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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】立体マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020098992
(22)【出願日】2020-06-06
(65)【公開番号】P2021193218
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】520443033
【氏名又は名称】日向 由香里
(74)【代理人】
【識別番号】100193518
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 耕平
(73)【特許権者】
【識別番号】520201433
【氏名又は名称】株式会社オレンジワールドナビ
(74)【代理人】
【識別番号】100193518
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 耕平
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】日向 由香里
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-066643(JP,A)
【文献】特表2006-525823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0092909(US,A1)
【文献】米国特許第04323063(US,A)
【文献】特開平07-024078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/11
A62B18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面が使用者の顔面への装着面をなす凹状面とされ、外面が前記凹状面に対応する凸状面とされた透明高分子材料の薄肉成形体からなり、使用者の少なくとも口を包含し両眼は範囲外となる第一顔面下部領域を覆うとともに、前記内面と前記第一顔面下部領域との間に呼吸用空間を形成する第一本体と、
通気性を有した可撓性シート部材により前記第一本体の外側に着脱可能に構成され、前記第一顔面下部領域の外側をなし前記両眼は範囲外となる第二顔面下部領域及び前記第一本体の周縁部を覆う一方、前記第一本体の前記周縁部以外の部分を、前記使用者の口を透視するための透視領域として突出露出させるための透視用貫通部が形成された第二本体と、
前記第二本体の左右両縁に設けられた1対の耳掛部と、を備え、
前記耳掛部を前記使用者の両耳に装着することにより、前記第二本体の前記透視用貫通部の裏面を前記第一本体の周縁部外面に圧着させることにより前記第一本体を前記使用者の顔面に押し当て付勢するとともに、通気性の前記第二本体により覆われる前記第一本体の前記周縁部に、前記呼吸用空間と前記第一本体の外側の前記第二本体によって覆われる空間とを連通させる呼吸用連通部が形成されてなることを特徴とする立体マスク。
【請求項2】
前記第一本体が覆う前記第一顔面下部領域は前記使用者の鼻を包含するものである請求項1記載の立体マスク。
【請求項3】
前記透視用貫通部が環状に形成され、前記第二本体は前記第一本体の周縁部全体を覆うように形成されてなる請求項1又は請求項2に記載の立体マスク。
【請求項4】
前記第一本体の外周縁の前記使用者の顔面と当接する区間に、前記透明高分子材料よりも軟質の弾性材料からなるパッド部が前記外周縁に沿って一体化されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項5】
前記透視用貫通部の内側縁に沿って線状弾性部材が一体的に組み込まれてなり、該線状弾性部材は、前記第一本体を前記透視用貫通部から取り外した状態においては、前記透視用貫通部の内側縁形成部をしわ寄せさせる形で該内側縁形成部とともに収縮状態となる一方、前記第一本体を前記透視用貫通部に装着した状態においては、前記透視用貫通部の圧入に伴い前記内側縁形成部とともに伸張状態となり、前記収縮状態に向けた弾性復帰力により前記透視用貫通部の前記内側縁形成部を前記第一本体の外面に圧着付勢する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項6】
前記透視用貫通部と前記線状弾性部材がそれぞれ環状に形成されている請求項5記載の立体マスク。
【請求項7】
前記呼吸用連通部は、前記第一本体を厚さ方向に貫通する貫通孔として形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項8】
前記呼吸用連通部は、前記第一本体の外周縁に開放する切欠き部として形成されてなる請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項9】
前記呼吸用連通部をなす前記切欠き部が前記第一本体の下縁部に形成されている請求項8記載の立体マスク。
【請求項10】
前記第一本体には、前記装着面側に前記呼吸用空間と連通する通気補助溝を形成するための凸条部が前記外面側に突出する形態で形成され、前記凸条部に前記呼吸用連通部が形成され、前記凸条部の前記呼吸用連通部の形成領域を含む少なくとも一部が前記第二本体で覆われている請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項11】
前記凸条部は第一端部が前記第一本体の外周縁側に、第二端部が前記第一本体の中央側に位置するように形成され、前記呼吸用連通部が前記第一端部に形成されている請求項10記載の立体マスク。
【請求項12】
前記凸条部は前記第一端部が前記使用者の左頬又は右頬側に、前記第二端部が鼻側に位置するものが、前記第一本体の左右両側に振り分ける形で複数形成されている請求項11記載の立体マスク。
【請求項13】
前記呼吸用連通部は前記第一本体の外縁に沿って前記使用者の口を取り囲む形態で、予め定められた間隔にて複数個形成されている請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の立体マスク。
【請求項14】
請求項5又は請求項6に記載の構成を具備するとともに、複数の前記呼吸用
連通部が前記第一本体の外周縁に沿って環状に配列される一方、前記第一本体
の外面にて前記呼吸用連通部の環状配列の内側に、前記線状弾性部材を嵌合さ
せる環状溝が形成されている請求項13記載の立体マスク。
【請求項15】
前記透視用貫通部は前記第二本体に対し上縁側が開放した切欠き形態に形成され、該切欠き形態の前記透視用貫通部の左右上縁位置にて前記第二本体の内面を、前記第一本体の外面の左右上縁位置に着脱可能に結合する着脱結合部が設けられるとともに、
記第一本体の外周縁のうち、前記透視用貫通部の切欠き開口側に露出する区間に、前記透明高分子材料よりも軟質の弾性材料からなるパッド部が前記外周縁に沿って一体化されている請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の口及び鼻を含む顔面の対象部位を覆う立体マスクに関するものであり、特に口元を含む顔面領域を透視可能に構成した立体マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来使用されている布や不織布製のマスクは、鼻と口を覆う耳かけ式のマスクが一般的であるが、口の動きが隠されるため使用者の表情が的確に読み取れず、コミュニケーションに支障をきたす場合があった。そこで、この問題を解決するために次のようなマスクが提案されている。
【0003】
特許文献1~4には、顔面を透視可能な立体シールドを非通気性の透明樹脂により形成し、その下部に不織布等で構成された通気部を一体化した立体マスクが開示されている。いずれの構成においても、マスクの顔面への装着は、樹脂製の立体シールドの左右両縁に取り付けられた耳掛部により行なうようになっている。通気部は立体シールドの下縁に接着結合されている。
【0004】
他方、特許文献5及び6には、透明な通気性シートで全体を構成した立体マスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-11475号公報
【文献】特開2009-189676号公報
【文献】特開2013-046647号公報
【文献】特開2013-169346号公報
【文献】特開2007-021026号公報
【文献】特開2013-066643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4が開示する立体マスクは、通気部を構成する不織布等が立体シールドに接着接合されているが、外力等の負荷により接着が一旦破れてしまうと、その位置にて立体シールドの内側空間が外気と直接連通してしまい、飛沫の飛散や吸い込みに対する遮蔽効果が損なわれやすい問題がある。さらに、立体シールドの周縁部のうち通気部が結合されていない区間では、顔面との間に大きな隙間が形成されやすく、これも遮蔽効果の悪化を招く一因となっている。また、別の問題としては、通気部と立体シールドが一体であり、耳掛部も立体シールドに設けられているため、繰り返し使用により通気部が劣化すれば、立体シールドも含めて新品に取り換えなければならず不経済である。また、硬質の立体シールドと可撓性の高い通気部が一体化された状態では、再利用のための洗浄も非常に行いにくい問題がある。かような理由により、上記の立体マスクは普及するには至っていない。
【0007】
特許文献5及び6が開示する立体マスクを構成する透明通気性素材は高価であり、かつ、目開きを相当粗くしない限り、マスクとしての使用に適した通気度(例えば、JISZ0208に規定された方法にて測定される透湿度が300g/m・hr以上)を確保できず、結果的にマスクとして十分な遮蔽性が確保できないことから、その使用はアイデア程度のものにとどまっているのが現状である。
【0008】
本発明の課題は、使用者の顔の表情の確認は十分できる程度の透視構造を有し、良好な通気性を確保しつつも飛沫飛散や吸い込みに対する遮蔽性にも優れ、かつ、再利用のための洗浄等も行いやすい構造の立体マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明の立体マスクは、内面が使用者の顔面への装着面をなす凹状面とされ、外面が凹状面に対応する凸状面とされた透明高分子材料の薄肉成形体からなり、使用者の少なくとも口を包含し両眼は範囲外となる第一顔面下部領域を覆うとともに、内面と第一顔面下部領域との間に呼吸用空間を形成する第一本体と、通気性を有した可撓性シート部材により第一本体の外側に着脱可能に構成され、第一顔面下部領域の外側をなし両眼は範囲外となる第二顔面下部領域及び第一本体の周縁部を覆う一方、第一本体の周縁部以外の部分を、使用者の口を透視するための透視領域として突出露出させるための透視用貫通部が形成された第二本体と、第二本体の左右両縁に設けられた1対の耳掛部と、を備え、耳掛部を使用者の両耳に装着することにより、第二本体の透視用貫通部の縁部裏面を第一本体の周縁部外面に圧着させることにより第一本体を使用者の顔面に押し当て付勢するとともに、通気性の第二本体により覆われる第一本体の周縁部に、呼吸用空間と第一本体の外側の第二本体によって覆われる空間とを連通させる呼吸用連通部が形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の立体マスクは、使用者の顔面に装着する透明高分子材料の薄肉成形体からなる第一本体と、その第一本体の外側に着脱される通気性を有した可撓性シート部材からなる第二本体からなる。第二本体は透視用貫通部を有し、ここに第一本体を突出形態で露出するようにはめ込むとともに、その状態で第一本体を第二本体とともに使用者の顔面にあてがい、第二本体に設けられた耳掛部を耳に装着する。透視用貫通部が露出する第一顔面下部領域は使用者の口を少なくとも含む領域となり、かつ、両眼は第一本体及び第二本体のいずれによっても覆われない構造となることで、使用者の顔の表情の確認は十分可能となる。一方、第一本体の周縁部には呼吸用連通部が形成され、内側の呼吸用空間は呼吸用連通部により通気が確保されるとともに、その上を通気性の第二本体(の透視用貫通部に沿った縁部)が覆うので、呼吸用空間への良好な通気性と飛沫飛散や吸い込みに対する良好な遮蔽性とが両立されたマスク構造が実現する。また、第二本体に設けられた耳掛部を使用者の両耳に装着することにより、第二本体の透視用貫通部の縁部裏面が第一本体の周縁部外面に圧着し、第一本体が使用者の顔面に押し当て付勢されるので、第一本体と顔面との密着、及び呼吸用連通部位置における第一本体と第二本体の密着との双方が向上し、上記の遮蔽性改善にさらに寄与する。
【0011】
他方、透明高分子材料からなる第一本体と、通気性を有した可撓性シート部材からなる第二本体とが互いに分離されている構造なので、第一本体及び第二本体の一方が劣化した場合は、劣化した方のみを交換して他方を再利用することができるので経済的である。また、通気性を確保するための第二本体と、口等を透視するための第一本体とが初めから分離されているため、損傷により両者の結合が破れることへの懸念は最初から存在しない。そして、再利用のための洗浄等も、第一本体と第二本体とで個別に行なうことができ、清潔性を保ちやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
図2】同じく側面図。
図3図1の第一本体の装着状態を拡大して示す正面図。
図4】同じく側面図。
図5】透視用貫通部の作用説明図。
図6図4のA-A断面図。
図7図4のB-B矢視図。
図8図4のC-C矢視図。
図9】本発明の実施の形態2をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
図10図9を側面視したときの要部拡大図。
図11】本発明の実施の形態3をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
図12図11を側面視したときの要部拡大図。
図13】本発明の実施の形態4をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
図14図13の第一本体の装着状態を拡大して示す正面図。
図15】本発明の実施の形態5をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
図16】着脱結合部の第一例を示す図。
図17】着脱結合部の第二例を示す図。
図18】本発明の実施の形態6をなす立体マスクを装着状態にて示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1をなす立体マスク1を装着状態にて示す正面図であり、図2は同じく側面図である。また、図3はその第一本体の詳細を示す正面図であり、図4は同じく側面図である。立体マスク1は、第一本体10及び第二本体20と、第二本体20の左右両縁に設けられた1対の耳掛部3とを備える。
【0014】
図3及び図4に示すように、第一本体10は、内面が使用者BGの顔面への装着面をなす凹状面とされ、外面が凹状面に対応する凸状面とされた透明高分子材料の薄肉成形体からなる。第一本体10は、使用者BGの口及び鼻を包含し両眼は範囲外となる第一顔面下部領域を覆うとともに、内面と第一顔面下部領域との間に呼吸用空間ASを形成する。透明高分子材料は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及びポリスチレン樹脂などの熱可塑性透明樹脂材料であり、第一本体10はこれら樹脂の射出成型あるいはブロー成型により形成される。なお、図4に示すように、第一本体10の内面には、シリカ及び界面活性剤を含有する親水性の曇り止め層CTが形成されていてもよい。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、第二本体20は、通気性を有した可撓性シート部材により第一本体10の外側に着脱可能に構成される。該第二本体20は、第一顔面下部領域の外側をなし両眼は範囲外となる第二顔面下部領域を第一本体10の周縁部とともに覆う。さらに、第二本体20には、第一本体10の周縁部以外の部分を、使用者BGの口を透視するための透視領域として突出露出させるための透視用貫通部21が形成されている。
【0016】
第二本体20を構成する、通気性を有する可撓性シート材の材質については、適宜定めることができ、例えば、JISZ0208に規定された方法にて測定される透湿度が300g/m・hr以上となる通気性素材を用いることができる。このような素材としては、木綿布やガーゼなどの織布、不織布等の短繊維若しくは長繊維集合体、ならびにこれらを複数層積層した積層体を挙げることができる。繊維集合体を用いる場合、その原料繊維が何であるかは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性樹脂からなる合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維、及びそれらの二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。繊維集合体を用いる場合、目付け量は例えば15~70gsm、特に20~50gsmとすることができる。
【0017】
また、不織布を用いる場合は、どのような加工によって製造されたものであってもよいが、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法等の公知の方法で製造されたものを例示することができる。また、花粉や細かな塵埃の遮断性能を高めるために、SMS不織布やSMMS不織不等、極細繊維(直径0.5μm以上5μm以下程度)からなる層を有する積層型不織布を用いることもできる。
【0018】
また、耳掛部3は、ゴムひもなどの伸縮性を有した可撓性線状部材にて構成される。耳掛部3は、第二本体20と別体に形成したものの両端を第二本体20の左右両縁部に、縫合や熱圧着等の公知の手段により接合して形成することができる。他方、第二本体20と同一の素材により耳掛部3を第二本体20と一体的に形成してもよい。
【0019】
上記立体マスク1は、耳掛部3を使用者BGの両耳に装着することにより、第二本体20の透視用貫通部21の縁部裏面を第一本体10の周縁部外面に圧着させ、第一本体10を使用者BGの顔面に押し当て付勢する形で装着する。そして、通気性の第二本体20により覆われる第一本体10の周縁部には、呼吸用空間ASと第一本体10の外側の第二本体20によって覆われる空間とを連通させる呼吸用連通部11,11Bが形成されている。
【0020】
上記本発明の立体マスクは、使用者BGの顔面に装着する透明高分子材料の薄肉成形体からなる第一本体10と、その第一本体10の外側に着脱される通気性を有した可撓性シート部材からなる第二本体20からなる。第二本体20は透視用貫通部21を有し、ここに第一本体10を突出形態で露出するようにはめ込むとともに、その状態で第一本体10を第二本体20とともに使用者BGの顔面にあてがい、第二本体20に設けられた耳掛部3を耳に装着する。
【0021】
会話による円滑なコミュニケーションを図る際には、相手が笑っているのか、怒っているのか、悲しんでいるのかなどの感情を、顔の表情から読み取ることは極めて重要である。しかし、一般的なマスクは、装着により使用者の口が隠され、隠れていない目だけから使用者の感情を正しく読み取ることは非常に難しい。しかし、図1に示すように、立体マスク1によると、透視用貫通部21が露出する第一顔面下部領域は、使用者BGの口を少なくとも含む領域であり、両眼は第一本体10及び第二本体20のいずれによっても覆われない。つまり、第一本体10を介して口が透視可能となることで、使用者BGの顔の表情、ひいては感情の確認が十分に可能となる。
【0022】
一方、第一本体10の周縁部には呼吸用連通部11が形成され、内側の呼吸用空間ASは呼吸用連通部11により通気が確保される。そして、その上を通気性の第二本体20(の透視用貫通部21に沿った縁部)が覆う構造となることで、呼吸用空間ASへの良好な通気性と飛沫飛散や吸い込みに対する良好な遮蔽性とが両立できる。また、第二本体20に設けられた耳掛部3を使用者BGの両耳に装着することにより、第二本体20の透視用貫通部21の縁部裏面が第一本体10の周縁部外面に圧着し、第一本体10が使用者BGの顔面に押し当て付勢されるので、第一本体10と顔面との密着、及び呼吸用連通部11位置における第一本体10と第二本体20の密着との双方が向上し、上記の遮蔽性改善にさらに寄与する。
【0023】
他方、透明高分子材料からなる第一本体10と、通気性を有した可撓性シート部材からなる第二本体20とが互いに分離されている構造なので、第一本体10及び第二本体20の一方が劣化した場合は、劣化した方のみを交換して他方を再利用することができるので経済的である。また、通気性を確保するための第二本体20と、口等を透視するための第一本体10とが初めから分離されているため、損傷により両者の結合が破れることへの懸念は最初から存在しない。そして、再利用のための洗浄等も、第一本体10と第二本体20とで個別に行なうことができ、清潔性を保ちやすい利点がある。
【0024】
以下、立体マスク1の形状的な特徴についてさらに詳しく説明する。前述のごとく、該説明における三次元的な幾何学表現については、特に断りがない限り使用者に装着した状態にて記述するものとし、顔面縦方向を上下方向、顔面幅方向を左右方向と定義する。図1及び図2に示すように、第一本体10が覆う第一顔面下部領域は使用者BGの鼻も包含するようになっており、透視用貫通部21を介した使用者BGの表情の確認等が一層行いやすくなっている。
【0025】
また、透視用貫通部21は環状に形成されており、第二本体20は第一本体10の周縁部全体を覆うように形成されている。よって、第一本体10の周縁にて顔面との間に隙間が生じる区間が存在しても、呼吸用空間ASは必ず第二本体20を経て外部空間と連通する構造となり、遮蔽性がさらに高められている。
【0026】
図3及び図4に示すように、第一本体10の外周縁の使用者BGの顔面と当接する区間には、透明高分子材料よりも軟質の弾性材料、例えばシリコーンゴムからなるパッド部12が外周縁に沿って一体化されており、第一本体10の外周縁部の顔面との密着性が高められている。
【0027】
次に、図1及び図2に示すように、透視用貫通部21には、その内側縁に沿ってゴム糸等からなる線状弾性部材22が一体的に組み込まれている。この線状弾性部材22は、図5右に示すように、第一本体10を透視用貫通部21から取り外した状態においては、透視用貫通部21の内側縁形成部をしわ寄せさせる形で該内側縁形成部とともに収縮状態となる。そして、第一本体10を透視用貫通部21に装着した状態においては、図5左に示すように、透視用貫通部21の圧入に伴い内側縁形成部とともに伸張状態となる。図5に示すように、透視用貫通部21はギャザー部として形成されている。
【0028】
図8に示すように、この収縮状態に向けた線状弾性部材22の弾性復帰力により、透視用貫通部21の内側縁形成部は第一本体10の外面に圧着付勢される。このような線状弾性部材22を設けることにより、第二本体20の透視用貫通部21に沿った縁部を第一本体10(パッド部12)に対しより強固に密着させることができる。図1図4の構成では、透視用貫通部21と線状弾性部材22がそれぞれ環状に形成されており、透視用貫通部21周縁の第一本体10への密着状態が周方向により均一に確保できるようになっている。
【0029】
次に、図3及び図4に示すように、呼吸用連通部11,11Bは、第一本体10を厚さ方向に貫通する貫通孔として形成されている。このような形状の呼吸用連通部11,11Bは形成が容易である。図7に示すように、呼吸用連通部11は、第一本体10の外周縁に開放する切欠き部として形成されている。このような切欠き部を形成することで、使用者BGの顔面と接する第一本体10の外周縁においても呼吸用空間ASと外部空間との連通を容易に図ることができる。
【0030】
また、第一本体10の下縁部に形成された呼吸用連通部11Bも、図3のD矢視図に示すように、切欠き部とされている。第一本体10の内面に水滴が付着した場合も、上記呼吸用連通部11Bから水滴を下方へ容易に排出できる。また、該呼吸用連通部11Bもまた、第二本体20にて覆われている。これにより、水滴は第二本体20により吸収又は遮断され、顎の方向へ水滴が流れ落ちることが防止されている。
【0031】
なお、図4及び図7に示すように、第一本体10の外周縁に装着されたパッド部12は、呼吸用連通部11,11Bの形成領域にて途切れており、呼吸用連通部11,11Bの切欠き部の開放側は、顔面FPにより直接区画されている。特に呼吸用連通部11Bについては、パッド部12に阻害されない水滴の流下が可能となっている。
【0032】
また、図3及び図4に示すように、第一本体10には、装着面側に呼吸用空間ASと連通する通気補助溝を形成するための凸条部13が外面側に突出する形態で形成されており、この凸条部13に呼吸用連通部11が形成されている。そして、凸条部13の当該の呼吸用連通部11の形成領域を含む一部が第二本体20で覆われている。凸条部13により通気補助溝を形成することで、呼吸用連通部11に至る通気経路の断面積を拡大でき、よりスムーズな呼吸が可能となる。
【0033】
呼吸用空間ASは、使用者BGの顔面と接する第一本体10の外周縁に近づくほど狭幅となる。上記の凸条部13は、第一端部が第一本体10の外周縁側に、第二端部が第一本体10の中央側に位置するように形成し、呼吸用連通部11を第一端部に形成するようにしている。第一本体10の外周縁近傍に呼吸用連通部11が形成されていても、凸条部13により通気断面積を十分に確保することができる。
【0034】
本実施形態では、凸条部13は第一端部が使用者BGの左頬又は右頬側に、第二端部が鼻側に位置するものが、第一本体10の左右両側に振り分ける形で複数、具体的には、縦方向に並ぶ3つの凸条部13の組を、左右両側にそれぞれ形成している。これにより、左右両頬近傍に外気取り込み口としての呼吸用連通部11が複数開口し、それぞれ第一本体10中央の口ないし鼻に向けて外気を効率よく導くことが可能となっている。
【0035】
なお、図3に示すように、第一本体10の透視用貫通部21内に露出する領域には、補助連通部18を貫通形態にて形成することができる。このような補助連通部18により、呼吸用空間ASへの外気の流通はより良好となるが、飛沫等の遮断効果についてはトレードオフとなる。例えば、対面中の相手からの、補助連通部18を介した飛沫の侵入や、使用者が発する飛沫の放出の影響を軽減するには、補助連通部18を使用者の口や鼻から外れた位置に形成することが望ましい。図3においては、補助連通部18は使用者の口の下方に分散形成された複数の貫通孔として形成されている。
【0036】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2にかかる立体マスク100を示すものである(図1の立体マスク1との共通点については同一の符号を付与し、詳細な説明は略する)。立体マスク100においては、呼吸用連通部111が、第一本体110の外縁に沿って使用者BGの口を取り囲む形態で予め定められた間隔にて複数個形成されている。この構成により、使用者BGが呼吸する口の周囲には、これを取り囲む呼吸用連通部111より外気が種々の方向から出入りできるようになり、呼吸用空間ASに対する通気性を格段に高めることができる。
【0037】
複数の呼吸用連通部111は、第一本体110の外周縁に沿って環状に配置されている。また、第一本体110の外面にて呼吸用連通部111の環状配列の内側には、図10に示すように、第二本体20に設けられた線状弾性部材22を嵌合させる環状溝14が形成されている。環状溝14にはまり込むことで線状弾性部材22の位置が複数の呼吸用連通部111より内側に安定に保持され、複数の呼吸用連通部111が第二本体20の環状の透視用貫通部21の周縁領域によりもれなく被覆された状態を良好に維持することができる。なお、図9において線状弾性部材22は、やや太めのゴムひもにより、第二本体20の透視用貫通部21の周縁に縫着された構造としている。
【0038】
図10に示すように、第一本体110は、凸状の中央主部15と、その周縁から側方に延出する形で環状溝14を介して一体化されたリング状の第一外周壁部16と、第一外周壁部16の外周縁から、使用者BGの顔面FPに向けて立ち下がる筒状の第二外周壁部17とを有し、複数の呼吸用連通部111は第一外周壁部16の周方向にほぼ等間隔にて形成されている。なお、筒状の第二外周壁部17にも、複数の呼吸用連通部111’を所定の間隔で形成できる。これにより、第一本体110の呼吸用空間ASに対する通気性をさらに高めることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3にかかる立体マスク200を示すものである。この立体マスク200は、第一本体210の構造を除いて実施の形態2の立体マスク100(図9及び図10)と同じである。立体マスク200の第一本体210は、呼吸用連通部111の形成が省略され、代わって、左右両側縁部を切欠く形態で呼吸用連通部211が形成されている。図12に示すように、この呼吸用連通部211は、顔面FPとの間に弓形のやや広い切欠き部を形成し、外気の流通断面積の拡大を図る上で好都合である。また、第一本体210の下縁部にも、図1の立体マスク1と同様に、切欠き部をなす呼吸用連通部11Bが形成されている。なお、この実施形態の立体マスク200においても、呼吸用連通部211が非形成の領域にて、第一外周壁部16あるいは第二外周壁部17に、実施の形態2と同様の呼吸用連通部111(あるいは呼吸用連通部111’)を形成してもよい。
【0040】
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4にかかる立体マスク300を示すものであり、図14はその第一本体310を拡大して示すものである。この立体マスク300においては、透視用貫通部321が第二本体320に対し上縁側が開放した切欠き形態(あるいはU字型)に形成されている。これにより、第一本体310の上部の第二本体320により被覆される領域の面積が縮小し、使用者BGの顔の表情等をより視認しやすくなる。線状弾性部材322もまた透視用貫通部321に対応した有端形状とされている。なお、凸条部13と呼吸用連通部11,11Bの形成形態は、実施の形態1(図1等)の立体マスク1とほぼ同じである。
【0041】
第一本体310の外周縁のうち、透視用貫通部321の切欠き開口側に露出する区間(つまり、第一本体310の上縁をなす区間)には、透明高分子材料よりも軟質の弾性材料からなるパッド部312が外周縁に沿って一体化されている。また、上記の構成では第二本体320によって被覆されない第一本体310の上縁(を含む周縁)にパッド部312を設けているので、該区間での遮蔽性低下が効果的に抑制されている。
【0042】
なお、透視用貫通部321が第二本体320の上縁側に開放しているため、耳掛部3により第二本体320を顔面に装着した際に、そのままでは第二本体320の上部は左右へ大きく開いてしまい、第一本体310を顔面に付勢するための突っ張り力を誘起することができない。そこで、本実施形態では、図13に示すように、透視用貫通部321の上部左右端をひも状の連結部323により互いに連結し、上記突っ張り力を確保できるようにしている。
【0043】
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5にかかる立体マスク400を示すものである。該立体マスク400は、実施の形態4(図13等)の立体マスク300とほぼ同じであるが、連結部323が廃止され、代わって、切欠き形態の透視用貫通部321の左右上縁位置に対応して、着脱結合部30が設けられている。該着脱結合部30は、第二本体320の内面を、第一本体310の外面の左右上縁位置に着脱可能に結合することで、第一本体310を顔面に付勢するための突っ張り力が誘起されるようになっている。図16は、着脱結合部を周知のスナップボタンで形成した例である。また、図17は、着脱結合部を周知の面ファスナで形成した例である。
【0044】
(実施の形態6)
図18は、本発明の実施の形態6にかかる立体マスク500を示すものである。該立体マスク500は、第一顔面下部領域を使用者の口周辺のみを包含する領域とし、第一本体510と、第二本体520の透視用貫通部521及び線状弾性部材522を、これに対応する形状に形成している。その結果、使用者BGの鼻は第二本体520に覆われ、透視不能となっている。また、第一本体510は横長楕円状の外周形状を有し、凸条部13(及び呼吸用連通部11)は、左右に1つずつの形成にとどめている。なお、第二本体520は左右に二分割され、それら各部が湾曲形態の立体裁断部525により、鼻部を被覆する部分が凸状に膨ら形態となるように結合されている。
【符号の説明】
【0045】
1,100,200,300,400,500 立体マスク
3 耳掛部
10,110,210,310,510 第一本体
11,111,111’,211 呼吸用連通部
11B 呼吸用連通部
12,312 パッド部
13 凸条部
14 環状溝
15 中央主部
16 第一外周壁部
17 第二外周壁部
18 補助連通部
20,320,520 第二本体
21,321,521 透視用貫通部
22,322,522 線状弾性部材
30 着脱結合部
323 連結部
AS 呼吸用空間
BG 使用者
FP 顔面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図18