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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/20 20060101AFI20220624BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
G01N27/20 A
B09B1/00 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018184170
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051993
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005421
【氏名又は名称】株式会社イッコウ
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】古野間 達
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩介
(72)【発明者】
【氏名】辻本 宏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大介
(72)【発明者】
【氏名】大友 潤
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-148107(JP,A)
【文献】米国特許第05850144(US,A)
【文献】特開2014-158990(JP,A)
【文献】特開2021-018166(JP,A)
【文献】特開平09-165732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - 27/10
G01N 27/14 - 27/24
B09B 1/00
G01M 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面を有する処分場の遮水シートの検査システムであって、
法面の天端の平坦部上を横方向に移動する親機と、
前記親機に牽引され、前記法面に沿って上下方向に移動する子機と、
を具備し、
前記子機は、遮水シートに対向する検知部分と、前記検知部分の移動方向の前後に設けられたローラと、前記検知部分の位置を観測する位置観測部とを有し、
前記ローラが、少なくとも前記検知部分と同等の幅を有することを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記ローラの軸が幅方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
前記子機は、本体がフレーム状であり、前記ローラおよび前記検知部分が前記本体に連結されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の検査システム。
【請求項4】
前記本体に、前記法面の下方向に延びる介錯ロープの一端が連結され、前記介錯ロープの他端を前記法面の下端の平坦部で操作可能であることを特徴とする請求項記載の検査システム。
【請求項5】
前記本体に、前記法面の上方向に延びる牽引ロープの一端が連結され、前記牽引ロープの他端が前記親機に設けられたウインチによって巻取りまたは巻出しされることにより、前記子機が前記親機に牽引されることを特徴とする請求項または請求項記載の検査システム。
【請求項6】
前記牽引ロープの一端が、前記子機の重心が位置する高さ付近に連結されることを特徴とする請求項記載の検査システム。
【請求項7】
前記検知部分は、スパーク検査用の電極ブラシであり、前記ローラと離隔した位置において前記遮水シートに接触するように前記本体に取り付けられ、前記電極ブラシは毛の長さを段階的に変化させたものであることを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載の検査システム。
【請求項8】
前記位置観測部のデータを取り込んで、前記遮水シートの検査済範囲および不具合位置を表示させる表示手段をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の検査システム。
【請求項9】
前記遮水シートの不具合位置の検知時に通知を行う通知手段をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の検査システム。
【請求項10】
前記通知手段が、前記検知部分で検知された前記法面の不具合位置に直接マーキングをするものであることを特徴とする請求項9記載の検査システム。
【請求項11】
前記ローラの回転軸の両端が固定されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の検査システム。
【請求項12】
前記子機にサスペンションが設けられ、前記ローラを前記法面に押しつけることができる請求項1から請求項11のいずれかに記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面を有する処分場の遮水シートの検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の埋立処分場においては、遮水シート等を用いた遮水工事が行われる。遮水工事では、遮水シートの製作時や現場敷設時にピンホールが発生したり、遮水シートの接合部に接合不良が生じたりすることがある。遮水構造の水密性は種々の検査で確認され、一例としてスパーク検査がある。
【0003】
スパーク検査として、通電性マットの上に遮水シートを敷設した後、遮水シート上からシート押え部材で押圧して遮水シートと通電性マットとを密着させた状態で、密着部分に沿うように遮水シートに対して電極ブラシを配設してピンホールを検出する方法がある。この方法では、電極ブラシとシート押え部材とが人力により操作される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スパーク検査の電極ブラシは真鍮製などの導電体である。遮水シートにピンホール等の不良箇所が存在し水密性に問題がある場合、電極ブラシが陽極となり、遮水シート裏面の導電層(通電性マットなど)が陰極となって通電することで、不良箇所の存在を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6087656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、埋立処分場はすり鉢状の形状になっていることが多いので、作業員が上り下りして法面の検査を行う際には、検査範囲の移動に合わせて、作業床としての縄梯子や高所作業用の親綱や安全帯などを用いる必要がある。そのため、安全性や作業性の改善が求められていた。
【0007】
作業員が上り下りせずに法面の検査を行う方法として、電極ブラシにロープを繋いで上から引き上げる方法もあるが、法面に不陸がある状態や気温変動による温度収縮で遮水シートにしわが生じている状態では、検査対象である遮水シートの表面を電極ブラシが確実に撫でていない可能性があり、検査の信頼性に疑問が残っていた。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、法面の検査時における安全性を確保し、作業効率や検査の信頼性を向上させることができる検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、法面を有する処分場の遮水シートの検査システムであって、法面の天端の平坦部上を横方向に移動する親機と、前記親機に牽引され、前記法面に沿って上下方向に移動する子機と、を具備し、前記子機は、遮水シートに対向する検知部分と、前記検知部分の移動方向の前後に設けられたローラと、前記検知部分の位置を観測する位置観測部とを有し、前記ローラが、少なくとも前記検知部分と同等の幅を有することを特徴とする検査システムである。
【0010】
本発明では、検知部分を有する子機が、法面の天端の平坦部上を横方向に移動する親機に牽引されることによって法面に沿って上下方向に移動するので、作業員が法面を上り下りする必要がない。そのため、法面の検査時における安全性を確保し、作業効率を向上させることができる。また、検知部分の移動方向の前後にローラを設けることにより、検査対象である遮水シートのしわをローラで伸ばした状態で遮水シートの表面を検知部分で走査することができるので、検査の信頼性を向上させることができる。
【0011】
前記ローラの軸が幅方向に複数に分割されていることが望ましい。
前記子機は、本体がフレーム状であり、前記ローラおよび前記検知部分が前記本体に連結されることが望ましい。
これにより、子機を、移動時の安定性を保ちつつ、検知部分を遮水シートに押し付けるのに適した最小限の重量とすることができる。
【0012】
前記本体には、前記法面の下方向に延びる介錯ロープの一端が連結され、前記介錯ロープの他端を前記法面の下端の平坦部で操作可能であることが望ましい。
これにより、法面に不陸がある場合でも、子機の移動方向が逸れないように制御できる。
【0013】
前記本体には、前記法面の上方向に延びる牽引ロープの一端が連結され、前記牽引ロープの他端が前記親機に設けられたウインチによって巻取りまたは巻出しされることにより、前記子機が前記親機に牽引されることが望ましい。
これにより、子機を法面に沿って上下方向に適切な速度で移動させることができる。また、牽引ロープを用いることにより、牽引にワイヤを用いる場合と比較して、擦れによって法肩の遮水シートに傷が生じる可能性が低くなる。
【0014】
前記牽引ロープの一端は、前記子機の重心が位置する高さ付近に連結されることが望ましい。
これにより、安定した姿勢で子機を移動させることができ、子機の移動中の転倒を防止できる。
【0015】
前記検知部分は、スパーク検査用の電極ブラシであり、前記ローラと離隔した位置において前記遮水シートに接触するように前記本体に取り付けられ、前記電極ブラシは毛の長さを段階的に変化させたものであることが望ましい。
これにより、電極ブラシの移動方向の前後のローラで遮水シートを押さえた状態で遮水シートを電極ブラシで撫でることができるので、遮水シートにしわがある場合にも確実に検査を実施できる。
【0016】
前記位置観測部のデータを取り込んで、前記遮水シートの検査済範囲および不具合位置を表示させる表示手段をさらに具備してもよい。
また、前記遮水シートの不具合位置の検知時に通知を行う通知手段をさらに具備してもよい。
これらにより、遮水シートの検査済範囲や不具合位置を作業員が容易に把握することができる。
また、前記通知手段が、前記検知部分で検知された前記法面の不具合位置に直接マーキングをするものであってもよい。
また、前記ローラの回転軸の両端が固定されていてもよい。
また、前記子機にサスペンションが設けられ、前記ローラを前記法面に押しつけることができてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、法面の検査時における安全性を確保し、作業効率や検査の信頼性を向上させることができる検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】検査システム1の概要を示す図
図2】親機9を示す図
図3】子機11を示す図
図4】子機11によるピンホール等の検知方法を示す図
図5】子機11によるピンホール等の検知方法を示す図
図6】検査済の範囲43を示す図
図7】検査時の親機9および子機11の動きを示す図
図8】子機11を親機9のスロープ47に乗せた状態を示す図
図9】他の電極ブラシの例を示す図
図10】検査時の親機9および子機11の動きを示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、検査システム1の概要を示す図である。図2は、親機9を示す図であり、図1に示す矢印Aの方向から親機9を見た図である。図3は、子機11を示す図である。なお、図3では法面3を水平に図示している。
【0020】
図1に示すように、埋立処分場2は、地盤をすり鉢状に掘削して形成され、平坦な底部4と、底部4の周囲に設けられた法面3と、法面3の天端に設けられた平坦部5とを有する。埋立処分場2では、複数段の法面3-1、3-2…が設けられ、各法面3-1、3-2…の天端に平坦部5が設けられる。
【0021】
埋立処分場2の内側面すなわち底部4、法面3、平坦部5には、遮水シート7が敷設される。遮水シート7は、裏面に導電層を有するか、下面に導電体が配置される。また、平坦部5と法面3との境界付近である法肩では、遮水シート7の表面に防護シート19が被せられる。
【0022】
検査システム1は、埋立処分場2の法面3に敷設された遮水シート7の水密性を検査するためのシステムである。検査システム1は、親機9、子機11等からなる。
【0023】
図2に示すように、親機9は、架台21、走行装置23、発電機25、GNSS測定機端末27、リール29、ウインチ31等からなる。架台21は、親機9の本体である。走行装置23は例えば無限軌道であり、架台21の下部に設けられる。架台21および走行装置23として、市販のクローラー運搬車を用いてもよい。
【0024】
発電機25、GNSS測定機端末27、リール29、ウインチ31は、架台21に搭載される。発電機25は、後述するスパーク試験機本体39(図3)用の発電機であり、電源コード15の一方の端部が接続される。リール29は、電源コード15を巻き取る。GNSS測定機端末27は、後述するGNSS受信機41(図3)用の測定端末である。ウインチ31は、子機11の移動に用いられ、牽引ロープ13の一方の端部が接続される。
【0025】
親機9は、さらに、図示しないアース線、表示手段、通知手段を有する。アース線は、検査対象の遮水シート7の端部に接地される。表示手段は、遮水シート7における検査済範囲や不具合位置を表示する。通知手段は、不具合位置を検知した時に通知を行う。
【0026】
図3に示すように、子機11は、架台37、ローラ33、電極ブラシ35、試験機本体39、GNSS受信機41等からなる。架台37は、子機11の本体であり、フレーム状である。図3では図示を省略しているが、架台37の角部は、遮水シート7を損傷しないように面取り加工が施されている。
【0027】
電極ブラシ35は、スパーク検査における検知部分であり、例えば毛の長さが一様のブラシである。電極ブラシ35は、植毛された面が遮水シート7に対向するように配置され、架台37の下方において毛の部分が遮水シート7に接触するように架台37に連結される。
【0028】
電極ブラシ35は、架台37に剛結合してもよいし、架台37に吊り下げてもよい。また、電極ブラシ35は、架台37に対して着脱可能であることが望ましい。
【0029】
ローラ33は、遮水シート7の押さえつけ手段であると同時に子機11の走行手段でもあり、電極ブラシ35の移動方向(図3の左右方向)の前後に設けられる。ローラ33は、少なくとも電極ブラシ35と同等の幅を有することが望ましい。また、ローラ33の直径は、遮水シート7のしわ45(図1等)の高さを上回るものとする。ローラ33は、例えば車輪部分が塩化ビニル製の絶縁部材等からなり、図示しない回転軸が鋼製である。但し、ローラ33の車輪部分と電極ブラシ35との離隔が十分に確保されており導通する可能性がない場合は、車輪部分も鋼製としてよい。
【0030】
ローラ33は、図示しない回転軸が架台37の下部に連結される。2本のローラ33は、互いの離隔が小さい方が遮水シート7を押さえやすいが、大きい方が子機11の安定性が良くなる。そのため、ローラ33の位置を決定する際には、遮水シート7の押さえ具合と子機11の安定性とを考慮する。
【0031】
試験機本体39、GNSS受信機41は、架台37に搭載される。試験機本体39は、スパーク検査用の試験機であり、親機9のリール29から延びる電源コード15が接続される。試験機本体39は、図示しないコードによって電極ブラシ35と接続される。
【0032】
GNSS受信機41は、電極ブラシ35の位置を観測する位置観測部である。GNSS受信機41は、図1図5に示すように、子機11を法面3に設置した状態で、電極ブラシ35の鉛直方向真上に位置することが望ましい。
【0033】
架台37の法面3の下方側(図3の左側)には、介錯ロープ17の一方の端部が連結される。介錯ロープ17は架台37の2ケ所に連結され、途中で1本にまとめられて、図1に示すように法面3の下方向に延びる。介錯ロープ17の他方の端部は、法面3の下端の平坦部である底部4で操作可能である。
【0034】
架台37の法面3の上方側(図3の右側)には、親機9のウインチ31から延びる牽引ロープ13の端部が連結される。牽引ロープ13は、子機11の重心が位置する高さ付近に連結される。また、図1に示すように、子機11を法面3に設置した状態で、牽引ロープ13が法肩を擦らない位置に連結されることが望ましい。
【0035】
次に、検査システム1による検査方法について説明する。図4図5は、子機11によるピンホール等の検知方法を示す図であり、図4(a)は子機11が法面3の上方に位置する状態を、図4(b)は子機11が法面3の下方に位置する状態を示す。
【0036】
検査システム1を用いて埋立処分場2の法面3の遮水シート7の水密性を検査するには、検査のための準備として、まず、図1図4に示すように法面3の天端の平坦部5に親機9を配置する。親機9は、走行装置23によって横方向(図4(a)に示す矢印Cの方向)に移動可能である。
【0037】
また、法面3に子機11を配置する。子機11は、親機9のウインチ31で牽引ロープ13を巻取りまたは巻出しすることにより、親機9に牽引されて、法面3に沿って上下方向(図4(a)に示す矢印Dの方向)に移動可能である。
【0038】
さらに、試験機本体39の陰極を遮水シート7の下の図示しない導電層(または導電体)に接続する。
【0039】
検査を行うには、試験機本体39を用いて電極ブラシ35と導電層(または導電体)との間に電圧を印加し、電極ブラシ35を遮水シート7に接触させた状態で、牽引ロープ13を巻取りまたは巻出して子機11を法面3に沿って上下方向に移動させる。
【0040】
子機11を法面3に沿って移動させると、電極ブラシ35が遮水シート7上を走査する。このとき、遮水シート7にピンホールや接合不良などの不具合がなければ、電極ブラシ35と導電層(または導電体)との間は遮水シート7により絶縁されており放電が発生しない。遮水シート7に不具合があれば、絶縁されておらず放電が発生する。このように、電極ブラシ35を遮水シート7に接触させて放電を検出することにより、不具合の有無が検知される。
【0041】
検査システム1では、子機11の移動に伴って電極ブラシ35が走査した範囲が、検査済の範囲となる。例えば、子機11が図4(a)に示す位置から図4(b)に示す位置まで移動すると、図4(b)に示す範囲43が検査済となる。
【0042】
子機11を法面3に沿って移動させる際には、図5に示すように、子機11の法面3の上側のローラ33a、下側のローラ33bが遮水シート7を押さえつける。これにより、遮水シート7のしわ45が電極ブラシ35による走査の支障にならないように押さえつけられ、子機11がしわ45に引っかかったり乗り上げたりすることがなくなる。
【0043】
子機11を法面3に沿って移動させる際には、法面3の下端の底部4で作業員が介錯ロープ17の他方の端部を操作する。これにより、法面3に不陸がある場合でも、不陸に引きずられて子機11の移動方向が逸れることがなくなる。
【0044】
子機11を法面3に沿って移動させる際には、GNSS受信機41で特定された電極ブラシ35の位置を、GNSS測定機端末27で取得する。そして、GNSS測定機端末27で取得した電極ブラシ35の軌跡データと電極ブラシ35の幅のデータとに基づいて求められた検査済の範囲43や、電極ブラシ35で検知された不具合位置を、親機9に設けられた図示しない表示手段に表示する。また、電極ブラシ35で不具合位置を検知した時には、親機9の図示しない通知手段で警告音により通知を行う。図示しない通知手段は、電極ブラシ35で検知された不具合位置に塗料等でマーキングをするものであってもよい。
【0045】
図6は、検査済の範囲43を示す図、図7は、検査時の親機9および子機11の動きを示す図である。図8は、子機11を親機9のスロープ47に乗せた状態を示す図である。
【0046】
埋立処分場2の法面3の遮水シート7の検査は、図6に示すように、検査済の範囲43が隣接する他の検査済の範囲43と一部重なるように実施される。電極ブラシ35の幅が90cm程度である場合、重なりの幅は15cm程度とするのが望ましい。
【0047】
検査済の範囲43同士が一部重なるように遮水シート7の検査を行うためには、図7に示すように、まず、平坦部5の一方の端部に親機9を配置する。そして、子機11を実線の矢印に示すように法面3に沿って上下方向に往復させる。その後、親機9および子機11を白抜きの矢印に示すように横方向に移動させる作業と、子機11を法面3に沿って上下方向に往復させる作業とを繰り返す。
【0048】
親機9および子機11を平坦部5上で横方向に移動させるには、図8に示すように、親機9の法面3側にスロープ47を取り付け、法面3に沿って上方向に移動してきた子機11をスロープ47に乗せる。この状態で親機9を横方向に移動させれば、親機9と同時に子機11を横方向に移動させることができる。
【0049】
埋立処分場2の法面3が複数段の法面3-1、3-2…からなる場合には、ある段の法面3の検査が終了した後、次の段の平坦部5に親機9および子機11を移動させて、次の段の法面3の検査を行う。なお、平坦部5の遮水シート7の検査は、人力で電極ブラシを移動させて容易に行うことができる。
【0050】
このように、本実施の形態では、電極ブラシ35を有する子機11が、法面3の天端の平坦部5上を横方向に移動する親機9に牽引されることによって法面3に沿って上下方向に移動するので、作業員が法面3を上り下りする必要がない。そのため、法面3の検査時における安全性を確保し、作業効率を向上させることができる。また、電極ブラシ35の移動方向の前後にローラ33を設けることにより、検査対象である遮水シート7のしわ45をローラ33で伸ばした状態で電極ブラシ35で遮水シート7の表面を走査することができるので、検査の信頼性を向上させることができる。
【0051】
本実施の形態では、子機11の架台37がフレーム状であり、ローラ33および電極ブラシ35が架台37に連結される。そのため、子機11を、移動時の安定性を保ちつつ、電極ブラシ35を遮水シート7に押し付けるのに適した最小限の重量とすることができる。
【0052】
本実施の形態では、子機11の架台37に牽引ロープ13の一端が連結され、牽引ロープ13の他端が親機9に設けられたウインチ31によって巻取りまたは巻出しされることにより、子機11が親機9に牽引される。これにより、子機11を法面3に沿って上下方向に適切な速度で移動させることができる。また、牽引ロープ13を用い法肩に防護シート19を被せることにより、牽引にワイヤを用いる場合と比較して、擦れによって法肩の遮水シート7に傷が生じる可能性が低くなる。さらに、牽引ロープ13の一端を子機11の重心が位置する高さ付近に連結することにより、安定した姿勢で子機11を移動させることができ、子機11の移動中の転倒を防止できる。牽引ロープ13を子機11の重心が位置する高さ付近に連結すれば、重心より低い位置に連結した場合と比較して、子機11の移動中に牽引ロープ13と法肩との擦れを生じにくくすることもできる。
【0053】
検査システム1は、GNSS受信機41のデータを取り込んで、遮水シート7の検査済範囲43および不具合位置を表示させる表示手段と、遮水シート7の不具合位置の検知時に通知を行う通知手段とを有する。そのため、遮水シート7の検査済範囲43や不具合位置を作業員が容易に把握することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、検知部分として毛の長さが一様である電極ブラシ35を用いたが、検知部分はこれに限らない。
【0055】
図9は、他の電極ブラシの例を示す図である。電極ブラシは、図9(a)に示すように、毛の長さを段階的に変化させたものであってもよいし、図9(b)に示すように、ロール状であってもよい。図9に示す例のような形状の電極ブラシを用いることにより、法面3の不陸への追従性を高めて、不陸がある場合にも不具合位置を検知することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、遮水シート7の同一の位置で子機11を上下に往復させて各範囲43を電極ブラシ35で2回ずつ走査したが、子機11の往路と復路は同一の位置でなくてもよい。
【0057】
図10は、検査時の親機9および子機11の動きを示す図である。図10に示す例では、まず、法面3の天端の平坦部5の一方の端部に親機9を配置する。そして、子機11を実線の矢印に示すように法面3に沿って下方向に移動させる。次に、親機9を平坦部5上で子機11を底部4付近で白抜きの矢印に示すように横に移動させた後、子機11を実線の矢印に示すように法面3に沿って上方向に移動させる。その後、親機9および子機11を平坦部5上で横方向に移動させる作業と、子機11を法面3に沿って下方向に移動させる作業と、親機9を平坦部5上で子機11を底部4付近で横方向に移動させる作業と、子機11を法面3に沿って上方向に移動させる作業とを繰り返す。図10に示す例では、範囲43a、範囲43bが、電極ブラシ35で1回ずつ走査される。
【0058】
この場合においても、平坦部5上で親機9および子機11を横方向に移動させる際には、図8に示すように親機9に取り付けたスロープ47に子機11を乗せることが望ましい。子機11は比較的軽量なので、底部4付近で子機11を横方向に移動させる際は人力で移動可能である。
【0059】
本実施の形態では、介錯ロープ17を用いて子機11の走行を助けたが、測量用のレーザー等を用いて法面3に走行方向を示すことにより、子機11の走行をアシストしてもよい。また、ローラ33の軸を複数に分割して法面3の不陸に対応させたり、サスペンションを設けてローラ33を法面3に押しつけたりしてもよい。
【0060】
さらに、親機9の発電機25と子機11の試験機本体39とを連結する電源コード15の設置は必須ではない。発電機25および電源コード15を省略し、子機11に搭載したバッテリを試験機本体39の電源として用いてもよい。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1………検査システム
2………埋立処分場
3、3-1、3-2………法面
4………底部
5………平坦部
7………遮水シート
9………親機
11………子機
13………牽引ロープ
15………電源コード
17………介錯ロープ
19………防護シート
21、37………架台
23………走行装置
25………発電機
27………GNSS測定機端末
29………リール
31………ウインチ
33、33a、33b………ローラ
35………電極ブラシ
39………試験機本体
41………GNSS受信機
43………範囲
45………しわ
47………スロープ
図1
図2
図3
図4
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図10