(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、およびアクチュエータユニット
(51)【国際特許分類】
B65G 27/24 20060101AFI20220624BHJP
B65G 27/04 20060101ALI20220624BHJP
B65G 27/32 20060101ALI20220624BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B65G27/24
B65G27/04
B65G27/32
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2017216830
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】チュ リーイー
(72)【発明者】
【氏名】コウ ケ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 和夫
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/050138(WO,A1)
【文献】特開平11-091928(JP,A)
【文献】特開2001-158520(JP,A)
【文献】特開平07-257724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00-27/34
H02N 2/04
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記
第1方向に搬送される搬送レールと
を具備
し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動部
は、前記伸縮素子
に二等辺三角形の形状を有する印加電
圧を与えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする請求項
4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向に搬送
し、
前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とする搬送方法。
【請求項9】
前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする請求項
8に記載の搬送方法。
【請求項10】
前記伸縮素子
に二等辺三角形の形状を有する印加電
圧を与えることを特徴とする請求項
8または請求項
9に記載の搬送方法。
【請求項11】
搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させる駆動部と、
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送され、
前記駆動部は、前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項12】
前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする請求項
11に記載のアクチュエータユニット。
【請求項13】
前記駆動部
は、前記伸縮素子
に二等辺三角形の形状を有する印加電
圧を与えることを特徴とする請求項
11または請求項
12に記載のアクチュエータユニット。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする請求項
11から請求項
13のいずれか1項に記載のアクチュエータユニット。
【請求項15】
前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする請求項
14に記載のアクチュエータユニット。
【請求項16】
前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする請求項
11から請求項
15のいずれか1項に記載のアクチュエータユニット。
【請求項17】
前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする請求項
11から請求項
13のいずれか1項に記載のアクチュエータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送装置、搬送方法、およびそれに用いるアクチュエータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する搬送装置として、板ばね等で支持された搬送路を電磁石や圧電素子などのアクチュエータにより振動させることによって、搬送路上の物品を搬送するパーツフィーダが知られている。
【0003】
パーツフィーダとして、特許文献1には、水平回転するボウルまたは水平に直線移動するフィーダを、カム機構を用い、往復に加速度差をつけて水平振動させることにより、摩擦力と慣性力を利用して物品(ワーク)を搬送するものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、両端が互いに平行な平面とされ、これら2つの平面に電極が形成されるとともに、その電極の平成された平面に平行に分極された圧電素子を設け、この圧電素子の一端を基板上に固定し、他端を被搬送体である物品と接する作用部として配設し、圧電素子の電極間に電圧を印加することにより作用部に、第1振動方向の速度と、この速度よりも小さな第2振動方向の速度とを発生させ、物品を第2振動方向へ送る搬送装置が記載されている。すなわち、速度が小さい第2振動方向の移動により、移動体は作用部とともに移動し、圧電素子が第1振動方向へ移動する際には速度が大きく、動摩擦係数は静摩擦係数よりも小さいため、物品は移動した後の位置からは動かず、圧電素子のみが第1振動方向に移動する。このため、この動作を繰り返すことにより、物品を第2振動方向に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭55-007852号公報
【文献】特開平5-105291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された搬送装置では、相対滑りを生じさせて被搬送体である物品(ワーク)を効率良く搬送しようとしているが、滑りを生じさせ易くするためには、大きな駆動力により被搬送体である物品の摺動抵抗を軽減しなければならず、効率の良い搬送を行うことは困難である。また、搬送時の加速度が物品との静摩擦係数より大きくなると物品との間に滑りが発生して搬送効率が低下してしまう。
【0007】
また、特許文献2の技術では、被搬送体である物品を搬送するためには、圧電素子を第2振動方向へゆっくりと伸長させた後、第1振動方向へ急速に縮退させるが、小型の物品を搬送する際には、圧電素子を第1振動方向へ急速に縮退しても、物品がそれに追従して第1振動方向に移動してしまう場合があり、また、圧電素子にこのような変位を高速で行わせると残留振動により効率の良い搬送は困難である。
【0008】
したがって、本発明は、振動搬送の技術を用いて被搬送体を効率良く搬送することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)~(17)を提供する。
【0010】
(1)所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させる駆動部と、
前記アクチュエータの変位が伝達され、その上を被搬送体が前記第1方向に搬送される搬送レールと
を具備し、
前記駆動部は、前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とする搬送装置。
【0011】
(2)前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする(1)に記載の搬送装置。
【0012】
(3)前記駆動部は、前記伸縮素子に二等辺三角形の形状を有する印加電圧を与えることを特徴とする(1)または(2)に記載の搬送装置。
【0014】
(4)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の搬送装置。
【0015】
(5)前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする(4)に記載の搬送装置。
【0016】
(6)前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の搬送装置。
【0017】
(7)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の搬送装置。
【0018】
(8)搬送レール上で被搬送体を搬送する搬送方法であって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させ、
前記アクチュエータの変位を前記搬送レールに伝達させて、前記被搬送体を前記搬送レール上で前記第1方向に搬送し、
前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とする搬送方法。
【0019】
(9)前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする(8)に記載の搬送方法。
【0020】
(10)前記伸縮素子に二等辺三角形の形状を有する印加電圧を与えることを特徴とする(8)または(9)に記載の搬送方法。
【0022】
(11)搬送レール上で被搬送体を搬送するためのアクチュエータユニットであって、
所定の方向に伸縮変位する伸縮素子の変位に対応する変位波形を出力するアクチュエータと、
前記アクチュエータに、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、第1方向の変位と前記第1方向とは逆の第2方向の変位を有するパルス状変位を所定の休止時間を挟んで間欠的に繰り返す変位波形を出力させる駆動部と、
を具備し、
前記搬送レールに前記アクチュエータの変位が伝達され、前記搬送レール上を前記被搬送体が前記第1方向または前記第2方向に搬送され、
前記駆動部は、前記アクチュエータが、前記伸縮素子の1回の伸縮変位に対応する、前記第1方向の変位と前記第2方向の変位を有するパルス状変位を形成するように、前記伸縮素子に印加電圧を与え、
前記印加電圧の、立ち上がりから頂点までの間の時間が、前記アクチュエータと前記搬送レールで構成される系の共振周波数の逆数にほぼ一致することを特徴とするアクチュエータユニット。
【0023】
(12)前記休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることを特徴とする(11)に記載のアクチュエータユニット。
【0024】
(13)前記駆動部は、前記伸縮素子に二等辺三角形の形状を有する印加電圧を与えることを特徴とする(11)または(12)に記載のアクチュエータユニット。
【0026】
(14)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有することを特徴とする(11)から(13)のいずれかに記載のアクチュエータユニット。
【0027】
(15)前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の変位を拡大して出力し、前記搬送レールに伝達する変位拡大機構であることを特徴とする(14)に記載のアクチュエータユニット。
【0028】
(16)前記アクチュエータは、前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部を有し、前記変位出力部に前記搬送レールの一方の端部が取り付けられ、前記変位出力部の変位が前記搬送レールに伝達されることを特徴とする(11)から(15)のいずれかに記載のアクチュエータユニット。
【0029】
(17)前記アクチュエータは、前記伸縮素子の変位を前記搬送レールに伝達する変位伝達機構をさらに有し、前記伸縮素子が水平方向に伸縮するように前記変位伝達機構に装着され、前記変位伝達機構は、前記伸縮素子の上方に設けられ、前記伸縮素子の伸縮変位と対応する方向に前記第1方向および前記第2方向の変位を出力する変位出力部材を有し、前記搬送レールは前記変位出力部材の上に取り付けられることを特徴とする(11)から(13)のいずれかに記載のアクチュエータユニット。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、振動搬送の技術を用いて被搬送体を効率良く搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す平面図である。
【
図3】物品を第1方向であるA方向に搬送する際のアクチュエータから出力される変位波形の一例を示す図である。
【
図4】本発明の効果を説明するための実験結果を示す図である。
【
図5】実際に上述のパルス状変位を間欠的に繰り返す変位波形を搬送レールに与えて搬送実験を行った結果を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
最初に本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す側面図、
図2はその平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の搬送装置1は、水平部101および垂直部102を有するベース部材100と、ベース部材100の垂直部102に固定され所定波形の変位を出力するアクチュエータ200と、アクチュエータ200を駆動する駆動部300と、アクチュエータ200の変位が伝達され、物品10を搬送する搬送レール400と、ベース部材100の水平部101に取り付けられ、搬送路400を移動可能に支持する支持部500と、支持部500と搬送レール400の間に設けられたリニアガイド600とを有する。アクチュエータ200と駆動部300とによりアクチュエータユニット700を構成する。
【0033】
アクチュエータ200は、電圧等のトリガーを与えることにより伸縮する伸縮素子201と、この伸縮素子201が装着され、伸縮素子201の変位を搬送レール400に伝達する変位伝達機構としての変位拡大機構210とを具備している。
【0034】
伸縮素子201は、長尺状をなし、長手方向を鉛直にして配置されている。伸縮素子201としては、トリガーが与えられることにより主に長手方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができる。いずれの素子の場合にも電源からの電圧を直接印加するか、または電圧を適宜の手段で磁界や温度に変換して用いることにより電圧に応じた変位を実現することができる。
【0035】
伸縮素子201としては、圧電素子が好ましい。圧電素子を用いたアクチュエータは、(1)投入される電気エネルギーに対して実に60%以上が機械エネルギーに変換され、例えば10mm×10mmの素子で発生する力が300kgfに達し、エネルギー効率が極めて高い、(2)数kHz以上の高速応答が可能である、(3)物体を一定の位置で保持する場合に、電圧を印加する必要はあるが、電流は流れなくて済むため、電気エネルギー消費を抑えることができる、(4)小型化、薄型化に適している、等の優れた点を有している。
【0036】
伸縮素子201として用いられる圧電素子としては、板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて構成された積層タイプのものが用いられる。例えば、10mm×10mmの圧電体を40mm程度の長さに積層して直方体として構成される。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3;PZT)を挙げることができる。伸縮素子201の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0037】
変位拡大機構210は、伸縮素子201の変位を拡大して出力し、その拡大された変位を搬送レール400に伝達するものであり、本例では、長尺体からなる伸縮素子201の一端面および他端面にそれぞれ固定された第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212と、伸縮素子201の一方の側面に、これら第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212を連結するように設けられ、圧電素子の変位方向に直交する方向に拡大された変位を出力する変位伝達部213と、伸縮素子201の他方の側面に、第1の取り付け部材211および第2の取り付け部材212を、可撓性を有するヒンジ216を介して連結するように設けられた固定部材214とを有する。変位伝達部213は、中央に出力部材215を有し、複数の可撓性を有するヒンジ216および複数のアーム217の作用により出力部材215から拡大された変位を出力することが可能となっている。出力部材215には搬送レール400が取り付けられる取り付け部材218が装着されている。固定部材214の表面は固定面であり、ベース部材100の垂直部102に固定される。
【0038】
このような構成の変位拡大機構210に伸縮素子201が装着されることによりアクチュエータ200が構成される。なお、変位拡大機構は、図示したような構成に限らず種々の構成をとることができる。また、変位伝達機構としては、変位を拡大せずに伸縮素子201の変位を伝達する機能のみを有するものであってもよい。また、変位伝達機構を用いずに、伸縮素子のみでアクチュエータ200を構成してもよい。
【0039】
伸縮素子201が圧電素子の場合、脆性材料であるセラミックス材料で構成されており、引張り力に対して弱い。このため、図示するように、伸縮素子201に与圧機構220により長手方向に圧縮力を与えられた状態で変位拡大機構210に装着されることが好ましい。与圧機構220により予め圧縮力を与えることによりこのような欠点を軽減することができる。与圧機構220は、本例では、伸縮素子201の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース221,222と、これらの間に架け渡されるように設けられた例えば2本の圧縮力付与部材223とを有している。ただし、与圧機構の構成は、圧縮力を付与できればこれに限るものではない。なお、与圧機構220は設けなくともよく、また、変位拡大機構(変位伝達機構)に与圧機構としての機能を持たせてもよい。
【0040】
駆動部300は、伸縮素子201を伸縮駆動させるドライバー301と、所定波形の信号を発生してドライバー301に供給する信号発生部302を有している。ドライバー301は、電源と駆動回路とを有している。伸縮素子201が圧電素子である場合には、ドライバー301は、圧電素子である伸縮素子201に信号発生部302から所定の波形の信号に応じて所定の電圧を印加して充放電させることにより伸縮素子201を駆動する。
【0041】
駆動部300により伸縮素子201が所定の波形で伸縮駆動され、変位拡大機構210の出力部材215から、その伸縮駆動の波形に対応した変位波形が出力される。このときの出力される変位波形については後述する。
【0042】
搬送レール400は、変位拡大機構210の出力部材215に装着された取り付け部材218に着脱可能に取り付けられており、出力部材215から出力される変位波形が直接伝達される。搬送レール400は、複数の物品10が載せられる搬送面401と、搬送面401から物品10が落下しないように搬送面401の両側部に設けられたガード部材403を有している。また、搬送レール400は、アクチュエータ側の第1の端部411と、先端側の第2の端部412とを有しており、これらの間で物品10が搬送される。このとき、後述するように、アクチュエータ200から出力される変位波形を、伸縮素子の1回の伸縮に対応するパルス状変位を間欠的に繰り返すものとすることにより、物品10を第1の端部411から第2の端部412に搬送することできる。物品10は特に限定されず、ボルトやナット等の部品でもよいし、重量が大きいものであってもよいが、特に、直径0.5mm以下の小さいものに対して有効である。
【0043】
搬送レール400の下部には、長手方向に沿ってガイドレール410が設けられている。そして、このガイドレール410にリニアガイド600が装着され、搬送レール400は、ベース部材100の水平部101に取り付けられた支持部500にリニアガイド600を介して支持されている。このため、搬送レール400は、アクチュエータ200の変位に追従して移動することができる。
【0044】
このように構成される搬送装置1においては、駆動部300の信号発生部302からの信号に基づいて、ドライバー301から伸縮素子201に所定波形の電圧が印加され、伸縮素子201は伸縮変位を高速で繰り返す。この伸縮変位は、変位伝達機構である変位拡大機構210により拡大された変位として出力部材215から出力され、この変位が搬送レール400に伝達される。
【0045】
駆動部300は、伸縮素子201に所定波形の電圧を印加し、伸縮素子201が間欠的に伸縮するように駆動する。これにより、出力部材215から、伸縮素子201の1回の伸縮に対応して、電圧非印加時の基準位置から、水平方向の第1方向であるA方向に変位した後、進出した位置から基準位置に戻る第2方向であるB方向に変位するパルス状変位を間欠的に繰り返す変位波形が出力され、これにともなって搬送レール400も同様に変位する。そのときの変位波形の具体例を
図3に示す。
図3は、横軸が時間であり、縦軸が出力部材215から出力される変位である。変位の方向は、下側がA方向(伸縮素子の伸長に対応)、上側がB方向(伸縮素子の戻りに対応)である。
【0046】
このように伸縮素子201の1回の伸縮に対応するアクチュエータ200のパルス状変位を、適切な休止時間を空けて間欠的に繰り返すことにより、被搬送体である物品10をA方向に搬送することができる。
【0047】
次に、このような間欠的なパルスを用いた物品搬送の原理について説明する。
アクチュエータ200により搬送レール400に上述したパルス状変位を与えると、搬送レール400は最初にA方向に変位し、搬送面401上の物品10は静止摩擦により搬送レール400の移動方向に加速力が伝達される。加速力を得た物品10は搬送面401との間に滑りが生じた状態となり、搬送レール400よりも低速で搬送レールの変位方向であるA方向に移動する。そして、搬送レール400の変位方向がB方向に逆転しても物品10は慣性によりしばらくはA方向に変位し続けるが、やがて停止する。
【0048】
そのことを確認した実験について
図4に示す。ここでは伸縮素子として圧電素子を用いたアクチュエータにより、物品として直径約10mmのナットを搬送レール上で搬送する実験を行った。端子間電圧が最大100Vの電圧パルスを1回印加し、アクチュエータ200を介して搬送レール400に100μm/Vのパルス状変位を与えた。電圧パルスの時間は6.4msecとした。その際の電圧パルスに対する搬送レールの変位およびナットの変位を
図4(a)および
図4(b)に示す。なお、搬送レールおよびナットの変位は、搬送レール400の先端側に設けられたレーザー距離計により測定した。なお、これらの図において、変位の方向は、下方向がA方向であり、上方向がB方向である。
図4(a)(b)に示すように、搬送レール400がA方向に変位している間、ナットは搬送レール400よりも低速でA方向に変位し、搬送レール400の変位方向がB方向に逆転しても物品10はA方向に変位し続けていることがわかる。
【0049】
このように、搬送レール400に1回のパルス状変位を与えることにより、搬送レール400が最初に変位する方向であるA方向に物品10が変位する。
【0050】
したがって、このようなパルス状変位を搬送レール400に繰り返し与えることにより、物品10をA方向に搬送し続けることができ、効率の良い搬送を実現することができる。また搬送レールを駆動する周波数を高くすることができるので、高速搬送が可能である。
【0051】
パルス状変位の休止時間は、一つのパルス状変位が終了した後、次のパルス状変位が開始するまでの時間であるが、この休止時間は、搬送レール400の残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることが好ましい。これは、搬送レール400は残留振動がある状態で、次のパルス状変位を与えると、その残留振動がパルス状変位に加算してしまい、その結果、物品10の移動を阻止してしまうからである。搬送レール400の残留振動がゼロ近傍の状態でパルス状変位を与えると、搬送レール400が加速し、物品10との相対速度がゼロになる時点で、静止摩擦により搬送レール400の移動方向に加速力を伝達することができる。このように最初のパルス状変位が与えられた際とほぼ同じ状況で静止摩擦により搬送レール400の移動方向に加速力を伝達することができ、物品10を確実にA方向に効率良く搬送することができる。
【0052】
アクチュエータ200が、伸縮素子201の1回の伸縮変位に対応するA方向の変位とB方向の変位を有するパルス状変位を形成するためには、
図4に示すような二等辺三角形の形状を有する印加電圧を与えることが好ましい。また、伸縮素子201に印加するパラメータが電圧以外であっても二等辺三角形の形状のパラメータを印加することが好ましい。
【0053】
伸縮素子201に電圧を印加する場合、特に、伸縮素子201が圧電素子である場合、二等辺三角形の形状を有する印加電圧の、立ち上がりから二等辺三角形の頂点までの間の時間、つまりA方向の変位からB方向の変位に折り返すまでの時間が、系の共振周波数の逆数にほぼ一致することが好ましい。これにより、伸縮素子201の残留振動を小さくすることができ、搬送レール400に所望の変位を生じさせて、物品10を効率良く搬送することができる。
【0054】
図4の例では、二等辺三角形の電圧パルスの時間は6.4msecで、立ち上がりから二等辺三角形の頂点までの間の時間は3.2msecであり、系の共振周波数がほぼ312.5Hzであることが好ましいことになる。
【0055】
また、伸縮素子、特に圧電素子は、0.1~50μm程度の小さな変位で駆動することができるので、直径0.5mm以下の小さな物品であっても、部品の搬送先との間の継ぎ目を物品の落下の危険性が生じない程度に狭くすることができ、しかも、高速駆動が可能であるため、1回の変位が小さくても十分に高い搬送速度で物品を搬送することができる。
【0056】
次に、実際に上述のパルス状変位を間欠的に繰り返す変位波形を搬送レールに与えて搬送実験を行った結果について説明する。
【0057】
ここでは、伸縮素子として圧電素子を用いたアクチュエータ200を用い、搬送レール400にパルス状変位を繰り返し与えて、直径約10mmのナットを搬送する実験を行った。このとき、端子間電圧が最大100Vの電圧パルスを間欠的に印加し、アクチュエータ200を介して搬送レール400に最大変位300μmのパルス状変位を間欠的に繰り返し与えた。電圧パルスの時間は6.4msecとし、電圧パルス間の休止時間を13.6msecとし、搬送レールおよびナットの変位を搬送レール400の先端側に設けられたレーザー距離計により測定した。この実験結果を
図5に示す。
図5(a)はその際の電圧パルスに対する搬送レールの変位を示し、
図5(b)は電圧パルスに対するナットの変位を示す。なお、これらの図において、変位の方向は、下方向がA方向であり、上方向がB方向である。
【0058】
図5(a)(b)に示すように、搬送レール400に最初のパルス状変位が与えられることにより、ナットがA方向に変位し、ナットと搬送レール400との相対速度がゼロまたはゼロ近傍となった時点で次のパルス状変位が与えられ、これを繰り返すことによりナットがA方向に継続的に変位していることがわかる。このことから、搬送レールにパルス状変位を所定の間隔で間欠的に与えることにより、被搬送体であるナットをA方向に搬送可能であることが確認された。また、このときの平均の搬送速度は9mm/secであり、効率的な搬送が行えることが確認された。
【0059】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
この図に示すように、本実施形態の搬送装置2は、所定波形の変位を出力するアクチュエータ800と、アクチュエータ800を駆動する駆動部300と、アクチュエータ800の変位が伝達され、物品10を搬送する搬送レール400とを有する。アクチュエータ800と駆動部300とでアクチュエータユニット900を構成する。アクチュエータ800は、基台1000上に載置または固定される。
【0060】
アクチュエータ800は、電圧等のトリガーを与えることにより伸縮する伸縮素子801と、この伸縮素子801が装着され、伸縮素子801の変位を搬送レール400に伝達する変位伝達機構810とを具備している。
【0061】
伸縮素子801は、長尺状をなし、長手方向を水平にして配置されている。伸縮素子801としては、伸縮素子201と同様、トリガーが与えられることにより主に長手方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができ、これらの中では圧電素子が好ましい。
【0062】
変位伝達機構810は、伸縮素子801の変位を搬送レール400に伝達するものであり、基台1000に載置または固定されるベース部材811と、ベース部材811と一体またはベース部材811に固定して設けられ、伸縮素子801の一端が取り付けられる第1の取り付け部材812と、伸縮素子801の他端が移動可能に取り付けられる第2の取り付け部材813と、伸縮素子801の上方に水平に設けられ、伸縮素子801の伸縮変位に対応した水平方向の所定波形の変位を出力する出力部材814とを有している。第2の取り付け部材813は、ベース部材811の一端および出力部材814の対応する一端に、それぞれ可撓性を有するヒンジ815を介して連結されている。一方、ベース部材811の他端および出力部材814の対応する他端には、中間部材817がそれぞれ可撓性を有するヒンジ815を介して連結されている。出力部材814の上には搬送レール400が取り付けられる取り付け部材816が装着され、搬送レール400は、取り付け部材816を介して出力部材814上に取り付けられている。
【0063】
このような構成の変位伝達機構810に伸縮素子801が装着されることによりアクチュエータ800が構成される。
【0064】
伸縮素子801には、その長手方向に予め圧縮力を与える与圧機構820が装着されている。与圧機構820は、上述した与圧機構220と同様の機能を有しており、本例では、伸縮素子801の一端面および他端面に固定される一対のヘッドピース821,822と、これらの間に架け渡されるように設けられた例えば2本の圧縮力付与部材823とを有している。ただし、与圧機構の構成は、圧縮力を付与できればこれに限るものではない。なお、与圧機構820は設けなくともよく、また、変位伝達機構に与圧機構としての機能を持たせてもよい。
【0065】
駆動部300は、第1の実施形態と同様、ドライバーと、所定波形の信号を発生してドライバーに供給する信号発生部とを有している。詳細については第1の実施形態と同様であるから省略する。駆動部300により伸縮素子801が所定の波形で伸縮駆動され、変位伝達機構810の出力部材814から、その伸縮駆動の波形に対応した変位波形が出力される。このときの出力される変位波形は第1の実施形態と同様である。
【0066】
搬送レール400は、第1の実施例と同様に構成され、変位伝達機構810の出力部材814に装着された取り付け部材816に着脱可能に取り付けられており、出力部材814から出力される変位波形が直接伝達される。第1の実施形態と同様、物品10は特に限定されず、ボルトやナット等の部品でもよいし、重量が大きいものであってもよいが、特に、直径0.5mm以下の小さいものに対して有効である。
【0067】
このとき、出力部材814は、第1の実施形態と同様、伸縮素子801の1回の伸縮に対応して、電圧非印加時の基準位置から、水平方向の第1方向であるA方向に変位した後、進出した位置から基準位置に戻る第2方向であるB方向に変位するパルス状変位を間欠的に繰り返す変位波形が出力され、これにともなって搬送レール400も同様に変位する。
【0068】
これにより、第1の実施形態と同様の原理で、被搬送物である物品10をA方向に効率良く搬送することができる。このとき、第1の実施形態と同様、パルス状変位の間の休止時間を、一つのパルス状変位が終了した後、前記搬送レールの残留振動がゼロ近傍になるまでの期間以上とすることが好ましい。これにより、物品10を確実に所望の方向へ効率良く搬送することができる。
【0069】
アクチュエータ800が、伸縮素子801の1回の伸縮変位に対応するA方向の変位とB方向の変位を有するパルス状変位を形成するためには、第1の実施形態と同様、二等辺三角形の形状を有する印加電圧を与えることが好ましい。また、伸縮素子801に印加するパラメータが電圧以外であっても二等辺三角形の形状のパラメータを印加することが好ましい。
【0070】
伸縮素子801に電圧を印加する場合、特に、伸縮素子801が圧電素子である場合、二等辺三角形の形状を有する印加電圧の、立ち上がりから二等辺三角形の頂点までの間の時間、つまりA方向の変位からB方向の変位に折り返すまでの時間が系の共振周波数の逆数に一ほぼ致することが好ましい。これにより、伸縮素子801の残留振動を小さくすることができ、搬送レール400に所望の変位を生じさせて、物品10を効率良く搬送することができる。
【0071】
また、伸縮素子、特に圧電素子は、0.1~50μm程度の小さな変位で駆動することができるので、直径0.5mm以下の小さな物品であっても、部品の搬送先との間の継ぎ目を物品の落下の危険性が生じない程度に狭くすることができ、しかも、高速駆動が可能であるため、1回の変位が小さくても十分に高い搬送速度で物品を搬送することができる。
【0072】
さらにまた、本実施形態では搬送レール400の第1の端部411および第2の端部412のいずれも開放されているので、これらのいずれにも物品10の搬送先の部材を設けることが可能であるという利点を得ることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では圧電素子を与圧機構により予め圧縮力を与えた例を示したが、与圧機構は必須ではない。また、変位伝達機構は、上記実施形態に限定されるものではなく、搬送レールに伝達することができるものであればよく、さらに、所望の変位波形を実現することができれば変位伝達機構を設けなくてもよい。
【0074】
さらにまた、アクチュエータユニットの構成は、搬送レールに物品の搬送が可能な上記変位波形を伝達できるものであれば、上記2つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0075】
1,2;搬送装置
10;物品(被搬送体)
100;ベース部材
200,800;アクチュエータ
201,801;伸縮素子
210;変位拡大機構(変位伝達機構)
300;駆動部
400;搬送レール
500;支持部
600;リニアガイド
700,900;アクチュエータユニット
1000;基台