましい場合がある。
すなわち、前記の固定構造は、前記の基板(41)におけるフレーム(43)とは反対側へ延設させた棒状体(たとえば埋設棒42)とするのである。
【0025】
「棒状体」は、路面(たとえば舗装路面21)へ埋め込んで用いる。材質としては、たとえば、コンクリート製の円柱形、鉄鋼製の丸パイプ、角パイプなどである。コンクリート製の円柱形などの重量の大きい素材を用いる場合には、埋め込まれる寸法(軸方向寸法)が重量の小さい素材(たとえば鉄鋼製のパイプ)を用いる場合よりも短くて済む。
【0026】
本願に係る誤発進車止め(40)を、既に舗装した駐車場へ設置する場合に、設置工事がしやすい。
【0027】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明は、前記のフレーム(53)が前記の基板(51)に対して回動を開始した場合に報知する回動報知手段を備えることとすれば、より好ましい。
「回動報知手段」とは、たとえば音源およびスピーカ、またはブザーなどの音声による報知手段、フレーム(43)へ装備したLEDなどの光による報知手段、あるいはそれらの組み合わせである(図示は省略)。
なお、所定角度を超えて傾いた場合のみ、回動報知手段が作動する、というように調整することも可能である。
【0028】
(作用)
駐車させていた自動車をドライバーが誤発進させることでフレーム(53)が基板(51)に対して回動を開始した場合、報知手段が作動する。ドライバーは、誤発進させたことに対して気付き易くなる。
なお、歩行者などが誤発進車止めに対していたずらをした場合に、フレーム(53)が基板(51)に対して回動しても報知手段が作動するので、報知手段がいたずら防止にも寄与する。
【発明の効果】
【0029】
第一の発明によれば、誤発進抑制機能を搭載していない自動車が誤発進をしてしまった場合であっても、事故の程度を軽減できる誤発進車止めを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】現状の一般的な車止めを示す斜視図である。
図2】本発明に係る誤発進車止めの全体を示す斜視図である。(A)は駐車エリア側から見た斜視図であり、(B)は車両進入禁止エリア側から見た斜視図である。
図3】本発明に係る誤発進車止めが作動した場合の図である。(A)が斜視図、(B)が側面図、(C)が下方から見た斜視図である。
図4】本発明に係る誤発進車止め、車両、車両進入禁止エリア側にある建物の関係を示す側面図である。(A)は車両が駐車エリアにいる状態を、(B)は車両が誤発進してしまった場合に誤発進車止めが作動した状態を示す。
図5】本発明に係る誤発進車止めを路面へ固定する第一のパターンを示す組立斜視図である。
図6】本発明に係る誤発進車止めを路面へ固定する第二のパターンを示す組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで用いる図面は、図2から図6である。なお、図1は、従来技術を示しているが、駐車エリア23、車両進入禁止エリア25などの位置関係を確認するため、参照することがある。
【0032】
説明の便宜上、図面を用いた説明において「上下左右」という方向を記載する場合があるが、その方向が本願特許の範囲を限定するものではない。
【0033】
本発明の実施形態に係る誤発進車止め50は、駐車エリア23および車両進入禁止エリア25の境目に位置させる。 図1を参考として説明すると、舗装路面21へペイント表示22をすることで駐車マス23とするとともに、その駐車マス23に対する出入り口とは反対側の端部へ左右一対(左車止め31、右車止め32)となった車止め30を既に設置した場所へ設置する誤発進車止め50である。
【0034】
図5に示すように、左右の車止め30,30の間に収まって舗装路面21へ接する板状の基板41と、その基板41を前記の舗装路面21に対して固定するために基板41の下面から下方向へ延設される一対の固定構造としての埋設棒52とを備えている。
舗装路面21には、固定用挿入穴24を予め用意しておき、その固定用挿入穴24へ埋設棒52を挿入することで誤発進車止め50を固定する。そして、埋設棒52が挿入された状態を確実にするため、接着剤などの固定させる液体を流し込む。
なお、基板51および埋設棒52は、予め一体化された部品として供給することが多いが、基板51の上面へ固定されるフレーム43などの部品は、基板51および埋設棒52からは分離した状態で準備し、設置現場でくみ上げることが多い。
【0035】
前記の基板51の上面には、上方向へ立てて固定される枠状のフレーム53を備える。図2(B)に示すように、そのフレーム53は、基板51の上面へ接するとともに離間させた2つの脚フレーム53aと、その脚フレーム53aにおける駐車エリア23側の端部から上方へ延設される2本の四角棒状の縦フレーム53cと、その2本の縦フレーム53cの上端の間に渡される上フレーム53dと、を備える。
【0036】
一方、2つの脚フレーム53aの間における車両進入禁止エリア25側には、パイプ状のフレーム軸受け51aが、基板51の上面に固定されている。
そして、2つの脚フレーム53aおよび前記のフレーム軸受け51aを貫通するフレーム軸53bが2つの脚フレーム53aへ固定されている。そのため、フレーム53は、後述する回動規制体55が存在しなければ、立設した状態から90度、基板51に対して回動することができる。
【0037】
回動規制体55とは、フレーム53が車両進入禁止エリア25側へ回動した場合に、フレーム53が路面となす角度を所定の角度(図3(B)において示す角度γ)にて抑えるための部材である。
具体的には、コ字形をなすとともにそのコ字形の開口側を上フレーム53dの下側にて軸支持される回動規制長脚55a、同じくコ字形をなすとともにそのコ字形の開口側を縦フレーム53cにおける高さ方向の中央付近で軸支持される回動規制短脚55c、前記の回動規制長脚55aの回動軸となる長脚軸55b、前記の回動規制短脚55cの回動軸となる短脚軸55d、からなる。
【0038】
回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cの縦方向寸法は、図3(B)に示されるように、フレーム53が路面となす角度γを実現するための長さとなっている。
この角度γは、20~40度が最も望ましい。誤発進した自動車を停止させることに寄与する角度としては、15~50度であることが実験などから判明した。15度未満であると誤発進した自動車を停止させるには十分ではなく、50度を超えると誤発進した自動車が誤発進車止め40を回動させる角度が小さくなってしまうからである。
【0039】
回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cが接地するまで回動した場合に上端となる部位が位置する高さhを、現状の車止め31,32の高さよりも高くなるように形成することを最低限の条件であるが、普通乗用車を想定した場合の誤発進車止め50の場合、1メートル前後としている。なお、角度γを20~40度とした場合、路面からフレーム53の上端までの高さhは、600~1000ミリメートルであった。
【0040】
回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cの厚さは、フレーム53の厚さと同じ厚さとしており、フレーム53が立設されている場合には、フレーム53の枠内に回動規制体55の全体が収まるように形成されている。そのため、フレーム53が立設されている場合には、車両進入禁止エリア25側へ突出する部材はないので、たとえば車両進入禁止エリア25を歩行者が歩く場合に誤発進止め50の存在が妨げとはならない。
【0041】
回動規制体55は、フレーム53が車両進入禁止エリア25側へ回動した場合には、その回動方向とは逆方向へ回動するとともに、逆回転を防止する逆回転防止機構を備えている。「逆回転防止機構」とは、たとえば、ラチェット機構である。
【0042】
フレーム53に対して軸支持される回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cは、その上端付近を軸支持されることとする。この場合、フレーム53が車両進入禁止エリア25側へ回動した場合に、回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cは、自重によって逆方向へ回動することとなる。
【0043】
フレーム53が路面となす角度が所定角度に達していなくても、回動規制体55は逆回転しない。たとえば、誤発進した車両の加速度があまりに大きく、フレーム53が路面となす角度が所定角度に達する前に回動範囲を終えてしまっても、跳ね返って逆回転をすることはなく、図3(B)のように角度γとなって止まる。
【0044】
フレーム53における左右の縦フレーム53bにおける駐車エリア23側には、合成ゴム製のプロテクタ54が固定されている。プロテクタ54は、誤発進してしまった自動車を傷付けたり変形させたりすることを最小限とするために機能する。
誤発進してしまった自動車のバンパーの下端へ接触することとなり(図4(B)参照)、バンパーの下端へ引っ掛かって自動車を停止させることに寄与するように、波形状をなしている。
【0045】
上フレーム53dは、その上下方向寸法を縦フレーム53cにおける幅寸法よりも大きくしている。そのため表示プレートなどを固定することが可能である。
表示プレートを備えた場合、たとえば、その表示プレートに発光部品やブザーを備えておき、フレーム53が傾いた場合に発光させたり、ブザーを作動させたりする。それによって、車両10を誤発進させた運転手やその車両10の周囲にいる人への警告とする。
【0046】
上フレーム53dに太陽光パネルを固定することとしてもよい。その太陽光パネルは、たとえば、フレーム53が傾いた場合にブザー(図示を省略)を作動させたり、発光させたりする電子機器への電源供給源となる。
【0047】
図4では、前止めした車両10が駐車マスから発進する際に、誤発進車止め50の動きを連続的に示している。駐車エリア23と車両進入禁止区域25との境目に誤発進車止め50が存在し、車両進入禁止区域25における誤発進車止め50とは反対側に店舗26が存在するとして図示している。
【0048】
図4(A)では、誤発進車止め50とのクリアランスを保って駐車していた車両10を示している。この図では、車止め30よりも車両進入禁止エリア25側へ誤発進車止め50を固定している(図5に示した固定方法ではない)。
【0049】
図4(B)では、車両10が誤発進して誤発進車止め50と衝突した車両10が誤発進車止め50を回動させている状態を示している。誤発進させてしまった車両10が車両進入禁止エリア25のスペースを占拠するまで移動してしまい、誤発進車止め50は、回動規制長脚55aおよび回動規制短脚55cが路面へ接触するまで回動している。その最大高さhは既存の車止めよりも高いので、大抵の車両10は前輪が路面から浮き、車両10はかなり傾いた状態となる。車両10のドライバーとしては、何かに乗り上げたことが一瞬で体感できるため、ブレーキペダルを踏むといった動作をする可能性が高くなる。
なお、車両10が前輪駆動である場合、前輪が路面から浮いた状態となった瞬間に、車両10を動かすそれ以上の加速度はなくなる。
【0050】
図4(A)および(B)の間の状態は図示を省略しているが、車両10のドライバーは、誤発進車止め50と衝突した音に気付くはずである。車両10がオートマチックの場合においてドライバーがブレーキペダルから足を離しただけ、という程度で発進した場合であれば、衝突音に気付いたドライバーがブレーキを踏んで事なきを得る。車両10は、誤発進車止め50のプロテクタ45と接触するだけなので、自動車が傷付くこともほとんどない。
【0051】
図6では、既存の車止め30へ挿入棒52を挿入できる穴を設け、誤発進車止め50を路面へ固定するタイプの実施形態を図示している。 図5に示す実施形態よりも大型の誤発進車止め50となる。
【0052】
前述してきた実施形態によれば、既存設備の妨げとならずに誤発進車止め50を設置することができる。また、誤発進抑制機能を搭載していない自動車が誤発進をしてしまった場合であっても、事故の程度や建物などへの被害を軽減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、駐車場設備の製造業、駐車場の設置や運営を手掛けるサービス業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0054】
10 ;車両(自動車)
20 ;駐車スペース 21 ;舗装路面
22 ;ペイント表示 23 ;駐車エリア(駐車マス)
24 ;固定用挿入穴 25 ;車両進入禁止エリア(歩道スペース)
26 ;建物(店舗)
30 ;車止め(現行品) 31 ;左車止め
32 ;右車止め
50 ;誤発進車止め
51 ;基板 51a;フレーム軸受け
52 ;固定構造(埋設棒)
53 ;フレーム 53a;脚フレーム
53b;フレーム軸 53c;縦フレーム
53d;上フレーム
54 ;プロテクタ
55 ;回動規制体 55a;回動規制長脚
55b;長脚軸 55c;回動規制短脚
55d;短脚軸

γ ;フレーム(53)の平面方向と路面とがなす角度
h ;フレーム(53)が限度まで回動した場合に上端となる部位が位置する高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6