(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】鮮度保持装置及び鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/06 20060101AFI20220624BHJP
F25C 1/00 20060101ALI20220624BHJP
F25C 1/145 20180101ALI20220624BHJP
【FI】
A23B4/06 501L
F25C1/00 A
F25C1/145 A
A23B4/06 501A
(21)【出願番号】P 2018139039
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰典
(72)【発明者】
【氏名】永田 聡
(72)【発明者】
【氏名】川村 優太
(72)【発明者】
【氏名】雨森 大治
(72)【発明者】
【氏名】名木 祐貴
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-016313(JP,A)
【文献】特開2017-051902(JP,A)
【文献】特開2017-087109(JP,A)
【文献】特開2012-249563(JP,A)
【文献】特開2002-233302(JP,A)
【文献】特開2017-161212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
F25C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産物の鮮度を保持するための装置であって、
塩水を貯えて、前記塩水に前記水産物を浸漬するための水槽と、
前記水槽内の前記塩水からスラリーアイスを生成し、前記スラリーアイスを前記水槽へ供給するスラリーアイス生成部と、
前記水槽内の前記塩水から電解水を生成する電解水生成部と、
前記水槽、前記スラリーアイス生成部及び電解水生成部の間で、前記塩水を循環させるための循環水路とを備え、
前記循環水路は、前記水槽に対して前記電解水生成部及び前記スラリーアイス生成部を並列に接続する独立した2系統の水路又は前記電解水生成部及び前記スラリーアイス生成部を直列に接続する連続した1系統の水路により構成され、
前記電解水生成部は、陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが、固体高分子膜によって区分された電解槽を有し、前記水槽内の前記塩水を前記電解槽で電気分解し、前記陰極室で生成された前記電解水を前記水槽内に供給する、
鮮度保持装置。
【請求項2】
前記循環水路は、前記水槽と前記電解水生成部との間で前記塩水を循環可能に配された第1循環水路
を含み、
さらに、前記第1循環水路内の前記塩水を駆動するための第1駆動装
置を含む、請求項1記載の鮮度保持装置。
【請求項3】
前記第1循環水路は、前記水槽から前記電解水生成部に前記塩水を供給する塩水供給路を有し、
前記塩水供給路には、フィルターが設けられている、請求項2記載の鮮度保持装置。
【請求項4】
前記循環水路は、前記水槽と前記スラリーアイス生成部との間で前記塩水を循環可能に配された第2循環水路
を含み、
さらに、前記第2循環水路内の前記塩水を駆動するための第2駆動装
置を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項5】
前記電解水生成部は、前記第2循環水路を介して前記水槽に前記電解水を供給する、請求項4記載の鮮度保持装置。
【請求項6】
前記水槽は、上部が開放されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項7】
前記電解水が前記水槽内に放出される放出口には、バブル発生装置が設けられている、請求項1乃至6のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項8】
前記水槽内の前記塩水を攪拌する攪拌装置をさらに含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項9】
前記塩水の塩分濃度は、3.5wt%以下である、請求項1乃至8のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項10】
前記塩水の塩分濃度は、0.8wt%以上である、請求項1乃至9のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【請求項11】
水産物の鮮度を保持するための方法であって、
塩水を水槽に貯えるステップと、
前記塩水に前記水産物を浸漬するステップと、
前記水槽内の前記塩水からスラリーアイスを生成し、前記水槽に供給するステップと、
陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが、固体高分子膜によって区分された電解槽にて前記塩水を電気分解することにより電解水を生成するステップと、
前記陰極室にて生成された前記電解水を前記水槽内に供給するステップとを含む、
鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物の鮮度保持に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水産物の鮮度保持に関し、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1では、スラリーアイスを製造する装置が開示されている。
【0003】
スラリーアイスとは、直径0.1~0.5mmの微小な氷粒子と液体とが混ざり合ったシャーベット状の氷である。スラリーアイスは、水産物の冷却保存に適している。すなわち、スラリーアイスは、微小な氷粒子が水産物を包み込むので、通常の砕氷に比べると、水産物に傷が付きにくく、かつ、大きな接触面積で水産物を急速かつ均一に冷却できる。また、スラリーアイスでは、氷粒子が融解すると、潜熱によりスラリーアイスの温度を一定に保つ効果を有しており、これにより水産物の雰囲気を一定に維持することができる他、塩分濃度により、温度のコントロールが可能である。このようなスラリーアイスを用いることによって、水産物の鮮度劣化を遅らせることができる。
【0004】
近年では、鮮度の高い水産物に対する消費者の需要の高まりから、鮮度の保持に関するより一層優れた技術の確立が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、水産物の鮮度をより一層良好に保持できる鮮度保持装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、水産物の鮮度を保持するための装置であって、塩水を貯えて、前記塩水に前記水産物を浸漬するための水槽と、前記水槽内の前記塩水からスラリーアイスを生成し、前記スラリーアイスを前記水槽へ供給するスラリーアイス生成部と、電解水を生成する電解水生成部とを備え、電解水生成部は、陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが、固体高分子膜によって区分された電解槽を有し、前記水槽内の前記塩水を前記電解槽で電気分解し、前記陰極室で生成された前記電解水を前記水槽内に供給する。
【0008】
前記鮮度保持装置において、前記水槽と前記電解水生成部との間で前記塩水を循環可能に配された第1循環水路と、前記第1循環水路内の前記塩水を駆動するための第1駆動装置とを含む、ことが望ましい。
【0009】
前記鮮度保持装置において、前記第1循環水路は、前記水槽から前記電解水生成部に前記塩水を供給する塩水供給路を有し、前記塩水供給路には、フィルターが設けられている、ことが望ましい。
【0010】
前記鮮度保持装置において、前記水槽と前記スラリーアイス生成部との間で前記塩水を循環可能に配された第2循環水路と、前記第2循環水路内の前記塩水を駆動するための第2駆動装置とを含む、ことが望ましい。
【0011】
前記鮮度保持装置において、前記電解水生成部は、前記第2循環水路を介して前記水槽に前記電解水を供給する、ことが望ましい。
【0012】
前記鮮度保持装置において、前記水槽は、上部が開放されている、ことが望ましい。
【0013】
前記鮮度保持装置において、前記電解水が前記水槽内に放出される放出口には、バブル発生装置が設けられている、ことが望ましい。
【0014】
前記鮮度保持装置において、前記水槽内の前記塩水を攪拌する攪拌装置をさらに含む、ことが望ましい。
【0015】
前記鮮度保持装置において、前記塩水の塩分濃度は、3.5wt%以下である、ことが望ましい。
【0016】
前記鮮度保持装置において、前記塩水の塩分濃度は、0.8wt%以上である、ことが望ましい。
【0017】
本第2発明は、水産物の鮮度を保持するための方法であって、塩水を水槽に貯えるステップと、前記塩水に前記水産物を浸漬するステップと、前記水槽内の前記塩水からスラリーアイスを生成し、前記水槽に供給するステップと、陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが、固体高分子膜によって区分された電解槽にて前記塩水を電気分解することにより電解水を生成するステップと、前記陰極室にて生成された前記電解水を前記水槽内に供給するステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鮮度保持装置は、水槽と、スラリーアイス生成部と、電解水生成部とを備える。電解水生成部は、水槽内の塩水を電気分解し、陰極室で生成された電解水を水槽内に供給する。電解水生成部から水槽に供給される電解水は、電気分解によって生じた水素ガスが溶け込んだ電解水素水であり、優れた抗酸化作用を有している。これにより、水産物の酸化が抑制され、塩水の浸透圧作用及びスラリーアイスの温度保持作用と相俟って、水産物の鮮度をより一層良好に保持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態である鮮度保持装置の概略構成を示す図。
【
図2】スラリーアイス生成部の概略構成を示す断面図。
【
図4】本発明の一実施形態である鮮度保持方法の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の鮮度保持装置1の概略構成を示している。鮮度保持装置1は、水産物200の鮮度を保持するための装置である。
【0021】
鮮度保持装置1は、塩水100を貯える水槽2と、水槽2内の塩水100からスラリーアイス110を生成するスラリーアイス生成部3と、水槽2内の塩水100から電解水120を生成する電解水生成部4とを備えている。
【0022】
水槽2は、塩水100を貯える。塩水100には、水産物200が浸漬される。本実施形態では、塩水100として、NaCl水溶液の他、希釈海水が用いられる。塩水100は、高い浸透圧によって、水産物200の鮮度を保持する。
【0023】
水産物200には、例えば、魚類及び貝類の他、蟹、海老等の甲殻類も含まれる 。
【0024】
図2は、スラリーアイス生成部3の概略構成を示している。スラリーアイス生成部3は、円筒状に形成された内管31と、内管31の外周面を覆う外管32と、内管31の内部に回転可能に配設された回転部材33とを備えている。
【0025】
内管31の外周面と外管32の内周面との間には、冷媒流路34となる空間が形成されている。回転部材33には、内管31の内部に掻き取り刃35が装着されている。
【0026】
内管31は、円筒状体に形成され、その内部に塩水100を収容して氷粒子を発生させるための空間を有する製氷部31aを備える。製氷部31aには、水槽2から塩水100が供給される。
【0027】
回転部材33は、内管31の中心に配設された回転軸33aと、回転軸33aから径方向の外側に突出する腕部33bを有する。回転部材33は、電動モーター33cに駆動され回転する。
【0028】
冷媒流路34には、冷媒が供給される入口34a及び冷媒が排出される出口34bが設けられている。入口34a及び出口34bを介して冷媒が冷媒流路34を循環することにより、内管31の製氷部31a内の塩水100が冷却され、内管31の製氷部31aの内壁面に氷膜が形成される。
【0029】
スラリーアイス生成部3は、スラリーアイス生成部3内の各部を制御する制御部(図示せず)を有している。例えば、電動モーター33cの回転、冷媒の温度及び供給量等は、制御部によって制御される。
【0030】
掻き取り刃35は、回転部材33の腕部33bに装着されている。掻き取り刃35は、回転部材33と一体に回転し、内管31の内壁面に生成された氷膜を掻き取る。掻き取り刃35は、長方形状の板状体であり、その長手方向の両端が、内管31の製氷部31aの両端近傍に至るように形成されている。掻き取り刃35が氷膜を掻き取ることにより生成された微小な氷粒子が製氷部31aの塩水100と混ざり合い、スラリーアイス110が生成される。
【0031】
内管31及び外管32等によって構成される二重円筒の軸方向の両端には、第1蓋36と第2蓋37とが固着される。第1蓋36には、水槽2からの塩水100を製氷部31aに供給するための塩水供給管36aが装着されている。第2蓋37には、生成されたスラリーアイス110を製氷部31aから取り出すためのスラリーアイス取出管37aが装着されている。スラリーアイス取出管37aを介して取り出されたスラリーアイス110が水槽2に供給されることによって、水槽2内には塩水100及びスラリーアイス110が貯えられる。
【0032】
既に述べたように、スラリーアイス110は、氷粒子と水産物200との接触面積が大きく、水産物200を急速かつ均一に冷却できる。また、スラリーアイス110は、氷粒子の融解による潜熱を利用して水産物200の温度を一定に保持し、鮮度の劣化を抑制する。
【0033】
なお、スラリーアイス生成部3の構成は、適宜変更可能であり、
図2に示される形態に限られない。例えば、スラリーアイス生成部3は、水槽2と一体的に設けられていてもよい。
【0034】
図3は、電解水生成部4の概略構成を示している。電解水生成部4は、塩水100を電気分解し電解水120を生成する電解槽40と、電解槽40に水槽2からの塩水100を供給するための塩水供給管45と、電解槽40から電解水120を取り出すための電解水取出管46とを備えている。
【0035】
電解槽40には、陽極給電体41と、陰極給電体42と、固体高分子膜43とが配されている。固体高分子膜43によって、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとが区分される。
【0036】
塩水供給管45は、塩水供給管45a及び塩水供給管45bに分岐する。塩水供給管45aは陽極室40aに接続されており、塩水供給管45bは陰極室40bに接続されている。電解水取出管46は陰極室40bに接続されている。塩水供給管45aを介して陽極室40aに塩水100が流入し、塩水供給管45bを介して陰極室40bに塩水100が流入する。
【0037】
電解水生成部4は、電解水生成部4内の各部を制御する制御部(図示せず)を有している。例えば、陽極給電体41と陰極給電体42には、制御部によって制御された直流電圧が印加される。陽極給電体41と陰極給電体42との間に直流電圧が印加されることにより、電解槽40内の塩水100が電気分解される。電解水生成部4は、電気分解によって陰極室40bで生成された電解水120を水槽2内に供給する。
【0038】
陰極室40bでは電気分解によって水素ガスが発生する。発生した水素ガスが陰極室40b内の電解水120に溶け込む。このような陰極室40bで生成された電解水120は、水素ガスが溶け込んだ電解水素水とも称されている。そして、電解水生成部4から水槽2に電解水120が供給されることによって、水槽2内には、水素ガスが溶け込んで電解水素水となった塩水100及びスラリーアイス110が貯えられる。
【0039】
一方、陽極室40aでは電気分解によって酸素ガスが発生する。発生した酸素ガスは、酸素排出管47から排出される。酸素排出管47には、塩水100及び酸素ガスから酸素ガスのみを分離して排出するためのガス抜き弁が適宜設けられていてもよい。
【0040】
本電解水生成部4では、陽極室40aの上流側に位置される塩水供給管45aには、流量調整弁45cが設けられているのが望ましい。流量調整弁45cは、電解水生成部4の制御部に制御されて、弁開度又は開放時間を調整することにより、陽極室40aに流入する塩水100を制限する。これにより、陽極室40aからの塩水100の排出を抑制又は停止できる。
【0041】
電解水生成部4から水槽2に供給される電解水120は、溶け込んだ水素ガスによる抗酸化作用を有している。これにより、水産物200の酸化が抑制され、上述した塩水100の浸透圧作用及びスラリーアイス110の温度保持作用と相俟って、水産物200の鮮度をより一層良好に保持できるようになる。
【0042】
また、陽極室40aと陰極室40bとを区分する隔膜が、固体高分子膜43であるため、電解槽40内で次亜塩素酸が生成されることがなく、水産物200の鮮度保持に寄与する。
【0043】
なお、電解水生成部4の構成は、適宜変更可能であり、
図3に示される形態に限られない。例えば、電解水生成部4は、水槽2と一体的に設けられていてもよい。また、電解水生成部4は、スラリーアイス生成部3と一体的に設けられていてもよい。
【0044】
図1に示されるように、鮮度保持装置1は、水槽2と電解水生成部4との間で塩水100を循環可能に配された第1循環水路5と、第1循環水路5内の塩水100を駆動するための第1駆動装置6とを含んでいる。
【0045】
第1循環水路5は、塩水供給路51と電解水供給路52とを含んでいる。塩水供給路51の一部は、塩水供給管45aによって構成されている。電解水供給路52の一部は、電解水取出管46によって構成されている。
【0046】
第1駆動装置6は、ポンプ、水車等によって塩水100を送出する。これにより、第1循環水路5内で塩水100が循環する。第1駆動装置6は、電解水生成部4の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。第1駆動装置6は、例えば、電解水生成部4の制御部によって制御される。電解水生成部4を連続的又は断続的に運転させながら、第1循環水路5で塩水100を循環させることにより、水槽2内の塩水100の溶存水素濃度が高められ又は維持される。
【0047】
塩水供給路51には、フィルター53が設けられているのが望ましい。本実施形態では、塩水供給路51の始端、すなわち、水槽2から塩水100を取り入れる取入口51aにフィルター53が設けられている。 フィルター53は、取入口51aと第1駆動装置6の間(例えば、水槽2の外部)に設けられていてもよい。 フィルター53は、スラリーアイス110及び水産物200から流出した血液、粘膜及び内臓からの流出物等 を濾過する。フィルター53は、スラリーアイス110及び血液等が塩水供給路51及び電解水生成部4に侵入することを抑制し、塩水供給路51の目詰まり等を抑制する。
【0048】
上述した電解水生成部4においては、電気分解によって微小なバブル状態の水素ガスが生成される。このようなバブル状態の水素ガスは、容易に塩水100に溶け込んで塩水100の溶存水素濃度を高める。 このような観点から、電解水供給路52の終端、すなわち、電解水120が水槽2内に放出される放出口52aには、バブル発生装置54が設けられているのが望ましい。バブル発生装置54は、電解水中の水素ガスの微小バブル数を増加させる。これにより、塩水100の溶存水素濃度がより一層高められる。
【0049】
鮮度保持装置1は、水槽2とスラリーアイス生成部3との間で塩水100を循環可能に配された第2循環水路7と、第2循環水路7内の塩水100を駆動するための第2駆動装置8とを含んでいる。
【0050】
第2循環水路7は、塩水供給路71とスラリーアイス供給路72とを含んでいる。塩水供給路71の一部は、塩水供給管36aによって構成されている。スラリーアイス供給路72の一部は、スラリーアイス取出管37aによって構成されている。
【0051】
第2駆動装置8は、ポンプ、水車等によって塩水100を送出する。これにより、第2循環水路7内で塩水100が循環する。第2駆動装置8は、スラリーアイス生成部3の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。第2駆動装置8は、例えば、スラリーアイス生成部3の制御部によって制御される。スラリーアイス生成部3を連続的又は断続的に運転させながら、第2循環水路7で塩水100を循環させることにより、水槽2内の氷粒子の量が増加され又は維持される。
【0052】
本実施形態では、第1循環水路5及び第2循環水路7は、独立した2系統の水路により構成され、水槽2に対して電解水生成部4及びスラリーアイス生成部3を並列に接続する。しかしながら、第1循環水路5及び第2循環水路7は、連続する1系統の水路により構成されてもよく、この場合、電解水生成部4及びスラリーアイス生成部3は、直列に接続される。そして、第1駆動装置6又は第2駆動装置8のいずれかは、省かれていてもよい。
【0053】
鮮度保持装置1は、水槽2内の塩水100を攪拌するための攪拌装置9をさらに含むのが望ましい。例えば、本実施形態の攪拌装置9は、塩水100に浸漬される板状の翼部91と、翼部91を回転駆動する駆動部92とを含んでいる。翼部91が回転することにより、水槽2内で塩水100が攪拌される。攪拌装置9が塩水100を攪拌することにより、水槽2内での塩水100の溶存水素濃度が均一化され、水産物200の鮮度をより一層良好に保持できるようになる。
【0054】
電解水供給路52の終端は、第2循環水路7内に設けられていてもよい。すなわち、電解水生成部4は、第2循環水路7を介して水槽2に電解水120を供給するように構成されていてもよい。このような構成では、溶存水素濃度が高く高氷充填率のスラリーアイス110が効率よく水槽2内に投入されるので、水産物200の鮮度をより一層良好に保持できるようになる。
【0055】
本実施形態では、水槽2は、その上部の少なくとも一部が開放された構造を有する。これにより、水槽2内での水素ガスの充満を抑制できる。
【0056】
水槽2内の塩水100の塩分濃度は、海水の塩分濃度である3.5wt%以下が望ましい。 水槽2内の塩水100の塩分濃度を変更することにより、スラリーアイス110の凝固点が調整される。より望ましい塩水100の塩分濃度は、1.0wt%以下である。このような塩水100の凝固点は、多くの水産物200が凍結しない温度である-1.0℃であり、水産物200の鮮度保持に寄与する。
【0057】
水槽2内の塩水100の塩分濃度は、0.8wt%以上が望ましい。塩水100の塩分濃度を0.8wt%以上とすることにより、塩水100の浸透圧が水産物200の浸透圧と同程度となり、体内への水分の侵入が抑制され、鮮度保持が容易となる 本実施形態では、スラリーアイス生成部3が、氷膜を掻き取ることによりスラリーアイス110を生成するように構成されているので、塩分濃度が0.8wt%の塩水100であってもスラリーアイス110を容易に生成可能である。
【0058】
以上、本実施形態の鮮度保持装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、鮮度保持装置1は、塩水100を貯えて、塩水100に水産物200を浸漬するための水槽2と、水槽2内の塩水100からスラリーアイス110を生成し、スラリーアイス110を水槽2へ供給するスラリーアイス生成部3と、水槽2内の塩水100から電解水120を生成する電解水生成部4とを備え、電解水生成部4は、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとが、固体高分子膜43によって区分された電解槽40を有し、水槽2内の塩水100を電解槽40で電気分解し、陰極室40bで生成された電解水120を水槽2内に供給するように構成されていればよい。
【0059】
図4は、鮮度保持装置1を用いた鮮度保持方法の手順を示している。ステップS1では、塩水100が水槽2に貯えられる。ステップS2では、水槽2に水産物200が収容される。これにより、水槽2内の塩水100に水産物200が浸漬される。ステップS3では、水槽2内の塩水100からスラリーアイス110が生成され、水槽2に供給される。ステップS4では、電解槽40にて塩水100を電気分解することにより電解水120が生成される。ステップS5では、陰極室40bにて生成された電解水120が水槽2内に供給される。
【0060】
本鮮度保持方法によれば、ステップS5にて水槽2に供給される電解水120は、電気分解によって生じた水素ガスが溶け込んだ電解水素水であり、抗酸化作用を有している。これにより、水産物200の酸化が抑制され、スラリーアイス110の温度保持作用と相俟って、水産物200の鮮度をより一層良好に保持できるようになる。
【0061】
本鮮度保持方法では、ステップS3乃至ステップS5が実行された後、ステップS2が実行されてもよい。また、ステップS3乃至ステップS5は同時に実行されてもよく、ステップS4及びステップS5が実行された後ステップS3が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :鮮度保持装置
2 :水槽
3 :スラリーアイス生成部
4 :電解水生成部
5 :第1循環水路
6 :第1駆動装置
7 :第2循環水路
8 :第2駆動装置
9 :攪拌装置
40 :電解槽
40a :陽極室
40b :陰極室
41 :陽極給電体
42 :陰極給電体
43 :固体高分子膜
51 :塩水供給路
53 :フィルター
54 :バブル発生装置
100 :塩水
110 :スラリーアイス
120 :電解水
200 :水産物