(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-23
(45)【発行日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ペット用のドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/10 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
E05F1/10
(21)【出願番号】P 2018150308
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591287196
【氏名又は名称】森村金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 充
(72)【発明者】
【氏名】伊東 淳一
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0186476(US,A1)
【文献】実開昭49-036732(JP,U)
【文献】独国実用新案第212013000083(DE,U1)
【文献】特開2006-118116(JP,A)
【文献】特開2010-121359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸のドアを備えた出入口の両側上部間に突っ張るように架設する装置本体(1)と、ドアの回動軸から離れた位置の上部に跨らせるように載せるワイヤー引掛具(2)と、前記装置本体(1)とワイヤー引掛具(2)を繋ぐ戸閉ワイヤー(3)とから成り、
前記装置本体(1)には、ドアの戸先側と戸尻側の中間部に対応する部分に位置する入力ユニット(11)と、前記入力ユニット(11)よりもドアの戸尻寄りに対応する部分に位置する出力ユニット(12)と、前記戸閉ワイヤー(3)に引張力を付与する戸閉ばね(13)と、前記戸閉ばね(13)の引張力による前記戸閉ワイヤー(3)の引き込み量を増大させる引込量拡大機構(14)とが設けられており、
前記入力ユニット(11)は、ドアの開放方向の反対面に対して進退するロッド(11c)と、前記ロッド(11c)に連結されて回動するカムプレート(11d)と、前記カムプレート(11d)に係脱するカムロックプレート(11e)と、移動に伴い前記カムロックプレート(11e)を揺動させてカムプレート(11d)から離脱させるロック解除具(11f)と、前記カムプレート(11d)とロック解除具(11f)とを引張方向に付勢して連結する戸開ばね(11g)を備え、
前記出力ユニット(12)は、ドアの開放方向の反対面に対して出没するロッド(12c)と、前記ロッド(12c)に連結されて回動するカムプレート(12d)と、前記カムプレート(12d)を初期位置に戻す方向へ付勢する戻しばね(12e)を備え、
前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)と前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)は、それぞれのロッド(11c,12c)との連結部が対向するように対称に配置され、
前記入力ユニット(11)のロック解除具(11f)と前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)とが戸開ワイヤー(15)を介して連結されることにより、前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)と前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)とは、それぞれのロッド(11c,12c)との連結部に対し互いに離れた位置で、直列となった前記戸開ばね(11g)及び戸開ワイヤー(15)により連結され、
前記戸開ばね(11g)の引張力は、前記戸閉ワイヤー(3)の引込力と前記戻しばね(12e)の付勢力の和よりも大きく設定されて
おり、
ドアを閉めると、前記入力ユニット(11)のロッド(11c)及び前記出力ユニット(12)のロッド(12c)の先端がドアの開放方向とは反対側の表面に当接して、初期状態となり、
ペットがドアの開放方向の表面を押すと、前記入力ユニット(11)及び前記出力ユニット(12)のロッド(11c,12c)がドアで押されて後退し、
このとき、前記入力ユニット(11)のロッド(11c)は、前記出力ユニット(12)のロッド(12c)よりも大きく後退し、これに伴い、前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)が大きく回動すると共に、前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)が前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)とは逆方向に少し回動し、
前記戸開ばね(11g)が前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)と前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)で引っ張られて伸びるように撓み、前記ロック解除具(11f)が一方向へ移動し、前記入力ユニット(11)のカムプレート(11d)の凹所(11d
3
)に前記カムロックプレート(11e)の先端部が係合して、前記ロッド(11c)が後退位置に保持され、
この状態から、前記戸開ばね(11g)が復元力により縮み、前記戸開ばね(11g)及び戸開ワイヤー(15)に引っ張られて、前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)が直前の回動方向とは逆方向へ回動し、前記ロッド(12c)が前進してドアを開く方向へ突き放すように押し、前記ロック解除具(11f)が他方向へ移動して、前記カムロックプレート(11e)を揺動させ、前記カムプレート(11d)の凹所(11d
3
)から前記カムロックプレート(11e)の先端部が離脱し、前記出力ユニット(12)の戻しばね(12e)は、その付勢力に抗して変形し、
前記ロッド(12c)により突き放されたドアは、慣性によりさらに開いて半開き状態となって、ペットがドアの戸先と立枠の間を通り抜け可能となり、前記戸閉ばね(13)は、前記戸閉ワイヤー(3)に引張られて伸びるように撓み、
前記ドアの開放に伴う戸閉ばね(13)の伸長とは独立して、前記出力ユニット(12)のカムプレート(12d)が戻しばね(12e)の付勢力により直前の回動方向とは逆方向である初期状態の方向へ回動し、これに伴い前記ロッド(12c)が後退して初期位置に復帰すると共に、前記戸開ワイヤー(15)に引っ張られて、前記入力ユニット(11)のロック解除具(11f)が初期位置に復帰し、前記カムプレート(11d)が直前の回動方向とは逆方向である初期状態の方向へ回動し、これに伴い前記ロッド(11c)が前進して初期位置に復帰し、
その後、半開き状態となったドアは、前記戸閉ばね(13)の復元力による縮みに伴い、前記戸閉ワイヤー(3)で引っ張られて閉まり始め、閉じられた状態に戻るように動作するペット用のドア開閉装置。
【請求項2】
前記入力ユニット(11)と前記出力ユニット(12)のカムプレート(11d,12d)は、どちらも扇状部材とされて、中心角寄りに回動軸(11a
1,12a
1)が位置し、
前記入力ユニット(11)と前記出力ユニット(12)のそれぞれのカムプレート(11d,12d)の外周寄りの一側部にロッド(11c,12c)が連結され、
前記入力ユニット(11)と前記出力ユニット(12)のそれぞれのカムプレート(11d,12d)の外周寄りの他側部が前記戸開ばね(11g)及び戸開ワイヤー(15)を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載のペット用のドア開閉装置。
【請求項3】
前記引込量拡大機構(14)は、一列に並ぶ複数個のプーリー(14a,14b)のそれぞれの大径部(14a
1,14b
1)と小径部(14a
2,14b
2)に前記戸閉ワイヤー(3)を段階的に巻き掛けた構成となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のペット用のドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犬や猫などのペットが部屋の出入りを自由にできるようにするためのドア開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、開き戸のドアを完全に開放することなく、家屋内で飼われている犬や猫などのペットが部屋の出入りを自由にできるようにするため、下記特許文献1では、
図13に示すようなペット用ドアパネルが提案されている。
【0003】
このペット用ドアパネルは、ドアDの戸先側に対応して設置されるものであり、ドアDとほぼ同等の高さを有する縦長の遮蔽パネル51と、その一側部を回動可能に支持する伸縮可能な支柱52とから構成され、遮蔽パネル51の下端部には、吊下式の蓋板53aを有するペット出入口53が備えられている。
【0004】
上記ペット用ドアパネルの設置に際しては、ドア枠の両側の立枠V1,V2のうち、ドアDの戸先寄りに対応する一側の立枠V1に近接して、支柱52を床面と天井の間に突っ張るように直立させて固定する。
【0005】
そして、ドアDを出入口の一側の立枠V1から離れるように少し開き、遮蔽パネル51の他側部をドアDの戸先寄りの表面に当接させて、ドアDの戸先と立枠V1の間を遮蔽する。これにより、部屋の内側と外側は、ドアDの戸先側での通風が遮断され、互いに容易に視認できないように仕切られる。
【0006】
このように遮蔽しても、ペットは、吊下式の蓋板53aを押して揺動させつつ、ペット出入口53を介して部屋の出入りを自由にできる。
【0007】
また、遮蔽パネル51を鎖線で示すように回動させ、出入口の側方の壁面に沿わせておくと、遮蔽パネル51に妨げられることなく、ドアDを完全に閉じることができ、遮蔽パネル51が出入口付近に迫り出して煩わしく感じられることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようなペット用ドアパネルは、大きな遮蔽パネル51を良質の材料で仕上げた場合、高価なものとなるため、購入者層が限られるという問題があるほか、遮蔽状態でもドアDの戸先側が立枠V1から離れているため、出入口の上部とドアDとの間に隙間が生じ、室内に隙間風が吹き込んだり、室内の冷暖房効率が低下したりするという問題を完全には解消できない。
【0010】
このような不都合を解消するため、ロッドが押し込まれると圧縮コイルばねの反発力で大きく突出するプッシュステーを用いることにより、ペットがドアの開放方向の表面を少し押したとき、ドアがプッシュステーのばね力によりある程度開放され、その後、プッシュステーとは逆方向の付勢力を有するばねの作用でドアが自動的に閉じるようにしたペット用のドア開閉装置が考えられている。
【0011】
ところが、このようなプッシュステーをドアの開放に使用する構成では、冷暖房に伴い部屋の窓等の開口部が閉じられている場合、プッシュステーの反発力だけでドアを室内の気圧変動に抗して開けることが難しいという問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、コンパクトで簡単に部屋の出入口に容易に取り付けられ、ペットが押すだけでドアが確実に開き、隙間風の吹込みや冷暖房効率の低下を防止できるペット用のドア開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明に係るペット用のドア開閉装置は、開き戸のドアを備えた出入口の両側上部間に突っ張るように架設する装置本体と、ドアの回動軸から離れた位置の上部に跨らせるように載せるワイヤー引掛具と、前記装置本体とワイヤー引掛具を繋ぐ戸閉ワイヤーとから成り、
前記装置本体には、ドアの戸先側と戸尻側の中間部に対応する部分に位置する入力ユニットと、前記入力ユニットよりもドアの戸尻寄りに対応する部分に位置する出力ユニットと、前記戸閉ワイヤーに引張力を付与する戸閉ばねと、前記戸閉ばねの引張力による前記戸閉ワイヤーの引き込み量を増大させる引込量拡大機構とが設けられており、
前記入力ユニットは、ドアの開放方向の反対面に対して進退するロッドと、前記ロッドに連結されて回動するカムプレートと、前記カムプレートに係脱するカムロックプレートと、移動に伴い前記カムロックプレートを揺動させてカムプレートから離脱させるロック解除具と、前記カムプレートとロック解除具とを引張方向に付勢して連結する戸開ばねを備え、
前記出力ユニットは、ドアの開放方向の反対面に対して出没するロッドと、前記ロッドに連結されて回動するカムプレートと、前記カムプレートを初期位置に戻す方向へ付勢する戻しばねを備え、
前記入力ユニットのカムプレートと前記出力ユニットのカムプレートは、それぞれのロッドとの連結部が対向するように対称に配置され、
前記入力ユニットのロック解除具と前記出力ユニットのカムプレートとが戸開ワイヤーを介して連結されることにより、前記入力ユニットのカムプレートと前記出力ユニットのカムプレートとは、それぞれのロッドとの連結部に対し互いに離れた位置で、直列となった前記戸開ばね及び戸開ワイヤーにより連結され、
前記戸開ばねの引張力は、前記戸閉ワイヤーの引込力と前記戻しばねの付勢力の和よりも大きく設定されており、
ドアを閉めると、前記入力ユニットのロッド及び前記出力ユニットのロッドの先端がドアの開放方向とは反対側の表面に当接して、初期状態となり、
ペットがドアの開放方向の表面を押すと、前記入力ユニット及び前記出力ユニットのロッドがドアで押されて後退し、
このとき、前記入力ユニットのロッドは、前記出力ユニットのロッドよりも大きく後退し、これに伴い、前記入力ユニットのカムプレートが大きく回動すると共に、前記出力ユニットのカムプレートが前記入力ユニットのカムプレートとは逆方向に少し回動し、
前記戸開ばねが前記入力ユニットのカムプレートと前記出力ユニットのカムプレートで引っ張られて伸びるように撓み、前記ロック解除具が一方向へ移動し、前記入力ユニットのカムプレートの凹所に前記カムロックプレートの先端部が係合して、前記ロッドが後退位置に保持され、
この状態から、前記戸開ばねが復元力により縮み、前記戸開ばね及び戸開ワイヤーに引っ張られて、前記出力ユニットのカムプレートが直前の回動方向とは逆方向へ回動し、前記ロッドが前進してドアを開く方向へ突き放すように押し、前記ロック解除具が他方向へ移動して、前記カムロックプレートを揺動させ、前記カムプレートの凹所から前記カムロックプレートの先端部が離脱し、前記出力ユニットの戻しばねは、その付勢力に抗して変形し、
前記ロッドにより突き放されたドアは、慣性によりさらに開いて半開き状態となって、ペットがドアの戸先と立枠の間を通り抜け可能となり、前記戸閉ばねは、前記戸閉ワイヤーに引張られて伸びるように撓み、
前記ドアの開放に伴う戸閉ばねの伸長とは独立して、前記出力ユニットのカムプレートが戻しばねの付勢力により直前の回動方向とは逆方向である初期状態の方向へ回動し、これに伴い前記ロッドが後退して初期位置に復帰すると共に、前記戸開ワイヤーに引っ張られて、前記入力ユニットのロック解除具が初期位置に復帰し、前記カムプレートが直前の回動方向とは逆方向である初期状態の方向へ回動し、これに伴い前記ロッドが前進して初期位置に復帰し、
その後、半開き状態となったドアは、前記戸閉ばねの復元力による縮みに伴い、前記戸閉ワイヤーで引っ張られて閉まり始め、閉じられた状態に戻るように動作するものとしたのである。
【0014】
また、前記入力ユニットと前記出力ユニットのカムプレートは、どちらも扇状部材とされて、中心角寄りに回動軸が位置し、
前記入力ユニットと前記出力ユニットのそれぞれのカムプレートの外周寄りの一側部にロッドが連結され、
前記入力ユニットと前記出力ユニットのそれぞれのカムプレートの外周寄りの他側部が前記戸開ばね及び戸開ワイヤーを介して連結されているものとしたのである。
【0015】
さらに、前記引込量拡大機構は、一列に並ぶ複数個のプーリーのそれぞれの大径部と小径部に前記戸閉ワイヤーを段階的に巻き掛けた構成となっているものとしたのである。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るペット用のドア開閉装置は、装置本体を出入口の両側上部間に架設し、ワイヤー引掛具をドアの上部に跨らせるように載せ、装置本体とワイヤー引掛具を戸閉ワイヤーで繋ぐだけで、簡単に取付作業が完了し、出入口に取り付けた状態で、装置本体が目立つこともない。
【0017】
また、ペットがドアの開放方向の表面を少し押すだけで、入力ユニットと出力ユニットのロッドが押されて後退し、引っ張られた戸開ばねの縮みに伴い、出力ユニットのロッドが前進してドアを突き放すように開き、ペットが自由に出入りすることができる。
【0018】
また、開き戸に取り付けた状態でドアを閉めたとき、ドアの戸先を出入口の立枠の奥行の範囲内に収めることができるので、部屋の気密性を確保でき、隙間風の吹込みや冷暖房効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係るペット用のドア開閉装置を取り付けた開き戸のドアを閉めた状態をドア開放方向の上方から示す斜視図
【
図2】同上のペットがドアを押した状態を示す斜視図
【
図3】同上のドアが半開きとなってペットが通り抜ける状態を示す斜視図
【
図5】同上のドアが大きく開いて人が出入りする状態を示す斜視図
【
図6】同上の装置本体を開き戸に取り付けてドアを閉じた状態で示す平面図(同図におけるA-A断面図及びB-B断面図を含む)
【
図9】同上の引込量拡大機構におけるワイヤーの巻掛状態を示す(9A)拡大平面図、(9B)拡大正面図
【
図10】同上のワイヤー引掛具のドアへの取付状態を示す(10A)平面図、(10B)側面図
【
図11】同上のペット用のドア開閉装置を取り付けた開き戸のドアの開閉動作の各状態を示す平面図
【
図12】同上のペット用のドア開閉装置の入力ユニットと出力ユニットの動作の各状態を示す概略平面図
【
図13】特許文献1に記載のペット用ドアパネルの設置状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、このドア開閉装置は、開き戸のドアDを備えた出入口の上部に取り付けるものであり、長さ方向を出入口の幅方向へ向けて、両側の立枠V
1,V
2の上部間に突っ張るように架設する装置本体1と、ドアDの回動軸から離れた位置の上部に跨らせるように載せるワイヤー引掛具2と、装置本体1とワイヤー引掛具2に引っ掛けてこれらを繋ぐ戸閉ワイヤー3とから構成される。
【0022】
図6に示すように、装置本体1は、四角筒状の梁体10に各機構の主要部を内蔵しており、ドアDの戸先側と戸尻側の中間部に対応する部分に位置する入力ユニット11と、入力ユニット11よりもドアDの戸尻寄りに対応する部分に位置する出力ユニット12と、戸閉ワイヤー3に引張力を付与するコイルばねの戸閉ばね13と、戸閉ばね13による戸閉ワイヤー3の引き込み量を増大させる引込量拡大機構14とを備えている。
【0023】
梁体10は、外カバー10aと筐体10b1、10b2とから成る二重構造とされ、一方の筐体10b1は短く、他方の筐体10b2は長くなっており、外カバー10aは、筐体10b1、10b2に対して長さ方向にスライドするようになっている。
【0024】
短い筐体10b1から延びて長い筐体10b2に挿入される寸切りボルト4には、筐体10b1、10b2の間に、取付時の押圧力調整用のハンドル5が螺合している。ハンドル5と筐体10b2の間には、ばね定数が大きい圧縮ばね6が介在し、筐体10b1に対して筐体10b2が離反する方向へ付勢されている。
【0025】
筐体10b1、10b2のそれぞれの外端壁には、先端が円盤部となった押当片7が設けられている。押当片7の円盤部の表面には、滑止用のゴムが貼られている。
【0026】
筐体10b2の内部には、戸閉ばね13が設けられ、戸閉ばね13の一端が筐体10b2の筐体10b1側の端壁に接続され、他端が引込量拡大機構14の戸閉ワイヤー3に接続されている。
【0027】
図7に示すように、入力ユニット11は、筐体10b
2に固定される保持部材11aとこれに固定される保持部材11bにより機構部が保持されている。
【0028】
この機構部は、軸部の先端に丸味を帯びた樹脂部材が取り付けられたロッド11cと、ロッド11cに連結されて回動する扇状のカムプレート11dと、揺動に伴いカムプレート11dに係脱するカムロックプレート11eと、ロッド11cの軸線方向と交差する方向へ移動するロック解除具11fと、カムプレート11dとロック解除具11fとを引張方向に付勢して連結するコイルばねの戸開ばね11gを備えている。
【0029】
ロッド11cは、保持部材11bに対してスライダー11c1を介し進退自在に保持され、カムプレート11dは、中心角寄りを回動軸11a1により保持部材11aに軸支されている。そして、スライダー11c1に回動自在に係合する係合軸11d1を介して、カムプレート11dの外周寄りの一側部にロッド11cが連結されている。
【0030】
戸開ばね11gの一端は、カムプレート11dの外周寄りの他側部の掛止軸11d2に引っ掛けられ、戸開ばね11gの他端は、ロック解除具11fの掛止軸11f1に引っ掛けられている。この掛止軸11f1には、後述する戸開ワイヤー15の一端が引っ掛けられ、戸開ばね11gと戸開ワイヤー15とが直列となっている。
【0031】
カムロックプレート11eは、回動軸11e1により軸支され、先端部がカムプレート11dの外周に圧接するように付勢されて、カムプレート11dの外周の凹所11d3に係合する形状とされている。
【0032】
そして、カムロックプレート11eの後部の凸軸11e2がロック解除具11fの傾斜したカム面11f2に押されて保持部材11aのガイド穴11a2内を移動すると、カムロックプレート11eは揺動し、カムプレート11dの外周の凹所11d3に係合していたカムロックプレート11eの先端部が凹所11d3から離脱する。
【0033】
図8に示すように、出力ユニット12は、筐体10b
2に固定される保持部材12aとこれに固定される保持部材12bにより機構部が保持されている。
【0034】
この機構部は、軸部の先端に丸味を帯びた樹脂部材が取り付けられたロッド12cと、ロッド12cに連結されて回動する扇状のカムプレート12dと、カムプレート12dを初期位置へ戻る方向へ付勢するトーションばねの戻しばね12eを備えている。
【0035】
ロッド12cは、保持部材12bに対してスライダー12c1を介し進退自在に保持され、カムプレート12dは、中心角寄りを回動軸12a1により保持部材12aに軸支されている。そして、スライダー12c1に回動自在に係合する係合軸12d1を介して、カムプレート12dの外周寄りの一側部にロッド12cが連結されている。
【0036】
戻しばね12eの一端は、保持部材12bに係止され、戻しばね12eの他端は、カムプレート12dの外周寄りの他側部の掛止軸12d2に係止されている。掛止軸12d2は、保持部材12aに形成されたガイド穴12a2内を移動する。また、掛止軸12d2には、入力ユニット11から延びる戸開ワイヤー15の他端が引っ掛けられている。
【0037】
ここで、
図7及び
図8に示すように、入力ユニット11の保持部材11a,11b、ロッド11c、スライダー11c
1及びカムプレート11dと、出力ユニット12の保持部材12a,12b、ロッド12c、スライダー12c
1及びカムプレート12dとは、部材管理の効率化のため、同一の部材とされている。
【0038】
そして、入力ユニット11のカムプレート11dと出力ユニット12のカムプレート12dは、それぞれのロッド11c、12cとの連結部が対向するように対称に配置され、また、それぞれのロッド11c、12cとの連結部に対し互いに離れた位置で、直列となった戸開ばね11g及び戸開ワイヤー15により連結された関係となっている。
【0039】
図9に示すように、引込量拡大機構14は、筐体10b
2の内部で装置本体1の長さ方向に並ぶ2個のプーリー14a,14bを備え、これらのプーリー14a,14bは、それぞれに設けられた大径部14a
1,14b
1と小径部14a
2,14b
2とが上下互い違いになるように配置されている。
【0040】
そして、一端が戸閉ばね13に接続された戸閉ワイヤー3の他端側は、戸閉ばね13に近いプーリー14aの小径部14a2に巻き掛けられている。
【0041】
また、次の段階として、戸閉ばね13に近いプーリー14aの大径部14a1に戸閉ワイヤー3の一端側が巻き掛けられ、この戸閉ワイヤー3の他端側は、戸閉ばね13から遠いプーリー14bの小径部14b2に巻き掛けられている。
【0042】
さらに、次の段階として、戸閉ばね13から遠いプーリー14bの大径部14b1に戸閉ワイヤー3の一端側が巻き掛けられ、この戸閉ワイヤー3の他端側は、ドアDの方向へ向きを変えられて、梁体10の外部に引き出され、先端部にワイヤー引掛具2に繋ぐための環状部3aが形成されている。
【0043】
この装置本体1において、戸開ばね11gの引張力は、約25~46Nとされ、戸閉ばね13の引張力は、約35~80Nとされている。引込量拡大機構14を経た戸閉ワイヤー3の引込力は、約1.96~4.9Nとされ、戻しばね12eの付勢力は、約6.2Nとされている。このように、戸開ばね11gの引張力は、戸閉ワイヤー3の引込力と戻しばね12eの付勢力の和よりも大きく設定されている。
【0044】
一方、
図10に示すように、ワイヤー引掛具2は、ドアDの上部に跨る抱持部材21の背面にフック22が設けられ、抱持部材21の正面に設けられた締付ねじ23の締め付けに伴い押付板24が前進し、抱持部材21と押付板24の間に保護シート25を介してドアDを挟み込むことにより、ドアDに固定されるものである。
【0045】
上記のようなドア開閉装置を出入口の開き戸に取り付けるには、
図1に示すように、開き戸のドアDの開放方向とは反対側において、長さ方向に押し縮めた装置本体1を反発により伸長させ、両端の押当片7を出入口の立枠V
1,V
2の上部にそれぞれ押し当てることにより、立枠V
1,V
2の上部間に突っ張るように架設する。
【0046】
また、ワイヤー引掛具2を、ドアDの戸尻側の回動軸から離れた位置の上部に跨らせるように載せ、
図10に示すように、締付ねじ23を回して、ドアDを挟み込んだ状態で締め付けることにより、ドアDに固定する。
【0047】
そして、
図6に示すように、装置本体1から引き出した戸閉ワイヤー3の先端の環状部3aを、ワイヤー引掛具2のフック22に引っ掛けることにより、装置本体1とワイヤー引掛具2とを繋ぐ。
【0048】
なお、ドアDを戸先のラッチボルトが立枠V1の受金具の凹部に誤って嵌合しないように、受金具にその凹部を覆うマグネットプレートMを吸着させておくとよい。
【0049】
上記のようなドア開閉装置は、ドアDの戸先側に遮蔽パネルを設ける従来のペット用ドアパネルのように、美装仕上げを要する大きなパネルを構成部材としないので、比較的安価に提供することができる。
【0050】
また、開き戸への取付作業を簡単に行うことができ、ドアDや立枠V1,V2に穴開け加工等を施す必要がなく、建具や壁面を傷つけることがないので、賃貸住宅にも取り付けることができる。
【0051】
また、引込量拡大機構14の2個のプーリー14a,14bが装置本体1の長さ方向に一列に並び、それらの大径部14a1,14b1と小径部14a2,14b2に戸閉ワイヤー3が段階的に巻き掛けられていることから、装置本体1が細長いものとなり、開き戸への取付状態において、立枠V1,V2の幅の範囲内に体裁よく収めることができる。
【0052】
さらに、装置本体1が万一落下した場合には、ドアDの上部から戸閉ワイヤー3を介してぶら下がるので、出入口を通る人HやペットPに当たる危険性はほとんどなく、床面を傷つける恐れもない。
【0053】
上記のようなドア開閉装置を取り付けた開き戸において、
図6に示すように、ドアDを閉めると、
図11[I]及び
図12[I]に示すように、入力ユニット11のロッド11c及び出力ユニットのロッド12cの先端がドアDの開放方向とは反対側の表面に当接して、ドア開閉装置は初期状態となる。
【0054】
この状態では、ドアDを戸先のラッチボルトが立枠V1の受金具に嵌合するまで完全に閉じることはできないが、ドアDの戸先を立枠V1の奥行の範囲内に収めることができるので、部屋の気密性を確保でき、隙間風の吹込みや冷暖房効率の低下を防止できる。
【0055】
そして、
図1に示すように、部屋の内部側であるドアDの開放方向にいるペットPが部屋の外へ出ようとして、
図2に示すように、ドアDの開放方向の表面を押すと、
図11[II]及び
図12[II]に示すように、入力ユニット11及び出力ユニット12のロッド11c,12cがドアDで押されて後退する。
【0056】
このとき、入力ユニット11のロッド11cは、出力ユニット12のロッド12cよりも大きく後退し(一般に約12mm)、入力ユニット11のカムプレート11dが図示の方向で時計回りに大きく回転すると共に、出力ユニット12のカムプレート12dが図示の方向で反時計回りに少し回動する。
【0057】
これに伴い、戸開ばね11gが入力ユニット11と出力ユニット12のカムプレート11d,12dで引っ張られて伸びるように撓み(一般に約12mm)、ロック解除具11fが図示の方向で右側へ移動することにより、入力ユニット11のカムプレート11dの凹所11d3にカムロックプレート11eの先端部が係合して、ロッド11cが後退位置に保持される。
【0058】
この状態から、
図11[III]及び
図12[III]に示すように、戸開ばね11gが復元力により縮み、これに伴い、戸開ばね11g及び戸開ワイヤー15に引っ張られて、出力ユニット12のカムプレート12dが図示の方向で時計回りに回動し、ロッド12cが前進してドアDを開く方向へ突き放すように押す。また、ロック解除具11fが図示の方向で左側へ移動して、カムロックプレート11eを揺動させ、カムプレート11dの凹所11d
3からカムロックプレート11eの先端部が離脱する。このとき、出力ユニット12の戻しばね12eは、付勢力に抗して変形する。
【0059】
そして、ドアDは、
図11[IV]に示すように、慣性によりさらに開いて半開き状態となり、
図3に示すように、この状態に気付いたペットPは、ドアDの戸先と立枠V
1の間をドアDの開放方向とは反対側へ通り抜けることができる。このとき、戸閉ばね13は、戸閉ワイヤー3に引張られて伸びるように撓む。
【0060】
また、
図12[IV]に示すように、出力ユニット12のカムプレート12dが戻しばね12eの付勢力により図示の方向で反時計回りに回動し、ロッド12cが後退して初期位置に復帰すると共に、戸開ワイヤー15に引っ張られて、入力ユニット11のロック解除具11fが初期位置に復帰し、カムプレート11dが図示の方向で反時計回りに回動し、ロッド11cが前進して初期位置に復帰する。
【0061】
その後、半開き状態となったドアDは、
図4に示すように、戸閉ばね13の復元力による縮みに伴い、戸閉ワイヤー3で引っ張られて閉まり始め、閉じられた状態に戻り、部屋の気密性が保たれる。
【0062】
上記作用例では、ペットPがドアDの開放方向から反対側へ通り抜ける場合について例示したが、これとは逆に、ドアDの開放方向とは反対側にいるペットPは、ドアDの開放方向とは反対側の表面を押すだけで、ドアDが開くので、ドアDの戸先と立枠V1の間を容易に通り抜けることができる。
【0063】
一方、
図5に示すように、開き戸の出入口を飼い主等の人Hが出入りする際には、戸閉ワイヤー3が最大限度近くまで大きく引き出されることにより、ドアDを大きく開くことができるので、障害物に煩わされることなく通ることができ、その後、ドアDは、戸閉ワイヤー3に引っ張られて、自動的に閉じられた状態に戻る。
【符号の説明】
【0064】
1 装置本体
2 ワイヤー引掛具
3 戸閉ワイヤー
3a 環状部
4 寸切りボルト
5 ハンドル
6 圧縮ばね
7 押当片
10 梁体
10a 外カバー
10b1、10b2 筐体
11 入力ユニット
11a,11b 保持部材
11a1 回動軸
11a2 ガイド穴
11c ロッド
11c1 スライダー
11d カムプレート
11d1 係合軸
11d2 掛止軸
11d3 凹所
11e カムロックプレート
11e1 回動軸
11e2 凸軸
11f ロック解除具
11f1 掛止軸
11f2 カム面
11g 戸開ばね
12 出力ユニット
12a,12b 保持部材
12a1 回動軸
12a2 ガイド穴
12c ロッド
12c1 スライダー
12d カムプレート
12d1 係合軸
12d2 掛止軸
12e 戻しばね
13 戸閉ばね
14 引込量拡大機構
14a,14b プーリー
14a1,14b1 大径部
14a2,14b2 小径部
15 戸開ワイヤー
21 抱持部材
22 フック
23 締付ねじ
24 押付板
25 保護シート
D ドア
H 人
M マグネットプレート
P ペット
V1,V2 立枠