(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】接続部のシール構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20220624BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 L
F16L23/02 D
(21)【出願番号】P 2018238973
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】玉城 康年
(72)【発明者】
【氏名】高田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】木村 充志
(72)【発明者】
【氏名】小川 拓哉
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05427386(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136238(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0030326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続状態にて対向する対向面相互を外周気密状態に保持する接続部のシール構造において、
一方の対向面に、他方の対向面に向かって開放する環状溝部が周方向全域に沿って形成され、
同じ一つの環状溝部内に、環状の気密用シール部材と、熱膨張性素材からなる環状の耐火用シール部材とが収容され、
前記気密用シール部材は、前記接続部相互を接続させたとき、前記環状溝部に収容された状態で前記他方の対向面によって押圧変形され、
前記耐火用シール部材は、前記環状溝部の開放端よりも奥まった位置に収容される
ように、
前記気密用シール部材と前記耐火用シール部材は、各々、前記環状溝部の底面に密着する態様で保持させることを特徴とする接続部のシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接続部のシール構造において、
前記耐火用シール部材の線径は、前記気密用シール部材のそれよりも小さく設定されていることを特徴とする接続部のシール構造。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の接続部のシール構造において、
前記環状溝部は、深さの異なる第1溝部と第2溝部の二段構造とし、
浅く形成された第1溝部内に前記気密用シール部材が収容され、
深く形成された第2溝部内に前記耐火用シール部材が収容されていることを特徴とする接続部のシール構造。
【請求項4】
請求項
1または2に記載の接続部のシール構造において、
前記環状溝部を構成している一対の対向側壁のうち、一方の対向側壁を、その開放端が他方の対向側壁に近づくように傾斜させ、
前記一方の対向側壁寄りに前記耐火用シール部材を、他方の対向側壁寄りに前記気密用シール部材をそれぞれ収容させたことを特徴とする接続部のシール構造。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載の接続部のシール構造において、
前記接続部は、外筒内に内筒を抜け止め状態に差し込む差込式の接続部とし、
前記対向面は、外筒の内周面と内筒の外周面とし、
前記環状溝部は、これら外筒の内周面又は内筒の外周面のどちらか一方に周方向に沿って形成されていることを特徴とする接続部のシール構造。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれかに記載の接続部のシール構造において、
前記接続部は、筒部材の接続端部から外方に張り出されたフランジ部相互を対向させると共に、その対向端面相互を押圧固定させる押圧式の接続部とし、
前記環状溝部は、どちらか一方のフランジ部の対向端面に、前記筒部材と同心状に形成されていることを特徴とする接続部のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部のシール構造、特に、気密シール部材と共に耐火シール部材が備えられた接続部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス栓の接続筒部に、配管の継手部材を接続させる場合のように、流体が流れる2つの管体を気密状態に接続させるには、一方の管体内に他方の管体を抜け止め状態に差し込む差込式や、各管体の接続端部に各々張り出させたフランジ部相互を対向させてネジ止め等により押圧固定させる押圧式があり、接続時にて相互に対接する対向面間に、気密用シール部材としてのOリングを介在させて、接続部の気密を確保するシール構造が知られている。
【0003】
具体的には、上記差込式では、外側に位置する外筒の内周面又は内側に位置する内筒の外周面のどちらか一方に、また、上記押圧式では、相互に対向させたフランジ部の各対向端面のどちらか一方に、それぞれ他方の面に向かって開放する環状溝部を周方向に形成し、この環状溝部内にOリングを収容させる。この状態にて、両管体の接続部を上記要領で接続すると、環状溝部内のOリングが、前記他方の面に押圧されて変形した状態で密着することにより、接続部相互間の気密は保持され、2つの管体の接続部からの漏れを防止することが出来る。
【0004】
また、特許文献1~2に示すものは、気密シール部材としてのOリング(以下、気密用Oリングという)と共に、熱膨張率の大きな樹脂製の耐火シール部材としてのOリング(以下、耐火用Oリングという)も備えられており、火災発生時にて、気密用Oリングが消失した場合でも、耐火用Oリングが熱膨張することによって、前記接続部の気密性は確保され、ガス等の漏れを防止することが出来る。
特許文献1では、気密用Oリングと耐火用Oリングとはそれぞれ異なる凹溝に別個に収容されており、特許文献2では、同じ一つの凹溝に一緒に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-343778号公報
【文献】特開2005-155706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成のものでは、耐火用Oリングは、気密用Oリングとほぼ同じ大きさの環状体であり、気密用シール部材と同じように環状溝部に収容されているから、接続部相互を接続した状態においては、通常時でも、耐火用Oリングも、気密用Oリングと同様に、対向面にある程度押圧されて略密着された状態となる。このため、ガス栓の初期の気密検査において、気密用Oリングに疵が付いていたり、塵芥等の異物が付着していたり、さらには、気密用Oリングをセットし忘れる等のようにシール性が損なわれる不備があったとしても、耐火用Oリングのシール性によって、管体の接続部の気密が担保されてしまう。このため、本来、検査されるべき気密性Oリングのシール性が確認されないまま、シール性有りと判断されてしまう問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、2つの部材の接続部相互を、気密用シール部材と耐火用シール部材とを介して気密状態に接続させる接続部のシール構造において、初期の気密検査によって、気密用シール部材の気密性を確実に検査できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための技術的手段は、
接続状態にて対向する対向面相互を外周気密状態に保持する接続部のシール構造において、
一方の対向面に、他方の対向面に向かって開放する環状溝部が周方向全域に沿って形成され、
同じ一つの環状溝部内に、環状の気密用シール部材と、熱膨張性素材からなる環状の耐火用シール部材とが収容され、
前記気密用シール部材は、前記接続部相互を接続させたとき、前記環状溝部に収容された状態で前記他方の対向面によって押圧変形され、
前記耐火用シール部材は、前記環状溝部の開放端よりも奥まった位置に収容されるように、
前記気密用シール部材と前記耐火用シール部材は、各々、前記環状溝部の底面に密着する態様で保持させることを特徴とする。
【0009】
上記技術的手段は次のように作用する。
前記環状溝部に気密用シール部材と耐火用シール部材とを収容させた状態で、前記接続部相互を接続させる。前記環状溝部は、他方の対向面に向かって開放していると共に、これに収容させた気密用シール部材は前記他方の対向面によって押圧変形されるように設定されているから、両対向面間は、気密用シール部材によって外周気密状態に保持される。
また、耐火用シール部材を環状溝部の奥まった個所に収容させることにより、他方の対向面によって押圧変形させられて外周気密状態を保持するのは気密用シール部材のみとなる。これにより、気密用シール部材にシール性を損なうような疵や異物の付着や脱落等の問題があれば、初期検査によってシール性なしと判定され、気密用シール部材の不備を確実に発見することが出来る。
また、気密用シール部材のみが前記環状溝部の開放端から露出し、耐火用シール部材は奥に押し込まれた状態で収容されるように、気密用シール部材と耐火用シール部材とを、各々、前記環状溝部の底面に密着する態様で、一つの環状溝部内に一緒に収容させる。このものでは、接続部を構成する一方の対向面に、一つの環状溝部を設け、それに、気密用シール部材と耐火用シール部材を同時に収容するだけであるから、接続部の製造及びシール部材の組み付けが容易である上に、シール構造に要するスペースもより一層小さく出来る。
また、耐火用シール部材の内径、外径、または線径のいずれかが、気密用シール部材と異なるようにした場合には、気密用シール部材と耐火用シール部材を混同することがなく、また両者の取付位置を間違うこともない。
【0010】
上記接続部のシール構造において、好ましくは、前記耐火用シール部材の線径は、前記気密用シール部材のそれよりも小さく設定されていることである。
耐火用シール部材を気密用シール部材よりも細い環状体とすることで、両者を間違うことなく環状溝部に収容することが出来ると共に、線径が細い分、耐火用シール部材側の環状溝部の幅をより小さくすることが出来るから、省スペース化を実現出来る。
【0012】
上記接続部のシール構造において、さらに好ましくは、環状溝部は、深さの異なる第1溝部と第2溝部の二段構造とし、
浅く形成された第1溝部内に前記気密用シール部材が収容され、
深く形成された第2溝部内に前記耐火用シール部材が収容されている。
環状溝部を深さの異なる第1、第2溝部から構成されるようにすると共に、深い方の第2溝部に耐火用シール部を収容することで、耐火用シール部を、気密用シール部材よりも確実に奥まって位置させることが出来る。よって、初期検査時に、耐火用シール部が他方の対向面に干渉して不安定なシール状態となる不都合を一層確実に防止することが出来る。
この場合も、耐火用シール部材は内径、外径、または線径のいずれかが、気密用シール部材と異なるので、気密用シール部材と耐火用シール部材を混同することがなく、また両者の取付位置を間違うこともない。
【0013】
上記接続部のシール構造において、さらに好ましくは、前記環状溝部を構成している一対の対向側壁のうち、一方の対向側壁を、その開放端が他方の対向側壁に近づくように傾斜させ、
前記一方の対向側壁寄りに前記耐火用シール部材を、他方の対向側壁寄りに前記気密用シール部材をそれぞれ収容させたことである。
一方の対向側壁を他方の対向側壁側へ傾斜させることにより、前記一方の対向側壁と底面とは鋭角を成し、前記環状溝部は、主に、前記他方の対向側壁寄りにて開放する態様となる。これにより、前記一方の対向側壁寄りに収容された耐火用シール部材は、傾斜する前記一方の対向側壁で開放部側が抜け止め状態に押さえられることとなる。
【0015】
上記接続部のシール構造において、さらに好ましくは、前記接続部は、外筒内に内筒を抜け止め状態に差し込む差込式の接続部とし、
前記対向面は、外筒の内周面と内筒の外周面とし、
前記環状溝部は、これら外筒の内周面又は内筒の外周面のどちらか一方に周方向に沿って形成されている。
前記環状溝部に気密用シール部材と耐火用シール部材を収容させた状態で、内筒を外筒に差し込むとき、外筒の内周面と内筒の外周面のどちらか他方の周壁に干渉するのは、気密用シール部材のみであり、耐火用シール部材は干渉しない。よって、内筒を外筒に比較的スムーズに差し込むことが出来るから、差込式の接続部のシール構造の組み付けが容易となる。
【0016】
上記接続部のシール構造において、前記接続部は、筒部材の接続端部から外方に張り出されたフランジ部相互を対向させると共に、その対向端面相互を押圧固定させる押圧式の接続部とし、
前記環状溝部は、どちらか一方のフランジ部の対向端面に、前記筒部材と同心状に形成されている。
前記環状溝部に気密用シール部材と耐火用シール部材を収容させた状態で、前記フランジ部の対向端面相互を押圧状態に接続する際、気密用シール部材のみを押圧した状態でフランジ部相互がネジ止め等により締結されることとなるから、ネジ等の押圧力を小さく出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
耐火用シール部材は環状溝部の奥まった個所に収容され、対向面相互を接続させたとき、他方の対向面によって押圧変形させられるのは気密用シール部材のみとしたから、気密用シール部材に疵が付いていたり、異物が付着していたり、さらには、気密用シール部材がセットされていない場合等では、初期の気密検査で確実にシール性なしと判定される。このように、気密用シール部材に不備があることを確実に発見することが出来る。
また、耐火用シール部材の線径を、気密用シール部材のそれよりも小さくしたものや、気密用シール部材と耐火用シール部材を同じ一つの環状溝部に収容ものでは、気密用シール部材と耐火用シール部材の形状寸法が異なるため、両者を誤認することがなく、取付位置を間違うこともない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続継手との接続状態を示す断面図である。
【
図2】
図1の要部拡大断面図であり、(A)は接続継手に接続される前のガス栓の一部を示しており、(B)は接続後を示している。
【
図3】本発明の第2番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続継手との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の第3番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓の要部拡大断面図である。
【
図5】本発明の第4番目の実施の形態
として例示した参考例の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続継手との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図6】本発明の第5番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続筒部とのフランジ部相互の接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図7】本発明の第6番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続筒部とのフランジ部相互の接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図8】本発明の第7番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続筒部とのフランジ部相互の接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図9】本発明の第8番目の実施の形態
として例示した参考例の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続筒部とのフランジ部相互の接続状態を示す要部拡大断面図である。
【
図10】本発明の第9番目の実施の形態の接続部のシールを採用したガス栓の要部拡大断面図であり、(A)は接続継手に接続される前のガス栓の一部を示しており、(B)は接続後を示している。
【
図11】本発明の第10番目の実施の形態
として例示した参考例の接続部のシール構造を採用したガス栓と接続継手との接続状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すものは、第1番目の実施の形態の接続部のシール構造を、ガス栓(G)のガス流出筒部(1a)と、ガス器具(31)のガス取入筒部(3)に接続雌ネジ部(23)で螺合接続される器具接続継手(2)とからなる接続部に実施したものである。
なお、ガス栓(G)のせん収容部(24)よりも上流側には、ガス流入筒部(1b)が設けられており、ガス流入筒部(1b)には、同図の二点鎖線に示すように、配管継手(20)を介して、可撓管(30)が接続されている。ガス流入筒部(1b)の上流端(図面の右端)から、ガス流出筒部(1a)の下流端まで、ガス流路(4)が同軸上に形成されている。
【0020】
器具接続継手(2)は、ガス流出筒部(1a)に気密状態に且つ抜け止め状態に外嵌可能に構成されており、ガス流出筒部(1a)の外周面には、一つの環状溝部(10)が外方に開放するように周方向に沿って形成されている。環状溝部(10)内には、気密用シール部材としてのゴム製の気密用Oリング(21)と、耐火用シール部材として熱膨張率の大きな熱膨張ゴム製の耐火用Oリング(22)とが収容される。
図2(A)に示すように、気密用Oリング(21)及び耐火用Oリング(22)は、共に、環状溝部(10)の底面(10a)で構成される最小径に略一致する内径を有する環状体とし、各々、底面(10a)に密着する態様で保持させる。気密用Oリング(21)の線径は、環状溝部(10)の深さ以上に設定されていると共に、耐火用Oリング(22)は、気密用Oリング(21)よりも線径の小さい細い環状体とする。これにより、環状溝部(10)内に嵌入させると、同図に示すように、気密用Oリング(21)は環状溝部(10)の開放端よりわずかに突出しているのに対し、耐火用Oリング(22)は、環状溝部(10)内に奥まって位置する態様となる。
なお、耐火用Oリング(22)は気密用Oリング(21)よりも上流側に位置させている。
【0021】
上記したように、環状溝部(10)内に気密用Oリング(21)及び耐火用Oリング(22)を収容させたガス栓(G)のガス流出筒部(1a)を、ガス取入筒部(3)に螺合接続されている器具接続継手(2)に差し込む。この場合、器具接続継手(2)が発明特定事項としての外筒として機能し、ガス流出筒部(1a)が内筒として機能する。
すると、
図2(B)に示すように、気密用Oリング(21)は、器具接続継手(2)の内周面(2a)で押圧変形されて、器具接続継手(2)の内周面(2a)に密着することとなり、器具接続継手(2)とガス流出筒部(1a)間の気密が確保される。これに対し、気密用Oリング(21)よりも線径の小さな耐火用Oリング(22)は、環状溝部(10)内にて奥まって収容された態様となっており、通常時においては、器具接続継手(2)の内周面(2a)に接触することはない。
【0022】
これにより、気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)の両方が器具接続継手(2)の内周面(2a)に干渉する従来の差込式の接続部に比べて摩擦力が低減されるから、ガス流出筒部(1a)は器具接続継手(2)に差し込み易くなると共に、ガス栓(G)を器具接続継手(2)を介して、ガス器具(31)のガス取入筒部(3)に接続させた状態にて、可撓管(30)からガスを流して初期の気密検査を実施したとき、シール性なしと判定された場合には、気密用Oリング(21)に疵が付いているか、塵芥等の異物が付着しているか、さらには、気密用Oリング(21)の装着を忘れている等というように、気密用Oリング(21)に不備があることを確実に発見することが出来る。
【0023】
図3に示すものは、第2番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓(G)と器具接続継手(2)との接続状態を示す要部拡大断面図であり、この実施の形態では、環状溝部(10)の底面(10a)を、耐火用Oリング(22)を収容させる第2溝部(12)が、気密用Oリング(21)を収容させる第1溝部(11)よりも深く形成された二段構造としたものである。より深く形成された第2溝部(12)に耐火用Oリング(22)を収容することで、耐火用Oリング(22)を、気密用Oリング(21)よりも一層奥まった位置に収容することが出来、初期検査時に、耐火用Oリング(22)が器具接続継手(2)の内周面(2a)に干渉して不安定なシール状態を形成する不都合を一層確実に防止することが出来る。
【0024】
図4に示すものは、第3番目の実施の形態の接続部のシール構造を採用したガス栓(G)のガス流出筒部(1a)の要部拡大断面図である。
この実施の形態では、環状溝部(10)を構成している一対の対向側壁(10b)(10c)のうち、上流側に位置する一方の対向側壁(10c)を、下流側に位置する他方の対向側壁(10b)側へ傾斜させることにより、一方の対向側壁(10c)と底面(10a)との間に鋭角部を形成したものである。
耐火用Oリング(22)はこの鋭角部側に収容させることにより、収容状態にて、耐火用Oリング(22)は、一方の対向側壁(10c)で抜け止め状態に押さえられ、ガス流出筒部(1a)が器具接続継手(2)内に差し込まれる際に、耐火用Oリング(22)が器具接続継手(2)の内周面(2a)に干渉する不都合を防止することが出来る。
【0025】
上記各実施の形態に示した接続構造は、気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)とを同じ一つの環状溝部(10)に収容させる構成とすることにより、シール構造に係るスペースを小さく出来るようにしたが、
図5に示す第4番目の実施の形態のように、環状溝部として、気密用Oリング(21)を収容させる第1環状溝部(13)と、耐火用Oリング(22)を収容させる第2環状溝部(14)とを別個に設ける構成としても良い。
このものでは、第2環状溝部(14)を第1環状溝部(13)と同じ深さに設けることにより、線径の小さな耐火用Oリング(22)は、第2環状溝部(14)内に深く奥まって位置させることが出来る。また、2つの第1、第2環状溝部(13)(14)にそれぞれ気密用Oリング(21)、耐火用Oリング(22)が収容されているかどうかを目で容易に確認することが出来るから、気密用Oリング(21)及び耐火用Oリング(22)の装着し忘れを確実に防止することが出来る。
【0026】
図6~
図9に示す第5~第8番目の実施の形態のものは、ガス栓(G)の上流側接続端部に半径方向に張り出させたフランジ部(15)の上流側の対向端面(15a)と、配管の下流端に設けられる配管接続筒部(32)の下流側接続端部に張り出させたフランジ部(33)の対向端面(33a)とを対接させると共に、ネジ止め(図示せず)等により押圧固定させる押圧式の接続部のシール構造である。
また、
図6~
図8に示す第5~第7番目の実施の形態のものでは、ガス栓(G)のフランジ部(15)の対向端面(15a)に、1つの環状溝部(10)が、ガス栓(G)のガス流路(40)と同心状に下方に開放するように形成され、この環状溝部(10)の内側壁(41)寄りに気密用Oリング(21)を、外側壁(42)寄りに耐火用Oリング(22)を収容させる。
【0027】
これら第5~第7番目の実施の形態では、気密用Oリング(21)の内径を環状溝部(10)の内側径に略一致させると共に、耐火用Oリング(22)の外径を環状溝部(10)の外側径に略一致させることで、気密用Oリング(21)は環状溝部(10)の内側壁(41)に密着する態様で、耐火用Oリング(22)は環状溝部(10)の外側壁(42)に密着する態様で、それぞれ抜け止め状態に保持される構成となっている。
また、気密用Oリング(21)の線径を環状溝部(10)の深さ以上に、耐火用Oリング(22)の線径をそれよりも小さく設定しておくことで、両者を間違って環状溝部(10)内に収容することはなく、また、フランジ部(15)の対向端面(15a)とフランジ部(33)の対向端面(33a)とを対接させてネジで締結させたとき、フランジ部(15)(33)の対向端面(15a)(33a)相互間の内方に位置するガス流路(40)は、気密用Oリング(21)のみによって気密状態に保持される。
また、フランジ部(15)(33)の対向端面(15a)(33a)相互を押圧状態に接続する際、押圧変形させるのは気密用Oリング(21)のみであるから、ネジ等の締結力を小さく出来る。
【0028】
特に、
図7に示す第6番目の実施の形態のものでは、環状溝部(10)の底面に、内側壁(41)寄りの部分よりも外側壁(42)寄りの部分が深くなるように段差を形成し、より深く形成された外側壁(42)寄りの部分の奥に耐火用Oリング(22)を収容することで、耐火用Oリング(22)を、気密用Oリング(21)よりも確実に奥まった位置に収容させている。よって、初期検査時に、耐火用Oリング(22)が器具接続継手(2)の内周面(2a)に干渉して不安定なシール状態を形成する不都合を一層確実に防止することが出来る。
【0029】
図8に示す第7番目の実施の形態のものは、環状溝部(10)の外側壁(42)を内側壁(10b)側に傾斜させることにより、外側壁(42)と底面(10a)との間に形成される鋭角部に、耐火用Oリング(22)を収容させたものである。収容状態における耐火用Oリング(22)は、外側壁(42)で抜け止め状態に押さえられる態様となる。
【0030】
図9に示す第8番目の実施の形態のものでは、環状溝部(10)として、気密用Oリング(21)を収容させる内側溝(16)と、耐火用Oリング(22)を収容させる外側溝(17)をそれぞれ別個に設ける構成としたものである。内側溝(16)と外側溝(17)は同じ深さに設定されており、気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)を、内側溝(16)及び外側溝(17)の底面に接触するように収容しておくことにより、気密用Oリング(21)よりも線径の小さな耐火用Oリング(22)は、外側溝(17)の奥深くに収容される態様となる。
このものでは、内側溝(16)に気密用Oリング(21)が略突出状態に収容されていると共に、外側溝(17)の奥底に耐火用Oリング(22)が収容されていることを目で容易に確認することが出来るから、気密用Oリング(21)又は耐火用Oリング(22)を装着し忘れることはない。
【0031】
図10に示す第9番目の実施の形態のものは、上述した第1~第4番目の実施の形態で採用したガス栓(G)のガス流出筒部(1a)に気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)を装着させる構成のものであり、(A)は、器具接続継手(2)に差し込む前のガス流出筒部(1a)の拡大断面図であり、 (B)は、ガス流出筒部(1a)を器具接続継手(2)に差し込んだ状態を示している。
ガス流出筒部(1a)の外周面に、一つの環状溝部(10)が外方に開放するように形成されており、環状溝部(10)の底面(10a)は、第1溝部(11)とこれよりも深く形成された第2溝部(12)とからなる二段構造となっている。そして、第1溝部(11)に気密用Oリング(21)を、第2溝部(12)に耐火用Oリング(22)をそれぞれ収容する。
この実施の形態の気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)とは、内径、外径、線径が同じ2つのリング体を採用しており、内径は、第1溝部(11)の径より小さく且つ第2溝部(12)の径より大きく設定されている。また、線径は、第1溝部(11)の深さよりも大きく設定されている。
【0032】
上記大きさの気密用Oリング(21)を第1溝部(11)に強制的に嵌め込むと、
図10の(A)に示すように、気密用Oリング(21)は内周縁部が第1溝部(11)の底部に密着すると共に、外周縁部が環状溝部(10)の開放端から突出する態様で収容される。他方、耐火用Oリング(22)は、第2溝部(12)内の奥まって位置に遊嵌状態で収容される。
【0033】
この収容状態で、ガス流出筒部(1a)を器具接続継手(2)に差し込むと、環状溝部(10)から突出状態にある気密用Oリング(21)が器具接続継手(2)の内周面(2a)で押圧変形されて、器具接続継手(2)の内周面(2a)に密着することとなるため、器具接続継手(2)とガス流出筒部(1a)間の気密が確保される。これに対し、第2溝部(12)内に奥まって位置する耐火用Oリング(22)は器具接続継手(2)の内周面(2a)に接触することはない。よって、ガス流出筒部(1a)を器具接続継手(2)に差し込む際に邪魔にならず、比較的スムーズに差し込むことが出来ると共に、気密用シール部材にシール性を損なうような不備があれば、初期検査によって発見することが出来る。
【0034】
図11に示す第10番目の実施の形態も、気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)として、内径、外径、線径が同じリング体を採用したものであり、ガス栓(G)のガス流出筒部(1a)の外周面に、気密用Oリング(21)を収容させるための第1環状溝部(18)と、第1環状溝部(18)よりも深く形成され且つ耐火用Oリング(22)を収容させるための第2環状溝部(19)とが別個に設けられている。
気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)の内径は第1環状溝部(18)の径より小さく且つ第2環状溝部(19)の径より大きく設定されており、線径は、第1環状溝部(18)の深さよりも大きく設定されている。これにより、気密用Oリング(21)は、第1環状溝部(18)の底部に密着し且つその開放端から突出する収容態様となり、耐火用Oリング(22)は、第2環状溝部(19)内の奥に遊嵌状態で位置する収容態様となる。
【0035】
上記した気密用Oリング(21)と耐火用Oリング(22)の収容状態で、ガス流出筒部(1a)を器具接続継手(2)に差し込むと、同図に示すように、第1環状溝部(18)から突出状態にある気密用Oリング(21)が器具接続継手(2)の内周面(2a)で押圧変形されて、器具接続継手(2)の内周面(2a)に密着し、器具接続継手(2)とガス流出筒部(1a)間の気密を確保することが出来る。これに対し、第2環状溝部(19)内に奥まって位置する耐火用Oリング(22)は器具接続継手(2)の内周面(2a)に接触することはない。
【符号の説明】
【0036】
(10)・・・・・・環状溝部
(21)・・・・・・気密用Oリング(気密用シール部材)
(22)・・・・・・耐火用Oリング(耐火用シール部材)