(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20220624BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20220624BHJP
H02K 21/22 20060101ALI20220624BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20220624BHJP
【FI】
H02K3/18 Z
H02K3/28 Z
H02K21/22 M
H02P6/08
(21)【出願番号】P 2018123339
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功治
(72)【発明者】
【氏名】牧田 真治
(72)【発明者】
【氏名】徳永 政男
(72)【発明者】
【氏名】朝間 淳一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061375(JP,A)
【文献】特開2008-301652(JP,A)
【文献】特開2005-253155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
H02K 3/28
H02K 21/22
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルのうち、第1の相コイルが前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う3つのティースに巻かれることにより3つの巻線部を形成し、かつ前記3つの巻線部のうち前記円周方向にて隣り合う任意の2つの巻線部は、前記第1の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、
前記複数の相コイルのうち前記第1の相コイル以外の第2の相コイルが、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記第2の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記第2の相コイルが、前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項2】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルのうち2つの相コイル(50A、50D)が、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う3つのティースに巻かれることにより3つの巻線部を相コイル毎に形成し、かつ前記3つの巻線部のうち前記円周方向にて隣り合う任意の2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、
前記複数の相コイルのうち前記2つの相コイル以外の2つの相コイル(50B、50C)が、前記相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記残りの2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記残りの2つの相コイルが、前記相コイル毎に、前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項3】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれており、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルが、前記相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記残りの2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、
さらに前記複数の相コイルが、前記相コイル毎に、前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項4】
前記複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとし、
前記複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えており、
前記A相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記D相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記B相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記A相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記C相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記B相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記D相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記C相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、 前記第1ティース、前記第2ティース、および前記第9ティースのそれぞれに、前記A相コイルが巻かれており、 前記第7ティース、前記第8ティース、および前記第3ティースのそれぞれに、前記B相コイルが巻かれており、 前記第4ティース、前記第11ティース、および前記第12ティースのそれぞれに、前記C相コイルが巻かれており、 前記第5ティース、前記第6ティース、および前記第10ティースのそれぞれに、前記D相コイルが巻かれている請求項
3に記載の電動機。
【請求項5】
前記複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとし、
前記複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えており、
前記A相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記D相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記B相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記A相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記C相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記B相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記D相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記C相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、 前記第1ティース、前記第2ティース、および前記第6ティースのそれぞれに、前記A相コイルが巻かれており、 前記第7ティース、前記第8ティース、および前記第3ティースのそれぞれに、前記B相コイルが巻かれており、 前記第4ティース、前記第11ティース、および前記第12ティースのそれぞれに、前記C相コイルが巻かれており、 前記第5ティース、前記第9ティース、および前記第10ティースのそれぞれに、前記D相コイルが巻かれている請求項
3に記載の電動機。
【請求項6】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルのうち、第1の相コイルが、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記第1の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに前記第1のコイルが巻かれることにより1つの巻線部を形成し、
前記複数の相コイルのうち前記第1のコイル以外の第2の相コイルは、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記第2の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記第2の相コイルは、前記2つのティースから前記円周方向にて2つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項7】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルのうち1つの相コイル(50C)が、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記1つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに前記1つの相コイルが巻かれることにより1つの巻線部を形成し、
前記複数の相コイルのうち前記1つの相コイル以外の3つの相コイル(50A、50B、50D)は、相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記3つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記3つの相コイルは、前記相コイル毎に、前記2つのティースから前記円周方向にて2つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項8】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルのうち2つの相コイル(50A、50C)が、相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記2つのティースから前記円周方向にて3つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに前記2つの相コイルが巻かれることにより1つの巻線部を前記相コイル毎に形成し、
前記複数の相コイルのうち前記2つの相コイル以外の2つの相コイル(50B、50D)は、相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記2つの相コイルは、前記相コイル毎に、前記2つのティースから前記円周方向にて2つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項9】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記複数の磁極の個数は、10であり、
前記複数のティースの個数は、12であり、
前記複数の相コイルの個数は、4であり、
前記複数の相コイルは、相コイル毎に、前記複数のティースのうち前記円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ前記2つの巻線部は、前記相コイル毎に、前記2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに前記2つの相コイルは、前記相コイル毎に、前記2つのティースから前記円周方向にて2つの前記ティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している電動機。
【請求項10】
前記複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとし、
前記複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えており、
前記A相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記D相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記B相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記A相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記C相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記B相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、
前記D相コイルに流れる前記第1交流電流は、前記C相コイルに流れる前記第1交流電流よりも位相が遅れており、 前記第1ティース、前記第2ティース、および前記第5ティースのそれぞれに、前記A相コイルが巻かれており、 前記第3ティース、前記第4ティース、および前記第7ティースのそれぞれに、前記B相コイルが巻かれており、 前記第6ティース、前記第9ティース、および前記第10ティースのそれぞれに、前記C相コイルが巻かれており、 前記第8ティース、前記第11ティース、および前記第12ティースのそれぞれに、前記D相コイルが巻かれている
請求項9に記載の電動機。
【請求項11】
前記電流制御部は、
前記4つの相コイルに流れる交流電流を独立して制御するインバータ回路(71)と、
前記インバータ回路を制御して、前記第2交流電流の周波数を前記第1交流電流の周波数と異なる周波数とし、かつ前記第1交流電流と前記第2交流電流とを互いに独立して制御する制御回路(72)と、
を備える
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項12】
前記電流制御部が前記複数の相コイルに前記第1交流電流を流して前記回転軸を1回転させるのに要する時間をTNとし、TNを5で割り算した値をTAとしたとき、前記第1交流電流は、1/TAを周波数とする交流電流であり、
TNを4で割り算した値をTBとしたとき、前記第2交流電流は、1/TBを周波数とする交流電流である
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項13】
第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ前記第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、前記複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
前記回転軸に支持されて、前記複数のティースに対して前記径方向に配置され、かつ前記円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
前記回転軸の前記第1軸線が前記第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
前記複数の相コイルに第1交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記ロータに前記第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
前記電流制御部は、前記複数の相コイルに第2交流電流を流して前記複数の磁極との間で前記回転軸の前記第1軸線を前記第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
前記複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに前記複数の相コイルは、前記複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
前記複数のティースのそれぞれには、前記複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれて
おり、
前記電流制御部が前記複数の相コイルに前記第1交流電流を流して前記回転軸を1回転させるのに要する時間をTNとし、TNを5で割り算した値をTAとしたとき、前記第1交流電流は、1/TAを周波数とする交流電流であり、
TNを4で割り算した値をTBとしたとき、前記第2交流電流は、1/TBを周波数とする交流電流である電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機のステータでは、相コイルUms、Vms、Wmsと相コイルUmn、Vmn、Wmnとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
相コイルUms、Vms、Wmsは、それぞれ、一端が端子Um、Vm、Wmに接続され、他端が端子Us、Vs、Wsに接続されている。相コイルUmn、Vmn、Wmnは、それぞれ、一端が端子Um、Vm、Wmに接続され、他端が中性点Nに接続されている。
【0004】
端子Um、Vm、Wmは、電動機電流Ium、Ivm、Iwmを生成する電動機電流生成部の出力端子が接続されている第1端子である。端子Us、Vs、Wsは、支持電流Ius、Ivs、Iwsを生成する支持電流生成部の出力端子が接続されている第2端子である。
【0005】
電動機電流Ium、Ivm、Iwmは、それぞれ、ロータに回転トルクを発生させる交流電流である。支持電流Ius、Ivs、Iwsは、それぞれ、ロータを回転可能に支持する交流電流である。
【0006】
電動機電流生成部から相コイルUmsを通して支持電流生成部に、電流(0.5Ium-Ius)が流れる。電動機電流生成部から相コイルVmsを通して支持電流生成部に、電流(0.5Ivm-Ivs)が流れる。電動機電流生成部から相コイルWmsを通して支持電流生成部に、電流(0.5Iwm-Iws)が流れる。
【0007】
電動機電流生成部から相コイルUmnを通して中性点Nに、電流(0・5Ium+Ius)が流れる。電動機電流生成部から相コイルWmnを通して中性点Nに、電流(0・5Iwm+Iws)が流れる。電動機電流生成部から相コイルVmnを通して中性点Nに、電流(0・5Ivm+Ivs)が流れる。
【0008】
相コイルUmsは、ステータコア11の12個のティースU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。相コイルVmsは、12個のU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。相コイルWmsは、12個のU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。
【0009】
相コイルUmnは、12個のU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。相コイルVmは、12個のU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。相コイルWmnは、12個のU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて3つの巻線部を構成する。
【0010】
このことにより、相コイルUms、Umn、Vms、Vmn、Wms、Wmnのそれぞれに生じる電磁力によって、回転子を回転可能に支持する支持力と回転子の回転トルクを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1の電動機では、相コイルUms、Umn、Vms、Vmn、Wms、Wmnがそれぞれ、12個のティースU1~U12のうち対応する3個のティースに巻かれて18個の巻線部を構成する。
【0013】
このため、12個のティースU1~U12のうちいずれかの1つ以上のティースには、相コイルUms、Vms、Wms、Umn、Vmn、Wmnのうち2つ以上の相コイルが巻かれている(
図28、
図29参照)。
【0014】
図29では、ティースU8には、相コイルUmnと相コイルVmsとが巻かれて巻線部1cと巻線部1hとが形成されている例を示している。
【0015】
したがって、12個のティースU1~U12のうちいずれかの1つ以上のティースには、2つ以上の巻線部が構成されることになる。このため、12個のティースU1~U12に対する相コイルUms、Umn、Vms、Vmn、Wms、Wmnの巻き方が複雑になるので、ステータの構成が複雑になる。
【0016】
本発明は上記点に鑑みて、ステータの構成を簡素にした電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1軸線(Ta)に沿って延びる回転軸(30)と、
第2軸線(T)を中心とする径方向に突起し、かつ第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティース(54a・・・54l)を備えるステータコア(52)と、複数のティースに巻かれている複数の相コイル(50A~50D)とを備えるステータ(35)と、
回転軸に支持されて、複数のティースに対して径方向に配置され、かつ円周方向に並べられている複数の磁極を形成するロータ(36)と、を備え、
回転軸の第1軸線が第2軸線から傾くことが可能に構成されている電動機であって、
複数の相コイルに第1交流電流を流して複数の磁極との間でロータに第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる電流制御部(70)を備え、
電流制御部は、複数の相コイルのうちいずれかコイルに第2交流電流を流して複数の磁極との間で回転軸の第1軸線を第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させ、
複数の相コイルは、4つ以上の相コイルであり、
さらに複数の相コイルは、複数のティースに対して集中巻にて巻かれており、
複数のティースのそれぞれには、複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれており、
複数の磁極の個数は、10であり、
複数のティースの個数は、12であり、
複数の相コイルの個数は、4であり、
複数の相コイルのうち、第1の相コイルが複数のティースのうち円周方向にて隣り合う3つのティースに巻かれることにより3つの巻線部を形成し、かつ3つの巻線部のうち円周方向にて隣り合う任意の2つの巻線部は、第1の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、
複数の相コイルのうち第1の相コイル以外の第2の相コイルが、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ2つの巻線部は、第2の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっており、さらに第2の相コイルが、2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0018】
以上により、複数のティースに対する複数の相コイルの巻き方が簡素になるため、ステータの構成を簡素にした電動機を提供することができる。
【0019】
特許請求の範囲において、集中巻を次のように定義する。すなわち、集中巻とは、巻線部が複数のティースのうち対応する1つのティースにのみに相コイルが巻かれて構成されているものである。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態における電動機の軸線Tを含む断面で切断した断面構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態において、ステータの軸線TをZ軸とし、軸線Tに直交するX軸とY軸とを設定したXYZ座標において、回転軸の軸線うち軸線方向他方側の端部の座標を示している図である。
【
図5】第1実施形態において、ステータの軸線TをZ軸とし、軸線Tに直交するX軸とY軸とを設定したXYZ座標において、Z軸に対する回転軸の軸線の傾斜角度を示している図である。
【
図6】第1実施形態における電動機を制御するための電子制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】第1実施形態において共通接続端子T1~T5からA相コイル50Aに軸支持力が流れたときに、巻線部56a、56b、56cおよび複数の永久磁石61の間に発生する吸引力としての電磁力FAを示す模式図である。
【
図8】第1実施形態において共通接続端子T1~T5からB相コイル50Bに軸支持力が流れたときに、巻線部56lおよび複数の永久磁石61の間に発生する吸引力としての電磁力FBを示す模式図である。
【
図9】第1実施形態において共通接続端子T1~T5からC相コイル50Cに軸支持力が流れたときに、巻線部56fおよび複数の永久磁石61の間に発生する吸引力としての電磁力FCを示す模式図である。
【
図10】第1実施形態において共通接続端子T1~T5からD相コイル50Dに軸支持力が流れたときに、巻線部56g、56h、56iおよび複数の永久磁石61の間に発生する吸引力としての電磁力FDを示す模式図である。
【
図11】第1実施形態において制御回路による制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図11の制御処理のうち回転制御処理(ステップS130)の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】
図11の制御処理のうち支持制御処理(ステップS120)の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】縦軸をホールセンサの出力(すなわち、センサの出力)とし、横軸を時間し、ホールセンサ37a、37cの出力信号Ha、Hcの差分dsの変化と、ホールセンサ37b、37dの出力信号Hb、Hdの差分dqの変化とを示すタイミングチャートである。
【
図15】
図5のZ軸(すなわち、軸線T)に対する軸線Taの傾きθと軸支持力Fとの関係を示す図である。
【
図16】縦軸を電流とし、横軸を時間とし、
図6のインバータ回路からA相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dのそれぞれに流れる回転力交流電流Ia、Ib、Ic、Idを示すタイミングチャートである。
【
図17】縦軸を電流とし、横軸を時間とし、
図3の相コイル50A、50B、50C、50Dに流れる軸支持力交流電流Izを示すタイミングチャートである。
【
図18】(a)、(b)を備えるステータ35を備える電動機10において、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dに生じる8起磁力ベクトルYa、Yb、Yc、Ydを示す図である。
【
図19】(a)、(b)の組み合わせによってステータ35を備える電動機10において、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dに生じる10起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdを示す図である。
【
図20】(b)、(c)を備えるステータ35を備える電動機10において、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dに生じる8起磁力ベクトルYa、Yb、Yc、Ydを示す図である。
【
図21】(b)、(c)の組み合わせによってステータ35を備える電動機10において、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dに生じる10起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdを示す図である。
【
図22】第2実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図23】第3実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図24】第4実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図25】第5実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図26】第6実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図27】第7実施形態における電動機において、ステータの軸線Tに直交する断面で切断した断面構成を示した図である。
【
図28】対比例における電動機のステータコイルの構成を示す図である。
【
図29】対比例における電動機のステータにおいて相コイルUmn、Ums、Vmsによって巻線部1a、1b、1c、1d、1e、1f、1hが形成され、巻線部1a、1b~1h以外の巻線部の図示が省略されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態の電動機10は、
図1、
図2、および
図3に示すように、回転軸30、センターピース31、軸受け32、抑え部33、永久磁石34a、34b、ステータ35、ロータ36、およびホールセンサ37a、37b、37c、37dを備える。
【0024】
回転軸30は、軸線(すなわち、第1軸線)Taに沿って延びるように形成されている回転軸である。回転軸30は、ロータ36の回転力を被駆動対象に伝える回転軸である。被駆動対象は、回転軸30の軸線方向他方側端部が嵌合されることにより、被駆動対象に回転軸30が連結されている。
【0025】
本実施形態では、被駆動対象としては、例えば、遠心ファン等の各種機器が用いられている。
【0026】
センターピース31は、筒部31a、およびフランジ部31bを備える支持部材である。筒部31aは、第2軸線である軸線Tを中心とする筒状に形成されている。筒部31aの中空部内には、回転軸30が配置されている。軸線Tは、ステータ35の軸線である。
【0027】
センターピース31のフランジ部31bは、筒部31aのうち軸線方向他方側から径方向外側に突起するように形成されている。センターピース31は、プレート40に固定されている。
【0028】
軸受け32は、回転軸30の軸線方向一方側を回転自在に支持する機械的軸受けである。軸受け32は、センターピース31の筒部31aに対して径方向内側に配置されている。軸受け32は、筒部31aにより支持されている。軸受け32は、センターピース31および抑え板41によって軸線方向他方側から支持されている。
【0029】
本実施形態では、軸受け32として、例えば、転がり軸受が使用されている。
【0030】
永久磁石34a、34bは、回転軸30のうち軸受け32に対して軸線方向一方側に配置されている。永久磁石34a、34bは、回転軸30に固定されている。永久磁石34a、34bは、
図2に示すように、それぞれ、円弧状に形成されている。永久磁石34a、34bは、回転軸30の外周を覆うように組み合わされている。
【0031】
永久磁石34a、34bのうち一方の永久磁石の径方向外側はS極を形成し、他方の永久磁石の径方向外側はN極を形成する。永久磁石34a、34bは、ホールセンサ37a、37b、37c、37dに磁束を付与する。
【0032】
抑え部33は、軸受け32および永久磁石34a、34bの間に配置されている。抑え部33は、軸線Tを中心とするリング状に形成されている。
【0033】
抑え部33および回転軸30の間には、隙間が形成されている。抑え部33は、後述するように、軸線Tから回転軸30の軸線Ta(
図5参照)が傾いた状態で回転軸30を支える支持部である。抑え部33は、センターピース31の筒部31aによって支持されている。
【0034】
ステータ35は、
図1および
図3に示すように、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50D、およびステータコア52を備える。以下、A相コイル50A、B相コイル50B、C相コイル50C、D相コイル50Dを纏めて相コイル50A、50b、50c、50dともいう。
【0035】
ステータコア52は、4つの相コイル50A、50b、50c、50dから発生する磁束を通過させるものである。具体的には、ステータコア52は、
図3に示すように、リング部53、およびティース54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、54h、54i、54j、54k、54lを備える。
【0036】
以下、説明の便宜上、ティース54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、54h、54i、54j、54k、54lを簡素化してティース54a、54b、・・・54lと記す。
【0037】
リング部53は、センターピース31の筒部31aに対して軸線Tを中心とする径方向の外側に配置されている。リング部53は、軸線Tを中心とするリング状に形成されている。リング部53は、筒部31aに固定されている。
【0038】
ティース54a、54b、・・・54lは、リング部53から軸線Tを中心とする径方向外側に突出するように形成されている12個のティースである。ティース54a、54b、・・・54lは、それぞれ、軸線Tを中心とする円周方向に同一間隔で並べられている。
【0039】
本実施形態のティース54a、54b、・・・54lは、それぞれの径方向外側から円周方向一方側および円周方向他方側に突起する先端側突起部を備える略T字状に形成されている。
【0040】
相コイル50A、50B、50C、50Dは、ロータ36の回転トルクを発生させる回転トルク発生用励磁巻線と、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づける軸支持力を発生させる磁気軸受け用巻線とを兼ねる。
【0041】
図3に本実施形態の相コイル50A、50B、50C、50Dの配置を示す。
【0042】
まず、A相コイル50Aは、
図3に示すように、ティース54a、54b、54cに巻かれている。このことにより、ティース54a、54b、54cには、巻線部56a、56b、56cがA相コイル50Aによって形成されている。
【0043】
巻線部56a、56b、56cは、それぞれ、ティース54a、54b、54cのうち対応する1つのティースにのみA相コイル50Aが巻かれて形成されている。ティース54a、54b、54cは、軸線Tを中心とする円周方向に隣り合うように並べられている。
【0044】
ここで、巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。巻線部56b、56cは、A相コイル50Aが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0045】
B相コイル50Bは、ティース54d、54e、54lに、巻かれている。このことにより、ティース54d、54e、54lには、巻線部56d、56e、56lがB相コイル50Bによって形成されている。
【0046】
巻線部56d、56e、56lは、それぞれ、ティース54d、54e、54lのうち対応する1つのティースにのみB相コイル50Bが巻かれて形成されている。
【0047】
ティース54d、54eは、軸線Tを中心とする円周方向に隣り合うように並べられている。ティース54lは、ティース54d、54eから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54a、54b、54cを空けて配置されている。
【0048】
ここで、巻線部56d、56eは、B相コイル50Bが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0049】
C相コイル50Cは、ティース54f、54j、54kに、巻かれている。このことにより、ティース54f、54j、54kには、巻線部56f、56j、56kがC相コイル50Cによって形成されている。
【0050】
巻線部56f、56j、56kは、それぞれ、ティース54f、54j、54kのうち対応する1つのティースにのみC相コイル50Cが巻かれて形成されている。
【0051】
ティース54j、54kは、軸線Tを中心とする円周方向に隣り合うように並べられている。ティース54fは、ティース54j、54kから円周方向他方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54g、54h、54iを空けて配置されている位置に設けられている。
【0052】
ここで、巻線部56f、56jは、C相コイル50Cが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0053】
D相コイル50Dは、ティース54g、54h、54iに、巻かれている。このことにより、ティース54g、54h、54iには、巻線部56g、56h、56iがD相コイル50Dによって形成されている。
【0054】
巻線部56g、56h、56iは、それぞれ、ティース54g、54h、54iのうち対応する1つのティースにのみD相コイル50Dが巻かれて形成されている。ティース54g、54h、54iは、軸線Tを中心とする円周方向に隣り合うように並べられている。
【0055】
ここで、巻線部56g、56hは、D相コイル50Dが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。巻線部56h、56iは、D相コイル50Dが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0056】
このようなティース54a、54b、・・・54lには、相コイル50A、50B、50C、50Dのうち対応する相コイルのみが巻かれている。
【0057】
相コイル50A、50B、50C、50Dは、ティース54a、54b、・・・54lに対して集中巻にて巻かれている。本実施形態の集中巻とは、巻線部56a、56b、・・・・56lがそれぞれティース54a、54b・・・・54lのうち対応する1つのティースにのみに、1つの相コイルが巻かれて構成されていることである。
【0058】
ここで、相コイル50A、50B、50C、50Dは、ステータコア52を介してセンターピース31に取り付けられている。相コイル50A、50B、50C、50Dに流れる交流電流は、電子制御装置70(
図6参照)により制御される。なお、電子制御装置70の詳細については、後述する。
【0059】
ロータ36は、
図1に示すように、ロータケース60、および複数の永久磁石61を備える。ロータケース60は、軸線Tを中心とする筒状に形成されている。ロータケース60のうち軸線方向他方側が蓋部60aで塞がれている。
【0060】
蓋部60aには、回転軸30を貫通させる貫通穴60bが設けられている。ロータケース60の蓋部60aが回転軸30により固定されている。つまり、ロータ36は、回転軸30に取り付けられている。
【0061】
複数の永久磁石61は、それぞれ、軸線Taを中心とする円周方向に並べられている。複数の永久磁石61は、
図1および
図3に示すように、ロータケース60に対して軸線Tを中心とする径方向内側に配置されている。複数の永久磁石61は、それぞれ、ティース54a、54b、・・・54lに対して軸線Tを中心とする径方向外側に配置されている。
【0062】
複数の永久磁石61は、ロータケース60に固定されている。複数の永久磁石61は、それぞれの磁極が径方向に向くように配置されている。
【0063】
複数の永久磁石61のそれぞれの磁極は、S極、およびN極が円周方向で交互に並ぶように複数の永久磁石61が配置されている。
【0064】
本実施形態の複数の永久磁石61としては、10個の永久磁石61が用いられている。このため、10個の永久磁石61によって、10個の磁極を形成することができる。
【0065】
ホールセンサ37a、37b、37c、37dは、永久磁石34a、34bに対して、軸線Tを中心とする径方向外側に配置されている。ホールセンサ37a、37b、37c、37dと永久磁石34a、34bとの間には、隙間が形成されている。
【0066】
ホールセンサ37a、37b、37c、37dは、軸線Tを中心とする円周方向に同一間隔で並べられている。ホールセンサ37a、37b、37c、37dは、センターピース31の筒部31aに固定されている。ホールセンサ37a、37b、37c、37dは、回転軸30の回転速度、および傾き角度を検出するためのもので、永久磁石34a、34bから生じる磁界を検出する磁気センサとしてのホール素子から構成されている。
【0067】
このように構成されたものにおいて、回転軸30のうち軸受け32側を支点として、軸線Tから回転軸30の軸線Taが傾くことが可能に構成される(
図4、
図5参照)。
【0068】
図4、
図5では、前記支点を原点0とし、軸線TをZ軸とし、軸線Tに直交するX軸とY軸とを設定し、Z軸に対して回転軸30の軸線Taが角度θ傾いた例を示している。
図4中の(x0、y0)は、回転軸30の軸線Taうち軸線方向他方側の端部(以下、回転軸30の基準位置という)のX-Y座標を示している。
【0069】
次に、本実施形態の電動機10を制御するための電子制御装置70の構成の詳細について
図6を参照して説明する。
【0070】
電子制御装置70は、
図6に示すように、インバータ回路71、および制御回路72を備える電流制御部である。
【0071】
インバータ回路71は、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6、SW7、SW8、SW9、SW10を備える。
【0072】
トランジスタSW1、SW2は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。トランジスタSW3、SW4は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。トランジスタSW5、SW6は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。
【0073】
トランジスタSW7、SW8は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。トランジスタSW9、SW10は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。
【0074】
トランジスタSW1、SW2の間の共通接続端子T1は、A相コイル50Aの一端部に接続されている。トランジスタSW3、SW4の間の共通接続端子T2は、B相コイル50Bの一端部に接続されている。
【0075】
トランジスタSW5、SW6の間の共通接続端子T3は、C相コイル50Cの一端部に接続されている。トランジスタSW7、SW8の間の共通接続端子T4は、D相コイル50Dの一端部に接続されている。
【0076】
トランジスタSW9、SW10の間の共通接続端子T5は、相コイル50A、50B、50C、50Dのそれぞれの他端部の共通接続端子である中性点Nに接続されている。相コイル50A、50B、50C、50Dは、スター結線により接続されているステータコイルを構成している。
【0077】
正極母線71aは、直流電源TDの正極電極に接続されている。負極母線71bは、直流電源TDの負極電極に接続されている。
【0078】
制御回路72は、マイクロコンピュータやメモリ等に構成されている。制御回路72は、メモリに予め記憶されているコンピュータプログラムにしたがって、ロータ36に回転トルクを発生させるとともに、回転軸30を支持する軸支持力を発生させる制御処理を実行する。
【0079】
制御回路72は、制御処理の実行に伴って、ホールセンサ37a、37b、37c、37dの出力信号に基づいて、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW5、SW6、SW7、SW8、SW9、SW10をスイッチング制御する。なお、以下、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5を纏めて共通接続端子T1~T5とも表記する。
【0080】
このことにより、インバータ回路71は、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5と相コイル50A、50B、50C、50Dとの間に流れる4相の交流電流を独立して制御する。
【0081】
共通接続端子T1~T5からA相コイル50Aに交流電流が流れたときには、巻線部56b、56cによって発生される磁束Ga(
図7参照)に基づいて、巻線部56a、56b、56cおよび複数の永久磁石61の間には吸引力として電磁力FAが発生する。
【0082】
ここで、吸引力は、巻線部56a、56b、56cに対してロータ36を引き付ける力である。
【0083】
共通接続端子T1~T5からB相コイル50Bに交流電流が流れたときには、巻線部56lおよび複数の永久磁石61の間には、B相コイル50Bによって生じる磁束Gb(
図8参照)に基づいて吸引力として電磁力FBが発生する。
【0084】
ここで、吸引力は、巻線部56lに対してロータ36を引き付ける吸引力である。巻線部56d、56eには、ロータ36を引き付ける吸引力が作用しない。
【0085】
共通接続端子T1~T5からC相コイル50Cに交流電流が出力されたときには、巻線部56fおよび複数の永久磁石61の間には、C相コイル50Cによって生じる磁束Gc(
図9参照)に基づいて吸引力として電磁力FCが発生する。
【0086】
ここで、吸引力は、巻線部56fに対してロータ36を引き付ける吸引力である。巻線部56j、56kには、ロータ36を引き付ける吸引力が作用しない。
【0087】
共通接続端子T1~T5からD相コイル50Dに交流電流が出力されたときには、巻線部56g、56h、56iおよび複数の永久磁石61の間には、D相コイル50Dよって生じる磁束Gd(
図10参照)に基づいて吸引力として電磁力FDが発生する。
【0088】
ここで、吸引力は、巻線部56g、56h、56iに対してロータ36を引き付ける吸引力である。
【0089】
電磁力FAの方向、電磁力FBの方向、電磁力FCの方向、および電磁力FDの方向は、軸線Tを中心とする円周方向に並べられている。すなわち、電磁力FAの方向、電磁力FBの方向、電磁力FCの方向、および電磁力FDの方向は、それぞれ相違する方向に向いている。
【0090】
具体的には、電磁力FAの方向は、電磁力FDの方向に対してほぼ角度90℃オフセットしている。電磁力FBの方向は、電磁力FAの方向に対してほぼ角度90℃オフセットしている。電磁力FCの方向は、電磁力FBの方向に対してほぼ角度90℃オフセットしている。電磁力FDの方向は、電磁力FCの方向に対して角度ほぼ90℃オフセットしている。
【0091】
ここで、電磁力FA、FB、FC、FDをそれぞれ単位ベクトルとする。
【0092】
このような電磁力FA、FB、FC、FD、および係数K1、K2、K3、K4を用いて、軸線Tに回転軸30の軸線Taを近づけるための下記の数式1の軸支持力Fを発生する。
【0093】
F=K1・FA+K2・FB+K3・FC+K4・FD・・・(数式1)
制御回路72がトランジスタSW1、SW2・・SW10を制御して共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5および相コイル50A、50B、50C、50Dの間に流れる交流電流をコイル毎に制御する。このため、係数K1、K2、K3、K4が制御されることにより、軸支持力Fの大きさ、および方向を制御することができる。
【0094】
以下、軸線Tに回転軸30の軸線Taを近づけるために相コイル50A、50B、50C、50Dに流す第2交流電流を軸支持力交流電流という。
【0095】
制御回路72がトランジスタSW1、SW2・・SW10を制御すると、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5から相コイル50A、50B、50C、50Dのそれぞれに交流電流が流れる。
【0096】
ここで、相コイル50A、50B、50C、50Dのそれぞれに流れる交流電流は、90度ずつ位相がずれている。このため、相コイル50A、50B、50C、50Dから回転磁界が順次に発生する。
【0097】
このような回転磁界と複数の永久磁石61によって生じる磁束とに応じてロータ36に回転トルクが発生する。
【0098】
以下、回転磁界と複数の永久磁石61によって生じる磁束とに応じてロータ36に回転トルクが発生させる第1交流電流を回転力交流電流という。
【0099】
本実施形態の制御回路72は、インバータ回路71を制御して、軸支持力交流電流の周波数と回転力交流電流の周波数とを異なる周波数とし、かつ軸支持力交流電流と回転力交流電流とを独立して制御する。
【0100】
次に、本実施形態の制御回路72の制御処理について
図11~
図13を参照して説明する。
【0101】
制御回路72は、
図11~
図13のフローチャートにしたがって制御処理を実行する。
図13は制御処理を示すフローチャートである。
【0102】
まず、制御回路72は、
図11のステップ100において、ホールセンサ37a、37b、37c、37dにより永久磁石34a、34bによって生じる磁界を検出する。
【0103】
ここで、X-Y座標において、ホールセンサ37a、37cが並ぶ方向をX方向とし、ホールセンサ37b、37dが並ぶ方向をY方向とする。ホールセンサ37aの出力信号Haとホールセンサ37cの出力信号Hcとの差分ds(=Ha-Hc:
図14参照)を求める。当該差分dsは、回転軸30の回転角度情報を示す。
【0104】
そして、制御回路72は、この差分dsに基づいて、現時刻の回転軸30の回転角度(すなわち、回転位置)を算出する。
【0105】
次に、制御回路72は、支持制御処理(ステップ120)と回転制御処理(ステップ130)とを並列的に実行する。支持制御処理は、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるための制御処理である。回転制御処理は、回転軸30の軸線Taを軸線Tを中心として回転させる制御処理である。なお、支持制御(ステップ120)、および回転制御(ステップ130)の詳細は後述する。
【0106】
次に、回転軸30の回転を続行するか否かを判定する(ステップ140)。その後、回転軸30の回転を続行するとして、ステップ140でYESと判定すると、ステップ110に戻る。次いで、制御処理を停止させる停止指令が外部から入力されるまで、ステップ100、110、120、130およびステップ140のYES判定を繰り返す。
【0107】
その後、停止指令が外部から入力されると、ステップ140でN0と判定して、制御処理を終了する。
【0108】
次に、回転制御(ステップ130)について
図12、
図14を参照して説明する。
図12は
図12中ステップ130の詳細を示すフローチャートである。
【0109】
まず、制御回路72は、ステップ131において、上記ステップ110で算出される現時刻の回転軸30の回転角度に基づいて、相コイル50A、50B、50C、50Dのうち励磁すべきコイルを選択する。
【0110】
これに伴い、制御回路72は、この選択した相コイルに流す電流を、上記ステップ110で算出された現時刻の回転軸30の回転角度に基づいて算出する(ステップ132)。
【0111】
その後、制御回路72は、この算出した電流を上記選択した相コイルに流すためのトランジスタSW1、SW2、・・・SW10をスイッチング制御する(ステップ133)。 これにより、インバータ回路71のトランジスタSW2、・・・SW10がスイッチングして、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5から上記選択したコイルに交流電流を出力する。ここで、ステップ131~133の処理は周知の回転制御処理を用いることができる。
【0112】
このようなコイルの選択処理(ステップ131)、電流値の算出処理(ステップ132)、および電流出力処理(ステップ133)と、
図13のホールセンサ検出処理(ステップ100)、および回転角度算出処理(ステップ110)を繰り返す。
【0113】
すると、トランジスタSW1、SW2・・・SW10がスイッチングして、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5からコイル50A、50B、50C、50Dに4相交流電流を回転力交流電流として出力する。
【0114】
このため、コイル50A、50B、50C、50Dから回転磁界が発生する。このため、複数の永久磁石61には、回転磁界に同期して回転する回転トルクが発生する。これに伴い、回転軸30は、ロータ36とともに回転する。
【0115】
次に、支持制御(ステップ120)について
図13を参照して説明する。
図13は、
図11中ステップ120の詳細を示すフローチャートである。
【0116】
まず、ステップ121において、ホールセンサ37a、37b、37c、37dの出力信号に基づいて、ステータ35の軸線T(すなわち、Z軸)に対する回転軸30の軸線Taの傾きθ(
図5参照)を算出する。
【0117】
具体的には、現時刻におけるホールセンサ37aの出力信号Haと現時刻におけるホールセンサ37cの出力信号Hcとの間の差分ds(=Ha-Hc)を求める。そして、差分dsの振幅値A1と基準信号k1の振幅値A0の差分dA(=A1-A0:
図14)によって、回転軸30の基準位置のX座標(すなわち、回転軸30の軸線方向他方側端部のX座標)を求める。
【0118】
ここで、振幅値A1は、現時刻における差分dsの振幅値を示す。差分dsが零になったタイミングと現時刻との間の時間をΔTとする。振幅値A0は、基準信号k1が零になるタイミングからΔT経過したときの基準信号k1の振幅である。
【0119】
そして、差分(A1-A0)が大きくなるほど、X座標:X0が大きくなり、差分(A1-A0)が小さくなるほど、X座標:X0が小さくなる。基準信号k1は、ホールセンサ37aの出力信号Haの理論値とホールセンサ37cの出力信号Hcの理論値との間の差分である。
【0120】
ホールセンサ37aの出力信号Haの理論値とは、軸線Tに回転軸30の軸線Taが一致した状態で回転軸30が回転した際のホールセンサ37aの出力信号Haである。ホールセンサ37cの出力信号Hcの理論値とは、軸線Tに回転軸30の軸線Taが一致した状態で回転軸30が回転した際のホールセンサ37cの出力信号Hcである。
【0121】
現時刻におけるホールセンサ37bの出力信号Hbと現時刻におけるホールセンサ37dの出力信号Hdとの差分dq(=Hb-Hd)を求める。この差分dqの振幅値B1と基準信号k2の振幅値B0との間の差分dB(=B1-B0)に基づいて、回転軸30の基準位置のY座標(すなわち、回転軸30の軸線方向他方側端部のY座標)を求める。
【0122】
ここで、基準信号k2は、ホールセンサ37bの出力信号Hbの理論値とホールセンサ37dの出力信号Hdの理論値との間の差分である。
【0123】
ホールセンサ37bの出力信号Hbの理論値とは、軸線Tに回転軸30の軸線Taが一致した状態で回転軸30が回転した際のホールセンサ37bの出力信号Hbである。
ホールセンサ37dの出力信号Hdの理論値とは、軸線Tに回転軸30の軸線Taが一致した状態で回転軸30が回転した際のホールセンサ37dの出力信号Hdである。
【0124】
振幅値B1は、現時刻における差分dqの振幅値を示す。振幅値B0は、上記基準信号k1が零になるタイミングからΔT経過したときの基準信号k2の振幅である。そして、差分dBが大きくなるほど、Y座標:Y0が大きくなる。差分dBが小さくなるほど、Y座標:Y0が小さくなる。
【0125】
このように求められた回転軸30の基準位置のXY座標(X0、Y0)に基づいてZ軸(すなわち、軸線T)に対する回転軸30の傾き角度θを算出する。
【0126】
なお、本実施形態では、傾きθは、Z軸および回転軸30の軸線Taの間でZ軸から回転軸30の軸線Taに向けて時計回り方向に形成される角度である。(
図5参照)。
【0127】
次に、ステップ122において、ファン20のXY座標(X0、Y0)に基づいて、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるために励磁すべきコイルを相コイル50A、50B、50C、50Dから選択する。
【0128】
つまり、傾いた回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるのに通電すべきコイルを相コイル50A、50B、50C、50Dから選択する。以下、このように選択したコイルを選択コイルという。
【0129】
この場合、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるのに必要な軸支持力Fを相コイル50A、50B、50Cおよび複数の永久磁石61の間で発生させるために、上記選択コイルに出力するべき電流を、(X0、Y0)および傾きθに基づいて算出する(ステップ122)。
【0130】
ここで、傾きθが大きいほど、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるのに必要な軸支持力Fは、大きくなる。これに加えて、回転軸30の回転速度が高くなる程、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づけるのに必要な軸支持力Fは、小さくなる。
【0131】
図15は、縦軸を軸支持力Fとし、横軸を傾きθとしたグラフPを示す。
【0132】
そこで、
図15の軸支持力F-傾きθの関係に基づいて、上記選択コイルに出力するべき電流を算出する(ステップ123)。
【0133】
このように回転軸30の回転速度、(X0、Y0)、および傾きθに基づいて、上記選択コイルに出力するべき電流を軸支持力交流電流として算出する。これに伴い、この算出した軸支持力交流電流を上記選択コイルに出力するために、インバータ回路71のトランジスタSW1、SW2・・・SW10を制御する。
【0134】
これにより、共通接続端子T1、T2、T3、T4、T5から上記選択コイルに軸支持力交流電流が流れる。このため、上記選択コイルおよび永久磁石61の間で軸支持力FAが発生する。よって、軸線Tに回転軸30の軸線Taを近づけることができる。
【0135】
以上のように、インバータ回路71およびコイル50A、50B、50C、50Dの間において、回転力交流電流と軸支持力交流電流とが重畳されて流れることになる。このため、相コイル50A、50B、50Cおよび複数の永久磁石61の間において、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づける軸支持力Fと回転軸30を軸線Tを中心として回転させる回転力とを同時に発生させることになる。
【0136】
以上説明した本実施形態によれば、電動機10は、ステータ35とロータ36とを備える。ステータ35は、軸線Tを中心とする径方向の外側に突起し、かつ軸線Tを中心とする円周方向に並べられているティース54a・・・54lを備えるステータコア52を備える。
【0137】
ステータ35は、ティース54a・・・54lに巻かれている相コイル50A、50B、50C、50Dを備える。
【0138】
ロータ36は、回転軸30に支持されて、ティース54a・・・54lに対して径方向の外側に配置され、かつ円周方向に並べられている複数の磁極を形成する。
【0139】
電動機10は、回転軸30の軸線Taが軸受け32を支点として軸線Tから傾くことが可能に構成されている。
【0140】
電子制御装置70は、相コイル50A、50B、50C、50Dに第1交流電流としての回転力交流電流を流して複数の磁極との間において、ロータ36に軸線Tを中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる。
【0141】
電子制御装置70は、相コイル50A、50B、50C、50Dのうちいずれかコイルに第2交流電流としての軸支持力交流電流を流して複数の磁極との間で回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づける電磁力としての軸支持力を発生させる。
【0142】
相コイル50A、50B、50C、50Dは、4相コイルである。ティース54a・・・54lのそれぞれには、相コイル50A~50Dのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれている。さらに相コイル50A、50B、50C、50Dは、ティース54a・・・54lに対して集中巻にて巻かれている。
【0143】
以上により、相コイル50A、50B、50C、50Dの巻き方が簡素になるので、ステータ35の構成を簡素にした電動機10を提供することができる。
【0144】
ここで、上述の特許文献1では、6個の相コイルUms、Vms、Wms、Umn、Vmn、Wmnが用いられている。
【0145】
これに対して、本実施形態では、4個の相コイル50A、50B、50C、50Dが用いられている。そして、磁気軸受用巻線と回転トルク発生用巻線とを共用させるためにコイルの配置を工夫することで、コイルの削減と小型化を両立することができる。
【0146】
上述の特許文献1では、12個のティースU1~U12のうちいずれかの1つのティースには、2つ以上の相コイルが巻かれている。このため、2つ以上の相コイルに互いに異なる位相の第1、第2交流電流が流れると、第1、第2交流電流が互いに相殺され、回転トルクや支持力の低下を招く恐れがある。
【0147】
これに対して、本実施形態では、ティース54a・・・54lのそれぞれには、相コイル50A~50Dのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれている。このため、上述の回転トルクや支持力の低下を未然に防ぐことができる。
【0148】
本実施形態の制御回路72は、インバータ回路71を制御して、軸支持力交流電流の周波数と回転力交流電流の周波数とを異なる周波数とし、かつ軸支持力交流電流と回転力交流電流とを独立して制御する。このことにより、ロータ36の回転トルクと、軸線Tに回転軸30の軸線Taを近づける軸支持力とを独立して制御することができる。
【0149】
次に、本実施形態の制御回路72の制御処理の具体例について
図16、
図17を参照して説明する。
【0150】
例えば、インバータ回路71は、
図16(a)(b)(c)(d)に示すように、相コイル50A、50B、50C、50Dに順次交流電流Ia、Ib、Ic、Idを回転力交流電流として流す。交流電流Ia、Ib、Ic、Idは、それぞれ同一の周期TAの信号である。
【0151】
交流電流Ibは、交流電流Iaに対して位相が90度、遅れている。交流電流Icは、交流電流Ibに対して位相が90度、遅れている。交流電流Idは、交流電流Icに対して位相が90度、遅れている。交流電流Iaは、交流電流Idに対して位相が90度、遅れている。
【0152】
ここで、回転軸30を一回転させるのに要する時間を時間TNとすると、交流電流Ia、Ib、Ic、Idの周期TAは、周期TA=(TN/5)を満たす時間になっている。
【0153】
一方、回転軸30の軸線Taを軸線Tに近づける軸支持力Fを発生させるために、インバータ回路71が相コイル50A、50B、50C、50Dに流す軸支持力交流電流の周期を周期TBとする。周期TBは、周期TB=(TN/4)を満たす時間になっている。
【0154】
つまり、交流電流Ia、Ib、Ic、Idの周波数は、1/TAであり、軸支持力交流電流の周波数は、1/TBである。交流電流Ia、Ib、Ic、Idの周波数と軸支持力交流電流の周波数とは相違する。
【0155】
このような回転力交流電流の周期TAが(TN/5)に一致し、かつ軸支持力交流電流の周期TBが(TN/4)に一致した関係を維持した状態で、回転力交流電流の周期TAを軸支持力交流電流の周期TBに連動して変更する。このことにより、ロータ36の角速度を変更することができる。
【0156】
以下、このように周期TAが(TN/5)に一致する回転力交流電流を、回転力交流電流Ixとし、周期TBが(TN/4)に一致する軸支持力交流電流を軸支持力交流電流Izとする。
【0157】
次に、回転力交流電流Ixおよび軸支持力交流電流Izを用いて巻線部56a、56b、・・・56lとロータ36の軸支持力、回転トルクとの関係について説明する。
【0158】
まず、軸支持力交流電流Izを相コイル50A、50B、50C、50Dに流した場合に、相コイル50A、50B、50C、50Dに対して相コイル毎に発生する起磁力ベクトル(以下、8起磁力ベクトルという)と軸支持力とは次のような関係を持つ。
【0159】
すなわち、相コイル毎の8起磁力ベクトルの絶対値が大きく、かつ相コイル毎の8起磁力ベクトルの位相差が90degに近いほど、ロータ36の軸支持力が大きくなる。
【0160】
回転力交流電流Ixを相コイル50A、50B、50C、50Dに流した場合に相コイル50A、50B、50C、50Dに対して相コイル毎に発生する起磁力ベクトル(以下、10起磁力ベクトルという)と回転トルクとは次のような関係を持つ。
【0161】
すなわち、相コイル毎の10起磁力ベクトルが大きく、かつ相コイル毎の10起磁力ベクトルの位相差が90degに近いほど、ロータ36の回転トルクが大きくなる。
【0162】
次に、本発明者等は、ロータ36の軸支持力を発生させる磁気軸受用巻線と回転トルクを発生させる回転トルク発生用巻線とを兼用させる構成について次の通り検討した。
【0163】
具体的には、磁極の個数を10とし、ティース54a・・・54lの個数であるスロット数を12とし、相コイルの相数を4とし、相コイル50A、50B、50C、50Dがそれぞれ3つのティースに巻かれる場合には、以下(a)(b)(c)のいずれかに属する。
【0164】
なお、説明の便宜上、相コイル50A、50B、50C、50Dを相コイル50A~50Dとも記す。
【0165】
(a)相コイル50A~50Dのうちいずれかの相コイルは、ティース54a・・・54lのうち互いに隣接する3つのティースに巻かれて3つの巻線部を構成し、3つの巻線部のうち隣接する2つの巻線は、相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0166】
(b)相コイル50A~50Dのうちいずれかの相コイルは、ティース54a・・・54lのうち互いに隣接する2つのティースとこれら隣接する2つのティースとから3つのティースを空けて配置されている1つのティースとにそれぞれに巻かれて3つの巻線部を構成する。上記隣接する2つのティースに相コイルが巻かれて構成される2つの巻線部は、
相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0167】
(c)相コイル50A~50Dのうちいずれかの相コイルは、ティース54a・・・54lのうち互いに隣接する2つのティースとこれら隣接する2つのティースから2つのティースを空けて配置されている1つのティースとのそれぞれに巻かれて3つの巻線部を構成する。上記隣接する2つのティースに相コイルが巻かれて構成される2つの巻線部は、相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0168】
次に、10極起磁力ベクトルおよび8極起磁力ベクトルの大きさの計算について
図18を参照して説明する。
【0169】
まず、ティース54a・・・54lのうちいずれか3つのティースに1つの相コイルを集中巻にて巻かれて3つの巻線部を構成するパターンとしては、複数のパターンが考えられる。これら複数のパターンのうち(a)、(b)は、10極起磁力ベクトルの大きさが最大となる。(c)は、10極起磁力ベクトルの大きさが二番目に大きい。
【0170】
(a)、(b)の場合には、3つの巻線部に発生する誘起電圧の位相差が互いに30degとなる。
【0171】
ここで、「3つの巻線部に発生する誘起電圧の位相差がないと仮定したときの3つの誘起電圧のベクトルを合成した値」を理想値とする。そこで、10極起磁力ベクトルの大きさの理想値を1とすると、(a)、(b)の場合における10極起磁力ベクトルの大きさは、それぞれ「0.911」となる。
「0.911」とは、「(a)、(b)の場合において「これら3つの巻線部に発生する誘起電圧のベクトルを合成した値」と「理想値」との比を示している。
【0172】
(c)の場合において、3つの巻線部に発生する誘起電圧の位相差が30degと60degとなる。
【0173】
ここで、「3つの巻線部に発生する誘起電圧の位相差がないと仮定したときの3つの誘起電圧のベクトルを合成した値」を理想値とする。10極起磁力ベクトルの大きさの理想値を1とすると、(c)の場合における10極起磁力ベクトルの大きさは、「0.798」となる。
【0174】
「0.798」は、「これら3つの巻線部に発生する誘起電圧のベクトルを合成した値」と、「理想値」との比を示している。
【0175】
また、(a)、(b)、(c)のそれぞれの場合において、8極起磁力ベクトルの大きさが、同一である。
【0176】
以上により、(a)、(b)の組み合わせを含む電動機10は、(a)、(b)の組み合わせを含まない電動機10に比べて、ロータ36の回転トルクが大きくなる。
【0177】
これは、(a)、(b)の組み合わせは、上記複数のパターンのうち10極起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdの大きさが最大となる組み合わせであり、かつ相コイル毎の10起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdが互いが直交しているためである(
図19参照)。
【0178】
なお、(b)、(c)の組み合わせを含む電動機10は、10極起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdの大きさが小さく、かつ相コイル毎の10起磁力ベクトルBa、Bb、Bc、Bdの位相差が90degから大きくずれている(
図21参照)。
【0179】
ここで、10起磁力ベクトルBaは、A相コイル50Aに生じる10起磁力ベクトルである。10起磁力ベクトルBbは、B相コイル50Bに生じる10起磁力ベクトルである。10起磁力ベクトルBcは、C相コイル50Cに生じる10起磁力ベクトルである。10起磁力ベクトルBdは、D相コイル50Dに生じる10起磁力ベクトルである。
【0180】
次に、(b)、(c)の組み合わせを含む電動機10は、(b)、(c)の組み合わせを含まない電動機10に比べて、ロータ36の軸支持力が大きくなる。
【0181】
これは、8極起磁力ベクトルYa、Yb、Yc、Ydの位相差が90degに近いためである。なお、電動機10において(c)が含まれることで10極起磁力ベクトルの大きさが減少するため、ロータ36の回転トルクはやや低下する(
図20参照)。
【0182】
本実施形態では、A相コイル50Aが隣接する3つのティース54a、54b、54cに巻かれて巻線部56a、56b、56cを構成している。D相コイル50Dが隣接する3つのティース54g、54h、54iに巻かれて巻線部56g、56h、56iを構成している。
【0183】
巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。巻線部56b、56cは、A相コイル50Aが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。したがって、A相コイル50AおよびD相コイル50Dは、(a)に該当することになる。
【0184】
また、C相コイル50Cが隣接する2つのティース54j、54kに巻かれて巻線部56j、56kを構成している。C相コイル50Cは、ティース54j、54kから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54g、54h、54iを空けて配置されているティース54fに巻かれて巻線部56fを構成している。巻線部56j、56kは、C相コイル50Cが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0185】
さらに、B相コイル50Bが隣接する2つのティース54d、54eに巻かれて巻線部56d、56eを構成している。B相コイル50Bは、ティース54d、54eから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54a、54b、54cを空けて配置されているティース54lに巻かれて巻線部56lを構成している。巻線部56d、56eは、D相コイル50Dが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0186】
したがって、B相コイル50BおよびC相コイル50Cは、(b)に該当することになる。
【0187】
以上により、相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、A相コイル50AおよびD相コイル50Dが(a)に該当する。相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、A相コイル50AおよびD相コイル50Dを除いた残りのB相コイル50BおよびC相コイル50Cは、(b)に該当する。
【0188】
つまり、本実施形態の電動機10は、(a)(b)の組み合わせによってステータ35が構成されている。このため、本実施形態の電動機10は、ロータ36の回転トルクが大きくなる。
【0189】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、上記(b)を構成するために2つのティース54d、54eにB相コイル50Bが巻かれて巻線部56d、56eを構成する例について説明した。しかし、これに代えて、上記(b)を構成するために2つのティース54k、54lにB相コイル50Bが巻かれて巻線部56k、56lを構成する本第2実施形態について
図22を参照して説明する。
【0190】
図22は、本実施形態の電動機10の断面構成を示す。
図22において、
図3と同一符号は、同一のものを示し、その説明を省略する。
【0191】
本実施形態と上記第1実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0192】
A相コイル50Aは、上記第1実施形態と同様に、隣接する3つのティース54a、54b、54cに巻かれて巻線部56a、56b、56cを構成する。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。巻線部56b、56cは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0193】
B相コイル50Bは、隣接する2つのティース54k、54lとティース54dとに巻かれて巻線部56k、56l、56dを構成する。ティース54dは、ティース54k、54lから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54a、54b、54c、を空けて配置されているティースである。巻線部56k、56lは、B相コイル50Bが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0194】
C相コイル50Cは、隣接する2つのティース54i、54jとティース54eとに巻かれて巻線部56i、56j、56eを構成する。ティース54eは、ティース54i、54jから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54h、54g、54f、を空けて配置されているティースである。巻線部56i、56jは、C相コイル50Cが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0195】
D相コイル50Dは、隣接する3つのティース54h、54g、54fに巻かれて巻線部56h、56g、56fを構成する。巻線部56h、56gは、D相コイル50Dが巻かれる方向が逆方向になっている。巻線部56g、56fは、D相コイル50Dが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0196】
したがって、A相コイル50AおよびD相コイル50Dは、(a)に該当することになる。B相コイル50BおよびC相コイル50Cは、(b)に該当することになる。
【0197】
以上により、本実施形態の電動機10は、上記第1実施形態と同様に、(a)(b)の組み合わせによってステータ35が構成されている。このため、本実施形態の電動機10は、ロータ36の回転トルクが大きくなる。
【0198】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、(a)(b)の組み合わせによってステータ35を構成した例について説明したが、これに代えて、(b)によってステータ35を構成した本第3実施形態について
図23を参照して説明する。
【0199】
図23は、本実施形態の電動機10の断面構成を示す。
図23において、
図3と同一符号は、同一のものを示し、その説明を省略する。
【0200】
本実施形態と上記第1実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0201】
A相コイル50Aは、隣接する2つのティース54a、54bとティース54iとに巻かれて巻線部56a、56b、56iを構成する。ティース54iは、2つのティース54a、54bから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54l、54k、54jを空けて配置されているティースである。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0202】
B相コイル50Bは、隣接する2つのティース54g、54hとティース54cとに巻かれて巻線部56g、56h、56cを構成する。ティース54cは、ティース54g、54hから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)3つのティース54d、54e、54fを空けて配置されているティースである。巻線部56g、56hは、B相コイル50Bが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0203】
C相コイル50Cは、隣接する2つのティース54l、54kとティース54dとに巻かれて巻線部56l、56k、56dを構成する。ティース54dは、ティース54l、54kから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)3つのティース54a、54b、54cを空けて配置されているティースである。巻線部56l、56kは、C相コイル50Cが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0204】
D相コイル50Dは、隣接する2つのティース54e、54fと、ティース54jとに巻かれて巻線部56e、56f、56jを構成する。ティース54jは、ティース54e、54fから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54g、54h、54iを空けて配置されているティースである。巻線部56e、56fは、D相コイル50Dが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0205】
したがって、相コイル50A、50B、50C、50Dは、それぞれ、(b)に該当することになる。
【0206】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、上記(b)を構成するために2つのティース54e、54fにD相コイル50Dが巻かれて巻線部56e、56fを構成する例について説明した。しかし、これに代えて、上記(b)を構成するために2つのティース54i、54jにD相コイル50Dが巻かれて巻線部56i、56jを構成する本第4実施形態について
図24を参照して説明する。
【0207】
本実施形態と上記第3実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0208】
A相コイル50Aは、隣接する2つのティース54a、54bとティース54fとに巻かれて巻線部56a、56b、56fを構成する。ティース54fは、2つのティース54a、54bから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54c、54d、54eを空けて配置されているティースである。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0209】
B相コイル50Bは、上記第3実施形態と同様に、隣接する2つのティース54g、54hとティース54cとに巻かれて巻線部56g、56h、56cを構成する。ティース54cは、ティース54g、54hから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54d、54e、54fを空けて配置されているティースである。巻線部56g、56hは、B相コイル50Bが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0210】
C相コイル50Cは、上記第3実施形態と同様に、隣接する2つのティース54l、54kとティース54dとに巻かれて巻線部56l、56k、56dを構成する。ティース54dは、ティース54l、54kから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54a、54b、54cを空けて配置されているティースである。巻線部56l、56kは、C相コイル50Cが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0211】
D相コイル50Dは、隣接する2つのティース54i、54jと、ティース54eとに巻かれて巻線部56i、56j、56eを構成する。ティース54eは、ティース54i、54jから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54f、54g、54hを空けて配置されているティースである。巻線部56i、56jは、D相コイル50Dが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0212】
したがって、相コイル50A、50B、50C、50Dは、それぞれ、上記第3実施形態と同様に、(b)に該当することになる。
【0213】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、(a)(b)の組み合わせによってステータ35を構成した例について説明したが、これに代えて、(b)(c)の組み合わせによってステータ35を構成した本第5実施形態について
図25を参照して説明する。
【0214】
本実施形態と上記第1実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0215】
A相コイル50Aは、隣接する2つのティース54a、54bとティース54fとに巻かれて巻線部56a、56b、56fを構成する。ティース54fは、2つのティース54a、54bから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に3つのティース54c、54d、54eを空けて配置されているティースである。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0216】
B相コイル50Bは、隣接する2つのティース54c、54dとティース54lとに巻かれて巻線部56c、56d、56lを構成する。ティース54lは、ティース54c、54dから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に2つのティース54a、54bを空けて配置されているティースである。巻線部56c、56dは、B相コイル50Bが巻かれる方向が同方向になっている。
【0217】
C相コイル50Cは、隣接する2つのティース54i、54jとティース54eとに巻かれて巻線部56i、56j、56eを構成する。ティース54eは、ティース54i、54jから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54f、54g、54hを空けて配置されているティースである。巻線部56i、56jは、C相コイル50Cが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0218】
D相コイル50Dは、隣接する2つのティース54g、54hと、ティース54kとに巻かれて巻線部56g、56h、56kを構成する。ティース54kは、ティース54g、54hから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54i、54jを空けて配置されているティースである。巻線部56g、56hは、D相コイル50Dが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0219】
以上により、相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、A相コイル50AおよびC相コイル50Cは、それぞれ、(b)に該当することになる。相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、A相コイル50AおよびC相コイル50C以外の残りのB相コイル50BおよびD相コイル50Dは、それぞれ、(c)に該当することになる。
【0220】
つまり、本実施形態の電動機10は、(b)(c)の組み合わせによってステータ35が構成されている。この場合、上述の如く、8極起磁力ベクトルYa、Yb、Yc、Ydの位相差が90degに近くなるため、本実施形態の電動機10は、ロータ36の軸支持力が大きくなる。
【0221】
(第6実施形態)
上記第5実施形態では、上記(c)を構成する2つのティース54g、54hにD相コイル50Dが巻かれて巻線部56g、56hを構成する例について説明した。しかし、これに代えて、上記(c)を構成する2つのティース54h、54iにD相コイル50Dが巻かれて巻線部56h、56iを構成する本第6実施形態について
図26を参照して説明する。
【0222】
本実施形態と上記第5実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0223】
A相コイル50Aは、隣接する2つのティース54a、54bとティース54eとに巻かれて巻線部56a、56b、56eを構成する。ティース54eは、2つのティース54a、54bから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54c、54dを空けて配置されているティースである。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が逆方向になっている。
【0224】
B相コイル50Bは、隣接する2つのティース54c、54dとティース54gとに巻かれて巻線部56c、56d、56gを構成する。ティース54gは、ティース54c、54dから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54e、54fを空けて配置されているティースである。巻線部56c、56dは、B相コイル50Bが巻かれる方向が同方向になっている。
【0225】
C相コイル50Cは、隣接する2つのティース54j、54kとティース54fとに巻かれて巻線部56j、56k、56fを構成する。ティース54fは、ティース54j、54kから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に3つのティース54g、54h、54iを空けて配置されているティースである。巻線部56j、56kは、C相コイル50Cが巻かれる方向が同方向になっている。
【0226】
D相コイル50Dは、隣接する2つのティース54h、54iと、ティース54lとに巻かれて巻線部56h、56i、56lを構成する。ティース54lは、ティース54h、54iから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54j、54kを空けて配置されているティースである。巻線部56h、56iは、D相コイル50D
が巻かれる方向が逆方向になっている。
【0227】
したがって、相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、C相コイル50Cは、(b)に該当することになる。相コイル50A、50B、50C、50Dのうち、C相コイル50Cを除いた残りのA相コイル50A、B相コイル50B、D相コイル50Dは、それぞれ、(c)に該当することになる。
【0228】
以上により、本実施形態の電動機10は、上記第5実施形態と同様に、(b)(c)の組み合わせによってステータ35が構成されている。このため、本実施形態の電動機10は、ロータ36の軸支持力が大きくなる。
【0229】
(第7実施形態)
上記第1実施形態では、(a)(b)の組み合わせによってステータ35を構成した例について説明したが、これに代えて、(c)によってステータ35を構成した本第7実施形態について
図27を参照して説明する。
【0230】
本実施形態と上記第1実施形態とは、巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルが相違する。このため、以下、本実施形態において巻線部56a、56b、56c、・・・56lを構成する相コイルについて説明する。
【0231】
A相コイル50Aは、隣接する2つのティース54a、54bとティース54eとに巻かれて巻線部56a、56b、56eを構成する。ティース54eは、2つのティース54a、54bから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54c、54dを空けて配置されているティースである。巻線部56a、56bは、A相コイル50Aが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0232】
B相コイル50Bは、隣接する2つのティース54c、54dとティース54gとに巻かれて巻線部56c、56d、56gを構成する。ティース54gは、ティース54c、54dから円周方向一方側(すなわち、反時計回り方向)に2つのティース54e、54fを空けて配置されているティースである。巻線部56c、56dは、B相コイル50Bが巻かれる方向が互いに同方向になっている。
【0233】
C相コイル50Cは、隣接する2つのティース54i、54jとティース54fとに巻かれて巻線部56i、56j、56fを構成する。ティース54fは、ティース54i、54jから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に2つのティース54g、54hを空けて配置されているティースである。巻線部56i、56jは、C相コイル50Cが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0234】
D相コイル50Dは、隣接する2つのティース54k、54lと、ティース54hとに巻かれて巻線部56k、56l、56hを構成する。ティース54hは、ティース54k、54lから円周方向他方側(すなわち、時計回り方向)に2つのティース54i、54jを空けて配置されているティースである。巻線部56k、56lは、D相コイル50Dが巻かれる方向が互いに同方向になっている。
【0235】
したがって、相コイル50A、50B、50C、50Dは、それぞれ、(c)に該当することになる。
【0236】
(他の実施形態)
(1)上記第1~6実施形態では、相コイルとして、4相コイル50A~50Dを用いた例について説明したが、これに代えて、相コイルとして、5相以上の相コイルを用いてもよい。
【0237】
(2)上記第1~6実施形態では、ティース54a、54b、・・・54lとして、径方向外側に突起するように形成されているものを用いた例について説明した。しかし、これに代えて、ティース54a、54b、・・・54lとして、径方向内側に突起するように形成されているものを用いてもよい。
【0238】
(3)上記第1~6実施形態では、12個のティース54a、54b、・・・54lを用いた例について説明した。しかし、これに代えて、ティースの個数は、12個未満、或いは13個以上にしてもよい。
【0239】
(4)上記第1~6実施形態では、ロータ36は、10個の磁極を形成した例について説明した。これに代えて、ロータ36が形成する磁極の個数を10個未満、或いは11個以上にしてもよい。
【0240】
(5)上記第1~6実施形態では、ティース54a、54b、・・・54lに対して軸線Tを中心とする径方向外側に複数の永久磁石61を配置した例について説明した。 しかし、これに代えて、ティース54a、54b、・・・54lに対して軸線Tを中心とする径方向内側に複数の永久磁石61を配置してもよい。
【0241】
すなわち、上記第1~6実施形態では、ステータ35に対して軸線Tを中心とする径方向外側にロータ36を配置した例について説明した。しかし、これに代えて、ステータ35に対して軸線Tを中心とする径方向内側にロータ36を配置してもよい。
【0242】
(6)上記第1~6実施形態では、回転軸30のうち軸線方向一方側を回転可能に支持する磁気軸受を構成し、かつ回転軸30のうち軸線方向他方側を回転可能に支持する機械的な軸受け32を構成した例について説明した。
【0243】
これに代えて、軸受け32を削除してもよい。この場合、回転軸30のうち軸線方向他方側も回転可能に支持する磁気軸受けを構成してもよい。
【0244】
(7)上記第1~6実施形態では、回転軸30の回転速度、および傾き角度を検出するための磁気センサ(37a、37b、37c、37d)としてホース素子を用いた例について説明した。これに代えて、回転軸30の回転速度、および傾き角度を検出するための磁気センサとしてホース素子以外の各種のセンサを用いてもよい。
【0245】
(8)上記第1~6実施形態では、ティース54a、54b、・・・54lとしては、それぞれの径方向外側から円周方向一方側および他方側に突起する先端側突起部を備える略T字状に形成されているものを用いた例について説明した。
【0246】
これに代えて、ティース54a、54b、・・・54lとしては、上記先端側突起部を削除して、かつリング部53からそれぞれの径方向に突起して略I字状に形成されているものを用いてもよい。
【0247】
(9)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記第1~6実施形態、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、電動機は、回転軸、ステータ、およびロータを備える。回転軸は、第1軸線に沿って延びるように形成されている。
【0248】
ステータは、第2軸線を中心とする径方向に突起し、かつ第2軸線を中心とする円周方向に並べられている複数のティースを備えるステータコアと、複数のティースに巻かれている複数の相コイルとを備える。
【0249】
ロータは、回転軸に支持されて、複数のティースに対して径方向に配置され、かつ円周方向に並べられている複数の磁極を形成する。電動機は、回転軸の第1軸線が第2軸線から傾くことが可能に構成されている。
【0250】
電流制御部は、複数の相コイルに第1交流電流を流して複数の磁極との間でロータに第2軸線を中心として回転させる回転力としての電磁力を発生させる。
【0251】
電流制御部は、複数の相コイルのうちいずれかコイルに第2交流電流を流して複数の磁極との間で回転軸の第1軸線を第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力を発生させる。
【0252】
複数の相コイルは、4つ以上の相コイルである。さらに複数の相コイルは、複数のティースに対して集中巻にて巻かれている。複数のティースのそれぞれには、複数の相コイルのうち対応する1つの相コイルのみが巻かれている。
【0253】
第2の観点によれば、複数の磁極の個数は、10であり、複数のティースの個数は、12であり、複数の相コイルの個数は、4である。
【0254】
第3の観点によれば、複数の相コイルのうち第1の相コイルが複数のティースのうち円周方向にて隣り合う3つのティースに巻かれることにより3つの巻線部を形成する。3つの巻線部のうち円周方向にて隣り合う任意の2つの巻線部は、第1の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0255】
複数の相コイルのうち第1の相コイル以外の第2の相コイルが、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。2つの巻線部は、第2の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに第2の相コイルが、2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0256】
このことにより、ロータの回転トルクが大きい電動機を提供することができる。
【0257】
第4の観点によれば、複数の相コイルのうち2つの相コイルが、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う3つのティースに巻かれることにより3つの巻線部を相コイル毎に形成している。3つの巻線部のうち円周方向にて隣り合う任意の2つの巻線部は、相コイル毎に、2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0258】
複数の相コイルのうち2つの相コイル以外の残りの2つの相コイルが、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。2つの巻線部は、相コイル毎に、残りの2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに残りの2つの相コイルが、相コイル毎に、2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0259】
第5の観点によれば、複数の相コイルが、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ2つの巻線部は、相コイル毎に、残りの2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0260】
さらに複数の相コイルが、相コイル毎に、2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0261】
第6の観点によれば、複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとする。
【0262】
複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えている。A相コイルに流れる第1交流電流は、D相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。B相コイルに流れる第1交流電流は、A相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。
【0263】
C相コイルに流れる第1交流電流は、B相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。D相コイルに流れる第1交流電流は、C相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。
第1ティース、第2ティース、および第9ティースのそれぞれに、A相コイルが巻かれている。第7ティース、第8ティース、および第3ティースのそれぞれに、B相コイルが巻かれている。第4ティース、第11ティース、および第12ティースのそれぞれに、C相コイルが巻かれている。第5ティース、第6ティース、および第10ティースのそれぞれに、D相コイルが巻かれている。
【0264】
第7の観点によれば、複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとする。
【0265】
複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えている。A相コイルに流れる第1交流電流は、D相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。
【0266】
B相コイルに流れる第1交流電流は、A相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。C相コイルに流れる第1交流電流は、B相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。
【0267】
D相コイルに流れる第1交流電流は、C相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。第1ティース、第2ティース、および第6ティースのそれぞれに、A相コイルが巻かれている。
第7ティース、第8ティース、および第3ティースのそれぞれに、B相コイルが巻かれている。第4ティース、第11ティース、および第12ティースのそれぞれに、C相コイルが巻かれている。第5ティース、第9ティース、および第10ティースのそれぞれに、D相コイルが巻かれている。
【0268】
第8の観点によれば、複数の相コイルのうち第1相コイルが、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ2つの巻線部は、第1相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに第1相コイルが巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0269】
複数の相コイルのうち第1相コイル以外の第2相コイルは、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。2つの巻線部は、第2の相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに第2相コイルは、2つのティースから円周方向にて2つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0270】
このことにより、回転軸の第1軸線を第2軸線に近づける電磁力としての軸支持力が大きい電動機を提供することができる。
【0271】
第9の観点によれば、複数の相コイルのうち1つの相コイルが、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を相コイル毎に形成し、かつ2つの巻線部は、1つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに1つの相コイルが巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0272】
複数の相コイルのうち1つの相コイル以外の3つの相コイルは、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。2つの巻線部は、相コイル毎に、3つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。
【0273】
さらに3つの相コイルは、相コイル毎に、2つのティースから円周方向にて2つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0274】
第10の観点によれば、複数の相コイルのうち2つの相コイルが、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースのそれぞれに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。
【0275】
2つの巻線部は、相コイル毎に、2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに2つのティースから円周方向にて3つのティースを空けて配置されている1つのティースに2つの相コイルが巻かれることにより1つの巻線部を相コイル毎に形成している。
【0276】
複数の相コイルのうち2つの相コイル以外の2つの相コイルは、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成している。
【0277】
2つの巻線部は、相コイル毎に、2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに2つの相コイルは、相コイル毎に、2つのティースから円周方向にて2つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0278】
第11の観点によれば、複数の相コイルは、相コイル毎に、複数のティースのうち円周方向にて隣り合う2つのティースに巻かれることにより2つの巻線部を形成し、かつ2つの巻線部は、相コイル毎に、2つの相コイルが巻かれる方向が互いに逆方向になっている。さらに2つの相コイルは、相コイル毎に、2つのティースから円周方向にて2つのティースを空けて配置されている1つのティースに巻かれることにより1つの巻線部を形成している。
【0279】
第12の観点によれば、複数のティースのうち所定のティースから円周方向に並べられている複数のティースを第1ティース、第2ティース、第3ティース、第4ティース、第5ティース、第6ティース、第7ティース、第8ティース、第9ティース、第10ティース、第11ティース、第12ティースとする。
【0280】
複数の相コイルが、A相コイル、B相コイル、C相コイル、およびD相コイルを備えている。A相コイルに流れる第1交流電流は、D相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。B相コイルに流れる第1交流電流は、A相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。
【0281】
C相コイルに流れる第1交流電流は、B相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れており、D相コイルに流れる第1交流電流は、C相コイルに流れる第1交流電流よりも位相が遅れている。第1ティース、第2ティース、および第5ティースのそれぞれに、A相コイルが巻かれており、第3ティース、第4ティース、および第7ティースのそれぞれに、B相コイルが巻かれている。第6ティース、第9ティース、および第10ティースのそれぞれに、C相コイルが巻かれており、第8ティース、第11ティース、および第12ティースのそれぞれに、D相コイルが巻かれている。
【0282】
第13の観点によれば、電流制御部は、4つの相コイルに流れる交流電流を独立して制御するインバータ回路と、インバータ回路を制御して、第2交流電流の周波数を第1交流電流の周波数と異なる周波数とし、かつ第1交流電流と第2交流電流とを互いに独立して制御する制御回路と、を備える。
【0283】
このことにより、回転軸の軸支持力と回転トルクとを独立して制御することができる。
【0284】
第14の観点によれば、電流制御部が複数の相コイルに第1交流電流を流して回転軸を1回転させるのに要する時間をTNとし、TNを5で割り算した値をTAとしたとき、第1交流電流は、1/TAを周波数とする交流電流である。TNを4で割り算した値をTBとしたとき、第2交流電流は、1/TBを周波数とする交流電流である。
【符号の説明】
【0285】
10 電動機
30 回転軸
35 ステータ
36 ロータ
50A A相コイル
50B B相コイル
50C C相コイル
50D D相コイル
54a、54b・・・・54k、54l ティース